(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082091
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】MEMSマイクロフォン
(51)【国際特許分類】
H10N 30/88 20230101AFI20240612BHJP
H10N 30/30 20230101ALI20240612BHJP
H10N 30/853 20230101ALI20240612BHJP
H04R 17/02 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
H10N30/88
H10N30/30
H10N30/853
H04R17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195808
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山田 英雄
(72)【発明者】
【氏名】桝本 尚己
(72)【発明者】
【氏名】臼井 孝英
(72)【発明者】
【氏名】掛札 尚
【テーマコード(参考)】
5D004
【Fターム(参考)】
5D004AA07
5D004BB01
5D004CC03
5D004DD02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】優れた圧電特性を保持しつつ、片持ち梁構造における反りが良好に抑制された、圧電型のMEMSマイクロフォンを提供する。
【解決手段】MEMSマイクロフォン1は、ScAlN膜37を含む圧電体含有層35を有し、固定端部32aから自由端部32bに向かって片持ち梁状に延設された振動板3と、振動板における固定端部を固定的に支持する台座基板2と、を備える。振動板は、センサ電極344、347が設けられたセンサ部RAとセンサ電極が設けられていない非センサ部RBとが延設方向に配列された構成を有している。非センサ部は、センサ部よりも、ScAlN膜における結晶性が低い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MEMSマイクロフォン(1)であって、
ScAlN膜(37)を含む圧電体含有層(35)を有し、指向軸(DA)に沿った厚さ方向を有する板状に形成され、前記指向軸と直交する延設方向における一端側の固定端部(32a)から他端側の自由端部(32b)に向かって片持ち梁状に延設された、振動板(3)と、
前記振動板における前記固定端部を固定的に支持するように設けられた、台座基板(2)と、
を備え、
前記振動板は、センサ電極(344、347)が設けられたセンサ部(RA)と前記センサ電極が設けられていない非センサ部(RB)とが前記延設方向に配列された構成を有し、
前記非センサ部は、前記センサ部よりも、前記ScAlN膜における結晶性が低い、
MEMSマイクロフォン。
【請求項2】
前記非センサ部と前記センサ部とは、反り方向が逆である、
請求項1に記載のMEMSマイクロフォン。
【請求項3】
前記センサ部は、前記延設方向における前記固定端部側に設けられ、
前記非センサ部は、前記延設方向における前記自由端部側に設けられた、
請求項1または2に記載のMEMSマイクロフォン。
【請求項4】
前記振動板は、前記圧電体含有層としての第一層(351)および第二層(352)を前記厚さ方向に積層した構成を有し、
前記第一層は、前記第二層よりも前記台座基板寄りに配置され、
前記第一層における前記ScAlN膜は、前記センサ部に設けられた高結晶性部(371)と、前記非センサ部に設けられていて前記高結晶性部よりも結晶性が低い低結晶性部(372)とを有する、
請求項1に記載のMEMSマイクロフォン。
【請求項5】
前記低結晶性部は、前記センサ部および前記第二層よりも結晶性を低くすることで、引張残留応力が生じるように形成された、
請求項4に記載のMEMSマイクロフォン。
【請求項6】
前記第二層における前記ScAlN膜は、前記高結晶性部と前記低結晶性部とを有する、
請求項4に記載のMEMSマイクロフォン。
【請求項7】
前記低結晶性部は、前記センサ部よりも結晶性を低下させることで、引張残留応力が生じるように形成された、
請求項6に記載のMEMSマイクロフォン。
【請求項8】
前記振動板の前記厚さ方向における前記第一層よりも前記第二層側の表面(380)上に形成された、圧縮残留応力を有する応力調整膜(381)をさらに備えた、
請求項7に記載のMEMSマイクロフォン。
【請求項9】
前記圧電体含有層は、下地膜(36)と、前記下地膜の上に形成された前記ScAlN膜とを有し、
前記センサ部と前記非センサ部とは、前記下地膜の形成状態が異なる、
請求項1に記載のMEMSマイクロフォン。
【請求項10】
前記下地膜は、前記センサ部に設けられた高結晶性形成部(361)と、前記非センサ部に設けられた低結晶性形成部(362)とを有し、
前記高結晶性形成部と前記低結晶性形成部とは、膜厚が異なる、
請求項9に記載のMEMSマイクロフォン。
【請求項11】
前記下地膜は、前記センサ部に設けられた高結晶性形成部(361)と、前記非センサ部に設けられた低結晶性形成部(362)とを有し、
前記高結晶性形成部と前記低結晶性形成部とは、表面粗さが異なる、
請求項9に記載のMEMSマイクロフォン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電型のMEMSマイクロフォンに関するものである。MEMSは、Micro Electro Mechanical Systemsの略である。
【背景技術】
【0002】
いわゆる圧電型のMEMS素子として、例えば、特許文献1に記載された圧電素子が知られている。かかる圧電素子においては、シリコン基板からなる支持基板上に、絶縁膜を介して、多層構造の圧電膜が支持固定されており、圧電膜は、電極により挟み込まれた構造となっている。支持基板にはキャビティが形成されており、スリットにより区画された圧電膜および電極は、一端が支持基板に固定され、他端が自由端となる振動板を構成している。
【0003】
ところで、このような片持ち梁構造の圧電膜は、スリットを形成することで残留応力が解放されて反りが生じ、スリットの開口幅が広がってしまう。スリットの開口幅が設計値以上となった圧電素子をマイクロフォンとして使用すると、低周波領域の感度低下等の特性劣化を招いてしまう。そこで、特許文献1に記載された圧電素子においては、振動板の自由端側の表面の一部は応力緩和領域となっている。この応力緩和領域は、イオンを注入して圧電膜の結晶性を乱した領域であって、振動板の応力を緩和する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の通り、特許文献1に記載された、反りの緩和あるいは補正は、イオン注入により、振動板の表面側に、圧縮応力を緩和した応力緩和領域を設けるというものである。このため、応力緩和領域は、引張応力とはならず、圧縮応力となる。よって、特許文献1に記載された技術においては、反りの緩和あるいは補正に限界がある。また、圧電材料としてScAlN(すなわち窒化スカンジウムアルミニウム)を用いた構成において、スカンジウムを高濃度にすると、圧電性が大きくなる一方、応力が低下することが知られている。このため、高濃度スカンジウムのScAlNを用いた片持ち梁構造において、外力等により強制的に反りを補正しようとすると、座屈してしまう懸念がある。本発明は、上記に例示した事情等に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、例えば、優れた圧電特性を保持しつつ、片持ち梁構造における反りが良好に抑制された、圧電型のMEMSマイクロフォンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のMEMSマイクロフォン(1)は、
ScAlN膜(37)を含む圧電体含有層(35)を有し、指向軸(DA)に沿った厚さ方向を有する板状に形成され、前記指向軸と直交する延設方向における一端側の固定端部(32a)から他端側の自由端部(32b)に向かって片持ち梁状に延設された、振動板(3)と、
前記振動板における前記固定端部を固定的に支持するように設けられた、台座基板(2)と、
を備え、
前記振動板は、センサ電極(344、347)が設けられたセンサ部(RA)と前記センサ電極が設けられていない非センサ部(RB)とが前記延設方向に配列された構成を有し、
前記非センサ部は、前記センサ部よりも、前記ScAlN膜における結晶性が低い。
【0007】
なお、出願書類中の各欄において、各要素に括弧付きの参照符号が付されている場合がある。この場合、参照符号は、同要素と後述する実施形態に記載の具体的構成との対応関係の単なる一例を示すものにすぎない。よって、本発明は、参照符号の記載によって、何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るMEMSマイクロフォンの概略的な構成を示す側断面図である。
【
図2】本発明の第二実施形態に係るMEMSマイクロフォンの概略的な構成を示す側断面図である。
【
図3】本発明の第三実施形態に係るMEMSマイクロフォンの概略的な構成を示す側断面図である。
【
図4】本発明の第四実施形態に係るMEMSマイクロフォンの概略的な構成を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、一つの実施形態に対して適用可能な各種の変形例については、当該実施形態に関する一連の説明の途中に挿入されると、当該実施形態の理解が妨げられるおそれがある。このため、変形例については、当該実施形態に関する一連の説明の途中には挿入せず、その後に「変形例」の欄を設けて、まとめて説明する。また、各図面の記載や、これに対応して以下に説明する装置構成やその機能あるいは動作の記載は、本発明の内容を簡潔に説明するために模式化あるいは簡略化されたものであって、本発明の内容を何ら限定するものではない。このため、各図や明細書に示された例示的な構成と、実際に製造販売される具体的な構成とは、必ずしも一致するとは限らないということは、云うまでもない。すなわち、出願人が本願の出願経過により明示的に限定しない限りにおいて、本発明は、各図面の記載や、これに対応して以下に説明する装置構成やその機能あるいは動作の記載によって限定的に解釈されてはならないことは、云うまでもない。
【0010】
(第一実施形態:構成)
図1を参照しつつ、第一実施形態に係るMEMSマイクロフォン1の概略構成について説明する。電気音響変換器としてのMEMSマイクロフォン1は、外部空間Sから伝播してきた音波振動あるいは超音波振動を電気信号に変換するように構成されている。なお、説明の便宜上、図示の如く、Z軸が指向軸DAと平行となるように、右手系XYZ直交座標系を設定する。指向軸DAは、音波または超音波を受信するMEMSマイクロフォン1における指向性の基準となる仮想直線であり、「指向中心軸」とも称され得る。指向軸DAは、典型的には、指向性の範囲(例えば所定利得が得られる範囲)を、略円錐形状や略紡錘形状等の立体形状で表した場合の、当該立体形状の軸中心を示す仮想直線に相当するものである。具体的には、例えば、指向軸DAは、音圧半減角の中心軸である。
【0011】
以下、指向軸DAに沿った方向、すなわち、指向軸DAと平行な方向を、「軸方向」と称する。よって、軸方向は、図中Z軸と平行な方向である。また、軸方向と交差する方向、典型的には、軸方向と直交する任意の方向を、「面内方向」と称する。「面内方向」は、図中XY平面と平行な方向である。「面内方向」は、場合によっては、「径方向」とも称され得る。「径方向」は、指向軸DAと直交しつつ当該指向軸DAから離隔する方向である。すなわち、「径方向」は、指向軸DAと直交する仮想平面と指向軸DAとの交点を起点として当該仮想平面内に半直線を描いた場合に、当該半直線が延びる方向である。換言すれば、「径方向」は、上記の仮想平面と指向軸DAとの交点を中心として当該仮想平面内に円を描いた場合の、当該円の半径方向である。また、「面内方向」は、場合によっては、「周方向」とも称され得る。「周方向」は、上記の仮想平面と指向軸DAとの交点を中心として当該仮想平面内に円を描いた場合の、当該円の円周方向である。さらに、Z軸負方向と同一方向の視線で
図1における上方からMEMSマイクロフォン1やその構成要素を見ることを、「平面視」と称する。「平面視」における、或る構成要素の形状(すなわち平面形状)は、同構成要素を図中XY平面に写像した場合の形状に相当するものである。
【0012】
本実施形態においては、MEMSマイクロフォン1は、いわゆる圧電型の構成を有している。具体的には、
図1に示されているように、MEMSマイクロフォン1は、台座基板2と、振動板3と、酸化膜4とを備えている。以下、MEMSマイクロフォン1を構成する各部の具体的構成について、順に説明する。
【0013】
(台座基板)
台座基板2は、アルミナ等のセラミックス基板やシリコン系の半導体基板等により、指向軸DAを囲む筒状あるいは環状に形成されている。本実施形態においては、台座基板2は、指向軸DAを中心軸とする四角筒状あるいは四角環状の形状を有している。また、台座基板2は、平面視における外形形状が正方形状に形成されている。
【0014】
台座基板2は、指向軸DAと平行で径方向外側に向けて露出する外壁面21と、指向軸DAと平行で当該指向軸DAを囲む内壁面22とを有している。内壁面22によって囲まれた空間である空洞部23は、平面視における形状が正方形状となる四角柱状に形成されている。また、台座基板2は、軸方向における一方側すなわち図中Z軸正方向側の端面である上端面24と、軸方向における他方側すなわち図中Z軸負方向側の端面である下端面25とを有している。上端面24および下端面25は、軸方向を法線方向とする平坦な平面状に形成されている。上端面24は、絶縁性の酸化膜4を介して振動板3と接合されている。ここで、「絶縁性」とは、電気抵抗率(すなわち体積抵抗率)が104Ω・m以上であることを意味するものとする。以下、軸方向における一方すなわち図中Z軸正方向を単に「上」あるいは「上方」と称し、軸方向における他方すなわち図中Z軸負方向を単に「下」あるいは「下方」と称することがある。この場合、「上方」は、MEMSマイクロフォン1から外部空間Sに向かう方向である。
【0015】
(振動板)
振動板3は、指向軸DAに沿った方向すなわち軸方向に厚さ方向を有する薄板状に形成されている。振動板3は、固定部31と振動部32とを有している。固定部31は、酸化膜4を介して台座基板2における上端面24に接合されることで、台座基板2に固定されている。振動部32は、面内方向について空洞部23に対応する位置、すなわち、軸方向に空洞部23と対向するように設けられている。振動部32は、振動の腹が指向軸DAに沿って移動する態様で撓み振動するように構成されている。すなわち、振動部32は、固定端部32aと自由端部32bとを有している。
【0016】
固定端部32aは、振動部32における振動の節を構成する部分であって、平面視にて台座基板2における内壁面22に対応する位置に設けられている。振動部32における振動の腹を構成する自由端部32bは、指向軸DAに近接する位置に設けられている。このように、振動板3は、指向軸DAと直交する延設方向における一端側の固定端部32aが、台座基板2によって固定的に支持されている。「延設方向」は、
図1に示された振動板3においては、図中X軸正方向である。また、振動板3は、固定端部32aから延設方向における他端側の自由端部32bに向かって片持ち梁状に延設されている。そして、振動板3における撓み振動領域である振動部32は、固定端部32aが台座基板2により固定的に支持されつつ自由端部32bが指向軸DAに沿って上下に移動する態様で振動可能に設けられている。
【0017】
本実施形態においては、台座基板2の平面視における正方形状の外形形状に対応して、振動板3は、平面視にて、固定端部32aを底辺とし自由端部32bを頂点とする略直角二等辺三角形状を有している。すなわち、振動部32は、固定端部32aから自由端部32bに向かうにつれて、幅が狭くなるように形成されている。振動部32の「幅」とは、厚さ方向および延設方向と直交する幅方向における寸法である。そして、本実施形態に係るMEMSマイクロフォン1は、
図1に示されている、指向軸DAに向かってX軸正方向に延設された振動板3に加えて、指向軸DAに向かってX軸負方向に延設された振動板3と、指向軸DAに向かってY軸正方向に延設された振動板3と、指向軸DAに向かってY軸負方向に延設された振動板3とが設けられている。これら複数の振動板3の各々は、軸方向に外部空間Sと空洞部23とを連通するスリット33によって、面内方向について区分されている。したがって、スリット33は、平面視にて、正方形の対角線に相当する略X字状に形成されている。
【0018】
振動板3は、複数の電極層34と、圧電体含有層35とを有している。電極層34は、モリブデン膜、アモルファスモリブデン膜、多結晶シリコン膜、等の導電性材料によって形成されている。ここで、「導電性」とは、電気抵抗率(すなわち体積抵抗率)が10-2Ω・m以下であることを意味するものとする。「アモルファス」とは、結晶構造を持たない物質の状態のことであり、非晶質とも称される。アモルファスであるか否かは、電子線回折測定により確認可能である。複数の電極層34は、厚さ方向に配列されている。圧電体含有層35は、厚さ方向に並ぶ一対の電極層34の間に挟まれるように設けられている。圧電体含有層35は、下地膜36とScAlN膜37とによって形成されている。すなわち、圧電体含有層35は、下地膜36とScAlN膜37とを含む多層構造体としての構成を有している。圧電体含有層35は、電極層34の上に下地膜36を成膜し、この下地膜36の上に圧電層としてのScAlN膜37を成膜することによって形成されている。下地膜36は、例えば、SiNやSiO2等のアモルファス絶縁性材料によって形成されている。
【0019】
(電極層)
本実施形態においては、複数の電極層34として、下側すなわち台座基板2側から順に、下部電極層341、中間電極層342、および上部電極層343の計三層が設けられている。下部電極層341は、酸化膜4の上に形成されている。中間電極層342は、下部電極層341と上部電極層343との間に設けられている。上部電極層343は、外部空間Sに面するように、振動板3における最表層に設けられている。
【0020】
下部電極層341は、下部センサ電極344と下部ダミー電極345とを有している。下部センサ電極344は、片持ち梁構造における根元側、すなわち、下部ダミー電極345よりも固定部31側あるいは固定端部32a側に設けられている。具体的には、下部センサ電極344は、固定部31から自由端部32b側に所定量突出した位置までの範囲で形成されている。下部センサ電極344と下部ダミー電極345との間には、下側隙間部346が設けられている。下側隙間部346は、下部センサ電極344と下部ダミー電極345との導通を遮断するように、下部電極層341の一部をエッチング等によって除去することによって形成されている。下部ダミー電極345は、下側隙間部346の径方向における内縁から自由端部32bに至る範囲あるいは領域に設けられている。
【0021】
上部電極層343は、上部センサ電極347と上部ダミー電極348とを有している。上部センサ電極347は、片持ち梁構造における根元側、すなわち、上部ダミー電極348よりも固定部31側あるいは固定端部32a側に設けられている。具体的には、上部センサ電極347は、固定部31から自由端部32b側に所定量突出した位置までの範囲で形成されている。上部センサ電極347と上部ダミー電極348との間には、上側隙間部349が設けられている。上側隙間部349は、上部センサ電極347と上部ダミー電極348との導通を遮断するように、上部電極層343の一部をエッチング等によって除去することによって形成されている。上部ダミー電極348は、上側隙間部349の径方向における内縁から自由端部32bに至る範囲あるいは領域に設けられている。すなわち、上部センサ電極347は、面内方向における位置および形状が下部センサ電極344と重なるように形成されている。同様に、上部ダミー電極348は、面内方向における位置および形状が下部ダミー電極345と重なるように形成されている。
【0022】
面内方向あるいは延設方向において、センサ電極すなわち下部センサ電極344および上部センサ電極347が設けられた領域を、以下「センサ部RA」と称する。すなわち、センサ部RAは、MEMSマイクロフォン1の出力信号を生成するために、外部空間Sから伝播してきた音波振動あるいは超音波振動を電気信号すなわち電極間電圧に変換する、センサ素子として有効に機能する領域である。これに対し、センサ電極が設けられていない領域を、以下「非センサ部RB」と称する。
【0023】
具体的には、非センサ部RBは、面内方向あるいは延設方向において、下部ダミー電極345、下側隙間部346、上部ダミー電極348、および上側隙間部349が設けられた領域である。すなわち、非センサ部RBは、MEMSマイクロフォン1の出力信号の生成に寄与しない領域、換言すれば、センサ素子として有効には機能しない領域である。そして、振動板3は、センサ部RAと非センサ部RBとが、振動板3の延設方向に配列された構成を有している。より詳細には、センサ部RAは、振動板3の延設方向における根元側すなわち固定端部32a側に設けられている。これに対し、非センサ部RBは、振動板3の延設方向における先端側すなわち自由端部32b側に設けられている。なお、センサ部RAと非センサ部RBとの境界は、
図1に示されているように、下側隙間部346および上側隙間部349を通るように設定され得る。あるいは、センサ部RAと非センサ部RBとの境界は、下部センサ電極344と下側隙間部346との境界、および、上部センサ電極347と上側隙間部349との境界を通るように設定され得る。
【0024】
(圧電体含有層)
本実施形態においては、振動板3は、複数の圧電体含有層35を軸方向に積層した多層構造を有している。具体的には、振動板3は、二層の圧電体含有層35すなわち第一層351および第二層352を備えている。第一層351は、第二層352よりも下側すなわち台座基板2寄りに配置されている。すなわち、第一層351は、下部電極層341と中間電極層342との間に設けられている。一方、第二層352は、中間電極層342と上部電極層343との間に設けられている。
【0025】
第一層351においては、センサ部RAと非センサ部RBとは、異なる下地膜36の形成状態を有している。すなわち、第一層351における下地膜36は、高結晶性形成部361と低結晶性形成部362とを有している。高結晶性形成部361は、センサ部RAに設けられている。低結晶性形成部362は、非センサ部RBに設けられている。本実施形態においては、高結晶性形成部361と低結晶性形成部362とは、同一の材料および厚さで形成されている。但し、高結晶性形成部361と低結晶性形成部362とは、ScAlN膜37に対向する表面における表面粗さが異なるように形成されている。具体的には、低結晶性形成部362は、高結晶性形成部361よりも表面粗さが大きく(すなわち粗く)なるように形成されている。一方、第二層352においては、センサ部RAと非センサ部RBとで、下地膜36の形成状態が同一である。すなわち、第二層352における下地膜36は、高結晶性形成部361と同様に、ScAlN膜37に対向する表面が平滑になるように形成されている。また、第二層352における下地膜36は、センサ部RAと非センサ部RBとにわたって、同一の材料および厚さで継ぎ目なく一体に形成されている。
【0026】
非センサ部RBは、センサ部RAよりも、ScAlN膜37における結晶性が低くなるように構成されている。具体的には、本実施形態においては、第一層351におけるScAlN膜37は、センサ部RAに設けられた高結晶性部371と、非センサ部RBに設けられていて高結晶性部371よりも結晶性が低い低結晶性部372とを有している。すなわち、第一層351における非センサ部RBに設けられた低結晶性部372は、センサ部RAに設けられた高結晶性部371および第二層352に設けられたScAlN膜37よりも結晶性を低くすることで、引張残留応力が生じるように形成されている。これにより、非センサ部RBとセンサ部RAとは、反り方向が逆となるように構成されている。
【0027】
なお、
図1において、振動板3の厚さ方向における略中心を通る中立軸LAは、中間電極層342と第二層352との境界部に図示されているが、これは、図示の都合上の便宜的なものであって、実際の中立軸LAの厚さ方向における位置は、
図1に示された位置には限定されず、各層の形成状態によって変動し得る。ここで、中立軸LAは、振動板3の内部における残留応力がないものとして、振動板3を自由端部32bが図中上下方向に移動する態様で撓み変形させた場合に、引張応力および圧縮応力のいずれの応力も受けない境界面を図中XZ平面に写像した線に相当するものとする。
【0028】
(効果)
以下、本実施形態の構成による動作概要を、同構成により奏される効果とともに、各図面を参照しつつ説明する。
【0029】
本実施形態に係るMEMSマイクロフォン1は、振動部32における自由端部32bが指向軸DAに沿って移動する態様での撓み変形による歪みと、圧電体含有層35の両面に設けられた一対の電極層34の間の電圧との変換機能を有する。すなわち、例えば、音波あるいは超音波の受信による振動部32の撓み振動が、下部センサ電極344と中間電極層342との間の電極間電圧、および、上部センサ電極347と中間電極層342との間の電極間電圧として取り出される。かかる電極間電圧を、不図示の増幅回路等の信号処理回路により信号処理することで、MEMSマイクロフォン1の出力信号が生成される。
【0030】
図1に示されているような、片持ち梁構造の圧電型の振動板3を用いることで、MEMSマイクロフォン1における感度向上を図ることが可能となる。しかしながら、振動板3において、応力により中立軸LAに対する上下(すなわち厚さ方向)のモーメント差が生じると、振動板3に反りが生じる。振動板3に反りが生じて、スリット33の開口幅が広がって設計値以上となってしまうと、低周波音の抜けにより低周波数領域における感度が低下する等の特性劣化を招いてしまう。
【0031】
ここで、特許文献1に記載された構成においては、圧電膜の表面側からイオンを注入して結晶性を乱した応力緩和領域を設けて、圧電膜の表面側にて圧縮応力を緩和することで、反りを緩和あるいは補正しようとしている。しかしながら、かかる応力緩和領域は、引張応力とはならず、圧縮応力となる。このため。特許文献1に記載された技術においては、反りの緩和あるいは補正に限界がある。また、高濃度スカンジウムのScAlNを用いた片持ち梁構造において、外力等により強制的に反りを補正しようとすると、座屈してしまう懸念がある。
【0032】
この点、発明者は、鋭意研究の結果、ScAlN膜37の成膜条件が同一であっても、下地膜36の状態を変化させて結晶性の低い領域である低結晶性部372を形成すると、かかる低結晶性部372にて引張応力を生じさせて反り方向を逆にすることができ、これにより振動板3の全体における反りを抑制あるいは低減できることを見出した。すなわち、片持ち梁状の振動板3における根元側のセンサ部RAについては、結晶性が良好となるようにScAlN膜37を成膜して良好な圧電性を確保するために、下地膜36を、平滑な表面を有するアモルファス膜として形成する。これにより、成膜初期は圧縮応力となるため、中立軸LAを挟んだモーメント非対称が発生し、センサ部RAにおいては図中上方向への反りが発生する。一方、先端側の非センサ部RBについては、第一層351と第二層352とのうちの下層である第一層351にて、結晶性が悪くなるようにScAlN膜37を成膜して、引張応力の低結晶性部372を形成する。これにより、上記の上方向の反りとは反対の下方向の反りを発生させて、振動板3の全体の反り量を低減することができる。
【0033】
本実施形態においては、引張応力の低結晶性部372を、第一層351と第二層352とのうちの下層である第一層351におけるScAlN膜37に形成することで、座屈を生じさせることなく、振動板3の全体の反り量を低減することが可能となる。また、反り量の調整を、片持ち梁構造における先端側で行うことで、反りの補正量を大きく取ることが可能となる。一方、ScAlN膜37に低結晶性部372を形成しても、MEMSマイクロフォン1の出力信号の生成に寄与しない非センサ部RBに設けるため、マイク性能には問題が生じない。かかる低結晶性部372を形成するために、下地膜36に、低結晶性形成部362を設ける。低結晶性形成部362は、下地膜36の成膜後の平滑化処理を省略あるいは短縮して、表面粗さを大きくすることにより、容易に形成することが可能である。したがって、本実施形態によれば、優れた圧電特性を保持しつつ、片持ち梁構造における反りが良好に抑制された、圧電型のMEMSマイクロフォン1を提供することが可能となる。
【0034】
(第二実施形態)
以下、第二実施形態について、
図2を参照しつつ説明する。なお、以下の第二実施形態の説明においては、主として、上記第一実施形態と異なる部分について説明する。また、第一実施形態と第二実施形態とにおいて、互いに同一または均等である部分には、同一符号が付されている。したがって、以下の第二実施形態の説明において、第一実施形態と同一の符号を有する構成要素に関しては、技術的矛盾または特段の追加説明なき限り、上記第一実施形態における説明が適宜援用され得る。後述する第三実施形態等についても同様である。
【0035】
図2に示されているように、本実施形態においては、高結晶性形成部361と低結晶性形成部362とは、膜厚が異なる。すなわち、低結晶性形成部362は、高結晶性形成部361よりも薄い膜厚で形成されている。膜厚を変化させることで、その上に形成されるScAlN膜37の結晶性が変化し、応力を変化させることができる。したがって、かかる構成によれば、上記第一実施形態と同様の効果が奏され得る。なお、例えば、第一層351における下地膜36を、センサ部RAと非センサ部RBとにわたって均一厚さで形成し、高結晶性形成部361として必要な平滑化処理を施した後、部分エッチング等により低結晶性形成部362を形成することが可能である。この場合、低結晶性形成部362は、高結晶性形成部361よりも薄くなるとともに、高結晶性形成部361よりも表面粗さが大きくなる。すなわち、この場合、上記第一実施形態と本第二実施形態とが重畳的に適用されることとなり得る。
【0036】
(第三実施形態)
以下、第三実施形態について、
図3を参照しつつ説明する。本実施形態においては、低結晶性部372は、下部電極層341すなわち下部ダミー電極345上に成膜されている。換言すれば、非センサ部RBにおいて、下地膜36は、低結晶性部372に対応する位置あるいは領域にて、除去されている。
【0037】
ここで、ScAlN膜37の下に形成される、電極層34と下地膜36とを、まとめて「下地層」と捉えると、かかる下地層における膜種すなわち材料を変更することで、その上に形成されるScAlN膜37の結晶性が変化し、応力を変化させることができる。具体的には、下地層がアモルファス膜であったりScAlN膜37との格子定数差が小さいものであったりした方が、格子定数の不一致を原因とする異常粒の発生を良好に回避することができ、ScAlN膜37の結晶性が良好となる。そこで、非センサ部RBにおいて、アモルファス膜である下地膜36を除去することで、結晶性が低く引張応力の低結晶性部372を形成することができる。したがって、かかる構成によれば、上記第一実施形態等と同様の効果が奏され得る。
【0038】
(第四実施形態)
以下、第四実施形態について、
図4を参照しつつ説明する。上記各実施形態においては、低結晶性部372は、第二層352には設けられず、第一層351に設けられていた。これに対し、本実施形態においては、低結晶性部372は、第一層351と第二層352との双方に設けられている。すなわち、上層である第二層352におけるScAlN膜37は、高結晶性部371と低結晶性部372とを有している。これに対応して、第二層352における下地膜36は、高結晶性形成部361と低結晶性形成部362とを有している。換言すれば、第一層351および第二層352における非センサ部RBには、低結晶性形成部362および低結晶性部372が設けられている。
【0039】
また、本実施形態においては、非センサ部RBにおける外側表面380上には、応力調整膜381が形成されている。外側表面380は、振動板3の厚さ方向における第一層351よりも第二層352側の表面、具体的には外部空間S側の最表面である。応力調整膜381は、圧縮応力膜であって、SiO2やSiN等の絶縁性膜、あるいは、TiやTiW等の金属膜等により形成され得る。あるいは、応力調整膜381は、熱処理や不純物注入等で応力を制御したものであってもよい。
【0040】
本実施形態に係る構成によれば、上記第一実施形態等と同様の効果が奏され得る。また、非センサ部RBを大きく引張応力化することができ、設計自由度が向上する。
【0041】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。故に、上記実施形態に対しては、適宜変更が可能である。以下、代表的な変形例について説明する。以下の変形例の説明においては、上記実施形態との相違点を主として説明する。また、上記実施形態と変形例とにおいて、互いに同一または均等である部分には、同一符号が付されている。したがって、以下の変形例の説明において、上記実施形態と同一の符号を有する構成要素に関しては、技術的矛盾または特段の追加説明なき限り、上記実施形態における説明が適宜援用され得る。
【0042】
本発明は、上記実施形態に記載された具体的な装置構成に限定されない。具体的には、例えば、台座基板2は、指向軸DAを囲む円筒状、楕円筒状、三角筒状、五角筒状、六角筒状、八角筒状、等の形状を有していてもよい。あるいは、台座基板2は、指向軸DAを囲む円環状、楕円環状、三角環状、五角環状、六角環状、八角環状、等の形状を有していてもよい。
【0043】
上記実施形態においては、振動板3は、台座基板2における上端面24に固定されているが、本発明は、かかる態様に限定されない。例えば、固定端部32aを構成する、振動板3の面内方向あるいは径方向における外端縁が、台座基板2における内壁面22に設けられた溝や接着層等により固定された構成も、原理的に不可能ではない。すなわち、振動板3における、撓み振動しない固定部31は、省略され得る。この場合、振動板3の全体が、撓み振動する振動部32を構成する。
【0044】
振動板3の個数や平面形状についても、特段の限定はない。すなわち、例えば、MEMSマイクロフォン1は、互いに向き合う一対の長方形状の振動板3を備えていてもよい。この場合、指向軸DAに向かってX軸正方向に延設された略長方形状の振動板3と、指向軸DAに向かってX軸負方向に延設された略長方形状の振動板3との、合計2つの振動板3が設けられる。そして、スリット33は、略H字状に形成される。あるいは、例えば、MEMSマイクロフォン1は、略正方形状の振動板3を1つのみ備えていてもよい。この場合、スリット33は、略コ字状あるいは略転倒U字状に形成される。
【0045】
電極層34や圧電体含有層35の層数についても、特段の限定はない。すなわち、例えば、圧電体含有層35は、3層以上設けられていてもよい。この場合、中間電極層342も、複数層設けられる。また、中間電極層342も、センサ電極とダミー電極とに二分され得る。
【0046】
ScAlN膜37の下の電極層34と下地膜36とは、一体化され得る。すなわち、下地膜36は、電極層34を含むものと解釈することが可能である。例えば、ScAlN膜37の下地層として、アモルファスモリブデン膜等のアモルファス導電膜を用いることで、かかるアモルファス導電膜の一層で電極層34と下地膜36との機能を奏させることが可能である。かかる態様は、上記の各実施形態に適用可能である。ScAlN膜37の下地層として利用可能なアモルファス導電膜としては、アモルファスモリブデン膜の他に、例えば、Ru酸化物、ITO(すなわちインジウムスズ酸化物)、等が挙げられる。
【0047】
酸化膜4は、省略され得る。あるいは、酸化膜4に代えて、台座基板2と振動板3との接合状態を良好にするための膜が設けられ得る。また、各部を構成する材料についても、特段の限定はない。さらに、「膜」と「層」とは、置換可能である。
【0048】
上記の説明において、互いに継ぎ目無く一体に形成されていた複数の構成要素は、互いに別体の部材を貼り合わせることによって形成されてもよい。同様に、互いに別体の部材を貼り合わせることによって形成されていた複数の構成要素は、互いに継ぎ目無く一体に形成されてもよい。また、上記の説明において、互いに同一の材料によって形成されていた複数の構成要素は、互いに異なる材料によって形成されてもよい。同様に、互いに異なる材料によって形成されていた複数の構成要素は、互いに同一の材料によって形成されてもよい。
【0049】
上記実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に本発明が限定されることはない。同様に、構成要素等の形状、方向、位置関係等が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に特定の形状、方向、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、方向、位置関係等に本発明が限定されることはない。
【0050】
変形例も、上記の例示に限定されない。すなわち、例えば、複数の実施形態が複合的に適用され得る。換言すれば、一の実施形態の一部と、他の一の実施形態の一部とが、組み合わされ得る。複数の実施形態の組み合わせの際の個数や態様についても特段の限定はない。また、複数の実施形態のうちの任意の1つと、複数の変形例のうちの任意の1つとが、技術的に矛盾しない限り、互いに組み合わされ得る。同様に、複数の変形例のうちの1つと他の1つとが、技術的に矛盾しない限り、互いに組み合わされ得る。
【0051】
(開示内容)
上記の通りの実施形態および変形例についての説明から明らかなように、本明細書には、少なくとも以下の開示事項が開示されている。
[観点1]
MEMSマイクロフォン(1)であって、
ScAlN膜(37)を含む圧電体含有層(35)を有し、指向軸(DA)に沿った厚さ方向を有する板状に形成され、前記指向軸と直交する延設方向における一端側の固定端部(32a)から他端側の自由端部(32b)に向かって片持ち梁状に延設された、振動板(3)と、
前記振動板における前記固定端部を固定的に支持するように設けられた、台座基板(2)と、
を備え、
前記振動板は、センサ電極(344、347)が設けられたセンサ部(RA)と前記センサ電極が設けられていない非センサ部(RB)とが前記延設方向に配列された構成を有し、
前記非センサ部は、前記センサ部よりも、前記ScAlN膜における結晶性が低い、
MEMSマイクロフォン。
[観点2]
前記非センサ部と前記センサ部とは、反り方向が逆である、
観点1に記載のMEMSマイクロフォン。
[観点3]
前記センサ部は、前記延設方向における前記固定端部側に設けられ、
前記非センサ部は、前記延設方向における前記自由端部側に設けられた、
観点1または2に記載のMEMSマイクロフォン。
[観点4]
前記振動板は、前記圧電体含有層としての第一層(351)および第二層(352)を前記厚さ方向に積層した構成を有し、
前記第一層は、前記第二層よりも前記台座基板寄りに配置され、
前記第一層における前記ScAlN膜は、前記センサ部に設けられた高結晶性部(371)と、前記非センサ部に設けられていて前記高結晶性部よりも結晶性が低い低結晶性部(372)とを有する、
観点1~3のいずれか1つに記載のMEMSマイクロフォン。
[観点5]
前記低結晶性部は、前記センサ部および前記第二層よりも結晶性を低くすることで、引張残留応力が生じるように形成された、
観点4に記載のMEMSマイクロフォン。
[観点6]
前記第二層における前記ScAlN膜は、前記高結晶性部と前記低結晶性部とを有する、
観点4に記載のMEMSマイクロフォン。
[観点7]
前記低結晶性部は、前記センサ部よりも結晶性を低下させることで、引張残留応力が生じるように形成された、
観点6に記載のMEMSマイクロフォン。
[観点8]
前記振動板の前記厚さ方向における前記第一層よりも前記第二層側の表面(380)上に形成された、圧縮残留応力を有する応力調整膜(381)をさらに備えた、
観点7に記載のMEMSマイクロフォン。
[観点9]
前記圧電体含有層は、下地膜(36)と、前記下地膜の上に形成された前記ScAlN膜とを有し、
前記センサ部と前記非センサ部とは、前記下地膜の形成状態が異なる、
観点1~8のいずれか1つに記載のMEMSマイクロフォン。
[観点10]
前記下地膜は、前記センサ部に設けられた高結晶性形成部(361)と、前記非センサ部に設けられた低結晶性形成部(362)とを有し、
前記高結晶性形成部と前記低結晶性形成部とは、膜厚が異なる、
観点9に記載のMEMSマイクロフォン。
[観点11]
前記下地膜は、前記センサ部に設けられた高結晶性形成部(361)と、前記非センサ部に設けられた低結晶性形成部(362)とを有し、
前記高結晶性形成部と前記低結晶性形成部とは、表面粗さが異なる、
観点9または10に記載のMEMSマイクロフォン。
【符号の説明】
【0052】
1 MEMSマイクロフォン
3 振動板
32a 固定端部
32b 自由端部
344 下部センサ電極
347 上部センサ電極
35 圧電体含有層
37 ScAlN膜
RA センサ部
RB 非センサ部