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特開2024-82099潤滑油組成物及び潤滑油組成物を用いる循環システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082099
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】潤滑油組成物及び潤滑油組成物を用いる循環システム
(51)【国際特許分類】
   C10M 171/00 20060101AFI20240612BHJP
   F15B 21/0423 20190101ALI20240612BHJP
   C10N 20/00 20060101ALN20240612BHJP
   C10N 30/08 20060101ALN20240612BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20240612BHJP
   C10N 40/00 20060101ALN20240612BHJP
【FI】
C10M171/00
F15B21/0423
C10N20:00 Z
C10N20:00 A
C10N30:08
C10N30:00 Z
C10N40:00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195818
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100114409
【弁理士】
【氏名又は名称】古橋 伸茂
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100194423
【弁理士】
【氏名又は名称】植竹 友紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100158481
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100217663
【弁理士】
【氏名又は名称】末広 尚也
(74)【代理人】
【識別番号】100147762
【弁理士】
【氏名又は名称】藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】武川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中原 靖人
(72)【発明者】
【氏名】松原 和茂
(72)【発明者】
【氏名】巽 浩之
(72)【発明者】
【氏名】成田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】奈良 篤
【テーマコード(参考)】
3H082
4H104
【Fターム(参考)】
3H082AA06
3H082BB30
3H082CC02
3H082DA03
3H082DA17
3H082DB08
3H082DE05
3H082EE20
4H104BA02A
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BB08A
4H104BB33A
4H104BB41A
4H104BH03A
4H104CB14A
4H104DA02A
4H104EA01Z
4H104EA04Z
4H104EB07
4H104EB08
4H104EB11
4H104EB13
4H104LA04
4H104PA50
(57)【要約】
【課題】二次電池、電気モータ、及び減速機の温度を制御可能な潤滑油組成物及びこの潤滑油組成物を用いる循環システムを得る。
【解決手段】少なくとも二次電池、電気モータ、及び減速機に接続された循環回路に循環され、少なくとも前記二次電池、前記電気モータ、及び前記減速機の温度を制御するために用いられる潤滑油組成物であって、JIS K2242:2012に規定される「冷却性能試験方法:A法」に準拠して、初期の表面温度Tが200℃の銀棒を、80℃の潤滑油組成物に入れてから12秒後の銀棒の表面温度T12(℃)を測定し、T-T12から算出される銀棒温度変化量ΔTが、70℃以上であり、JIS K2265-4:2007に準拠し、クリーブランド開放法(C.O.C法)により測定した引火点が100℃以上であり、JIS C2101:1999に準拠して測定した体積抵抗率が1.0×10Ω・cm以上である、潤滑油組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二次電池、電気モータ、及び減速機に接続された循環回路に循環され、少なくとも前記二次電池、前記電気モータ、及び前記減速機の温度を制御するために用いられる潤滑油組成物であって、
JIS K2242:2012に規定される「冷却性能試験方法:A法」に準拠して、初期の表面温度Tが200℃の銀棒を、80℃の潤滑油組成物に入れてから12秒後の銀棒の表面温度T12(℃)を測定し、T-T12から算出される銀棒温度変化量ΔTが、70℃以上であり、
JIS K2265-4:2007に準拠し、クリーブランド開放法(C.O.C法)により測定した引火点が100℃以上であり、
JIS C2101:1999に準拠して測定した体積抵抗率が1.0×10Ω・cm以上である、潤滑油組成物。
【請求項2】
30℃における動粘度が、5.0~40.0mm/sである、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記潤滑油組成物が、基油、並びに、耐摩耗剤、金属不活性化剤、金属清浄剤、分散剤、及び消泡剤から選ばれる1種以上の潤滑油用添加剤を含有する、請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
透過率が90%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
少なくとも二次電池、電気モータ、及び減速機に接続される循環回路を備え、前記循環回路は、請求項1~4のいずれか一項に記載の潤滑油組成物を循環可能であって、少なくとも前記二次電池、前記電気モータ、及び/又は前記減速機の温度を制御する、循環システム。
【請求項6】
前記循環回路は、前記二次電池に接続される第1の経路と、前記電気モータと前記減速機に接続される第2の経路とをさらに備える、請求項5に記載の循環システム。
【請求項7】
前記第1の経路と前記第2の経路は、共に同じラジエーターに接続される、請求項6に記載の循環システム。
【請求項8】
前記第1の経路と前記第2の経路とは、並列に接続される、請求項6又は7に記載の循環システム。
【請求項9】
前記循環回路の少なくとも一部は、前記二次電池と前記電気モータ及び前記減速機とを、直列に接続する、請求項6又は7に記載の循環システム。
【請求項10】
前記第1の経路及び/又は前記第2の経路はオイルポンプを備える、請求項6~9のいずれか一項に記載の循環システム。
【請求項11】
前記第1の経路と前記第2の経路は、共に同じオイルタンクに接続される、請求項6~10のいずれか一項に記載の循環システム。
【請求項12】
前記第1の経路と前記第2の経路は、共に同じオイルポンプに接続される、請求項6~11のいずれか一項に記載の循環システム。
【請求項13】
前記第1の経路と前記第2の経路との接続部に設けられる制御バルブをさらに備える、請求項6~12のいずれか一項に記載の循環システム。
【請求項14】
オイルクーラから前記第1の経路及び/又は前記第2の経路への前記潤滑油組成物の流れを制御する制御バルブをさらに備える、請求項6~13のいずれか一項に記載の循環システム。
【請求項15】
前記制御バルブは、前記二次電池の温度に応じて開閉する、請求項13又は14に記載の循環システム。
【請求項16】
前記制御バルブは、前記電気モータと前記減速機の温度に応じて開閉する、請求項13~15のいずれか一項に記載の循環システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物に接続された循環回路に循環する潤滑油組成物、及びこの潤滑油組成物を用いる循環システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トランスアクスル、電池、及びオイルクーラに共通のオイルを循環させる循環回路を備え、トランスアクスルを潤滑するためのオイルを電池の冷却に用いる電池冷却システムが知られている。トランスアクスルを収容するケースの内部に電動機が設けられ、オイルは電動機の冷却に用いられる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-62964号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動機は半導体を有するものがあり、電動機の動作時に半導体は発熱する。また、電池及びトランスアクスルには電気が流れている。そのため、これらに流れるオイルには、耐熱性能と絶縁性能が要求される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、潤滑油組成物及びこの潤滑油組成物を用いる循環システムを提供する。具体的な本発明の態様としては、下記[1]~[16]のとおりである。
[1]
少なくとも二次電池、電気モータ、及び減速機に接続された循環回路に循環され、少なくとも前記二次電池、前記電気モータ、及び前記減速機の温度を制御するために用いられる潤滑油組成物であって、
JIS K2242:2012に規定される「冷却性能試験方法:A法」に準拠して、初期の表面温度Tが200℃の銀棒を、80℃の潤滑油組成物に入れてから12秒後の銀棒の表面温度T12(℃)を測定し、T-T12から算出される銀棒温度変化量ΔTが、70℃以上であり、
JIS K2265-4:2007に準拠し、クリーブランド開放法(C.O.C法)により測定した引火点が100℃以上であり、
JIS C2101:1999に準拠して測定した体積抵抗率が1.0×10Ω・cm以上である、潤滑油組成物。
[2]
30℃における動粘度が、5.0~40.0mm/sである、上記[1]に記載の潤滑油組成物。
[3]
前記潤滑油組成物が、基油、並びに、耐摩耗剤、金属不活性化剤、金属清浄剤、分散剤、及び消泡剤から選ばれる1種以上の潤滑油用添加剤を含有する、上記[1]又は[2]に記載の潤滑油組成物。
[4]
透過率が90%以上である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
[5]
少なくとも二次電池、電気モータ、及び減速機に接続される循環回路を備え、前記循環回路は、上記[1~4]のいずれか一項に記載の潤滑油組成物を循環可能であって、少なくとも前記二次電池、前記電気モータ、及び/又は前記減速機の温度を制御する、循環システム。
[6]
前記循環回路は、前記二次電池に接続される第1の経路と、前記電気モータと前記減速機に接続される第2の経路とをさらに備える、上記[5]に記載の循環システム。
[7]
前記第1の経路と前記第2の経路は、共に同じラジエーターに接続される、上記[6]に記載の循環システム。
[8]
前記第1の経路と前記第2の経路とは、並列に接続される、上記[6]又は[7]に記載の循環システム。
[9]
前記循環回路の少なくとも一部は、前記二次電池と前記電気モータ及び前記減速機とを、直列に接続する、上記[6]又は[7]に記載の循環システム。
[10]
前記第1の経路及び/又は前記第2の経路はオイルポンプを備える、上記[6]~[9]のいずれか一項に記載の循環システム。
[11]
前記第1の経路と前記第2の経路は、共に同じオイルタンクに接続される、上記[6]~[10]のいずれか一項に記載の循環システム。
[12]
前記第1の経路と前記第2の経路は、共に同じオイルポンプに接続される、上記[6]~[11]のいずれか一項に記載の循環システム。
[13]
前記第1の経路と前記第2の経路との接続部に設けられる制御バルブをさらに備える、上記[6]~[12]のいずれか一項に記載の循環システム。
[14]
オイルクーラから前記第1の経路及び/又は前記第2の経路への前記潤滑油組成物の流れを制御する制御バルブをさらに備える、上記[6]~[13]のいずれか一項に記載の循環システム。
[15]
前記制御バルブは、前記二次電池の温度に応じて開閉する、上記[13]又は[14]に記載の循環システム。
[16]
前記制御バルブは、前記電気モータと前記減速機の温度に応じて開閉する、上記[13]~[15]のいずれか一項に記載の循環システム。
【発明の効果】
【0006】
本発明の好適な一態様である、潤滑油組成物及びこの潤滑油組成物を用いる循環システムによれば、二次電池、電気モータ、及び減速機の温度を制御可能な潤滑油組成物及びこの潤滑油組成物を用いる循環システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明による循環システムの一例を示す概略図である。
図2】本発明による循環システムの一例を示す概略図である。
図3】本発明による循環システムの一例を示す概略図である。
図4】本発明による循環システムの一例を示す概略図である。
図5】本発明による循環システムの一例を示す概略図である。
図6】本発明による循環システムの一例を示す概略図である。
図7】本発明による循環システムの一例を示す概略図である。
図8】本発明による循環システムの一例を示す概略図である。
図9】本発明による循環システムの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔潤滑油組成物の構成〕
初めに、本発明の一実施形態による潤滑油組成物について説明する。
本発明の潤滑油組成物は、少なくとも二次電池、電気モータ、及び減速機に接続された循環回路に循環され、少なくとも前記二次電池、前記電気モータ、及び前記減速機の温度を制御するために用いられる潤滑油組成物であって、下記要件(I)~(III)を満たす。
・要件(I):JIS K2242:2012に規定される「冷却性能試験方法:A法」に準拠して、初期の表面温度Tが200℃の銀棒を、80℃の潤滑油組成物に入れてから12秒後の銀棒の表面温度T12(℃)を測定し、T-T12から算出される銀棒温度変化量ΔTが、70℃以上である。
・要件(II):JIS K2265-4:2007に準拠し、クリーブランド開放法(C.O.C法)により測定した引火点が100℃以上である。
・要件(III):JIS C2101:1999に準拠して測定した体積抵抗率が1.0×10Ω・cm以上である。
【0009】
本発明の潤滑油組成物は、少なくとも二次電池、電気モータ、及び減速機に接続された循環回路に循環するものであるが、それぞれの装置に対する要求特性が異なる。
例えば、二次電池に対しては高い冷却性能を有し、二次電池の温度を一定に保てるような特性が求められる。一方で、電気モータ及び減速機は、許容温度は比較的高いため二次電池に比べて要求される冷却性能はそれほど高くは無いが、安全性や潤滑性能が求められている。また、二次電池、電気モータ、及び減速機に接続された循環回路に循環する潤滑性組成物には、高い絶縁性も求められる。
このように、二次電池、電子モータ、及び減速機を冷却及び/又は潤滑するための潤滑油組成物は要求される性能が異なるため、これまでは装置ごとに異なる潤滑油組成物を用いられてきたが、これらの装置を循環する潤滑油組成物においては、これらの装置に要求される性能を全て満たす必要がある。
そのため、本発明の潤滑油組成物は、上記要件(I)~(III)を満たすように調整されている。
【0010】
要件(I)は、潤滑油組成物の冷却性能を規定したものである。要件(I)を満たす潤滑油組成物は、高い冷却性能を有するものであり、特に、二次電池の温度を一定に保つことができる。
上記観点から、要件(I)で規定する銀棒温度変化率ΔTは、72℃以上、74℃以上、又は76℃以上としてもよい。
なお、要件(I)で規定する銀棒温度変化率ΔTは、潤滑油組成物の動粘度を低く調整することで上昇させることができるが、潤滑油組成物の動粘度を低く設定し過ぎると、要件(II)を満たすように調整することが難しくなる場合がある。
【0011】
要件(II)は、潤滑油組成物の安全性を規定したものである。例えば、電気モータは一次的に高温となる場合があり、その際に潤滑油組成物が発火してしまう恐れがある。要件(II)は、特に電気モータの潤滑に使用した際の安全性を担保するための潤滑油組成物の要件である。
上記観点から、要件(II)で規定する引火点は、110℃以上、120℃以上、130℃以上、140℃以上、150℃以上、160℃以上、又は170℃以上としてもよい。
なお、要件(II)で規定する引火点は、潤滑油組成物の動粘度を高く調整することで上昇させることができるが、潤滑油組成物の動粘度を高く設定し過ぎると、要件(I)を満たすように調整することが難しくなる場合がある。
【0012】
要件(III)は、潤滑油組成物の絶縁性を規定したものである。二次電池、電気モータ、及び減速機に接続された循環回路に循環する潤滑性組成物には高い絶縁性が求められる。
上記観点から、要件(III)で規定する体積抵抗率は、5.0×10Ω・cm以上、1.0×10Ω・cm以上、5.0×10Ω・cm以上、又は1.0×10Ω・cm以上としてもよい。
なお、要件(III)で規定する体積抵抗率は、潤滑油組成物に用いられる基油として極性の低い基油を選択することにより調整することができる。
【0013】
本発明の一態様の潤滑油組成物の30℃における動粘度は、上記要件(II)を満たすと共に、潤滑性能に優れた潤滑油組成物に調整する観点から、5.0mm/s以上、6.0mm/s以上、7.0mm/s以上、8.0mm/s以上、9.0mm/s以上、10.0mm/s以上、又は11.0mm/s以上としてもよく、また、上記要件(I)を満たすに調整する観点から、40.0mm/s以下、35.0mm/s以下、30.0mm/s以下、25.0mm/s以下、20.0mm/s以下、又は15.0mm/s以下としてもよい。
特に30℃における動粘度を上記の範囲に調整することで、二次電池に対しては高い冷却性能を発揮して二次電池の温度を一定に保ちつつ、電子モータ及び減速機に対する冷却性及び潤滑性能も良好に保つことができる。そのため、少なくとも二次電池、電気モータ、及び減速機に接続された循環回路に循環され、少なくとも前記二次電池、前記電気モータ、及び前記減速機の温度を制御するための用途により好適な潤滑油組成物となり得る。
【0014】
本発明の一態様の潤滑油組成物の40℃における動粘度は、上記要件(II)を満たすと共に、潤滑性能に優れた潤滑油組成物に調整する観点から、3.0mm/s以上、4.0mm/s以上、5.0mm/s以上、6.0mm/s以上、7.0mm/s以上、又は8.0mm/s以上としてもよく、また、上記要件(I)を満たすに調整する観点から、30.0mm/s以下、25.0mm/s以下、20.0mm/s以下、15.0mm/s以下、又は10.0mm/s以下としてもよい。
【0015】
本発明の一態様の潤滑油組成物の100℃における動粘度は、上記要件(II)を満たすと共に、潤滑性能に優れた潤滑油組成物に調整する観点から、1.0mm/s以上、1.2mm/s以上、1.5mm/s以上、1.7mm/s以上、2.0mm/s以上、又は2.2mm/s以上としてもよく、また、上記要件(I)を満たすに調整する観点から、5.0mm/s以下、4.5mm/s以下、4.0mm/s以下、3.5mm/s以下、又は3.0mm/s以下としてもよい。
【0016】
本発明の一態様の潤滑油組成物の粘度指数は、70以上、80以上、90以上、100以上、110以上、又は120以上としてもよい。
なお、本明細書において、各温度における動粘度及び粘度指数は、JIS K2283:2000に準拠して測定及び算出された値を意味する。
【0017】
本発明の一態様の潤滑油組成物の透過率は、90%以上、93%以上、95%以上、又は97%以上としてもよい。
なお、本明細書において、潤滑油組成物の透過率は、JIS K0115に準拠して波長600nmにて測定した値を意味する。
【0018】
本発明の一態様の潤滑油組成物は、基油を含むものであり、さらに潤滑油用添加剤を含有してもよい。
以下、本発明の一態様の潤滑油組成物に含み得る、基油及び潤滑油用添加剤について説明する。
【0019】
<基油>
本発明の一態様で用いる潤滑油組成物に含まれる基油としては、鉱油及び合成油から選ばれる1種以上が挙げられる。
鉱油としては、例えば、パラフィン系原油、中間基系原油、ナフテン系原油等の原油を常圧蒸留して得られる常圧残油;これらの常圧残油を減圧蒸留して得られる留出油;当該留出油を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、及び水素化精製等の精製処理を1つ以上施して得られる精製油;等が挙げられる。
合成油としては、例えば、α-オレフィン単独重合体、又はα-オレフィン共重合体(例えば、エチレン-α-オレフィン共重合体等の炭素数8~14のα-オレフィン共重合体)等のポリα-オレフィン;イソパラフィン;ポリアルキレングリコール;ポリオールエステル、二塩基酸エステル、リン酸エステル等のエステル系油;ポリフェニルエーテル等のエーテル系油;アルキルベンゼン;アルキルナフタレン;天然ガスからフィッシャー・トロプシュ法等により製造されるワックス(GTLワックス(Gas To Liquids WAX))を異性化することで得られる合成油(GTL)等が挙げられる。
これらの中でも、本発明の一態様で用いる基油としては、上記要件(III)を満たす潤滑油組成物に調整する観点から、極性が低い基油が好ましく、鉱油及びポリα-オレフィンから選ばれる1種以上を含むことがより好ましい。
【0020】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、基油の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、又は93質量%以上としてもよく、また、100質量%以下、99質量%以下、98質量%以下、又は97質量%以下としてもよい。
【0021】
<潤滑油用添加剤>
本発明の一態様で用いる潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、用途に応じて、基油と共に、潤滑油用添加剤を含有してもよい。
潤滑油用添加剤としては、例えば、流動点降下剤、粘度指数向上剤、極圧剤、酸化防止剤、金属系清浄剤、無灰系分散剤、耐摩耗剤、抗乳化剤、摩擦調整剤、防錆剤、金属不活性化剤、帯電防止剤、消泡剤等が挙げられる。
これらの潤滑油用添加剤は、それぞれ、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
具体的な態様として、本発明の一態様で用いる潤滑油組成物は、基油、並びに、耐摩耗剤、金属不活性化剤、金属清浄剤、分散剤、及び消泡剤から選ばれる1種以上の潤滑油用添加剤を含有する潤滑油組成物であってもよい。
【0022】
これらの潤滑油用添加剤のそれぞれの含有量は、本発明の効果を損なわない範囲内で、適宜調製することができるが、潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、それぞれの添加剤ごとに独立して、通常0.001~15質量%、好ましくは0.005~10質量%、より好ましくは0.01~5質量%である。
【0023】
〔循環システム〕
まず、本発明による第1の実施形態について図1を用いて説明する。図1は、車両10に取り付けられる第1の循環システム100を示す。車両10は、二次電池(バッテリー)11、電気モータ12、減速機13、及びPCU(Power Control Unit)14を主に備える。二次電池11の周囲には、二次電池11に密着するように電池冷却ジャケット111が設けられ、電気モータ12及び減速機13の周囲には、電気モータ12及び減速機13に密着して熱交換可能となるようにモータ冷却ジャケット112が設けられ、PCU14の周囲には、PCU14において冷却すべき部品、例えば半導体に密着して熱交換可能となるようにPCU冷却ジャケット141が設けられる。電池冷却ジャケット111、モータ冷却ジャケット112、及びPCU冷却ジャケット141は、各々ジャケット入口111a、112a、141aとジャケット出口111b、112b、141bとを備えながら液密に構成される。
【0024】
第1の循環システム100は、電池冷却ジャケット111と、モータ冷却ジャケット112と、PCU冷却ジャケット141と、循環回路120と、オイルポンプ130と、オイルタンク140と、ラジエーター(オイルクーラ)150とを主に備える。
【0025】
オイルポンプ130は、オイルタンク140に接続され、オイルタンク140はラジエーター150に接続される。ラジエーター150は、潤滑油組成物を受け入れて内部流路に流し、この内部流路の外部に接触する多数のフィンに風又は液体を当てて、潤滑油組成物と熱交換、例えば冷却を行い、オイルタンク140に送る。オイルタンク140は、ラジエーター150から潤滑油組成物を受け入れて貯留する。オイルポンプ130は、オイルタンク140内の潤滑油組成物を外部に圧送する。
【0026】
循環回路120は、二次電池11に接続される第1の経路121と、電気モータ12と減速機13に接続される第2の経路122とを備え、潤滑油組成物を循環可能である。
【0027】
第1の経路121は、オイルポンプ130の出口と電池冷却ジャケット111のジャケット入口111aを繋ぐ第1の流入管121aと、電池冷却ジャケット111のジャケット出口111bとPCU冷却ジャケット141のジャケット入口141aとを繋ぐ第1の流出管121bとを主に備える。
【0028】
第2の経路122は、オイルポンプ130の出口とモータ冷却ジャケット112のジャケット入口112aを繋ぐ第2の流入管122aと、モータ冷却ジャケット112のジャケット出口112bとラジエーター150の入口とを繋ぐ第2の流出管122bとを主に備える。
【0029】
第1の経路121の出口121dは、PCU冷却ジャケット141のジャケット入口141aに接続され、PCU冷却ジャケット141のジャケット出口141bは、ラジエーター150の入口に接続され、ラジエーター150の出口はオイルタンク140の入口に接続され、オイルタンク140の出口はオイルポンプ130の入口に接続される。
【0030】
第2の経路122の出口122dはラジエーター150の入口に接続され、ラジエーター150の出口は、オイルタンク140の入口に接続され、オイルタンク140の出口は、オイルポンプ130の入口に接続される。すなわち、第1の経路121と第2の経路122は、あるいは二次電池11と電気モータ12及び減速機13とは、ラジエーター150、オイルタンク140、及びオイルポンプ130に対して、並列に接続される。第1の経路121と第2の経路122は、同じ、あるいは1つのラジエーター150に共に接続され、また、同じ、あるいは1つのオイルタンク140に共に接続され、そして、同じ、あるいは1つのオイルポンプ130に共に接続される。
【0031】
次に、第1の循環システム100における潤滑油組成物の流れについて説明する。
【0032】
オイルタンク140に貯留されている潤滑油組成物は、オイルポンプ130によって第1の経路121と第2の経路122に圧送される。第2の経路122に圧送された潤滑油組成物は、第2の流入管122aを経てモータ冷却ジャケット112に流入し、電気モータ12及び減速機13を冷却して一定の温度に保つ。これにより、潤滑油組成物の温度が上昇する。そして、潤滑油組成物は、第2の流出管122bを経てラジエーター150に圧送される。ラジエーター150は、潤滑油組成物を冷却し、オイルタンク140に送り出す。ラジエーター150により、潤滑油組成物の温度が一定に保たれる。他方、オイルタンク140から第1の経路121に圧送された潤滑油組成物は、第1の流入管121aを経て電池冷却ジャケット111に流入し、二次電池11を保温、すなわち、二次電池11の温度を一定に保つ。前述のように、オイルタンク140内の潤滑油組成物は、ラジエーター150により一定の温度に保たれているため、二次電池11の温度が所望の温度よりも低い場合には、二次電池11を温め、二次電池11の温度が所望の温度よりも高い場合には、二次電池11を冷却できる。そして、潤滑油組成物は、第1の流出管121bを経てPCU冷却ジャケット141に流入し、PCU14を冷却して一定の温度に保つ。これにより、潤滑油組成物の温度が上昇する。そして、潤滑油組成物はPCU冷却ジャケット141からラジエーター150に圧送される。ラジエーター150は、潤滑油組成物を冷却し、オイルタンク140に送り出す。ラジエーター150により、潤滑油組成物の温度が一定に保たれる。
【0033】
第1の循環システム100によれば、二次電池11、電気モータ12、及び減速機13の温度を制御、より詳細には、電気モータ12及び減速機13を冷却しながら、二次電池11の温度を一定に保つことができる。
【0034】
本発明による第2の実施形態について図2を用いて説明する。図2は、車両10に取り付けられる第2の循環システム200を示す。第1の実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0035】
第2の循環システム200は、電池冷却ジャケット111と、モータ冷却ジャケット112と、PCU冷却ジャケット141と、循環回路220と、第1のオイルポンプ231と、第2のオイルポンプ232と、オイルタンク140と、ラジエーター(オイルクーラ)150とを主に備える。
【0036】
第1のオイルポンプ231及び第2のオイルポンプ232は、オイルタンク140に接続され、オイルタンク140内の潤滑油組成物を外部に圧送する。オイルタンク140は、ラジエーター150に接続され、ラジエーター150から潤滑油組成物を受け入れて貯留する。ラジエーター150は、潤滑油組成物を受け入れて冷却し、オイルタンク140に送る。
【0037】
循環回路220は、二次電池11に接続される第1の経路221と、電気モータ12と減速機13に接続される第2の経路222とを備える。
第1の経路221は、オイルタンク140の出口と第1のオイルポンプ231の入口を繋ぐ第1の流入先行管221eと、第1のオイルポンプ231の出口と電池冷却ジャケット111のジャケット入口111aとを繋ぐ第1の流入後続管221aと、電池冷却ジャケット111のジャケット出口111bとPCU冷却ジャケット141のジャケット入口141aとを繋ぐ第1の流出管221bとを主に備える。
【0038】
第2の経路122は、オイルタンク140の出口と第2のオイルポンプ232の入口を繋ぐ第2の流入先行管222eと、第2のオイルポンプ232の出口とモータ冷却ジャケット112のジャケット入口112aとを繋ぐ第2の流入後続管222aと、モータ冷却ジャケット112のジャケット出口112bとラジエーター150の入口とを繋ぐ第2の流出管222bとを主に備える。
【0039】
第1の経路221の出口221dは、PCU冷却ジャケット141のジャケット入口141aに接続され、PCU冷却ジャケット141のジャケット出口141bは、ラジエーター150の入口に接続され、ラジエーター150の出口はオイルタンク140の入口に接続される。
【0040】
第2の経路222の出口222dはラジエーター150の入口に接続され、ラジエーター150の出口は、オイルタンク140の入口に接続される。すなわち、第1の経路221と第2の経路222は、あるいは二次電池11と電気モータ12及び減速機13とは、ラジエーター150及びオイルタンク140に対して、並列に接続される。第1の経路221と第2の経路222は、同じ、あるいは1つのラジエーター150に共に接続され、また、同じ、あるいは1つのオイルタンク140に共に接続される。
【0041】
次に、第2の循環システム200における潤滑油組成物の流れについて説明する。
【0042】
オイルタンク140に貯留されている潤滑油組成物は、第1のオイルポンプ231及び第2のオイルポンプ232によって第1の経路221と第2の経路222に各々圧送される。第2の経路222に圧送された潤滑油組成物は、第2の流入先行管222e、第2のオイルポンプ232、及び第2の流入後続管222aを経てモータ冷却ジャケット112に流入し、電気モータ12及び減速機13を冷却して一定の温度に保つ。これにより、潤滑油組成物の温度が上昇する。そして、潤滑油組成物は、第2の流出管222bを経てラジエーター150に圧送される。ラジエーター150は、潤滑油組成物を冷却し、オイルタンク140に送り出す。ラジエーター150により、潤滑油組成物の温度が一定に保たれる。他方、オイルタンク140から第1の経路121に圧送された潤滑油組成物は、第1の流入先行管221e、第1のオイルポンプ231、及び第1の流入後続管221aを経て電池冷却ジャケット111に流入し、二次電池11を保温、すなわち、二次電池11の温度を一定に保つ。前述のように、オイルタンク140内の潤滑油組成物は、ラジエーター150により一定の温度に保たれているため、二次電池11の温度が所望の温度よりも低い場合には、二次電池11を温め、二次電池11の温度が所望の温度よりも高い場合には、二次電池11を冷却できる。そして、潤滑油組成物は、第1の流出管221bを経てPCU冷却ジャケット141に流入し、PCU14を冷却して一定の温度に保つ。これにより、潤滑油組成物の温度が上昇する。そして、潤滑油組成物はPCU冷却ジャケット141からラジエーター150に圧送される。ラジエーター150は、潤滑油組成物を冷却し、オイルタンク140に送り出す。ラジエーター150により、潤滑油組成物の温度が一定に保たれる。
【0043】
第2の循環システム200によれば、二次電池11、電気モータ12、及び減速機13の温度を制御、より詳細には、電気モータ12及び減速機13を冷却しながら、二次電池11の温度を一定に保つことができる。
【0044】
なお、図3に示されるように、ラジエーター150の代わりにオイルクーラ251を用いてもよい。このようなオイルクーラ251には、例えばロングライフクーラント(LLC)又は空調機の冷媒がポンプ233を用いて流され、潤滑油組成物を冷却、あるいは温度を一定に保つ。
【0045】
本発明による第3の実施形態について図4を用いて説明する。図4は、車両10に取り付けられる第3の循環システム300を示す。第1及び第2の実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0046】
第3の循環システム300は、電池冷却ジャケット111と、モータ冷却ジャケット112と、PCU冷却ジャケット141と、循環回路320と、オイルポンプ130と、制御バルブ160と、オイルタンク140と、ラジエーター(オイルクーラ)150とを主に備える。
【0047】
制御バルブ160は、オイルポンプ130に接続され、少なくとも潤滑油組成物、二次電池11、電気モータ12、減速機13、及び/又はPCU14の温度に基づいて開閉可能であり、第1の経路121と第2の経路122に潤滑油組成物を圧送する。また、制御バルブ160は、二次電池11の温度のみ、あるいは電気モータ12と減速機13のみの温度に基づいて開閉可能である。オイルポンプ130はオイルタンク140に接続され、オイルタンク140はラジエーター150に接続される。ラジエーター150は、潤滑油組成物を受け入れて冷却し、オイルタンク140に送る。オイルタンク140は、ラジエーター150から潤滑油組成物を受け入れて貯留する。オイルポンプ130は、オイルタンク140内の潤滑油組成物を外部に圧送する。
【0048】
循環回路120は、二次電池11に接続される第1の経路321と、電気モータ12と減速機13に接続される第2の経路322とを備える。
【0049】
第1の経路321は、制御バルブ160の出口と電池冷却ジャケット111のジャケット入口111aを繋ぐ第1の流入管321aと、電池冷却ジャケット111のジャケット出口111bとPCU冷却ジャケット141のジャケット入口141aとを繋ぐ第1の流出管321bとを主に備える。
【0050】
第2の経路322は、制御バルブ160の出口とモータ冷却ジャケット112のジャケット入口112aを繋ぐ第2の流入管322aと、モータ冷却ジャケット112のジャケット出口112bとラジエーター150の入口とを繋ぐ第2の流出管322bとを主に備える。
第1の経路321と第2の経路322との接続部に制御バルブ160が設けられ、ラジエーター(オイルクーラ)150から第1の経路321及び/又は第2の経路322への潤滑油組成物の流れを制御する。
【0051】
第1の経路321の出口321dは、PCU冷却ジャケット141のジャケット入口141aに接続され、PCU冷却ジャケット141のジャケット出口141bは、ラジエーター150の入口に接続され、ラジエーター150の出口はオイルタンク140の入口に接続され、オイルタンク140の出口はオイルポンプ130の入口に接続される。
【0052】
第2の経路322の出口322dはラジエーター150の入口に接続され、ラジエーター150の出口は、オイルタンク140の入口に接続され、オイルタンク140の出口は、オイルポンプ130の入口に接続される。すなわち、第1の経路321と第2の経路322は、あるいは二次電池11と電気モータ12及び減速機13とは、オイルポンプ130、オイルタンク140、及びラジエーター150に対して、並列に接続される。第1の経路321と第2の経路322は、同じ、あるいは1つのラジエーター150に共に接続され、また、同じ、あるいは1つのオイルタンク140に共に接続され、そして、同じ、あるいは1つのオイルポンプ130に共に接続される。
【0053】
次に、第3の循環システム300における潤滑油組成物の流れについて説明する。
【0054】
オイルタンク140に貯留されている潤滑油組成物は、オイルポンプ130によって制御バルブ160に圧送される。制御バルブ160は、少なくとも潤滑油組成物、二次電池11、電気モータ12、減速機13、及び/又はPCU14の温度に基づいて開閉して、第1の経路121と第2の経路122に潤滑油組成物を圧送する。
【0055】
制御バルブ160は、第1の経路121と第2の経路122の両方に、あるいはいずれか一方に潤滑油組成物を圧送することが可能である。また、第1の経路121及び第2の経路122への流量を調整可能である。
【0056】
例えば、二次電池11、電気モータ12、減速機13、及びPCU14の温度が所望の温度よりも高い場合、第1の経路321及び第2の経路322に潤滑油組成物を送り、二次電池11、電気モータ12、減速機13、及びPCU14の温度を所望の温度まで下降させる。このとき、これらの部材の温度に応じて、第1の経路121及び第2の経路122への流量を調整する。
【0057】
例えば、二次電池11の温度が所望の温度よりも低く、かつ潤滑油組成物の温度が所望の温度よりも高い場合、第1の経路321に潤滑油組成物を送り、二次電池11の温度を所望の温度まで上昇させる。
【0058】
これにより、二次電池11の温度が所望の温度よりも低い場合には、二次電池11を温め、二次電池11の温度が所望の温度よりも高い場合には、二次電池11を冷却できる。
【0059】
第3の循環システム300によれば、二次電池11、電気モータ12、及び減速機13の温度を制御、より詳細には、電気モータ12及び減速機13を冷却しながら、二次電池11の温度をより精緻に一定に保つことができる。
【0060】
なお、図5に示されるように、ラジエーター150の代わりにオイルクーラ351を用いてもよい。このようなオイルクーラ351には、例えばロングライフクーラント(LLC)又は空調機の冷媒がポンプ333を用いて流され、オイルクーラ351を介して潤滑油組成物を冷却、あるいは温度を一定に保つ。また、これに加えて、図7に示されるように、前記のロングライフクーラント(LLC)又は空調機の冷媒をポンプ333を用いてPCU冷却ジャケット141に流し、PCU14を冷却、あるいは温度を一定に保ってもよい。
【0061】
本発明による第4の実施形態について図8を用いて説明する。図8は、車両10に取り付けられる第4の循環システム400を示す。第1~第3の実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0062】
第4の循環システム400は、電池冷却ジャケット111と、モータ冷却ジャケット112と、PCU冷却ジャケット141と、循環回路420と、第1のオイルポンプ431と、第2のオイルポンプ432と、ラジエーター(オイルクーラ)150とを主に備える。
【0063】
第1のオイルポンプ231及び第2のオイルポンプ232は、ラジエーター150に接続され、ラジエーター150から供給される潤滑油組成物を外部に圧送する。ラジエーター150は、潤滑油組成物を受け入れて冷却する。
【0064】
循環回路420は、二次電池11に接続される第1の経路421と、電気モータ12と減速機13に接続される第2の経路422とを備える。
【0065】
第1の経路421は、ラジエーター150の出口と第1のオイルポンプ431の入口を繋ぐ第1の流入先行管421eと、第1のオイルポンプ431の出口と電池冷却ジャケット111のジャケット入口111aとを繋ぐ第1の流入後続管421aと、電池冷却ジャケット111のジャケット出口111bとラジエーター150の入口aとを繋ぐ第1の流出管421bとを主に備える。
【0066】
第2の経路422は、ラジエーター150の出口と第2のオイルポンプ432の入口を繋ぐ第2の流入先行管422eと、第2のオイルポンプ432の出口とモータ冷却ジャケット112のジャケット入口112aとを繋ぐ第2の流入後続管422aと、モータ冷却ジャケット112のジャケット出口112bとラジエーター150の入口とを繋ぐ第2の流出管422bとを主に備える。
【0067】
第1の経路421の出口421d及び第2の経路222の出口422dは、ラジエーター150の入口に接続される。すなわち、第1の経路421と第2の経路422は、あるいは二次電池11と電気モータ12及び減速機13とは、ラジエーター150に対して、並列に接続される。第1の経路421と第2の経路422は、同じ、あるいは1つのラジエーター150に共に接続される。
【0068】
ラジエーター(オイルクーラ)150には、第1の経路421と第2の経路422と別系統の第3の経路435が接続される。第3の経路には、ポンプ433、PCU冷却ジャケット141、及びラジエーター150が接続され、例えばロングライフクーラント(LLC)又は空調機の冷媒がポンプ433を用いて流され、ラジエーター(オイルクーラ)150を介して潤滑油組成物を冷却、あるいは温度を一定に保つ。また、ロングライフクーラント(LLC)又は空調機の冷媒をポンプ433を用いてPCU冷却ジャケット141に流し、PCU14を冷却、あるいは温度を一定に保つ。
【0069】
次に、第4の循環システム400における潤滑油組成物の流れについて説明する。
【0070】
ラジエーター150から流出した潤滑油組成物は、第1のオイルポンプ431及び第2のオイルポンプ432によって第1の経路421と第2の経路422に各々圧送される。第2の経路422に圧送された潤滑油組成物は、第2の流入先行管422e、第2のオイルポンプ432、及び第2の流入後続管422aを経てモータ冷却ジャケット112に流入し、電気モータ12及び減速機13を冷却して一定の温度に保つ。これにより、潤滑油組成物の温度が上昇する。そして、潤滑油組成物は、第2の流出管422bを経てラジエーター150に圧送される。ラジエーター150は、潤滑油組成物を冷却して送り出す。ラジエーター150により、潤滑油組成物の温度が一定に保たれる。他方、ラジエーター150から第1の経路421に圧送された潤滑油組成物は、第1の流入先行管421e、第1のオイルポンプ431、及び第1の流入後続管421aを経て電池冷却ジャケット111に流入し、二次電池11を保温、すなわち、二次電池11の温度を一定に保つ。前述のように、潤滑油組成物はラジエーター150により一定の温度に保たれているため、二次電池11の温度が所望の温度よりも低い場合には、二次電池11を温め、二次電池11の温度が所望の温度よりも高い場合には、二次電池11を冷却できる。そして、潤滑油組成物は、第1の流出管421bを経てラジエーター150に流入する。ラジエーター150は、潤滑油組成物を冷却して送り出す。ラジエーター150により、潤滑油組成物の温度が一定に保たれる。
【0071】
第4の循環システム400によれば、二次電池11、電気モータ12、及び減速機13の温度を制御、より詳細には、電気モータ12及び減速機13を冷却しながら、二次電池11の温度を一定に保つことができる。
【0072】
本発明による第5の実施形態について図9を用いて説明する。図9は、車両10に取り付けられる第5の循環システム500を示す。第1~第4の実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0073】
第5の循環システム500は、電池冷却ジャケット111と、モータ冷却ジャケット112と、PCU冷却ジャケット141と、循環回路520と、オイルポンプ130と、オイルタンク140と、ラジエーター(オイルクーラ)150と、制御バルブ560とを主に備える。オイルポンプ130、オイルタンク140、及びラジエーター150の構成及び接続関係は第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0074】
循環回路520は、二次電池11に接続される第1の経路521と、電気モータ12と減速機13に接続される第2の経路522とを備え、潤滑油組成物を循環可能である。
【0075】
第1の経路521は、オイルポンプ130の出口と電池冷却ジャケット111のジャケット入口111aを繋ぐ第1の流入管521aと、電池冷却ジャケット111のジャケット出口111bとPCU冷却ジャケット141のジャケット入口141aとを制御バルブ560を経て接続する第1の流出管521bとを主に備える。制御バルブ560は、二次電池11に流れる潤滑油組成物のうちの一部を第2の経路522に流す。第1の経路521の出口521dは、PCU冷却ジャケット141のジャケット入口141aに接続され、PCU冷却ジャケット141のジャケット出口141bは、ラジエーター150の入口に接続される。
【0076】
第2の経路522は、制御バルブ560の出口とモータ冷却ジャケット112のジャケット入口112aを繋ぐ第2の流入管522aと、モータ冷却ジャケット112のジャケット出口112bとラジエーター150の入口とを繋ぐ第2の流出管522bとを主に備える。第2の経路522の出口522dはラジエーター150の入口に接続される。すなわち、二次電池11と電気モータ12及び減速機13とは、ラジエーター150、オイルタンク140、及びオイルポンプ130に対して、直列に接続される。また、第2の経路522と第1の流出管521bとは、PCU14に対して、並列に接続される。第1の経路521と第2の経路522は、同じ、あるいは1つのラジエーター150に共に接続され、また、同じ、あるいは1つのオイルタンク140に共に接続され、そして、同じ、あるいは1つのオイルポンプ130に共に接続される。
【0077】
次に、第5の循環システム500における潤滑油組成物の流れについて説明する。
【0078】
オイルタンク140から流出した潤滑油組成物は、オイルポンプ130によって第1の経路521に圧送される。第1の経路521に圧送された潤滑油組成物は、第1の流入管521aを経て電池冷却ジャケット111に流入し、二次電池11を保温、すなわち、二次電池11の温度を一定に保つ。電池冷却ジャケット111から流出した潤滑油組成物は、制御バルブ560に流入する。制御バルブ560は、電池冷却ジャケット111から流出した潤滑油組成物のうちの一部を第2の経路522に流す。第2の経路522に圧送された潤滑油組成物は、第2の流入管522aを経てモータ冷却ジャケット112に流入し、電気モータ12及び減速機13を冷却して一定の温度に保つ。これにより、潤滑油組成物の温度が上昇する。そして、潤滑油組成物は、第2の流出管522bを経てラジエーター150に圧送される。ラジエーター150は、潤滑油組成物を冷却して送り出す。ラジエーター150により、潤滑油組成物の温度が一定に保たれる。そして潤滑油組成物は、オイルポンプ130により、第1の経路521を介して電池冷却ジャケット111に圧送される。前述のように、潤滑油組成物はラジエーター150により一定の温度に保たれているため、二次電池11の温度が所望の温度よりも低い場合には、二次電池11を温め、二次電池11の温度が所望の温度よりも高い場合には、二次電池11を冷却できる。
【0079】
第5の循環システム500によれば、二次電池11、電気モータ12、及び減速機13の温度を制御、より詳細には、電気モータ12及び減速機13を冷却しながら、二次電池11の温度を一定に保つことができる。
【0080】
なお、第5の循環システム500は、第2の流入管522aにオイルポンプを備えてもよい。
【0081】
なお、第1~5の循環システム100~500は、二次電池(バッテリー)11、電気モータ12、減速機13、及びPCU(Power Control Unit)14を備えてもよい。
【0082】
なお、第1~第3、及び第5の循環システム100~300、500において、PCU14を潤滑油組成物で冷却するとして説明したが、PCU14にPCU冷却ジャケット141を設けずにPCU14を潤滑油組成物で冷却せずに、空冷としてもよい(例えば、第3の循環システムの変形例として図6参照)。このとき、第1の経路121、221、321、521の出口121d、221d、321d、521dはラジエーター150の入口に接続される。
【0083】
なお、いずれの実施形態においても、潤滑油組成物の流れ方向に対してモータ冷却ジャケット112の後に、潤滑油組成物からデポジットを除去可能なフィルタを取り付けることが好ましい。
【0084】
なお、いずれの実施形態においても、ラジエーターの代わりにオイルクーラを用いてもよい。このようなオイルクーラは、潤滑油組成物を受け入れて内部流路に流し、この内部流路の外部に接触する多数のフィンに、例えばロングライフクーラント(LLC)又は空調機の冷媒をポンプ用いて流して当て、潤滑油組成物と熱交換、例えば冷却、あるいは温度を一定に保つ。
【0085】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、循環回路が二次電池、電気モータ、及び/又は減速機に接続されることは、電池冷却ジャケット及び/又はモータ冷却ジャケットに各々接続されることを含む。
【0086】
本発明の好適な一態様の潤滑油組成物及びこの潤滑油組成物を用いる循環システムによれば、二次電池、電気モータ、及び減速機の温度を制御可能な潤滑油組成物及びこの潤滑油組成物を用いる循環システムを得ることができる。
【実施例0087】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、各種物性の測定法及び評価方法は下記のとおりである。
(1)動粘度、粘度指数
JIS K2283:2000に準拠して測定及び算出した。
(2)銀棒温度変化量ΔT
JIS K2242:2012に規定される「冷却性能試験方法:A法」に準拠して、銀棒の初期の表面温度Tが200℃となるように銀棒を加熱し、その加熱した銀棒を、80℃に加熱した試料油に入れ、銀棒を入れてから12秒後の銀棒表面の温度T12(℃)を測定した。そして、T-T12を銀棒温度変化量ΔTとして算出した。
(3)引火点
JIS K2265-4:2007に準拠し、クリーブランド開放法(C.O.C法)により測定した。
(4)体積抵抗率
JIS C2101:1999に準拠して、温度80℃、250Vにて測定した。
(5)シェル摩耗試験
ASTM D2783に準拠して、四球試験機により、回転数1800rpm、荷重392N、油温80℃、試験時間30分の条件でシェル摩耗試験を行い、1/2インチ球3個の摩耗痕径の平均値を算出した。摩耗痕径が小さいほど、耐摩耗性に優れているといえる。
(6)潤滑油組成物の外観観察
透明な試験官に測定対象となる潤滑油組成物を注いで、試験管の外観を目視で観察して、以下の基準で評価した。
・A:透明であり、白濁が見られない。
・F:不透明であり、白濁している。
(7)潤滑油組成物の透過率
JIS K0115に準拠して波長600nmにて、測定対象である潤滑油組成物の透過率を測定した。
【0088】
実施例1~2、比較例1~4
表1に示す種類及び配合量の基油及び添加剤混合物を添加して潤滑油組成物をそれぞれ調製した。当該潤滑油組成物の調製に使用した各成分の詳細は以下のとおりである。
<基油>
・「鉱油A」:40℃動粘度=8.1mm/sのパラフィン系鉱油。
・「鉱油B」:40℃動粘度=1.6mm/sのパラフィン系鉱油。
・「鉱油C」:40℃動粘度=31.4mm/sのパラフィン系鉱油。
・「鉱油D」:40℃動粘度=44.4mm/sのパラフィン系鉱油。
・「合成油」:40℃動粘度=8.0mm/sのポリαオレフィン。
・「高極性基油」:40℃動粘度=8.6mm/sのエチレングリコール。
<添加剤混合物>
・「添加剤混合物」:極圧剤、耐摩耗剤、金属不活性化剤、清浄剤、分散剤、及び消泡剤を今後してなる添加剤混合物。
【0089】
調製した潤滑油組成物について、上記(1)~(6)の各種物性の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
表1より、実施例1~2の潤滑油組成物は、要件(I)~(III)を満たす潤滑油組成物であり、少なくとも二次電池、電気モータ、及び減速機に接続された循環回路に循環され、少なくとも前記二次電池、前記電気モータ、及び前記減速機の温度を制御するための用途に好適であると考えられる。
【符号の説明】
【0092】
100 劣化測定システム
10 車両
11 二次電池(バッテリー)
12 電気モータ
13 減速機
14 PCU
100 循環システム
111 電池冷却ジャケット
111a ジャケット入口
111b ジャケット出口
112 モータ冷却ジャケット
112a ジャケット入口
112b ジャケット出口
120 循環回路
121 第1の経路
121a 第1の流入管
121b 第2の流出管
121d 出口
122 第2の経路
122a 第2の流入管
122b 第2の流出管
122d 出口
130 オイルポンプ
140 オイルタンク
141 冷却ジャケット
141a ジャケット入口
141b ジャケット出口
150 ラジエーター(オイルクーラ)
160 制御バルブ
200 第2の循環システム
220 循環回路
221 第1の経路
221a 第1の流入後続管
221b 第1の流出管
221d 出口
221e 第1の流入先行管
222 第2の経路
222a 第2の流入後続管
222b 第2の流出管
222d 出口
222e 第2の流入先行管
231 第1のオイルポンプ
232 第2のオイルポンプ
233 ポンプ
251 オイルクーラ
300 第3の循環システム
320 循環回路
321 第1の経路
321a 第1の流入管
321b 第1の流出管
321d 出口
322 第2の経路
322a 第2の流入管
322b 第2の流出管
322d 出口
333 ポンプ
351 オイルクーラ
400 第4の循環システム
420 循環回路
421 第1の経路
421a 第1の流入後続管
421b 第1の流出管
421d 出口
421e 第1の流入先行管
422 第2の経路
422a 第2の流入後続管
422b 第2の流出管
422d 出口
422e 第2の流入先行管
431 第1のオイルポンプ
432 第2のオイルポンプ
433 ポンプ
435 第3の経路
500 第5の循環システム
520 循環回路
521 第1の経路
521a 第1の流入管
521b 第1の流出管
521d 出口
522 第2の経路
522a 第2の流入管
522b 第2の流出管
522c 出口
560 制御バルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9