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特開2024-82189プリプレグ、積層板、金属張り積層板、プリント配線板及び半導体パッケージ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082189
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】プリプレグ、積層板、金属張り積層板、プリント配線板及び半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/24 20060101AFI20240612BHJP
【FI】
C08J5/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195971
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】孫田 誠也
(72)【発明者】
【氏名】北嶋 貴代
(72)【発明者】
【氏名】登内 駿介
(72)【発明者】
【氏名】中西 晃太
【テーマコード(参考)】
4F072
【Fターム(参考)】
4F072AA07
4F072AA08
4F072AB09
4F072AB28
4F072AD03
4F072AD27
4F072AD28
4F072AE02
4F072AE06
4F072AE09
4F072AF03
4F072AF06
4F072AG03
4F072AG17
4F072AG19
4F072AH43
4F072AJ36
4F072AL13
(57)【要約】
【課題】厚み40μm以上の繊維基材を用いた場合においても厚み精度が高く、且つ耐熱性に優れる金属張り積層板を実現し得るプリプレグを提供すること、並びに、当該プリプレグを用いて得られる、積層板、金属張り積層板、プリント配線板及び半導体パッケージを提供すること。
【解決手段】厚み40μm以上の繊維基材と熱硬化性樹脂組成物とを含有する、表面うねり(Wa)が7.0μm以下のプリプレグであって、最低溶融粘度が800~4,000Pa・sであるプリプレグ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み40μm以上の繊維基材と熱硬化性樹脂組成物とを含有する、表面うねり(Wa)が7.0μm以下のプリプレグであって、
最低溶融粘度が800~4,000Pa・sであるプリプレグ。
【請求項2】
表面うねり(Wa)が4.0μm以下である、請求項1に記載のプリプレグ。
【請求項3】
表面うねり(Wa)が4.0超~7.0μmである、請求項1に記載のプリプレグ。
【請求項4】
最低溶融粘度が900~3,500Pa・sである、請求項1に記載のプリプレグ。
【請求項5】
最低溶融粘度が1,500~3,500Pa・sである、請求項1に記載のプリプレグ。
【請求項6】
前記繊維基材の厚みが70~120μmである、請求項1に記載のプリプレグ。
【請求項7】
請求項1に記載のプリプレグ1枚以上を有する積層板。
【請求項8】
金属箔と、請求項1に記載のプリプレグ1枚以上と、を有する金属張り積層板。
【請求項9】
請求項7に記載の積層板又は請求項8に記載の金属張り積層板を有する、プリント配線板。
【請求項10】
請求項9に記載のプリント配線板と、半導体素子とを有する、半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プリプレグ、積層板、金属張り積層板、プリント配線板及び半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体パッケージの高密度化、通信速度の高速化に伴い、プリント配線板には、低反り性、高信頼性及びインピーダンスコントロールの向上が切望されている。この要求に応えるためには、銅張積層板の厚みのバラつきを従来よりもさらに低減する必要がある。しかし、繊維基材を樹脂ワニスに浸漬してから乾燥する方法(例えば、特許文献1参照)で得られたプリプレグを用いて製造した銅張積層板は、厚みがバラつく傾向がある。
一方で、繊維基材を樹脂ワニスに浸漬するのではなく、予め、熱硬化性樹脂組成物から樹脂フィルムを作製しておき、繊維基材と樹脂フィルムとを加熱及び加圧して接着することによってプリプレグを製造する方法(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平01-272416号公報
【特許文献2】特開2011-132535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に記載の方法であれば、繊維基材を樹脂ワニスに浸漬する方法よりも、厚み精度に優れるプリプレグを製造することができる。しかし、本発明者等のさらなる検討により、繊維基材の厚みが小さい、例えば厚み35μm以下の場合には確かにプリプレグの厚み精度が優れる結果となる傾向にあるが、繊維基材の厚みがそれよりも大きい場合には、プリプレグの厚み精度が悪化する、ひいては銅張積層板の厚み精度が悪化する傾向にあることが判明した。また、本発明者等が銅張積層板の厚み精度の向上について検討していたところ、厚み精度が向上したとしても、耐熱性が低下する場合があることが判明した。
【0005】
そこで、本開示の目的は、厚み40μm以上の繊維基材を用いた場合においても厚み精度が高く、且つ耐熱性に優れる金属張り積層板を実現し得るプリプレグを提供すること、並びに、当該プリプレグを用いて得られる、積層板、金属張り積層板、プリント配線板及び半導体パッケージを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、本開示により前記目的を達成し得ることを見出した。本開示は、下記[1]~[10]の実施形態を含む。
[1]厚み40μm以上の繊維基材と熱硬化性樹脂組成物とを含有する、表面うねり(Wa)が7.0μm以下のプリプレグであって、
最低溶融粘度が800~4,000Pa・sであるプリプレグ。
[2]表面うねり(Wa)が4.0μm以下である、上記[1]に記載のプリプレグ。
[3]表面うねり(Wa)が4.0超~7.0μmである、上記[1]に記載のプリプレグ。
[4]最低溶融粘度が900~3,500Pa・sである、上記[1]~[3]のいずれかに記載のプリプレグ。
[5]最低溶融粘度が1,500~3,500Pa・sである、上記[1]~[4]のいずれかに記載のプリプレグ。
[6]前記繊維基材の厚みが70~120μmである、上記[1]~[5]のいずれかに記載のプリプレグ。
[7]上記[1]~[6]のいずれかに記載のプリプレグ1枚以上を有する積層板。
[8]金属箔と、上記[1]~[6]のいずれかに記載のプリプレグ1枚以上と、を有する金属張り積層板。
[9]上記[7]に記載の積層板又は上記[8]に記載の金属張り積層板を有する、プリント配線板。
[10]上記[9]に記載のプリント配線板と、半導体素子とを有する、半導体パッケージ。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、厚み40μm以上の繊維基材を用いた場合においても厚み精度が高く、且つ耐熱性に優れる金属張り積層板を実現し得るプリプレグを提供すること、並びに、当該プリプレグを用いて得られる、積層板、金属張り積層板、プリント配線板及び半導体パッケージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態のプリプレグの一態様を示す断面模式図である。
図2】本実施形態のプリプレグの一態様を説明するための断面模式図である。
図3】繊維基材を樹脂ワニスに浸漬してから乾燥する従来法によって作製したプリプレグの断面模式図である。
図4】繊維基材の厚みについて説明するための、本実施形態のプリプレグが含有する繊維基材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一実施形態について詳述するが、本開示は以下に記載の実施形態に限定されるものではない。
本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の下限値又は上限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、数値範囲の下限値及び上限値は、それぞれ他の数値範囲の下限値又は上限値と任意に組み合わせられる。数値範囲「AA~BB」という表記においては、両端の数値AA及びBBがそれぞれ下限値及び上限値として数値範囲に含まれる。また、数値範囲「CC超~DD」という表記は、CC超であり、且つDD以下であることを示す。
本明細書において、例えば、「10以上」という記載は、10及び10を超える数値を意味し、数値が異なる場合もこれに準ずる。また、例えば、「10以下」という記載は、10及び10未満の数値を意味し、数値が異なる場合もこれに準ずる。さらに、「10超」という記載は、10を超える数値を意味し、数値が異なる場合もこれに準ずる。
また、本明細書に例示する各成分及び材料は、特に断らない限り、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本明細書において、熱硬化性樹脂組成物中の各成分の含有量は、熱硬化性樹脂組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、熱硬化性樹脂組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0010】
本明細書において、「樹脂成分」とは、熱硬化性樹脂組成物を構成する固形分のうち、後述する無機充填材等の無機化合物並びに難燃剤及び難燃助剤を除く、全ての成分と定義する。
本明細書において、「固形分」とは、水分、後述する溶媒等の揮発する物質以外の熱硬化性樹脂組成物中の成分のことをいう。すなわち、固形分は、25℃付近で液状、水飴状又はワックス状のものも含み、必ずしも固体であることを意味するものではない。
本明細書に記載されている「~~を含有する」という表現は、単に~~を含有することとは当然のことであるが、~~に記載されるものが反応した状態(但し、反応し得る場合に限る。)で含有することも含む。
本明細書における記載事項を任意に組み合わせた態様も本開示及び本実施形態に含まれる。
【0011】
[プリプレグ]
本実施形態のプリプレグは、厚み40μm以上の繊維基材と熱硬化性樹脂組成物とを含有する、表面うねり(Wa)が7.0μm以下のプリプレグであって、最低溶融粘度が800~4,000Pa・sのプリプレグである。
本開示における表面うねり(Wa)は、ISO 4287(1997年)に従ってうねり曲線から得ることができる、算術平均高さ(Wa)のことである。ISO 4287(1997年)の代わりに、JIS B 0601(2001年)を利用してもよい。なお、本開示における表面うねり(Wa)は、以下のように測定することができる。
形状解析レーザ顕微鏡「VK-X100」(株式会社キーエンス製)を用いて、観察アプリケーションで形状測定を自動測定で行い、ISO 4287(1997年)又はJIS B 0601(2001年)に準拠したうねり曲線を得る。得られたうねり曲線について、解析アプリケーションを用いて表面粗さ解析を行い、表面うねり(Wa)を算出することができる。ここで、うねり曲線とは、断面曲線に位相補償形高域フィルターλc(λc=80μm)を適用し、前記断面曲線から80μm未満の波長を除去した曲線である。また、解析範囲は1,000μm×1,000μmとする。
【0012】
なお、特に断りがなくとも、本開示におけるプリプレグの表面うねり(Wa)は、プリプレグの両面の表面うねりであり、前記「面」とは、複数のプリプレグを積層して金属張り積層板を作製する際に、重ね合わさることになる面又はその反対側の面のことである。
【0013】
本実施形態のプリプレグは、薄い繊維基材に比べて表面うねりが大きい「厚み40μm以上の繊維基材」を用いているにも関わらず、表面うねり(Wa)が7.0μm以下である。特に制限されるものではないが、このことは、例えば、「プリプレグの繊維基材中に熱硬化性樹脂組成物の未含浸領域(好ましくは断続的な未含浸領域)を設ける」という手法を採用すると、容易に成し遂げることができ、この場合には、表面うねり(Wa)を5.0μm以下又は4.0μm以下にすることも容易となり、さらに小さくすることも容易となる。なお、繊維基材を樹脂ワニスに浸漬してから乾燥する方法では、プリプレグの表面うねり(Wa)は5.0μm超となる傾向があるが、本実施形態のプリプレグは当該方法によって製造されてもよい。
表面うねり(Wa)が7.0μm以下のプリプレグを用いることで、金属張り積層板の厚み精度を高めることができる傾向にあり、特に本実施形態では、プリプレグの最低溶融粘度を所定範囲に制御することによって、金属張り積層板の厚み精度をさらに向上させると共に優れた耐熱性を得ることに成功した。なお、金属張り積層板の厚み精度は、金属張り積層板の厚みのバラつきを測定することによって評価できる。本実施形態における金属張り積層板の厚みのバラつきは、プリプレグの表面うねり(Wa)が大きい場合、例えば表面うねり(Wa)が4.0超~7.0μm(さらには5.0~7.0μm)であっても金属張り積層板の厚みのバラつきを2.0%以下にすることが可能であり、好ましい態様においては、1.5%以下にすることもできるし、1.0%以下にすることもできる。金属張り積層板の厚みのバラつきの下限値に特に制限はないが、0.1%以上となることが多く、0.2%以上であってもよく、0.3%以上であってもよい。
ここで、前記金属張り積層板の厚みのバラつきは、実施例に記載の方法によって測定した値である。
【0014】
一方、繊維基材を樹脂ワニスに浸漬してから乾燥する従来法では、図3に示されるように、熱硬化性樹脂組成物がガラスクロスのうねりに追従するためにプリプレグの表面うねりが大きくなる傾向がある。つまり、プリプレグにおいて、面方向における樹脂層の厚みのバラつきが大きくなる傾向がある。金属張り積層板の製造時にプリプレグは厚み方向に加圧されるため、熱硬化性樹脂組成物は厚み方向に流動し易いが、面方向にも充分に流動しなければ、金属張り積層板の厚みのバラつきに繋がる。しかしながら、面方向への熱硬化性樹脂組成物の流動を前記樹脂層の厚みのバラつきが低減又は消失する程度に制御することは、一般的には技術的に困難なことであるが、本実施形態ではプリプレグの最低溶融粘度を所定範囲内にすることで、当該問題を解決することに成功した。ここで、本明細書において、プリプレグの「面方向」という場合、それは、図2に示す様に、プリプレグの表面においてプリプレグの面に沿う方向のことを意味している。「面方向」とは、プリプレグの一方の辺から当該辺に対向する辺へ略垂直に向かう方向と平行である。本明細書において、略垂直とは、実質的に垂直であることをいい、好ましくは86~94°、より好ましくは88~92°の範囲内であり、90°であることがさらに好ましい。
【0015】
前述の通り、「プリプレグの繊維基材中に熱硬化性樹脂組成物の未含浸領域(好ましくは断続的な未含浸領域)を設ける」という手法を採用することによって、表面付近の樹脂層がガラスクロスのうねりに沿わずに存在させることができる。そのため、プリプレグの表面うねりが小さくなり易く、つまりプリプレグの厚みのバラつきが小さくなり易い。そのため、金属張り積層板の製造時に面方向への熱硬化性樹脂組成物の流動がなくても、金属張り積層板の厚みのバラつきが小さくなり易いものと考えられる。
なお、本実施形態のプリプレグにおいて前記未含浸領域を「断続的」に存在させることによって、本実施形態の金属張り積層板の絶縁信頼性、ひいてはプリント配線板の絶縁信頼性をさらに向上させることができる傾向にある。前記未含浸領域は、繊維基材の面内方向において断続的に存在させることが好ましい。ここで、本明細書において「面内方向」という場合、それは、図2に示す様に、繊維基材内部において繊維基材の表面に沿う方向のことを意味している。当該「面内方向」とは、プリプレグの一方の辺から当該辺に対向する辺へ略垂直に向かう方向と平行である。本明細書において、略垂直とは、実質的に垂直であることをいい、好ましくは86~94°、より好ましくは88~92°の範囲内であり、90°であることがさらに好ましい。
【0016】
図1及び図2に示されるように、樹脂フィルムを繊維基材へ含浸させる際に、繊維基材中に熱硬化性樹脂組成物が含浸していない領域を設ける場合、表面付近の熱硬化性樹脂組成物の層(以下、樹脂層と略称する。)がガラスクロスのうねりに沿わずに存在することになると考えられる。その結果、厚み40μm以上の繊維基材が有する大きなうねりがプリプレグの表面に反映し難くなり、これによりプリプレグの表面うねり(Wa)を7.0μm以下、好ましくは6.0μm以下、より好ましくは5.0μm以下に抑制することが可能となった。そして、表面うねり(Wa)が7.0μm以下となったプリプレグを用いてプレス成形することによって、プリプレグの表面うねり(Wa)が小さいゆえに金属張り積層板の厚みが不均一になることが抑制されて、高い厚み精度を達成することができたと考えられる。また、プリプレグの最低溶融粘度が800Pa・s未満であると、流動性過多によって、金属張り積層板の厚みが不均一になる。一方、最低溶融粘度が4,000Pa・sを超えると、金属張り積層板内にボイドが発生し、その結果、耐熱性が低下する。そのため、最低溶融粘度は800~4,000Pa・sに制御することが重要である。
プリプレグの最低溶融粘度を前記範囲に制御する方法としては、特に制限されるものではないが、厚み40μm以上の繊維基材に熱硬化性樹脂組成物のフィルムをラミネートによって含浸させる際に、ラミネート温度及びラミネート速度等を調整する方法、また、ラミネートした後の乾燥温度及び乾燥時間等を調整する方法などが挙げられる。例えば、前記ラミネート温度を上げること、前記ラミネート時間を長くすること、前記乾燥温度を高めること、前記乾燥時間を長くすること等でプリプレグの最低溶融粘度を高めることができる。つまり、所定のラミネート温度及びラミネート速度並びに所定の乾燥温度及び乾燥時間でプリプレグを作製した後、実施例に記載の方法によって最低溶融粘度を測定し、得られた最低溶融粘度が前記所定範囲より小さい場合には、ラミネート温度を上げる、ラミネート時間を長くする、乾燥温度を高める、乾燥時間を長くする、又はこれらの方法を適宜組み合わせて採用することで、前記所定範囲の最低溶融粘度を有するプリプレグを得ることができる。逆に、得られた最低溶融粘度が前記所定範囲より大きい場合には、ラミネート温度を下げる、ラミネート時間を短くする、乾燥温度を下げる、乾燥時間を短くする、又はこれらの方法を適宜組み合わせて採用することで、前記所定範囲の最低溶融粘度を有するプリプレグを得ることができる。
ここで、プリプレグの最低溶融粘度は実施例に記載の方法に従って測定した値であり、プリプレグが含有する樹脂成分の最低溶融粘度のことである。
なお、前記乾燥温度及び乾燥時間の詳細については後述する。
【0017】
上記観点から、本実施形態のプリプレグの表面うねり(Wa)は、金属張り積層板の厚み精度の観点から、7.0μm以下が好ましく、6.0μm以下がより好ましく、5.0μm以下がさらに好ましく、4.0μm以下がよりさらに好ましく、3.0μm以下が特に好ましく、1.0μm以下が最も好ましい。本実施形態のプリプレグの表面うねり(Wa)の下限値は特に制限されるものではないが、0.01μm以上であってもよく、0.1μm以上であってもよく、0.2μm以上であってもよい。つまり、本実施形態のプリプレグの表面うねり(Wa)は、0.01~7.0μmであってもよい。
プリプレグの最低溶融粘度が800~4,000Pa・sであることによって金属張り積層板の厚み精度が非常に高まるため、本実施形態のプリプレグの表面うねり(Wa)は多少大きくてもよいことがあり、例えば、本実施形態のプリプレグの表面うねり(Wa)は、4.0超~7.0μmあってもよいし、4.5~7.0μmであってもよく、5.0~7.0μmであってもよく、又は、4.5~6.5μmであってもよく、5.0~6.5μmであってもよい。
【0018】
(最低溶融粘度)
本実施形態のプリプレグの最低溶融粘度は、金属張り積層板の厚み精度及び耐熱性の観点から、800~4,000Pa・sであり、好ましくは900~3,500Pa・s、より好ましくは950~3,200Pa・sである。
特に、プリプレグの表面うねりが大きい場合、例えば、プリプレグの表面うねりが4.0超~7.0μmである場合には、金属張り積層板の厚み精度が低下する傾向にあるため、厚み精度を高めるために、プリプレグの最低溶融粘度は1,500~3,500Pa・sであることが好ましく、1,500~3,300Pa・sであることがより好ましく、1,600~3,200Pa・sであることがさらに好ましい。プリプレグの最低溶融粘度がこの範囲内であると、耐熱性にも優れる傾向にある。
【0019】
(繊維基材中における熱硬化性樹脂組成物の未含浸領域の存在について)
本実施形態のプリプレグは、前述の通り、前記繊維基材中に熱硬化性樹脂組成物の含浸領域と未含浸領域とを有することができる。なお、絶縁信頼性の観点から、前記未含浸領域は断続的に存在していることが好ましい。当該未含浸領域の存在は、繊維基材中における熱硬化性樹脂組成物の含浸領域の存在比率を求めることで確認できる。つまり、当該含浸領域の存在比率が100%でなければ、繊維基材中に熱硬化性樹脂組成物の未含浸領域を有することを意味する。
前記繊維基材中における熱硬化性樹脂組成物の含浸領域の存在比率の求め方としては、例えば、下記算出方法を挙げることができる。金属張り積層板の厚み精度の観点から、後述の「算出方法」に基づいて求めた前記含浸領域の存在比率は、特に制限されるものではないが、30~98%であってもよく、30~95%であってもよく、35~95%であってもよく、40~95%であってもよく、45~90%であってもよく、50~90%であってもよく、55~90%であってもよく、60~85%であってもよい。前記存在比率が98%以下であるとき、金属張り積層板の厚み精度の向上効果が大きくなる傾向にあり、特に95%以下であるときに、より一層その傾向が大きくなる。また、前記存在比率が30%以上であるとき、プリプレグから熱硬化性樹脂組成物の粉落ちが抑制されるため、ハンドリング性が良好という副効果が得られる傾向にある。なお、前記含浸領域の存在比率が30%以上であれば、未含浸領域が断続的に存在し易く、この観点から、含浸領域の存在比率は50%以上であることが好ましい。
【0020】
-算出方法-
光学顕微鏡を用いて倍率50倍でプリプレグの表面を観察することによって、表面観察画像を得る。観察条件は、適度な明るさで撮影するという観点から、詳細には実施例に記載の観察条件を採用する。
得られた表面観察画像を画像編集ソフトによって白黒モードへ変換後、BMP(Microsoft Windows Bitmap Image)形式で保存する。次に、BMP形式で保存した白黒モードの表面観察画像を、画像変換ソフトによって1ピクセル毎にRGB(Red, Green, Blue)値に変換後、CSV(comma-separated values)形式で保存する。CSV形式で保存したRGBデータをMicrosoft Excel(Microsoft Corporation製)に貼り付け、黒色部(RGB値=255)と白色部(RGB値=0)の面積を算出する。それらの値から、黒色部と白色部の合計に対する黒色部の面積比率を求める。こうして得られた黒色部の面積比率を、前記含浸領域の存在比率とする。
前記画像編集ソフトとしては、例えば「Microsoft Paint」(Microsoft Corporation製)等を使用できる。また、前記画像変換ソフトとしては、例えば、フリーソフトである「bmp2csv」等を使用できる。
なお、前記観察において、適度な明るさで撮影した表面観察画像を白黒モードへ変換すると、観察面の下部に熱硬化性樹脂組成物の未含浸領域が存在する面は空隙部分であって光を反射し易いために「白色」で表され、それ以外の面は「黒色」で表される。ここで、表面観察画像を撮影する際には、表面撮影時の露出時間を60~100msの範囲で調整することによって、含浸領域及び未含浸領域を充分に反映できるような適度な明るさでの撮影となるために好ましい。プリプレグの表面観察画像について、有色が強い順に、「樹脂層においてガラスクロスが存在しない領域」、「ガラスクロスに熱硬化性樹脂組成物が充分に含浸している領域」、「ガラスクロスへの熱硬化性樹脂組成物の含浸が不十分な領域」、となる。本実施形態においては、前記「樹脂層においてガラスクロスが存在しない領域」も前記含浸領域に含まれる。表面観察画像が明る過ぎると、白黒モードの表面観察画像において、ガラスクロスへの樹脂の含浸が不十分な部分だけでなく、ガラスクロスに樹脂が充分に含浸している部分まで白色で表され易くなり、さらに画像が明るい場合には、白黒モードの表面観察画像が全体的に白色になる傾向がある。その一方で、表面観察画像が暗過ぎると、白黒モードの表面観察画像が全体的に黒色となって、未含浸領域の存在が反映され難くなる傾向がある。そのため、適度な明るさでの撮影を行うことが好ましい。
また、白色部と黒色部の合計に対する白色部の面積比率は、Microsoft Excel(Microsoft Corporation製)のCOUNTIF関数を用いることで容易に算出できる。
【0021】
(未含浸領域について)
本実施形態のプリプレグでは、前述の通り、前記未含浸領域が断続的に存在することで、金属張り積層板の絶縁信頼性が向上する傾向にある。プリプレグの繊維基材中に熱硬化性樹脂組成物の未含浸領域が断続的に存在することで、ガラスクロスの密度が高くて熱硬化性樹脂組成物が入り込みにくい部位(例えば、図2において、ガラスヤーンとガラスヤーンが織り込まれて重なり合っていてガラス繊維の密度が高い部位)の限りなく近いところに熱硬化性樹脂組成物が存在していると思われる。そのため、プレス成型時にガラスクロスの密度が高くて熱硬化性樹脂組成物が入り込みにくい部位へ速やかに熱硬化性樹脂組成物が流動することによって、微小なボイドの発生を抑えることにより、絶縁信頼が向上し易いと考える。一方、プリプレグの繊維基材中に熱硬化性樹脂組成物の未含浸領域が連続的に存在すると、ガラスクロスの密度が高くて熱硬化性樹脂組成物が入り込みにくい部位から離れたところに熱硬化性樹脂組成物が存在する傾向があると思われる。そのため、プレス成型時には熱硬化性樹脂組成物が流動するものの、ガラスクロスの密度が高くて熱硬化性樹脂組成物が入り込みにくい部位へ流動する前に硬化が進行し、金属張り積層板中に微小なボイドが残存する傾向があると考える。
【0022】
(表面粗さ(Ra))
本実施形態のプリプレグは、特に制限されるものではないが、表面粗さ(算術平均粗さRa;以下、単に「Ra」と称することがある)が0.1~5μmであることが好ましい。
本開示における表面粗さ(Ra)は、ISO 4287(1997年)に従って粗さ曲線から得ることができる、算術平均高さ(Ra)のことである。ISO 4287(1997年)の代わりに、JIS B 0601(2001年)を利用してもよい。なお、本開示における表面粗さ(Ra)は、形状解析レーザ顕微鏡の「VK-X100」(株式会社キーエンス製)によって測定することで得られる表面粗さ(Ra)である。ここで、本実施態様で測定した粗さ曲線とは、断面曲線に位相補償形高域フィルターλc(λc=80μm)を適用し、前記断面曲線の80μm以上の波長を除去した曲線である。また、解析範囲は1,000μm×1,000μmとする。
【0023】
本実施形態のプリプレグは、Raを0.1μm以上とすることで、プリプレグの表面に適度な凹凸が付与され、これにより静電気の帯電量を低く抑えることができ、取り扱い性に優れるものとなる傾向にある。一方、Raを5μm以下とすることで、金属張り積層板の厚み精度が向上する傾向がある。
このような観点から、本実施形態のプリプレグのRaは、0.15~3μmであってもよく、0.2~2μmであってもよく、0.2~1.6μmであってもよく、0.2~1.0μmであってもよい。
なお、特に断りがなくとも、本開示におけるプリプレグのRaは、プリプレグの少なくとも1つの面のRaであり、前記「面」とは、複数のプリプレグを積層して金属張り積層板を作製する際に、重ね合わさることになる面又はその反対側の面のことである。プリプレグの少なくとも1つの面のRaが前記範囲であることが好ましく、両面のRaが前記範囲であることがより好ましい。
【0024】
<繊維基材>
本実施形態のプリプレグが含有する厚み40μm以上の繊維基材としては、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている周知のものが使用できる。繊維基材の材質としては、紙、コットンリンター等の天然繊維;ガラス繊維、アスベスト等の無機物繊維;アラミド、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエステル、テトラフルオロエチレン、アクリル等の有機繊維;これらの混合物などが挙げられる。これらの中でも、難燃性の観点から、無機物繊維が好ましく、ガラス繊維がより好ましい。さらに、ガラス繊維としては、Eガラス、Cガラス、Dガラス、Sガラス等を使用したガラスクロス;短繊維を有機バインダーで接着したガラスクロス;ガラス繊維とセルロース繊維とを混抄したもの等が挙げられる。これらの中でも、ガラス繊維としては、Eガラスを使用したガラスクロスが好ましい。
繊維基材の形状としては特に制限はされず、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット、サーフェシングマット等であってもよい。これらの中でも、織布である場合、本実施形態の効果がより一層顕著となる傾向がある。なお、材質及び形状は、目的とする成形物の用途及び性能に応じて、適宜選択し得る。繊維基材としては、1種を単独で使用してもよいし、必要に応じて、2種以上の材質、2種以上の形状を組み合わせて使用してもよい。
繊維基材は、1層からなる繊維基材であってもよいし、多層からなる繊維基材であってもよい。なお、1層からなる繊維基材とは、絡み合っている繊維のみからなる繊維基材を意味し、絡み合いの無い繊維基材が存在する場合には、多層からなる繊維基材に分類される。2層以上の繊維基材の材質及び形状は、同一であっても異なっていてもよい。
【0025】
(繊維基材の厚み)
本実施形態のプリプレグが含有する繊維基材の厚み(図4参照)は、従来法では金属張り積層板の厚み精度が悪化する傾向があることが判明した「40μm以上」にしている。繊維基材の厚みは、40~120μmであってもよく、50~120μmであってもよく、60~120μmであってもよく、70~120μmであってもよく、70~100μmであってもよい。繊維基材は、その厚みが大きいほど繊維基材自体の表面うねりが大きくなる傾向があるため、従来法では金属張り積層板の厚み精度が低下する。しかし、本実施形態のプリプレグであれば、繊維基材の厚みが上記の通りに大きくてもプリプレグの表面うねり(Wa)が小さく抑えられ、その結果、金属張り積層板の厚み精度が高くなる上、プリプレグの最低溶融粘度が所定範囲であることによって、金属張り積層板の厚み精度がさらに高くなると共に、優れた耐熱性が得られる。
なお、本明細書において、繊維基材の厚みは図4に示す部位の厚みであり、繊維基材の任意の5ヵ所をマイクロメータで測定して得られる値の平均値である。
【0026】
(繊維基材の表面うねり(Wa))
本実施形態のプリプレグが含有する繊維基材の表面うねり(Wa)は、特に制限されるものではないが、5.0μm超であってもよく、6.0μm以上であってもよく、7.0μm以上であってもよく、10.0μm以上であってもよく、15.0μm以上であってもよい。本実施形態の繊維基材の表面うねり(Wa)の上限値は特に制限されるものではないが、40μm以下であってもよく、30μm以下であってもよく、25μm以下であってもよい。つまり、前記繊維基材の表面うねり(Wa)は、5.0超~40μmであってもよく、6.0~30μmであってもよく、7.0~30μmであってもよく、10~25μmであってもよく、15~25μmであってもよい。
本実施形態によれば、繊維基材の表面うねり(Wa)が上記範囲であっても、金属張り積層板の厚み精度を高く維持することができる。
【0027】
<熱硬化性樹脂組成物>
本実施形態のプリプレグは、前述の通り、厚み40μm以上の繊維基材と熱硬化性樹脂組成物とを含有するプリプレグである。前記熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂を含有する。前記熱硬化性樹脂組成物が含有する成分としては、特に制限されるものではないが、前記熱硬化性樹脂の他に、硬化剤、硬化促進剤、無機充填材、有機充填材、カップリング剤、レベリング剤、酸化防止剤、難燃剤、難燃助剤、揺変性付与剤、増粘剤、可撓性材料、界面活性剤及び光重合開始材からなる群から選択される少なくとも1つを含有することが好ましい。
以下、前記熱硬化性樹脂組成物が含有する各成分について順に説明する。
【0028】
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、マレイミド樹脂、変性マレイミド樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。前記変性マレイミド樹脂としては、少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物と、モノアミン化合物及びジアミン化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物との反応物等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、特にこれらに制限されるものではなく、公知の熱硬化性樹脂を使用できる。熱硬化性樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、成形性及び電気絶縁性の観点から、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、マレイミド樹脂、変性マレイミド樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂及びビスマレイミドトリアジン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含有することも好ましく、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、変性マレイミド樹脂及びシアネート樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含有することがより好ましい。
【0029】
エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であることが好ましい。ここで、エポキシ樹脂は、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂、グリシジルアミンタイプのエポキシ樹脂、グリシジルエステルタイプのエポキシ樹脂等に分類される。これらの中でも、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂は、主骨格の違いによっても種々のエポキシ樹脂に分類される。例えば、上記それぞれのタイプのエポキシ樹脂において、さらに、ビスフェノール型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;脂肪族鎖状エポキシ樹脂;ノボラック型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;ナフタレン骨格含有型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂;ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂などに分類される。エポキシ樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、絶縁信頼性及び耐熱性の観点から、2種以上を併用してもよい。
エポキシ樹脂としては、ノボラック型エポキシ樹脂であってもよく、フェノールノボラック型エポキシ樹脂であってもよい。
【0030】
熱硬化性樹脂組成物中の熱硬化性樹脂の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の総和100質量部に対して、好ましくは10~200質量部、より好ましくは20~150質量部、さらに好ましくは20~80質量部である。
【0031】
(硬化剤)
硬化剤としては、例えば、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含有する場合は、フェノール系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、活性エステル基含有化合物等のエポキシ樹脂用硬化剤などが挙げられる。また、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂以外の樹脂を含有する場合、その熱硬化性樹脂用の硬化剤として公知のものを用いることができる。硬化剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記フェノール系硬化剤としては、特に制限されるものではないが、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、フェノールノボラック型フェノール樹脂、ナフチレンエーテル型フェノール樹脂、トリアジン骨格含有フェノール樹脂等が好ましく挙げられる。
【0033】
前記シアネートエステル系硬化剤としては、特に制限されるものではないが、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート))等が挙げられる。
前記酸無水物系硬化剤としては、特に制限されるものではないが、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
前記アミン系硬化剤としては、特に制限されるものではないが、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族アミン;4,4’-ジアミノジフェニルメタン等の芳香族アミンなどが挙げられる。
また、硬化剤としては、ユリア樹脂等も用いることができる。
【0034】
熱硬化性樹脂組成物が硬化剤を含有する場合、その含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは20~200質量部、より好ましくは20~150質量部、さらに好ましくは30~100質量部である。
なお、熱硬化性樹脂組成物が硬化剤を含有する場合、その含有量は、官能基当量を用いて表してもよい。具体的には、硬化剤の含有量は、(熱硬化性樹脂の質量/官能基当量)≒(硬化剤の質量/熱硬化性樹脂と反応し得る官能基当量)×定数C、という式を満たす量であることが好ましい。定数Cは、硬化剤の官能基の種類によって変化し、該官能基がフェノール性水酸基の場合には0.8~1.2が好ましく、アミノ基の場合には0.2~0.4が好ましく、活性エステル基の場合には0.3~0.6が好ましい。
熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含有する場合には、前記式は、(エポキシ樹脂の質量/エポキシ基当量)≒(硬化剤の質量/エポキシ基と反応し得る官能基当量)×定数Cとなる。
【0035】
(硬化促進剤)
硬化促進剤としては、前記熱硬化性樹脂の硬化に用いられる一般的な硬化促進剤を使用することができる。例えば、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含有する場合、硬化促進剤としては、イミダゾール化合物及びその誘導体;リン系化合物;第3級アミン化合物;第4級アンモニウム化合物等が挙げられる。硬化反応の促進の観点から、イミダゾール化合物及びその誘導体が好ましい。
イミダゾール化合物及びその誘導体の具体例としては、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2'-メチルイミダゾリル-(1’)]エチル-s-トリアジン等のイミダゾール化合物;1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテート等の、前記イミダゾール化合物とトリメリト酸との塩;前記イミダゾール化合物とイソシアヌル酸との塩;前記イミダゾール化合物と臭化水素酸との塩などが挙げられる。イミダゾール化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
硬化促進剤は、イミダゾール化合物及びその誘導体であってもよく、イミダゾール化合物であってもよい。
【0036】
熱硬化性樹脂組成物が硬化促進剤を含有する場合、その含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは0.1~10質量部である。
【0037】
(無機充填材)
無機充填材により、熱膨張率の低減及び塗膜強度を向上させることができる。
無機充填材としては、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、マイカ、カオリン、ベーマイト、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、酸化アルミニウム、ジルコニア、ムライト、マグネシア、酸化亜鉛、酸化チタン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、クレー(例えば、焼成クレー等)、モリブデン酸亜鉛等のモリブデン酸化合物、ガラス短繊維、ガラス粉及び中空ガラスビーズ等が挙げられる。なお、ガラス短繊維、ガラス粉及び中空ガラスビーズの材料であるガラスとしては、Eガラス、Tガラス、Dガラス等が好ましく挙げられる。無機充填材は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、熱膨張率の低減、比誘電率及び誘電正接の低減の観点からは、シリカ、アルミナが好ましく、また、耐熱性の観点からは、水酸化アルミニウムが好ましく、シリカ、水酸化アルミニウムがより好ましい。
前記シリカとしては、湿式法で製造され含水率の高い沈降シリカと、乾式法で製造され結合水等をほとんど含まない乾式法シリカが挙げられる。乾式法シリカとしては、さらに、製造法の違いにより、破砕シリカ、フュームドシリカ、溶融シリカ(溶融球状シリカ)が挙げられる。
無機充填材は、耐湿性を向上させるためにシランカップリング剤等の表面処理剤で表面処理されていてもよく、分散性を向上させるために疎水性化処理されていてもよい。
【0038】
熱硬化性樹脂組成物が無機充填材を含有する場合、その含有量は、添加目的によっても異なるが、固形分の総和に対して0.1~65体積%が好ましい。固形分の総和に対して0.1体積%以上であれば熱膨張係数を小さくできる傾向にある。一方、固形分の総和に対して65体積%以下に抑えることによって、樹脂成分配合時の粘度が高くなり過ぎず、作業性が低下することを抑制し易い傾向にある。同様の観点から、無機充填材の含有量は、より好ましくは10~60体積%、さらに好ましくは15~55体積%、特に好ましくは30~55体積%である。
【0039】
(カップリング剤)
カップリング剤を含有させることにより、無機充填材及び有機充填材の分散性の向上、及び補強基材及び金属箔への密着性の向上効果がある。カップリング剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
カップリング剤としては、チタネートカップリング剤、シランカップリング剤等であってもよい。
【0040】
(有機溶媒)
取り扱いを容易にする観点から、熱硬化性樹脂組成物はさらに有機溶媒を含有していてもよい。本明細書では、有機溶媒を含有する熱硬化性樹脂組成物を、樹脂ワニスと称することがある。
該有機溶媒としては、特に制限されるものではないが、メタノール、エタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブタノン、シクロヘキサノン、4-メチル-2-ペンタノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の窒素原子含有溶媒;ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶媒;γ-ブチロラクトン等のエステル系溶媒などが挙げられる。
有機溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
塗布容易性の観点から、例えば、熱硬化性樹脂組成物の不揮発分濃度が好ましくは20~85質量%、より好ましくは40~80質量%となるように有機溶媒の含有量を調節すればよい。
ただし、有機溶媒を用いて樹脂ワニスを調製してもよいが、後述する本実施形態のプリプレグの製造方法では樹脂フィルムを作製してから当該樹脂フィルムを繊維基材へ含浸させてプリプレグを得るため、樹脂フィルム作製段階で有機溶媒は揮発することになる。その結果、本実施形態のプリプレグ中には、有機溶媒がほとんど残存しておらず、具体的には5質量%以下である。
【0042】
前記熱硬化性樹脂組成物の調製方法は特に制限されるものではなく、従来公知の調製方法を採用できる。
例えば、前記有機溶媒中に、熱硬化性樹脂及び必要に応じてその他の成分を加えた後、各種混合機を用いて混合及び撹拌することにより、樹脂ワニスとして調製することができる。混合機としては、超音波分散方式、高圧衝突式分散方式、高速回転分散方式、ビーズミル方式、高速せん断分散方式、自転公転式分散方式等の混合機が挙げられる。
【0043】
(プリプレグの厚み)
本実施形態のプリプレグの厚みは、繊維基材の厚み等に応じて適宜決定すればよいが、50~300μmであってもよく、50~250μmであってもよく、55~200μmであってもよく、60~180μmであってもよく、60~170μmであってもよく、60~150μmであってもよい。ここで、プリプレグの厚みとは、プリプレグ1枚の厚みのことである。プリプレグの厚みが上記下限値以上であると、本実施形態による表面うねりの低減効果が大きく得られる傾向にある。プリプレグの厚みが上記上限値以下であると、本実施形態において、積層板の製造後にボイド発生を抑えることができる傾向にある。
なお、本明細書において、プリプレグの厚みは、任意の5ヵ所をデジマチックインジケータで測定して得られる値の平均値である。
【0044】
[プリプレグの製造方法]
本実施形態のプリプレグの製造方法は特に制限されるものではないが、金属張り積層板の厚み精度及び耐熱性を高める観点から、下記製造方法が好ましい。
つまり、厚み40μm以上の繊維基材に熱硬化性樹脂組成物のフィルムをラミネートによって含浸させることによるプリプレグの製造方法であって、好ましくは、前記繊維基材中に前記熱硬化性樹脂組成物の含浸領域と未含浸領域とを設け、且つ、前記未含浸領域を断続的に存在させることによって、表面うねり(Wa)が7.0μm以下であり、且つ最低溶融粘度が800~4,000Pa・sであるプリプレグを製造する方法、が好ましい。前記未含浸領域は、面内方向において断続的に存在させることがより好ましい。
当該製造方法では、熱硬化性樹脂組成物のフィルム(以下、「樹脂フィルム」と称することがある)を使用する。なお、繊維基材を樹脂ワニスに浸漬してから乾燥させる方法では、繊維基材中に意図的に未含浸領域を設けることが困難であり、表面うねり(Wa)も大きくなる傾向にある(図3参照)ため、上記製造方法が好ましい。
前記プリプレグの製造方法において、繊維基材、熱硬化性樹脂組成物、表面うねり(Wa)及び最低溶融粘度については前述の通りに説明される。
【0045】
前記樹脂フィルムは、離型フィルムの一方の面上に熱硬化性樹脂組成物の層(樹脂層)を形成することによって作製することができる。当該樹脂層の形成は、例えば、前記樹脂ワニスを、離型フィルムの一方の面に塗布した後、乾燥することによって行うことができる。
樹脂ワニスを塗布する方法は特に制限されるものではなく、例えば、コンマコーター、バーコーター、キスコーター、ロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター等の公知の塗工装置を用いて実施することができる。これらの塗工装置は、樹脂層の膜厚によって、適宜選択することが好ましい。
乾燥温度及び乾燥時間は、有機溶媒の使用量、有機溶媒の沸点等によって異なるが、例えば、30~70質量%の有機溶媒を含む樹脂ワニスの場合、50~160℃で1~8分間乾燥させることにより、樹脂フィルムを好適に形成することができる。
こうして作製されたフィルムを、離型フィルム付き樹脂フィルムと称することがある。
【0046】
(樹脂フィルムの厚み)
樹脂フィルムの厚みは、プリプレグの厚み等に応じて適宜決定すればよい。例えば、繊維基材の厚みが40~120μmの範囲にある場合、樹脂フィルムの厚みは、10~100μmが好ましく、15~70μmがより好ましく、20~50μmがさらに好ましい。なお、本明細書において、樹脂フィルムの厚みは、次のようにして測定した値である。まず、任意の5ヵ所でデジマチックインジケータを用いて、塗工後の樹脂付きフィルムの総厚みを測定する。その測定箇所の樹脂層を接着テープで剥離してからデジマチックインジケータによって離型フィルムの厚みを測定し、総厚みから離型フィルムの厚みを減算することで得られる値の平均値である。
樹脂フィルムの厚みが上記下限値以上であると、厚み40μm以上の厚いガラスクロスに含浸させるための樹脂量を充分に確保することができる傾向にある。樹脂フィルムの厚みが上記上限値以下であれば、樹脂フィルムの製造をし易い傾向にある。
【0047】
(離型フィルム)
離型フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリエチレン、ポリビニルフルオレート、ポリイミド等の有機フィルム;銅、アルミニウム等の金属又は合金フィルムなどが挙げられる。これらの離型フィルムは、離型剤によって離型処理されたものであってもよい。
離型フィルムの厚みは制限されるものではなく、熱硬化性樹脂組成物を塗布する際の取り扱い性及び経済性の観点から、10~200μmが好ましく、20~100μmがより好ましく、30~70μmがさらに好ましい。
離型フィルムとしては、市販品を使用できる。
【0048】
(繊維基材へ樹脂フィルムを含浸させる方法)
次に、前記繊維基材に前記樹脂フィルムをラミネートによって含浸させる方法について説明する。
まず、前記離型フィルム付き樹脂フィルムを、前記繊維基材の少なくとも一方の面に、樹脂フィルムが前記繊維基材と当接するように配置する。その後、配置された離型フィルム付き樹脂フィルムと前記繊維基材とを加熱及び加圧することによって、前記樹脂フィルムが前記繊維基材に含浸される。この際、前記繊維基材中に、前記熱硬化性樹脂組成物の未含浸領域を断続的に設ける。こうして、離型フィルム付きの本実施形態のプリプレグが得られる。
ここでの加熱及び加圧は、ラミネートによって行うことが好ましい。ラミネートの方法としては、(a)ロールラミネート、(b)真空ラミネート法等により減圧下でラミネートする方法、などが挙げられる。
【0049】
(a)ロールラミネートの条件は、特に制限されるものではないが、加熱温度は好ましくは80~180℃、加圧圧力は好ましくは0.05~1.0MPa/mである。
(b)減圧下でラミネートする方法の条件は、特に制限されるものではないが、加熱温度は好ましくは50~170℃、より好ましくは110~160℃、加圧時間は好ましくは10~120秒、より好ましくは20~80秒、加圧圧力は好ましくは0.05~1.0MPa、より好ましくは0.1~0.6MPaである。
【0050】
(未含浸領域を断続的に設ける方法)
繊維基材中に前記熱硬化性樹脂組成物の未含浸領域を断続的に設ける方法は、特に制限されるものではないが、例えば、前記離型フィルム付き樹脂フィルムと前記繊維基材を加熱及び加圧する際の条件を調整する方法が挙げられる。具体的には、前記ラミネート条件を調整する方法が挙げられる。
ここで、繊維基材が薄い場合と繊維基材が厚い場合とにおいて同じラミネート条件にした場合、繊維基材が厚い場合の方が、樹脂フィルムが繊維基材へ含浸し難い傾向がある。そのため、従来の薄い繊維基材へ樹脂フィルムをラミネートする際の条件と本実施態様のラミネート条件が同程度であったとしても、本実施態様において繊維基材中に前記熱硬化性樹脂組成物の未含浸領域を断続的に設けることができる。
加熱及び加圧する条件の具体的な調整方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、次の方法が挙げられる。最初に、所定の加熱及び所定の加圧条件にてプリプレグを作製した後、前記算出方法に基づいた、繊維基材中における前記熱硬化性樹脂組成物の含浸領域の存在比率を求める。その結果、含浸領域が100%である場合、つまり未含浸領域が無い場合には、加熱温度を下げるか若しくは加圧圧力を下げて、又は加熱温度と加圧圧力の両方を下げて、プリプレグを作製し直し、再度、含浸領域の存在比率を求める。必要に応じてさらにこれを繰り返すことで、未含浸領域を断続的に(好ましくは面内方向において断続的に)有するプリプレグを製造する条件を容易に把握することができる。
また、未含浸領域の存在比率を低く調整したい場合には、加熱温度を上げるか若しくは加圧圧力を上げて、又は加熱温度と加圧圧力の両方を上げて、プリプレグを作製し直せばよい。
前記加熱温度としては、繊維基材中に前記熱硬化性樹脂組成物の未含浸領域を断続的に設けるという観点から、好ましくは120℃以上、より好ましくは120~170℃、さらに好ましくは130~160℃である。
また、前記加圧圧力としては、繊維基材中に前記熱硬化性樹脂組成物の未含浸領域を断続的に設けるという観点から、好ましくは0.2MPa以上、より好ましくは0.2~1.0MPa、さらに好ましくは0.3~0.8MPa、特に好ましくは0.3~0.6MPaである。
なお、減圧下でラミネートする場合には、真空度を調整することで未含浸領域の存在比率を調整することも可能である。
【0051】
なお、樹脂フィルムは、繊維基材の両面にそれぞれ1枚以上ずつ配置してラミネートすることが好ましい。樹脂フィルムの枚数は、繊維基材の一面当たり、好ましくは1枚又は2枚であり、より好ましくは1枚である。
前記樹脂フィルムが前記繊維基材に含浸された後は、必要に応じて冷却した後、得られた離型フィルム付きのプリプレグから離型フィルムを剥離することによって、表面うねり(Wa)が7.0μm以下であり、最低溶融粘度が前記所定範囲であるプリプレグを製造することができる。
【0052】
[積層板、金属張り積層板]
本開示は、本実施形態のプリプレグ1枚以上を有する積層板も提供する。なお、金属箔を配置した積層板は、特に、「金属張り積層板」と称される。つまり、本開示は、金属箔と、本実施形態のプリプレグ1枚以上と、を有する金属張り積層板も提供する。本実施形態のプリプレグを、その他のプリプレグと併用してもよい。本実施形態の積層板及び金属張り積層板において、本実施形態のプリプレグ1枚以上を有している限りにおいて、プリプレグの枚数は、1~20枚であってもよく、2~20枚であってもよく、5~18枚であってもよく、8~16枚であってもよい。
金属張り積層板が有する金属箔としては、銅箔、アルミニウム箔、錫箔、錫鉛合金(はんだ)箔、ニッケル箔等が挙げられる。金属箔の厚みは、一般的に積層板に用いられる厚みとすることができ、例えば、1~200μmである。その他にも、ニッケル、ニッケル-リン、ニッケル-スズ合金、ニッケル-鉄合金、鉛、鉛-スズ合金等を中間層とし、この両面に0.5~15μmの銅層と10~300μmの銅層を設けた3層構造の複合箔、アルミニウムと銅箔とを複合した2層構造複合箔などを用いることができる。
なお、金属箔が銅箔の場合、金属張り積層板を銅張積層板と称する。
【0053】
[金属張り積層板の製造方法]
本実施形態のプリプレグ1枚の両面又は少なくとも本実施形態のプリプレグ1枚以上を含むプリプレグの積層物の両面に金属箔を設置した後、プレス成形することにより、本実施形態の金属張り積層板を製造することができる。
前記プレス成形の具体的方法としては、例えば、真空プレスにて、真空度が好ましくは300kPa以下、より好ましくは100kPa以下、温度が好ましくは130~350℃、より好ましくは150~300℃、さらに好ましくは170~250℃で、圧力が好ましくは0.5~10MPa、より好ましくは1~5MPa、さらに好ましくは2~5MPaの条件でプレス成形する方法等が挙げられる。当該プレス成形によって、前記繊維基材中における熱硬化性樹脂組成物の未含浸領域へ熱硬化性樹脂組成物が流動し、その結果、ボイドの発生が抑制される。
前記プリプレグの積層物は、特に制限されるものではないが、厚み精度が高い金属張り積層板を得るためには、10質量%以上が本実施形態のプリプレグで構成されていることが好ましく、20質量%以上が本実施形態のプリプレグで構成されていることがより好ましく、50質量%以上が本実施形態のプリプレグで構成されていることがさらに好ましく、全て本実施形態のプリプレグで構成されていてもよい。ただし、本実施形態のプリプレグが、プリプレグの積層物の10質量%未満を構成している場合であっても、金属張り積層板の厚み精度を高くすることに寄与する。
なお、本実施形態の金属張り積層板からエッチング処理等によって金属箔を除去することによって、本実施形態の積層板を得ることができる。
【0054】
[プリント配線板]
本開示は、本実施形態の積層板又は本実施形態の金属張り積層板を有する、プリント配線板も提供する。換言すると、本開示は、本実施形態の積層板又は本実施形態の金属張り積層板に配線パターンを形成することによって得られるプリント配線板も提供する。
本実施形態のプリント配線板は、本実施形態の積層板又は本実施形態の金属張り積層板に配線パターンを形成することによって製造することができる。配線パターンの形成方法としては、サブトラクティブ法、フルアディティブ法、セミアディティブ法(SAP:Semi Additive Process)、モディファイドセミアディティブ法(m-SAP:modified Semi Additive Process)等の公知の方法が挙げられる。
【0055】
[半導体パッケージ]
本開示は、本実施形態のプリント配線板と、半導体素子とを有する、半導体パッケージも提供する。本実施形態の半導体パッケージは、例えば、本実施形態のプリント配線板の所定の位置に、半導体チップ、メモリ等の半導体素子を公知の方法によって搭載した後、封止樹脂等によって半導体素子を封止することによって製造できる。
【実施例0056】
次に、下記の実施例により本実施形態をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は本実施形態を制限するものではない。
なお、各例で製造したプリプレグ及び銅張積層板について、下記方法に従って評価を行った。
【0057】
[1.表面うねり(Wa)]
各例で作製したプリプレグを用いて、表面うねり(Wa)を測定した。形状解析レーザ顕微鏡「VK-X100」(株式会社キーエンス製)を用いて、観察アプリケーションで形状測定を自動測定で行い、ISO 4287(1997年)に準拠したうねり曲線を得た。得られたうねり曲線について、解析アプリケーションを用いて表面粗さ解析を行い、表面うねり(Wa)を算出した。ここで、うねり曲線とは、断面曲線に位相補償形高域フィルターλc(λc=80μm)を適用し、前記断面曲線から80μm未満の波長を除去した曲線である。解析範囲は1,000μm×1,000μmとした。
なお、表面うねり(Wa)は、プリプレグの両面について測定し、値の大きい方を採用した。
【0058】
[2.最低溶融粘度]
各例で作製したプリプレグをもみほぐすことによって、樹脂粉を採取した。得られた樹脂粉について、一定昇温速度で加熱し、溶融粘度を測定した。なお、溶融粘度の測定方法及び測定条件の詳細は以下の通りである。
測定サンプル:前記樹脂粉を一軸成形によって成形し、1mmの厚みに調整して測定サンプルとした。
測定条件:前記測定サンプルを用いて、DISCOVERY HR-2(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)によって、4℃/分の昇温速度で30℃から200℃の温度範囲で一定圧力0.2Nをかける条件にて、最低溶融粘度を測定した。
【0059】
[3.表裏の熱硬化性樹脂組成物の交わりの有無]
実施例1~6及び比較例1~4において、表1に記載の通り、ガラスクロスの表裏に対して異なる色を有する樹脂フィルムをラミネートすることによってプリプレグを作製した際の色の交わり有無を目視で観察した。例えば、表側からプリプレグを観察した場合に、表側に使用した樹脂フィルムの色から変化がない場合は、交わりについて「なし」と評価し、表側に使用した樹脂フィルムの色と裏側に使用した樹脂フィルムの色が混ざった色に変化している場合は、交わりについて「有」と評価した。なお、「有」の場合は、未含浸領域が断続的に存在していると判断し、「なし」の場合は、未含浸領域の存在の仕方が断続的ではないと判断した。
【0060】
[4.未含浸領域の有無]
実施例1~6及び比較例1~4で作製したプリプレグについて、下記算出方法に基づいて、繊維基材中における熱硬化性樹脂組成物の含浸領域の存在比率(%)を求めた。当該含浸領域の存在比率が100%でなければ、繊維基材中に熱硬化性樹脂組成物の未含浸領域を有することを意味する。実施例1~6及び比較例1~4で得られたプリプレグについては、いずれも含浸領域の存在比率が100%ではなく、繊維基材中に熱硬化性樹脂組成物の未含浸領域を有していることを確認した。
-算出方法-
光学顕微鏡(オリンパス株式会社製、商品名:MX61L-F)を用いて、下記の条件でプリプレグの表面を観察することによって、表面観察画像を得た。
<観察条件>
・倍率:50倍
・観察モード:暗視野
・感度:ISO400
・表面撮影時の露出時間:60~100ms
・観察環境の明るさ:35Wの蛍光灯が2本、観察ステージから2m上部に設置されている。
得られた表面観察画像を画像編集ソフトによって白黒モードへ変換後、BMP(Microsoft Windows Bitmap Image)形式で保存した。次に、BMP形式で保存した白黒モードの表面観察画像を、画像変換ソフトによって1ピクセル毎にRGB(Red, Green, Blue)値に変換後、CSV(comma-separated values)形式で保存した。CSV形式で保存したRGBデータをMicrosoft Excel(Microsoft Corporation製)に貼り付け、黒色部(RGB値=255)と白色部(RGB値=0)の面積を算出した。それらの値から、黒色部と白色部の合計に対する黒色部の面積比率を求めた。こうして得られた黒色部の面積比率を、含浸領域の存在比率(%)とした。
ここで、表面観察画像を撮影する際には、含浸領域及び未含浸領域を充分に反映できるように、前記の通り、表面撮影時の露出時間を60~100msの間で調整することによって、適度な明るさで撮影した。
なお、前記画像編集ソフトとしては、「Microsoft Paint」(Microsoft Corporation製)を使用した。また、前記画像変換ソフトとしては、フリーソフトである「bmp2csv」を使用した。
【0061】
[5.銅張積層板の厚みのバラつき]
各例で得られた銅張積層板の幅方向の中心から50mm単位で幅方向に10点、及び該10点各々を起点として長さ方向に50mm単位で10点ずつ(但し、それぞれ前記起点を含む10点である。すなわち、測定箇所は、10点×10点=計100点)の厚みを測定した。具体的には、水平に調整した台座とデジマチックインジケータ「ID-C112P」(株式会社ミツトヨ製)を用いて0.001mm単位で測定した。そして、下記式から求められる値を、厚みのバラつきの指標とした。値が小さい方が厚みのバラつきが小さいため、厚み精度に優れることを示す。
厚みのバラつき(%)=100×(厚みの最大値-厚みの平均値)/厚みの平均値
【0062】
[6.耐熱性]
各例で得られた銅張積層板を25mm角の大きさに切り出して評価基板を作製した。温度288℃のはんだ浴に、前記評価基板を最長で60分間フロートしながら評価基板の外観を目視観察することによって、膨れが発生するまでの時間を測定し、下記評価基準に従って評価した。なお、60分間フロートした時点で膨れが確認されなかった場合は「>60」と表記した。膨れが発生するまでの時間が長いほど、耐熱性(はんだ耐熱性)に優れる。
A:60分間のフロートで膨れが発生しなかった。
C:フロート60分以内に膨れが発生した。
【0063】
[7.絶縁信頼性]
実施例1~6及び比較例1~4で得られた銅張積層板について、スルーホール間隔(隣接する穴壁の距離)が200μmとなるようにドリル加工してスルーホールを形成した後、形成したスルーホールをデスミア処理し、次いで無電解めっき処理を行い、さらに電気めっき処理を行うことで、銅張積層板の上下を導通したテストパターンを作製し、これを測定用サンプルとした。各測定用サンプルについて、160穴の絶縁抵抗を経時的に測定した。測定条件は、130℃及び85%RH雰囲気中、5.5Vを印加して行い、導通破壊が発生するまでの時間を測定した。測定時間は200時間までとし、200時間超であれば絶縁信頼性が十分であると判断した。
【0064】
参考例1
下記ガラスクロスの表面うねり(Wa)を、前記[1.表面うねり(Wa)]と同様にして測定した後、厚みの異なるガラスクロスの表面うねり(Wa)を比較した。なお、下記の各ガラスクロスの厚みは、任意の5ヵ所をマイクロメータ「MDC-25MX」(株式会社ミツトヨ製)で測定して得られた値の平均値である。
<厚み40μm以上のガラスクロス>
(i)ガラスクロス「IPC#2116」(日東紡績株式会社製、坪量:104g/m、基材幅:530mm、厚み:91μm)
(ii)ガラスクロス「IPC#3313」(日東紡績株式会社製、坪量:82g/m、基材幅:530mm、厚み:73μm)
(iii)ガラスクロス「IPC#1078」(日東紡績株式会社製、坪量:47g/m、基材幅:530mm、厚み:44μm)
<厚み40μm未満のガラスクロス>
(iv)ガラスクロス「IPC#1037」(日東紡績株式会社製、坪量:24g/m、基材幅:530mm、厚み:24μm)
(v)ガラスクロス「IPC#1027」(日東紡績株式会社製、坪量:20g/m、基材幅:530mm、厚み:21μm)
上記ガラスクロス「IPC#2116」、「IPC#3313」、「IPC#1078」の表面うねり(Wa)は、それぞれ21.9μm、13.4μm、7.3μmであった。
また、上記ガラスクロス「IPC#1037」、「IPC#1027」の表面うねり(Wa)は、それぞれ4.7μm、4.5μmであった。
厚み40μm以上のガラスクロスは、厚み40μm未満のガラスクロスに比べて表面うねり(Wa)が大きいことが分かる。
【0065】
製造例1
(1-1.樹脂ワニスAの作製)
フェノールノボラック型エポキシ樹脂「EPICLON(登録商標)N-770」(DIC株式会社製、エポキシ当量:188g/eq)60質量部、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂(UBE株式会社製、商品名:MEH-7700)40質量部、水酸化アルミニウム17.5質量部と溶融シリカ86質量部、2-メチルイミダゾール0.5質量部、希釈溶媒としてメチルイソブチルケトンとシクロヘキサノンを加えて混合し、白色を有する固形分濃度65質量%の樹脂ワニスA(水酸化アルミニウムの含有量:8体積%、溶融シリカの含有量:32体積%)を作製した。
【0066】
(1-2.樹脂ワニスBの作製)
前記樹脂ワニスAに、さらに、スーダンブラック(中央合成化学株式会社製、商品名:SUDAN BLACK 141)を固形分の総和に対して0.3質量%添加して撹拌することによって、黒色を有する固形分濃度65質量%の樹脂ワニスB(水酸化アルミニウムの含有量:8体積%、溶融シリカの含有量:32体積%)を作製した。樹脂ワニスBは、樹脂ワニスAに黒色を付しただけのものである。
【0067】
製造例2
(1.変性マレイミド樹脂の作製)
温度計、撹拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2Lの反応容器に、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン595.8gと、4,4’-ジアミノジフェニルメタン54.2g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル350.0gを入れた後、還流させながら5時間反応させることで、変性マレイミド樹脂の溶液を得た。
(2-1.樹脂ワニスCの作製)
前記変性マレイミド樹脂の溶液107質量部、4官能ナフタレン型エポキシ樹脂「EXA-4710」(DIC株式会社製)30質量部、水酸化アルミニウム17.5質量部と溶融シリカ130質量部、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1)’]-エチル-S-トリアジン0.5質量部、希釈溶媒としてメチルイソブチルケトンとシクロヘキサノンを加えて混合し、褐色を有する固形分濃度65質量%の樹脂ワニスC(水酸化アルミニウムの含有量:8体積%、溶融シリカの含有量:41.5体積%)を作製した。
【0068】
(2-2.樹脂ワニスDの作製)
前記樹脂ワニスCに、さらに、スーダンブラック(中央合成化学株式会社製、商品名:SUDAN BLACK 141)を固形分の総和に対して0.3質量%添加して撹拌することによって、黒色を有する固形分濃度65質量%の樹脂ワニスD(水酸化アルミニウムの含有量:8体積%、溶融シリカの含有量:41.5体積%)を作製した。樹脂ワニスDは、樹脂ワニスCに黒色を付しただけのものである。
【0069】
実施例1
(1.樹脂フィルムの作製)
製造例1で得た樹脂ワニスAを、PETフィルム(東洋紡フイルムソリューション株式会社製、厚み:50μm、離型フィルム、商品名:G2)上に、コンマコーターを使用して塗布した。この際、塗布幅530mm、乾燥後の厚みが30μmになるように、塗布量を調整した。その後、130℃で2分間加熱乾燥することによって、PETフィルム付き樹脂フィルムAを作製した。
また、上記同様にして、製造例1で得た樹脂ワニスBを用いて、PETフィルム付き樹脂フィルムBを作製した。
(2.プリプレグの作製)
次に、ガラスクロス「IPC#2116」(日東紡績株式会社製、坪量:104g/m、基材幅:530mm、厚み:91μm)の表面に、上記PETフィルム付き樹脂フィルムAの樹脂層面がガラスクロスと当接するように配置し、前記ガラスクロス「IPC#2116」の裏面に、上記PETフィルム付き樹脂フィルムBの樹脂層面がガラスクロスと当接するように配置した。
この「PETフィルム/樹脂フィルムA/ガラスクロス/樹脂フィルムB/PETフィルム」の積層体を、真空ラミネート装置を用いて真空下で加熱加圧した。こうすることで、ガラスクロスに樹脂フィルムの熱硬化性樹脂組成物が含浸した、PETフィルム付きプリプレグを得た。なお、真空ラミネートの条件は、熱盤温度115℃、圧着圧力0.2MPa、加熱加圧時間20秒、真空度100kPa以下、真空時間(これは予備加熱時間に相当し、以下、同様である。)30秒とした。なお、真空ラミネート後には、乾燥工程を設けなかった。得られたPETフィルム付きプリプレグからPETフィルムを剥離して、厚み135μmのプリプレグ1を得た。
なお、プリプレグ1の厚みは、任意の5ヵ所を水平に調整した台座とデジマチックインジケータ(株式会社ミツトヨ製)を用いて測定して得られた値の平均値とした。
また、プリプレグ1における熱硬化性樹脂組成物の含有割合を、以下のように算出した。プリプレグ1を作製する際に使用したPETフィルム付き樹脂フィルム2枚の合計質量から、PETフィルム2枚の合計質量を減算することで、樹脂フィルムの質量(w)を算出した。樹脂フィルムの質量(w)とプリプレグ1の質量(w)を用いて、下記式より、熱硬化性樹脂組成物の含有割合を求めた。
熱硬化性樹脂組成物の含有割合=(w/w)×100
また、得られたプリプレグ1について、前記各評価を行った。結果を表1に示す。
(3.銅張積層板の作製)
得られたプリプレグ1を12枚重ね、その上下に厚み12μmの銅箔「GTS-12」(古河電気工業株式会社製)を配置した。次いで、下記条件にてプレスを行い、銅張積層板1を作製した。得られた銅張積層板1について、前記各評価を行った。結果を表1に示す。
-プレス条件-
加熱条件(樹脂ワニスA):昇温速度3℃/分で25℃から185℃へ昇温し、185℃で90分保持後、30分冷却した。
圧力条件(銅箔で挟まれた12枚のプリプレグにかかる圧力):4MPa(昇温開始から冷却終了まで)
【0070】
実施例2
実施例1のプリプレグの作製において、樹脂ワニスAの代わりに製造例2で作製した樹脂ワニスCを用い、樹脂ワニスBの代わりに製造例2で作製した樹脂ワニスDを用いたこと、及び、真空ラミネートの熱盤温度を120℃に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行うことによって、プリプレグ2(厚み135μm)を作製した。また、実施例1の銅張積層板の製造において、プリプレグ1の代わりにプリプレグ2を用い、かつ、プレス条件を以下の通りに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行うことによって、銅張積層板2を作製した。前記各評価結果を表1に示す。
-プレス条件-
加熱条件:昇温速度3℃/分で25℃から230℃へ昇温し、230℃で90分保持後、30分冷却した。
圧力条件(銅箔で挟まれた12枚のプリプレグにかかる圧力):4MPa(昇温開始から冷却終了まで)
【0071】
実施例3
実施例1のプリプレグの作製において、真空ラミネートの条件を、熱盤温度130℃、加熱加圧時間30秒、圧着圧力0.5MPaに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行うことによって、プリプレグ3(厚み130μm)を作製した。また、実施例1の銅張積層板の製造において、プリプレグ1の代わりにプリプレグ3を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行うことによって、銅張積層板3を作製した。前記各評価結果を表1に示す。
【0072】
実施例4
実施例1のプリプレグの作製において真空ラミネートの条件を、熱盤温度140℃、加熱加圧時間30秒、圧着圧力0.5MPaに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行うことによって、プリプレグ4(厚み130μm)を作製した。また、実施例1の銅張積層板の製造において、プリプレグ1の代わりにプリプレグ4を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行うことによって、銅張積層板4を作製した。前記各評価結果を表1に示す。
【0073】
実施例5
実施例2のプリプレグの作製において真空ラミネートの条件を、熱盤温度140℃、加熱加圧時間30秒、圧着圧力0.5MPaに変更したこと、及び、真空ラミネート後に130℃で60秒乾燥する工程を設けたこと以外は実施例2と同様の操作を行うことによって、プリプレグ5(厚み130μm)を作製した。また、実施例2の銅張積層板の製造において、プリプレグ2の代わりにプリプレグ5を用いたこと以外は実施例2と同様の操作を行うことによって、銅張積層板5を作製した。前記各評価結果を表1に示す。
【0074】
実施例6
実施例1のプリプレグの作製において真空ラミネートの条件を、熱盤温度140℃、加熱加圧時間30秒、圧着圧力0.5MPaに変更したこと、及び、真空ラミネート後に135℃で60秒乾燥する工程を設けたこと以外は実施例1と同様の操作を行うことによって、プリプレグ6(厚み130μm)を作製した。また、実施例1の銅張積層板の製造において、プリプレグ1の代わりにプリプレグ6を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行うことによって、銅張積層板6を作製した。前記各評価結果を表1に示す。
【0075】
比較例1
実施例1のプリプレグの作製において、真空ラミネートの条件を、熱盤温度90℃、加熱加圧時間10秒、圧着圧力0.1MPaに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行うことによって、プリプレグa(厚み140μm)を作製した。また、実施例1の銅張積層板の製造において、プリプレグ1の代わりにプリプレグaを用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行うことによって、銅張積層板aを作製した。前記各評価結果を表1に示す。
【0076】
比較例2
実施例1のプリプレグの作製において、真空ラミネートの条件において熱盤温度を110℃に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行うことによって、プリプレグb(厚み135μm)を作製した。また、実施例1の銅張積層板の製造において、プリプレグ1の代わりにプリプレグbを用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行うことによって、銅張積層板bを作製した。前記各評価結果を表1に示す。
【0077】
比較例3
実施例6のプリプレグの作製において、真空ラミネート後の乾燥工程の条件を乾燥温度140℃に変更したこと以外は実施例6と同様の操作を行うことによって、プリプレグc(厚み130μm)を作製した。また、実施例6の銅張積層板の製造において、プリプレグ6の代わりにプリプレグcを用いたこと以外は実施例6と同様の操作を行うことによって、銅張積層板cを作製した。前記各評価結果を表1に示す。
【0078】
比較例4
実施例6のプリプレグの作製において、真空ラミネート後の乾燥工程の条件を乾燥温度150℃に変更したこと以外は実施例6と同様の操作を行うことによって、プリプレグd(厚み130μm)を作製した。また、実施例6の銅張積層板の製造において、プリプレグ6の代わりにプリプレグdを用いたこと以外は実施例6と同様の操作を行うことによって、銅張積層板dを作製した。前記各評価結果を表1に示す。
【0079】
実施例7
ガラスクロス「IPC#2116」(日東紡績株式会社製、坪量:104g/m、基材幅:530mm、厚み:91μm)を製造例2で調整した樹脂ワニスCに浸漬した後に取り出し、120℃にて2.0分間加熱して乾燥させて、プリプレグ7(厚み180μm)を得た。そして、実施例2の銅張積層板の製造において、プリプレグ2の代わりにプリプレグ7を用いたこと以外は実施例2と同様の操作を行うことによって、銅張積層板7を作製した。前記各評価結果を表2に示す。
【0080】
実施例8
ガラスクロス「IPC#2116」(日東紡績株式会社製、坪量:104g/m、基材幅:530mm、厚み:91μm)を製造例1で調整した樹脂ワニスAに浸漬した後に取り出し、125℃にて2.5分間加熱して乾燥させて、プリプレグ8(厚み180μm)を得た。そして、実施例1の銅張積層板の製造において、プリプレグ1の代わりにプリプレグ8を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行うことによって、銅張積層板8を作製した。前記各評価結果を表2に示す。
【0081】
実施例9
実施例8において、プリプレグの乾燥条件を130℃及び3.0分に変更したこと以外は実施例8と同様の操作を行うことによって、プリプレグ9(厚み180μm)を得た。そして、実施例8の銅張積層板の製造において、プリプレグ8の代わりにプリプレグ9を用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行うことによって、銅張積層板9を作製した。前記各評価結果を表2に示す。
【0082】
実施例10
実施例7において、プリプレグの乾燥条件を135℃及び3.0分に変更したこと以外は実施例7と同様の操作を行うことによって、プリプレグ10(厚み180μm)を得た。そして、実施例7の銅張積層板の製造において、プリプレグ7の代わりにプリプレグ10を用いたこと以外は実施例7と同様の操作を行うことによって、銅張積層板10を作製した。前記各評価結果を表2に示す。
【0083】
実施例11
実施例8において、プリプレグの乾燥条件を140℃及び4.0分に変更したこと以外は実施例8と同様の操作を行うことによって、プリプレグ11(厚み180μm)を得た。そして、実施例8の銅張積層板の製造において、プリプレグ8の代わりにプリプレグ11を用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行うことによって、銅張積層板11を作製した。前記各評価結果を表2に示す。
【0084】
実施例12
実施例8において、プリプレグの乾燥条件を145℃及び4.0分に変更したこと以外は実施例8と同様の操作を行うことによって、プリプレグ12(厚み180μm)を得た。そして、実施例8の銅張積層板の製造において、プリプレグ8の代わりにプリプレグ12を用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行うことによって、銅張積層板12を作製した。前記各評価結果を表2に示す。
【0085】
比較例5
実施例8において、プリプレグの乾燥条件を110℃及び2.0分に変更したこと以外は実施例8と同様の操作を行うことによって、プリプレグe(厚み180μm)を得た。そして、実施例8の銅張積層板の製造において、プリプレグ8の代わりにプリプレグeを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行うことによって、銅張積層板eを作製した。前記各評価結果を表2に示す。
【0086】
比較例6
実施例7において、プリプレグの乾燥条件を115℃及び2.0分に変更したこと以外は実施例7と同様の操作を行うことによって、プリプレグf(厚み180μm)を得た。そして、実施例7の銅張積層板の製造において、プリプレグ7の代わりにプリプレグfを用いたこと以外は実施例7と同様の操作を行うことによって、銅張積層板fを作製した。前記各評価結果を表2に示す。
【0087】
比較例7
実施例7において、プリプレグの乾燥条件を150℃及び7.0分に変更したこと以外は実施例7と同様の操作を行うことによって、プリプレグg(厚み180μm)を得た。そして、実施例7の銅張積層板の製造において、プリプレグ7の代わりにプリプレグgを用いたこと以外は実施例7と同様の操作を行うことによって、銅張積層板gを作製した。前記各評価結果を表2に示す。
【0088】
比較例8
実施例8において、プリプレグの乾燥条件を160℃及び7.0分に変更したこと以外は実施例8と同様の操作を行うことによって、プリプレグh(厚み180μm)を得た。そして、実施例8の銅張積層板の製造において、プリプレグ8の代わりにプリプレグhを用いたこと以外は実施例8と同様の操作を行うことによって、銅張積層板hを作製した。前記各評価結果を表2に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
表1から、プリプレグの表面うねり(Wa)が7.0μm以下の場合、特に4.0μm以下の場合において、プリプレグの最低溶融粘度が800~4,000Pa・sの範囲内である実施例1~6は、プリプレグの最低溶融粘度が800Pa・s未満である比較例1~2と比べて、銅張積層板の厚み精度及び絶縁信頼性が高く、また、プリプレグの最低溶融粘度が4,000Pa・s超である比較例3~4と比べて、銅張積層板の厚み精度及び絶縁信頼性が高く、且つ耐熱性にも優れていることが分かる。
また、表2から、プリプレグの表面うねり(Wa)が7.0μm以下の場合、その中でも4.0超~7.0μmの場合において、プリプレグの最低溶融粘度が800~4,000Pa・sの範囲内である実施例7~12は、プリプレグの最低溶融粘度が800Pa・s未満である比較例5~6と比べて、銅張積層板の厚み精度が高く、また、プリプレグの最低溶融粘度が4,000Pa・s超である比較例7~8と比べて、銅張積層板の厚み精度が高く、且つ耐熱性にも優れていることが分かる。
図1
図2
図3
図4