(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082232
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法、およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20240612BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240612BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240612BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20240612BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/36 C
H01M4/36 E
H01M4/505
H01M4/131
C01G53/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023172838
(22)【出願日】2023-10-04
(31)【優先権主張番号】10-2022-0169819
(32)【優先日】2022-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0123254
(32)【優先日】2023-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】金 珍和
(72)【発明者】
【氏名】金 民漢
(72)【発明者】
【氏名】石 知賢
(72)【発明者】
【氏名】蔡 榮周
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB02
4G048AB04
4G048AC06
4G048AD04
4G048AE05
5H050AA05
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5H050GA02
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5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA13
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
【課題】高ニッケル系正極活物質のエネルギー密度を高めながら長寿命特性と熱安定性特性を向上させるリチウム二次電池用正極活物質、その製造方法、およびこれを含むリチウム二次電池を提供する。
【解決手段】一実施形態によるリチウム二次電池用正極活物質は、複数の1次粒子が凝集してなる2次粒子形態の第1正極活物質、および単粒子形態の第2正極活物質を含むリチウム二次電池用正極活物質であって、第1正極活物質と第2正極活物質はそれぞれ、リチウムと酸素を除いた元素全体に対するニッケルの含量が70モル%以上であるリチウムニッケル系複合酸化物を含み、第1正極活物質は前記2次粒子の表面に膜形態で存在するコーティング部を含み、第2正極活物質は前記単粒子の表面に膜形態で存在するコーティング部を含み、第1正極活物質の前記コーティング部と第2正極活物質の前記コーティング部はそれぞれ、リチウムコバルト酸化物およびコバルトオキシ水酸化物を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の1次粒子が凝集してなる2次粒子形態の第1正極活物質、および
単粒子形態の第2正極活物質を含むリチウム二次電池用正極活物質であって、
第1正極活物質と第2正極活物質はそれぞれ、リチウムと酸素を除いた元素全体に対するニッケルの含量が70モル%以上であるリチウムニッケル系複合酸化物を含み、
第1正極活物質は前記2次粒子の表面に膜形態で存在するコーティング部を含み、
第2正極活物質は前記単粒子の表面に膜形態で存在するコーティング部を含み、
第1正極活物質の前記コーティング部と第2正極活物質の前記コーティング部はそれぞれ、リチウムコバルト酸化物およびコバルトオキシ水酸化物を含む、リチウム二次電池用正極活物質。
【請求項2】
第1正極活物質の前記コーティング部と第2正極活物質の前記コーティング部で、前記リチウムコバルト酸化物と前記コバルトオキシ水酸化物は複合相で存在する、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項3】
前記リチウム二次電池用正極活物質はX線回折分析において、19.5°~20.5°、および39°~40°でピークを示す、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項4】
第1正極活物質の前記コーティング部と第2正極活物質の前記コーティング部それぞれの厚さは1nm~500nmである、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項5】
前記リチウム二次電池用正極活物質全体で、リチウムニッケル系複合酸化物においてリチウムと酸素を除いた元素100モル%に対する表面のコバルトの含量は0.5モル%~5モル%である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項6】
第2正極活物質のコーティング部でニッケルおよびコバルト総量に対比したコバルトの含量(at%)に対する、第1正極活物質のコーティング部でニッケルおよびコバルト総量に対比したコバルトの含量(at%)の比率は、1.45~1.60である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項7】
第1正極活物質のコーティング部でニッケルおよびコバルト総量に対するコバルトの含量は55at%~70at%である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項8】
第2正極活物質のコーティング部でニッケルおよびコバルト総量に対するコバルトの含量は39at%~45at%である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項9】
第1正極活物質は前記2次粒子の内部の1次粒子の表面に位置する粒界コーティング部をさらに含み、
前記粒界コーティング部はリチウムコバルト酸化物およびコバルトオキシ水酸化物を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項10】
第1正極活物質の平均粒径は5μm~20μmであり、
第2正極活物質の平均粒径は0.1μm~10μmである、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項11】
第1正極活物質と第2正極活物質の総量に対して、第1正極活物質は50重量%~90重量%含まれ、第2正極活物質は10重量%~50重量%含まれる、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項12】
第1正極活物質の前記リチウムニッケル系複合酸化物、および第2正極活物質の前記リチウムニッケル系複合酸化物は、それぞれ独立して下記の化学式1で表される、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質:
[化学式1]
Lia1Nix1M1
y1M2
z1O2-b1Xb1
上記化学式1中、0.9≦a1≦1.8、0.7≦x1≦1、0≦y1≦0.3、0≦z1≦0.2、0.9≦x1+y1+z1≦1.1、および0≦b1≦0.1であり、M1およびM2はそれぞれ独立してAl、B、Ba、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Fe、Mg、Mn、Mo、Nb、Si、Sr、Ti、V、W、およびZrからなるグループより選択される一つ以上の元素であり、XはF、PおよびSからなるグループより選択される一つ以上の元素である。
【請求項13】
リチウムと酸素を除いた元素全体に対するニッケルの含量が70モル%以上であるリチウムニッケル系複合酸化物を含有し複数の1次粒子が凝集してなる2次粒子形態である第1正極活物質、リチウムと酸素を除いた元素全体に対するニッケルの含量が70モル%以上であるリチウムニッケル系複合酸化物を含有し単粒子形態である第2正極活物質、硫酸コバルト、および水酸化ナトリウムを溶媒に投入して混合し;
溶媒を除去し;
収得物にリチウム原料を添加し;
熱処理して;
請求項1~12のうちのいずれか一項による正極活物質を得ることを含む、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項14】
第1正極活物質と第2正極活物質は9:1~5:5の重量比で混合される、請求項13に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項15】
前記硫酸コバルトは、第1正極活物質のリチウムニッケル系複合酸化物と第2正極活物質のリチウムニッケル系複合酸化物全体でリチウムと酸素を除いた元素に対するコバルトの含量が0.5モル部~5モル部になるように混合される、請求項13に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項16】
前記水酸化ナトリウムは、第1正極活物質のリチウムニッケル系複合酸化物と第2正極活物質のリチウムニッケル系複合酸化物の全体でリチウムと酸素を除いた元素全体の100モル部に対するナトリウムの含量が1モル部~10モル部になるように混合される、請求項13に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項17】
前記硫酸コバルトにおけるコバルトのモル含量と前記水酸化ナトリウムにおけるナトリウムのモル含量の比率は1:1.1~1:5である、請求項13に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項18】
前記リチウム原料は、第1正極活物質のリチウムニッケル系複合酸化物と第2正極活物質のリチウムニッケル系複合酸化物全体でリチウムと酸素を除いた元素に対するリチウムの含量が0.1モル部~10モル部になるように投入される、請求項13に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項19】
前記熱処理は650℃~900℃の温度範囲で行われる、請求項13に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項20】
第1正極活物質、第2正極活物質、硫酸コバルトおよび水酸化ナトリウムを溶媒に投入して混合することは、
溶媒に第2正極活物質、硫酸コバルトおよび水酸化ナトリウムを投入して混合する第1工程を行った後、ここに第1正極活物質、硫酸コバルトおよび水酸化ナトリウムを投入して混合する第2工程を順次に行うことである、請求項13に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項21】
第1工程の所要時間(分)と第2工程の所要時間(分)の比率は50:50~75:25である、請求項20に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項22】
請求項1~12のうちのいずれか一項によるリチウム二次電池用正極活物質を含む正極、負極、および電解質を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法、およびこれを含むリチウム二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ノートパソコン、スマートフォンなどの移動情報端末器の駆動電源として高いエネルギー密度を有しながらも携帯が容易なリチウム二次電池が主に使用されている。最近はエネルギー密度の高いリチウム二次電池をハイブリッド自動車や電気自動車の駆動用電源または電力貯蔵用電源として使用するための研究が活発に行われている。
【0003】
このような用途に符合するリチウム二次電池を実現するために多様な正極活物質が検討されている。そのうち、リチウムニッケル系酸化物、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物、リチウムコバルト酸化物などが主に正極活物質として使用される。しかし、このような正極活物質は充放電を繰り返すにつれて構造が崩壊するかクラックが発生して、リチウム二次電池の長期寿命が低下し抵抗が増加して満足できる容量特性を示さない問題がある。よって、高容量、高エネルギー密度を実現しながらも長期寿命特性を確保することができる新たな正極活物質の開発が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高ニッケル系正極活物質のエネルギー密度を高めながら長寿命特性と熱安定性特性を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、複数の1次粒子が凝集してなる2次粒子形態の第1正極活物質、および単粒子形態の第2正極活物質を含むリチウム二次電池用正極活物質であって、第1正極活物質と第2正極活物質はそれぞれ、リチウムと酸素を除いた元素全体に対するニッケルの含量が70モル%以上であるリチウムニッケル系複合酸化物を含み、第1正極活物質は前記2次粒子の表面に膜形態で存在するコーティング部を含み、第2正極活物質は前記単粒子の表面に膜形態で存在するコーティング部を含み、第1正極活物質の前記コーティング部と第2正極活物質の前記コーティング部はそれぞれ、リチウムコバルト酸化物およびコバルトオキシ水酸化物を含む、リチウム二次電池用正極活物質を提供する。
【0006】
他の一実施形態では、リチウムと酸素を除いた元素全体に対するニッケルの含量が70モル%以上であるリチウムニッケル系複合酸化物を含有し複数の1次粒子が凝集してなる2次粒子形態である第1正極活物質、リチウムと酸素を除いた元素全体に対するニッケルの含量が70モル%以上であるリチウムニッケル系複合酸化物を含有し単粒子形態である第2正極活物質、硫酸コバルトおよび水酸化ナトリウムを溶媒に投入して混合し;溶媒を除去し;収得物にリチウム原料を添加し;熱処理して;前述の正極活物質を得ることを含む、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供する。
【0007】
また他の一実施形態では、前記正極活物質を含む正極と負極および電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0008】
一実施形態によるリチウム二次電池用正極活物質は高容量および高エネルギー密度を実現しながら安定性が強化され、これを含むリチウム二次電池は高温長寿命特性および熱安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態によるリチウム二次電池を示した概略図である。
【
図2】実施例1で製造した正極活物質と寿命前の正極極板、および寿命後の正極極板に対するX線回折(X-ray Diffraction;XRD)分析グラフである。
【
図3】
図2で20°付近でのグラフを拡大したものである。
【
図4】
図2で40°付近のグラフを拡大したものである。
【
図5】Co(OH)
2、CoOOH、およびCo
3O
4に対するX線回折分析グラフである。
【
図6】実施例1の第1正極活物質の破断面に対してSEM-EDS分析でコバルト元素をハイライトしたイメージである。
【
図7】実施例1の第2正極活物質の破断面に対してSEM-EDS分析でコバルト元素をハイライトしたイメージである。
【
図8】実施例1、比較例1、および比較例2で製造したコインハーフセルに対する寿命特性評価グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、具体的な実施形態についてこの技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳しく説明する。しかし、本発明は様々な異なる形態に実現でき、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0011】
ここで使用される用語はただ例示的な実施形態を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なる意味を有しない限り、複数の表現を含む。
【0012】
ここで“これらの組み合わせ”とは、構成物の混合物、積層物、複合体、共重合体、合金、ブレンド、反応生成物などを意味する。
【0013】
ここで“含む”、“備える”または“有する”などの用語は実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないと理解されなければならない。
【0014】
図面で様々な層および領域を明確に表現するために厚さを拡大して示し、明細書全体にわたって類似の部分については同一図面符号を付けた。層、膜、領域、板などの部分が他の部分“の上に”または“上に”あるという時、これは他の部分“の直上に”ある場合だけでなく、その中間にまた他の部分がある場合も含む。逆に、ある部分が他の部分“の直上に”あるという時には中間に他の部分がないことを意味する。
【0015】
また、ここで“層”は、平面図で観察した時、全体面に形成されている形状だけでなく、一部面に形成されている形状も含む。
【0016】
また、平均粒径は当業者に広く公知された方法で測定することができ、例えば、粒度分析器で測定するか、または透過電子顕微鏡写真または走査電子顕微鏡写真で測定することもできる。他の方法としては、動的光散乱法を用いて測定しデータ分析を実施してそれぞれの粒子サイズ範囲に対して粒子数をカウンティングした後、これから計算して平均粒径値を得ることができる。別途の定義がない限り、平均粒径は粒度分布で累積体積が50体積%である粒子の直径(D50)を意味することができる。
【0017】
ここで“または”は排除的な(exclusive)意味に解釈されず、例えば“AまたはB”はA、B、A+Bなどを含むと解釈される。
【0018】
正極活物質
一実施形態では、複数の1次粒子が凝集してなる2次粒子形態の第1正極活物質、および単粒子形態の第2正極活物質を含むリチウム二次電池用正極活物質を提供する。
【0019】
第1正極活物質と第2正極活物質はそれぞれ、リチウムと酸素を除いた元素全体に対するニッケルの含量が70モル%以上であるリチウムニッケル系複合酸化物を含む。即ち、第1正極活物質と第2正極活物質は高ニッケル系正極活物質といえる。
【0020】
また、第1正極活物質は前記2次粒子の表面に膜形態で存在するコーティング部を含み、第2正極活物質は前記単粒子の表面に膜形態で存在するコーティング部を含む。ここで、第1正極活物質の前記コーティング部と第2正極活物質の前記コーティング部はそれぞれ、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)およびコバルトオキシ水酸化物(CoOOH)を含むことを特徴とする。
【0021】
前記コーティング部で、コバルトオキシ水酸化物はR-3m結晶構造であって、リチウムニッケル系複合酸化物と構造的異質化が少なくてリチウム移動を円滑にし、これによりリチウム二次電池の性能を向上させることができる。
【0022】
前記コーティング部は、リチウムコバルト酸化物とコバルトオキシ水酸化物の複合相を含んでいるといえる。このような複合相を通じて正極活物質の表面構造を剛健化することができ、これにより正極活物質と電解液の副反応を抑制し、リチウム二次電池の寿命特性と過充電特性および高温保存特性を改善することができる。前記複合相を通じて高ニッケル系正極活物質の不安定な構造を克服して低ニッケル系正極活物質水準の安定的特性を確保することができる。
【0023】
前記複合相は、正極活物質に対する、あるいは正極極板に対するX線回折分析を通じて確認することができる。例えば、前記正極活物質はX線回折分析で19.5°~20.5°、および39°~40°でピークを示すことができ、このピークはコバルトオキシ水酸化物の存在を示すといえる。
【0024】
前記コーティング部は膜形態で存在するものであって、連続的なコーティング層形態であってもよくアイランド形態であってもよく、これは粒子形態で存在するものとは区分される。
【0025】
第1正極活物質の前記コーティング部と第2正極活物質の前記コーティング部それぞれの厚さは1nm~500nmであってもよく、例えば1nm~400nm、1nm~300nm、1nm~200nm、1nm~100nm、5nm~50nm、または5nm~40nmであってもよい。前記コーティング部はこのような厚さ範囲で形成されることによって、抵抗として作用するか電池性能を低下させることなく、正極活物質の構造を安定化し電解質との副反応を抑制してリチウム二次電池の性能を改善することができる。コーティング部の厚さは、TOF-SIMS、XPS、またはEDSによって測定することができ、例えば、TEM-EDSラインプロファイルによって測定することができる。
【0026】
前記正極活物質で、コーティング部のコバルト含量は約0.5モル%~5モル%であってもよい。具体的に、前記正極活物質全体で、リチウムニッケル系複合酸化物においてリチウムと酸素を除いた元素100モル%に対する表面のコバルトの含量は0.5モル%~5モル%であってもよく、例えば0.5モル%~4モル%、または1モル%~3モル%であってもよい。コバルトが前記含量でコーティングされることによって、容量を低下させることなく正極活物質の構造を安定化し電池の効率と寿命特性を向上させることができる。
【0027】
一方、一実施形態によれば、第2正極活物質のコーティング部におけるニッケルおよびコバルト総量に対するコバルトの含量(at%)に対する、第1正極活物質のコーティング部におけるニッケルおよびコバルト総量に対するコバルトの含量(at%)の比率は、1.45~1.60であってもよい。2次粒子形態の第1正極活物質と単粒子形態の第2正極活物質が混合された形態の正極活物質においてそれぞれにコーティング部を全て形成する場合、二つの粒子間のコーティング不均衡が発生する。例えば、二種類の粒子を混合して同時に湿式でコバルトコーティングを行う場合、比表面積が比較的に高い単粒子にさらに多くのコーティング物質が反応してコーティングされる傾向がある。これにより、2次粒子は十分なコーティング効果が得られなくて構造的崩壊や表面での副反応が行われて劣化が加速化され、表面にコーティング粒子が不均一に存在しながらガス発生を誘発するようになり、単粒子では過多なコーティングが抵抗として作用するようになって電池性能に悪影響を及ぼすようになる。反面、一実施形態によれば、単粒子への過多なコーティングを抑制しながら2次粒子へのコーティングを強化して、即ち、二種類粒子のコーティング含量関係を適切に調節することによって、高温長期寿命特性などのリチウム二次電池の性能を改善することができる。例えば、第2正極活物質のコバルトコーティング含量に対する第1正極活物質のコバルトコーティング含量の比率が1.45~1.60を満たす場合、高容量、高エネルギー密度を実現しながら同時に高温長寿命特性を向上させ高温保存時のガス発生量を抑制し初期充放電効率を改善することができる。前記比率は、例えば1.45~1.55、あるいは1.50~1.60であってもよい。
【0028】
第1正極活物質
第1正極活物質は多結晶(polycrystal)形態であって、少なくとも2つ以上の1次粒子が凝集された2次粒子を含む。一実施形態による第1正極活物質は前記2次粒子の表面に沿って膜形態で存在するコーティング部を含み、リチウムコバルト酸化物およびコバルトオキシ水酸化物の複合相を含む。
【0029】
第1正極活物質のコバルトコーティング部におけるニッケルおよびコバルト総量に対するコバルトの含量は55at%~70at%であってもよく、例えば55at%~68at%、55at%~65at%、55at%~63at%、57at%~70at%、59at%~70at%、60at%~70at%、60at%~65at%、あるいは61at%~63at%であってもよい。第1正極活物質のコバルトコーティング含量が前記範囲を満たしながら第2正極活物質のコバルトコーティング含量の1.45倍~1.60倍を満たす場合、粒子間のコーティング不均一が解消され、第1正極活物質の表面に均一なコーティングが形成されてガス発生が抑制され、初期充放電効率および長期寿命特性などが改善できる。
【0030】
一実施形態による第1正極活物質は、前記2次粒子の内部の1次粒子の表面に位置する粒界コバルトコーティング部をさらに含むことができる。前記粒界コーティング部はリチウムコバルト酸化物およびコバルトオキシ水酸化物を含む。前記粒界コバルトコーティング部は2次粒子の表面でない内部に存在するものであって、2次粒子内部の1次粒子の界面に沿ってコーティングされているといえ、これにより粒界にコーティングされたと表現できる。ここで、2次粒子の内部とは表面を除いた内部全体を意味し、例えば外殻表面から大略10nm深さから内側全体、あるいは10nm深さから約2μmの深さまでの領域を意味することができる。一実施形態による第1正極活物質は粒界コバルトコーティング部をさらに含むことによって構造的安定性が強化され、表面に均一且つ均等なコーティングが誘導され、表面へのコーティング含量が適切に調節されて抵抗増加なく初期充放電効率と寿命特性が改善できる。
【0031】
第1正極活物質の平均粒径、即ち、前記2次粒子の平均粒径は5μm~20μmであってもよい。例えば、7μm~20μm、10μm~20μm、または12μm~18μmであってもよい。第1正極活物質の2次粒子の平均粒径は、後述の単粒子の第2正極活物質の平均粒径よりさらに大きくてもよい。一実施形態による正極活物質は多結晶でありながら大粒子である第1正極活物質と単粒子でありながら小粒子である第2正極活物質を混合した形態であってもよく、これにより合剤密度を向上させることができ、高い容量と高いエネルギー密度を実現することができる。ここで、第1正極活物質の平均粒径は正極活物質に対する電子顕微鏡写真で2次粒子形態の活物質約20個程度を任意に選択して粒径を測定し、その粒度分布で累積体積が50体積%である粒子の直径(D50)を平均粒径として取ったものであってもよい。
【0032】
第1正極活物質は、高い含量のニッケルを含有する高ニッケル系正極活物質であってもよい。前記リチウムニッケル系複合酸化物においてニッケルの含量は、リチウムと酸素を除いた元素総量を基準にして70モル%以上であってもよく、例えば75モル%以上、80モル%以上、85モル%以上、90モル%以上であってもよく、99.9モル%以下、または99モル%以下であってもよい。このような高ニッケル系第1正極活物質は高容量高性能を実現することができる。
【0033】
第2正極活物質
第2正極活物質は単粒子(single particle)形態であって、これは粒子内に粒子境界(grain boundary)を有せず単独で存在し一つの粒子からなることを意味し、モルフォロジー上に粒子が相互凝集されない独立した相(phase)で存在する単一粒子、モノリス(monolith)構造または単一体構造または非凝集粒子を意味することができ、一例として単結晶であってもよい。一実施形態による正極活物質はこのような単粒子形態の第2正極活物質を含むことによって、高容量、高エネルギー密度を実現しながら向上した寿命特性を示すことができる。
【0034】
一実施形態による第2正極活物質は単粒子表面に沿って形成された膜形態のコーティング部を含み、前記コーティング部はリチウムコバルト酸化物およびコバルトオキシ水酸化物の複合相を含む。
【0035】
第2正極活物質のコーティング部におけるニッケルおよびコバルト総量に対するコバルトの含量は、39at%~45at%であってもよく、例えば39at%~44at%、39at%~43at%、39at%~42at%、40at%~45at%、または41at%~45at%であってもよい。第2正極活物質のコバルトコーティング含量が前記範囲を満たしながら、これに対する第1正極活物質のコバルトコーティング含量の比率が1.45~1.60を満たす場合、粒子間のコーティング不均一が解消され、第2正極活物質への過多なコーティングが抑制され均一なコーティングが誘導されて抵抗が減少し、初期充放電効率および長期寿命特性などを改善できる。
【0036】
一方、一実施形態で正極活物質の表面でのニッケルとコバルト総量に対するコバルトの含量を測定する方法は、正極活物質表面に対する走査電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光分析(SEM-EDS)を実施し定量分析を通じてニッケル、コバルトそれぞれの含量を求めた後、その合計に対するコバルト含量の比率を計算して得るものであってもよい。コバルト含量を測定する方法としては、SEM-EDS以外にも誘導結合プラズマ質量分析法(Inductively Coupled Plasma-Mass Spectrometry;ICP-MS)、あるいは誘導結合プラズマ光放出分光法(Inductively Coupled Plasma Optical Emission Spectroscopy;ICP-OES)などを使用することができる。
【0037】
第2正極活物質の平均粒径、即ち、単粒子の平均粒径は0.1μm~10μmであってもよく、例えば0.1μm~7μm、0.5μm~6μm、または1μm~5μmであってもよい。第2正極活物質の粒径は第1正極活物質よりさらに小さくてもよく、これにより正極活物質の密度をさらに高めることができる。ここで、第2正極活物質の平均粒径は正極活物質に対する電子顕微鏡写真で単粒子形態の活物質約20個程度を任意に選択して粒径を測定し、その粒度分布で累積体積が50体積%である粒子の直径(D50)を平均粒径として取ったものであってもよい。
【0038】
第2正極活物質は高い含量のニッケルを含有する高ニッケル系正極活物質であってもよい。前記リチウムニッケル系複合酸化物においてニッケルの含量は、リチウムと酸素を除いた元素総量を基準にして70モル%以上であってもよく、例えば75モル%以上、80モル%以上、85モル%以上、または90モル%以上であってもよく、99.9モル%以下、または99モル%以下であってもよい。このような高ニッケル系第2正極活物質は高容量高性能を実現することができる。
【0039】
具体的に、第1正極活物質と第2正極活物質はそれぞれ独立して下記化学式1で表されるリチウムニッケル系複合酸化物を含むことができる。
【0040】
[化学式1]
Lia1Nix1M1
y1M2
z1O2-b1Xb1
【0041】
上記化学式1中、0.9≦a1≦1.8、0.7≦x1≦1、0≦y1≦0.3、0≦z1≦0.2、0.9≦x1+y1+z1≦1.1、および0≦b1≦0.1であり、M1およびM2はそれぞれ独立してAl、B、Ba、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Fe、Mg、Mn、Mo、Nb、Si、Sr、Ti、V、W、およびZrからなるグループより選択される一つ以上の元素であり、XはF、PおよびSからなるグループより選択される一つ以上の元素である。
【0042】
前記化学式1中、0.8≦x1≦1、0≦y1≦0.2、および0≦z1≦0.15であるか、または0.9≦x1≦1、0≦y1≦0.1、および0≦z1≦0.1であってもよい。
【0043】
例えば、第1正極活物質と第2正極活物質はそれぞれ独立して下記化学式2で表されるリチウムニッケル系複合酸化物を含むことができる。化学式2で表される化合物はリチウムニッケルコバルト系複合酸化物といえる。
【0044】
[化学式2]
Lia2Nix2Coy2M3
z2O2-b2Xb2
【0045】
上記化学式2中、0.9≦a2≦1.8、0.7≦x2<1、0<y2≦0.3、0≦z2≦0.2、0.9≦x2+y2+z2≦1.1、および0≦b2≦0.1であり、M3はAl、B、Ba、Ca、Ce、Cr、Cu、Fe、Mg、Mn、Mo、Nb、Si、Sr、Ti、V、W、およびZrからなるグループより選択される一つ以上の元素であり、XはF、PおよびSからなるグループより選択される一つ以上の元素である。
【0046】
前記化学式2中、0.8≦x2≦0.99、0.01≦y2≦0.2、および0.01≦z2≦0.15であるか、または0.9≦x2≦0.99、0.01≦y2≦0.1、および0.01≦z2≦0.1であってもよい。
【0047】
一例として、第1正極活物質と第2正極活物質はそれぞれ独立して下記化学式3で表示されるリチウムニッケル系複合酸化物を含むことができる。化学式3の化合物はリチウムニッケル-コバルト-アルミニウム酸化物、あるいはリチウムニッケル-コバルト-マンガン酸化物といえる。
【0048】
[化学式3]
Lia3Nix3Coy3M4
z3M5
w3O2-b3Xb3
【0049】
上記化学式3中、0.9≦a3≦1.8、0.7≦x3≦0.98、0.01≦y3≦0.29、0.01≦z3≦0.29、0≦w3≦0.19、0.9≦x3+y3+z3+w3≦1.1、および0≦b3≦0.1であり、M4はAl、およびMnからなるグループより選択される一つ以上の元素であり、M5はB、Ba、Ca、Ce、Cr、Cu、Fe、Mg、Mo、Nb、Si、Sr、Ti、V、W、およびZrからなるグループより選択される一つ以上の元素であり、XはF、PおよびSからなるグループより選択される一つ以上の元素である。
【0050】
前記化学式3中、0.85≦x3≦0.98、0.01≦y3≦0.14、0.01≦z3≦0.14、および0≦w3≦0.14であるか、または0.9≦x3≦0.98、0.01≦y3≦0.09、0.01≦z3≦0.09、および0≦w3≦0.09であってもよい。
【0051】
一実施形態による正極活物質で、第1正極活物質と第2正極活物質の総量に対して、第1正極活物質は50重量%~90重量%で含まれ、第2正極活物質は10重量%~50重量%で含まれてもよい。第1正極活物質は例えば60重量%~90重量%、または70重量%~90重量%で含まれてもよく、第2正極活物質は10重量%~40重量%、または10重量%~30重量%で含まれてもよい。第1正極活物質と第2正極活物質の含量比率がこのような場合、これを含む正極活物質は高い容量を実現し合剤密度が向上し高いエネルギー密度を示すことができる。
【0052】
正極活物質の製造方法
一実施形態では、リチウムと酸素を除いた元素全体に対するニッケルの含量が70モル%以上であるリチウムニッケル系複合酸化物を含有し複数の1次粒子が凝集されてなる2次粒子形態である第1正極活物質、リチウムと酸素を除いた元素全体に対するニッケルの含量が70モル%以上であるリチウムニッケル系複合酸化物を含有し単粒子形態である第2正極活物質、硫酸コバルトおよび水酸化ナトリウム(NaOH)を溶媒に投入して混合し;溶媒を除去し;収得物にリチウム原料を添加し;熱処理して;前述の正極活物質を得ることを含む、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供する。
【0053】
前記製造方法を通じて、前記2次粒子の表面に膜形態で存在するコーティング部を含む第1正極活物質と、前記単粒子の表面に膜形態で存在するコーティング部を含む第2正極活物質が混合された正極活物質を得ることができる。前記コーティング部は、リチウムコバルト酸化物およびコバルトオキシ水酸化物の複合相を含むことを特徴とする。
【0054】
前記リチウムニッケル系複合酸化物に対する説明は前述の通りであるので省略する。前記溶媒は水、アルコール系溶媒などの水系溶媒であってもよい。
【0055】
第1正極活物質と第2正極活物質は9:1~5:5の重量比で混合されてもよく、例えば8:2~6:4の重量比で混合されてもよい。この場合、高容量および高エネルギー密度を実現することに有利である。
【0056】
前記硫酸コバルトは、一実施形態による正極活物質を製造するために投入するコーティング原料といえる。前記硫酸コバルトは、第1正極活物質のリチウムニッケル系複合酸化物と第2正極活物質のリチウムニッケル系複合酸化物全体でリチウムと酸素を除いた元素に対するコバルトの含量が0.5モル部~5モル部になるように混合するものであってもよく、例えば0.5モル部~4モル部、あるいは1モル部~3モル部になるように混合するものであってもよい。
前記水酸化ナトリウムは、沈殿剤及び/又はpH調節剤の役割を果たすことができる。水酸化ナトリウムを投入しない場合、コーティング部が効果的に形成されないか、または希望する含量のコバルトがコーティングされないことがあり、最終正極活物質の表面のコーティング部にCoOOH相が現れないこともあり得る。
前記水酸化ナトリウムは、第1正極活物質のリチウムニッケル系複合酸化物と第2正極活物質のリチウムニッケル系複合酸化物においてリチウムと酸素を除いた元素全体の100モル部に対してナトリウムの含量が1モル部~10モル部になるように投入されてもよく、例えば、3モル部~9モル部、または5モル部~8モル部になるように投入されてもよい。投入されるナトリウムの含量が上記の範囲を満たす場合、LiCoO2及びCoOOHを含有する膜形態のコーティング部が効果的に形成される。
また、硫酸コバルトにおけるコバルトのモル含量と水酸化ナトリウムにおけるナトリウムのモル含量の比率は、1:1.1~1:5であってもよく、例えば、1:1.5~1:4、または1:2~1:3であってもよい。投入されるコバルトとナトリウムのモル比が上記の範囲を満たす場合、LiCoO2及びCoOOHを含有する膜形態のコーティング部が形成されることに有利である。
【0057】
その後、溶媒を除去した後、収得物にリチウム原料を添加し、ここでリチウム原料は例えばLi2CO3、LiOH、これらの水和物、またはこれらの組み合わせであってもよい。前記リチウム原料は、第1正極活物質のリチウムニッケル系複合酸化物と第2正極活物質のリチウムニッケル系複合酸化物全体でリチウムと酸素を除いた元素に対するリチウムの含量が0.1モル部~10モル部になるように投入するものであってもよく、例えば0.1モル部~8モル部、または1モル部~6モル部で投入することができる。先に溶媒で正極活物質を水洗しコーティングする過程でリチウムニッケル系複合酸化物粒子の表面に損傷が発生して容量と率特性が低下し高温保存時抵抗が増加する問題が発生することがあるが、このように熱処理時にリチウム原料を投入することによって表面の損傷を修復し、容量と率特性などを改善することができる。
【0058】
前記熱処理は酸素または空気雰囲気などの酸化性ガス雰囲気で行うことができ、650℃~900℃、または650℃~800℃で実施することができる。前記熱処理時間は熱処理温度などによって可変的であるが、例えば5~30時間または10~24時間実施することができる。前記条件で熱処理をすることによって、リチウムコバルト酸化物とコバルトオキシ水酸化物の複合相が存在するコーティング部を形成することができる。
【0059】
一実施形態によれば、第2正極活物質、硫酸コバルトおよび水酸化ナトリウムを溶媒に投入して混合することは、溶媒に第2正極活物質、硫酸コバルトおよび水酸化ナトリウムを投入し混合する第1工程を行った後、ここに第1正極活物質、硫酸コバルトおよび水酸化ナトリウムを投入して混合する第2工程を順次に行うことであってもよい。このような方法によれば、単粒子への過多なコーティングが抑制されながら2次粒子へのコーティングが強化されて、即ち、二種類粒子のコーティング含量関係が適切に調節されることによって、高温長期寿命特性、初期充放電効率、高温保存性能などのリチウム二次電池の性能を改善できる。例えば、前記順次的工程によれば、第2正極活物質のコバルトコーティング部におけるニッケルおよびコバルト総量に対するコバルトの含量(at%)に対する、第1正極活物質のコバルトコーティング部におけるニッケルおよびコバルト総量に対するコバルトの含量(at%)の比率が、1.45~1.60を満たす正極活物質を製造することができる。
【0060】
ここで、第1工程の所要時間(分;minute)と第2工程の所要時間(分;minute)の比率は50:50~75:25または65:35~75:25であってもよい。このような時間比率で設計することによって、第1正極活物質と第2正極活物質それぞれのコーティング含量を最適化することができる。第1工程の所要時間は10分~100分程度であり、第2工程の所要時間は10分~100分程度である。
【0061】
正極
リチウム二次電池用正極は集電体およびこの集電体上に位置する正極活物質層を含むことができる。前記正極活物質層は正極活物質を含み、バインダーおよび/または導電材をさらに含むことができる。
【0062】
前記バインダーは正極活物質粒子を互いによく付着させ、また正極活物質を電流集電体によく付着させる役割を果たし、その代表的な例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルクロリド、カルボキシル化されたポリビニルクロリド、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリレーテッドスチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂、ナイロンなどを使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0063】
前記正極活物質層で、バインダーの含量は、正極活物質層全体重量に対して大略1重量%~5重量%であってもよい。
【0064】
前記導電材は電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさず電子伝導性材料であればいずれのものでも使用可能であり、その例として天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、炭素ナノ繊維、炭素ナノチューブなどの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などを含有し金属粉末または金属繊維形態の金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料を使用することができる。
【0065】
前記正極活物質層で、導電材の含量は、正極活物質層全体重量に対して1重量%~5重量%であってもよい。
【0066】
前記正極集電体としてはアルミニウム箔を使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0067】
負極
リチウム二次電池用負極は、集電体、およびこの集電体上に位置する負極活物質層を含む。前記負極活物質層は負極活物質を含み、バインダーおよび/または導電材をさらに含むことができる。
【0068】
前記負極活物質は、リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションすることができる物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムにドープおよび脱ドープ可能な物質または遷移金属酸化物を含む。
【0069】
前記リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションすることができる物質としては、炭素系負極活物質であって、例えば、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの組み合わせを含むことができる。前記結晶質炭素の例としては無定形、板状型、鱗片状(flake)、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛が挙げられ、前記非晶質炭素の例としてはソフトカーボンまたはハードカーボン、メソフェーズピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられる。
【0070】
前記リチウム金属の合金としては、リチウムとNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、AlおよびSnからなる群より選択される金属の合金を使用することができる。
【0071】
前記リチウムにドープおよび脱ドープ可能な物質としてはSi系負極活物質またはSn系負極活物質を使用することができ、前記Si系負極活物質としてはシリコン、シリコン-炭素複合体、SiOx(0<x<2)、Si-Q合金(前記Qはアルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Siではない)、前記Sn系負極活物質としてはSn、SnO2、Sn-R合金(前記Rはアルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Snではない)などが挙げられ、またこれらのうちの少なくとも一つとSiO2を混合して使用することもできる。前記元素QおよびRとしてはMg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Tl、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものを使用することができる。
【0072】
前記シリコン-炭素複合体は、例えば、結晶質炭素およびシリコン粒子を含むコア、およびこのコア表面に位置する非晶質炭素コーティング層を含むシリコン-炭素複合体であってもよい。前記結晶質炭素は、人造黒鉛、天然黒鉛またはこれらの組み合わせであってもよい。前記非晶質炭素前駆体としては、石炭系ピッチ、メソフェーズピッチ、石油系ピッチ、石炭系オイル、石油系重質油またはフェノール樹脂、フラン樹脂、ポリイミド樹脂などの高分子樹脂を使用することができる。この時、シリコンの含量は、シリコン-炭素複合体全体重量に対して10重量%~50重量%であってもよい。また、前記結晶質炭素の含量はシリコン-炭素複合体全体重量に対して10重量%~70重量%であってもよく、前記非晶質炭素の含量はシリコン-炭素複合体全体重量に対して20重量%~40重量%であってもよい。また、前記非晶質炭素コーティング層の厚さは5nm~100nmであってもよい。前記シリコン粒子の平均粒径(D50)は10nm~20μmであってもよい。前記シリコン粒子の平均粒径(D50)は好ましく10nm~200nmであってもよい。前記シリコン粒子は酸化された形態で存在し、この時、酸化程度を示すシリコン粒子内Si:Oの原子含量比率は99:1~33:67であってもよい。前記シリコン粒子はSiOx粒子であってもよく、この時、SiOx中、x範囲は0超過、2未満であってもよい。本明細書で、別途の定義がない限り、平均粒径(D50)は粒度分布で累積体積が50体積%である粒子の直径を意味する。
【0073】
前記Si系負極活物質またはSn系負極活物質は炭素系負極活物質と混合して使用することができる。Si系負極活物質またはSn系負極活物質と炭素系負極活物質を混合使用する時、その混合比は重量比として1:99~90:10であってもよい。
【0074】
前記負極活物質層で、負極活物質の含量は、負極活物質層全体重量に対して95重量%~99重量%であってもよい。
【0075】
一実施形態で、前記負極活物質層はバインダーをさらに含み、選択的に導電材をさらに含むことができる。前記負極活物質層で、バインダーの含量は、負極活物質層全体重量に対して1重量%~5重量%であってもよい。また、導電材をさらに含む場合、前記負極活物質層は、負極活物質を90重量%~98重量%、バインダーを1重量%~5重量%、導電材を1重量%~5重量%含むことができる。
【0076】
前記バインダーは負極活物質粒子を互いによく付着させ、また負極活物質を電流集電体によく付着させる役割を果たす。前記バインダーとしては非水溶性バインダー、水溶性バインダーまたはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0077】
前記非水溶性バインダーとしては、ポリビニルクロリド、カルボキシル化されたポリビニルクロリド、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、エチレンプロピレン共重合体、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドイミド、ポリイミドまたはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0078】
前記水溶性バインダーとしては、ゴム系バインダーまたは高分子樹脂バインダーが挙げられる。前記ゴム系バインダーはスチレンブタジエンゴム、アクリレーテッドスチレンブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、およびこれらの組み合わせから選択されるものであってもよい。前記高分子樹脂バインダーは、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリエピクロロヒドリン、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、エチレンプロピレンジエン共重合体、ポリビニルピリジン、クロロスルホン化ポリエチレン、ラテックス、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコールおよびこれらの組み合わせから選択されるものであってもよい。
【0079】
前記負極バインダーとして水溶性バインダーを使用する場合、粘性を付与することができるセルロース系列化合物をさらに含むことができる。このセルロース系列化合物としてはカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、またはこれらのアルカリ金属塩などを1種以上混合して使用することができる。前記アルカリ金属としてはNa、KまたはLiを使用することができる。このような増粘剤の使用含量は、負極活物質100重量部に対して0.1重量部~3重量部であってもよい。
【0080】
前記導電材は電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさず電子伝導性材料であればいずれのものでも使用可能であり、その例として天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、炭素ナノ繊維、炭素ナノチューブなどの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などを含み、金属粉末または金属繊維形態の金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料を使用することができる。
【0081】
前記負極集電体としては、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、ニッケル発泡体(foam)、銅発泡体、伝導性金属がコーティングされたポリマー基材、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものを使用することができる。
【0082】
リチウム二次電池
他の一実施形態は、正極、負極、前記正極と前記負極の間に位置するセパレータおよび電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【0083】
図1は、一実施形態によるリチウム二次電池を示した概略図である。
図1を参照すれば、一実施形態によるリチウム二次電池100は、正極114、正極114と対向して位置する負極112、正極114と負極112の間に配置されているセパレータ113および正極114、負極112およびセパレータ113を含浸するリチウム二次電池用電解質を含む電池セルと、前記電池セルが収納されている電池容器120、および前記電池容器120を密封する密封部材140を含む。
【0084】
前記電解質は、非水性有機溶媒とリチウム塩を含む。
【0085】
前記非水性有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質の役割を果たす。非水性有機溶媒としては、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系、または非プロトン性溶媒を使用することができる。前記カーボネート系溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などを使用することができる。前記エステル系溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、ジメチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、γ-ブチロラクトン、デカノリド(decanolide)、バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)などを使用することができる。前記エーテル系溶媒としてはジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどを使用することができ、前記ケトン系溶媒としてはシクロヘキサノンなどを使用することができる。また、前記アルコール系溶媒としてはエチルアルコール、イソプロピルアルコールなどを使用することができ、前記非プロトン性溶媒としてはR-CN(ここで、Rは炭素数2~20の直鎖状、分枝状、または環構造の炭化水素基であり、二重結合、芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類、スルホラン(sulfolane)類などを使用することができる。
【0086】
前記非水性有機溶媒は単独でまたは一つ以上混合して使用することができ、一つ以上混合して使用する場合の混合比率は目的とする電池性能によって適切に調節することができ、これは当該分野に従事する者には広く理解されるはずである。
【0087】
また、前記カーボネート系溶媒の場合、環状(cyclic)カーボネートと鎖状(chain)カーボネートを混合して使用することができる。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートを約1:1~約1:9の体積比で混合して使用する場合に電解液の性能が優れることになる。
【0088】
前記非水性有機溶媒は、前記カーボネート系溶媒に芳香族炭化水素系有機溶媒をさらに含んでもよい。この時、前記カーボネート系溶媒と芳香族炭化水素系有機溶媒は、約1:1~約30:1の体積比で混合することができる。
【0089】
前記芳香族炭化水素系溶媒としては、下記化学式Iの芳香族炭化水素系化合物を使用することができる。
【0090】
【0091】
上記化学式I中、R4~R9は互いに同一であるか異なり、水素、ハロゲン、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロアルキル基、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものである。
【0092】
前記芳香族炭化水素系溶媒の具体的な例としては、ベンゼン、フルオロベンゼン、1,2-ジフルオロベンゼン、1,3-ジフルオロベンゼン、1,4-ジフルオロベンゼン、1,2,3-トリフルオロベンゼン、1,2,4-トリフルオロベンゼン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、ヨードベンゼン、1,2-ジヨードベンゼン、1,3-ジヨードベンゼン、1,4-ジヨードベンゼン、1,2,3-トリヨードベンゼン、1,2,4-トリヨードベンゼン、トルエン、フルオロトルエン、2,3-ジフルオロトルエン、2,4-ジフルオロトルエン、2,5-ジフルオロトルエン、2,3,4-トリフルオロトルエン、2,3,5-トリフルオロトルエン、クロロトルエン、2,3-ジクロロトルエン、2,4-ジクロロトルエン、2,5-ジクロロトルエン、2,3,4-トリクロロトルエン、2,3,5-トリクロロトルエン、ヨードトルエン、2,3-ジヨードトルエン、2,4-ジヨードトルエン、2,5-ジヨードトルエン、2,3,4-トリヨードトルエン、2,3,5-トリヨードトルエン、キシレン、またはこれらの組み合わせからなる群より選択されるものである。
【0093】
前記電解液は、電池寿命を向上させるためにビニレンカーボネートまたは下記化学式IIのエチレンカーボネート系化合物を寿命向上添加剤としてさらに含んでもよい。
【0094】
【0095】
上記化学式II中、R10およびR11は互いに同一であるか異なり、水素、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、およびフッ素化された炭素数1~5のアルキル基からなる群より選択され、前記R10およびR11のうちの少なくとも一つはハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、およびフッ素化された炭素数1~5のアルキル基からなる群より選択されるが、但しR10およびR11が全て水素ではない。
【0096】
前記エチレンカーボネート系化合物の代表的な例としては、ジフルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、ブロモエチレンカーボネート、ジブロモエチレンカーボネート、ニトロエチレンカーボネート、シアノエチレンカーボネートまたはフルオロエチレンカーボネートなどが挙げられる。このような寿命向上添加剤をさらに使用する場合、その使用量は適切に調節することができる。
【0097】
前記リチウム塩は、非水性有機溶媒に溶解されて、電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム二次電池の作動を可能にし、正極と負極の間のリチウムイオンの移動を促進する役割を果たす物質である。
【0098】
リチウム塩の代表的な例としては、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiN(SO2C2F5)2、Li(CF3SO2)2N、LiN(SO3C2F5)2、Li(FSO2)2N(リチウムビスフルオロスルホニルイミド;lithium bis(fluorosulfonyl)imide;LiFSI)、LiC4F9SO3、LiClO4、LiAlO2、LiAlCl4、LiPO2F2、LiN(CxF2x+1SO2)(CyF2y+1SO2)(ここで、xおよびyは自然数であり、例えば1~20の整数である)、リチウムジフルオロビスオキサラトホスフェート(lithium difluoro(bisoxalato)phosphate)、LiCl、LiI、LiB(C2O4)2(リチウムビス(オキサラト)ボレート(lithium bis(oxalato)borate;LiBOB)、およびリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiDFOB)からなる群より選択される一つまたは二つ以上が挙げられる。
【0099】
リチウム塩の濃度は0.1M~2.0Mの範囲内で使用することがよい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれれば、電解質が適切な伝導度および粘度を有するので優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動できる。
【0100】
セパレータ113は正極114と負極112を分離しリチウムイオンの移動通路を提供するものであって、リチウムイオン電池で通常使用されるものであれば全て使用することができる。即ち、電解質のイオン移動に対して低い抵抗を有しながら電解液含湿能力に優れたものを使用することができる。例えば、前記セパレータ113はガラス繊維、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレンまたはこれらの組み合わせを含むことができ、不織布または織布形態であってもよい。例えば、リチウムイオン電池にはポリエチレン、ポリプロピレンなどのようなポリオレフィン系高分子セパレータが主に使用され、耐熱性または機械的強度確保のためにセラミック成分または高分子物質が含まれているコーティングされたセパレータを使用することもでき、選択的に単層または多層構造で使用することができる。
【0101】
リチウム二次電池は使用するセパレータと電解質の種類によってリチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、およびリチウムポリマー電池に分類することができ、形態によって円筒形、角型、コイン型、パウチ型などに分類することができ、サイズによってバルクタイプと薄膜タイプに分類することができる。これらの電池の構造と製造方法はこの分野において広く知られているので、詳細な説明は省略する。
【0102】
一実施形態によるリチウム二次電池は高容量を実現し、高温で保存安定性、寿命特性および高率特性などに優れて電気車両(electric vehicle、EV)に使用することができ、プラグインハイブリッド車両(plug-in hybrid electric vehicle、PHEV)などのハイブリッド車両に使用することができ、携帯用電子機器などに使用することができる。
【0103】
以下、本発明の実施例および比較例を記載する。下記の実施例は本発明の一例に過ぎず、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【実施例0104】
実施例1
1.2次粒子形態の第1リチウムニッケル系複合酸化物の製造
金属原料として硫酸ニッケル(NiSO4・6H2O)、硫酸コバルト(CoSO4・7H2O)、および硫酸アルミニウム(Al2(SO4)3・18H2O)を91:8:1モル比になるように溶媒である蒸留水に溶かして混合溶液を準備し、錯化合物形成のためにアンモニア水(NH4OH)と沈殿剤として水酸化ナトリウム(NaOH)を準備した。
【0105】
連続式反応器にアンモニア水希釈液を投入した後、金属原料混合溶液を連続的に投入し、反応機内部のpHを維持するために水酸化ナトリウムを投入する。
【0106】
大略80時間徐々に反応を行い、反応が安定化した後、オーバーフローされる生成物を収集して洗浄および乾燥工程を行って最終前駆体を得る。これにより1次粒子が凝集された2次粒子形態の第1ニッケル系水酸化物(Ni0.91Co0.08Al0.01(OH)2)を得て洗浄および乾燥を行う。
【0107】
第1ニッケル系水酸化物の金属総量に対するリチウムのモル比率が1.04になるように、第1ニッケル系水酸化物とLiOHを混合し、酸素雰囲気で約750℃で15時間第1熱処理することによって、第1リチウムニッケル系酸化物(LiNi0.91Co0.08Al0.01O2)を得る。得られた第1リチウムニッケル系酸化物の平均粒径は大略15μmであり、1次粒子が凝集された2次粒子形態である。
【0108】
2.単粒子形態の第2リチウムニッケル系複合酸化物の製造
硫酸ニッケル、硫酸コバルトおよび硫酸マンガン(MnSO4・H2O)を95:4:1モル比になるように溶媒である蒸留水に溶かして混合溶液を準備する。錯化合物形成のためにアンモニア水(NH4OH)希釈液と、沈殿剤として水酸化ナトリウム(NaOH)を準備する。その後、反応器に金属原料混合溶液、アンモニア水、水酸化ナトリウムをそれぞれ反応機内部に投入する。その次に、攪拌を行いながら約20時間反応を行う。その後、反応器内のスラリー溶液をろ過および高純度の蒸留水で洗浄後、24時間乾燥して第2ニッケル系水酸化物(Ni0.95Co0.04Mn0.01(OH)2)粉末を得る。得られた第2ニッケル系水酸化物粉末は平均粒径が約4.0μmであり、BET測定法によって測定される比表面積は約15m2/gである。
【0109】
得られた第2ニッケル系水酸化物と、Li/(Ni+Co+Mn)=1.05を満たすLiOHを共に混合して焼成炉に投入し、酸素雰囲気で820℃で10時間第2熱処理を実施する。その後、収得物を約30分間粉砕して、単粒子形態を有する多数の第2リチウムニッケル系酸化物に分離/分散させる。得られた単粒子形態の第2リチウムニッケル系酸化物の平均粒径は約3.7μmである。
【0110】
3.コバルトコーティングおよび最終正極活物質の製造
混合機に蒸留水溶媒および硫酸コバルト(CoSO4・7H2O)を投入し、製造した第2リチウムニッケル系複合酸化物を投入し混合する第1工程を行う。前記硫酸コバルトは、第2リチウムニッケル系複合酸化物においてリチウムと酸素を除いた元素全体に対するコバルト含量が3.0モル部になるように投入する。第1工程で、第2リチウムニッケル系複合酸化物を投入した後、沈殿剤とpH調節剤の役割を果たす水酸化ナトリウムを共に投入して混合する。水酸化ナトリウムは、第2リチウムニッケル系複合酸化物においてリチウムと酸素を除いた元素全体の100モル部に対するナトリウムの含量が6.0モル部になるように投入する。
【0111】
第1工程を30分行った後、ここに硫酸コバルトを投入し、その後第1リチウムニッケル系複合酸化物を投入し混合する第2工程を行う。第1リチウムニッケル系複合酸化物と先に投入した第2リチウムニッケル系複合酸化物の重量比が7:3になるように第1リチウムニッケル系複合酸化物を投入する。前記硫酸コバルトは、第1リチウムニッケル系複合酸化物においてリチウムと酸素を除いた元素全体に対するコバルト含量が3.0モル部になるように投入する。第2工程においても、第1リチウムニッケル系複合酸化物投入後、水酸化ナトリウムを投入して共に混合する。水酸化ナトリウムは、第1リチウムニッケル系複合酸化物においてリチウムと酸素を除いた元素全体の100モル部に対するナトリウムの含量が6.0モル部になるように投入する。
【0112】
第2工程を30分行った後、フィルタリングして200℃で10時間乾燥する。その後、収得物と水酸化リチウムを混合して焼成炉に投入し酸素雰囲気で約700℃で15時間熱処理する。この時、水酸化リチウムは、収得物においてリチウムと酸素を除いた元素全体に対してリチウムの含量が6モル部になるように投入する。その後、焼成炉を室温に冷却して、第1リチウムニッケル系複合酸化物からなる2次粒子の表面に膜形態のコーティング部が形成された第1正極活物質、および第2リチウムニッケル系複合酸化物からなる単粒子の表面に膜形態のコーティング部が形成された第2正極活物質が混合された最終正極活物質を得る。
【0113】
4.正極の製造
最終正極活物質95重量%、ポリビニリデンフルオライドバインダー3重量%および炭素ナノチューブ導電材2重量%をN-メチルピロリドン溶媒中で混合して正極活物質スラリーを製造する。アルミニウム集電体に前記正極活物質スラリーを塗布し乾燥した後、圧延して正極を準備する。
【0114】
5.リチウム二次電池の製造
準備した正極とリチウム金属対極を使用し、その間にポリエチレンポリプロピレン多層構造のセパレータを介し、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを50:50体積比で混合した溶媒に1.0MのLiPF6リチウム塩を添加した電解液を注入して、コインハーフセルを製造する。
【0115】
比較例1
前記実施例1の“3.コバルトコーティングおよび最終正極活物質の製造”で、第1工程および第2工程で沈殿剤とpH調節剤の役割を果たす水酸化ナトリウムを投入しないことを除いては実施例1と同様の方法で正極活物質、正極およびコインハーフセルを製造する。
【0116】
比較例2
前記実施例1の“3.コバルトコーティングおよび最終正極活物質の製造”で、湿式でコーティングを行わず乾式でコーティングを行う。即ち、第1リチウムニッケル系複合酸化物、第2リチウムニッケル系複合酸化物、硫酸コバルト、および水酸化リチウムを焼成炉で混合しながら700℃で15時間熱処理する。この時、第1リチウムニッケル系複合酸化物と第2リチウムニッケル系複合酸化物全体でリチウムと酸素を除いた元素全体に対するコバルトの含量が3.0モル部になるように硫酸コバルトを添加し、リチウムの含量が6.0モル部になるように水酸化リチウムを添加する。その他には実施例1と同様の方法で正極活物質、正極およびコインハーフセルを製造する。
【0117】
評価例1:X線回折分析
(i)実施例1で製造した最終正極活物質、(ii)実施例1のコインハーフセルを駆動する直前に電池を分解して得られた正極極板、そして(iii)実施例1のコインハーフセルを150サイクル行った後、電池を分解して得られた正極極板に対してX線回折分析を実施して、その結果を
図2に示した。
【0118】
前記(iii)番では、実施例1のコインハーフセルを定電流(0.2C)および定電圧(4.25V、0.05C cut-off)条件で初期充電し、10分間休止した後、定電流(0.2C)条件下で3.0Vになるまで初期放電させた後、45℃で0.5C/0.5Cで150回充放電を繰り返した。
【0119】
図3は
図2で20°付近でのグラフを拡大したものであり、
図4は
図2で40°付近のグラフを拡大したものである。
図5は比較のためのものであって、Co(OH)
2、CoOOH、およびCo
3O
4に対するX線回折分析グラフである。
【0120】
図2~
図5を参照すれば、実施例1による正極活物質は、19.5°~20.5°でピークを示し、39°~40°でピークを示すことから、表面にCoOOHが存在すると確認される。即ち、実施例1の正極活物質は表面コーティング部でLiCoO
2類似構造とCoOOHの複合相が存在するのを確認することができる。このような複合相は、製造した正極活物質だけでなく正極極板として製造した以後と電池駆動以後にも捕捉される。
【0121】
比較例1と比較例2に対しても同様にX線回折分析を実施したが、比較例1の場合、定量コーティングが行われず、X線回折グラフでCoOOH相は確認されなかった。比較例2の場合、正極活物質の表面に連続的なコーティングが行われず、X線回折グラフでCoOOH相は確認されなかった。
【0122】
評価例2:正極活物質断面に対するSEM-EDS分析
図6は、実施例1で製造した最終正極活物質で第1正極活物質に該当する粒子の断面に対するSEM-EDS分析イメージである。
図7は、実施例1で製造した最終正極活物質で第2正極活物質に該当する粒子の断面に対するSEM-EDS分析イメージである。
図6と
図7でハイライトされた部分はコバルトを示す。
【0123】
図6を参照すれば、2次粒子の表面にコバルトを含有するコーティング部が膜形態で存在し、2次粒子の内部に存在する1次粒子の表面である粒界にもコバルトがコーティングされているのを確認することができる。
図7を参照すれば、単粒子の表面にもコバルトを含有するコーティング部が膜形態に形成されたのを確認することができる。
【0124】
評価例3:正極活物質のコバルトコーティング含量分析
前記評価例2で実施したSEM-EDS分析を通じて第1正極活物質と第2正極活物質それぞれの表面でのコバルト含量(Co/(Ni+Co)、at%)を測定し、その結果を下記表1に示した。
【0125】
【0126】
評価例4:電池性能評価
実施例1、比較例1および比較例2で製造したリチウム二次電池についてそれぞれ3つずつサンプルを準備し、定電流(0.2C)および定電圧(4.25V、0.05C cut-off)条件で初期充電し、10分間休止した後、定電流(0.2C)条件下で3.0Vになるまで放電させて初期充放電を行う。その後、45℃で0.5C/0.5Cで50回充放電を繰り返して寿命特性を評価し、初期放電容量に対する各サイクルでの容量維持率を
図8に示す。
【0127】
図8を参照すれば、実施例1の場合、比較例1および比較例2に比べて寿命特性がさらに優れているということを確認することができる。
【0128】
以上、好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、次の請求範囲で定義している基本概念を用いた当業者の様々な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。