IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ DIC株式会社の特許一覧

特開2024-82404積層体、積層体の製造方法、及び電子機器
<>
  • 特開-積層体、積層体の製造方法、及び電子機器 図1
  • 特開-積層体、積層体の製造方法、及び電子機器 図2
  • 特開-積層体、積層体の製造方法、及び電子機器 図3
  • 特開-積層体、積層体の製造方法、及び電子機器 図4
  • 特開-積層体、積層体の製造方法、及び電子機器 図5
  • 特開-積層体、積層体の製造方法、及び電子機器 図6
  • 特開-積層体、積層体の製造方法、及び電子機器 図7
  • 特開-積層体、積層体の製造方法、及び電子機器 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082404
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】積層体、積層体の製造方法、及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240613BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20240613BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240613BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20240613BHJP
   B29C 65/48 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
B32B27/00 B
C09J5/00
C09J201/00
B32B7/12
B32B27/00 M
B29C65/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196226
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】山川 大輔
【テーマコード(参考)】
4F100
4F211
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK01
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK25
4F100AK25B
4F100AK42
4F100AK42A
4F100AK42C
4F100AT00A
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA16
4F100CA16B
4F100CB00
4F100CB00B
4F100DB13
4F100DB13B
4F100EH46
4F100EH46B
4F100EH61
4F100EH61B
4F100GB41
4F100JA06
4F100JA06B
4F100JB13
4F100JB13B
4F100JB14
4F100JB14B
4F100JL11
4F100JL11B
4F211AA04
4F211AA11
4F211AA24
4F211AD06
4F211AG01
4F211AG03
4F211TA03
4F211TC01
4F211TN45
4F211TQ03
4J040DF001
4J040JB01
4J040JB08
4J040PA25
(57)【要約】
【課題】本発明は、接着層の幅と厚さを精密に制御でき、粘着剤のような高弾性の樹脂でも部材同士の密着性が良好となる積層体、及び積層体の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】第一の被着体と第二の被着体とが、接着層を介して積層された積層体であって、前記接着層が、前記第一の被着体の表面に存在し、前記接着層は、ダムとフィル層から構成されており、前記接着層を構成する前記ダムが、前記フィル層の端部に存在し、前記第一の被着体に接する前記接着層の幅(W1)が0.5~50mmである積層体。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の被着体と第二の被着体とが、接着層を介して積層された積層体であって、
前記接着層は、ダムとフィル層から構成されており、
前記ダムが、前記フィル層の端部に存在し、
前記第一の被着体に接する前記接着層の幅(W1)が0.5~50mmである積層体。
【請求項2】
前記第二の被着体が、前記接着層と接する部分に離型性を有する請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記第一の被着体に接する前記接着層の幅(W1)と、前記第二の被着体に接する前記接着層の幅(W2)との比[W2/W1]が0.7~1.0の範囲である請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
前記フィル層が、光硬化型樹脂組成物を含む請求項1または2に記載の積層体。
【請求項5】
前記ダムが、光硬化型樹脂組成物またはホットメルト型樹脂組成物を含む請求項1または2に記載の積層体。
【請求項6】
前記第一の被着体に接する前記ダムの幅(W3)に対する前記ダムの厚さ(T1)のアスペクト比[T1/W3]が、0.05以上である請求項1または2に記載の積層体。
【請求項7】
第一の被着体の表面に、ダム材を塗布することによってダムを作製する工程(1)、
前記ダムで形成された領域内に、フィル材を塗布しフィル層を形成する工程(2)、
前記ダムと前記フィル層で構成された接着層の表面に第二の被着体を積層する工程(3)を有することを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項8】
前記フィル材の23℃における粘度が3,000~300,000mPa・sである請求項7の製造方法で製造された積層体。
【請求項9】
前記工程(1)が、前記ダム材をインクジェット法、スリットコート法又はディスペンサーを用いた塗布方法によって前記ダムを作製する工程である請求項7に記載の積層体の製造方法。
【請求項10】
前記工程(2)が、前記フィル材をインクジェット法、スリットコート法又はディスペンサーを用いた塗布方法によって前記フィル層を作製する工程である請求項7に記載の積層体の製造方法。
【請求項11】
請求項7の製造方法で製造した積層体から、第二の被着体を剥離する工程(4)、
前記第二の被着体が剥離された接着層の表面に第三の被着体を積層する工程(5)、を有することを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項12】
請求項1または8に記載の積層体を備えた電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、積層体の製造方法、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着テープはロール状に巻かれたフィルムに粘着剤を塗布し、乾燥させたのちロール状に巻き取るロール to ロールによるプロセスにて生産される。その後、粘着テープはスリット加工、打ち抜き加工といった工程により必要な形状に加工され、部品に貼り合わされる。
上記乾燥工程は、大量のエネルギーを消費する。また、打ち抜き加工は、部品の貼り合わせに不要な部分を取り除いたり、粘着面を保護する離型ライナーを貼り換えたりする工程で、大量の産業廃棄物を排出する。また、ロールの輸送工程は、不要部分を含む大きなロールを移動するために輸送コストや輸送エネルギーが必要となる。そのため、環境負荷の低減という観点から省エネルギーや省資源が求められている。
【0003】
そこで、部品に直接接着剤をパターン塗布する工法が提案されている。例えば、ディスペンサーを用いる工法が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。近年電子機器が小型化して部品同士の接着面積が小さくなる傾向にあり、このような部品に対してディスペンサーを用いて直接接着剤を塗布する方法が検討されている。
【0004】
部品に接着剤を塗布する工程では、部品から接着剤がはみ出ることがないよう接着層の幅と厚さを精密に制御することが求められる。近年電子機器が小型化するのに伴い、部品の接合部が小さく、細幅化している。このような部品は接着剤がはみ出しやすいため、特に精密な制御が必要となる。ディスペンサーを用いて部品に接着剤を塗布する場合、従来は吐出量を調整して接着層の幅と厚さを制御していた。しかし、吐出量を調整する方法は、被着体や接着剤によって濡れ広がり方が変化するなどの影響により、接着層の幅と厚さを正確に制御できない。このことから、従来の方法では接合部が小さく、細幅である部品には対応できない問題がある。
【0005】
また、ディスペンサーを用いて高弾性の樹脂である粘着剤を一方の部品に塗布した場合、他方の部品を貼り合わせる側の粘着剤層の表面がアーチ状となる。このため、部品と粘着剤層との接着面積が小さくなり、部品に十分密着できず接着不良となる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-182938号公報
【特許文献2】特開2022-52984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、接着層の幅と厚さを精密に制御でき、高弾性の樹脂である粘着剤を用いた場合であっても部材同士の密着性が良好となる積層体、及び積層体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、第一の被着体と第二の被着体とが、接着層を介して積層された積層体であって、前記接着層が、前記第一の被着体の表面に存在し、前記接着層は、ダムとフィル層から構成されており、前記接着層を構成する前記ダムが、前記フィル層の端部に存在し、前記第一の被着体に接する前記接着層の幅(W1)が0.5~50mmである積層体によって、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0009】
本発明の積層体によれば、前記第一の被着体の表面に存在するフィル層の端部にダムが存在することによって、接着層の幅と厚さを精密に制御することを可能にする。また、本発明の積層体は、従来の方法のように被着体と貼り合わせる側の樹脂がアーチ状となってしまうことを防ぐため、前記接着層に高弾性な樹脂を使用しても、被着体との密着性が良好となる。また、前記接着層の幅が0.5~50mmであるため、従来の方法では接合部が小さく対応できないような細幅な部品でも、フィル材をはみ出すことなく接着させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の積層体の一例を示す断面図である。
図2】本発明の接着層の形状の一例を示す第一の被着体側の面から見た底面図である。
図3図2の一部を拡大したものであり、本発明の第一の被着体に接する接着層の幅(W1)の一例を説明するため第一の被着体側の面から見た底面図である。
図4】本発明の第一の被着体に接するダムの幅(W3)と、前記ダムの厚さ(T1)の一例を説明するための断面図である。
図5】第一の被着体の表面にダム材を塗布する方法の一例を説明するための断面図である。
図6】ダムで形成された領域に、フィル材を塗布する方法の一例を説明するための断面図である。
図7】ダムとフィル層で構成された接着層の表面に、第二の被着体を積層する工程の一例を説明するための断面図である。
図8】第一の被着体の表面にダムがない場合、フィル材を塗布する方法の一例を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)を詳細に説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0012】
「積層体」
図1で示すように、本実施形態の積層体1は、第一の被着体2と第二の被着体3とが、接着層4を介して積層されたものである。積層体1は、更に他の層を有していてもよい。
【0013】
<接着層>
本実施形態の積層体の接着層は、第一の被着体の表面に存在する。前記接着層は、ダムとフィル層で構成され、図1で示すように前記フィル層6の端部にダム5が存在している。前記ダムは、第一の被着体の表面で、フィル層の端部に存在する。前記ダムは、前記フィル層を形成するフィル材が必要以上に濡れ広がるのを抑えるので、接合部が小さい部品や細幅な部品であっても、部品からはみ出すことなく前記接着層を形成することが可能である。また、前記ダムによって前記フィル材が堰き止められるので、前記接着層の表面が平滑となり、被着体との密着性が良好となる。
一方、前記ダムがフィル層の端部に存在しない場合、前記フィル材が被着体に濡れ広がるのを制御できないので、接合部が小さい部品や細幅な部品であると前記接着層がはみ出てしまう可能性がある。また、前記接着層の表面がアーチ状となり、被着体との密着性が低下する。
【0014】
前記接着層の形状としては、固定する部品の形状に合わせて適宜選択することができる。例えば、図2に示すような(a)線状や、(b)額縁状や、(c)略円形状や、(d)格子状等が挙げられる。なお、図2の黒い枠線はダム5を示し、枠線の内側はフィル層6を示す。
【0015】
前記第一の被着体に接する前記接着層の幅(W1)は、0.5~50mmであることが好ましい。より好ましくは0.7~10mmであり、さらに好ましくは1.0~5.0mmである。前記接着層の幅(W1)が0.5mm以上であると、接着面積が確保でき部材同士の密着性が良好となる。前記接着層の幅(W1)が50mm以下であると、部品の接合部が小さい場合や細幅である場合にも適用しやすい。
【0016】
図3で示すように、前記接着層の幅(W1)とは、前記接着層の形状が線状または額縁状であれば、前記第一の被着体に接する前記接着層の端から端までの距離のうち、短い方の距離を指す(e、f)。前記接着層の形状が略円形状や格子状であれば、前記第一の被着体に接する前記接着層の端から端までの距離のうち、一番長い距離を指す(g、h)。
前記接着層の幅(W1)は、均一であることが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲であれば均一でなくてもいい。
【0017】
前記第二の被着体に接する前記接着層の幅(W2)は、0.5~50mmであることが好ましい。より好ましくは0.7~10mmであり、さらに好ましくは1.0~5.0mmである。前記接着層の幅(W2)が0.5mm以上であると、接着面積が確保でき部材との密着性が良好となる。前記接着層の幅(W2)が50mm以下であると、部品の接合部が小さい場合や細幅である場合にも適用しやすい。
【0018】
前記接着層の幅(W2)とは、前記接着層の形状が線状または額縁状であれば、前記第二の被着体に接する前記接着層の端から端までの距離のうち、短い方の距離を指す。前記接着層の形状が略円形状や格子状であれば、前記第二の被着体に接する前記接着層の端から端までの距離のうち、一番長い距離を指す。
前記接着層の幅(W2)は、均一であることが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲であれば均一でなくてもいい。
【0019】
前記第一の被着体に接する前記接着層の幅(W1)と、前記第二の被着体に接する前記接着層の幅(W2)との比[W2/W1]は、0.7~1.0あることが好ましい。より好ましくは0.8~1.0であり、さらに好ましくは0.9~1.0である。[W2/W1]が上記範囲であると、前記第二の被着体に接する面での接着面積が確保でき部材との密着性が良好となる。
【0020】
前記接着層の厚さは、特に限定されないが、50~3000μmであることが好ましい。より好ましくは75~2000μmであり、さらに好ましくは100~1000μmである。前記接着層の厚さが上記範囲であると、薄型化や小型化した電子機器等にも使用可能であり、かつ部材同士の密着性が良好となる点で好ましい。
【0021】
前記接着層の厚さとは、前記接着層が前記第一の被着体と接する面から、前記第二の被着体と接する面までの距離を指す。
前記接着層の厚さは、均一であることが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲であれば均一でなくてもいい。
【0022】
<ダム>
本実施形態の積層体のダムは、第一の被着体の表面で、フィル層の端部に存在する。前記ダムは前記フィル層を囲むように形成されていることが好ましいが、例えば前記フィル層の一部は前記ダムが存在していなくてもよい。
前記ダムは、前記フィル層を形成するフィル材が必要以上に濡れ広がるのを抑えるので、接合部が小さい部品や細幅な部品であっても、部品からはみ出すことなく前記接着層を形成することが可能である。また、前記ダムによってフィル材が堰き止められるので、前記接着層の表面が平滑となり、被着体との密着性が良好となる。
【0023】
前記ダムは第二の被着体の表面に接していてもよく、接していなくてもよい。
前記ダムは、単層でもよく、2層以上が積層した複数の層でもよい。
前記ダムは接着性を有していてもよく、有していなくてもよい。
【0024】
前記第一の被着体に接する前記ダムの幅(W3)は、特に限定されないが、0.05~10mmであることが好ましい。
【0025】
図4で示すように、前記ダムの幅(W3)とは、前記第一の被着体に接する前記ダムの端から端までの距離のうち、短い方の距離を指す。
前記ダムの幅(W3)は、均一であることが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲であれば均一でなくてもいい。
【0026】
前記接着層の幅(W1)に対する前記ダムの幅(W3)の比[W3/W1]は、0.05~0.45であることが好ましい。より好ましくは0.08~0.3であり、更に好ましくは0.1~0.25である。前記接着層の幅(W1)に対する前記ダムの幅(W3)との比[W3/W1]が上記範囲であると、前記ダムが変形しにくく、前記接着層の幅と厚さを精密に制御できる点で好ましい。また、前記第二の被着体に接する前記接着層の幅(W2)を確保できるので、部材との密着性に優れるという点で好ましい。
【0027】
前記ダムの厚さ(T1)は、特に限定されないが、50~3000μmであることが好ましい。より好ましくは75~2000μmであり、さらに好ましくは100~1000μmである。前記ダムの厚さが上記範囲であると、薄型化や小型化した電子機器等にも使用可能であり、かつ部材同士の密着性が良好となる点で好ましい。
【0028】
図4で示すように、前記ダムの厚さ(T1)とは、前記ダムの前記第一の被着体に接する面から垂直方向の距離のうち、一番長い距離を指す。
前記ダムの厚さ(T1)は、均一であることが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲であれば均一でなくてもいい。
【0029】
前記ダムのアスペクト比は、0.05以上2以下であることが好ましい。より好ましくは0.1以上1.5以下であり、さらに好ましくは0.2以上1以下である。前記ダムのアスペクト比が上記範囲であると、前記第二の被着体に接する前記接着層の幅(W2)を確保できるので、部材との密着性に優れるという点で好ましい。
なお、前記ダムのアスペクト比は、前記第一の被着体に接する前記ダムの幅(W3)と、前記ダムの厚さ(T1)との比[T1/W3]で求められる。
【0030】
前記ダムはダム材からなる。前記ダム材の種類としては、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択することができる。前記ダム材は1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記ダム材は少なくとも樹脂組成物を含む。前記樹脂組成物の具体例としては、光硬化型樹脂組成物、ホットメルト型樹脂組成物、熱硬化型樹脂組成物、溶剤乾燥型樹脂組成物、エマルジョン型樹脂組成物等が挙げられる。これらの中でも、光硬化型樹脂組成物、ホットメルト型樹脂組成物等が好ましい。
前記樹脂組成物が光硬化型樹脂組成物である場合、前記ダムの耐久性向上と生産時間の短縮という点で好ましい。ホットメルト型樹脂組成物である場合、前記ダムのアスペクト比を前記範囲に調整しやすいという点で好ましい。
【0032】
前記光硬化型樹脂組成物としては、例えば、ベース成分、アクリル系モノマー成分、光重合開始剤を含有するものを用いることができる。
【0033】
前記ベース成分としては、エラストマー及びアクリル系オリゴマーの少なくとも一方を含有するものを用いることができる。
【0034】
前記エラストマーとしては、例えば、アクリル酸エステルの共重合体からなるアクリル共重合体、ポリブテン、ポリオレフィン等が挙げられる。
【0035】
前記アクリル系オリゴマーは、例えば、(水添)ポリイソプレンを骨格にもつ(メタ)アクリレートオリゴマー、(水添)ポリブタジエンを骨格にもつ(メタ)アクリレートオリゴマー又はポリウレタンを骨格にもつ(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。これらの(メタ)アクリレートオリゴマーは、1種類又は2種類以上を使用できる。
なお、本発明において「(メタ)アクリレート」とはアクリレートあるいはメタクリレートを意味する。
【0036】
前記樹脂組成物が前記光硬化型樹脂組成物の場合、前記アクリル系オリゴマーの重量平均分子量Mwは、500~100,000であることが好ましい。より好ましくは3,000~50,000であり、さらに好ましくは5,000~10,000である。前記アクリル系オリゴマーの重量平均分子量Mwが上記の範囲であると、前記接着層の幅(W1)に対する前記ダムの幅(W3)との比[W3/W1]やアスペクト比を前記記載の範囲に好適に調整でき、且つ塗布後も維持しやすいという点で好ましい。
ここで、GPC法による前記樹脂組成物の重量平均分子量Mwの測定は、GPC装置(HLC-8329GPC、東ソー株式会社製)を用いて測定される、標準ポリスチレン換算値であり、測定条件は以下のとおりである。
-測定条件-
・サンプル濃度:0.5質量%(テトラヒドロフラン(THF)溶液)
・サンプル注入量:100μL
・溶離液:THF
・流速:1.0mL/分
・測定温度:40℃
・本カラム:TSKgel GMHHR-H(20)2本
・ガードカラム:TSKgel HXL-H
・検出器:示差屈折計
・標準ポリスチレン分子量:1万~2,000万(東ソー株式会社製)
【0037】
前記アクリル系モノマー成分としては、例えば、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;メトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ置換アルキル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ置換アルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート;ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ノルボルネン(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0038】
前記光重合開始剤としては、公知の光ラジカル重合開始剤を使用することができ、例えば、1-ヒドロキシ-シクロへキシルフェニルケトン(Omnirad184、IGM Resins B.V.社)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピロニル)ベンジル]フェニル}-2-メチル-1-プロパン-1-オン(Omnirad127、IGM Resins B.V.社)、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤等が挙げられる。
【0039】
前記ホットメルト型樹脂組成物としては、例えば、アクリル系エラストマー、合成ゴム系エラストマー、ウレタン系エラストマー、シリコン系エラストマーなどが挙げられる。中でも、アクリル系エラストマー、合成ゴム系エラストマー、ウレタン系エラストマーが前記フィル層と密着性の観点で好ましい。
なお、ホットメルトとは、23℃下では固体だが、固有の溶融温度以上に加熱すると溶融し液体になることを示す。
【0040】
前記ダム材は、前記ダム材全体に対して固形分が50~100質量%であることが好ましい。その固形分は、例えば前記光硬化型樹脂組成物であれば、前記ベース成分と前記アクリル系モノマー成分との合計が、前記固形分に対して50~100質量%であることが好ましく、より好ましくは70~100質量%であり、更に好ましくは80~100質量%である。前記ダム材の固形分に占める、前記ベース成分と前記アクリル系モノマー成分との合計が上記範囲であるとダムが変形しにくく、接着層の幅と厚さを精密に制御できる点で好ましい。また、前記接着層の幅(W1)に対する前記ダムの幅(W3)との比[W3/W1]や前記アスペクト比を前記記載の範囲に好適に調整できるので、前記第二の被着体に接する前記接着層の幅(W2)を確保でき、部材との密着性に優れるという点で好ましい。
【0041】
前記ダム材の粘度は、23℃で3,000~300,000mPa・sであることが好ましい。より好ましくは10,000~200,000mPa・sであり、さらに好ましくは50,000~15,0000mPa・sである。
前記ダム材の粘度が上記範囲であると、ダムが変形しにくく、接着層の幅と厚さを精密に制御できる点で好ましい。また、前記接着層の幅(W1)に対する前記ダムの幅(W3)との比[W3/W1]や前記アスペクト比を前記記載の範囲に好適に調整できるので、前記第二の被着体に接する前記接着層の幅(W2)を確保でき、部材との密着性に優れるという点で好ましい。
ここで、前記ダム材の粘度の測定は、コーンプレート型粘度計(東亜工業株式会社社製CV-1)を用いて測定される。
【0042】
前記ダム材におけるその他の成分としては、特に制限はなく、前記積層体の特性を損なわない範囲で適宜選択することができ、例えば、粘着付与剤、架橋剤、フィラー、老化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、重合禁止剤、表面調整剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、レベリング剤、有機顔料、無機顔料、顔料分散剤、可塑剤、軟化剤、難燃剤、金属不活性剤等の添加剤;等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記ダム材におけるその他の成分の含有量としては、前記積層体の特性を損なわない範囲で適宜選択することができる。
【0043】
<フィル層>
本実施形態の積層体のフィル層は、第一の被着体の表面に存在する。前記フィル層は、ダムで形成された領域にフィル材を塗布して作成される。塗布した前記フィル材は濡れ広がって前記ダムに堰き止められ、その結果前記ダムの内側が前記フィル材で充填されて、前記フィル層となる。
前記ダムで形成された領域とは、前記第一の被着体の表面に存在し、前記ダムで作成した前記フィル材を充填する範囲のことである。具体的には、図2図3で示した例であれば、ダム5で囲まれた、フィル材6が占める領域のことである。
前記フィル層は1層でもよく、2層以上の複数の層が積層されていてもよい。
前記フィル層は、前記第一の被着体と前記第二の被着体の両方に接していることが好ましい。
【0044】
前記フィル層の厚さは、特に限定されないが、50~3,000μmであることが好ましい。より好ましくは75~2,000μmであり、さらに好ましくは100~1,000μmである。前記フィル層の厚さが上記範囲であると、薄型化や小型化した電子機器等にも使用可能であり、かつ部材同士の密着性が良好となる点で好ましい。
前記フィル層の厚さとは、前記フィル層が前記第一の被着体と接する面から、前記第二の被着体と接する面までの距離を指す。
前記フィル層の厚さは、均一であることが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲であれば均一でなくてもいい。
【0045】
前記フィル層は、フィル材からなる。前記フィル材の種類としては、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択することができる。前記フィル材は1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
前記フィル材は少なくとも樹脂組成物を含む。前記樹脂組成物は、前記ダム材に含まれる樹脂組成物と同じものを使用してもよいし、異なるものを使用してもよい。前記樹脂組成物が前記ダム材に含まれる樹脂組成物と同じものである場合、上記ダム材に使用できるものとして例示した材料と同一のものを使用することができる。
前記樹脂組成物は、前記ダム材に含まれる樹脂組成物と同じものを使用した方が生産時間の短縮となる点で好ましい。
【0047】
前記フィル材は、前記フィル材全体に対して固形分が50~100質量%であることが好ましい。その固形分は、例えば前記光硬化型樹脂組成物であれば、前記ベース成分と前記アクリル系モノマー成分との合計が、前記固形分に対して50~100質量%であることが好ましく、より好ましくは70~100質量%であり、更に好ましくは85~100質量%である。前記フィル材の固形分に占める、前記ベース成分と前記アクリル系モノマー成分との合計が上記範囲であると、優れた接着性能を発現するという点で好ましい。
【0048】
前記フィル材の粘度は、23℃で3,000~300,000mPa・sであることが好ましい。より好ましくは10,000~200,000mPa・sであり、さらに好ましくは30,000~150,000mPa・sである。
前記フィル材の粘度が上記範囲であると、前記第二の被着体を積層することで前記フィル材が濡れ広がりやすく、また前記ダムの内側からあふれ出ないという点で好ましい。
ここで、前記フィル材の粘度の測定は、回転式粘度計(BROOKFIELD社製B型粘度計)を用いて測定される。
【0049】
前記フィル材におけるその他の成分としては、特に制限はなく、前記積層体の特性を損なわない範囲で適宜選択することができ、例えば、粘着付与剤、架橋剤、フィラー、老化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、重合禁止剤、表面調整剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、レベリング剤、有機顔料、無機顔料、顔料分散剤、可塑剤、軟化剤、難燃剤、金属不活性剤等の添加剤;等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記フィル材におけるその他の成分の含有量としては、前記積層体の特性を損なわない範囲で適宜選択することができる。
【0050】
<第一の被着体>
本実施形態の積層体の第一の被着体は、前記フィル材と前記ダム材とが直接塗布される被着体のことである。前記第一の被着体と前記第二の被着体とは同じでもよく、異なっていてもよい。
【0051】
前記第一の被着体は、離型ライナーや、離型性のある部品や、自動車、テレビ、家電製品、OA機器等の比較的大型の電子機器に用いられる部品、携帯電子端末、カメラ、パソコン等の比較的小型の電子機器に用いられる部品等の各産業分野で用いられるあらゆる部品や、製品情報を表示するラベル等から適宜選択することができる。前記第一の被着体が部品だと、後の工程で廃棄される離型ライナーを使用しないため省エネルギーと省資源であることから好ましい。
【0052】
前記離型ライナーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、クラフト紙、グラシン紙、上質紙等の紙;ポリエチレン、ポリプロピレン(二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、一軸延伸ポリプロピレン(CPP))、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂フィルム;前記紙と樹脂フィルムとを積層したラミネート紙、前記紙にクレーやポリビニルアルコール等で目止め処理を施したもの;の片面若しくは両面に、シリコン系樹脂等の剥離処理を施したもの等が挙げられる。
【0053】
前記第一の被着体は活性エネルギー線を透過してもよく透過しなくてもよい。
【0054】
<第二の被着体>
本実施形態の積層体の第二の被着体は、前記接着層の表面に積層させる被着体のことである。本実施形態の接着層は前記フィル層の端部に前記ダムが存在するので、前記接着層の表面を平滑とすることができるが、前記第二の被着体を前記接着層に積層させることにより、さらに前記接着層の表面が平滑となり、被着体との密着性をより向上させることができる。前記第二の被着体と前記第一の被着体とは同じでもよく、異なっていてもよい。
【0055】
前記第二の被着体を前記接着層に積層し、前記接着層の表面を平滑にする場合、その方法は特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができる。例えば、前記第二の被着体を前記接着層に積層した後ローラーで加圧する方法や、加圧した後に加熱する方法や、加圧した後に紫外線を照射して硬化する方法などがあげられる。特に、前記フィル材を構成する樹脂組成物として光硬化型樹脂組成物を用いる場合、短時間で安定して平滑化し、かつ平滑化した後の形状を保持しやすいという点で、前記第二の被着体を積層したのちにローラーで加圧し、紫外線を照射して硬化するという方法が好ましい。
【0056】
前記第二の被着体は、離型ライナーや、離型性のある物品や、自動車、テレビ、家電製品、OA機器等の比較的大型の電子機器に用いられる部品、携帯電子端末、カメラ、パソコン等の比較的小型の電子機器に用いられる部品等の各産業分野で用いられるあらゆる部品や、製品情報を表示するラベル等から適宜選択することができる。
【0057】
前記離型ライナーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、クラフト紙、グラシン紙、上質紙等の紙;ポリエチレン、ポリプロピレン(二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、一軸延伸ポリプロピレン(CPP))、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂フィルム;前記紙と樹脂フィルムとを積層したラミネート紙、前記紙にクレーやポリビニルアルコール等で目止め処理を施したもの;の片面若しくは両面に、シリコン系樹脂等の剥離処理を施したもの等が挙げられる。
【0058】
前記第二の被着体は活性エネルギー線を透過してもよく透過しなくてもよいが、前記フィル材が光硬化型樹脂組成物を含む場合、前記第二の被着体を介して前記フィル層に活性エネルギー線を照射して前記フィル材を硬化させることができることから、活性エネルギー線を透過するほうがより好ましい。前記第二の被着体の全光線透過率は前記フィル層が十分に硬化できれば特に限定されないが、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることが特に好ましい。
【0059】
従来の方法では第一の被着体と第二の被着体には部品が用いられる。従来の工程は、接着剤等を第一の被着体である部品に直接塗布した後すぐに第二の被着体である別の部品と貼り合わせる必要がある。そこで、前記第二の被着体が離型ライナーや離型性のある物品であれば、部品を貼り合わせる前の前記積層体を在庫生産することが可能であり、効率的な部品の生産が可能である。また、前記積層体は部品と貼り合わせる前に輸送することが可能であり、接着剤等の塗布装置がなくても任意の拠点で部品の貼り合わせが可能である。また、部品を貼り合わせる前に前記積層体の品質検査をすることが可能であり、密着不良の原因となる前記積層体を事前に取り除くことによって歩留まりを向上させることが可能となる。
【0060】
<第三の被着体>
本実施形態の第三の被着体は、第一の被着体と第二の被着体の一方もしくは両方が離型ライナーや離型性のある物品である場合に、第一の被着体と第二の被着体の一方もしくは両方を剥離して前記接着層に接着させる被着体である。
【0061】
前記第三の被着体は、自動車、テレビ、家電製品、OA機器等の比較的大型の電子機器に用いられる部品、携帯電子端末、カメラ、パソコン等の比較的小型の電子機器に用いられる部品、等の各産業分野で用いられるあらゆる部品や、製品情報を表示するラベル等から適宜選択することができる。
【0062】
「積層体の製造方法」
本実施形態の積層体の製造方法は、第一の被着体の表面に、ダム材を塗布することによってダムを作製する工程(1)と、前記ダムで形成された領域内に、フィル材を塗布しフィル層を形成する工程(2)と、前記ダムと前記フィル層で構成された接着層の表面に第二の被着体を積層する工程(3)とを有する。
【0063】
前記工程(1)で前記ダム材を塗布し前記ダムを作製する方法は、前記ダムが作製できる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、インクジェット法、ディスペンサーを用いる方法、スリットコーターを用いる方法、ロールコーターを用いる方法、スプレーを用いる方法、押し出し成型によるキャスト法等が挙げられる。特に、前記ダムの幅(W3)とアスペクト比を前記範囲内に調整しやすいという観点から、インクジェット法、スリットコート法又はディスペンサーを用いた塗布方法が好ましい。
前記工程(1)で作製する前記ダムは、単層でもよく、2層以上が積層した複数の層でもよい。
【0064】
前記工程(2)で前記フィル材を塗布し前記フィル層を作製する方法は、前記フィル層が作製できる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、インクジェット法、ディスペンサーを用いる方法、スリットコーターを用いる方法、ロールコーターを用いる方法、スプレーを用いる方法、押し出し成型によるキャスト法等が挙げられる。特に、前記ダム内に精度よく塗布しやすいという観点から、インクジェット法、スリットコート法又はディスペンサーを用いた塗布方法が好ましい。
前記工程(2)で作製する前記フィル層は、単層でもよく、2層以上が積層した複数の層でもよい。
【0065】
前記工程(3)で前記接着層の表面に前記第二の被着体を積層する方法は特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができる。例えば、前記工程(1)と前記工程(2)で前記第一の被着体の表面に作製した前記接着層と、前記第二の被着体とを加圧してラミネートする方法等が挙げられる。
【0066】
前記ダム材が光硬化型樹脂組成物である場合、前記積層体の製造方法は、前記工程(1)の後に前記ダムに対して下記の条件で活性エネルギー線を照射し、前記ダムを光硬化させる工程(1a)を有する。
(活性エネルギー線照射条件)
光源:へレウス社製 無電極ランプバルブ Dバルブ
照度:90mW/cm
光量:180mJ/cm
照度・光量計:オーク製作所社製「ORC UV-M10光量計」
【0067】
前記フィル材が光硬化型樹脂組成物である場合、前記積層体の製造方法は、前記工程(3)の後に前記フィル層に対して下記の条件で活性エネルギー線を照射し、前記フィル層を光硬化させる工程(3a)を有する。
(活性エネルギー線照射条件)
光源:へレウス社製 無電極ランプバルブ Dバルブ
照度:90mW/cm
光量:180mJ/cm
照度・光量計:オーク製作所社製「ORC UV-M10光量計」
【0068】
前記第一の被着体と前記第二の被着体の一方もしくは両方が離型性を有する場合、上記工程で製造した前記積層体から、前記第一の被着体と前記第二の被着体の一方もしくは両方を剥離する工程と、前記第一の被着体と前記第二の被着体の一方もしくは両方が剥離された接着層の表面に第三の被着体を積層する工程を有する。
【0069】
「積層体の用途」
本実施形態の積層体は、テレビ、家電製品、OA機器等の比較的大型の電子機器を構成する部品の固定、携帯電子端末、カメラ、パソコン等の比較的小型の電子機器を構成する部品の固定等のような各産業分野での部品固定や該部品の仮固定、並びに製品情報を表示するラベル等の用途に好適に使用できる。
【0070】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明に係る積層体は、上記の実施形態に限定されることは無く、適宜変更を加えることができる。
【実施例0071】
以下、実施例を用いて本発明の内容を詳細に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されるものではない。
【0072】
実施例、比較例で用いたダム、フィル層、接着層の各材料等は下記のとおりである。
【0073】
表1、表2中の各略号は、それぞれ以下の化合物を表す。
UV3700B:アクリレート系オリゴマー(重量平均分子量:38,000)
KE-311:ロジンエステル系粘着付与剤(融点:90~100℃)
Omnirad184:1-ヒドロキシ-シクロへキシルフェニルケトン
【0074】
<ダム材(A~E)の調製>
表1に示す配合量で各成分を均一に混合して光硬化型樹脂組成物であるダム材を調製した。なお、配合量は質量部で表記した。
【0075】
【表1】
【0076】
<フィル材(A’~E’)の調製>
表2に示す配合量で各成分を均一に混合して光硬化型樹脂組成物であるフィル材を調製した。なお、配合量は質量部で表記した。
【0077】
【表2】
【0078】
<積層体の製造>
(実施例1)
[工程(1)]
図3に示すように、ディスペンサー装置7(武蔵エンジニアリング社製、型式 SHOTMASTER ΩX)を用いてダム材(A)8を第一の被着体2となる離型ライナー(藤森工業社製、厚さ75μm 型式GT)の離型処理面に幅400μm、厚さ100μmになるように塗布し、ダムを形成した。
[工程(1a)]
第一の被着体に塗布した前記ダムに紫外線(メタルハライドランプ、1000mJ/cm)を照射することで前記ダムを光硬化させた。
【0079】
[工程(2)]
図4に示すように、前記ダム5に囲まれたフィル材の塗布領域に、ディスペンサー装置7を用いてフィル材(A’)9を、塗布領域の体積に対して1.3倍量になるように塗布し、フィル層を形成した。なお、塗布領域の体積は、ダムの厚さと塗布領域側のダム間の距離から算出した。
【0080】
[工程(3)]
図5に示すように、第一の被着体2に塗布した前記フィル層6の、第一の被着体2が積層されている面と反対の面に対して、第二の被着体3となる離型ライナー(藤森工業社製、厚さ75μm 型式GT)の離型処理面をローラーで貼り合わせた。
[工程(3a)]
第二の被着体が貼り合わされた状態で、前記フィル層に紫外線(メタルハライドランプ、1000mJ/cm)を照射することで接着層を形成し、表3に記載の積層体を得た。
【0081】
(実施例2)
ダム材(A)をダム材(B)に変更し、フィル材(A’)をフィル材(B’)に変更ことする以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0082】
(実施例3)
ダム材(A)をダム材(C)に変更し、フィル材(A’)をフィル材(C’)に変更する以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0083】
(実施例4)
ダム材(A)をダム材(D)に変更し、フィル材(A’)をフィル材(D’)に変更する以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0084】
(実施例5)
ダム材(A)をダム材(E)に変更し、フィル材(A’)をフィル材(E’)に変更する以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0085】
(比較例1)
図6に示すように、ディスペンサー装置7(武蔵エンジニアリング社製、型式 SHOTMASTER ΩX)を用いてフィル材(A’)9を第一の被着体2となる離型ライナー(藤森工業社製、厚さ75μm 型式GT)の離型処理面に厚さ100μm、幅400μmになるように塗布した。次に、紫外線(メタルハライドランプ、1000mJ/cm)を照射することで接着層を形成した後、第二の被着体となる離型ライナー(藤森工業社製、厚さ75μm 型式GT)の離型処理面をローラーで貼り合わせることで、表5に記載の接着層を形成し、積層体を得た。
【0086】
(比較例2)
フィル材(A’)の塗布幅を2400μmに変更する以外は、比較例1と同様の方法で積層体を得た。
【0087】
各実施例及び比較例で得られた、前記ダム、前記フィル層、前記接着層の測定及び評価は、次の方法に基づいて行った。各測定及び評価の結果は、表3~5に示した。
【0088】
(1)ダム、フィル層、及び接着層の幅の測定
前記ダムの幅、前記フィル層、及び前記接着層の幅は、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-7000)を用いて測定した。なお、実施例及び比較例で得られた積層体の構成において、第一の被着体に接する接着層の幅(W1)は、前記接着層が第一の被着体に密着している部分のみを前記マイクロスコープで観察することで判定し、その距離を測定した。また、第ニの被着体に接するフィル層の幅(W2)は、前記フィル層が第二の被着体に密着している部分のみを前記マイクロスコープで観察することで判定し、その距離を測定した。また、前記第一の被着体に接する前記ダムの幅(W3)は、前記ダム層が第一の被着体に密着している部分のみを前記マイクロスコープで観察することで判定し、その距離を測定した。
【0089】
(2)ダムの厚さの測定
実施例及び比較例で得られた積層体の厚さを、厚さ計「TH-102」(テスター産業株式会社製)を用いて測定し、第一の被着体の厚さ及び第二の被着体の厚さを減じた値を、前記ダムの厚さ(T1)とした。
【0090】
(3)幅と厚さの精密制御性の評価
前記第一の被着体に接する前記接着層の幅(W1)と、前記第二の被着体に接する前記フィル層の幅(W2)との比[W2/W1]を以下の基準で評価した。なお、[W2/W1]の値が1に近いほど、前記接着層の幅と厚さを精密に制御できていることを示す。
◎:0.85<[W2/W1]≦1
○:0.7<[W2/W1]≦0.85
×:[W2/W1]≦0.7
【0091】
(4)180°剥離接着力の測定
実施例及び比較例で得られた積層体の、測定面とは反対側である第一の被着体または第二の被着体を剥離して、S25(ユニチカ株式会社製、ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ25μm)で接着層の片側を裏打ちした。
【0092】
実施例及び比較例で得られた積層体の、測定面側である第一の被着体または第二の被着体を剥離して、360番の耐水研磨紙を用いてヘアライン研磨処理したステンレス板(以下、「ステンレス板」)の表面に接着層を貼り合わせ、23℃及び50%RHの環境下で2.0kgローラー1往復加圧することで貼付した。
【0093】
前記貼付物を常温で1時間放置した後、引っ張り試験機(テンシロンRTA-100、エーアンドディー社製)を用い、常温下、引張速度300mm/minで180°剥離接着力を測定した。
【0094】
(5)被着体との密着性の評価
第ニの被着体に接する接着層の180°剥離接着力(F2)と、第一の被着体に接する接着層の180°剥離接着力(F1)との比[F2/F1]を以下の基準で評価した。なお、[F2/F1]の値が1に近いほど、前記接着層の被着体との密着性が良好であることを示す。
◎:0.85<[F2/F1]≦1
〇:0.7<[F2/F1]≦0.85
△:0.65<[F2/F1]≦0.7
×:[F2/F1]≦0.65
【0095】
【表3】
【0096】
【表4】
【0097】
【表5】

【0098】
実施例1~5で得られた積層体は、接着層の幅と厚さが精密に制御されていることを確認できた。また、実施例1~5で得られた積層体は、第二の被着体と貼り合わせる側の接着層の表面が平滑であるため、被着体との密着性が良好であることを確認できた。
一方、比較例1、2の積層体は接着層の幅と厚さが精密に制御できていなかった。また、比較例1、2の積層体は第二の被着体と貼り合わせる側の接着層の表面がアーチ状であるため、被着体と接着層との接着面積が小さくなり、密着性が不十分であった。
【符号の説明】
【0099】
1…積層体、2…第一の被着体、3…第二の被着体、4…接着層、5…ダム、6…フィル層、7…ディスペンサー装置、8…ダム材、9…フィル材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8