(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082406
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/40 20060101AFI20240613BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20240613BHJP
C08G 18/12 20060101ALI20240613BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20240613BHJP
C09J 175/06 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
B32B27/40
C08G18/42 002
C08G18/12
C09J7/35
C09J175/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196228
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 和人
(72)【発明者】
【氏名】小松崎 邦彦
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J034
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AB10B
4F100AH03A
4F100AH03H
4F100AK01B
4F100AK41A
4F100AK41G
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4F100AR00A
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4F100CB03A
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4J034HA07
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4J034HC73
4J034JA42
4J034LA08
4J034QA01
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4J034QA03
4J034QA05
4J034QB02
4J034QB10
4J034QB19
4J034QC01
4J034QC03
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4J034RA05
4J034RA07
4J034RA08
4J040EF111
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4J040JA09
4J040JB01
4J040LA01
4J040LA02
4J040MA02
4J040MA10
4J040MB03
4J040MB05
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、優れた接着性、及び、再剥離性を有する積層体を提供することである。
【解決手段】本発明は、基材、及び、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物の硬化物層を有する積層体であって、前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物が、結晶性ポリエステルポリオール(a1)と非晶性ポリエステルポリオール(a2)とを必須成分とするポリオール(A)、及び、ポリイソシアネート(B)を原料とするイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)を含有するものであり、前記基材と前記ウレタンプレポリマー(i)との関係が、式(1)を満たすものであることを特徴とする積層体を提供するものである。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、及び、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物の硬化物層を有する積層体であって、
前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物が、結晶性ポリエステルポリオール(a1)と非晶性ポリエステルポリオール(a2)とを必須成分とするポリオール(A)、及び、ポリイソシアネート(B)を原料とするイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)を含有するものであり、
前記基材と前記ウレタンプレポリマー(i)との関係が、下記式(1)を満たすものであることを特徴とする積層体。
[δp]÷[結晶性ポリエステルポリオール割合]=11~23 (1)
なお、式(1)中の文言は以下のものを示す。
δp:基材の表面自由エネルギーの極性項。
結晶性ポリエステルポリオール比率:ウレタンプレポリマー(i)を構成する原料の合計質量中における結晶性ポリエステルポリオール(a1)の使用割合。
【請求項2】
前記結晶性ポリエステルポリオール(a1)の含有率が、ポリオール(A)中15~80質量%である請求項1記載の積層体。
【請求項3】
前記非晶性ポリエステルポリオール(a2)の含有率が、ポリオール(A)中15~80質量%である請求項1記載の積層体。
【請求項4】
前記基材が、アルミ基材である請求項1記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物の硬化物層を有する積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧板や窓枠サッシ等の分野では、これまでパーティクルボードや合板などの木材系の材料が主に使用されてきたが(例えば、特許文献1を参照。)、昨今の木材の供給不安により非木質材料への素材転換が進んでおり、アルミ基材等が使用され始めている。
【0003】
一方、窓枠サッシ等の製造工程の不具合で、基材とシートとの貼り合わせに失敗した際には、基材を解体して再利用ができるようなリワーク性の要望があり、接着剤に対して再剥離性の付与が求めれている。しかしながら、優れた接着性と再剥離性とは全く相反する性能であり、これらの両立を達成するにはかなりの困難性を有しているのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、優れた接着性、及び、再剥離性を有する積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基材、及び、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物の硬化物層を有する積層体であって、前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物が、結晶性ポリエステルポリオール(a1)と非晶性ポリエステルポリオール(a2)とを必須成分とするポリオール(A)、及び、ポリイソシアネート(B)を原料とするイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)を含有するものであり、前記基材と前記ウレタンプレポリマー(i)との関係が、下記式(1)を満たすものであることを特徴とする積層体を提供するものである。
【0007】
[δp]÷[結晶性ポリエステルポリオール割合]=11~23 (1)
なお、式(1)中の文言は以下のものを示す。
δp:基材の表面自由エネルギーの極性項。
結晶性ポリエステルポリオール比率:ウレタンプレポリマー(i)を構成する原料の合計質量中における結晶性ポリエステルポリオール(a1)の使用割合。
【発明の効果】
【0008】
本発明の積層体は、優れた接着性と再剥離性とを両立するものであり、基材のリワーク性に優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の積層体は、基材、及び、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物の硬化物層を有するものであり、前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、特定のウレタンプレポリマー(i)を含有するものである。
【0010】
前記基材としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、エポキシ系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン、シクロオレフィン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、脂環式ポリイミド系樹脂、セルロース系樹脂、PC(ポリカーボネート)、PBT(ポリブチレンテレフタラート)、変性PPE(ポリフェニレンエーテル)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、乳酸ポリマー、ABS樹脂、AS樹脂等の樹脂基材;不織布、織布、編み物等の繊維基材;ステンレス、アルミ基材、銅、鉄鋼、クロム、亜鉛、ジェラルミン、ダイカスト、これらの合金などの金属基材などを用いることができる。前記基材は、必要に応じて、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理等が施されていてもよい。前記基材の厚さとしては、例えば、1~50mmである。これらの中でも、リワーク性が特に要求されているアルミ基材が好ましい。
【0011】
前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、優れた接着性を得るうえで、結晶性ポリエステルポリオール(a1)と非晶性ポリエステルポリオール(a2)とを必須成分とするポリオール(A)、及び、ポリイソシアネート(B)を原料とするイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)を含有することが必須であり、更に、優れた再剥離性を発現するために、基材との間で特定の関係を有することが必須である。
【0012】
前記結晶性ポリエステルポリオール(a1)は、その凝集力により優れた接着性を得られるものであり、例えば、水酸基を2つ以上有する化合物と多塩基酸との反応物;ポリカプロラクトンポリオール等を用いることができる。なお、本発明において、「結晶性」とは、JISK7121:2012に準拠したDSC(示差走査熱量計)測定において、結晶化熱あるいは融解熱のピークを確認できるものを示し、「非晶性」とは、前記ピークを確認できないものを示す。
【0013】
前記水酸基を2つ以上有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも結晶性を高め、より一層優れた接着性が得られる点から、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、及び、デカンジオールからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
【0014】
前記多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも結晶性を高め、より一層優れた接着性が得られる点から、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、及び、ドデカン二酸からなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
【0015】
前記カプロラクトンポリオールとしては、例えば、前記水酸基を2つ以上有する化合物とε-カプロラクトンとの反応物を用いることができる。
【0016】
前記結晶性ポリエステルポリオール(a1)の数平均分子量としては、前記水酸基を2つ以上有する化合物と前記多塩基酸との反応物を用いる場合には、500~10,000が好ましく、1,000~6,000がより好ましく、前記ポリカプロラクトンポリオールを用いる場合には、5,000~200,000が好ましく、10,000~100,000がより好ましい。なお、前記結晶性ポリエステルポリオール(a1)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0017】
前記結晶性ポリエステルポリオール(a1)の含有率としては、より一層優れた接着性が得られる点から、ポリオール(A)15~80質量%が好ましく、30~50質量%がより好ましい。
【0018】
前記非晶性ポリエステルポリオール(a2)は、前記結晶性ポリエステルポリオール(a1)との相溶性がよく、緻密で強靭な接着剤皮膜を形成できるものであり、例えば、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物や分岐構造を有する化合物のような結晶構造を崩す成分を含む、水酸基を2つ以上有する化合物と多塩基酸との反応物を用いることができる。
【0019】
前記ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物における、前記アルキレンとしては炭素原子数1~10のものを用いることができ、アルキレンオキサイドの付加モル数としては、2~10モルが好ましく、4~8モルが更に好ましい。
【0020】
前記分岐構造を有する化合物としては、例えば、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ネオペンチルグリコールが好ましい。
【0021】
前記水酸基を2つ以上有する化合物としては、前記したもの以外にも、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記多塩基酸としては、例えば、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、ダイマー酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等を用いることができる。
【0023】
前記非晶性ポリエステルポリオール(a2)の数平均分子量としては、500~10,000が好ましく、1,000~5,000がより好ましく、1,000~3,000の範囲が更に好ましい。なお、前記非晶性ポリエステルポリオール(a2)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0024】
前記非晶性ポリエステルポリオール(a2)の含有率としては、より一層優れた接着性が得られる点から、ポリオール(A)10~80質量%が好ましく、15~35質量%がより好ましい。
【0025】
前記ポリオール(A)は、前記したもの以外にも、例えば、ポリアクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリブタジエンポリオール等を用いることができる。これらのポリオールあ単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記ポリイソシアネート(B)としては、例えば、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネートイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらの中でも、より一層優れた反応性および接着性が得られる点から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネートがより好ましい。
【0027】
また、前記ポリイソシアネート(B)の使用量としては、より一層優れた接着性が得られる点から、ウレタンプレポリマー(i)を構成する原料の合計質量中1~25質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましい。
【0028】
前記ウレタンプレポリマー(i)は、前記ポリオール(A)と前記ポリイソシアネート(B)とを反応させて得られるものであり、空気中やウレタンプレポリマーが塗布される筐体や被着体中に存在する水分と反応して架橋構造を形成しうるイソシアネート基をポリマー末端や分子内に有するものである。
【0029】
前記ウレタンプレポリマー(i)の製造方法としては、例えば、前記ポリイソシアネート(B)の入った反応容器に、前記ポリオール(A)を滴下した後に加熱し、前記ポリイソシアネート(B)の有するイソシアネート基が、前記ポリオール(A)の有する水酸基に対して過剰となる条件で反応させることによって製造することができる。
【0030】
前記ウレタンプレポリマー(i)のイソシアネート基含有率(以下、「NCO%」と略記する。)としては、より一層優れた接着性が得られる点から、1~5質量%がより好ましい。なお、前記ウレタンプレポリマー(i)のNCO%は、JISK1603-1:2007に準拠し、電位差滴定法により測定した値を示す。
【0031】
なお、本発明においては、前記基材と前記ウレタンプレポリマー(i)との関係が、下記式(1)を満たすことが必須である。
【0032】
[δp]÷[結晶性ポリエステルポリオール割合]=11~23 (1)
なお、式(1)中の文言は以下のものを示す。
δp:基材の表面自由エネルギーの極性項。
結晶性ポリエステルポリオール比率:ウレタンプレポリマー(i)を構成する原料の合計質量中における結晶性ポリエステルポリオール(a1)の使用割合。
【0033】
一般に、基材の表面自由エネルギーの極性項が高いほど基材の濡れ性が良好となり、接着剤との接着性が良好となるが、再剥離が困難となる。また、接着剤の結晶性成分が多いほど初期の固化性により再剥離性が良好となるが、接着性が減じられる。前記式(1)で記述する、基材の表面自由エネルギーの極性項を、接着剤の結晶成分量で除して得られる値が特定の範囲内に収まるときに、優れた接着性と再剥離性とを両立することができる。
【0034】
なお、前記基材の表面自由エネルギー(極性項及び分散項)は、前記基材上での測定溶液(水及びジヨードメタン)の接触角を、接触角計(協和界面科学社製「PCA-11」)を使用して測定し、この結果に基づき、下記の式(2)を用いて基材の表面自由エネルギーを算出した。なお、算出には協和界面科学社製のソフトウェア「FAMAS」)を使用し、Owens-Wendt法を用いた。
(δdL+δpL)・(1+cosθ)/2=(δd・δdL)1/2+(δp・δpL)1/2 (2)
【0035】
δd:基材の表面自由エネルギーの分散項
δp:基材の表面自由エネルギーの極性項
δdL:測定溶液の表面自由エネルギーの分散項
δpL:測定溶液の表面自由エネルギーの極性項
【0036】
水のδdL:21.8mJm-2、δpL:51.0mJm-2
ジヨードメタンのδdL:49.5mJm-2、δpL:1.3mJm-2
【0037】
本発明で用いる前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、前記ウレタンプレポリマー(i)を必須成分とするが、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。
【0038】
前記その他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、粘着付与剤、可塑剤、安定剤、充填材、染料、顔料、蛍光増白剤、シランカップリング剤、ワックス等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0039】
次に、本発明の積層体について説明する。
【0040】
前記積層体は、少なくとも、前記基材、及び、前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物の硬化物層を有するものである。
【0041】
前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物の硬化物を得る方法としては、例えば、前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を50~130℃で溶融した後に前記基材に塗工し、湿気硬化させる方法が挙げられる。
【0042】
前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を塗工する方法としては、例えば、ロールコーター、スプレーコーター、T-ダイコーター、ナイフコーター、コンマコーター等を使用する方法が挙げられる。前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物の硬化物層の厚さとしては、例えば、5~500μmである。
【0043】
前記塗工後は、他の基材を更に貼り合わせ、例えば、温度20~80℃、相対湿度50~90%にて0.5~3日間エージングすることができる。
【実施例0044】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。
【0045】
[合成例1~6]湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物の調製
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四つ口フラスコに、表1
に示す各ポリオール原料を同表に記載の量(質量部)で仕込み、90℃で減圧加熱するこ
とにより水分含有率が0.05質量%以下となるまで脱水した。次いで、反応容器内の温
度を60℃に冷却後、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と略記する
。)を表1に示す量(質量部)にて加え、110℃まで昇温して、イソシアネート基含有
率が一定となるまで約3時間反応させて、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマ
ー(i-1)~(i-6)を得、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物(1)
~(6)とした。
【0046】
【0047】
なお、表1中の略語は以下のものを示す。
「非PEs1」:ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、11,6-ヘキサン
ジオール及びアジピン酸を反応させた非晶性ポリエステルポリオール、数平均分子量;2
,000
「非PEs2」:ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジ
オール及びアジピン酸を反応させた非晶性ポリエステルポリオール、数平均分子量;7,
000
「非PEs3」:エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン
酸ネオペンチルグリコールエステル、アジピン酸、イソフタル酸、及び、テレフタル酸を
反応させた非晶性ポリエステルポリオール、数平均分子量;3,500
「非PEs4」:エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジ
オール、イソフタル酸、及び、テレフタル酸を反応させた非晶性ポリエステルポリオール
、数平均分子量;5,500
「非PEs5」:ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及び、オルトフタル
酸を反応させた非晶性ポリエステルポリオール、数平均分子量;1,000
「結PEs1」:1,6-ヘキサンジオール、及び、アジピン酸を反応させた結晶性ポリ
エステルポリオール、数平均分子量;4,500
「結PEs2」:1,6-ヘキサンジオール、及び、ドデカン二酸を反応させた結晶性ポ
リエステルポリオール、数平均分子量;3,500
「結PEs3」:カプロラクトンを重合して得られた結晶性ポリカプロラクトンポリオー
ル、数平均分子量;80,000
「PC1」:2-メチル-1,3-プロパンジオールをグリコール原料とする非晶性ポリ
カーボネートポリオール、数平均分子量;2,000
【0048】
[数平均分子量の測定方法]
合成例において用いたポリオールの数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
【0049】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0050】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0051】
[実施例1~6、及び、比較例1~8]
[積層体の作製方法]
表2~4に示す、各合成例で得られた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を120℃で1時間加熱溶融させた後、幅40mmのシートにアプリケーターを使用して0.1mmの厚さで塗工し、表2~4に示すアルミ基材にプレスロールで貼り合わせた。
【0052】
[再剥離性の評価方法]
上記貼り合わせ後15分した後、手で前記シートを剥がし、接着剤層と基材の間で界面剥離したものを「〇」、接着剤が基材に残ったものを「×」と評価した。
【0053】
[接着性の評価方法]
上記貼り合わせ後、23℃、湿度50%の条件で48時間養生を行った後、前記シートに幅25mmとなるように切れ込みを入れ、株式会社島津製作所製「島津オートグラフAGS-X」を使用して、剥離速度:50mm/分の速度で180°剥離強度を測定した。前記剥離強度が30N/inch以上であれば「〇」、それ以外は「×」と評価した。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
なお、表2~4に示す基材は以下のアルミ基材を示す。
「基材(1)」:アルマイト処理、及び、樹脂皮膜を電着塗装したアルミ基材(1)
「基材(2)」:アルマイト処理、及び、樹脂皮膜を電着塗装したアルミ基材(2)
「基材(3)」:アルマイト処理のみ施したアルミ基材
「基材(4)」:アルマイト処理、樹脂皮膜の電着塗装、及びコロナ処理をしたアルミ基材
【0058】
本発明の積層体は、優れた接着性、及び、再剥離性を有することが分かった。
【0059】
一方、比較例1~3、5、及び8は、本発明で規定する式(1)の値が本発明で規定する範囲を超える態様であるが、再剥離性が不良であった。
【0060】
比較例4、6、及び7は、本発明で規定する式(1)の値が本発明で規定する範囲を下回る態様であるが、接着性が不良であった。