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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082421
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】ポリカーボネート樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20240613BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240613BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
C08L69/00
C08K3/22
C08K3/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196257
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高島 象一
(72)【発明者】
【氏名】入江 康行
(72)【発明者】
【氏名】神田 僚
(72)【発明者】
【氏名】山本 広志
(72)【発明者】
【氏名】林 正道
(72)【発明者】
【氏名】濱田 健一
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CG011
4J002DE146
4J002DJ047
4J002FA016
4J002FD016
4J002FD017
4J002GG01
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】熱伝導性、セルフタップ性および絶縁性に優れたポリカーボネート樹脂組成物。
【解決手段】ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、板状アルミナ(B)を15~60質量部および(B)以外の他のフィラー(C)15~60質量部を含有し、板状アルミナ(B)の平均厚さが0.02~2.0μmであり、他のフィラー(C)と板状アルミナ(B)との含有量の質量比(C)/(B)が0.6以上であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、板状アルミナ(B)を15~60質量部および(B)以外の他のフィラー(C)15~60質量部を含有し、板状アルミナ(B)の平均厚さが0.02~2.0μmであり、他のフィラー(C)と板状アルミナ(B)との含有量の質量比(C)/(B)が0.6以上であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
他のフィラー(C)がタルクである請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
板状アルミナ(B)のアスペクト比が5~60である請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
熱伝導性成形品用である請求項2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物のペレット。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品。
【請求項7】
請求項5に記載のポリカーボネート樹脂組成物のペレットからなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物に関し、詳しくは、熱伝導性、セルフタップ性及び絶縁性に優れたポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性、耐熱性、電気絶縁性、寸法安定性等に優れ、これらの特性のバランスも良好であることから、電気電子機器部品、OA機器部品、精密機械部品、車輌用部品などの分野で広く使用されている。
【0003】
上記の分野においては、殆どの機器が発熱する部品を搭載しているが、近年、機器の小型化、軽量化、高伝送密度化等の高性能化に伴い、部品当たりの消費電力量が増え、発熱量が大で、小型軽量化された部品も多くなり、高い熱伝導率を有しながら絶縁性や強度にも優れるポリカーボネート樹脂材料が強く求められている。
【0004】
ポリカーボネート樹脂材料に熱伝導性を付与する方法として、種々の熱伝導性フィラーを配合する方法が知られており、特許文献1~6には、熱伝導度の良好なポリカーボネート樹脂組成物が記載されている。
また、特許文献7では、板状アルミナを含有する樹脂組成物が、透明性を保持しながら機械特性などの物性に優れ、自動車の有機ガラスとして用いることが提案されている。しかし、当該板状アルミナを含有する樹脂組成物は、熱伝導率が低いという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-16093号公報
【特許文献2】特開2007-238917号公報
【特許文献3】特開2008-127554号公報
【特許文献4】特開2008-163270号公報
【特許文献5】特開2009-161582号公報
【特許文献6】特開2011-16936号公報
【特許文献7】特許第4556628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、電気電子機器部品等の分野においては、製品を勘合、あるいは部品をネジで固定する際の強度、いわゆるセルフタップ性が求められるが、上述の手法ではこれを満足することはできない。
本発明の目的(課題)は、熱伝導性、セルフタップ性及び絶縁性に優れたポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ポリカーボネート樹脂に板状アルミナを配合したコンパウンド品につき検討を行った結果、板状アルミナとして平均厚さが0.02~2.0μmのものを使用し、これに板状アルミナ以外の他のフィラーを特定の量と比率で組み合わせて含有させることにより、熱伝導率と絶縁性が共に良好となり、セルフタップ性にも優れ、耐衝撃性の悪化もなく、生産性の悪化もなく安定した製造ができることが見出された。
本発明は、以下のポリカーボネート樹脂組成物及び成形品を提供する。
【0008】
1.ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、板状アルミナ(B)を15~60質量部および(B)以外の他のフィラー(C)15~60質量部を含有し、板状アルミナ(B)の平均厚さが0.02~2.0μmであり、他のフィラー(C)と板状アルミナ(B)との含有量の質量比(C)/(B)が0.6以上であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
2.他のフィラー(C)がタルクである上記1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
3.板状アルミナ(B)のアスペクト比が5~60である上記1~2のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
4.熱伝導性成形品用である上記1~3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
5.上記1~4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物のペレット。
6.上記1~4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品。
7.上記5に記載のポリカーボネート樹脂組成物のペレットからなる成形品。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、熱伝導性、セルフタップ性及び絶縁性に優れ、機械的強度にも優れ、生産性の悪化もなく製造でき、電気電子機器部品等として特に好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は、以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
【0011】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、板状アルミナ(B)を15~60質量部および(B)以外の他のフィラー(C)15~60質量部を含有し、板状アルミナ(B)の平均厚さが0.02~2.0μmであり、他のフィラー(C)と板状アルミナ(B)との含有量の質量比(C)/(B)が0.6以上であることを特徴とする。
【0012】
[ポリカーボネート樹脂(A)]
本発明の樹脂組成物が含有するポリカーボネート樹脂(A)の種類は、特に限定されず、種々のものが用いられる。ポリカーボネート樹脂は、炭酸結合に直接結合する炭素がそれぞれ芳香族炭素である芳香族ポリカーボネート樹脂、及び脂肪族炭素である脂肪族ポリカーボネート樹脂に分類でき、いずれを用いることもできるが、ポリカーボネート樹脂(A)としては、耐熱性、機械的物性、電気的特性等の観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0013】
芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、芳香族ジヒドロキシ化合物の例を挙げると、
1,2-ジヒドロキシベンゼン、1,3-ジヒドロキシベンゼン(即ち、レゾルシノール)、1,4-ジヒドロキシベンゼン等のジヒドロキシベンゼン類;
2,5-ジヒドロキシビフェニル、2,2’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類;
【0014】
2,2’-ジヒドロキシ-1,1’-ビナフチル、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;
【0015】
2,2’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエーテル、1,4-ビス(3-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン等のジヒドロキシジアリールエーテル類;
【0016】
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールC)、
2,2-ビス(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1-ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、
1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)(4-プロペニルフェニル)メタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-ナフチルエタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、
4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ドデカン、
等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
【0017】
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3-ジメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,4-ジメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,5-ジメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-プロピル-5-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-tert-ブチル-シクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-tert-ブチル-シクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン、
等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
【0018】
9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、
9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;
【0019】
4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、
4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;
4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;
4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、
4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;
等が挙げられる。
【0020】
これらの中ではビス(ヒドロキシアリール)アルカン類が好ましく、中でもビス(4-ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、特に耐衝撃性、耐熱性の点から2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールC)が好ましい。
なお、芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0021】
ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、カーボネート前駆体の例を挙げると、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート前駆体は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0022】
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
【0023】
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;ジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等のジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。
【0024】
ポリカーボネート樹脂(A)の製造方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。これらの中では、界面重合法によるものが特に好ましい。
【0025】
さらにポリカーボネート樹脂(A)は、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂(いわゆるマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂)であってもよく、バージン原料とリサイクル樹脂の両方を含有することも好ましく、リサイクルポリカーボネート樹脂からなることでもよい。ポリカーボネート樹脂(A)中のリサイクルポリカーボネート樹脂の割合は40%以上、50%以上、60%以上、80%以上が好ましく、リサイクルポリカーボネート樹脂が100%であることも好ましい。
【0026】
ポリカーボネート樹脂(A)の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量(Mv)で、好ましくは10000~50000であり、より好ましくは10000~40000、中でも10000~30000、10000~26000であり、更には10500以上、11000以上、特には11500以上、最も好ましくは12000以上であり、さらには25000以下、特に好ましくは24000以下である。粘度平均分子量を上記範囲の下限値以上とすることにより、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の機械的強度をより向上させることができ、粘度平均分子量を上記範囲の上限値以下とすることにより、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の流動性低下を抑制して改善でき、成形加工性を高めて成形加工を容易に行えるようになる。
なお、粘度平均分子量の異なる2種類以上のポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合してもよい。
【0027】
なお、粘度平均分子量[Mv]とは、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度25℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10-4Mv0.83から算出される値を意味する。また、極限粘度[η]とは、各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
【数1】
【0028】
また、成形体の外観の向上や流動性の向上を図るため、ポリカーボネート樹脂(A)は、ポリカーボネートオリゴマーを含有していてもよい。このポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量[Mv]は、通常1500以上、好ましくは2000以上であり、また、通常9500以下、好ましくは9000以下である。含有されるポリカーボネートオリゴマーは、ポリカーボネート樹脂(ポリカーボネートオリゴマーを含む)の30質量%以下とすることが好ましい。
【0029】
[板状アルミナ(B)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は平均厚さが0.02~2.0μmの板状アルミナ(B)を含有する。ここで「板状」は平均粒子径を厚さで除したアスペクト比が好ましくは2以上であることを指す。
【0030】
板状アルミナ(B)は、平均厚さが0.02~2.0μmの板状アルミナであれば、限定されない。板状アルミナの平均厚さがこのような範囲にあることで、ポリカーボネート樹脂組成物の成形体の機械強度、例えば曲げ弾性率、曲げ強度、引張強度、引張弾性率等を大きくすることができる。
板状アルミナの平均厚さは、20~1000nmであることが好ましく、より好ましくは30~500nm、特に好ましくは50~300nmである。
【0031】
板状アルミナ(B)は、平均厚さに対する平均粒子径の比率であるアスペクト比(=板状アルミナの平均粒子径L/板状アルミナの平均厚さD)が5~60であることが好ましい。アスペクト比がこのような範囲にあると、樹脂組成物の機械的強度に優れることから好ましい。アスペクト比は10~50がより好ましく、さらに好ましくは15~50である。
【0032】
板状アルミナ(B)の平均粒子径は0.5~100μmであることが好ましく、1~50μmであることがより好ましい。
【0033】
板状アルミナ(B)は、円形板状や楕円形板状であってもよいが、粒子形状は、例えば、六角~八角といった多角板状であることが、取扱い性や製造のし易さの点から好ましい。
【0034】
本明細書において、板状アルミナの平均厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)により得られたイメージから、無作為に選出された少なくとも50個の板状アルミナについて測定された厚さの算術平均値とする。また、板状アルミナの平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置により測定された体積基準の累積粒度分布から、体積基準メディアン径D50として算出された値とする。
【0035】
板状アルミナ(B)に含まれるアルミナは、酸化アルミニウムであり、例えば、γ、δ、θ、κ等の各種の結晶形の遷移アルミナであっても、又は遷移アルミナ中にアルミナ水和物を含んでいてもよいが、より機械的な強度又は熱伝導性に優れる点で、基本的にα結晶形(α型)であることが好ましい。α結晶形がアルミナの緻密な結晶構造であり、板状アルミナの機械強度又は熱伝導性の向上に有利となる。
板状アルミナ(B)はモリブデンを含んでもよい。さらに、本発明の効果を損なわない限り、原料又は形状制御剤などからの不純物を含んでもよい。
【0036】
板状アルミナは、水熱法、フラックス法等の公知慣用の製造方法で製造することが出来るが、中でも好ましい製造方法としては、モリブデン化合物及び珪素或いは珪素原子を含む化合物からなる形状制御剤の存在下、アルミニウム化合物を焼成するアルミナ粒子の製造方法にて製造することができる。
【0037】
板状アルミナ(B)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、15~60質量部である。このような量でポリカーボネート樹脂(A)に、特定量の、板状アルミナ(B)以外の他のフィラー(C)と組み合わせることにより、熱伝導性、セルフタップ性および絶縁性の全てをバランス良く優れた樹脂組成物とすることができる。板状アルミナ(B)の含有量が15質量部未満では熱伝導性が不十分となり、逆に60質量部を超えると強度や流動性が不十分となりやすい。板状アルミナ(B)の含有量は、好ましくは16質量部以上であり、好ましくは50質量部以下、より好ましくは45質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下である。
【0038】
[他のフィラー(C)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、板状アルミナ(B)以外の他のフィラー(C)を含有する。
他のフィラー(C)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、15~60質量部であって、且つ、他のフィラー(C)と板状アルミナ(B)との含有量の質量比(C)/(B)を0.6以上とする。このような量と量比で板状アルミナ(B)と組み合わせることで、ポリカーボネート樹脂組成物の熱伝導性と絶縁性、セルフタップ性、機械的強度を良好にすることができる。
【0039】
他のフィラー(C)は、板状アルミナ(B)以外のフィラーであり、好ましいものは無機フィラーである。他のフィラー(C)の形態は、球状、板状、針状、繊維状等いずれであってもよいが、最終的に得られる樹脂組成物の寸法安定性、耐熱性及び剛性を向上させるためには、板状、針状、繊維状のものが好ましい。
【0040】
このような板状、針状、繊維状の無機フィラーの具体例を挙げれば、板状フィラーとしては、タルク等の珪酸マグネシウム、窒化ホウ素、マイカ、ガラスフレーク、黒鉛、セリサイト、クレー、モンモリロナイト、板状炭酸カルシウム等があり、針状フィラーとしては、ウォラストナイト等の珪酸カルシウム、ゾノトライト、チタン酸カルシウム、硼酸アルミニウム、針状炭酸カルシウム、針状酸化チタン、酸化亜鉛等があり、繊維状フィラーとしては、ガラス繊維、炭素繊維等があり、その他球状アルミナ等も挙げられる。これら無機フィラーの中で、板状アルミナ(B)との相乗効果の点で好ましいのは、タルク、窒化ホウ素、マイカ、ガラスフレーク、ガラス繊維、炭素繊維であり、中でも特にタルクが好ましい。
【0041】
他のフィラー(C)の平均粒子径としては、板状、針状フィラーや、繊維状フィラー以外のフィラーの場合は、好ましくは0.1~25μmであり、より好ましくは0.5~15μmである。ここで平均粒子径とは、レーザー回折散乱方式により測定された中央値(D50)である。また、例えば、製品として供給されるタルクであれば、製品規格としての平均粒子径を採用することもできる。
繊維状フィラーの繊維径としては、好ましくは1~15μmである。
【0042】
他のフィラー(C)は、無処理のままであってもよいが、ポリカーボネート樹脂との親和性又は界面結合力を高める目的で、無機表面処理剤、高級脂肪酸又はそのエステル塩等の誘導体、アミノシラン、エポキシシラン等のカップリング剤等による表面処理、あるいは取扱い性を向上させる目的で、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等による集束処理を施して使用してもよい。表面処理する際には、非イオン・陽イオン・陰イオン型等の各種の界面活性剤や、各種の樹脂等の分散剤による処理を併せて行うと、機械的強度及び混練性の向上の観点から好ましい。また、タルク等の無機フィラーを原石から粉砕する際の製法は特に制限はないが、無機フィラーの取扱い性の点からは嵩密度を上げた凝集状態であるものが好ましく、脱気圧縮したもの(圧縮タルク)やバインダーを用いて顆粒化したもの(顆粒状タルク)が好ましいものとして挙げられる。
【0043】
他のフィラー(C)の含有量は、前記した通り、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して15~60質量部で、(C)/(B)が0.6以上を満たす量であるが、より好ましくは25質量部以上であり、より好ましくは55質量部以下、より好ましくは50質量部以下である。
【0044】
[難燃剤]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、難燃剤を含有することが好ましく、難燃剤としては、リン系難燃剤が好ましい。
リン系難燃剤としては、分子中にリンを含む化合物であり、低分子であっても、オリゴマーであっても、ポリマーであってもよいが、熱安定性の面から、例えば下記一般式(1)で表されるリン酸エステル化合物や、下記一般式(2)又は(3)で表されるホスファゼン化合物が好ましい。
【0045】
【化1】
【0046】
【化2】
【0047】
【化3】
【0048】
<リン酸エステル化合物>
上記一般式(1)で表されるリン酸エステル化合物は、kが異なる数を有する化合物の混合物であってもよく、かかるkが異なる縮合リン酸エステルの混合物の場合は、kはそれらの混合物の平均値となる。kは、通常0~5の整数であり、異なるk数を有する化合物の混合物の場合は、平均のk数は好ましくは0.5~2、より好ましくは0.6~1.5、さらに好ましくは0.8~1.2、特に好ましくは0.95~1.15の範囲である。
【0049】
また、Xは、二価のアリーレン基を示し、例えばレゾルシノール、ハイドロキノン、ビスフェノールA、2,2’-ジヒドロキシビフェニル、2,3’-ジヒドロキシビフェニル、2,4’-ジヒドロキシビフェニル、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、1,8-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシ化合物から誘導される二価の基である。これらのうち、特に、レゾルシノール、ビスフェノールA、3,3’-ジヒドロキシビフェニルから誘導される二価の基が好ましい。
【0050】
また、一般式(1)におけるp、q、rおよびsは、それぞれ0又は1を表し、中でも1であることが好ましい。
【0051】
また、R、R、RおよびRは、それぞれ、炭素数1~6のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基を示す。このようなアリール基としては、フェニル基、クレジル基、キシリル基、イソプロピルフェニル基、ブチルフェニル基、tert-ブチルフェニル基、ジ-tert-ブチルフェニル基、p-クミルフェニル基等が挙げられるが、フェニル基、クレジル基、キシリル基がより好ましい。
【0052】
一般式(1)で表されるリン酸エステル化合物の具体例としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、tert-ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ビス-(tert-ブチルフェニル)フェニルホスフェート、トリス-(tert-ブチルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ビス-(イソプロピルフェニル)ジフェニルホスフェート、トリス-(イソプロピルフェニル)ホスフェート等の芳香族リン酸エステル類;レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェート、ビスフェノールAビス-ジフェニルホスフェート、ビフェニルビス-ジフェニルホスフェート等の縮合リン酸エステル類;等が挙げられる。
【0053】
一般式(1)で表されるリン酸エステル化合物の酸価は、0.2mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは0.15mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは0.1mgKOH/g以下であり、特に好ましくは0.05mgKOH/g以下である。かかる酸価の下限は実質的に0とすることも可能である。また、ハーフエステルの含有量は1.1質量部以下がより好ましく、0.9質量部以下がさらに好ましい。酸価が0.2mgKOH/gを超える場合やハーフエステルの含有量が1.1質量部を超える場合は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性や耐加水分解性の低下を招きやすい傾向がある。
【0054】
本発明に用いるリン酸エステル化合物としては、上述のものの他に、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,3-ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、リン酸エステル部位を含有する、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂又はエポキシ樹脂も当然含まれる。
【0055】
<ホスファゼン化合物>
上記一般式(2)又は(3)で表されるホスファゼン化合物としては、例えば、フェノキシホスファゼン、(ポリ)トリルオキシホスファゼン(例えば、o-トリルオキシホスファゼン、m-トリルオキシホスファゼン、p-トリルオキシホスファゼン、o,m-トリルオキシホスファゼン、o,p-トリルオキシホスファゼン、m,p-トリルオキシホスファゼン、o,m,p-トリルオキシホスファゼン等)、(ポリ)キシリルオキシホスファゼン等の環状及び/又は鎖状C1-6アルキルC6-20アリールオキシホスファゼンや、(ポリ)フェノキシトリルオキシホスファゼン(例えば、フェノキシo-トリルオキシホスファゼン、フェノキシm-トリルオキシホスファゼン、フェノキシp-トリルオキシホスファゼン、フェノキシo,m-トリルオキシホスファゼン、フェノキシo,p-トリルオキシホスファゼン、フェノキシm,p-トリルオキシホスファゼン、フェノキシo,m,p-トリルオキシホスファゼン等)、(ポリ)フェノキシキシリルオキシホスファゼン、(ポリ)フェノキシトリルオキシキシリルオキシホスファゼン等の環状及び/又は鎖状C6-20アリールC1-10アルキルC6-20アリールオキシホスファゼン等が例示できる。
これらのうち、好ましくは、環状及び/又は鎖状フェノキシホスファゼン、環状及び/又は鎖状C1-3アルキルC6-20アリールオキシホスファゼン、C6-20アリールオキシC1-3アルキルC6-20アリールオキシホスファゼン(例えば、環状及び/又は鎖状トリルオキシホスファゼン、環状及び/又は鎖状フェノキシトリルフェノキシホスファゼン等)である。
【0056】
一般式(2)で表される環状ホスファゼン化合物としては、R及びRは、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示す。このようなアリール基又はアルキルアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、ベンジル基等が挙げられるが、中でもR及びRがフェニル基である環状フェノキシホスファゼンが特に好ましい。
このような環状フェノキシホスファゼン化合物としては、例えば、塩化アンモニウムと五塩化リンとを120~130℃の温度で反応させて得られる環状及び直鎖状のクロロホスファゼン混合物から、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン、オクタクロロシクロテトラホスファゼン、デカクロロシクロペンタホスファゼン等の環状のクロルホスファゼンを取り出した後にフェノキシ基で置換して得られる、フェノキシシクロトリホスファゼン、オクタフェノキシシクロテトラホスファゼン、デカフェノキシシクロペンタホスファゼン等の化合物が挙げられる。
【0057】
また、一般式(2)中、tは3~25の整数を表すが、中でもtが3~8の整数である化合物が好ましく、tの異なる化合物の混合物であってもよい。中でも、t=3のものが50質量%以上、t=4のものが10~40質量%、t=5以上のものが合わせて30質量%以下である化合物の混合物が好ましい。
【0058】
一般式(3)中、R及びRは、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示す。このようなアリール基又はアルキルアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、ベンジル基等が挙げられるが、R及びRがフェニル基である鎖状フェノキシホスファゼンが特に好ましい。
このような鎖状フェノキシホスファゼン化合物は、例えば、上記の方法で得られるヘキサクロロシクロトリホスファゼンを220~250℃の温度で開環重合し、得られた重合度3~10000の直鎖状ジクロロホスファゼンをフェノキシ基で置換することにより得られる化合物が挙げられる。
【0059】
また、Rは、-N=P(OR基、-N=P(OR基、-N=P(O)OR基、-N=P(O)OR基から選ばれる少なくとも1種を示し、R10は、-P(OR基、-P(OR基、-P(O)(OR基、-P(O)(OR基から選ばれる少なくとも1種を示す。
【0060】
また、一般式(3)中、uは3~10000の整数を示し、好ましくは3~1000、より好ましくは3~100、さらに好ましくは3~25である。
【0061】
また、本発明に用いるホスファゼン化合物は、その一部が架橋された架橋ホスファゼン化合物であってもよい。このような架橋構造を有することで耐熱性が向上する傾向にある。
このような架橋ホスファゼン化合物としては、下記一般式(4)に示す架橋構造、例えば、4,4’-スルホニルジフェニレン(ビスフェノールS残基)の架橋構造を有する化合物、2,2-(4,4’-ジフェニレン)イソプロピリデン基の架橋構造を有する化合物、4,4’-オキシジフェニレン基の架橋構造を有する化合物、4,4’-チオジフェニレン基の架橋構造を有する化合物等の、4,4’-ジフェニレン基の架橋構造を有する化合物等が挙げられる。
【0062】
【化4】
[式(4)中、Xは-C(CH-、-SO-、-S-、又は-O-であり、vは0又は1である。]
【0063】
また、架橋ホスファゼン化合物としては、一般式(2)においてR及びRがフェニル基である環状フェノキシホスファゼン化合物が上記一般式(4)で表される架橋基によって架橋されてなる架橋フェノキシホスファゼン化合物、又は、前記一般式(3)においてR及びRがフェニル基である鎖状フェノキシホスファゼン化合物が上記一般式(4)で表される架橋基によって架橋されてなる架橋フェノキシホスファゼン化合物が難燃性の点から好ましく、環状フェノキシホスファゼン化合物が上記一般式(4)で表される架橋基によって架橋されてなる架橋フェノキシホスファゼン化合物がより好ましい。
【0064】
また、架橋フェノキシホスファゼン化合物中のフェニレン基の含有量は、一般式(2)で表される環状ホスファゼン化合物及び/又は一般式(3)で表される鎖状フェノキシホスファゼン化合物中の全フェニル基及びフェニレン基数を基準として、通常50~99.9%、好ましくは70~90%である。また、該架橋フェノキシホスファゼン化合物は、その分子内にフリーの水酸基を有しない化合物であることが特に好ましい。
【0065】
本発明において、ホスファゼン化合物は、前記一般式(2)で表される環状フェノキシホスファゼン化合物、及び、上記一般式(3)で表される鎖状フェノキシホスファゼン化合物が架橋基によって架橋されてなる架橋フェノキシホスファゼン化合物より成る群から選択される少なくとも1種であることが、難燃性及び機械的特性の点から好ましい。
【0066】
リン系難燃剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは2~20質量部である。リン系難燃剤の配合量が2質量部を下回る場合は、難燃性が不十分となりやすく、20質量部を超えると耐熱性の低下や、機械物性の低下を引き起こしやすい。
【0067】
[難燃助剤]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、難燃助剤を含有することも好ましい。本発明において難燃助剤とは、ポリカーボネート樹脂を難燃化するのに使用されるリン系難燃剤と併用して、相乗効果を発現させるものをいう。
難燃助剤としては有機系難燃助剤と無機系難燃助剤が挙げられる。
【0068】
有機系難燃助剤として、好ましいものとしてフッ素樹脂が挙げられ、その中でもより好ましいものとしてポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。
無機系難燃助剤としては、ほう酸亜鉛、ほう酸バリウム等のほう酸化合物、二酸化錫、錫酸亜鉛等の錫化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、ハロゲン化アンチモン、アンチモン酸ソーダ等のアンチモン化合物、酸化モリブデン等のモリブデン化合物等が挙げられ、中でもほう酸化合物が好ましく、ほう酸亜鉛が特に好ましい。
リン系難燃剤と難燃助剤を併用すると、より薄肉でもUL-94でのV-0を達成し、燃焼時間も短くすることが可能となる。
【0069】
難燃助剤の好ましい含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.5~5質量部であり、より好ましくは0.8質量部以上、さらには1質量部以上が好ましく、また、より好ましくは4質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下、特に好ましくは2質量部以下である。含有量が上記範囲にあることで、さらに薄肉でもUL-94でのV-0を達成し、燃焼時間も短くすることが可能となる。
【0070】
[安定剤]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、安定剤を含有することが好ましく、安定剤としてはリン系安定剤(酸化防止剤)やフェノール系安定剤(酸化防止剤)が好ましい。
【0071】
リン系安定剤としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族又は第2B族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられるが、有機ホスファイト化合物が特に好ましい。
【0072】
有機ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には、例えば、ADEKA社製「アデカスタブ1178」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP-10」、城北化学工業社製「JP-351」、「JP-360」、「JP-3CP」、BASF社製「イルガフォス168」等が挙げられる。
なお、リン系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
【0073】
リン系安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.7質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。リン系安定剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、熱安定効果が不十分となる可能性があり、リン系安定剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
【0074】
フェノール系安定剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3”,5,5’,5”-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a”-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン,2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0075】
中でも、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなフェノール系酸化防止剤としては、具体的には、例えば、BASF社製「イルガノックス1010」、「イルガノックス1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO-50」、「アデカスタブAO-60」等が挙げられる。
なお、フェノール系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
【0076】
フェノール系安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。フェノール系安定剤の含有量を前記範囲の下限値以上とすることで、フェノール系安定剤としての効果を十分得ることができる。また、フェノール系安定剤の含有量が前記範囲の上限値以下にすることにより、効果が頭打ちになることなく経済的である。
【0077】
[離型剤]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、離型剤を含有することが好ましい。離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200~15000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0078】
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和又は不飽和の脂肪族一価、二価又は三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6~36の一価又は二価カルボン酸であり、炭素数6~36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
【0079】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和又は不飽和の一価又は多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価又は多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和一価アルコール又は脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。なお、ここで脂肪族とは、脂環式化合物も包含する用語として使用される。
【0080】
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2-ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0081】
なお、上記のエステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/又はアルコールを含有していてもよい。また、上記のエステルは、純物質であってもよいが、複数の化合物の混合物であってもよい。さらに、結合して一つのエステルを構成する脂肪族カルボン酸及びアルコールは、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0082】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
【0083】
数平均分子量200~15000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ-トロプシュワックス、炭素数3~12のα-オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素は部分酸化されていてもよい。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス又はポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
また、前記の脂肪族炭化水素の数平均分子量は、好ましくは5000以下である。
なお、脂肪族炭化水素は、単一物質であってもよいが、構成成分や分子量が様々なものの混合物であっても、主成分が上記の範囲内であることが好ましい。
【0084】
ポリシロキサン系シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、フッ素化アルキルシリコーンオイル等が挙げられる。
【0085】
なお、上述した離型剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
【0086】
離型剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上であり、また、好ましくは1質量部以下である。離型剤の含有量を前記範囲の下限値以上とすることにより離型性の効果が十分に得られやすく、離型剤の含有量が前記範囲の上限値以下とすることにより、十分な耐加水分解性が得られ、また射出成形時の金型汚染などが生じにくくなる。
【0087】
[その他の成分]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上記以外のその他成分を含有していてもよい。その他の成分の例を挙げると、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂、上記した以外の各種樹脂添加剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
【0088】
<その他の樹脂>
その他の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性ポリエステル樹脂;ポリスチレン樹脂、高衝撃ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル-エチレンプロピレン系ゴム-スチレン共重合体(AES樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)などのスチレン系樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリスルホン樹脂等が挙げられる。
なお、その他の樹脂は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
その他の樹脂を含有する場合は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、30質量部以下であることが好ましく、中でも20質量部以下、15質量部以下、10質量部以下、7質量部以下、5質量部以下、3質量部以下、特には1質量部以下であることが好ましい。
【0089】
<樹脂添加剤>
樹脂添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、染顔料(カーボンブラックを含む)、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
【0090】
[ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、上記した必須成分、並びに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。二軸混練押出機を使用する場合は、ガラス繊維はサイドフィードすることが好ましい。
なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240~320℃の範囲である。
【0091】
[ポリカーボネート樹脂組成物]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、熱伝導性に優れ、ISO22007-2に準拠し、100mm×100mm×3mmtの成形品の面方向(樹脂の流動方向)の熱伝導率が、好ましくは1.0W/mK以上であり、その上限としては好ましくは3.0W/mK以下である。なお、熱伝導率の具体的な測定方法は、実施例に記載する通りである。
【0092】
[成形品]
ポリカーボネート樹脂組成物をペレタイズしたペレットは、各種の成形法で成形して成形品とされる。またペレットを経由せずに、押出機で溶融混練された樹脂を直接、成形して成形品にすることもできる。
成形品の形状としては、特に制限はなく、成形品の用途、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、筐体、板状、プレート状、ロッド状、シート状、フィルム状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状のもの等が挙げられる。
【0093】
成形体を成形する方法としては、特に制限されず、従来公知の成形法を採用でき、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、異形押出法、トランスファー成形法、中空成形法、ガスアシスト中空成形法、ブロー成形法、押出ブロー成形、IMC(インモールドコ-ティング成形)成形法、回転成形法、多層成形法、2色成形法、インサート成形法、サンドイッチ成形法、発泡成形法、加圧成形法等が挙げられる。これらの中では特には射出成形法が好ましい。
【0094】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、熱伝導性、セルフタップ性及び絶縁性に優れた樹脂材料であるので、これを成形した成形品は、電気電子部品や照明器具用部品等に好適であり、例えばプロジェクターの放熱部品や筐体、各種ルーター等の放熱部品や筐体、パーソナルコンピューター、デジタルカメラ或いは各種携帯端末の部品や筺体、LED照明におけるLED実装用基板又はヒートシンク部材並びに部品類、バッテリー充電用機器部品、バッテリーカバー等に特に好適である。
【実施例0095】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
以下の実施例及び比較例に使用した各原料成分は、以下の表1の通りである。
【0096】
【表1】
【0097】
(実施例1~6、比較例1~15)
上記表1に記載した各成分を、下記の表2以下に示す割合(全て質量部にて表示)にて配合し、タンブラーミキサーにて均一に混合した後、二軸押出機(芝浦機械社製TEM26SX)を用いて、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数180rpm、吐出量15kg/hrにて押出機上流部のバレルより押出機にフィードし、ガラス繊維又は炭素繊維を配合する場合はサイドフィードして、溶融混練させポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
【0098】
[熱伝導率の測定(単位:W/m・K)]
得られたペレットについて、日精樹脂工業社製射出成形機(型締め力80T)を用いて、シリンダー温度300℃、金型温度100℃の条件で、100mm×100mm×3mmtの試験片を射出成形した。
この試験片を用い、ホットディスク法熱物性測定装置(京都電子工業社製「TPS-2500S」)により、ISO22007-2に準拠し、試験片の面方向(樹脂の流動方向)の熱伝導率(単位:W/m・K)を測定した。
熱伝導率は、1.0W/mK以上であることが好ましい。
【0099】
[耐セルフタップ性評価]
上記製造方法で得られたペレットを80℃で5時間乾燥させた後、住友重機械工業社製のSE100DU型射出成形機を用いて、シリンダー温度260℃、金型温度80℃、成形サイクル30秒の条件で射出成形し、筒形ボス部を有するセルフタップ試験片(ボス部の寸法:内径1.47mm/外径4.0mm/高さ10mm)を成形した。
得られたセルフタップ試験片のボス部に、呼び径1.7mm、長さ4mmのM1.7セルフタップネジを、締め付けトルク0.08N・m、ドライバー回転数100rpmの条件で締め付けて、割れがないか確認し、割れがなかった場合、ネジを逆回転して一度緩め、もう一度、同条件で締め付けることを繰り返し、割れが発生するまでの回数(n回)をカウントした。
耐セルフタップ性の評価としては、10回以上となることが好ましい。
【0100】
[絶縁性の評価:体積抵抗率(単位:Ω・m)]
前記で得られた100mm×100mm×3mmtの平板状の試験片を、IEC 60093に準拠して、抵抗率計(アドバンテスト社製のR8340デジタル超高抵抗/微少電流計及びR12704レジスティビティ・チェンバ)を用い、印加電圧10Vで、JIS K6271-1に従って、体積抵抗率(単位:Ω・m)測定した。
以下のA~Dの4段階で絶縁性の評価判定を行った。
A:1014Ω・m以上
B:1011Ω・m以上、1014Ω・m未満
C:10Ω・m以上、1011Ω・m未満
D:10Ω・m未満
【0101】
結果を、以下の表2以下に示した。
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【0104】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、熱伝導性、セルフタップ性及び絶縁性に優れた高熱伝導性のポリカーボネート樹脂組成物であるので、高い熱伝導性が求められる各種の電気電子機器部品等に特に好適に利用できる。