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特開2024-82652生理用ナプキン、生理用ナプキン収容体、及び、パンツ型吸収性物品
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  • 特開-生理用ナプキン、生理用ナプキン収容体、及び、パンツ型吸収性物品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082652
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】生理用ナプキン、生理用ナプキン収容体、及び、パンツ型吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/51 20060101AFI20240613BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20240613BHJP
   A61F 13/496 20060101ALI20240613BHJP
   A61F 13/476 20060101ALI20240613BHJP
   A61F 13/56 20060101ALI20240613BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
A61F13/51
A61F13/15 140
A61F13/15 220
A61F13/496
A61F13/476
A61F13/56 110
A61F13/511 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196631
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋野 央
(72)【発明者】
【氏名】森澤 高至
(72)【発明者】
【氏名】林 俊久
(72)【発明者】
【氏名】西村 規世子
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA19
3B200BA20
3B200BB11
3B200BB20
3B200BB21
3B200CA03
3B200CA08
3B200CA11
3B200CA13
3B200DA14
3B200DE03
3B200DF07
(57)【要約】
【課題】製品全体の柔らかさを担保しつつ、装着後から短時間で機能材の効果を高める生理用ナプキンを提供することにある。
【解決手段】液吸収性の吸収性コア(2)と、厚さ方向において吸収性コア(2)よりも肌側に配置された肌側シート(3)と、厚さ方向において吸収性コア(2)よりも非肌側に配置された非肌側シート(4)とを有する生理用ナプキン(1)であって、肌側シート(3)と非肌側シート(4)との間に、非肌側シート(4)よりも放射率が低い低放射率シート(10)を有し、厚さ方向において低放射率シート(10)よりも肌側に機能材(50)が設けられており、幅方向において、低放射率シート(10)の外端(10e)は、生理用ナプキン(1)の外端(1e)よりも内側に位置しており、厚さ方向に見たときに、低放射率シート(10)と機能材(50)とが重複する部分を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差する長手方向、幅方向、及び厚さ方向を備え、
液吸収性の吸収性コアと、
前記厚さ方向において前記吸収性コアよりも肌側に配置された肌側シートと、
前記厚さ方向において前記吸収性コアよりも非肌側に配置された非肌側シートと
を有する生理用ナプキンであって、
前記肌側シートと前記非肌側シートとの間に、前記非肌側シートよりも放射率が低い低放射率シートを有し、
前記厚さ方向において前記低放射率シートよりも肌側に機能材が設けられており、
前記幅方向において、前記低放射率シートの外端は、前記生理用ナプキンの外端よりも内側に位置しており、
前記厚さ方向に見たときに、前記低放射率シートと前記機能材とが重複する部分を有する
ことを特徴とする生理用ナプキン。
【請求項2】
請求項1に記載の生理用ナプキンであって、
前記厚さ方向において、前記吸収性コアの最大長さは前記低放射率シートの最大長さよりも長い
ことを特徴とする生理用ナプキン。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の生理用ナプキンであって、
前記低放射率シートは、前記厚さ方向において少なくとも一部が前記吸収性コアよりも肌側に配置されている
ことを特徴とする生理用ナプキン。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の生理用ナプキンであって、
前記低放射率シートは、前記厚さ方向において少なくとも一部が前記吸収性コアよりも非肌側に配置されている
ことを特徴とする生理用ナプキン。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の生理用ナプキンであって、
少なくとも一部が前記肌側シートに接合され、前記幅方向に一対並んで設けられた一対のサイドシートを有し、
前記一対のサイドシートには、弾性部材が設けられていない
ことを特徴とする生理用ナプキン。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の生理用ナプキンであって、
前記長手方向において、着用時に着用者の腹側となる側を前側とし、着用者の背側となる側を後側としたとき、
前記低放射率シートの少なくとも一部は、前記吸収性コアよりも前記前側或いは前記後側に設けられている
ことを特徴とする生理用ナプキン。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の生理用ナプキンであって、
前記厚さ方向に見たときに、前記低放射率シートと前記機能材とが重複する部分を重複領域とし、前記機能材が前記低放射率シートと重複しない部分を非重複領域としたとき、
前記重複領域における単位面積当たりの前記機能材の量は、前記非重複領域における単位面積当たりの前記機能材の量よりも多い
ことを特徴とする生理用ナプキン。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の生理用ナプキンであって、
前記長手方向において、着用時に着用者の腹側となる側を前側とし、着用者の背側となる側を後側としたとき、
前記長手方向において、前記低放射率シートは、前記吸収性コアの前側端よりも前側に配置されており、
前記厚さ方向に見たときに、
前記吸収性コアと重複する部分を有するように前記機能材が設けられており、
前記低放射率シートと前記機能材とが重複する部分を第1重複領域とし、前記吸収性コアと前記機能材とが重複する部分を第2重複領域としたとき、
前記第2重複領域における単位面積当たりの前記機能材の量は、前記第1重複領域における単位面積当たりの前記機能材の量よりも多い
ことを特徴とする生理用ナプキン。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の生理用ナプキンであって、
前記機能材は、温感剤又は冷感剤であり、
前記機能材は、水溶性の溶媒と混合された状態で備えられている
ことを特徴とする生理用ナプキン。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の生理用ナプキンであって、
前記幅方向の両外側に延出する一対のウイング部を有し、
前記一対のウイング部の前記厚さ方向の非肌側には、接着剤が塗布されたウイング粘着部がそれぞれ設けられており、
前記長手方向において、着用時に着用者の腹側となる側を前側とし、着用者の背側となる側を後側としたとき、
前記ウイング粘着部よりも前記前側に前記低放射率シートが設けられており、前記ウイング粘着部よりも前記後側には前記低放射率シートが設けられていない
ことを特徴とする生理用ナプキン。
【請求項11】
請求項10に記載の生理用ナプキンであって、
前記長手方向において、前記ウイング粘着部と重複する領域には、前記低放射率シートが設けられていない
ことを特徴とする生理用ナプキン。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の生理用ナプキンであって、
前記生理用ナプキンの平面形状における外周縁部に沿って、前記厚さ方向において最も肌側のシート部材と最も非肌側のシート部材とを圧搾する周縁圧搾部、或いは接合する周縁接合部を有し、
前記低放射率シートは、前記厚さ方向に見て、前記周縁圧搾部或いは前記周縁接合部と重複していない
ことを特徴とする生理用ナプキン。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の生理用ナプキンがシート状の包装材によって個別に包装された個包袋体と、前記個包装体を複数個収容する収容部材と、を備える生理用ナプキン収容体であって、
前記生理用ナプキンの前記低放射率シートの酸素透過度は、200cc/m2・day・atm未満であり、
前記包装材又は前記収容部材は、前記生理用ナプキンの前記非肌側シートよりも放射率が低く、酸素透過度が200cc/m2・day・atm未満である
ことを特徴とする生理用ナプキン収容体。
【請求項14】
互いに交差する上下方向と幅方向と前後方向とを有し、
液吸収性の吸収性本体と、
前記吸収性本体の非肌側に重ねて配置された胴回り部材と、
を有するパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収性本体は、吸収性コアと、前記吸収性コアよりも肌側に配置された肌側シートと、前記吸収性コアよりも非肌側に配置された非肌側シートとを有し、
前記肌側シートと前記非肌側シートとの間に、前記非肌側シートよりも放射率が低い低放射率シートを有し、
前記低放射率シートよりも肌側に機能材が設けられており、
前記吸収性本体は、前記吸収性コアよりも非肌側、且つ、前記幅方向の中央部において、展開状態の前記吸収性本体の長手方向に伸縮可能な中央弾性部材を有し、
展開状態の前記吸収性本体の厚さ方向に見て、前記低放射率シートと前記中央弾性部材とが重なる部分を有する
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項15】
請求項14に記載のパンツ型吸収性物品であって、
着用時において着用者の股下領域に対応する領域の少なくとも一部に前記低放射率シートが設けられている
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項16】
互いに交差する上下方向と幅方向と前後方向とを有し、
液吸収性の吸収性本体と、
前記吸収性本体の非肌側に重ねて配置され、前記幅方向に伸縮する胴回り部材と、
を有するパンツ型吸収性物品であって、
前記胴回り部材は、前記前後方向の一方側に位置する一方側胴回り部材と、前記前後方向の他方側に位置する他方側胴回り部材を有し、
前記一方側胴回り部材と前記他方側胴回り部材の前記幅方向の両端部は、接合部にて互いに接合されており、
前記一方側胴回り部材は、
前記一方側胴回り部材の最も肌側に配置されたシート部材と最も非肌側に配置されたシート部材との間に、前記最も非肌側に配置されたシート部材よりも放射率が低い低放射率シートと、前記幅方向に伸縮性を有する弾性部材とを有し、
前記低放射率シートよりも肌側、且つ、前記最も肌側に配置されたシート部材よりも非肌側に機能材を有し、
前記低放射率シートは、前記上下方向において、前記接合部の下端よりも上側に設けられており、前記接合部の前記下端よりも下側には設けられていないことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン、生理用ナプキン収容体、及び、パンツ型吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品の一部に金属層を配し、金属層による保温効果を有する吸収性物品や、着用時において、香料や温感剤/冷感剤等、着用者に刺激を感じさせる物質或いは、発熱体等が設けられた吸収性物品が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、吸収体の非肌対向面側に配置されたバックシートの肌対向面及び肌非対向面の両面または何れか一方の面の少なくとも一部に金属層を配し、当該バックシートの肌非対向面側をカバーシートによって被覆した吸収性物品が開示されている。また、特許文献2には、表面シートと裏面シートとの間で、かつ、吸収体が設けられている領域よりも長手方向の外側に発熱体が配置されており、裏面シートは酸素不透過性を有している吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開第2014-180461号公報
【特許文献2】特開第2012-75564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、バックシートの一部に金属層を有することで、排泄後に体液の温度が低下することを防止する製品があるが、金属層を有するだけでは、保湿・保温を行うことができるものの、好適な温感や冷感の効果を狙うことは難しい。また生理用ナプキンでは、排出された後の血液の温度低下防止や冷感の効果性よりも、排出後は交換することを優先することから、排泄(排出)後よりも排泄(排出)前の時間に(すなわち、ナプキンでは装着後から早い段階で)温感・冷感機能が最も発揮されることが好ましい。
【0006】
また、特許文献2では、製品の最外装に酸化アルミニウム等を用いた酸素不透過性のシートを用いることで、着用者が着用開始するまで発熱体の発熱反応を開始することを抑制しているが、最外装は身体と接触する部分が多く、そのような位置に酸化アルミニウム等を含むシートを用いると剛性が高まり、硬さを感じてしまう虞がある
【0007】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、製品全体の柔らかさを担保しつつ、装着後から短時間で機能材の効果を高める生理用ナプキンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための主たる発明は、液吸収性の吸収性コアと、前記厚さ方向において前記吸収性コアよりも肌側に配置された肌側シートと、前記厚さ方向において前記吸収性コアよりも非肌側に配置された非肌側シートとを有する生理用ナプキンであって、前記肌側シートと前記非肌側シートとの間に、前記非肌側シートよりも放射率が低い低放射率シートを有し、前記厚さ方向において前記低放射率シートよりも肌側に機能材が設けられており、前記幅方向において、前記低放射率シートの外端は、前記生理用ナプキンの外端よりも内側に位置しており、前記厚さ方向に見たときに、前記低放射率シートと前記機能材とが重複する部分を有することを特徴とする生理用ナプキンである。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、製品全体の柔らかさを担保しつつ、装着後から短時間で機能材の効果を高める生理用ナプキンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態における生理用ナプキン1を肌側から見た概略平面図である。
図2】第1実施形態における生理用ナプキン1を非肌側から見た概略平面図である。
図3図3Aは、図1のA-A線に沿った概略断面図であり、図3Bは、図1のB-B線に沿った概略断面図である。
図4図1のC-C線に沿った概略断面図である。
図5】機能材50の塗布位置の変形例を示す図である。
図6図6Aは、生理用ナプキン収容体80の概略斜視図であり、図6Bは、生理用ナプキン収容体80を開封した状態の図である。
図7】第2実施形態に係るパンツ型吸収性物品100の概略斜視図である。
図8】展開状態におけるパンツ型吸収性物品100の平面図である。
図9】吸収性本体120の平面図である。
図10図9の矢視A-Aであって、吸収性本体120の断面模式図である。
図11】第2実施形態の低放射率シート140及び機能材50’の配置位置の変形例を示す。
図12】第2実施形態の低放射率シート140及び機能材50’の配置位置の別の変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
態様1は、互いに交差する長手方向、幅方向、及び厚さ方向を備え、液吸収性の吸収性コアと、前記厚さ方向において前記吸収性コアよりも肌側に配置された肌側シートと、前記厚さ方向において前記吸収性コアよりも非肌側に配置された非肌側シートとを有する生理用ナプキンであって、前記肌側シートと前記非肌側シートとの間に、前記非肌側シートよりも放射率が低い低放射率シートを有し、前記厚さ方向において前記低放射率シートよりも肌側に機能材が設けられており、前記幅方向において、前記低放射率シートの外端は、前記生理用ナプキンの外端よりも内側に位置しており、前記厚さ方向に見たときに、前記低放射率シートと前記機能材とが重複する部分を有することを特徴とする生理用ナプキンである。
【0012】
態様1のような生理用ナプキンによれば、低放射率シートがあることで、身体からの放熱が非肌側に逃げにくくなる。その結果、身体と低放射率シートとの間の温度を体温に近づけ、且つ、肌表面が保湿されることで毛穴を緩め易くする。低放射率シートよりも肌側にある機能材もそのような保温及び保湿によって揮発され易くなり、且つ、緩んだ毛穴から機能材が肌の内側に浸透しやすくなる。これにより、装着後から短時間において機能材の効果を最も高めることができる。また、低放射率シートの幅方向外端を、着用時に身体を動かした際に触れ易いナプキンの幅方向外端から離すことで、ナプキンの外端の硬さを低減し、製品全体の柔らかさを担保できる。
【0013】
態様2は、前記厚さ方向において、前記吸収性コアの最大長さは前記低放射率シートの最大長さよりも長い態様1に記載の生理用ナプキンである。
【0014】
態様2のような生理用ナプキンによれば、吸収性コアの構成材は保温及び保湿効果を期待できるため、その厚み(厚さ方向の長さ)が厚くなるほど、低放射率シートによって生理用ナプキンの外に逃げにくくなった熱を保持し、また、湿気を逃げにくくすることで保湿効果も実現し易くなる。
【0015】
態様3は、前記低放射率シートは、前記厚さ方向において少なくとも一部が前記吸収性コアよりも肌側に配置されている態様1又は2に記載の生理用ナプキンである。
【0016】
態様3のような生理用ナプキンによれば、低放射率シートのうち吸収性コアよりも肌側に配置されている部分は、肌側に近いことで体温を効率よく反射し、身体と低反射率シートとの間の温度を体温に近づけ、また湿度を高め易くする。また、機能材は低放射率シートよりもさらに肌側に設けられているため、低放射率シートによって機能材が吸収性コアに移行することを防止でき、機能材の効果の低減を防ぐことができる。
【0017】
態様4は、前記低放射率シートは、前記厚さ方向において少なくとも一部が前記吸収性コアよりも非肌側に配置されている態様1から態様3のいずれかに記載の生理用ナプキンである。
【0018】
態様4のような生理用ナプキンによれば、低放射率シートによって吸収性コアの吸収性能が低下することを防止し、また、非肌側に位置することで外気の影響を低減させることができるため、着用時のナプキン内の保温状態を安定させ易くなる。
【0019】
態様5は、少なくとも一部が前記肌側シートに接合され、前記幅方向に一対並んで設けられた一対のサイドシートを有し、前記一対のサイドシートには、弾性部材が設けられていない態様1から態様4のいずれかに記載の生理用ナプキンである。
【0020】
態様5のような生理用ナプキンによれば、ナプキンの両側部はサイドシートがさらに積層されることで、その厚みの分、両側部のフィット性が向上する。また、当該サイドシートに弾性部材が存在しないことで低放射率シートを収縮させずに平らに保つことができ、高剛性部となりがちな低放射率シートが収縮することによって生じ易い違和感を低減することができる。
【0021】
態様6は、前記長手方向において、着用時に着用者の腹側となる側を前側とし、着用者の背側となる側を後側としたとき、前記低放射率シートの少なくとも一部は、前記吸収性コアよりも前記前側或いは前記後側に設けられている態様1から態様5のいずれかに記載の生理用ナプキンである。
【0022】
態様6のような生理用ナプキンによれば、吸収性コアの吸収性能に影響しにくい位置に低放射率シートを配置することで、吸収性能への影響を低減できる。
【0023】
態様7は、前記厚さ方向に見たときに、前記低放射率シートと前記機能材とが重複する部分を重複領域とし、前記機能材が前記低放射率シートと重複しない部分を非重複領域としたとき、前記重複領域における単位面積当たりの前記機能材の量は、前記非重複領域における単位面積当たりの前記機能材の量よりも多い態様1から態様6のいずれかに記載の生理用ナプキンである。
【0024】
態様7のような生理用ナプキンによれば、低放射率シートと機能材とが重複する重複領域において機能材の効果を発揮し易くなるため、そのような重複領域において機能材の量が多いことでより効果を感じ易くなる。
【0025】
態様8は、前記長手方向において、着用時に着用者の腹側となる側を前側とし、着用者の背側となる側を後側としたとき、前記長手方向において、前記低放射率シートは、前記吸収性コアの前側端よりも前側に配置されており、前記厚さ方向に見たときに、前記吸収性コアと重複する部分を有するように前記機能材が設けられており、前記低放射率シートと前記機能材とが重複する部分を第1重複領域とし、前記吸収性コアと前記機能材とが重複する部分を第2重複領域としたとき、前記第2重複領域における単位面積当たりの前記機能材の量は、前記第1重複領域における単位面積当たりの前記機能材の量よりも多い態様1から態様5のいずれかに記載の生理用ナプキンである。
【0026】
態様8のような生理用ナプキンによれば、第2重複領域(吸収性コア側)に設けられている機能材は、低放射率シートが存在しない領域に設けられている。第1重複領域のように低放射率シートと重複する領域において機能材は効果を発揮し易くなるため、第2重複領域では、機能材の量を多くすることで機能材の効果の向上を図る。一方、第1重複領域では、低放射率シートが存在することにより、機能材の量を第2重複領域よりも少なくしても、機能材の効果を発揮できる。
【0027】
態様9は、前記機能材は、温感剤又は冷感剤であり、前記機能材は、水溶性の溶媒と混合された状態で備えられている態様1から態様8のいずれかに記載の生理用ナプキンである。
【0028】
態様9のような生理用ナプキンによれば、機能材が設けられている領域は、低放射率シートにより発汗が促されて汗による水分量が増加する領域であるため、溶媒が水溶性であると汗で溶けて肌となじみ易くなり、機能材が肌に浸透し易くなる。
【0029】
態様10は、前記幅方向の両外側に延出する一対のウイング部を有し、前記一対のウイング部の前記厚さ方向の非肌側には、接着剤が塗布されたウイング粘着部がそれぞれ設けられており、前記長手方向において、着用時に着用者の腹側となる側を前側とし、着用者の背側となる側を後側としたとき、前記ウイング粘着部よりも前記前側に前記低放射率シートが設けられており、前記ウイング粘着部よりも前記後側には前記低放射率シートが設けられていない態様1から態様5、及び態様7から態様9のいずれかに記載の生理用ナプキン。
【0030】
態様10のような生理用ナプキンによれば、このような構成により、特に長手方向の前側に機能材の効果を発現することができる。
【0031】
態様11は、前記長手方向において、前記ウイング粘着部と重複する領域には、前記低放射率シートが設けられていない態様1から態様10のいずれかに記載の生理用ナプキンである。
【0032】
態様11のような生理用ナプキンによれば、ウイング粘着部が設けられている領域は、吸収性コアがずれないように吸収性コアとのフィット性が求められる領域であり、そのような領域に低放射率シートが配置されるとウイング部を折り返す部分が硬くなり、大腿部と擦れる際に違和感を生じさせる虞があるが、当該領域に設けないことで回避できる。
【0033】
態様12は、前記生理用ナプキンの平面形状における外周縁部に沿って、前記厚さ方向において最も肌側のシート部材と最も非肌側のシート部材とを圧搾する周縁圧搾部、或いは接合する周縁接合部を有し、前記低放射率シートは、前記厚さ方向に見て、前記周縁圧搾部或いは前記周縁接合部と重複していない態様1から態様11のいずれかに記載の生理用ナプキンである。
【0034】
態様12のような生理用ナプキンによれば、周縁圧搾部或いは周縁接合部は剛性が高まる部分であり、そのような高剛性部分に低放射率シートが重複すると更に硬くなる虞があるため、重複させないように配置することでそれを回避する。
【0035】
態様13は、態様1から態様12のいずれかに記載の生理用ナプキンがシート状の包装材によって個別に包装された個包袋体と、前記個包装体を複数個収容する収容部材と、を備える生理用ナプキン収容体であって、前記生理用ナプキンの前記低放射率シートの酸素透過度は、200cc/m2・day・atm未満であり、前記包装材又は前記収容部材は、前記生理用ナプキンの前記非肌側シートよりも放射率が低く、酸素透過度が200cc/m2・day・atm未満であることを特徴とする生理用ナプキン収容体である。
【0036】
態様13のような生理用ナプキン収容体によれば、低放射率シートの酸素透過度が低いことで、機能材の効果を発現させたい部分からの揮発を抑制することができる。また、生理用ナプキン収容体において、包装材又は収容部材が生理用ナプキンの低放射率シートと同様の機能を有することで、製品全体としての揮発抑制効果も実現し易くなる。
【0037】
態様14は、互いに交差する上下方向と幅方向と前後方向とを有し、液吸収性の吸収性本体と、前記吸収性本体の非肌側に重ねて配置された胴回り部材と、を有するパンツ型吸収性物品であって、前記吸収性本体は、吸収性コアと、前記吸収性コアよりも肌側に配置された肌側シートと、前記吸収性コアよりも非肌側に配置された非肌側シートとを有し、前記肌側シートと前記非肌側シートとの間に、前記非肌側シートよりも放射率が低い低放射率シートを有し、前記低放射率シートよりも肌側に機能材が設けられており、前記吸収性本体は、前記吸収性コアよりも非肌側、且つ、前記幅方向の中央部において、展開状態の前記吸収性本体の長手方向に伸縮可能な中央弾性部材を有し、展開状態の前記吸収性本体の厚さ方向に見て、前記低放射率シートと前記中央弾性部材とが重なる部分を有することを特徴とするパンツ型吸収性物品である。
【0038】
態様14のようなパンツ型吸収性物品によれば、着用時に中央弾性部材が長手方向に収縮することで、低放射率シートを膣口もしくはお尻の溝にしっかりとフィットさせることができ、機能材の効果を高めることができる。
【0039】
態様15は、着用時において着用者の股下領域に対応する領域の少なくとも一部に前記低放射率シートが設けられている態様14に記載のパンツ型吸収性物品である。
【0040】
態様15のようなパンツ型吸収性物品によれば、着用者が体液を排出(排泄)する前に低放射率シートによって発汗を促すことで吸収性物品が汗を吸収する。それにより吸収性物品の液の透過性が向上し、吸収性本体の肌表面上での液残りの低減や、肌表面における液拡散面積の拡大を抑制でき、吸収性能が向上する。
【0041】
態様16は、互いに交差する上下方向と幅方向と前後方向とを有し、液吸収性の吸収性本体と、前記吸収性本体の非肌側に重ねて配置され、前記幅方向に伸縮する胴回り部材と、を有するパンツ型吸収性物品であって、前記胴回り部材は、前記前後方向の一方側に位置する一方側胴回り部材と、前記前後方向の他方側に位置する他方側胴回り部材を有し、前記一方側胴回り部材と前記他方側胴回り部材の前記幅方向の両端部は、接合部にて互いに接合されており、前記一方側胴回り部材は、前記一方側胴回り部材の最も肌側に配置されたシート部材と最も非肌側に配置されたシート部材との間に、前記最も非肌側に配置されたシート部材よりも放射率が低い低放射率シートと、前記幅方向に伸縮性を有する弾性部材とを有し、前記低放射率シートよりも肌側、且つ、前記最も肌側に配置されたシート部材よりも非肌側に機能材を有し、前記低放射率シートは、前記上下方向において、前記接合部の下端よりも上側に設けられており、前記接合部の前記下端よりも下側には設けられていないことを特徴とするパンツ型吸収性物品である。
【0042】
態様16のようなパンツ型吸収性物品によれば、幅方向に伸縮性を有する弾性部材が着用時に幅方向に収縮することで、機能材と低放射率シートとが身体と密着し、機能材の効果を高めることができる。
【0043】
===第1実施形態===
以下、第1実施形態に係る生理用ナプキン1(以下「ナプキン1」ともいう)の実施形態を説明する。但し、上記に限らず、本実施形態の生理用ナプキン1は、パンティーライナー、又は軽失禁用パッド等のように、使用者の着衣に固定して使用される物品であればよい。
【0044】
<生理用ナプキン1の基本構成>
図1は、第1実施形態における生理用ナプキン1(以下、「ナプキン1」)を肌側から見た概略平面図である。図2は、第1実施形態における生理用ナプキン1を非肌側から見た概略平面図である。図3Aは、図1のA-A線に沿った概略断面図であり、図3Bは、図1のB-B線に沿った概略断面図である。図4は、図1のC-C線に沿った概略断面図である。
【0045】
ナプキン1は、図1に示すように、互いに交差する長手方向と、幅方向と、厚さ方向とを有している。長手方向においては、着用時に着用者の腹側となる側を前側とし、着用者の背側となる側を後側としている。また、長手方向及び幅方向と直交する方向(図1では紙面を貫通する方向)を厚さ方向とし、厚さ方向においては、着用者の肌と当接側を肌側、その逆側を非肌側とする(図3A等参照)。
【0046】
図1図4に示すように、ナプキン1は、液吸収性の吸収性コア2と、厚さ方向において吸収性コア2よりも肌側に配置された肌側シート3と、厚さ方向において吸収性コア2よりも非肌側に配置された非肌側シート4とを有している。また、本実施形態では、肌側シート3と吸収性コア2との間に、吸収性コア2と長手方向に重複するようにセカンドシート6が設けられている(図4)。また、ナプキン1は、少なくとも一部が肌側シート3に接合され、幅方向に一対並んで設けられた一対のサイドシート5を有している。これらの各部材2~6は、厚さ方向に隣接する部材とホットメルト接着剤等の接着剤HMAで接合されている。また、本実施形態では、肌側シート3の非肌側面の少なくとも一部に後述する機能材50が設けられている。
【0047】
肌側シート3及びセカンドシート6は、体液等の液体を透過させる液透過性のシートであり、エアスルー不織布等を例示できる。非肌側シート4は、液不透過性のシートであり、ポリエチレン(PE)の樹脂フィルム等を例示できる。肌側シート3及び非肌側シート4は、平面サイズが吸収性コア2よりも大きい。肌側シート3は、少なくとも吸収性コア2の幅方向の中央を肌側から覆っている。サイドシート5は、幅方向における肌側シート3の両側端部を肌側から覆い、肌側シート3よりも幅方向の外側に延びている(図3A及び図3B参照)。サイドシート5は、防漏性の観点から疎水性のシートを用いてもよい。
【0048】
吸収性コア2は、少なくとも肌側シート3と非肌側シート4との間に配置され、経血等の液体(排泄液)を吸収して内部に保持する部材である。吸収性コア2を構成する吸収材料としては、液体吸収性繊維であるパルプ繊維、セルロース系吸収性繊維、高吸収性ポリマー(所謂SAP)等の液体吸収性粒状物などを使用することができる。吸収性コア2は、熱可塑性樹脂繊維を含んでいてもよい。また、ナプキン1では、吸収性コア2を包むように液透過性のコアラップシート2aが設けられている。コアラップシート2aに好適な材料としては、ティッシュペーパーや不織布等を例示できる。尚、コアラップシート2aは、肌側及び非肌側にそれぞれ分かれて配置されても、或いは、コアラップシート2aを設けない構成であってもよい。
【0049】
また、ナプキン1は、ナプキン1の長手方向の中央位置Yよりも主に後側に設けられ、且つ、幅方向の両外側に延出する一対のウイング部20と、ナプキン1の長手方向の中央位置Yよりも前側に設けられ、幅方向の両外側に延出する一対の前方フラップ部30とを有している。
【0050】
第1実施形態では、ウイング部20は、肌側シート3の幅方向の両側部から外側に延出しているサイドシート5及び非肌側シート4によって形成されているが、これに限定されない。また、サイドシート5と非肌側シート4との間に、ウイング部20の強度等を向上させる別のシート部材を(不図示)を有していてもよい。
【0051】
また、ナプキン1は、長手方向において、吸収性コア2の前側端より前側の前方領域1Aと、前方領域1Aより後側の後方領域1Bとに区画される。上述の一対の前方フラップ部30は、当該前方領域1A内に配置されている。また、上述の一対のウイング部20は、当該後方領域1B内に配置されている。
【0052】
また、ナプキン1は、肌側シート3と非肌側シート4との間に、低放射率シート10と、上側吸収シート11と、下側吸収シート12とを有しており、当該低放射率シート10と、上側吸収シート11と、下側吸収シート12とは、主に前方領域1Aに配置されている。図1に例示するナプキン1では、低放射率シート10の後端部が、吸収性コア2の前端部と重複し、後方領域1Bに配置されている。具体的には、低放射率シート10は、厚さ方向において少なくとも一部が吸収性コア2よりも非肌側に配置されており(図4)、上側吸収シート11は低放射率シート10の非肌側に配置され、下側吸収シート12は、上側吸収シート11の非肌側に配置されている。ただし、これに限定されず、低放射率シート10の後端が、吸収性コア2の前端と接するか、又は前側に離間していてもよい。
【0053】
上側吸収シート11及び下側吸収シート12は、汗や経血等の体液を吸収できるシートであり、例えば、液体吸収性繊維をエアレイド法によってシート状に成形したエアレイドシート等を例示できる。当該上側吸収シート11及び下側吸収シート12は、主に後述する低放射率シート10の機能を担保するように設けられており、平面サイズが低放射率シート10と同じ、或いは、低放射シート10よりも大きい形状であることが好ましい。
【0054】
ナプキン1の前方領域1Aの形状は特に限定はなく、例えば、三角形や矩形や多角形(角が丸い場合や辺が曲線の場合を含む)、円形や楕円形、生物の形状、又はそれらの組み合わせが挙げられる。本実施形態の前方領域1Aは、一対のウィング部20を除いた後方領域1Bの最大幅よりも大きい幅を有する。また、前方領域1Aは、その前端部から後端部に向かって幅が狭くなった略三角形の形状である。低放射率シート10、上側吸収シート11、及び下側吸収シート12も前方領域1Aの形状を相似的に縮小した略三角形の形状である。ただし上記に限定されず、低放射率シート10、上側吸収シート11、及び下側吸収シート12が例えば矩形形状等であり、前方領域1Aと異なる形状であってもよい。
【0055】
前方領域1A内で幅方向の両外側に延出する一対の前方フラップ部30は、少なくとも一部が肌側シート3の幅方向の両側部から外側に延出しているサイドシート5、低放射率シート10、上側吸収シート11、下側吸収シート12、及び非肌側シート4によって形成されているが、これに限定されない。なお、低放射率シート10の詳細については、後述する。
【0056】
ナプキン1の後方領域1Bは、概ね一般的な生理用ナプキンの形状であり、上述の一対のウイング部20は、後方領域1Bの長手方向の略中央部に設けられている。また、後方領域1Bにおいて、長手方向の中央やや前方寄りの領域(長手方向におけるウイング部20の中央)が、着用者の排泄口に当接するように想定されている。なお、ナプキンはウィング部を有さなくてもよい。
【0057】
非肌側シート4の厚さ方向の非肌側面には、図2及び図3Bに示すように、接着剤が塗布された粘着部25が長手方向に沿って設けられている。ナプキン1の使用時に、粘着部25は下着等の着衣の肌側面に貼り付けられ、これによりナプキン1は着衣に固定される。図2では、長手方向に長辺を有する長方形状の8個の粘着部25が幅方向に間隔を空けて並んでいるが、粘着部25の形状や数はこれに限定されない。
【0058】
同様に各ウイング部20の厚さ方向の非肌側(非肌側シート4の非肌側面)には、接着剤が塗布されたウイング粘着部21がそれぞれ設けられている(図2)。ナプキン1の使用時に、ウイング20は非肌側に折り曲げられ、ウイング粘着部21が下着等の非肌側面に貼り付けられることで、ナプキン1は下着等に固定される。図2では、長手方向に長辺を有する長方形状の3個のウイング粘着部21が幅方向に並ぶが、ウイング粘着部21の形状、数、及び配置位置はこれに限定されない。
【0059】
さらに、前方フラップ部30の厚さ方向の非肌側(非肌側シート4の非肌側面)には、接着剤が塗布された前方フラップ粘着部31がそれぞれ設けられている(図2及び図3A)。前方フラップ部30は、使用時に折り返されず、下着等の着用物品と着用者の腹部との間に配置される。前方フラップ粘着部31が下着等の肌側面に貼り付けられ、これによりナプキン1は下着等に固定される。図2では、前後方向に長辺を有する長方形状の3個の前方フラップ粘着部31が幅方向に並ぶが、前方フラップ粘着部31の形状、数、及び配置位置はこれに限定されない。
【0060】
上述のように、本実施形態のナプキン1は、前方領域1Aを有し、一般的なナプキン1の形状に比べて前側に長く幅広い形状となっている。ナプキン1のウイング部20の長手方向における中央が着用者の排泄口に対応するようにナプキン1が装着されると、ナプキン1の前方領域1Aが着用者の下腹部に対応する。着用者の下腹部が前方領域1Aで覆われるため、前方領域1Aを有さないナプキン1に比べて、着用者の下腹部を温めることができる。
【0061】
また、ナプキン1の肌側面には、図1に示すように、複数の線状圧搾部40及び点状圧搾部41、42が設けられている。ナプキン1の線状圧搾部40では、図3Bに示すように、肌側シート3、セカンドシート6、コアラップシート2a及び、吸収性コア2が、厚さ方向の肌側から圧搾されて凹んでおり、隣接領域に比べて吸収性コア2の密度が高くなっている。この複数の線状圧搾部40によって、肌側シート3から吸収性コア2までが厚さ方向の肌側から圧搾(エンボス加工)され、接合一体化されている。また、線状圧搾部40は、少なくとも吸収性コア2が厚さ方向に圧縮されていればよく、吸収性コア2と肌側シート3とが厚さ方向に圧縮されてもよいし、吸収性コア2とコアラップシート2aとが厚さ方向に圧縮されていてもよい。
【0062】
ナプキン1の点状圧搾部41では、図3A及び図3Bに示すように、サイドシート5と肌側シート3とが、厚さ方向の肌側から圧搾されて点状に凹んでおり、隣接領域に比べて当該点状圧搾部41の密度が高くなっている。この複数の点状圧搾部41によって、サイドシート5と肌側シート3とが厚さ方向の肌側から圧搾(エンボス加工)され、接合一体化されている。また、点状圧搾部41は、長手方向の一方側(前側)から他方側(後側)に延在し、ナプキン1の幅方向の両側に一対設けられている。
【0063】
また、ナプキン1の点状圧搾部42では、図3Aに示すように、肌側シート3、低放射率シート10、上側吸収シート11、及び下側吸収シート12が、厚さ方向の肌側から圧搾されて凹んでおり、隣接領域に比べて密度が高くなっている。この複数の点状圧搾部42によって、肌側シート3から下側吸収シート12までが厚さ方向の肌側から圧搾(エンボス加工)され、接合一体化されている。
【0064】
<低放射率シート10>
本実施形態では、肌側シート3と非肌側シート4との間に、低放射率シート10が設けられているが、ここで「低放射率シート」とは、熱放射しにくいシート状部材であり、装着中のナプキン内の熱が外に逃げることを防ぐ断熱効果や保温効果を発揮するシートである。低放射率シート10としては、例えば、アルミニウムを含むシートであり、不織布にアルミニウムをラミネート加工したシート部材などを例示できる。また、低放射率シート10の放射率(ε)は0.5以下が好ましい。
【0065】
なお、放射率の測定は、次のような方法で行うことができる。まず、低放射率シート10を、ナプキン1を構成する他のシート部材や吸収性コア2から分解し、単一のシートとして摘出する。測定は、低放射率シート10のうち、圧搾等の処理がない部分に対して行う。測定の手順は、1)低放射率シート10の一部に黒体スプレー(例えば、TASCO社製のBlack Body Spray Ta410ks)を塗布する、2)放射率=1に設定した放射温度センサで黒体スプレーを塗布した部分の温度を測定する、3)続けて黒体スプレーを塗布していない部分を測定して、先に測った黒体スプレーを塗布した部分の温度と指示値が等しくなるように上述の設定値(放射率=1)を調整し、当該調整によって得られた放射率を対象物の放射率とする。
【0066】
また、放射率が低い物体ほど表面反射が強くなる(反射率が高くなる)ため、低放射率シート10は熱や湿気を反射し易いシートでもある。このような低放射率シート10により、装着後に着用者の身体と低放射率シート10との間の温度及び湿度を高めることができる。
【0067】
<機能材50の詳細>
また、本実施形態では、ナプキン1は、厚さ方向において低放射率シート10よりも肌側に、着用者に温感を与える温感剤である機能材50が設けられている。機能材50としての温感剤は、着用者の生理痛や冷え症状を緩和するために設けられており、着用者の温度感覚に刺激を与えることにより、刺激を受けた着用者が温かく感じる温感刺激剤を含み、揮発性の物質である溶媒と混合された状態で備えられている。
【0068】
そして、温感剤(機能材50)は、厚さ方向において低放射率シート10よりも肌側に設けられており、具体的には、肌側シート3の非肌側面に塗布されている。本実施形態に係る温感剤は、着用者の肌まで到達してその主たる温感効果を発揮する。
【0069】
図1に示すように、本実施形態では、機能材50は長手方向に沿って延在し、幅方向に間隔を空けて複数本並んでいるが、形状や数はこれに限らず、所望の場所に、面状、線状、スパイラル状、Z状、ドット状等の所定の形状で配置されてもよい。
【0070】
上記温感刺激剤は、着用者の安心感の観点から、植物由来の化合物であることが好ましい。温感刺激剤としては、例えば、カプシコシド、カプサイシン(LD50:47mg/kg,分子量:305)、カプサイシノイド類(ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、ノニバミド等)、カプサンチン、ニコチン酸ベンジル(LD50:2,188mg/kg,分子量:213)、ニコチン酸β-ブトキシエチル、N-アシルワニルアミド、ノナン酸バニリルアミド、多価アルコール、唐辛子末、唐辛子チンキ、唐辛子エキス、ノナン酸バニリルエーテル、バニリルアルコールアルキルエーテル誘導体(例えば、バニリルエチルエーテル、バニリルブチルエーテル(LD50:4,900mg/kg,分子量:210)、バニリルペンチルエーテル、バニリルヘキシルエーテル)、イソバニリルアルコールアルキルエーテル、エチルバニリルアルコールアルキルエーテル、ベラトリアルアルコール誘導体、置換ベンジルアルコール誘導体、置換ベンジルアルコールアルキルエーテル、バニリンプロピレングリコールアセタール、エチルバニリンプロピレングリコールアセタール、ショウガエキス、ジンジャーオイル、ジンゲロール(LD50:250mg/kg,分子量:294)、ジンゲロン、ヘスペリジン、及びピロリドンカルボン酸、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0071】
溶媒は、温感刺激剤を含むことができるものであれば、特に限定されず、例えば、親油性溶媒及び親水性溶媒が挙げられる。溶媒は、温感刺激剤を、例えば、溶解、分散等することができる。
【0072】
親油性溶媒としては、油脂、例えば、天然油(例えば、トリグリセリド等の脂肪酸エステル、ヤシ油、アマニ油、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル等)、炭化水素(例えば、パラフィン、例えば、流動パラフィン)等が挙げられる。
【0073】
親水性溶媒は、水及びアルコールが挙げられる。上記アルコールとしては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等の低級アルコール、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。
【0074】
なお、温感剤は、温度感受性TRPチャネルを刺激するものが好ましい。例えば、温度感受性TRPチャネルの1つであるTRPV1は、カプサイシン、酸等の刺激により活性化される。そして、着用者のTRPV1が活性化されると、交換神経系を介して産熱が引き起こされる(着用者が体内で熱を作り出す)。
【0075】
つまり、携帯用使い捨てカイロのようにそれ自身が高温になって着用者を温めるのではなく、カプサイシン等のようにそれ自身が高温になることなく着用者を温めるのがよい。そうすると、着用者は、低温火傷や火傷することなく、温かさを感じることができる。
【0076】
そして、上記溶媒が温感剤を含んだ状態もしくは温感剤とともに気化する。これによって温感刺激剤が着用者の肌に到達し、到達した温感刺激剤が着用者の温度感覚に刺激を与える。また、本発明で用いられる温感剤は、バニリルブチルエーテルである。TRPV1チャネルへ溶媒がナプキン1から皮膚へ付着することで、当該チャネルに到達する場合と、溶媒が気化することで肌に到達し、刺激を与える2つのルートによって、着用者の温度感覚に刺激を与えることができる。本実施形態においては、後述したルートを用いれば、温感剤が着用者の肌と直接的に当接していなくても、温感剤が気化することで気化した温感剤を着用者の肌と当接させることができる。
【0077】
前述したとおり、本実施形態に係るナプキン1は、肌側シート3と非肌側シート4の間に低放射率シート10を有している。従来の吸収性物品においても、吸収性物品を構成する構成材の一部に金属層を有することで排泄後の体液の温度低下を防止するものがあるが、単に金属層を有するだけでは、保湿・保温を行うことができるものの、好適な温感や冷感の効果を狙うことは難しい。また生理用ナプキンでは、排出後の血液を温かい状態に維持することや、冷感の効果性の維持よりも、排泄(排出)後は速やかに交換することを優先することから、ナプキンを装着した後からすぐに温感・冷感機能が最も発揮されることが好ましい。また、製品の最外装は、身体と接触する部分が多く、仮にそのような位置にアルミニウム等を含むシートを用いると、剛性が高まり、硬さを感じてしまう虞がある。
【0078】
この点、本実施形態に係るナプキン1は、厚さ方向において低放射率シート10よりも肌側に温感剤(機能材)50が設けられており、さらに、厚さ方向(図1において紙面を貫通する方向)に見たときに、低放射率シート10と機能材50とが重複する部分を有している。低放射率シート10があることで、身体からの放熱が非肌側に逃げにくくなり、それによってナプキン1の装着後からすぐに着用者の身体と低放射率シート10との間の温度を体温に近づけ、且つ、肌表面が保湿されることで毛穴を緩め易くする。低放射率シート10よりも肌側にある温感剤(機能材50)もそのような保温や保湿によって揮発され易くなり、且つ、緩んだ毛穴から温感剤の成分が肌の内側に浸透しやすくなる。それにより、装着後から短時間において温感剤の効果を最も高めることができる。ナプキン1の低放射率シート10は、装着時に下腹部に当たる位置に配置されているため、装着後から、着用者の子宮を温めて生理痛を低減する効果も期待できる。
【0079】
また、ナプキン1では、幅方向において、低放射率シート10の外端10eは、ナプキン1の外端1eよりも内側に位置している。ナプキン1の幅方向の外端1eは、着用時に身体を動かした際に大腿部が触れ易い部位である。幅方向において、ナプキン1の外端1eまで低放射率シート10が配置されていると、ナプキン1の外端1eが硬くなり易いが、低放射率シート10の幅方向の外端10eをナプキン1の幅方向の外端1eから離すことで、ナプキン1の外端1eの硬さを低減し、ナプキン1全体の柔らかさを担保できる。また、同様に、非肌側シート4のようなナプキン1の最外装に低放射率シート10を使用すると、大腿部と接触する際に硬さを感じ易くなり、肌触りが低下する虞があるため、低放射率シート10は非肌側シート4よりも肌側に配置されることが好ましい。故に、低放射率シート10は、非肌側シート4よりも放射率が低いシートであり、肌側シート3と非肌側シート4との間に配置されることで、ナプキン1の柔らかさを担保する。
【0080】
また、ナプキン1は、吸収性コア2の最大厚さ(吸収性コア2の厚さ方向における最大長さ)は、低放射率シート10の最大厚さ(低放射率シート10の厚さ方向における最大長さ)よりも厚い(長い)ことが好ましい。当該吸収性コア2及び低放射率シート10の厚さの測定は、周知の方法で行うことができる。例えば、ミツトヨ(株)製のダイアルシックネスゲージID-C1012C又はそれと同等のものを使用し、対象部位を例えば3.0gf/cmで加圧して測定した値を厚さとする。測定する際には、まず、測定部分を切り出す前にナプキン1の厚みを測定し、次に、吸収性コア2を取り除いた後、他の個々のシートの厚みを測定する。切り出す前に測定したナプキン1の厚みから個々のシートの厚みを差し引いた値を吸収性コア2の厚みとする。低放射率シート10は、一つのシートとして厚みを測定する。各厚みは、製品(ナプキン1)が梱包されている同じパッケージ若しくは同日に生産された製品を10個用意し、測定した平均値を最大厚さとする。
【0081】
吸収性コア2の上述した構成材は保温及び保湿効果を期待できるため、吸収性コア2の厚み(厚さ方向の長さ)が厚くなるほど、低放射率シート10によって身体から放熱された熱を維持することで保温し易くなり、また、湿気を当該吸収性コア2によって逃げにくくすることで保湿効果も実現し易くなる。
【0082】
また、図4に示すように、本実施形態では、低放射率シート10は、厚さ方向において少なくとも一部が吸収性コア2よりも非肌側に配置されている。低放射率シート10によって吸収性コア2の吸収性能が低下することを防止し、また、非肌側に位置することで外気の影響を低減させることができるため、着用時のナプキン1内の保温状態を安定させ易くなる。
【0083】
上述のように、本実施形態では、低放射率シート10は厚さ方向において少なくとも一部が吸収性コア2よりも非肌側に配置されているが、これに限定されず、低放射率シート10は、厚さ方向において少なくとも一部が吸収性コア2よりも肌側に配置されていてもよい。低放射率シート10のうち吸収性コア2よりも肌側に配置される部分は、より着用者の肌側に近くなることから体温を効率よく反射し、身体と低反射率シート10との間の温度を体温に近づけ、また湿度を高め易くする。また、機能材50は、低放射率シート10よりもさらに肌側に設けられるため、低放射率シート10のうち吸収性コア2よりも肌側に配置された部分は、機能材50が吸収性コア2に移行することを防止でき、機能材50の効果の低減を防ぐことができる。
【0084】
また、ナプキン1は、少なくとも一部が肌側シート3に接合され、幅方向に一対並んで設けられた一対のサイドシート5を有しており、ナプキン1の幅方向の両側部は、サイドシート5がさらに積層されることで、その厚みの分、両側部のフィット性が向上する。また、本実施形態のナプキン1のサイドシート5には、弾性部材が設けられていない構成となっている。当該サイドシート5に弾性部材が存在しないことで低放射率シート10を収縮させずに平らに保つことができ、高剛性部となりがちな低放射率シート10が収縮することによって生じ易い違和感を低減することができる。
【0085】
また、図1に示すように、低放射率シート10の少なくとも一部は、長手方向において、吸収性コア2よりも前側に設けられている。このように、吸収性コア2の吸収性能に影響しにくい位置に低放射率シート10を配置することで、吸収性能への影響を低減することができる。なお、長手方向において、低放射率シート10の少なくとも一部を吸収性コア2よりも前側に設ける構成に限らず、低放射率シート10の少なくとも一部が長手方向において吸収性コア2よりも後側に設けられている構成であっても同様の効果を奏することができる。
【0086】
また、本実施形態において、厚さ方向に見たときに、低放射率シート10と機能材50とが重複する部分を重複領域とし、機能材50が低放射率シート10と重複しない部分を非重複領域としたとき、重複領域における単位面積当たりの機能材50の量は、非重複領域における単位面積当たりの機能材50の量よりも多いことが好ましい(なお、単位面積当たりの「量」とは、単位面積当たりの「重量」である)。機能材50は、低放射率シート10と重複する重複領域においてその効果を発揮し易くなるため、そのような重複領域において機能材50の量が多いことで、機能材50の効果をより感じ易くなる。
【0087】
尚、温感剤(機能材50)の単位面積当たりの量の測定は、例えば、次のような方法で行うことができる。まず、重複領域と非重複領域をそれぞれ切り取り、各重さを測定し、続いて、重複領域と非重複領域の温感物質が完全に揮発するまで所定時間放置する。完全に温感物質が揮発した重複領域と非重複領域の重さを測定し、温感物質が揮発する前の重複領域と非重複領域の重さとの差をそれぞれ算出する。最後に、それぞれの差について、重複領域と非重複領域の各面積で除することで、重複領域と非重複領域のそれぞれの単位面積当たりの温感剤の量を得ることができる。
【0088】
また、本実施形態では、厚さ方向に見たときに、低放射率シート10と機能材50とが重複する部分を有しており、そして、機能材50としての温感剤は、揮発性の物質である溶媒と混合された状態で備えられているが、当該溶媒は、水溶性である。つまり、ナプキン1において、温感剤(機能材50)が設けられている領域は、低放射率シート10により発汗が促されて汗による水分量が増加する領域でもあるため、溶媒が水溶性であると汗で溶けて肌となじみ易くなり、温感剤が肌に浸透し易くなる。
【0089】
なお、混合される温感剤の量は、溶媒の量よりも少ないことが好ましい。温感剤は少ない量でも効果を発現でき、また、温感剤の量が溶媒の量よりも多くなると、温感作用が強くなり過ぎて痛みやかゆみが生じる虞があるが、少なくすることで、そのような痛みやかゆみの発生を低減できる。
【0090】
また、ナプキン1が備える一対のウイング部20の厚さ方向の非肌側には、ウイング粘着部21がそれぞれ設けられているが、本実施形態では、長手方向において、ウイング粘着部21よりも前側に低放射率シート10が設けられており、ウイング粘着部21よりも後側には低放射率シート10が設けられていない(図2参照)。低放射率シート10の肌側には温感剤が設けられており、このような構成にすることで、特に前側(腹側)に温感剤の効果を発現することができる。故に、装着後の早い段階から着用者の下腹部に温感を与えることができる。
【0091】
また、ナプキン1は、長手方向において、ウイング粘着部21と重複する領域には、低放射率シート10が設けられていないことが好ましい。ウイング粘着部21が設けられている領域は、吸収性コア2がずれないように吸収性コア2とのフィット性が求められる領域である。そして、そのような領域に低放射率シート10が配置されると、着用時にウイング部20を折り返す部分が硬くなり、大腿部とこすれる際に違和感を生じさせる虞があるが、当該領域に低放射率シート10を設けないことで回避できる。
【0092】
また、図1に示すように、ナプキン1には、生理用ナプキン1の平面形状における外周縁部に沿って、サイドシート5(厚さ方向において最も肌側のシート部材)と非側シート4(厚さ方向において最も非肌側のシート部材)とを厚さ方向に圧搾する周縁圧搾部45と、少なくとも肌側シート3(厚さ方向において最も肌側のシート部材)と非肌側シート4(厚さ方向において最も非肌側のシート部材)とを厚さ方向に押圧して接合する周縁接合部46とが設けられている。本実施形態では、ナプキン1の外周縁部は、周縁圧搾部45及び周縁接合部46によって全周が圧搾或いは接合されているが、これに限られず、何れかのみが全周に亘って形成されてもよい。或いは、必ずしも全周に亘って形成されなくてもよく、また、加熱圧着によって形成されてもよい。
【0093】
そして、本実施形態では、厚さ方向に見て、低放射率シート10が周縁圧搾部45或いは周縁接合部46と重複していない。周縁圧搾部45或いは周縁接合部46は剛性が高まる部分であり、そのような部分に低放射率シート10が重複すると更に周縁部が硬くなる虞があるため、低放射率シート10を重複させないように配置することでナプキン1の外周縁部の硬化を回避する。
【0094】
また、ナプキン1では、点状圧搾部42により、低放射率シート10の肌側面には凹部(不図示)があり、当該凹部は周囲と比較して密度が高まっている。低放射率シート10によって温められた湿気はそのような凹部に溜まり易くなり、着用者の身体をより温め易くすることができる。
【0095】
また、ナプキン1では、非肌側シート4の厚さ方向の非肌側面には接着剤が塗布された粘着部25や前方フラップ粘着部31がそれぞれ設けられているが、肌側シート3或いはサイドシート5の肌側面には、つまり、肌と接触する部位には、そのような接着剤が塗布された粘着部は設けられていない。仮に、低放射率シート10或いは温感剤(機能材50)が設けられている部分の肌側表面に粘着部があると、かゆみを増大させる虞や、肌に接着剤が浸透して肌が損傷する虞もあるため、肌と接触する部位には粘着部を設けないことが望ましい。
【0096】
また、上述したように、本実施形態では、肌側シート3と非肌側シート4との間に、非肌側シート4よりも放射率が低い低放射率シート10を有し、非肌側シート4としては、ポリエチレン(PE)の樹脂フィルム等を例示している。仮に、非肌側シート4として、非肌側シート4がアルミニウムを含むシートであった場合、例えば、非肌側シート4の非肌側面の少なくとも一部にアルミニウムをラミネート加工したシート等を使用した場合、ウイング粘着部21、粘着部25や前方フラップ粘着部31に用いられる接着剤(所謂、ずれ止め用粘着材)が樹脂フィルムに固定されていることによるアンカー効果と比べて、アルミニウムシートに固定されていることによるアンカー効果の方が低下することが考えられる。ずれ止め用粘着材のアンカー効果が低下すると、ナプキン1を下着から剥がした際に接着剤が下着に残ってしまう虞があるため、非肌側シート4としてそのようなアルミニウムシート(低放射率シート)を使用しないことで、ナプキン1の使用時に発生するトラブルを防止することが好ましい。
【0097】
図5は、機能材50の塗布位置の変形例を示す図である。当該変形例では、長手方向において、低放射率シート10が吸収性コア2の前側端2feよりも前側に配置されている。つまり、厚さ方向に見て、低放射率シート10と吸収性コア2とは、重なっていない。当該変形例では、台形状の低放射率シート10が設けられているが、形状はこれに限らず、長手方向において吸収性コア2の前側端2feよりも前側に配置され得る形状であれば、任意の形状を採用できる。
【0098】
そして、厚さ方向に見て低放射率シート10と重なるように、幅方向の中央部に間隔を空けて幅方向の一方側と他方側に一対の温感剤(機能材50)が長手方向に沿って塗布されている。ここで、幅方向の一方側及び他方側に塗布されている温感剤をそれぞれ温感剤(機能材)50a、50bとすると、温感剤(機能材)50a及び50bは、長手方向において吸収性コア2と重なる部分を有するように延在している。つまり、厚さ方向に見たときに、吸収性コア2と重複する部分を有するように温感材(機能材)50a、50bが設けられている。さらに、当該変形例では、幅方向において温感材50aと50bとの間、且つ、厚さ方向に見て吸収性コア2と重なる部分に、更なる温感材(機能材)50cが設けられている。当該温感材50cは、例えば、吸収性コア2(コアラップシート2a)の肌側面に塗布されていてもよい。
【0099】
ここで、厚さ方向に見て、低放射率シート10と温感剤(機能材)50a、50bとが重複する部分をそれぞれ第1重複領域T1とし、吸収性コア2と温感剤(機能材)50a、50b、50cとが重複する部分をそれぞれ第2重複領域T2としたとき、第2重複領域T2における単位面積当たりの機能材50(50a、50b、50c)の量は、第1重複領域T1における単位面積当たりの機能材50(50a、50b)の量よりも多いことが好ましい。尚、単位面積当たりの量の定義及び単位面積当たりの量の測定方法については、上述の第1実施形態の実施例と同じであるため省略する。第1重複領域T1のように、機能材50は、低放射率シート10と重複する領域において設けられることで、低放射率シート10による保温及び保湿によってより揮発され易くなり、機能材50の効果を発揮し易くなる。第2重複領域T2に設けられている機能材50は、低放射率シート10が存在しない領域に設けられており、第1重複領域T1と比較すると揮発し易さは低減するが、第2重複領域T2では、機能材50の量を多くすることで機能材50の効果の向上を図ることができる。一方、第1重複領域T1では、低放射率シート10が存在することにより効果を発揮し易くなることから、機能材50の量を第2重複領域T2よりも少なくしても、その効果を発揮できる。なお、機能材50を塗布する位置は、当該変形例の位置に限定されず、厚さ方向に見て吸収性コア2と重複する領域(すなわち、上述の第2重複領域T2に相当)の方に機能材50がより多く塗布されていればよい。
【0100】
<生理用ナプキン1の個包装体60と生理用ナプキン収容体80>
図6Aは、生理用ナプキン収容体80の概略斜視図であり、図6Bは、生理用ナプキン収容体80を開封した状態の図である。先ず、ナプキン1が包装材61によって個別に包装された個包装体60を形成する際には、非肌側シート4の非肌側面に設けられている各粘着部(ウイング粘着部21、粘着部25、及び前方フラップ粘着部31)がそれぞれ厚さ方向の非肌側から剥離シート(不図示)に覆われ、剥離シートとシート状の包装材61とが弱い接着力によって接着されて取り付けられる。そして、ナプキン1を、包装材61(例えば合成樹脂フィルム等)で包装した状態で、所定箇所で折り畳んで、個包装体60の幅方向(左右方向)の両端部をサイドシール部(不図示)で接合することで個包装体60となる。
【0101】
生理用ナプキン収容体80(以下、収容体80ともいう)は、複数の個包袋体60と、個包装体60を複数個収容する収容部材70と、シール部材75とを備える。
【0102】
収容体80は、互いに交差する上下方向、前後方向及び左右方向を有する。収容体80について、上下方向において、個包装体60を取り出す側を「上」とし、その反対側を「下」とする。前後方向において、個包装体60を取り出す側を「前」とし、前面を「正面」ともいい、その反対側を「後」とし、後面を「背面」ともいう。収容体80は、複数の外面を有し、当該複数の外面は、前後方向における上述の前面である正面80A、該正面80Aと前後方向で対向する背面80C、正面80Aと背面80Cとの間に位置し上下方向及び前後方向に沿った面である一対の側面80B、正面80Aと背面80Cとの間に位置し左右方向及び前後方向に沿った面のうち上側の面である上面80D、及び下側の面である下面80である。なお、図6A及び図6Bに示す収容体80は、略直方体形状であるが、パッケージの形状は特に限定されず、例えば、筒状の包装材の上下を封じた袋形状のもの等であってもよい。
【0103】
図6Bに示すように、収容部材70において、各個包装体60は、個包装体60の左右方向の両端部にあるサイドシール部が収容部材70の左右方向の両端部に沿うように挿入され、複数の個包装体60は、収容部材70の前後方向に並ぶように収容される。
【0104】
図6A及び図6Bに示すように、収容体80を最初に開封する前の状態において、収容部材70は、開口部81を規定するためのミシン目等の開口規定部82(以下、「ミシン目82」ともいう。)を有している。図6Aでは、便宜的にシール部材75の範囲を二点鎖線で示している。ミシン目82は、シール部材75の外縁よりも内側に位置している。
【0105】
シール部材75は、収容体80の上面の少なくとも一部を覆い、且つ、収容体80の正面の少なくとも一部を覆うように設けられている。すなわち、シール部材75は、収容体80の上面80Dと正面80Aの境界を跨ぐように設けられている。シール部材75には、つまみ部76が設けられており、使用者は、つまみ部76を摘まんで引っ張ることにより、収容体80を開封及び再封止しやすくなる。
【0106】
シール部材75は、厚さ方向の一方側の面(収容部材70と対向する側の面)に接着部(不図示)を有し、接着部を介して、収容部材70に接着(貼着)されている。収容体80の初回開封時において、使用者は、シール部材75のつまみ部76をつまみ、上下方向の下側から上側に向かってシール部材75を徐々に引き剥がす。このとき、シール部材75の引き剥がしが図6Bに示すミシン目82上の点Aに達するまでは、シール部材75のみが収容部材70から分離される。そして、シール部材75の引き剥がしが点Aに到達すると、ミシン目82の破断が始まり、収容部材70のうちミシン目82によって囲まれた内側の部分が、シール部材75に付着したまま一緒に収容部材70から分離していく。
【0107】
その結果、収容部材70の前面及び上面において、破断したミシン目82が開口部81となり、使用者は、開口部81から個包装体60を取り出すことができる。また、収容体80を一度開封した後も、シール部材75によって開口部81を覆い、粘着層を介してシール部材75を収容部材70に貼着させることにより、開口部81を再封止することができる。これにより、開封及び再封止を繰り返し行うことが可能となり、収容体80の開封後も個包袋体60を清潔に保つことができる。
【0108】
ここで、収容部材70は、例えば少なくとも合成樹脂を含むフィルム状の部材で形成された袋状の部材であってもよく、また、包装材61も合成樹脂フィルム等であってもよいが、包装材61及び収容部材70は、本実施形態の低放射率シート10のように、例えばアルミニウム等を含み、ナプキン1の非肌側シート4よりも放射率が低いシート部材から形成されてもよい。また、低放射率シート10の酸素透過度は、200cc/m・day・atm未満であり、収容部材70のバリア性を確保する観点からは、収容部材70の酸素透過度も、酸素透過度が200cc/m・day・atm未満であることが好ましい。それにより、揮発性の温感剤を有するナプキン1を収容部材70内に収容する場合でも、収容部材70を介して必要以上に揮発性成分が透過せず、収容体80の内部空間内にそのような揮発性成分を長期間保持することができる。なお、上記酸素透過度は、クーロメトリック法に従い、23度、0%RHの条件下で測定される。また、収容体80内において、包装材61及び収容部材70がナプキン1の低放射率シート10と同様の機能を有することで、製品全体としての揮発抑制効果も実現し易くなる。
【0109】
===第2実施形態===
以下、第2実施形態に係るパンツ型吸収性物品100(以下、単に吸収性物品100ともいう)について説明する。本実施形態のパンツ型吸収性物品100は、生理用吸収性物品であって、ショーツ型である点で第1実施形態の生理用ナプキン1と相違するが、第1実施形態の温感剤(機能材50)や低放射率シート10等は、第2実施形態において配置位置や形状が異なるものの基本構成は同様であるため、詳細な説明は省略する。なお、本実施形態の吸収性物品100には、例えば、大人用、乳児用のおむつ等も含まれており、生理用に用途が限定されるものではない。
【0110】
図7は、第2実施形態に係るパンツ型吸収性物品100の概略斜視図であり、図8は、展開状態におけるパンツ型吸収性物品100の平面図である。
【0111】
図7に示すパンツ型状態において、吸収性物品100は、互いに交差する「上下方向」と「幅方向」と「前後方向」を有している。そして、図7における紙面の縦方向を上下方向として紙面の上側(下側)を上下方向の「上」(「下」)とし、幅方向においては、紙面の左側(右側)を左右方向の左(右)とする。また、前後方向においては、着用する際に着用者の腹側となる方を「前側」とし、着用者の背側となる方を「後側」とする。
【0112】
図8に示す吸収性物品100の展開状態(パンツ型吸収性物品100がパンツ型に成形される前の平面上に広がった状態)において、吸収性物品100は、互いに交差する「長手方向」と「幅方向」と「厚さ方向」とを有している。そして、図8における紙面の縦方向を長手方向として、紙面の上側(下側)を長手方向の「前(腹側)」(「後(背側)」)とし、長手方向と紙面上で直交する方向を幅方向として紙面の左側(右側)を幅方向の左(右)とする。また、長手方向及び幅方向と直交する方向(紙面を貫通する方向)を厚さ方向とし、厚さ方向においては、着用者の肌と当接する側を「肌側」、その逆側を「非肌側」とする。
【0113】
なお、第2実施形態に係る平面図(例えば、図8)は、対象物の伸長状態を示している。ここで「伸長状態」とは、吸収性物品1が備える各弾性体(例えば、後述する股下糸ゴム130、伸縮性シート等)を伸長させることにより、平面図に示す部材を皺なく伸長させた状態である。例えば、図8においては、吸収性物品100を構成する後述する胴回り部材110と吸収性本体120の寸法がその部材単体の寸法と一致又はそれに近い寸法になるまで伸長させた状態のことを言う。
【0114】
第2実施形態に係る吸収性物品100は、胴回り部材110と、液吸収性の吸収性本体120とを備えており、以下では、先ず、吸収性物品100をパンツ型に生成する過程について説明する。そして、吸収性本体120については、後に項を設けて説明する。なお、本実施形態においては、吸収性本体120に温感剤(機能材50’)が備えられている。
【0115】
胴回り部材110は、図8に示すように、展開状態において、平面視で略砂時計形状をしている。つまり、長手方向の中央部が幅方向の内側へ窪んでおり、この窪んだ部分は、パンツ型に成形されると、図7に示す一対の脚回り開口部100bを形成する。
【0116】
また、胴回り部材110は、長手方向において吸収性物品100の中心に位置する中心折線CLより前側の前側胴回り部材110fと後側の後側胴回り部材110bを有している。そして、前側胴回り部材110f(後側胴回り部材110b)は、前側(後側)の端部において幅方向に沿った胴回り前端部110ff(胴回り後端部110bf)と、幅方向の両端部に設けられた長手方向に沿った前側接合部110fe(後側接合部110be)(共に図8の斜線図)を有している。
【0117】
また、本実施形態に係る胴回り部材110は、胴回り部材110の形状をした幅方向にほぼ伸縮性の無い非伸縮性シート114と、非伸縮性シート114の肌側面の一部に積層され、幅方向に伸縮性を有する伸縮性シート112(前側伸縮性シート112f及び後側伸縮性シート112b)とを備えている。また、非伸縮性シート114の一部は、長手方向(上下方向)において吸収性本体120の外側端120etよりも外側に延出され、長手方向の所定位置110etにおいて長手方向の内側かつ厚さ方向の肌側に折り返され、非伸縮性シート114及び吸収性本体120の肌側に積層された状態で接合されている。以下、非伸縮性シート114が折り返されている部分を折り返し部分114rとも呼び、非伸縮性シート114が折り返された所定位置110etを胴回り部材110の上端110etとも呼ぶ。
【0118】
なお、折り返し部分114rが、非伸縮性シート114とは異なるシート部材でも良い。すなわち、折り返し部分114rは、非伸縮性シート114を上端110etにて折り返すことによって形成されるのではなく、非伸縮性シート114とは別体の不織布等のシート部材によって形成されていても良い。
【0119】
このように、本実施形態の胴回り部材110は、複数のシートを備えており、複数のシートのうち、少なくとも1つが幅方向に伸縮性を有している。吸収性物品100の着用時には当該伸縮性によって胴回り部材110が着用者の胴周りに沿ってフィットする。
【0120】
そして、複数のシート同士の接合は、超音波振動及び圧力を加えた超音波接合(超音波シール)により、点在する複数の超音波接合部を形成することで行われる。すなわち、複数のシートは、厚さ方向(前後方向)に重ねられた状態で、点在する複数の超音波接合部によって接合される。
【0121】
吸収性物品100をパンツ型に生成する過程においては、先ず、展開状態の胴回り部材110の所定の位置に吸収性本体120を配置して、展開状態の吸収性物品100を生成する。つまり、吸収性本体120の非肌側の面を接合面とし、当該接合面を展開状態の胴回り部材110の所定の位置に載置して接合する。すなわち、胴回り部材110は、厚さ方向において吸収性本体120の非肌側に重ねて配置される。
【0122】
そして、展開状態の吸収性本体120と胴回り部材110が、長手方向に折り曲げられる。すなわち、図8に示す中心折線CLを折り目として、前側胴回り部材110fの肌側と、後側胴回り部材110bの肌側と、が向かい合わせになるように、吸収性本体120と胴回り部材110が、長手方向に折り曲げられる。
【0123】
そうしたら、胴回り部材110の前側接合部110feと後側接合部110beが近づくので、左右の前側接合部110feと後側接合部110beをそれぞれ接合する(前側胴回り部材110fと後側胴回り部材110bの幅方向の両端部が接合部(前側接合部110feと後側接合部110be)にて互いに接合される)。
【0124】
つまり、胴回り部材110の幅方向両端部が長手方向に沿って接合されるので、胴回り部材110の胴回り前端部110ffと胴回り後端部110bfが胴回り部材110の上側に胴回り開口部100aを形成する。
【0125】
パンツ型吸収性物品100は、胴回り部材110が着用者の身体の前側(腹部)と後側(背中部)に当接して(着用者の胴回りに当接して)、主に胴回り部材110の幅方向への伸縮(身体への締め付け)により、着用時に落下しないような構成である。したがって、胴回り部材110に接合された吸収性本体120は、着用者の股下部(吸収性本体120が着用時に着用者の肌に当接する部分であり、下腹部から股間部を介して臀部(おしり)の仙骨部に至る部分)に当接した状態で胴回り部材110により上下方向に支持される。
【0126】
すなわち、吸収性物品1は、腹部、背中部、及び股下部を備え、胴回り開口部100a、及び一対の脚回り開口部100bが形成されたパンツ型であり、胴回り部材110の有する伸縮性シート等により、着用時に落下しないように支持されている。
【0127】
なお、「当接」とは、当たり接していることを意味し、「当接する」とは、部材の少なくとも一部が着用者に当接することを意味する。例えば、胴回り部材110のうちの伸縮する部分が着用者と接して、伸縮しない部分が着用者と接していない状態は、胴回り部材110が着用者に当接している状態である。
【0128】
また、前述した吸収性本体120と胴回り部材110等を接合する接合方法としては、例えば、接着剤、ヒートシール、超音波シール、これらの組み合わせ等、公知の接合方法を例示できる。
【0129】
<吸収性本体120について>
次に、吸収性本体120について図9及び図10を用いて説明する。図9は、吸収性本体120の平面図であり、図10は、図9の矢視A-Aであって、吸収性本体120の断面模式図である。
【0130】
本実施形態に係る吸収性本体120は、生理用の吸収性物品であり、第1実施形態のナプキン1と類似の構成を有している。つまり、吸収性本体120は、液吸収性の吸収性コア122を備えており、吸収性コア122は、コアラップシート122aで外周面が覆われている。
【0131】
吸収性コア122は、液体吸収性素材が所定の形状に成形されたものであり、本実施形態においては、平面視で略矩形状(図9の斜線図)、断面視で凸部形状(図10の斜線部)に成形されている。液体吸収性素材としては、第1実施形態の吸収性コア2と同様の素材を使用できる。コアラップシート122aとしては、ティッシュペーパーや不織布等の液透過性シートを例示できる。なお、コアラップシート122aはなくてもよい。
【0132】
吸収性本体120は、吸収性コア122に加えて、図10に示すように、吸収性コア122よりも肌側に配置された肌側シート124と、吸収性コア122よりも非肌側に配置された非肌側シート125と、を有している。また、肌側シート124と非肌側シート125との間に、非肌側シート125よりも放射率が低い低放射率シート140を有している。具体的には、本実施形態では、低放射率シート140は、吸収性コア122と非肌側シート125との間に設けられている。また、肌側シート124の非肌側面の所定の領域には、温感剤(機能材50’)が設けられている。
【0133】
肌側シート124は、着用時において着用者の肌に接触し得る液透過性のシート部材であり、例えば親水性のエアスルー不織布やスパンボンド不織布等により形成される。また、肌側シート124は2層以上の構成であっても良い。例えば、肌側シート124の非肌側に肌側シートとほぼ同等の機能及び構成を有するシート部材であるセカンドシート(図10では不図示)を有していても良い。
【0134】
非肌側シート125は、吸収性コア122に吸収された経血等の排泄液が外部に漏れ出すことを抑制するための液不透過性シート125aと、液不透過性シート125aの非肌側に配置された液透過性シート125bと、を備えた二層構造で形成されている。液不透過性シート125aとしては、例えばポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等の樹脂フィルム等が用いられ、液透過性シート125bとしては、例えば柔軟性を有する不織布等が用いられる。なお、肌側シート124及び非肌側シート125の大きさは、いずれも吸収性コア122の全体を覆う大きさである。
【0135】
また、非肌側シート125のうち液透過性シート125bは、幅方向において吸収性本体120の両端120esよりも外側まで延出した延出部125cを有している。延出部125cは、吸収性本体120の幅方向における両端120esにおいて、支点150Bを折れ曲がり起点として厚さ方向の肌側に折り曲げられ、肌側シート124よりも肌側に位置する頂点150Sにて非肌側に折り返されることにより、立体ギャザー150を形成している(図10参照)。立体ギャザー150の頂点150Sには吸収性本体120の長手方向に沿った糸ゴム等の立体ギャザー弾性部材151が長手方向に伸長した状態で配置されており、吸収性物品100の着用時には、該立体ギャザー弾性部材151が発現する伸縮性によって頂点150Sが着用者の肌側に起立する。これにより、立体ギャザー150は排泄液等の横漏れを抑制するための防漏壁として機能する。
【0136】
なお、立体ギャザー150は、温感剤が外に漏れてしまうことを防ぐため、支点から頂点まで不織布が同数枚で構成されていることが好ましく、具体的には、2枚以上であることが好ましい。
【0137】
また、吸収性本体120の幅方向の中央部、且つ、厚さ方向において液不透過性シート125aと液透過性シート125bとの間には、長手方向に伸縮可能な糸ゴム等の中央弾性部材130が設けられている。中央弾性部材130は、図9及び図10に示すように、吸収性本体120の幅方向の中央部において、下腹部が当接する前側から股間部を介して臀部が当接する後側に至るまで設けられている。
【0138】
また、吸収性本体120(吸収性コア122)の肌側には、複数の圧搾部135(圧搾溝に相当)が形成されている。図10に示すように、圧搾部135は、吸収性本体120(吸収性コア122)の肌側において、肌側から非肌側へ窪んだ凹部形状をしている。圧搾部135の凹部形状は、例えば、吸収性本体120(吸収性コア122)を肌側から圧搾することにより形成されており、吸収性コア122の密度がその周囲の密度よりも高い高密度部であって圧搾溝となっている。
【0139】
本実施形態では、吸収性本体120のうち、厚さ方向における肌側シート124と吸収性コア122との間に温感剤(機能材50’)が設けられている(図10)。そして、図8及び図9に示すように、温感剤は、吸収性本体120の幅方向の中央部に、長手方向に沿って設けられており(図8及び図9の網掛け部分)、厚さ方向に見て、中央弾性部材130と重なる部分を有している。これにより、着用時に膣口及びお尻の溝付近に対し、効果的に温感を与えることができる。なお、温感剤の配置位置はこれに限らず、所望の場所に、面状、線状、スパイラル状、Z状、ドット状等の所定の形状で配置されてもよい。
【0140】
また、第2実施形態の低放射率シート140は、吸収性コア122(コアラップシート122a)と非肌側シート125との間に、且つ、吸収性本体120の幅方向の中央部に、長手方向に沿って設けられている(図9)。また、厚さ方向に見て、温感剤(機能材50’)と低放射率シート140とは重なる部分を有している。低放射率シート140があることで、身体からの放熱が非肌側に逃げにくくなり、温度を体温に近づけつつ、肌表面を保湿する。そのような保温・保湿効果によって温感剤がより揮発され易くなり、膣口付近に対して効果的に温感を与えることができる。なお、低放射率シート140の幅方向の長さは、温感剤が塗布されている領域の幅方向の長さより長く設けられているが、これに限られず、また、長手方向の長さ及び配置位置もこれに限定されるものではない。
【0141】
また、第2実施形態の低放射率シート140は、厚さ方向において吸収性コア122よりも非肌側に配置されていることから、低放射率シート140によって吸収性コア122の吸収性能が低下することを防止する。また、吸収性コア122よりも非肌側に位置することで、外気の影響を低減させることができ、着用時の吸収性物品1内の保温状態を安定させ易くなる。
【0142】
そして、本実施形態では、厚さ方向に見て、低放射率シート140と中央弾性部材130とが重なる部分を有している(図8及び図9)。これにより、吸収性物品1の着用時に中央弾性部材130が長手方向に収縮すると、低放射率シート140を膣口もしくはお尻の溝にしっかりとフィットさせることができ、温感剤(機能材50’)の効果を高めることができる。
【0143】
また、本実施形態では、低放射率シート140が、着用時において着用者の股下領域に対応する領域の少なくとも一部に設けられており、そのような構成にすることで、吸収性物品1の装着後から早い段階で、低放射率シート140により股下領域の発汗を促し、当該股下領域における肌側シート124や吸収性コア122が汗を吸収する。それにより、吸収性本体120の液の透過性が向上し、吸収性本体120の肌表面上の液残りの低減や、肌表面における液拡散面積の拡大を抑制でき、吸収性能が向上する。
【0144】
図11は、第2実施形態の低放射率シート140及び機能材50’の配置位置の変形例を示す。本変形例では、着用時において着用者の股下領域に対応する領域において、吸収性本体120の両側部に一対の低放射率シート140a、140aと、温感剤(機能材)50’、50’(図11の網掛け部分)が設けられており、膣口に当接する付近には、低放率シート140a及び温感剤50’を配置しないような構成になっている。
【0145】
また、本変形例では、吸収性本体120の長手方向の前方部と後方部にも前方低放射率シート140b及び後方低放射率シート140cがそれぞれ設けられており、且つ、厚さ方向に見て(図11では紙面を貫通する方向)、前方低放射率シート140b及び後方低放射率シート140cとそれぞれ重なる部分を有するように温感剤(機能材)50’が設けられている。また、温感剤は、前方低放射率シート140b及び後方低放射率シート140cよりも肌側、且つ、に設けられている。なお、温感剤50’の配置位置はこれに限定されず、前方低放射率シート140b及び後方低放射率シート140cよりも肌側に設けられ、且つ、各低放射率シート140a、140b、140cと厚さ方向に見て重なる部分を有するように配置されていればよい。
【0146】
また、本変形例では、吸収性本体120において、各低放射率シート140a、140b、140cを吸収性コア122よりも肌側に配置する。吸収性コア122よりも肌側に配置した場合でも、本変形例のように膣口付近を避けた位置に、すなわち、吸収性コア122の吸収性能に影響しにくい位置に各低放射率シート140a、140b、140cを配置しているため、吸収性能への影響を低減することができる。そして、各低放射率シート140a、140b、140cがより着用者の肌側に近くなることから体温を効率よく反射し、身体と低反射率シート140a、140b、140cとの間の温度を体温に近づけ、また湿度を高め易くする。低放射率シート140a、140b、140cよりも肌側にある温感剤50’もそのような温度や湿度の高まりによって揮発され易くなり、膣口の周り、下腹部、臀部に対して、装着後から早い段階で着用者に温感を与えることができる。
【0147】
図12は、第2実施形態の低放射率シート140及び機能材50’の配置位置の別の変形例を示す。当該変形例において、胴回り部材110は、上述の第2実施形態の実施例と同様に、前側胴回り部材110f(前後方向の一方側に位置する一方側胴回り部材)と後側胴回り部材110b(前後方向の他方側に位置する他方側胴回り部材)とを有している。一方で、前側胴回り部材110fは、非伸縮性シート114が折り返されている折り返し部分114r(一方側胴回り部材の最も肌側に配置されたシート部材)と、非肌側シート114(一方側胴回り部材の最も非肌側に配置されたシート部材)との間に、非肌側シート114よりも放射率が低い低放射率シート140xを有している。具体的には、低放射率シート140xは、前側伸縮性シート112f(幅方向に伸縮性を有する弾性部材)よりも肌側に配置され、且つ、厚さ方向において少なくとも一部が吸収性本体120よりも肌側に配置されている。そして、温感剤である機能材50’が低放射率シート140xよりも肌側、且つ、折り返し部分114rよりも非肌側に設けられている。また、厚さ方向に見て、低放射率シート140xと機能材50’とが重複する部分を有している。なお、低放射率シート140xは、前側伸縮性シート112fよりも非肌側に配置されていてもよい。
【0148】
本変形例では、長手方向において、機能材50’は吸収性本体120の外側端120et(前側端)よりも前側に設けられているが、これに限らず、機能材50’の一部が、厚さ方向に見て、吸収性本体120と重なる部分を有するように設けられていてもよい。そして、本変形例では、図12に示すように、低放射率シート140xは、上下方向において、前側接合部110fe(接合部)の下端110fedよりも上側に設けられており、当該前側接合部110fe(接合部)の下端110fedよりも下側には設けられていない。このような構成であれば、幅方向に伸縮性を有する前側伸縮性シート112fが着用時に収縮することにより、機能材50’と低放射率シート140xとがお腹周りに密着し、機能材50’の効果を高めることができる。故に、着用者のお腹周りを効果的に温めることができる。
【0149】
なお、本変形例で低放射率シート140x及び機能材50’は、前側胴回り部材110fに設けられていたが、後側胴回り部材110bであってもよく、或いは、前側胴回り部材110f及び後側胴回り部材110bの両方に設けられていてもよい。後側胴回り部材110bの場合も、低放射率シート140xが、上下方向において、後側接合部110be(接合部)の下端110bedよりも上側に設けられ、当該後側接合部110beの下端110bedよりも下側には設けられていない構成であればよい。これにより、後側伸縮性シート112b(弾性部材)が収縮して機能材50’と低放射率シート140xが身体に密着することで、着用者の腰部を効率良く温めることができる。
【0150】
また、図12の変形例において、例えば、前側伸縮性シート112fを有する前側胴回り部材110fの複数のシート同士を超音波振動及び圧力を加えた超音波接合(超音波シーツ)により接合する際に、形成される複数の超音波接合部のパターンを密にすることで、当該密にした部分の伸縮率を低くすることができる。つまり、前側胴回り部材110fに幅方向の伸縮性が低い低伸縮部(不図示)を形成することができる。そして、上下方向において、低放射率シート140xが、当該低伸縮部と重なる部分を有するように配置されることで、前側伸縮性シート112fにより低放射率シート140xに皺やたくれが生じることを低減でき、低放射率シート140xが密着した際の着用中の異物感を抑制することができる。
【0151】
また、図12の変形例における前側胴回り部材110f(後側胴回り部材110b)は、幅方向に伸縮性を有する前側伸縮性シート112f(後側伸縮性シート112b)を備えていたが、これに限られない。例えば、折り返し部分114r(一方側胴回り部材の最も肌側に配置されたシート部材)と、非肌側シート114(一方側胴回り部材の最も非肌側に配置されたシート部材)との間に、幅方向に伸縮する糸ゴム等の複数の弾性部材を上下方向(長手方向)に間隔を空けて並んで配置し、且つ幅方向に伸長した状態で固定させることで、胴回り部材110に幅方向の伸縮性を付する構成であってもよい。そして、そのように設けた弾性部材の一部を切断することによって伸縮性を発現しない非伸縮領域を形成し、例えば、吸収性本体の収縮の回避や、構成材の皺の発生の低減、胴回りが密着しすぎないようにする場合もある。そして、上下方向において、低放射率シート140xが、そのような非伸縮領域と重なる部分を有するように配置されれば、上述の低伸縮部と同様に、弾性部材により低放射率シート140xに皺やたくれが生じることを低減でき、低放射率シート140xが密着した際の着用中の異物感を抑制することができる。
【0152】
===その他===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
【0153】
上記の実施形態においては、機能材50の一例として、温感剤を用いていたが、温感剤に限るものではなく、機能材50は、例えば冷感剤でもよい。冷感剤を用いた場合には、着用者の蒸れやべたつきによる不快感を低減することが可能となる。
【0154】
なお、上記で説明した温感剤が気化して効果を発揮する仕組み(メカニズム)については、冷感剤や後述する香料においても同様であるので、これらの説明については省略する。
【0155】
冷感剤としては、例えば、皮膚の神経にある受容体活性化チャネル(TRPM8)に作用するものであってよい。このような冷感剤として、例えば、メントール(例えば、l-メントール)及びその誘導体(例えば、乳酸メンチル)、サリチル酸メチル、カンファー、植物(例えば、ミント、ユーカリ)由来の精油等が挙げられる。また、冷感剤は、気化熱により周囲の温度を下げるものであってもよい。このような冷感剤として、例えば、アルコール、例えば、メタノール及びエタノールが挙げられる。
【0156】
また、上記の実施形態においては、機能材50として温感剤を用いていたが、これに限らず、例えば、香料を用いても良い。香料は、温感剤の代わりに用いても良いし、温感剤と一緒に用いても良い。香料としては、当該技術分野において従来用いられてきたものと同様のものを用いることができる。
【符号の説明】
【0157】
1 生理用ナプキン、1A 前方領域、1B 後方領域
1e 外端
2 吸収性コア
2a コアラップシート、2fe 前側端
3 肌側シート、4 非肌側シート、
5 サイドシート
10 低放射率シート、10e 外端
11 上側吸収シート、12 下側吸収シート、
20 ウイング部、21 ウイング粘着部、
25 粘着部
30 前方フラップ部、31 フラップ粘着部
40 線状圧搾部、41 点状圧搾部、42 点状圧搾部、
45 周縁圧搾部、46 周縁接合部、
50、50’、50a、50b、50c 機能材(温感剤、冷感剤)、
60 個包袋体、61 包装材、
70 収容部材、75 シール部材
76 つまみ部、
80 生理用ナプキン収容体
80A 正面、80B 側面、80C 背面、80D 上面、
81 開口部、82 ミシン目(開口規定部)、
100 パンツ型吸収性物品
100a 胴回り開口部、100b 脚回り開口部、
110 胴回り部材、110b 後側胴回り部材、
110be 後側接合部、110bed 下端、
110bf 胴回り後端部、110et 上端
110f 前側胴回り部材、110fe 前側接合部、
110fed 下端、110ff 胴回り前端部、
112 伸縮性シート、
112b 後側伸縮性シート、112f 前側伸縮性シート
114 非肌側シート(非伸縮性シート)
114r 折り返し部分
120 吸収性本体、122 吸収性コア、
122a コアラップシート
124 肌側シート、125 非肌側シート、
125a 液不透過性シート
125b 液透過性シート
125c 延出部
130 中央弾性部材
135 圧搾部
140、140a、140b、140c、140x 低放射率シート
150 立体ギャザー
151 ギャザー弾性部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12