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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082668
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】プロセス推定方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20240613BHJP
【FI】
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196671
(22)【出願日】2022-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】社内 大介
(72)【発明者】
【氏名】木部 有
(72)【発明者】
【氏名】末永 和史
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC03
5L050CC03
(57)【要約】
【課題】複数の樹脂を混練、成形して製造される複合材料に適用可能であり、異なる製造装置であっても再現性よく材料を製造可能なプロセス推定方法及び装置を提供する。
【解決手段】第1製造装置210での第1プロセスデータ61を基に、第2製造装置310での第2プロセスデータ64を推定する方法であって、第1プロセスデータ61と組織データ62と特性データ63との関係を機械学習し、これらの相関性を表す第1回帰モデル43を作成すると共に、第2プロセスデータ64と組織データ62と特性データ63との関係を機械学習し、これらの相関性を表す第2回帰モデル44を作成し、両回帰モデル43,44を基に、第1プロセスデータ61と第2プロセスデータ64との相関性を表す第3回帰モデル45を作成し、第3回帰モデル45を用いて推定元の第1プロセスデータ61に応じた第2プロセスデータ64を推定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の対象工程を含む少なくとも1つ以上の工程を経て材料を製造する第1製造装置における前記対象工程でのプロセス情報を含む第1プロセスデータを基に、
前記第1製造装置とは異なる装置であり、かつ前記対象工程を含む少なくとも1つ以上の工程を経て材料を製造する第2製造装置における前記対象工程でのプロセス情報を含む第2プロセスデータを推定するプロセス推定方法であって、
前記第1プロセスデータと、前記第1製造装置における前記対象工程後のサンプルから得られる組織データと、前記第1製造装置により製造した材料の特性データとの関係を機械学習し、前記第1プロセスデータと、当該第1プロセスデータに対応する組織データ及び特性データとの相関性を表す第1回帰モデルを作成すると共に、
前記第2プロセスデータと、前記第2製造装置における前記対象工程後のサンプルから得られる組織データと、前記第2製造装置により製造した材料の特性データとの関係を機械学習し、前記第2プロセスデータと、当該第2プロセスデータに対応する組織データと特性データとの相関性を表す第2回帰モデルを作成し、
前記第1回帰モデルと前記第2回帰モデルとを基に、前記第1プロセスデータと前記第2プロセスデータとの相関性を表す第3回帰モデルを作成し、
前記第3回帰モデルを用いて、任意の推定元の前記第1プロセスデータである推定元第1プロセスデータに応じた前記第2プロセスデータである推定第2プロセスデータを推定する、
プロセス推定方法。
【請求項2】
前記第1回帰モデルは、前記第1プロセスデータと、前記第1製造装置における前記対象工程後のサンプルから得られる組織データと、前記第1製造装置により製造した材料の特性データとに加えて、材料の組成情報を含む組成データとの関係を機械学習して作成され、
前記第2回帰モデルは、前記第2プロセスデータと、前記第2製造装置における前記対象工程後のサンプルから得られる組織データと、前記第2製造装置により製造した材料の特性データとに加えて、材料の組成情報を含む組成データとの関係を機械学習して作成される、
請求項1に記載のプロセス推定方法。
【請求項3】
前記材料が、複数の樹脂を混練した後に成形して製造される複合材料であり、
前記第1製造装置または前記第2製造装置における前記対象工程後のサンプルから得られる組織データは、前記複合材料の組織構造を表すデータであって、少なくとも前記複数の樹脂それぞれの面積比を示す面積比データ、及び前記複数の樹脂それぞれの分散度合を示す分散度データを含む、
請求項1または2に記載のプロセス推定方法。
【請求項4】
前記面積比データ及び前記分散度データは、走査型プローブ顕微鏡により得た弾性率の分布画像、あるいは凝着力の分布画像に基づいて求められる、
請求項3に記載のプロセス推定方法。
【請求項5】
前記複合材料は、電線の被覆材である、
請求項3に記載のプロセス推定方法。
【請求項6】
前記第1製造装置が研究設備であり、かつ、前記第2製造装置が量産設備であり、
前記研究設備で製造した材料を前記量産設備で再現すべく、前記第3回帰モデルを用いて、前記研究設備で再現対象となる材料を製造した際の前記第1プロセスデータから、前記量産設備で再現対象となる材料を製造するための前記第2プロセスデータを推定する、
請求項1に記載のプロセス推定方法。
【請求項7】
前記第1製造装置が量産設備であり、かつ、前記第2製造装置が研究設備であり、
前記第3回帰モデルを用いて、前記量産設備で量産可能な条件を表す前記第1プロセスデータから、これに対応した前記研究設備での実験条件となる前記第2プロセスデータを推定する、
請求項1に記載のプロセス推定方法。
【請求項8】
所定の対象工程を含む少なくとも1つ以上の工程を経て材料を製造する第1製造装置における前記対象工程でのプロセス情報を含む第1プロセスデータを基に、
前記第1製造装置とは異なる装置であり、かつ前記対象工程を含む少なくとも1つ以上の工程を経て材料を製造する第2製造装置における前記対象工程でのプロセス情報を含む第2プロセスデータを推定するプロセス推定装置であって、
前記第1プロセスデータと、前記第1製造装置における前記対象工程後のサンプルから得られる組織データと、前記第1製造装置により製造した材料の特性データとの関係を機械学習し、前記第1プロセスデータと、当該第1プロセスデータに対応する組織データ及び特性データとの相関性を表す第1回帰モデルを作成する第1回帰モデル作成処理部と、
前記第2プロセスデータと、前記第2製造装置における前記対象工程後のサンプルから得られる組織データと、前記第2製造装置により製造した材料の特性データとの関係を機械学習し、前記第2プロセスデータと、当該第2プロセスデータに対応する組織データと特性データとの相関性を表す第2回帰モデルを作成する第2回帰モデル作成処理部と、
前記第1回帰モデルと前記第2回帰モデルとを基に、前記第1プロセスデータと前記第2プロセスデータの相関性を表す第3回帰モデルを作成する第3回帰モデル作成処理部と、
前記第3回帰モデルを用いて、任意の推定元の前記第1プロセスデータである推定元第1プロセスデータに応じた前記第2プロセスデータである推定第2プロセスデータを推定するプロセス推定処理部と、を備えた、
プロセス推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料の製造時のプロセスを推定するプロセス推定方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機械学習の学習結果を利用して複合材料を設計するための材料設計システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された材料設計システムは、設計対象材料の設計条件(材料組成又は製造条件)と、設計対象材料の特性(物性値、例えば引張強度)との組を、複数種類の設計対象材料について設計対象材料ごとに有するデータセットを作成する順問題解析部と、操作者により設定された各種条件に基づいて、データセットを訓練データと試験データに1回分割する学習条件設定部と、訓練データに基づいてモデルを学習し、学習したモデルの予測精度を、試験データに基づいて検証を行い、予測精度が目標値に達するまで検証を繰り返して学習済みモデルを作成するモデル学習部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6950119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、新材料等の開発は、研究開発用の小規模の製造装置を用いて行われ、その後、必要に応じてより大規模な製造装置での試験を経て、最終的に工場等の量産用の製造装置で安定して製造するための条件を検討することが多い。そのため、量産に至るまでに多くの実験(試験的な製造)を繰り返す必要があり、材料の無駄が非常に多くなったり、多くの時間を要したりしてしまうという課題があった。
【0006】
この課題を解決するためには、例えば、研究開発用の小規模の製造装置で開発した新材料を量産用の製造装置で再現性よく製造する等、異なる製造装置間で製造される材料の再現性を高める必要がある。しかしながら、例えば研究開発用と量産用の製造装置とでは、設備の規模や使用状況、環境、経年劣化度合等が異なり、また同じ装置を用いている場合でも装置間の個体差が存在している。さらには、例えば成形の方式や形状等が異なるなど、全く異なる装置を用いている場合もある。そのため、異なる製造装置間で、新材料等の材料を再現性よく製造することが困難であった。
【0007】
また、例えば電線の被覆材等として用いられる複合材料は、複数の樹脂(すなわち、複数の高分子材料)を混練、成形して製造される。このような複合材料では、樹脂の混ざり具合等の影響によって特性が変化するため、所望の特性の複合材料を得るためには、樹脂の混ざり具合等を考慮して適切な混練条件等のプロセス条件を推定することが望まれる。
【0008】
そこで、本発明は、複数の樹脂を混練、成形して製造される複合材料に適用可能であり、異なる製造装置であっても再現性よく材料を製造可能なプロセス推定方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、所定の対象工程を含む少なくとも1つ以上の工程を経て材料を製造する第1製造装置における前記対象工程でのプロセス情報を含む第1プロセスデータを基に、前記第1製造装置とは異なる装置であり、かつ前記対象工程を含む少なくとも1つ以上の工程を経て材料を製造する第2製造装置における前記対象工程でのプロセス情報を含む第2プロセスデータを推定するプロセス推定方法であって、前記第1プロセスデータと、前記第1製造装置における前記対象工程後のサンプルから得られる組織データと、前記第1製造装置により製造した材料の特性データとの関係を機械学習し、前記第1プロセスデータと、当該第1プロセスデータに対応する組織データ及び特性データとの相関性を表す第1回帰モデルを作成すると共に、前記第2プロセスデータと、前記第2製造装置における前記対象工程後のサンプルから得られる組織データと、前記第2製造装置により製造した材料の特性データとの関係を機械学習し、前記第2プロセスデータと、当該第2プロセスデータに対応する組織データと特性データとの相関性を表す第2回帰モデルを作成し、前記第1回帰モデルと前記第2回帰モデルとを基に、前記第1プロセスデータと前記第2プロセスデータとの相関性を表す第3回帰モデルを作成し、前記第3回帰モデルを用いて、任意の推定元の前記第1プロセスデータである推定元第1プロセスデータに応じた前記第2プロセスデータである推定第2プロセスデータを推定する、プロセス推定方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、所定の対象工程を含む少なくとも1つ以上の工程を経て材料を製造する第1製造装置における前記対象工程でのプロセス情報を含む第1プロセスデータを基に、前記第1製造装置とは異なる装置であり、かつ前記対象工程を含む少なくとも1つ以上の工程を経て材料を製造する第2製造装置における前記対象工程でのプロセス情報を含む第2プロセスデータを推定するプロセス推定装置であって、前記第1プロセスデータと、前記第1製造装置における前記対象工程後のサンプルから得られる組織データと、前記第1製造装置により製造した材料の特性データとの関係を機械学習し、前記第1プロセスデータと、当該第1プロセスデータに対応する組織データ及び特性データとの相関性を表す第1回帰モデルを作成する第1回帰モデル作成処理部と、前記第2プロセスデータと、前記第2製造装置における前記対象工程後のサンプルから得られる組織データと、前記第2製造装置により製造した材料の特性データとの関係を機械学習し、前記第2プロセスデータと、当該第2プロセスデータに対応する組織データと特性データとの相関性を表す第2回帰モデルを作成する第2回帰モデル作成処理部と、前記第1回帰モデルと前記第2回帰モデルとを基に、前記第1プロセスデータと前記第2プロセスデータの相関性を表す第3回帰モデルを作成する第3回帰モデル作成処理部と、前記第3回帰モデルを用いて、任意の推定元の前記第1プロセスデータである推定元第1プロセスデータに応じた前記第2プロセスデータである推定第2プロセスデータを推定するプロセス推定処理部と、を備えた、プロセス推定装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の樹脂を混練、成形して製造される複合材料に適用可能であり、異なる製造装置であっても再現性よく材料を製造可能なプロセス推定方法及び装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施の形態に係るプロセス推定装置を含むネットワークシステムの概略構成図である。
図2】(a)SPMで得られるSPM画像データの一例を示す図であり、(b)は(a)より抽出した弾性率の頻度分布の一例を示す図である。
図3】分散度データを説明する図である。
図4】第1学習用データの一例を示す図である。
図5】(a)~(d)は、第1~第3回帰モデル作成処理、及びプロセス推定処理を説明する説明図である。
図6】プロセス推定装置の利用方法を説明する図である。
図7】本発明の一実施の形態に係るプロセス推定方法の制御フローを示すフロー図である。
図8】本発明の一実施の形態に係るプロセス推定方法の制御フローを示すフロー図である。
図9】本発明の一実施の形態に係るプロセス推定方法の制御フローを示すフロー図である。
図10】設定処理の制御フローを示すフロー図である。
図11】第1学習用データ取得処理、及び第1学習用データ送信処理の制御フローを示すフロー図である。
図12】組織データ抽出処理の制御フローを示すフロー図である。
図13】第1回帰モデル作成処理の制御フローを示すフロー図である。
図14】第2学習用データ取得処理、及び第2学習用データ送信処理の制御フローを示すフロー図である。
図15】第2回帰モデル作成処理の制御フローを示すフロー図である。
図16】推定元第1プロセスデータ取得処理、及び推定元第1プロセスデータ送信処理の制御フローを示すフロー図である。
図17】プロセス推定処理の制御フローを示すフロー図である。
図18】推定第2プロセスデータ送信処理、及び推定第2プロセスデータ受信処理の制御フローを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0014】
(ネットワークシステム)
図1は、本発明の一実施の形態に係るプロセス推定装置1を含むネットワークシステム100の概略構成図である。図1に示すように、ネットワークシステム100は、第1製造装置210を有する研究サイト200に設けられた研究サイト側データ管理装置220と、第2製造装置310を有する量産サイト300に設けられた量産サイト側データ管理装置320と、プロセス推定装置1とを、ネットワーク101を介して相互に通信可能に接続して構成されている。ネットワーク101としては、例えばインターネットや、専用のイントラネット等を用いることができる。
【0015】
(製造する材料について)
以下の説明では、製造する材料が、複数の樹脂を混練した後に成形して製造される複合材料である場合について説明する。複合材料は、複数の樹脂とフィラー、添加剤等を適宜配合し、混練、成形して製造される材料である。以下の説明では、対象となる複合材料が、電線の被覆材(シース、ジャケット、あるいは絶縁体)である場合について説明する。ここでは、一例として、シースが、特性の異なる2種のEVA(エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂)と、変性ゴムと、難燃性フィラーとからなる場合について説明する。一方のEVA(以下、第1EVAという)としては、酢酸ビニル配合量が17mass%、融点が89℃、ガラス転移温度が-60℃のものを用いた。他方のEVA(以下、第2EVAという)としては、酢酸ビニル配合量が60mass%、ガラス転移温度が-30℃のものを用いた。
【0016】
変性ゴムとしては、DSC法によるガラス転移点(Tg)が-60℃以下である酸変性ポリオレフィン樹脂を用いることができる。本実施の形態における酸変性ポリオレフィンのTgを-60℃以下としたのは-60℃を超えると耐寒性が低下するためである。本実施の形態で用いられる酸変性ポリオレフィン樹脂のポリオレフィン材料としては、超低密度ポリエチレン、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブテン-1共重合体、エチレン-ヘキセン-1共重合体、エチレン-オクテン-1共重合体などが挙げられ、酸としてはマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。これらの酸変性ポリオレフィン樹脂は、単独で使用するほか、併用することもできる。
【0017】
なお、製造する材料は、電線の被覆材に限定されず、複数の樹脂を混練した後に成形して製造される様々な複合材料に適用可能である。また、本発明は、複合材料以外の材料にも適用可能である。例えば、フェライト磁石等の磁性材料にも、本発明は適用可能である。
【0018】
(研究サイト200)
研究サイト200は、新材料の開発を行う研究開発用のサイトであり、少量の材料(ここでは電線の被覆材)を製造可能な小規模な研究設備である第1製造装置210を有している。この研究サイト200で開発した新材料等を、後述する量産サイト300で量産することになる。研究サイト200は、第1製造装置210と、第1製造装置210を制御する第1製造装置用制御装置230と、研究サイト側データ管理装置220と、分析エリア240と、を有している。
【0019】
(第1製造装置210)
上記のように、本実施の形態では、第1製造装置210は、電線の被覆材を製造(試作)する装置となっている。より具体的には、第1製造装置210は、複数の樹脂材料やフィラーを配合する配合装置211と、配合装置211で配合した材料を混練する混練装置212と、混練装置212で混練した材料をシート状に成形するシート成形装置213と、を有している。第1製造装置210では、実際に導体の周囲に被覆材を設けて電線を製造するのではなく、被覆材単体をシート状に成形して試作を行っている。なお、第1製造装置210は図示のものに限定されず、製造する材料に応じた装置で構成されていればよい。
【0020】
第1製造装置210は、各装置211~213の製造条件を示すプロセスデータである第1プロセスデータ61を、第1製造装置用制御装置230に送信可能に構成されている。また、第1製造装置210は、配合装置211で配合する複数の樹脂及びフィラーの組成情報や配合割合の情報等を含む組成データを、第1製造装置用制御装置230に送信可能に構成されていてもよい。なお、組成データについては、後述する入力装置224により直接研究サイト側データ管理装置220に入力するように構成してもよい。第1プロセスデータ61や組成データの具体例については後述する。
【0021】
(分析エリア240、及び組織データ62について)
分析エリア240は、複合材料の「組織」を規定する情報を取得し組織データ62を得るための分析、及び、複合材料の特性(あるいは物性)を評価し特性データ63を得るための分析を行うエリアである。
【0022】
複数の樹脂やフィラーを混合した複合材料では、各樹脂やフィラーの混ざり具合や分散度合が特性に大きな影響を与える。本発明者らが検討したところ、走査型プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscope、以下SPMという)241により得られる弾性率の分布画像、あるいは凝着力(粘着力)の分布画像を用いることで、各樹脂やフィラーを判別することが可能になることが見出された。弾性率と凝着力のいずれの分布画像を用いるかについては、使用する樹脂の特性等に応じて、適宜選択可能である。例えば、使用する樹脂に弾性の差が大きい場合には弾性率の分布画像を用いることができる。なお、弾性率と凝着力の両方の分布画像を用いても構わない。以下、SPM241で得られる画像データ(すなわち、弾性率や凝着力の分布画像)をSPM画像データ65と呼称する。
【0023】
図2(a)は、SPM241で得られるSPM画像データ65の一例を示す図である。図2(a)は、一例として、弾性率の分布画像を示している。図2(a)における符号65aがフィラーであるMg(OH)、符号65bが第1EVA、符号65cが第2EVA、符号65dが変性ゴムを表している。図2に示されるように、SPM画像データ65を用いることで、複合材料を構成する各樹脂65b~65d及びフィラー65aを判別することが可能になる。
【0024】
本実施の形態では、SPM241により得た物性マッピング画像、より詳細には、弾性率の分布画像、あるいは凝着力の分布画像であるSPM画像データ65に基づいて、複合材料を構成する複数の樹脂(及びフィラー)それぞれの面積比を示す面積比データ、及び複数の樹脂それぞれの分散度合を示す分散度データを取得し、これら面積比データと分散度データを組織データ62として用いる。なお、例えばSEM(走査電子顕微鏡)を用いた場合、フィラー部分と樹脂部分とを判別することは可能であるが、樹脂部分の中で複数の樹脂がどのように分布しているかを判別することは困難である。
【0025】
ここで、SPM画像データ65から組織データ62を抽出する具体的な方法について説明しておく。本実施の形態では、この処理(組織データ抽出処理という)は、後述するプロセス推定装置1の組織データ抽出処理部23により行われる。ただし、これに限らず、組織データ抽出処理は、分析エリア240で行われてもよいし、第1製造装置用制御装置230や研究サイト側データ管理装置220で行われてもよい。
【0026】
組織データ抽出処理では、まず、SPM画像データ65の全領域において、各樹脂とフィラーがどのように配置されているか、すなわち、各樹脂とフィラーのそれぞれが占める領域を判別する。ここでは、一例として、SPM画像データ65が弾性率の分布画像である場合について説明する。具体的には、まず、図2(b)に示すように、SPM画像データ65における弾性率の頻度をグラフ化し、ピークとなる弾性率を抽出する。そして、隣り合うピークの中間位置(あるいは頻度が最も低くなる位置)を境界A~Cとして、各樹脂とフィラーのそれぞれに相当する弾性率の範囲を決定する。図2(b)の例では、弾性率が境界A未満の領域がフィラーの領域となり、境界A以上B未満の領域が第1EVAの領域、境界B以上C未満の領域が第2EVAの領域、境界C以上の領域が変性ゴムの領域となる。
【0027】
その後、区分けした各樹脂とフィラーのそれぞれの領域の面積を抽出することで、SPM画像データ65の全領域の面積に対する、各樹脂またはフィラーの領域の面積の比を示すデータである面積比データを取得することができる。なお、各領域の面積の抽出の際には、例えば、抽出対象となる領域と他の領域との間で最もコントラストが大きくなる2次の振幅像(すなわち、2値化した画像)を設定し、当該画像のヒストグラムから、対象となる領域の面積を抽出することができる。
【0028】
分散度データについては、例えば、区間分割法により求めることができる。区間分割法では、例えば図3に示すように、SPM画像データ65を格子状に分割して複数の区間651を形成し、各区間651に存在する各樹脂またはフィラーの粒子(あるいは島)の数の平均値aと標準偏差bとを算出する。そして、下式
X=b/a
より、凝集値Xを求める。この凝集値Xは、大きいほど凝集度が高いことを意味しており、樹脂やフィラーの凝集性(あるいは分散性)を表すパラメータとして分散度データに用いることができる。なお、ここでは粒子の数について平均値aと標準偏差bを求めたが、これに替えて、各区間651に含まれる各樹脂またはフィラーの面積の平均値と標準偏差を用いるようにしてもよい。また、凝集値Xに替えて、あるいは凝集値Xに加えて、標準偏差や分散等を分散度データとして用いてもよい。また、分散度データを求める方法は上記の区間分割法に限らず、例えばボロノイ多角形法等の他の方法を用いることもできる。
【0029】
面積比データや分散度データは、SPM画像データ65を取得する位置によってばらつきがあることが考えられるため、複合材料の異なる位置で取得した複数のSPM画像データ65のそれぞれで面積比データや分散度データを求め、得られた平均値を用いることがより望ましいといえる。さらには、複数のSPM画像データ65のそれぞれで得た面積比や凝集度等を平均化するのではなく、複数のSPM画像データ65で一括して面積比や凝集度等を求めるようにしてもよい。例えば、縦横に3枚ずつ合計9枚のSPM画像データ65を連結して1つの大きなSPM画像データとし、当該SPM画像データを用いて一括して面積比や凝集度等を求めるように構成してもよい。なお、連結するSPM画像データ65は必ずしも現実に隣接した位置である必要はなく、離間した位置のSPM画像データ65同士を連結してもよい。
【0030】
また、組織データ62は、上記の面積比データ、分散度データ以外のデータを含んでいてもよく、分析エリア240にSPM241以外の分析装置が備えられていてもよい。例えば、組織データ62として表面粗さ(算術平均粗さ等)を用いてもよく、表面粗さを検出するためのレーザ顕微鏡等を分析エリア240に備えてもよい。また、走査電子顕微鏡(SEM)ではSPM241と比較してより広い面積での評価ができ局所的なバラつきの影響を抑えることが可能であるため、フィラー等SEMで判別が可能な要素については、SEMで得た画像(SEM像)から面積比データや分散度データを取得するように構成することもできる。
【0031】
さらに、分散している各樹脂の形状がどのような形状であるかによっても、複合材料の特性は変化すると考えらえる。そのため、組織データ62は、各樹脂の形状を表すパラメータを含む形状データを含んでもよい。形状データとしては、例えば、分散されている各樹脂の粒子(あるいは島)の面積を当該粒子の最大辺(あるいは外接円の直径)で除したアスペクト比を用いることができる。例えば、任意の樹脂の各粒子のアスペクト比の平均値、最小値、最大値等を、形状データとして用いることができる。
【0032】
また、分析エリア240には、複合材料の特性を評価し特性データ63を取得するための特性評価装置が備えられている。図示の例では、引張試験装置242および摩耗試験装置243が備えられている場合を示しているが、この他に、必要に応じて、耐熱試験装置、難燃試験装置、絶縁試験装置、屈曲試験装置等が備えられていてもよい。分析エリア240で取得される特性データ63としては、例えば、伸びや引張強度、耐摩耗性、耐熱性、難燃性、絶縁性、耐屈曲性などが挙げられる。
【0033】
分析エリア240で取得されたSPM画像データ65及び特性データ63は、第1製造装置用制御装置230に入力される。例えば、分析エリア240に不図示の分析用のパーソナルコンピュータを備え、そのパーソナルコンピュータから第1製造装置用制御装置230にSPM画像データ65や特性データ63を送信するように構成してもよい。なお、本実施の形態では分析エリア240で取得されたSPM画像データ65や特性データ63が、第1製造装置用制御装置230に入力されるが、研究サイト側データ管理装置220に直接入力されてもよい。
【0034】
(対象工程について)
詳細は後述するが、本実施の形態では、プロセス推定装置1において、第1製造装置210における所定の対象工程でのプロセス情報を含む第1プロセスデータ61と、対象工程後の組織データ62及び特性データ63との相関性を機械学習により学習する。複合材料を製造する場合、対象工程としては、混合工程、混練工程、成形工程の少なくともいずれか1つを選択することができる。このうち、特に、混練工程では、樹脂の混ざり具合に大きく影響するため、混練工程が対象工程の場合、本発明の効果が顕在化しやすい。つまり、第1プロセスデータ61は、少なくとも、混練工程のプロセス情報を含むことが望ましい。なお、後述する押出成形工程は、混練工程と成形工程の両方を含むと解釈することができる。
【0035】
(第1製造装置用制御装置230)
第1製造装置用制御装置230は、第1製造装置210を制御(あるいは管理、監視)する装置であり、例えばパーソナルコンピュータにより構成される。
【0036】
第1製造装置用制御装置230は、第1製造装置210の各装置211~213への製造指示や各種設定を行うと共に、各装置211~213での生産状況の監視や、生産時の各種データの収集等を行う。なお、ここでは各装置211~213に対して1つの第1製造装置用制御装置230を設けているが、これに限らず、各装置211~213にそれぞれ専用の制御装置を設けてもよく、当該専用の制御装置と、第1製造装置用制御装置230との間で各種データの相互通信を可能に構成することも可能である。また、第1製造装置用制御装置230と各装置211~213間で、USBメモリ等の記憶媒体を用いてデータのやり取りを行ってもよい。
【0037】
第1製造装置用制御装置230は、少なくとも混練工程でのプロセス情報(例えば、温度、時間など)を含む第1プロセスデータ61を、第1製造装置210より取得する。なお、第1製造装置用制御装置230が、設定情報や製造指示情報等としてプロセス情報等を自身で保有している場合には、当該保有している情報を第1プロセスデータ61として取得するよう構成してもよい。なお、プロセス情報は第1製造装置210において設定可能な運転条件でもよいし、第1製造装置210に設置された計器類で管理するための条件でもよい。
【0038】
また第1製造装置用制御装置230には、分析エリア240で取得したSPM画像データ65および特性データ63が入力される。なお、ここでは、分析エリア240にて既にSPM画像データ65から組織データ62の抽出が行われている場合には、SPM画像データ65に替えて(あるいは加えて)組織データ62が入力されることになる。また、第1製造装置用制御装置230がSPM画像データ65から組織データ62を抽出する処理を行ってもよい。第1製造装置用制御装置230は、対応する第1プロセスデータ61と、SPM画像データ65(および/または組織データ62)と、特性データ63とを紐づけたデータベースである第1学習用データ41を生成し、研究サイト側データ管理装置220に送信する。
【0039】
(研究サイト側データ管理装置220)
研究サイト側データ管理装置220は、各種設定やデータの入出力処理等を行う制御部221と、記憶部222と、を有している。制御部221は、CPU等の演算素子、メモリ、インターフェイス、ソフトウェア、記憶装置等を適宜組み合わせて実現されている。記憶部222は、メモリや記憶装置の所定の記憶領域により実現されている。
【0040】
また、研究サイト側データ管理装置220には、ディスプレイ等の表示器223とキーボード等の入力装置224とが設けられている。なお、表示器223をタッチパネル方式のものとし、表示器223に入力装置224としての機能を兼ねさせてもよい。さらに、表示器223と入力装置224とは、研究サイト側データ管理装置220と無線通信するように構成されていてもよい。この場合、表示器223及び入力装置224は、例えば、スマートフォンやタブレットにより構成されていてもよい。
【0041】
制御部221は、第1製造装置用制御装置230から第1学習用データ41を受信したとき、当該第1学習用データ41を記憶部222に記憶する。本実施の形態では、組織データ抽出処理をプロセス推定装置1で行うため、記憶部222に記憶される第1学習用データ41は、組織データ62を含んでおらず、SPM画像データ65が含まれた状態となっている。例えば、分析エリア240や第1製造装置用制御装置230等で組織データ抽出処理が行われる場合には、第1学習用データ41には、組織データ62が含まれる。この場合、第1学習用データ41には、SPM画像データ65が含まれなくてもよい。
【0042】
また、制御部221は、第1製造装置用制御装置230から第1学習用データ41を受信したとき、第1学習用データ41が更新されたことを示す第1学習用データ更新信号を、ネットワーク101を介してプロセス推定装置1に送信する。そして、制御部221は、プロセス推定装置1から第1学習用データ要求信号を受信したとき、第1学習用データ41をプロセス推定装置1に送信する。この際の具体的な処理内容については、後述する(第1学習用データ送信処理、図11参照)。
【0043】
また、制御部221は、入力装置224から推定元第1プロセスデータ61aが入力されたとき、推定元第1プロセスデータ61aを記憶部222に記憶すると共に、プロセス推定要求信号をプロセス推定装置1に送信する。そして、制御部221は、プロセス推定装置1から推定元第1プロセス要求信号を受信したとき、推定元第1プロセスデータ61aをプロセス推定装置1に送信する。この際の具体的な処理内容については、後述する(推定元第1プロセスデータ送信処理、図16参照)。なお、推定元第1プロセスデータ61aは、入力装置224以外の装置から入力されてもよい。また、推定元第1プロセスデータ61aは、入力装置224の操作により、記憶部222に記憶された第1学習用データ41から選択されてもよい。
【0044】
(第1学習用データ41)
図4は、第1学習用データ41の一例を示す図である。なお、図4は第1学習用データ41の概念を示すものであり、実際の実験データを記載したものではない。また、図4では、組織データ抽出処理後の組織データ62を含む第1学習用データ41を示している。また、図4では、SPM画像データ65を省略している。
【0045】
図4に示すように、第1学習用データ41は、少なくとも、第1プロセスデータ61と、組織データ62と、特性データ63を対応付けたデータベースである。本実施の形態では、第1学習用データ41は、第1プロセスデータ61、組織データ62、及び特性データ63に加えて、使用した混合材料の組成情報を含む組成データ67と、を含んでおり、これら各データが複合材料を識別するためのIDに紐づけられ記憶されている。
【0046】
組成データ67は、各樹脂(ポリマ)やフィラー、添加剤の配合割合等のデータを含む。第1プロセスデータ61は、各樹脂やフィラーの混ざり具合に影響の大きいパラメータを含むことが望ましく、少なくとも、混練工程の製造条件を含むとよい。具体的には、第1プロセスデータ61は、混練装置212の設定温度(混練開始時の温度)、ロータ回転数、圧力、試料温度(混練終了時の温度)等のパラメータを含むとよい。なお、第1プロセスデータ61は、配合工程や成形工程の製造条件を含んでいてもよい。組織データ62は、図2,3を用いて説明したとおり、各樹脂(ポリマ)及びフィラーの面積比データ及び分散度データを含んでいる。特性データ63は、少なくとも、複合材料の伸びや引張強度を含んでいる。特性データ63は、耐熱試験、低温試験、耐油試験、難燃試験等の試験結果を示すパラメータ等を含んでもよい。
【0047】
(量産サイト300)
量産サイト300は、例えば工場である。量産サイト300は、電線を製造する大規模な量産設備である第2製造装置310を有している。量産サイト300は、上記の研究サイト200と同様に、第2製造装置310と、第2製造装置310を制御する第2製造装置用制御装置330と、量産サイト側データ管理装置320と、分析エリア340と、を有している。
【0048】
(第2製造装置310)
第2製造装置310は、複数の樹脂材料やフィラーを配合する配合装置311と、配合装置311で配合した材料を混練しつつケーブルコアの周囲に押出成形する押出成形装置(押出機)312と、を有している。なお、図1では、複合材料の形成に関わる装置のみを示しているが、第2製造装置310は、撚線を形成する装置など、他の装置を有していてもよい。このように、本実施の形態では、第1製造装置210では混練装置212とシート成形装置213とを用いているのに対して、第2製造装置310では押出成形装置312を用いている。このように方式が異なり、プロセスデータに用いるパラメータが異なる場合であっても、本実施の形態によれば、第1プロセスデータ61に対応する第2プロセスデータ64を推定することが可能である。
【0049】
(分析エリア340)
分析エリア340には、上記の研究サイト200の分析エリア240と同様に、組織データ62を分析するための装置として、SPM画像データ65を取得するためのSPM341が備えられている。そして、特性データ63を取得するための引張試験装置342、摩耗試験装置343等が備えられている。分析エリア340は、上記の研究サイト200の分析エリア240と基本的に同じ構成であるため、詳細な説明を省略する。分析エリア340で取得されたSPM画像データ65及び特性データ63は、第2製造装置用制御装置330に入力される。
【0050】
(第2製造装置用制御装置330)
第2製造装置用制御装置330は、第2製造装置310を制御(あるいは管理、監視)する装置であり、例えばパーソナルコンピュータにより構成される。第2製造装置用制御装置330は、上記の研究サイト200の第1製造装置用制御装置230と基本的に同じものである。
【0051】
本実施の形態では、第2製造装置用制御装置330は、混練を含む押出成形時のプロセス情報(例えば、温度、時間など)を含む第2プロセスデータ64を、第2製造装置310より取得する。なお、第2製造装置用制御装置330が、設定情報や製造指示情報等としてプロセス情報等を自身で保有している場合には、当該保有している情報を第2プロセスデータ64として取得するよう構成してもよい。なお、プロセス情報は第2製造装置310において設定可能な運転条件でもよいし、第2製造装置310に設置された計器類で管理するための条件でもよい。
【0052】
また第2製造装置用制御装置330には、分析エリア340で取得したSPM画像データ65及び特性データ63が入力される。第2製造装置用制御装置330は、対応する第2プロセスデータ64と、SPM画像データ65と、特性データ63とを紐づけたデータベースである第2学習用データ42を生成し、量産サイト側データ管理装置320に送信する。なお、分析エリア340や第2製造装置用制御装置330等で組織データ抽出処理を行う場合、第2学習用データ42には、SPM画像データ65に替えて(あるいは加えて)、抽出した組織データ62が含まれる。
【0053】
(量産サイト側データ管理装置320)
量産サイト側データ管理装置320は、各種設定やデータの入出力処理等を行う制御部321と、記憶部322と、を有している。制御部321は、CPU等の演算素子、メモリ、インターフェイス、ソフトウェア、記憶装置等を適宜組み合わせて実現されている。記憶部322は、メモリや記憶装置の所定の記憶領域により実現されている。
【0054】
また、量産サイト側データ管理装置320には、ディスプレイ等の表示器323とキーボード等の入力装置324とが設けられている。なお、表示器323をタッチパネル方式のものとし、表示器323に入力装置324としての機能を兼ねさせてもよい。さらに、表示器323と入力装置324とは、量産サイト側データ管理装置320と無線通信するように構成されていてもよい。この場合、表示器323及び入力装置324は、例えば、スマートフォンやタブレットにより構成されていてもよい。
【0055】
制御部321は、第2製造装置用制御装置330から第2学習用データ42を受信したとき、当該第2学習用データ42を記憶部322に記憶すると共に、第2学習用データ42が更新されたことを示す第2学習用データ更新信号を、ネットワーク101を介してプロセス推定装置1に送信する。そして、制御部321は、プロセス推定装置1から第2学習用データ要求信号を受信したとき、第2学習用データ42をプロセス推定装置1に送信する。この際の具体的な処理内容については、後述する(第2学習用データ送信処理、図14参照)。
【0056】
また、制御部321は、プロセス推定装置1から推定第2プロセスデータ64aを受信したとき、受信した推定第2プロセスデータ64aを記憶部322に記憶する(推定第2プロセスデータ受信処理、図18参照)。そして、制御部321は、受信した推定第2プロセスデータ64aを表示器323に表示する。第2製造装置310の管理者は、表示器323に表示された推定第2プロセスデータ64aを確認し、量産試験(試験製造)の際に、推定第2プロセスデータ64aを第2製造装置用制御装置330へと送信する。推定第2プロセスデータ64aを受信した第2製造装置用制御装置330は、第2製造装置310に対して推定第2プロセスデータ64aに応じた製造指示を行い、製造試験を実施することになる。製造試験の結果を受けた補正等については、後述する。
【0057】
(プロセス推定装置1)
プロセス推定装置1は、つまり、第1プロセスデータ61を基に、対応する第2プロセスデータ64を推定する装置である。以下、推定元の第1プロセスデータ61を推定元第1プロセスデータ61aと呼称し、推定された第2プロセスデータ64を推定第2プロセスデータ64aと呼称する。これにより、推定第2プロセスデータ64aを用いて第2製造装置310で製造を行うことで、推定元第1プロセスデータ61aを用いて第1製造装置210で製造した複合材料(ここでは電線の被覆材)を、第2製造装置310で再現して製造することが可能になる。以下、その詳細について説明する。
【0058】
プロセス推定装置1は、例えばサーバ等のネットワーク装置であり、制御部2と、記憶部3と、を有している。プロセス推定装置1の制御部2は、CPU等の演算素子、メモリ、インターフェイス、ソフトウェア、記憶装置等を適宜組み合わせて実現されている。記憶部3は、メモリや記憶装置の所定の記憶領域により実現されている。
【0059】
制御部2は、設定処理部21、学習用データ取得処理部22、組織データ抽出処理部23、第1回帰モデル作成処理部24、第2回帰モデル作成処理部25、第3回帰モデル作成処理部26、推定元第1プロセスデータ取得処理部27、プロセス推定処理部28、及び推定第2プロセスデータ送信処理部29を有している。
【0060】
記憶部3には、研究サイト側データ管理装置220から受信した第1学習用データ41、及び、量産サイト側データ管理装置320から受信した第2学習用データ42が記憶されている。第1学習用データ41は、第1回帰モデル作成処理部24による第1回帰モデル43作成の機械学習のために用いられ、第2学習用データ42は、第2回帰モデル作成処理部25による第2回帰モデル44作成の機械学習のために用いられる。また、これら第1学習用データ41及び第2学習用データ42に含まれるSPM画像データ65は、組織データ62を抽出する組織データ抽出処理に用いられる。そして、第1学習用データ41及び第2学習用データ42に含まれる組織データ62は、組織データ抽出処理によりSPM画像データ65から抽出されたデータである。
【0061】
さらに、記憶部3には、第1~第3回帰モデル作成処理部24~26により作成された第1~第3回帰モデル43~45が記憶されている。また、記憶部3には、研究サイト側データ管理装置220から受信した推定元第1プロセスデータ61a、及び、プロセス推定処理部28による推定で得られた推定第2プロセスデータ64aが記憶されている。
【0062】
(設定処理部21)
設定処理部21は、プロセス推定装置1の各種設定を行うための設定処理(図10参照)を行うものである。設定処理部21では、例えば、学習用データ取得処理部22によるデータ取得の方法やデータ取得日時の設定等、各種制御に係る情報の設定を行うことができる。また、設定処理部21では、記憶部3に記憶する各種情報の登録・更新・削除等が可能である。各種情報の入力等には、不図示の入力装置、あるいは研究サイト200や量産サイト300に設けられた入力装置224,324等を用いることができる。
【0063】
(学習用データ取得処理部22)
学習用データ取得処理部22は、研究サイト側データ管理装置220から第1学習用データ41を取得する第1学習用データ取得処理(図11参照)と、量産サイト側データ管理装置320から第2学習用データ42を取得する第2学習用データ取得処理(図14参照)とを行うものである。
【0064】
学習用データ取得処理部22は、研究サイト側データ管理装置220から第1学習用データ更新信号を受信したとき、第1学習用データ取得処理を行う。第1学習用データ取得処理では、学習用データ取得処理部22は、研究サイト側データ管理装置220に第1学習用データ41を要求する第1学習用データ要求信号を送信し、これに応じて研究サイト側データ管理装置220から送信された第1学習用データ41を受信して、記憶部3に記憶する。
【0065】
また、学習用データ取得処理部22は、量産サイト側データ管理装置320から第2学習用データ更新信号を受信したとき、第2学習用データ取得処理を行う。第2学習用データ取得処理では、学習用データ取得処理部22は、量産サイト側データ管理装置320に第2学習用データ42を要求する第2学習用データ要求信号を送信し、これに応じて量産サイト側データ管理装置320から送信された第2学習用データ42を受信して、記憶部3に記憶する。
【0066】
(組織データ抽出処理部23)
組織データ抽出処理部23は、学習用データ取得処理部22で受信した第1学習用データ41や第2学習用データ42に含まれるSPM画像データ65を基に、組織データ62を抽出する組織データ抽出処理(図12参照)を行う。具体的には、図2(b)を用いて説明したように、SPM画像データ65から各樹脂とフィラーのそれぞれに相当する領域を決定し、それぞれの領域の面積比(全体の面積に対する各領域の面積の比)として面積比データを求める。そして、図3を用いて説明したように、区間分割法等を用いて各樹脂およびフィラーの凝集度を分散度データとして求める。求めた面積比データ及び分散度データを含む組織データ62は、抽出元のSPM画像データ65が含まれる第1学習用データ41または第2学習用データ42内に記憶される。
【0067】
(第1回帰モデル作成処理部24)
第1回帰モデル作成処理部24は、第1製造装置210の製造データより、第1プロセスデータ61と、対象工程後のサンプルから得られる組織データ62と、第1製造装置210により製造した複合材料の特性データ63との関係を機械学習する。なお、本実施の形態では、第1製造装置210により製造した複合材料のサンプルより、組織データ62と特性データ63の両者を得ている。そして、第1回帰モデル作成処理部24は、機械学習の結果を基に、第1プロセスデータ61と、当該第1プロセスデータ61に対応する組織データ62及び特性データ63との相関性を表す第1回帰モデル43を作成する第1回帰モデル作成処理(図13参照)を行う。
【0068】
図5(a)に示すように、第1回帰モデル作成処理では、第1回帰モデル作成処理部24に、第1製造装置210の過去の製造データである第1学習用データ41が入力される。第1回帰モデル作成処理部24は、第1学習用データ41より、第1プロセスデータ61の各パラメータ(例えば、温度、時間等)に対する組織データ62及び特性データ63の各パラメータ(面積比データや分散度データ、及び、引張強度や耐摩耗性など)の相関性を、機械学習により自ら学習するための学習アルゴリズム等のソフトウェアを含んでいる。学習アルゴリズムは特に限定されず、公知の学習アルゴリズムを用いることができ、例えば、3層以上の層をなすニューラルネットワークを用いた所謂ディープランニング等を用いることができる。第1回帰モデル作成処理部24が学習するものは、第1プロセスデータ61(すなわち第1製造装置210での製造条件)と、対象工程後の組織データ62(すなわち、複合材料での樹脂の混ざり具合)と特性データ63(すなわち複合材料の性能)との相関性を表すモデル構造に相当する。
【0069】
第1回帰モデル作成処理部24は、入力された第1学習用データ41を基に、説明変数(第1プロセスデータ61)と目的変数(組織データ62及び特性データ63)とを含むデータ集合に基づく学習を反復実行し、両者の相関性を自動的に解釈する。なお、学習の開始時には相関性は未知の状態であるが、学習を進めるに従って説明変数(第1プロセスデータ61)に対する目的変数(組織データ62及び特性データ63)の相関性を徐々に解釈し、その結果として得られた学習済みモデルである第1回帰モデル43を用いることで、説明変数(第1プロセスデータ61)に対する目的変数(組織データ62及び特性データ63)の相関性を解釈可能になる。
【0070】
第1回帰モデル作成処理部24は、作成した第1回帰モデル43を記憶部3に記憶する。本実施の形態では、第1回帰モデル作成処理部24は、第1学習用データ41が更新される度に、第1回帰モデル43を更新する。ただし、これに限らず、例えば後述するプロセス推定処理を実行する際に、第1学習用データ41の更新分をまとめて学習し、第1回帰モデル43を更新するようにしてもよい。
【0071】
(第2回帰モデル作成処理部25)
第2回帰モデル作成処理部25は、第2製造装置310の製造データより、第2プロセスデータ64と、対象工程後のサンプルから得られる組織データ62と、第2製造装置310により製造した複合材料の特性データ63との関係を機械学習する。なお、本実施の形態では、第2製造装置310により製造した複合材料のサンプルより、組織データ62と特性データ63の両者を得ている。そして、第2回帰モデル作成処理部25は、機械学習の結果を基に、第2プロセスデータ64と、当該第2プロセスデータ64に対応する組織データ62及び特性データ63との相関性を表す第2回帰モデル44を作成する第2回帰モデル作成処理(図15参照)を行う。
【0072】
図5(b)に示すように、第2回帰モデル作成処理では、第2回帰モデル作成処理部25に、第2製造装置310の過去の製造データである第2学習用データ42が入力される。そして、第2回帰モデル作成処理部25は、上記の第1回帰モデル作成処理部24と同様に、入力された第2学習用データ42を基に、説明変数(第2プロセスデータ64)と目的変数(組織データ62及び特性データ63)とを含むデータ集合に基づく学習を反復実行し、両者の相関性を自動的に解釈して、その結果として得られた学習済みモデルとして第2回帰モデル44を作成する。
【0073】
第2回帰モデル作成処理部25は、作成した第2回帰モデル44を記憶部3に記憶する。本実施の形態では、第2回帰モデル作成処理部25は、第2学習用データ42が更新される度に、第2回帰モデル44を更新する。ただし、これに限らず、例えば後述するプロセス推定処理を実行する際に、第2学習用データ42の更新分をまとめて学習し、第2回帰モデル44を更新するようにしてもよい。
【0074】
(第3回帰モデル作成処理部26)
第3回帰モデル作成処理部26は、第1回帰モデル43と第2回帰モデル44とを基に、第1プロセスデータ61と第2プロセスデータ64の相関性を表す第3回帰モデル45を作成する第3回帰モデル作成処理を行う。
【0075】
図5(c)に示すように、第3回帰モデル作成処理では、第3回帰モデル作成処理部26に、第1回帰モデル43と第2回帰モデル44とが入力される。そして、これら第1回帰モデル43と第2回帰モデル44とを基に、組織データ62及び特性データ63を仲介として、第1プロセスデータ61と第2プロセスデータ64との相関性を表す第3回帰モデル45を作成する。
【0076】
より具体的には、図6(a),(b)に示すように、例えば、組織データ62及び特性データ63の任意のパラメータZa,Zbと、第1プロセスデータ61のパラメータa,bとの関係が、第1回帰モデル43において、Za=f(a,b)、Zb=g(a,b)で表されたとする。そして、組織データ62及び特性データ63の上記と同じパラメータZa,Zbと、第2プロセスデータ64のパラメータx,yとの関係が、第2回帰モデル44において、Za=f’(x,y)、Zb=g’(x,y)で表されたとする。そうすると、これら4つの式をパラメータZa,Zbを仲介として整理することで、x=f”(a,b)、y=g”(a,b)として、第1プロセスデータ61と第2プロセスデータ64との相関性を表す第3回帰モデル45が得られる。このように、第3回帰モデル作成処理部26は、第1回帰モデル43と第2回帰モデル44とを組み合わせることで、第1プロセスデータ61と第2プロセスデータ64の相関性を表す第3回帰モデル45を作成する。
【0077】
第3回帰モデル作成処理部26は、作成した第3回帰モデル45を記憶部3に記憶する。本実施の形態では、第3回帰モデル作成処理部26は、第1回帰モデル43と第2回帰モデル44のいずれかが更新されたときに、第3回帰モデル45を更新する。ただし、これに限らず、例えば、後述するプロセス推定処理を実行する際に、第3回帰モデル45を更新するようにしてもよい。
【0078】
(推定元第1プロセスデータ取得処理部27)
推定元第1プロセスデータ取得処理部27は、研究サイト側データ管理装置220から推定元第1プロセスデータ61aを取得する推定元第1プロセスデータ取得処理(図16参照)を行う。推定元第1プロセスデータ取得処理部27は、研究サイト側データ管理装置220からプロセス推定要求信号を受信したとき、推定元第1プロセスデータ取得処理を行う。推定元第1プロセスデータ取得処理では、推定元第1プロセスデータ取得処理部27は、研究サイト側データ管理装置220に推定元第1プロセスデータ要求信号を送信し、それに応じて研究サイト側データ管理装置220から送信された推定元第1プロセスデータ61aを受信し、記憶部3に記憶する。
【0079】
(プロセス推定処理部28)
プロセス推定処理部28は、第3回帰モデル45を用いて、任意の推定元の第1プロセスデータ61(推定元第1プロセスデータ61a)に応じた第2プロセスデータ64(推定第2プロセスデータ64a)を推定するプロセス推定処理(図17参照)を行う。
【0080】
図5(d)に示すように、プロセス推定処理では、プロセス推定処理部28に、第3回帰モデル45と、推定元第1プロセスデータ61aとが入力される。プロセス推定処理部28は、第3回帰モデル45を用いて、推定元第1プロセスデータ61aに対応した第2プロセスデータ64を求め、得られた第2プロセスデータ64を推定第2プロセスデータ64aとする。そして、プロセス推定処理部28は、得られた推定第2プロセスデータ64aを記憶部3に記憶する。
【0081】
ここで得られた推定第2プロセスデータ64aは、第1製造装置210で推定元第1プロセスデータ61aの製造条件で製造した材料(ここでは電線の被覆材)と同じ材料を、第2製造装置310で再現可能な製造条件となる。
【0082】
(推定第2プロセスデータ送信処理部29)
推定第2プロセスデータ送信処理部29は、推定第2プロセスデータ64aを量産サイト側データ管理装置320に送信する推定第2プロセスデータ送信処理(図18参照)を行う。
【0083】
(プロセス推定装置1の利用方法)
ここで、本実施の形態に係るプロセス推定装置1の利用方法の一例について説明しておく。
【0084】
プロセス推定装置1では、2つの製造装置210,310間で、予め第3回帰モデル45を作成しておけば、一方の製造装置210(または310)で所望の特性の材料が製造できたときに、当該一方の製造装置210(または310)でのプロセスデータ(ここでは推定元第1プロセスデータ61a)を基に、他方の製造装置310(または210)でのプロセスデータ(ここでは推定第2プロセスデータ64a)を推定することができる。そして、得られたプロセスデータ(ここでは推定第2プロセスデータ64a)により他方の製造装置310(または210)で製造を行うことで、高い再現性で同様の特性の材料を製造することが可能になる。
【0085】
ここで、一例として、図6(a)に示すように、研究設備である第1製造装置210を用いて、第2製造装置310で製造したことのない新材料を開発したとする。この場合、第2製造装置310では製造実績がないので、新材料に関する第2学習用データ42は存在しておらず、当該新材料についての第2回帰モデル44は存在していないことになる。しかし、予め第3回帰モデル45を作成しておけば、このような場合であっても、推定元第1プロセスデータ61aに対応する推定第2プロセスデータ64aを推定することができる。なお、このような例では、過去の製造データとは大きく異なる原料を用いる場合などは、推定した推定第2プロセスデータ64aの精度が低くなることが想定される。しかし、製造実績がない第2製造装置310での製造条件を、おおよそ推定することが可能である。
【0086】
量産設備である第2製造装置310では、生産量が多く、大量の材料を使用するため、量産にあたっての試験回数(実験回数)を減らしてなるべく無駄を減らしたいという要求がある。本実施の形態によれば、新材料であってもおおよその製造条件を推定することが可能であり、量産に最適な製造条件を検討するための試験回数を低減し、コストの低減を図ることが可能になる。
【0087】
このように、第1製造装置210が研究設備、かつ、第2製造装置310が量産設備であり、研究設備で製造した材料を量産設備で再現すべく、第3回帰モデル45を用いて、研究設備で再現対象となる材料を製造した際の第1プロセスデータ61から、量産設備で再現対象となる材料を製造するための第2プロセスデータ64を推定するようにしてもよい。
【0088】
(組成データ67の機械学習への使用)
上記のような新材料の開発の際の推定精度を向上させるために、第1及び第2回帰モデル43,44は、組成データ67(図4参照)を考慮して作成されることがより望ましいといえる。つまり、第1回帰モデル43は、第1プロセスデータ61と組織データ62と特性データ63とに加えて、材料の組成情報を含む組成データ67との関係を機械学習して作成されることがより望ましい。この場合、第1回帰モデル43は、第1プロセスデータ61と組織データ62と組成データ67との相関性を表すように作成されることになる。また、この場合、第1学習用データ41に組成データ67を含める必要がある。
【0089】
同様に、第2回帰モデル44は、第2プロセスデータ64と組織データ62とに加えて、材料の組成情報を含む組成データ67との関係を機械学習して作成されてもよい。この場合、第2回帰モデル44は、第2プロセスデータ64と組織データ62と組成データとの相関性を表すように作成されることになる。また、この場合、第2学習用データ42に組成データ67を含める必要がある。
【0090】
(推定第2プロセスデータ64aの補正)
図6(a)で説明したような新材料の開発においては、推定第2プロセスデータ64aはおおよその製造条件となるため、その後の製造試験の結果を考慮して、推定第2プロセスデータ64aの各パラメータを補正するよう構成することも可能である。すなわち、プロセス推定装置1は、第2製造装置310で推定第2プロセスデータ64aにより製造試験を行った際の試験結果に基づき、推定第2プロセスデータ64aを補正する補正処理部をさらに備えてもよい。
【0091】
補正処理部を備えることより、例えば、各回帰モデル43~45が新材料に十分に対応していない状況(量産前で十分なデータがなく、機械学習が十分に行われていない状況)であっても、第1製造装置210での第1プロセスデータ61(推定元第1プロセスデータ61a)に対応する、第2製造装置310での第2プロセスデータ64(推定第2プロセスデータ64a)を精度よく推定することが可能になる。その結果、量産設備で高い再現性で材料を製造可能になり、製造試験の回数を低減してコストの低減や、開発から量産化までの期間短縮を図ることができる。
【0092】
(プロセス推定装置1の他の利用方法)
本実施の形態では、研究設備でのプロセスデータから、量産設備でのプロセスデータを推定した。ただし、これに限らず、例えば上記とは逆に、量産設備でのプロセスデータから、研究設備でのプロセスデータを推定することも当然に可能である。この場合、図6(b)に示すように、例えば、量産設備と研究設備間で予め第3回帰モデル45を作成しておけば、量産設備で量産が可能な条件となるプロセスデータ(推定元第1プロセスデータ61aに相当)に対応する、研究設備側でのプロセスデータ(推定第2プロセスデータ64aに相当)を推定することが可能になる。
【0093】
例えば、研究設備側で材料の開発を行った場合であっても、その製造条件が、量産設備で量産することが不可能な製造条件(例えば図6(b)に×で示される条件)であった場合、当該材料の開発は無駄になってしまうおそれが生じる。図6(b)のように、量産設備で量産が可能な条件となるプロセスデータに対応する、研究設備側でのプロセスデータを得ておくことで、得られたプロセスデータの範囲内の製造条件(実験条件)で開発を行えば、量産できないといった不具合が生じることなく、無駄なく材料の開発を行うことが可能になる。
【0094】
このように、第1製造装置210が量産設備、かつ、第2製造装置310が研究設備であり、第3回帰モデル45を用いて、量産設備で量産可能な条件を表す第1プロセスデータ61から、これに対応した研究設備での実験条件となる第2プロセスデータ64を推定するようにしてもよい。
【0095】
なお、第1及び第2製造装置210,310は、研究設備や量産設備に限定されない。例えば、第1及び第2製造装置210,310は、同一の工場の異なる生産ライン(製造装置)であってもよい。
【0096】
(プロセス推定方法)
(メインルーチン)
図7~9は、本実施の形態に係るはプロセス推定方法の制御フローを示すフロー図である。なお、図7~9、及び後述する図10~18において、実線で示す矢印は、制御の流れを表しており、破線で示す矢印は、信号やデータの入出力を表している。
【0097】
図7に示すように、研究サイト側データ管理装置220は、例えば、第1学習用データ41を取得する第1学習用データ取得処理を行う日時(第1データ取得日時)の設定等を行う際に、プロセス推定装置1に設定信号を送信する(ステップS100)。同様に、量産サイト側データ管理装置320は、例えば、第2学習用データ42を取得する第2学習用データ取得処理を行う日時(第2データ取得日時)の設定等を行う際に、プロセス推定装置1に設定信号を送信する(ステップS300)。
【0098】
プロセス推定装置1の設定処理部21は、ステップS201にて、設定信号が入力されたかを判定し、YES(Y)と判定された場合、ステップS202にて設定処理を実行する。設定処理の詳細については後述する。ステップS201でNO(N)と判定された場合、ステップS203に進む。
【0099】
研究サイト側データ管理装置220は、第1学習用データ41が更新された際に、第1学習用データ更新信号をプロセス推定装置1に送信する(ステップS101)。プロセス推定装置1の学習用データ取得処理部22は、ステップS203にて、第1学習用データ更新信号が入力されたかを判定する。ステップS203でYESと判定された場合、ステップS205に進む。ステップS203でNOと判定された場合、学習用データ取得処理部22は、ステップS204にて、現在の日時が第1データ取得日時であるかを判定する。ステップS204でYESと判定された場合、ステップS205に進む。ステップS204でNOと判定された場合、図8のステップS207に進む。
【0100】
ステップS205では学習用データ取得処理部22が、第1学習用データ取得処理を行う。第1学習用データ取得処理については後述する。その後、ステップS217にて、組織データ抽出処理部23が、組織データ抽出処理を行う。組織データ抽出処理については後述する。その後、ステップS206にて、第1回帰モデル作成処理部24が、第1回帰モデル作成処理を行う。第1回帰モデル作成処理については後述する。その後、図8のステップS207に進む。
【0101】
図8に示すように、量産サイト側データ管理装置320は、第2学習用データ42が更新された際に、第2学習用データ更新信号をプロセス推定装置1に送信する(ステップS301)。プロセス推定装置1の学習用データ取得処理部22は、ステップS207にて、第2学習用データ更新信号が入力されたかを判定する。ステップS207でYESと判定された場合、ステップS209に進む。ステップS207でNOと判定された場合、学習用データ取得処理部22は、ステップS208にて、現在の日時が第2データ取得日時であるかを判定する。ステップS208でYESと判定された場合、ステップS209に進む。ステップS207でNOと判定された場合、ステップS211に進む。
【0102】
ステップS209では学習用データ取得処理部22が、第2学習用データ取得処理を行う。第2学習用データ取得処理については後述する。その後、ステップS218にて、組織データ抽出処理部23が、組織データ抽出処理を行う。組織データ抽出処理については後述する。その後、ステップS210にて、第2回帰モデル作成処理部25が、第2回帰モデル作成処理を行う。第2回帰モデル作成処理については後述する。その後、ステップS211に進む。
【0103】
ステップS211では、第3回帰モデル作成処理部26が、第1回帰モデル43と第2回帰モデル44のいずれかが更新されたかを判定する。ステップS211でYESと判定された場合、ステップS212にて、第3回帰モデル作成処理部26が第3回帰モデル作成処理を行う。ステップS212第3回帰モデル作成処理では、記憶部3に記憶された第1回帰モデル43と第2回帰モデル44とを基に、第1プロセスデータ61と第2プロセスデータ64との相関性を表す第3回帰モデル45を作成し、作成した第3回帰モデル45を記憶部3に記憶する。その後、図9のステップS213に進む。ステップS211でNOと判定された場合、第3回帰モデル作成処理を行わずに図9のステップS213に進む。
【0104】
図9に示すように、研究サイト側データ管理装置220は、推定元第1プロセスデータ61aから対応する推定第2プロセスデータ64aを推定するプロセス推定を行うとき、プロセス推定装置1にプロセス推定要求信号を送信する。プロセス推定装置1の推定元第1プロセスデータ取得処理部27は、ステップS213にて、プロセス推定要求信号が入力されたかを判定する。ステップS213にてNOと判定された場合、リターンする。ステップS213にてYESと判定された場合、ステップS214にて、推定元第1プロセスデータ取得処理部27が、推定元第1プロセスデータ取得処理を行う。推定元第1プロセスデータ取得処理については後述する。
【0105】
その後、ステップS215にて、プロセス推定処理部28が、プロセス推定処理を行う。その後、ステップS216にて、推定第2プロセスデータ送信処理部29が、推定第2プロセスデータ送信処理を行う。プロセス推定処理及び推定第2プロセスデータ送信処理については後述する。その後、リターンする。
【0106】
(設定処理)
図10に示すように、ステップS202の設定処理では、まず、研究サイト側データ管理装置220あるいは量産サイト側データ管理装置320で入力された設定データが、プロセス推定装置1に送信される(ステップS120、S320)。プロセス推定装置1の設定処理部21は、受信した設定データに応じて、各種の設定を行う(ステップS221)。その後、ステップS221での各種の設定に伴い、データ更新処理等の適宜な処理を行い(ステップS222)、リターンする。
【0107】
(第1学習用データ取得処理)
図11に示すように、ステップS205の第1学習用データ取得処理では、まず、プロセス推定装置1の学習用データ取得処理部22が、研究サイト側データ管理装置220に、第1学習用データ41を要求する第1学習用データ要求信号を送信する(ステップS231)。
【0108】
研究サイト側データ管理装置220では、第1学習用データ取得処理と並行して、ステップS102の第1学習用データ送信処理が行われている。この第1学習用データ送信処理において、研究サイト側データ管理装置220は、まず、ステップS131にて、プロセス推定装置1から第1学習用データ要求信号が入力されたかを判定する。ステップS131でNOと判定された場合、リターンする。ステップS131でYESと判定された場合、ステップS132にて、記憶部222に、未送信の第1学習用データ41が存在するかを判定する。なお、第1学習用データ41が未送信であるか送信済みであるかの識別は、例えば、データベース上に識別子を付したり、あるいは、送信済みと未送信とでデータベースを分割しておき、未送信の第1学習用データ41を送信した際に、送信した第1学習用データ41を送信済みのデータベースに統合したりするなど、種々の方法で識別することができる。
【0109】
ステップS132にてNOと判定された場合、ステップS133にてプロセス推定装置1に送信済信号を送信した後、リターンする。ステップS132にてYESと判定された場合、ステップS134にて、未送信の第1学習用データ41(第1プロセスデータ61及び組織データ62)をプロセス推定装置1に送信する。その後、ステップS135にて、研究サイト側データ管理装置220は、送信した第1学習用データ41を送信済みとした後、リターンする。なお、送信済みの第1学習用データ41については、圧縮や所定期間経過後の削除等の処理が適宜なされてもよい。
【0110】
第1学習用データ取得処理に戻り、学習用データ取得処理部22は、ステップS231で第1学習用データ要求信号を送信した後、ステップS232にて、送信済信号が入力されたかを判定する。ステップS232にてYESと判定された場合、新たな第1学習用データ41が存在しないことになるため、リターンする。
【0111】
ステップS232にてNOと判定された場合、研究サイト側データ管理装置220から第1学習用データ41を受信した後、ステップS233にて、学習用データ取得処理部22が、受信した第1学習用データ41を記憶部3に記憶する。本実施の形態では、送信済みの第1学習用データ41の送受信のみが行われるため、ステップS233では、受信した第1学習用データ41を、記憶部3に記憶された第1学習用データ41に統合して第1学習用データ41の更新が行われる。なお、ステップS233では、機械学習に必要なデータのみを抽出する処理等を適宜おこなってもよい。その後、リターンする。
【0112】
(組織データ抽出処理)
図12に示すように、ステップS217,S218の組織データ抽出処理では、まず、ステップS234にて、SPM画像データ65における各樹脂とフィラー各々の領域を決定する。具体的には、SPM画像データ65における弾性率等の頻度をグラフ化し、ピークとなる弾性率等を抽出すると共に、隣り合うピークの中間位置(あるいは頻度が最も低くなる位置)を境界として、各樹脂とフィラーの各々に相当する弾性率等の範囲を決定する(図2参照)。
【0113】
その後、ステップS235にて、各樹脂とフィラーのそれぞれの領域の面積を抽出し、ステップS236にて、SPM画像データ65の全領域の面積に対する、各樹脂またはフィラーの領域の面積の比である面積比を演算する。その後、ステップS237にて、ステップS236で求めた面積比を面積比データとして記憶部3に記憶する。
【0114】
その後、ステップS238にて、各樹脂とフィラー各々について、区間分割法により凝集度を求め(図3参照)、求めた凝集度を分散度データとして記憶部3に記憶する。その後、リターンする。なお、図示していないが、組織データ抽出処理と併せて、樹脂やフィラーの各粒子のアスペクト比等の形状データの抽出を行ってもよい。
【0115】
(第1回帰モデル作成処理)
図13に示すように、ステップS206の第1回帰モデル作成処理では、まず、ステップS241にて、プロセス推定装置1の第1回帰モデル作成処理部24が、記憶部3に未学習の第1学習用データ41が存在するかを判定する。換言すれば、ステップS241では、第1学習用データ41が更新されているかを判定する。ステップS241にてNOと判定された場合、リターンする。ステップS241にてYESと判定された場合、ステップS242にて、第1回帰モデル作成処理部24が、未学習の第1学習用データ41を機械学習に用いて、第1回帰モデル43の更新を行う。なお、ステップS242では、第1回帰モデル43が未作成である場合には、第1回帰モデル43が新たに作成される。その後、ステップS243にて、更新(あるいは作成)した第1回帰モデル43を記憶部3に記憶し、リターンする。
【0116】
(第2学習用データ取得処理)
図14に示すように、ステップS209の第2学習用データ取得処理では、まず、プロセス推定装置1の学習用データ取得処理部22が、量産サイト側データ管理装置320に、第2学習用データ42を要求する第2学習用データ要求信号を送信する(ステップS251)。
【0117】
量産サイト側データ管理装置320では、第2学習用データ取得処理と並行して、ステップS302の第2学習用データ送信処理が行われている。この第2学習用データ送信処理において、量産サイト側データ管理装置320は、まず、ステップS351にて、プロセス推定装置1から第2学習用データ要求信号が入力されたかを判定する。ステップS351でNOと判定された場合、リターンする。ステップS351でYESと判定された場合、ステップS352にて、記憶部322に、未送信の第2学習用データ42が存在するかを判定する。なお、上記の第1学習用データ41と同様に、第2学習用データ42が未送信であるか送信済みであるかの識別は、例えば、データベース上に識別子を付したり、あるいは、送信済みと未送信とでデータベースを分割しておき、未送信の第2学習用データ42を送信した際に、送信した第2学習用データ42を送信済みのデータベースに統合したりするなど、種々の方法で識別することができる。
【0118】
ステップS352にてNOと判定された場合、ステップS353にてプロセス推定装置1に送信済信号を送信した後、リターンする。ステップS352にてYESと判定された場合、ステップS354にて、未送信の第2学習用データ42(第2プロセスデータ64及び組織データ62)をプロセス推定装置1に送信する。その後、ステップS355にて、量産サイト側データ管理装置320は、送信した第2学習用データ42を送信済みとした後、リターンする。なお、送信済みの第2学習用データ42については、圧縮や所定期間経過後の削除等の処理が適宜なされてもよい。
【0119】
第2学習用データ取得処理に戻り、学習用データ取得処理部22は、ステップS251で第2学習用データ要求信号を送信した後、ステップS252にて、送信済信号が入力されたかを判定する。ステップS252にてYESと判定された場合、新たな第2学習用データ42が存在しないことになるため、リターンする。
【0120】
ステップS252にてNOと判定された場合、量産サイト側データ管理装置320から第2学習用データ42を受信した後、ステップS253にて、学習用データ取得処理部22が、受信した第2学習用データ42を記憶部3に記憶する。本実施の形態では、送信済みの第2学習用データ42の送受信のみが行われるため、ステップS253では、受信した第2学習用データ42を、記憶部3に記憶された第2学習用データ42に統合して第2学習用データ42の更新が行われる。なお、ステップS253では、機械学習に必要なデータのみを抽出する処理等を適宜おこなってもよい。その後、リターンする。
【0121】
(第2回帰モデル作成処理)
図15に示すように、ステップS210の第2回帰モデル作成処理では、まず、ステップS261にて、プロセス推定装置1の第2回帰モデル作成処理部25が、記憶部3に未学習の第2学習用データ42が存在するかを判定する。換言すれば、ステップS261では、第2学習用データ42が更新されているかを判定する。ステップS261にてNOと判定された場合、リターンする。ステップS261にてYESと判定された場合、ステップS262にて、第2回帰モデル作成処理部25が、未学習の第2学習用データ42を機械学習に用いて、第2回帰モデル44の更新を行う。なお、ステップS262では、第2回帰モデル44が未作成である場合には、第2回帰モデル44が新たに作成される。その後、ステップS263にて、更新(あるいは作成)した第2回帰モデル44を記憶部3に記憶し、リターンする。
【0122】
(推定元第1プロセスデータ取得処理)
図16に示すように、ステップS214の推定元第1プロセスデータ取得処理では、まず、プロセス推定装置1の推定元第1プロセスデータ取得処理部27が、研究サイト側データ管理装置220に、推定元第1プロセスデータ61aを要求する推定元第1プロセスデータ要求信号を送信する(ステップS271)。
【0123】
研究サイト側データ管理装置220では、推定元第1プロセスデータ取得処理と並行して、ステップS104の推定元第1プロセスデータ送信処理が行われている。この推定元第1プロセスデータ送信処理において、研究サイト側データ管理装置220は、まず、ステップS171にて、プロセス推定装置1から推定元第1プロセスデータ要求信号が入力されたかを判定する。ステップS171でNOと判定された場合、リターンする。ステップS171でYESと判定された場合、ステップS172にて、研究サイト側データ管理装置220は、記憶部222に記憶された推定元第1プロセスデータ61aを、プロセス推定装置1に送信する。
【0124】
推定元第1プロセスデータ取得処理に戻り、推定元第1プロセスデータ取得処理部27は、ステップS273にて、研究サイト側データ管理装置220から推定元第1プロセスデータ61aを受信し、受信した推定元第1プロセスデータ61aを記憶部3に記憶する。その後、リターンする。
【0125】
(プロセス推定処理)
図17に示すように、ステップS215のプロセス推定処理では、まず、ステップS281にて、プロセス推定処理部28が、第3回帰モデル45により、推定元第1プロセスデータ61aに対応する第2プロセスデータ64を推定し、推定第2プロセスデータ64aとする。その後、ステップS282にて、得られた推定第2プロセスデータ64aを記憶部3に記憶する。その後、リターンする。
【0126】
(推定第2プロセスデータ送信処理)
図18に示すように、ステップS216の推定第2プロセスデータ送信処理では、まず、ステップS291にて、推定第2プロセスデータ送信処理部29が、量産サイト側データ管理装置320に推定第2プロセスデータ64aを送信する。
【0127】
量産サイト側データ管理装置320では、推定第2プロセスデータ送信処理と並行して、推定第2プロセスデータ受信処理が行われている。この推定第2プロセスデータ受信処理において、量産サイト側データ管理装置320は、ステップS391にて、プロセス推定装置1から送信された推定第2プロセスデータ64aを受信し、受信した推定第2プロセスデータ64aを記憶部322に記憶する。その後、リターンする。
【0128】
図示していないが、この推定第2プロセスデータ送信処理の後、量産サイト側データ管理装置320は、第2製造装置用制御装置330に推定第2プロセスデータ64aを送信する。第2製造装置用制御装置330は、第2製造装置310に対して、受信した推定第2プロセスデータ64aに応じた製造指示を行うことで、製造指示に応じた材料の製造が行われることになる。
【0129】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係るプロセス推定方法では、第1プロセスデータ61と組織データ62と特性データ63との関係を機械学習し、第1プロセスデータ61と組織データ62と特性データ63との相関性を表す第1回帰モデル43を作成すると共に、第2プロセスデータ64と組織データ62と特性データ63との関係を機械学習し、第2プロセスデータ64と組織データ62と特性データ63との相関性を表す第2回帰モデル44を作成し、第1回帰モデル43と第2回帰モデル44とを基に、第1プロセスデータ61と第2プロセスデータ64の相関性を表す第3回帰モデル45を作成し、第3回帰モデル45を用いて、任意の推定元の第1プロセスデータ61(推定元第1プロセスデータ61a)に応じた第2プロセスデータ64(推定第2プロセスデータ64a)を推定している。
【0130】
これにより、例えば、研究開発用の小規模な製造装置を用いて開発した材料を、量産用の大規模な製造装置で再現性よく製造することが可能になり、製造試験の回数を低減して、コストを大幅に低減し、量産化までの期間を大幅に圧縮することが可能になる。つまり、本実施の形態によれば、異なる製造装置であっても再現性よく材料を製造可能なプロセス推定方法を実現できる。また、本実施の形態に係るプロセス推定方法では、組織データ62と特性データ63とを仲介として、第1プロセスデータ61と第2プロセスデータ64との相関性(第3回帰モデル45)を求めている。複数の樹脂を混練、成形して製造される電線の被覆材等の複合材料においては、組織データ62のみ、あるいは特性データ63のみでは、プロセスデータとの間に十分な相関がとれない場合がある。本実施の形態のように、組織データ62と特性データ63の両方を考慮することによって、複合材料に適用しても精度よくプロセスの推定を行うことが可能になる。
【0131】
また、従来、複合材料を構成する各樹脂やフィラーがどのように分布しているかを知ることは困難であったが、SPM241,341を用いることで、複合材料を構成する各樹脂やフィラーがどのように分布しているかを分析することが可能になった。そして、SPM241、341を用いて得られた各樹脂の面積比データ及び分散度データを組織データ62として用いることで、複合材料における樹脂の混ざり具合等の影響を考慮して、適切な混練条件等のプロセス条件を推定することが可能になる。
【0132】
(変形例1)
本実施の形態では、第1及び第2製造装置210,310が、所定の対象工程(ここでは混練工程)を含む複数の工程を経て材料を製造する装置である場合を説明したが、これに限らず、第1及び第2製造装置210,310は、1つ以上の工程を経て材料を製造する装置であればよい。
【0133】
また、上記実施の形態では、プロセス推定装置1が研究サイト200や量産サイト300に属していない場合について説明したが、プロセス推定装置1は、研究サイト200または量産サイト300に属していてもよい。また、例えばプロセス推定装置1が研究サイト200に属している場合、研究サイト側データ管理装置220とプロセス推定装置1とが一体に構成されていてもよい。さらに、研究サイト側データ管理装置220が研究サイト200に属していなくともよく、量産サイト側データ管理装置320が量産サイト300に属していなくともよい。この場合、例えば、研究サイト側データ管理装置220と量産サイト側データ管理装置320とが同じサーバにより実現されていてもよい。また、両データ管理装置220,320とプロセス推定装置1とが同じサーバにより構成されていてもよい。
【0134】
また、上記実施の形態では、研究サイト200と量産サイト300とで、別個に分析エリア240,340が設けられている場合について説明したが、両サイト200,300で共通の分析エリア240,340を用いるようにしてもよい。また、両サイト200,300で別個の分析エリア240,340を有する場合において、分析エリア240,340間で同一の装置が含まれていてもよい。つまり、1つの装置を2つの分析エリア240,340で共用してもよい。
【0135】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0136】
[1]所定の対象工程を含む少なくとも1つ以上の工程を経て材料を製造する第1製造装置(210)における前記対象工程でのプロセス情報を含む第1プロセスデータ(61)を基に、前記第1製造装置(210)とは異なる装置であり、かつ前記対象工程を含む少なくとも1つ以上の工程を経て材料を製造する第2製造装置(310)における前記対象工程でのプロセス情報を含む第2プロセスデータ(64)を推定するプロセス推定方法であって、前記第1プロセスデータ(61)と、前記第1製造装置(210)における前記対象工程後のサンプルから得られる組織データ(62)と、前記第1製造装置(210)により製造した材料の特性データ(63)との関係を機械学習し、前記第1プロセスデータ(61)と、当該第1プロセスデータ(61)に対応する組織データ(62)及び特性データ(63)との相関性を表す第1回帰モデル(43)を作成すると共に、前記第2プロセスデータ(64)と、前記第2製造装置(310)における前記対象工程後のサンプルから得られる組織データ(62)と、前記第2製造装置(310)により製造した材料の特性データ(63)との関係を機械学習し、前記第2プロセスデータ(64)と、当該第2プロセスデータ(64)に対応する組織データ(62)と特性データ(63)との相関性を表す第2回帰モデル(44)を作成し、前記第1回帰モデル(43)と前記第2回帰モデル(44)とを基に、前記第1プロセスデータ(61)と前記第2プロセスデータ(64)との相関性を表す第3回帰モデル(45)を作成し、前記第3回帰モデル(45)を用いて、任意の推定元の前記第1プロセスデータ(61)である推定元第1プロセスデータ(61a)に応じた前記第2プロセスデータ(64)である推定第2プロセスデータ(64a)を推定する、プロセス推定方法。
【0137】
[2]前記第1回帰モデル(43)は、前記第1プロセスデータ(61)と、前記第1製造装置(210)における前記対象工程後のサンプルから得られる組織データ(62)と、前記第1製造装置(210)により製造した材料の特性データ(63)とに加えて、材料の組成情報を含む組成データ(67)との関係を機械学習して作成され、前記第2回帰モデル(44)は、前記第2プロセスデータ(64)と、前記第2製造装置(310)における前記対象工程後のサンプルから得られる組織データと、前記第2製造装置(310)により製造した材料の特性データ(63)とに加えて、材料の組成情報を含む組成データ(67)との関係を機械学習して作成される、[1]に記載のプロセス推定方法。
【0138】
[3]前記材料が、複数の樹脂を混練した後に成形して製造される複合材料であり、前記第1製造装置(210)または前記第2製造装置(310)における前記対象工程後のサンプルから得られる組織データ(62)は、前記複合材料の組織構造を表すデータであって、少なくとも前記複数の樹脂それぞれの面積比を示す面積比データ、及び前記複数の樹脂それぞれの分散度合を示す分散度データを含む、[1]または[2]に記載のプロセス推定方法。
【0139】
[4]前記面積比データ及び前記分散度データは、走査型プローブ顕微鏡(241,341)により得た弾性率の分布画像、あるいは凝着力の分布画像に基づいて求められる、[3]に記載のプロセス推定方法。
【0140】
[5]前記複合材料は、電線の被覆材である、[3]または[4]に記載のプロセス推定方法。
【0141】
[6]前記第1製造装置(210)が研究設備であり、かつ、前記第2製造装置(310)が量産設備であり、前記研究設備で製造した材料を前記量産設備で再現すべく、前記第3回帰モデル(45)を用いて、前記研究設備で再現対象となる材料を製造した際の前記第1プロセスデータ(61)から、前記量産設備で再現対象となる材料を製造するための前記第2プロセスデータ(64)を推定する、[1]乃至[5]のいずれかに記載のプロセス推定方法。
【0142】
[7]前記第1製造装置(210)が量産設備であり、かつ、前記第2製造装置(310)が研究設備であり、
前記第3回帰モデル(45)を用いて、前記量産設備で量産可能な条件を表す前記第1プロセスデータ(61)から、これに対応した前記研究設備での実験条件となる前記第2プロセスデータ(64)を推定する、[1]乃至[6]のいずれかに記載のプロセス推定方法。
【0143】
[8]所定の対象工程を含む少なくとも1つ以上の工程を経て材料を製造する第1製造装置(210)における前記対象工程でのプロセス情報を含む第1プロセスデータ(61)を基に、前記第1製造装置(210)とは異なる装置であり、かつ前記対象工程を含む少なくとも1つ以上の工程を経て材料を製造する第2製造装置(310)における前記対象工程でのプロセス情報を含む第2プロセスデータ(64)を推定するプロセス推定装置であって、前記第1プロセスデータ(61)と、前記第1製造装置(210)における前記対象工程後のサンプルから得られる組織データ(62)と、前記第1製造装置(210)により製造した材料の特性データ(63)との関係を機械学習し、前記第1プロセスデータ(61)と、当該第1プロセスデータ(61)に対応する組織データ(62)及び特性データ(63)との相関性を表す第1回帰モデル(43)を作成する第1回帰モデル作成処理部(24)と、前記第2プロセスデータ(64)と、前記第2製造装置(310)における前記対象工程後のサンプルから得られる組織データ(62)と、前記第2製造装置(310)により製造した材料の特性データ(63)との関係を機械学習し、前記第2プロセスデータ(64)と、当該第2プロセスデータ(64)に対応する組織データ(62)と特性データ(63)との相関性を表す第2回帰モデル(44)を作成する第2回帰モデル作成処理部(25)と、前記第1回帰モデル(43)と前記第2回帰モデル(44)とを基に、前記第1プロセスデータ(61)と前記第2プロセスデータ(64)の相関性を表す第3回帰モデル(45)を作成する第3回帰モデル作成処理部(26)と、前記第3回帰モデル(45)を用いて、任意の推定元の前記第1プロセスデータ(61)である推定元第1プロセスデータ(61a)に応じた前記第2プロセスデータ(64)である推定第2プロセスデータ(64a)を推定するプロセス推定処理部(28)と、を備えた、プロセス推定装置(1)。
【0144】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0145】
28…プロセス推定処理部
200…研究サイト
210…第1製造装置
220…研究サイト側データ管理装置
230…第1製造装置用制御装置
300…量産サイト
310…第2製造装置
41…第1学習用データ
42…第2学習用データ
43…第1回帰モデル
44…第2回帰モデル
45…第3回帰モデル
61…第1プロセスデータ
61a…推定元第1プロセスデータ
62…組織データ
63…特性データ
64…第2プロセスデータ
64a…推定第2プロセスデータ
図1
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