(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082801
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】複合基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20240613BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240613BHJP
C08F 222/40 20060101ALI20240613BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
H05K3/46 T
H05K1/03 630H
H05K1/03 610H
H05K1/03 650
H05K3/46 N
C08F222/40
C08J5/18 CER
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196906
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100221992
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真由美
(72)【発明者】
【氏名】渡瀬 裕介
(72)【発明者】
【氏名】岩倉 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 真樹
【テーマコード(参考)】
4F071
4J100
5E316
【Fターム(参考)】
4F071AA39
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4F071BA03
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4J100AM55P
4J100AM55Q
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5E316AA02
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5E316GG16
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5E316HH31
5E316HH40
(57)【要約】
【課題】ビア形成性に優れる複合基板の製造方法を提供すること。
【解決手段】本開示に係る複合基板の製造方法は、フッ素樹脂基板と、接着層と、コア基板とをこの順に備えるフッ素樹脂基板積層体を準備する工程と、フッ素樹脂基板積層体をレーザー加工して、開口部を形成する工程と、開口部の底部に発生したスミアをドライデスミア処理又はウェットデスミア処理により除去することで、フッ素樹脂基板及び接着層を貫通するビアをコア基板上に形成する工程と、ビアに導体層を形成する工程とを含み、接着層が、(A)飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有するマレイミド化合物と、(B)芳香族マレイミド化合物とを含有する樹脂組成物の硬化物を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂基板と、接着層と、コア基板とをこの順に備えるフッ素樹脂基板積層体を準備する工程と、
前記フッ素樹脂基板積層体をレーザー加工して、開口部を形成する工程と、
前記開口部の底部に発生したスミアをドライデスミア処理又はウェットデスミア処理により除去することで、前記フッ素樹脂基板及び前記接着層を貫通するビアを前記コア基板上に形成する工程と、
前記ビアに導体層を形成する工程と、を含み、
前記接着層が、(A)飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有するマレイミド化合物と、(B)芳香族マレイミド化合物と、を含有する樹脂組成物の硬化物を含む、複合基板の製造方法。
【請求項2】
前記フッ素樹脂基板が、ポリテトラフルオロエチレンを含む基板である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コア基板が、金属張積層板である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記(B)芳香族マレイミド化合物が、マレイミド基が芳香環に結合した構造を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記飽和又は不飽和の2価の炭化水素基の炭素数が8~100である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記飽和又は不飽和の2価の炭化水素基が、下記式(II)で表される基である、請求項1又は2に記載の方法。
【化1】
[式(II)中、R
2及びR
3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R
4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R
5は炭素数2~50のアルキル基を示す。]
【請求項7】
前記(A)飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有するマレイミド化合物が、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基を更に有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基が、下記式(I)で表される基である、請求項7に記載の方法。
【化2】
[式(I)中、R
1は4価の有機基を示す。]
【請求項9】
前記(A)飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有するマレイミド化合物の重量平均分子量が、500~10000である、請求項1又は2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表される移動体通信機器、その基地局装置、サーバー、ルーター等のネットワークインフラ機器、大型コンピュータなどの電子機器では使用する信号の高速化及び大容量化が年々進んでいる。これに伴い、これらの電子機器に搭載されるプリント配線板には高周波化対応が必要となり、伝送損失の低減を可能とする低比誘電率及び低誘電正接の基板材料が求められている。近年、このような高周波信号を扱うアプリケーションとして、上述した電子機器のほかに、ITS分野(自動車、交通システム関連)及び室内の近距離通信分野でも高周波無線信号を扱う新規システムの実用化及び実用計画が進んでおり、今後、これらの機器に搭載するプリント配線板に対しても、低伝送損失基板材料が更に要求されると予想される。
【0003】
従来、低伝送損失が要求されるプリント配線板には、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリイミド(PI)、液晶ポリマー(LCP)、フッ素樹脂等の樹脂が使用されている(例えば、特許文献1~4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58-69046号公報
【特許文献2】特開2012-255059号公報
【特許文献3】特開2014-60449号公報
【特許文献4】特開2003-171480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂は、優れた低誘電率及び低誘電正接を有する材料であることが知られている。しかしながら、フッ素樹脂基板は、難接着性であるため、他の材料と積層することが難しく、また、フッ素樹脂基板を備える積層体をレーザー加工してビアを有する複合基板を作製することも難しい。そこで、本開示は、ビア形成性に優れる複合基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、以下の複合基板の製造方法に関する。
【0007】
[1]フッ素樹脂基板と、接着層と、コア基板とをこの順に備えるフッ素樹脂基板積層体を準備する工程と、前記フッ素樹脂基板積層体をレーザー加工して、開口部を形成する工程と、前記開口部の底部に発生したスミアをドライデスミア処理又はウェットデスミア処理により除去することで、前記フッ素樹脂基板及び前記接着層を貫通するビアを前記コア基板上に形成する工程と、前記ビアに導体層を形成する工程と、を含み、前記接着層が、(A)飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有するマレイミド化合物と、(B)芳香族マレイミド化合物と、を含有する樹脂組成物の硬化物を含む、複合基板の製造方法。
[2]前記フッ素樹脂基板が、ポリテトラフルオロエチレンを含む基板である、上記[1]に記載の方法。
[3]前記コア基板が、金属張積層板である、上記[1]又は[2]に記載の方法。
[4]前記(B)芳香族マレイミド化合物が、マレイミド基が芳香環に結合した構造を有する、上記[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]前記飽和又は不飽和の2価の炭化水素基の炭素数が8~100である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]前記飽和又は不飽和の2価の炭化水素基が、下記式(II)で表される基である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
【化1】
[式(II)中、R
2及びR
3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示し、R
4は炭素数4~50のアルキル基を示し、R
5は炭素数2~50のアルキル基を示す。]
[7]前記(A)飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有するマレイミド化合物が、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基を更に有する、上記[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8]前記少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基が、下記式(I)で表される基である、上記[7]に記載の方法。
【化2】
[式(I)中、R
1は4価の有機基を示す。]
[9]前記(A)飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有するマレイミド化合物の重量平均分子量が、500~10000である、上記[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ビア形成性に優れる複合基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示に係る複合基板の製造工程の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されない。本明細書において、「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。本明細書において、「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。本明細書において、高周波領域とは、0.3GHz~300GHzの領域を指し、特に3GHz~300GHzを指すものとする。
【0011】
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。本明細書において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0012】
本実施形態に係る複合基板の製造方法は、フッ素樹脂基板と、接着層と、コア基板とをこの順に備えるフッ素樹脂基板積層体を準備する工程と、前記フッ素樹脂基板積層体をレーザー加工して、開口部を形成する工程と、前記開口部の底部に発生したスミアをドライデスミア処理又はウェットデスミア処理により除去することで、前記フッ素樹脂基板及び前記接着層を貫通するビアを前記コア基板上に形成する工程と、前記ビアに導体層を形成する工程と、を含み、前記接着層が、(A)飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有するマレイミド化合物と、(B)芳香族マレイミド化合物と、を含有する樹脂組成物の硬化物を含む。
【0013】
本実施形態に係る複合基板は、コア基板上に接着層を介してフッ素樹脂基板が積層され、接着層及びフッ素樹脂基板を貫通するビアを有し、ビアには導体層が形成されている。以下、本実施形態に係るコア基板、フッ素樹脂基板、及び接着層について説明する。
【0014】
[コア基板]
コア基板として、金属層を表面に有する基板であれば特に限定されない。コア基板3として、絶縁基板とその両面上に積層された金属箔とを有する金属張積層板を使用することができる。金属張積層板としては、例えば、銅張積層板が挙げられる。コア基板の厚みは例えば、0.2mm以上、0.4mm以上、又は0.6mm以上であってよく、2.0mm以下、1.8mm以下、又は1.5mm以下であってもよい。
【0015】
[フッ素樹脂基板]
フッ素樹脂基板1を構成するフッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルコキシエチレン重合体(PFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン重合体(FEP)、及びテトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)が挙げられる。高周波特性により優れることから、フッ素樹脂基板は、ポリテトラフルオロエチレンを含む基板であることが好ましい。
【0016】
フッ素樹脂基板の誘電率(Dk)は、2.2~3.5又は2.8~3.1であってよい。フッ素樹脂基板の誘電正接(Df)は、0.0010~0.0020又は0.0010~0.0013であってよい。フッ素樹脂基板の熱膨張係数は、基材方向で30ppm/℃以下又は20以下ppm/℃であってよい。複合基板の信頼性を向上することから、フッ素樹脂基板の厚さは、40μm以上、80μm以上、100μm以上、110μm以上、又は120μm以上であってよく、500μm以下、300μm以下、250μm以下、又は200μm以下であってよい。
【0017】
[接着層]
接着層は、(A)飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有するマレイミド化合物と、(B)芳香族マレイミド化合物とを含有する樹脂組成物の硬化物を含む。本実施形態に係る接着層は、フッ素樹脂基板及びコア基板に対する接着性に優れると共に、レーザーの照射によるビア形成性に優れている。接着層のレーザー加工後の残渣であるスミアはドライデスミア処理又はウェットデスミア処理の一方のみで除去することができる。これにより、複合基板の耐リフロー性及び信頼性を向上することができる。
【0018】
接着層の厚さは特に限定されないが、例えば、1~200μm、3~150μm、5~100μm、10~80μm、又は15~50μmであってよい。接着層の厚さを上記の範囲とすることにより、本実施形態に係る複合基板の高周波特性を向上し易くなる。
【0019】
接着層は、上記樹脂組成物をフッ素樹脂基板に塗布して形成してもよく、上記樹脂組成物の樹脂フィルムを作製し、樹脂フィルムをフッ素樹脂基板上に積層することで形成してもよい。樹脂フィルムとは、未硬化又は半硬化のフィルム状の樹脂組成物を指す。以下、樹脂組成物が含有する各成分について詳述する。
【0020】
((A)飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有するマレイミド化合物)
本実施形態に係る飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有するマレイミド化合物を(A)成分ということがある。(A)成分は、(a)マレイミド基及び(c)飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物である。(a)マレイミド基を構造(a)といい、(c)飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を構造(c)ということがある。(A)成分を用いることで、高周波特性及び接着性に優れる樹脂組成物を得ることができる。
【0021】
(A)成分は、構造(a)及び構造(c)に加えて、(b)少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基を更に有していてもよい。(b)少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基を構造(b)ということがある。
【0022】
(a)マレイミド基は特に限定されず、一般的なマレイミド基である。(a)マレイミド基は芳香環に結合していても、脂肪族鎖に結合していてもよいが、誘電特性の観点からは、長鎖脂肪族鎖(例えば、炭素数8~100の飽和炭化水素基)に結合していることが好ましい。(A)成分が、(a)マレイミド基が長鎖脂肪族鎖に結合した構造を有することで、樹脂組成物の高周波特性をより向上することができる。
【0023】
構造(b)としては特に限定されないが、例えば、下記式(I)で表される基が挙げられる。構造(b)は、マレイミド基を有しない基である。
【0024】
【0025】
式(I)中、R1は4価の有機基を示す。R1は4価の有機基であれば特に限定されないが、例えば、取扱性の観点から、炭素数1~100の炭化水素基であってもよく、炭素数2~50の炭化水素基であってもよく、炭素数4~30の炭化水素基であってもよい。
【0026】
R1は、置換又は非置換のシロキサン部位を含んでもよい。シロキサン部位としては、例えば、ジメチルシロキサン、メチルフェニルシロキサン、ジフェニルシロキサン等に由来する構造が挙げられる。
【0027】
R1が置換されている場合、置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、水酸基、アルコキシ基、メルカプト基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、ヘテロ環基、置換ヘテロ環基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、置換ヘテロアリール基、アリールオキシ基、置換アリールオキシ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、アミド基、-CHO、-NRxC(O)-N(Rx)2、-OC(O)-N(Rx)2、アシル基、オキシアシル基、カルボキシ基、カルバメート基、スルホンアミド基等が挙げられる。ここで、Rxは水素原子又はアルキル基を示す。これらの置換基は目的、用途等に合わせて、1種類又は2種類以上を選択できる。
【0028】
R1としては、例えば、1分子中に2個以上の無水物環を有する酸無水物の4価の残基、すなわち、酸無水物から酸無水物基(-C(=O)OC(=O)-)を2個除いた4価の基が好ましい。酸無水物としては、後述するような化合物が例示できる。
【0029】
機械強度の観点から、R1は芳香族であることが好ましく、無水ピロメリット酸から2つの酸無水物基を取り除いた基であることがより好ましい。すなわち、構造(b)は下記式(III)で表される基であることがより好ましい。
【0030】
【0031】
流動性及び回路埋め込み性の観点からは、構造(b)は、(A)成分中に複数存在することが好ましい。その場合、構造(b)は、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。(A)成分中の構造(b)の数は、2~40であることが好ましく、2~20であることがより好ましく、2~10であることが更に好ましい。
【0032】
誘電特性の観点から、構造(b)は、下記式(IV)又は下記式(V)で表される基であってもよい。
【0033】
【0034】
【0035】
構造(c)は特に限定されず、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。高周波特性の観点から、構造(c)は、脂肪族炭化水素基であることが好ましい。また、飽和又は不飽和の2価の炭化水素基の炭素数は、8~100であってもよい。構造(c)は、炭素数8~100の分岐を有していてもよいアルキレン基であることが好ましく、炭素数10~70の分岐を有していてもよいアルキレン基であるとより好ましく、炭素数15~50の分岐を有していてもよいアルキレン基であると更に好ましい。構造(c)が炭素数8以上の分岐を有していてもよいアルキレン基であると、分子構造を三次元化し易く、ポリマーの自由体積を増大させて低密度化し易い。すなわち低誘電率化できるため、樹脂組成物の高周波特性を向上し易くなる。また、(A)成分が構造(c)を有することで、樹脂組成物の可とう性が向上し、樹脂組成物から作製される接着層(樹脂フィルム)の取扱性(タック性、割れ、粉落ち等)及び強度を高めることが可能である。
【0036】
構造(c)としては、例えば、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、テトラデシレン基、ヘキサデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基等のアルキレン基;ベンジレン基、フェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基;フェニレンメチレン基、フェニレンエチレン基、ベンジルプロピレン基、ナフチレンメチレン基、ナフチレンエチレン基等のアリーレンアルキレン基;及びフェニレンジメチレン基、フェニレンジエチレン基等のアリーレンジアルキレン基が挙げられる。
【0037】
高周波特性、低熱膨張特性、導体との接着性、耐熱性及び低吸湿性の観点から、構造(c)として下記式(II)で表される基が特に好ましい。
【0038】
【0039】
式(II)中、R2及びR3は各々独立に炭素数4~50のアルキレン基を示す。柔軟性の更なる向上及び合成容易性の観点から、R2及びR3は各々独立に、炭素数5~25のアルキレン基であることが好ましく、炭素数6~10のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数7~10のアルキレン基であることが更に好ましい。
【0040】
式(II)中、R4は炭素数4~50のアルキル基を示す。柔軟性の更なる向上及び合成容易性の観点から、R4は炭素数5~25のアルキル基であることが好ましく、炭素数6~10のアルキル基であることがより好ましく、炭素数7~10のアルキル基であることが更に好ましい。
【0041】
式(II)中、R5は炭素数2~50のアルキル基を示す。柔軟性の更なる向上及び合成容易性の観点から、R5は炭素数3~25のアルキル基であることが好ましく、炭素数4~10のアルキル基であることがより好ましく、炭素数5~8のアルキル基であることが更に好ましい。
【0042】
流動性及び回路埋め込み性の観点からは、構造(c)は、(A)成分中に複数存在すると好ましい。その場合、構造(c)はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。例えば、(A)成分中に2~40の構造(c)が存在することが好ましく、2~20の構造(c)が存在することがより好ましく、2~10の構造(c)が存在することが更に好ましい。
【0043】
樹脂組成物中の(A)成分の含有量は特に限定されない。耐熱性の観点から、(A)成分の含有量は樹脂組成物の全質量に対して2~98質量%であることが好ましく、10~50質量%であることがより好ましく、10~30質量%であることが更に好ましい。
【0044】
(A)成分の分子量は特に限定されない。取扱性、流動性及び回路埋め込み性の観点より(A)成分の重量平均分子量(Mw)は、500~10000であることが好ましく、1000~9000であることがより好ましく、1500~9000であることが更に好ましく、1500~7000であることがより一層好ましく、1700~5000であることが特に好ましい。
【0045】
(A)成分のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定することができる。
【0046】
GPCの測定条件は下記のとおりである。
ポンプ:L-6200型[株式会社日立ハイテクノロジーズ製]
検出器:L-3300型RI[株式会社日立ハイテクノロジーズ製]
カラムオーブン:L-655A-52[株式会社日立ハイテクノロジーズ製]
ガードカラム及びカラム:TSK Guardcolumn HHR-L+TSKgel G4000HHR+TSKgel G2000HHR[すべて東ソー株式会社製、商品名]
カラムサイズ:6.0×40mm(ガードカラム)、7.8×300mm(カラム)
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:30mg/5mL
注入量:20μL
流量:1.00mL/分
測定温度:40℃
【0047】
(A)成分を製造する方法は限定されない。(A)成分は、例えば、酸無水物とジアミンとを反応させてアミン末端化合物を合成した後、該アミン末端化合物を過剰の無水マレイン酸と反応させることで作製してもよい。
【0048】
酸無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、及び3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。酸無水物は目的、用途等に合わせて、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。なお、前述のとおり、上記式(I)のR1として、上記に挙げられるような酸無水物に由来する4価の有機基を用いることができる。より良好な誘電特性の観点から、酸無水物は、無水ピロメリット酸であることが好ましい。
【0049】
ジアミンとしては、例えば、ダイマージアミン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、ポリオキシアルキレンジアミン、及び[3,4-ビス(1-アミノヘプチル)-6-ヘキシル-5-(1-オクテニル)]シクロヘキセンが挙げられる。ジアミンは目的、用途等に合わせて、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0050】
(A)成分としては、例えば、下記式(XIII)で表される化合物であってもよい。
【化8】
【0051】
式(XIII)中、R及びQはそれぞれ独立に2価の有機基を示す。Rは上述の構造(c)と同じものが使用でき、Qは上述のR1と同じものが使用できる。また、nは1~10の整数を表す。
【0052】
(A)成分としては市販されている化合物を使用することもできる。市販されている化合物としては、例えば、Designer Molecules Inc.製の製品が挙げられ、具体的には、BMI-1500、BMI-1700、BMI-3000、BMI-5000、BMI-9000(いずれも商品名)等が挙げられる。より良好な高周波特性を得る観点から、(A)成分としてBMI-3000を使用することがより好ましい。
【0053】
((B)芳香族マレイミド化合物)
本実施形態に係る(B)芳香族マレイミド化合物を(B)成分ということがある。(B)成分は、(A)成分とは異なるマレイミド化合物である。なお、(A)成分及び(B)成分の双方に該当し得る化合物は、(A)成分に帰属するものとするが、(A)成分及び(B)成分の双方に該当し得る化合物を2種類以上含む場合、そのうち1つを(A)成分、その他の化合物を(B)成分と帰属するものとする。例えば、式(I)で表される基に含まれる芳香環を有する化合物を(A)成分とし、式(I)で表される基に含まれる芳香環以外の芳香環を有する化合物を(B)成分としてよい。(B)成分を用いることで、樹脂組成物の吸湿性を低減することができる。(A)成分と(B)成分とを含有する樹脂組成物の硬化物は、低誘電特性を備える(A)成分からなる構造単位と、低吸湿性である(B)成分からなる構造単位とを備えるポリマーを含有することで、良好な誘電特性を維持しつつ、低吸湿性を向上させることができる。
【0054】
(B)成分は、(A)成分よりも熱膨張係数が低いことが好ましい。(A)成分よりも熱膨張係数が低い(B)成分として、例えば、(A)成分よりも分子量が低いマレイミド基含有化合物、(A)成分よりも多くの芳香環を有するマレイミド基含有化合物、及び主鎖が(A)成分よりも短いマレイミド基含有化合物が挙げられる。
【0055】
樹脂組成物中の(B)成分の含有量は特に限定されない。低吸湿性及び誘電特性の観点から(B)成分の含有量は樹脂成分の全質量に対して1~95質量%であることが好ましく、3~90質量%であることがより好ましく、5~85質量%であることが更に好ましい。
【0056】
樹脂組成物中の(A)成分と(B)成分との配合割合は特に限定されない。低吸湿性及び誘電特性の観点から、(A)成分と(B)成分の質量比(B)/(A)が0.01~3であることが好ましく、0.03~2であることがより好ましく、0.05~1であることが更に好ましい。
【0057】
(B)成分は、芳香環を有していれば、特に限定されない。芳香環は剛直で低熱膨張であるため、芳香環を有する(B)成分を用いることで、樹脂組成物の熱膨張係数を低減させることができる。マレイミド基は芳香環に結合していても、脂肪族鎖に結合していてもよいが、低熱膨張性の観点から、芳香環に結合していることが好ましい。また、(B)成分は、マレイミド基を2個以上含有するポリマレイミド化合物であってもよい。(B)成分は1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0058】
(B)成分としては、例えば、1,2-ジマレイミドエタン、1,3-ジマレイミドプロパン、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、2,7-ジマレイミドフルオレン、N,N’-(1,3-フェニレン)ビスマレイミド、N,N’-(1,3-(4-メチルフェニレン))ビスマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4-マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4-マレイミドフェニル)エ-テル、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-(3-マレイミドフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、ビス(4-マレイミドフェニル)ケトン、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ビフェニル、1,3-ビス(2-(3-マレイミドフェニル)プロピル)ベンゼン、1,3-ビス(1-(4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル)-1-プロピル)ベンゼン、ビス(マレイミドシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、及びビス(マレイミドフェニル)チオフェンが挙げられる。吸湿性及び熱膨張係数をより低下させる観点から、(B)成分として、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタンを用いてもよい。樹脂組成物から形成される樹脂フィルムの破壊強度及び金属箔引き剥がし強さを更に高める観点から、(B)成分として、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンを用いてもよい。
【0059】
成形性の観点から、(B)成分として、下記式(VI)で表される化合物を用いてもよい。
【0060】
【0061】
式(VI)中、A4は下記式(VII)、(VIII)、(IX)又は(X)で表される残基を示し、A5は下記式(XI)で表される残基を示す。低熱膨張性の観点から、A4は下記式(VII)、(VIII)又は(IX)で表される残基であってよい。
【0062】
【0063】
式(VII)中、R10は各々独立に、水素原子、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示す。
【0064】
【0065】
式(VIII)中、R11及びR12は各々独立に、水素原子、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、A6は炭素数1~5のアルキレン基若しくはアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、ケトン基、単結合又は下記式(VIII-1)で表される残基を示す。
【0066】
【0067】
式(VIII-1)中、R13及びR14は各々独立に、水素原子、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、A7は炭素数1~5のアルキレン基、イソプロピリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、ケトン基又は単結合を示す。
【0068】
【0069】
式(IX)中、iは1~10の整数である。
【0070】
【0071】
式(X)中、R15及びR16は各々独立に、水素原子又は炭素数1~5の脂肪族炭化水素基を示し、jは1~8の整数である。
【0072】
【0073】
式(XI)中、R17及びR18は各々独立に、水素原子、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、炭素数1~5のアルコキシ基、水酸基又はハロゲン原子を示し、A8は、炭素数1~5のアルキレン基若しくはアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、ケトン基、フルオレニレン基、単結合、下記式(XI-1)で表される残基又は下記式(XI-2)で表される残基を示す。
【0074】
【0075】
式(XI-1)中、R19及びR20は各々独立に、水素原子、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、A9は、炭素数1~5のアルキレン基、イソプロピリデン基、m-フェニレンジイソプロピリデン基、p-フェニレンジイソプロピリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、ケトン基又は単結合を示す。
【0076】
【0077】
式(XI-2)中、R21は各々独立に、水素原子、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、A10及びA11は各々独立に、炭素数1~5のアルキレン基、イソプロピリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、ケトン基又は単結合を示す。
【0078】
(B)成分は、有機溶媒への溶解性、高周波特性、導体との高接着性等の観点から、アミノ基とマレイミド基とを有する化合物であってもよい。アミノ基とマレイミド基とを有する化合物は、例えば、ビスマレイミド化合物と、2個の一級アミノ基を有する芳香族ジアミン化合物とを有機溶媒中でマイケル付加反応させることにより得られる。
【0079】
芳香族ジアミン化合物としては、例えば、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチル-ジフェニルメタン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、及び4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリンが挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0080】
有機溶媒への溶解性が高く、合成時の反応率が高く、かつ耐熱性を高くできる観点からは、芳香族ジアミン化合物は、4,4’-ジアミノジフェニルメタン又は4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチル-ジフェニルメタンであってもよい。
【0081】
有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール化合物;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン化合物;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素;メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、ブトキシエチルアセテート、酢酸エチル等のエステル化合物;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等の含窒素化合物が挙げられる。有機溶媒は1種類を単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミド、及びN,N-ジメチルアセトアミドが、溶解性の観点から好ましい。
【0082】
(触媒)
本実施形態に係る樹脂組成物は、(A)成分の硬化を促進するための触媒を更に含有してもよい。触媒の含有量は特に限定されないが、樹脂組成物の全質量に対して0.1~5質量%であってもよい。触媒としては、例えば、過酸化物、アゾ化合物等を用いることができる。
【0083】
過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、2-ブタノンパーオキサイド、tert-ブチルパーベンゾエイト、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、及びtert-ブチルヒドロパーオキシドが挙げられる。アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパンニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブタンニトリル)、及び1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)が挙げられる。
【0084】
(無機充填剤)
本実施形態に係る樹脂組成物は、無機充填剤を更に含有してもよい。任意に適切な無機充填剤を含有させることで、接着層の低熱膨張特性、高弾性率性、耐熱性、難燃性等を向上させることができる。無機充填剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、マイカ、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、焼成クレー、タルク、ホウ酸アルミニウム、及び炭化ケイ素が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0085】
無機充填剤の形状及び粒径には特に制限はない。無機充填剤の粒径は、例えば、0.01~20μm又は0.1~10μmであってよい。粒径とは、平均粒子径を指し、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めた時、体積50%に相当する点の粒子径のことである。平均粒径は、レーザー回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
【0086】
無機充填剤を用いる場合、その使用量は特に制限されないが、例えば、樹脂組成物中の固形分を全量として無機充填剤の含有比率が3~75体積%であることが好ましく、5~70体積%であることがより好ましい。樹脂組成物中の無機充填剤の含有比率が上記の範囲である場合、良好な硬化性、成形性及び耐薬品性が得られ易くなる。
【0087】
無機充填剤を用いる場合、無機充填剤の分散性、有機成分との密着性を向上させる等の目的で、必要に応じ、カップリング剤を併用できる。カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等を用いることができる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。カップリング剤の添加量は、例えば、使用する無機充填剤100質量部に対して0.1~5質量部又は0.5~3質量部であってよい。この範囲であれば、諸特性の低下が少なく、無機充填剤の使用による特長を効果的に発揮し易くなる。
【0088】
カップリング剤を用いる場合、樹脂組成物中に無機充填剤を配合した後、カップリング剤を添加する、いわゆるインテグラルブレンド処理方式であってもよいが、予め無機充填剤にカップリング剤を、乾式又は湿式で表面処理した無機充填剤を使用する方式が好ましい。この方法を用いることで、より効果的に上記無機充填剤の特長を発現できる。
【0089】
(熱硬化性樹脂)
本実施形態に係る樹脂組成物は、(A)成分及び(B)成分とは異なる(C)熱硬化性樹脂(以下、「(C)成分」という場合がある。)を更に含有することができる。なお、(A)成分又は(B)成分に該当し得る化合物は、(C)成分に帰属しないものとする。(C)成分を含むことで、樹脂組成物の低熱膨張特性等を更に向上させることができる。(C)成分としては、例えば、エポキシ樹脂及びシアネートエステル樹脂が挙げられる。(C)成分は、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0090】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のナフタレン骨格含有型エポキシ樹脂、2官能ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、及びジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂が挙げられる。高周波特性及び熱膨張特性の観点から、ナフタレン骨格含有型エポキシ樹脂又はビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂を用いてもよい。
【0091】
シアネートエステル樹脂としては、例えば、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、ビス(4-シアナトフェニル)エタン、ビス(3,5-ジメチル-4-シアナトフェニル)メタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、α,α’-ビス(4-シアナトフェニル)-m-ジイソプロピルベンゼン、フェノール付加ジシクロペンタジエン重合体のシアネートエステル化合物、フェノールノボラック型シアネートエステル化合物、及びクレゾールノボラック型シアネートエステル化合物が挙げられる。廉価性、高周波特性及びその他特性の総合バランスを考慮すると、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパンを用いてもよい。
【0092】
(硬化剤)
本実施形態に係る樹脂組成物は、(C)成分を含有する場合、(C)成分の硬化剤を更に含有してもよい。これにより、樹脂組成物の硬化物を得る際の反応を円滑に進めることができると共に、得られる樹脂組成物の硬化物の物性を適度に調節することが可能となる。硬化剤は1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0093】
エポキシ樹脂の硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルメタン、m-フェニレンジアミン、ジシアンジアミド等のポリアミン化合物;ビスフェノールA、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂等のポリフェノール化合物;無水フタル酸、無水ピロメリット酸等の酸無水物;カルボン酸化合物;及び活性エステル化合物が挙げられる。
【0094】
シアネートエステル樹脂の硬化剤としては、例えば、モノフェノール化合物、ポリフェノール化合物、アミン化合物、アルコール化合物、酸無水物、及びカルボン酸化合物が挙げられる。
【0095】
(硬化促進剤)
本実施形態に係る樹脂組成物には、(C)成分の種類に応じて硬化促進剤を更に配合してもよい。エポキシ樹脂の硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール系硬化促進剤、BF3アミン錯体、及びリン系硬化促進剤が挙げられる。樹脂組成物の保存安定性、半硬化の樹脂組成物の取扱性及びはんだ耐熱性の観点から、イミダゾール系硬化促進剤及びリン系硬化促進剤が好ましい。
【0096】
(熱可塑性樹脂)
本実施形態に係る樹脂組成物は、樹脂フィルムの取扱い性を高める観点から、熱可塑性樹脂を更に含有してもよい。熱可塑性樹脂の種類は特に限定されず、分子量も限定されないが、(A)成分との相溶性をより高める点から、数平均分子量(Mn)が200~60000であることが好ましい。
【0097】
フィルム形成性及び耐吸湿性の観点から、熱可塑性樹脂は、熱可塑性エラストマであることが好ましい。熱可塑性エラストマとしては、飽和型熱可塑性エラストマ等が挙げられ飽和型熱可塑性エラストマとしては、化学変性飽和型熱可塑性エラストマ、非変性飽和型熱可塑性エラストマ等が挙げられる。化学変性飽和型熱可塑性エラストマとしては、無水マレイン酸で変性されたスチレン-エチレン-ブチレン共重合体等が挙げられる。化学変性飽和型熱可塑性エラストマの具体例としては、タフテックM1911、M1913、M1943(旭化成株式会社製、商品名)等が挙げられる。一方、非変性飽和型熱可塑性エラストマとしては、非変性のスチレン-エチレン-ブチレン共重合体等が挙げられる。非変性飽和型熱可塑性エラストマの具体例としては、タフテックH1041、H1051、H1043、H1053(旭化成株式会社製、商品名)等が挙げられる。
【0098】
フィルム形成性、誘電特性及び耐吸湿性の観点から、飽和型熱可塑性エラストマは、分子中にスチレンユニットを有することがより好ましい。なお、本明細書において、スチレンユニットとは、重合体における、スチレン単量体に由来する単位を指し、飽和型熱可塑性エラストマとは、スチレンユニットの芳香族炭化水素部分以外の脂肪族炭化水素部分が、いずれも飽和結合基によって構成された構造を有するものをいう。
【0099】
飽和型熱可塑性エラストマにおけるスチレンユニットの含有比率は、特に限定されないが、飽和型熱可塑性エラストマの全質量に対するスチレンユニットの質量百分率で、10~80質量%であると好ましく、20~70質量%であるとより好ましい。スチレンユニットの含有比率が上記範囲内であると、フィルム外観、耐熱性及び接着性に優れる傾向にある。
【0100】
分子中にスチレンユニットを有する飽和型熱可塑性エラストマの具体例としては、スチレン-エチレン-ブチレン共重合体が挙げられる。スチレン-エチレン-ブチレン共重合体は、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体のブタジエンに由来する構造単位が有する不飽和二重結合に水素添加を行うことにより得ることができる。
【0101】
熱可塑性樹脂の含有量は特に限定されないが、誘電特性を更に良好にする観点からは樹脂組成物の固形分を全量として0.1~15質量%で、0.3~10質量%、又は0.5~5質量%であってよい。
【0102】
(難燃剤)
本実施形態に係る樹脂組成物には、難燃剤を更に配合してもよい。難燃剤としては特に限定されないが、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、金属水酸化物等が好適に用いられる。難燃剤は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0103】
臭素系難燃剤としては、例えば、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の臭素化エポキシ樹脂;ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビステトラブロモフタルイミド、1,2-ジブロモ-4-(1,2-ジブロモエチル)シクロヘキサン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレン、2,4,6-トリス(トリブロモフェノキシ)-1,3,5-トリアジン等の臭素化添加型難燃剤;及びトリブロモフェニルマレイミド、トリブロモフェニルアクリレート、トリブロモフェニルメタクリレート、テトラブロモビスフェノールA型ジメタクリレート、ペンタブロモベンジルアクリレート、臭素化スチレン等の不飽和二重結合基含有の臭素化反応型難燃剤が挙げられる。
【0104】
リン系難燃剤としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルジ-2,6-キシレニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)等の芳香族系リン酸エステル;フェニルホスホン酸ジビニル、フェニルホスホン酸ジアリル、フェニルホスホン酸ビス(1-ブテニル)等のホスホン酸エステル;ジフェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィン酸メチル、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド誘導体等のホスフィン酸エステル;ビス(2-アリルフェノキシ)ホスファゼン、ジクレジルホスファゼン等のホスファゼン化合物;及びリン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸アンモニウム、リン含有ビニルベンジル化合物、赤リン等のリン系難燃剤が挙げられる。金属水酸化物難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0105】
本実施形態に係る樹脂組成物は、上記した各成分を均一に分散及び混合することによって得ることができる。樹脂組成物の調製手段、条件等は特に限定されない。樹脂組成物は、例えば、所定配合量の各成分をミキサー等によって十分に均一に撹拌及び混合した後、ミキシングロール、押出機、ニーダー、ロール、エクストルーダー等を用いて混練し、更に得られた混練物を冷却及び粉砕する方法で作製してもよい。
【0106】
本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物(硬化後の接着層)の比誘電率は特に限定されないが、高周波帯で好適に用いる観点から、10GHzでの比誘電率は3.6以下であることが好ましく、3.1以下であることがより好ましく、3.0以下であることが更に好ましい。比誘電率の下限については特に限定はないが、例えば、1.0程度であってもよい。また、高周波帯で好適に用いる観点から、樹脂組成物の硬化物の誘電正接は、0.004以下であることが好ましく、0.003以下であることがより好ましい。比誘電率の下限については特に限定はなく、例えば、0.0001程度であってもよい。
【0107】
積層板のそりを抑制する観点から、樹脂組成物の硬化物の熱膨張係数は、10~90ppm/℃であることが好ましく、10~45ppm/℃であることがより好ましく、10~40ppm/℃であることが更に好ましい。熱膨張係数は、IPC-TM-650 2.4.24に準拠して測定できる。
【0108】
樹脂フィルムの作製方法は限定されない。例えば、樹脂組成物を支持基材上に塗布して形成された樹脂層を乾燥することで樹脂フィルムを得てもよい。具体的には、上記樹脂組成物をキスコーター、ロールコーター、コンマコーター等を用いて支持基材上に塗布した後、加熱乾燥炉中等で、例えば70~250℃、好ましくは70~200℃の温度で、1~30分間、好ましくは3~15分間乾燥してもよい。これにより、樹脂組成物が半硬化した状態の樹脂フィルムを得ることができる。
【0109】
半硬化した状態の樹脂フィルムを、加熱炉で更に、例えば170~250℃、好ましくは185~230℃の温度で、60~150分間加熱させることによって樹脂フィルムを熱硬化させることができる。
【0110】
樹脂フィルムの厚さは特に限定されないが、フッ素樹脂基板の厚さの0.01~2.0倍、0.05~1.0倍、又は0.1~0.9倍であってよい。樹脂フィルムの厚さが2.0倍以下であると、積層体の誘電率を低減し易くなる。樹脂フィルムの厚さが0.01倍以上であると、積層体としての剛性及び寸法安定性を向上し易くなる。樹脂フィルムの厚さは、例えば、1~200μm、3~180μm、5~150μm、10~100μm、又は15~80μmであってよい。
【0111】
支持基材は特に限定されないが、ガラス、金属箔及びPETフィルムからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。樹脂フィルムが支持基材を備えることにより、保管性及び積層体の製造に用いる際の取扱性が良好となる傾向にある。
【0112】
本実施形態に係る複合基板は、以下の工程を経て作製することができる。
工程(a):フッ素樹脂基板と、接着層と、コア基板と、をこの順に備えるフッ素樹脂基板積層体を準備する工程。
工程(b):フッ素樹脂基板積層体をレーザー加工して、開口部を形成する工程。
工程(c):開口部の底部に発生したスミアをドライデスミア処理又はウェットデスミア処理により除去することで、フッ素樹脂基板及び接着層を貫通するビアをコア基板上に形成する工程。
工程(d):ビアに導体層を形成する工程。
【0113】
図1は、複合基板の製造工程の一実施形態を示す模式的に示す断面図である。図面を参照しながら、本実施形態に係る複合基板の製造方法について説明する。
【0114】
工程(a)
図1の(a)に示すように、工程(a)では、フッ素樹脂基板1と、接着層2と、コア基板3とを備えるフッ素樹脂基板積層体を準備する。フッ素樹脂基板1は、接着層2を介してコア基板3と接着されている。フッ素樹脂基板1の接着層2と反対側の面上には、導体層が形成されていてもよい。
【0115】
フッ素樹脂基板積層体は、例えば、コア基板3とフッ素樹脂基板1との間に上述した樹脂フィルムを配置した後、加熱及び加圧して樹脂フィルムに含まれる樹脂組成物を硬化することで作製される。加熱温度は、170~250℃、185~230℃、又は190~220℃であってよい。加圧圧力は、0.5~5.0MPa、1.0~5.0MPa、又は2.0~4.5MPaであってよい。加熱及び加圧する時間は、60~150分間、65~120分間、又は70~100分間であってよい。加熱及び加圧は、例えば、真空度が10kPa以下、好ましくは5kPa以下の条件で実施でき、効率を高める観点からは真空中で行うことが好ましい。
【0116】
工程(b)
図1の(b)に示すように、工程(b)では、フッ素樹脂基板をレーザー加工して、フッ素樹脂基板1及び接着層2を貫通してコア基板3の表面にまで至る開口部を形成する。開口部の形成方法は、コストの観点から炭酸ガスレーザー加工が好ましい。開口部の形成後、加工箇所の周辺に接着層2の残渣であるスミア2aが発生する。
【0117】
工程(c)
図1の(c)に示すように、工程(c)では、スミア2aをドライデスミア処理又はウェットデスミア処理により除去することで、ビア10をコア基板3上に形成する。スミアを除去することで、複合基板の耐リフロー性及び信頼性を向上することができる。
【0118】
ドライデスミア処理としては、例えば、酸素プラズマ処理、アルゴンプラズマ処理、及び窒素プラズマ処理が挙げられる。
【0119】
ウェットデスミア処理としては、例えば、デスミア液による処理が挙げられる。デスミア液としては、例えば、過マンガン酸ナトリウム液、水酸化ナトリウム液、過マンガン酸カリウム液、クロム液、及び硫酸が挙げられる。デスミア液は、市販の前処理液及びデスミア液を用いてもよい。前処理液としては、例えば、膨潤液(株式会社アトテックジャパン製、商品名「スウェリングディップセキュリガント」)を用いることができる。デスミア液として、例えば、粗化液(アトテックジャパン株式会社製、商品名「コンセントレートコンパクトCP」)を用いることができる。デスミア後の中和に使用する薬液として、例えば、中和液(アトテックジャパン株式会社製、商品名「リダクションセキュリガント」)を用いることができる。
【0120】
デスミア処理における膨潤条件として、膨潤液の温度が50~80℃であり、浸漬時間が1~30分以下であってもよい。膨潤処理後に、開口部を純水又は市水によって洗浄してもよい。また、膨潤処理後、デスミア液で粗化処理する工程を実施する。デスミア条件として、デスミア液の温度は30~80℃で、浸漬時間は1~30分で実施されてもよい。デスミア処理後、純水又は市水によって洗浄してもよい。デスミア処理後、中和工程を実施する。中和温度は25~50℃で、浸漬時間は1~10分であってもよい。中和処理後、純水又は市水によって洗浄してもよい。
【0121】
スミア2aは、ドライデスミア処理又はウェットデスミア処理の一方の処理で容易に除去することができる。これにより、複合基板の製造工程を短縮することができる。
【0122】
工程(d)
図1の(d)に示すように、工程(d)では、ビア10の底面及び側面に導体層20を形成する。導体層20は、フッ素樹脂基板1の表面にも形成してよい。また、工程(d)は、工程(c)で形成したビア10の表面を改質処理する工程を実施した後に行ってもよい。導体層20は、例えば、無電解めっきによって形成することができる。無電解めっきにより形成される無電解めっき層の厚さは、例えば、50~500nm、80~400nm、又は100~300nmであってもよい。
【0123】
導体層20として銅層を形成する場合、無電解めっき液として市販のめっき液を使用すればよく、例えば、無電解銅めっき液(アトテックジャパン株式会社製、商品名「カッパーソリューションプリントガントMSK」)を用いることができる。無電解銅めっきの形成は、20~40℃の無電解銅めっき液中で実施される。
【0124】
無電解めっきを行った後、無電解めっき層をシード層として利用し、無電解めっき層の表面上に電解めっきによって電解めっき層を設けることで、導体層20を形成してもよい。電解めっきは公知の方法による行うことができ、特に制限はない。無電解めっきと電解めっきを併用することで形成される導体層20の厚さは、5~100μm、10~75μm、又は15~50μmであってよい。
【0125】
本実施形態に係る複合基板の製造方法により、フッ素樹脂基板を備える積層体にビアを形成することで、耐リフロー性及び信頼性に優れる複合基板を得ることができる。
【0126】
以上、本開示の好適な実施形態を説明したが、これらは本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態とは異なる種々の態様で実施することができる。
【実施例0127】
以下、本開示を実施例に基づいて更に詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0128】
(樹脂組成物)
攪拌装置を備えた容器に、シリカスラリー(株式会社アドマテックス製、商品名「SC-2050KNK」)104.4g、トルエン9.1g、(A)成分21.3g、及び(B)成分5.1g、触媒(2,5’-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、日油株式会社製、商品名「パーヘキシン25B」)0.53gを投入し、25℃で1時間攪拌して混合した。混合物を#200ナイロンメッシュを用いてろ過し、樹脂組成物を得た。
【0129】
(A)成分:下記式(XII-3)で表される構造を有するマレイミド化合物(Designer Molecules Inc製、商品名「BMI-1500」)を(A)成分として用いた。
【化18】
【0130】
(B)成分:芳香族マレイミド化合物である2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニルプロパン(大和化成工業株式会社製、商品名「BMI-4000」)を(B)成分として用いた。
【0131】
(樹脂フィルム)
樹脂組成物を、コンマコーターを用いて、PETフィルム(東洋紡株式会社製、商品名「G2」、厚さ:38μm)上に塗工した後、130℃で乾燥して、半硬化状態の樹脂層を備えるPETフィルム付き樹脂フィルムを作製した。樹脂フィルム(接着層)の厚さは25μmであった。
【0132】
(フッ素樹脂基板積層体)
PTFE基板として、高周波用PTFE基板(Rogers社製、商品名「RT5880」)の片面を過硫酸アンモニウムでエッチングしたPTFE基板を準備し、コア基板として、銅張積層板(昭和電工マテリアルズ株式会社製、商品名「MCL-E705G」)を準備した。PTFE基板のエッチング面に、PETフィルムを剥離した樹脂フィルム、銅張積層板の順に配置し、200℃、4.0MPa、80分の条件で加熱及び加圧成形することで、フッ素樹脂基板積層体を作製した。
【0133】
[実施例1]
炭酸ガスレーザー加工機(ビアメカニクス株式会社製、商品名「LUC-2K21」、レーザー波長9.4μm)により、フッ素樹脂基板積層体のPTFE基板の表面に炭酸レーザーを照射して、開口径150μmの開口部を形成した。
【0134】
(ドライデスミア処理)
開口部のスミアを除去するために、プラズマ処理装置を用いて、ドライデスミア処理を行い、銅張積層板(コア基板)上にビアを形成した。ドライデスミア処理は、ステップ1で酸素ガス(流量:1200sccm、2.0×10-5m3/秒)及び窒素ガス(流量:200sccm、3.3×10-6m3/秒)を1000秒、ステップ2で酸素ガス(流量:1000sccm、1.7×10-5m3/秒)、窒素ガス(流量:100sccm、1.7×10-6m3/秒)及びCF4(流量:100sccm、1.7×10-6m3/秒)を1800秒、ステップ3で酸素ガス(流量:1500sccm、2.5×10-5m3/秒)を300秒で行った。
【0135】
(改質処理)
ビアを形成した積層体を、プラズマ処理装置を用い、酸素及び空気の混合ガス(O2:Ar=20:80)で1200秒、窒素及び水素の混合ガス(N2:H2=20:80)で1800秒、及び窒素ガスで900秒の順に処理して、ビア表面の改質処理を行った。
【0136】
(導体層の形成)
改質処理後の積層体を、PdCl2を含む無電解めっき用触媒(アトテックジャパン株式会社製、商品名「アクチベーターネオガント834」)に35℃で5分間浸漬した後、無電解銅めっき用めっき液(アトテックジャパン株式会社製、商品名「プリントガントMSK-DK」)に室温で15分間浸漬することで無電解めっきを行い、更に、電流密度2A/dm2で90分間硫酸銅電解めっきを行った。その後、アニールを170℃で30分間行い、PTFE基板の表面と、ビアの側面及び底面とを覆う、厚さ30μmの導体層が形成された複合基板を得た。
【0137】
[実施例2]
開口部のスミアを除去するためのデスミア処理をウェットデスミア処理に変更して、コア基板上にビアを形成した以外は、実施例1と同じ手順で複合基板を得た。ウェットデスミア処理は、以下の手順で行った。
【0138】
(ウェットデスミア処理)
開口部を形成した積層体を、膨潤液(アトテックジャパン株式会社製の商品名「スウェリングディップセキュリガントP」、グリコールエーテル類、及び水酸化ナトリウムの水溶液)に70℃で5分間浸漬した後、水洗した。次いで、粗化液(アトテックジャパン株式会社製の商品名「コンセントレートコンパクトCP」、KMnO4:60g/L、及びNaOH:40g/Lの水溶液)に80℃で5分間浸漬した後、水洗した。その後、中和液((アトテックジャパン株式会社製の商品名「リダクションソリューシンセキュリガントP500」及び硫酸の水溶液)に40℃で5分間浸漬した後、水洗し、80℃で10分間乾燥した。
【0139】
[実施例3]
開口部のスミアを除去するために、ドライデスミア処理後、ウェットデスミア処理を更に行って、コア基板上にビアを形成した以外は、実施例1と同じ手順で複合基板を得た。
【0140】
[評価]
作製した複合基板について、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0141】
(ビア形成性)
走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製、SU3500)を用いて、複合基板のビア断面を観察することで、ビア形成性を評価した。
【0142】
(接続信頼性)
複合基板を温度サイクル試験機(エスペック株式会社製、TSA-EL)にセットし、-65℃で10分間保持、125℃で10分間保持のヒートサイクルを繰り返し行うサイクル試験を実施した。サイクル試験中、複合基板の接続抵抗値の変動をモニタリングし、100サイクル後の接続抵抗値の変動率が5%未満の場合を「A」、変動率が5%以上の場合を「B」と評価した。
【0143】
【0144】
表1から、ドライデスミア処理又はウェットデスミア処理の一方のみの工程であっても、ドライデスミア処理及びウェットデスミア処理を併用した工程と同様に、スミアが除去され、ビアの表面に導体層が形成されていることが確認できる。