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特開2024-82856電磁シールド構造、電磁シールド構造の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082856
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】電磁シールド構造、電磁シールド構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20240613BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20240613BHJP
   H01R 13/6592 20110101ALI20240613BHJP
【FI】
H05K9/00 L
H02G3/04 062
H01R13/6592
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197019
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】井上 郁哉
(72)【発明者】
【氏名】榊 直哉
【テーマコード(参考)】
5E021
5E321
5G357
【Fターム(参考)】
5E021FB07
5E021FC19
5E021LA21
5E321AA23
5E321AA24
5E321BB41
5E321BB44
5E321BB53
5E321CC16
5E321GG05
5E321GG09
5G357DA05
5G357DC12
5G357DD05
5G357DG05
(57)【要約】
【課題】 接続作業性が良好であり、その後の配策作業性にも優れた電磁シールド構造等を提供する。
【解決手段】 まず、編組線13の端部を環状部材15に挿入する。環状部材15は、管状金属部11よりも低融点の金属部を有する。次に、環状部材15を編組線13の根本側に退避させて、管状金属部11の端部を編組線13の端部に挿入する。次に、環状部材15を管状金属部11と編組線13との重なり部に移動させる。すなわち、管状金属部11及び編組線13の外周部に環状部材15を配置する。この状態から、環状部材15を外周部から加熱装置17によって加熱して溶融させて凝固させることで、編組線13と管状金属部11とを接合することができる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
編組線と管状金属部との接続部における電磁シールド構造であって、
前記管状金属部の端部が前記編組線の端部に挿入され、前記編組線の外周部に配置された前記管状金属部よりも低融点の金属部を有する環状部材の溶融凝固によって、前記編組線と前記管状金属部とが接合されていることを特徴する電磁シールド構造。
【請求項2】
前記管状金属部は、内部に電線を挿通可能な電磁シールド管の一部であり、
前記電磁シールド管は、金属層と、前記金属層の外周に形成される外部樹脂層とを有し、前記管状金属部は、前記電磁シールド管の端部の前記外部樹脂層が除去されて露出した前記金属層であることを特徴とする請求項1記載の電磁シールド構造。
【請求項3】
前記電磁シールド管は、前記金属層の内周に形成される内部樹脂層を有することを特徴とする請求項2記載の電磁シールド構造。
【請求項4】
前記管状金属部と前記編組線の接合部における前記管状金属部の内径が、前記外部樹脂層に覆われた前記電磁シールド管の内径と略同一であることを特徴とする請求項2記載の電磁シールド構造。
【請求項5】
前記環状部材は、相対的に融点の高い外周側の外層と、前記外層の内周側に配置され、相対的に融点の低い低融点金属部とを有し、前記低融点金属部の溶融凝固によって、前記編組線と前記管状金属部とが接合されていることを特徴する請求項2記載の電磁シールド構造。
【請求項6】
編組線と管状金属部との接続部における電磁シールド構造の製造方法であって、
前記編組線を、前記管状金属部よりも低融点の金属部を有する環状部材に挿入する工程と、
前記環状部材を退避させて、前記管状金属部の端部を前記編組線の端部に挿入する工程と、
前記環状部材を前記管状金属部と前記編組線との重なり部に移動させる工程と、
前記環状部材を加熱して溶融させて凝固させることで、前記編組線と前記管状金属部とを接合する工程と、
を具備することを特徴する電磁シールド構造の製造方法。
【請求項7】
前記管状金属部は、内部に電線を挿通可能な電磁シールド管の一部であり、
前記電磁シールド管は、金属層と、前記金属層の外周に形成される外部樹脂層とを有し、前記電磁シールド管の端部の前記外部樹脂層を除去して、前記管状金属部を露出させる工程を有し、
前記管状金属部は、前記電磁シールド管の端部の前記外部樹脂層が除去されて露出した前記金属層であることを特徴とする請求項6記載の電磁シールド構造の製造方法。
【請求項8】
前記管状金属部を前記編組線に挿入する前に、前記管状金属部の外周部に、さらに他の低融点金属を配置する工程を有することを特徴とする請求項6記載の電磁シールド構造の製造方法。
【請求項9】
前記環状部材は、相対的に融点の高い外周側の外層と、前記外層の内周側に配置され、相対的に融点の低い低融点金属部とを有し、
前記環状部材を加熱する際に、前記外層は溶融させず、前記低融点金属部のみを溶融凝固させて前記編組線と前記管状金属部とを接合することを特徴する請求項6記載の電磁シールド構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に電線が通線され、例えば電気自動車に用いられる電磁シールド構造等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ケーブルの保護管としては、鋼管やアルミニウムパイプなどの金属管や樹脂製のコルゲート管が用いられている。この際、保護管に収容されるケーブルから発生するノイズの影響や、外部からのノイズが内部のケーブルに与える影響が問題となる場合がある。例えば、ハイブリッド自動車においては、インバータ装置からの三相交流出力を駆動モータに供給するケーブルを保護するため、車体の下部等に車体の形状に合わせて保護管が配管される。この際、ケーブルから発生するノイズによってラジオ等に雑音が入ることから、シールド対策が必要である。
【0003】
このような電磁シールド構造としては、金属製の電磁シールド管を用い、電磁シールド管の端部には、例えば編組線などの可撓性導体が被せられて接続される。この状態で、外周からリング状部材で締め込むことで、電磁シールド管と可撓性導体との導通をとるとともに、可撓性導体を電磁シールド管に接続することができる(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開公報WO2018/056460
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、可撓性導体を用いることで、電磁シールド管の内部に挿通される電線と、他の電気機器と接続部を導体で覆うことができるため、接続部のシールド性を確保することができる。
【0006】
しかし、電磁シールド管と可撓性導体との接続にカシメリングを用いる必要があるため、部品点数が多くなるという問題がある。また、特許文献1では、カシメリングが、いわゆるイヤークランプであるため、クランプ後にイヤー部分が電磁シールド管の外径より突出する。このため、車両等への配策時にイヤー部が配策の邪魔になる恐れがある。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、接続作業性が良好であり、その後の配策作業性にも優れた電磁シールド構造等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、編組線と管状金属部との接続部における電磁シールド構造であって、前記管状金属部の端部が前記編組線の端部に挿入され、前記編組線の外周部に配置された前記管状金属部よりも低融点の金属部を有する環状部材の溶融凝固によって、前記編組線と前記管状金属部とが接合されていることを特徴する電磁シールド構造である。
【0009】
前記管状金属部は、内部に電線を挿通可能な電磁シールド管の一部であり、前記電磁シールド管は、金属層と、前記金属層の外周に形成される外部樹脂層とを有し、前記管状金属部は、前記電磁シールド管の端部の前記外部樹脂層が除去されて露出した前記金属層であってもよい。
【0010】
前記電磁シールド管は、前記金属層の内周に形成される内部樹脂層を有してもよい。
【0011】
前記管状金属部と前記編組線の接合部における前記管状金属部の内径が、前記外部樹脂層に覆われた前記電磁シールド管の内径と略同一であることが望ましい。
【0012】
前記環状部材は、相対的に融点の高い外周側の外層と、前記外層の内周側に配置され、相対的に融点の低い低融点金属部とを有し、前記低融点金属部の溶融凝固によって、前記編組線と前記管状金属部とが接合されてもよい。
【0013】
第1の発明によれば、編組線と環状金属部とが、例えばロウ付け又は半田付け等の低融点金属で接続されるため、他のクランプ部材等を用いる必要がなく、イヤークランプのように突出部がないため、その後の配策作業も容易である。例えば、シールド構造の外周部に突出部がないため、車両に配策する際に省スペースでの配策が可能である。
【0014】
また、低融点の金属部を有する環状部材を用いるため、編組線と環状金属部とが重ねあった外周部に配置した際に、編組線を外周から押さえることができるため、位置ずれや作業時における抜けなどを抑制することができる。また、環状部材であるため、溶融させた際に、全周にわたってほぼ均一な量の低融点金属を配置することができるため、例えば板状又は線状の半田等を外部に巻き付けて配置する場合と比較して、品質を安定させることができる。また、板状又は線状の半田等を所定量に切断して編組線の外周に巻き付けるなどの作業が不要となる。
【0015】
このようなシールド構造は、コネクタハウジング等に用いることも可能であるが、電磁シールド管に好適に適用することができる。
【0016】
また、電磁シールド管の内面に内部樹脂層を形成することで、例えば曲げ加工の際に、金属層の偏平等を抑制することができる。
【0017】
また、金属層と編組線の接合部における電磁シールド管の内径が、他の部位における電磁シールド管の内径と略同一であれば、内部に電線を挿通する際の妨げとなることがない。例えば、従来のかしめによる方法では、接続部における電磁シールド管が縮径されるため、この縮径部の内径を考慮して、挿通可能な電線径が決まる。このため、接続部以外の部位では、電線と電磁シールド管との間には、不要な隙間が形成される。しかし、縮径部がなければ、接続部以外の部位においても、内部の電線径に対して適切なサイズの電磁シールド管を用いることができるため、車両に配策する際に、より省スペースでの配策が可能である。
【0018】
また、環状部材が、相対的に融点の高い外周側の外層と、外層の内周側に配置され、相対的に融点の低い低融点金属部とを有すれば、低融点金属部の溶融凝固によって、編組線と管状金属部とが接合された際に、外周部には非溶融部を形成することができる。このため、見た目に優れ、外面の凹凸の形成を抑制することで、取扱時における他の部材への傷の発生等を抑制することができる。
【0019】
第2の発明は、編組線と管状金属部との接続部における電磁シールド構造の製造方法であって、前記編組線を、前記管状金属部よりも低融点の金属部を有する環状部材に挿入する工程と、前記環状部材を退避させて、前記管状金属部の端部を前記編組線の端部に挿入する工程と、前記環状部材を前記管状金属部と前記編組線との重なり部に移動させる工程と、前記環状部材を加熱して溶融させて凝固させることで、前記編組線と前記管状金属部とを接合する工程と、を具備することを特徴する電磁シールド構造の製造方法である。
【0020】
前記管状金属部は、内部に電線を挿通可能な電磁シールド管の一部であり、前記電磁シールド管は、金属層と、前記金属層の外周に形成される外部樹脂層とを有し、前記電磁シールド管の端部の前記外部樹脂層を除去して、前記管状金属部を露出させる工程を有し、前記管状金属部は、前記電磁シールド管の端部の前記外部樹脂層が除去されて露出した前記金属層であってもよい。
【0021】
前記管状金属部を前記編組線に挿入する前に、前記管状金属部の外周部に、さらに他の低融点金属を配置する工程を有してもよい。
【0022】
前記環状部材は、相対的に融点の高い外周側の外層と、前記外層の内周側に配置され、相対的に融点の低い低融点金属部とを有し、前記環状部材を加熱する際に、前記外層は溶融させず、前記低融点金属部のみを溶融凝固させて前記編組線と前記管状金属部とを接合してもよい。
【0023】
第2の発明によれば、編組線に管状金属部を挿入した後、環状部材を移動させるため、編組線を環状部材によって仮止めすることができる。また、イヤークランプのように突出部がないため、その後の配策作業も容易である。例えば、シールド構造の外周部に突出部がないため、車両に配策する際に省スペースでの配策が可能である。
【0024】
このようなシールド構造は、コネクタハウジング等に用いることも可能であるが、電磁シールド管に好適に適用することができる。
【0025】
また、あらかじめ管状金属部の外周に他の低融点金属を配置することで、溶融させた際に、編組線の内外面から溶融金属を浸透させることができる。このため、より確実に編組線と管状金属部とを接合することができる。
【0026】
また、環状部材が、相対的に融点の高い外周側の外層と、外層の内周側に配置され、相対的に融点の低い低融点金属部とを有すれば、低融点金属部の溶融凝固によって、編組線と管状金属部とが接合された際に、外周部に非溶融部を形成することができる。このため、見た目に優れ、外面の凹凸の形成を抑制することで、他の部材への傷の発生等を抑制することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、接続作業性が良好であり、その後の配策作業性にも優れた電磁シールド構造等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】(a)は電磁シールド管1を示す斜視図、(b)は(a)のA-A線断面図。
図2】電磁シールド管1の長手方向の断面図であり、図1(a)のB-B線断面図。
図3】(a)、(b)は、電磁シールド管1に編組線を接続する工程を示す図。
図4】(a)、(b)は、電磁シールド管1に編組線を接続する工程を示す図。
図5】電磁シールド管1に編組線を接続する工程を示す図。
図6】電磁シールド構造10の使用状態を示す図。
図7】他の電磁シールド構造10aを示す図。
図8】他の環状部材15aを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態にかかる電磁シールド管1について説明する。図1(a)は電磁シールド管1の斜視図であり、図1(b)は電磁シールド管1の長手方向に垂直な断面図であって、図1(a)のA-A線断面図である。また、図2は、電磁シールド管1の長手方向の断面図であって、図1のB-B線断面図である。
【0030】
電磁シールド管1は、最内層に樹脂製の内部樹脂層3が形成され、内部樹脂層3の外周に金属層5が形成され、金属層5の外周に樹脂製の外部樹脂層7が形成される。すなわち、内部樹脂層3および外部樹脂層7の間に金属製の金属層5が形成されて構成される。ここで、電磁シールド管1の端部の外部樹脂層7が除去されて露出した金属層5を管状金属部11とする。すなわち、管状金属部11は、内部に電線を挿通可能な電磁シールド管1の一部である。
【0031】
なお、電磁シールド管1には、内部樹脂層3は、必ずしも必須ではない。すなわち、電磁シールド管1は、金属層5と、金属層5の外周に設けられる外部樹脂層7のみであってもよい。内部樹脂層3を設ける場合、内部樹脂層3と金属層5との界面には、接着層を有する。内部樹脂層3は、金属層5との線膨張係数の違いによる歪の影響が大きいため、内部樹脂層3と金属層5との間に接着層などを介在させることが好ましい。
【0032】
一方、金属層5と外部樹脂層7の界面には、接着層は形成されないことが好ましい。このようにすることで、外部樹脂層7のみを容易に剥離することができ、外部樹脂層7の剥離時に、金属層5が外部樹脂層7とともに剥がれて破けることなどを防止することができる。したがって、電磁シールド管1の端部の外部樹脂層7を容易に剥離することができる。
【0033】
前述したように、電磁シールド管1は、端部から所定の長さだけ、外部樹脂層7が除去され、電磁シールド管1の端部には、所定の範囲だけ金属層5が露出して、管状金属部11が形成される。管状金属部11は、可撓性導体である編組線が接続される部位となる。なお、管状金属部11の外周面には、編組線との接触面積を増加させ、後述する低融点金属との接合強度を高めるため、ローレット加工、エンボス加工、溝加工、ブラスト加工、エッチング、めっき処理など(表面に凹凸を形成する処理を総称して粗面化処理とする)を形成してもよい。編組線が接続されたシールド構造については、後述する。
【0034】
内部樹脂層3と外部樹脂層7を構成する樹脂は、いずれも同じ樹脂であっても異なる樹脂であってもよい。なお、樹脂は架橋や変性してもよい。例えば、耐熱性を向上させるために架橋されていてもよいし、接着性を向上させるためにマレイン酸変性されていてもよい。また、ハロゲン系、リン系、金属水和物等の難燃剤を添加してもよく、酸化チタン等を添加して耐候性を向上させてもよい。
【0035】
なお、このような難燃剤や耐候性を向上させるための添加剤等は、外部樹脂層7を構成する樹脂にのみ添加してもよい。すなわち、難燃性や耐候性を必要としない内部樹脂層3の樹脂には添加しなくてもよい。
【0036】
金属層5は、シールド効果を得ることが可能であれば、銅や鉄を用いてもよいが、軽量化や曲げ加工性等を考慮すると、アルミニウム製(アルミニウム合金を含む)とすることが望ましい。
【0037】
金属層5は、例えば、帯状部材である金属薄板(金属シート含む)をフォーミング加工機で、フォーミング加工しつつ、端部同士が突き合わさるように内部樹脂層3の樹脂管の外周に送り筒状にして、帯状部材の突き合わせ部が溶接機で溶接される。このように製造することで、図1(b)に示すように、金属層5の一部には接合部9が形成される。したがって、図に示す断面において、シールド層を形成する金属層5には隙間が形成されることがない。
【0038】
次に、編組線と電磁シールド管1の管状金属部11との接続部における電磁シールド構造の製造方法について説明する。まず、図3(a)、図3(b)に示すように、編組線13の端部を環状部材15に挿入する。環状部材15は、管状金属部11及び編組線13よりも低融点の金属部を有する。環状部材15は、全周にわたって一体化した環状の部材である。
【0039】
環状部材15としては、例えば、銀ロウ、銅・黄銅、りん銅ロウ、アルミロウや半田などを適用可能である。また、管状金属部11及び編組線13がステンレスの場合には、環状部材15をステンレスよりも融点の低いアルミニウム(合金含む)などの金属で構成してもよい。
【0040】
次に、図4(a)に示すように、環状部材15を編組線13の根本側に退避させて、管状金属部11の端部を編組線13の端部に挿入する。なお、あらかじめ電磁シールド管1の端部の外部樹脂層7を除去して、管状金属部11を露出させておく。この際、管状金属部11を編組線13に挿入する前に、管状金属部11の外周部に、さらに他の低融点金属(例えば、ロウ材や半田等の環状部材15と同じもの)を配置しておいてもよい。
【0041】
この場合、他の低融点金属としては、板状や線状の部材を巻き付けてもよく、ペースト状の低融点金属を塗布してもよく、又は、環状部材15と同様に環状に一体化した部材であってもよい。環状で一体化した部材の場合には、内径を管状金属部11の外径に対応させ、管状金属部11の外周に低融点金属を押し込むことで、低融点金属を管状金属部11に仮固定することができる。
【0042】
次に、図4(b)に示すように、環状部材15を管状金属部11と編組線13との重なり部に移動させる。すなわち、管状金属部11及び編組線13の外周部に環状部材15を配置する。この際、環状部材15の内径は、管状金属部11の外径に編組線13の厚みを加えたもの(他の低融点金属を配置する場合にはその径を含む)と略一致する。したがって、環状部材15を管状金属部11の外周部に移動させると、編組線13を管状金属部11の外周に押し付けて仮固定した状態とすることができる。
【0043】
この状態から、図5に示すように、環状部材15を外周部から加熱装置17によって加熱して溶融させて凝固させることで、編組線13と管状金属部11とを接合することができる。なお、編組線13の内面側にも低融点金属を配置した場合には、環状部材15とともに溶融させて凝固させる。
【0044】
この際、加熱装置17としては特に限定されないが、例えばレーザ等を熱源として用いることができる。この場合、短時間に局所的な加熱が可能となり、例えば外部樹脂層7が熱で劣化することを抑制することができる。また、熱影響を与えたくない部位に熱伝導材を接触させて熱影響を低減してもよい。以上により編組線13と管状金属部11との接続部における電磁シールド構造を得ることができる。
【0045】
なお、環状部材15は、溶融時に編組線13の空隙を介して編組線13の内面側に浸透する。このため、環状部材15を溶融すると、環状部材15の外径は全体的に小さくなる。したがって、溶融凝固時後の環状部材15の外径が、外部樹脂層7の外径以下であれば、接合部の外径が他の部位に対して大きくなることがない。
【0046】
このように、管状金属部11と編組線13の接合部における外径が、外部樹脂層7の外径よりも小さくすることができるため、外部への突出部がなく、配策作業等において邪魔になることがない。なお、編組線13に被せる長さを、管状金属部11の長さ以上(例えば約2倍)として、環状部材15の溶融凝固後に編組線13の端部を接合部に折り返して接合部の外周を編組線13で覆ってもよい。
【0047】
電磁シールド管1は、かしめリング等が用いられないため、いずれの位置も縮径されていない。すなわち、管状金属部11と編組線13の接合部における電磁シールド管1の内径(すなわち、内部樹脂層3の内径)は、外部樹脂層7に覆われた電磁シールド管1の内径(すなわち、管状金属部11が露出していない部位の電磁シールド管1の内径)と略同一である。このため、内部に挿入する電線の径に対して、縮径部を考慮する必要がなく、縮径部がある場合と比較して、電磁シールド管1の断面積に対して挿入可能な電線の径を大きくすることができる。また、縮径(管状金属部11の変形)がないため、内部樹脂層3と管状金属部11との接着層を傷めることを抑制することができる。
【0048】
次に、電磁シールド構造10の使用例を説明する。図6は、電磁シールド構造10を示す部分断面図である。電磁シールド管1内部には、電線21が挿通される。被覆線である電線21の端部には、端子23が接続される。なお、電線21の本数は、図示した例には限られない。
【0049】
電磁シールド管1の端部からは、電線21が引き出される。電線21の端子23は、接続対象である接続機器25に接続される。なお、接続機器25は、例えば、筐体19内部に配置される。筐体19は、例えば金属製であり、シールド性を有する。
【0050】
電磁シールド管1の端部の管状金属部11の外周には、編組線13の一方の端部が被せられ、溶融凝固した環状部材15によって、管状金属部11と接続される。前述したように、編組線13はシールド性を有する。
【0051】
編組線13の他方の端部は、筐体19に接続される。編組線13によって、管状金属部11(金属層5)と筐体19が導通する。また、必要に応じて、電磁シールド管1及び編組線13を覆うように、樹脂製の外装体18が配置される。
【0052】
なお、図示した電磁シールド構造10では、一つの編組線13が電磁シールド管1(管状金属部11)に被せられて用いられる例を示したが、本発明はこれに限られない。例えば、電線21が複数に分岐される場合には、それぞれの電線21および接続対象までを覆う編組線13を用い、複数の編組線13を重ねて、管状金属部11に接合することもできる。
【0053】
また、外装体18や外部樹脂層7の端部などにおいて、止水性を確保するための部材を配置してもよい。
【0054】
また、上述した例では電磁シールド管1における電磁シールド構造を示したが、これには限られない。例えば、図7に示すように、コネクタハウジング26における電磁シールド構造10aとして利用することもできる。この場合には、コネクタハウジング26の一部に形成された金属製の管状金属部11aの外周に編組線13の端部が被せられ、この外周に配置された環状部材15を加熱して溶融させ凝固させることで、編組線13と管状金属部11aとを接合することができる。
【0055】
また、上述した説明では、環状部材15が単一の半田やロウ材等の低融点金属から構成される例を示したがこれには限られない。例えば、図8に示すような複数層の環状部材15aを用いてもよい。
【0056】
環状部材15aは、相対的に融点の高い外周側の外層27と、外層27の内周側に配置され、相対的に融点の低い低融点金属部29とを有する。低融点金属部29は、接続対象となる管状金属部の融点よりも低い金属で構成される。この場合でも、環状部材15aを加熱により低融点金属部29を溶融させて、その後凝固させることによって、編組線13と管状金属部とを接合することができる。
【0057】
また、外層27の融点は、例えば管状金属部の融点以上であり、環状部材15aを加熱する際に、外層27は溶融させずに、低融点金属部29のみを溶融凝固させて編組線13と管状金属部とを接合することで、接合後において外層27をそのままの形態で残すことができる。このため、低融点金属部29の溶融凝固時における凹凸等が外周部に露出することがない。このため、見た目がよく、また、外周部に凹凸がないため、他の部材等との接触で他の部材を傷つけてしまうことを抑制することができる。
【0058】
なお、この場合には、低融点金属部29によって、編組線13と管状金属部に加えて外層27も共に接合される。また、電磁シールド管1に適用した場合において、外層27の外径が外部樹脂層7の外径以下であれば、接合部において電磁シールド管1の外径が大きくなることを抑制することができる。
【0059】
なお、外層27の厚みを低融点金属部29の厚みよりも薄くすることで、接合に必要な低融点金属部29の量を確保しつつ、接合後における最小限の外径とすることができる。また、外層27の厚みを低融点金属部29の厚みよりも厚くすることで、接合後に残る外層27の十分な強度を確保することができる。
【0060】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0061】
1………電磁シールド管
3………内部樹脂層
5………金属層
7………外部樹脂層
9………接合部
10、10a………電磁シールド構造
11、11a………管状金属部
13………編組線
15、15a………環状部材
17………加熱装置
18………外装体
19………筐体
21………電線
23………端子
25………接続機器
26………コネクタハウジング
27………外層
29………低融点金属部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8