IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本放送協会の特許一覧

<>
  • 特開-LDM送信システム 図1
  • 特開-LDM送信システム 図2
  • 特開-LDM送信システム 図3
  • 特開-LDM送信システム 図4
  • 特開-LDM送信システム 図5
  • 特開-LDM送信システム 図6
  • 特開-LDM送信システム 図7
  • 特開-LDM送信システム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083106
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】LDM送信システム
(51)【国際特許分類】
   H04J 99/00 20090101AFI20240613BHJP
   H04B 7/185 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
H04J99/00 100
H04B7/185
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197433
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100143568
【弁理士】
【氏名又は名称】英 貢
(72)【発明者】
【氏名】亀井 雅
(72)【発明者】
【氏名】小島 政明
(72)【発明者】
【氏名】小泉 雄貴
【テーマコード(参考)】
5K072
【Fターム(参考)】
5K072AA12
5K072BB02
5K072BB14
5K072BB22
5K072DD02
5K072DD17
5K072GG12
5K072GG13
5K072GG33
5K072GG36
5K072GG42
(57)【要約】
【課題】階層分割多重(LDM)方式に係るアップリンク信号の帯域幅を増大させることなく構成した送信装置と、その送信装置からのアップリンク信号を簡素な処理で中継伝送する機能を有する衛星中継器と、を備えるLDM送信システムを提供する。
【解決手段】本発明のLDM送信システム1Sは、送信装置10S及び衛星中継器20Sを備える。送信装置10Sは、高階層(UL)用及び低階層(LL)用のUL信号データ及びLL信号データについてアップリンク信号用変調器13Sにより結合し直交変調処理を施して単一のアップリンク信号を生成する。衛星中継器20Sは、送信装置10Sから得られるアップリンク信号に対して直交復調器27Sにより直交復調処理を施しビット分離によりUL信号データ及びLL信号データを復元し、その復元した各階層のデータを用いてLDM信号を生成する手段(28U,28L,23U,23L,24)を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重複する周波数を使用して複数の変調信号を重畳し受信装置に向けて送信する階層分割多重(LDM)方式のLDM送信システムであって、
高階層用及び低階層用の各変調信号に用いられる所定の誤り訂正符号化処理を施した各符号化データをそれぞれの高階層用のUL信号データ及び低階層用のLL信号データとしてそのままのデータ形式で結合することにより単一のアップリンク送信用データを生成し、前記アップリンク送信用データに対して直交変調処理を施すことにより単一のアップリンク信号を生成するアップリンク信号用変調手段を有する送信装置と、
前記送信装置からアップリンク送信された信号を受信して得られる単一の多値変調信号に対して直交復調処理を施すことにより当該アップリンク送信用データを抽出するとともに、単純なビット分離により前記UL信号データ及び前記LL信号データを復元する直交復調手段、及び前記直交復調手段から得られる前記LL信号データ及び前記LL信号データに対してそれぞれ高階層用及び低階層用の直交変調処理を施すことによりUL信号及びLL信号としてそれぞれ前記高階層用及び低階層用の各変調信号を生成し、当該UL信号及びLL信号毎に増幅器を使用して所定の電力比に基づいて電力調整しながら増幅し、増幅した後のUL信号及びLL信号を合成してLDM信号を生成し、当該受信装置向けのダウンリンク信号として送信するLDM信号生成手段を有する衛星中継器と、
を備えることを特徴とするLDM送信システム。
【請求項2】
前記アップリンク送信用データは、前記UL信号データ及び前記LL信号データについて、前記送信装置及び前記衛星中継器間で予め定めた結合手段により結合して構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のLDM送信システム。
【請求項3】
前記結合手段は、前記UL信号データを上位側に前記LL信号データを下位側にして単純結合するか、又は前記LL信号データを上位側に前記UL信号データを下位側にして単純結合するように構成されていることを特徴とする、請求項2に記載のLDM送信システム。
【請求項4】
前記衛星中継器は、前記直交復調手段と、所定のLDM復調器とを切り替え可能に併設し、前記直交復調手段と前記所定のLDM復調器とを切り替える切替手段を更に備え、
前記所定のLDM復調器は、LDM信号をアップリンク送信するように構成された別の送信装置から受信したアップリンク信号におけるLDM信号に対してLDM復調を施して前記直交復調手段から得られる前記LL信号データ及び前記LL信号データと同等のUL信号データ及びLL信号データを抽出するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のLDM送信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星デジタル放送又は衛星デジタル通信に係る送信装置及び衛星中継器により、重複する周波数を使用して複数の変調信号を重畳し、受信装置に向けて送信する階層分割多重(LDM:Layered Division Multiplex)方式のLDM送信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、柔軟なサービスや放送・通信の実現に向けた階層伝送方式として、日本の地上デジタル放送で使用されている周波数分割多重(FDM:Frequency Division Multiplex)と、BSデジタル放送で使用されている時間分割多重(TDM:Time Division Multiplex)とがある。また、これに加えて、米国の次世代地上デジタル放送のATSC3.0では階層分割多重(LDM)が開発・採用されている。
【0003】
階層分割多重(LDM)方式は、複数の変調信号を用いて、変調信号毎に電力を分割して割り当てることで、重複する周波数において信号の多重を行う技術である。そして、周波数分割多重(FDM)と階層分割多重(LDM)とを組み合わせた階層伝送方式についても検討されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
日本の地上デジタル放送にLDM方式を適用する場合では、そのLDMの変調信号毎にキャリア変調を行い、それらの信号を一つに合成してOFDM変調を行うことが想定される。例えば、非特許文献1に開示される周波数分割多重(FDM)と階層分割多重(LDM)とを組み合わせたLDM方式では、送信側のLDMの変調装置では2つの変調信号が合成された一つの変調信号を生成する。このため、その後段に接続される送信機や地上中継器では一つの変調信号として受信して増幅し、受信設備側のLDMの復調処理を有する受信装置に向けて伝送する。
【0005】
一方、衛星デジタル放送又は衛星デジタル通信の伝送システムにおいてLDM方式を適用する場合には、衛星中継器の増幅器の動作点を考慮した運用が望ましい。つまり、衛星デジタル放送又は衛星デジタル通信の伝送システムでは、限りのある衛星中継器の発生電力を有効に使用する必要があり、進行波管増幅器(TWTA:Travelling Wave Tube Amplifier)など衛星中継器に搭載される増幅器を電力効率の高い飽和点に近い動作点で運用することが望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】佐藤 明彦,外11名,“次世代地上放送に向けたLDMの適用に関する一検討”,一般社団法人映像情報メディア学会,映像情報メディア学会技術報告(ITE Technical Report),Vol.41, No.6, セッションID:BCT2017-34,pp.45-48,2017年2月23日発表
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、衛星デジタル放送又は衛星デジタル通信の伝送システムにおいてLDM方式を適用する場合には、衛星中継器の増幅器の動作点を考慮した運用が望ましい。
そこで、このような衛星デジタル放送又は衛星デジタル通信の伝送システムでLDM方式を適用する場合に、複数の変調信号を合成した後の信号に増幅器を使用するのではなく、非線形特性による劣化を低減するために変調信号毎に増幅器を使用して所定の電力比(IL)に基づいて電力調整しながら高出力化し、増幅した後の変調信号を合成することで、伝送特性を良好に維持しながら、各増幅器を飽和点に近い動作点で運用することが考えられる。
【0008】
図5は、典型的なLDM方式を適用した衛星デジタル放送又は衛星デジタル通信の伝送システム100の概略構成を示す図である。
【0009】
図5に示す伝送システム100は、アップリンク局を構成する送信装置10及び送信アンテナ10aと、衛星中継器20と、受信設備を構成する受信アンテナ30a及び受信装置30と、を備える。尚、図5に示すLDM送信システム1は、送信装置10及び送信アンテナ10a、並びに、衛星中継器20から構成される。
【0010】
図5に示すアップリンク局において、送信装置10は、高階層用及び低階層用の送信データを入力してLDM方式を適用するための各階層用の送信データに対応する複数の変調信号を生成し、この複数の変調信号を基にアップリンク信号を生成して、送信アンテナ10aを介して衛星中継器20に送信する。
【0011】
衛星中継器20は、アップリンク局からのアップリンク信号を受信して、LDM方式の信号(以下、「LDM信号」と称する。)をダウンリンク信号として生成(図6を参照して後述する。)又は復元(図7及び図8を参照して後述する。)し、受信設備に向けて放射する。
【0012】
そして、図5に示す受信設備において、受信装置30は受信アンテナ30aを介してダウンリンク信号を受信し、そのダウンリンク信号を構成するLDM信号を復調(例えば非特許文献1参照。)して高階層用及び低階層用の受信データを取得して外部に出力する。
【0013】
ここで、一般的なLDM信号は、2つの変調信号を同一周波数で重畳する構成として、高い電力を割り当てる高階層用の信号をUL(Upper layer)信号、低い電力を割り当てる低階層用の信号をLL(Lower layer)信号、UL信号とLL信号の電力比をIL(Injection level)とし、UL信号とLL信号とを合成(即ち、同一周波数で重畳)したものとなっている。
【0014】
このような伝送システム100において、従来技術からは、衛星中継器20の増幅器(図5では図示略。)の動作点を考慮した運用を実現するために、図5に示すLDM送信システム1として、典型的には2種類の形態(図6に示す従来例1のLDM送信システム1A、並びに図7及び図8に示す従来例2のLDM送信システム1B)が想定され、以下、順に説明する。
【0015】
(従来例1のLDM送信システム)
図6は、従来技術から想定されるLDM方式を適用した衛星デジタル放送又は衛星デジタル通信の従来例1のLDM送信システム1Aの概略構成を示す図である。
【0016】
図6に示す従来例1のLDM送信システム1Aは、アップリンク局を構成する送信装置10A(図5に示す送信装置10に対応する。)及び送信アンテナ10aと、衛星中継器20A(図5に示す衛星中継器20に対応する。)と、を備える。
【0017】
送信装置10Aは、高階層(UL)用の変調信号及び低階層(LL)用の変調信号を個別に衛星中継器20Aに向けてアップリンク送信するように構成され、UL用変調器11U、LL用変調器11L、UL用のアップコンバータ(U/C)12U、及びLL用のアップコンバータ(U/C)12Lを備える。
【0018】
UL用変調器11Uは、UL用として送信する送信データについて予め定めた誤り訂正符号化処理が施された符号化データをUL信号データとして入力し、直交変調処理(例えばQPSK等)を施してUL用の変調信号を生成し、UL信号としてU/C12Uに出力する。
【0019】
LL用変調器11Lは、LL用として送信する送信データについて予め定めた誤り訂正符号化処理が施された符号化データをLL信号データとして入力し、直交変調処理(例えば8PSK等)を施してLL用の変調信号を生成し、LL信号としてU/C12Lに出力する。
【0020】
UL用のU/C12Uは、UL用変調器11Uから得られるUL用の変調信号(UL信号)に対して衛星中継器20A向けのアップリンク信号として予め定められたUL用のアップリンク周波数帯域へと周波数変換を施し、送信アンテナ10aを介して衛星中継器20Aに送信する。
【0021】
LL用のU/C12Lは、LL用変調器11Lから得られるLL用の変調信号(LL信号)に対して衛星中継器20A向けのアップリンク信号として予め定められたLL用のアップリンク周波数帯域へと周波数変換を施し、送信アンテナ10aを介して衛星中継器20Aに送信する。
【0022】
従って、図6に示す従来例1のLDM送信システム1Aでは、送信装置10AにおいてLDM信号を生成せずに、UL用及びLL用の各変調信号をそれぞれ同一帯域幅の異なるアップリンク周波数帯域へと周波数変換を施したアップリンク信号を形成し、送信アンテナ10aを介して衛星中継器20Aに送信する。
【0023】
衛星中継器20Aは、受信アンテナ21、UL用のダウンコンバータ(D/C)22U、LL用のダウンコンバータ(D/C)22L、UL用の増幅器23U、LL用の増幅器23L、合成器24、及び送信アンテナ25を備える。
【0024】
受信アンテナ21は、送信アンテナ10aを介して送信装置10Aから送信されたアップリンク信号を受信して、UL用とLL用の異なるアップリンク周波数帯域の信号を分離し、UL用のアップリンク周波数帯域の信号についてはUL用のD/C22Uへ出力し、LL用のアップリンク周波数帯域の信号についてはLL用のD/C22Lへ出力する。
【0025】
UL用のD/C22Uは、受信アンテナ21を介して受信したUL用のアップリンク周波数帯域の信号に対して図5に示す受信装置30向けのダウンリンク信号としてLDM信号を生成するための伝送周波数帯域へと周波数変換を施し、伝送用のUL信号としてUL用の増幅器23Uに出力する。
【0026】
LL用のD/C22Lは、受信アンテナ21を介して受信したLL用のアップリンク周波数帯域の信号に対してD/C22UにおけるUL信号と同一周波数である当該伝送周波数帯域へと周波数変換を施し、伝送用のLL信号としてLL用の増幅器23Lに出力する。
【0027】
UL用の増幅器23Uは、TWTAで構成することができ、UL用のD/C22Uから得られるUL信号について、所定の電力比(IL)に基づいて電力調整しながら高出力化し、合成器24に出力する。
【0028】
LL用の増幅器23Lは、TWTAで構成することができ、LL用のD/C22Lから得られるLL信号について、当該所定の電力比(IL)に基づいて電力調整しながら高出力化し、合成器24に出力する。
【0029】
合成器24は、UL用の増幅器23Uから得られる電力調整後のUL信号と、LL用の増幅器23Lから得られる電力調整後のLL信号とを合成(即ち、同一帯域幅の同一周波数で重畳)することにより、LDM信号を生成し、図5に示す受信装置30向けのダウンリンク信号として送信アンテナ25を介して放射する。
【0030】
従って、図6に示す従来例1のLDM送信システム1Aでは、送信装置10AにおいてLDM信号を生成するのではなく、UL用及びLL用の各変調信号をアップリンク信号として送信アンテナ10aを介して衛星中継器20Aに送信する。また、衛星中継器20Aは、非線形特性による劣化を低減するために、受信したアップリンク信号におけるUL用及びLL用の各変調信号にそれぞれ対応するUL信号及びLL信号毎に増幅器23U,23Lを使用して所定の電力比(IL)に基づいて電力調整しながら高出力化し、増幅した後のUL信号及びLL信号を合成してLDM信号を生成する構成となっている。このため、送信装置10Aにおいては、UL用及びLL用の変調信号毎に異なる周波数でのアップリンク送信が必要となるため、重畳する変調信号分の広い帯域が必要となる。
【0031】
(従来例2のLDM送信システム)
図7は、従来技術から想定されるLDM方式を適用した衛星デジタル放送又は衛星デジタル通信の従来例2のLDM送信システム1Bの概略構成を示す図である。また、図8は、従来例2のLDM送信システム1BにおけるLDM復調器27の概略構成を示すブロック図である。尚、図7において、図6に示すものと同様の構成要素には同一の参照番号を付している。
【0032】
図7に示す従来例2のLDM送信システム1Bは、アップリンク局を構成する送信装置10B(図5に示す送信装置10に対応する。)及び送信アンテナ10aと、衛星中継器20B(図5に示す衛星中継器20に対応する。)と、を備える。
【0033】
送信装置10Bは、UL用の変調信号及びLL用の変調信号を合成したLDM信号を衛星中継器20Bに向けてアップリンク送信するように構成され、UL用変調器11U、LL用変調器11L、合成器13、及びLDM信号用のアップコンバータ(U/C)14を備える。
【0034】
図7に示すUL用変調器11Uは、図6に示す従来例1と同様に、UL用として送信する送信データについて予め定めた誤り訂正符号化処理が施された符号化データをUL信号データとして入力し、直交変調処理(例えばQPSK等)を施してUL用の変調信号を生成し、UL信号として合成器13に出力する。
【0035】
図7に示すLL用変調器11Lは、図6に示す従来例1と同様に、LL用として送信する送信データについて予め定めた誤り訂正符号化処理が施された符号化データをLL信号データとして入力し、直交変調処理(例えば8PSK等)を施してLL用の変調信号を生成し、LL信号として合成器13に出力する。
【0036】
合成器13は、当該UL用変調器11Uから得られるUL用の変調信号と、当該LL用変調器11Lから得られるLL用の変調信号とを合成(即ち、同一帯域幅の同一周波数で重畳)することにより、LDM信号を生成し、LDM信号用のU/C14に出力する。
【0037】
LDM信号用のU/C14は、合成器13から得られるLDM信号に対して衛星中継器20B向けのアップリンク信号として予め定められたLDM用のアップリンク周波数帯域へと周波数変換を施し、送信アンテナ10aを介して衛星中継器20Bに送信する。
【0038】
従って、図7に示す従来例2のLDM送信システム1Bでは、送信装置10BにおいてUL用及びLL用の各変調信号を合成してLDM信号を生成し、アップリンク周波数帯域へと周波数変換を施したアップリンク信号を形成し、送信アンテナ10aを介して衛星中継器20Bに送信する。
【0039】
衛星中継器20Bは、受信アンテナ21、LDM信号用のダウンコンバータ(D/C)26、LDM復調器27、UL用変調器28U、LL用変調器28L、UL用のアップコンバータ(U/C)29U、LL用のアップコンバータ(U/C)29L、UL用の増幅器23U、LL用の増幅器23L、合成器24、及び送信アンテナ25を備える。
【0040】
図7に示す受信アンテナ21は、送信アンテナ10aを介して送信装置10Bから送信されたアップリンク信号を受信して、そのアップリンク信号を構成するUL用及びLL用の各変調信号が合成されたLDM信号をLDM信号用のD/C26へ出力する。
【0041】
LDM信号用のD/C26は、受信アンテナ21から得られるLDM信号に対して所定の周波数帯域へと周波数変換を施し、ダウンコンバートLDM信号としてLDM復調器27に出力する。
【0042】
LDM復調器27は、LDM信号用のD/C26から得られるダウンコンバートLDM信号に対してLDM復調処理を施し、UL用の変調信号に用いられるUL信号データ(UL用の情報ビット及びパリティビットからなる符号化データ)と、LL用の変調信号に用いられるLL信号データ(LL用の情報ビット及びパリティビットからなる符号化データ)とを復元して、それぞれUL用変調器28U及びLL用変調器28Lに出力する。
【0043】
より具体的には、図8に示すように、LDM復調器27は、直交復調部271、UL信号復号部272、UL信号用パリティ再付加部273、及び減算部274を備える。
【0044】
直交復調部271は、LDM信号用のD/C26から得られるダウンコンバートLDM信号に対してUL信号とみなして送信装置10Bにおいて利用したUL信号の生成に用いた直交変調処理に対応する直交復調処理を施すことにより、UL信号とみなしたビット列を抽出し、UL信号復号部272に出力する。
【0045】
UL信号復号部272は、直交復調部271から得られるUL信号とみなしたビット列に対して送信装置10BにおいてUL用として利用した誤り訂正符号化処理に対応する復号処理を施すことにより、UL信号における情報ビットを高精度で抽出し、UL信号用パリティ再付加部273に出力する。
【0046】
UL信号用パリティ再付加部273は、UL信号復号部272から得られるUL信号における情報ビットに対して再度、送信装置10BにおいてUL用の変調信号の生成時に用いられた誤り訂正符号化処理を施すことによりパリティビットを付加してUL信号データ(UL用の情報ビット及びパリティビットからなる符号化データ)を再生成(即ち、復元)し、UL用変調器28Uに出力するとともに、再生成したUL信号データを減算部274に出力する。
【0047】
減算部274は、直交復調部271から得られる直交復調した信号のビット列から、UL信号用パリティ再付加部273から得られる再生成したUL信号データを減算することによりLL信号データ(LL用の情報ビット及びパリティビットからなる符号化データ)を再生成(即ち、復元)し、LL用変調器28Lへ出力する。
【0048】
このようにして、LDM復調器27は、LDM信号用のD/C26から得られるダウンコンバートLDM信号から、UL信号データとLL信号データとを復元して、それぞれ図7に示すUL用変調器28U及びLL用変調器28Lに出力する。
【0049】
UL用変調器28Uは、LDM復調器27から得られるUL信号データに対して送信装置10BにおいてUL用の変調信号の生成時に用いられた直交変調処理(例えばQPSK等)を施すことにより、送信装置10BにおけるUL用の変調信号を復元し、UL用のU/C29Uに出力する。
【0050】
LL用変調器28Lは、LDM復調器27から得られるLL信号データに対して送信装置10BにおいてLL用の変調信号の生成時に用いられた直交変調処理(例えば8PSK等)を施すことにより、送信装置10BにおけるLL用の変調信号を復元し、LL用のU/C29Lに出力する。
【0051】
UL用のU/C29Uは、UL用変調器28Uから得られるUL用の変調信号に対して図5に示す受信装置30向けのダウンリンク信号としてLDM信号を生成するための伝送周波数帯域へと周波数変換を施し、伝送用のUL信号としてUL用の増幅器23Uに出力する。
【0052】
LL用のU/C29Lは、LL用変調器28Lから得られるLL用の変調信号に対してU/C29UにおけるUL信号と同一周波数である当該伝送周波数帯域へと周波数変換を施し、伝送用のLL信号としてLL用の増幅器23Lに出力する。
【0053】
図7に示すUL用の増幅器23Uは、図6に示す従来例1と同様に、TWTAで構成することができ、UL用のU/C29Uから得られるUL信号について、所定の電力比(IL)に基づいて電力調整しながら高出力化し、合成器24に出力する。
【0054】
図7に示すLL用の増幅器23Lは、図6に示す従来例1と同様に、TWTAで構成することができ、LL用のU/C29Lから得られるLL信号について、当該所定の電力比(IL)に基づいて電力調整しながら高出力化し、合成器24に出力する。
【0055】
そして、図7に示す合成器24は、図6に示す従来例1と同様に、UL用の増幅器23Uから得られる電力調整後のUL信号と、LL用の増幅器23Lから得られる電力調整後のLL信号とを合成(即ち、同一帯域幅の同一周波数で重畳)することにより、LDM信号を生成し、図5に示す受信装置30向けのダウンリンク信号として送信アンテナ25を介して放射する。
【0056】
従って、図7及び図8に示す従来例2のLDM送信システム1Bでは、送信装置10BにおいてUL用及びLL用の各変調信号を合成して予めLDM信号を生成し、アップリンク周波数帯域へと周波数変換を施したアップリンク信号を形成し、送信アンテナ10aを介して衛星中継器20Bに送信する。また、衛星中継器20Bは、非線形特性による劣化を低減するために、受信したアップリンク信号におけるLDM信号に対してLDM復調を施してから再変調することでUL用及びLL用の各変調信号を復元し、復元したUL用及びLL用の各変調信号にそれぞれ対応するUL信号及びLL信号毎に増幅器23U,23Lを使用して所定の電力比(IL)に基づいて電力調整しながら高出力化し、増幅した後のUL信号及びLL信号を合成してLDM信号を生成する構成となっている。このため、衛星中継器20Bにおいては、LDM信号をLDM復調してUL用及びLL用の変調信号を復元するのに必要とされる高機能な機能部を有するLDM復調器27の搭載が必要となる。
【0057】
尚、図6に示す従来例1のLDM送信システム1A、並びに、図7及び図8に示す従来例2のLDM送信システム1Bを、図5に示すLDM送信システム1として適用したときの伝送システム100における受信装置30の構成は、図7に示すD/C26及びLDM復調器27と同様の機能部を有するものとし、LDM送信システム1A又は1Bにおける送信装置10A又は10Bの入力に利用されたUL用及びLL用の誤り訂正符号化処理に対応する復号処理を用いることで送信装置10A又は10Bから各階層用として送信された符号化データに対応する各階層用の受信データ(復号データ)を得ることができる。
【0058】
以上のように、従来技術からは、衛星中継器20A又は20Bの増幅器23U,23Lの動作点を考慮した運用を実現するためには、図6に示す従来例1のLDM送信システム1A、或いは図7及び図8に示す従来例2のLDM送信システム1Bが想定される。
【0059】
しかしながら、図6に示す従来例1のLDM送信システム1Aのように、送信装置10AではLDM信号を生成せず、UL用とLL用の各変調信号を個別に衛星中継器20Aに向けてアップリンク送信する場合、UL用とLL用の各変調信号で個別の周波数が必要となるため、同一周波数のLDM信号を生成する場合と比較して少なくとも2倍の帯域が必要となり、アップリンク用周波数の確保が困難になるというデメリットが生じる。
【0060】
また、図7及び図8に示す従来例2のLDM送信システム1Bのように、送信装置10BでLDM信号を生成して衛星中継器20Bに向けてアップリンク送信する場合では、この衛星中継器20Bは、衛星中継器20Aの構成と比較すると、主に、LDM復調器27、UL用変調器28U、及びLL用変調器28Lなどの、直交復調、UL信号の復号、UL信号用のパリティ再付加によるUL信号データの再生成、直交復調した信号から再生成したUL信号データの減算によるLL信号データの抽出、及び、UL信号及びLL信号としての変調信号の再生成、といった追加の機能部が必要である。特に、衛星中継器20BにおけるLDM復調器27の搭載は、高機能化に起因するコストの増大や故障率の増大が懸念される。このため、LDM方式の衛星中継器として、コスト及び故障率の低減を図る観点から、或いは、高機能化に起因するLDM復調器27が故障した場合の信号伝送回復やLDM信号及び変調信号のいずれのアップリンク信号にも適応させる利便性の向上を図る観点から、送信装置からのアップリンク信号を簡素な処理で中継伝送する機能を有する衛星中継器が望まれる。
【0061】
そこで、本発明の目的は、上述の問題に鑑みて、階層分割多重(LDM)方式に係るアップリンク信号の帯域幅を増大させることなく構成した送信装置と、その送信装置からのアップリンク信号を簡素な処理で中継伝送する機能を有する衛星中継器と、を備えるLDM送信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0062】
本発明のLDM送信システムは、重複する周波数を使用して複数の変調信号を重畳し受信装置に向けて送信する階層分割多重(LDM)方式のLDM送信システムであって、高階層用及び低階層用の各変調信号に用いられる所定の誤り訂正符号化処理を施した各符号化データをそれぞれの高階層用のUL信号データ及び低階層用のLL信号データとしてそのままのデータ形式で結合することにより単一のアップリンク送信用データを生成し、前記アップリンク送信用データに対して直交変調処理を施すことにより単一のアップリンク信号を生成するアップリンク信号用変調手段を有する送信装置と、前記送信装置からアップリンク送信された信号を受信して得られる単一の多値変調信号に対して直交復調処理を施すことにより当該アップリンク送信用データを抽出するとともに、単純なビット分離により前記UL信号データ及び前記LL信号データを復元する直交復調手段、及び前記直交復調手段から得られる前記LL信号データ及び前記LL信号データに対してそれぞれ高階層用及び低階層用の直交変調処理を施すことによりUL信号及びLL信号としてそれぞれ前記高階層用及び低階層用の各変調信号を生成し、当該UL信号及びLL信号毎に増幅器を使用して所定の電力比に基づいて電力調整しながら増幅し、増幅した後のUL信号及びLL信号を合成してLDM信号を生成し、当該受信装置向けのダウンリンク信号として送信するLDM信号生成手段を有する衛星中継器と、を備えることを特徴とする。
【0063】
また、本発明のLDM送信システムにおいて、前記アップリンク送信用データは、前記UL信号データ及び前記LL信号データについて、前記送信装置及び前記衛星中継器間で予め定めた結合手段により結合して構成されていることを特徴とする。
【0064】
また、本発明のLDM送信システムにおいて、前記結合手段は、前記UL信号データを上位側に前記LL信号データを下位側にして単純結合するか、又は前記LL信号データを上位側に前記UL信号データを下位側にして単純結合するように構成されていることを特徴とする。
【0065】
また、本発明のLDM送信システムにおいて、前記衛星中継器は、前記直交復調手段と、所定のLDM復調器とを切り替え可能に併設し、前記直交復調手段と前記所定のLDM復調器とを切り替える切替手段を更に備え、前記所定のLDM復調器は、LDM信号をアップリンク送信するように構成された別の送信装置から受信したアップリンク信号におけるLDM信号に対してLDM復調を施して前記直交復調手段から得られる前記LL信号データ及び前記LL信号データと同等のUL信号データ及びLL信号データを抽出するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0066】
本発明によれば、LDM送信システムとして、アップリンク信号の帯域幅を増大させることなくLDM方式の送信装置を構成することができ、なお且つ、その送信装置からのアップリンク信号を簡素な処理で中継伝送する機能を有する衛星中継器を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】本発明による一実施例のLDM送信システムの概略構成を示す図である。
図2】(a),(b)は、それぞれ本発明による一実施例のLDM送信システムにおける送信装置及び衛星中継器の動作例を概略的に示す図である。
図3】(a),(b)は、参考例として、それぞれアップリンク信号専用に誤り訂正符号化を施した上で32QAMの変調信号に基づくアップリンク信号を用いるように変形構成した場合の送信装置及び衛星中継器の動作例を概略的に示す図である。
図4】本発明による一実施例のLDM送信システムにおいて利用する32QAMにおける受信C/Nに対するBER特性を例示する図である。
図5】典型的なLDM方式を適用した衛星デジタル放送又は衛星デジタル通信の伝送システムの概略構成を示す図である。
図6】従来技術から想定されるLDM方式を適用した衛星デジタル放送又は衛星デジタル通信の従来例1のLDM送信システムの概略構成を示す図である。
図7】従来技術から想定されるLDM方式を適用した衛星デジタル放送又は衛星デジタル通信の従来例2のLDM送信システムの概略構成を示す図である。
図8】従来例2のLDM送信システムにおけるLDM復調器の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
以下、図面を参照して、本発明による一実施例のLDM送信システム1Sについて詳細に説明する。
【0069】
(本発明による一実施例のLDM送信システムの構成)
図1は、本発明による一実施例のLDM送信システム1Sの概略構成を示す図である。尚、図1において、図7に示すものと同様の構成要素には同一の参照番号を付している。
【0070】
図1に示す本発明による一実施例のLDM送信システム1Sは、図5に示すLDM送信システム1として構成され、アップリンク局を構成する送信装置10S(図5に示す送信装置10に対応する。)及び送信アンテナ10aと、衛星中継器20S(図5に示す衛星中継器20に対応する。)と、を備える。
【0071】
送信装置10Sは、UL用の変調信号に用いられるUL信号データ及びLL用の変調信号に用いられるLL信号データを基に新たに生成した単一のアップリンク信号データに対して直交変調処理を施すことにより単一のアップリンク信号を生成しアップリンク送信するように構成され、アップリンク信号用変調器13S、及びアップリンク信号用のアップコンバータ(U/C)14Sを備える。本実施例の送信装置10Sは、図7に示す送信装置10Bと比較して、主に、図7に示すUL用変調器11U、LL用変調器11L、合成器13及びU/C14の代わりに、アップリンク信号用変調器13S及びU/C14Sを備える点で相違する。ただし、図1に示すU/C14Sは、図7に示すU/C14と同一とすることができる。
【0072】
アップリンク信号用変調器13Sは、UL用として送信する送信データについて予め定めた誤り訂正符号化処理が施された符号化データをUL信号データとして入力するとともに、LL用として送信する送信データについて予め定めた誤り訂正符号化処理が施された符号化データをLL信号データとして入力する。そして、アップリンク信号用変調器13Sは、入力されたUL信号データ及びLL信号データをそのままのデータ形式で結合することにより単一のアップリンク送信用データを生成し、そのアップリンク送信データに対して、アップリンク送信用の直交変調処理(例えば32QAM等)を施すことにより単一のアップリンク信号を形成し、アップリンク信号用のU/C14Sに出力する。このアップリンク信号は、単一帯域幅の所定周波数の新たな変調信号として構成される。
【0073】
また、アップリンク信号用変調器13Sにおけるアップリンク信号を形成するために生成するアップリンク送信用データは、UL信号データ及びLL信号データについて、送信装置10S及び衛星中継器20S間で予め定めた結合手段により結合して構成されたものとする。本実施例では当該結合手段として、UL用の変調信号に用いられるUL信号データを上位側に、LL用の変調信号に用いられるLL信号データを下位側にして単純結合する構成例を説明する。ただし、その他の結合手段として、LL信号データを上位側に、UL信号データを下位側にして単純結合する構成としてもよい。ここで、UL信号データ及びLL信号データのそれぞれの情報ビット及びパリティビットを個別に抽出して分離結合する結合手段とすることも可能であるが、処理が複雑化するだけで利点が無いことから、上述した単純結合とすることが好ましい。
【0074】
アップリンク信号用のU/C14Sは、アップリンク信号用変調器13Sから得られるアップリンク信号に対して衛星中継器20S向けのアップリンク信号として予め定められたアップリンク信号用のアップリンク周波数帯域(図7に示す予め定められたLDM用のアップリンク周波数帯域と同じとすることができる。)へと周波数変換を施し、送信アンテナ10aを介して衛星中継器20Sに送信する。
【0075】
このように、アップリンク信号用変調器13S、及びU/C14Sは、UL用及びLL用の各変調信号に用いられる所定の誤り訂正符号化処理を施した各符号化データをそれぞれUL信号データ及びLL信号データとしてそのままのデータ形式で結合することにより単一のアップリンク送信用データを生成し、そのアップリンク送信用データに対して直交変調処理を施すことにより単一のアップリンク信号を生成するアップリンク信号用変調手段として構成される。
【0076】
従って、図1に示す一実施例のLDM送信システム1Sでは、送信装置10SにおいてUL用の変調信号に用いられるUL信号データ及びLL用の変調信号に用いられるLL信号データを基に新たに生成した単一のアップリンク信号をアップリンク送信するように構成されるため、図6を参照して説明した従来例1に係るアップリンク送信時に帯域幅が増大するような問題は生じない。
【0077】
衛星中継器20Sは、受信アンテナ21、多値変調信号用のダウンコンバータ(D/C)26S、直交復調器27S、UL用変調器28U、LL用変調器28L、UL用のアップコンバータ(U/C)29U、LL用のアップコンバータ(U/C)29L、UL用の増幅器23U、LL用の増幅器23L、合成器24、及び送信アンテナ25を備える。本実施例の衛星中継器20Sは、図7に示す衛星中継器20Bと比較して、主に、図7に示すD/C26及びLDM復調器27の代わりに、D/C26S及び直交復調器27Sを備える点で相違する。ただし、図1に示すD/C26Sは、図7に示すD/C26と同一とすることができる。
【0078】
図1に示す受信アンテナ21は、送信アンテナ10aを介して送信装置10Sから送信されたアップリンク信号を受信して、そのアップリンク信号を構成する単一の多値変調信号を多値変調信号用のD/C26Sへ出力する。
【0079】
多値変調信号用のD/C26Sは、受信アンテナ21から得られる多値変調信号に対して所定の周波数帯域(図7に示すD/C26における所定の周波数帯域と同じとすることができる。)へと周波数変換を施し、ダウンコンバート多値変調信号として直交復調器27Sに出力する。
【0080】
直交復調器27Sは、多値変調信号用のD/C26Sから得られるダウンコンバート多値変調信号に対して直交復調処理を施してアップリンク送信用データを抽出し、更にそのアップリンク送信用データから、単純なビット分離により、本実施例ではULに対応する上位ビットをUL信号データとして抽出するとともに、LLに対応する下位ビットをLL信号データとして抽出して、それぞれUL用変調器28U及びLL用変調器28Lに出力する。
【0081】
従って、受信アンテナ21、D/C26S及び直交復調器27Sは、送信装置10Sからアップリンク送信された信号を受信して得られる単一の多値変調信号に対して直交復調処理を施すことによりアップリンク送信用データを抽出するとともに、単純なビット分離によりUL信号データ及びLL信号データを復元する直交復調手段として構成される。
【0082】
UL用変調器28Uは、直交復調器27Sから得られるUL信号データに対してUL用の直交変調処理を施すことにより、UL用の変調信号を生成し、UL用のU/C29Uに出力する。図1に示すUL用変調器28Uの動作は、図7に示す従来例2と同様であるが、本発明による一実施例のLDM送信システム1Sでは、衛星中継器20S側で、UL用の変調信号を「復元」するのではなく「生成」する点で相違する。
【0083】
LL用変調器28Lは、直交復調器27Sから得られるLL信号データに対してLL用の直交変調処理を施すことにより、LL用の変調信号を生成し、LL用のU/C29Lに出力する。図1に示すLL用変調器28Lの動作は、図7に示す従来例2と同様であるが、本発明による一実施例のLDM送信システム1Sでは、衛星中継器20S側で、LL用の変調信号を「復元」するのではなく「生成」する点で相違する。
【0084】
そして、UL用のU/C29Uは、図7に示す従来例2と同様に、UL用変調器28Uから得られるUL用の変調信号に対して図5に示す受信装置30向けのダウンリンク信号としてLDM信号を生成するための伝送周波数帯域へと周波数変換を施し、伝送用のUL信号としてUL用の増幅器23Uに出力する。
【0085】
また、LL用のU/C29Lは、図7に示す従来例2と同様に、LL用変調器28Lから得られるLL用の変調信号に対してU/C29UにおけるUL信号と同一周波数である当該伝送周波数帯域へと周波数変換を施し、伝送用のLL信号としてLL用の増幅器23Lに出力する。
【0086】
図1に示すUL用の増幅器23Uは、図6及び図7に示す従来例1,2と同様に、TWTAで構成することができ、UL用のU/C29Uから得られるUL信号について、所定の電力比(IL)に基づいて電力調整しながら高出力化し、合成器24に出力する。
【0087】
図1に示すLL用の増幅器23Lは、図6及び図7に示す従来例1,2と同様に、TWTAで構成することができ、LL用のU/C29Lから得られるLL信号について、当該所定の電力比(IL)に基づいて電力調整しながら高出力化し、合成器24に出力する。
【0088】
そして、図1に示す合成器24は、図6及び図7に示す従来例1,2と同様に、UL用の増幅器23Uから得られる電力調整後のUL信号と、LL用の増幅器23Lから得られる電力調整後のLL信号とを合成(即ち、同一帯域幅の同一周波数で重畳)することにより、LDM信号を生成し、図5に示す受信装置30向けのダウンリンク信号として送信アンテナ25を介して放射する。
【0089】
従って、UL用変調器28U、LL用変調器28L、UL用のU/C29U、LL用のU/C29L、UL用の増幅器23U、LL用の増幅器23L、合成器24、及び送信アンテナ25は、直交復調器27Sから得られるLL信号データ及びLL信号データに対してそれぞれUL用及びLL用の直交変調処理を施すことによりUL信号及びLL信号としてそれぞれUL用及びLL用の各変調信号を生成し、当該UL信号及びLL信号毎に増幅器23U,23Lを使用して所定の電力比(IL)に基づいて電力調整しながら増幅(高出力化)し、増幅した後のUL信号及びLL信号を合成してLDM信号を生成し、受信装置30向けのダウンリンク信号として送信アンテナ25を介して送信するLDM信号生成手段として構成される。
【0090】
このように、図1に示す本発明による一実施例のLDM送信システム1Sにおいて、衛星中継器20Sは、非線形特性による劣化を低減するために、アップリンク信号の受信から得られる単一の多値変調信号に対して直交復調処理、単純なビット分離、及び各階層用の再変調処理により得られるUL信号及びLL信号毎に増幅器23U,23Lを使用して所定の電力比(IL)に基づいて電力調整しながら増幅し、増幅した後のUL信号及びLL信号を合成してLDM信号を生成する構成とする。このため、従来例2の衛星中継器20Bにおける利点を生かしつつ、衛星中継器20Bにおいて必要とされた高機能なLDM復調器27の搭載が不要となり、コスト及び故障率を低減させることができる。
【0091】
尚、図1に示す一実施例のLDM送信システム1Sを、図5に示すLDM送信システム1として適用したときの伝送システム100における受信装置30の構成は、図7に示すD/C26及びLDM復調器27と同様の機能部を有するものとし、本実施例のLDM送信システム1Sにおける送信装置10Sの入力に利用されたUL用及びLL用の誤り訂正符号化処理に対応する復号処理を用いることで送信装置10Sから各階層用として送信された符号化データに対応する各階層用の受信データ(復号データ)を得ることができる。
【0092】
(本発明による一実施例のLDM送信システムの動作例)
図2(a),(b)は、それぞれ本発明による一実施例のLDM送信システム1Sにおける送信装置10S及び衛星中継器20Sの動作例を概略的に示す図である。
【0093】
図2(a)に示すように、アップリンク局の送信装置10Sは、まず、本実施例では、アップリンク信号用変調器13Sにより、UL用の変調信号に用いられる予め定めた誤り訂正符号化処理が施された符号化データをUL信号データとして入力するとともに、LL用の変調信号に用いられる予め定めた誤り訂正符号化処理が施された符号化データをLL信号データとして入力する。ここでは、UL用の変調信号に用いられる直交変調処理はQPSK変調、誤り訂正符号化率(r)は1/2(以降、「QPSK,r=1/2」と表記)とし、LL用の変調信号に用いられる直交変調処理は8PSK変調、誤り訂正符号化率(r)は2/3(以降、「8PSK,r=2/3」と表記)とする。この場合、図2(a‐1)に示すように、UL用の変調信号に用いられるUL信号データは、QPSK,r=1/2に対応する情報ビット及び誤り訂正符号化処理に係るパリティビットからなり、LL用の変調信号に用いられるLL信号データは、8PSK,r=2/3に対応する情報ビット及び誤り訂正符号化処理に係るパリティビットからなる。
【0094】
続いて、アップリンク局の送信装置10Sは、アップリンク信号用変調器13Sにより、入力されたUL信号データ及びLL信号データをそのままのデータ形式で結合することにより単一のアップリンク送信用データを生成する。本実施例では、図2(a‐2)に示すように、アップリンク信号用変調器13Sは、本実施例ではUL信号データを上位側に、LL信号データを下位側にして単純結合することにより、単一のアップリンク送信用データを生成する。そして、図2(a‐3)に示すように、アップリンク信号用変調器13Sは、この単一のアップリンク送信用データに対してアップリンク送信用の直交変調処理(本例では32QAM)を施してマッピングすることにより、単一のアップリンク信号を形成する。
【0095】
アップリンク信号用変調器13Sによって生成された単一のアップリンク信号は、U/C14Sにより衛星中継器20S向けのアップリンク信号として周波数変換が施され、送信アンテナ10aを介して衛星中継器20Sに送信される。
【0096】
一方、図2(b)に示すように、衛星中継器20Sは、まず、図2(b‐1)に示すように、受信アンテナ21を介してアップリンク信号を受信して、D/C26Sによりそのアップリンク信号を構成する単一の多値変調信号に対して周波数変換を施してダウンコンバート多値変調信号を生成し、直交復調器27Sによりダウンコンバート多値変調信号に対して直交復調処理(32QAM復調)を施す。これにより、図2(b‐2)に示すように、アップリンク送信用データを抽出することができる。また、直交復調器27Sにより復調して得られるアップリンク送信用データは、本実施例ではUL信号データを上位側に、LL信号データを下位側にして単純結合している。このため、図2(b‐3)に示すように、直交復調器27Sは、32QAM復調で得られるアップリンク送信用データから、ULに対応する上位ビットをUL信号データとして抽出し、LLに対応する下位ビットをLL信号データとして抽出することができる。
【0097】
続いて、図2(b‐4)に示すように、衛星中継器20Sは、UL用変調器28Uにより、そのUL信号データに対してUL用の直交変調処理(QPSK変調)を施してマッピングすることによりUL用の変調信号を生成する。また、衛星中継器20Sは、LL用変調器28Lにより、直交復調器27Sから得られるLL信号データに対してLL用の直交変調処理(8PSK変調)を施してマッピングすることによりLL用の変調信号を生成する。
【0098】
これにより、衛星中継器20Sは、U/C29U,29LによりそれぞれUL用及びLL用の各変調信号に対して周波数変換を施し、増幅器23U,23Lによりそれぞれ所定の電力比(IL)に基づいて電力調整しながら高出力化し、合成器24により電力調整後のUL信号及びLL信号を合成してLDM信号を生成し、図5に示す受信装置30向けのダウンリンク信号として送信アンテナ25を介して放射することができる。
【0099】
このように、本発明による一実施例のLDM送信システム1Sでは、送信装置10Sは、アップリンク信号用変調器13Sにより、UL用の変調信号に用いられるUL信号データと、LL用の変調信号に用いられるUL信号データとをそれぞれそのまま用いて単純結合することにより、アップリンク送信用データを生成し、このアップリンク送信用データに対してアップリンク送信用の直交変調処理を施すことにより単一のアップリンク信号を生成するようにした。
【0100】
また、本発明による一実施例のLDM送信システム1Sでは、衛星中継器20Sは、送信装置10Sから受信して得られる多値変調信号について、LDM復調を不要とし、単純な直交復調処理でアップリンク送信用データを抽出し、単純なビット分離によりUL信号データ及びLL信号データを復元し、単純な直交変調処理でUL用及びLL用の各変調信号を生成し、個別に増幅器でそれぞれ所定の電力比(IL)に基づいて電力調整しながら高出力化した各変調信号を合成してLDM信号を生成し、図5に示す受信装置30向けのダウンリンク信号とするようにした。
【0101】
ここで、本発明による一実施例のLDM送信システム1Sにおける構成による利点について、参考例としての図3を基に、図1を参照しながら、より詳細に説明する。
【0102】
(参考例)
図3(a),(b)は、参考例として、それぞれアップリンク信号専用に誤り訂正符号化を施した上で32QAMの変調信号に基づくアップリンク信号を用いるように、図1に係る送信装置10S及び衛星中継器20Sについて変形構成した場合の送信装置10S’(図示略)及び衛星中継器20S’(図示略)の動作例を概略的に示す図である。
【0103】
図3(a)に示すように、変形構成した送信装置10S’は、まず、変形構成したアップリンク信号用変調器13S’(図示略)により、UL用の変調信号に用いられる予め定めた誤り訂正符号化処理が施された符号化データをUL信号データとして入力するとともに、LL用の変調信号に用いられる予め定めた誤り訂正符号化処理が施された符号化データをLL信号データとして入力する。ここでは、UL用の変調信号に用いられる直交変調処理はQPSK変調、誤り訂正符号化率(r)は1/2(以降、「QPSK,r=1/2」と表記)とし、LL用の変調信号に用いられる直交変調処理は8PSK変調、誤り訂正符号化率(r)は2/3(以降、「8PSK,r=2/3」と表記)とする。この場合、図3(a‐1)に示すように、UL用の変調信号に用いられるUL信号データは、QPSK,r=1/2に対応する情報ビット及び誤り訂正符号化処理に係るパリティビットからなり、LL用の変調信号に用いられるLL信号データは、8PSK,r=2/3に対応する情報ビット及び誤り訂正符号化処理に係るパリティビットからなる。
【0104】
続いて、図3(a‐2)に示すように、変形構成した送信装置10S’は、図1に示すアップリンク信号用変調器13Sについて変形構成したアップリンク信号用変調器13S’により、入力されたUL信号データ及びLL信号データからそれぞれの情報ビットを抽出する。そして、図3(a‐3)に示すように、変形構成したアップリンク信号用変調器13S’は、例えばULの情報ビットを上位側に、LLの情報ビットを下位側にして単純結合することにより、結合情報ビットを生成する。そして、図3(a‐4)に示すように、変形構成したアップリンク信号用変調器13S’は、この結合情報ビットに対してアップリンク送信用の予め定めた誤り訂正符号化処理を施すことによりパリティビットを計算して付加することで変形構成したアップリンク送信用データを生成する。そして、図3(a‐5)に示すように、変形構成したアップリンク信号用変調器13S’は、そのアップリンク送信用データに対して直交変調処理(本例では32QAM)を施してマッピングすることにより、変形構成したアップリンク信号を形成する。
【0105】
変形構成したアップリンク信号用変調器13S’によって生成された変形構成したアップリンク信号は、図1に示すU/C14Sにより衛星中継器20S向けのアップリンク信号として周波数変換が施され、送信アンテナ10aを介して変形構成した衛星中継器20S’に送信される。
【0106】
一方、図3(b)に示すように、変形構成した衛星中継器20S’は、まず、図3(b‐1)に示すように、受信アンテナ21を介して変形構成した送信装置10S’からのアップリンク信号を受信して、図1に示すD/C26Sによりそのアップリンク信号を構成する単一の多値変調信号に対して周波数変換を施し、ダウンコンバート多値変調信号として生成し、そのダウンコンバート多値変調信号に対して32QAM復調を施すことになる。
【0107】
つまり、図3(b‐2)に示すように、変形構成した衛星中継器20S’は、図1に示す直交復調部27Sについて変形構成した直交復調部27S’により、32QAM復調で当該変形構成したアップリンク送信用データを抽出する。そして、図3(b‐3)に示すように、変形構成した直交復調部27S’は、変形構成した送信装置10S’側で用いたアップリンク送信用の予め定めた誤り訂正符号化処理に対応する誤り訂正復号処理を施すことにより情報ビットを抽出する。この情報ビットは、ULの情報ビットを上位側に、LLの情報ビットを下位側に単純結合されたものである。そこで、図3(b‐4)に示すように、本例の変形構成した直交復調部27S’は、そのUL信号及びLL信号用パリティ再付加部によりULに対応する上位ビットと、LLに対応する下位ビットとを各階層の情報ビットとして抽出する。また、図3(b‐5)に示すように、本例の変形構成した直交復調部27S’は、UL及びLLの各階層の情報ビットに対してそれぞれ送信装置10Sに入力される符号化データに対応する誤り訂正符号化処理を施すことによりパリティビットを計算して付加することでUL信号データ及びLL信号データを復元する。
【0108】
続いて、図3(b‐6)に示すように、変形構成した衛星中継器20S’は、UL用変調器28Uにより、当該UL信号データに対してUL用の直交変調処理(QPSK変調)を施してマッピングすることによりUL用の変調信号を生成し、LL用変調器28Lにより、当該LL信号データに対してLL用の直交変調処理(8PSK変調)を施してマッピングすることによりLL用の変調信号を生成する。
【0109】
このような処理を経て、変形構成した衛星中継器20S’は、図1に示すU/C29U,29LによりそれぞれUL用及びLL用の各変調信号に対して周波数変換を施し、増幅器23U,23Lによりそれぞれ所定の電力比(IL)に基づいて電力調整しながら高出力化し、合成器24により電力調整後のUL信号及びLL信号を合成してLDM信号を生成し、図5に示す受信装置30向けのダウンリンク信号として送信アンテナ25を介して放射することになる。
【0110】
このように変形構成したLDM送信システム1S’において、アップリンク信号専用に誤り訂正符号化を施した上で32QAMの変調信号に基づくアップリンク信号を用いるように、図1に係る送信装置10S及び衛星中継器20Sについて変形構成した場合の送信装置10S’及び衛星中継器20S’は、図3に示す参考例のような動作を行う。即ち、送信装置10S’から衛星中継器20S’へのアップリンク送信時には、UL及びLLの各階層の情報ビットを単純結合した結合情報ビットを生成し、この結合情報ビットに対してアップリンク送信用の予め定めた誤り訂正符号化処理を用いてパリティを付加することで変形構成したアップリンク送信用データを生成し、32QAM変調を施すことで変形構成したアップリンク信号を生成する構成となる。
【0111】
この場合、変形構成した衛星中継器20S’において、図3に示す参考例のように動作する変形構成した直交復調部27S’は、そのアップリンク信号に関して直交復調した上で、アップリンク送信用の予め定めた誤り訂正符号化処理に対応する誤り訂正復号処理を施す必要があり、更に、そのアップリンク送信用のパリティを消去した後に、ULの情報ビットに対するパリティの計算と付加、LLの情報ビットに対するパリティの計算と付加を実施する必要が生じる。このため、上述した図1に示す本発明による一実施例のLDM送信システム1Sと比較して、大規模な機能部(機器)を衛星中継器20S’に搭載することになる。
【0112】
一方、本発明による一実施例のLDM送信システム1Sを図5に示す伝送システム100に適用可能とする際には、例えば現行の衛星放送システムにおけるアップリンク局の送信アンテナ10a及びその前段に配置される高出力増幅器(図示略)を利用できる。現行の衛星放送システムでは図4に示すように30dB以上のアップリンク送信の受信C/Nを確保している。図4は、本発明による一実施例のLDM送信システム1Sにおいて利用する32QAMにおける受信C/Nに対するBER特性を例示する図である。図4に示す32QAMにおける受信C/Nに対するBER特性を考慮すると、32QAMの直交復調のみでほぼ誤りのない受信ビットのデータを抽出することができるため、アップリンク信号として利用する多値変調信号について誤り訂正符号化処理を施してパリティを付加する必要がない。このため、衛星中継器20Sは、送信装置10Sから受信して得られる多値変調信号について、単純な直交復調処理とビット分離でUL信号データ及びLL信号データを復元することができ、変形構成した衛星中継器20S’と比較して、より一層簡素な構成となり、コスト及び故障率を低減させることができる。
【0113】
そして、本発明による一実施例のLDM送信システム1Sによれば、図6に示す従来例1のLDM送信システム1Aと比較して、UL信号とLL信号を個別にアップリンク送信する場合で課題となるアップリンク送信の帯域の拡大は不要となり、ダウンリンク信号と同じ帯域幅で構築することが可能となる。
【0114】
また、本発明による一実施例のLDM送信システム1Sによれば、図7及び図8に示す従来例2のLDM送信システム1Bと比較して、LDM信号をアップリンク送信する場合で課題となる衛星中継器20Bの高機能化に関して、図1に示す本発明による一実施例の衛星中継器20Sでは簡素な構成で実現可能となる。
【0115】
従って、本発明による一実施例のLDM送信システム1Sによれば、送信装置10SとしてはLDM信号と同一の帯域幅でのアップリンク(フィーダリンクを含む。)送信が可能となり、送信装置10Sからのアップリンク信号を中継伝送しダウンリンク(サービスリンクを含む。)送信する衛星中継器10Sとしてはその構成の簡素化が可能となる。
【0116】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、上述した実施例におけるアップリンク信号用変調器13Sでは、アップリンク送信ビットとして、例えばQPSK変調に係るUL信号データと、例えば8PSK変調に係るLL信号データのみを用いて単純結合し、例えば32QAM変調で伝送する無駄のない好適な例を説明した。ただし、この変形例として、アップリンク信号用変調器13Sは、例えばQPSK変調に係るUL信号データと、例えば8PSK変調に係るLL信号データとに加えて、例えばLDM復調を不要とする旨を示す制御ビットを付加したアップリンク送信用データを構成してもよく、更に、そのアップリンク送信用データの伝送を可能とするべく、32QAMを超える多値変調でアップリンク信号を生成するとしてもよい。
【0117】
また、上述した実施例では、衛星中継器20Sについて、コスト及び故障率を低減させる簡素な構成で実現可能とする好適例を説明したが、更なる応用例が想定できる。つまり、衛星中継器20Sについて上述した一実施例のような簡素な構成とはせずに、高機能化に起因するLDM復調が故障した場合の信号伝送回復やLDM信号及び変調信号のいずれのアップリンク信号にも適応させる利便性の向上を図ることに着目した応用例とすることができる。より具体的に、応用例の衛星中継器20Sは、図1に示す直交復調器27Sと、図7に示すLDM復調器27とを切り替え可能に併設し、この直交復調器27SとLDM復調器27とを切り替える切替手段を更に備える構成とすることもできる。例えば、図1に示す送信装置10Sからのアップリンク信号を中継処理するときは直交復調器27Sを用い、図7に示す送信装置10Bからのアップリンク信号を中継処理するときはLDM復調器27を用いるように当該切替手段により切り替えるようにした衛星中継器20Sとすることができる。この場合、LDM復調器27は、LDM信号をアップリンク送信するように構成された別の送信装置から受信したアップリンク信号におけるLDM信号に対してLDM復調を施して直交復調器27Sから得られるLL信号データ及びLL信号データと同等のUL信号データ及びLL信号データを復元するように構成される。このため、当該切替手段により直交復調器27SとLDM復調器27のいずれを用いる場合でも、後続するUL用変調器28U、LL用変調器28L、U/C29U,29L、増幅器23U,23L、合成器24、及び送信アンテナ25については、共通利用できる。
【0118】
当該切替手段による切り替え制御は、例えば、アップリンク局からのコマンド送信に応じて制御する形態や、上述では説明を省略したアップリンク信号を構成する多値変調信号に先立って送信するTMCC信号等の伝送制御信号の空き領域を利用して制御する形態や、当該切替手段の一機能として変調誤差比の判定を行うようにして自動判別して制御する形態や、送信装置10Sのアップリンク信号として上述したLDM復調を不要とする旨を示す制御ビットを含むときは、まずは送信装置10Sのアップリンク信号であると想定して受信を試み、その制御ビットの有無又は指示により当該切り替えの制御を行う形態とすることができる。
【0119】
従って、本発明は、上述の実施例によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲によってのみ制限される。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明によれば、変調信号の帯域幅を増大させることなくLDM方式の送信装置を構成することができ、なお且つ、その送信装置からのアップリンク信号を簡素な処理で中継伝送する機能を有する衛星中継器を構成することができるので、階層分割多重(LDM)方式の信号伝送の用途に有用である。
【符号の説明】
【0121】
1 LDM送信システム
1A 従来例1のLDM送信システム
1B 従来例2のLDM送信システム
1S 本発明に係るLDM送信システム
10 送信装置
10A 従来例1の送信装置
10B 従来例2の送信装置
10S 本発明に係る送信装置
10a アップリンク局における送信装置の送信アンテナ
11U 送信装置におけるUL用変調器
11L 送信装置におけるLL用変調器
12U 送信装置におけるUL用のアップコンバータ(U/C)
12L 送信装置におけるLL用のアップコンバータ(U/C)
13 送信装置における合成器
13S 送信装置におけるアップリンク信号用変調器
14 送信装置におけるLDM信号用のアップコンバータ(U/C)
14S 送信装置におけるアップリンク信号用のアップコンバータ(U/C)
20 衛星中継器
20A 従来例1の衛星中継器
20B 従来例2の衛星中継器
20S 本発明に係る衛星中継器
21 衛星中継器における受信アンテナ
22U 衛星中継器におけるUL用のダウンコンバータ(D/C)
22L 衛星中継器におけるLL用のダウンコンバータ(D/C)
23U 衛星中継器におけるUL用の増幅器
23L 衛星中継器におけるLL用の増幅器
24 衛星中継器における合成器
25 衛星中継器における送信アンテナ
26 衛星中継器におけるLDM信号用のダウンコンバータ(D/C)
26S 衛星中継器における多値変調信号用のダウンコンバータ(D/C)
27 衛星中継器におけるLDM復調器
27S 衛星中継器における直交復調器
28U 衛星中継器におけるUL用変調器
28L 衛星中継器におけるLL用変調器
29U 衛星中継器におけるUL用のアップコンバータ(U/C)
29L 衛星中継器におけるLL用のアップコンバータ(U/C)
30 受信装置
30a 受信設備における受信装置の受信アンテナ
100 伝送システム
271 直交復調部
272 UL信号復号部
273 UL信号用パリティ再付加部
274 減算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8