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特開2024-83145フィルム及びフィルム前駆体、積層体及び積層体前駆体、並びに配線基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083145
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】フィルム及びフィルム前駆体、積層体及び積層体前駆体、並びに配線基板
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240613BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
C08J5/18
B32B27/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197499
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 頌平
(72)【発明者】
【氏名】林 大介
(72)【発明者】
【氏名】佐々田 泰行
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
【Fターム(参考)】
4F071AA56
4F071AA67
4F071AF20Y
4F071AF40Y
4F071AG12
4F071AH13
4F100AK41B
4F100AK46B
4F100AK52A
4F100AS00B
4F100AT00D
4F100BA02
4F100BA04
4F100BA07
4F100GB43
4F100JB13A
4F100JG01C
4F100JG05A
4F100JJ03A
4F100JK07A
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】配線歪みが抑制され、かつ、耐熱性に優れるフィルム等の提供。
【解決手段】誘電正接が0.01以下であり、160℃における弾性率に対する290℃における弾性率の比率が0.6以上であり、290℃における弾性率が3.0MPa以上であり、25℃における弾性率が170MPa以下である、フィルム及びその応用。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電正接が0.01以下であり、
160℃における弾性率に対する290℃における弾性率の比率が0.6以上であり、
290℃における弾性率が3.0MPa以上であり、
25℃における弾性率が170MPa以下である、フィルム。
【請求項2】
2%質量減少温度が430℃以上である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
熱硬化性樹脂を含む、請求項1又は請求項2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂は、シルセスキオキサンポリマーを含む、請求項3に記載のフィルム。
【請求項5】
誘電正接が0.01以下であり、
160℃における弾性率が1.0MPa以下であり、
250℃で1時間加熱した後における、160℃における弾性率に対する290℃における弾性率の比率が0.6以上であり、
250℃で1時間加熱した後における、290℃における弾性率が3.0MPa以上であり、
250℃で1時間加熱した後における、25℃における弾性率が170MPa以下である、フィルム前駆体。
【請求項6】
層Aと、前記層Aの少なくとも一方の面上に配置された層Bとを含み、
前記層Bは、誘電正接が0.01以下であり、
前記層Bの160℃における弾性率に対する290℃における弾性率の比率が0.6以上であり、
前記層Bの290℃における弾性率が3.0MPa以上である、積層体。
【請求項7】
前記層Bの25℃における弾性率が170MPa以下である、請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
前記層Bは、2%質量減少温度が430℃以上である、請求項6又は請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
前記層Bは、熱硬化性樹脂を含む、請求項6又は請求項7に記載の積層体。
【請求項10】
前記熱硬化性樹脂は、シルセスキオキサンポリマーを含む、請求項9に記載の積層体。
【請求項11】
前記層Bは、厚さが5μm~50μmである、請求項6又は請求項7に記載の積層体。
【請求項12】
前記層Aは、液晶ポリマーを含む、請求項6又は請求項7に記載の積層体。
【請求項13】
前記液晶ポリマーは、芳香族ポリエステルアミドを含む、請求項12に記載の積層体。
【請求項14】
前記芳香族ポリエステルアミドは、下記式1で表される構成単位、下記式2で表される構成単位、及び下記式3で表される構成単位を含み、式1、式2、及び式3で表される構成単位の合計含有量に対して、式1で表される構成単位の含有量は30モル%~80モル%であり、式2で表される構成単位の含有量は10モル%~35モル%であり、式3で表される構成単位の含有量は10モル%~35モル%である、請求項13に記載の積層体。
-O-Ar-CO- …式1
-CO-Ar-CO- …式2
-NH-Ar-O- …式3
式1~式3中、Ar、Ar、及びArはそれぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表す。
【請求項15】
層Cをさらに含み、前記層B、前記層A、及び前記層Cをこの順で有する、請求項6又は請求項7に記載の積層体。
【請求項16】
層Aと、前記層Aの少なくとも一方の面上に配置された層Bとを含み、
前記層Bは、誘電正接が0.01以下であり、
前記層Bの160℃における弾性率が1.0MPa以下であり、
250℃で1時間加熱した後における、前記層Bの160℃における弾性率に対する290℃における弾性率の比率が0.6以上であり、
250℃で1時間加熱した後における、前記層Bの290℃における弾性率が3.0MPa以上である、積層体前駆体。
【請求項17】
基材と、前記基材の少なくとも一方の面上に配置された配線パターンと、配線パターン間及び配線パターン上に配置された層Bと、前記層B上に配置された層Aと、を備え、
前記層Bは、誘電正接が0.01以下であり、
前記層Bの160℃における弾性率に対する290℃における弾性率の比率が0.6以上であり、
前記層Bの290℃における弾性率が3.0MPa以上である、配線基板。
【請求項18】
前記配線パターンは、厚さが、3μm~40μmである、請求項17に記載の配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィルム及びフィルム前駆体、積層体及び積層体前駆体、並びに配線基板
に関する
【背景技術】
【0002】
近年、通信機器に使用される周波数は非常に高くなる傾向にある。高周波帯域における伝送損失を抑えるため、回路基板に用いられる絶縁材料の比誘電率と誘電正接とを低くすることが要求されている。回路基板を構成する部材として銅張積層板が好適に用いられ、銅張積層板の製造には、フィルムが好適に用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、誘電正接が0.01以下であるポリマー、及び、硬化性化合物を含み、上記硬化性化合物が、オリゴマー又はポリマーである硬化性化合物Aを含むポリマーフィルムが記載されている。特許文献2には、スチレン系ポリマーと、無機フィラーと、硬化剤と、を含む樹脂組成物であって、スチレン系ポリマーが、カルボキシル基を有する酸変性スチレン系ポリマーであり、無機フィラーは、シリカ及び/又は水酸化アルミニウムであり、無機フィラーの粒径は、1μm以下であり、無機フィラーの含有量は、スチレン系ポリマー100質量部に対して20~80質量部であり、樹脂組成物は、25μmの厚さを有するフィルムの形態において、式(A)及び(B)を満たす、樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2022/138665号
【特許文献2】特開2018-135506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、銅張積層板は、ポリマーフィルムの表面に銅箔を積層することによって製造される。また、配線基板は、銅張積層板と配線基材とを、銅張積層板におけるフィルムと配線基材とが接するように重ね合わせることによって製造される。配線基板を製造する場合には、密着性の観点から、配線基材の表面に形成されている段差に対してポリマーフィルムが追従して変形することが求められている。
一方、銅張積層板に、配線基材に対する配線歪みが抑制されるポリマーフィルムを用いた場合に、電子部品を実装する際に行うリフローはんだ付け工程において、層間剥離が生ずる場合があった。このため、配線基材に対する配線歪みが抑制されることと、リフローはんだ付けの際の密着性に優れること(すなわち、耐熱性に優れること)との両立が求められていた。
【0006】
本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、配線と貼り合わせた場合に配線歪みが抑制され、かつ、耐熱性に優れるフィルム及びフィルム前駆体、並びに、積層体及び積層体前駆体を提供することである。
また、本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、配線歪みが抑制され、かつ、耐熱性に優れる配線基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1>
誘電正接が0.01以下であり、
160℃における弾性率に対する290℃における弾性率の比率が0.6以上であり、
290℃における弾性率が3.0MPa以上であり、
25℃における弾性率が170MPa以下である、フィルム。
<2>
2%質量減少温度が430℃以上である、<1>に記載のフィルム。
<3>
熱硬化性樹脂を含む、<1>又は<2>に記載のフィルム。
<4>
熱硬化性樹脂は、シルセスキオキサンポリマーを含む、<3>に記載のフィルム
<5>
誘電正接が0.01以下であり、
160℃における弾性率が1.0MPa以下であり、
250℃で1時間加熱した後における、160℃における弾性率に対する290℃における弾性率の比率が0.6以上であり、
250℃で1時間加熱した後における、290℃における弾性率が3.0MPa以上であり、
250℃で1時間加熱した後における、25℃における弾性率が170MPa以下である、フィルム前駆体。
<6>
層Aと、層Aの少なくとも一方の面上に配置された層Bとを含み、
層Bは、誘電正接が0.01以下であり、
層Bの160℃における弾性率に対する290℃における弾性率の比率が0.6以上であり、
層Bの290℃における弾性率が3.0MPa以上である、積層体。
<7>
層Bの25℃における弾性率が170MPa以下である、<6>に記載の積層体。
<8>
層Bは、2%質量減少温度が430℃以上である、<6>又は<7>に記載の積層体。
<9>
層Bは、熱硬化性樹脂を含む、<6>~<8>のいずれか1つに記載の積層体。
<10>
熱硬化性樹脂は、シルセスキオキサンポリマーを含む、<9>に記載の積層体。
<11>
層Bは、厚さが5μm~50μmである、<6>~<10>のいずれか1つに記載の積層体。
<12>
層Aは、液晶ポリマーを含む、<6>~<11>のいずれか1つに記載の積層体。
<13>
液晶ポリマーは、芳香族ポリエステルアミドを含む、<12>に記載の積層体。
<14>
芳香族ポリエステルアミドは、下記式1で表される構成単位、下記式2で表される構成単位、及び下記式3で表される構成単位を含み、式1、式2、及び式3で表される構成単位の合計含有量に対して、式1で表される構成単位の含有量は30モル%~80モル%であり、式2で表される構成単位の含有量は10モル%~35モル%であり、式3で表される構成単位の含有量は10モル%~35モル%である、<13>に記載の積層体。
-O-Ar-CO- …式1
-CO-Ar-CO- …式2
-NH-Ar-O- …式3
式1~式3中、Ar、Ar、及びArはそれぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表す。
<15>
層Cをさらに含み、層B、層A、及び層Cをこの順で有する、<6>~<14>のいずれか1つに記載の積層体。
<16>
層Aと、層Aの少なくとも一方の面上に配置された層Bとを含み、
層Bは、誘電正接が0.01以下であり、
層Bの160℃における弾性率が1.0MPa以下であり、
250℃で1時間加熱した後における、層Bの160℃における弾性率に対する290℃における弾性率の比率が0.6以上であり、
250℃で1時間加熱した後における、層Bの290℃における弾性率が3.0MPa以上である、積層体前駆体。
<17>
基材と、基材の少なくとも一方の面上に配置された配線パターンと、配線パターン間及び配線パターン上に配置された層Bと、層B上に配置された層Aと、を備え、
層Bは、誘電正接が0.01以下であり、
層Bの160℃における弾性率に対する290℃における弾性率の比率が0.6以上であり、
層Bの290℃における弾性率が3.0MPa以上である、配線基板。
<18>
配線パターンは、厚さが、3μm~40μmである、<17>に記載の配線基板。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、配線と貼り合わせた場合に配線歪みが抑制され、かつ、耐熱性に優れるフィルム及びフィルム前駆体、並びに、積層体及び積層体前駆体が提供される。
また、本発明の他の実施形態によれば、配線歪みが抑制され、かつ、耐熱性に優れる配線基板が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本開示の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
また、本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念で用いられる語であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの両方を包含する概念として用いられる語である。
また、本明細書中の「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。
さらに、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
また、本開示における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel SuperHM-H(東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶剤PFP(ペンタフルオロフェノール)/クロロホルム=1/2(質量比)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
【0010】
[第1フィルム]
本開示に係るフィルム(以下、「第1フィルム」ともいう)は、誘電正接が0.01以下であり、160℃における弾性率に対する290℃における弾性率の比率が0.6以上であり、290℃における弾性率が3.0MPa以上であり、25℃における弾性率が170MPa以下である。
【0011】
本発明者らが鋭意検討した結果、上記構成をとることにより、配線と貼り合わせた場合に配線歪みが抑制され、耐熱性に優れるフィルムを提供できることを見出した。
上記効果が得られる詳細なメカニズムは不明であるが、以下のように推測される。
本開示に係るフィルムは、160℃における弾性率に対する290℃における弾性率の比率が0.6以上であることから、配線基板を製造する場合に、配線基材の表面に形成されている配線に対して追従して変形しやすく、配線歪みが抑制される。また、上記比率が0.6以上であり、特に、290℃における弾性率が3.0MPa以上であることから、高温における密着性に優れる。また、25℃における弾性率が170MPa以下であることから、降温時のフィルム変形が抑制され、段差追従性に優れる。
【0012】
これに対して、特許文献1及び特許文献2には、配線歪みとフィルムの160℃、290℃及び25℃における弾性率との関係に着目した記載はない。
【0013】
-熱硬化性樹脂-
本開示に係る第1フィルムは、160℃における弾性率に対する290℃における弾性率の比率を0.6以上、290℃における弾性率を3.0MPa以上、25℃における弾性率を170MPa以下とする観点から、ポリマーを含むことが好ましい。中でも、本開示に係るフィルムは、誘電正接、配線歪みの抑制、及び耐熱性の観点から、熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。
【0014】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、オキサジン樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、及びシルセスキオキサンポリマーが挙げられる。
【0015】
中でも、配線歪みの抑制及び耐熱性の観点から、熱硬化性樹脂は、シルセスキオキサンポリマーを含むことが好ましい。
【0016】
本開示において、シルセスキオキサンポリマーとは、1個のケイ素原子に対して、1個の有機基と、3個の酸素原子が結合した構造を有するポリマーである。第1フィルムに含まれるシルセスキオキサンポリマーにおいて、一のケイ素原子と結合している有機基は、他のケイ素原子と結合している有機基と連結していてもよい。
ケイ素原子と結合している有機基としては、例えば、炭化水素基、炭化水素基中の少なくとも1つの炭素原子をヘテロ原子(好ましくは酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子)に置き換えた基、炭化水素基中の少なくとも1つのメチレン基をカルボニル基に置き換えた基、及び、これらの組み合わせが挙げられる。
【0017】
シルセスキオキサンポリマーの骨格構造は特に限定されず、カゴ型構造、ハシゴ型構造、及びランダム構造のいずれであってもよい。
【0018】
シルセスキオキサンポリマーの重量平均分子量は特に限定されないが、1000~100000であることが好ましい。
【0019】
熱硬化性樹脂の含有量は、誘電正接、耐熱性、及び配線歪みの抑制の観点から、第1フィルムの全質量に対し、50質量%~100質量%であることが好ましく、80質量%~100質量%であることがより好ましい。
【0020】
-フィラー-
本開示に係る第1フィルムは、誘電正接、耐熱性、及び配線歪みの抑制の観点から、フィラーを含んでいてもよい。
【0021】
フィラーとしては、粒子状でも繊維状のものでもよく、無機フィラーであってもよく、有機フィラーであってもよい。
【0022】
有機フィラーとしては、公知の有機フィラーを用いることができる。
有機フィラーの材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、尿素-ホルマリンフィラー、ポリエステル、セルロース、アクリル樹脂、フッ素樹脂、硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリル樹脂、液晶ポリマー、及び、これらを2種以上含む材質が挙げられる。
【0023】
また、有機フィラーは、ナノファイバーのような繊維状であってもよく、中空樹脂粒子であってもよい。
【0024】
中でも、有機フィラーとしては、誘電正接、耐熱性、及び配線歪みの抑制の観点から、フッ素樹脂粒子、ポリエステル系樹脂粒子、ポリエチレン粒子、液晶ポリマー粒子、又は、セルロース系樹脂のナノファイバーであることが好ましく、ポリテトラフルオロエチレン粒子、ポリエチレン粒子、又は、液晶ポリマー粒子であることがより好ましく、液晶ポリマー粒子であることが特に好ましい。ここで、液晶ポリマー粒子とは、限定的ではないが、液晶ポリマーを重合させ、粉砕機等で粉砕して、粉末状の液晶としたものをいう。液晶ポリマー粒子は、各層の厚みよりも小さいことが好ましい。
【0025】
有機フィラーの平均粒径は、誘電正接、耐熱性、及び配線歪みの抑制の観点から、5nm~20μmであることが好ましく、100nm~10μmであることがより好ましい。
【0026】
無機フィラーとしては、公知の無機フィラーを用いることができる。
無機フィラーの材質としては、例えば、BN、Al、AlN、TiO、SiO、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、及び、これらを2種以上含む材質が挙げられる。
中でも、無機フィラーとしては、誘電正接、耐熱性、及び配線歪みの抑制の観点から、金属酸化物粒子、又は、繊維が好ましく、シリカ粒子、又は、チタニア粒子、又は、ガラス繊維がより好ましく、シリカ粒子、又は、ガラス繊維が特に好ましい。
無機フィラーの平均粒径は、フィルムの厚みの約20%~約40%であることが好ましく、例えば、フィルムの厚みの25%、30%又は35%にあるものを選択してもよい。粒子、又は、繊維が扁平状の場合には、短辺方向の長さを示す。
また、無機フィラーの平均粒径は、誘電正接、耐熱性、及び配線歪みの抑制の観点から、5nm~20μmであることが好ましく、10nm~10μmであることがより好ましく、20nm~1μmであることがさらに好ましく、25nm~500nmであることが特に好ましい。
【0027】
本開示に係る第1フィルムは、フィラーを1種のみ含んでいても、2種以上含んでいてもよい。
本開示に係る第1フィルムがフィラーを含む場合、フィラーの含有量は、誘電正接、耐熱性、及び配線歪みの抑制の観点から、フィルムの全質量に対し、5質量%~50質量%であることが好ましく、10質量%~40質量%であることがより好ましい。
【0028】
-その他の添加剤-
本開示に係る第1フィルムは、上述した成分以外のその他の添加剤を含んでいてもよい。
その他の添加剤としては、公知の添加剤を用いることができる。具体的には、例えば、硬化剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤等が挙げられる。
【0029】
本開示に係る第1フィルムの平均厚みは、耐熱性及び配線歪みの抑制の観点から、10μm以上であることが好ましく、12μm~40μmであることがより好ましく、15μm~30μmであることがさらに好ましい。
【0030】
<第1フィルムの物性>
本開示に係る第1フィルムの誘電正接は0.01以下であり、0.005以下であることが好ましく、0を超え0.003以下であることがより好ましい。
【0031】
本開示において、誘電正接は、以下の方法により測定するものとする。
誘電正接の測定は、周波数28GHzで共振摂動法により実施する。ネットワークアナライザ(Agilent Technology社製「E8363B」)に28GHzの空洞共振器((株)関東電子応用開発製「CP531」)を接続し、空洞共振器に測定試料を挿入し、温度25℃、湿度60%RH環境下、96時間の挿入前後の共振周波数の変化から測定する。
【0032】
本開示に係る第1フィルムは、配線歪みの抑制の観点から、160℃における弾性率に対する290℃における弾性率の比率が0.6以上であり、0.8以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましい。上記比率の上限値は特に限定されず、例えば、5.0である。上記比率としては、0.6~3.0であることがより好ましい。
【0033】
本開示に係る第1フィルムは、高温における密着性の観点から、290℃における弾性率は3.0MPa以上であり、4.0MPa以上であることが好ましく、5.0MPa以上であることがより好ましい。290℃における弾性率の上限値は特に限定されず、例えば、10,000MPaである。290℃における弾性率としては、3.0MPa~20MPaであることがより好ましい。
【0034】
本開示に係る第1フィルムは、段差追従性の観点から、25℃における弾性率は170MPa以下であり、100MPa以下であることが好ましい。25℃における弾性率の下限値は特に限定されず、例えば、1.0MPaである。25℃における弾性率としては、2.0MPa~170MPaであることがより好ましい。
【0035】
本開示において、第1フィルムにおける25℃、160℃又は290℃における弾性率は、以下の方法で測定される。
【0036】
弾性率を、ナノインデンテーション法を用いて、押し込み弾性率として測定する。押し込み弾性率は、微小硬度計(製品名「DUH-W201」、(株)島津製作所製)を用い、25℃、160℃又は290℃において、ビッカース圧子により0.28mN/秒の荷重速度で負荷をかけ、最大荷重10mNを10秒間保持した後に、0.28mN/秒の荷重速度で除荷を行うことにより、測定する。厚さ方向に5μm間隔で弾性率を測定し、得られた測定値の平均値を採用する。
【0037】
本開示に係る第1フィルムは、2%質量減少温度が430℃以上であることが好ましく、450℃以上であることがより好ましく、500℃以上であることがさらに好ましい。2%質量減少温度の上限値は特に限定されず、例えば、1000℃である。
【0038】
本開示において、2%質量減少温度は、熱分析装置を用いて測定される。例えば、熱分析装置(製品名「TA-7000シリーズ」、日立ハイテク社製)を用いて、窒素気流下にて温度25℃から10℃/分の走査速度で昇温して測定される。
【0039】
[第2フィルム]
本開示に係るフィルム前駆体(以下、「第2フィルム」ともいう)は、誘電正接が0.01以下であり、160℃における弾性率が1.0MPa以下であり、250℃で1時間加熱した後における、160℃における弾性率に対する290℃における弾性率の比率が0.6以上であり、250℃で1時間加熱した後における、290℃における弾性率が3.0MPa以上であり、250℃で1時間加熱した後における、25℃における弾性率が170MPa以下である。
【0040】
本開示に係る第2フィルムは、160℃における弾性率が1.0MPa以下であるため、配線と貼り合わせた場合に配線歪みが抑制される。
【0041】
第1フィルムは、例えば、第2フィルムを250℃で1時間加熱することによって得られる。すなわち、第2フィルムは、第1フィルムの前駆体として位置付けられる。
【0042】
本開示に係る第2フィルムは、250℃で1時間加熱した後における、160℃における弾性率に対する290℃における弾性率の比率を0.6以上、290℃における弾性率を3.0MPa以上、25℃における弾性率を170MPa以下とする観点から、ポリマーを含むことが好ましく、熱硬化性樹脂を含むことがより好ましく、シルセスキオキサンポリマーを含むことがさらに好ましい。
【0043】
上記のとおり、シルセスキオキサンポリマーとは、1個のケイ素原子に対して、1個の有機基と、3個の酸素原子が結合した構造を有するポリマーである。第2フィルムに含まれるシルセスキオキサンポリマーにおいて、ケイ素原子と結合している有機基は、架橋性基を含んでいてもよい。
【0044】
架橋性基としては、例えば、ビニル基、アリル基、スチリル基、マレイミド基、エポキシ基、及び(メタ)アクリロイル基が挙げられる。
【0045】
ポリマーの含有量は、誘電正接、耐熱性、及び配線歪みの抑制の観点から、第2フィルムの全質量に対し、50質量%~100質量%であることが好ましく、80質量%~100質量%であることがより好ましい。
【0046】
本開示に係る第2フィルムが架橋性基を有するシルセスキオキサンポリマーを含む場合、シルセスキオキサンポリマー同士を架橋させるために、本開示に係る第2フィルムは、重合開始剤を含むことが好ましい。
【0047】
重合開始剤は、加熱によってラジカルを発生する熱ラジカル重合開始剤であることが好ましい。熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、ジメチル-1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボキシレート)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]2塩酸塩等のアゾ系化合物;1,1-ジ(t-ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(4,4-ジ-(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキシル)プロパン、t-ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシラウレート、ジクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、クメンヒドロペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド等の有機過酸化物;及び、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の無機過酸化物が挙げられる。
【0048】
重合開始剤の含有量は特に限定されないが、硬化性の観点から、第2フィルムの全質量に対して、1質量%~10質量%であることが好ましく、2質量%~8質量%であることがより好ましい。
【0049】
本開示に係る第2フィルムは、誘電正接、耐熱性、及び配線歪みの抑制の観点から、フィラーを含んでいてもよい。本開示に係る第2フィルムに含まれていてもよいフィラーの好ましい態様は、本開示に係る第1フィルムに含まれていてもよいフィラーの好ましい態様と同様である。
【0050】
本開示に係る第2フィルムは、上記以外のその他の添加剤を含んでいてもよい。
本開示に係る第2フィルムに含まれていてもよいその他の添加剤の好ましい態様は、本開示に係る第1フィルムに含まれていてもよいその他の添加剤の好ましい態様と同様である。
【0051】
<第2フィルムの物性>
本開示に係る第2フィルムの誘電正接は0.01以下であり、0.005以下であることが好ましく、0を超え0.003以下であることがより好ましい。
【0052】
本開示に係る第2フィルムは、配線歪みの抑制の観点から、160℃における弾性率が1.0MPa以下であり、0.8MPa以下であることが好ましく、0.5MPa以下であることがより好ましい。160℃における弾性率の下限値は特に限定されず、例えば、0.001MPaである。160℃における弾性率としては、0.001MPa~1.0MPaであることがより好ましい。
【0053】
本開示に係る第2フィルムは、250℃で1時間加熱した後における、160℃における弾性率に対する290℃における弾性率の比率が0.6以上であり、0.8以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましい。上記比率の上限値は特に限定されず、例えば、5.0である。上記比率としては、0.6~3.0であることがより好ましい。
【0054】
本開示に係る第2フィルムは、250℃で1時間加熱した後における、290℃における弾性率が3.0MPa以上であり、4.0MPa以上であることが好ましく、5.0MPa以上であることがより好ましい。290℃における弾性率の上限値は特に限定されず、例えば、10,000MPaである。290℃における弾性率としては、3.0MPa~20MPaであることがより好ましい。
【0055】
開示に係る第2フィルムは、250℃で1時間加熱した後における、25℃における弾性率が170MPa以下であり、100MPa以下であることが好ましい。25℃における弾性率の下限値は特に限定されず、例えば、1.0MPaである。25℃における弾性率としては、2.0MPa~170MPaであることがより好ましい。
【0056】
本開示において、第2フィルムにおける25℃、160℃又は290℃における弾性率は、第2フィルムにおける25℃、160℃又は290℃における弾性率と同様の方法で測定される。
【0057】
[第1積層体]
本開示に係る積層体(以下、「第1積層体」ともいう)は、層Aと、層Aの少なくとも一方の面上に配置された層Bとを含み、層Bは、誘電正接が0.01以下であり、層Bの160℃における弾性率に対する290℃における弾性率の比率が0.6以上であり、層Bの290℃における弾性率が3.0MPa以上である。
【0058】
本開示に係る第1積層体は、層Bの160℃における弾性率に対する290℃における弾性率の比率が0.6以上であることから、層Bが段差追従層として機能し、配線歪みが抑制される。また、層Bの上記比率が0.6以上であり、特に、290℃における弾性率が3.0MPa以上であることから、耐熱性に優れる。
【0059】
<層A>
本開示に係る積層体は、後述する層Bが設けられる層Aを有する。層Aは、積層体の誘電正接を0.01以下とする観点から、誘電正接が0.01以下であるポリマーを含むことが好ましい。
【0060】
層Aは、誘電正接が0.01以下であるポリマーを1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0061】
誘電正接が0.01以下であるポリマーの誘電正接は、積層体の誘電正接の観点から、0.005以下であることが好ましく、0を超え0.003以下であることがより好ましい。
【0062】
誘電正接が0.01以下であるポリマーとしては、例えば、液晶ポリマー、フッ素樹脂、環状脂肪族炭化水素基とエチレン性不飽和結合を有する基とを有する化合物の重合物、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル及びその変性物、ポリエーテルイミド等の熱可塑性樹脂;グリシジルメタクリレートとポリエチレンとの共重合体等のエラストマー;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0063】
-液晶ポリマー-
積層体の誘電正接の観点から、誘電正接が0.01以下であるポリマーは、液晶ポリマーであることが好ましい。すなわち、層Aは、液晶ポリマーを含むことが好ましい。
【0064】
液晶ポリマーの種類は特に限定されず、公知の液晶ポリマーを用いることができる。
また、液晶ポリマーは、溶融状態で液晶性を示すサーモトロピック液晶ポリマーであってもよく、溶液状態で液晶性を示すリオトロピック液晶ポリマーであってもよい。また、サーモトロピック液晶の場合は、450℃以下の温度で溶融するものであることが好ましい。
【0065】
液晶ポリマーとしては、例えば、液晶ポリエステル、液晶ポリエステルにアミド結合が導入された液晶ポリエステルアミド、液晶ポリエステルにエーテル結合が導入された液晶ポリエステルエーテル、及び、液晶ポリエステルにカーボネート結合が導入された液晶ポリエステルカーボネートが挙げられる。
【0066】
また、液晶ポリマーは、液晶性の観点から、芳香環を有するポリマーであることが好ましく、芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドであることがより好ましい。
【0067】
さらに、液晶ポリマーは、芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドに、さらにイミド結合、カルボジイミド結合、イソシアヌレート結合等のイソシアネート由来の結合等が導入されたポリマーであってもよい。
【0068】
また、液晶ポリマーは、原料モノマーとして芳香族化合物のみを用いてなる全芳香族液晶ポリマーであることが好ましい。
【0069】
液晶ポリマーとしては、例えば、以下の液晶ポリマーが挙げられる。
1)(i)芳香族ヒドロキシカルボン酸と、(ii)芳香族ジカルボン酸と、(iii)芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を重縮合させてなるもの。
2)複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重縮合させてなるもの。
3)(i)芳香族ジカルボン酸と、(ii)芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を重縮合させてなるもの。
4)(i)ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルと、(ii)芳香族ヒドロキシカルボン酸と、を重縮合させてなるもの。
ここで、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンは、それぞれ独立に、重縮合可能な誘導体に置き換えてもよい。
【0070】
液晶ポリマーの融点は、250℃以上であることが好ましく、250℃~350℃であることがより好ましく、260℃~330℃であることがさらに好ましい。
【0071】
本開示において、融点は、示差走査熱量分析装置を用いて測定される。例えば、製品名「DSC-60A Plus」(島津製作所製)を用いて測定される。なお、測定における昇温速度は10℃/分とする。
【0072】
液晶ポリマーの重量平均分子量は、1,000,000以下であることが好ましく、3,000~300,000であることがより好ましく、5,000~100,000であることがさらに好ましく、5,000~30,000であることが特に好ましい。
【0073】
液晶ポリマーは、誘電正接をより低下させる観点から、芳香族ポリエステルアミドを含むことが好ましい。芳香族ポリエステルアミドとは、少なくとも1つの芳香環を有し、かつ、エステル結合及びアミド結合を有する樹脂である。中でも、耐熱性の観点から、芳香族ポリエステルアミドは、全芳香族ポリエステルアミドであることが好ましい。
【0074】
芳香族ポリエステルアミドは、結晶性ポリマーであることが好ましい。層Aは、結晶性の芳香族ポリエステルアミドを含むことが好ましい。層Aに含まれる芳香族ポリエステルアミドが結晶性であることで、誘電正接がより低下する。
なお、結晶性ポリマーとは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有するものをいう。具体的には、例えば、昇温速度10℃/minで測定した際の吸熱ピークの半値幅が10℃以内であることを意味する。半値幅が10℃を超えるポリマー及び明確な吸熱ピークが認められないポリマーは、非晶性ポリマーとして結晶性ポリマーと区別される。
【0075】
芳香族ポリエステルアミドは、下記式1で表される構成単位、下記式2で表される構成単位、及び下記式3で表される構成単位を含むことが好ましい。
-O-Ar-CO- …式1
-CO-Ar-CO- …式2
-NH-Ar-O- …式3
式1~式3中、Ar、Ar、及びArはそれぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表す。
以下、式1で表される構成単位等を、「単位1」等ともいう。
【0076】
単位1は、例えば、原料として芳香族ヒドロキシカルボン酸を用いることにより、導入することができる。
単位2は、例えば、原料として芳香族ジカルボン酸を用いることにより、導入することができる。
単位3は、例えば、原料として芳香族ヒドロキシルアミンを用いることにより、導入することができる。
【0077】
ここで、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、及び芳香族ヒドロキシルアミンはそれぞれ独立に、重縮合可能な誘導体に置き換えてもよい。
【0078】
例えば、カルボキシ基をアルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基に変換することにより、芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸を、芳香族ヒドロキシカルボン酸エステル及び芳香族ジカルボン酸エステルに置き換えることができる。
カルボキシ基をハロホルミル基に変換することにより、芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸を、芳香族ヒドロキシカルボン酸ハロゲン化物及び芳香族ジカルボン酸ハロゲン化物に置き換えることができる。
カルボキシ基をアシルオキシカルボニル基に変換することにより、芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸を、芳香族ヒドロキシカルボン酸無水物及び芳香族ジカルボン酸無水物に置き換えることができる。
芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ヒドロキシアミンのようなヒドロキシ基を有する化合物の重縮合可能な誘導体の例としては、ヒドロキシ基をアシル化してアシルオキシ基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。
例えば、ヒドロキシ基をアシル化してアシルオキシ基に変換することにより、芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ヒドロキシルアミンをそれぞれ、アシル化物に置き換えることができる。
芳香族ヒドロキシルアミンの重縮合可能な誘導体の例としては、アミノ基をアシル化してアシルアミノ基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。
例えば、アミノ基をアシル化してアシルアミノ基に変換することにより、芳香族ヒドロキシアミンをアシル化物に置き換えることができる。
【0079】
式1中、Arは、p-フェニレン基、2,6-ナフチレン基、又は4,4’-ビフェニリレン基であることが好ましく、2,6-ナフチレン基であることがより好ましい。
【0080】
Arがp-フェニレン基である場合、単位1は、例えば、p-ヒドロキシ安息香酸に由来する構成単位である。
Arが2,6-ナフチレン基である場合、単位1は、例えば、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構成単位である。
Arが,4,4’-ビフェニリレン基である場合、単位1は、例えば、4’-ヒドロキシ-4-ビフェニルカルボン酸に由来する構成単位である。
【0081】
式2中、Arは、p-フェニレン基、m-フェニレン基、又は2,6-ナフチレン基であることが好ましく、m-フェニレン基であることがより好ましい。
【0082】
Arがp-フェニレン基である場合、単位2は、例えば、テレフタル酸に由来する構成単位である。
Arがm-フェニレン基である場合、単位2は、例えば、イソフタル酸に由来する構成単位である。
Arが2,6-ナフチレン基である場合、単位2は、例えば、2,6-ナフタレンジカルボン酸に由来する構成単位である。
【0083】
式3中、Arは、p-フェニレン基又は4,4’-ビフェニリレン基であることが好ましく、p-フェニレン基であることがより好ましい。
【0084】
Arがp-フェニレン基である場合、単位3は、例えば、p-アミノフェノールに由来する構成単位である。
Arが4,4’-ビフェニリレン基である場合、単位3は、例えば、4-アミノ-4’-ヒドロキシビフェニルに由来する構成単位である。
【0085】
単位1、単位2、及び単位3の合計含有量に対して、単位1の含有量は、30モル%以
上であることが好ましく、単位2の含有量は、35モル%以下であることが好ましく、単位3の含有量は35モル%以下であることが好ましい。
単位1の含有量は、単位1、単位2、及び単位3の合計含有量に対して、30モル%~80モル%であることがより好ましく、30モル%~60モル%であることがさらに好ましく、30モル%~40モル%であることが特に好ましい。
単位2の含有量は、単位1、単位2、及び単位3の合計含有量に対して、10モル%~35モル%であることが好ましく、20モル%~35モル%であることがさらに好ましく、30モル%~35モル%であることが特に好ましい。
単位3の含有量は、単位1、単位2、及び単位3の合計含有量に対して、10モル%~35モル%であることが好ましく、20モル%~35モル%であることがさらに好ましく、30モル%~35モル%であることが特に好ましい。
なお、各構成単位の合計含有量は、各構成単位の物質量(モル)を合計した値である。各構成単位の物質量は、芳香族ポリエステルアミドを構成する各構成単位の質量を、各構成単位の式量で割ることにより算出される。
【0086】
単位2の含有量と単位3の含有量との比率は、[単位2の含有量]/[単位3の含有量](モル/モル)で表した場合に、好ましくは0.9/1~1/0.9、より好ましくは0.95/1~1/0.95、さらに好ましくは0.98/1~1/0.98である。
【0087】
なお、芳香族ポリエステルアミドは、単位1~単位3をそれぞれ独立に、2種以上有してもよい。また、芳香族ポリエステルアミドは、単位1~単位3以外の他の構成単位を有してもよい。他の構成単位の含有量は、全構成単位の合計含有量に対して、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下である。
【0088】
芳香族ポリエステルアミドは、芳香族ポリエステルアミドを構成する構成単位に対応する原料モノマーを溶融重合させることにより製造することが好ましい。
【0089】
芳香族ポリエステルアミドの重量平均分子量は、1,000,000以下であることが好ましく、3,000~300,000であることがより好ましく、5,000~100,000であることがさらに好ましく、5,000~30,000であることが特に好ましい。
【0090】
-フッ素樹脂-
誘電正接が0.01以下であるポリマーは、耐熱性、及び、力学的強度の観点から、フッ素樹脂であってもよい。
【0091】
本開示において、フッ素樹脂の種類は特に限定されず、公知のフッ素樹脂を用いることができる。
【0092】
フッ素樹脂としては、フッ素化α-オレフィンモノマー、すなわち、少なくとも1つのフッ素原子を含むα-オレフィンモノマーに由来する構成単位を含むホモポリマー、及び、コポリマーが挙げられる。また、フッ素樹脂としては、フッ素化α-オレフィンモノマーに由来する構成単位と、フッ素化α-オレフィンモノマーに対して反応性の非フッ素化エチレン性不飽和モノマーに由来する構成単位と、を含むコポリマーが挙げられる。
【0093】
フッ素化α-オレフィンモノマーとしては、CF=CF、CHF=CF、CH=CF、CHCl=CHF、CClF=CF、CCl=CF、CClF=CClF、CHF=CCl、CH=CClF、CCl=CClF、CFCF=CF、CFCF=CHF、CFCH=CF、CFCH=CH、CHFCH=CHF、CFCF=CF、及びパーフルオロ(炭素数2~8のアルキル)ビニルエーテル(例えば、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロプロピルビニルエーテル、及びパーフルオロオクチルビニルエーテル)が挙げられる。中でも、フッ素化α-オレフィンモノマーは、テトラフルオロエチレン(CF=CF)、クロロトリフルオロエチレン(CClF=CF)、(パーフルオロブチル)エチレン、フッ化ビニリデン(CH=CF)、及び、ヘキサフルオロプロピレン(CF=CFCF)よりなる群から選ばれた少なくとも1種のモノマーであることが好ましい。
非フッ素化エチレン性不飽和モノマーとしては、エチレン、プロピレン、ブテン、エチレン性不飽和芳香族モノマー(例えば、スチレン及びα-メチルスチレン)等が挙げられる。
フッ素化α-オレフィンモノマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、非フッ素化エチレン性不飽和モノマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0094】
フッ素樹脂としては、例えば、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリ(クロロトリフルオロエチレン-プロピレン)、ポリ(エチレン-テトラフルオロエチレン)(ETFE)、ポリ(エチレン-クロロトリフルオロエチレン)(ECTFE)、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン)、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)、ポリ(テトラフルオロエチレン-エチレン-プロピレン)、ポリ(テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン)(FEP)、ポリ(テトラフルオロエチレン-プロピレン)(FEPM)、ポリ(テトラフルオロエチレン-パーフルオロプロピレンビニルエーテル)、ポリ(テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル)(PFA)(例えば、ポリ(テトラフルオロエチレン-パーフルオロプロピルビニルエーテル))、ポリビニルフルオリド(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(フッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン)、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロスルホン酸、及びパーフルオロポリオキセタンが挙げられる。
【0095】
フッ素樹脂は、フッ素化エチレン又はフッ素化プロピレンに由来する構成単位を有していてもよい。
フッ素樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0096】
フッ素樹脂は、FEP、PFA、ETFE、又は、PTFEであることが好ましい。
FEPは、デュポン(DuPont)社よりテフロン(登録商標)FEP(TEFLON(登録商標)FEP)の商品名、又は、ダイキン工業(株)よりネオフロンFEP(NEOFLON FEP)の商品名で入手可能である。PFAは、ダイキン工業(株)よりネオフロンPFA(NEOFLON PFA)の商品名、デュポン(DuPont)社よりテフロン(登録商標)PFA(TEFLON(登録商標)PFA)の商品名、又は、ソルベイ・ソレクシス(Solvay Solexis)社よりハイフロンPFA(HYFLON PFA)の商品名で入手可能である。
【0097】
フッ素樹脂は、PTFEを含むことがより好ましい。PTFEは、PTFEホモポリマー、一部が変性されたPTFEホモポリマー、又は、これらの一方若しくは両方を含む組合せであってもよい。一部が変性されたPTFEホモポリマーは、ポリマーの全質量を基準として、テトラフルオロエチレン以外のコモノマーに由来する構成単位を1質量%未満含むことが好ましい。
【0098】
フッ素樹脂は、架橋性基を有する架橋性フルオロポリマーであってもよい。架橋性フルオロポリマーは、従来公知の架橋方法によって架橋させることができる。代表的な架橋性フルオロポリマーの1つは、(メタ)アクリロイルオキシを有するフルオロポリマーである。例えば、架橋性フルオロポリマーは、
式:HC=CR’COO-(CH-R-(CH-OOCR’=CH
で表すことができる。式中、Rは、フッ素化α-オレフィンモノマーに由来する構成単位を含むオリゴマー鎖であり、R’はH又は-CHであり、nは1~4である。Rは、テトラフルオロエチレンに由来する構成単位を含むフッ素系オリゴマー鎖であってもよい。
【0099】
フッ素樹脂上の(メタ)アクリロイルオキシ基を介してラジカル架橋反応を開始するために、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するフルオロポリマーをフリーラジカル源に曝露することによって、架橋フルオロポリマー網目構造を形成することができる。フリーラジカル源は、特に制限はないが、光ラジカル重合開始剤、又は、有機過酸化物が好適に挙げられる。適切な光ラジカル重合開始剤及び有機過酸化物は当技術分野においてよく知られている。架橋性フルオロポリマーは市販されており、例えば、デュポン社製のバイトンBが挙げられる。
【0100】
-環状脂肪族炭化水素基とエチレン性不飽和結合を有する基とを有する化合物の重合物-
誘電正接が0.01以下であるポリマーは、環状脂肪族炭化水素基とエチレン性不飽和結合を有する基とを有する化合物の重合物であってもよい。
【0101】
環状脂肪族炭化水素基とエチレン性不飽和結合を有する基とを有する化合物の重合物としては、例えば、ノルボルネン又は多環ノルボルネン系モノマーのような環状オレフィンモノマーに由来する構成単位を有する熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0102】
環状脂肪族炭化水素基とエチレン性不飽和結合を有する基とを有する化合物の重合物は、上記環状オレフィンの開環重合体や2種以上の環状オレフィンを用いた開環共重合体の水素添加物であってもよく、環状オレフィンと、鎖状オレフィン又はビニル基の如きエチレン性不飽和結合を有する芳香族化合物などとの付加重合体であってもよい。また、環状脂肪族炭化水素基とエチレン性不飽和結合を有する基とを有する化合物の重合物には、極性基が導入されていてもよい。
【0103】
環状脂肪族炭化水素基とエチレン性不飽和結合を有する基とを有する化合物の重合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0104】
環状脂肪族炭化水素基の環構造としては、単環であっても、2以上の環が縮合した縮合環であっても、橋掛け環であってもよい。
環状脂肪族炭化水素基の環構造としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環、イソボロン環、ノルボルナン環、ジシクロペンタン環等が挙げられる。
環状脂肪族炭化水素基とエチレン性不飽和結合を有する基とを有する化合物としては、特に制限はなく、環状脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート化合物、環状脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリルアミド化合物、環状脂肪族炭化水素基を有するビニル化合物等が挙げられる。中でも、環状脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート化合物が好ましく挙げられる。また、環状脂肪族炭化水素基とエチレン性不飽和結合を有する基とを有する化合物は、単官能エチレン性不飽和化合物であっても、多官能エチレン性不飽和化合物であってもよい。
環状脂肪族炭化水素基とエチレン性不飽和結合を有する基とを有する化合物における環状脂肪族炭化水素基の数は、1以上であればよく、2以上有していてもよい。
環状脂肪族炭化水素基とエチレン性不飽和結合を有する基とを有する化合物の重合物は、少なくとも1種の環状脂肪族炭化水素基とエチレン性不飽和結合を有する基とを有する化合物を重合してなる重合体であればよく、2種以上環状脂肪族炭化水素基とエチレン性不飽和結合を有する基とを有する化合物の重合物であってもよいし、環状脂肪族炭化水素基を有しない他のエチレン性不飽和化合物との共重合体であってもよい。
また、環状脂肪族炭化水素基とエチレン性不飽和結合を有する基とを有する化合物の重合物は、シクロオレフィンポリマーであることが好ましい。
【0105】
-ポリフェニレンエーテル-
誘電正接が0.01以下であるポリマーは、ポリフェニレンエーテルであってもよい。
ポリフェニレンエーテルは、分子末端のフェノール性水酸基の1分子当たりの平均個数(末端水酸基数)が、誘電正接、及び、耐熱性の観点から、1個~5個であることが好ましく、1.5個~3個であることがより好ましい。
ポリフェニレンエーテルの末端水酸基数は、例えば、ポリフェニレンエーテルの製品の規格値からわかる。また、末端水酸基数は、例えば、ポリフェニレンエーテル1モル中に存在する全てのポリフェニレンエーテルの1分子当たりのフェノール性水酸基の個数の平均値として表される。
ポリフェニレンエーテルは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0106】
ポリフェニレンエーテルとしては、例えば、2,6-ジメチルフェノールと2官能フェノール及び3官能フェノールの少なくともいずれか一方とからなるポリフェニレンエーテル、並びに、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンオキサイド)が挙げられる。ポリフェニレンエーテルは、より具体的には、式(PPE)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。
【0107】
【化1】
【0108】
式(PPE)中、Xは、炭素数1~3のアルキレン基又は単結合を表し、mは、0~20の整数を表し、nは、0~20の整数を表し、mとnとの合計は、1~30の整数を表す。
上記Xにおける上記アルキレン基としては、例えば、ジメチルメチレン基が挙げられる。
【0109】
ポリフェニレンエーテルの重量平均分子量(Mw)は、製膜後に熱硬化する場合には、耐熱性、及び、膜形成性の観点から、500~5,000であることが好ましく、500~3,000であることが好ましい。また、熱硬化しない場合には、特に限定されないが、3,000~100,000であることが好ましく、5,000~50,000であることが好ましい。
【0110】
-芳香族ポリエーテルケトン-
誘電正接が0.01以下であるポリマーは、芳香族ポリエーテルケトンであってもよい。
【0111】
芳香族ポリエーテルケトンとしては、特に限定されず、公知の芳香族ポリエーテルケトンを用いることができる。
【0112】
芳香族ポリエーテルケトンは、ポリエーテルエーテルケトンであることが好ましい。
【0113】
ポリエーテルエーテルケトンは、芳香族ポリエーテルケトンの1種であり、エーテル結合、エーテル結合、及びカルボニル結合の順に結合が配置されたポリマーである。各結合間は、2価の芳香族基により連結されていることが好ましい。
芳香族ポリエーテルケトンは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0114】
芳香族ポリエーテルケトンとしては、例えば、下記式(P1)で表される化学構造を有するポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、下記式(P2)で表される化学構造を有するポリエーテルケトン(PEK)、下記式(P3)で表される化学構造を有するポリエーテルケトンケトン(PEKK)、下記式(P4)で表される化学構造を有するポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、及び下記式(P5)で表される化学構造を有するポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)が挙げられる。
【0115】
【化2】
【0116】
式(P1)~(P5)の各々のnは、機械的特性の観点から、10以上が好ましく、20以上がより好ましい。一方、芳香族ポリエーテルケトンを容易に製造できる点では、nは、5,000以下が好ましく、1,000以下がより好ましい。すなわち、nは、10~5,000が好ましく、20~1,000がより好ましい。
【0117】
誘電正接が0.01以下であるポリマーの含有量は、積層体の誘電正接の観点から、層Aの全質量に対し、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、20質量%~100質量%であることが特に好ましい。
【0118】
層Aは、誘電正接が0.01以下であるポリマー以外にフィラーを含んでいてもよい。
【0119】
-フィラー-
フィラーとしては、粒子状でも繊維状のものでもよく、無機フィラーであってもよく、有機フィラーであってもよい。無機フィラー及び有機フィラーの具体例は上記のとおりである。
【0120】
中でも、層Aに含まれるフィラーは、積層体の誘電正接、耐熱性、及び配線歪みの抑制の観点から、有機フィラーであることが好ましく、液晶ポリマー粒子であることがより好ましい。
【0121】
層Aは、フィラーを1種のみ含んでいても、2種以上含んでいてもよい。
層Aがフィラーを含む場合、フィラーの含有量は、積層体の誘電正接、耐熱性、及び配線歪みの抑制の観点から、層Aの全質量に対し、30質量%~95質量%であることが好ましく、50質量%~90質量%であることがより好ましく、60質量%~80質量%であることが特に好ましい。
【0122】
-その他の添加剤-
層Aは、上述した成分以外のその他の添加剤を含んでいてもよい。
層Aに含まれていてもよいその他の添加剤の好ましい態様は、本開示に係る第1フィルムに含まれていてもよいその他の添加剤の好ましい態様と同様である。
【0123】
また、層Aは、その他の添加剤として、誘電正接が0.01以下であるポリマー以外の樹脂を含んでいてもよい。
誘電正接が0.01以下であるポリマー以外の樹脂の例としては、ポリプロピレン、ポリアミド、液晶ポリエステル以外のポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル及びその変性物、ポリエーテルイミド等の液晶ポリエステル以外の熱可塑性樹脂;グリシジルメタクリレートとポリエチレンとの共重合体等のエラストマー;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0124】
層Aにおけるその他の添加剤の総含有量は、誘電正接が0.01以下であるポリマーの含有量100質量部に対して、好ましくは25質量部以下であり、より好ましくは10質量部以下であり、さらに好ましくは5質量部以下である。
【0125】
層Aの平均厚みは、特に制限はないが、積層体の誘電正接、耐熱性、及び配線歪みの抑制の観点から、5μm~90μmであることが好ましく、10μm~70μmであることがより好ましく、15μm~50μmであることが特に好ましい。
【0126】
本開示に係る積層体における各層の平均厚みの測定方法は、以下のとおりである。
【0127】
積層体を、積層体の面方向に垂直な面で切断し、その断面において、5点以上厚みを測定し、それらの平均値を平均厚みとする。
【0128】
積層体の誘電正接を0.01以下とする観点から、層Aの誘電正接は0.01以下であることが好ましく、0.005以下であることがより好ましく、0を超え0.003以下であることがさらに好ましい。
【0129】
<層B>
本開示に係る第1積層体は、上記層Aの少なくとも一方の面に層Bを有する。層Bは、表面層(最外層)であることが好ましい。
【0130】
層Bは、積層体の誘電正接、配線歪みの抑制、及び耐熱性の観点から、熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。熱硬化性樹脂は、シルセスキオキサンポリマーを含むことが好ましい。層Bに含まれる熱硬化性樹脂の好ましい態様は、本開示に係る第1フィルムに含まれる熱硬化性樹脂の好ましい態様と同様である。
【0131】
層Bは、積層体の誘電正接、耐熱性、及び配線歪みの抑制の観点から、フィラーを含んでいてもよい。
層Bに含まれていてもよいフィラーの好ましい態様は、本開示に係る第1フィルムに含まれていてもよいフィラーの好ましい態様と同様である。
【0132】
層Bは、上記以外のその他の添加剤を含んでいてもよい。
層Bに含まれていてもよいその他の添加剤の好ましい態様は、本開示に係る第1フィルムに含まれていてもよいその他の添加剤の好ましい態様と同様である。
【0133】
層Bは、表面層(最外層)であることが好ましい。層Bは段差追従性に優れるため、金属配線との貼り合わせにおいて、密着性に優れる。
【0134】
層Bの平均厚みは、耐熱性及び配線歪みの抑制の観点から、5μm~50μmであることが好ましく、15μm~40μmであることがより好ましく、20μm~30μmであることがさらに好ましい。
【0135】
積層体の誘電正接を0.01以下とする観点から、層Bの誘電正接は0.01以下であり、0.005以下であることが好ましく、0を超え0.003以下であることがより好ましい。
【0136】
配線歪みの抑制の観点から、層Bの160℃における弾性率に対する290℃における弾性率の比率は0.6以上であり、0.8以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましい。上記比率の上限値は特に限定されず、例えば、5.0である。上記比率としては、0.6~3.0であることがより好ましい。
【0137】
耐熱性の観点から、層Bの290℃における弾性率は3.0MPa以上であり、4.0MPa以上であることが好ましく、5.0MPa以上であることがより好ましい。290℃における弾性率の上限値は特に限定されず、例えば、10,000MPaである。290℃における弾性率としては、3.0MPa~20MPaであることがより好ましい。
【0138】
配線歪みの抑制の観点から、層Bの25℃における弾性率は170MPa以下であることが好ましく、100MPa以下であることがより好ましい。25℃における弾性率の下限値は特に限定されず、例えば、1.0MPaである。25℃における弾性率としては、2.0MPa~170MPaであることがより好ましい。
【0139】
本開示において、層Bの25℃、160℃又は290℃における弾性率は、以下の方法で測定される。
【0140】
まず、積層体をミクロトーム等で断面切削し、光学顕微鏡で観察した画像から、層Bを特定する。次に、特定した層Bにおける弾性率を、ナノインデンテーション法を用いて、押し込み弾性率として測定する。押し込み弾性率は、微小硬度計(製品名「DUH-W201」、(株)島津製作所製)を用い、25℃、160℃又は290℃において、ビッカース圧子により0.28mN/秒の荷重速度で負荷をかけ、最大荷重10mNを10秒間保持した後に、0.28mN/秒の荷重速度で除荷を行うことにより、測定する。層Bの厚さ方向に5μm間隔で弾性率を測定し、得られた測定値の平均値を採用する。
【0141】
本開示に係る第1積層体は、層Bの2%質量減少温度が430℃以上であることが好ましく、450℃以上であることがより好ましく、500℃以上であることがさらに好ましい。2%質量減少温度の上限値は特に限定されず、例えば、1000℃である。
【0142】
本開示において、層Bの2%質量減少温度は以下の方法で測定される。
【0143】
まず、積層体をミクロトーム等で断面切削し、光学顕微鏡で観察した画像から、層Bを特定する。特定した層Bにおける2%質量減少温度は、第1フィルムの2%質量減少温度と同様の方法で測定される。
【0144】
本開示に係る第1積層体は、耐熱性及び配線歪みの抑制の観点から、上記層A及び上記層Bに加え、層Cをさらに有することが好ましく、上記層Bと、上記層Aと、上記層Cとをこの順で有することがより好ましい。
【0145】
<層C>
層Cは、接着層であることが好ましい。すなわち、層Cは、表面層(最外層)であることが好ましい。
【0146】
層Cは、積層体の誘電正接の観点から、少なくとも1種のポリマーを含むことが好ましい。
【0147】
層Cに用いられるポリマーの好ましい態様は、層Aに用いられる、誘電正接が0.01以下のポリマーの好ましい態様と同様である。
【0148】
層Cに含まれるポリマーは、層A又は層Bに含まれるポリマーと同じであってもよく、異なっていてもよいが、層Aと層Cとの密着性の観点から、層Aに含まれるポリマーと同じであることが好ましい。
【0149】
また、層Cは、金属層と層Aとを接着させるため、エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0150】
エポキシ樹脂は、多官能エポキシ化合物の架橋体であることが好ましい。多官能エポキシ化合物とは、エポキシ基を2つ以上有する化合物のことをいう。多官能エポキシ化合物におけるエポキシ基の数は、2~4であることが好ましい。
【0151】
特に、層Cは、積層体の誘電正接、及び、金属層との接着性の観点から、芳香族ポリエステルアミド及びエポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0152】
層Cは、フィラーを含んでいてもよい。
層Cに用いられるフィラーの好ましい態様は、層Aに用いられるフィラーの好ましい態様と同様である。
【0153】
層Cは、上記以外のその他の添加剤を含んでいてもよい。
層Cに用いられるその他の添加剤の好ましい態様は、後述する以外、層Aに用いられるその他の添加剤の好ましい態様と同様である。
【0154】
層Cの平均厚みは、積層体の誘電正接、及び、金属との密着性の観点から、層Aの平均厚みよりも薄いことが好ましい。
【0155】
層Aの平均厚みTと層Cの平均厚みTとの比であるT/Tの値は、積層体の誘電正接、及び、金属層との密着性の観点から、1より大きいことが好ましく、2~100であることがより好ましく、2.5~20であることがさらに好ましく、3~10であることが特に好ましい。
層Bの平均厚みTと層Cの平均厚みTとの比であるT/Tの値は、積層体の誘電正接、及び、金属層との密着性の観点から、1より大きいことが好ましく、2~100であることがより好ましく、2.5~20であることがさらに好ましく、3~10であることが特に好ましい。
【0156】
さらに、層Cの平均厚みは、積層体の誘電正接、及び、金属層との密着性の観点から、0.1μm~20μmであることが好ましく、0.5μm~15μmであることがより好ましく、1μm~10μmであることがさらに好ましく、2μm~8μmであることが特に好ましい。
【0157】
本開示に係る第1積層体の平均厚みは、強度、及び、金属層との積層体にした際の電気特性(特性インピーダンス)の観点から、6μm~200μmであることが好ましく、12μm~100μmであることがより好ましく、20μm~80μmであることが特に好ましい。
【0158】
積層体の平均厚みは、任意の5箇所について、接着式の膜厚計、例えば、電子マイクロメータ(製品名「KG3001A]、アンリツ社製)を用いて測定し、それらの平均値とする。
【0159】
<第1積層体の物性>
本開示に係る第1積層体は、誘電正接が0.01以下であることが好ましく、0.005以下であることがより好ましく、0を超え0.003以下であることがさらに好ましい。
【0160】
[第2積層体]
本開示に係る積層体前駆体(以下、「第2積層体」ともいう)は、層Aと、層Aの少なくとも一方の面上に配置された層Bとを含み、層Bは、誘電正接が0.01以下であり、層Bの160℃における弾性率が1.0MPa以下であり、250℃で1時間加熱した後における、層Bの160℃における弾性率に対する290℃における弾性率の比率が0.6以上であり、250℃で1時間加熱した後における、層Bの290℃における弾性率が3.0MPa以上である。
【0161】
本開示に係る第2積層体は、層Bの160℃における弾性率が1.0MPa以下であるため、配線と貼り合わせた場合に配線歪みが抑制される。
【0162】
第1積層体は、例えば、第2積層体を250℃で1時間加熱することによって得られる。すなわち、第2積層体は、第1積層体の前駆体として位置付けられる。
【0163】
<層A>
本開示に係る第2積層体における層Aの好ましい態様は、本開示に係る第1積層体における層Aの好ましい態様と同様である。
【0164】
<層B>
本開示に係る第2積層体における層Bに含まれる成分の好ましい態様は、本開示に係る第2フィルムに含まれる成分の好ましい態様と同様である。
【0165】
積層体の誘電正接を0.01以下とする観点から、層Bの誘電正接は0.01以下であり、0.005以下であることが好ましく、0を超え0.003以下であることがより好ましい。
【0166】
配線歪みの抑制の観点から、層Bの160℃における弾性率は1.0MPa以下であり、0.8MPa以下であることが好ましく、0.5MPa以下であることがより好ましい。160℃における弾性率の下限値は特に限定されず、例えば、0.001MPaである。160℃における弾性率としては、0.001MPa~1.0MPaであることがより好ましい。
【0167】
250℃で1時間加熱した後における、層Bの160℃における弾性率に対する290℃における弾性率の比率は0.6以上であり、0.8以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましい。上記比率の上限値は特に限定されず、例えば、5.0である。上記比率としては、0.6~3.0であることがより好ましい。
【0168】
250℃で1時間加熱した後における、層Bの290℃における弾性率は3.0MPa以上であり、4.0MPa以上であることが好ましく、5.0MPa以上であることがより好ましい。290℃における弾性率の上限値は特に限定されず、例えば、10,000MPaである。290℃における弾性率としては、3.0MPa~20MPaであることがより好ましい。
【0169】
250℃で1時間加熱した後における、層Bの25℃における弾性率は170MPa以下であり、100MPa以下であることが好ましい。25℃における弾性率の下限値は特に限定されず、例えば、1.0MPaである。25℃における弾性率としては、2.0MPa~170MPaであることがより好ましい。
【0170】
本開示において、第2積層体における25℃、160℃又は290℃における弾性率は、第1積層体における25℃、160℃又は290℃における弾性率と同様の方法で測定される。
【0171】
<積層体の製造方法>
(製膜)
本開示に係る第1積層体の製造方法は、特に制限はなく、公知の方法を参照することができる。
【0172】
製膜方法としては、例えば、共流延法、重層塗布法、共押出法等が好適に挙げられる。中でも、製膜方法は、共流延法であることが好ましい。
【0173】
積層体における多層構造を共流延法又は重層塗布法により製造する場合、液晶ポリマー等の各層の成分をそれぞれ溶媒に溶解又は分散した層A形成用組成物、層B形成用組成物、層C形成用組成物等を用いて、共流延法又は重層塗布法を行うことが好ましい。
【0174】
溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1-クロロブタン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;p-クロロフェノール、ペンタクロロフェノール、ペンタフルオロフェノール等のハロゲン化フェノール;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル;アセトン、シクロヘキサノン等のケトン;酢酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート;トリエチルアミン等のアミン;ピリジン等の含窒素複素環芳香族化合物;アセトニトリル、スクシノニトリル等のニトリル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド、テトラメチル尿素等の尿素化合物;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の硫黄化合物;ヘキサメチルリン酸アミド、トリn-ブチルリン酸等のリン化合物等が挙げられ、それらを2種以上用いてもよい。
【0175】
溶媒としては、腐食性が低く、取り扱い易いことから、非プロトン性化合物、特にハロゲン原子を有しない非プロトン性化合物を主成分とする溶媒が好ましく、溶媒全体に占める非プロトン性化合物の割合は、好ましくは50質量%~100質量%、より好ましくは70質量%~100質量%、特に好ましくは90質量%~100質量%である。また、上記非プロトン性化合物としては、液晶ポリマーを溶解し易いことから、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、N-メチルピロリドン等のアミド又はγ-ブチロラクトン等のエステルを用いることが好ましく、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びN-メチルピロリドンがより好ましい。
【0176】
また、溶媒としては、液晶ポリマーを溶解し易いことから、双極子モーメントが3~5である化合物を主成分とする溶媒が好ましく、溶媒全体に占める双極子モーメントが
3~5である化合物の割合は、好ましくは50質量%~100質量%、より好ましくは70質量%~100質量%、特に好ましくは90質量%~100質量%である。
上記非プロトン性化合物として、双極子モーメントが3~5である化合物を用いることが好ましい。
【0177】
また、溶媒としては、除去し易いことから、1気圧における沸点が220℃以下である化合物を主成分とするとする溶媒が好ましく、溶媒全体に占める1気圧における沸点が220℃以下である化合物の割合は、好ましくは50質量%~100質量%、より好ましくは70質量%~100質量%、特に好ましくは90質量%~100質量%である。
上記非プロトン性化合物として、1気圧における沸点が220℃以下である化合物を用いることが好ましい。
【0178】
また、本開示に係る第1積層体の製造方法は、上記共流延法、重層塗布法及び共押出法等により製造する場合、支持体を使用してもよい。
支持体としては、例えば、金属ドラム、金属バンド、ガラス板、樹脂フィルム又は金属箔が挙げられる。中でも、支持体は、金属ドラム、金属バンド、又は樹脂フィルムが好ましい。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリイミド(PI)フィルムが挙げられ、市販品の例としては、宇部興産(株)製U-ピレックスS及びU-ピレックスR、東レデュポン(株)製カプトン、並びに、SKCコーロンPI社製IF30、IF70及びLV300等が挙げられる。
また、支持体は、容易に剥離できるように、表面に表面処理層が形成されていてもよい。表面処理層は、ハードクロムメッキ、フッ素樹脂等を用いることができる。
支持体の平均厚みは、特に制限はないが、好ましくは25μm以上75μm以下であり、より好ましくは50μm以上75μmである。
【0179】
また、流延、又は、塗布された膜状の組成物(塗膜)から溶媒の少なくとも一部を除去する方法としては、特に制限はなく、公知の乾燥方法を用いることができる。
【0180】
(延伸)
本開示に係る第1積層体は、分子配向を制御し、熱膨張係数や力学物性を調整する観点で、適宜、延伸を組み合わせることができる。延伸の方法は、特に制限はなく、公知の方法を参照することができ、溶媒を含んだ状態で実施してもよく、乾膜の状態で実施してもよい。溶媒を含んだ状態での延伸は、積層体を把持して伸長してもよく、伸長せずに乾燥による自己収縮を利用して実施してもよい。延伸は、無機フィラー等の添加によってフィルム脆性が低下した場合に、破断伸度や破断強度を改善する目的で特に有効である。
【0181】

<用途>
本開示に係る積層体は、種々の用途に用いることができる、中でも、プリント配線板などの電子部品用フィルムに好適に用いることができ、フレキシブルプリント回路基板により好適に用いることができる。
また、本開示に係る積層体は、金属接着用液晶ポリマーフィルムとして好適に用いることができる。
【0182】
[配線基板]
本開示に係る配線基板は、基材と、基材の少なくとも一方の面上に配置された配線パターンと、配線パターン間及び配線パターン上に配置された層Bと、層B上に配置された層Aと、を備え、層Bは、誘電正接が0.01以下であり、層Bの160℃における弾性率に対する290℃における弾性率の比率が0.6以上であり、層Bの290℃における弾性率が3.0MPa以上である。
【0183】
本開示に係る配線基板は、層Bの160℃における弾性率に対する290℃における弾性率の比率が0.6以上であることにより、配線パターン周辺における隙間が低減されている。また、層Bの160℃における弾性率に対する290℃における弾性率の比率が0.6以上であり、特に、層Bの290℃における弾性率が3.0MPa以上であるため、耐熱性に優れる。
【0184】
<基材>
基材の材質は特に限定されないが、樹脂を含むことが好ましく、液晶ポリマーを含むことが好ましく、液晶ポリマーフィルムであることがより好ましい。
【0185】
基材の平均厚みは特に限定されないが、5μm~100μmであることが好ましく、10μm~80μmであることがより好ましく、20μm~70μmであることがさらに好ましい。
【0186】
<配線パターン>
本開示に係る配線基板は、基材の少なくとも一方の面上に配線パターンを有する。配線パターン間及び配線パターン上には層Bが配置されていることから、本開示に係る配線基板において、配線パターンは埋設されている。配線パターンは、例えば、以下の方法により、配線基板に埋設させることができる。まず、基材上に金属層を形成し、金属層をパターン状にエッチングする。これにより、配線パターン付き基材が得られる。次に、配線パターン付き基材と、層A及び層Bを有する他の基材とを、配線パターン付き基材における配線パターンと層Bとが接するように重ねる。配線パターン付き基材と他の基材とを重ねた後、貼り合わせてもよいし熱融着してもよい。これにより、配線パターンが埋設された配線基板が得られる。
【0187】
配線パターンの材質は特に限定されないが、金属であることが好ましく、銀又は銅であることがより好ましい。
【0188】
配線パターンの厚さは特に限定されないが、3μm~40μmであることが好ましく、5μm~35μmであることがより好ましい。
【0189】
配線パターンの厚さは、ミクロトームで配線基板を切削し、光学顕微鏡で観察することにより、測定される。
【0190】
<層A、層B>
本開示に係る配線基板は、配線パターン間及び配線パターン上に層Bを有する。層Bは、誘電正接が0.01以下であり、160℃における弾性率に対する290℃における弾性率の比率が0.6以上であり、290℃における弾性率が3.0MPa以上である。
【0191】
本開示に係る配線基板は、層Bが設けられる層Aを有する。層A及び層Bの好ましい態様は、本開示に係る第1積層体に含まれる層A及び層Bの好ましい態様と同様である。
【0192】
本開示に係る配線基板は、耐熱性の観点から、上記層A及び上記層Bに加え、層Cをさらに有することが好ましく、層Cは、層A上に配置されていることが好ましい。層Cの好ましい態様は、本開示に係る積層体に含まれていてもよい層Cの好ましい態様と同様である。
【0193】
<配線基板の製造方法>
(第1態様)
本開示に係る配線基板の製造方法における第1態様は、配線パターン付き基材の配線パターン上に、本開示に係る第2積層体を重ね合わせる工程と、配線パターン付き基材と本開示に係る積層体とを重ね合わせた状態で加熱して、配線基板を得る工程と、を含むことが好ましい。配線パターン付き基材と第2積層体とは、配線パターン付き基材の配線パターンと、第2積層体における層Bとが接するように重ね合わせる。
【0194】
-重ね合わせ工程-
本開示に係る配線基板の製造方法の第1態様では、配線パターン付き基材の配線パターン上に、本開示に係る第2積層体を重ね合わせる。
【0195】
積層体を重ね合わせる場合、配線パターン上に第2積層体を載置するだけでもよいし、圧力を加えて押し付けながら配線パターン上に第2積層体を圧接するようにしてもよい。
【0196】
配線パターン付き基材は、基材の一方の面にのみ配線パターンが形成されていてもよく、基材の両方の面に配線パターンが形成されていてもよい。
【0197】
配線パターン付き基材は、公知の方法を用いて作製することができる。例えば、基材の少なくとも一方の面に金属層を貼り合わせて、基材と、基材の少なくとも一方の面に配置された金属層と、を備える配線基板を得る。金属層に対して、公知のパターニング処理を施すことにより、配線パターン付き基材が得られる。
【0198】
配線パターン付き基材における基材及び配線パターンの好ましい態様は、上記配線基板の欄で説明した基材及び配線パターンの好ましい態様と同様である。
【0199】
-加熱工程-
本開示の配線基板の製造方法の第1態様では、上記重ね合わせ工程の後、配線パターン付き基材と本開示に係る第2積層体とを重ね合わせた状態で加熱して、配線基板を得る。
【0200】
加熱方法は特に限定されず、例えば、熱プレス機を用いて行うことができる。
【0201】
加熱温度は、50℃~300℃であることが好ましく、100℃~250℃であることがより好ましい。
【0202】
加熱する際に、加圧することが好ましい。圧力は、0.5MPa~30MPaであることが好ましく、1MPa~20MPaであることがより好ましい。
【0203】
加熱時間は特に限定されず、例えば、1分~2時間である。
【0204】
(第2態様)
本開示に係る配線基板の製造方法の第2態様は、支持体上に層A形成用組成物を塗布して層Aを形成する工程と、層A上に、本開示に係るフィルムと、配線パターン付き基材とをこの順に重ね合わせる工程と、層Aが形成された支持体、本開示に係る第2フィルム、及び配線パターン付き基材を重ね合わせた状態で加熱して、配線基板を得る工程と、を含むことが好ましい。第2フィルムと配線パターン付き基材とは、配線パターン付き基材の配線パターンと、第2フィルムとが接するように重ね合わせる。
【0205】
支持体としては、上記積層体の製造方法で用いられる支持体と同様のものが挙げられる。
【0206】
配線パターン付き基材の詳細は、上記第1態様と同様である。
【0207】
加熱工程の詳細は、上記第1態様と同様である。
【0208】
<用途>
本開示に係る配線基板は、種々の用途に用いることができる、中でも、本開示に係る積層体は、フレキシブルプリント回路基板に好適に用いることができる。
【実施例0209】
以下に実施例を挙げて本開示をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本開示の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。したがって、本開示の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0210】
単層フィルム及び複層フィルムの作製に用いた各材料の詳細は以下のとおりである。
【0211】
<<複層フィルムにおける層Aの材料>>
・P1:下記製造方法に従って作製した芳香族ポリエステルアミド
【0212】
-芳香族ポリエステルアミドP1の合成-
撹拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計、及び還流冷却器を備えた反応器に、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸940.9g(5.0モル)、イソフタル酸415.3g(2.5モル)、アセトアミノフェン377.9g(2.5モル)、及び無水酢酸867.8g(8.4モル)を入れ、反応器内のガスを窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下、撹拌しながら、室温(23℃、以下同じ)から140℃まで60分かけて昇温し、140℃で3時間還流させた。
次いで、副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から300℃まで5時間かけて昇温し、300℃で30分保持した。その後、反応器から内容物を取り出し、室温まで冷却した。得られた固形物を、粉砕機で粉砕して、粉末状の芳香族ポリエステルアミドA1aを得た。芳香族ポリエステルアミドP1aの流動開始温度は、193℃であった。また、芳香族ポリエステルアミドP1aは、全芳香族ポリエステルアミドであった。
芳香族ポリエステルアミドP1aを、窒素雰囲気下、室温から160℃まで2時間20分かけて昇温し、次いで160℃から180℃まで3時間20分かけて昇温し、180℃で5時間保持することにより固相重合させた後、冷却した。次いで、粉砕機で粉砕して、粉末状の芳香族ポリエステルアミドA1bを得た。芳香族ポリエステルアミドP1bの流動開始温度は、220℃であった。
芳香族ポリエステルアミドP1bを、窒素雰囲気下、室温から180℃まで1時間25分かけて昇温し、次いで180℃から255℃まで6時間40分かけて昇温し、255℃で5時間保持することにより固相重合させた後、冷却して、粉末状の芳香族ポリエステルアミドP1を得た。
芳香族ポリエステルアミドP1の流動開始温度は、302℃であった。また、芳香族ポリエステルアミドP1の融点を、示差走査熱量分析装置を用いて測定した結果、311℃であった。芳香族ポリエステルアミドP1の誘電正接は、0.003であった。芳香族ポリエステルアミドP1は、140℃のN-メチルピロリドンに対する溶解度が1質量%以上であった。
【0213】
<<複層フィルムにおける層B、及び、単層フィルムの材料>>
<シルセスキオキサンポリマー>
300mLの三口フラスコに下記に示す原料(0.3mol)、メチルイソブチルケトン75.0gを混合し、外温80℃で加熱しながら攪拌した。ここに0.1質量%の水酸化カリウム水溶液18.0gを5分間かけて等速滴下し、そのまま5時間加熱しながら攪拌した。加熱中、ディーンスターク装置を用いて還流されるメタノールを系外に除去しながら反応を行った。攪拌を止めて水浴にて室温(25℃)まで冷却した後、メチルイソブチルケトン150g、5質量%の食塩水150gを添加して、有機相を抽出した。有機相を5質量%の食塩水150gで1回、純水150gで2回、順次洗浄し、硫酸マグネシウム45gで乾燥した後、50℃35mmHgの減圧下で濃縮することにより、シルセスキオキサンポリマーのメチルイソブチルケトン溶液を得た。
B1の原料:メチルトリメトキシシラン
B2の原料:フェニルトリメトキシシラン
B3の原料:[2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル]トリメトキシシラン
【0214】
<熱可塑性樹脂>
・B4:スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、製品名「タフテックM1913」、旭化成ケミカルズ社製
<熱硬化性樹脂>
・B5:SLKシリーズ(信越化学工業社製)
【0215】
<重合開始剤(熱ラジカル重合開始剤)>
・V1:クメンヒドロペルオキシド
【0216】
<<複層フィルムにおける層Cの材料>>
C1:硬化剤、jER630、三菱化学(株)製、アミノフェノール型エポキシ樹脂
【0217】
次に、単層フィルム及び複層フィルムを作製するために、層A形成用溶液、層B形成用溶液、層C形成用溶液を調製した。なお、単層フィルムは、層B形成用溶液を用いて作製した。
【0218】
-層A形成用溶液の調製-
芳香族ポリエステルアミドP1 8質量部を、N-メチルピロリドン92質量部に加え、窒素雰囲気下、140℃4時間撹拌し、層A形成用溶液(固形分濃度8質量%)を得た。
【0219】
-層B形成用溶液の調製-
実施例1,2,4,5,7,8、及び、比較例1,2,4では、表1に記載の成分に酢酸ブチルを加え、固形分濃度が20質量%となるように調整し、層B形成用溶液を得た。
実施例3,6,9及び比較例3では、表1に記載の各成分を、表1に記載の含有量(質量%)で混合し、メチルイソブチルケトンを加え、固形分濃度が20質量%となるように調整し、層B形成用溶液を得た。
【0220】
-層C形成用溶液の調製-
芳香族ポリエステルアミドP1 8質量部を、N-メチルピロリドン92質量部に加え、窒素雰囲気下、140℃4時間撹拌し、芳香族ポリエステルアミド溶液P1(固形分濃度8質量%)を得た。
芳香族ポリエステルアミド溶液P1(99.8質量部)に対して、硬化剤C1 0.2質量部を混合し、層C形成用溶液を調製した。
【0221】
実施例1~実施例3では、片面銅張単層フィルム前駆体及び片面銅張単層フィルムを作製した。実施例4~実施例9、比較例1~比較例4では、片面銅張複層フィルム前駆体及び片面銅張複層フィルムを作製した。
【0222】
[第2フィルム(片面銅張単層フィルム前駆体)の作製]
得られた層B形成用溶液を、スライドコーターを装備したスロットダイコーターに送液し、銅箔の処理面上に表1に記載する膜厚になるように流量を調整して1層構成で塗布した。40℃にて4時間乾燥することにより、塗膜から溶媒を除去することで、片面銅張単層フィルム前駆体を得た。
【0223】
[第1フィルム(片面銅張単層フィルム)の作製]
得られた片面銅張単層フィルム前駆体を、窒素雰囲気下で室温(25℃)から230℃まで1℃/分で昇温した。230℃で2時間保持する熱処理を行い、片面銅張単層フィルムを得た。
【0224】
[第2積層体(片面銅張複層フィルム前駆体)の作製]
-層Cを含む場合-
得られた層C形成用溶液、層A形成用溶液を、スライドコーターを装備したスロットダイコーターに送液し、銅箔(製品名「CF-T9DA-SV-18」、平均厚み18μm、福田金属箔粉工業(株)製)の処理面上に表1に記載する膜厚になるように流量を調整して2層構成(層C/層A)で塗布した。40℃にて4時間乾燥することにより、塗膜から溶媒を除去した。さらに、窒素雰囲気下で室温(25℃)から300℃まで1℃/分で昇温した。300℃で2時間保持する熱処理を行い、銅層を有するポリマーフィルムを得た。
得られたB層形成用溶液を、スライドコーターを装備したスロットダイコーターに送液した。得られた銅層を有するポリマーフィルムに対して、表1に記載する膜厚になるように流量を調整して、B層形成用溶液を塗布した。40℃にて4時間乾燥することにより、塗膜から溶媒を除去した。銅層、層C、層A、層Bをこの順に有する積層体(片面銅張複層フィルム前駆体)を得た。
【0225】
-層Cを含まない場合-
得られた層A形成用溶液を、スライドコーターを装備したスロットダイコーターに送液し、銅箔(製品名「CF-T9DA-SV-18」、平均厚み18μm、福田金属箔粉工業(株)製)の処理面上に表1に記載する膜厚になるように流量を調整して塗布した。40℃にて4時間乾燥することにより、塗膜から溶媒を除去した。さらに、窒素雰囲気下で室温(25℃)から300℃まで1℃/分で昇温した。300℃で2時間保持する熱処理を行い、銅層を有するポリマーフィルムを得た。
得られたB層形成用溶液を、スライドコーターを装備したスロットダイコーターに送液した。得られた銅層を有するポリマーフィルムに対して、表1に記載する膜厚になるように流量を調整して、B層形成用溶液を塗布した。40℃にて4時間乾燥することにより、塗膜から溶媒を除去した。銅層、層A、層Bをこの順に有する積層体(片面銅張複層フィルム前駆体)を得た。
【0226】
[第1積層体(片面銅張複層フィルム)の作製]
得られた片面銅張複層フィルム前駆体を、窒素雰囲気下で室温(25℃)から230℃まで1℃/分で昇温した。230℃で2時間保持する熱処理を行い、片面銅張複層フィルムを得た。
【0227】
[配線基板の作製]
-配線パターン付き基材の作製-
銅箔(製品名「CF-T9DA-SV-18」、平均厚み18μm、福田金属箔粉工業(株)製)と、基材として液晶ポリマーフィルム(製品名「CTQ-50」、平均厚み50μm、クラレ社製)を準備した。銅箔の処理面が基材と接するように、銅箔と基材と銅箔とをこの順に重ねた。ラミネータ(製品名「真空ラミネータV-130」、ニッコー・マテリアルズ社製)を使用して、140℃及びラミネート圧0.4MPaの条件で1分間のラミネート処理を行い、両面銅箔積層板の前駆体を得た。続いて、熱圧着機(製品名「MP-SNL」、(株)東洋精機製作所製)を用いて、得られた両面銅張積層板の前駆体を、300℃及び4.5MPaの条件で10分間熱圧着することにより、両面銅張積層板を作製した。
上記両面銅張積層板の両面の銅箔に対してそれぞれエッチングしてパターニングを施し、基材の両側にグランド線及び3対の信号線を含む配線パターン付き基材を作製した。信号線の長さは50mm、幅は特性インピーダンスが50Ωになるように設定した。
【0228】
-配線基板の作製方法A-
実施例1~実施例3では、片面銅張単層フィルムを用いて配線基板を作製した。
【0229】
得られた片面銅張単層フィルムのフィルム側に、上記配線パターン付き基材を重ね合わせ、160℃及び4MPaの条件で、1時間の熱プレスを行うことにより、配線基板前駆体を得た。
得られた配線基板前駆体を、窒素雰囲気下で25℃から250℃まで1℃/分で昇温し、その温度で1時間保持する熱処理を行い、配線基板を得た。
得られた配線基板には、配線パターン(グランド線及び信号線)が埋設されており、配線パターンの厚みは18μmであった。
【0230】
-配線基板の作製方法B-
実施例4~実施例9、比較例1~比較例4では、片面銅張複層フィルムを用いて配線基板を作製した。
【0231】
実施例4~実施例9、比較例1、比較例3、比較例4では、得られた片面銅張複層フィルムの層B側に、上記配線パターン付き基材を重ね合わせ、160℃及び4MPaの条件で、1時間の熱プレスを行うことにより、配線基板前駆体を得た。
比較例2では、得られた片面銅張複層フィルムの層B側に、上記配線パターン付き基材を重ね合わせ、300℃及び4MPaの条件で、1時間の熱プレスを行うことにより、配線基板前駆体を得た。
得られた配線基板前駆体を、窒素雰囲気下で25℃から250℃まで1℃/分で昇温し、その温度で1時間保持する熱処理を行い、配線基板を得た。
得られた配線基板には、配線パターン(グランド線及び信号線)が埋設されており、配線パターンの厚みは18μmであった。
【0232】
<<評価>>
作製した片面銅張単層フィルム前駆体、片面銅張単層フィルム、片面銅張複層フィルム前駆体、及び片面銅張複層フィルムについて、下記に示す測定及び評価を行い、結果を表1に記載した。
【0233】
<<測定方法>>
〔弾性率〕
弾性率を、ナノインデンテーション法を用いて、押し込み弾性率として測定した。押し込み弾性率は、微小硬度計(製品名「DUH-W201」、(株)島津製作所製)を用い、160℃において、ビッカース圧子により0.28mN/秒の荷重速度で負荷をかけ、最大荷重10mNを10秒間保持した後に、0.28mN/秒の荷重速度で除荷を行うことにより、測定した。厚さ方向に5μm間隔で弾性率を測定し、得られた測定値の平均値を採用した。
【0234】
〔2%質量減少温度〕
ポリマーフィルムの2%質量減少温度は、両面銅張積層板の銅箔を塩化第二鉄の水溶液で除去し、純水で洗浄後、乾燥して得られたポリマーフィルムを用いて測定した。
2%質量減少温度は、熱分析装置(製品名「TA-7000シリーズ」、日立ハイテク社製)を用いて、窒素気流下にて温度25℃から10℃/分の走査速度で昇温して測定を行った。
【0235】
〔誘電正接〕
誘電正接は、片面銅張単層フィルム、片面銅張複層フィルム、及び配線基板の銅箔をそれぞれ、塩化第二鉄の水溶液で除去し、純水で洗浄後、乾燥して得られたフィルムを用いて測定した。
誘電正接の測定は、周波数28GHzで共振摂動法により実施した。ネットワークアナライザ(Agilent Technology社製「E8363B」)に28GHzの空洞共振器((株)関東電子応用開発製「CP531」)を接続し、空洞共振器に測定試料を挿入し、温度25℃、湿度60%RH環境下、96時間の挿入前後の共振周波数の変化から、測定試料の誘電正接を測定した。
【0236】
<<評価方法>>
〔配線歪み〕
配線基板をミクロトームで切削し、断面を光学顕微鏡で観察し、下記の評価基準に基づいて評価した。
A:信号線及びグランド線に歪みが認められない。
B:信号線に歪みは認められないが、グランド線に歪みが認められる。
C:1対の信号線に歪みが認められる。
D:2対又は3対の信号線に歪みが認められる。
【0237】
〔耐熱性〕
配線基板を30mm×30mmサイズに切り出し、評価サンプルとした。評価サンプルを、温度85℃相対湿度85%の恒温恒湿槽にて168時間処理した。その後、260℃に設定したオーブンに、評価サンプルを入れ、15分加熱した。加熱後の評価サンプルを剃刀で切削し、断面を光学顕微鏡で観察し、剥離状態を評価した。
A:剥離が認められなかった。
B:1mm以下の幅で剥離が認められた。
C:1mmより大きい幅で剥離が認められた。
【0238】
表1中、G25、G160、及びG290はそれぞれ、25℃、160℃、及び290℃における弾性率を意味する。実施例1~実施例3では、第1フィルム(片面銅張単層フィルム)及び第2フィルム(片面銅張単層フィルム前駆体)の弾性率を記載した。実施例4~実施例9、比較例1~比較例4では、第1積層体(片面銅張複層フィルム)及び第2積層体(片面銅張複層フィルム前駆体)の弾性率を記載した。「G290/G160」は、160℃における弾性率に対する290℃における弾性率の比率を意味する。
表1中、「Td,2」は、2%質量減少温度を意味する。表1中の含有量の単位は「質量%」である。
【0239】
【表1】
【0240】
表1に示すように、実施例1~実施例3では、フィルムの誘電正接が0.01以下であり、160℃における弾性率に対する290℃における弾性率の比率が0.6以上であり、290℃における弾性率が3.0MPa以上であり、25℃における弾性率が170MPa以下であるため、配線歪みが抑制され、耐熱性に優れる。
実施例4~実施例9では、積層体が、層Aと、層Aの少なくとも一方の面上に配置された層Bと、を含み、160℃における弾性率に対する290℃における弾性率の比率が0.6以上であり、290℃における弾性率が3.0MPa以上であるため、配線歪みが抑制され、耐熱性に優れる。
【0241】
一方、比較例1~比較例3では、層Bの160℃における弾性率に対する290℃における弾性率の比率が0.6未満であり、耐熱性に劣ることが分かった。
比較例4では、層Bの290℃における弾性率が3.0MPa未満であり、耐熱性に劣ることが分かった。