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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083223
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】半導体ナノ粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/08 20060101AFI20240613BHJP
   C09K 11/62 20060101ALI20240613BHJP
   C01G 15/00 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
C09K11/08 G
C09K11/08 A ZNM
C09K11/62
C01G15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111396
(22)【出願日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2022197388
(32)【優先日】2022-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145104
【弁理士】
【氏名又は名称】膝舘 祥治
(72)【発明者】
【氏名】五十川 陽平
(72)【発明者】
【氏名】加藤 俊
【テーマコード(参考)】
4H001
【Fターム(参考)】
4H001CA02
4H001CC07
4H001CF01
4H001XA16
4H001XA31
4H001XA47
4H001XA49
(57)【要約】
【課題】耐久性に優れる半導体ナノ粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】銀(Ag)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び硫黄(S)を含む第1半導体と、前記第1半導体の表面に配置され、ガリウム(Ga)及び硫黄(S)を含む第2半導体と、を備える第1半導体ナノ粒子を準備することと、前記第1半導体ナノ粒子、ガリウム(Ga)源及び硫黄(S)源を含む第1混合物を第1熱処理して、半導体複合粒子を含む第1熱処理物を得ることと、前記半導体複合粒子及びガリウムハロゲン化物を含む第2混合物を第2熱処理して第2熱処理物を得ることと、を含む半導体ナノ粒子の製造方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀(Ag)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び硫黄(S)を含む第1半導体と、前記第1半導体の表面に配置され、ガリウム(Ga)及び硫黄(S)を含む第2半導体と、を備える第1半導体ナノ粒子を準備することと、
前記第1半導体ナノ粒子、ガリウム(Ga)源及び硫黄(S)源を含む第1混合物を第1熱処理して、半導体複合粒子を含む第1熱処理物を得ることと、
前記半導体複合粒子及びガリウムハロゲン化物を含む第2混合物を第2熱処理して第2熱処理物を得ることと、を含む半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
前記第1熱処理物を得ることにおいて、前記第1混合物は銀(Ag)源を更に含む請求項1に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
前記第1熱処理物を得ることにおいて、前記第1混合物に含まれる、前記第1半導体ナノ粒子のモル数に対する前記銀(Ag)源に含まれる銀のモル数の比が、1.0×10以上1.0×10以下であり、
前記第1半導体ナノ粒子のモル数に対する前記ガリウム(Ga)源に含まれるガリウムのモル数の比が、5.0×10以上8.0×10以下である請求項2に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項4】
前記第1熱処理物を得ることにおいて、前記第1混合物に含まれる、前記ガリウム(Ga)源に含まれるガリウムのモル数に対する前記銀(Ag)源に含まれる銀のモル数の比が、0.04以上0.33以下である請求項2に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項5】
前記第2熱処理物及び有機溶剤を混合して第3混合物を得ることと、前記第3混合物を遠心分離処理することと、を更に含む請求項1に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項6】
前記第2熱処理物に含まれる半導体ナノ粒子の内部量子収率に対する前記遠心分離処理後に得られる半導体ナノ粒子の内部量子収率の比が、0.7以上1.1以下である請求項5に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項7】
前記有機溶剤は、アルコール溶剤を含む請求項5に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項8】
前記第1熱処理における熱処理温度は、200℃以上320℃以下であり、前記第2熱処理における熱処理温度は、200℃以上320℃以下である請求項1に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項9】
前記第1熱処理物を得ることにおいて、前記第1混合物に含まれる、前記第1半導体ナノ粒子のモル数に対する前記ガリウム(Ga)源に含まれるガリウムのモル数の比が、5.0×10以上6.0×10以下である請求項1に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項10】
銀(Ag)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び硫黄(S)を含む第3半導体と、第3半導体の表面に配置され、Ga及びSを含む第4半導体と、を備える半導体ナノ粒子であり、
前記半導体ナノ粒子は、平均粒径が7.5nm以上であり、
内部量子収率が50%以上であり、
発光スペクトルにおける半値幅が30nm以下である半導体ナノ粒子。
【請求項11】
第4半導体は、銀(Ag)を更に含む請求項10に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項12】
前記半導体ナノ粒子は、平均粒径が10nm以上である請求項11に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項13】
請求項1から9のいずれか1項に記載の製造方法で製造される請求項10に記載の半導体ナノ粒子。
【請求項14】
請求項1から9のいずれか1項に記載の製造方法で製造される請求項11に記載の半導体ナノ粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体ナノ粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体粒子はその粒径が例えば20nm以下になると、量子サイズ効果を発現することが知られており、そのようなナノ粒子は量子ドット(半導体量子ドットとも呼ばれる)と呼ばれる。量子サイズ効果とは、バルク粒子では連続とみなされる価電子帯と伝導帯のそれぞれのバンドが、粒径をナノサイズとしたときに離散的となり、粒径に応じてバンドギャップエネルギーが変化する現象を指す。
【0003】
量子ドットは、光を吸収して、そのバンドギャップエネルギーに対応する光に波長変換可能であるため、量子ドットの発光を利用した白色発光デバイスが提案されている。これに関連してバンド端発光が可能で低毒性組成となり得る三元系の半導体ナノ粒子の効率的な製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第WO2022/191032号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バンド端発光が可能な半導体ナノ粒子においては、耐久性のさらなる向上が求められている。本開示に係る一態様は、耐久性に優れる半導体ナノ粒子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一態様は、銀(Ag)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び硫黄(S)を含む第1半導体と、第1半導体の表面に配置され、ガリウム(Ga)及び硫黄(S)を含む第2半導体と、を備える第1半導体ナノ粒子を準備することと、第1半導体ナノ粒子、ガリウム(Ga)源及び硫黄(S)源を含む第1混合物を第1熱処理して、半導体複合粒子を含む第1熱処理物を得ることと、半導体複合粒子及びガリウムハロゲン化物を含む第2混合物を第2熱処理して第2熱処理物を得ることと、を含む半導体ナノ粒子の製造方法である。
【0007】
第二態様は、銀(Ag)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び硫黄(S)を含む第3半導体と、第3半導体の表面に配置され、Ga及びSを含む第4半導体と、を備える半導体ナノ粒子である。半導体ナノ粒子は、平均粒径が7.5nm以上であり、内部量子収率が50%以上であり、発光スペクトルにおける半値幅が30nm以下である。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る一態様によれば、耐久性に優れる半導体ナノ粒子及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1に係る半導体ナノ粒子の精製工程前と精製工程後の発光スペクトルの一例を示す図である。
図2】比較例に係る半導体ナノ粒子の精製工程前と精製工程後の発光スペクトルの一例を示す図である。
図3】実施例2に係る半導体ナノ粒子の精製工程前と精製工程後の発光スペクトルの一例を示す図である。
図4】実施例3に係る半導体ナノ粒子の精製工程前と精製工程後の発光スペクトルの一例を示す図である。
図5】実施例4に係る半導体ナノ粒子の精製工程前と精製工程後の発光スペクトルの一例を示す図である。
図6】半導体ナノ粒子の平均粒径と発光スペクトルにおける半値幅の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また「組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。さらに本明細書に記載される数値範囲の上限及び下限は、数値範囲として例示された数値をそれぞれ任意に選択して組み合わせることが可能である。本明細書において、量子ドット、蛍光体又は発光材料の組成を表す式中、カンマ(,)で区切られて記載されている複数の元素は、これらの複数の元素のうち少なくとも1種の元素を組成中に含有することを意味する。また、蛍光体の組成を表す式中、コロン(:)の前は母体結晶を表し、コロン(:)の後は賦活元素を表す。本明細書において、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係等は、JIS Z8110に従う。蛍光体の半値幅は、蛍光体の発光スペクトルにおいて、最大発光強度に対して発光強度が50%となる発光スペクトルの波長幅(半値全幅;FWHM)を意味する。以下、本開示の実施形態を詳細に説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本開示の技術思想を具体化するための、半導体ナノ粒子及びその製造方法を例示するものであって、本開示は、以下に示す半導体ナノ粒子及びその製造方法に限定されない。
【0011】
半導体ナノ粒子の製造方法
半導体ナノ粒子の製造方法は、銀(Ag)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び硫黄(S)を含む第1半導体と、第1半導体の表面に配置され、ガリウム(Ga)及び硫黄(S)を含む第2半導体と、を備える第1半導体ナノ粒子を準備する第1工程と、準備した第1半導体ナノ粒子、ガリウム(Ga)源及び硫黄(S)源を含む第1混合物を第1熱処理して、半導体複合粒子を含む第1熱処理物を得る第2工程と、第2工程で得られる半導体複合粒子及びガリウムハロゲン化物を含む第2混合物を第2熱処理して、所望の半導体ナノ粒子(以下、第2半導体ナノ粒子ともいう)を含む第2熱処理物を得る第3工程と、を含む。
【0012】
第1半導体の表面に第2半導体が配置される構造を有する第1半導体ナノ粒子に対して、Ga源とS源を供給して、第1半導体ナノ粒子の表面にGaとSを含む化合物を配置させて半導体複合粒子を得た後、半導体複合粒子の表面をガリウムハロゲン化物で表面処理することで、耐久性に優れる半導体ナノ粒子を製造することができる。これは例えば、第1半導体ナノ粒子の表面に形成される半導体が、外部環境の影響から第1半導体ナノ粒子を保護できるためと考えることができる。ここで耐久性に優れるとは、例えば、半導体ナノ粒子の製造工程において、半導体ナノ粒子を有機溶剤等で洗浄しても、その発光の内部量子収率の低下が軽減又は抑えられることを意味する。半導体ナノ粒子の製造方法で得られる半導体ナノ粒子は、バンド端発光を示し、高い内部量子収率を有していてよい。
【0013】
第1工程では、Ag、In、Ga及びSを含む第1半導体と、第1半導体の表面に配置され、Ga及びSを含む第2半導体と、を備える第1半導体ナノ粒子を準備する。第1半導体ナノ粒子は、所望の第1半導体ナノ粒子を譲り受け等により準備してもよく、後述する製造方法によって所望の第1半導体ナノ粒子を製造して準備してもよい。第1半導体ナノ粒子の詳細については後述する。
【0014】
第2工程では、準備した第1半導体ナノ粒子、ガリウム(Ga)源及び硫黄(S)源を含む第1混合物を第1熱処理して、半導体複合粒子を含む第1熱処理物を得る。第1熱処理物に含まれる半導体複合粒子では、GaとSを含む化合物が第1半導体ナノ粒子の表面に配置されていてよい。第1半導体ナノ粒子の表面に配置されるGaとSを含む化合物は、半導体化合物であってよく、また、硫化ガリウムを含んでいてよく、実質的にGa及びSからなる化合物であってよい。GaとSを含む化合物は、化学量論的な組成(例えば、Ga)を有していてもよく、化学量論的な組成とは異なる組成を有していてもよい。
【0015】
第1混合物に含まれるGa源としては、Ga塩等を挙げることができる。Ga塩は、有機酸塩又は無機酸塩のいずれであってもよい。具体的に無機酸塩としては、ハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩等を挙げることができる。また有機酸塩としては、ギ酸塩、酢酸塩、シュウ酸、アセチルアセトナート塩、スルホン酸塩等を挙げることができる。Ga塩は、好ましくはこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、有機溶剤への溶解度が高く、反応がより均一に進行することから、より好ましくは酢酸塩、アセチルアセトナート塩等の有機酸塩からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。第1混合物は、Ga塩を1種単独で含んでいてもよく、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0016】
第1混合物におけるGa源は、Ga-S結合を有する化合物を含んでいてもよい。Ga-S結合は、共有結合、イオン結合、配位結合等のいずれであってもよい。Ga-S結合を有する化合物としては、例えば含硫黄化合物のGa塩が挙げられ、Gaの有機酸塩、無機酸塩、有機金属化合物等であってよい。含硫黄化合物として具体的には、チオカルバミン酸、ジチオカルバミン酸、チオ炭酸エステル、ジチオ炭酸エステル(キサントゲン酸)、トリチオ炭酸エステル、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸及びそれらの誘導体等を挙げることができる。中でも比較的低温で分解することからキサントゲン酸及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。含硫黄化合物の具体例としては、例えば、脂肪族チオカルバミン酸、脂肪族ジチオカルバミン酸、脂肪族チオ炭酸エステル、脂肪族ジチオ炭酸エステル、脂肪族トリチオ炭酸エステル、脂肪族チオカルボン酸、脂肪族ジチオカルボン酸等が挙げられる。これらの含硫黄化合物における脂肪族基としては、炭素数1以上12以下のアルキル基、アルケニル基等を挙げることができる。脂肪族チオカルバミン酸にはジアルキルチオカルバミン酸等が含まれてよく、脂肪族ジチオカルバミン酸にはジアルキルジチオカルバミン酸等が含まれてよい。ジアルキルチオカルバミン酸及びジアルキルジチオカルバミン酸におけるアルキル基は、例えば、炭素数が1以上12以下であってよく、好ましくは炭素数が1以上4以下である。ジアルキルチオカルバミン酸及びジアルキルジチオカルバミン酸における2つのアルキル基は、同一でも異なっていてもよい。Ga-S結合を有する化合物の具体例としては、トリスジメチルジチオカルバミン酸ガリウム、トリスジエチルジチオカルバミン酸ガリウム(Ga(DDTC))、クロロビスジエチルジチオカルバミン酸ガリウム、エチルキサントゲン酸ガリウム(Ga(EX))等を挙げることができる。第1混合物は、Ga-S結合を有する化合物を1種単独で含んでいてもよく、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0017】
第1混合物におけるS源としては、硫黄単体又は硫黄を含む化合物を挙げることができる。S源としては例えば、高純度硫黄のような硫黄単体を用いることができ、あるいは、n-ブタンチオール、イソブタンチオール、n-ペンタンチオール、n-ヘキサンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール等のチオール、ジベンジルジスルフィドのようなジスルフィド、チオウレア、チオカルボニル化合物、チオカルバミン酸、ジチオカルバミン酸、チオ炭酸エステル、ジチオ炭酸エステル(キサントゲン酸)、トリチオ炭酸エステル、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸及びそれらの誘導体等の硫黄含有化合物を用いることができる。第1混合物におけるS源は、Ga源を兼ねていてもよい。例えば、Ga-S結合を有する化合物を第1混合物におけるGa源及びS源とすることができる。
【0018】
第1混合物におけるGa源とS源の含有量は、第1半導体ナノ粒子の表面に所望量のGaとSを含む化合物が配置されるように、第1混合物に含まれる第1半導体ナノ粒子の量を考慮して選択すればよい。例えば、第1半導体ナノ粒子の、粒子としての物質量10nmolに対して、Ga及びSからなる化学量論組成の化合物が0.01mmolから10mmol、特に0.1mmolから1mmol生成されるように、Ga源及びS源の仕込み量を決定してよい。ただし、粒子としての物質量というのは、第1半導体ナノ粒子1つを巨大な分子と見なしたときのモル量であり、第1混合物に含まれる第1半導体ナノ粒子の個数を、アボガドロ数(NA=6.022×1023)で除した値に等しい。
【0019】
第1混合物におけるGa源の含有量は、例えば第1半導体ナノ粒子のモル数に対するGa源に含まれるGaのモル数の比が、5.0×10以上6.0×10以下となる量であってよく、好ましくは6.7×10以上、1.5×10以上、又は2.0×10以上であってよく、また好ましくは4.5×10以下、4.0×10以下、又は3.0×10以下となる量であってよい。
【0020】
第1混合物は、Ga源及びS源に加えて銀(Ag)源を更に含んでいてもよい。Ag源としては、例えばAg塩等を挙げることができる。Ag塩は、有機酸塩又は無機酸塩のいずれであってもよい。具体的に無機酸塩としては、ハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩等を挙げることができる。また有機酸塩としては、ギ酸塩、酢酸塩、シュウ酸、アセチルアセトナート塩、スルホン酸塩等を挙げることができる。Ag塩は、好ましくはこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、有機溶剤への溶解度が高く、反応がより均一に進行することから、より好ましくは酢酸塩、アセチルアセトナート塩等の有機酸塩からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。第1混合物は、Ag塩をそれぞれ1種単独で含んでいてもよく、それぞれ2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0021】
第1混合物におけるAg塩は、Ag-S結合を有する化合物を含んでいてもよい。Ag-S結合は、共有結合、イオン結合、配位結合等のいずれであってもよい。Ag-S結合を有する化合物としては、例えば含硫黄化合物のAg塩が挙げられ、Agの有機酸塩、無機酸塩、有機金属化合物等であってよい。含硫黄化合物としては、チオカルバミン酸、ジチオカルバミン酸、チオ炭酸エステル、ジチオ炭酸エステル(キサントゲン酸)、トリチオ炭酸エステル、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸及びそれらの誘導体等を挙げることができる。中でも比較的低温で分解することからキサントゲン酸及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。含硫黄化合物の具体例は、Ga-S結合を有する化合物における含硫黄化合物と同様である。Ag-S結合を有する化合物の具体例としては、ジメチルジチオカルバミン酸銀、ジエチルジチオカルバミン酸銀(Ag(DDTC))、エチルキサントゲン酸銀(Ag(EX))等を挙げることができる。
【0022】
第1混合物におけるAg源の含有量は、例えば第1半導体ナノ粒子のモル数に対するAg源に含まれるAgのモル数の比が、1.0×10以上1.0×10以下となる量であってよく、好ましくは2×10以上となる量であってよく、また好ましくは7×10以下、又は5×10以下となる量であってよい。第1混合物がAg源を含む場合、第1半導体ナノ粒子のモル数に対するGa源に含まれるGaのモル数の比が5.0×10以上8.0×10以下となる量であってよく、好ましくは1.0×10以上、又は2.0×10以上であってよく、また好ましくは7.0×10以下、6.0×10以下、又は3.0×10以下となる量であってよい。更に第1混合物に含まれる、Ga源に含まれるガリウムのモル数に対するAg源に含まれるAgのモル数の比は、例えば0.04以上0.33以下であってよく、好ましくは0.08以上、0.12以上、又は0.14以上であってよく、また好ましくは0.24以下、0.2以下、又は0.17以下であってよい。
【0023】
第1混合物は、有機溶剤を含んでいてもよい。第1混合物における有機溶剤としては、例えば、炭素数4から20の炭化水素基を有するアミン、例えば炭素数4から20のアルキルアミンもしくはアルケニルアミン、炭素数4から20の炭化水素基を有するチオール、例えば炭素数4から20のアルキルチオールもしくはアルケニルチオール、炭素数4から20の炭化水素基を有するホスフィン、例えば炭素数4から20のアルキルホスフィンもしくはアルケニルホスフィン等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの有機溶剤は、例えば、最終的には、得られる半導体ナノ粒子を表面修飾してもよい。有機溶剤は2種以上を組み合わせて使用してよく、例えば炭素数4から20の炭化水素基を有するチオールから選択される少なくとも1種と、炭素数4から20の炭化水素基を有するアミンから選択される少なくとも1種とを組み合わせた混合溶剤を使用してよい。これらの有機溶剤は他の有機溶剤と混合して用いてもよい。有機溶剤が前記チオールと前記アミンとを含む場合、アミンに対するチオールの含有体積比(チオール/アミン)は、例えば、0より大きく1以下であってよく、好ましくは0.007以上0.2以下であってよい。
【0024】
第1混合物における第1半導体ナノ粒子の含有量は、例えば、5.0×10-8モル/L以上5.0×10-6モル/L以下であってよく、好ましくは1.0×10-7モル/L以上、又は3.0×10-7モル/L以上であってよく、また好ましくは2.5×10-6モル/L以下、1.0×10-6モル/L以下、又は6.0×10-7モル/L以下であってよい。
【0025】
第2工程では第1混合物を第1熱処理して半導体複合粒子を含む第1熱処理物を得る。第1熱処理の温度は、例えば、200℃以上320℃以下であってよい。また、第1熱処理は、第1混合物を200℃以上320℃以下の範囲にある温度まで昇温する昇温工程と、200℃以上320℃以下の範囲にある温度にて第1混合物を所定時間熱処理する合成工程とを含んでいてよい。
【0026】
第1熱処理工程の昇温工程における昇温する温度の範囲は、200℃以上320℃以下であってよく、好ましくは230℃以上290℃以下であってよい。昇温速度は、昇温中の最高温度が目的とする温度を越えないように調整すればよく、例えば1℃/分以上50℃/分以下であってよい。
【0027】
第1熱処理工程の合成工程における熱処理の温度は、200℃以上320℃以下であってよく、好ましくは230℃以上290℃以下であってよい。合成工程における熱処理の時間は、例えば、3秒以上であってよく、好ましくは1分以上、10分以上、30分以上、60分以上、又は90分以上であってよい。また熱処理の時間は、例えば、300分以下であってよく、好ましくは180分以下、又は150分以下であってよい。合成工程における熱処理の時間は上述の温度範囲にて設定した温度に到達した時点(例えば250℃に設定した場合は250℃に到達した時間)を開始時間とし、降温のための操作を行った時点を終了時間とする。合成工程によって、第1半導体ナノ粒子の表面にGaとSを含む化合物が配置された半導体複合粒子を含む分散液を得ることができる。
【0028】
第1熱処理の雰囲気は、不活性ガス雰囲気、特にアルゴン雰囲気又は窒素雰囲気が好ましい。不活性ガス雰囲気とすることで、酸化物の副生及び得られる半導体複合粒子表面の酸化を、より効果的に低減ないしは防止することができる。
【0029】
半導体ナノ粒子の製造方法は、上述の合成工程に続いて、得られる半導体複合粒子を含む分散液の温度を降温する冷却工程をさらに有してよい。冷却工程は、降温のための操作を行った時点を開始とし、50℃以下まで冷却された時点を終了とする。冷却工程は降温速度が50℃/分以上である期間を含んでいてよい。特に降温のための操作を行った後、降温が開始した時点において50℃/分以上としてよい。
【0030】
冷却工程の雰囲気は、不活性ガス雰囲気、特にアルゴン雰囲気又は窒素雰囲気が好ましい。不活性ガス雰囲気とすることで、酸化物の副生及び得られる半導体複合粒子表面の酸化を、低減ないしは防止することができる。
【0031】
第3工程では、第2工程で得られる半導体複合粒子及びガリウムハロゲン化物を含む第2混合物を第2熱処理して、所望の半導体ナノ粒子(第2半導体ナノ粒子)を含む第2熱処理物を得る。半導体複合粒子とガリウムハロゲン化物とを含む第2混合物を第2熱処理することにより、バンド端発光純度及び内部量子収率が、より向上する第2半導体ナノ粒子を製造することができる。
【0032】
第2混合物は、第2工程で得られる半導体複合粒子とガリウムハロゲン化物とを混合することで調製することができる。第2混合物は、有機溶剤をさらに含んでいてもよい。第2混合物が含む有機溶剤は、上述の第2工程で例示した有機溶剤と同様である。第2混合物が有機溶剤を含む場合、半導体複合粒子の濃度が、例えば、5.0×10-8モル/L以上、又は.5.0×10-6モル/L以下であってよく、好ましくは1.0×10-7モル/L以上、又は.2.5×10-6モル/L以下となるように第2混合物が調製されてよい。ここで半導体複合粒子の濃度は、粒子としての物質量に基づいて設定される。
【0033】
第2混合物におけるガリウムハロゲン化物としては、フッ化ガリウム、塩化ガリウム、臭化ガリウム、ヨウ化ガリウム等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。また、ガリウムハロゲン化物は、少なくとも塩化ガリウムを含んでいてよい。ガリウムハロゲン化物が塩化ガリウムを含む場合、ガリウムハロゲン化物における塩化ガリウムの含有量は、例えば70モル%以上であってよく、好ましくは90モル%以上、又は95モル%以上であってよく、また好ましくは100モル%以下、又は100モル%未満であってよい。ガリウムハロゲン化物は1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
第2混合物における半導体複合粒子に対するガリウムハロゲン化物の含有量のモル比は、例えば、0.01以上50以下であってよく、好ましくは0.1以上10以下であってよい。
【0035】
第3工程における第2熱処理の温度は、例えば、200℃以上320℃以下であってよい。第2熱処理は、第2混合物を200℃以上320℃以下の範囲にある温度まで昇温する昇温工程と、200℃以上320℃以下の範囲にある温度にて第2混合物を所定時間熱処理する修飾工程とを含んでいてよい。
【0036】
また、第2熱処理は、昇温工程の前に、60℃以上100℃以下の温度で第2混合物を熱処理する予備熱処理工程を更に含んでいてもよい。予備熱処理工程における熱処理の温度は、例えば70℃以上90℃以下であってよい。予備熱処理工程における熱処理の時間は、例えば1分以上2時間以下であってよく、好ましくは5分以上、又は1時間以下であってよい。
【0037】
第2熱処理の昇温工程で昇温する温度の範囲は、200℃以上320℃以下であってよく、好ましくは230℃以上290℃以下であってよい。昇温速度は、昇温中の最高温度が目的とする温度を越えないように調整すればよく、例えば1℃/分以上50℃/分以下であってよい。
【0038】
第2熱処理の修飾工程における熱処理の温度は、200℃以上320℃以下であってよく、好ましくは230℃以上290℃以下であってよい。修飾工程における熱処理の時間は、例えば、3秒以上であってよく、好ましくは1分以上、10分以上、30分以上、60分以上、又は90分以上であってよい。また熱処理の時間は、例えば、300分以下であってよく、好ましくは180分以下、又は150分以下であってよい。修飾工程における熱処理の時間は上述の温度範囲にて設定した温度に到達した時点(例えば250℃に設定した場合は250℃に到達した時間)を開始時間とし、降温のための操作を行った時点を終了時間とする。
【0039】
第2熱処理の雰囲気は、不活性ガス雰囲気、特にアルゴン雰囲気又は窒素雰囲気が好ましい。不活性ガス雰囲気とすることで、酸化物の副生及び得られる第2半導体ナノ粒子表面の酸化を、低減ないしは防止することができる。
【0040】
半導体ナノ粒子の製造方法は、上述の修飾工程に続いて、得られる第2半導体ナノ粒子を含む分散液の温度を降温する冷却工程をさらに有してよい。冷却工程は、降温のための操作を行った時点を開始とし、50℃以下まで冷却された時点を終了とする。
【0041】
冷却工程は、降温速度が50℃/分以上である期間を含んでいてよい。特に降温のための操作を行った後、降温が開始した時点において50℃/分以上としてよい。
【0042】
冷却工程の雰囲気は、不活性ガス雰囲気、特にアルゴン雰囲気又は窒素雰囲気が好ましい。不活性ガス雰囲気とすることで、酸化物の副生及び得られる第2半導体ナノ粒子表面の酸化を、より効果的に低減ないしは防止することができる。
【0043】
第2熱処理物に含まれる第2半導体ナノ粒子は、第1半導体ナノ粒子の表面にGa及びSを含む化合物が配置され、ガリウムハロゲン化物で表面処理されて形成される。第2半導体ナノ粒子は、第1半導体ナノ粒子の第1半導体を含む部分の表面に第2半導体が配置され、その上に更にGa及びSを含む化合物が配置されて構成されてもよく、第1半導体を含む部分の表面に第2半導体とGa及びSを含む化合物が一体となって配置されて構成されていてもよい。すなわち、第2半導体ナノ粒子は、第1半導体を含む粒子の表面に、第2半導体を含む付着物が配置され、第1半導体を含む粒子の表面又は第2半導体を含む付着物上にGa及びSを含む付着物が配置されて構成されてもよく、第1半導体を含む粒子を、第2半導体を含む付着物が被覆し、その被覆表面をGa及びSを含む付着物が更に被覆して構成されていてもよい。さらに、第2半導体ナノ粒子は、例えば、第1半導体を含む粒子をコアとし、第2半導体を含む付着物とGa及びSを含む付着物とをシェルとし、コアの表面にシェルが配置されるコアシェル構造を有していてもよい。またシェルは第2半導体を含む付着物とGa及びSを含む付着物とが積層されて形成されていてもよいし、第2半導体とGa及びSを含む化合物とが一体となって形成されていてもよい。
【0044】
第2半導体ナノ粒子の平均粒径の第1半導体ナノ粒子の平均粒径に対する比は、例えば1以上5以下であってよく、好ましくは1.01以上、1.05以上、1.08以上、1.1以上、又は1.2以上であってよく、また好ましくは2以下、1.8以下、又は1.5以下であってよい。
【0045】
半導体ナノ粒子の製造方法は、第2熱処理後に得られる第2熱処理物から第2半導体ナノ粒子を分離する分離工程を更に含んでいてもよく、必要に応じて、さらに精製工程を含んでいてよい。分離工程では、例えば、第2半導体ナノ粒子を含む第2熱処理物を遠心分離に付して、第2半導体ナノ粒子を含む沈殿物を取り出してよい。精製工程では、例えば、分離工程で得られる沈殿物に、アルコール等の適当な有機溶剤を添加して遠心分離に付し、第2半導体ナノ粒子を沈殿物として取り出してよい。すなわち、精製工程は第2熱処理物と有機溶剤とを混合して第3混合物を得ることと、第3混合物を遠心分離処理することと、遠心分離処理により第2半導体ナノ粒子を沈殿物として取り出すことと、を含んでいてよい。また、半導体ナノ粒子の製造方法では、有機溶剤の添加と遠心分離処理による精製工程を必要に応じて複数回実施してもよい。
【0046】
精製工程における有機溶剤は、アルコール溶剤を含んでいてよい。精製工程に用いるアルコール溶剤としては、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-アミルアルコール、イソアミルアルコール等の炭素数1から5の低級アルコールを用いてよい。精製工程に用いる有機溶剤の液量は、例えば、第2混合物の液量に対する体積比として、0.1以上10以下であってよく、好ましくは0.4以上2以下であってよい。
【0047】
半導体ナノ粒子の製造方法においては、精製工程における内部量子収率の低下を低減ないしは防止することができる。これは例えば、第2工程において第1半導体ナノ粒子の表面にGaとSを含む化合物を配置することで精製工程に用いる有機溶剤に対する耐久性が向上するためと考えることができる。精製工程における耐久性の向上は、例えば、第2熱処理物に含まれる半導体ナノ粒子の内部量子収率に対する遠心分離処理後に得られる半導体ナノ粒子の内部量子収率の比で評価することができる。第2熱処理物に含まれる半導体ナノ粒子に対する精製工程における遠心分離処理後に得られる半導体ナノ粒子の内部量子収率の比は、例えば0.7以上1.1以下であってよく、好ましくは0.8以上、又は0.9以上であってよく、また好ましくは1.08以下、又は1.06以下であってよい。
【0048】
半導体ナノ粒子の製造方法における分離工程は、第2熱処理物から有機溶剤を揮発させて、第2半導体ナノ粒子を取り出すことであってもよい。分離工程、精製工程で取り出した第2半導体ナノ粒子は、例えば、真空脱気、もしくは自然乾燥、又は真空脱気と自然乾燥との組み合わせにより、乾燥させてよい。自然乾燥は、例えば、大気中に常温常圧にて放置することにより実施してよく、その場合、20時間以上、例えば、30時間程度放置してよい。また、取り出した沈殿物は、適当な有機溶剤に分散させてよい。沈殿物を有機溶剤に分散させる場合、有機溶剤として、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン等のハロゲン系溶剤、トルエン、シクロヘキサン、ヘキサン、ペンタン、オクタン等の炭化水素系溶剤等を用いてよい。沈殿物を分散させる有機溶剤は、内部量子収率の観点より、ハロゲン系溶剤であってよい。
【0049】
第1半導体ナノ粒子
第1混合物に含まれる第1半導体ナノ粒子は、Ag、In、Ga及びSを含む第1半導体と、第1半導体の表面に配置され、Ga及びSを含む第2半導体と、を備える。第1半導体ナノ粒子は、中心部付近に存在する第1半導体の結晶構造が実質的に正方晶(カルコパイライト構造)であってよく、第1半導体ナノ粒子の表面に配置される第2半導体が、Ga欠陥(例えば、Gaが不足している部分)の少ない結晶構造を有していてよい。また、第2半導体は、第1半導体に比べてGaの組成比が大きい半導体であってもよく、また第1半導体と比べてAgの組成比が小さい半導体であってもよく、実質的にGaとSからなる半導体であってよい。また、第1半導体ナノ粒子では、第1半導体を含む粒子の表面に、第2半導体を含む付着物が配置されていてよく、第1半導体を含む粒子を、第2半導体を含む付着物が被覆していてもよい。さらに、第1半導体ナノ粒子は、例えば、第1半導体を含む粒子をコアとし、第2半導体を含む付着物をシェルとし、コアの表面にシェルが配置されるコアシェル構造を有していてもよい。なお、第1半導体ナノ粒子及びその製造方法の詳細については、例えば国際公開第2022/191032号等を参照することができる。
【0050】
第1半導体ナノ粒子を構成する第1半導体は、Ag、In、Ga及びSを含む。一般的にAg、In及びSを含み、かつその結晶構造が正方晶、六方晶、又は斜方晶である半導体は、AgInSの組成式で表されるものとして、文献等において紹介されている。一方で、実際には、上記一般式で表される化学量論組成のものではなく、特にAgの原子数のIn及びGaの原子数に対する比(Ag/In+Ga)が1よりも小さくなる場合もあるし、あるいは逆に1よりも大きくなる場合もある。また、Agの原子数とIn及びGaの原子数の和が、Sの原子数と同じにならないことがある。よって本明細書では、特定の元素を含む半導体について、それが化学量論組成であるか否かを問わない場面では、Ag-In-Ga-Sのように、構成元素を「-」でつないだ式で半導体組成を表すことがある。よって本実施形態にかかる第1半導体の組成は、例えばAg-In-S及び第13族元素であるInの一部又は全部を同じく第13族元素であるGaとしてAg-In-Ga-S、Ag-Ga-Sと考えることができる。
【0051】
なお、上述の元素を含む第1半導体であって、六方晶の結晶構造を有するものはウルツ鉱型であり、正方晶の結晶構造を有する半導体はカルコパイライト型である。結晶構造は、例えば、X線回折(XRD)分析により得られるXRDパターンを測定することによって同定される。具体的には、第1半導体から得られたXRDパターンを、AgInSの組成で表される半導体ナノ粒子のものとして既知のXRDパターン、又は結晶構造パラメータからシミュレーションを行って求めたXRDパターンと比較する。既知のパターン及びシミュレーションのパターンの中に、第1半導体のパターンと一致するものがあれば、当該半導体ナノ粒子の結晶構造は、その一致した既知又はシミュレーションのパターンの結晶構造であるといえる。
【0052】
第1半導体ナノ粒子の集合体においては、異なる結晶構造の第1半導体を含む第1半導体ナノ粒子が混在していてよい。その場合、XRDパターンにおいては、複数の結晶構造に由来するピークが観察される。一態様の第1半導体ナノ粒子では、第1半導体が実質的に正方晶からなっていてよく、正方晶に対応するピークが観察され、他の結晶構造に由来するピークは実質的に観察されなくてよい。
【0053】
第1半導体の組成におけるAgの総含有率は、例えば10モル%以上30モル%以下であってよく、好ましくは15モル%以上25モル%以下であってよい。第1半導体の組成におけるIn及びGaの総含有率は、例えば、15モル%以上35モル%以下であってよく、好ましくは20モル%以上30モル%以下であってよい。第1半導体の組成におけるSの総含有率は、例えば、35モル%以上55モル%以下であってよく、好ましくは40モル%以上55モル%以下であってよい。
【0054】
第1半導体は、少なくともAgを含み、その一部が置換されてCu、Au及びアルカリ金属の少なくとも1種をさらに含んでいてもよく、実質的にAgから構成されていてよい。ここで「実質的に」とは、AgとAg以外の元素の総原子数に対するAg以外の元素の原子数の割合が、例えば10%以下であり、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下であることを示す。また、第1半導体は、実質的にAg及びアルカリ金属(以下、Mと記すことがある)を構成元素としていてもよい。ここで「実質的に」とは、Ag、アルカリ金属並びにAg及びアルカリ金属以外の元素の総原子数に対するAg及びアルカリ金属以外の元素の原子数の割合が、例えば10%以下であり、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下であることを示す。なお、アルカリ金属には、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)及びセシウム(Cs)が含まれる。アルカリ金属は、Agと同じく1価の陽イオンとなり得るため、第1半導体の組成におけるAgの一部を置換することができる。特にLiはAgとイオン半径が同程度であり、好ましく用いられる。第1半導体の組成において、Agの一部が置換されることで、例えば、バンドギャップが広がって発光ピーク波長が短波長側にシフトする。また、詳細は不明であるが、第1半導体の格子欠陥が低減されてバンド端発光の内部量子収率が向上すると考えられる。第1半導体がアルカリ金属を含む場合、少なくともLiを含んでいてよい。
【0055】
第1半導体がAg及びアルカリ金属(M)を含む場合、第1半導体の組成におけるアルカリ金属の含有率は、例えば、0モル%より大きく30モル%未満であり、好ましくは、1モル%以上25モル%以下であってよい。また、第1半導体の組成におけるAgの原子数及びアルカリ金属(M)の原子数の合計に対するアルカリ金属(M)の原子数の比(M/(Ag+M))は、例えば、1未満であり、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.4以下、更に好ましくは0.2以下であってよい。またその比は、例えば、0より大きく、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上であってよい。
【0056】
第1半導体は、InとGaを含み、その一部が置換されてAl及びTlの少なくとも一方をさらに含んでいてもよく、実質的にIn及びGaから構成されていてもよい。ここで「実質的に」とは、In及びGa並びにIn及びGa以外の元素の総原子数に対するIn及びGa以外の元素の原子数の割合が、例えば10%以下であり、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下であることを示す。
【0057】
第1半導体におけるIn及びGaの総原子数に対するInの原子数の比(In/(In+Ga))は、例えば、0.01以上1未満であってよく、好ましくは0.1以上0.99以下であってよい。In及びGaの総原子数に対するInの原子数の比が所定の範囲であると、短波長の発光ピーク波長(例えば、545nm以下)を得ることができる。また、InとGaの総原子数に対するAgの原子数の比(Ag/(In+Ga))は、例えば、0.3以上1.2以下であり、好ましくは0.5以上1.1以下であってよい。Ag、In及びGaの総原子数に対するSの原子数の比(S/(Ag+In+Ga))は、例えば、0.8以上1.5以下であり、好ましくは0.9以上1.2以下であってよい。
【0058】
第1半導体は、Sを含み、その一部が置換されてSe及びTeの少なくとも一方の元素をさらに含んでいてもよく、実質的にSから構成されていてもよい。ここで「実質的に」とは、S及びS以外の元素の総原子数に対するS以外の元素の原子数の割合が、例えば10%以下であり、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下であることを示す。
【0059】
第1半導体は、実質的にAg、In、Ga、S及び前述のそれら一部を置換する元素から構成されてよい。ここで「実質的に」という用語は、不純物の混入等に起因して不可避的にAg、In、Ga、S及び前述のそれら一部を置換する元素以外の他の元素が含まれることを考慮して使用している。
【0060】
第1半導体は、例えば、以下の式(1)で表される組成を有していてよい。
(Ag (1-p)InGa(1-r)(q+3)/2 (1)
ここで、p、q及びrは、0<p≦1、0.20<q≦1.2、0<r<1を満たす。Mはアルカリ金属を示す。
【0061】
半導体ナノ粒子は、表面に第2半導体が配置されている。第2半導体は、第1半導体よりバンドギャップエネルギーが大きい半導体を含んでいてよい。第2半導体の組成は、第1半導体の組成に比べて、Gaのモル含有量が大きい組成を有していてよい。第1半導体の組成におけるGaのモル含有量に対する第2半導体の組成におけるGaのモル含有量の比は、例えば1より大きく5以下であってよく、好ましくは1.1以上であり、また好ましくは3以下であってよい。
【0062】
また、第2半導体の組成は、第1半導体の組成に比べて、Agのモル含有量が小さい組成を有していてよい。第1半導体の組成におけるAgのモル含有量に対する第2半導体の組成におけるAgのモル含有量の比は、例えば0.1以上0.7以下であってよく、好ましくは0.2以上であり、また好ましくは0.5以下であってよい。第2半導体の組成におけるAgのモル含有量の比は、例えば0.5以下であってよく、好ましくは0.2以下、又は0.1以下であってよく、実質的に0であってよい。ここで「実質的に」とは、第2半導体に含まれるすべての元素の原子数の合計を100%としたときに、Agの原子数の割合が、例えば10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下であることを示す。
【0063】
第1半導体ナノ粒子において、表面に配置される第2半導体は、Ga及びSを含む半導体を含んでいてよい。Ga及びSを含む半導体は、第1半導体よりバンドギャップエネルギーが大きい半導体であってよい。
【0064】
第2半導体に含まれるGa及びSを含む半導体の組成においては、Gaの一部が、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)及びタリウム(Tl)からなる群から選択される第13族元素の少なくとも1種で置換されていてもよい。また、Sの一部が、酸素(O)、セレン(Se)、テルル(Te)及びポロニウム(Po)からなる群から選択される第16族元素の少なくとも1種で置換されていてもよい。
【0065】
Ga及びSを含む半導体は、実質的にGa及びSからなる半導体であってよい。ここで「実質的に」とは、Ga及びSを含む半導体に含まれるすべての元素の原子数の合計を100%としたときに、Ga及びS以外の元素の原子数の割合が、例えば10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下であることを示す。
【0066】
Ga及びSを含む半導体は、上述の第1半導体のバンドギャップエネルギーに応じて、その組成等を選択して構成してもよい。あるいは、Ga及びSを含む半導体の組成等が先に決定されている場合には、第1半導体のバンドギャップエネルギーがGa及びSを含む半導体のそれよりも小さくなるように、第1半導体を設計してもよい。一般にAg-In-Sからなる半導体は、1.8eV以上1.9eV以下のバンドギャップエネルギーを有する。
【0067】
具体的には、Ga及びSを含む半導体は、例えば2.0eV以上5.0eV以下、特に2.5eV以上5.0eV以下のバンドギャップエネルギーを有してよい。また、Ga及びSを含む半導体のバンドギャップエネルギーは、第1半導体のバンドギャップエネルギーよりも、例えば0.1eV以上3.0eV以下程度、特に0.3eV以上3.0eV以下程度、より特には0.5eV以上1.0eV以下程度大きいものであってよい。Ga及びSを含む半導体のバンドギャップエネルギーと第1半導体のバンドギャップエネルギーとの差が前記下限値以上であると、半導体ナノ粒子からの発光において、バンド端発光以外の発光の割合が少なくなり、バンド端発光の割合が大きくなる傾向がある。
【0068】
第2半導体は、酸素(O)原子を含んでいてよい。酸素原子を含む半導体は、上述の第1半導体よりも大きいバンドギャップエネルギーを有する半導体となる傾向にある。第2半導体における酸素原子を含む半導体の形態は明確ではないが、例えば、Ga-O-S、Ga等であってよい。
【0069】
第2半導体は、Ga及びSに加えてアルカリ金属(M)を更に含んでいてもよい。第2半導体に含まれるアルカリ金属は、少なくともリチウムを含んでいてよい。第2半導体がアルカリ金属を含む場合、アルカリ金属の原子数とGaの原子数の総和に対するアルカリ金属の原子数の比は、例えば、0.01以上1未満、又は0.1以上0.9以下であってよい。また、アルカリ金属の原子数とGaの原子数の総和に対するSの原子数の比は、例えば、0.25以上0.75以下であってよい。
【0070】
第2半導体は、その晶系が第1半導体の晶系となじみのあるものであってよく、またその格子定数が、第1半導体の格子定数と同じ又は近いものであってよい。晶系になじみがあり、格子定数が近い(ここでは、第2半導体の格子定数の倍数が、第1半導体の格子定数に近いものも格子定数が近いものとする)第2半導体は、第1半導体の周囲を良好に被覆することがある。例えば、上述の第1半導体は、一般に正方晶系であるが、これになじみのある晶系としては、正方晶系、斜方晶系が挙げられる。Ag-In-Sが正方晶系である場合、その格子定数は0.5828nm、0.5828nm、1.119nmであり、これを被覆する第2半導体は、正方晶系又は斜方晶系であって、その格子定数又はその倍数が、Ag-In-Sの格子定数と近いものであることが好ましい。あるいは、第2半導体はアモルファス(非晶質)であってもよい。
【0071】
第2半導体は、第1半導体と固溶体を構成しないものであることが好ましい。第2半導体が第1半導体と固溶体を形成すると両者が一体のものとなり、第1半導体を含むナノ粒子の表面に第2半導体が配置されることによりバンド端発光を得ることができなくなる場合がある。例えば、Ag-In-Sからなる第1半導体を含む半導体ナノ粒子の表面に、化学量論組成ないしは非化学量論組成の硫化亜鉛(Zn-S)が配置されても、半導体ナノ粒子からバンド端発光が得られないことが確認されている。Zn-Sは、Ag-In-Sとの関係では、バンドギャップエネルギーに関して上記の条件を満たし、type-Iのバンドアライメントを与えるものである。それにもかかわらず、前記特定の半導体からバンド端発光が得られなかったのは、第1半導体とZnSとが固溶体を形成したことによると推察される。
【0072】
第1半導体ナノ粒子の粒径は、例えば、50nm以下の平均粒径を有してよい。平均粒径は、製造のしやすさとバンド端発光の内部量子収率の点より、1nm以上20nm以下の範囲が好ましく、1.6nm以上8nm以下がより好ましく、2nm以上7.5nm以下が特に好ましい。
【0073】
第1半導体ナノ粒子の平均粒径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて撮影されたTEM像から求めてよい。個々の粒子の粒径は、具体的には、TEM像で観察される粒子の外周の任意の2点を結び、粒子の内部に存在する線分のうち、最も長いものを指す。個々の粒子の粒径の具体的な測定方法については後述する。
【0074】
第1半導体ナノ粒子において、第1半導体を含む部分は粒子状であってよく、例えば、10nm以下、特に、8nm以下、又は7.5nm未満の平均粒径を有してよい。第1半導体を含む部分の平均粒径は、例えば1.5nm以上10nm以下、好ましくは1.5nm以上8nm未満、又は1.5nm以上7.5nm未満の範囲内にあってよい。第1半導体を含む部分の平均粒径が前記上限値以下であると、量子サイズ効果を得られ易い。
【0075】
第1半導体ナノ粒子における第2半導体を含む部分の厚みは0.1nm以上20nm以下の範囲内、特に0.3nm以上5nm以下の範囲内にあってよい。第2半導体を含む部分の厚みが前記下限値以上である場合には、第1半導体ナノ粒子において第2半導体が配置されることによる効果が十分に得られ、バンド端発光を得られ易い。
【0076】
第1半導体ナノ粒子は、結晶構造が実質的に正方晶であることが好ましい。結晶構造は、上述と同様にX線回折(XRD)分析により得られるXRDパターンを測定することによって同定される。実質的に正方晶であるとは、正方晶であることを示す26°付近のメインピークの高さに対する六方晶及び斜方晶であることを示す48°付近のピークの高さの比が、例えば、10%以下、又は5%以下であることをいう。
【0077】
第1半導体ナノ粒子は、発光ピーク波長が例えば380nm以上545nm以下の範囲内である光源からの光照射によって、475nm以上560nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有するバンド端発光を示してもよく、発光ピーク波長の範囲は好ましくは510nm以上550nm以下であってよく、より好ましくは525nm以上535nm以下であってよい。また、第1半導体ナノ粒子は、その発光スペクトルにおける半値幅が、例えば、45nm以下であってよく、好ましくは40nm以下、又は30nm以下あってよい。半値幅の下限は例えば、15nm以上であってよい。また、主成分(バンド端発光)の発光の寿命が200ns以下であることが好ましい。「発光の寿命」の詳細については後述する。
【0078】
第1半導体ナノ粒子の発光は、バンド端発光に加えて欠陥発光(例えば、ドナーアクセプター発光)を含むものであってもよいが、実質的にバンド端発光のみであることが好ましい。欠陥発光は一般に発光の寿命が長く、またブロードなスペクトルを有し、バンド端発光よりも長波長側にそのピークを有する。ここで、実質的にバンド端発光のみであるとは、発光スペクトルにおけるバンド端発光成分の純度(以下、「バンド端発光純度」ともいう)が、40%以上であることをいうが、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましく、95%以上が特に好ましい。バンド端発光成分の純度の上限値は、例えば、100%以下、100%未満、又は99%以下であってよい。「バンド端発光成分の純度」の詳細については後述する。
【0079】
バンド端発光の内部量子収率は、温度25℃において量子収率測定装置を用いて、励起光波長450nm、蛍光波長範囲470nm以上900nm以下の条件で計算された内部量子収率、あるいは励起光波長365nm、蛍光波長範囲450nm以上950nm以下の条件で計算された内部量子収率、あるいは励起光波長450nm、蛍光波長範囲500nm以上950nm以下の条件で計算された内部量子収率に上記バンド端発光成分の純度を乗じ、100で除した値として定義される。半導体ナノ粒子のバンド端発光の内部量子収率は、例えば15%以上であり、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上が更に好ましく、80%以上が特に好ましい。
【0080】
第1半導体ナノ粒子が発するバンド端発光は、半導体ナノ粒子の粒径を変化させることによって、ピークの位置を変化させることができる。例えば、第1半導体ナノ粒子の粒径をより小さくすると、バンド端発光のピーク波長が短波長側にシフトする傾向にある。さらに、第1半導体ナノ粒子の粒径をより小さくすると、バンド端発光のスペクトルの半値幅がより小さくなる傾向にある。
【0081】
第1半導体ナノ粒子がバンド端発光に加えて欠陥発光を示す場合、バンド端発光の強度比は、例えば、0.75以上であってよく、好ましくは0.85以上であり、より好ましくは0.9以上であり、特に好ましくは0.93以上であり、上限値は、例えば、1以下、1未満、又は0.99以下であってよい。バンド端発光の強度比の詳細については後述する。
【0082】
第1半導体ナノ粒子は、その吸収スペクトル又は励起スペクトル(蛍光励起スペクトルともいう)がエキシトンピークを示すものであることが好ましい。エキシトンピークは、励起子生成により得られるピークであり、これが吸収スペクトル又は励起スペクトルにおいて発現しているということは、粒径の分布が小さく、結晶欠陥の少ないバンド端発光に適した粒子であることを意味する。エキシトンピークが急峻になるほど、粒径がそろった結晶欠陥の少ない粒子が半導体ナノ粒子の集合体により多く含まれていることを意味する。したがって、発光の半値幅は狭くなり、発光効率が向上すると予想される。第1半導体ナノ粒子の吸収スペクトル又は励起スペクトルにおいて、エキシトンピークは、例えば、400nm以上550nm以下、好ましくは430nm以上500nm以下の範囲内で観察される。エキシトンピークの有無を見るための励起スペクトルは、観測波長をピーク波長付近に設定して測定してよい。
【0083】
第1半導体ナノ粒子は、その表面が表面修飾剤で修飾されていてもよい。表面修飾剤の具体例としては、炭素数2以上20以下のアミノアルコール、イオン性表面修飾剤、ノニオン性表面修飾剤、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含窒素化合物、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含硫黄化合物、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含酸素化合物、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含リン化合物、第2族元素、第12族元素又は第13族元素のハロゲン化物等を挙げることができる。表面修飾剤は、1種単独でも、異なる2種以上のものを組み合わせて用いてよい。
【0084】
第1半導体ナノ粒子は、その表面がガリウムハロゲン化物により表面修飾されていてもよい。第1半導体ナノ粒子の表面がガリウムハロゲン化物により表面修飾されることにより、バンド端発光の内部量子収率が向上する。ガリウムハロゲン化物の具体例としては、塩化ガリウム、フッ化ガリウム、臭化ガリウム、ヨウ化ガリウム等が挙げられる。
【0085】
第1半導体ナノ粒子における第2半導体は、その表面がガリウムハロゲン化物により表面修飾されていてもよい。第1半導体ナノ粒子における第2半導体の表面がガリウムハロゲン化物により表面修飾されることにより、バンド端発光の内部量子収率が向上する。
【0086】
ガリウムハロゲン化物によって表面修飾された第1半導体ナノ粒子の発光は、バンド端発光に加えて欠陥発光(ドナーアクセプター発光)を含むものであってもよいが、実質的にバンド端発光のみであることが好ましい。実質的にバンド端発光のみであるとは、上述の半導体ナノ粒子で述べたとおりであり、バンド端発光成分の純度は、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましく、95%以上が特に好ましい。
【0087】
ガリウムハロゲン化物によって表面修飾された第1半導体ナノ粒子のバンド端発光の内部量子収率の測定は、上述の第1半導体ナノ粒子で述べたとおりであり、バンド端発光の内部量子収率は、例えば、15%以上であり、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上が更に好ましく、80%以上が特に好ましい。
【0088】
第1半導体ナノ粒子の製造方法
第1半導体ナノ粒子の製造方法は、銀(Ag)塩と、インジウム(In)塩と、ガリウム(Ga)-硫黄(S)結合を有する化合物と、ガリウムハロゲン化物と、有機溶剤とを含む第4混合物を第4熱処理して第1半導体ナノ粒子を得る第4工程を含む。第1半導体ナノ粒子の製造方法は、必要に応じて、第4工程に加えてその他の工程を更に含んでいてもよい。
【0089】
第4工程
第4工程は、Ag塩と、In塩と、Ga-S結合を有する化合物と、ガリウムハロゲン化物と、有機溶剤とを含む第4混合物を得る第4混合工程と、得られる第4混合物を第4熱処理して第1半導体ナノ粒子を得る第4熱処理工程とを含んでいてよい。
【0090】
第1半導体ナノ粒子の組成に含まれるGa及びSの供給源として、Ga-S結合を有する化合物を用いることで、製造される第1半導体ナノ粒子の組成の制御が容易になる。また、ガリウムハロゲン化物を用いることにより、製造される第1半導体ナノ粒子の粒径制御が容易になる。以上のことから、バンド端発光を示し、高いバンド端発光純度を示す第1半導体ナノ粒子をワンポットにより効率的に製造することができると考えられる。
【0091】
第4混合工程では、Ag塩と、In塩と、Ga-S結合を有する化合物と、ガリウムハロゲン化物と、有機溶剤とを混合することで第4混合物を調製する。第4混合工程における混合方法は、通常用いられる混合方法から適宜選択されてよい。
【0092】
第4混合物におけるAg塩及びIn塩は、有機酸塩又は無機酸塩のいずれであってもよい。具体的には、無機酸塩としては、硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩等を挙げることができる。また有機酸塩としては、ギ酸塩、酢酸塩、シュウ酸、アセチルアセトナート塩、スルホン酸塩等を挙げることができる。Ag塩及びIn塩は、好ましくはこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種であってよく、有機溶剤への溶解度が高く、反応がより均一に進行することから、より好ましくは酢酸塩、アセチルアセトナート塩等の有機酸塩からなる群から選択される少なくとも1種であってよい。第1混合物は、Ag塩及びIn塩をそれぞれ1種単独で含んでいてもよく、それぞれ2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0093】
第4混合物におけるAg塩は、後述の第4熱処理工程において硫化銀の副生成を抑制できる点から、Ag-S結合を有する化合物を含んでいてもよい。Ag-S結合を含む化合物の詳細は、第1混合物におけるAg-S結合を含む化合物と同様である。
【0094】
第4混合物におけるIn塩は、In-S結合を有する化合物を含んでいてもよい。In-S結合は、共有結合、イオン結合、配位結合等のいずれであってもよい。In-S結合を有する化合物としては、例えば含硫黄化合物のIn塩が挙げられ、Inの有機酸塩、無機酸塩、有機金属化合物等であってよい。含硫黄化合物として具体的には、チオカルバミン酸、ジチオカルバミン酸、チオ炭酸エステル、ジチオ炭酸エステル(キサントゲン酸)、トリチオ炭酸エステル、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸及びそれらの誘導体等を挙げることができる。中でも比較的低温で分解することからキサントゲン酸及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。含硫黄化合物の具体例は上記と同様である。In-S結合を有する化合物の具体例としては、トリスジメチルジチオカルバミン酸インジウム、トリスジエチルジチオカルバミン酸インジウム(In(DDTC))、クロロビスジエチルジチオカルバミン酸インジウム、エチルキサントゲン酸インジウム(In(EX))等を挙げることができる。
【0095】
第4混合物におけるGa-S結合を有する化合物の詳細は、第1混合物におけるGa-S結合を含む化合物と同様である。第4混合物におけるガリウムハロゲン化物の詳細は、第2混合物におけるガリウムハロゲン化物と同様である。第4混合物における有機溶剤の詳細は、第1混合物における有機溶剤と同様である。
【0096】
第4混合物におけるAg、In、Ga及びSの含有比は、目的とする組成に応じて適宜選択してもよい。その際、Ag、In、Ga及びSの含有比は化学量論比と整合しなくてもよい。例えば、InとGaの合計モル数に対するGaのモル数の比(Ga/(In+Ga))は0.2以上0.95以下、0.4以上0.9以下、又は0.6以上0.9以下であってよい。また例えば、AgとInとGaの合計モル数に対するAgのモル数の比(Ag/(Ag+In+Ga))は0.05以上0.55以下であってよい。また例えば、AgとInとGaの合計モル数に対するSのモル数の比(S/(Ag+In+Ga))は0.6以上1.6以下であってよい。
【0097】
第4混合物は、アルカリ金属塩をさらに含んでいてもよい。アルカリ金属(M)としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)及びセシウム(Cs)が挙げられ、イオン半径がAgに近い点でLiを含むことが好ましい。アルカリ金属塩としては、有機酸塩及び無機酸塩が挙げられる。具体的に無機酸塩としては、硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩等が挙げられ、有機酸塩としては、酢酸塩、アセチルアセトナート塩、スルホン酸塩等が挙げられる。中でも有機溶剤への溶解度が高い点から有機酸塩が好ましい。
【0098】
第4混合物がアルカリ金属塩を含む場合、Agとアルカリ金属の総原子数に対するアルカリ金属の原子数の比(M/(Ag+M))は、例えば、1未満であってよく、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.4以下、更に好ましくは0.2以下である。またその比は、例えば、0より大きくてよく、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上である。
【0099】
第4混合物におけるAg塩に対するガリウムハロゲン化物の含有量のモル比は、例えば、0.01以上1以下であってよく、内部量子収率の点から、好ましくは0.12以上0.45以下であってよい。
【0100】
第4混合物におけるAg塩の濃度は、例えば、0.01ミリモル/リットル以上500ミリモル/リットル以下であってよく、内部量子収率の点から、好ましくは0.05ミリモル/リットル以上100ミリモル/リットル以下であってよく、より好ましくは0.1ミリモル/リットル以上10ミリモル/リットル以下であってよい。
【0101】
第4熱処理工程では、第4混合物を第4熱処理して半導体ナノ粒子を得る。第4熱処理の温度は、例えば、200℃以上320℃以下であってよい。また、第4熱処理工程は、第4混合物を200℃以上320℃以下の範囲にある温度まで昇温する昇温工程と、200℃以上320℃以下の範囲にある温度にて第4混合物を所定時間熱処理する合成工程とを含んでいてよい。
【0102】
第4熱処理工程の昇温工程における昇温する温度の範囲は、200℃以上320℃以下であってよく、好ましくは230℃以上290℃以下であってよい。昇温速度は、昇温中の最高温度が目的とする温度を越えないように調整すればよく、例えば1℃/分以上50℃/分以下である。
【0103】
第4熱処理工程の合成工程における熱処理の温度は、200℃以上320℃以下であってよく、好ましくは230℃以上290℃以下であってよい。合成工程における熱処理の時間は、例えば、3秒以上であってよく、好ましくは1分以上、10分以上、30分以上、60分以上、又は90分以上であってよい。また熱処理の時間は、例えば、300分以下であってよく、好ましくは180分以下、又は150分以下であってよい。合成工程における熱処理の時間は上述の温度範囲にて設定した温度に到達した時点(例えば250℃に設定した場合は250℃に到達した時間)を開始時間とし、降温のための操作を行った時点を終了時間とする。合成工程によって半導体ナノ粒子を含む分散液を得ることができる。
【0104】
第4熱処理工程の雰囲気は、不活性ガス雰囲気、特にアルゴン雰囲気又は窒素雰囲気が好ましい。不活性ガス雰囲気とすることで、酸化物の副生及び得られる半導体ナノ粒子表面の酸化を、より効果的に低減ないしは防止することができる。
【0105】
第1半導体ナノ粒子の製造方法は、上述の合成工程に続いて、得られる半導体ナノ粒子を含む分散液の温度を降温する冷却工程をさらに有してよい。冷却工程は、降温のための操作を行った時点を開始とし、50℃以下まで冷却された時点を終了とする。
【0106】
冷却工程は、未反応のAg塩からの硫化銀の生成を抑制する点から、降温速度が50℃/分以上である期間を含んでいてよい。特に降温のための操作を行った後、降温が開始した時点において50℃/分以上としてよい。
【0107】
冷却工程の雰囲気は、不活性ガス雰囲気、特にアルゴン雰囲気又は窒素雰囲気が好ましい。不活性ガス雰囲気とすることで、酸化物の副生及び得られる半導体ナノ粒子表面の酸化を、より効果的に低減ないしは防止することができる。
【0108】
半導体ナノ粒子の製造方法は、第1半導体ナノ粒子を分散液から分離する分離工程、精製工程等を更に含んでいてもよい。分離工程、精製工程の詳細については既述のとおりである。
【0109】
以上で得られる第1半導体ナノ粒子は、分散液の状態であってもよく、乾燥された粉体であってもよい。第1半導体ナノ粒子は、バンド端発光を示し、高いバンド端発光純度を示すことができる。上述した製造方法で得られる半導体ナノ粒子は、第1半導体ナノ粒子であってもよいし、後述する第5工程後に得られる半導体ナノ粒子が第1半導体ナノ粒子であってもよい。
【0110】
第1半導体ナノ粒子の製造方法は、第1半導体ナノ粒子と、ガリウムハロゲン化物とを含む第5混合物を第5熱処理して半導体ナノ粒子を得る第5工程を更に含んでいてもよい。
【0111】
第5工程
第5工程は、上述の第4工程で得られる半導体ナノ粒子と、ガリウムハロゲン化物とを含む第5混合物を得る第5混合工程と、得られる第5混合物を第5熱処理して半導体ナノ粒子を得る第5熱処理工程とを含んでいてよい。
【0112】
第1半導体ナノ粒子とガリウムハロゲン化物とを含む第5混合物を第5熱処理することにより、バンド端発光純度及び内部量子収率が、より向上する第1半導体ナノ粒子を製造することができる。
【0113】
第5混合工程では、第1半導体ナノ粒子と、ガリウムハロゲン化物とを混合して第5混合物を得る。第5混合物は、有機溶剤をさらに含んでいてもよい。第5混合物が含む有機溶剤は、上述の第1工程で例示した有機溶剤と同様である。第5混合物が有機溶剤を含む場合、第1半導体ナノ粒子の濃度が、例えば、5.0×10-7モル/L以上5.0×10-5モル/Lル以下、特に1.0×10-6モル/L以上、1.0×10-5モル/L以下となるように第2混合物が調製されてよい。ここで第1半導体ナノ粒子の濃度は、上述したように粒子としての物質量に基づいて設定される。
【0114】
第5混合物におけるガリウムハロゲン化物の詳細については既述の通りである。第5混合物における第1半導体ナノ粒子に対するガリウムハロゲン化物の含有量のモル比は、例えば、0.01以上50以下であってよく、好ましくは0.1以上10以下である。
【0115】
第5熱処理工程では、第5混合物を第5熱処理して半導体ナノ粒子を得る。第5熱処理の温度は、例えば、200℃以上320℃以下であってよい。第5熱処理工程は、第2混合物を200℃以上320℃以下の範囲にある温度まで昇温する昇温工程と、200℃以上320℃以下の範囲にある温度にて第5混合物を所定時間熱処理する修飾工程とを含んでいてよい。
【0116】
また、第5熱処理工程は、昇温工程の前に、60℃以上100℃以下の温度で第5混合物を熱処理する予備熱処理工程を更に含んでいてもよい。予備熱処理工程における熱処理の温度は、例えば70℃以上90℃以下であってよい。予備熱処理工程における熱処理の時間は、例えば1分以上2時間以下であってよく、好ましくは5分以上、又は1時間以下であってよい。
【0117】
第5熱処理工程の昇温工程で昇温する温度の範囲は、200℃以上320℃以下であってよく、好ましくは230℃以上290℃以下であってよい。昇温速度は、昇温中の最高温度が目的とする温度を越えないように調整すればよく、例えば1℃/分以上50℃/分以下であってよい。
【0118】
第5熱処理工程の修飾工程における熱処理の温度は、200℃以上320℃以下であってよく、好ましくは230℃以上290℃以下であってよい。修飾工程における熱処理の時間は、例えば、3秒以上であってよく、好ましくは1分以上、10分以上、30分以上、60分以上、又は90分以上であってよい。また熱処理の時間は、例えば、300分以下であってよく、好ましくは180分以下、又は150分以下であってよい。修飾工程における熱処理の時間は上述の温度範囲にて設定した温度に到達した時点(例えば250℃に設定した場合は250℃に到達した時間)を開始時間とし、降温のための操作を行った時点を終了時間とする。
【0119】
第5熱処理工程の雰囲気は、不活性ガス雰囲気、特にアルゴン雰囲気又は窒素雰囲気が好ましい。不活性ガス雰囲気とすることで、酸化物の副生及び得られる半導体ナノ粒子表面の酸化を、より効果的に低減ないしは防止することができる。
【0120】
第1半導体ナノ粒子の製造方法は、上述の修飾工程に続いて、得られる半導体ナノ粒子を含む分散液の温度を降温する冷却工程をさらに有してよい。冷却工程は、降温のための操作を行った時点を開始とし、50℃以下まで冷却された時点を終了とする。
【0121】
冷却工程は、降温速度が50℃/分以上である期間を含んでいてよい。特に降温のための操作を行った後、降温が開始した時点において50℃/分以上としてよい。
【0122】
冷却工程の雰囲気は、不活性ガス雰囲気、特にアルゴン雰囲気又は窒素雰囲気が好ましい。不活性ガス雰囲気とすることで、酸化物の副生及び得られる第2半導体ナノ粒子表面の酸化を、より効果的に低減ないしは防止することができる。
【0123】
第1半導体ナノ粒子の製造方法は、半導体ナノ粒子を分散液から分離する分離工程を更に含んでいてもよく、必要に応じて、さらに精製工程を含んでいてよい。分離工程、精製工程の詳細は、既述の通りである。
【0124】
半導体ナノ粒子
半導体ナノ粒子は、銀(Ag)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び硫黄(S)を含む第3半導体と、第3半導体の表面にGa及びSを含む第4半導体が配置されてなっていてよい。半導体ナノ粒子は、平均粒径が7.5nm以上であり、内部量子収率が50%以上であり、発光スペクトルにおける半値幅が30nm以下であってよい。また、半導体ナノ粒子は、発光ピーク波長が例えば380nm以上545nm以下の範囲内である光源からの光照射によって、475nm以上560nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有するバンド端発光を示し、バンド端発光純度が70%以上であってよい。半導体ナノ粒子は例えば、既述の半導体ナノ粒子の製造方法によって製造されるものであってよい。
【0125】
半導体ナノ粒子においては、第3半導体の表面にGa及びSを含む第4半導体を含む付着物が配置されていてよく、第3半導体を含む粒子を、第4半導体を含む付着物が被覆していてよい。さらに半導体ナノ粒子は、例えば第3半導体を含む粒子をコアとし、第4半導体を含む付着物をシェルとし、コアの表面にシェルが配置されるコアシェル構造を有していてもよい。
【0126】
半導体ナノ粒子を構成する第3半導体の詳細は、例えば第1半導体ナノ粒子を構成する第1半導体と同様であってよい。
【0127】
半導体ナノ粒子において、表面に配置される第4半導体は、Ga及びSを含む半導体を含んでいてよい。第4半導体は、第3半導体よりバンドギャップエネルギーが大きい半導体を含んでいてよい。第4半導体の組成は、第3半導体の組成に比べて、Gaのモル含有量が大きい組成を有していてよい。第3半導体の組成におけるGaのモル含有量に対する第4半導体の組成におけるGaのモル含有量の比は、例えば1より大きく5以下であってよく、好ましくは1.1以上であり、また好ましくは3以下であってよい。
【0128】
第4半導体に含まれるGa及びSを含む半導体の組成においては、Gaの一部が、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)及びタリウム(Tl)からなる群から選択される第13族元素の少なくとも1種で置換されていてもよい。また、Sの一部が、酸素(O)、セレン(Se)、テルル(Te)及びポロニウム(Po)からなる群から選択される第16族元素の少なくとも1種で置換されていてもよい。
【0129】
一態様において、Ga及びSを含む半導体は、実質的にGa及びSからなる半導体であってよい。ここで「実質的に」とは、Ga及びSを含む半導体に含まれるすべての元素の原子数の合計を100%としたときに、Ga及びS以外の元素の原子数の割合が、例えば10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下であることを示す。
【0130】
また一態様において、第4半導体は、Ga及びSに加えてAgを組成に含んでいてもよい。第4半導体がAgを組成に含む場合、第4半導体の組成におけるAgの含有率は、例えば、0モル%より大きく30モル%未満であり、好ましくは1モル%以上、3モル%以上、また好ましくは25モル%以下、又は10モル%以下であってよい。また、第4半導体の組成におけるAgの原子数及びGaの原子数の合計に対するAgの原子数の比(Ag/(Ag+Ga))は、例えば、0.02以上0.25以下であり、好ましくは0.04以上、又は0.08以上であってよく、また好ましくは0.50以下、又は0.20以下であってよい。また、Agの原子数とGaの原子数の合計に対するSの原子数の比は、例えば、0.25以上0.75以下であってよい。
【0131】
第4半導体は、酸素(O)原子を組成に含んでいてよい。酸素原子を含む半導体は、上述の第3半導体よりも大きいバンドギャップエネルギーを有する半導体となる傾向にある。第4半導体における酸素原子を含む半導体の形態は明確ではないが、例えば、Ga-O-S、Ga等であってよい。
【0132】
第4半導体は、Ga及びSに加えてアルカリ金属(M)を更に含んでいてもよい。第4半導体に含まれるアルカリ金属は、少なくともリチウムを含んでいてよい。第4半導体がアルカリ金属を含む場合、アルカリ金属の原子数とGaの原子数の合計に対するアルカリ金属の原子数の比は、例えば、0.01以上1未満、又は0.1以上0.9以下であってよい。また、アルカリ金属の原子数とGaの原子数の合計に対するSの原子数の比は、例えば、0.25以上0.75以下であってよい。
【0133】
第4半導体は、上述の第3半導体のバンドギャップエネルギーに応じて、その組成等を選択して構成してもよい。あるいは、第4半導体の組成等が先に決定されている場合には、第3半導体のバンドギャップエネルギーが第4半導体のそれよりも小さくなるように、第3半導体を設計してもよい。一般にAg-In-Sからなる半導体は、1.8eV以上1.9eV以下のバンドギャップエネルギーを有する。
【0134】
具体的には、第4半導体は、例えば2.0eV以上5.0eV以下、特に2.5eV以上5.0eV以下のバンドギャップエネルギーを有してよい。また、第4半導体のバンドギャップエネルギーは、第3半導体のバンドギャップエネルギーよりも、例えば0.1eV以上3.0eV以下程度、特に0.3eV以上3.0eV以下程度、より特には0.5eV以上1.0eV以下程度大きいものであってよい。第4半導体のバンドギャップエネルギーと第3半導体のバンドギャップエネルギーとの差が前記下限値以上であると、半導体ナノ粒子からの発光において、バンド端発光以外の発光の割合が少なくなり、バンド端発光の割合が大きくなる傾向がある。
【0135】
第4半導体は、その晶系が第3半導体又は第2半導体の晶系となじみのあるものであってよく、またその格子定数が、第3半導体又は第2半導体の格子定数と同じ又は近いものであってよい。晶系になじみがあり、格子定数が近い(ここでは、第4半導体の格子定数の倍数が、第3半導体又は第2半導体の格子定数に近いものも格子定数が近いものとする)第4半導体は、第3半導体又は第2半導体の周囲を良好に被覆することがある。例えば、上述の第3半導体は、一般に正方晶系であるが、これになじみのある晶系としては、正方晶系、斜方晶系が挙げられる。Ag-In-Sが正方晶系である場合、その格子定数は0.5828nm、0.5828nm、1.119nmであり、これを被覆する第4半導体は、正方晶系又は斜方晶系であって、その格子定数又はその倍数が、Ag-In-Sの格子定数と近いものであることが好ましい。あるいは、第4半導体はアモルファス(非晶質)であってもよい。
【0136】
第4半導体がアモルファス(非晶質)であるか否かは、半導体ナノ粒子を、HAADF-STEMで観察することにより確認できる。第4半導体がアモルファス(非晶質)である場合、具体的には、規則的な模様、例えば、縞模様ないしはドット模様等を有する部分が中心部に観察され、その周囲に規則的な模様を有するものとしては観察されない部分がHAADF-STEMにおいて観察される。HAADF-STEMによれば、結晶性物質のように規則的な構造を有するものは、規則的な模様を有する像として観察され、非晶性物質のように規則的な構造を有しないものは、規則的な模様を有する像としては観察されない。そのため、第4半導体がアモルファスである場合には、規則的な模様を有する像として観察される第3半導体(正方晶系等の結晶構造を有していてよい)とは明確に異なる部分として、第4半導体を観察することができる。
【0137】
また、第4半導体がGa-Sからなる場合、Gaが第3半導体に含まれるAg及びInよりも軽い元素であるために、HAADF-STEMで得られる像において、第4半導体は第3半導体よりも暗い像として観察される傾向にある。
【0138】
第4半導体がアモルファスであるか否かは、高解像度の透過型電子顕微鏡(HRTEM)で本実施形態の半導体ナノ粒子を観察することによっても確認できる。HRTEMで得られる画像において、第3半導体の部分は結晶格子像(規則的な模様を有する像)として観察され、アモルファスである第4半導体の部分は結晶格子像として観察されず、白黒のコントラストは観察されるが、規則的な模様は見えない部分として観察される。
【0139】
一方、第4半導体は、第3半導体と固溶体を構成しないものであることが好ましい。第4半導体が第3半導体と固溶体を形成すると両者が一体のものとなり、半導体ナノ粒子の表面に第4半導体が配置されることによりバンド端発光を得るという、本実施形態のメカニズムが得られなくなる。
【0140】
半導体ナノ粒子の粒径は、例えば、50nm以下の平均粒径を有してよい。平均粒径は、製造のしやすさとバンド端発光の内部量子収率の点より、7nm以上20nm以下の範囲であってよい。好ましくは7.5nm以上、8nm以上、又は8.2nm以上であってよく、また好ましくは15nm以下、12nm以下、又は11.6nm以下であってよい。
【0141】
半導体ナノ粒子の平均粒径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて撮影されたTEM像から求めてよい。個々の粒子の粒径は、具体的には、TEM像で観察される粒子の外周の任意の2点を結び、粒子の内部に存在する線分のうち、最も長いものを指す。半導体ナノ粒子の平均粒径は、個々の粒子の粒径の算術平均として算出される。
【0142】
ただし、粒子がロッド形状を有するものである場合には、短軸の長さを粒径とみなす。ここで、ロッド形状の粒子とは、TEM像において短軸と短軸に直交する長軸とを有し、短軸の長さに対する長軸の長さの比が1.2より大きいものを指す。ロッド形状の粒子は、TEM像で、例えば、長方形状を含む四角形状、楕円形状、又は多角形状等として観察される。ロッド形状の長軸に直交する面である断面の形状は、例えば、円、楕円、又は多角形であってよい。具体的にはロッド状の形状の粒子について、長軸の長さは、楕円形状の場合には、粒子の外周の任意の2点を結ぶ線分のうち、最も長い線分の長さを指し、長方形状又は多角形状の場合、外周を規定する辺の中で最も長い辺に平行であり、かつ粒子の外周の任意の二点を結ぶ線分のうち、最も長い線分の長さを指す。短軸の長さは、外周の任意の2点を結ぶ線分のうち、前記長軸の長さを規定する線分に直交し、かつ最も長さの長い線分の長さを指す。
【0143】
半導体ナノ粒子において、第3半導体を含む部分は粒子状であってよく、例えば、10nm以下、特に、8nm以下、又は7.5nm未満の平均粒径を有してよい。第3半導体を含む部分の平均粒径は、例えば1.5nm以上10nm以下、好ましくは1.5nm以上8nm未満、又は1.5nm以上7.5nm未満の範囲内にあってよい。第3半導体を含む部分の平均粒径が前記上限値以下であると、量子サイズ効果を得られ易い。また、第3半導体を含む部分の平均粒径は、3nm以上、5nm以上、6nm以上、又は7nm以上であってよい。
【0144】
半導体ナノ粒子おける第4半導体からなる部分の厚みは0.1nm以上20nm以下の範囲内、特に0.3nm以上5nm以下の範囲内にあってよい。第4半導体の厚みが前記下限値以上である場合には、半導体ナノ粒子において第4半導体が配置されることによる効果が十分に得られ、バンド端発光を得られ易い。また、第4半導体の厚みは、0.1nm以上、0.2nm以上、0.3nm以上、0.5nm以上、又は1nm以上であってよく、20nm以下、10nm以下、5nm以下、3nm以下、2nm以下、又は1.5nm以下であってもよい。
【0145】
半導体ナノ粒子は、発光ピーク波長が例えば380nm以上545nm以下の範囲内である光源からの光照射によって、475nm以上560nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有するバンド端発光を示してもよく、発光ピーク波長の範囲は好ましくは510nm以上550nm以下であってよく、より好ましくは525nm以上535nm以下であってよい。また、半導体ナノ粒子は、その発光スペクトルにおける半値幅が、例えば、45nm以下であってよく、好ましくは40nm以下、30nm以下、28nm以下、又は26.5nm以下あってよい。半値幅の下限は例えば、15nm以上、又は20nm以上であってよい。また、主成分(バンド端発光)の発光の寿命が200ns以下であることが好ましい。なお、半導体ナノ粒子の発光スペクトルにおける半値幅は、半導体ナノ粒子の粒径と略反比例の関係を有してよい。すなわち、半導体ナノ粒子の粒径が大きくなるに従って半値幅が狭くなっていく関係を有していてよい。
【0146】
ここで、「発光の寿命」とは、蛍光寿命測定装置と称される装置を用いて測定される発光の寿命をいう。具体的には、上記「主成分の発光寿命」は、次の手順に従って求められる。まず、半導体ナノ粒子に励起光を照射して発光させ、発光スペクトルのピーク付近の波長、例えば、ピークの波長±50nmの範囲内にある波長の光について、その減衰(残光)の経時変化を測定する。経時変化は、励起光の照射を止めた時点から測定する。得られる減衰曲線は一般に、発光、熱等の緩和過程に由来する複数の減衰曲線を足し合わせたものとなっている。そこで、本実施形態では、3つの成分(すなわち、3つの減衰曲線)が含まれると仮定して、発光強度をI(t)としたときに、減衰曲線が下記の式で表せるように、パラメータフィッティングを行う。パラメータフィッティングは、専用ソフトを使用して実施する。
I(t) = Aexp(-t/τ) + Aexp(-t/τ) + Aexp(-t/τ
【0147】
半導体ナノ粒子の発光は、バンド端発光に加えて欠陥発光(例えば、ドナーアクセプター発光)を含むものであってもよいが、実質的にバンド端発光のみであることが好ましい。欠陥発光は一般に発光の寿命が長く、またブロードなスペクトルを有し、バンド端発光よりも長波長側にそのピークを有する。ここで、実質的にバンド端発光のみであるとは、発光スペクトルにおけるバンド端発光成分の純度(バンド端発光純度)が、40%以上であることをいうが、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましく、95%以上が特に好ましい。バンド端発光純度の上限値は、例えば、100%以下、100%未満、又は99%以下であってよい。バンド端発光純度については、既述の通りである。
【0148】
上記の式中、各成分のτ、τ及びτは、発光強度が初期の1/e(36.8%)に減衰するのに要する時間であり、これが各成分の発光寿命に相当する。発光寿命の短い順にτ、τ及びτとする。また、A、A及びAは、各成分の寄与率である。例えば、Aexp(-t/τ)で表される曲線の積分値が最も大きいものを主成分としたときに、主成分の発光寿命τが200ns以下である。そのような発光は、バンド端発光であると推察される。なお、主成分の特定に際しては、Aexp(-t/τ)のtの値を0から無限大まで積分することによって得られるA×τを比較し、この値が最も大きいものを主成分とする。
【0149】
なお、発光の減衰曲線が3つ、4つ、又は5つの成分を含むものと仮定してパラメータフィッティングを行って得られる式がそれぞれ描く減衰曲線と、実際の減衰曲線とのずれは、それほど変わらない。そのため、本実施形態では、主成分の発光寿命を求めるにあたり、発光の減衰曲線に含まれる成分の数を3と仮定し、それによりパラメータフィッティングが煩雑となることを避けている。
【0150】
半導体ナノ粒子の発光は、バンド端発光に加えて欠陥発光(例えば、ドナーアクセプター発光)を含むものであってもよいが、実質的にバンド端発光のみであることが好ましい。欠陥発光は一般に発光の寿命が長く、またブロードなスペクトルを有し、バンド端発光よりも長波長側にそのピークを有する。ここで、実質的にバンド端発光のみであるとは、発光スペクトルにおけるバンド端発光成分の純度(以下、「バンド端発光純度」ともいう)が、40%以上であることをいうが、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましく、95%以上が特に好ましい。バンド端発光成分の純度の上限値は、例えば、100%以下、100%未満、又は99%以下であってよい。「バンド端発光成分の純度」とは、発光スペクトルに対し、バンド端発光のピークと欠陥発光のピークの形状を正規分布と仮定したパラメータフィッティングを行って、バンド端発光のピークと欠陥発光のピークの2つに分離し、それらの面積をそれぞれa、aとした時、下記の式で表される。
バンド端発光成分の純度(%) = a/(a+a)×100
発光スペクトルがバンド端発光を全く含まない場合、すなわち欠陥発光のみを含む場合は0%、バンド端発光と欠陥発光のピーク面積が同じ場合は50%、バンド端発光のみを含む場合は100%となる。
【0151】
バンド端発光の内部量子収率は温度25℃において量子収率測定装置を用いて、励起光波長450nm、蛍光波長範囲470nm以上900nm以下の条件で計算された内部量子収率、あるいは励起光波長365nm、蛍光波長範囲450nm以上950nm以下の条件で計算された内部量子収率、あるいは励起光波長450nm、蛍光波長範囲500nm以上950nm以下の条件で計算された内部量子収率に上記バンド端発光成分の純度を乗じ、100で除した値として定義される。半導体ナノ粒子のバンド端発光の内部量子収率は、例えば15%以上であり、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上が更に好ましく、80%以上が特に好ましい。
【0152】
半導体ナノ粒子が発するバンド端発光は、半導体ナノ粒子の粒径を変化させることによって、ピークの位置を変化させることができる。例えば、半導体ナノ粒子の粒径をより小さくすると、バンド端発光のピーク波長が短波長側にシフトする傾向にある。さらに、半導体ナノ粒子の粒径をより小さくすると、バンド端発光のスペクトルの半値幅がより小さくなる傾向にある。
【0153】
半導体ナノ粒子がバンド端発光に加えて欠陥発光を示す場合、バンド端発光の強度比は、例えば、0.75以上であってよく、好ましくは0.85以上であり、より好ましくは0.9以上であり、特に好ましくは0.93以上であり、上限値は、例えば、1以下、1未満、又は0.99以下であってよい。なお、バンド端発光の強度比は、発光スペクトルに対し、バンド端発光のピークと欠陥発光のピークの形状をそれぞれ正規分布と仮定したパラメータフィッティングを行って、バンド端発光のピークと欠陥発光のピークの2つに分離し、それらの最大ピーク強度をそれぞれb、bとした時、下記の式で表される。
バンド端発光の強度比 = b/(b+b
バンド端発光の強度比は、発光スペクトルがバンド端発光を全く含まない場合、すなわち欠陥発光のみを含む場合は0、バンド端発光と欠陥発光の最大ピーク強度が同じ場合は0.5、バンド端発光のみを含む場合は1となる。
【0154】
半導体ナノ粒子は、その吸収スペクトル又は励起スペクトル(蛍光励起スペクトルともいう)がエキシトンピークを示すものであることが好ましい。エキシトンピークは、励起子生成により得られるピークであり、これが吸収スペクトル又は励起スペクトルにおいて発現しているということは、粒径の分布が小さく、結晶欠陥の少ないバンド端発光に適した粒子であることを意味する。エキシトンピークが急峻になるほど、粒径がそろった結晶欠陥の少ない粒子が半導体ナノ粒子の集合体により多く含まれていることを意味する。したがって、発光の半値幅は狭くなり、発光効率が向上すると予想される。本実施形態の半導体ナノ粒子の吸収スペクトル又は励起スペクトルにおいて、エキシトンピークは、例えば、400nm以上550nm以下、好ましくは430nm以上500nm以下の範囲内で観察される。エキシトンピークの有無を見るための励起スペクトルは、観測波長をピーク波長付近に設定して測定してよい。
【0155】
半導体ナノ粒子は、その表面が表面修飾剤で修飾されていてもよい。表面修飾剤の具体例としては、炭素数2以上20以下のアミノアルコール、イオン性表面修飾剤、ノニオン性表面修飾剤、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含窒素化合物、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含硫黄化合物、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含酸素化合物、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含リン化合物、第2族元素、第12族元素又は第13族元素のハロゲン化物等を挙げることができる。表面修飾剤は、1種単独でも、異なる2種以上のものを組み合わせて用いてよい。なお、ここで例示した表面修飾剤の詳細は上述の通りである。
【0156】
半導体ナノ粒子は、その表面がガリウムハロゲン化物により表面修飾されていてもよい。半導体ナノ粒子の表面がガリウムハロゲン化物により表面修飾されることにより、バンド端発光の内部量子収率が向上する。ガリウムハロゲン化物の具体例としては、塩化ガリウム、フッ化ガリウム、臭化ガリウム、ヨウ化ガリウム等が挙げられる。
【0157】
半導体ナノ粒子における第4半導体は、その表面がガリウムハロゲン化物により表面修飾されていてもよい。半導体ナノ粒子における第4半導体の表面がガリウムハロゲン化物により表面修飾されることにより、バンド端発光の内部量子収率が向上する。
【0158】
ガリウムハロゲン化物によって表面修飾された半導体ナノ粒子の発光は、バンド端発光に加えて欠陥発光(ドナーアクセプター発光)を含むものであってもよいが、実質的にバンド端発光のみであることが好ましい。実質的にバンド端発光のみであるとは、上述の半導体ナノ粒子で述べたとおりであり、バンド端発光成分の純度は、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましく、95%以上が特に好ましい。
【0159】
ガリウムハロゲン化物によって表面修飾された半導体ナノ粒子のバンド端発光の内部量子収率の測定は、上述の半導体ナノ粒子で述べたとおりであり、バンド端発光の内部量子収率は、例えば、15%以上であり、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上が更に好ましく、80%以上が特に好ましい。
【0160】
発光デバイス
発光デバイスは、既述の半導体ナノ粒子を含む光変換部材と、半導体発光素子とを備える。この発光デバイスによれば、例えば、半導体発光素子からの発光の一部を、半導体ナノ粒子が吸収してより長波長の光が発せられる。そして、半導体ナノ粒子からの光と半導体発光素子からの発光の残部とが混合され、その混合光を発光デバイスの発光として利用できる。
【0161】
具体的には、半導体発光素子として発光ピーク波長が400nm以上490nm以下程度の青紫色光又は青色光を発するものを用い、半導体ナノ粒子として青色光を吸収して黄色光を発光するものを用いれば、白色光を発光する発光デバイスを得ることができる。あるいは、半導体ナノ粒子として、青色光を吸収して緑色光を発光するものと、青色光を吸収して赤色光を発光するものの2種類を用いても、白色発光デバイスを得ることができる。
【0162】
あるいは、発光ピーク波長が400nm以下の紫外線を発光する半導体発光素子を用い、紫外線を吸収して青色光、緑色光、赤色光をそれぞれ発光する、3種類の半導体ナノ粒子を用いる場合でも、白色発光デバイスを得ることができる。この場合、発光素子から発せられる紫外線が外部に漏れないように、発光素子からの光をすべて半導体ナノ粒子に吸収させて変換させることが望ましい。
【0163】
あるいはまた、発光ピーク波長が490nm以上510nm以下程度の青緑色光を発するものを用い、半導体ナノ粒子として上記の青緑色光を吸収して赤色光を発するものを用いれば、白色光を発光するデバイスを得ることができる。
【0164】
あるいはまた、半導体発光素子として可視光を発光するもの、例えば波長700nm以上780nm以下の赤色光を発光するものを用い、半導体ナノ粒子として、可視光を吸収して近赤外線を発光するものを用いれば、近赤外線を発光する発光デバイスを得ることもできる。
【0165】
半導体ナノ粒子は、他の半導体量子ドットと組み合わせて用いてよく、あるいは他の量子ドットではない蛍光体(例えば、有機蛍光体又は無機蛍光体)と組み合わせて用いてよい。他の半導体量子ドットは、例えば、二元系の半導体量子ドットである。量子ドットではない蛍光体として、例えば、アルミニウムガーネット等のガーネット系蛍光体を用いることができる。ガーネット系蛍光体としては、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体、セリウムで賦活されたルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体が挙げられる。他にユウロピウム及び/又はクロムで賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム系蛍光体、ユウロピウムで賦活されたシリケート系蛍光体、β-SiAlON系蛍光体、CASN系又はSCASN系等の窒化物系蛍光体、LnSi11系又はLnSiAlON系等の希土類窒化物系蛍光体、BaSi:Eu系又はBaSi12:Eu系等の酸窒化物系蛍光体、CaS系、SrGa系、ZnS系等の硫化物系蛍光体、クロロシリケート系蛍光体、SrLiAl:Eu蛍光体、SrMgSiN:Eu蛍光体、マンガンで賦活されたフッ化物錯体蛍光体としてのKSiF:Mn蛍光体及びK(Si,Al)F:Mn蛍光体(例えば、KSi0.99Al0.015.99:Mn)などを用いることができる。
【0166】
発光デバイスにおいて、半導体ナノ粒子を含む光変換部材は、例えばシート又は板状部材であってよく、あるいは三次元的な形状を有する部材であってよい。三次元的な形状を有する部材の例は、表面実装型の発光ダイオードにおいて、パッケージに形成された凹部の底面に半導体発光素子が配置されているときに、発光素子を封止するために凹部に樹脂が充填されて形成された封止部材である。
【0167】
又は、光変換部材の別の例は、平面基板上に半導体発光素子が配置されている場合にあっては、前記半導体発光素子の上面及び側面を略均一な厚みで取り囲むように形成された樹脂部材である。あるいはまた、光変換部材のさらに別の例は、半導体発光素子の周囲にその上端が半導体発光素子と同一平面を構成するように反射材を含む樹脂部材が充填されている場合にあっては、前記半導体発光素子及び前記反射材を含む樹脂部材の上部に、所定の厚みで平板状に形成された樹脂部材である。
【0168】
光変換部材は半導体発光素子に接してよく、あるいは半導体発光素子から離れて設けられていてよい。具体的には、光変換部材は、半導体発光素子から離れて配置される、ペレット状部材、シート部材、板状部材又は棒状部材であってよく、あるいは半導体発光素子に接して設けられる部材、例えば、封止部材、コーティング部材(モールド部材とは別に設けられる発光素子を覆う部材)又はモールド部材(例えば、レンズ形状を有する部材を含む)であってよい。
【0169】
また、発光デバイスにおいて、異なる波長の発光を示す2種類以上の半導体ナノ粒子を用いる場合には、1つの光変換部材内で前記2種類以上の半導体ナノ粒子が混合されていてもよいし、あるいは1種類の半導体ナノ粒子のみを含む光変換部材を2つ以上組み合わせて用いてもよい。この場合、2種類以上の光変換部材は積層構造を成してもよいし、平面上にドット状ないしストライプ状のパターンとして配置されていてもよい。
【0170】
半導体発光素子としてはLEDチップが挙げられる。LEDチップは、GaN、GaAs、InGaN、AlInGaP、GaP、SiC、及びZnO等から成る群より選択される1種又は2種以上から成る半導体層を備えたものであってよい。青紫色光、青色光、又は紫外線を発光する半導体発光素子は、例えば、組成がInAlGa1-X-YN(0≦X、0≦Y、X+Y<1)で表わされるGaN系化合物を半導体層として備えたものである。
【0171】
本実施形態の発光デバイスは、光源として液晶表示装置に組み込まれることが好ましい。半導体ナノ粒子によるバンド端発光は発光寿命の短いものであるため、これを用いた発光デバイスは、比較的速い応答速度が要求される液晶表示装置の光源に適している。また、本実施形態の半導体ナノ粒子は、バンド端発光として半値幅の小さい発光ピークを示し得る。したがって、発光デバイスにおいて、青色半導体発光素子により発光ピーク波長が420nm以上490nm以下の範囲内にある青色光を得るようにし、半導体ナノ粒子により、発光ピーク波長が510nm以上550nm以下、好ましくは525nm以上535nm以下の範囲内にある緑色光、及び発光ピーク波長が600nm以上680nm以下、好ましくは625nm以上635nm以下の範囲内にある赤色光を得るようにすることによって、濃いカラーフィルターを用いることなく、色再現性の良い液晶表示装置が得られる。または、発光デバイスにおいて、半導体発光素子により発光ピーク波長400nm以下の紫外光を得るようにし、半導体ナノ粒子により発光ピーク波長が430nm以上470nm以下、好ましくは440nm以上460nm以下の範囲内にある青色光、発光ピーク波長が510nm以上550nm以下、好ましくは525nm以上535nm以下の範囲内にある緑色光、及び発光ピーク波長が600nm以上680nm以下、好ましくは625nm以上635nm以下の範囲内にある赤色光を得るようにすることによって、濃いカラーフィルターを用いることなく、色再現性の良い液晶表示装置が得られる。発光デバイスは、例えば、直下型のバックライトとして、又はエッジ型のバックライトとして用いられる。
【0172】
あるいは、半導体ナノ粒子を含む、樹脂もしくはガラス等からなるシート、板状部材、又はロッドが、発光デバイスとは独立した光変換部材として液晶表示装置に組み込まれていてよい。
【0173】
本開示は、例えば以下の態様を包含してよい。
[1] 銀(Ag)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び硫黄(S)を含む第1半導体と、前記第1半導体の表面に配置され、ガリウム(Ga)及び硫黄(S)を含む第2半導体と、を備える第1半導体ナノ粒子を準備することと、
前記第1半導体ナノ粒子、ガリウム(Ga)源及び硫黄(S)源を含む第1混合物を第1熱処理して、半導体複合粒子を含む第1熱処理物を得ることと、
前記半導体複合粒子及びガリウムハロゲン化物を含む第2混合物を第2熱処理して第2熱処理物を得ることと、を含む半導体ナノ粒子の製造方法。
【0174】
[2] 前記第1熱処理物を得ることにおいて、前記第1混合物は銀(Ag)源を更に含む[1]に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
【0175】
[3] 前記第1熱処理物を得ることにおいて、前記第1混合物に含まれる、前記第1半導体ナノ粒子のモル数に対する前記銀(Ag)源に含まれる銀のモル数の比が、1.0×10以上1.0×10以下であり、
前記第1半導体ナノ粒子のモル数に対する前記ガリウム(Ga)源に含まれるガリウムのモル数の比が、5.0×10以上8.0×10以下である[2]に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
【0176】
[4] 前記第1熱処理物を得ることにおいて、前記第1混合物に含まれる、前記ガリウム(Ga)源に含まれるガリウムのモル数に対する前記銀(Ag)源に含まれる銀のモル数の比が、0.04以上0.33以下である[2]又は[3]に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
【0177】
[5] 前記第2熱処理物及び有機溶剤を混合して第3混合物を得ることと、前記第3混合物を遠心分離処理することと、を更に含む[1]から[4]のいずれかに記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
【0178】
[6] 前記第2熱処理物に含まれる半導体ナノ粒子の内部量子収率に対する前記遠心分離処理後に得られる半導体ナノ粒子の内部量子収率の比が、0.7以上1.1以下である[5]に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
【0179】
[7] 前記有機溶剤は、アルコール溶剤を含む[5]又は[6]に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
【0180】
[8] 前記第1熱処理における熱処理温度は、200℃以上320℃以下であり、前記第2熱処理における熱処理温度は、200℃以上320℃以下である[1]から[7]のいずれかに記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
【0181】
[9] 前記第1熱処理物を得ることにおいて、前記第1混合物に含まれる、前記第1半導体ナノ粒子のモル数に対する前記ガリウム(Ga)源に含まれるガリウムのモル数の比が、5.0×10以上6.0×10以下である[1]から[8]のいずれかに記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
【0182】
[10] 銀(Ag)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び硫黄(S)を含む第3半導体と、第3半導体の表面に配置され、Ga及びSを含む第4半導体と、を備える半導体ナノ粒子であり、
前記半導体ナノ粒子は、平均粒径が7.5nm以上であり、
内部量子収率が50%以上であり、
発光スペクトルにおける半値幅が30nm以下である半導体ナノ粒子。
【0183】
[11] 第4半導体は、銀(Ag)を更に含む[10]に記載の半導体ナノ粒子。
【0184】
[12] 前記半導体ナノ粒子は、平均粒径が10nm以上である[10]又は[11]に記載の半導体ナノ粒子。
【0185】
[13] [1]から[9]のいずれかに記載の製造方法で製造される[10]から[12]のいずれかに記載の半導体ナノ粒子。
【実施例0186】
以下、本開示を実施例により具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0187】
実施例1
第4工程
1.6mmolのエチルキサントゲン酸銀(Ag(EX))、1.76mmolの酢酸インジウム(In(OAc))、3.2mmolのエチルキサントゲン酸ガリウム(Ga(EX))、0.24mmolの塩化ガリウムを、320mLのオレイルアミン(OLA)と混合して第4混合物を得た。第4混合物を、窒素雰囲気下で、撹拌しながら、290℃で120分の熱処理を実施した。得られた懸濁液を放冷した後、遠心分離(半径146mm、3800rpm、5分間)に付し、沈殿物を取り除いて、第1半導体ナノ粒子の分散液を得た。
【0188】
第5工程
上記第4工程で得られた第1半導体ナノ粒子の分散液と、4.74mmolの塩化ガリウム、47mLのオレイルアミン(OLA)と混合して第5混合物を得た。得られた第5混合物を窒素雰囲気下で270℃まで昇温し、120分間の熱処理を実施した。得られた懸濁液を放冷した後、遠心分離し、上澄みを取り除いて第5熱処理物を得た。
【0189】
走査透過電子顕微鏡(STEM)観察
第5工程後の第5熱処理物に含まれる第1半導体ナノ粒子の形状を、走査透過電子顕微鏡(STEM、日立ハイテクノロジーズ、HD-2000)を用いて観察するとともに、その平均粒径を30倍から100万倍のTEM像から測定した。ここでは、TEMグリッドとして、市販のエラスティックカーボン支持膜付き銅グリッド(応研商事社製)を用いた。得られたナノ粒子の形状は、球状もしくは多角形状であった。平均粒径は、TEM像に含まれているナノ粒子のうち、計測可能なものをすべて、すなわち、画像の端において粒子の像が切れているようなものを除くすべての粒子について、粒子の外周の任意の2点を結び、粒子の内部に存在する線分のうち、最も長いものを粒径として測定し、その算術平均を求める方法で求めた。一つのTEM像に含まれるナノ粒子が100点に満たない場合には、別のTEM像を測定して、そのTEM像に含まれる粒子について粒径を測定し、算術平均を100点以上の粒子から求めるようにした。第1半導体ナノ粒子の平均粒径は7.3nmであった。
【0190】
第2工程
第5工程で得られた第5熱処理物に、第1半導体ナノ粒子の濃度が4.8×10-7モル/Lとなるようにオレイルアミンを加えて分散させた。この分散液22mLと、0.048mmolのエチルキサントゲン酸銀(Ag(EX))、0.291mmolのエチルキサントゲン酸ガリウム(Ga(EX))と混合して第1混合物を得た。第1混合物を、窒素雰囲気下で、撹拌しながら、270℃で120分の第1熱処理を実施した。得られた懸濁液を放冷した後、半導体複合粒子を含む第1熱処理物を得た。
【0191】
第3工程
第2工程で得られた半導体複合粒子を含む第1熱処理物に、0.291mmolの塩化ガリウム、2.9mLのオレイルアミン(OLA)と混合して第2混合物を得た。得られた第2混合物を窒素雰囲気下で270℃まで昇温し、120分間の第2熱処理を実施した。得られた懸濁液を放冷し、第2半導体ナノ粒子を含む第2熱処理物を得た。
【0192】
第2熱処理物の発光スペクトルの測定
上記で得られた精製工程前の第2半導体ナノ粒子を含む第2熱処理物の発光スペクトルを測定し、バンド端発光ピーク波長、半値幅、バンド端発光純度、バンド端発光の内部量子収率を算出した。なお、発光スペクトルは、量子効率測定システム(大塚電子製、商品名QE-2100)を用いて、室温(25℃)で、励起光波長365nmで、300nmから950nmの波長範囲で測定した。内部量子収率は450nmから950nmの波長範囲より計算した。その結果を表1及び図1に示す。
【0193】
精製工程
第3工程で得られた第2半導体ナノ粒子を含む第2熱処理物を遠心分離し、上澄みを取り除いて得た沈殿を、エタノール15mLで洗浄した。洗浄後、遠心分離を行い、上澄みを取り除いて得た沈殿をクロロホルム5mLに分散させた。次いで、エタノール22mLを加えて半導体ナノ粒子を洗浄し、再度遠心分離により第2半導体ナノ粒子を沈殿として回収し、クロロホルム5mLに分散させて、精製工程後の第2半導体ナノ粒子とした。
【0194】
第2半導体ナノ粒子分散液の発光スペクトルの測定
上記で得られた精製工程後の第2半導体ナノ粒子の発光スペクトルを測定し、バンド端発光ピーク波長、半値幅、バンド端発光純度、バンド端発光の内部量子収率を算出した。次いで、上記と同様に走査透過電子顕微鏡による観察を行い、平均粒径を算出した。それらの結果を表1に示す。また、半導体ナノ粒子の精製工程前および精製工程後の発光スペクトルを図1に示す。
【0195】
比較例
第5工程で得られた第5熱処理物をクロロホルムに分散して、比較例における精製工程前の半導体ナノ粒子とした。また、第5工程で得られた第5熱処理物をエタノール15mLで洗浄した。洗浄後、遠心分離を行い、上澄みを取り除いて得た沈殿をクロロホルム5mLに分散させた。次いで、エタノール22mLを加えて半導体ナノ粒子を洗浄し、再度遠心分離し、上澄みを取り除いて得た沈殿を、クロロホルム5mLに分散して、比較例における精製工程後の半導体ナノ粒子とした。比較例の半導体ナノ粒子について、実施例1と同様に測定した発光スペクトルの測定結果を表1に示す。また、半導体ナノ粒子の精製工程前および精製工程後の発光スペクトルを図2に示す。
【0196】
実施例2
第2工程において、エチルキサントゲン酸ガリウム(Ga(EX))の混合量を0.466mmolに変更して第1混合物を得たこと以外は、実施例1と同様に行い、第2半導体ナノ粒子の分散液を得た。得られた第2熱処理物および第2半導体ナノ粒子について、実施例1と同様に測定した発光スペクトルの測定結果と、平均粒径の算出結果を表1に示す。また、半導体ナノ粒子の精製工程前および精製工程後の発光スペクトルを図3に示す。
【0197】
実施例3
第2工程において、エチルキサントゲン酸ガリウム(Ga(EX))の混合量を0.582mmolに変更して第1混合物を得たこと以外は、実施例1と同様に行い、第2半導体ナノ粒子の分散液を得た。得られた第2熱処理物および第2半導体ナノ粒子について、実施例1と同様に測定した発光スペクトルの測定結果と、平均粒径の算出結果を表1に示す。また、半導体ナノ粒子の精製工程前および精製工程後の発光スペクトルを図4に示す。
【0198】
実施例4
第2工程において、エチルキサントゲン酸銀(Ag(EX))を混合せずに、0.291mmolのエチルキサントゲン酸ガリウム(Ga(EX))と混合して第1混合物を得たこと以外は、実施例1と同様に行い、第2半導体ナノ粒子の分散液を得た。得られた第2熱処理物および第2半導体ナノ粒子について、実施例1と同様に測定した発光スペクトルの測定結果と、平均粒径の算出結果を表1に示す。また、半導体ナノ粒子の精製工程前および精製工程後の発光スペクトルを図5に示す。
【0199】
【表1】
【0200】
表1に示されるように、第2工程を実施することで、精製工程後の内部量子収率の低下を抑制できる。
【0201】
実施例5から17
第2工程において、エチルキサントゲン酸銀(Ag(EX))とエチルキサントゲン酸ガリウム(Ga(EX))の添加量を下記表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして第2半導体ナノ粒子を含む第2熱処理物を得た。
【0202】
得られた精製工程前の第2半導体ナノ粒子について、上記と同様にして平均粒径と発光スペクトルにおける半値幅を測定した。結果を表2に示す。また平均粒径と半値幅の関係を図6に示す。
【0203】
【表2】
【0204】
表2及び図6に示すように、第2半導体ナノ粒子は、平均粒径が大きくなるほど半値幅が狭くなる傾向を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6