(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083314
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】カンキツの品種の識別方法、識別キット、および、核酸検出デバイス
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6869 20180101AFI20240613BHJP
C12Q 1/6895 20180101ALI20240613BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20240613BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6895 Z ZNA
C12Q1/686 Z
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023208031
(22)【出願日】2023-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2022196625
(32)【優先日】2022-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)農林水産省、令和4年度「みどりの食料システム戦略実現技術開発・実証事業のうち農林水産研究の推進(委託プロジェクト研究)(品種識別技術の開発)」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(71)【出願人】
【識別番号】592134583
【氏名又は名称】愛媛県
(71)【出願人】
【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
(71)【出願人】
【識別番号】503335179
【氏名又は名称】株式会社ファスマック
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】島田 武彦
(72)【発明者】
【氏名】岡本 充智
(72)【発明者】
【氏名】重松 幸典
(72)【発明者】
【氏名】奥貞 丈博
(72)【発明者】
【氏名】木下 佳
(72)【発明者】
【氏名】門田 有希
(72)【発明者】
【氏名】高崎 一人
(72)【発明者】
【氏名】竹内 朋幸
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 朋子
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA23
4B063QA13
4B063QA18
4B063QQ09
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】
【課題】簡易にカンキツの品種を識別できる技術を実現する
【解決手段】カンキツの品種の識別方法は、下記(a)~(m)の挿入欠失(InDel)マーカー:
(a)InDelマーカー(Tcs2-CL55_M);
(b)InDelマーカー(Tcs1-P86);
(c)InDelマーカー(Tcs2-CL25);
(d)InDelマーカー(IND235-s);
(e)InDelマーカー(Tcs2-CL68);
(f)InDelマーカー(Cp0419-s);
(g)InDelマーカー(IND265-l);
(h)InDelマーカー(IND44-l);
(i)InDelマーカー(Tcs2-CL80);
(j)InDelマーカー(Tcs2-CL55_E);
(k)InDelマーカー(Tcs1-CL26);
(l)InDelマーカー(Tcs2-CL10);および
(m)InDelマーカー(Tcs2-CL30);
からなる群より選択される少なくとも1つのInDelマーカーを用いて、カンキツ被検体の品種を特定する特定工程を含む、識別方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カンキツの品種の識別方法であって、
下記(a)~(m)の挿入欠失(InDel)マーカー:
(a)配列番号1に示す塩基配列の1番目から175番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL55_M);
(b)配列番号2に示す塩基配列の1番目から132番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs1-P86);
(c)配列番号3に示す塩基配列の1番目から213番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL25);
(d)配列番号4に示す塩基配列の127番目から128番目の塩基に相当するInDelマーカー(IND235-s);
(e)配列番号5に示す塩基配列の1番目から154番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL68);
(f)配列番号6に示す塩基配列の353番目から354番目の塩基に相当するInDelマーカー(Cp0419-s);
(g)配列番号7に示す塩基配列の1番目から154番目の塩基に相当するInDelマーカー(IND265-l);
(h)配列番号8に示す塩基配列の1番目から18番目の塩基に相当するInDelマーカー(IND44-l);
(i)配列番号9に示す塩基配列の1番目から212番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL80);
(j)配列番号10に示す塩基配列の1番目から156番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL55_E);
(k)配列番号11に示す塩基配列の1番目から116番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs1-CL26);
(l)配列番号36に示す塩基配列の1番目から171番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL10);および
(m)配列番号37に示す塩基配列の1番目から166番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL30);
からなる群より選択される少なくとも1つのInDelマーカーを用いて、カンキツ被検体の品種を特定する特定工程を含む、識別方法。
【請求項2】
前記品種は、みはや、あすき、愛媛果試第28号、甘平、媛小春、および/または、愛媛果試第48号である、請求項1に記載の識別方法。
【請求項3】
前記特定工程において、前記カンキツ被検体について、下記(1)~(7)からなる群:
(1)前記Tcs2-CL55_Mおよび前記Tcs1-P86を用いた、みはやの特定;
(2)前記Tcs2-CL25および前記IND235-sを用いた、あすきの特定;
(3)前記Tcs2-CL68を用いた、愛媛果試第28号の特定;
(4)前記Cp0419-s、IND265-lおよび前記IND44-lを用いた、甘平の特定;
(5)前記Tcs2-CL80を用いた、媛小春の特定;
(6)前記Tcs2-CL55_Eおよび前記Tcs1-CL26を用いた、愛媛果試第48号の特定;および
(7)前記Tcs2-CL10および前記Tcs2-CL30を用いた、甘平の特定;
より選択される少なくとも1つの品種の特定を行う、請求項1に記載の識別方法。
【請求項4】
前記特定工程において、品種の特定に用いる前記InDelマーカーを含む領域を増幅するプライマーを用いて、前記カンキツ被検体のDNAにおける前記領域を増幅する、請求項1に記載の識別方法。
【請求項5】
前記特定工程において、前記プライマーにはタグ鎖が付加されており、当該タグ鎖にハイブリダイズ可能なプローブが固定された固相において、前記プライマーを用いて増幅された増幅産物を拡散させ、前記プローブにハイブリダイズする増幅産物を検出する、請求項4に記載の識別方法。
【請求項6】
カンキツの品種の識別キットであって、
下記(a)~(m)の挿入欠失(InDel)マーカー:
(a)配列番号1に示す塩基配列の1番目から175番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL55_M);
(b)配列番号2に示す塩基配列の1番目から132番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs1-P86);
(c)配列番号3に示す塩基配列の1番目から213番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL25);
(d)配列番号4に示す塩基配列の127番目から128番目の塩基に相当するInDelマーカー(IND235-s);
(e)配列番号5に示す塩基配列の1番目から154番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL68);
(f)配列番号6に示す塩基配列の353番目から354番目の塩基に相当するInDelマーカー(Cp0419-s);
(g)配列番号7に示す塩基配列の1番目から154番目の塩基に相当するInDelマーカー(IND265-l);
(h)配列番号8に示す塩基配列の1番目から18番目の塩基に相当するInDelマーカー(IND44-l);
(i)配列番号9に示す塩基配列の1番目から212番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL80);
(j)配列番号10に示す塩基配列の1番目から156番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL55_E);
(k)配列番号11に示す塩基配列の1番目から116番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs1-CL26);
(l)配列番号36に示す塩基配列の1番目から171番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL10);および
(m)配列番号37に示す塩基配列の1番目から166番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL30);
の少なくとも1つを含む領域を増幅するためのプライマーを備えた、識別キット。
【請求項7】
前記プライマーとして、
(a’)前記Tcs2-CL55_Mを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号12に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号13に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
(b’)前記Tcs1-P86を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号14に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号15に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
(c’)前記Tcs2-CL25を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号16に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号17に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
(d’)前記IND235-sを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号18に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号19に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
(e’)前記Tcs2-CL68を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号20に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号21に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
(f’)前記Cp0419-sを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号22に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号23に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
(g’)前記IND265-lを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号24に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号25に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
(h’)前記IND44-lを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号26に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号27に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
(i’)前記Tcs2-CL80を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号28に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号29に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
(j’)前記Tcs2-CL55_Eを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号30に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号31に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
(k’)前記Tcs1-CL26を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号32に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号33に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
(l’)前記Tcs2-CL10を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号38に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号39に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;および
(m’)前記Tcs2-CL30を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号40に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号41に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
からなる群より選択される少なくとも1つのプライマーセットを含む、請求項6に記載の識別キット。
【請求項8】
前記少なくとも1つのプライマーセットに含まれるプライマーの一方には、タグ鎖が付加されており、
前記タグ鎖にハイブリダイズ可能なプローブが固定された固相を有する核酸検出デバイスをさらに備えた、請求項7に記載の識別キット。
【請求項9】
コントロールマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーと、当該プライマーに付加されるタグ鎖とをさらに備えた、請求項8に記載の識別キット。
【請求項10】
下記(a)~(m)のInDelマーカー:
(a)配列番号1に示す塩基配列の1番目から175番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL55_M);
(b)配列番号2に示す塩基配列の1番目から132番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs1-P86);
(c)配列番号3に示す塩基配列の1番目から213番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL25);
(d)配列番号4に示す塩基配列の127番目から128番目の塩基に相当するInDelマーカー(IND235-s);
(e)配列番号5に示す塩基配列の1番目から154番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL68);
(f)配列番号6に示す塩基配列の353番目から354番目の塩基に相当するInDelマーカー(Cp0419-s);
(g)配列番号7に示す塩基配列の1番目から154番目の塩基に相当するInDelマーカー(IND265-l);
(h)配列番号8に示す塩基配列の1番目から18番目の塩基に相当するInDelマーカー(IND44-l);
(i)配列番号9に示す塩基配列の1番目から212番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL80);
(j)配列番号10に示す塩基配列の1番目から156番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL55_E);
(k)配列番号11に示す塩基配列の1番目から116番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs1-CL26)
(l)配列番号36に示す塩基配列の1番目から171番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL10);および
(m)配列番号37に示す塩基配列の1番目から166番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL30);
からなる群より選択される少なくとも1つのInDelマーカーを含む領域の増幅産物に付加されたタグ鎖にハイブリダイズ可能なプローブと、
前記プローブが固定された固相と
を備えた、カンキツの品種を識別するための核酸検出デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カンキツの品種を識別するための、識別方法、識別キット、および、核酸検出デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、果樹類の優良品種が国外に流出し、無断で栽培される事例が顕在化している。今後更に、これらの生産物および加工品が違法流通することによる権利侵害の発生が懸念されることから、権利侵害が想定される国において育成者の権利を保護するための品種登録を進めると共に、権利侵害を立証するためのDNA品種識別技術の開発が進められている。
【0003】
育成者権の侵害を監視するためには、税関等の水際において輸入を阻止することが重要である。このため、既存の品種識別技術に加えて、税関等の検査現場において簡易かつ迅速に品種識別が可能な技術の開発が求められている。
【0004】
植物品種の識別方法として、増幅断片制限断片長多型(Cleaved Amplified Polymorphic Sequence;CAPS)のようなDNA多型を利用したDNA多型分析が知られている(非特許文献1)。非特許文献1には、国内に流通するカンキツの品種を、カンキツの種苗等の被検体から抽出したDNAを用いてCAPS分析することが記載されている。
【0005】
また、CAPSのようにDNA多型分析に用いられる他のDNA多型として、一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism;SNP)が知られている(非特許文献2)。非特許文献2には、果実や加工品を対象としたSNPマーカーによる品種識別技術が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Fujii, H. et al., DNA Polymorphism 27: 71-79, 2019
【非特許文献2】Endo, T. et al., Breed Sci 70: 363-372, 2020
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献1のようなCAPS分析法は、多型検出のために比較的長いPCR増幅断片を利用するため、分析に適した夾雑物の少ないDNAを得ることが容易ではない果実などの検体では、分析結果が不安定になり得る可能性がある。また、非特許文献2のようなSNP分析法は、必要となるPCR増幅断片が短いため、分析精度は向上するが、分析に定量PCR分析機器が必要であることや、SNPマーカーにおいて利用するプローブ等の試薬が高価であることから、ランニングコストに課題がある。したがって、より簡易に目的の品種を識別できる技術の開発が求められている。
【0008】
本発明の一態様は、上述した問題点を解決するためのものであり、その目的は、カンキツ被検体が対象とするカンキツ品種であるか否かを迅速かつ簡易に識別できる技術を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るカンキツの品種の識別方法は、
下記(a)~(m)の挿入欠失(InDel)マーカー:
(a)配列番号1に示す塩基配列の1番目から175番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL55_M);
(b)配列番号2に示す塩基配列の1番目から132番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs1-P86);
(c)配列番号3に示す塩基配列の1番目から213番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL25);
(d)配列番号4に示す塩基配列の127番目から128番目の塩基に相当するInDelマーカー(IND235-s);
(e)配列番号5に示す塩基配列の1番目から154番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL68);
(f)配列番号6に示す塩基配列の353番目から354番目の塩基に相当するInDelマーカー(Cp0419-s);
(g)配列番号7に示す塩基配列の1番目から154番目の塩基に相当するInDelマーカー(IND265-l);
(h)配列番号8に示す塩基配列の1番目から18番目の塩基に相当するInDelマーカー(IND44-l);
(i)配列番号9に示す塩基配列の1番目から212番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL80);
(j)配列番号10に示す塩基配列の1番目から156番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL55_E);
(k)配列番号11に示す塩基配列の1番目から116番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs1-CL26);
(l)配列番号36に示す塩基配列の1番目から171番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL10);および
(m)配列番号37に示す塩基配列の1番目から166番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL30);
からなる群より選択される少なくとも1つのInDelマーカーを用いて、カンキツ被検体の品種を特定する特定工程を含む。
【0010】
また、本発明の一態様に係るカンキツの品種の識別キットは、
下記(a)~(m)の挿入欠失(InDel)マーカー:
(a)配列番号1に示す塩基配列の1番目から175番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL55_M);
(b)配列番号2に示す塩基配列の1番目から132番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs1-P86);
(c)配列番号3に示す塩基配列の1番目から213番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL25);
(d)配列番号4に示す塩基配列の127番目から128番目の塩基に相当するInDelマーカー(IND235-s);
(e)配列番号5に示す塩基配列の1番目から154番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL68);
(f)配列番号6に示す塩基配列の353番目から354番目の塩基に相当するInDelマーカー(Cp0419-s);
(g)配列番号7に示す塩基配列の1番目から154番目の塩基に相当するInDelマーカー(IND265-l);
(h)配列番号8に示す塩基配列の1番目から18番目の塩基に相当するInDelマーカー(IND44-l);
(i)配列番号9に示す塩基配列の1番目から212番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL80);
(j)配列番号10に示す塩基配列の1番目から156番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL55_E);
(k)配列番号11に示す塩基配列の1番目から116番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs1-CL26);
(l)配列番号36に示す塩基配列の1番目から171番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL10);および
(m)配列番号37に示す塩基配列の1番目から166番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL30);
の少なくとも1つを含む領域を増幅するためのプライマーを備えている。
【0011】
また、本発明の一態様に係るカンキツの品種を識別するための核酸検出デバイスは、
下記(a)~(m)のInDelマーカー:
(a)配列番号1に示す塩基配列の1番目から175番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL55_M);
(b)配列番号2に示す塩基配列の1番目から132番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs1-P86);
(c)配列番号3に示す塩基配列の1番目から213番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL25);
(d)配列番号4に示す塩基配列の127番目から128番目の塩基に相当するInDelマーカー(IND235-s);
(e)配列番号5に示す塩基配列の1番目から154番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL68);
(f)配列番号6に示す塩基配列の353番目から354番目の塩基に相当するInDelマーカー(Cp0419-s);
(g)配列番号7に示す塩基配列の1番目から154番目の塩基に相当するInDelマーカー(IND265-l);
(h)配列番号8に示す塩基配列の1番目から18番目の塩基に相当するInDelマーカー(IND44-l);
(i)配列番号9に示す塩基配列の1番目から212番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL80);
(j)配列番号10に示す塩基配列の1番目から156番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL55_E);
(k)配列番号11に示す塩基配列の1番目から116番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs1-CL26)
(l)配列番号36に示す塩基配列の1番目から171番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL10);および
(m)配列番号37に示す塩基配列の1番目から166番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL30);
からなる群より選択される少なくとも1つのInDelマーカーを含む領域の増幅産物に付加されたタグ鎖にハイブリダイズ可能なプローブと、前記プローブが固定された固相とを備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、カンキツ被検体が対象とするカンキツ品種であるか否かを迅速かつ簡易に識別できる技術を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例における、品種特異的なDNA多型のPCRによる検証結果を示す図である。
【
図2】実施例における、我国のカンキツ有望品種のためのC-PAS検出キットによる検出パターンを示す図である。
【
図3】実施例における、我国のカンキツ有望品種のためのC-PAS検出キットによる検出パターンを示す図である。
【
図4】実施例における、我国のカンキツ有望品種についての品種特異的DNAマーカーのPCR断片の電気泳動パターンを示す図である。
【
図5】実施例における、我国のカンキツ有望品種についての品種特異的DNAマーカーのPCR断片の電気泳動パターンを示す図である。
【
図6】実施例における、カンキツ品種のC-PAS検出キットを用いた、代表的な結果を示す。
【
図7】実施例における、甘平についての品種特異的DNAマーカーのPCR断片の電気泳動パターンを示す図である。
【
図8】実施例における、甘平のためのC-PAS検出キットによる検出パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一態様について、詳細に説明する。なお、本明細書中に記載された文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)、B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意味する。
【0015】
本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」は、「核酸」または「核酸分子」と交換可能に使用され、ヌクレオチドの重合体が意図される。ここで、核酸は、DNAの形態(例えば、cDNA若しくはゲノムDNA)、または、RNA(例えば、mRNA)の形態にて存在し得る。DNAまたはRNAは、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。一本鎖DNAまたはRNAは、コード鎖(センス鎖)であっても、非コード鎖(アンチセンス鎖)であってもよい。本明細書において使用される場合、塩基の表記は、適宜IUPACおよびIUBの定める1文字表記を使用する。また、本明細書において、「3’末端」とは、遺伝子配列の下流における端部領域または位置を意味し、「5’末端」とは、遺伝子配列の上流における端部領域または位置を意味している。
【0016】
〔カンキツの品種〕
本明細書において、カンキツの品種は、ミカン科ミカン亜科のミカン属(Citrus)、キンカン属(Fortunella)、およびカラタチ属(Poncirus)等に属する植物体の集合であり、その特性の相違により他の植物体の集合と区別可能な植物体の集合を意味している。また、カンキツの品種は、日本の農林水産省に品種登録された品種であってもよいし、品種登録されていない品種であってもよいし、品種として確立される前の育成段階のものを含む。
【0017】
このようなカンキツの品種は、例えば、ウンシュウミカン(Citrus unshiu Marc.)の品種(あるいは宮川早生、石川温州)、ダンカングレープフルーツ(Citrus paradisi Macf.)、トロビタスイートオレンジ(Citrus sinensis (L.) Osbeck)、リスボンレモン(Citrus limon (L.) Burm. f.)、不知火(あるいはデコポン(登録商標))、イヨカン(Citrus iyo hort. ex Tanaka)の品種、ナツダイダイ(Citrus natsudaidai Hayata)の品種(あるいは川野夏橙)、ハッサク(Citrus hassaku hort. ex Tanaka)の品種、ポンカン(Citrus reticulata Blanco)の品種(あるいは太田ポンカン)、璃の香、みはや、あすみ、あすき、麗紅、津之輝、西南のひかり、津之望、はるひ、清見、せとか、はるみ、はれひめ、甘平、愛媛果試第28号(あるいは紅まどんな(登録商標))、愛媛果試第48号(あるいは紅プリンセス(登録商標))、媛小春、ユズ(Citrus junos hort. ex Tanaka)の品種、ブンタン(Citrus grandis Osbeck)の品種(あるいは土佐文旦)、河内晩柑、ヒュウガナツ(Citrus tamurana hort. ex Tanaka)の品種、スダチ(Citrus sudachi hort. ex Tanaka)の品種、ブッシュカン(Citrus limonimedica Lush.)の品種、ユウコウ(Citrus yukou hort. ex Tanaka)の品種、シークヮーサー(Citrus depressa Hayata)の品種(あるいは大宜味クガニー)、カラ(カラマンダリン)、タンカン(Citrus tankan Hayata)の品種(あるいはT132)、セミノール、カボス(Citrus sphaerocarpa hort. ex Tanaka)の品種、天草、黄金柑、キシュウミカン(Citrus kinokuni hort. ex Tanaka)、スイートスプリング、サンボウカン(Citrus sulcata hort. ex. Ik. Takahashi)、アンコール、たまみ、西之香、サガマンダリン、マーコット、南香、天香、かんきつ中間母本農6号、およびカブス(Citrus aurantium L.)の品種(あるいはダイダイ)である。
【0018】
これらの中でも、宮川早生、ダンカングレープフルーツ、トロビタスイートオレンジ、リスボンレモン、璃の香、不知火、イヨカンの品種、川野夏橙、ハッサクの品種、太田ポンカン、みはや、あすみ、あすき、麗紅、津之輝、西南のひかり、津之望、はるひ、清見、せとか、はるみ、はれひめ、甘平、愛媛果試第28号、媛小春、および、愛媛果試第48号の26の品種は、日本国内の出荷量の約94%を占める主要な品種である。
【0019】
本明細書において、カンキツの品種の識別とは、品種が不特定の1種または複数種のカンキツ被検体を解析して、カンキツ被検体の品種を他の品種と区別すること、カンキツ被検体の品種が特定の品種に含まれているか否かを判定すること、カンキツ被検体の品種を特定すること、カンキツ被検体の品種を同定すること等を意味する。
【0020】
本明細書において、カンキツ被検体は、ミカン科ミカン亜科のミカン属(Citrus)、キンカン属(Fortunella)、およびカラタチ属(Poncirus)等に属する植物体の生鮮果実(果皮を含む)、種子、苗、花、葉、樹木、根、芽、およびこれらの一部分、ならびに、これらの加工品、特に加工果実が挙げられる。当該植物体の加工果実としては、果汁(ジュース)、果実缶詰、果実瓶詰、乾燥果実、ジャム、砂糖漬け果皮等が挙げられる。なお、加工品および加工果実は、加工過程においてDNAの分解が抑えられ、分析に適したDNAが取得可能なものであることが好ましい。税関等においてカンキツの品種識別に実用的に使用し得るという観点から、カンキツ被検体として、生鮮果実を好適に使用することができる。また、加工業者の検査現場等において原材料を確認するために、カンキツ被検体として、加工品または加工果実を好適に使用することができる。
【0021】
〔カンキツの品種の識別方法〕
本発明の一態様に係るカンキツの品種の識別方法は、挿入欠失(InDel)マーカーを用いてカンキツの品種を識別する方法である。識別方法は、下記(a)~(m)の挿入欠失(InDel)マーカー:
(a)配列番号1に示す塩基配列の1番目から175番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL55_M);
(b)配列番号2に示す塩基配列の1番目から132番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs1-P86);
(c)配列番号3に示す塩基配列の1番目から213番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL25);
(d)配列番号4に示す塩基配列の127番目から128番目の塩基に相当するInDelマーカー(IND235-s);
(e)配列番号5に示す塩基配列の1番目から154番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL68);
(f)配列番号6に示す塩基配列の353番目から354番目の塩基に相当するInDelマーカー(Cp0419-s);
(g)配列番号7に示す塩基配列の1番目から154番目の塩基に相当するInDelマーカー(IND265-l);
(h)配列番号8に示す塩基配列の1番目から18番目の塩基に相当するInDelマーカー(IND44-l);
(i)配列番号9に示す塩基配列の1番目から212番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL80);
(j)配列番号10に示す塩基配列の1番目から156番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL55_E);
(k)配列番号11に示す塩基配列の1番目から116番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs1-CL26);
(l)配列番号36に示す塩基配列の1番目から171番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL10);および
(m)配列番号37に示す塩基配列の1番目から166番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL30);
からなる群より選択される少なくとも1つのInDelマーカーを用いて、カンキツ被検体の品種を特定する特定工程を含む。
【0022】
本発明の一態様に係る識別方法により識別するカンキツの品種は、一例として、みはや、あすき、愛媛果試第28号、甘平、媛小春、および、愛媛果試第48号である。識別方法は、一例として、カンキツ被検体が、みはや、あすき、愛媛果試第28号、甘平、媛小春、および、愛媛果試第48号の6品種のいずれであるかを特定する。また、識別方法は、一例として、カンキツ被検体が上記6品種以外の品種であることを特定する。
【0023】
(InDelマーカー)
本発明の一態様に係る識別方法においては、上記(a)~(m)の13個のInDelマーカーのうちの少なくとも1つを用いた多型分析を行う。ここで、InDelは、DNAの塩基配列中のある特定の領域内に、配列の挿入または欠失の変異が見られるDNA多型、および、当該変異箇所においてさらに置換または付加の変異が見られるDNA多型を意味している。識別方法において、InDelは、クレメンティン(Citrus clementina v1.0)のゲノム配列を基準とした多型である。基準品種であるクレメンティン(Citrus clementina v1.0)のゲノム配列は、Phytozomeのゲノムデータベース(https://phytozome.jgi.doe.gov/pz/portal.html)に公表されている。
【0024】
「配列番号X(X=1~13)で表される塩基配列(塩基配列Xとする)のY番目からZ番目の塩基に相当するInDelマーカー」において、塩基配列Xは、基準となるカンキツ品種(品種名:クレメンティン(Citrus clementina v1.0))由来の塩基配列である。したがって、塩基配列Xは、他のカンキツ品種においては、InDelマーカーの部分以外でも塩基配列が異なる部分が含まれ得る。
【0025】
他のカンキツ品種において、塩基配列Xに対応する塩基配列を塩基配列X’としたとき、「配列番号Xで表される塩基配列のY番目からZ番目の塩基に相当する」とは、次のとおりである。塩基配列XのY番目からZ番目の塩基(塩基配列XとX’とがY番目からZ番目の塩基以外で同一の場合)や、塩基配列X’上で当該塩基に対応している塩基を指す。このInDelマーカーが位置するゲノム上の領域は、多数のカンキツ品種間で保存されているため、ホモロジー検索等の手法によって、このInDelマーカーを特定することができる。
【0026】
上記(a)~(m)のInDelマーカーにおいて、配列の挿入または欠失の位置、および、挿入配列または欠失配列は、以下のとおりである:
(a)配列番号1に示す塩基配列の1番目から175番目までの塩基からなる挿入配列;
(b)配列番号2に示す塩基配列の1番目から132番目までの塩基からなる挿入配列;
(c)配列番号3に示す塩基配列の1番目から213番目までの塩基からなる挿入配列;
(d)配列番号4に示す塩基配列の127番目と128番目との間の欠失;
(e)配列番号5に示す塩基配列の1番目から154番目までの塩基からなる挿入配列;
(f)配列番号6に示す塩基配列の353番目と354番目との間の欠失;
(g)配列番号7に示す塩基配列の1番目から154番目までの塩基からなる挿入配列;
(h)配列番号8に示す塩基配列の1番目から18番目までの塩基からなる挿入配列;
(i)配列番号9に示す塩基配列の1番目から212番目までの塩基からなる挿入配列;
(j)配列番号10に示す塩基配列の1番目から156番目までの塩基からなる挿入配列;
(k)配列番号11に示す塩基配列の1番目から116番目までの塩基からなる挿入配列
(l)配列番号36に示す塩基配列の1番目から171番目の塩基からなる挿入配列;および
(m)配列番号37に示す塩基配列の1番目から166番目の塩基からなる挿入配列。
【0027】
上記(a)のInDelマーカーについて、配列番号1に示す塩基配列は、1番目から175番目までの塩基からなる挿入配列が存在する挿入型配列を示し、当該挿入配列が存在しない場合には欠失型配列を示す。上記(b)~(c)、(e)、(g)~(m)のInDelマーカーについても、上記(a)のInDelマーカーと同様に挿入型配列および欠失型配列が示されている。
【0028】
上記(d)のInDelマーカーについて、配列番号4に示す塩基配列は、127番目の塩基と128番目の塩基との間に配列が存在しない欠失型配列を示し、127番目の塩基と128番目の塩基との間に挿入配列が存在する場合には挿入型配列を示す。上記(f)のInDelマーカーについても、上記(d)のInDelマーカーと同様に欠失型配列および挿入型配列が示されている。
【0029】
本発明者らは、カンキツ品種におけるレトロトランスポゾン等の挿入や欠損により生じるInDel多型について鋭意検討した。その結果、上述したカンキツの6品種を識別可能であり、多型検出のためのPCRプライマーの設計等の各種条件を満たす13個のInDelマーカーを見出し、本発明を完成させた。上記(a)~(m)のInDelマーカーは、カンキツ被検体において、選択された13個のInDel多型のそれぞれの存在を検出するためのDNAマーカーである。
【0030】
識別方法においては、InDelマーカーを用いて、識別の対象となるカンキツ被検体のDNAの塩基配列におけるInDel多型を検出し、品種ごとに対応付けられたInDel多型の情報と比較することで、カンキツ被検体の品種を識別する。識別方法においては、上記(a)~(m)のInDelマーカーにおける配列の挿入または配列の欠失を検出することにより、カンキツ被検体の品種を特定する。識別方法においては、識別の対象となるカンキツの品種に応じて、上記(a)~(m)のInDelマーカーの中から、適切な種類および数のInDelマーカーを任意に選択して組み合わせて、カンキツの品種識別用InDelマーカーサブセットを構成する。
【0031】
上記(a)~(m)のInDelマーカーの中から適切なInDelマーカーまたはその組み合わせを選択することにより、カンキツ被検体の品種を識別することができる。具体的には、品種が不特定のカンキツ被検体が、上記6品種のいずれであるかを特定することができる。さらには、カンキツ被検体が、上記6品種以外の品種であるか否かについても判定することができる。
【0032】
本発明の一態様に係る識別方法は、上記(a)~(m)のInDelマーカーから選択される1つ、2つ、または3つのInDelマーカーを用いて、上記6品種に関してカンキツ被検体を識別する。識別方法は、特定工程において、カンキツ被検体について、下記(1)~(7)からなる群:
(1)前記Tcs2-CL55_Mおよび前記Tcs1-P86を用いた、みはやの特定;
(2)前記Tcs2-CL25および前記IND235-sを用いた、あすきの特定;
(3)前記Tcs2-CL68を用いた、愛媛果試第28号の特定;
(4)前記Cp0419-s、IND265-lおよび前記IND44-lを用いた、甘平の特定;
(5)前記Tcs2-CL80を用いた、媛小春の特定;
(6)前記Tcs2-CL55_Eおよび前記Tcs1-CL26を用いた、愛媛果試第48号の特定;および
(7)前記Tcs2-CL10および前記Tcs2-CL30を用いた、甘平の特定;
より選択される少なくとも1つの品種の特定を行う。
【0033】
すなわち、特定工程においては、上記(a)のInDelマーカーと上記(b)のInDelマーカーとを用いて、みはやを特定する。また、特定工程においては、上記(c)のInDelマーカーと上記(d)のInDelマーカーとを用いて、あすきを特定する。さらに、特定工程においては、上記(e)のInDelマーカーを用いて、愛媛果試第28号を特定する。また、特定工程においては、上記(f)のInDelマーカー、上記(g)のInDelマーカー、および上記(h)のInDelマーカーを用いて、甘平を特定する。さらに、特定工程においては、上記(i)のInDelマーカーを用いて、媛小春を特定する。また、特定工程においては、上記(j)のInDelマーカーと上記(k)のInDelマーカーとを用いて、愛媛果試第48号を特定する。また、特定工程においては、上記(l)のInDelマーカーと上記(m)のInDelマーカーとを用いて、甘平を特定する。
【0034】
一例として、特定工程においては、上記(a)のInDelマーカーの挿入型配列と上記(b)のInDelマーカーの挿入型配列とを検出した場合に、カンキツ被検体の品種がみはやであると特定する。また、特定工程においては、上記上記(c)のInDelマーカーの挿入型配列と上記(d)のInDelマーカーの欠失型配列とを検出した場合に、カンキツ被検体の品種があすきであると特定する。さらに、特定工程においては、上記(e)のInDelマーカーの挿入型配列を検出した場合に、カンキツ被検体の品種が愛媛果試第28号であると特定する。また、特定工程においては、上記(f)のInDelマーカーの欠失型配列、上記(g)のInDelマーカーの挿入型配列、および上記(h)のInDelマーカーの挿入型配列を検出した場合に、カンキツ被検体の品種が甘平であると特定する。さらに、特定工程においては、上記(i)のInDelマーカーの挿入型配列を検出した場合に、カンキツ被検体の品種が媛小春であると特定する。また、特定工程においては、上記(j)のInDelマーカーの挿入型配列と上記(k)のInDelマーカーの挿入型配列とを検出した場合に、カンキツ被検体の品種が愛媛果試第48号であると特定する。また、特定工程においては、上記(l)のInDelマーカーの挿入型配列と上記(m)のInDelマーカーの挿入型配列とを検出した場合に、カンキツ被検体の品種が甘平であると特定する。
【0035】
上記(a)~(m)のInDelマーカーと上記6品種との関係は、後述する表6に示されている。したがって、例えば、上記6品種のうちの特定の2品種のいずれであるかを識別するだけである場合は、上記(a)~(m)のInDelマーカーのうちから、当該2品種の間で相違する1個のInDelマーカーを選択し、解析することもできる。
【0036】
(InDel多型分析)
本発明の一態様に係る識別方法の特定工程において、上記(a)~(m)のInDelマーカーを用いてカンキツ被検体のInDel多型分析を行う方法としては、特に限定されず、InDel多型を検出する公知のInDel多型分析方法を用いることができる。このような公知のInDel多型分析方法には、カンキツ被検体のPCR増幅断片中のInDel多型を検出することによりInDel多型分析する方法が含まれる。
【0037】
すなわち、特定工程においては、一例として、品種の特定に用いるInDelマーカーを含む領域を増幅するプライマーを用いて、カンキツ被検体のDNAにおける前記領域を増幅する。カンキツ被検体のDNAの前記領域の増幅は、カンキツ被検体から抽出したDNAを鋳型にして、InDelマーカーを含む領域を増幅するプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により行う。そして、得られた増幅断片におけるInDel多型(遺伝子型)を決定し、決定されたInDel多型と品種との関係を示す表6に示すようなデータに基づいて、カンキツ被検体の品種を特定する。
【0038】
また、特定工程においては、一例として、PCRが適切に行われているか否かを決定するためのコントロールマーカーを用いてもよい。これにより、PCR増幅断片の存在または不在に基づいてカンキツの品種を識別する識別方法において、識別精度を向上させることができる。このようなコントロールマーカーは、一例として、葉緑体ゲノムのrbcL遺伝子、matK遺伝子、psbA遺伝子等である。すなわち、特定工程においては、InDelマーカーを含む領域を増幅するプライマーと共に、コントロールマーカーを含む領域を増幅するプライマーを用いて、PCRを実行してもよい。
【0039】
ここで、カンキツ被検体からDNAを抽出する方法としては、特に限定されず、公知のDNA抽出方法を用いることができる。また、市販のDNA抽出キットを用いて、DNAを抽出してもよい。被検体の種類および夾雑物の量等に応じて、DNA抽出工程の前に、適宜に前処理を行ってもよい。例えば、被検体が固体である場合は、DNA抽出工程の前に、被検体を、液化窒素等により予め粉末化しておいてもよい。また、被検体が液体である場合は、被検体を遠心分離することにより固形分を沈殿させて、回収されるペレットを、DNA抽出工程に用いてもよい。さらに、被検体が生鮮果実または加工果実等である場合は、DNA抽出工程の前に、洗浄バッファによる洗浄を行い、被検体に含まれる糖類およびフェノール類等をある程度除去してもよい。また、被検体から抽出されたDNAは、PCR反応において鋳型として用いるために、必要に応じて洗浄または精製してもよい。
【0040】
PCRにより、上記(a)~(m)のInDelマーカーのいずれかを含む領域を増幅するためのプライマーは、標的のInDelマーカーを含む領域のDNA断片を増幅することができるものである限り、特に限定されない。カンキツ被検体が生鮮果実および加工果実等である場合には、抽出されるDNAサンプル中の夾雑物が多いため、増幅断片の長さが短くなるようにプライマーセットを設計することが好ましい。例えば、プライマー増幅断片の長さが、500塩基対(bp)以下となるようにプライマーセットを設計することが好ましく、450bp以下となるようにプライマーセットを設計することがより好ましく、400bp以下、300bp以下、200bp以下、または、150bp以下となるようにプライマーセットを設計してもよい。
【0041】
上記(a)~(m)のInDelマーカーのいずれかを含む領域を増幅するためのプライマーセットは、フォワードプライマーである第1のプライマーと、リバースプライマーである第2のプライマーとが含まれる。これらのプライマーの長さは、例えば、15bp以上、16bp以上、17bp以上、18bp以上、または20bp以上であってもよく、50bp以下、40bp以下、または30bp以下であってもよい。
【0042】
InDelマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーセットは、下記(a’)~(m’):
(a’)前記Tcs2-CL55_Mを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号12に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号13に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
(b’)前記Tcs1-P86を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号14に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号15に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
(c’)前記Tcs2-CL25を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号16に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号17に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
(d’)前記IND235-sを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号18に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号19に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
(e’)前記Tcs2-CL68を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号20に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号21に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
(f’)前記Cp0419-sを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号22に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号23に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
(g’)前記IND265-lを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号24に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号25に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
(h’)前記IND44-lを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号26に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号27に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
(i’)前記Tcs2-CL80を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号28に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号29に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
(j’)前記Tcs2-CL55_Eを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号30に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号31に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
(k’)前記Tcs1-CL26を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号32に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号33に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
(l’)前記Tcs2-CL10を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号38に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号39に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;および
(m’)前記Tcs2-CL30を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号40に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号41に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
からなる群より選択されてもよい。
【0043】
なお、例えば、上記(a’)のプライマーセットにおいて、第1のプライマーには、配列番号12の塩基配列を全て含み、より長いプライマー、ならびに、配列番号12の塩基配列の少なくとも一部(例えば15bp)を含み、その前または後に他の塩基配列を含むプライマーも含まれる。
【0044】
上記(a’)および(b’)のプライマーセットを用いることで、みはや、および、みはやと同じ遺伝子型を示すみはやの後代品種においては、配列番号1および2に示す塩基配列からなるPCR増幅産物が得られ、上記(a)および(b)のInDelマーカーに相当する塩基配列を検出することができる。
【0045】
上記(c’)および(d’)のプライマーセットを用いることで、あすき、および、あすきと同じ遺伝子型を示すあすきの後代品種においては、配列番号3および4に示す塩基配列からなるPCR増幅産物が得られ、上記(c)および(d)のInDelマーカーに相当する塩基配列を検出することができる。
【0046】
上記(e’)のプライマーセットを用いることで、愛媛果試第28号、および、愛媛果試第28号と同じ遺伝子型を示す愛媛果試第28号の後代品種においては、配列番号5に示す塩基配列からなるPCR増幅産物が得られ、上記(e)のInDelマーカーに相当する塩基配列を検出することができる。
【0047】
上記(f’)、(g’)、および(h’)のプライマーセットを用いることで、甘平、および、甘平と同じ遺伝子型を示す甘平の後代品種においては、配列番号6~8に示す塩基配列からなるPCR増幅産物が得られ、上記(f)、(g)、および(h)のInDelマーカーに相当する塩基配列を検出することができる。
【0048】
上記(i’)のプライマーセットを用いることで、媛小春、および、媛小春と同じ遺伝子型を示す媛小春の後代品種においては、配列番号9に示す塩基配列からなるPCR増幅産物が得られ、上記(i)のInDelマーカーに相当する塩基配列を検出することができる。
【0049】
上記(j’)および(k’)のプライマーセットを用いることで、愛媛果試第48号、および、愛媛果試第48号と同じ遺伝子型を示す愛媛果試第48号の後代品種においては、配列番号10および11に示す塩基配列からなるPCR増幅産物が得られ、上記(j)および(k)のInDelマーカーに相当する塩基配列を検出することができる。
【0050】
上記(l’)および(m’)のプライマーセットを用いることで、甘平、および、甘平と同じ遺伝子型を示す甘平の後代品種においては、配列番号36および37に示す塩基配列からなるPCR増幅産物が得られ、上記(l)および(m)のInDelマーカーに相当する塩基配列を検出することができる。
【0051】
また、例えば、(a’)のプライマーセットは、配列番号12に示す塩基配列またはその均等な塩基配列からなる第1のプライマーと、配列番号13に示す塩基配列またはその均等な塩基配列からなる第2のプライマーとの組み合わせであってもよい。なお、本願明細書において、「均等な塩基配列」とは、品種間における塩基配列のバリエーションに対応する塩基配列であってよい。所定の塩基配列に均等な塩基配列とは、所定の塩基配列に対して、同一性が80%、90%、95%、96%、97%、98%、または、99%以上である塩基配列や、数個(例えば1~10個、好ましくは1~5個、より好ましくは1、2または3個)の塩基の修飾(置換、欠失、挿入または付加)を含む塩基配列であってよい。このような均等な塩基配列は、当該技術分野における当業者にとって明らかであり、カンキツの品種の遺伝子情報を登録しているデータベースを参照することにより、または、カンキツの品種において染色体番号および塩基のゲノム上の位置により特定されるInDel多型の近傍領域の塩基配列を解読することにより、決定することができる。
【0052】
InDel多型分析におけるPCRは、単独のプライマーセットを含む反応系でDNA断片を増幅するシングルプレックスPCR、または、複数のプライマーセットを含む反応系で遺伝子増幅するマルチプレックスPCR、のいずれであってもよい。マルチプレックスPCRの場合は、異なる波長を有する蛍光物質(例えば、NED、6-FAM、VIC、PET)により標識したプライマーセットを混合してもよい。
【0053】
PCRの反応条件は、用いるDNAポリメラーゼおよびPCR装置の種類、増幅断片の長さ等に応じて適宜に設定され得る。サイクル条件としては、変性工程、アニーリング工程および伸長工程の3工程を1サイクルとする3ステップPCR法、および、変性工程とアニーリングおよび伸長工程との2工程を1サイクルとする2ステップPCR法を適用することができる。2ステップPCR法を用いることにより、PCRにかかる時間を短縮することができる。2ステップPCR法のサイクル条件の一例としては、例えば、DNAポリメラーゼの活性化を90~100℃で5~15分間(例えば、95℃で10分間)行った後に、変性工程(90~100℃で10~20秒間、例えば、95℃で15秒間)とアニーリングおよび伸長工程(55~65℃で45秒間~2分間、例えば、60℃で1分間)とを1サイクルとして、合計30~50サイクル、好適には、40サイクル行う。鋳型となるDNAの量および品質に応じて、InDelマーカーを安定的に検出するために、サイクル数を適宜調整してもよい。例えば、加工果実等から抽出されるDNAは、葉等から抽出されるDNAよりも、量および品質が低下するため、サイクル数を45~50サイクル程度に増加させてもよい。
【0054】
マルチプレックスPCRの場合、複数のターゲットの増幅を1つのPCR反応系において良好に実行できるように、反応条件を調整する。マルチプレックスPCRの反応条件は、一例として、98℃で10秒間の変性、56℃で5秒間のアニーリング、および、68℃で2秒間の伸長を1サイクルとして、合計32サイクル行い、68℃で30秒間の最終伸長を1サイクル行う条件である。
【0055】
InDel多型分析におけるPCRとして、PCRによる増幅およびInDel多型の特定を行うTaqMan(登録商標)-PCR法のようなリアルタイムPCRを用いてもよい。また、PCRにより増幅した増幅断片においてInDel多型を特定する方法として、DNAシーケンス解析、アガロースゲル電気泳動を利用する方法等の公知の方法を用いてもよい。
【0056】
本発明の一態様に係る識別方法の特定工程において、InDelマーカーを含む領域を増幅するプライマーにはタグ鎖が付加されており、当該タグ鎖にハイブリダイズ可能なプローブが固定された固相において、プライマーを用いて増幅された増幅産物を拡散させ、プローブにハイブリダイズする増幅産物を検出する。
【0057】
すなわち、特定工程においては、InDelマーカーを含む領域の増幅産物を、核酸クロマトグラフィーにより検出し、カンキツの品種を識別し得る。このような核酸クロマトグラフィーは、液体を拡散または移動可能な多孔質状の固相担体を含む、核酸検出デバイスを用いて行うことができる。核酸クロマトグラフィーにおいては、キャピラリー現象により、固相担体内において増幅産物を含む展開液を移動させる。固相担体には、プライマーに付加されたタグ鎖にハイブリダイズ可能なプローブが固定されている。そして、固相担体内において移動する展開液中に含まれる増幅産物のタグ鎖が固相上のプローブとハイブリダイズすることにより、増幅産物が固相担体に捕捉される。これにより、標的となるInDelマーカーを含む領域の増幅産物を検出する。
【0058】
核酸クロマトグラフィーを利用した増幅産物の検出は、BioMed Research International 2014(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4251647/)、Journal of Biotechnology 2014(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0168165614002946?via%3Dihub)、特開2013-59319、特開2016-144457、または、特開2014-18150の記載を参照することにより、実行することができる。
【0059】
タグ鎖は、固相上のプローブに特異的にハイブリダイズ可能なタグ配列を有している。タグ配列は、プローブのタグ鎖検出用の配列の塩基長に一致する塩基長を有しており、好ましくは、20~50塩基長であり、より好ましくは、20~25塩基長である。タグ配列は、InDelマーカーを含む領域を増幅させるためのプライマーセットに含まれるプライマーの一方に付加される。タグ配列は、一例として、プライマーの5’末端に付加される。
【0060】
プローブは、固相担体に固定化された状態で用いられ、タグ配列に対応する検出配列を有している。固相担体には、検出対象のInDelマーカーの数に対応する数のプローブが固定化されている。また、固相担体には、コントロールマーカーを検出するためのプローブが固定化され得る。
【0061】
固相担体は多孔質体であり、一例として、セルロース、ナイロン、PVDF等である。固相担体の形状は、一例として、平板状であり、プローブが一定の配列で固定されたアレイであり、複数のプローブが固定されている。固相担体は、一例として、長尺状であり、その長手方向に沿う一方の端部を展開液に接触させることで、プローブにハイブリダイズするタグ鎖を含む増幅産物を検出する。
【0062】
固相担体上のプローブにハイブリダイズした増幅産物の検出は、従来公知の方法により行うことが可能であり、一例として、このような増幅産物を染色して可視化することにより行う。標的となる増幅産物がプローブに捕捉された場合に、染色されたバンドが視認されるように構成することで、迅速に増幅産物を検出することができる。
【0063】
特定工程において、核酸クロマトグラフィーによる増幅産物の検出に用いられる核酸検出デバイスは、InDelマーカーを含む領域の増幅産物に付加されたタグ鎖にハイブリダイズ可能なプローブと、プローブが固定された固相とを備えている。このような核酸検出デバイスとして、Tohoku Bio-Array社製のDNAクロマト用メンブランスティックのような、商業的に入手可能なデバイスを用いてもよい。
【0064】
このように、本発明の一態様に係る識別方法においては、InDelマーカーを用いることにより、カンキツの品種を簡易に識別することができる。識別方法においては、13種のInDelマーカーを用いて、6つのカンキツ品種を簡易に識別することができる。マルチプレックス解析が可能であり、作業効率が高い。識別方法は、カンキツ被検体として、種苗だけでなく、生鮮果実および加工果実を用いても精度よくカンキツの品種を識別することが可能である。したがって、当該識別方法は、税関および加工業者の検査現場等の導入に適しており、実用的な技術として、育成者権の保護および食品安全性の確保に貢献することができる。
【0065】
(その他)
別の実施形態において、本発明の一態様に係る識別方法は、指定の品種のカンキツの植物体またはその加工品において、他の品種の混在の可能性の評価に利用することができる。例えば、指定の品種のカンキツの植物体またはその加工品について、指定の品種に特有のInDel多型以外のInDel多型が検出される場合(例えば、他の品種に特有のInDel多型が検出される場合)、他の品種の混在の可能性、および/または、指定の品種が、他の品種により代用されている可能性があると評価することができる。また、指定の品種に特有のInDel多型以外のInDel多型が検出されない場合、他の品種の混在の可能性、および/または、指定の品種が他の品種により代用されている可能性がないか、または、低いと評価することができる。
【0066】
〔識別キット〕
本発明の一態様に係るカンキツの品種の識別キットは、カンキツの品種を識別するための識別キットであって、下記(a)~(m)の挿入欠失(InDel)マーカー:
(a)配列番号1に示す塩基配列の1番目から175番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL55_M);
(b)配列番号2に示す塩基配列の1番目から132番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs1-P86);
(c)配列番号3に示す塩基配列の1番目から213番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL25);
(d)配列番号4に示す塩基配列の127番目から128番目の塩基に相当するInDelマーカー(IND235-s);
(e)配列番号5に示す塩基配列の1番目から154番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL68);
(f)配列番号6に示す塩基配列の353番目から354番目の塩基に相当するInDelマーカー(Cp0419-s);
(g)配列番号7に示す塩基配列の1番目から154番目に相当するInDelマーカー(IND265-l);
(h)配列番号8に示す塩基配列の1番目から18番目の塩基に相当するInDelマーカー(IND44-l);
(i)配列番号9に示す塩基配列の1番目から212番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL80);
(j)配列番号10に示す塩基配列の1番目から156番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL55_E);
(k)配列番号11に示す塩基配列の1番目から116番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs1-CL26);
(l)配列番号36に示す塩基配列の1番目から171番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL10);および
(m)配列番号37に示す塩基配列の1番目から166番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL30);
の少なくとも1つを含む領域を増幅するためのプライマーを備えている。
【0067】
また、識別キットにおいては、プライマーとして、
(a’)前記Tcs2-CL55_Mを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号12に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号13に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
(b’)前記Tcs1-P86を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号14に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号15に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
(c’)前記Tcs2-CL25を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号16に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号17に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
(d’)前記IND235-sを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号18に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号19に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
(e’)前記Tcs2-CL68を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号20に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号21に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
(f’)前記Cp0419-sを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号22に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号23に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
(g’)前記IND265-lを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号24に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号25に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
(h’)前記IND44-lを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号26に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号27に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
(i’)前記Tcs2-CL80を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号28に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号29に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
(j’)前記Tcs2-CL55_Eを含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号30に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号31に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
(k’)前記Tcs1-CL26を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号32に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号33に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
(l’)前記Tcs2-CL10を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号38に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号39に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;および
(m’)前記Tcs2-CL30を含む領域を増幅するためのプライマーセットであって、配列番号40に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第1プライマーと、配列番号41に示される塩基配列における15以上の連続する塩基を含む第2プライマーとからなるプライマーセット;
からなる群より選択される少なくとも1つのプライマーセットを含み得る。
【0068】
また、識別キットにおいて、プライマーセットに含まれるプライマーの一方には、タグ鎖が付加されており、タグ鎖にハイブリダイズ可能なプローブが固定された固相を有する核酸検出デバイスをさらに備え得る。
【0069】
さらに、識別キットは、コントロールマーカーを含む領域を増幅するためのプライマーと、当該プライマーに付加されるタグ鎖とをさらに備え得る。
【0070】
すなわち、本発明の一態様に係る識別キットは、本発明に係るカンキツの品種の識別方法において用いられる識別キットの一態様である。したがって、本発明に係るカンキツの品種の識別キットの詳細は、上述した本発明の一形態に係るカンキツの品種の識別方法の説明に準じる。
【0071】
〔核酸検出デバイス〕
本発明の一態様に係る核酸検出デバイスは、カンキツの品種を識別するための核酸検出デバイスであって、下記(a)~(m)のInDelマーカー:
(a)配列番号1に示す塩基配列の1番目から175番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL55_M);
(b)配列番号2に示す塩基配列の1番目から132番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs1-P86);
(c)配列番号3に示す塩基配列の1番目から213番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL25);
(d)配列番号4に示す塩基配列の127番目から128番目の塩基に相当するInDelマーカー(IND235-s);
(e)配列番号5に示す塩基配列の1番目から154番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL68);
(f)配列番号6に示す塩基配列の353番目から354番目の塩基に相当するInDelマーカー(Cp0419-s);
(g)配列番号7に示す塩基配列の1番目から154番目の塩基に相当するInDelマーカー(IND265-l);
(h)配列番号8に示す塩基配列の1番目から18番目の塩基に相当するInDelマーカー(IND44-l);
(i)配列番号9に示す塩基配列の1番目から212番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL80);
(j)配列番号10に示す塩基配列の1番目から156番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL55_E);
(k)配列番号11に示す塩基配列の1番目から116番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs1-CL26)
(l)配列番号36に示す塩基配列の1番目から171番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL10);および
(m)配列番号37に示す塩基配列の1番目から166番目の塩基に相当するInDelマーカー(Tcs2-CL30);
からなる群より選択される少なくとも1つのInDelマーカーを含む領域の増幅産物に付加されたタグ鎖にハイブリダイズ可能なプローブと、プローブが固定された固相とを備えている。
【0072】
すなわち、本発明の一態様に係る核酸検出デバイスは、本発明に係るカンキツの品種の識別方法において用いられる核酸検出デバイスの一態様である。したがって、本発明に係るカンキツの品種を識別するための核酸検出デバイスの詳細は、上述した本発明の一形態に係るカンキツの品種の識別方法の説明に準じる。
【0073】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0074】
本発明の一実施例について以下に説明する。
【0075】
〔1.材料および方法〕
(1-1.植物材料およびDNA抽出)
農業・食品産業技術総合研究機構 果樹茶業研究部門(NIFTS)および愛媛県農林水産研究所果樹研究センター みかん研究所に保存された26のカンキツ品種(表1)を実験に用いた。
【0076】
【0077】
分類は田中システムに従った(Tanaka et al. 1969)。表1におけるサンプルのアクセッション番号(JP No.)および登録番号は、農業・食品産業技術総合研究機構(NARO)遺伝資源センターにおけるGenebank(http://www.gene.affrc.go.jp/databases-plant_search.php)、および、農林水産省(MAFF)における品種登録ホームページ(http://www.hinshu2.maff.go.jp)に基づく。ゲノムDNAは、完全に展開した葉および果皮組織から、DNeasy Plant Mini Kit (Qiagen社製)を用いて単離した。
【0078】
(1-2.公開されたマーカーにおける品種特異的InDel多型のスクリーニング)
過去の研究において公開された185のInDelマーカー(Fang et al. 2018, Kawahara et al. 2020)について、表1に示す26のカンキツ品種のゲノムDNAを用いて、標的品種に特異的なInDel多型断片のスクリーニングに供した。26の品種間において標的品種を同定するための、単一のInDel多型断片またはInDel多型断片の最小の組み合わせを選抜した。
【0079】
PCR混合液を、ゲノムDNA 5ng、フォワードおよびリバースプライマー 5pmol、および、KOD One PCR Master Mix(東洋紡社製) 5μLを含む、終量10μLに調整した。PCRのサイクル条件は、以下のとおりとした:98℃で10秒間の変性、56℃で5秒間のアニーリング、および、68℃で2秒間の伸長を32サイクル、ならびに、68℃で30秒間の最終伸長を1サイクル。全ての反応をProFLEX PCR system(Thermo Fisher Scientific社製)において行った。PCR産物を2.0%アガロースゲル(Agarose standard 01; Rikaken社製)において電気泳動し、臭化エチジウムを用いて可視化した。
【0080】
(1-3.レトロトランスポゾン挿入部位のための配列ライブラリーの構築)
レトロトランスポゾン挿入部位を包括的に決定するために、挿入部位に隣接する領域をPCRにより増幅し、Illumina HiSeq platformにおいて増幅産物のシークエンシングを行った。既報に記載された方法(Monden et al. 2014, 2015)に従って配列ライブラリーを構築した。本実験においては、3つのレトロトランスポゾンファミリー(CIRE1、Tcs1およびTcs2)をシークエンシングの標的とし、各レトロトランスポゾンファミリーについて配列ライブラリーを準備した。まず、NEBNext dsDNA Fragmentase(New England Biolabs社製)を用いてゲノムDNAを断片化し、叉状アダプタをDNA断片に連結させた。叉状アダプタを、2つの異なるオリゴ鎖をアニーリングすることにより調製した(Forked_Type1およびForked_Com)(表2)。
【0081】
【0082】
一次PCR増幅を、レトロトランスポゾン特異的プライマー(CIRE1-PPTまたはTcs-PBS)とアダプタ特異的プライマー(AP2-Type1)との組み合わせ、および、テンプレートとしてのアダプタ連結DNAを用いて行った(表3)。
【0083】
【0084】
一次PCR増幅において、Tcs1およびTcs2ファミリーの配列ライブラリーを調製するために、表3に示す共通プライマー(Tcs-PBS)を用いた。NestedPCR増幅を、テンプレートとしての一次PCR産物と、尾部PCRプライマー(P5およびP7プライマー)とを用いて行った。尾部PCRプライマーは、フローセルのシークエンシングにおけるハイブリダイズのためのP5またはP7配列(Illumina社製)、プライマー結合部位のシークエンシングのためのRd1SPまたはRd2SP配列(Illumina社製)、ならびに、マルチプレックスシークエンシングのためのいくつかのバーコード配列を含む。レトロトランスポゾン特異的プライマー(例えば、D501~D508)は、P5配列、バーコード配列、Rd1SP配列、および、レトロトランスポゾン端部配列を含む。一方、アダプタ特異的プライマー(例えば、D701~D713)は、P7配列、バーコード配列、Rd2SP配列、および、アダプタ配列を含む。各サンプルに用いたプライマーの組み合わせを、表4に示す。
【0085】
【0086】
PCR産物をアガロースゲルにおいてサイズ選択し(500~1000bp)、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて精製した。精製した産物を、Qubit fluorometer(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)を用いて定量化し、Agilent 2200 TapeStation system(Agilent社製)を用いてサイズ選択領域を確認した。各系から生成したバーコード産物の等量をプールすることにより、HiSeq配列ライブラリーを調製した。レトロトランスポゾン挿入部位を分析するためのHiSeqリード(HiSeq reads)を、DDBJアクセッション番号、DRA014490(CIRE1)、DRA014491(Tcs1)およびDRA014492(Tcs2)下に蓄積した。
【0087】
(1-4.レトロトランスポゾン挿入多型のデータ解析)
得られたペアエンドリード(paired-end reads)(150bp)を、発明者らの過去の研究(Monden et al. 2014, 2015; Sasai et al. 2019; Hirata et al. 2020)に記載された方法にしたがって解析した。得られたリードを、Masera pipeline execution system(the Cell Innovation Program of the National Institute of Genetics)(https://cell-innovation.nig.ac.jp/index_en.html)を用いて解析した。アダプタのトリミングとクオリティフィルタリング(QV≧30)とを、それぞれ、Cutadapt(Martin, 2011)およびFLEXBAR(Dodt et al. 2012)を用いて行った。
【0088】
選抜したリードを、ほとんどの配列をカバーする特定の長さ(50bp)にトリミングした。10以上の同一の配列を含むリードを、FASTA formatにおいて単一の配列に削減した後、以下に示すパラメータに設定したBLAT self-alignment program(Kent 2002)を用いて分類した:“-tileSize”=8、“-minMatch”=1、“-minScore”=10、“-repMatch”=-1、および、“-oneOff”=2。
【0089】
このクラスター分析により、特定のレトロトランスポゾン挿入部位が互いに一致した、いくつかのクラスターを生成した。次に、適切な閾値を設定し、レトロトランスポゾンの存在または非存在を評価した。例えば、与えられたクラスターにおいて、特定のレトロトランスポゾンの挿入部位を有するリードの数が、その種の全リード数に対して0.1%より少ない場合、レトロトランスポゾンはその部位に存在しないと判断した。これにより、全ての品種におけるレトロトランスポゾンの存在(1)に対する非存在(0)に関する遺伝子型情報が得られた。最後に、種特異的および種間の挿入部位多型を、遺伝子型情報に基づいてスクリーニングした。
【0090】
〔5.品種特異的DNAマーカーの開発およびPCR検証〕
InDel多型断片をT-ベクター(pMD19;Takara社製)中において複製し、サンガー法によるシークエンシングの対象とした。QIAprep Spin Miniprep kit(Qiagen社製)を用いてプラスミドを調製し、ABI PRISM 3130xl Genetic Analyzer(Applied Biosystems社製)を用いて、製造者による取扱説明書にしたがって、シークエンシングを実行した。得られた配列をミカンゲノムデータベース(https://mikan.dna.affrc.go.jp/)に対してブラスト検索し、挿入または欠損したInDel多型断片のアレル配列を収集した。
【0091】
配列アライメントに続いて、挿入または欠損の連結部位を各InDel多型断片について決定し、多型断片特異的プライマーセットを、この連結部位の周囲およびアレル配列間の非同一配列を用いて設計した。レトロトランスポゾンDNA多型について、フォワードプライマーおよびリバースプライマーを、レトロトランスポゾンの5’-LTRあるいは3’-LTR領域、または、種特異的レトロトランスポゾン挿入部位のいずれかの配列に基づいて設計した。PCRポジティブDNAマーカーを、カンキツ葉緑体ゲノムrbcL遺伝子のコーディング領域を用いて設計した。rbcL遺伝子のプライマー配列を配列番号34および35に示す。これらの開発したDNAマーカーのプライマー配列を表5に示す。開発した種特異的DNAマーカーを、上述した条件にしたがったPCRおよび2.0%アガロースゲル電気泳動を用いて確認した。
【0092】
【0093】
(1-5.マルチプレックスPCRおよびC-PAS法を用いたDNAマーカーの検出)
C-PAS法を用いてPCR産物を検出するために、一本鎖タグおよびスペーサ配列を、各DNAマーカーのフォワードプライマーまたはリバースプライマーのいずれかの5’端に加えた。各標的品種特異的なDNAマーカーを、マルチプレックスPCRを用いて、PCRポジティブDNAマーカーと共に増幅した。プライマー濃度比およびマルチプレックスPCR条件を、DNAマーカーを均一に増幅させるように調整した。キット(FASMAC社製)に含まれ、予めミックスされたプライマーを用いて、製造者の取扱説明書に従ってPCRを行った。単一鎖タグハイブリダイゼーションのためのタグ-スペーサ配列を有するPCR産物を、染料および展開液(Tohoku Bio-Array社製)と混合した。その後、DNAクロマト用メンブランスティック(C-PAS4;Tohoku Bio-Array社製)を展開液に10分間浸漬した。
【0094】
〔2.結果〕
(2-1.日本のカンキツ有望品種8種のための品種特異的DNAマーカーのスクリーニング)
過去の文献(Fang et al. 2018, Kawahara et al. 2020)における185のInDelマーカーのうち、標的品種に特異的なInDel多型断片を、日本市場における26のカンキツ品種(表1)を用いてスクリーニングした。26のカンキツ品種は、国内の流通量の94%以上を占める。多くのInDElマーカーにおいて、2~4個の複数のPCR断片の増幅がみられた。日本の育種集団は少数の祖先品種から繰り返し交雑により受け継いだゲノムを部分的に共有しているので、従来の日本の育種においては、親品種が種子親または花粉親として用いられない限り、標的品種に特異的な単一のInDel多型断片が検出されることはまれであることが予測される。単一のInDel多型断片を、璃の香において取得した。璃の香は、レモンと日向夏との交配から生成された品種である。IND141マーカーは、26品種中の3品種のInDel断片を生成し、璃の香のみが600bp断片(IND141-1)を有していた。残りの7の標的品種においては、単一のInDel多型断片は存在しなかった。
【0095】
(2-2.トランスポゾンライブラリのNGS、および、カンキツ有望品種8種におけるレトロトランスポゾンの挿入により起こる品種特異的配列多型のスクリーニング)
公開されたInDelマーカーのスクリーニングにおいて、標的品種を同定するための単一のInDel多型断片を見出すことは困難であるため、LTRレトロトランスポゾンファミリーCIRE1、Tcs1、およびTcs2を、ハイスループットシークエンシングプラットフォームを用いた挿入部位の包括的な解析のために選択した。
【0096】
CIRE1ファミリーにおいては、150bpの122,668,732リードが得られた(最小=2,597,900、平均=4,718,028、および、最大=6,110,395リード/ライン)。前処理の後、57,420,094のリードが残った。これらのリードを、BLAT self-alignment program(Kent 2002)を用いたクラスター分析に用いて、26品種における独立した93の挿入部位を生成した。これらの挿入部位間において、以下の10の挿入部位が推定品種特異的挿入部位と考えられた:はるひに特異的な4つの挿入部位(CIRE1-CL30、CIRE1-CL28、CIRE1-CL21、および、CIRE1-CL55);川野夏橙に特異的な2つの挿入部位(CIRE1-CL15およびCIRE1-P51);璃の香に特異的な2つの挿入部位(CIRE1-P60およびCIRE1-P75);麗紅に特異的な1つの挿入部位(CIRE1-CL48);およびダンカングレープフルーツに特異的な1つの挿入部位(CIRE1-P58)。
【0097】
Tcs1ライブラリーにおいては、150bpの75,646,143(最小=1,529,440、平均=2,909,467、および、最大=5,003,387リード/ライン)のリードが得られた。前処理の後、37,259,503のリードが残った。これらのリードを、BLAT self-alignment program(Kent 2002)を用いたクラスター分析に用い、26の品種におけるTcs1の276の独立した挿入部位を生成した。このうち、以下に示す24の挿入部位が品種特異的であると考えられた:レモンに特異的な8の挿入部位(Tcs1-P104、Tcs1-CL32、Tcs1-P110、Tcs1-P112、Tcs1-CL46、Tcs1-CL64、Tcs1-P148、およびTcs1-P151);はるひに特異的な3の挿入部位(Tcs1-CL57、Tcs1-CL68、Tcs1-CL93);川野夏橙に特異的な2の挿入部位(Tcs1-CL85およびTcs1-P95);璃の香に特異的な2の挿入部位(Tcs1-CL87およびTcs1-CL69);愛媛果試第28号に特異的な2の挿入部位(Tcs1-CL113およびTcs1-P99);グレープフルーツに特異的な1の挿入部位(Tcs1-CL90);不知火に特異的な1の挿入部位(Tcs1-P107); イヨカンに特異的な1の挿入部位(Tcs1-CL83);ハッサクに特異的な1の挿入部位(Tcs1-CL119);ポンカンに特異的な1の挿入部位(Tcs1-P118);麗紅に特異的な1の挿入部位(Tcs1-CL59);ならびに、媛小春に特異的な1の挿入部位(Tcs1-CL58)。
【0098】
Tcs2ライブラリーにおいては、150bpの134,858,060(最小=3,671,674、平均=5,186,848、最大=6,797,994リード/ライン)のリードが得られた。前処理の後、33,251,578のリードが残った。これらのリードを用いたクラスター分析により、26の品種におけるTcs2の174の独立した挿入部位を生成した。このうち、以下に示す19の挿入部位が品種特異的であると考えられた:レモンに特異的な4の挿入部位(Tcs2-CL74、Tcs2-CL88、Tcs2-CL81、およびTcs2-CL99);グレープフルーツに特異的な3の挿入部位(Tcs2-CL52、Tcs2-CL70、およびTcs2-CL77);璃の香に特異的な3の挿入部位(Tcs2-CL79、Tcs2-CL85、およびTcs2-P97);はるひに特異的な3の挿入部位(Tcs2-CL18、Tcs2-CL41、およびTcs2-P100);川野夏橙に特異的な2の挿入部位(Tcs2-CL82およびTcs2-CL105);愛媛果試第28号に特異的な2の挿入部位(Tcs2-CL73およびTcs2-CL68);麗紅に特異的な1の挿入部位(Tcs2-CL83);ならびに媛小春に特異的な1の挿入部位(Tcs2-CL80)。全体として、3つのLTRレトロトランスポゾンファミリーは、26のカンキツ品種のレトロトランスポゾンの挿入により引き起こされる高配列多型を表し、品種特異的配列多型の数を、3つのファミリー中に検出した。
【0099】
さらに、品種特異的挿入多型の候補を、3つのレトロトランスポゾンファミリーのin silico NGS 分析から得た。以下の、品種特異的挿入多型の候補を3つの品種から得た:璃の香における7つの挿入部位;愛媛果試第28号の4つの挿入部位;および媛小春の2つの挿入部位。Tcs1およびTcs2レトロトランスポゾンライブラリーは、CIRE1ライブラリーと比較して、26の品種間の試験においては、品種特異的挿入多型が高頻度の傾向にあった。
【0100】
(2-3.残り5品種における複数の多型と組み合わせた品種特異的DNAマーカーセット)
選択された選択されたマンダリン遺伝資源を繰り返し交配することにより遺伝的背景が類似した残りの5品種においては、単一のPCR断片を含む品種特異的DNA多型を得ることは困難であった。残りの5品種における品種特異的DNAマーカーセットを得るために、InDel断片およびレトロトランスポゾン挿入部位のDNA多型データを、MinimalMarker programを用いて分析した(Fujii et al. 2013)。2または3つのマーカーが、26の品種中の標的を同定するために必要であった。
【0101】
すなわち、26の品種中からのあすみの識別に要求される最小セットは、2つのInDel多型断片(Cp0419の371bpの断片(Cp0419-s)、および、IND214の246bpの断片(IND214-s))であった。特に、あすみは、26の品種中において、これらの2つのInDel多型断片を単独で有しており、これらの2つのInDel多型断片の存在または不在により、被検体があすみであるか否かを判定することが可能である。
【0102】
みはやは、2つの多型挿入部位(Tcs1-P86およびTcs2-CL55)の存在に基づいて同定可能である。あすきは、多型挿入部位(Tcs2-CL25)およびIND235の144bpのPCR断片(IND235-s)に基づいて同定可能である。愛媛果試第48号は、2つの多型挿入部位(Tcs2-CL55およびTcs1-CL26)の存在により同定可能である。甘平は、以下の3つのDNA多型が26の品種からの同定に要求された:Cp0419の371bpのPCR断片(Cp0419-s)、IND265の280bpのPCR断片d(IND265-l)、およびIND44の152bpのPCR断片(IND44-l)。
【0103】
(2-4.品種特異的DNAマーカーおよびPCR検証)
表5に記載された品種特異的DNA多型を最終的に選択し、2%アガロースゲル電気泳動およびC-PAS4を用いた検出に対応するPCRプライマーを設計した。各DNAマーカーのPCR断片が、2%アガロースゲル電気泳動において重ならないように調整した。を除くDNAマーカーのクレメンティンゲノム配列(Wu et al. 2014)における位置を、ミカンゲノムデータベースに対するBLASTサーチ解析を通して決定した。
【0104】
PCR検証を、実際のPCRにおいて各品種についての品種特異的DNAマーカーとして機能し得るか否かを確認することで行った。PCR検証試験を、26の品種間において標的PCR多型断片のみが増幅され得るか否かを決定することで行った。PCR産物を、2%アガロースゲルにおいて電気泳動し、臭化エチジウム染色により可視化した(
図1)。
図1は、品種特異的なDNA多型のPCRによる検証結果を示す図である。
図1中の番号は、表1における植物材料を示している。
【0105】
璃の香、愛媛果試第28号、および媛小春において、IND141-l、Tcs2-CL68、およびTcs2-CL80のためのプライマーセットを、各品種に特異的な単一のPCR多型断片を増幅するために確認した。残りの5品種のために、標的の多型断片の特異的な増幅が可能なように設計し、PCR産物を予測される品種において検出し、上述したDNA多型スクリーニングの結果と一致した。26の品種におけるこれらのDNAマーカーのためのPCR産物の存在または不在を、表6にまとめた。
【0106】
【0107】
(2-5.8つの日本のカンキツ有望品種の品種特異的DNAマーカーセットのマルチプルPCRおよびC-PAS検出)
26のカンキツ品種中の標的を同定するための8つの品種特異的DNAマーカーセットを、単一のDNA多型または複数のDNA多型の組み合わせから作成した。DNA診断は、PCR多型断片の存在または不在に基づいているので、葉緑体ゲノムのrbcL遺伝子を、マルチプレックスPCR実験自体が適切に行われているか否かを決定するためのポジティブDNAマーカーとして用いた。マルチプルPCR断片の均一な増幅を実現するために、各品種特異的DNAマーカーセットに対してプライマー濃度比を最適化した。
【0108】
PCR産物をC-PAS4メンブレンスティックを用いて検出した。PCR溶液 1μLを、1.5mLチューブ中の展開液 20μLに加えた。次いで、C-PAS4メンブレンスティックをこの溶液中に10分浸漬した。実験では、検出結果を青色のバンドとして可視化した。璃の香、愛媛果試第28号、および媛小春については、単一の品種特異的PCR断片およびポジティブDNAマーカーを、マルチプレックスPCRにおいて同時に増幅した。
【0109】
C-PAS検出において、これらの品種のC-PAS4メンブレンスティックには、2つのバンドが検出されたが、他の品種については1つのバンドしか検出されなかった(
図2および3)。
図2および3は、日本の代表的な8つのカンキツ品種のためのC-PAS検出キットによる検出パターンを示す図である。
図2および3中の番号は、表1における植物材料を示している。
図2および3中のNCは、非テンプレートDNAを示す。矢印は、各C-PAS検出キットにおける標的品種を示している。
【0110】
あすみ、みはや、あすき、および愛媛果試第48号について、2つの品種特異的PCR断片およびポジティブDNAマーカーを、マルチプレックスPCRにおいて同時に増幅し、臭化エチジウム染色により可視化した。これらの品種のC-PAS4メンブレンスティックには、3つのバンドが検出されたが、他の品種については1つまたは2つのバンドしか検出されなかった。
【0111】
甘平については、3つの品種特異的PCR断片およびポジティブDNAマーカーを、マルチプレックスPCRにおいて同時に増幅した。この品種のC-PAS4メンブレンスティックには、4つのバンドが検出されたが、他の品種については1~3つのバンドしか検出されなかった。全てのマーカーのDNA多型を表5に示し、2%アガロースゲル電気泳動パターンを
図4および5に示す。
図4および5は、カンキツ有望品種についての品種特異的DNAマーカーのPCR断片の電気泳動パターンを示す図である。
図4および5中の番号は、表1における植物材料を示している。
【0112】
(2-6.カンキツ果皮から単離したゲノムDNAを用いた、品種特異的DNAマーカーのC-PAS検出)
8つの標的品種について開発したC-PAS検出キットを、果実組織から単離したDNAサンプルに適用し、果実の検閲に対する適用可能性を確認した。ゲノムDNAを、DNeasy Plant Mini Kit(Qiagen社製)を用いて果皮組織から単離した。PCRおよびPCR産物の検出を、各C-PAS検出キットに提供された取扱説明書にしたがって行った。
図6は、あすみ、および、璃の香のC-PASキットを用いた、代表的な結果を示す。
図6において、A)はあすみのためのC-PASキットを用いた検出パターンを示し、B)は、璃の香のためのC-PASキットを用いた検出パターンを示す。璃の香、みはや、あすみ、あすき、および甘平のDNAサンプルを、評価に用いた。
図6中、1は璃の香、2はみはや、3はあすみ、4はあすき、5は甘平を示す。
【0113】
あすみのC-PAS検出キットを用いた場合、あすみのみが、rbcL、Cp0419、およびIND214に対応する3つのバンドを示した。一方、残りの品種は、これらのバンドの全ては示さなかった。璃の香のC-PAS検出キットを用いた場合、璃の香のみがrbcLおよびIND141-1に対応する2つのバンドを示した。一方、残りの品種は、rbcLに対応する1つのバンドのみを示した。
【0114】
同様に、残りの標的品種のためのC-PAS検出キットについて、葉および果実組織から単離したDNAサンプル間において、同様の検出パターンの存在を確認した。それゆえに、これらのC-PAS検出キットは、果実の品種識別技術として果実の検閲において使用可能である。
【0115】
(3.甘平の特異的DNAマーカーセットのマルチプルPCRおよびC-PAS検出)
26のカンキツ品種中の甘平を同定するための特異的DNAマーカーセットの他の候補を作成した。葉緑体ゲノムのrbcL遺伝子を、マルチプレックスPCR実験自体が適切に行われているか否かを決定するためのポジティブDNAマーカーとして用いた。PCR混合液を表7に示す組成とし、蒸留水により終量10μLに調整した。
【0116】
【0117】
Tcs2-CL10およびTcs2-CL30のプライマー配列を表8に示す。なお、Tcs2-CL10およびTcs2-CL30のフォワードプライマーは共通である。
【0118】
【0119】
PCRのサイクル条件は、以下のとおりとした:98℃で10秒間活性化した後、98℃で10秒間の変性、62℃で5秒間のアニーリング、および、68℃で1秒間の伸長を30サイクル、ならびに、68℃で10秒間の最終伸長を1サイクル。全ての反応をサーマルサイクラーVeriti200(Thermo Fisher Scientific社製)において行った。4℃にて保管されたPCR産物を、2.0%アガロースゲル(Agarose standard 01; Rikaken社製)において電気泳動し、臭化エチジウムを用いて可視化した。マルチプレックスPCRによるPCR断片の2.0%アガローゲル電気泳動パターンを
図7に示す。
図7は、甘平についての品種特異的DNAマーカーのPCR断片の電気泳動パターンを示す図である。
図7中の番号は、表1における植物材料を示している。
【0120】
PCR産物をC-PAS4メンブレンスティックを用いて検出した。PCR溶液 1μLを、1.5mLチューブ中の展開液 20μLに加えた。次いで、C-PAS4メンブレンスティックをこの溶液中に10分浸漬した。実験では、検出結果を青色のバンドとして可視化した。
【0121】
C-PAS検出において、23番の甘平のC-PAS4メンブレンスティックには、3つのバンドが検出されたが、他の品種については2つ又は1つのバンドしか検出されなかった(
図8)。
図8は、日本の代表的な26のカンキツ品種のためのC-PAS検出キットによる検出パターンを示す図である。
図8中の番号は、表1における植物材料を示しており、27番は滅菌水を示している。26の品種におけるこれらのDNAマーカーのためのPCR産物の存在または不在を、表9にまとめた。
【0122】
【0123】
表9および
図8に示すように、新たに見出したDNAマーカーTcs2-CL10およびTcs2-CL30により、甘平を特定可能であることが示された。
本発明の一態様に係るカンキツの品種の識別方法、識別キット、および、核酸検出デバイスは、果実の品種識別技術として、殊に、税関等の検査現場に導入できる実用可能な技術として、育成者権の保護および食品安全性の確保に貢献することができる。