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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083504
(43)【公開日】2024-06-21
(54)【発明の名称】レンズ鏡筒および撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20210101AFI20240614BHJP
【FI】
G02B7/04 D
G02B7/04 E
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024062129
(22)【出願日】2024-04-08
(62)【分割の表示】P 2022079464の分割
【原出願日】2017-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2016116105
(32)【優先日】2016-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016116106
(32)【優先日】2016-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】木ノ内 有紀
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】風早 聡志
(72)【発明者】
【氏名】瀧田 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】冨田 瑞葵
(57)【要約】
【課題】レンズ鏡筒を小型化させること。
【解決手段】レンズ鏡筒は、第1レンズと、第1レンズを保持し、第1カムフォロアを有する第1筒と、第2レンズと、第2レンズを保持する第2筒と、第1レンズと第2レンズとの間に配置され、第1レンズ及び第2レンズと対向して配置されるフォーカスレンズと、フォーカスレンズを保持するフォーカスレンズ枠と、フォーカスレンズを駆動するアクチュエータと、アクチュエータを保持し、第2カムフォロアを有する第3筒と、第1カムフォロアと係合する第1カム溝と、第2カムフォロアと係合する第2カム溝とを有し、回転可能なカム筒とを備え、第1筒と第3筒は、それぞれ異なる軌跡で光軸方向に移動し、フォーカスレンズ枠の少なくとも一部は第3筒の内周側に配置され、第3筒は、直接、フォーカスレンズ及びフォーカスレンズ枠を保持せず、フォーカスレンズと第1レンズと第2レンズの移動とは独立して移動可能である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1レンズと、
前記第1レンズを保持し、第1カムフォロアを有する第1筒と、
第2レンズと、
前記第2レンズを保持する第2筒と、
前記第1レンズと前記第2レンズとの間に配置され、前記第1レンズ及び前記第2レンズとそれぞれ対向して配置されるフォーカスレンズと、
前記フォーカスレンズを保持するフォーカスレンズ枠と、
前記フォーカスレンズを駆動するアクチュエータと、
前記アクチュエータを保持し、第2カムフォロアを有する第3筒と、
前記第1カムフォロアと係合する第1カム溝と、前記第2カムフォロアと係合する第2カム溝と、を有し、光軸を中心に回転可能なカム筒と、を備え、
前記第1筒と前記第3筒とは、前記第1カム溝及び前記第2カム溝によってそれぞれ異なる軌跡で光軸方向に移動し、
前記フォーカスレンズ枠の少なくとも一部は前記第3筒の内周側に配置され、
前記第3筒は、直接、前記フォーカスレンズ及び前記フォーカスレンズ枠を保持せず、前記フォーカスレンズと前記第1レンズと前記第2レンズの移動とは独立して光軸方向に移動可能である
レンズ鏡筒。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズ鏡筒において、
前記カム筒は、ズーム操作に応じて回転するレンズ鏡筒。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のレンズ鏡筒において、
前記アクチュエータは、前記第3筒に対して前記フォーカスレンズを駆動するレンズ鏡筒。
【請求項4】
請求項3に記載のレンズ鏡筒において、
前記フォーカスレンズ枠が有する係合部と前記アクチュエータが有する軸とは接触しているレンズ鏡筒。
【請求項5】
請求項4に記載のレンズ鏡筒において、
前記係合部は前記第3筒の内周側に位置するレンズ鏡筒。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載のレンズ鏡筒において、
前記アクチュエータが有する軸の端部は前記第3筒の少なくとも一部と接触しているレンズ鏡筒。
【請求項7】
請求項4から請求項6の何れか一項に記載のレンズ鏡筒において、
前記係合部は、前記軸と噛み合うネジを有するレンズ鏡筒。
【請求項8】
請求項4から請求項7の何れか一項に記載のレンズ鏡筒において、
前記軸と噛み合うネジを有するナットを備えるレンズ鏡筒。
【請求項9】
請求項1から請求項8の何れか一項に記載のレンズ鏡筒において、
前記フォーカスレンズ枠と前記第3筒とを光軸方向に移動可能に案内する案内軸と、をさらに備えるレンズ鏡筒。
【請求項10】
請求項1から請求項8の何れか一項に記載のレンズ鏡筒において、
前記フォーカスレンズ枠と前記第3筒とを光軸方向に移動可能に案内する案内軸と、
前記第3筒は光軸方向における物体側の端部にフランジ部と、を有し、
前記フランジ部は前記案内軸を挿通する穴部を有するレンズ鏡筒。
【請求項11】
請求項10に記載のレンズ鏡筒において、
前記フランジ部よりも像面側に前記フォーカスレンズ枠が配置されるレンズ鏡筒。
【請求項12】
請求項4から請求項8の何れか一項に記載のレンズ鏡筒において、
前記第1筒は前記フォーカスレンズ枠と前記第3筒とを光軸方向に移動可能に案内する案内軸を有し、
前記フォーカスレンズ枠は前記アクチュエータの軸部と噛み合う前記係合部と、前記案内軸が挿通される穴部を有し、
前記案内軸の少なくとも一部と前記係合部と前記穴部は前記第3筒の内周側に配置されるレンズ鏡筒。
【請求項13】
請求項9から請求項11の何れか一項に記載のレンズ鏡筒において、
前記案内軸の一方は、前記第1筒に支持されるレンズ鏡筒。
【請求項14】
請求項13に記載のレンズ鏡筒において、
前記案内軸の他方は、調整板に支持され、
前記調整板は、前記第1筒に固定されるレンズ鏡筒。
【請求項15】
請求項9から請求項11の何れか一項に記載のレンズ鏡筒において、
前記案内軸の少なくとも一部は前記第3筒の内周側に配置されるレンズ鏡筒。
【請求項16】
請求項1から請求項15の何れか一項に記載のレンズ鏡筒において、
前記第3筒は直接レンズ及びレンズ保持枠を保持しないレンズ鏡筒。
【請求項17】
請求項1から請求項16の何れか一項に記載のレンズ鏡筒において、
沈胴機構を備えるレンズ鏡筒。
【請求項18】
請求項1から請求項17の何れか一項に記載のレンズ鏡筒を備える撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ鏡筒および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固定レンズ群と変倍レンズ群とフォーカシングレンズ群とからなるズームレンズ鏡筒が知られている(特許文献1参照)。このズームレンズ鏡筒は、鏡筒に支持されたフォーカスレンズ用駆動源とフォーカスレンズ保持枠とが連結され、駆動源の駆動によってフォーカシングレンズ群が光軸方向に移動される構成である。
しかしながら、ズーミング動作において、変倍レンズ保持枠が光軸方向に移動する時に、変倍レンズ保持枠がフォーカスレンズ用駆動源等と干渉しないように、変倍レンズ保持枠と駆動源等との間隔を十分に広くする必要があり、鏡筒の全長が長くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特許第3186543号公報
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様によるレンズ鏡筒は、第1レンズと、前記第1レンズを保持し、第1カムフォロアを有する第1筒と、第2レンズと、前記第2レンズを保持する第2筒と、前記第1レンズと前記第2レンズとの間に配置され、前記第1レンズ及び前記第2レンズとそれぞれ対向して配置されるフォーカスレンズと、前記フォーカスレンズを保持するフォーカスレンズ枠と、前記フォーカスレンズを駆動するアクチュエータと、前記アクチュエータを保持し、第2カムフォロアを有する第3筒と、前記第1カムフォロアと係合する第1カム溝と、前記第2カムフォロアと係合する第2カム溝と、を有し、光軸を中心に回転可能なカム筒と、を備え、前記第1筒と前記第3筒とは、前記第1カム溝及び前記第2カム溝によってそれぞれ異なる軌跡で光軸方向に移動し、前記フォーカスレンズ枠の少なくとも一部は前記第3筒の内周側に配置され、前記第3筒は、直接、前記フォーカスレンズ及び前記フォーカスレンズ枠を保持せず、前記フォーカスレンズと前記第1レンズと前記第2レンズの移動とは独立して光軸方向に移動可能である。
本発明の第2の態様による撮像装置は、第1の態様によるレンズ鏡筒を備える。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本発明の第1の実施の形態によるレンズ交換式のカメラシステムを示した斜視図である。
図2】伸長状態にある交換レンズ鏡筒の一部分についての断面図である。
図3】伸長状態にある交換レンズ鏡筒の一部分についての断面図である。
図4】交換レンズ鏡筒の一部についての分解図である。
図5】交換レンズ鏡筒の一部についての分解図である。
図6】交換レンズ鏡筒の一部についての分解図である。
図7】縮筒状態にある交換レンズ鏡筒の一部分についての断面図である。
図8】本発明の第2の実施の形態によるレンズ交換式のカメラシステムを示した斜視図である。
図9】伸長状態にある交換レンズ鏡筒の一部分についての断面図である。
図10】伸長状態にある交換レンズ鏡筒の一部分についての断面図である。
図11】伸長状態にある交換レンズ鏡筒の一部分についての断面図である。
図12】伸長状態にある交換レンズ鏡筒の一部分についての断面図である。
図13】交換レンズ鏡筒の一部についての分解図である。
図14】交換レンズ鏡筒の一部についての分解図である。
図15】交換レンズ鏡筒の一部についての分解図である。
図16】縮筒状態にある交換レンズ鏡筒の一部分についての断面図である。
図17】縮筒状態にある交換レンズ鏡筒の一部分についての断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
<第1の実施の形態>
図1~7を参照して、レンズ鏡筒の第1の実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態のレンズ鏡筒を交換レンズとして備えるレンズ交換式のカメラシステムを示した斜視図である。カメラシステム1は、カメラボディ100と、カメラボディ100に着脱可能な交換レンズ鏡筒200とを有する。
【0007】
カメラボディ100には、交換レンズ鏡筒200が着脱可能に取り付けられるボディ側レンズマウント101が設けられている。また交換レンズ鏡筒200には、ボディ側のレンズマウント101に対応し、カメラボディ100が着脱可能に取り付けられるレンズ側レンズマウント201が設けられている。交換レンズ鏡筒200がカメラボディ100に装着されると、ボディ側レンズマウント101上に設けられた複数の接点から成る接点群102が、レンズ側レンズマウント201上に設けられた複数の接点から成る接点群202に接続される。接点群102,202は、カメラボディ100から交換レンズ鏡筒200への電力供給、および、カメラボディ100と交換レンズ鏡筒200との信号の送受信に利用される。
【0008】
カメラボディ100内のボディ側レンズマウント101後方には、被写体像を撮像し撮像信号を出力する撮像素子104が設けられる。カメラボディ100の上方には、入力装置たるボタン107が設けられている。ユーザはボタン107を用いてカメラボディ100に撮影指示や撮影条件の設定指示等を行う。なお、ボタン107は、カメラボディ100の複数の箇所に設けられる種々の機能の複数のボタンを代表して表したものである。
【0009】
本実施形態の交換レンズ鏡筒200は、交換レンズ鏡筒200の外周部を覆う第1および第2の筒状部材211a,211bから構成される固定筒211と、第1および第2の筒状部材211a,211bの間に配置されたズーム環205とを有する。交換レンズ鏡筒200は、ユーザによるズーム環205の手動操作により焦点距離が可変に構成された、いわゆる手動ズームレンズである。ユーザがズーム環205を回転させると、交換レンズ鏡筒200の焦点距離は広角側または望遠側に連続的に変化する。つまり交換レンズ鏡筒200の焦点距離は、ズーム環205の操作によって、広角端位置と望遠端位置との間で任意に設定可能である。
【0010】
また、交換レンズ鏡筒200は、後に詳述するように、撮影光学系の全部または一部を保持するレンズ内筒203が固定筒211から伸長する伸長状態と、上記レンズ内筒が固定筒211内に収容される縮筒状態とを呈する縮筒型の鏡筒である。なお、図1では、伸長状態のレンズ内筒203を破線で示している。
【0011】
交換レンズ鏡筒200の伸長状態と縮筒状態との切り替えは、縮筒解除ボタン204とズーム環205との操作によって行われる。すなわち、伸長状態にある交換レンズ鏡筒200は、内筒203が固定筒211から伸長、すなわち突出し、交換レンズ鏡筒200の鏡筒長Lは、L1となっている。この伸長状態では、交換レンズ鏡筒200は、その全ズーム域において、被写体像を良好に撮像素子104に結像することができる。伸長状態から縮筒状態に切り替えるために、縮筒解除ボタン204を押圧操作しながらズーム環205を回転操作することによって、レンズの焦点距離を広角端に移動させるための回転操作位置よりも更に広角側に回転操作する。この更なる回転操作により、内筒203が固定筒211内に収容され、交換レンズ鏡筒200は、縮筒状態となる。この縮筒状態での鏡筒長L2は、伸長状態時の鏡筒長L1よりも短い。縮筒解除ボタン204は、レンズが広角端から望遠端の間に存在する場合には、縮筒状態への移行を物理的に禁止させる、機械的なロック機能を果たす構成の一部である。
【0012】
交換レンズ鏡筒200が縮筒状態となると、縮筒解除ボタン204を押圧操作しながらでなければズーム環205を回転操作することができない。すなわち、縮筒解除ボタン204は、縮筒状態から伸長状態に移行することを物理的に禁止させる、機械的なロック機能を果たす構成の一部である。
【0013】
このように、ユーザは、伸長状態にある交換レンズ鏡筒200を縮筒状態にするためには、広角端に対応した回転操作位置に存在するズーム環205を、縮筒解除ボタン204を押圧操作しながら更に広角側へ回転操作する必要がある。また逆に、ユーザは、縮筒状態にある交換レンズ鏡筒200を伸長状態にするためには、ズーム環205を、縮筒解除ボタン204を押圧操作しながら望遠側へ回転操作する必要がある。
【0014】
図2,3は、伸長状態にある交換レンズ鏡筒200の一部分についての断面図である。図2は、メインガイドバー261およびサブガイドバー262が表れる断面について表した図であり、図3は、メインガイドバー261およびAF用ステッピングモータ270が表れる断面について表した図である。図4-6は、交換レンズ鏡筒200の一部についての分解図である。
【0015】
図2に示すように、交換レンズ鏡筒200は、固定筒211と、ズーム環205と、固定筒211の内周に嵌合するカム筒212と、カム筒212の内周に嵌合する第1群レンズ室220と、ステッピングモータ(STM)取付筒230と、AF群レンズ室240と、第2群レンズ室250とを有する。
本実施の形態にあっては、第1群レンズ室220が伸長状態時に、固定筒211から突出、すなわち伸長する図1の内筒203に相当する。また、図2,3において、左側を被写体側とし、右側を撮像素子側とする。なお、第1群レンズ室220よりも被写体側に、他のレンズが存在してもよい。また、第2群レンズ室250よりも撮像素子側に、他のレンズが存在してもよい。
【0016】
図2に示すように、上述のように固定筒211の第1および第2の筒状部材211aと211bとの間にズーム環205が配置され、このズーム環205はカム筒212に固定されている。
こうしてカム筒212は、ズーム環205の回転操作によって回転され、内周側に第1カム溝212aおよび第2カム溝212bが設けられている。
【0017】
図2,4に示すように、第1群レンズ室220は、円筒形状を呈する筒部221と、筒部221の被写体側で第1群レンズ223を保持する中空円盤状のレンズ保持部222とを有する。レンズ保持部222は、筒部221の左端に固定されている。筒部221の外周には、カム筒212の第1カム溝212aと嵌合するカムフォロア221aが設けられ、第1群レンズ室220はカム筒212の回転に伴い直進移動される。すなわち第1群レンズ室220は、ユーザがズーム環205を回転させると、光軸OA方向に移動する。
【0018】
レンズ保持部222には、STM取付筒230およびAF群レンズ室240を光軸OA方向に案内するメインガイドバー261およびサブガイドバー262が取り付けられている。メインガイドバー261およびサブガイドバー262は、光軸OAを挟んで互いに対向する位置の近傍に配置され、被写体側の端部がレンズ保持部222に取り付けられており、それぞれ光軸OA方向に沿って撮像素子側に向かって延在する(図4-6参照)。図4に示すように、第1群レンズ室220の筒部221の右端、すなわち撮像素子側の端部には、一対のネジ穴221b,221cが設けられ、メインガイドバー調整板263が不図示のビスと一対のネジ穴221b,221cとによって筒部221の右端に取り付けられている。メインガイドバー261の撮像素子側の端部は、メインガイドバー調整板263に取り付けられている。こうして、メインガイドバー261は、その一端がレンズ保持部222によって支持され、その他端がメインガイドバー調整板263によって支持されている。メインガイドバー調整板263の筒部221への取付位置を調整することで、メインガイドバー261を光軸OAに平行にすることができる。また、サブガイドバー262の撮像素子側の端部は、支持、すなわち固定されていない。
【0019】
STM取付筒230は、メインガイドバー261およびサブガイドバー262を介して第1群レンズ室220内に取り付けられた部材であり、図4-6に示すように、AF用ステッピングモータ270が取り付けられている。STM取付筒230は、部分円筒形状を呈する筒部235と、筒部235の一端面に取り付けられたフランジ状の第1のガイド板231と、第1のガイド板231に対して光軸OA方向に離間した第2のガイド板232と、筒部235に取り付けられ第1および第2のガイド板231、232を互いに連結する連結部233と、筒部235に取り付けられたSTM取付部234と、を有する。連結部233および筒部235の外周には、カム筒212の第2カム溝212bと嵌合するカムフォロア233a,235aが設けられ、STM取付筒230はカム筒212の回転に伴い直進移動される。すなわちSTM取付筒230は、ユーザがズーム環205を回転させて交換レンズ鏡筒200の焦点距離を変化させると、光軸OA方向に移動する。
【0020】
AF用ステッピングモータ270は、STM取付部234にネジなどによって固定される。第1のガイド板231は、メインガイドバー261が挿通される挿通孔231aと、サブガイドバー262が挿通される挿通孔231bとを有する。また、第2のガイド板232は、メインガイドバー261が挿通される挿通孔232aを有する。
【0021】
STM取付筒230は、メインガイドバー261およびサブガイドバー262に対して光軸OA方向に沿って摺動可能であり、メインガイドバー261およびサブガイドバー262に案内されて、第1群レンズ室220に対して光軸OA方向に沿って移動可能である。
【0022】
AF用ステッピングモータ270は、出力軸にリードスクリュー271が直結され、フォーカシング動作およびズーミング動作に起動される。
【0023】
図2に示すように、AF群レンズ室240は、メインガイドバー261およびサブガイドバー262を介して第1群レンズ室220に取り付けられ、AF群レンズ241を保持している。なお、AF群レンズ241は、フォーカシングレンズであると共に、第1群レンズ223と組み合わせてズーミングレンズを構成する。
【0024】
AF群レンズ室240には、メインガイドバー261が挿通される挿通孔240a,240bと、サブガイドバー262が挿通される半円状の孔240cとが設けられる。AF群レンズ室240は、メインガイドバー261およびサブガイドバー262によって光軸OA方向に沿って摺動可能に案内される。
【0025】
図3,4に示すように、AF群レンズ室240には、ラック部242が取り付けられている。ラック部242には、AF用ステッピングモータ270のリードスクリュー271と噛み合うネジが刻設されている。こうして、STM取付筒230に取り付けられたAF用ステッピングモータ270とAF群レンズ室240とは、リードスクリュー271とラック部242との噛み合いによって、互いに連結されている。
従って、AF群レンズ室240は、AF用ステッピングモータ270が回転駆動されると、STM取付筒230に対して光軸OA方向に移動されると共に、上述のようにズーム環205が回転操作されると、STM取付筒230と一体に光軸OA方向に移動される。
【0026】
このように、本実施の形態では、AF用ステッピングモータ270によって駆動されるAF群レンズ室240とAF用ステッピングモータ270が取り付けられるSTM取付筒230とが同じメインガイドバー261で案内されて光軸OA方向に移動するように構成されている。したがって、メインガイドバー調整板263の筒部221への取付位置の調整によってメインガイドバー261の光軸OAに対する傾きを調整することで、AF用ステッピングモータ270およびAF群レンズ室240のメインガイドバー261の延在方向に沿った移動方向も調整される。
これにより、リードスクリュー271とラック部242との噛み合いが安定する。すなわち、リードスクリュー271とラック部242との噛み合いに影響を与えることなくメインガイドバー261の光軸OAに対する傾きを調整できるので、フォーカス制御の精度が安定する。たとえば、交換レンズ鏡筒200の光学性能向上のために、メインガイドバー261を光軸OAに対して意図的に傾けることでAF群レンズ241の姿勢を調整することがある。本実施の形態では、メインガイドバー261を光軸OAに対して傾けても、上述したようにフォーカス制御の精度が安定するので、交換レンズ鏡筒200の光学性能向上に寄与する。
【0027】
図2に示すように、第2群レンズ室250は、第2群レンズ251を保持するレンズ室である。本実施の形態にあっては、第2群レンズ室250は固定されている。図2,3に示すように、第2群レンズ室250は、STM取付筒230およびAF群レンズ室240と離間している。
【0028】
---伸長状態における交換レンズ鏡筒200の各部の動作について---
先ず、交換レンズ鏡筒200のズーミング動作を説明する。図2において、交換レンズ鏡筒200は、伸長状態では、ズーム環205が回転操作されると、カム筒212が回転されるので、第1群レンズ室220およびSTM取付筒230がそれぞれ第1および第2カム溝212a,212bに従って、光軸OA方向に移動する。第1群レンズ室220の移動に伴い、第1群レンズ223が光軸方向に移動すると同時に、STM取付筒230の移動に伴い、AF用ステッピングモータ270とAF群レンズ室240との連結によってAF群レンズ241も光軸方向に移動する。こうして、焦点位置、即ちピント位置が保たれた状態で変倍動作、即ちズーミング動作が実行される。
なお、本実施の形態の交換レンズ鏡筒200は、上述のように、ズーム環205の回転操作によって、第1群レンズ223とAF群レンズ241とを相対的に光軸方向に移動して、ピント位置不変の状態で、変倍動作を行うものであった。しかしながら、このようなズーム環205の回転操作による第1群レンズ223及びAF群レンズ241の光軸方向への移動の際に、AF用ステッピングモータ270によってAF群レンズ241をSTM取付筒230に対して光軸OAに移動されてもよい。これによって、ズーミング動作時における焦点位置の変動を高精度に抑制することができる。
【0029】
次に、交換レンズ鏡筒200のフォーカシング動作を説明する。交換レンズ鏡筒200は、伸長状態では、図3に示したAF用ステッピングモータ270が駆動されると、AF群レンズ室240が、上述したように、STM取付筒230に対して光軸OA方向に沿って移動され、AF群レンズ241も同方向に移動されて、焦点位置、即ち合焦位置が変更される。
【0030】
なお、伸長状態では、焦点距離や合焦位置に関わらず、AF群レンズ241と第2群レンズ251とが干渉することはない。
【0031】
---伸長状態から縮筒状態に移行する場合---
次に、交換レンズ鏡筒200の縮筒動作を説明する。伸長状態から縮筒状態にすべく、図1に示した縮筒解除ボタン204を押圧操作しながらズーム環205を所定の方向に回転操作すると、図2に示した第1群レンズ室220とSTM取付筒230とがそれぞれ第1および第2カム溝212a,212bに従って第2群レンズ室250の方に移動する。なお、上述のSTM取付筒230の移動時には、STM取付筒230に取り付けられたAF用ステッピングモータ270に連結されたAF群レンズ室240も、STM取付筒230と一体的に移動する。
【0032】
そして、縮筒解除ボタン204を押圧操作しながら、さらにズーム環205を前記所定の方向に回転操作すると、STM取付筒230が停止した状態で、第1群レンズ室220のみが更に同方向に所定量だけ移動して、縮筒動作が終了する。こうして交換レンズ鏡筒200は、図7に示した縮筒状態となる。なお、STM取付筒230が停止すると、AF用ステッピングモータ270とAF群レンズ室240との連結のためAF群レンズ室240も停止する。
【0033】
図7に示した交換レンズ鏡筒200の縮筒状態では、第1群レンズ室220のレンズ保持部222とSTM取付筒230の第1のガイド板231との間隔が、伸長状態の時の間隔に比べて小さくなる。また、第1群レンズ室220のレンズ保持部222と第2群レンズ室250との間隔が、伸長状態の時の間隔に比べて小さくなる。この状態では、第1群レンズ室220が固定筒211内に収容されている。
【0034】
なお、縮筒状態では、AF群レンズ241の位置に関わらず、AF群レンズ241と第2群レンズ251とは干渉しない。
【0035】
---縮筒状態から伸長状態に移行する場合---
次に、交換レンズ鏡筒200の伸長動作を説明する。縮筒状態から伸長状態にすべく、図1に示した縮筒解除ボタン204を押圧操作しながらズーム環205を、縮筒動作時とは逆方向に回転操作すると、図7に示した第1群レンズ室220が、縮筒動作時とは逆方向、すなわち第2群レンズ室250から離れる方向に移動し、図2または図3に示した伸長状態に復帰する。
【0036】
上述した第1の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)交換レンズ鏡筒200は、AF群レンズ241を保持するAF群レンズ室240と、AF群レンズ室240に連結し、AF群レンズ室240を光軸OA方向に駆動するAF用ステッピングモータ270と、AF用ステッピングモータ270が取り付けられるSTM取付筒230と、AF群レンズ室240とSTM取付筒230とを光軸OA方向に移動可能に案内するメインガイドバー261と、を備える。
AF用ステッピングモータ270によって駆動されるAF群レンズ室240とAF用ステッピングモータ270が取り付けられるSTM取付筒230とが同じメインガイドバー261で案内されて光軸OA方向に移動するように構成されているので、リードスクリュー271とラック部242との噛み合いが安定し、フォーカス制御の精度が安定する。
【0037】
(2)交換レンズ鏡筒200は、メインガイドバー261が固定された第1群レンズ室220を備える。第1群レンズ室220は、ズーム時に光軸OA方向に移動する。これにより、AF群レンズ室240とSTM取付筒230とを、光軸OA方向に第1群レンズ室220に対して、精度よく移動することができる。
【0038】
(3)交換レンズ鏡筒200は、ズーム時にOA光軸を回転中心として回動されるカム筒212を更に備える。第1群レンズ室220は、交換レンズ鏡筒200に含まれる第1群レンズ223を保持する。STM取付筒230は、カム筒212によって光軸OA方向に移動されるカムフォロア233aを有し、第1群レンズ室220は、カム筒212によって光軸OA方向に移動されるカムフォロア221aを有する。
これにより、縮筒時に第1群レンズ室220とSTM取付筒230とを近づけることができるので、縮筒状態における鏡筒長Lを短縮できる。したがって、交換レンズ鏡筒200を小型化できる。
【0039】
(4)交換レンズ鏡筒200は、メインガイドバー261が固定された第1群レンズ室220と、ズーム時に光軸OAを回転中心として回動されるカム筒212と、を更に備える。メインガイドバー261は、光軸OA方向に沿って伸びる軸部材を有する。第1群レンズ室220は、メインガイドバー261の一端を固定するレンズ保持部222および筒部221と、メインガイドバー261の他端を固定するメインガイドバー調整板263とを有する。筒部221は、光軸OAを中心とした円筒形状であり、その内周側にSTM取付筒230が配置される。メインガイドバー調整板263は、光軸OAと略直交する方向に沿って配置される板部材であり、筒部221に対して固定される。
これにより、変倍動作およびフォーカシング動作における、第1群レンズ223に対するAF群レンズ241の移動方向を適切に調整できるので、交換レンズ鏡筒200の光学性能を向上できる。
【0040】
(5)交換レンズ鏡筒200は、少なくとも第1群レンズ室220を光軸OA方向に移動して交換レンズ鏡筒200の全長を短くするカム筒212およびカム筒212の第1カム溝212aと嵌合するカムフォロア221aを更に備える。カム筒212およびカム筒212の第1カム溝212aと嵌合するカムフォロア221aは、第1群レンズ室220の光軸OA方向への移動によってメインガイドバー261をSTM取付筒230及びAF群レンズ室240に対して、移動させる。
これにより、縮筒時に第1群レンズ室220とSTM取付筒230とを近づけることができるので、縮筒状態における鏡筒長Lを短縮できる。したがって、交換レンズ鏡筒200を小型化できる。
【0041】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
(変形例1)
AF用ステッピングモータ270の代わりに、他の直流モータや超音波モータを使用してもよい。また、レンズ群も第1群レンズ223を構成するレンズ枚数と、AF群レンズ241を構成するレンズ枚数と、第2群レンズ251を構成するレンズ枚数は、図示例の枚数に限らず、増加もしくは減少することができる。
【0042】
(変形例2)
以上の第1の実施の形態のカメラシステム1は、カメラの不使用時にレンズ鏡筒の長さが短くなる縮筒型交換レンズを備えるカメラシステムであった。第1の実施の形態の変形例に係るカメラは、レンズ鏡筒がカメラボディに着脱不可能に取り付けられた沈胴式カメラである。沈胴式カメラは、カメラの不使用時にレンズ鏡筒の全体または一部がカメラボディ内に収容され、カメラ使用時にレンズ鏡筒がカメラボディから突出する機構を有するものである。
変形例2に係る沈胴式カメラと上述の実施の形態の縮筒型交換レンズ鏡筒との主な相違点は、沈胴式カメラは、図2において、STM取付筒230とAF群レンズ室240と第2群レンズ室250等がカメラボディ内に内蔵され、かつ、固定筒211とカム筒212が省略され、第1群レンズ室220およびSTM取付筒230が不図示のアクチュエータによってそれぞれ光軸方向に移動されることである。なお、カム筒212が不図示のアクチュエータによって駆動されることで、第1群レンズ室220およびSTM取付筒230が光軸方向に移動されるように構成されていてもよい。
【0043】
沈胴式カメラは、使用時には、第1群レンズ室220がカメラボディから突出され、この状態で、上述の実施の形態の縮筒型交換レンズ鏡筒200と同様に、ズーミング動作およびフォーカシング動作が行われる。
他方、沈胴式カメラは、沈胴動作時には、第1群レンズ室220およびSTM取付筒230が不図示のアクチュエータによって光軸方向に第2群レンズ室250の方に向かって移動される。STM取付筒230の移動は途中で停止するが、その後も、不図示のアクチュエータによる駆動によって、第1群レンズ室220は、そのレンズ保持部222とSTM取付筒230の第1のガイド板231との間隔が小さくなるようにSTM取付筒230に接近する。これによって、第1群レンズ室220は、使用時にはカメラボディから突出されていたが沈胴時には、その突出量が減少し、または略突出しなくなる。
【0044】
(変形例3)
上述した実施の形態では、第2群レンズ室250は固定されていたが、光軸OA方向に移動可能に構成されていてもよい。
【0045】
(変形例4)
上述した実施の形態では、図2,3,7において、左側を被写体側とし、右側を撮像素子側としたが、左側を撮像素子側とし、右側を被写体側としてもよい。
【0046】
(変形例5)
上述した実施の形態では、AF群レンズ室240には、ラック部242が取り付けられていた。ラック部242には、AF用ステッピングモータ270のリードスクリュー271と噛み合うネジが刻設されていた。しかし、ラック部242に代えて、リードスクリュー271と噛み合うネジが刻設されたナット部をAF群レンズ室240に設けてもよい。
【0047】
上述した本発明の第1の実施の形態は、以下の態様も含む。
(1)第1の態様によるレンズ鏡筒は、第1レンズを保持する第1レンズ保持部材と、第1レンズ保持部材に連結し、第1レンズ保持部材を光軸方向に駆動する駆動源と、駆動源が取り付けられる取付部材と、第1レンズ保持部材と取付部材とを光軸方向に移動可能に案内するガイド部材と、を備える。
(2)第2の態様は、第1の態様によるレンズ鏡筒において、ガイド部材が固定された固定部材を備え、固定部材は、ズーム時に光軸方向に移動する。
(3)第3の態様は、第2の態様によるレンズ鏡筒において、ズーム時に光軸を回転中心として回動されるカム筒を更に備え、固定部材は、レンズ鏡筒に含まれる他のレンズを保持し、取付部材は、カム筒によって光軸方向に移動される取付部材カムフォロアを有し、固定部材は、カム筒によって光軸方向に移動される固定部材カムフォロアを有する。
(4)第4の態様は、第1から第3のいずれかの態様によるレンズ鏡筒において、ガイド部材が固定された固定部材と、ズーム時に光軸を回転中心として回動されるカム筒と、を更に備え、ガイド部材は、光軸方向に沿って伸びる軸部材を有し、固定部材は、軸部材の一端を固定する第1固定部材と、軸部材の他端を固定する第2固定部材とを有し、第1固定部材は、光軸を中心とした円筒形状であり、その内周側に取付部材が配置され、第2固定部材は、光軸と略直交する方向に沿って配置される板部材であり、第1固定部材に対して固定される。
(5)第5の態様は、第1から4のいずれかの態様によるレンズ鏡筒において、ガイド部材が固定された固定部材と、ズーム時に光軸を回転中心として回動されるカム筒と、を更に備え、取付部材は、カム筒によって光軸方向に移動される取付部材カムフォロアを有し、取付部材は、ガイド部材による光軸方向への案内と、カム筒と取付部材カムフォロアとの係合とにより、光軸方向に移動する。
(6)第6の態様は、第2から5のいずれかの態様によるレンズ鏡筒において、少なくとも固定部材を光軸方向に移動してレンズ鏡筒の全長を短くする沈胴機構を更に備え、沈胴機構は、固定部材の光軸方向への移動によってガイド部材を取付部材及び第1レンズ保持部材に対して、移動させる。
(7)第7の態様による光学機器は、第1から6のいずれかの態様によるレンズ鏡筒を備える。
【0048】
<第2の実施の形態>
図8~17を参照して、レンズ鏡筒の第2の実施の形態について説明する。
図8は、本実施の形態のレンズ鏡筒を交換レンズとして備えるレンズ交換式のカメラシステムを示した斜視図である。カメラシステム1は、カメラボディ100と、カメラボディ100に着脱可能な交換レンズ鏡筒200Aとを有する。
【0049】
カメラボディ100には、交換レンズ鏡筒200が着脱可能に取り付けられるボディ側レンズマウント101が設けられている。また交換レンズ鏡筒200Aには、ボディ側のレンズマウント101に対応し、カメラボディ100が着脱可能に取り付けられるレンズ側レンズマウント201が設けられている。交換レンズ鏡筒200Aがカメラボディ100に装着されると、ボディ側レンズマウント101上に設けられた複数の接点から成る接点群102が、レンズ側レンズマウント201上に設けられた複数の接点から成る接点群202に接続される。接点群102,202は、カメラボディ100から交換レンズ鏡筒200Aへの電力供給、および、カメラボディ100と交換レンズ鏡筒200Aとの信号の送受信に利用される。
【0050】
カメラボディ100内のボディ側レンズマウント101後方には、被写体像を撮像し撮像信号を出力する撮像素子104が設けられる。カメラボディ100の上方には、入力装置たるボタン107が設けられている。ユーザはボタン107を用いてカメラボディ100に撮影指示や撮影条件の設定指示等を行う。
【0051】
本実施形態の交換レンズ鏡筒200Aは、交換レンズ鏡筒200Aの外周部を覆う第1および第2の筒状部材211a、211bから構成される固定筒211と、第1および第2の筒状部材211a、211bの間に配置されたズーム環205とを有する。交換レンズ鏡筒200Aは、ユーザによるズーム環205の手動操作により焦点距離が可変に構成された、いわゆる手動ズームレンズである。ユーザがズーム環205を回転させると、交換レンズ鏡筒200Aの焦点距離は広角側または望遠側に連続的に変化する。つまり交換レンズ鏡筒200Aの焦点距離は、ズーム環205の操作によって、広角端位置と望遠端位置との間で任意に設定可能である。
【0052】
また、交換レンズ鏡筒200Aは、後に詳述するように、撮影光学系の全部または一部を保持するレンズ内筒203が固定筒211から伸長する伸長状態と、上記レンズ内筒が固定筒211内に収容される縮筒状態とを呈する縮筒型の鏡筒である。なお、図8では、伸長状態のレンズ内筒203を破線で示している。
【0053】
交換レンズ鏡筒200Aの伸長状態と縮筒状態との切り替えは、縮筒解除ボタン204とズーム環205との操作によって行われる。すなわち、伸長状態にある交換レンズ鏡筒200Aは、内筒203が固定筒211から伸長、すなわち突出し、交換レンズ鏡筒200Aの全長Lは、L1となっている。この伸長状態では、交換レンズ鏡筒200Aは、被写体像を良好に撮像素子104に結像することができ、カメラシステム1は撮影可能な状態である。伸長状態から縮筒状態に切り替えるために、縮筒解除ボタン204を押圧操作しながらズーム環205を回転操作することによって、レンズの焦点距離を広角端に移動させるための回転操作位置よりも更に広角端より大きな回転角度位置に回転操作する。この更なる回転操作により、内筒203が固定筒211の内周側に収容され、交換レンズ鏡筒200Aは、縮筒状態となる。この縮筒状態での鏡筒長L2は、伸長状態時の長さL1よりも短く、カメラシステム1は撮影不可の状態である。交換レンズ鏡筒200Aの焦点距離が広角端から望遠端の間に存在する場合には、縮筒解除ボタン204を押圧操作しながらズーム環205を回転操作しない限り、ズーム環205は広角端または望遠端より大きな回転角度位置への回転操作は禁止される。つまり、縮筒解除ボタン204は、伸長状態から縮筒状態への移行を物理的に禁止させる、機械的なロック機能を果たす構成の一部である。
【0054】
一方、交換レンズ鏡筒200Aが縮筒状態となると、縮筒解除ボタン204を押圧操作しながらでなければズーム環205を広角端と望遠端との間の回転角度位置に回転操作することができない。すなわち、縮筒解除ボタン204は、縮筒状態から伸長状態に移行することも物理的に禁止させる、機械的なロック機能を果たす構成の一部である。
【0055】
このように、ユーザは、伸長状態にある交換レンズ鏡筒200Aを縮筒状態にするためには、広角端に対応した回転操作位置に存在するズーム環205を、縮筒解除ボタン204を押圧操作しながら更に大きな回転角度位置へ回転操作する必要がある。また逆に、ユーザは、縮筒状態にある交換レンズ鏡筒200Aを伸長状態にするためには、ズーム環205を、縮筒解除ボタン204を押圧操作しながら広角端から望遠側との間の回転角度位置へ回転操作する必要がある。
【0056】
図9-12は、伸長状態にある交換レンズ鏡筒200Aの一部分についての断面図である。図9,10は、メインガイドバー261およびサブガイドバー262が表れる断面について表した図であり、図11,12は、メインガイドバー261およびAF用ステッピングモータ270が表れる断面について表した図である。なお、図9,11は、AF群レンズ241が無限遠距離に合焦する位置に移動した状態を示し、図10,12は、AF群レンズ241が至近距離に合焦する位置に移動した状態を示す。図13-15は、交換レンズ鏡筒200Aの一部についての分解図である。
【0057】
図9-12に示すように、交換レンズ鏡筒200Aは、固定筒211と、ズーム環205と、固定筒211の内周に嵌合するカム筒212と、カム筒212の内周に嵌合する第1群レンズ室220と、ステッピングモータ(STM)取付筒230と、AF群レンズ室240と、第2群レンズ室250とを有する。
本実施の形態にあっては、第1群レンズ室220が伸長状態時に、固定筒211から被写体側に突出、すなわち伸長する図8の内筒203に相当する。また、図9-12、14-17において、左側を被写体側とし、右側を撮像素子側とする。図13においては、右側を被写体側とし、左側を撮像素子側とする。なお、第1群レンズ室220よりも被写体側に、他のレンズが存在してもよい。また、第2群レンズ室250よりも撮像素子側に、他のレンズが存在してもよい。
【0058】
図9,13に示すように、上述のように固定筒211の第1および第2の筒状部材211aと211bとの間にズーム環205が配置され、第1の筒状部材211aと第2の筒状211bとに対して、ズーム環205は回転操作が可能である。このズーム環205はカム筒212に直進キーで係合することにより一体となって回転可能かつ相対的に直進可能になっている。
こうしてカム筒212は、図8に示すズーム環205の回転操作によって回転され、内周側にカム溝212aが設けられている。
【0059】
図9,13に示すように、第1群レンズ室220は、円筒形状を呈する筒部221と、筒部221の被写体側で第1群レンズ223を保持する中空円盤状のレンズ保持部222とを有する。レンズ保持部222は、筒部221の被写体側端部に固定されている。筒部221の外周には、カム筒212のカム溝212aと嵌合するカムフォロア221aが設けられる。筒部221は、図示しない直進案内部材により光軸回りの回転を規制されており、カム筒212が回転すると、筒部221はカム溝212aとカムフォロワ221aとの係合及び直進案内部材により光軸方向に直進移動される。
【0060】
レンズ保持部222には、STM取付筒230およびAF群レンズ室240を光軸OA方向に案内するメインガイドバー261およびサブガイドバー262が取り付けられている。メインガイドバー261およびサブガイドバー262は、それぞれ光軸OA方向に沿って配置される軸状の部材であり、光軸OAを挟んで互いに対向する位置の近傍に配置され、被写体側の端部がレンズ保持部222に取り付けられており、それぞれ光軸OA方向に沿って撮像素子側に向かって延在する(図13-15参照)。図9に示すように、第1群レンズ室220の筒部221の右端、すなわち撮像素子側の端部には、光軸OAと直交する方向に配置された板状のメインガイドバー調整板263が取り付けられている。メインガイドバー261の撮像素子側の端部は、メインガイドバー調整板263に取り付けられている。メインガイドバー調整板263には、メインガイドバー261の端部が固定されるメインガイドバー固定穴と、メインガイドバー調整板263を筒部221に固定するためのネジ穴と、が形成されている。メインガイドバー調整板263を光軸OA方向から見た場合の形状は、略三角形状であり、外周側の一辺は筒部221の外周面に沿うように円弧状に湾曲している。メインガイドバー261は、その一端がレンズ保持部222によって支持され、その他端がメインガイドバー調整板263によって支持されている。メインガイドバー調整板263の筒部221への取付位置を調整することで、メインガイドバー261の光軸OAに対する角度を調整することができる。また、サブガイドバー262の撮像素子側の端部は、支持、すなわち固定されていない。
【0061】
STM取付筒230は、メインガイドバー261およびサブガイドバー262を介して第1群レンズ室220内で光軸OA方向に移動可能に保持された部材であり、図13-15に示すように、AF用ステッピングモータ270が取り付けられている。図9,13に示すように、STM取付筒230は、光軸OA方向に離間した第1および第2のガイド板231、232と、第1および第2のガイド板231、232を互いに連結する連結部233と、第1のガイド板231に固定されたSTM取付部234とを有する。AF用ステッピングモータ270は、STM取付部234にネジなどによって固定される。第1のガイド板231は、メインガイドバー261が挿通される挿通孔231aと、サブガイドバー262が挿通される挿通孔231bとを有する。また、第2のガイド板232は、メインガイドバー261が挿通される挿通孔232aを有する。光軸OA方向から見た際に、挿通孔231a、232aは丸穴形状であり、メインガイドバー261の外周面と略同じ形状である。光軸OA方向から見た際に、挿通孔231bは光軸OAを中心とする円の法線方向に沿って伸びる楕円形状またはU字穴形状であり、サブガイドバー262の外周面の2点と接する。このように、STM取付筒230は、メインガイドバー261に沿って直進可能に嵌合され、かつ、光軸と直交する面上でメインガイドバー262を回転中心とした回転をサブガイドバー262により防止されている。
【0062】
STM取付筒230は、メインガイドバー261およびサブガイドバー262に対して光軸OA方向に沿って摺動可能であり、メインガイドバー261およびサブガイドバー262に案内されて、第1群レンズ室220に対して光軸OA方向に沿って移動可能である。
【0063】
図9に示すように、第1群レンズ室220およびSTM取付筒230の撮像素子側には、第2群レンズ室250が配置されている。第2群レンズ室250は、第2群レンズ251を保持するレンズ室である。本実施の形態にあっては、第2群レンズ室250は交換レンズ鏡筒200A内での光軸方向の位置を固定されている。一方、第1群レンズ室220は、光軸方向に移動可能であり、縮筒状態では第2群レンズ室250に近づく方向に移動する。図16-17に示すように、伸筒状態から縮筒状態に変化する際、第1群レンズ室220は第2群レンズ室250に近づき、縮筒状態では、第1群レンズ室220の後端に位置するメインガイドバー調整板263よりも第2群レンズ室250の少なくとも一部が被写体側に位置するようになっている。第2群レンズ室250の前端、すなわち被写体側の端部には、後述するように縮筒状態でSTM取付筒230の第2のガイド板232の後端面、すなわち撮像素子側の端面と当接する当接部252が設けられている。図9-12に示すように、伸長状態では、当接部252は、STM取付筒230の第2のガイド板232の後端面と離間している。
【0064】
図9に示すように、STM取付筒230の第1のガイド板231と第1群レンズ室220のレンズ保持部222との間には、メインガイドバー261と同軸に配置されたコイルバネ281とサブガイドバー262と同軸に配置されたコイルバネ282とが配置されている。コイルバネ281,282は、レンズ保持部222と第1のガイド板231とが離れる方向に常時付勢する。このように、コイルバネ281,282が常時付勢することにより、STM取付筒230が第1群レンズ室220のメインガイドバー調整板263または第2群レンズ室250の当接部252に当接されて安定する。
【0065】
AF用ステッピングモータ270は、出力軸にリードスクリュー271が直結され、少なくともフォーカシング動作時に起動されてリードスクリュー271が回転駆動される。AF用ステッピングモータ270はズーミング動作時または縮筒/伸筒動作時にも起動されることとしてもよい。
【0066】
図9に示すように、AF群レンズ室240はAF群レンズ241を保持しており、AF群レンズ室240はメインガイドバー261およびサブガイドバー262を介して第1群レンズ室220に保持されている。なお、AF群レンズ241は、合焦時に移動するフォーカシングレンズであると共に、第1群レンズ223と組み合わせてズーミングレンズを構成する。すなわち、AF群レンズ241は、後に詳述するようにAF用ステッピングモータ270によって、フォーカシング動作時には単独で光軸OA方向に移動され、ズーミング動作時には、第1群レンズ223と共に光軸OA方向に移動される。なお、AF群レンズ241はフォーカシングレンズである必要は無く、ズーム時または縮筒/伸筒動作時に移動するレンズであってもよい。
【0067】
AF群レンズ室240には、メインガイドバー261が挿通される挿通孔240a,240bと、サブガイドバー262が挿通される半円状の孔240cとが設けられる。AF群レンズ室240は、メインガイドバー261およびサブガイドバー262によって光軸OA方向に沿って摺動可能に案内される。
【0068】
図11,13に示すように、AF群レンズ室240には、ラック部242が取り付けられている。ラック部242には、AF用ステッピングモータ270のリードスクリュー271と噛み合うネジが刻設されている。こうして、STM取付筒230に取り付けられたAF用ステッピングモータ270とAF群レンズ室240とは、リードスクリュー271とラック部242との噛み合いによって、互いに連結されている。AF用ステッピングモータ270のリードスクリュー271が回転駆動されると、ラック部242がリードスクリュー271に噛み合いながら光軸方向に移動する。ラック部242はAF群レンズ室240に取り付けられており、また、AF群レンズ室240はメインガイドバー261およびサブガイドバー262に直進案内されているので、ラック部242が光軸方向に移動することによりAF群レンズ室240も光軸方向に沿って移動する。
【0069】
なお、上述したように、伸長状態では、STM取付筒230は、コイルバネ281,282によってメインガイドバー調整板263に当接する位置に保持されているので、STM取付筒230と第1群レンズ室220との相対位置は不変である。したがって、伸長状態では、フォーカシング動作時にAF用ステッピングモータ270が駆動されると、AF群レンズ室240は、図11に示す無限位置と図12に示す至近位置との間を、第1群レンズ223および後述の第2群レンズ251に対して光軸OA方向に沿って駆動され、合焦位置を変更する。
【0070】
---伸長状態における交換レンズ鏡筒200Aの各部の動作について---
先ず、交換レンズ鏡筒200Aのズーミング動作を説明する。図9において、交換レンズ鏡筒200Aは、伸長状態では、ズーム環205が回転操作されると、カム筒212が回転されるので、第1群レンズ室220およびSTM取付筒230が一体に光軸OAに沿って移動して変倍動作が行われる。この変倍動作と同時に、AF用ステッピングモータ270によってAF群レンズ241がSTM取付筒230に対して光軸OAに沿って移動されて焦点位置の変動、すなわちピント位置の変動を防止する。
【0071】
次に、交換レンズ鏡筒200Aのフォーカシング動作を説明する。交換レンズ鏡筒200Aは、伸長状態では、図11に示したAF用ステッピングモータ270が駆動されると、AF群レンズ室240が、上述したように、STM取付筒230に対して光軸OA方向に沿って駆動される。STM取付筒230と第1群レンズ室220との相対位置は、ズーム環205の回転位置に無関係に不変である。したがって、AF用ステッピングモータ270が駆動されると、AF群レンズ室240は第1群レンズ室220に対して光軸OA方向に沿って駆動され、AF群レンズ241と第1群レンズ223および第2群レンズ251との相対距離が変化して、合焦位置が変更される。
【0072】
なお、伸長状態および縮筒状態では、焦点距離や合焦位置に関わらず、AF群レンズ241と第2群レンズ251とが干渉することはない。
【0073】
---伸長状態から縮筒状態に移行する場合---
次に、交換レンズ鏡筒200Aの縮筒動作を説明する。伸長状態から縮筒状態にすべく、図8に示した縮筒解除ボタン204を押圧操作しながらズーム環205を所定の方向に回転操作すると、図9に示した第1群レンズ室220とSTM取付筒230とが一体に第2群レンズ室250の方に移動し、やがて、STM取付筒230の第2のガイド板232が第2群レンズ室250の当接部252に当接する。なお、上述のSTM取付筒230の移動時には、STM取付筒230に取り付けられたAF用ステッピングモータ270に連結されたAF群レンズ室240も移動する。
【0074】
そして、縮筒解除ボタン204を押圧操作しながら、さらにズーム環205を前記所定の方向に回転操作すると、STM取付筒230がその第2のガイド板232と第2群レンズ室250の当接部252との当接によって停止した状態で、第1群レンズ室220のみが更に同方向に所定量だけ移動して、縮筒動作が終了する。なお、STM取付筒230が停止すると、AF用ステッピングモータ270とAF群レンズ室240との連結のためAF群レンズ室240も停止する。
【0075】
こうして縮筒動作が終了すると、図16または図17に示すように、第1群レンズ室220のレンズ保持部222とSTM取付筒230の第1のガイド板231との間隔が、伸長状態の時の間隔に比べて小さくなり、すなわち、第1群レンズ室220のレンズ保持部222と第2群レンズ室250との間隔が小さくなる。この状態では、第1群レンズ室220が固定筒211内に収容されている。
【0076】
なお、図16は、AF群レンズ241が無限位置にある時の縮筒状態を示し、図17は、AF群レンズ241が至近位置にある時の縮筒状態を示す。図16および図17から明らかなように、縮筒状態では、第1群レンズ室220のレンズ保持部222とSTM取付筒230の第1のガイド板231との間隔が、伸長状態の時の間隔に比べて小さくなり、また、STM取付筒230の停止によってAF群レンズ241も停止するので、AF群レンズ241の位置に関わらず、AF群レンズ241と第2群レンズ251とは干渉しない。
【0077】
---縮筒状態から伸長状態に移行する場合---
次に、交換レンズ鏡筒200Aの伸長動作を説明する。縮筒状態から伸長状態にすべく、図8に示した縮筒解除ボタン204を押圧操作しながらズーム環205を、縮筒動作時とは逆方向に回転操作すると、図16に示した第1群レンズ室220が、縮筒動作時とは逆方向、すなわち第2群レンズ室250から離れる方向に移動し、図9または図10に示した伸長状態に復帰する。
【0078】
上述した第2の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)交換レンズ鏡筒200Aは、AF群レンズ241を保持するAF群レンズ室240と、AF群レンズ室240に連結し、AF群レンズ室240を光軸方向に駆動するAF用ステッピングモータ270と、AF用ステッピングモータ270が取り付けられ、AF用ステッピングモータ270とともに光軸OA方向に移動可能なSTM取付筒230と、STM取付筒230を光軸方向に沿った一方向に付勢するコイルバネ281とを備える。
これにより、STM取付筒230は常に一方向に付勢される力がかかるので、交換レンズ鏡筒200A内での位置(具体的には、第1群レンズ室220に対するSTM取付筒230の位置)を安定させることができる。また、縮筒時には、コイルバネ281を伸筒時より短くなるようにSTM取付筒230を他方向側から押すことにより、伸筒時にSTM取付筒230が配置されていたスペースに他の部材を配置することができる。具体的に、上述した実施の形態では、第1群レンズ室220がSTM取付筒230と共に撮像素子側に移動することにより、第2群レンズ室250がSTM取付筒230を第1群レンズ室220内で被写体側に移動する方向に押し付ける。そして、STM取付筒230の第1群レンズ室220内での位置が被写体側に移動することにより、第1群レンズ室220の内周側に第2群レンズ室250の一部を収納させて鏡筒長Lを短縮できる。これにより、交換レンズ鏡筒200Aを小型化できる。なお、上述した実施の形態では、縮筒時と伸筒時とで第1群レンズ室220に対するSTM取付筒230の位置を変化させることとしたが、焦点距離状態や撮影距離に応じて第1群レンズ室220に対するSTM取付筒230の位置を変化させることとしてもよい。
【0079】
(2)交換レンズ鏡筒200Aは、AF群レンズ241の物体側に対向する位置に配置される第1群レンズ223と、第1群レンズ223を保持し、第1群レンズ223とともに光軸OA方向に移動可能な第1群レンズ室220とを備える。交換レンズ鏡筒200Aは、第1群レンズ室220とSTM取付筒230との間にコイルバネ281が配置される。第1群レンズ室220は、コイルバネ281により光軸OA方向に沿った一方向において、STM取付筒230とは逆向きに付勢される。
これにより、第1群レンズ室220に対するSTM取付筒230の光軸OA方向における位置を安定して保持することができる。第1群レンズ室220に対するSTM取付筒230の位置が安定することにより、STM取付筒230によりAF用ステッピングモータ270を介して保持されているAF群レンズ241の光軸OA方向の位置も安定することになり、交換レンズ鏡筒200Aの光学性能の劣化を防止することができる。また、縮筒時には、コイルバネ281が伸筒時より短くなるように第1群レンズ室220とSTM取付筒230とを近づけることができるので、縮筒状態における鏡筒長Lを短縮できる。これにより、交換レンズ鏡筒200Aを小型化できる。なお、交換レンズ鏡筒200Aは、伸筒状態から縮筒状態への変更をユーザによるズーム環の手動操作により行っている。ここで、伸筒状態から縮筒状態への変更をモータなどの駆動力で行う場合、コイルバネ281の付勢力に抗する大きな駆動力を出力可能なモータなどを交換レンズ鏡筒200A内に用意する必要があり、交換レンズ鏡筒200Aの大型化につながってしまう。一方、上述した実施の形態によれば、コイルバネ281の付勢力に抗することが手動操作でできるので、大きな駆動力を出力可能なモータを用意する必要がなく、交換レンズ鏡筒200Aの大型化を回避することができる。
【0080】
(3)交換レンズ鏡筒200Aは、AF群レンズ室240とSTM取付筒230とを光軸OA方向に移動可能に案内するメインガイドバー261を備える。
メインガイドバー261は、光軸OAにほぼ平行に延びるガイドバーである。STM取付筒230は、互いに離間し、メインガイドバー261が貫通する挿通孔231a,232aを有する一対の第1および第2のガイド板231、232と、一対の第1および第2のガイド板231,232を連結する連結部233とを有する。
AF群レンズ室240は、STM取付筒230の一対の第1および第2のガイド板231、232の間において、メインガイドバー261が貫通する挿通孔240a,240bを有する。
これにより、STM取付筒230が光軸OA方向に移動すると、AF用ステッピングモータ270とAF群レンズ室240との連結によってAF群レンズ室240もSTM取付筒230と一体に同方向に移動され、また、AF用ステッピングモータ270の駆動によって、AF群レンズ室240をSTM取付筒230に対して相対的に移動させることができる。つまり、ズーミング動作時のAF群レンズ室240の光軸OA方向の移動は、第1群レンズ室220の移動(カム筒212のカム溝212aと第1群レンズ室220のカムフォロワ221aとのカム係合による第1群レンズ室220の移動)によって行い、フォーカシング動作時のAF群レンズ室240の光軸OA方向の移動は、AF用ステッピングモータ270の駆動力によって行う。したがって、ズーミング動作時に合焦位置が変更することがあっても、フォーカシング動作をズーミング動作中に行って合焦位置の補正を行うことが可能である。よって、ユーザはズーミング動作を行いつつフォーカシング動作により合焦位置のずれを抑えることが可能である。
【0081】
(4)交換レンズ鏡筒200Aは、AF群レンズ241の物体側に対向する位置に配置される第1群レンズ223と、第1群レンズ223を保持し、第1群レンズ223とともに光軸OA方向に移動可能な第1群レンズ室220と、第1群レンズ室220に固定され、AF群レンズ室240とSTM取付筒230とを光軸方向に移動可能に案内するメインガイドバー261を備える。
これにより、AF群レンズ室240の直進案内部材とSTM取付筒230の直進案内部材とを兼用することが可能であり、部品点数の削減が可能である。また、メインガイドバー261を第1群レンズ室220に対して精度良く保持させることにより、AF群レンズ室240とSTM取付筒230とを精度よく移動することができる。したがって、AF群レンズ室240の直進案内部材とSTM取付筒230の直進案内部材とをそれぞれ用意して精度良く保持させるより、容易に高精度の移動が可能となる。
【0082】
(5)交換レンズ鏡筒200Aは、AF群レンズ241の物体側に対向する位置に配置される第1群レンズ223と、第1群レンズ223を保持し、第1群レンズ223とともに光軸OA方向に移動可能な第1群レンズ室220とを備える。第1群レンズ室220は、STM取付筒230がコイルバネ281により光軸OA方向に沿った一方向に付勢されて当てつけられるメインガイドバー調整板263を備える。
そのため、STM取付筒230は、コイルバネ281によって第1群レンズ室220のメインガイドバー調整板263に付勢されるので、伸長状態では第1群レンズ室220と一体に移動され、縮筒動作時には、第1群レンズ室220に対して相対的に移動されることができ、交換レンズ鏡筒200Aを小型化できる。
【0083】
(6)交換レンズ鏡筒200Aは、光軸OA方向においてSTM取付筒230との距離が変化する第2群レンズ室250の当接部252を備える。第2群レンズ室250の当接部252は、STM取付筒230をコイルバネ281の付勢力に抗して上述した一方向と逆の方向に移動させることが可能である。これにより、第1群レンズ室220と第2群レンズ室250との距離を短くすることができるので、鏡筒長Lを短くすることができる。
【0084】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の第2の実施形態と組み合わせることも可能である。
(変形例1)
サブガイドバー262やこのサブガイドバー262に取り付けられたコイルバネ282は、省略することができる。また、AF用ステッピングモータ270の代わりに、他の直流モータや超音波モータを使用してもよい。更には、レンズ群も第1群レンズ223を構成するレンズ枚数と、AF群レンズ241を構成するレンズ枚数と、第2群レンズ251を構成するレンズ枚数は、図示例の枚数に限らず、増加もしくは減少することができる。
【0085】
(変形例2)
以上の実施の形態のカメラシステム1は、カメラの不使用時にレンズ鏡筒の長さが短くなる縮筒型交換レンズを備えるカメラシステムであった。実施の形態の変形例に係るカメラは、レンズ鏡筒がカメラボディに着脱不可能に取り付けられた沈胴式カメラである。沈胴式カメラは、カメラの不使用時にレンズ鏡筒の全体または一部がカメラボディ内に収容され、カメラ使用時にレンズ鏡筒がカメラボディから突出する機構を有するものである。
変形例2に係る沈胴式カメラと上述の実施の形態の縮筒型交換レンズ鏡筒との主な相違点は、沈胴式カメラは、図9において、STM取付筒230とAF群レンズ室240と第2群レンズ室250等がカメラボディ内に内蔵され、かつ、固定筒211とカム筒212が省略され、第1群レンズ室220が不図示のアクチュエータによって光軸方向に移動されることである。
【0086】
沈胴式カメラは、使用時には、第1群レンズ室220がカメラボディから突出され、この状態で、上述の実施の形態の縮筒型交換レンズ鏡筒200Aと同様に、ズーミング動作およびフォーカシング動作が行われる。
他方、沈胴式カメラは、沈胴動作時には、第1群レンズ室220が不図示のアクチュエータによって光軸方向に第2群レンズ室250の方に向かって移動される。この第1群レンズ室220の移動に伴い、STM取付筒230も同一方向に移動して第2群レンズ室250の当接部252に当接して移動が阻止される。不図示のアクチュエータによる引き続く駆動によって、第1群レンズ室220は、そのレンズ保持部222とSTM取付筒230の第1のガイド板231との間隔が小さくなるようにSTM取付筒230に接近する。これによって、第1群レンズ室220は、使用時にはカメラボディから突出されていたが沈胴時には、その突出量が減少し、または略突出しなくなる。
【0087】
(変形例3)
上述した実施の形態では、第2群レンズ室250は固定されていたが、光軸OA方向に移動可能に構成されていてもよい。
【0088】
(変形例4)
上述した実施の形態では、図9-12,16,17において、左側を被写体側とし、右側を撮像素子側としたが、左側を撮像素子側とし、右側を被写体側としてもよい。
【0089】
(変形例5)
上述した実施の形態では、AF群レンズ室240には、ラック部242が取り付けられていた。ラック部242には、AF用ステッピングモータ270のリードスクリュー271と噛み合うネジが刻設されていた。しかし、ラック部242に代えて、リードスクリュー271と噛み合うネジが刻設されたナット部をAF群レンズ室240に設けてもよい。
【0090】
上述した本発明の第2の実施の形態は、以下の態様も含む。
(1)第8の態様によるレンズ鏡筒は、少なくとも一つの第1レンズを保持する第1レンズ保持部材と、第1レンズ保持部材に連結し、第1レンズ保持部材を光軸方向に駆動する駆動源と、駆動源が取り付けられ、駆動源とともに光軸方向に移動可能な取付部材と、取付部材を光軸方向に沿った一方向に付勢する付勢部材と、を備える。
(2)第9の態様は、第8の態様によるレンズ鏡筒において、第1レンズの物体側または像面側に対向する位置に配置される第2レンズと、第2レンズを保持し、第2レンズとともに光軸方向に移動可能な第2レンズ保持部材と、を備え、第2レンズ保持部材と取付部材との間に付勢部材が配置され、第2レンズ保持部材は、付勢部材により光軸方向に沿った一方向において、取付部材とは逆向きに付勢される。
(3)第10の態様は、第8または第9の態様によるレンズ鏡筒において、第1レンズ保持部材と取付部材とを光軸方向に移動可能に案内するガイド部材を備え、ガイド部材は、光軸にほぼ平行に延びるガイドバーであり、取付部材は、互いに離間し、ガイドバーが貫通するガイド孔を有する一対のガイド板と、一対のガイド板を連結する連結部とを有し、第1レンズ保持部材は、一対のガイド板の間において、ガイドバーが貫通するガイド穴を有する。
(4)第11の態様は、第8から10のいずれかの態様によるレンズ鏡筒において、第1レンズの物体側または像面側に対向する位置に配置される第2レンズと、第2レンズを保持し、第2レンズとともに光軸方向に移動可能な第2レンズ保持部材と、第2レンズ保持部材に固定され、第1レンズ保持部材と取付部材とを光軸方向に移動可能に案内するガイド部材を備える。
(5)第12の態様は、第8から11のいずれかの態様によるレンズ鏡筒において、駆動源はモータとモータによって回転されるリードスクリューとを有し、第1レンズ保持部材はリードスクリューに噛み合う噛合部を有する。
(6)第13の態様は、第8から12のいずれかの態様によるレンズ鏡筒において、第1レンズの物体側または像面側に対向する位置に配置される第2レンズと、第2レンズを保持し、第2レンズとともに光軸方向に移動可能な第2レンズ保持部材と、を備え、第2レンズ保持部材は、取付部材が付勢部材により光軸方向に沿った一方向に付勢されて当てつけられる当てつけ箇所を備える。
(7)第14の態様は、第8から13のいずれかの態様によるレンズ鏡筒において、光軸方向において取付部材との距離が変化する制限部材を備え、制限部材は、取付部材を付勢部材の付勢力に抗して一方向と逆の方向に移動させることが可能である。
(8)第15の態様は、第14の態様によるレンズ鏡筒において、制限部材は、第3のレンズを保持するレンズ保持部材であり、沈胴動作時または縮筒動作時に取付部材との距離が小さくなる。
(9)第16の態様による光学機器は、第8から15のいずれかの態様によるレンズ鏡筒を備える。
【0091】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【0092】
次の優先権基礎出願の開示内容は引用文としてここに組み込まれる。
日本国特許出願2016年第116105号(2016年6月10日出願)
日本国特許出願2016年第116106号(2016年6月10日出願)
【符号の説明】
【0093】
1;カメラシステム、100;カメラボディ、200,200A;交換レンズ鏡筒、212;カム筒、220;第1群レンズ室、221;筒部、221a,233a;カムフォロア、222;レンズ保持部、223;第1群レンズ、230;STM取付筒、231;第1のガイド板、232;第2のガイド板、233;連結部、240;AF群レンズ室、241;AF群レンズ、242;ラック部、250;第2群レンズ室、251;第2群レンズ、252;当接部、261;メインガイドバー、263;メインガイドバー調整板、270;AF用ステッピングモータ、271;リードスクリュー、281,282;コイルバネ
図1
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図3
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図11
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