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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083806
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】スイッチング素子駆動回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/00 20060101AFI20240617BHJP
   H03K 17/08 20060101ALI20240617BHJP
   H03K 17/082 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
H03K17/00 B
H03K17/08 B
H03K17/082
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197837
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 将伍
(72)【発明者】
【氏名】宮島 一之
【テーマコード(参考)】
5J055
【Fターム(参考)】
5J055AX03
5J055AX21
5J055AX53
5J055AX54
5J055AX55
5J055AX64
5J055BX16
5J055CX07
5J055DX09
5J055DX55
5J055EX01
5J055EX21
5J055EY01
5J055EY10
5J055EY21
5J055EZ10
5J055EZ32
5J055FX05
5J055FX13
5J055FX19
5J055FX20
5J055GX01
5J055GX02
5J055GX05
(57)【要約】
【課題】ノイズの影響による負荷短絡の誤検知を防止することにより、信頼性に優れた保護動作を実施する。
【解決手段】スイッチング素子駆動回路は、制御端子に入力される制御信号に応じて、スイッチング素子の第1端子及び第2端子間の導通状態を切替可能な回路である。
本回路は、第1端子にカソードが接続されたダイオードのアノードに接続される監視用端子と、監視用端子とダイオードのアノードとの間に設けられた接続点と第2端子との間に接続された容量素子とを備える。また本回路は、監視用端子の電圧が第1基準電圧以上となる第1条件が成立した場合に、導通状態を非導通状態に切り替える保護動作を行うための保護回路を備える。また本回路は、制御端子に制御信号が入力された後、監視用端子の電圧が第2基準電圧以下になる第2条件が成立した場合に、保護回路による前記第1条件の成否判定を許可する第1成否判定許可部を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子の制御端子に入力される制御信号に応じて、前記スイッチング素子の第1端子及び第2端子間の導通状態を切替可能なスイッチング素子駆動回路であって、
前記第1端子にカソードが接続されたダイオードのアノードに接続される監視用端子と、
前記監視用端子と前記アノードとの間に設けられた接続点と前記第2端子との間に接続された容量素子と、
前記監視用端子の電圧が第1基準電圧以上となる第1条件が成立した場合に、前記導通状態を非導通状態に切り替える保護動作を行うための保護回路と、
前記制御端子に前記制御信号が入力された後、前記電圧が第2基準電圧以下になる第2条件が成立した場合に、前記保護回路による前記第1条件の成否判定を許可する第1成否判定許可部と、
を備える、スイッチング素子駆動回路。
【請求項2】
前記第2基準電圧は、前記第1基準電圧より小さく設定される、請求項1に記載のスイッチング素子駆動回路。
【請求項3】
前記制御端子に入力される前記制御信号がLowからHighに切り替わった後、前記制御端子に電圧を印加するための第3トランジスタのドレイン端子電圧が第3基準電圧以上になる第3条件が成立した場合に、前記保護回路による前記第1条件の成否判定を許可する第2成否判定許可部を更に備える、請求項1又は2に記載のスイッチング素子駆動回路。
【請求項4】
前記制御信号がLowである間に前記監視用端子の電圧をプルダウンするための第1トランジスタのソース端子及び接地電位間に設けられた抵抗と、
前記抵抗に対してソース端子及びドレイン端子が並列に接続され、前記制御端子にゲート端子が接続された第2トランジスタと、
を備える、請求項1又は2に記載のスイッチング素子駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)のようなスイッチング素子を駆動するためのスイッチング素子駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
第1端子及び第2端子間の導通状態を制御端子に入力される制御信号に応じて切り替えることにより駆動可能なスイッチング素子が知られている。この種のスイッチング素子として、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)がある。絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(以下、適宜「IGBT」と称する)は、第1端子、第2端子及び制御端子として、それぞれコレクタ端子、エミッタ端子及びゲート端子を備え、ゲート端子に与えられる制御信号(ゲート駆動信号)に応じて、コレクタ端子及びエミッタ端子間の導通状態を切替可能である。
【0003】
IGBTのようなスイッチング素子は、例えば、インバータのような電力変換装置に用いられる。このような電力変換装置では、IGBTが導通状態(オン状態)にある場合に、出力負荷が接続されるコレクタ端子(出力端子)に天絡等の故障が生じると、コレクタ端子とエミッタ端子との間に過大な電流が流れ、場合によっては、スイッチング素子の破損等の不具合を招くおそれがある。
【0004】
スイッチング素子の駆動回路には、このような不具合を防止するための保護回路を含むものがある。例えば特許文献1には、出力端子の天絡や地絡等の故障からスイッチング素子を保護するための回路を備えるスイッチング素子の駆動回路の一例が開示されている。この文献では、IGBTが導通状態(オン状態)にある場合に、コレクタ-エミッタ間の電位差を検出し、当該電位差が一定値以上であるか否かに基づいて、IGBTの過電流状態を検出する、いわゆるDESAT回路を含む駆動回路が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-208847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで前述のDESAT回路を含むスイッチング素子駆動回路に関する参考技術について説明する。図5は参考技術に係るスイッチング素子駆動回路1´を示す回路図である。
【0007】
スイッチング素子駆動回路1´は、コレクタ端子及びエミッタ端子の導通状態を、ゲート端子に入力されるゲート駆動信号(制御信号)に応じて切り替えることにより、IGBT(スイッチング素子)を駆動可能な回路である。コレクタ端子には負荷Lの一端が接続される。負荷Lの他端は負荷電源VLOADに接続される。
【0008】
スイッチング素子駆動回路1´は、IN端子、VDD端子、DESAT端子(監視用端子)、PG端子、NG端子、及び、GND端子を備える。IN端子には、ゲート駆動信号が入力される。VDD端子には電源VSUPが接続される。DESAT端子は、負荷Lの短絡(破線を参照)を監視するための端子であり、監視用電圧として電圧VDESATが入力される。PG端子及びNG端子は、それぞれ抵抗R1及びR2を介して、IGBTのゲート端子に接続される。DESAT端子にはダイオードD1を介して、負荷L、及び、IGBTのコレクタ端子に接続される(DESAT端子にはダイオードD1のアノード側が接続される)。GND端子にはIGBTのエミッタ端子が接続される。
【0009】
IN端子から入力されるゲート駆動信号は、論理回路AND1及び論理回路INV1を介して、トランジスタMP1及びMN1に入力される。ゲート駆動信号がHighである場合、トランジスタMP1はオフ状態からオン状態に切り替えられるとともに、トランジスタMN1がオン状態からオフ状態に切り替えられる。これにより、IGBTはオン状態となり、コレクタ端子及びエミッタ端子間が導通状態となる。一方、ゲート駆動信号がLowである場合、トランジスタMP1はオン状態からオフ状態に切り替えられるとともに、トランジスタMN1がオフ状態からオン状態に切り替えられる。これにより、IGBTはオフ状態となり、コレクタ端子及びエミッタ端子間が非導通状態となる。
【0010】
このようにスイッチング素子駆動回路1´では、ゲート駆動信号に応じてコレクタ端子及びエミッタ端子間の導通状態が切替可能であるが、負荷Lが短絡する等の不具合が生じた場合、IGBTに過大な電流が流れて損傷するおそれがある。そこで、スイッチング素子駆動回路1´は、このようなIGBTの過電流状態を検出するための保護回路2´としてDESAT回路を含む。保護回路2´は、DESAT端子の電圧VDESATが第1基準電圧VREF1以上になった場合に、ゲート制御信号がHighであるかLowであるかに関わらず、IGBTの導通状態を非導通状態に切り替える保護動作を実施することで、IGBTを過電流状態から保護するように構成される。
【0011】
保護回路2´は、第1コンパレータCOMP1を有する。第1コンパレータCOMP1は、DESAT端子に接続される正入力端子と、第1基準電圧VREF1に接続される負入力端子とを有する。第1コンパレータCOMP1の出力は、正入力端子に入力されるDESAT端子の電圧VDESATが、負入力端子に入力される第1基準電圧VREF1以上である場合にHighとなり、正入力端子に入力されるDESAT端子の電圧VDESATが、負入力端子に入力される第1基準電圧VREF1未満である場合にLowとなる。第1コンパレータCOMP1の出力は、RSフリップフロップ回路RS-FF1のS端子に入力される。RSフリップフロップ回路RS-FF1のR端子には、論理回路INV3を介してIN端子が接続され、Q端子は論理回路INV2を介して前述の論理回路AND1に接続される。
【0012】
このような回路構成において、ゲート駆動信号がHighであることでIGBTがオン状態(コレクタ端子及びエミッタ端子間が導通状態)にあるときに負荷Lの両端に短絡が生じると、IGBTのコレクタ端子及びエミッタ端子間の電圧Vceが上昇する。ここでDESAT端子とダイオードD1との間に設けられた接続点と、IGBTのエミッタ端子との間には容量素子C1が設けられているため、電圧VDESATは、所定の遅延時間dtを伴って上昇する。電圧VDESATが上昇するに従って容量素子C1は電流源I1によって充電され、電圧VDESATは、やがて第1基準電圧VREF1に達する。すると第1コンパレータCOMP1の出力がLowからHighに切り替わり、負荷Lの短絡発生が検出される。また第1コンパレータCOMP1の出力がHighになると、RSフリップフロップ回路RS-FF1がセット状態になり、トランジスタMP1がオフ状態、トランジスタMN1及びMN3がオン状態になることにより、IGBTのゲート端子の電圧Vgeが引き下げられ、IGBTは保護動作によってオフ状態にラッチされる。
【0013】
このような保護動作において、電圧VDESATが第1基準電圧VREF1に到達するまでの遅延時間dtは、ゲート駆動信号がLowからHighに切り替わることで、トランジスタMN3がオン状態からオフ状態に切り替わるタイミング(すなわちトランジスタMP1がオフ状態からオン状態に、トランジスタMN1がオン状態からオフ状態に切り替わるタイミング)から、電流源I1、容量素子C1及び第1基準電圧VREF1に基づいて決定される。この期間では、IGBTが有するゲート容量によって、トランジスタMP1がオフ状態からオン状態に切り替わってから、実際にIGBTが導通状態になって、そのコレクタ端子の電圧Vceが下がるまでに少なからず時間を要する。そのため保護回路2´の誤検出を防ぐためには、IGBTのゲート容量等に基づいて、容量素子C1や電流源I1を適切に設定する必要がある。
【0014】
このように誤検出を防ぐ観点から理想的には、DESAT端子の電圧VDESATは、IN端子に入力されるゲート駆動信号がHighになってトランジスタMP1がオフ状態からオン状態、トランジスタMN1がオン状態からオフ状態にそれぞれ切り替わるタイミングにおいて、「0V」であることが望ましい。ここで図6はIGBTを用いたモータ駆動回路の構成例を示す概略構成図である。この構成例では、3相のIGBTを用いたインバータの出力は互いにインダクタを介して接続されており、これらのインダクタの寄生容量や、各インバータの出力端子と接地電位間の寄生容量等によって、IGBTのコレクタ電圧にノイズ電圧が発生し、IGBTのコレクタ端子及びエミッタ端子間の電圧Vceが変動する。この電圧Vceの変動により、ダイオードD1の寄生容量を介して、DESAT端子に電流が流れ、DESAT端子の電圧VDESATが接地電位に対して数V程度、一時的に上昇する場合がある。
【0015】
図7図5のスイッチング素子駆動回路1´の各部における電圧又は電流の波形を示すタイムチャートである。具体的には図7では、IGBTのゲート端子及びエミッタ端子の間の電圧Vge、IGBTのコレクタ端子及びエミッタ端子間の電圧Vce、IGBTのコレクタ電流Ic、並びに、DESAT端子の電圧VDESATの時間変化がそれぞれ示されている。
【0016】
ゲート駆動信号がLowであることによりIGBTがオフ状態で、前述のようなノイズ発生によって電圧Vceが変動したタイミングt1でゲート駆動信号がHighに切り替わると、すでに容量素子C1が数V充電されている。そのため、電圧VDESATは、理想的な「0V」ではなく上昇してしまっているため、遅延時間dtもまた理想的な場合に比べて短くなる。このように遅延時間dtが短くなると、ゲート駆動信号のLowからHighへの切替に対してIGBTが完全にオン状態になる前に(図7の時間t2を参照)、DESAT端子の電圧VDESATが早いタイミングで第1基準電圧VREF1に到達してしまい、負荷Lが正常であったとしても短絡が生じたと誤検知して保護動作を実施してしまうおそれがある。このような誤検知は、意図しない保護動作によってIGBTをオフ状態に切り替えてしまうため、例えば負荷Lがモータである場合には、モータの回転に異常をもたらす要因となる。
【0017】
このような誤検知を解消するためには、例えば容量素子C1の値を大きくすることが考えられる。しかしながら、容量素子C1の値を大きくすると、同等の遅延時間dtを設定するためには、電流源I1の電流値を大きくする必要がある。これはスイッチング素子駆動回路1´の消費電力量の増加を伴うため限界がある。
【0018】
本開示の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、ノイズの影響による負荷短絡の誤検知を防止することにより、信頼性に優れた保護動作の実施が可能なスイッチング素子駆動回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本開示の少なくとも一実施形態に係るスイッチング素子駆動回路は、上記課題を解決するために、
第1端子及び第2端子の導通状態を制御端子に入力される制御信号に応じて切り替えることによりスイッチング素子を駆動可能なスイッチング素子駆動回路であって、
前記第1端子にダイオードのカソードが接続され、前記ダイオードのアノードが接続される監視用端子と、
前記監視用端子と前記アノードとの間に設けられた接続点と前記第2端子との間に接続された容量素子と、
前記監視用端子の電圧が第1基準電圧以上となる第1条件が成立した場合に、前記導通状態を非導通状態に切り替える保護動作を行うための保護回路と、
前記制御端子に前記制御信号が入力された後、前記電圧が第2基準電圧以下になる第2条件が成立した場合に、前記保護回路による前記第1条件の成否判定を許可する第1成否判定許可部と、
を備える。
【発明の効果】
【0020】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、ノイズの影響による負荷短絡の誤検知を防止することにより、信頼性に優れた保護動作の実施が可能なスイッチング素子駆動回路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施形態に係るスイッチング素子駆動回路を示す回路図である。
図2図1のスイッチング素子駆動回路の各部における電圧又は電流の波形を示すタイムチャートである。
図3】他の実施形態に係るスイッチング素子駆動回路を示す回路図である。
図4】他の実施形態に係るスイッチング素子駆動回路を示す回路図である。
図5】参考技術に係るスイッチング素子駆動回路を示す回路図である。
図6】IGBTを用いたモータ駆動回路の構成例を示す概略構成図である。
図7図5のスイッチング素子駆動回路の各部における電圧又は電流の波形を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成要素の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0023】
図1は一実施形態に係るスイッチング素子駆動回路1Aを示す回路図である。尚、以下の説明では、前述の参考技術に対応する構成については共通の符号で示しており、特段の記載がない限りにおいて、重複する記載は適宜省略する。
【0024】
スイッチング素子駆動回路1Aは、IGBTの過電流状態を検出するためのDESAT回路を含む保護回路2を備える。保護回路2は、DESAT端子の電圧VDESATが第1基準電圧VREF1以上になった場合に、ゲート制御信号に関わらず、IGBTの導通状態を非導通状態に切り替える保護動作を実施することで、IGBTを過電流状態から保護するように構成される。
【0025】
保護回路2は、第1コンパレータCOMP1を有する。第1コンパレータCOMP1は、DESAT端子に接続される正入力端子と、第1基準電圧VREF1が入力される負入力端子とを有する。第1コンパレータCOMP1の出力は、正入力端子に入力されるDESAT端子の電圧VDESATが、負入力端子に入力される第1基準電圧VREF1以上である場合にHighとなり、正入力端子に入力されるDESAT端子の電圧VDESATが、負入力端子に入力される第1基準電圧VREF1未満である場合にLowとなる。
【0026】
また保護回路2は、第2コンパレータCOMP2を有する。第2コンパレータCOMP2は、第2基準電圧VREF2が入力される正入力端子と、DESAT端子に接続される負入力端子とを有する。第2コンパレータCOMP2の出力は、負入力端子に入力されるDESAT端子の電圧VDESATが、正入力端子に入力される第2基準電圧VREF2未満である場合にHighとなり、負入力端子に入力されるDESAT端子の電圧VDESATが、正入力端子に入力される第2基準電圧VREF2以上である場合にLowとなる。
【0027】
第2コンパレータCOMP2の出力は、RSフリップフロップ回路RS-FF2のS端子に入力される。RSフリップフロップ回路RS-FF2のR端子には、トランジスタMP1のゲートが接続され、Q端子は論理回路INV4を介して前述のトランジスタMN3(第1トランジスタ)のゲートに接続されるとともに、論理回路AND2の一方の入力に入力される。論理回路AND2の他方の入力には第1コンパレータCOMP1の出力が入力される。論理回路AND2の出力は、RSフリップフロップ回路RS-FF1のS端子に入力される。RSフリップフロップ回路RS-FF1のR端子には、論理回路INV3を介してIN端子が接続され、Q端子は論理回路INV2を介して前述の論理回路AND1に接続される。
【0028】
上記構成を有するスイッチング素子駆動回路1Aにおいて、第1コンパレータCOMP1を含む周辺回路は、DESAT端子の電圧VDESATが第1基準電圧VREF1以上となる第1条件が成立した場合に、IGBTの導通状態を非導通状態に切り替える保護動作を行うための保護回路2として機能する。また第2コンパレータCOMP2を含む周辺回路は、IN端子にゲート駆動信号が入力された後、DESAT端子の電圧VDESATが第2基準電圧VREF2以下になる第2条件が成立した場合に、保護回路2による第1条件の成否判定を許可する第1成否判定許可部4として機能する。
【0029】
これにより本実施形態に係るスイッチング素子駆動回路1Aでは、保護回路2によって保護動作が実施されるための第1条件(VDESAT≧VREF1)の成否判定は、第1成否判定許可部4において、第2条件(VDESAT<VREF2)が成立した場合に行われる。つまり、DESAT端子の電圧VDESATが第2基準電圧VREF2未満になった後に、DESAT端子の電圧VDESATが第1基準電圧VREF1以上になったか否かに基づいて保護動作が実施される。
【0030】
より具体的に説明すると、スイッチング素子駆動回路1Aは、前述の参考技術に係るスイッチング素子駆動回路1´に対して、第2コンパレータCOMP2及びRSフリップフロップ回路RS-FF2を追加した構成を有する。RSフリップフロップ回路RS-FF2のQ端子からの出力は第1コンパレータCOMP1とともに論理回路AND2に入力され、論理回路AND2の出力は、IGBTを停止させるためのRSフリップフロップ回路RS-FF1のS端子に接続される。一方で、RSフリップフロップ回路RS-FF2のQ端子からの出力は、論理回路INV4で反転され、トランジスタMN3のゲートに入力される。またRSフリップフロップ回路RS-FF2のR端子は、トランジスタMN1(第3トランジスタ)及びMP1のゲートに接続されており、この端子の電圧がHighであればリセットされ、Lowであればリセット解除される。
【0031】
尚、RSフリップフロップ回路RS-FF1及びRS-FF2はR端子及びS端子に同時にHighが入力された場合はリセット状態になるリセット優先のRSフリップフロップ回路である。
【0032】
ゲート駆動信号がLowである場合、RSフリップフロップ回路RS-FF2はOFFリセット状態であり、Q端子からの出力はLowとなる。その結果、トランジスタMN3のゲート端子はHigh状態となり、トランジスタMN3はオン状態となる。このとき論理回路AND2の出力はLowであり、保護回路2による保護動作は実施されない。この状態で、参考技術と同様に、DESAT端子の電圧VDESATがノイズの影響によって引き上げられた直後に、ゲート駆動信号がLowからHighに切り替えられたとしても、DESAT端子の電圧VDESATが第2コンパレータCOMP2の閾値電圧である第2基準電圧VREF2以下まで低下していなければ、RSフリップフロップ回路RS-FF2がセット状態にならず、容量素子C1の充電が開始されない。つまり、電圧VDESATが第2基準電圧VREF2以下にならなければ、保護動作を実施するための電圧VDESATが第1基準電圧VREF1以上であるか否かの判定が行われない。
【0033】
図2図1のスイッチング素子駆動回路1Aの各部における電圧又は電流の波形を示すタイムチャートである。スイッチング素子駆動回路1Aでは、DESAT端子の電圧VDESATは、一旦、第2基準電圧VREF2未満まで減少してから上昇に転じる。そのため、第2基準電圧VREF2を十分に低く(例えば0Vに)設定することで、ノイズの影響を受ける場合においても遅延時間dtが短くなることで誤検知を生じることがない(図2では、遅延時間dtが十分確保されることで、電圧VDESATが第1基準電圧VREF1に到達せず、誤検知が生じていない)。
【0034】
このように上記実施形態に係るスイッチング素子駆動回路1Aによれば、第1成否判定許可部4によってDESAT端子の電圧VDESATが第2基準電圧VREF2以下になる第2条件が成立した場合に、保護回路2による第2条件の成否判定が許可される。これにより、ノイズの影響によってDESAT端子の電圧VDESATが引き上げられた場合においても、一旦、DESAT端子の電圧VDESATが第2基準電圧VREF2以下に低下してから保護動作の実施条件である第1条件の成否判定を開始することで、遅延時間dtが短くなることが効果的に防止される。
【0035】
続いて他の実施形態に係るスイッチング素子駆動回路1Bについて説明する。図3は他の実施形態に係るスイッチング素子駆動回路1Bを示す回路図である。スイッチング素子駆動回路1Bは、前述のスイッチング素子駆動回路1Aに比べて、第2成否判定許可部6を更に備える。
【0036】
第2成否判定許可部6は、IN端子に入力されるゲート駆動信号がLowからHighに切り替わった後、IGBTのゲートに駆動電圧を印加するためのトランジスタMN1のドレイン端子電圧が第3基準電圧VREF3以上になる第3条件が成立した場合に、保護回路2による第1条件の成否判定を許可するように構成される。
【0037】
具体的には、第2成否判定許可部6は、第3コンパレータCOMP3を更に備えて構成される。RSフリップフロップ回路RS-FF2のR端子は、トランジスタMN1及びMP1のゲート端子電圧と、第3コンパレータCOMP3の出力とがそれぞれ入力される論理回路OR1の出力に接続される。そのため、トランジスタMN1のドレイン電圧が第3基準電圧VREF3以上にならなければ、RSフリップフロップ回路RS-FF2のリセットは解除されない。
【0038】
前述の実施形態に係るスイッチング素子駆動回路1Aの場合、RSフリップフロップ回路RS-FF2がリセット解除(R端子入力がLow)となるのは、トランジスタMP1及びMN1のゲート電圧がHighからLowに切り替わるタイミングである。駆動対象であるIGBTのゲート容量が大きい場合、トランジスタMP1がオン状態になったとしても、IGBTのゲート端子電圧がIGBTの閾値に達してIGBTがオン状態になるまで少なからず時間を要する。つまりRSフリップフロップ回路RS-FF2のリセット解除から実際にIGBTがオン状態になるまでの間に、IGBTのコレクタ端子にノイズが重畳した場合、RSフリップフロップ回路RS-FF2はリセット解除で第2コンパレータCOMP2の出力でセット状態になっているため、このタイミングでDESAT端子の電圧VDESATがノイズにより引き上げられると遅延時間dtが想定より短くなるおそれがある。
【0039】
これに対してスイッチング素子駆動回路1Bでは、RSフリップフロップ回路RS-FF2のリセット解除は、IGBTのゲート電圧をトランジスタMN1のドレイン端子電圧を第3コンパレータCOMP3に入力し、この電圧が第3基準電圧VREF3以上になったタイミングでRSフリップフロップ回路RS-FF2のリセット解除を行う。これによりIGBTがオン状態になるまでの間に、DESAT端子の電圧VDESATが引き上げられて遅延時間dtが短くなることを効果的に防ぐことができる。
【0040】
このように本実施形態に係るスイッチング素子駆動回路1Bによれば、IGBTのゲート端子に駆動用電圧を印加するためのトランジスタMN1のドレイン電圧が第3基準電圧VREF3以上となる第3条件が成立した場合に、保護動作を行うための第1条件の判定が開始される。これにより、IGBTが非導通状態から導通状態に切り替わるまでの間に、DESAT端子の電圧VDESATが引き上げられて遅延時間dtが短くなることを効果的に防ぐことができる。
【0041】
続いて他の実施形態に係るスイッチング素子駆動回路1Cについて説明する。図4は他の実施形態に係るスイッチング素子駆動回路1Cを示す回路図である。
【0042】
スイッチング素子駆動回路1Cは、前述のスイッチング素子駆動回路1Aに比べて、ゲート駆動信号がLowである間にDESAT端子の電圧VDESATをプルダウンするためのトランジスタMN3のソース端子及び接地電位間に設けられた抵抗R3を備える。前述のスイッチング素子駆動回路1Aでは、トランジスタMN3のソース端子が接地されているため、トランジスタMN3のドレイン端子が電源電圧VDDに短絡すると、過電流によってトランジスタMN3が破損するおそれがある。そのためトランジスタMN3のソース端子及び接地電位間に抵抗R3を設けてトランジスタMN3の電流を制限することで、過電流によるトランジスタMN3の破損を防止できる。
【0043】
その一方で、この抵抗R3を設けると、ダイオードD1の寄生容量を介して一時的に電流が流れ、容量素子C1が充電された場合、DESAT端子の電圧VDESATは、容量素子C1、抵抗R3、及び、トランジスタMN3のオン抵抗で決定される時定数で低下していくため、DESAT端子の電圧VDESATが第2基準電圧VREF2以下になるまで時間がかかる。この遅れ時間は、実際にIGBTの負荷Lに短絡が発生していた場合に保護回路2が検出するまでの時間の遅れとなる。つまり、抵抗R3を設けることによって、前述の遅延時間dtが影響を受けるおそれがある。
【0044】
そこでスイッチング素子駆動回路1Cでは、この抵抗R3に対してソース端子及びドレイン端子が並列に接続され、IN端子にゲート端子が接続されたトランジスタMN4(第2トランジスタ)を更に備える。トランジスタMN4のゲート端子は、IN端子に接続され、IN端子の電圧がHighになるとオン状態になり、抵抗R3の端子間を短絡状態にするように動作する。
【0045】
これにより、IGBTの導通状態をオフ状態からオン状態に切り替えるためにIN端子に入力されるゲート駆動信号がLowからHighになると、トランジスタMN4がオン状態になって抵抗R3を短絡することで、この間だけDESAT端子からシンクできる電流を増加できる。その結果、DESAT端子の電圧VDESATが第2基準電圧VREF2以下に低下することで、トランジスタMN3がオフとなることで、抵抗R3を設けない場合と同様の遅延時間dtで保護回路2による第1条件の成否判定を開始できる。
【0046】
つまりスイッチング素子駆動回路1Cでは、IGBTを非導通状態から導通状態に切り替えるためにIN端子に入力されるゲート駆動信号がLowからHighになると、トランジスタMN4がオン状態になり、抵抗R3の両端を短絡することにより、この期間だけDESAT端子からシンクできる電流値を増加させる。これにより、DESAT端子の電圧VDESATが第2基準電圧VREF2以下に低下するとトランジスタMN3がオフ状態になるため、その後は前述のスイッチング素子駆動回路1Aと同様の動作をする。
【0047】
尚、図6のようにIGBT及びスイッチング素子駆動回路1でインバータを構成する場合、上下のIGBTが同時にオン状態になることを防ぐために、一般的にスイッチング素子駆動回路1A~1CにはIN端子からトランジスタMN1及びMP1のゲート間に遅延回路8が挿入される。
【0048】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0049】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0050】
(1)一態様に係るスイッチング素子駆動回路は、
スイッチング素子の制御端子に入力される制御信号に応じて、前記スイッチング素子の第1端子及び第2端子間の導通状態を切替可能なスイッチング素子駆動回路であって、
前記第1端子にカソードが接続されたダイオードのアノードに接続される監視用端子と、
前記監視用端子と前記アノードとの間に設けられた接続点と前記第2端子との間に接続された容量素子と、
前記監視用端子の電圧が第1基準電圧以上となる第1条件が成立した場合に、前記導通状態を非導通状態に切り替える保護動作を行うための保護回路と、
前記制御端子に前記制御信号が入力された後、前記電圧が第2基準電圧以下になる第2条件が成立した場合に、前記保護回路による前記第1条件の成否判定を許可する第1成否判定許可部と、
を備える。
【0051】
上記(1)の態様によれば、第1成否判定許可部によって監視用端子の電圧が第2基準電圧以下になる第2条件が成立した場合に、保護回路による第1条件の成否判定が許可される。これにより、ノイズの影響によって監視用端子の電圧が引き上げられた場合においても、一旦、監視用端子の電圧が第2基準電圧以下に低下してから保護動作の実施条件である第1条件の成否判定を開始することで、遅延時間が短くなることが効果的に防止される。
【0052】
(2)他の態様では、上記(1)の態様において、
前記第2基準電圧は、前記第1基準電圧より小さく設定される。
【0053】
上記(2)の態様によれば、第2条件の判定閾値である第2基準電圧は、第1条件の判定閾値である第1基準電圧より小さく設定される。これにより、監視用端子の電圧がノイズによって引き上げられている場合においても、一旦、監視用端子の電圧が第2基準電圧以下に十分に低下してから保護動作の実施条件である第1条件の成否判定を開始することで、遅延時間が短くなることが効果的に防止される。
【0054】
(3)他の態様では、上記(1)又は(2)の態様において、
前記制御端子に入力される前記制御信号がLowからHighに切り替わった後、前記制御端子に電圧を印加するための第3トランジスタのドレイン端子電圧が第3基準電圧以上になる第3条件が成立した場合に、前記保護回路による前記第1条件の成否判定を許可する第2成否判定許可部を更に備える。
【0055】
制御信号をLowからHighに切り替えた際に第3トランジスタによってスイッチング素子のゲート端子に駆動用電圧を印加する際、スイッチング素子が非導通状態から導通状態に切り替わるまでに、スイッチング素子のゲート容量に起因する遅れが少なからず生じる。このとき監視用端子の電圧が前述のようにノイズによって引き上げられると、遅延時間が想定より短くなるおそれがある。
これに対して上記(3)の態様によれば、スイッチング素子の制御端子に駆動用電圧を印加するための第3トランジスタのドレイン電圧が第3基準電圧以上となる第3条件が成立した場合に、保護動作を行うための第1条件の判定が開始される。これにより、スイッチング素子が非導通状態から導通状態に切り替わるまでの間に、監視用端子の電圧が引き上げられて遅延時間が短くなることを効果的に防ぐことができる。
【0056】
(4)他の態様では、上記(1)から(3)のいずれか一態様において、
前記制御信号がLowである間に前記監視用端子の電圧をプルダウンするための第1トランジスタのソース端子及び接地電位間に設けられた抵抗と、
前記第抵抗に対してソース端子及びドレイン端子が並列に接続され、前記制御端子にゲート端子が接続された第2トランジスタと、
を備える。
【0057】
スイッチング素子の制御端子に入力される制御信号がLowである間、監視用端子の電圧をプルダウンするための第1トランジスタを設けた場合、第1トランジスタが電源電圧に短絡して過電流によって第1トランジスタが破損するおそれがある。そのため第1トランジスタのソース端子及び接地電位間に抵抗を設けることで第1トランジスタの過電流状態を防止できるが、この抵抗を設けることによって、前述の遅延時間が影響を受けてしまう。
上記(4)の態様によれば、この抵抗に対してソース端子及びドレイン端子が並列に接続され、制御端子にゲート端子が接続された第2トランジスタを設けられる。これにより、スイッチング素子の導通状態をオフ状態からオン状態に切り替えるために制御端子に入力される制御信号がLowからHighになると、第2トランジスタがオン状態になることで抵抗を短絡することで、この間だけ監視用端子からシンクできる電流を増加できる。その結果、監視用端子の電圧が第2基準電圧以下に低下することで、第1トランジスタがオフとなることで、抵抗を設けない場合と同様の遅延時間で保護回路による第1条件の成否判定を開始できる。
【符号の説明】
【0058】
1A~1C スイッチング素子駆動回路
2 保護回路
4 第1成否判定許可部
6 第2成否判定許可部
8 遅延回路
C1 容量素子
COMP1 第1コンパレータ
COMP2 第2コンパレータ
COMP3 第3コンパレータ
D1 ダイオード
I1 電流源
Ic コレクタ電流
L 負荷
MN1 第3トランジスタ
MN3 第1トランジスタ
MN4 第2トランジスタ
VREF1 第1基準電圧
VREF2 第2基準電圧
VREF3 第3基準電圧
dt 遅延時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7