(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083877
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】車両用アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/32 20060101AFI20240617BHJP
H01Q 1/22 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
H01Q1/32 A
H01Q1/22 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197943
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】村山 範芳
(72)【発明者】
【氏名】原口 翔多
【テーマコード(参考)】
5J046
5J047
【Fターム(参考)】
5J046AA02
5J046AB06
5J046AB07
5J047AA02
5J047AB06
5J047AB07
5J047EC02
5J047FD05
(57)【要約】
【課題】サンバイザの展開状態によらず、安定したアンテナ利得を実現できる車両用アンテナ装置を提供する。
【解決手段】車両用アンテナ装置1は、ガラス板と、ガラス板に設けられるアンテナ20と、ガラス板の平面視において、アンテナ20の少なくとも一部と重なる展開位置に移動可能なサンバイザ50と、を備え、サンバイザ50は、サンバイザ50の長手方向に延伸すると共に、サンバイザ50の短手方向に離間する第1ワイヤ導体部61及び第2ワイヤ導体部62を、少なくとも含むワイヤ導体60と、第1ワイヤ導体部61と第2ワイヤ導体部62との間を短手方向に接続すると共に、長手方向に離間する第1短絡導体部71及び第2短絡導体部72と、第1短絡導体部71と第2短絡導体部72との間を長手方向に接続するブリッジ導体100と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付けられるガラス板と、
前記ガラス板に設けられ、所定周波数帯の電波を送受信するアンテナと、
前記車体に取り付けられ、前記ガラス板の平面視において、前記アンテナの少なくとも一部と重なる展開位置に移動可能なサンバイザと、を備え、
前記サンバイザは、
前記サンバイザの長手方向に延伸すると共に、前記サンバイザの短手方向に離間する第1ワイヤ導体部及び第2ワイヤ導体部を、少なくとも含むワイヤ導体と、
前記第1ワイヤ導体部と前記第2ワイヤ導体部との間を前記短手方向に接続すると共に、前記長手方向に離間する第1短絡導体部及び第2短絡導体部と、
前記第1短絡導体部と前記第2短絡導体部との間を前記長手方向に接続するブリッジ導体と、を有する、
車両用アンテナ装置。
【請求項2】
前記第1短絡導体部及び前記第2短絡導体部は、前記ワイヤ導体の内側で、前記第1ワイヤ導体部と前記第2ワイヤ導体部との間を前記短手方向に接続する、
請求項1に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項3】
前記ブリッジ導体は、前記ワイヤ導体と接続せずに、前記第1短絡導体部と前記第2短絡導体部との間を前記長手方向に接続する、
請求項2に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項4】
前記アンテナは、
少なくとも1つの給電部と、
前記給電部と接続するアンテナエレメントと、を有し、
前記給電部は、前記サンバイザが前記展開位置に位置するとき、前記ガラス板の平面視において、前記ワイヤ導体で囲まれた領域内に配置される、
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項5】
前記給電部は、芯線側給電部と、接地側給電部と、
前記芯線側給電部と接続する、芯線側エレメントと、
前記接地側給電部と接続する、接地側エレメントと、を有する、
請求項4に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項6】
前記第1短絡導体部及び前記第2短絡導体部の少なくとも一方は、前記サンバイザに搭載されるミラー用のブラケットである、
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項7】
前記第1短絡導体部及び前記第2短絡導体部の少なくとも一方は、前記サンバイザの平面視において、前記短手方向に離間した複数の固定部を有し、
前記ブリッジ導体は、前記複数の固定部の間に配置される、
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項8】
前記サンバイザは、照明用の配線を有し、
前記ブリッジ導体は、前記サンバイザの平面視において、前記配線の少なくとも一部と重なるように配置される、
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項9】
前記ワイヤ導体の内側には、前記短手方向に延伸する2つの導体が前記長手方向に離間する複数の間隙が形成され、
前記第1短絡導体部と前記第2短絡導体部との前記長手方向における間隙は、前記複数の間隙のなかで、最も小さい、
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項10】
前記ブリッジ導体は、前記短手方向において5mm以上の幅を有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項11】
前記アンテナは、UHF帯の電波を送受可能である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項12】
前記アンテナは、ITS帯の電波を送受可能である、
請求項10に記載の車両用アンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用窓ガラスには、放送波等を受信できるアンテナなど様々な機能部材が備えられている。このようなアンテナは、例えば、ITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)で使用され、車両に搭載された通信機器と車両外部との間で電波を送受信する場合がある。ITSでは、垂直偏波が利用されており、下記特許文献1では、垂直偏波のアンテナ利得を向上させるべく、所定パターンのアンテナを備えたアンテナ付き窓ガラスが開示されている。
【0003】
また、車両用窓ガラスの、特にウィンドシールドの車内側には、乗員の防眩手段として、サンバイザが取り付けられている。このようなサンバイザは、化粧鏡と、この化粧鏡のための照明装置と、を有する場合がある。このような場合、化粧鏡や照明装置の取り付け部分や、サンバイザ自体を補強するべく、下記特許文献2のように、クッション作用を有する材料からなるサンバイザ本体を、枠形に曲げられたワイヤ挿入体によって補強する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-207174号公報
【特許文献2】特許第2541696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ガラス板上のアンテナのレイアウトによっては、サンバイザを展開したときに、ガラス板の平面視において、サンバイザがアンテナと重なる場合がある。この場合に、サンバイザが上記ワイヤ挿入体等の導体を含んでいると、当該導体がアンテナに近づくことで、所望のアンテナ利得が得られなくなるおそれがあった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、サンバイザの展開状態によらず、安定したアンテナ利得を実現できる車両用アンテナ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の構成を備える。
[1]車体に取り付けられるガラス板と、前記ガラス板に設けられ、所定周波数帯の電波を送受信するアンテナと、前記車体に取り付けられ、前記ガラス板の平面視において、前記アンテナの少なくとも一部と重なる展開位置に移動可能なサンバイザと、を備え、前記サンバイザは、前記サンバイザの長手方向に延伸すると共に、前記サンバイザの短手方向に離間する第1ワイヤ導体部及び第2ワイヤ導体部を、少なくとも含むワイヤ導体と、前記第1ワイヤ導体部と前記第2ワイヤ導体部との間を前記短手方向に接続すると共に、前記長手方向に離間する第1短絡導体部及び第2短絡導体部と、前記第1短絡導体部と前記第2短絡導体部との間を前記長手方向に接続するブリッジ導体と、を有する、車両用アンテナ装置。
【0008】
[2]前記第1短絡導体部及び前記第2短絡導体部は、前記ワイヤ導体の内側で、前記第1ワイヤ導体部と前記第2ワイヤ導体部との間を前記短手方向に接続する、[1]に記載の車両用アンテナ装置。
【0009】
[3]前記ブリッジ導体は、前記ワイヤ導体と接続せずに、前記第1短絡導体部と前記第2短絡導体部との間を前記長手方向に接続する、[2]に記載の車両用アンテナ装置。
【0010】
[4]前記アンテナは、少なくとも1つの給電部と、前記給電部と接続するアンテナエレメントと、を有し、前記給電部は、前記サンバイザが前記展開位置に位置するとき、前記ガラス板の平面視において、前記ワイヤ導体で囲まれた領域内に配置される、[1]から[3]のいずれかに記載の車両用アンテナ装置。
【0011】
[5]前記給電部は、芯線側給電部と、接地側給電部と、前記芯線側給電部と接続する、芯線側エレメントと、前記接地側給電部と接続する、接地側エレメントと、を有する、[4]に記載の車両用アンテナ装置。
【0012】
[6]前記第1短絡導体部及び前記第2短絡導体部の少なくとも一方は、前記サンバイザに搭載されるミラー用のブラケットである、[1]から[5]のいずれかに記載の車両用アンテナ装置。
【0013】
[7]前記第1短絡導体部及び前記第2短絡導体部の少なくとも一方は、前記サンバイザの平面視において、前記短手方向に離間した複数の固定部を有し、前記ブリッジ導体は、前記複数の固定部の間に配置される、[1]から[6]のいずれかに記載の車両用アンテナ装置。
【0014】
[8]前記サンバイザは、照明用の配線を有し、前記ブリッジ導体は、前記サンバイザの平面視において、前記配線の少なくとも一部と重なるように配置される、[1]から[7]のいずれかに記載の車両用アンテナ装置。
【0015】
[9]前記ワイヤ導体の内側には、前記短手方向に延伸する2つの導体が前記長手方向に離間する複数の間隙が形成され、前記第1短絡導体部と前記第2短絡導体部との前記長手方向における間隙は、前記複数の間隙のなかで、最も小さい、[1]から[8]のいずれかに記載の車両用アンテナ装置。
【0016】
[10]前記ブリッジ導体は、前記短手方向において5mm以上の幅を有する、[1]から[9]のいずれかに記載の車両用アンテナ装置。
【0017】
[11]前記アンテナは、UHF帯の電波を送受可能である、[1]から[10]のいずれかに記載の車両用アンテナ装置。
【0018】
[12]前記アンテナは、ITS帯の電波を送受可能である、[1]から[11]のいずれかに記載の車両用アンテナ装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、サンバイザの展開状態によらず、安定したアンテナ利得を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態による車両用アンテナ装置の一例を示す平面図である。
【
図2】本発明の実施形態によるサンバイザの一例を示す内部構成図である。
【
図3】実施例と比較例とサンバイザ格納時による車両用アンテナ装置のITSの周波数帯を含むアンテナ利得の実測結果を示すグラフである。
【
図4】実施例と比較例とサンバイザ格納時による車両用アンテナ装置のITSの中心周波数におけるアンテナの指向性の実測結果を示す図である。
【
図5】比較例によるサンバイザの内部構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態による車両用アンテナ装置について説明する。なお、理解の容易のため、図面における各部の縮尺は、実際とは異なる場合がある。平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向には、実施形態の効果を損なわない程度のずれが許容される。角部の形状は、直角に限られず、弓状に丸みを帯びてもよい。平行、直角、直交、水平、垂直には、略平行、略直角、略直交、略水平、略垂直が含まれてもよい。
【0022】
略平行、略水平とは、例えば、基準線(平行線、水平線)に対する角度が±15°以下を含んでもよく、±10°の範囲でもよく、±5°の範囲でもよく、±3°の範囲でもよい。基準線(平行線、水平線)に対する角度が0°に近づくと例えばアンテナの意匠性が向上する。
略直角、略直交、略垂直とは、例えば、2つの基準線又は基準面がなす角度の90°に対し±15°以下を含んでもよく、90°に対し±10°の範囲でもよく、90°に対し±5°の範囲でもよく、90°に対し±3°の範囲でもよい。2つの基準線又は基準面がなす角度に対する角度が90°に近づくと例えばアンテナの意匠性が向上する。
【0023】
また、以下では、車両用アンテナ装置のガラス板を窓枠に取り付けた状態で平面視したとき、水平面に平行な方向を水平方向と定義し、当該水平方向に直交する方向を垂直方向と定義する。図中に設定したXY座標において、X軸方向は、水平方向であり、Y軸方向は、垂直方向である。また、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0024】
本実施形態における車両用アンテナ装置のガラス板の適用例として、車両の前部に取り付けられるウィンドシールドが挙げられる。ただし、本実施形態における車両用アンテナ装置のガラス板は、ウィンドシールドに限られない。
【0025】
図1は、本発明の実施形態による車両用アンテナ装置1の一例を示す平面図である。
図1に示す車両用アンテナ装置1は、ガラス板10と、アンテナ20と、サンバイザ50と、を備える。ガラス板10は、例えば、車両の前部に取り付けられるウィンドシールドに適用される。また、
図1では、車体の窓枠2に取り付けられた状態のガラス板10を、車内側からの視点(車内視)で示している。
図1において、点線で示す窓枠2の開口部の外側には、ガラス板10の主面の周縁部と、窓枠2の金属部分とがウレタン樹脂等の接着剤で取り付けられる。
【0026】
ガラス板10は、平面視において略四角形の外形を有する。ガラス板10の外縁は、ガラス板10を窓枠2に取り付けたときに、垂直方向に対向する上縁11及び図示しない下縁と、水平方向に対向する左縁12(一方の側縁)及び図示しない右縁(他方の側縁)とを含む。
【0027】
なお、上縁11と左縁12は、曲率を有して接続されているが、曲率を有さずに接続されてもよい。その他の縁同士の接続部の形状も同様である。また、以下の説明では、アンテナ20がガラス板10の左上領域に配置された形態を示し、上縁11と接続するガラス板10の左縁12(一方の側縁)を基準に、アンテナ20の位置関係を説明する。なお、アンテナ20は、ガラス板10の左上領域に限らず、右上領域に配置される形態でもよい。その場合、以下の説明において、左縁12を基準とする位置関係を、図示しない右縁を基準とする位置関係に読み替えられる。
【0028】
アンテナ20は、ガラス板10に設けられる導体パターンである。アンテナ20は、所定周波数帯の電波を送受信可能に形成されている。なお、送受信可能とは、送信及び受信の少なくとも一方が可能である意味である。アンテナ20は、1つの周波数帯の電波を送受信可能に形成されてもよいし、異なる2つ以上の周波数帯の電波を送受信可能に形成されてもよい。異なる2つの周波数帯は、一部の周波数帯が重なる組み合わせでもよいし、全く重ならない周波数帯の組み合わせでもよい。アンテナ20は、少なくとも1つの所定周波数帯における周波数で共振する。
【0029】
アンテナ20は、例えば、UHF帯(300MHz~3GHz)の電波を送受信する。アンテナ20は、特に、ITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)で使用される電波(例えば、760MHz帯、帯域幅10MHz(755MHz~765MHz))の送受信に適している。
【0030】
アンテナ20は、双極型アンテナであって、芯線側給電部21、接地側給電部22、芯線側エレメント23、及び接地側エレメント24を有する。なお、アンテナ20は、単極型アンテナでもよく、この場合、例えば、特開2021-180438号公報に示す構成でもよい。つまり、アンテナ20は、少なくとも1つの給電部と、当該給電部と接続するアンテナエレメントと、を有すればよい。なお、以下では、アンテナ20が双極型アンテナを例にして説明する。
【0031】
アンテナ20は、例えば、導電性金属を含有するペースト(例えば、銀ペースト等)を、ガラス板10の車内側表面にプリントして焼き付けることによって形成される。しかし、アンテナ20の形成方法は、この方法に限定されない。例えば、アンテナ20は、銅等の導電性物質を含有する線状体又は箔状体をガラス板10の車内側表面又は車外側表面に設けることによって形成されてもよい。あるいは、アンテナ20は、ガラス板10に接着剤等により貼付されてもよく、ガラス板10自体の内部に設けられてもよい。
【0032】
さらに、ガラス板10は、ガラス板10の平面視において外周縁部に所定幅の図示しない遮光膜を有してもよい。遮光膜は、可視光を遮光すればよく、例えば、黒色セラミックス膜が挙げられる。遮光膜は、ガラス板10の車内側の表面に配置してもよく、この場合、アンテナ20の少なくとも一部は、遮光膜の表面に形成されてもよい。また、ガラス板10は、2枚のガラス板を、ポリビニルブチラール(PVB)やエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)系樹脂等の中間層で挟持した合わせガラスで構成される場合、遮光膜は車外側のガラス板と中間層との界面に配置してもよい。なお、ガラス板10が遮光膜を有する場合、ガラス板10の平面視において、遮光膜を有する領域を遮光領域と、遮光領域よりも内側で可視光を透過する透過領域とに分けられる。
【0033】
芯線側給電部21は、矩形状に形成された導体パターンであり、図示しない同軸ケーブルの芯線の一端に電気的に接続されている。なお、芯線側給電部21に接続される伝送線路は、同軸ケーブルに限らず、マイクロストリップライン、ストリップライン、コプレーナライン、スロットライン等も使用できる。以降、特にことわりが無い場合、伝送線路は同軸ケーブルとして説明する。また、芯線側給電部21の形状は、円形や他の多角形等の他の形状でもよい。
【0034】
芯線側給電部21は、ガラス板10を車体に取り付けたときに、ガラス板10の上縁11に沿って配置される。接地側給電部22は、ガラス板10を車体に取り付けたときに、ガラス板10の上縁11に沿って配置されると共に、上縁11と接続するガラス板10の左縁12を基準に、芯線側給電部21よりも離れて配置される。接地側給電部22は、矩形状に形成された導体パターンであり、図示しない同軸ケーブルの外部導体に電気的に接続されている。なお、接地側給電部22の形状は、円形や他の多角形等の他の形状でもよい。図示しない同軸ケーブルは、車体側まで延び、アンテナ20が送受信する信号を処理する図示しないECU(Electronic Control Unit)と接続される。
【0035】
芯線側エレメント23は、芯線側給電部21と接続する線状の導体パターンである。芯線側エレメント23は、芯線側第1垂直エレメント31と、芯線側第2垂直エレメント32と、芯線側接続エレメント33と、を有する。芯線側第1垂直エレメント31は、芯線側給電部21と電気的に接続し、左縁12に沿って延伸する。具体的に、芯線側第1垂直エレメント31は、ガラス板10の上縁11の近傍から、図示しない下縁に向かって(上縁11から離れるように)垂直方向(負のY軸方向)に延伸する。なお、芯線側第1垂直エレメント31の下端は、開放端31aとされている。
【0036】
芯線側第2垂直エレメント32は、芯線側給電部21と電気的に接続し、左縁12に沿って延伸すると共に、左縁12を基準に、芯線側第1垂直エレメント31よりも離れて配置される。具体的に、芯線側第2垂直エレメント32は、芯線側給電部21と接続し、ガラス板10の図示しない下縁に向かって(上縁11から離れるように)垂直方向(負のY軸方向)に延伸する。なお、芯線側第2垂直エレメント32の下端は、開放端32aとされている。
【0037】
ところで、ガラス板10(ウィンドシールド)には、導体を含む点検ステッカー3が貼り付けられる場合がある。点検ステッカー3は、例えば、車両の定期点検時期を知らせる定期点検シールであり、助手席が左側にある車両の場合、ガラス板10の左上領域に貼り付けられる。点検ステッカー3は、金属(例えば、アルミニウム)を含有している。
図1に示すように、芯線側第1垂直エレメント31は、左縁12と点検ステッカー3との間に配置されてもよい。芯線側第2垂直エレメント32は、左縁12を基準に、点検ステッカー3よりも離れて配置される。つまり、点検ステッカー3は、芯線側第1垂直エレメント31と芯線側第2垂直エレメント32との間の領域に、芯線側第1垂直エレメント31及び芯線側第2垂直エレメント32と接しないように貼り付けられてもよい。
【0038】
芯線側接続エレメント33は、芯線側水平エレメント34と、芯線側湾曲エレメント35と、を有する。芯線側水平エレメント34は、芯線側第2垂直エレメント32と接続し、左縁12に向かって水平方向に延伸する。芯線側湾曲エレメント35は、芯線側水平エレメント34の終端(左端)と接続し、点検ステッカー3の周縁に沿って湾曲する。芯線側湾曲エレメント35の終端は、芯線側第1垂直エレメント31の始端(上端)と接続する。
【0039】
なお、芯線側接続エレメント33は、芯線側水平エレメント34及び芯線側湾曲エレメント35の少なくとも一方を有すればよい。例えば、芯線側接続エレメント33が、芯線側水平エレメント34のみ有する場合、芯線側水平エレメント34と芯線側第1垂直エレメント31が、略直角のL字状に形成される。一方、芯線側接続エレメント33が、芯線側湾曲エレメント35のみ有する場合、芯線側第2垂直エレメント32の接続点を起点に(負のY軸方向の成分を有して)上縁11から離れるように湾曲して芯線側第1垂直エレメント31と接続する形状を有する。
【0040】
接地側エレメント24は、接地側給電部22と接続し、ガラス板10の図示しない下縁に向かって(上縁11から離れるように)垂直方向(負のY軸方向)に延伸する接地側垂直エレメント41を有する。この接地側垂直エレメント41の下端は、開放端41aとされている。芯線側第2垂直エレメント32と接地側垂直エレメント41は、水平接続エレメント29を介して接続されている。水平接続エレメント29は、上縁11に向かって開口し、芯線側給電部21と接地側給電部22との間を接続する半ループ状のエレメント回路を形成している。
なお、芯線側エレメント23及び接地側エレメント24は、所定周波数帯の電波を送受信できる構成であればよく、例えば、
図1に示すアンテナ20の任意の箇所に、図示しない補助エレメントを接続してもよい。また、水平接続エレメント29は、任意で設けてもよく、芯線側給電部21から延伸する芯線側エレメント23と、接地側給電部22から延伸する接地側エレメント24とは、接続されない形状でもよい。
【0041】
サンバイザ50は、車体(車室内)に取り付けられ、ガラス板10に近づく展開位置(
図1において二点鎖線で示す)と、展開位置よりもガラス板10から離れる図示しない格納位置との間で移動可能である。サンバイザ50は、サンバイザ本体51と、ミラー部材52と、照明装置53と、を備えている。サンバイザ本体51は、サンバイザ50が展開位置に位置するとき、水平方向(X軸方向)を長手方向とし、垂直方向(Y軸方向)を短手方向とする略長方形の形状を有する。
【0042】
図1の例において、サンバイザ本体51の上辺の右側部分には、回転軸51aを露出させる凹部51bが形成されている。回転軸51aは、長手方向(X軸方向)に延び、車体に設けられた図示しない軸受によって軸支されている。サンバイザ50は、回転軸51aを中心とする軸回りに回転することで、
図1に示す展開位置と、図示しない格納位置との間で移動する。
【0043】
ミラー部材52は、サンバイザ50が展開位置に位置するとき、サンバイザ本体51の車体側を向く面に取り付けられている。なお、ミラー部材52は、図示しないミラー用カバーの背面側に配置されてもよい。照明装置53は、サンバイザ50が展開位置に位置するとき、サンバイザ本体51の車体側を向く面であって、ミラー部材52の近傍に取り付けられている。なお、照明装置53は、図示しないミラー用カバーの開閉に応じて、点灯または消灯してもよい。
【0044】
図2は、本発明の実施形態によるサンバイザ50の一例を示す内部構成図である。
図2に示すように、サンバイザ50は、サンバイザ本体51の内部に、ワイヤ導体60と、補強プレート70と、配線スリーブ80と、ブリッジ導体100と、を備えている。なお、サンバイザ本体51は、発泡スチロール等の図示しないクッション材と、当該クッション材の表面を覆う図示しないカバー材と、を含んで形成されている。
【0045】
図2において、ワイヤ導体60は、サンバイザ50の外周に沿って、略長方形のループ状に形成されている。ワイヤ導体60は、サンバイザ50の長手方向(X軸方向)に延伸すると共に、サンバイザ50の短手方向(Y軸方向)に離間する第1ワイヤ導体部61及び第2ワイヤ導体部62を、少なくとも含む。なお、ワイヤ導体60は、第1ワイヤ導体部61及び第2ワイヤ導体部62を少なくとも含んでいれば、半ループ形状でもよい。ここで、半ループ形状とは、ワイヤ状の導体で構成され、閉ループではなく、切り欠き部を有してループ状(半ループ形状)となる形状を指す。具体的に、「半ループ形状」とは、サンバイザ50が展開位置に位置するとき、ガラス板10の平面視において、少なくとも「U字状」、「C字状」、「J字状」、「L字状」、「Π字状」又は「Ω字状」の形状を含む。
【0046】
図2に示すワイヤ導体60は、第1ワイヤ導体部61及び第2ワイヤ導体部62に加え、第3ワイヤ導体部63及び第4ワイヤ導体部64を含む。第3ワイヤ導体部63及び第4ワイヤ導体部64は、サンバイザ50の短手方向(Y軸方向)に延伸すると共に、サンバイザ50の長手方向(X軸方向)に離間する。
【0047】
図2に示すように、第1ワイヤ導体部61は、サンバイザ50の上辺に沿って長手方向に延伸している。第1ワイヤ導体部61は、第1直線部61aと、傾斜部61bと、第2直線部61cと、を有してもよい。また、第1ワイヤ導体部61は、
図2の形状に限らず、第2ワイヤ導体部62と略平行し、第3ワイヤ導体部63及び第4ワイヤ導体部64と接続する直線状に延伸する形状でもよい。
図2に示す第1直線部61aは、サンバイザ50の上辺の左側に配置されている。第2直線部61cは、サンバイザ50の上辺の右側に配置されている。傾斜部61bは、第1直線部61aと第2直線部61cとの間を接続している。なお、第2直線部61cの一部は、サンバイザ本体51の凹部51bから露出し、回転軸51aを形成している。
【0048】
図2において、第1直線部61aは、サンバイザ50の上辺の左側に配置され、第3ワイヤ導体部63の上端と接続するとともに、X軸方向と平行に延伸している。傾斜部61bは、第1直線部61aの右端に連設され、サンバイザ50の下辺(第2ワイヤ導体部62)から離れるように、X軸方向と交差する斜め方向に延伸している。第2直線部61cは、傾斜部61bの右端(上端)に連設され、第4ワイヤ導体部64の上端までX軸方向と平行に延伸している。
【0049】
第3ワイヤ導体部63は、サンバイザ50の左辺に沿って短手方向(Y軸方向)に延伸している。第3ワイヤ導体部63は、第1ワイヤ導体部61の左端に連設され、第2ワイヤ導体部62に向かって(第1ワイヤ導体部61から離れるように)垂直方向(負のY軸方向)に延伸する。
【0050】
第4ワイヤ導体部64は、サンバイザ50の右辺に沿って短手方向(Y軸方向)に延伸している。第4ワイヤ導体部64は、第1ワイヤ導体部61の右端に連設され、第2ワイヤ導体部62に向かって(第1ワイヤ導体部61から離れるように)垂直方向(負のY軸方向)に延伸する。
【0051】
第2ワイヤ導体部62は、サンバイザ50の下辺に沿って長手方向(X軸方向)に延伸している。第2ワイヤ導体部62は、第3ワイヤ導体部63の下端から第4ワイヤ導体部64の下端まで、X軸方向と平行に延伸している。
【0052】
図2において、補強プレート70は、第1ワイヤ導体部61と第2ワイヤ導体部62との間を短手方向(Y軸方向)に接続すると共に、長手方向(X軸方向)に離間する第1短絡導体部71及び第2短絡導体部72を含む。第1短絡導体部71及び第2短絡導体部72は、ワイヤ導体60の内側で、第1ワイヤ導体部61と第2ワイヤ導体部62との間を短手方向に接続している。
【0053】
第1短絡導体部71は、第1ワイヤ導体部61の第1直線部61aと第2ワイヤ導体部62との間を短手方向に接続している。また、第2短絡導体部72は、第1ワイヤ導体部61の第2直線部61cと第2ワイヤ導体部62との間を短手方向に接続している。第1短絡導体部71及び第2短絡導体部72は、例えば、X軸方向に所定幅を有し、Y軸方向に延伸する帯状の金属プレートであり、その上端及び下端が溶接等により機械的及び電気的にワイヤ導体60と接続されている。
【0054】
第1短絡導体部71及び第2短絡導体部72の少なくとも一方(本実施形態では第2短絡導体部72)は、サンバイザ50に搭載されるミラー用のブラケットである。第2短絡導体部72には、サンバイザ50の平面視において、短手方向に離間した複数(本実施形態では2つ)の固定部73が設けられている。固定部73としては、典型的にはビス止めであるが、ビス以外にも、ネジやピン、リベット等の公知の固定構造を使用できる。また、固定部73の数は、3つ以上有してもよい。固定部73には、例えば、上述したミラー部材52、及び照明装置53を一体化したユニットが取り付けられる。
【0055】
第2短絡導体部72の複数の固定部73の間には、照明装置53と接続されるコネクタ93が配置されている。コネクタ93には、アーム101の内部を通る配線90の電源線91及びアース線92が接続されている。アーム101は、車体側から延び、配線スリーブ80を介してサンバイザ50を回動可能に支持する。配線スリーブ80は、例えば、樹脂成形部品であり、アーム101及び配線90をX軸方向に通す貫通孔が形成されたケース部81と、ケース部81をワイヤ導体60に取り付ける取付部82と、を備えている。ケース部81は、ワイヤ導体60の外側であって、第1ワイヤ導体部61の第1直線部61aと第2直線部61cとのY軸方向の段差空間に配置されている。取付部82は、例えば、第1直線部61aをクランプすることで、ケース部81を第1直線部61aに取り付ける。
【0056】
本実施形態では、アンテナ20の少なくとも一部が、サンバイザ50の展開位置に位置するとき、アンテナ20の少なくとも一部は、ガラス板10の平面視において、ワイヤ導体60で囲まれた領域内に配置される。具体的に、アンテナ20の芯線側給電部21は、ワイヤ導体60の内側であって、第1ワイヤ導体部61の第1直線部61a、第1短絡導体部71、第2ワイヤ導体部62、及び第3ワイヤ導体部63によって囲まれた領域内に配置される(
図1参照)。また、アンテナ20の接地側給電部22は、ワイヤ導体60の内側であって、第1短絡導体部71と重なる位置に配置される(
図1参照)。
【0057】
図2において、ブリッジ導体100は、第1短絡導体部71と第2短絡導体部72との間を長手方向(水平方向)に接続する。ブリッジ導体100は、ワイヤ導体60と接続せずに、第1短絡導体部71と第2短絡導体部72との間を長手方向に接続する。なお、ブリッジ導体100は、第1短絡導体部71及び第2短絡導体部72側の両端部の少なくとも一方が、さらにX軸方向に延伸し、第3ワイヤ導体部63及び第4ワイヤ導体部64の少なくとも一方と接続されてもよい。
【0058】
ブリッジ導体100は、例えば、導電性テープから形成されている。導電性テープとしては、銅テープ、銀テープ、金テープ、アルミテープ等を例示できる。なお、ブリッジ導体100は、導体であれば、フィルム、シート、プレート、ワイヤ、配線、線状エレメント等でもよい。
【0059】
ブリッジ導体100は、第2短絡導体部72において複数の固定部73の間に配置されてもよい。ブリッジ導体100の短手方向の幅W1は、5mm以上であり、10mm以上が好ましく、15mm以上がより好ましい。ブリッジ導体100の短手方向の幅W1の上限は、ブリッジ導体100の貼り付け性の観点から、短手方向(Y軸方向)で隣り合う固定部73の間隙以下であればよい。ブリッジ導体100は、サンバイザ50の平面視において、配線90の少なくとも一部(電源線91及びアース線92の一部)と重なるように配置される。
【0060】
ワイヤ導体60の内側には、短手方向に延伸する2つの導体が長手方向に離間する複数の間隙(D1,D2,D3)が形成される。間隙D1は、第1短絡導体部71と第2短絡導体部72とが長手方向に離間して形成される。また、間隙D2は、第3ワイヤ導体部63と第1短絡導体部71とが長手方向に離間して形成される。また、間隙D3は、第2短絡導体部72と第4ワイヤ導体部64が長手方向に離間して形成される。
図2に示す例では、ブリッジ導体100が配置される、第1短絡導体部71と第2短絡導体部72との長手方向における間隙D1は、複数の間隙(D1,D2,D3)のなかで、最も短い。
【0061】
また、ブリッジ導体100の長手方向の長さL1は、間隙D1よりも長い。間隙D1が例えば40mmとすると、ブリッジ導体100の長さL1は、40mm以上であればよく、第1短絡導体部71及び第2短絡導体部72に対し重なる部分がそれぞれ5mm以上とすると、長さL1は、50mm以上が好ましく、第1短絡導体部71及び第2短絡導体部72に対し重なる部分がそれぞれ10mm以上とすると、長さL1は、60mm以上がより好ましい。
【0062】
以上の通り、本実施形態の車両用アンテナ装置1は、車体に取り付けられるガラス板10と、ガラス板10に設けられ、所定周波数帯の電波を送受信するアンテナ20と、車体に取り付けられ、ガラス板10の平面視において、アンテナ20の少なくとも一部と重なる展開位置に移動可能なサンバイザ50と、を備え、サンバイザ50は、サンバイザ50の長手方向に延伸すると共に、サンバイザ50の短手方向に離間する第1ワイヤ導体部61及び第2ワイヤ導体部62を、少なくとも含むワイヤ導体60と、第1ワイヤ導体部61と第2ワイヤ導体部62との間を短手方向に接続すると共に、長手方向に離間する第1短絡導体部71及び第2短絡導体部72と、第1短絡導体部71と第2短絡導体部72との間を長手方向に接続するブリッジ導体100と、を有する。
この構成によれば、サンバイザ50が展開位置に位置するとき、ワイヤ導体60、第1短絡導体部71及び第2短絡導体部72によって形成される複数のループ回路のいずれかが、アンテナ20の所定周波数帯で共振してしまう長さであっても、ブリッジ導体100による短絡によって、そのループ回路に定在波が発生しない長さに調整できるため、アンテナ利得の低下を抑制できる。
したがって、サンバイザ50の展開状態によらず、安定したアンテナ利得を実現できる車両用アンテナ装置1が得られる。
【0063】
また、本実施形態では、第1短絡導体部71及び第2短絡導体部72は、ワイヤ導体60の内側で、第1ワイヤ導体部61と第2ワイヤ導体部62との間を短手方向に接続する。さらに、ブリッジ導体100は、ワイヤ導体60と接続せずに、第1短絡導体部71と第2短絡導体部72との間を長手方向に接続する。この構成によれば、ブリッジ導体100をワイヤ導体60まで延伸させずに、アンテナ利得の低下を抑制できる。
【0064】
また、本実施形態では、アンテナ20は、少なくとも1つの給電部(芯線側給電部21、接地側給電部22)と、給電部と接続するアンテナエレメント(芯線側エレメント23、接地側エレメント24)と、を有し、給電部(芯線側給電部21、接地側給電部22)は、サンバイザ50が展開位置に位置するとき、ガラス板10の平面視において、ワイヤ導体60で囲まれた領域内の少なくとも一部に配置される。この構成によれば、サンバイザ50が展開位置に位置するときにワイヤ導体60で囲まれた領域内にアンテナ20(の少なくとも一部)が配置される場合でも、安定したアンテナ利得を実現できる。
【0065】
また、本実施形態では、第1短絡導体部71及び第2短絡導体部72の少なくとも一方(本実施形態では第2短絡導体部72)は、サンバイザ50に搭載されるミラー用のブラケットであり、第2短絡導体部72は、サンバイザ50の平面視において、短手方向に離間した複数の固定部73を有し、ブリッジ導体100は、複数の固定部73の間に配置される。この構成によれば、複数の固定部73と干渉させずに、ブリッジ導体100を配置できる。
【0066】
また、本実施形態では、サンバイザ50は、照明用の配線90を有し、ブリッジ導体100は、サンバイザ50の平面視において、配線90の少なくとも一部と重なるように配置される。この構成によれば、照明用の配線90の少なくとも一部と重なるように、ブリッジ導体100が配置されるため、配線90がむき出しにならずに、配線90の機械的損傷を低減できる。
【0067】
また、本実施形態では、ワイヤ導体60の内側には、短手方向に延伸する2つの導体が長手方向に離間する複数の間隙(D1,D2,D3)が形成され、第1短絡導体部71と第2短絡導体部72との長手方向における間隙D1は、複数の間隙(D1,D2,D3)のなかで、最も小さい。この構成によれば、ブリッジ導体100を必要最低限の長さで配置できる。
【0068】
また、本実施形態では、ブリッジ導体100は、短手方向において5mm以上の幅を有する。この構成によれば、サンバイザ50の展開状態によらず、所定周波数帯の安定したアンテナ利得を実現できる。
【0069】
また、本実施形態では、アンテナ20は、UHF帯であって、特にITS帯の電波を送受可能である。この構成によれば、サンバイザ50の展開状態によらず、ITSで使用する周波数帯の安定したアンテナ利得を実現できる。
【0070】
以上、本発明の実施形態による車両用窓ガラスについて説明したが、本発明は上記実施形態に制限されず、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、各実施形態の一部又は全部を組み合わせて実施してもよい。
【実施例0071】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかにする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されず、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施できる。
【0072】
実施例による車両用アンテナ装置1は、ウィンドシールドの主面にアンテナ20を形成し、サンバイザ50を展開させた状態で、アンテナ20とサンバイザ50とが重なる配置において、ブリッジ導体100を以下の寸法で備えた。実施例によるブリッジ導体100は、短手方向の幅W1が15mmである。また、ブリッジ導体100は、長手方向の長さL1が60mmである。なお、第1短絡導体部71と第2短絡導体部72との長手方向における間隙D1は、40mmである。
比較例による車両用アンテナ装置は、上記実施例による車両用アンテナ装置1において、ブリッジ導体100を無くしたものである。
【0073】
図3は、実施例と比較例とサンバイザ格納時(非展開時)による車両用アンテナ装置1のITSの周波数帯(760MHz帯、帯域幅10MHz(755MHz~765MHz))を含むアンテナ利得の実測結果を示すグラフである。
図4は、実施例と比較例とサンバイザ格納時による車両用アンテナ装置1のITSの中心周波数(760MHz)におけるアンテナの指向性の実測結果を示す図である。なお、
図3及び
図4において、実線は実施例を示し、点線は比較例を示し、二点鎖線はサンバイザ格納時を示す。
【0074】
図3では、横軸に周波数(MHz)を示し、縦軸にアンテナ利得(dBi)を示す。また、
図4では、水平面内において、共振周波数760MHzで測定されたアンテナ利得を表す。
図4に示される同心円について、上側、下側、右側、左側は、それぞれ、同心円の中心に位置する車両を天頂から見たときの車両前方、車両後方、車両右方、車両左方を表す。単位はdBiである。
図3及び
図4を参照すると、比較例では、サンバイザ50の展開状態において、サンバイザ50の格納状態(バイザ格納)と比べて、特に車両前方のアンテナ利得が低下した。一方、実施例では、サンバイザ50の展開状態において、サンバイザ50の格納状態(バイザ格納)と大差ない、安定したアンテナ利得を実現できることが確認できた。
【0075】
なお、実施例による車両用アンテナ装置1は、
図2に示す、第1ワイヤ導体部61の第1直線部61a、傾斜部61b、第2短絡導体部72、第2短絡導体部72の下端から第3ワイヤ導体部63の下端までの第2ワイヤ導体部62、及び第3ワイヤ導体部63の合計の長さ(特定のループ回路の長さ)が、約415mmである。なお、ITSで使用する周波数帯の中心周波数は、760MHzであり、その中心波長(λ)は、394mmとなる。つまり、415mmは、394mm(≒λ)に近しい。したがって、比較例において、ブリッジ導体100が無い場合、
図5に示す構成、即ち、特定ループ回路の長さが所定の(中心)周波数の波長に近くなる。
【0076】
図5は、比較例によるサンバイザ50の内部構成図である。
図5に示す比較例では、ブリッジ導体100が無いため、第1ワイヤ導体部61の第1直線部61a、傾斜部61b、第2短絡導体部72、第2短絡導体部72の下端から第3ワイヤ導体部63の下端までの第2ワイヤ導体部62、及び第3ワイヤ導体部63を含むループ回路110が形成される。このループ回路110の長さは、760MHzの中心波長と略等しい。よって、サンバイザ50がアンテナ20に近づくと、ループ回路110が760MHz帯において共振し、その結果、アンテナ利得が低下すると推察される。
一方、実施例によれば、第1短絡導体部71と第2短絡導体部72との間に、
図2に示すようにブリッジ導体100を配置したため、ループ回路110において定在波が発生しない長さになり、ITSで使用する周波数帯の安定したアンテナ利得を実現できる。
【0077】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【0078】
例えば、上記実施形態及び上記実施例では、第1短絡導体部及び第2短絡導体部として、ワイヤ導体60の内側に配置された補強プレート70を例示したが、第1短絡導体部及び第2短絡導体部の少なくとも一方は、ワイヤ導体60の第3ワイヤ導体部63及び第4ワイヤ導体部64の少なくとも一方であってもよい。
すなわち、
図2で説明すると、補強プレート70が無い場合、ブリッジ導体100は、第3ワイヤ導体部63と第4ワイヤ導体部64との間を接続してもよい。また、第2短絡導体部72が無い場合、ブリッジ導体100は、第3ワイヤ導体部63と第1短絡導体部71との間を接続してもよいし、第1短絡導体部71と第4ワイヤ導体部64との間を接続してもよい。また、第1短絡導体部71が無い場合、ブリッジ導体100は、第3ワイヤ導体部63と第2短絡導体部72との間を接続してもよいし、第2短絡導体部72と第4ワイヤ導体部64との間を接続してもよい。