(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083939
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】樹脂組成物、ペレット、複合体、および、成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 67/03 20060101AFI20240617BHJP
C08L 25/04 20060101ALI20240617BHJP
C08K 7/04 20060101ALI20240617BHJP
C08L 69/00 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
C08L67/03 ZAB
C08L25/04
C08K7/04
C08L69/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198040
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆行
(72)【発明者】
【氏名】庄司 英和
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BC02X
4J002BC114
4J002BG084
4J002CD124
4J002CF07W
4J002CG003
4J002CG013
4J002CG034
4J002DA016
4J002DE128
4J002DE146
4J002DL006
4J002EU057
4J002EW137
4J002FA046
4J002FD016
4J002FD134
4J002FD137
4J002FD138
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】 リサイクル品の熱可塑性樹脂を用いつつ、バージン品の熱可塑性樹脂を用いた場合と同等の性能を有する樹脂組成物、ならびに、ペレット、複合体、および、成形品の提供。
【解決手段】 ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、繊維状無機充填材10~100質量部と、難燃剤0.1~40質量部とを含み、ポリスチレン系樹脂がリサイクル品を含み、ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)が2.00×105以上であり、ポリスチレン系樹脂が灰分を0.001~10質量%の割合で含む、樹脂組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、
繊維状無機充填材10~100質量部と、
難燃剤0.1~40質量部とを含み、
ポリスチレン系樹脂がリサイクル品を含み、
ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)が2.00×105以上であり、
ポリスチレン系樹脂が灰分を0.001~10質量%の割合で含む、
樹脂組成物。
【請求項2】
前記難燃剤がハロゲン系難燃剤を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記難燃剤が臭素系難燃剤を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、ポリカーボネート樹脂を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、難燃助剤を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記難燃剤が臭素系難燃剤を含み、
さらに、ポリカーボネート樹脂を含み、
さらに、難燃助剤を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂組成物を1.6mm厚さの試験片に成形し、UL-94試験を行ったとき、V-0を満たす、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
他の部材と接着剤を用いて接着させる部材に用いる、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
他の部材との接着に用いられる接着剤が、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤および、ウレタン系接着剤の少なくとも1種を含む、請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記接着剤を用いる場合の、他の部材が、樹脂、金属、および、ガラスの少なくとも1種を含む、請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~3および6のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成された成形品。
【請求項12】
請求項1~3および6のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成された成形品と、他の部材との間に接着剤層を有する、複合体。
【請求項13】
請求項1~3および6のいずれか1項に記載の樹脂組成物のペレット。
【請求項14】
請求項13に記載のペレットから形成された成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、ペレット、複合体、および、成形品に関する。特に、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂を主要成分とする樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、機械的性能、電気特性、加工特性等に優れるという特長を有し、各種用途に広く用いられている。
ポリブチレンテレフタレート樹脂に各種機能を持たせるために、ポリスチレン系樹脂を配合することがある。また、このようなポリブチレンテレフタレート樹脂を含む樹脂組成物を各種用途に用いるに際し、射出成形することが広く行われている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-161335号公報
【特許文献2】国際公開第2018/143100号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、資源の有効活用の観点から、熱可塑性樹脂のリサイクルが検討されている。しかしながら、リサイクル品の熱可塑性樹脂を用いると、バージン品の熱可塑性樹脂を用いた場合に比べて、各種性能が劣ってしまう。
本発明は、かかる課題を解決することを目的としたものであって、リサイクル品の熱可塑性樹脂を用いつつ、バージン品の熱可塑性樹脂を用いた場合と同等の性能を有する樹脂組成物、ならびに、ペレット、複合体、および、成形品を提供することを目的とする。特に、機械的強度および難燃性について、バージン品の熱可塑性樹脂を用いた場合と同等の性能を達成する樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、リサイクル品であって所定の性能を有するポリスチレン系樹脂を用いることにより、上記課題を解決しうることを見出した。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、
繊維状無機充填材10~100質量部と、
難燃剤0.1~40質量部とを含み、
ポリスチレン系樹脂がリサイクル品を含み、
ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)が2.00×105以上であり、
ポリスチレン系樹脂が灰分を0.001~10質量%の割合で含む、
樹脂組成物。
<2>前記難燃剤がハロゲン系難燃剤を含む、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記難燃剤が臭素系難燃剤を含む、<1>に記載の樹脂組成物。
<4>さらに、ポリカーボネート樹脂を含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5>さらに、難燃助剤を含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6>前記難燃剤が臭素系難燃剤を含み、
さらに、ポリカーボネート樹脂を含み、
さらに、難燃助剤を含む、<1>に記載の樹脂組成物。
<7>前記樹脂組成物を1.6mm厚さの試験片に成形し、UL-94試験を行ったとき、V-0を満たす、<1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<8>他の部材と接着剤を用いて接着させる部材に用いる、<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<9>他の部材との接着に用いられる接着剤が、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤および、ウレタン系接着剤の少なくとも1種を含む、<8>に記載の樹脂組成物。
<10>前記接着剤を用いる場合の、他の部材が、樹脂、金属、および、ガラスの少なくとも1種を含む、<8>または<9>に記載の樹脂組成物。
<11><1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された成形品。
<12><1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された成形品と、他の部材との間に接着剤層を有する、複合体。
<13><1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物のペレット。
<14><13>に記載のペレットから形成された成形品。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、リサイクル品の熱可塑性樹脂を用いつつ、バージン品の熱可塑性樹脂を用いた場合と同等の性能を有する樹脂組成物、ならびに、ペレット、複合体、および、成形品を提供可能になった。特に、機械的強度および難燃性について、バージン品の熱可塑性樹脂を用いた場合と同等の性能を達成する樹脂組成物を提供可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書で示す規格で説明される測定方法等が年度によって異なる場合、特に述べない限り、2022年1月1日時点における規格に基づくものとする。
【0008】
本実施形態の樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、繊維状無機充填材10~100質量部と、難燃剤0.1~40質量部とを含み、ポリスチレン系樹脂がリサイクル品を含み、ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)が2.00×105以上であり、ポリスチレン系樹脂が灰分を0.001~10質量%の割合で含むことを特徴とする。このような構成とすることにより、リサイクル品のポリスチレン系樹脂を用いながら、バージン品のポリスチレン系樹脂を用いた場合と同等の性能を達成できる。特に、機械的強度および難燃性について同等程度の性能を達成できる。さらに、他の部材との接着性を高めることができる。
本発明者が検討したところ、スチレン系樹脂のリサイクル品であっても、分子量が大きく、灰分が少ない場合、バージン品のポリスチレン系樹脂を用いた場合と同等の機械的強度や難燃性を達成できることを見出した。さらに、他の部材との接着性に優れた成形品が得られることを見出した。
以下、本発明の詳細について説明する。
【0009】
<ポリブチレンテレフタレート樹脂>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂を含む。
本実施形態の樹脂組成物に用いるポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸単位および1,4-ブタンジオール単位がエステル結合した構造を有するポリエステル樹脂であって、ポリブチレンテレフタレート樹脂(ホモポリマー)の他に、テレフタル酸単位および1,4-ブタンジオール単位以外の、他の共重合成分を含むポリブチレンテレフタレート共重合体や、ホモポリマーとポリブチレンテレフタレート共重合体との混合物を含む。
【0010】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸以外のジカルボン酸単位を1種または2種以上含んでいてもよい。
他のジカルボン酸の具体例としては、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル-2,2’-ジカルボン酸、ビフェニル-3,3’-ジカルボン酸、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ビス(4,4’-カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類、1,4-シクロへキサンジカルボン酸、4,4’-ジシクロヘキシルジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸類、および、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類等が挙げられる。
本実施形態で用いるポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸単位が全ジカルボン酸単位の80モル%以上を占めることが好ましく、90モル%以上を占めることがより好ましく、95モル%以上を占めることがさらに一層好ましく、99モル%以上であってもよい。
【0011】
ジオール単位としては、1,4-ブタンジオールの外に1種または2種以上の他のジオール単位を含んでいてもよい。
他のジオール単位の具体例としては、炭素数2~20の脂肪族または脂環族ジオール類、ビスフェノール誘導体類等が挙げられる。具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、4,4’-ジシクロヘキシルヒドロキシメタン、4,4’-ジシクロヘキシルヒドロキシプロパン、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加ジオール等が挙げられる。また、上記のような二官能性モノマー以外に、分岐構造を導入するためトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三官能性モノマーや分子量調節のため脂肪酸等の単官能性化合物を少量併用することもできる。
本実施形態で用いるポリブチレンテレフタレート樹脂は、1,4-ブタンジオール単位が全ジオール単位の80モル%以上を占めることが好ましく、90モル%以上を占めることがより好ましく、95モル%以上を占めることがさらに一層好ましく、99モル%以上であってもよい。
【0012】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、上記した通り、テレフタル酸と1,4-ブタンジオールとを重縮合させたポリブチレンテレフタレート単独重合体が好ましい。また、カルボン酸単位として、前記テレフタル酸以外のジカルボン酸1種以上および/またはジオール単位として、前記1,4-ブタンジオール以外のジオール1種以上を含むポリブチレンテレフタレート共重合体であってもよい。ポリブチレンテレフタレート樹脂が、共重合により変性したポリブチレンテレフタレート樹脂である場合、その具体的な好ましい共重合体としては、ポリアルキレングリコール類、特にはポリテトラメチレングリコールを共重合したポリエステルエーテル樹脂や、ダイマー酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂、イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂が挙げられる。中でも、ポリテトラメチレングリコールを共重合したポリエステルエーテル樹脂を用いることが好ましい。
なお、ポリブチレンテレフタレート樹脂が共重合体である場合、共重合量が、ポリブチレンテレフタレート樹脂全単位中の1モル%以上、50モル%未満のものをいう。中でも、共重合量が、好ましくは2モル%以上50モル%未満、より好ましくは3~40モル%、さらに好ましくは5~20モル%である。このような共重合割合とすることにより、成形収縮率が小さくおよび耐衝撃性が高い成形品が得られるため好ましい。
【0013】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、末端カルボキシル基量は、適宜選択して決定すればよいが、通常、60eq/ton以下であり、50eq/ton以下であることが好ましく、30eq/ton以下であることがさらに好ましい。上記上限値以下とすることにより、耐アルカリ性および耐加水分解性が向上する傾向にある。末端カルボキシル基量の下限値は特に定めるものではないが、ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造の生産性を考慮し、5eq/ton以上が好ましい。
【0014】
なお、ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、ベンジルアルコール25mLにポリブチレンテレフタレート樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/Lのベンジルアルコール溶液を用いて滴定により測定する値である。末端カルボキシル基量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調整する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
【0015】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、0.5dL/g以上であることが好ましく、0.6dL/g以上であることがより好ましい。前記固有粘度は、2dL/g以下であることが好ましく、1.5dL/g以下であることがより好ましく、1.4dL/g以下であることがさらに好ましく、1.3dL/g以下であることがより一層好ましく、1.26dL/g以下であることがさらに一層好ましく、1.0dL/g以下、0.9dL/g以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、成形性がより向上する傾向にある。
【0016】
固有粘度は以下の方法で測定される。
フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン(質量比1/1)の混合溶媒中に、ポリブチレンテレフタレート樹脂ペレットを、濃度が1.00g/dLとなるように110℃で1時間攪拌して溶解させる。その後、30℃まで冷却する。全自動溶液粘度計にて、30℃で試料溶液の落下秒数、溶媒のみの落下秒数をそれぞれ測定し、式により固有粘度を算出する。
固有粘度=((1+4KHηsp)0.5-1)/(2KHC)
ここで、ηsp=η/η0-1であり、ηは試料溶液の落下秒数、η0は溶媒のみの落下秒数、Cは試料溶液濃度(g/dL)、KHはハギンズの定数である。KHは0.33を採用した。
全自動溶液粘度計は、柴山科学社製のものを用いる。
本実施形態の樹脂組成物がポリエステル樹脂を2種以上含む場合は、混合物の固有粘度とする。
【0017】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分またはこれらのエステル誘導体と、1,4-ブタンジオールを主成分とするジオール成分を、回分式または連続式で溶融重合させて製造することができる。また、溶融重合で低分子量のポリブチレンテレフタレート樹脂を製造した後、さらに窒素気流下または減圧下固相重合させることにより、重合度(または分子量)を所望の値まで高めることもできる。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と1,4-ブタンジオールを主成分とするジオール成分とを、連続式やバッチ式で溶融重縮合する製造法で得られたものが好ましい。
【0018】
エステル化反応を遂行する際に使用される触媒は、従来から知られているものであってよく、例えば、チタン化合物、錫化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物等を挙げることができる。これらの中で特に好適なものは、チタン化合物である。エステル化触媒としてのチタン化合物の具体例としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等を挙げることができる。
【0019】
本実施形態の樹脂組成物におけるポリブチレンテレフタレート樹脂の含有量は、樹脂組成物中、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、用途等に応じて、20質量%以上、25質量%以上であってもよい。また、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の含有量は、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、35質量%以下であることがさらに好ましく、用途等に応じて、30質量%以下、25質量%以下であってもよい。
【0020】
<ポリスチレン系樹脂>
本実施形態の樹脂組成物は、重量平均分子量(Mw)が2.00×105以上であり、灰分を0.001~10質量%の割合で含むポリスチレン系樹脂を含む。さらに、前記ポリスチレン系樹脂は、リサイクル品を含む。
この様にある程度分子量が大きく、かつ、灰分が少なめのポリスチレン系樹脂を用いることにより、リサイクル品のポリスチレン系樹脂を用いても、バージン品を用いた場合と同等の機械的強度および難燃性を達成できる。また、接着性に優れた成形品が得られる。
【0021】
本実施形態で用いるポリスチレン系樹脂は、上述の通り、リサイクル品を含む。
リサイクルポリスチレン系樹脂としては、成形品の端材や不合格品、回収された使用済ポリスチレン系樹脂成形体を粉砕、洗浄して再利用するマテリアルリサイクルにより得られたもの、ケミカルリサイクル(化学分解法)より得られたもの等が挙げられる。
本実施形態においては、樹脂組成物に含まれるポリスチレン系樹脂のうち、80質量%以上がリサイクル品であることが好ましく、85質量%以上がリサイクル品であることがより好ましく、90質量%以上がリサイクル品であることがさらに好ましく、95質量%以上がリサイクル品であることが一層好ましく、97質量%以上がリサイクル品であることが特に一層好ましい。また、樹脂組成物に含まれるポリスチレン系樹脂の100質量%がリサイクル品であってもよい。
【0022】
前記ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2.00×105以上であり、2.20×105以上であってもよく、2.30×105以上であってもよく、また、5.00×105以下であることが好ましく、4.00×105以下であることがより好ましく、3.50×105以下であることがさらに好ましく、3.00×105以下であることが一層好ましく、2.90×105以下であってもよく、2.85×105以下であってもよく、2.80×105以下であってもよい。前記下限値以上とすることにより、機械物性がより向上する傾向にある。前記上限値以下とすることにより、成形時の流動性が向上する傾向にある。
【0023】
前記ポリスチレン系樹脂は、灰分を0.001~10質量%の割合で含む。前記下限値以上とすることにより、難燃性が安定する傾向にある。前記上限値以下とすることにより、機械物性が安定化する傾向にある。
前記灰分の含有量は、ポリスチレン系樹脂100質量%中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、0.3質量%以上であることがさらに好ましく、0.4質量部以上であることが一層好ましい。前記灰分の含有量の上限は、ポリスチレン系樹脂100質量%中、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0.8質量%以下であることが一層好ましい。
【0024】
前記ポリスチレン系樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、3.20以上であってもよく、3.50以上であってもよく、4.00以上であってもよく、4.50以上であってもよく、また、7.00以下であることが好ましく、6.00以下であることがより好ましく、5.00以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、ウェルド強度がより向上する傾向にある。
このようなMwおよび分子量分布を満たすポリスチレン系樹脂は、複数種のリサイクルポリスチレン系樹脂をブレンドすることによっても達成できる。
【0025】
本実施形態で用いるポリスチレン系樹脂は、マグネシウム元素、カルシウム元素、鉄元素および亜鉛元素の少なくとも1種を含むことが好ましい。尚、各種元素は、ポリスチレン系樹脂の中で必ずしも元素単体として存在している必要はなく、化合物の一部として含まれていてもよい。本実施形態においては、後述する実施例で述べる<金属元素の量の測定>の測定値を前記金属元素の量とする。
【0026】
前記ポリスチレン系樹脂は、マグネシウム元素をポリスチレン系樹脂100質量部に対し、0.1~1000.0質量ppmの割合で含むことが好ましい。前記マグネシウム元素の含有量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し、0.5質量ppm以上であることがより好ましく、1.0質量ppm以上であることがさらに好ましく、50.0質量ppm以上であることが一層好ましく、80.0質量ppm以上であることがより一層好ましく、100.0質量ppm以上であることがさらに一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、接着性がより向上する傾向にある。前記マグネシウム元素の含有量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し、800.0質量ppm以下であることがより好ましく、600.0質量ppm以下であることがさらに好ましく、400.0質量ppm以下であることが一層好ましく、350.0質量ppm以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、耐加水分解性がより向上する傾向にある。
【0027】
前記ポリスチレン系樹脂が、カルシウム元素をポリスチレン系樹脂100質量部に対し、0.1~1000.0質量ppmの割合で含むことが好ましい。前記カルシウム元素の含有量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し、0.5質量ppm以上であることがより好ましく、1.0質量ppm以上であることがさらに好ましく、10.0質量ppm以上であることが一層好ましく、25.0質量ppm以上であることがより一層好ましく、45.0質量ppm以上であることがさらに一層好ましく、60.0質量ppm以上であることが特に一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、接着性がより向上する傾向にある。前記カルシウム元素の含有量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し、800.0質量ppm以下であることがより好ましく、600.0質量ppm以下であることがさらに好ましく、400.0質量ppm以下であることが一層好ましく、300.0質量ppm以下であることがより一層好ましく、200.0質量ppm以下であることがさらに一層好ましく、150.0質量ppm以下であることが特に一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、耐加水分解性がより向上する傾向にある。
【0028】
前記ポリスチレン系樹脂が、鉄元素をポリスチレン系樹脂100質量部に対し、0.1~1000.0質量ppmの割合で含むことが好ましい。前記鉄元素の含有量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し、0.2質量ppm以上であることがより好ましく、1.0質量ppm以上であることがさらに好ましく、10.0質量ppm以上であることが一層好ましく、30.0質量ppm以上であることがより一層好ましく、40.0質量ppm以上であることがさらに一層好ましく、50.0質量ppm以上であることが特に一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、接着性がより向上する傾向にある。前記鉄元素の含有量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し、800.0質量ppm以下であることがより好ましく、600.0質量ppm以下であることがさらに好ましく、400.0質量ppm以下であることが一層好ましく、300.0質量ppm以下であることがより一層好ましく、200.0質量ppm以下であることがさらに一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、耐加水分解がより向上する傾向にある。
【0029】
前記ポリスチレン系樹脂が、亜鉛元素をポリスチレン系樹脂100質量部に対し、0.1~1000.0質量ppmの割合で含むことが好ましい。前記亜鉛元素の含有量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し、1.0質量ppm以上であることがより好ましく、3.0質量ppm以上であることがさらに好ましく、5.0質量ppm以上であることが一層好ましく、10.0質量ppm以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、接着性がより向上する傾向にある。前記亜鉛元素の含有量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し、800.0質量ppm以下であることがより好ましく、600.0質量ppm以下であることがさらに好ましく、400.0質量ppm以下であることが一層好ましく、300.0質量ppm以下であることがより一層好ましく、250.0質量ppm以下であることがさらに一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、耐加水分解がより向上する傾向にある。
【0030】
本実施形態におけるポリスチレン系樹脂とは、スチレン系単量体の単独重合体、スチレン系単量体とスチレン系単量体と共重合可能な単量体との共重合体等が挙げられる。スチレン系単量体と共重合可能な単量体との共重合体は、全体単量体の50質量%以上スチレン系単量体であることが好ましく、60質量%以上がスチレン系単量体であることがより好ましい。
スチレン系単量体とは、スチレンおよび置換基を有するスチレンを意味し、スチレン、α-メチルスチレン、クロルスチレン、メチルスチレン、tert-ブチルスチレンが挙げられる。
【0031】
本実施形態で用いるポリスチレン系樹脂は、ゴム強化ポリスチレン樹脂を含んでいてもよい。
ポリスチレン系樹脂としては、より具体的には、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン-アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル-エチレンプロピレン系ゴム-スチレン共重合体(AES樹脂)、スチレン-IPN型ゴム共重合体等の樹脂等が挙げられる。
本実施形態では、ポリスチレン系樹脂が、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン-アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル-エチレンプロピレン系ゴム-スチレン共重合体(AES樹脂)であることが好ましく、ポリスチレン樹脂であることがより好ましい。
【0032】
本実施形態で用いるポリスチレン系樹脂は、その一部がスチレン-マレイン酸重合体(好ましくはスチレン-無水マレイン酸重合体)であることも好ましい。スチレン-マレイン酸重合体は、ポリブチレンテレフタレート樹脂と、ポリスチレン樹脂および/またはゴム強化ポリスチレン樹脂との相溶化剤として働く。この結果、得られる成形体の強度を高めることができる。
スチレン-マレイン酸重合体を配合する場合、その含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂およびポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましく、8質量部以上であることが一層好ましく、10質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる成形体の強度がより高くなる傾向にある。また、前記スチレン-マレイン酸重合体の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂およびポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、25質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、18質量部以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、得られる成形体の耐熱性が高く維持される傾向にある。
【0033】
前記ポリスチレン系樹脂は、250℃、せん断速度が912sec-1における溶融粘度(η)が80Pa・sec以上であることが好ましく、90Pa・sec以上であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、耐熱性がより向上する傾向にある。前記ポリスチレン系樹脂の溶融粘度の上限は、500Pa・sec以下であることが好ましく、300Pa・sec以下であることがより好ましく、200Pa・sec以下であることがさらに好ましく、180Pa・sec以下であることが一層好ましく、160Pa・sec以下であることがより一層好ましく、120Pa・sec以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、耐熱性と低反り性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物がポリスチレン系樹脂を2種以上含む場合、混合物の溶融粘度が上記範囲となることが好ましい。
本実施形態における溶融粘度はISO 11443に準拠し、キャピラリーレオメーターおよびスリットダイレオメーターを用いることで測定できる。具体的には内径9.5mmの炉体に対してキャピラリー径1mmおよびキャピラリー長30mmとなるオリフィスを組み合わせ、75mm/minの速度でピストンを押し込んだ際の応力より、溶融粘度が算出できる。
【0034】
本実施形態においては、特に、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(IV)が0.30~0.80dL/gであり、前記ポリスチレン系樹脂の250℃、912sec-1における溶融粘度(η)が80Pa・sec以上であることが好ましい。このような構成とすることにより、耐熱性と低反り性がより向上する傾向にある。
【0035】
本実施形態で用いるポリスチレン系樹脂の250℃、荷重2.16kgfの条件で測定したメルトボリュームレート(MVR)は、18cm3/10分以上であることが好ましく、22cm3/10分以上であることがより好ましく、26cm3/10分以上であることがさらに好ましく、30cm3/10分以上であってもよく、35cm3/10分以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、耐熱性がより向上する傾向にある。また、前記MVRの上限値は、200cm3/10分以下であることが好ましく、160cm3/10分以下であることがより好ましく、120cm3/10分以下であることがさらに好ましく、90cm3/10分以下であることが一層好ましく、60cm3/10分以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、耐熱性と低反り性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物がポリスチレン系樹脂を2種以上含む場合、混合物のMVRが上記範囲となることが好ましい。
【0036】
このようなポリスチレン系樹脂の製造方法としては、乳化重合法、溶液重合法、懸濁重合法あるいは塊状重合法等の公知の方法が挙げられる。
ポリスチレン系樹脂の詳細は、特開2017-052925号公報の段落0061~0069の記載、特開2017-052262号公報の段落0021~0031の記載、段落0057~0064の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0037】
<ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂のブレンド比>
本実施形態においては、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部中、ポリスチレン系樹脂の割合が、40質量部以上であることが好ましく、45質量部以上であることがより好ましく、50質量部以上であることがさらに好ましく、55質量部以上であることが一層好ましく、58質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、低そり性がより向上する傾向にある。また、前記ポリスチレン系樹脂の含有量の上限値は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、85質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましく、75質量部以下であることがさらに好ましく、70質量部以下であることが一層好ましく、65質量部以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、耐熱性がより向上する傾向にある。
【0038】
本実施形態の樹脂組成物におけるポリブチレンテレフタレート樹脂およびポリスチレン系樹脂の合計含有量は、樹脂組成物100質量%中、35質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、45質量%以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、樹脂の流動性がより向上する傾向にある。また、本実施形態の樹脂組成物におけるポリブチレンテレフタレート樹脂およびポリスチレン系樹脂の合計含有量は、樹脂組成物100質量%中、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましく、83質量%以下であることがさらに好ましく、80質量%以下であることが一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、機械的強度がより向上する傾向にある。
【0039】
本実施形態の樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂およびポリスチレン系樹脂を、それぞれ、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0040】
<繊維状無機充填剤>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し繊維状無機充填材を10~100質量部の割合で含む。繊維状無機充填剤を含むことにより、得られる成形品の機械的強度が向上する。
繊維状無機充填剤は、短繊維であってもよいし、長繊維であってもよい。
繊維状無機充填剤の原料は、ガラス、炭素(炭素繊維等)、アルミナ、ボロン、セラミック、金属(スチール等)等の無機物、および、植物(ケナフ(Kenaf)、竹等を含む)、アラミド、ポリオキシメチレン、芳香族ポリアミド、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、超高分子量ポリエチレン等の有機物などが挙げられ、ガラスが好ましい。
【0041】
本実施形態における樹脂組成物は、繊維状無機充填剤として、ガラス繊維を含むことが好ましい。
ガラス繊維は、Aガラス、Cガラス、Eガラス、Rガラス、Dガラス、Mガラス、Sガラスなどのガラス組成から選択され、特に、Eガラス(無アルカリガラス)が好ましい。
ガラス繊維は、長さ方向に直角に切断した断面形状が真円状または多角形状の繊維状の材料をいう。ガラス繊維は、単繊維の数平均繊維径が通常1~25μm、好ましくは5~17μmである。数平均繊維径を1μm以上とすることにより、樹脂組成物の成形加工性がより向上する傾向にある。数平均繊維径を25μm以下とすることにより、得られる構造体の外観が向上し、補強効果も向上する傾向にある。ガラス繊維は、単繊維または単繊維を複数本撚り合わせたものであってもよい。
ガラス繊維の形態は、単繊維や複数本撚り合わせたものを連続的に巻き取ったガラスロービング、長さ1~10mmに切りそろえたチョップドストランド(すなわち、数平均繊維長1~10mmのガラス繊維)、長さ10~500μm程度に粉砕したミルドファイバー(すなわち、数平均繊維長10~500μmのガラス繊維)などのいずれであってもよいが、長さ1~10mmに切りそろえたチョップドストランドが好ましい。ガラス繊維は、形態が異なるものを併用することもできる。
また、ガラス繊維としては、異形断面形状を有するものも好ましい。この異形断面形状とは、繊維の長さ方向に直角な断面の長径/短径比で示される扁平率が、例えば、1.5~10であり、中でも2.5~10、さらには2.5~8、特に2.5~5であることが好ましい。
【0042】
ガラス繊維は、本実施形態における樹脂組成物の特性を大きく損なわない限り、樹脂成分との親和性を向上させるために、例えば、シラン系化合物、エポキシ系化合物、ウレタン系化合物などで表面処理したもの、酸化処理したものであってもよい。
【0043】
本実施形態の樹脂組成物における、繊維状無機充填剤の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、10質量部以上であり、15質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、剛性や耐熱性の向上および成形時収縮の低減と異方性の低減効果がより向上する傾向にある。また、前記非繊維状無機充填剤の含有量の上限値は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、100質量部以下であり、80質量部以下であることが好ましい。前記上限値以下とすることにより、成形品の表面外観の良化する傾向にある。
【0044】
本実施形態の樹脂組成物における、繊維状無機充填剤の含有量は、樹脂組成物100質量%に対し、5質量%以上であり、10質量%以上であることが好ましく、また、50質量%以下であることがさらに好ましく、40質量%以下であることが一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、成形品の表面外観の良化する傾向にある。
【0045】
<難燃剤>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、難燃剤を0.1~40質量部の割合で含む。難燃剤を含むことにより、難燃性を達成できる。
難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤(ホスフィン酸金属塩、ポリリン酸メラミン等)、窒素系難燃剤(シアヌル酸メラミン等)、金属水酸化物(水酸化マグネシウム等)等があるが、リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤が好ましく、ハロゲン系難燃剤がより好ましい。リン系難燃剤としては、ホスフィン酸金属塩がより好ましい。ハロゲン系難燃剤としては、臭素系難燃剤がより好ましい。
【0046】
難燃剤として臭素系難燃剤を用いる場合、その種類は特に定めるものではないが、臭素化フタルイミド、臭素化ポリ(メタ)アクリレート、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ、および、臭素化ポリスチレンが好ましく、臭素化フタルイミド、臭素化ポリカーボネートおよび臭素化エポキシがより好ましく、臭素化フタルイミドおよび臭素化エポキシがさらに好ましい。
【0047】
臭素化フタルイミドとしては、式(1)で表されるものが好ましい。
【化1】
(式(1)中、Dは、アルキレン基、アリーレン基、-S(=O)
2-、-C(=O)-、および、-O-の2つ以上の組み合わせからなる基を表す。iは1~4の整数である。)
【0048】
式(1)において、Dは、アルキレン基、アリーレン基、-S(=O)2-、-C(=O)-、および、-O-の2つ以上の組み合わせからなる基を表し、アルキレン基またはアリーレン基と、-S(=O)2-、-C(=O)-、および、-O-の少なくとも1つとの組み合わせからなる基が好ましく、アルキレン基またはアリーレン基と、-S(=O)2-、-C(=O)-、および、-O-の1つとの組み合わせからなる基がより好ましく、アルキレン基がさらに好ましい。
アルキレン基と-O-との組み合わせからなる基としては、例えば、2つのアルキレン基と1つの-O-といった組み合わせも含む趣旨である(他の組み合わせについても同じ。)。
Dとしてのアルキレン基は、炭素数1~6のアルキレン基であることが好ましく、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基がより好ましい。アリーレン基は、フェニレン基が好ましい。
iは1~4の整数であり、4であることが好ましい。
【0049】
式(1)で示される臭素化フタルイミドとしては、例えば、N,N’-(ビステトラブロモフタルイミド)エタン、N,N’-(ビステトラブロモフタルイミド)プロパン、N,N’-(ビステトラブロモフタルイミド)ブタン、N,N’-(ビステトラブロモフタルイミド)ジエチルエーテル、N,N’-(ビステトラブロモフタルイミド)ジプロピルエーテル、N,N’-(ビステトラブロモフタルイミド)ジブチルエーテル、N,N’-(ビステトラブロモフタルイミド)ジフェニルスルフォン、N,N’-(ビステトラブロモフタルイミド)ジフェニルケトン、N,N’-(ビステトラブロモフタルイミド)ジフェニルエーテル等が挙げられる。
【0050】
臭素化フタルイミドとしては、式(1)は、式(2)で表される臭素化フタルイミドであることが好ましい。
【化2】
(式(2)中、iは1~4の整数である。)
iは1~4の整数であり、4であることが好ましい。
【0051】
臭素化ポリ(メタ)アクリレートとしては、臭素原子を含有するベンジル(メタ)アクリレートを単独で重合、または2種以上を共重合、あるいは、他のビニル系モノマーと共重合させることによって得られる重合体であることが好ましく、臭素原子は、ベンゼン環に付加しており、付加数はベンゼン環1個あたり1~5個、中でも4~5個付加したものであることが好ましい。
【0052】
臭素原子を含有するベンジルアクリレートとしては、ペンタブロムベンジルアクリレート、テトラブロムベンジルアクリレート、トリブロムベンジルアクリレート、またはそれらの混合物等が挙げられる。また、臭素原子を含有するベンジルメタクリレートとしては、上記したアクリレートに対応するメタクリレートが挙げられる。
【0053】
臭素原子を含有するベンジル(メタ)アクリレートと共重合させるために使用される他のビニル系モノマーとしては、具体的には、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレートのようなアクリル酸エステル類;メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレートのようなメタクリル酸エステル類;スチレン、アクリロニトリル、フマル酸、マレイン酸のような不飽和カルボン酸またはその無水物;酢酸ビニル、塩化ビニル等が挙げられる。
【0054】
これらは通常、臭素原子を含有するベンジル(メタ)アクリレートに対して等モル量以下、中でも0.5倍モル量以下が用いることが好ましい。
【0055】
また、ビニル系モノマーとしては、キシレンジアクリレート、キシレンジメタクリレート、テトラブロムキシレンジアクリレート、テトラブロムキシレンジメタクリレート、ブタジエン、イソプレン、ジビニルベンゼン等を使用することもでき、これらは通常、臭素原子を含有するベンジルアクリレートまたはベンジルメタクリレートに対し、0.5倍モル量以下が使用できる。
【0056】
臭素化ポリ(メタ)アクリレートとしては、臭素原子を含有する(メタ)アクリレートモノマー、特にベンジル(メタ)アクリレートを単独で重合、または2種以上を共重合、もしくは他のビニル系モノマーと共重合させることによって得られる重合体であることが好ましい。また、臭素原子は、ベンゼン環に付加しており、付加数はベンゼン環1個あたり1~5個、中でも4~5個付加したものであることが好ましい。
【0057】
臭素化ポリ(メタ)アクリレートとしては、ペンタブロモベンジルポリ(メタ)アクリレートが、高臭素含有量であることから好ましい。
【0058】
臭素化ポリ(メタ)アクリレートの分子量は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、重量平均分子量(Mw)で、3,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましく、15,000以上であることがさらに好ましく、20,000以上であることが一層好ましく、25,000以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、より高い機械的強度を有する成形品が得られる傾向にある。また、前記重量平均分子量(Mw)の上限は、100,000以下であることが好ましく、80,000以下であることがより好ましく、60,000以下であることがさらに好ましく、50,000以下であることが一層好ましく、35,000以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物の流動性がより向上する傾向にある。
【0059】
臭素化ポリカーボネートは、遊離臭素含有量が0.05質量%以上であることが好ましく、また、0.20質量%以下であることが好ましい。このような範囲とすることにより、樹脂組成物の耐熱安定性がより向上する傾向にある。臭素化ポリカーボネートは、また、塩素原子含有量が0.001質量%以上であることが好ましく、また、0.20質量%以下であることが好ましい。このような範囲とすることにより、成形の際の耐金型腐食性がより向上する傾向にある。
臭素化ポリカーボネートとしては、具体的には例えば、臭素化ビスフェノールA、特にテトラブロモビスフェノールAから得られる、臭素化ポリカーボネートであることが好ましい。その末端構造は、フェニル基、4-t-ブチルフェニル基や2,4,6-トリブロモフェニル基等が挙げられ、特に、末端基構造に2,4,6-トリブロモフェニル基を有するものが好ましい。
【0060】
臭素化ポリカーボネートにおける、カーボネート構成単位数の平均は適宜選択して決定すればよいが、2~30であることが好ましく、3~15であることがより好ましく、3~10であることがさらに好ましい。
【0061】
臭素化ポリカーボネートの分子量は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、好ましくは、粘度平均分子量で1,000~20,000、中でも2,000~10,000であることがより好ましい。
【0062】
上記臭素化ビスフェノールAから得られる臭素化ポリカーボネートは、例えば、臭素化ビスフェノールとホスゲンとを反応させる通常の方法で得ることができる。末端封鎖剤としては芳香族モノヒドロキシ化合物が挙げられ、これはハロゲンまたは有機基で置換されていてもよい。
【0063】
臭素化エポキシとしては、具体的には、テトラブロモビスフェノールAエポキシ化合物や、グリシジル臭素化ビスフェノールAエポキシ化合物に代表されるビスフェノールA型ブロモ化エポキシ化合物が好ましく挙げられる。
【0064】
臭素化エポキシ化合物の分子量は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、重量平均分子量(Mw)で、3,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましく、13,000以上であることがさらに好ましく、15,000以上であることが一層好ましく、18,000以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、より高い機械的強度を有する成形品が得られる傾向にある。また、前記重量平均分子量(Mw)の上限は、100,000以下であることが好ましく、80,000以下であることがより好ましく、78,000以下であることがさらに好ましく、75,000以下であることが一層好ましく、70,000以下であることがより一層好ましく、さらには、50,000以下、30,000以下、25,000以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物の流動性がより向上する傾向にある。
臭素化エポキシ化合物は、そのエポキシ当量が3,000~40,000g/eqであることが好ましく、中でも4,000~35,000g/eqが好ましく、特に10,000~30,000g/eqであることが好ましい。
【0065】
また、臭素化エポキシとして臭素化エポキシオリゴマーを併用することもできる。この際、例えばMwが5,000以下のオリゴマーを50質量%程度以下の割合で用いることで、難燃性、離型性および流動性を適宜調整することができる。臭素化エポキシ化合物における臭素原子含有量は任意だが、十分な難燃性を付与する上で、通常10質量%以上であり、中でも20質量%以上、特に30質量%以上であることが好ましく、その上限は60質量%、中でも55質量%以下であることが好ましい。
【0066】
臭素化ポリスチレンとしては、好ましくは、式(3)で示される構成単位を含有する臭素化ポリスチレンが挙げられる。
【化3】
(式(3)中、tは1~5の整数であり、nは構成単位の数である。)
【0067】
臭素化ポリスチレンとしては、ポリスチレンを臭素化するか、または、臭素化スチレンモノマーを重合することによって製造するかのいずれであってもよいが、臭素化スチレンを重合したものは遊離の臭素(原子)の量が少ないので好ましい。なお、式(3)において、臭素化ベンゼンが結合したCH基はメチル基で置換されていてもよい。また、臭素化ポリスチレンは、他のビニル系モノマーが共重合された共重合体であってもよい。この場合のビニル系モノマーとしてはスチレン、α-メチルスチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸メチル、ブタジエンおよび酢酸ビニル等が挙げられる。また、臭素化ポリスチレンは単一物あるいは構造の異なる2種以上の混合物として用いてもよく、単一分子鎖中に臭素数の異なるスチレンモノマー由来の単位を含有していてもよい。
【0068】
臭素化ポリスチレンの具体例としては、例えば、ポリ(4-ブロモスチレン)、ポリ(2-ブロモスチレン)、ポリ(3-ブロモスチレン)、ポリ(2,4-ジブロモスチレン)、ポリ(2,6-ジブロモスチレン)、ポリ(2,5-ジブロモスチレン)、ポリ(3,5-ジブロモスチレン)、ポリ(2,4,6-トリブロモスチレン)、ポリ(2,4,5-トリブロモスチレン)、ポリ(2,3,5-トリブロモスチレン)、ポリ(4-ブロモ-α-メチルスチレン)、ポリ(2,4-ジブロモ-α-メチルスチレン)、ポリ(2,5-ジブロモ-α-メチルスチレン)、ポリ(2,4,6-トリブロモ-α-メチルスチレン)およびポリ(2,4,5-トリブロモ-α-メチルスチレン)等が挙げられ、ポリ(2,4,6-トリブロモスチレン)、ポリ(2,4,5-トリブロモスチレン)および平均2~3個の臭素基をベンゼン環中に含有するポリジブロモスチレン、ポリトリブロモスチレンが特に好ましく用いられる。
【0069】
臭素化ポリスチレンは、式(3)における構成単位の数n(平均重合度)が30~1,500であることが好ましく、より好ましくは150~1,000、特に300~800のものが好適である。平均重合度が30未満ではブルーミングが発生しやすく、一方、1,500を超えると、分散不良を生じやすく、機械的性質が低下しやすい。また、臭素化ポリスチレンの重量平均分子量(Mw)としては、5,000~500,000であることが好ましく、10,000~500,000であることがより好ましく、10,000~300,000であることがさらに好ましく、10,000~100,000であることが一層好ましく、10,000~70,000であることがより一層好ましい。特に、上記したポリスチレンの臭素化物の場合は、重量平均分子量(Mw)は50,000~70,000であることが好ましく、重合法による臭素化ポリスチレンの場合は、重量平均分子量(Mw)は10,000~30,000程度であることが好ましい。なお、重量平均分子量(Mw)は、GPC測定による標準ポリスチレン換算の値として求めることができる。
【0070】
臭素系難燃剤における臭素濃度は45質量%以上であることが好ましく、48質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、成形品の難燃性が効果的に向上する傾向にある。前記臭素濃度の上限値は、75質量%以下であることが好ましく、73質量%以下であることがより好ましく、71質量%以下であることがさらに好ましく、65質量%以下であってもよい。
【0071】
難燃剤としてホスフィン酸金属塩を用いる場合、その種類は特に定めるものではないが、ホスフィン酸金属塩とは、アニオン部分が式(4)または式(5)で表され、カチオン部分の金属イオンがカルシウム、マグネシウム、アルミニウムまたは亜鉛のいずれかであることが好ましい。
【0072】
【化4】
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表し、R
1同士は同一でも異なっていてもよく、R
3は炭素数1~10のアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、またはこれらの組み合わせからなる基を表し、R
3同士は同一でも異なっていてもよく、nは0~2の整数を表す。)
置換基を有していてもよいアリール基は、置換基を有していてもよいフェニル基が好ましい。置換基を有する場合、炭素数1~3のアルキル基が好ましい。また、無置換であることも好ましい。
前記置換基を有していてもよいアリーレン基は、置換基を有していてもよいフェニレン基であることが好ましい。前記置換基を有していてもよいアリーレン基は、無置換であるか、置換基として炭素数1~3のアルキル基(好ましくはメチル基)を有することが好ましい。
本実施形態では、式(5)で表されるホスフィン酸金属塩が好ましい。また、本実施形態では、ホスフィン酸アルミニウムが好ましい。
【0073】
ホスフィン酸金属塩としての具体例は、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸マグネシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸マグネシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸マグネシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、メチル-n-プロピルホスフィン酸カルシウム、メチル-n-プロピルホスフィン酸マグネシウム、メチル-n-プロピルホスフィン酸アルミニウム、メチル-n-プロピルホスフィン酸亜鉛、メタンジ(メチルホスフィン酸)カルシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)マグネシウム、メタンビス(メチルホスフィン酸)アルミニウム、メタンビス(メチルホスフィン酸)亜鉛、ベンゼン-1,4-ビス(メチルホスフィン酸)カルシウム、ベンゼン-1,4-ビス(メチルホスフィン酸)マグネシウム、ベンゼン-1,4-ビス(メチルホスフィン酸)アルミニウム、ベンゼン-1,4-ビス(メチルホスフィン酸)亜鉛、メチルフェニルホスフィン酸カルシウム、メチルフェニルホスフィン酸マグネシウム、メチルフェニルホスフィン酸アルミニウム、メチルフェニルホスフィン酸亜鉛、ジフェニルホスフィン酸カルシウム、ジフェニルホスフィン酸マグネシウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ジフェニルホスフィン酸亜鉛が挙げられる。
ホスフィン酸金属塩の詳細は、国際公開第2010/010669号の段落0052~0058の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0074】
本実施形態の樹脂組成物における難燃剤(好ましくは臭素系難燃剤)の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、下限値が0.1質量部以上であり、1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましく、7質量部以上であることが一層好ましく、10質量部以上であることがより一層好ましく、14質量部以上であることがさらに一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる成形品の難燃性がより向上する傾向にある。前記難燃剤の含有量の上限値は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、40質量部以下であることが好ましく、35質量部以下であることがより好ましく、30質量部以下であることがさらに好ましく、25質量部以下であることが一層好ましく、22質量部以下であることがより一層好ましく、20質量部以下であることがさらに一層好ましく、19質量部以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、得られる成形品の機械的強度の低下をより効果的に抑制できる。
本実施形態の樹脂組成物は、難燃剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0075】
<難燃助剤>
本実施形態の樹脂組成物は、難燃助剤を含んでいてもよい。難燃助剤を含むことにより、成形品の難燃性をより向上させることができる。難燃助剤は、ハロゲン系難燃剤を含む場合に特に好ましく用いられる。本実施形態で用いる難燃助剤は、アンチモン化合物が例示され、三酸化アンチモン(Sb2O3)、五酸化アンチモン(Sb2O5)、アンチモン酸ナトリウム等が挙げられる。特に、耐衝撃性の点から酸化アンチモン、特に、三酸化アンチモンが好ましい。
難燃助剤を配合する場合、マスターバッチとして配合してもよい。マスターバッチ中のアンチモン化合物の含有量は、好ましくは30~90質量%であり、より好ましくは40~85質量%、さらに好ましくは50~85質量%である。マスターバッチに用いる樹脂は、ポリエステル樹脂が好ましく、ポリブチレンテレフタレート樹脂がより好ましい。
【0076】
本実施形態の樹脂組成物が、難燃助剤(例えば、アンチモン化合物)を含む場合、その含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましく、1.0質量部以上であることがより好ましく、2.0質量部以上であることがさらに好ましく、3.0質量部以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、難燃性がより効果的に発揮される傾向にある。また、前記アンチモン化合物の含有量の上限値は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、20.0質量部以下であることが好ましく、15.0質量部以下であることがより好ましく、10.0質量部以下であることがさらに好ましよい。前記上限値以下とすることにより、得られる成形品の離型性や耐衝撃性が向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、難燃助剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0077】
<滴下防止剤>
本実施形態の樹脂組成物には、滴下防止剤を含有させることも可能である。滴下防止剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましく、フィブリル形成能を有し、樹脂組成物中に容易に分散し、かつ樹脂同士を結合して繊維状材料を作る傾向を示すものが好ましい。
滴下防止剤の含有割合は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、0.1~20質量部であることが好ましい。滴下防止剤を0.1質量部以上とすることにより、難燃性がより十分な効果を奏し、20質量部以下とすることにより、得られる成形品の外観が向上する傾向にある。滴下防止剤の含有割合は、より好ましくは、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、10質量部以下であり、さらに好ましくは5質量部以下であり、一層好ましくは3質量部以下である。
本実施形態の樹脂組成物は、滴下防止剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0078】
<ポリカーボネート樹脂>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂を含んでいてもよい。本実施形態において、ポリカーボネート樹脂は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とスチレン系樹脂の相溶化剤として機能する。従って、本実施形態の樹脂組成物が他の相溶化剤を含む場合等は、必ずしも必須成分ではない。
なお、本明細書において、臭素化ポリカーボネートは、難燃剤とする。
ポリカーボネート樹脂は、ジヒドロキシ化合物またはこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲンまたは炭酸ジエステルと反応させることによって得られる、分岐していてもよい単独重合体または共重合体である。ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のホスゲン法(界面重合法)や溶融法(エステル交換法)により製造したものを使用することができる。
【0079】
原料のジヒドロキシ化合物としては、芳香族ジヒドロキシ化合物が好ましく、ビスフェノールがより好ましく、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4-ジヒドロキシジフェニル等がさらに好ましく、ビスフェノールAが一層好ましい。また、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物を使用することもできる。
【0080】
ポリカーボネート樹脂としては、上述した中でも、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導される芳香族ポリカーボネート樹脂(ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂)、または、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導される芳香族ポリカーボネート共重合体が好ましい。また、シロキサン構造を有するポリマーまたはオリゴマーとの共重合体等の、芳香族ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体であってもよい。さらには、上述したポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して用いてもよい。
【0081】
ポリカーボネート樹脂の分子量を調節するには、一価の芳香族ヒドロキシ化合物を用いればよく、例えば、m-およびp-メチルフェノール、m-およびp-プロピルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-長鎖アルキル置換フェノール等が挙げられる。
【0082】
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、5,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましく、13,000以上であることがさらに好ましい。粘度平均分子量が5,000以上のものを用いることにより、得られる樹脂組成物の機械的強度がより向上する傾向にある。また、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、60,000以下であることが好ましく、40,000以下であることがより好ましく、30,000以下であることがさらに好ましい。60,000以下のものを用いることにより、樹脂組成物の流動性が向上し、成形性が向上する傾向にある。
ポリカーボネート樹脂を2種以上含む場合、混合物が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0083】
なお、本実施形態において、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ粘度計を用いて、20℃にて、ポリカーボネート樹脂のメチレンクロライド溶液の粘度を測定し固有粘度([η])を求め、次のSchnellの粘度式から算出される値を示す。
[η]=1.23×10-4Mv0.83
【0084】
ポリカーボネート樹脂のJIS K7210(温度300℃、荷重1.2kgf)に準拠して測定されるメルトボリュームレート(MVR)は、通常、1cm3/10分以上であり、3cm3/10分以上であることが好ましく、10cm3/10分以上であることがより好ましく、20cm3/10分以上であることがさらに好ましく、30cm3/10分以上であることが一層好ましく、40cm3/10分以上であることがより一層好ましく、50cm3/10分以上であることがさらに一層好ましく、55cm3/10分以上であることがよりさらに一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる樹脂組成物ないし成形体の流動性がより向上する傾向にある。また、前記MFRの上限は、例えば、100cm3/10分以下であり、さらには、80cm3/10分以下であってもよい。
【0085】
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)および溶融法(エステル交換法)のいずれの方法で製造したポリカーボネート樹脂も使用することができる。また、溶融法で製造したポリカーボネート樹脂に、末端のOH基量を調整する後処理を施したポリカーボネート樹脂も好ましい。
【0086】
ポリカーボネート樹脂は、リサイクル品を活用してもよい。ポリカーボネート樹脂についてもリサイクル品を用いても、バージン品のポリカーボネート樹脂を用いた場合と同等の性能を達成することができる。
【0087】
また、ポリカーボネート樹脂の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂およびポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、8質量部以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、ポリブチレンテレフタレート樹脂およびポリスチレン系樹脂との相溶性がより向上し、得られる成形体の機械的強度がより向上する傾向にある。また、前記ポリカーボネート樹脂の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂およびポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、35質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、25質量部以下であることがさらに好ましく、20質量部以下であることが一層好ましく、15質量部以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、得られる成形体の耐熱性が高く維持される傾向にある。
【0088】
<他の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上記したもの以外に他の成分を含有していてもよい。なお、他の成分は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせおよび比率で含有されていてもよい。
樹脂添加剤としては、具体的には、安定剤(熱安定剤、光安定剤)、離型剤、着色剤(顔料、染料)、核剤、反応性化合物、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。
これらの他の成分の総量は、樹脂組成物100質量%中、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン系樹脂、難燃剤、および、繊維状無機充填剤、ならびに、必要に応じ配合される成分の合計が100質量%となる。
【0089】
<<安定剤>>
本実施形態の樹脂組成物は、安定剤(光安定剤および/または熱安定剤)を含んでいてもよい。
安定剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物、硫黄系安定剤等が例示され、ヒンダードフェノール系化合物およびリン系化合物が好ましい。本実施形態では、また、ヒンダードフェノール系化合物、リン系化合物および硫黄系安定剤を併用することも好ましい。このように3種の安定剤を併用することにより、熱安定性がより向上し、さらに熱安定性が長期に継続する傾向にある。
安定剤としては、具体的には、特開2021-063196号公報の段落0067~0075の記載、特開2018-070722号公報の段落0046~0057の記載、特開2019-056035号公報の段落0030~0037の記載、国際公開第2017/038949号の段落0066~0078の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0090】
本実施形態で用いる安定剤の融点は、50~140℃であることが好ましい。
【0091】
本実施形態の樹脂組成物が安定剤を含む場合、その含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、溶融混練時や成形時、さらに成形品としての使用中での、樹脂の熱劣化や酸化劣化の抑制効果がより向上する傾向にある。また、前記安定剤の含有量の上限値は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、2.0質量部以下であることが好ましく、1.5質量部以下であることがより好ましい。前記上限値以下とすることにより、安定剤などの添加剤の凝集などによる外観や物性へ悪影響を効果的に抑制できる。
本実施形態の樹脂組成物は、安定剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0092】
<<離型剤>>
本実施形態の樹脂組成物は、離型剤を含んでいてもよい。離型剤としては、モンタン酸エステルワックス、ポリオレフィンワックス、高級脂肪酸、エステル化合物、エチレンビスステアロアマイドなどが例示され、モンタン酸エステルワックス、ポリオレフィンワックス、合成ワックスおよびエチレンビスステアロアマイドから選ばれる少なくとも1種が好ましく、モンタン酸エステルワックスがより好ましい。
離型剤としては、具体的には、特開2018-070722号公報の段落0063~0077の記載、特開2019-123809号公報の段落0090~0098の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0093】
本実施形態で用いる離型剤の融点は、50~140℃であることが好ましい。
【0094】
本実施形態の樹脂組成物が離型剤を含む場合、その含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、0.08質量部以上であることがより好ましい。前記下限値以上にすることにより、成形時の離型性が向上する傾向にある。また、前記離型剤の含有量の上限値は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、5.0質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以下であることがより好ましい。前記上限値以下にすることにより、耐加水分解性の低下を抑制し、射出成型時の金型汚染、アウトガス量を低減することができる傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、離型剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0095】
<<着色剤>>
本実施形態の樹脂組成物は、着色剤(染料および/または顔料)を含んでいてもよい。着色剤としては、染料であっても、顔料であってもよいが、顔料が好ましい。
着色剤としては、有機着色剤および無機着色剤のいずれでもよい。また、有彩色着色剤および無彩色着色剤のいずれであってもよい。
着色剤としては、特開2021-101020号公報の段落0121~0123の記載、特開2019-188393号公報の段落0088~0090の記載が例示され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態の樹脂組成物は、カーボンブラックを含有することが好ましい。カーボンブラックは、その種類、原料種、製造方法に制限はなく、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のいずれをも使用することができる。中でも、ファーネスブラックが好ましい。その数平均粒子径には特に制限はないが、5~60nm程度であることが好ましい。
【0096】
カーボンブラックのDBP吸油量(単位:cm3/100g)は40~300cm3/100gであることが好ましい。上限値は、300cm3/100g以下であることが好ましく、200cm3/100g以下であることがより好ましく、150cm3/100g以下であることがさらに好ましく、100cm3/100g以下であってもよい。また、下限値は40cm3/100g以上が好ましく、50cm3/100g以上がより好ましく、60cm3/100g以上がさらに好ましい。前記上下限値以内とすることにより、成形品の外観が向上する傾向にある。なお、DBP吸油量(単位:cm3/100g)はJIS K6217に準拠して測定することができる。
カーボンブラックの数平均粒子径は、5~60nmであることが好ましい。上限値は、60nm以下であることが好ましく、40nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることがさらに好ましく、25nm以下であることがより一層好ましい。下限値は10nm以上であることが好ましく、13nm以上であることがより好ましく、16以上であることがさらに好ましく、19nm以上であることがより一層好ましい。前記上下限値以内とすることにより、成形品の外観が向上する傾向にある。数平均粒子径は、ASTM D3849規格(カーボンブラックの標準試験法-電子顕微鏡法による形態的特徴付け)に記載の手順によりアグリゲート拡大画像を取得し、このアグリゲート画像から単位構成粒子として3,000個の粒子径を測定し、算術平均して求めることができる。
【0097】
カーボンブラックは、熱可塑性樹脂、好ましくはポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂やポリスチレン系樹脂と予め混合したマスターバッチとして配合することにより、カーボンブラックの分散度が高まり、成形品の外観が向上する傾向にある。マスターバッチにおけるカーボンブラックの濃度は10~40質量%であることが好ましい。
【0098】
本実施形態の樹脂組成物が着色剤(好ましくはカーボンブラック)を含む場合、その含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることがさらに好ましく、0.5質量部以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、着色効果がより効果的に発揮される。また、前記着色剤の含有量の上限値は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、4質量部以下であることが好ましい。前記上限値以下とすることにより、得られる成形品の機械的強度がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、着色剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0099】
<<核剤>>
本実施形態の樹脂組成物は、結晶化速度を調整するために、核剤を含んでいてもよい。核剤の種類は、特に限定されるものではないが、無機核剤であっても、有機核剤であってもよく、無機核剤がより好ましい。
無機核剤としては、タルク、窒化ホウ素、マイカ、カオリン、硫酸バリウム、リン酸ナトリウム、窒化珪素および二硫化モリブデン等が挙げられ、中でもタルク、硫酸バリウム、リン酸ナトリウムおよび窒化ホウ素が好ましく、さらにはタルクが樹脂組成物の剛性を高める傾向にあるためより好ましい。
【0100】
有機核剤としては、有機アルカリ金属塩が好ましく、芳香族カルボン酸または脂肪酸のアルカリ金属塩がより好ましく、脂肪酸(好ましくは炭素数5~50の脂肪酸)のアルカリ金属塩(好ましくはナトリウム塩、カリウム塩、より好ましくはナトリウム塩)がさらに好ましい。有機核剤の具体例としては、アイオノマー、安息香酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ベヘン酸ナトリウム、モンタン酸ナトリウムが挙げられ、中でもステアリン酸ナトリウム、ベヘン酸ナトリウム、モンタン酸ナトリウムがより好ましく、モンタン酸ナトリウムが樹脂組成物の剛性と靭性のバランスが良好な傾向にあるためさらに好ましい。
なお、本実施形態で用いる核剤の酸価は、10mg/1g-KOH以下であることが好ましく、また、0mg/1g-KOH以上であることが好ましい。
酸価は、JIS K 0070-1992に従って測定される。
【0101】
本実施形態の樹脂組成物が核剤を含む場合、その含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることがさらに好ましく、用途に応じて、例えば、特に離型性が求められる用途では、0.15質量部以上であることが一層好ましく、0.2質量部以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、成形品の離型性、機械的強度が向上する傾向にある。
前記含有量の上限は、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対し、10質量部以下であることが好ましく、8質量部以下であることがより好ましく、6質量部以下であることがさらに好ましく、4質量部以下であることが一層好ましい。前記上限値以下にすることにより、組成物の分解が抑制されることで、機械的強度が向上する傾向にある。また、湿熱試験後の強度保持率が高くなる傾向にある。
【0102】
<樹脂組成物の物性>
本実施形態の樹脂組成物は、難燃性に優れていることが好ましい。例えば、前記樹脂組成物を1.6mm厚さの試験片に成形し、UL-94試験を行ったとき、V-0を満たすことが好ましい。
難燃性は後述する実施例の記載に従って測定される。
【0103】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物は、樹脂組成物の調製の常法によって製造できる。通常は各成分および所望により添加される種々の添加剤を一緒にしてよく混合し、次いで一軸または二軸押出機で溶融混練する。また、各成分を予め混合することなく、ないしはその一部のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練し、本実施形態の樹脂組成物を調製することもできる。着色剤等の一部の成分を熱可塑性樹脂と溶融混練してマスターバッチを調製し、次いでこれに残りの成分を配合して溶融混練してもよい。
なお、繊維状無機充填剤は、押出機のシリンダー途中のサイドフィーダーから供給することが好ましい。
溶融混練に際しての加熱温度は、通常220~300℃の範囲から適宜選ぶことができる。温度が高すぎると分解ガスが発生しやすく、不透明化の原因になる場合がある。それ故、剪断発熱等に考慮したスクリュー構成の選定が望ましい。混練時や、後行程の成形時の分解を抑制する為、酸化防止剤や熱安定剤の使用が望ましい。
【0104】
<成形品の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物は、公知の方法に従って成形される。
成形品の製造方法は、特に限定されず、樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形法(超臨界流体も含む)、インサート成形法、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法等が挙げられ、中でも射出成形法が好ましい。
射出成形法の詳細は、特許第6183822号公報の段落0113~0116の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
また、射出成形等、金型成形する際の金型温度は、40~150℃であることが好ましい。
【0105】
<複合体>
本実施形態の樹脂組成物は、他の部材と接着剤を用いて接着させる部材に用いることが好ましい。よって、本実施形態の樹脂組成物を成形して得られた成形品は、同材または他の部材と接着剤を介して接合し、複合体とすることができる。すなわち、本実施形態の複合体は、本実施形態の樹脂組成物から形成された成形品と、他の部材との間に接着剤層を有するものである。従って、本実施形態の樹脂組成物および成形品は、他の部材との接着用に用いられる。
他の部材としては、樹脂(熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂)、金属、および、ガラスの少なくとも1種を含む部材が挙げられる。
接着剤は、2つのものを貼り合わせる物質をいい、通常は、熱可塑性ではない物質である。前記接着剤としては、シリコーン系接着剤(未変性シリコーン系接着剤、変性シリコーン系接着剤)、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着等が例示され、シリコーン系接着剤(未変性シリコーン系接着剤、変性シリコーン系接着剤)、エポキシ系接着剤、および、ウレタン系接着剤が好ましく、シリコーン系接着剤がより好ましい。接着剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。接着剤層の厚さは、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、また、10000μm以下であることが好ましく、5000μm以下であることがより好ましい。
【0106】
<用途>
本実施形態の樹脂組成物は、樹脂組成物から形成された成形品として用いられる。樹脂組成物ないし成形品の用途としては、特に定めるものでは無く、車輌部品用または電気電子部品用であることが好ましい。
また、車輛部品としては、ランプにおけるハウジング、リフレクター、ベゼル、エクステンションや、コネクタ、ECUケース、車載カメラやミリ波レーダー用の筐体、バッテリーケース、センサー筐体などが挙げられる。
電気電子部品としては、パソコン、ゲーム機、テレビなどのディスプレイ装置、プリンター、コピー機、スキャナー、ファックス、電子手帳やPDA、電子式卓上計算機、電子辞書、カメラ、ビデオカメラ、携帯電話、電池パック、記録媒体のドライブや読み取り装置、マウス、テンキー、CDプレーヤー、MDプレーヤー、携帯ラジオ・オーディオプレーヤー等のハウジング、カバー、キーボード、ボタン、スイッチ部材、電力計用筐体、バッテリーケース、電池搬送用トレイ、リレー、センサー、アクチュエーター、ターミナルスイッチ、グリル調理機器部品などが挙げられる。
【実施例0107】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
【0108】
【0109】
ポリスチレン系樹脂の詳細は以下の通りである。
【表2】
【0110】
上記表2において、Mg(質量ppm)とは、ポリスチレン系樹脂中のマグネシウム元素の量を示している。他の金属についても同じである。
また、Mw×10-5とは、重量平均分子量に10-5をかけた値を意味している。従って、例えば、バージンPSのMwは3.12×105(312,000)となる。
n.dは検出不可を示している。
【0111】
<メルトボリュームレート(MVR)の測定>
ポリスチレン系樹脂のメルトボリュームレートは、メルトインデクサーを用いて、250℃、荷重2.16kgfの条件で、ポリスチレン系樹脂のMVR(単位:cm3/10分)を測定した。
メルトインデクサーは、タカラ工業社製のものを用いた。
【0112】
<溶融粘度の測定>
ポリスチレン系樹脂の溶融粘度は、溶融粘度はISO 11443に準拠し、250℃、せん断速度が912sec-1における溶融粘度を測定した。
具体的には、キャピラリーレオメーターおよびスリットダイレオメーターを用いることで測定した。具体的には内径9.5mmの炉体に対してキャピラリー径1mmおよびキャピラリー長30mmとなるオリフィスを組み合わせ、75mm/minの速度でピストンを押し込んだ際の応力より、算出した。
単位は、Pa・sで示した。
【0113】
<重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)の測定>
スチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)はHLC-8320GPC/EcoSEC(TOSOH社製)を用いて測定した。測定条件は以下の通りである。
カラム:Shodex KF-G + KF-805L×3 + KF-800D
検出器:UV検出器 254nm
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
【0114】
<灰分の測定>
ポリスチレン系樹脂について、500℃の電気炉内で3時間灰化し、樹脂成分のみを燃焼させた後、残渣重量の比率から灰分を測定した。
ポリスチレン系樹脂中の灰分の割合の単位は、質量%で示した。
電気炉は、東洋製作所社製「電気マッフル炉KM-28」を用いた。
【0115】
<金属元素の量の測定>
ポリスチレン系樹脂中の金属元素の定性/半定量分析は、ICP発光分析法によって行った。この場合、前処理として試料200mgを秤量し、ケルダール湿式分解(硫酸/硝酸、硫酸/過酸化水素)を行い、50mLに定容し、続いて、ICP発光分析を酸濃度マッチング一点検量法にて行った。単位は、質量ppmにて示した。
ICP発光分析は、ThermoThrmo Fisher Scientific社製「iCAP7600duoiCAP76000uo」を用い、axial/radial測光にて行った。
【0116】
2.実施例1~3、参考例1~3
<コンパウンド>
表1に示す各成分を表3に示す割合(質量部)にて、ガラス繊維以外の成分をタンブラーミキサーで均一に混合した。得られた混合物を、二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX30α」)にメインフィード口より供給した。第一混練部のシリンダー設定温度260℃に設定し、ガラス繊維はサイドフィーダーより供給した。ガラス繊維添加以降のシリンダー設定温度260℃、スクリュー回転数200rpmの条件で溶融混練した樹脂組成物を、水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、樹脂組成物のペレットを得た。
【0117】
<引張特性>
上記で得られた樹脂ペレットを120℃で5時間乾燥したのちISO多目的試験片(厚さ4mm)を、射出成形機(日本製鋼所社製「J-85AD-60H」)を用いて、シリンダー温度250、金型温度80℃の条件で射出成形した。
成形した多目的ISO多目的試験片を用い、ISO527-1およびISO527-2に準拠し、引張弾性率(単位:MPa)および引張強さ(単位:MPa)を測定した。
【0118】
<難燃性>
<<試験片の製造>>
上記で得られた樹脂組成物ペレットを、120℃で5時間乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所社製「J-50AD」)にて、シリンダー温度250、金型温度80℃の条件下で、燃焼試験片(12.7mm幅×127mm長さ×1.6mm厚)を射出成形した。
【0119】
<<燃焼試験>>
得られた燃焼試験用試験片について、アンダーライターズ・ラボラトリーズのサブジェクト94(UL94)の方法に準じ、5本の試験片を用いて垂直燃焼試験を行い、1回目接炎後の燃焼時間(t1)と2回目の接炎後の燃焼時間(t2)をそれぞれ計測し、最大燃焼時間と総燃焼時間(T1+T2)を求めた。最大燃焼時間は、5本試験した際のt1またはt2の最も大きい値である。総燃焼時間(T1+T2)は、1回目の接炎後の燃焼時間(t1)の燃焼試験片5本分の合計時間(T1)と、2回目の接炎後の燃焼時間(t2)の燃焼試験片5本分の合計時間(T2)の、合計(T1+T2)である。
【0120】
<収縮率>
上記で得られたペレットを120℃で5時間乾燥した後、日精樹脂工業社製「NEX80-9E型」射出成形機を使用して、シリンダー温度260℃、金型温度80℃にて、成形品(タテ100mm、ヨコ100mm、肉厚2.0mm)を成形した。得られた試験片を、室温23℃、湿度50%RH環境下で24時間以上調湿した。
その後、得られた試験片を用いて、MD(Machine Direction、流動方向とも言う。)およびTD(Transverse Direction、直角方向とも言う。)方向の寸法を計測し、金型の寸法を基準として成形収縮率(単位:%)を計算した。
【0121】
<接着強度>
上記で作製したISO多目的試験片(ダンベル片)のチャック部にNitto社製NITOFLON粘着テープ(10mm幅×0.18mm厚)を貼ることで20mm×20mm四方の接着剤塗布エリアを作製した。その後、このエリアに信越化学者製シリコーン接着剤KE-1875を1g程度塗布し、もう一本の同種材ISO多目的試験片のチャック部を張り合わせバインダークリップで固定した。
試験片を120℃×1時間熱風オーブン内に置き、接着剤を固化させ取り出し後、23℃×50%RHの雰囲気下で48時間放置した。その後、島津製作所製AUTOGRAPH AGS-X 10kNを使用して引張速度5mm/分で引張試験を行い、接着強度を測定した。
【0122】
【0123】
本発明の樹脂組成物から得られた成形品は、バージン品のポリスチレン系樹脂を用いた成形品と同等レベルの機械的強度および難燃性を達成できた。さらに、本発明の樹脂組成物は、他の部材との接着性に優れたい成形品を提供できた。