(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084022
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】供試体試験システム、供試体試験方法、及び、供試体試験プログラム
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20240617BHJP
G01V 15/00 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
G01M17/007 H
G01V15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198179
(22)【出願日】2022-12-12
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】角谷 栄二
(72)【発明者】
【氏名】山本 光延
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB14
2G105HH01
2G105JJ05
2G105KK06
(57)【要約】
【課題】試験設備を用いた供試体試験システムにおいて作業者の安全を確保する。
【解決手段】試験室TRにおいて供試体Wを試験する供試体試験システム100であって、供試体Wを試験するための試験設備2と、試験設備2を制御する制御装置3と、作業者が装着する装着品から、作業者の位置情報を送信する送信機4と、送信機4から送信される位置情報を受信する受信機5とを備え、制御装置4は、作業者の位置情報、及び、予め設定された試験室TR内のエリア情報に基づいて、試験設備2の動作を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験室又は試験棟において供試体を試験する供試体試験システムであって、
前記供試体を試験するための試験設備と、
前記試験設備を制御する制御装置と、
作業者が装着する装着品から、前記作業者の位置情報を送信する送信機と、
前記送信機から送信される位置情報を受信する受信機とを備え、
前記制御装置は、前記作業者の位置情報、及び、予め設定された試験室又は試験棟内のエリア情報に基づいて、前記試験設備の動作を制御する、供試体試験システム。
【請求項2】
前記制御装置は、予め設定された試験室又は試験棟内のエリア情報を格納する格納部を備えている、請求項1に記載の供試体試験システム。
【請求項3】
前記試験設備を複数有しており、
複数の前記試験設備それぞれに前記エリア情報が設定されている、請求項1又は2に記載の供試体試験システム。
【請求項4】
前記エリア情報は、危険エリアに関する危険エリア情報、安全エリアに関する安全エリア情報、及び/又は、試験開始を可能とする試験開始エリアに関する試験開始エリア情報である、請求項1乃至3の何れか一項に記載の供試体試験システム。
【請求項5】
前記エリア情報は、危険エリアに関する危険エリア情報であり、
前記制御装置は、前記作業者の位置情報及び前記エリア情報に基づいて、前記危険エリアに前記作業者が入った場合に、前記試験設備を停止させる、又は、前記試験設備の稼働を不可とする、請求項1乃至4の何れか一項に記載の供試体試験システム。
【請求項6】
前記エリア情報は、安全エリアに関する安全エリア情報であり、
前記制御装置は、前記作業者の位置情報及び前記エリア情報に基づいて、前記安全エリアに前記作業者が居る場合に、前記試験設備の稼働を可能とする、請求項1乃至5の何れか一項に記載の供試体試験システム。
【請求項7】
前記エリア情報は、試験開始を可能とする試験開始エリアに関する試験開始エリア情報であり、
前記制御装置は、前記作業者の位置情報及び前記エリア情報に基づいて、前記試験開始エリアに前記作業者が居る場合に、前記試験設備による試験開始を可能とする、請求項1乃至6の何れか一項に記載の供試体試験システム。
【請求項8】
前記送信機は、前記位置情報とともに送信機IDを送信するものであり、
前記受信機は、前記位置情報とともに前記送信機IDを受信するものであり、
前記制御装置は、前記送信機IDに基づいて、前記作業者が供試体の試験を行うことができる有資格者か否かを判断する、請求項1乃至7の何れか一項に記載の供試体試験システム。
【請求項9】
前記エリア情報は、試験開始を可能とする試験開始エリアに関する試験開始エリア情報であり、
前記制御装置は、前記作業者の位置情報、前記エリア情報及び前記送信機IDに基づいて、前記試験開始エリアに有資格者である前記作業者が居る場合に、前記試験設備による試験開始を可能とする、請求項8に記載の供試体試験システム。
【請求項10】
前記制御装置は、前記作業者の位置情報に基づいて、前記作業者の動線分析を行う、請求項1乃至9の何れか一項に記載の供試体試験システム。
【請求項11】
前記供試体は、車両或いはその一部、燃料電池、又は、水素生成装置である、請求項1乃至10の何れか一項に記載の供試体試験システム。
【請求項12】
試験室又は試験棟内において試験設備を用いて供試体を試験する供試体試験方法であって、
作業者の装着品に送信機を装着して、前記作業者の位置情報を送信し、
前記送信機から送信される位置情報を受信機で受信し、
前記受信機が受信した前記作業者の位置情報、及び、予め設定された試験室又は試験棟内のエリア情報に基づいて、前記試験設備の動作を制御する、供試体試験方法。
【請求項13】
試験室において供試体を試験する供試体試験システムに用いられる供試体試験プログラムであって、
前記供試体試験システムは、
前記供試体を試験するための試験設備と、
前記試験設備を制御する制御装置と、
作業者の装着品に装着されるとともに、前記作業者の位置情報を送信する送信機と、
前記送信機から送信される位置情報を受信する受信機とを備え、
前記供試体試験プログラムは、前記作業者の位置情報、及び、予め設定された試験室又は試験棟内のエリア情報に基づいて、前記試験設備の動作を制御する機能を前記制御装置に備えさせる、供試体試験プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供試体試験システム、供試体試験方法、及び、供試体試験プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両試験の作業者であるテストドライバーの安全を確保する車両試験システムとしては、特許文献1に示すものが考えられている。
【0003】
この車両試験システムは、排ガス測定装置、排ガス吸引用ブロワ又は車両冷却用ファン等の試験設備の稼動状況を、テストドライバーが視認できるディスプレイに表示するとともに、テストドライバーが試験設備を操作できるように構成されている。
【0004】
しかしながら、上記の車両試験システムは、テストドライバーの安全を確保できるものの、試験設備の周辺における他の作業者の所在にかかわらず、試験設備の稼動が可能であり、他の作業者の安全が確保されたものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は上述したような問題に鑑みてなされたものであり、試験設備を用いた供試体試験システムにおいて作業者の安全を確保することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係る供試体試験システムは、試験室又は試験棟において供試体を試験する供試体試験システムであって、前記供試体を試験するための試験設備と、前記試験設備を制御する制御装置と、作業者が装着する装着品から、前記作業者の位置情報を送信する送信機と、前記送信機から送信される位置情報を受信する受信機とを備え、前記制御装置は、前記作業者の位置情報、及び、予め設定された試験室又は試験棟内のエリア情報に基づいて、前記試験設備の動作を制御することを特徴とする。
【0008】
このような供試体試験システムであれば、作業者が装着する装着品から作業者の位置情報を取得し、その位置情報と予め設定された試験室又は試験棟内のエリア情報に基づいて、試験設備の動作を制御するので、作業者の安全を確保できるようになる。
【0009】
具体的な実施の態様としては、前記制御装置は、予め設定された試験室又は試験棟内のエリア情報を格納する格納部を備えていることが望ましい。このエリア情報は、作業者やオペレータ等のユーザが適宜設定できるものであり、入力装置により入力されたエリア情報は、格納部に格納される。
【0010】
試験室又は試験棟には、複数の前記試験設備が設けられている。これら複数の試験設備は、種類に応じて、作業者の安全を確保するためのエリアが異なることが考えられる。このため、本発明の供試体試験システムは、複数の前記試験設備それぞれに前記エリア情報が設定されていることが望ましい。
【0011】
作業者の安全を確保するためには、前記エリア情報は、危険エリアに関する危険エリア情報、安全エリアに関する安全エリア情報、及び/又は、試験開始を可能とする試験開始エリアに関する試験開始エリア情報であることが望ましい。
【0012】
前記エリア情報が、危険エリアに関する危険エリア情報である場合には、前記制御装置は、前記作業者の位置情報及び前記エリア情報に基づいて、前記危険エリアに前記作業者が入った場合に、前記試験設備を停止させる、又は、前記試験設備の稼働を不可とすることが望ましい。
【0013】
前記エリア情報が、安全エリアに関する安全エリア情報である場合には、前記制御装置は、前記作業者の位置情報及び前記エリア情報に基づいて、前記安全エリアに前記作業者が居る場合に、前記試験設備の稼働を可能とすることが望ましい。
【0014】
前記エリア情報が、試験開始を可能とする試験開始エリアに関する試験開始エリア情報である場合には、前記制御装置は、前記作業者の位置情報及び前記エリア情報に基づいて、前記試験開始エリアに前記作業者が居る場合に、前記試験設備による試験開始を可能とすることが望ましい。
【0015】
前記作業者が供試体の試験を行うことができる有資格者か否かを判断するためには、前記送信機は、前記位置情報とともに送信機IDを送信するものであり、前記受信機は、前記位置情報とともに前記送信機IDを受信するものであり、前記制御装置は、前記送信機IDに基づいて、前記作業者が供試体の試験を行うことができる有資格者か否かを判断することが望ましい。
【0016】
前記エリア情報が、試験開始を可能とする試験開始エリアに関する試験開始エリア情報である場合には、前記制御装置は、前記作業者の位置情報、前記試験開始エリア情報及び前記送信機IDに基づいて、前記試験開始エリアに有資格者である前記作業者が居る場合に、前記試験設備による試験開始を可能とすることが望ましい。
【0017】
前記制御装置は、前記作業者の位置情報に基づいて、前記作業者の動線分析を行うことが望ましい。この構成であれば、作業者の動線分析を行うことによって、作業者の安全を確保するための事後解析を行うことができる。また、作業者の動きから試験設備の稼働時間を推定することもできる。
【0018】
供試体の試験結果のエビデンスを確保するためには、前記供試体に設けられた無線タグのIDを読み取る無線タグリーダをさらに備え、前記制御装置は、前記無線タグリーダが読み取ったIDにより前記供試体を管理することが望ましい。
【0019】
本発明の供試体試験システムの適用例としては、車両或いはその一部、燃料電池、又は、水素生成装置の試験システムであることが考えられる。
【0020】
また、本発明に係る供試体試験方法は、試験室又は試験棟内において試験設備を用いて供試体を試験する供試体試験方法であって、作業者の装着品に送信機を装着して、前記作業者の位置情報を送信し、前記送信機から送信される位置情報を受信機で受信し、前記受信機が受信した前記作業者の位置情報、及び、予め設定された試験室又は試験棟内のエリア情報に基づいて、前記試験設備の動作を制御することを特徴とする。
【0021】
さらに、本発明に係る供試体試験プログラムは、試験室において供試体を試験する供試体試験システムに用いられる供試体試験プログラムであって、前記供試体試験システムは、前記供試体を試験するための試験設備と、前記試験設備を制御する制御装置と、作業者の装着品に装着されるとともに、前記作業者の位置情報を送信する送信機と、前記送信機から送信される位置情報を受信する受信機とを備え、前記供試体試験プログラムは、前記作業者の位置情報、及び、予め設定された試験室又は試験棟内のエリア情報に基づいて、前記試験設備の動作を制御する機能を前記制御装置に備えさせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
このように構成した本発明によれば、試験設備を用いた供試体試験システムにおいて作業者の安全を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る供試体試験システムを示す模式図である。
【
図2】同実施形態の位置演算用の制御装置の格納部を示す図である。
【
図3】同実施形態において危険エリアが設定された場合の模式図である。
【
図4】同実施形態において安全エリアが設定された場合の模式図である。
【
図5】同実施形態において試験開始エリアが設定された場合の模式図である。
【
図6】変形実施形態において試験設備毎に危険エリアが設定された場合の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<本発明の一実施形態>
以下に、本発明に係る供試体試験システムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0025】
<システム構成>
本実施形態の供試体試験システム100は、
図1に示すように、試験室TRにおいて供試体Wを試験するものである。ここで、試験室TRは、互いに気密に区画された計測区画TR1と操作区画TR2とに分かれている。
【0026】
また、供試体Wとしては、ガソリン車、ディーゼル車、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)或いは燃料電池車(FCV)等の車両又はその一部である。
【0027】
具体的に供試体試験システム100は、供試体Wを試験するための試験設備2と、試験設備2を制御する制御装置3とを備えている。
【0028】
試験設備2は、試験室TRにおける計測区画TR1に配置されている。この試験設備2は、供試体Wに合わせて適宜設定されるものであり、本実施形態の供試体Wは、車両又はその一部であることから、例えば、供試体Wを模擬走行させるシャシダイナモメータ21、供試体Wに車速に応じた風を送る送風装置22、温度又は圧力等の供試体Wの周囲環境を調整する周囲環境調整装置(不図示)、排ガス分析装置(不図示)を用いることができる。なお、シャシダイナモメータの他に、エンジンダイナモメータ、モータ用のダイナモメータ、又はパワートレインダイナモメータ等を用いることもできる。
【0029】
制御装置3は、試験室TRにおける操作区画TR2に配置されている。この制御装置3は、作業者又はオペレータ等のユーザに操作されることによって、試験設備2の稼働又は停止等を制御するとともに、試験設備2を予め定められた試験シーケンスに基づいて制御する。なお、制御装置3は、CPU、メモリ、入出力インターフェイス、AD変換器、ディスプレイ、キーボード等の入力装置、又は通信装置などを有するコンピュータにより構成されている。
【0030】
そして、本実施形態の供試体試験システム100は、作業者の安全を確保するための機能を有するものであり、
図1に示すように、作業者に装着されるとともに、作業者の位置情報を送信する送信機4と、送信機4から送信される位置情報を受信する受信機5とを備えている。
【0031】
送信機4は、作業者が装着する装着品10に設けられており、例えば、ヘルメット、工具、作業着、作業着に取り付けられる名札、又は首から掛ける名札等に設けられている。この送信機4は、受信機5との間で、例えばWi-Fi方式又はBluetooth方式等の近距離無線通信を行うものであり、送信機4(当該送信機4を装着している作業者)の位置情報を送信する。また、本実施形態の送信機4は、送信機4のIDも併せて送信しても良い。
【0032】
受信機5は、送信機4との間で例えばWi-Fi方式又はBluetooth方式等の近距離無線通信を行うものであり、送信機4から送信機4(当該送信機4を装着している作業者)の位置情報を受信する。また、本実施形態の受信機5は、送信機4のIDも併せて受信しても良い。なお、受信機5は、試験室TR単位に設けても良いし、計測区画TR1と操作区画TR2とのそれぞれに設けても良い。
【0033】
そして、制御装置3は、受信機5が受信した作業者の位置情報、及び、予め設定された試験室TR内のエリア情報に基づいて、試験設備2の動作を制御するものである。
【0034】
本実施形態の制御装置3は、受信機5が受信した作業者の位置情報とエリア情報とから、エリアに対する作業者の位置を演算する位置演算用の制御装置31と、各試験設備を制御するための試験設備用の制御装置32とを有している。なお、位置演算用の制御装置31及び試験設備用の制御装置32は単一のコンピュータから構成しても良い。
【0035】
ここで、位置演算用の制御装置31は、受信機5が受信した作業者の位置情報に含まれる二次元的な位置情報を用いて作業者の位置を演算するものである。また、位置演算用の制御装置31は、
図2に示すように、予め設定された試験室TR内のエリア情報を格納する格納部311を備えている。格納部311に格納されるエリア情報は、二次元的なエリア情報であり、危険エリアに関する危険エリア情報、安全エリアに関する安全エリア情報、及び/又は、試験開始を可能とする試験開始エリアに関する試験開始エリア情報を含む。
【0036】
図3に示すように、エリア情報が危険エリアに関する危険エリア情報である場合には、位置演算用の制御装置31は、作業者の位置情報及びエリア情報に基づいて、危険エリアに作業者が入っているか否かを判断する。例えば、危険エリアに作業者が所定時間以上入っている場合に、危険エリアに作業者が入っていると判断しても良い。
図3の危険エリアは、試験室TRの計測区画TR1内においてシャシダイナモメータ21を基準に定められており、シャシダイナモメータ21から所定距離離れた領域を含むように設定されている。
【0037】
そして、試験設備用の制御装置32は、危険エリアに作業者が入った場合において、試験設備2を停止させる、試験設備2の稼働を不可とする、又は、作業者に危険エリアに入っていることを報知するための警告を出す。具体的に試験設備用の制御装置32は、危険エリアに作業者が入った場合には、稼働中の試験設備2を緊急停止させるための予め定められた緊急停止制御を行う。なお、作業者の安全性に関係のない試験設備は停止しなくてもよい。
【0038】
また、
図4に示すように、エリア情報が安全エリアに関する安全エリア情報である場合には、位置演算用の制御装置31は、作業者の位置情報及びエリア情報に基づいて、安全エリアに作業者が居るか否かを判断する。例えば、安全エリアに作業者が所定時間以上入っている場合に、安全エリアに作業者が居ると判断しても良い。
図4の安全エリアは、試験室TRの操作区画TR2全体としているが、操作区画TR2の一部であっても良いし、計測区画TR1内の危険エリア以外の部分であっても良い。
【0039】
そして、試験設備用の制御装置32は、安全エリアに作業者が居る場合において、試験設備2の稼働を可能とする。具体的に試験設備用の制御装置32は、安全エリアに作業者が居る場合には、停止中の試験設備2を稼働して供試体Wの試験を開始することができる。
【0040】
さらに、
図5に示すように、エリア情報が試験開始を可能とする試験開始エリアに関する試験開始エリア情報である場合には、位置演算用の制御装置31は、作業者の位置情報及びエリア情報に基づいて、試験開始エリアに作業者が居るか否かを判断する。例えば、試験開始エリアに作業者が所定時間以上入っている場合に、試験開始エリアに作業者が居ると判断しても良い。
図5の試験開始エリアは、試験室TRの操作区画TR2において試験設備用の制御装置32の周囲に設定されており、作業者が試験設備用の制御装置32を操作できる領域であれば良い。
【0041】
また、試験設備用の制御装置32は、位置情報に加えて送信機IDを受信した場合には、送信機IDに基づいて、作業者が供試体Wの試験を行うことができる有資格者か否かを判断しても良い。ここで、位置演算用の制御装置31の格納部311には、
図2に示すように、送信機IDと当該送信機4を装着している作業者のIDとが紐づけられて格納されており、受信した送信機IDに基づいて作業者を特定する。そして、機器制御用の制御装置32は、その作業者が予め登録された有資格者であるか否かを判断する。
【0042】
これにより、試験設備用の制御装置32は、作業者の位置情報、試験開始エリア情報及び送信機ID(送信者ID)に基づいて、試験開始エリアに有資格者である作業者が入った場合に、試験設備2による試験開始を可能とすることができる。
【0043】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態の供試体試験システム100によれば、作業者に装着される装着品に設けられた送信機4から作業者の位置情報を取得し、その位置情報と予め設定された試験室内のエリア情報に基づいて、試験設備2の動作を制御するので、作業者の安全を確保できるようになる。
【0044】
具体的に機器制御用の制御装置32が、危険エリアに作業者が入った場合に、試験設備2を停止させる、又は、試験設備2の稼働を不可とするので、作業者の安全を確保できるようになる。
【0045】
また、機器制御用の制御装置32が、安全エリアに作業者が居る場合に、試験設備2の稼働を可能とするので、作業者の安全を確保できるようになる。
【0046】
さらに、機器制御用の制御装置32が、試験開始エリアに作業者が居る場合に、試験設備2による試験開始を可能とするので、作業者の安全を確保できるようになる。
【0047】
<その他の実施形態>
例えば、前記実施形態では、危険エリア、安全エリア、及び/又は試験開始エリアを設定した例を示しているが、その他のエリアを設定してもよい。例えば、見学者又は顧客等のゲストが案内されるゲストエリアを設定しても良い。この場合、制御装置32が、ゲストがゲストエリア外にいる場合には、セキュリティ又は安全性の観点から警告を出す等をすることが考えられる。
【0048】
また、実施形態では、試験室内にエリアを設定するものであったが、試験室TRを含む試験棟等の建屋内にエリアを設定するものであってもよい。
【0049】
さらに、前記実施形態では、位置演算用の制御装置31は、作業者の二次元的な位置情報、及び、二次元的なエリア情報に基づいて、試験設備2の動作を制御するものであったが、作業者の三次元的な位置情報、及び、三次元的なエリア情報に基づいて、試験設備2の動作を制御するものであっても良い。この場合、送信機4から送信される位置情報を受信する受信機5を複数設けておき、それら複数の受信機5の受信信号を用いて作業者の三次元的な位置情報を取得することができる。このように三次元的な位置情報を取得することにより、特定の高さに計測機器などの試験設備2がある場合に、その試験設備に対して適切な安全管理を行うことができる。
【0050】
その上、
図6に示すように、複数の試験設備2それぞれに個別にエリア情報を設定してもよい。なお、
図6では、複数の試験設備2それぞれに個別に危険エリア情報を設定した例を示している。
【0051】
さらに、制御装置3は、作業者の位置情報の履歴に基づいて、作業者の動線分析を行うものであってもよい。この構成であれば、作業者の動線分析を行うことによって、作業者の安全を確保するための事後解析を行うことができる。また、作業者の動きから試験設備2の稼働時間を推定することもできる。その他、ある作業に対して作業者数を分析し、作業者数の効率化を行うことができる。また、業務中の移動距離を分析し、作業者の移動の無駄を無くすこともできる。さらに、使用頻度が高い収納棚や工具までの移動距離が長く無いか等を分析し、最適なレイアウトに変更することができる。その上、人の密集度合いを分析し、事故又はトラブルを回避したり、人と人の衝突等を防ぐように対処することができる。
【0052】
その上、供試体Wに無線タグを設けている場合には、供試体試験システム100は、無線タグのIDを読み取る無線タグリーダをさらに備え、制御装置3は、無線タグリーダが読み取ったIDにより供試体Wの位置を管理するようにしてもよい。なお、供試体Wとしては、例えば、実験用のエンジン、トランスミッション又は触媒等を挙げることができる。また、工具に無線タグを設けて、各工具の位置情報を取得することにより、工具管理を行うようにしても良い。このように供試体W又は工具に無線タグを設けることにより、所定エリアから持ち出していいものと、持ち出してはいけないものとを適切に管理することができる。例えば、持ち出してはいけないものが持ち出された場合には、警告を出すようにできる。
【0053】
また、供試体試験システム100は、試験室TR内や試験設備2周辺を撮像する撮像カメラを有しており、当該撮像カメラにより得られた画像データを用いて安全監視するものであっても良い。例えば、作業者が危険エリアに入った場合には、その際の画像データを履歴データとして記録することが考えられる。また、位置情報及びエリア情報に基づいて試験設備2の動作を制御する構成に加えて、画像データ及びエリア情報に基づいて試験設備2の動作を制御するように構成しても良い。さらに、画像データを用いて顔認証を行うことにより、適切な作業者であるか否か等の判断を行うことができる。また、画像データからエリアへの侵入を判定することもでき、セキュリティ管理を行うことができる。
【0054】
なお、送信機4は、装着品10とは別に設けられていても良く、各エリアに配置された送信機4に装着品10をかざすことで、送信機4が配置された位置情報を送信するものであっても良い。
【0055】
前記実施形態の供試体Wは、車両又はその一部であったが、二次電池、燃料電池又は水素生成装置等であってもよい。供試体Wが二次電池の場合には、試験設備2としては、例えば充放電装置又は温度調整装置等を用いることができる。また、供試体Wが燃料電池の場合には、試験設備2としては、例えば酸素供給装置、水素供給装置、又は温度調整装置等を用いることができる。さらに、供試体Wが水素を生成する水素生成装置の場合には、試験設備2としては、例えば水素濃度測定装置などを用いることができる。
【0056】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0057】
100・・・供試体試験システム
2・・・試験設備
3・・・制御装置
311・・・格納部
4・・・送信機
5・・・受信機