(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084063
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】磁気検出装置、磁気抵抗素子、磁気検出システム、および、磁気検出装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
G01D5/245 M
G01D5/245 110B
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198233
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牛田 彩希
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA12
2F077AA25
2F077AA46
2F077NN03
2F077NN04
2F077NN21
2F077PP14
2F077QQ03
2F077TT16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数の磁気抵抗素子をそれぞれ個別にパッケージングすることで、複数の磁気抵抗素子を基板の一方の主面上に配置する際の自由度を確保した磁気検出装置を提供する。
【解決手段】基板と、それぞれがパッケージングされており、基板の一方の主面上で一方向に並んで配置されている複数の磁気抵抗素子120-1~120-4と、基板の他方の主面上に配置されている磁石とを備え、複数の磁気抵抗素子120-1~120-4はそれぞれ、細長い外形の主面を有し、主面の長手方向が一方向に向いた状態で、一方の主面上に配置されており、複数の磁気抵抗素子120-1~120-4はそれぞれ、主面の短手方向に沿って互いに連結された複数の磁気抵抗体124から成る磁気抵抗体列122を、主面の長手方向に沿って繰り返し折り返して複数配列することにより、互いに直列接続させた磁気抵抗ユニット121を有す。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
それぞれがパッケージングされており、前記基板の一方の主面上で一方向に並んで配置されている複数の磁気抵抗素子と、
前記基板の他方の主面上に配置されている磁石と
を備える磁気検出装置。
【請求項2】
前記複数の磁気抵抗素子はそれぞれ、細長い外形の主面を有し、前記主面の長手方向が前記一方向に向いた状態で、前記一方の主面上に配置されている、
請求項1に記載の磁気検出装置。
【請求項3】
前記複数の磁気抵抗素子はそれぞれ、前記主面の短手方向に沿って互いに連結された複数の磁気抵抗体から成る磁気抵抗体列を、前記主面の長手方向に沿って繰り返し折り返して複数配列することにより、互いに直列接続させた磁気抵抗ユニットを有する、
請求項2に記載の磁気検出装置。
【請求項4】
前記複数の磁気抵抗素子は、4×M(Mは自然数)個であり、少なくとも4個の前記磁気抵抗素子がフルブリッジ構造で接続されている、
請求項2に記載の磁気検出装置。
【請求項5】
前記少なくとも4個の磁気抵抗素子において、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子は、前記一方の主面の平面方向のうち前記一方向に直交する方向から見た場合に互いに重なっていない、
請求項4に記載の磁気検出装置。
【請求項6】
前記少なくとも4個の磁気抵抗素子において、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子、および、互いに直列接続された他の2個の磁気抵抗素子は、前記一方の主面上で前記一方向に交互に並んで配置されている、
請求項4に記載の磁気検出装置。
【請求項7】
前記2個の磁気抵抗素子の少なくとも一方は、前記一方の主面の平面方向のうち前記一方向に直交する方向から見た場合に、前記他の2個の磁気抵抗素子の少なくとも一方と互いに一部のみが重なっている、
請求項6に記載の磁気検出装置。
【請求項8】
前記一方向から見た場合に、前記2個の磁気抵抗素子は互いに少なくとも部分的に重なっており、前記他の2個の磁気抵抗素子は互いに少なくとも部分的に重なっている、
請求項6に記載の磁気検出装置。
【請求項9】
前記2個の磁気抵抗素子および前記他の2個の磁気抵抗素子はそれぞれ、一方の磁気抵抗素子の前記主面の長手方向が、他方の磁気抵抗素子の前記主面の長手方向に沿うように、前記一方の主面上に配置されている、
請求項8に記載の磁気検出装置。
【請求項10】
前記少なくとも4個の磁気抵抗素子はそれぞれ、前記主面の短手方向に沿って互いに連結された複数の磁気抵抗体から成る磁気抵抗体列を、前記主面の長手方向に沿って繰り返し折り返して複数配列することにより、互いに直列接続させた磁気抵抗ユニットを有する、
請求項9に記載の磁気検出装置。
【請求項11】
前記一方の主面の平面方向のうち前記一方向に直交する方向から見た場合に、前記2個の磁気抵抗素子の少なくとも一方の前記磁気抵抗ユニットにおいて一端に位置する前記磁気抵抗体列と、前記他の2個の磁気抵抗素子の少なくとも一方の前記磁気抵抗ユニットにおいて一端に位置する前記磁気抵抗体列との間隔は、前記少なくとも4個の磁気抵抗素子のそれぞれにおける複数の磁気抵抗体列の間隔と等しい、
請求項10に記載の磁気検出装置。
【請求項12】
前記少なくとも4個の磁気抵抗素子はそれぞれ、前記主面の長手方向における前記磁気抵抗ユニットの両端に接続された端子電極を有する、
請求項10に記載の磁気検出装置。
【請求項13】
前記複数の磁気抵抗素子は、第1電位および第2電位の間に電気的に接続され、
前記複数の磁気抵抗素子の中点電圧を出力する出力端子を更に備える、
請求項1から12の何れか一項に記載の磁気検出装置。
【請求項14】
前記複数の磁気抵抗素子は、対向して設けられる歯車の回転に伴って、正弦波状の中点電圧を前記出力端子から出力するように構成される、
請求項13に記載の磁気検出装置。
【請求項15】
前記基板は、第1基板と、前記一方の主面側から前記第1基板に貼り合わされた第2基板とを有し、
前記第1基板は、前記磁石が挿入される貫通孔を含み、
前記第2基板は、前記貫通孔を塞ぐ領域を含み、前記領域において前記磁石と接しており、
前記複数の磁気抵抗素子は、前記第2基板の前記一方の主面における前記領域に対応する位置に配置されている、
請求項1から12の何れか一項に記載の磁気検出装置。
【請求項16】
前記第2基板は、前記第1基板よりも薄い、
請求項15に記載の磁気検出装置。
【請求項17】
前記第2基板における前記貫通孔を塞ぐ領域の厚みは0.1mm以上0.6mm以下である、
請求項16に記載の磁気検出装置。
【請求項18】
前記磁石によって前記複数の磁気抵抗素子に印加される磁束密度は、400mT以上である、
請求項15に記載の磁気検出装置。
【請求項19】
細長い外形の主面を有する磁気抵抗素子であって、
前記主面の短手方向に沿って互いに連結された複数の磁気抵抗体から成る磁気抵抗体列を、前記主面の長手方向に沿って繰り返し折り返して複数配列することにより、互いに直列接続させた磁気抵抗ユニットと、
前記主面の長手方向における前記磁気抵抗ユニットの両端に接続された端子電極と、
前記端子電極の少なくとも一部を露出させた状態で、前記磁気抵抗ユニットおよび前記端子電極をパッケージングするパッケージと
を備える磁気抵抗素子。
【請求項20】
前記主面の長手方向における前記磁気抵抗ユニットの両端に配置された前記磁気抵抗体列の少なくとも1つの位置を前記パッケージの外部から認識可能にするべく前記パッケージ上に設けられた指標を更に備える、請求項19に記載の磁気抵抗素子。
【請求項21】
被検出ユニットと、
前記被検出ユニットに対向して設けられ、前記被検出ユニットの相対移動に伴う磁束密度の変化を検出する磁気検出装置と
を備え、
前記磁気検出装置は、
基板と、
それぞれがパッケージングされており、前記基板の前記被検出ユニットに対向する側の主面上で一方向に並んで配置されている複数の磁気抵抗素子と、
前記基板の前記対向する側の反対側の主面上に配置されている磁石と
を有する、
磁気検出システム。
【請求項22】
複数の磁気抵抗素子をそれぞれパッケージングすることと、
前記複数の磁気抵抗素子を基板の一方の主面上で一方向に並べて配置することと、
前記基板の他方の主面上に磁石を配置することと
を備える磁気検出装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気検出装置、磁気抵抗素子、磁気検出システム、および、磁気検出装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「回転センサ2は永久磁石3に2個一対の磁気抵抗素子4,5を設けるものとして述べたが、2個の磁気抵抗素子を一組として、複数組の磁気抵抗素子を永久磁石3に設ける」(第3貢、右下欄から第4貢、左上欄)と記載されている。特許文献2には、「歯車センサは、…フィールド磁石1…の磁極面に支持された特性の等しい2個の素子MR1'、MR2'を、…歯車ピッチPの二分の一間隔で配列したもの」([0007])と記載されている。特許文献3には、「磁気抵抗素子11は、端子電極19a,19b及び端子電極19cとを、例えば、
図4に示すように、金ワイヤー23により、図示しない端子ピン13に接続されるリードフレーム24にワイヤーボンドした後、これらをエポキシ樹脂などのモールド樹脂25によりパッケージされ、永久磁石12を保持した磁石ホルダー15とともに円筒状の樹脂ケース16に収納される。これにより、全体が円柱状である回転検出器10を得ることができる。」([0018])と記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開昭62-66115号公報
[特許文献2] 特開2004-271423号公報
[特許文献3] 特許第4240306号
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、磁気検出装置を提供する。磁気検出装置は、基板と、それぞれがパッケージングされており、前記基板の一方の主面上で一方向に並んで配置されている複数の磁気抵抗素子と、前記基板の他方の主面上に配置されている磁石とを備える。
【0004】
上記の磁気検出装置において、前記複数の磁気抵抗素子はそれぞれ、細長い外形の主面を有し、前記主面の長手方向が前記一方向に向いた状態で、前記一方の主面上に配置されていてもよい。
【0005】
上記の何れかの磁気検出装置において、前記複数の磁気抵抗素子はそれぞれ、前記主面の短手方向に沿って互いに連結された複数の磁気抵抗体から成る磁気抵抗体列を、前記主面の長手方向に沿って繰り返し折り返して複数配列することにより、互いに直列接続させた磁気抵抗ユニットを有してもよい。
【0006】
上記の何れかの磁気検出装置において、前記複数の磁気抵抗素子は、4×M(Mは自然数)個であり、少なくとも4個の前記磁気抵抗素子がフルブリッジ構造で接続されていてもよい。
【0007】
上記の何れかの磁気検出装置では、前記少なくとも4個の磁気抵抗素子において、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子は、前記一方の主面の平面方向のうち前記一方向に直交する方向から見た場合に互いに重なっていなくてもよい。
【0008】
上記の何れかの磁気検出装置では、前記少なくとも4個の磁気抵抗素子において、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子、および、互いに直列接続された他の2個の磁気抵抗素子は、前記一方の主面上で前記一方向に交互に並んで配置されていてもよい。
【0009】
上記の何れかの磁気検出装置において、前記2個の磁気抵抗素子の少なくとも一方は、前記一方の主面の平面方向のうち前記一方向に直交する方向から見た場合に、前記他の2個の磁気抵抗素子の少なくとも一方と互いに一部のみが重なっていてもよい。
【0010】
上記の何れかの磁気検出装置において、前記一方向から見た場合に、前記2個の磁気抵抗素子は互いに少なくとも部分的に重なっており、前記他の2個の磁気抵抗素子は互いに少なくとも部分的に重なっていてもよい。
【0011】
上記の何れかの磁気検出装置において、前記2個の磁気抵抗素子および前記他の2個の磁気抵抗素子はそれぞれ、一方の磁気抵抗素子の前記主面の長手方向が、他方の磁気抵抗素子の前記主面の長手方向に沿うように、前記一方の主面上に配置されていてもよい。
【0012】
上記の何れかの磁気検出装置において、前記少なくとも4個の磁気抵抗素子はそれぞれ、前記主面の短手方向に沿って互いに連結された複数の磁気抵抗体から成る磁気抵抗体列を、前記主面の長手方向に沿って繰り返し折り返して複数配列することにより、互いに直列接続させた磁気抵抗ユニットを有してもよい。
【0013】
上記の何れかの磁気検出装置において、前記一方の主面の平面方向のうち前記一方向に直交する方向から見た場合に、前記2個の磁気抵抗素子の少なくとも一方の前記磁気抵抗ユニットにおいて一端に位置する前記磁気抵抗体列と、前記他の2個の磁気抵抗素子の少なくとも一方の前記磁気抵抗ユニットにおいて一端に位置する前記磁気抵抗体列との間隔は、前記少なくとも4個の磁気抵抗素子のそれぞれにおける複数の磁気抵抗体列の間隔と等しくてもよい。
【0014】
上記の何れかの磁気検出装置において、前記少なくとも4個の磁気抵抗素子はそれぞれ、前記主面の長手方向における前記磁気抵抗ユニットの両端に接続された端子電極を有してもよい。
【0015】
上記の何れかの磁気検出装置において、前記複数の磁気抵抗素子は、第1電位および第2電位の間に電気的に接続されてもよい。上記の何れかの磁気検出装置は、前記複数の磁気抵抗素子の中点電圧を出力する出力端子を更に備えてもよい。
【0016】
上記の何れかの磁気検出装置において、前記複数の磁気抵抗素子は、対向して設けられる歯車の回転に伴って、正弦波状の中点電圧を前記出力端子から出力するように構成されてもよい。
【0017】
上記の何れかの磁気検出装置において、前記基板は、第1基板と、前記一方の主面側から前記第1基板に貼り合わされた第2基板とを有してもよい。上記の何れかの磁気検出装置において、前記第1基板は、前記磁石が挿入される貫通孔を含んでもよい。上記の何れかの磁気検出装置において、前記第2基板は、前記貫通孔を塞ぐ領域を含み、前記領域において前記磁石と接していてもよい。上記の何れかの磁気検出装置において、前記複数の磁気抵抗素子は、前記第2基板の前記一方の主面における前記領域に対応する位置に配置されていてもよい。
【0018】
上記の何れかの磁気検出装置において、前記第2基板は、前記第1基板よりも薄くてもよい。
【0019】
上記の何れかの磁気検出装置において、前記第2基板における前記貫通孔を塞ぐ領域の厚みは0.1mm以上0.6mm以下であってもよい。
【0020】
上記の何れかの磁気検出装置において、前記磁石によって前記複数の磁気抵抗素子に印加される磁束密度は、400mT以上であってもよい。
【0021】
本発明の第2の態様においては、磁気抵抗素子を提供する。磁気抵抗素子は、細長い外形の主面を有し、前記主面の短手方向に沿って互いに連結された複数の磁気抵抗体から成る磁気抵抗体列を、前記主面の長手方向に沿って繰り返し折り返して複数配列することにより、互いに直列接続させた磁気抵抗ユニットと、前記主面の長手方向における前記磁気抵抗ユニットの両端に接続された端子電極と、前記端子電極の少なくとも一部を露出させた状態で、前記磁気抵抗ユニットおよび前記端子電極をパッケージングするパッケージとを備える。
【0022】
上記の磁気抵抗素子は、前記主面の長手方向における前記磁気抵抗ユニットの両端に配置された前記磁気抵抗体列の少なくとも1つの位置を前記パッケージの外部から認識可能にするべく前記パッケージ上に設けられた指標を更に備えてもよい。
【0023】
本発明の第3の態様においては、磁気検出システムを提供する。磁気検出システムは、被検出ユニットと、前記被検出ユニットに対向して設けられ、前記被検出ユニットの相対移動に伴う磁束密度の変化を検出する磁気検出装置とを備え、前記磁気検出装置は、基板と、それぞれがパッケージングされており、前記基板の前記被検出ユニットに対向する側の主面上で一方向に並んで配置されている複数の磁気抵抗素子と、前記基板の前記対向する側の反対側の主面上に配置されている磁石とを有する。
【0024】
本発明の第4の態様においては、磁気検出装置の製造方法を提供する。磁気検出装置の製造方法は、複数の磁気抵抗素子をそれぞれパッケージングすることと、前記複数の磁気抵抗素子を基板の一方の主面上で一方向に並べて配置することと、前記基板の他方の主面上に磁石を配置することとを備える。
【0025】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第1実施形態による磁気検出システム10の模式的な側面図である。
【
図2】第1実施形態による磁気検出装置100の模式的な平面図である。
【
図3】第1実施形態による磁気検出装置100における、磁気抵抗素子120-1等の詳細を示す模式的な平面図である。
【
図4】第1実施形態による磁気検出装置100の製造方法の流れを説明するフロー図である。
【
図5】第2実施形態による磁気検出装置200における、磁気抵抗素子120-1等の詳細を示す模式的な平面図である。
【
図6】第3実施形態による磁気検出装置300における、磁気抵抗素子120-1等の詳細を示す模式的な平面図である。
【
図7】第4実施形態による磁気検出装置400における、磁気抵抗素子120-1等の詳細を示す模式的な平面図である。
【
図8】第5実施形態による磁気検出装置500における、磁気抵抗素子120-1等の詳細を示す模式的な平面図である。
【
図9】第6実施形態による磁気検出装置600の模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0028】
図1は、第1実施形態による磁気検出システム10の模式図である。
図1の紙面に向かって左方向をZ軸正方向、上方向をY軸正方向、手前方向をX軸正方向と定義する。
【0029】
磁気検出システム10は、回転体20と、磁気検出装置100とを備える。本実施形態による磁気検出システム10は、磁気検出装置100によって回転体20の回転角度、回転速度、回転方向、または回転数の少なくとも1つ等の回転動作を検出する。
【0030】
回転体20は、磁性体であって、凸部および/または凹部を有し、X軸方向に沿う回転軸を中心に回転する。回転体20は、例えば、回転軸に対して略直交する断面形状において凸部の頂点が回転軸を中心とする円周上に位置する。
【0031】
回転体20は、例えば歯車であってもよく、歯車状の部品であってもよい。
図1は、回転体20が円盤状の形状を有し、当該円盤の円周における回転の移動方向に沿って凹部および凸部が交互に配列された例を示す。なお、回転体20は、被検出ユニットの一例である。
【0032】
磁気検出装置100は、回転体20のZ軸負側で回転体20に対向して設けられ、回転体20の相対移動に伴う磁束密度の変化を検出する。磁気検出装置100は、回転体20と磁石Mとの間で磁石Mよりも回転体20に近接して配置され、回転体20が有する凸部および/または凹部に対向する。磁気検出装置100は、磁石Mから発生する磁力の磁束密度が、回転体20の凸部および/または凹部で変化するのを検出する。磁気検出装置100は、回転体20の回転に応じて変化する磁束密度に基づいて、回転体20の回転動作を検出する。
【0033】
磁気検出装置100は、基板110と、複数の磁気抵抗素子120と、磁石Mとを備える。本実施形態の磁気検出装置100では、
図1に示すように、回転体20が設けられているZ軸正側から、磁気検出装置100、基板110、磁石Mの順に配置される。
【0034】
基板110は、例えば非磁性体の板状部材である。基板110は、一例として、略方形の外形から成る主面を有する。
図1において、基板110の主面は、XY平面上にある。基板110のZ軸方向の厚みは、略一定であってもよく、XY平面内の任意の箇所で部分的に変化していてもよい。
【0035】
複数の磁気抵抗素子120は、磁石Mが発する磁場の大きさと向きを検知する。各磁気抵抗素子120は、例えばアンチモン化インジウム(InSb)を用いた半導体磁気抵抗素子(Semiconductor Magneto Resistive:SMR)である。各磁気抵抗素子120は、SMRに代えてまたは加えて、他の種類の磁気抵抗素子、例えば異方性磁気抵抗素子(Anisotropic Magneto Resistive:AMR)、巨大磁気抵抗素子(Giant Magneto Resistive:GMR)、トンネル磁気抵抗素子(Tunnel Magneto Resistive:TMR)などであってもよい。なお、上述のInSbは、インジウムヒ素(InAs)やアルミインジウムアンチモン(AlInSb)などに比べて移動度が高く、SMRの材料として好適である。
【0036】
複数の磁気抵抗素子120は、それぞれがパッケージングされており、基板110の回転体20に対向する側の主面上で一方向に並んで配置されている。本実施形態では、それぞれがパッケージングされている4個の磁気抵抗素子120-1、120-2、120-3、120-4が、基板110のZ軸正側の主面上で、Y軸方向、すなわち回転体20の相対移動方向に並んで配置されている。4個の磁気抵抗素子120-1、120-2、120-3、120-4は、基板110上に形成されている不図示の電極にはんだ付けされている。以降の説明において、4個の磁気抵抗素子120-1、120-2、120-3、120-4のうちの幾つか又は全てを、単に磁気抵抗素子120と称したり、磁気抵抗素子120-1等と称したりする場合がある。
【0037】
磁石Mは、基板110の回転体20に対向する側の反対側の主面上に配置されている。本実施形態では、磁石Mは、基板110のZ軸負側の主面上に配置されている。磁石Mは、予め定められた略一定の磁場を発生させる。磁石Mは、一例として、ネオジウムやサマリウムコバルト等を含む永久磁石であってもよい。当該永久磁石の残留磁束密度は、例えば約800mTである。
【0038】
磁石Mは、N極またはS極の磁極の作用面が回転体20の方向を向くように配置される。磁石Mは、回転体20が有する凸部および/または凹部に対して、磁束密度の変化が検出できる程度に、回転体20に近接して配置される。
【0039】
このように、本実施形態の磁気検出装置100では、複数の磁気抵抗素子120をそれぞれ個別にパッケージングすることで、複数の磁気抵抗素子120を基板110の一方の主面上に配置する際の自由度を確保する。
【0040】
図2は、第1実施形態による磁気検出装置100の模式的な平面図である。
図2では、回転体20の相対移動方向と複数の磁気抵抗素子120との相対位置関係を示すべく、回転体20を一点鎖線で示す。
図2中、一点鎖線で示す回転体20のY軸方向の両端は、波線で図示を省略している。以降の複数の図においても同様とし、重複する説明を省略する。
図2ではまた、基板110のZ軸負側の主面上に配置されている磁石Mを破線で示す。
【0041】
図2に示すように、本実施形態の複数の磁気抵抗素子120はそれぞれ、細長い外形の主面を有し、当該主面の長手方向が複数の磁気抵抗素子120の配列方向に向いた状態で、基板110の一方の主面上に配置されている。より具体的には、磁気抵抗素子120-1等はそれぞれ、細長い外形の主面の長手方向がY軸方向、すなわち、
図2に一点鎖線で示す回転体20の相対移動方向に向いた状態で、基板110のZ軸正側の主面上に配置されている。
【0042】
図2に一点鎖線で示す回転体20の相対移動方向において、順に並んで配置される複数の磁気抵抗素子120の相互間隔は、当該方向に並ぶ磁気抵抗素子120の数をN(Nは自然数)とした場合に、回転体20の凸部または凹部のピッチPをNで除算した値と略等しくてもよい。回転体20の凸部または凹部のピッチPとは、回転体20の隣接する凸部同士の間隔または隣接する凹部同士の間隔を指す。当該方向における複数の磁気抵抗素子120の相互間隔は、回転体20の凸部の先端と磁気抵抗素子120の感磁面との間隔、すなわちエアーギャップの大きさに応じて決定されてもよい。
【0043】
本実施形態では、4個の磁気抵抗素子120-1等は、回転体20の相対移動方向において、それぞれの中心が互いに略P/4の間隔を置いて配置されている。より具体的には、4個の磁気抵抗素子120-1等は、Y軸正方向に向かって磁気抵抗素子120-1、120-2、120-3、120-4の順に、それぞれの中心が互いに略P/4の間隔を置いて配置されている。換言すると、Y軸方向において、磁気抵抗素子120-1の中心と磁気抵抗素子120-2の中心との間の距離、磁気抵抗素子120-2の中心と磁気抵抗素子120-3の中心との間の距離、および、磁気抵抗素子120-3の中心と磁気抵抗素子120-4の中心との間の距離はそれぞれ、略P/4である。
【0044】
複数の磁気抵抗素子120は、4×M(Mは自然数)個であってもよい。本実施形態では一例として、磁気抵抗素子120の数を4個としているが、例えば8個や16個などであってもよい。この場合、複数の磁気抵抗素子120における少なくとも4個の磁気抵抗素子120が、フルブリッジ構造で接続されている。
【0045】
なお、磁気抵抗素子120の数は2個であってもよく、この場合、互いに直列接続させた磁気抵抗素子120-1および磁気抵抗素子120-3の組合せ、または、互いに直列接続させた磁気抵抗素子120-2および磁気抵抗素子120-4の組合せであってもよい。これらの組合せにおける2個の磁気抵抗素子120の中心間隔は、略P/4であってもよい。
【0046】
図2に示すように、複数の磁気抵抗素子120は、基板110の一方の主面側から見た場合に、破線で示す磁石Mの外形を成す輪郭で囲まれる範囲内に配置されていてもよい。これにより、磁石Mの磁場を複数の磁気抵抗素子120の全体に亘って均等に印加することができる。
【0047】
本実施形態において、磁石Mの大きさは、各磁気抵抗素子120に対して予め定められた大きさ以上の磁力を印加するために予め定められたサイズ以上とすることが必要とされるが、その一方で、各磁気抵抗素子120の大きさの下限に制約はないので、設計需要に応じて各磁気抵抗素子120を相対的に小型化することができる。各磁気抵抗素子120を小型化することにより、製造コストを下げることもでき、基板110上の複数の磁気抵抗素子120による専有面積が縮小することで他の部品の実装スペースを拡張することもできる。
【0048】
図2に示すように、磁気検出装置100は更に、導体パターン116と、電源端子117と、出力端子118とを備える。導体パターン116は、基板110のZ軸正側の主面に形成されている。導体パターン116の一端は、磁気抵抗素子120がはんだ付けされている上述の電極に電気的に接続されている。導体パターン116の他端は、電源端子117または出力端子118に電気的に接続されている。
【0049】
導体パターン116は、各磁気抵抗素子120と電源端子117とを電気的に接続している。より具体的には、導体パターン116-1は、2個の磁気抵抗素子120-1、120-2と、第1電位(VDD)側の電源端子117とを電気的に接続しており、導体パターン116-2は、2個の磁気抵抗素子120-3、120-4と、第2電位(GND)側の電源端子117とを電気的に接続している。
【0050】
導体パターン116はまた、各磁気抵抗素子120と出力端子118とを電気的に接続している。より具体的には、導体パターン116-3は、2個の磁気抵抗素子120-1、120-3と、一の出力端子118とを電気的に接続しており、導体パターン116-4は、2個の磁気抵抗素子120-2、120-4と、他の出力端子118とを電気的に接続している。
【0051】
このように、導体パターン116および電源端子117を介して、磁気抵抗素子120-1等は、フルブリッジ構造で、第1電位(VDD)および第2電位(GND)の間に電気的に接続されている。磁気抵抗素子120-1等は、導体パターン116および電源端子117を介して不図示の電源に接続され、電源から電圧(VDD)を供給される。なお、磁気抵抗素子120-1等は、当該導体パターン116に代えてまたは加えて、例えば導線や電気配線などの他の電気的導通手段によって電源に接続されていてもよい。
【0052】
導体パターン116-3を介して2個の磁気抵抗素子120-1、120-3に電気的に接続された出力端子118は、2個の磁気抵抗素子120-1、120-3の中点電圧VAを出力し、導体パターン116-4を介して2個の磁気抵抗素子120-2、120-4に電気的に接続された出力端子118は、2個の磁気抵抗素子120-2、120-4の中点電圧VBを出力する。
【0053】
2個の磁気抵抗素子120-1、120-3は、
図2に一点鎖線で示すように対向して設けられた回転体20の回転に伴って、正弦波状の中点電圧VAを出力端子118から出力するように構成される。2個の磁気抵抗素子120-2、120-4は、回転体20の回転に伴って、正弦波状の中点電圧VBを出力端子118から出力するように構成される。なお、正弦波状の中点電圧とは、完全な正弦波ではないが、周期的でかつ滑らかに値が変化する電圧を指してもよい。
【0054】
なお、
図2に示すように、略方形の外形を有する基板110の主面の四隅には、基板110を他の装置やフレームなどに固定するための手段が挿通される孔が基板110を貫通して形成されていてもよい。なお、基板110の外形は、上述の略方形に限られず、例えば円形、楕円形など任意の他の形状であってもよい。なお、
図2に示すように、磁気抵抗素子120の表面には指標128が形成されていてもよい。
【0055】
図3は、第1実施形態による磁気検出装置100における、磁気抵抗素子120-1等の詳細を示す模式的な平面図である。
図3では、磁気検出装置100における磁気抵抗素子120-1等を図示し、磁気検出装置100における基板110や導体パターン116等の他の構成の図示を省略する。
図3には、磁気抵抗素子120-4において破線の円で囲う部分領域50を拡大して示す。
【0056】
本実施形態による磁気検出装置100が備える4個の磁気抵抗素子120-1等は、一例として、互いに同じ構成を備える。よって、以降の説明では、4個の磁気抵抗素子120-1等のそれぞれの構成を個別に詳述せず、1つの磁気抵抗素子120の構成のみを詳述する場合がある。
【0057】
磁気抵抗素子120は、磁気抵抗ユニット121と、端子電極126と、パッケージ127と、指標128とを有する。磁気抵抗ユニット121は、
図3に示すように、磁気抵抗素子120の主面の短手方向に沿って互いに連結された複数の磁気抵抗体124から成る磁気抵抗体列122を複数有する。より具体的には、磁気抵抗ユニット121において、磁気抵抗体列122は、磁気抵抗素子120の主面の長手方向に沿って繰り返し折り返して複数配列されている。磁気抵抗ユニット121において、当該長手方向に複数配列されている複数の磁気抵抗体列122は、互いに直列接続されている。磁気抵抗素子120は、このように構成された磁気抵抗ユニット121を有することにより、磁気抵抗体列122を1つだけ含む場合や、磁気抵抗体124を1つだけ含む場合などと比較して、歪率が小さな正弦波状の中点電圧を出力することができる。
【0058】
図3では、各磁気抵抗体列122のXY平面内の中心を通ってX軸方向に延伸する線分を破線で示す。以降の説明では、磁気抵抗体列122のXY平面内の中心を、基準点125と称する場合がある。
図3では、拡大して示す部分領域50において、基準点125を黒塗りの丸で示す。
【0059】
図3では、磁気抵抗ユニット121内でY軸方向に互いに隣接する磁気抵抗体列122の基準点125間距離D1、すなわち互いに隣接する破線の線分間の距離D1を白抜きの矢印で示す。
図3ではまた、Y軸方向に互いに隣接する磁気抵抗素子120において、一方の磁気抵抗ユニット121における他方の磁気抵抗ユニット121側の端に位置する磁気抵抗体列122の基準点125と、他方の磁気抵抗ユニット121における一方の磁気抵抗ユニット121側の端に位置する磁気抵抗体列122の基準点125との間の距離D2を白抜きの矢印で示す。距離D2は、これら2個の磁気抵抗体列122のそれぞれの基準点125を通る線分間の距離である。
図3ではまた、X軸方向に互いに隣接する磁気抵抗素子120間の距離D3を白抜きの矢印で示す。
【0060】
端子電極126は、磁気抵抗素子120の主面の長手方向における磁気抵抗ユニット121の両端に電気的に接続されている。換言すると、磁気抵抗素子120において、1つの端子電極126が、磁気抵抗ユニット121の一端に位置する磁気抵抗体列122に電気的に接続されており、他の1つの端子電極126が、磁気抵抗ユニット121の他端に位置する磁気抵抗体列122に電気的に接続されている。
図3では、磁気抵抗ユニット121の両端と各端子電極126との間を電気的に接続する導電部材の一部を破線で示す。なお、磁気抵抗素子120の各端子電極126は、
図2に示した導体パターン116に電気的に接続されている。
【0061】
磁気抵抗素子120は、磁気抵抗素子120の主面の長手方向の両端に配置された端子電極126を有することにより、端子電極126が磁気抵抗素子120の主面の短手方向の両端に配置される場合と比較して、当該短手方向の幅を狭めることができる。換言すると、磁気抵抗素子120は、XY平面内における回転体20の相対移動方向に直交する方向の幅を狭めることができる。これにより、磁気抵抗素子120は、基板110の一方の主面上に配置される場合に、当該直交する方向において磁石Mの磁束密度が相対的に大きくなる回転体20の厚みの中央付近に、より密に配置されることができ、磁気検出精度を高めることができる。基板110上でこのように配置される磁気抵抗素子120によれば、回転体20の厚み方向の位置ずれが生じた場合であっても、磁気検出精度が低下し難い。
【0062】
パッケージ127は、端子電極126の少なくとも一部を露出させた状態で、磁気抵抗ユニット121および端子電極126をパッケージングする。パッケージ127は、例えばモールド樹脂であってもよく、セラミックであってもよく、CAN(缶)パッケージであってもよい。パッケージ127は、一例として、黒色であって可視光に対し不透明な材料で形成されていてもよく、パッケージ127に内包される磁気抵抗ユニット121等は外部から視認できなくてもよい。なお、
図3では、パッケージ127に内包される磁気抵抗ユニット121等の構成を説明するため、パッケージ127の一部を透かして図示している。
【0063】
指標128は、磁気抵抗素子120の主面の長手方向における磁気抵抗ユニット121の両端に配置された磁気抵抗体列122の少なくとも1つの位置をパッケージ127の外部から認識可能にするべく、パッケージ127上に設けられている。
図2および
図3に示す例では、磁気抵抗素子120の長手方向の両端に位置する2個の磁気抵抗体列122のそれぞれに対応して、2個の指標128がパッケージ127上に設けられている。
図3では、指標128を破線の円で示す。指標128は、磁気抵抗体列122の位置をパッケージ127の外部から視認可能にできる限りにおいて、マーカや窪みや突起など任意の形態であってよい。なお、以降の図では、指標128の図示を省略する。
【0064】
図3に示すように、本実施形態による磁気検出装置100では、基板110上において、2個の磁気抵抗素子120-1、120-3の組と2個の磁気抵抗素子120-2、120-4の組が同じ向きに交互に配列されている。
【0065】
具体的には、4個の磁気抵抗素子120-1等において、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120は、基板110の一方の主面の平面方向のうち、4個の磁気抵抗素子120-1等が並ぶ方向に直交する方向から見た場合に互いに重なっていない。より具体的には、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-1、120-3は、4個の磁気抵抗素子120-1等が並ぶY軸方向に直交するX軸方向から見た場合に、互いに重なっていない。同様に、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-2、120-4は、X軸方向から見た場合に互いに重なっていない。互いに直列接続された磁気抵抗素子120の組は、このように配置されることにより、正弦波状の中点電圧を出力することができる。
【0066】
また具体的には、4個の磁気抵抗素子120-1等において、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-1、120-3、および、互いに直列接続された他の2個の磁気抵抗素子120-2、120-4は、基板110の一方の主面上で、4個の磁気抵抗素子120-1等が並ぶ方向に交互に並んで配置されている。より具体的には、4個の磁気抵抗素子120-1等は、Y軸正方向に向かって磁気抵抗素子120-1、120-2、120-3、120-4の順に並んで配置されている。上述のように、フルブリッジ構造で接続されている4個の磁気抵抗素子120-1等が、磁気抵抗素子120-1、120-2、120-3、120-4の順に、それぞれの中心が互いに略P/4の間隔を置いて配置されていてもよい。これにより、4個の磁気抵抗素子120-1等は、2個の磁気抵抗素子120-1、120-3、および、2個の磁気抵抗素子120-2、120-4の各組から、互いに1/4周期ずれた正弦波状の中点電圧を出力可能である。
【0067】
また具体的には、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-1、120-3の少なくとも一方は、基板110の一方の主面の平面方向のうち、4個の磁気抵抗素子120-1等が並ぶ方向に直交する方向から見た場合に、互いに直列接続された他の2個の磁気抵抗素子120-2、120-4の少なくとも一方と互いに一部のみが重なっている。より具体的には、4個の磁気抵抗素子120-1等が並ぶY軸方向に直交するX軸方向から見た場合に、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-1、120-3のうち、磁気抵抗素子120-1は、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-2、120-4のうち磁気抵抗素子120-2のみと互いに一部のみが重なっており、磁気抵抗素子120-3は、磁気抵抗素子120-2、120-4のそれぞれと互いに一部のみが重なっている。磁気抵抗素子120において、複数の磁気抵抗体列122はパッケージ127によってパッケージングされているため、磁気抵抗素子120の長手方向の両端に位置する磁気抵抗体列122の基準点125は、磁気抵抗素子120の長手方向の外縁よりもパッケージ127の厚み分だけ内側に位置する。4個の磁気抵抗素子120-1等は、上述した距離D2が距離D1に近い長さである程、2個の磁気抵抗素子120-1、120-3、および、2個の磁気抵抗素子120-2、120-4の各組から、低歪率の正弦波状の中点電圧を出力することができる。そこで、距離D2を距離D1に近い長さにするべく、パッケージ127の厚み分を考慮して、上述のようにX軸方向から見て磁気抵抗素子120-1等の一部のみが互いに重なるようにしてもよい。なお、距離D1は、例えば、回転体20の相対移動方向における4個の磁気抵抗素子120-1等の間隔が800μmの場合に、100μmであってもよい。
【0068】
また具体的には、基板110の一方の主面の平面方向のうち、4個の磁気抵抗素子120-1等が並ぶ方向から見た場合に、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-1、120-3は互いに少なくとも部分的に重なっており、互いに直列接続された他の2個の磁気抵抗素子120-2、120-4は互いに少なくとも部分的に重なっている。より具体的には、4個の磁気抵抗素子120-1等が並ぶY軸方向から見た場合に、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-1、120-3は互いに重なっており、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-2、120-4は互いに重なっている。磁気抵抗素子120-1等は、このように配置されることにより、XY平面内における回転体20の相対移動方向に直交する方向の幅を狭めることができる。これにより、磁気抵抗素子120-1等は、基板110の一方の主面上に配置される場合に、当該直交する方向において磁石Mの磁束密度が相対的に大きくなる回転体20の厚みの中央付近に、より密に配置されることができ、磁気検出精度を高めることができる。基板110上でこのように配置される磁気抵抗素子120-1等によれば、回転体20の厚み方向の位置ずれが生じた場合であっても、磁気検出精度が低下し難い。なお、磁気抵抗素子120-1等は、XY平面内における回転体20の相対移動方向に直交する方向の幅を狭めるべく、上述の距離D3を小さくしてもよく、距離D3は例えば100μm以上であってもよい。
【0069】
また具体的には、4個の磁気抵抗素子120-1等において、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-1、120-3、および、互いに直列接続された他の2個の磁気抵抗素子120-2、120-4はそれぞれ、一方の磁気抵抗素子120の主面の長手方向が、他方の磁気抵抗素子120の主面の長手方向に沿うように、基板110の一方の主面上に配置されている。より具体的には、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-1、120-3は、磁気抵抗素子120-1の主面の長手方向が磁気抵抗素子120-3の主面の長手方向に沿うように、基板110の一方の主面上に配置されている。互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-2、120-4は、磁気抵抗素子120-2の主面の長手方向が磁気抵抗素子120-4の主面の長手方向に沿うように、基板110の一方の主面上に配置されている。磁気抵抗素子120-1等は、このように配置されることにより、互いに直列接続された磁気抵抗素子120の組の主面の長手方向が互いに沿うように配置されていない場合と比較して、歪率が小さな正弦波状の中点電圧を出力することができる。
【0070】
また具体的には、基板110の一方の主面の平面方向のうち、4個の磁気抵抗素子120-1等が並ぶ方向に直交する方向から見た場合に、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-1、120-3の少なくとも一方の磁気抵抗ユニット121において一端に位置する磁気抵抗体列122と、互いに直列接続された他の2個の磁気抵抗素子120-2、120-4の少なくとも一方の磁気抵抗ユニット121において一端に位置する磁気抵抗体列122との間隔は、4個の磁気抵抗素子120-1等のそれぞれにおける複数の磁気抵抗体列122の間隔と等しい。より具体的には、X軸方向から見た場合に、磁気抵抗素子120-1の磁気抵抗ユニット121においてY軸正方向側の端に位置する磁気抵抗体列122の基準点125と、磁気抵抗素子120-2の磁気抵抗ユニット121においてY軸負方向側の端に位置する磁気抵抗体列122の基準点125との間の距離D2は、距離D1と等しくてもよい。同様に、X軸方向から見た場合に、磁気抵抗素子120-2の磁気抵抗ユニット121においてY軸正方向側の端に位置する磁気抵抗体列122の基準点125と、磁気抵抗素子120-3の磁気抵抗ユニット121においてY軸負方向側の端に位置する磁気抵抗体列122の基準点125との間の距離D2は、距離D1と等しくてもよい。同様に、X軸方向から見た場合に、磁気抵抗素子120-3の磁気抵抗ユニット121においてY軸正方向側の端に位置する磁気抵抗体列122の基準点125と、磁気抵抗素子120-4の磁気抵抗ユニット121においてY軸負方向側の端に位置する磁気抵抗体列122の基準点125との間の距離D2は、距離D1と等しくてもよい。磁気抵抗素子120-1等は、このように配置されることにより、距離D2が距離D1と異なる場合と比べて、歪率が小さな正弦波状の中点電圧を出力することができる。
【0071】
図4は、第1実施形態による磁気検出装置100の製造方法の流れを説明するフロー図である。
図4のフローは、例えば磁気抵抗素子120における磁気抵抗ユニット121を構成する部材を用意することにより開始してもよい。
【0072】
複数の磁気抵抗素子120をそれぞれパッケージングする(ステップS11)。複数の磁気抵抗素子120をそれぞれパッケージングすることは、それぞれの磁気抵抗素子120について、主面の短手方向に沿って互いに連結された複数の磁気抵抗体124から成る磁気抵抗体列122を、主面の長手方向に沿って繰り返し折り返して複数配列することにより、互いに直列接続させることを含んでもよい。
【0073】
複数の磁気抵抗素子120をそれぞれパッケージングすることは、それぞれの磁気抵抗素子120について、主面の長手方向における磁気抵抗ユニット121の両端に接続された端子電極126の少なくとも一部を露出させた状態で、磁気抵抗ユニット121および端子電極126をパッケージングすることを含んでもよい。
【0074】
複数の磁気抵抗素子120をそれぞれパッケージングすることは、それぞれの磁気抵抗素子120について、主面の長手方向における磁気抵抗ユニット121の両端に配置された磁気抵抗体列122の少なくとも1つの位置をパッケージ127の外部から認識可能にするべく、パッケージ127上に指標128を設けることを含んでもよい。
【0075】
複数の磁気抵抗素子120を基板110の一方の主面上で一方向に並べて配置する(ステップS12)。複数の磁気抵抗素子120を配置することは、それぞれの磁気抵抗素子120のパッケージ127上に設けられた指標128を基準として、複数の磁気抵抗素子120が並べられる方向における、隣接する2個の磁気抵抗素子120の両指標128の間隔D2が、例えば複数の磁気抵抗体列122の間隔D1と同じになるように、複数の磁気抵抗素子120を配置することを含んでもよい。
【0076】
基板110の他方の主面上に磁石Mを配置し(ステップS13)、これによって磁気検出装置100を完成させ、当該フローは終了する。
【0077】
以上で説明した第1実施形態による磁気検出装置100によれば、基板110と、それぞれがパッケージングされており、基板110の一方の主面上で一方向に並んで配置されている複数の磁気抵抗素子120と、基板110の他方の主面上に配置されている磁石Mとを備える。このように、本実施形態の磁気検出装置100では、複数の磁気抵抗素子120をそれぞれ個別にパッケージングすることで、複数の磁気抵抗素子120を基板110の一方の主面上に配置する際の自由度を確保することができる。
【0078】
ここで、相対移動に伴う磁束密度の変化を検出する対象となる被検出ユニットが、例えば歯車のような回転体20である場合、回転体20の凸部または凹部のピッチPは回転体20の寸法などに応じて異なり得る。本実施形態の磁気検出装置100との比較例として、複数の磁気抵抗素子が包括的にパッケージングされて基板上に配置された磁気検出装置を仮定する。比較例の磁気検出装置によれば、複数の磁気抵抗素子の相互間隔は、複数の磁気抵抗素子が包括的にパッケージングされる前に決定する必要がある。そのため、比較例の磁気検出装置によれば、例えば、磁気変化の検出対象とする回転体20の凸部または凹部のピッチPのバリエーションを予め想定して、当該相互間隔が異なる磁気検出装置のバリエーションを用意する必要があり、磁気検出装置の設計開発工数が多くなる。
【0079】
これに対して、本実施形態の磁気検出装置100によれば、回転体20の相対移動方向に順に並べて配置する複数の磁気抵抗素子120の相互間隔を、回転体20の凸部または凹部のピッチPに応じて自由に決定することができる。これにより、本実施形態の磁気検出装置100によれば、比較例の磁気検出装置と比較して、磁気検出装置100の設計開発工数を削減することができる。
【0080】
以上の第1実施形態の磁気検出装置100では、
図3に示したように、基板110上において、2個の磁気抵抗素子120-1、120-3の組と2個の磁気抵抗素子120-2、120-4の組が同じ向きに交互に配列されているものとして説明した。具体的な一例として、基板110の一方の主面の平面方向のうち、4個の磁気抵抗素子120-1等が並ぶ方向に直交する方向から見た場合に、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-1、120-3の少なくとも一方の磁気抵抗ユニット121において一端に位置する磁気抵抗体列122と、互いに直列接続された他の2個の磁気抵抗素子120-2、120-4の少なくとも一方の磁気抵抗ユニット121において一端に位置する磁気抵抗体列122との間隔は、4個の磁気抵抗素子120-1等のそれぞれにおける複数の磁気抵抗体列122の間隔と等しいものとして説明した。すなわち、Y軸方向に隣接する2つの磁気抵抗素子120において隣接する2つの磁気抵抗体列122の基準点125間の距離D2が距離D1と等しいものとして説明した。
【0081】
距離D2が距離D1と等しくなる4個の磁気抵抗素子120-1等の配置は、
図3に示した例に限られず、他の配置であってもよい。以下、距離D2が距離D1と等しくなる4個の磁気抵抗素子120-1等の他の配置例を、
図5から
図8に示す。
図5から
図8では、
図3と同様に、磁気抵抗素子120-1等を図示し、基板110や導体パターン116等の他の構成の図示を省略する。なお、以降の複数の実施形態において、第1実施形態による磁気検出装置100と同様の構成については同様の参照番号を用い、重複する説明を省略する。
【0082】
図5は、第2実施形態による磁気検出装置200における、磁気抵抗素子120-1等の詳細を示す模式的な平面図である。第2実施形態による磁気検出装置200においては、第1実施形態による磁気検出装置100とは異なる点として、4個の磁気抵抗素子120-1等が並ぶY軸方向から見た場合に、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-1、120-3は互いに重なっておらず、且つ、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-2、120-4は互いに重なっていない。より具体的には、4個の磁気抵抗素子120-1等が並ぶY軸方向から見た場合に、4個の磁気抵抗素子120-1等の何れも互いに重なっていない。
【0083】
そのため、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-1、120-3は、磁気抵抗素子120-1の主面の長手方向が磁気抵抗素子120-3の主面の長手方向に沿うように、基板110の一方の主面上に配置されていない。同様に、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-2、120-4は、磁気抵抗素子120-2の主面の長手方向が磁気抵抗素子120-4の主面の長手方向に沿うように、基板110の一方の主面上に配置されていない。ただし、4個の磁気抵抗素子120-1等は全て、主面の長手方向がY軸方向に沿うように配列されている。このように配置された磁気抵抗素子120-1等を備える第2実施形態による磁気検出装置200によっても、第1実施形態による磁気検出装置100と同様の効果を有する。
【0084】
図6は、第3実施形態による磁気検出装置300における、磁気抵抗素子120-1等の詳細を示す模式的な平面図である。第3実施形態による磁気検出装置300においては、第1実施形態による磁気検出装置100とは異なる点として、4個の磁気抵抗素子120-1等が並ぶY軸方向から見た場合に、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-1、120-3は互いに重なっておらず、且つ、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-2、120-4は互いに重なっていない。
【0085】
そのため、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-1、120-3は、磁気抵抗素子120-1の主面の長手方向が磁気抵抗素子120-3の主面の長手方向に沿うように、基板110の一方の主面上に配置されていない。同様に、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-2、120-4は、磁気抵抗素子120-2の主面の長手方向が磁気抵抗素子120-4の主面の長手方向に沿うように、基板110の一方の主面上に配置されていない。
【0086】
ただし、互いに直列接続されていない2個の磁気抵抗素子120-1、120-4が、磁気抵抗素子120-1の主面の長手方向が磁気抵抗素子120-4の主面の長手方向に沿うように、基板110の一方の主面上に配置されている。他の2個の磁気抵抗素子120-2、120-3については、4個の磁気抵抗素子120-1等が並ぶY軸方向から見た場合に、4個の磁気抵抗素子120-1等の何れも互いに重なっていない。また、4個の磁気抵抗素子120-1等は全て、主面の長手方向がY軸方向に沿うように配列されている。このように配置された磁気抵抗素子120-1等を備える第3実施形態による磁気検出装置300によっても、第1実施形態による磁気検出装置100と同様の効果を有する。
【0087】
図7は、第4実施形態による磁気検出装置400における、磁気抵抗素子120-1等の詳細を示す模式的な平面図である。第4実施形態による磁気検出装置400においては、第1実施形態による磁気検出装置100とは異なる点として、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-1、120-3は、磁気抵抗素子120-1の主面の長手方向が磁気抵抗素子120-3の主面の長手方向に沿うように、基板110の一方の主面上に配置されていない。ただし、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-1、120-3は、磁気抵抗素子120-1の主面の長手方向が、磁気抵抗素子120-3の主面の長手方向と同じ方向(X軸に対して予め定められた第1角度を有する方向)となるように、基板110の一方の主面上に配置されている。
【0088】
同様に、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-2、120-4は、磁気抵抗素子120-2の主面の長手方向が磁気抵抗素子120-4の主面の長手方向に沿うように、基板110の一方の主面上に配置されていない。ただし、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-2、120-4は、磁気抵抗素子120-2の主面の長手方向が、磁気抵抗素子120-4の主面の長手方向と同じ方向(X軸に対して予め定められた第2角度を有する方向)となるように、基板110の一方の主面上に配置されている。
【0089】
互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-1、120-3は、主面の長手方向(X軸に対して予め定められた第1角度を有する方向)が、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-2、120-4の主面の長手方向(X軸に対して予め定められた第2角度を有する方向)と異なるように、基板110の一方の主面上に配置されている。このように配置された磁気抵抗素子120-1等を備える第4実施形態による磁気検出装置400によっても、第1実施形態による磁気検出装置100と同様の効果を有する。なお、
図7に示す例では、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-1、120-3は、4個の磁気抵抗素子120-1等が並ぶY軸方向に直交するX軸方向から見た場合に、互いに一部が重なっているが、互いに重なっていなくてもよい。同様に、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-2、120-4は、X軸方向から見た場合に互いに一部が重なっているが、互いに重なっていなくてもよい。
【0090】
図8は、第5実施形態による磁気検出装置500における、磁気抵抗素子120-1等の詳細を示す模式的な平面図である。第5実施形態による磁気検出装置500においては、第1実施形態による磁気検出装置100とは異なる点として、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-1、120-3は、磁気抵抗素子120-1の主面の長手方向が磁気抵抗素子120-3の主面の長手方向に沿うように、基板110の一方の主面上に配置されていない。ただし、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-1、120-3は、磁気抵抗素子120-1の主面の長手方向が、磁気抵抗素子120-3の主面の長手方向と同じ方向(X軸に対して予め定められた第3角度を有する方向)となるように、基板110の一方の主面上に配置されている。
【0091】
同様に、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-2、120-4は、磁気抵抗素子120-2の主面の長手方向が磁気抵抗素子120-4の主面の長手方向に沿うように、基板110の一方の主面上に配置されていない。ただし、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-2、120-4は、磁気抵抗素子120-2の主面の長手方向が、磁気抵抗素子120-4の主面の長手方向と同じ方向(X軸に対して予め定められた第3角度を有する方向)となるように、基板110の一方の主面上に配置されている。
【0092】
互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-1、120-3は、主面の長手方向(X軸に対して予め定められた第3角度を有する方向)が、互いに直列接続された2個の磁気抵抗素子120-2、120-4の主面の長手方向(X軸に対して予め定められた第3角度を有する方向)と同じになるように、基板110の一方の主面上に配置されている。このように配置された磁気抵抗素子120-1等を備える第5実施形態による磁気検出装置500によっても、第1実施形態による磁気検出装置100と同様の効果を有する。
【0093】
図9は、第6実施形態による磁気検出装置600の模式的な側面図である。
図9の側面図は、単に説明のため、第1基板611に挿入された磁石Mの側面全体が見えるよう第1基板611の一部を透かして示す。
【0094】
第6実施形態による磁気検出装置600は、第1実施形態による磁気検出装置100と異なる点として、基板110に代えて、第1基板611および第2基板614を有する基板610を備える。
【0095】
第1基板611は、磁石Mが挿入される貫通孔612を含む。第2基板614は、複数の磁気抵抗素子120が配置される側から、すなわち回転体20に対向する側から第1基板611に貼り合わされている。
【0096】
第1基板611および第2基板614は、接着剤、例えば薄膜粘着フィルムのような粘着シートによって互いに接着されていてもよい。第1基板611および第2基板614は、粘着シートに代えてまたは加えて、液体の接着剤で互いに接着されていてもよい。
図9に示すように、第1基板611および第2基板614のそれぞれの主面の外形を成す輪郭は、実質的に同一であってもよい。これにより、第1基板611および第2基板614は、互いに向かい合う面の全体に亘って、互いに接着されていてもよい。
【0097】
磁石Mは、一例として、磁極の作用面を除く面の少なくとも一部が、貫通孔612の側面に接着剤などで固定されている。なお、磁気検出システム10の動作時においては、磁性体である回転体20が常に磁気抵抗素子120側に位置し、磁石Mは自身の磁力によって第2基板614に吸着したような状態にあるため、磁石Mを接着剤で貫通孔612の側面に固定しなくてもよい。なお、磁石Mは、接着剤以外の他の手段によって貫通孔612の側面に固定されていてもよい。
【0098】
第2基板614は、第1基板611の貫通孔612を塞ぐ領域を含み、当該領域において磁石Mと接している。第2基板614は、第1基板611の貫通孔612に挿入された磁石Mを、第1基板611の回転体20に対向する側から係止する。これにより、第2基板614は、磁石Mが第2基板614の回転体20に対向する側へと突出するのを抑止する。
【0099】
第2基板614の一方の主面における当該領域に対応する位置には、複数の磁気抵抗素子120が配置されている。第2基板614と、第1基板611の貫通孔612との組合わせは、磁石Mが基板610の回転体20に対向する側の反対側、すなわちZ軸負側の主面よりも、基板610の回転体20に対向する側、すなわちZ軸正側の主面に寄って位置することを可能にする一方で、磁石Mが磁気抵抗素子120を回転体20側に押すことを防止する機能を有する、と定義してもよい。第2基板614は、磁石Mと磁気抵抗素子120とを隔離する壁として、磁気抵抗素子120が磁石Mによって回転体20側に押されることを不可能にしている、とも言える。
【0100】
第1基板611および第2基板614のZ軸方向の厚みはそれぞれ、略一定であってもよく、XY平面内の任意の箇所で部分的に変化していてもよい。
図9は、第1基板611の主たる厚みをD4で示し、第2基板614の主たる厚みをD5で示す。
【0101】
第2基板614は、第1基板611よりも薄くてよい。一例として、第2基板614における、第1基板611の貫通孔612を塞ぐ領域の厚みは、0.1mm以上0.6mm以下であってもよい。全体的にまたは部分的に0.1mm未満の厚みを有する第2基板614を製造することは困難であってもよい。第2基板614の当該領域の厚みを0.6mm以下にして、且つ、磁石Mとして例えば残留磁束密度が約800mTのサマリウムコバルトを含む永久磁石を用いることにより、磁石Mによって複数の磁気抵抗素子120に印加される磁束密度を400mT以上とすることができる。これにより、磁気抵抗素子120の出力信号振幅(Vpp)を予め定められた大きさ以上とすることができ、よって、磁気検出装置600による磁束密度変化の検出精度を予め定められた閾値以上とすることができる。
【0102】
以上で説明した第6実施形態による磁気検出装置600によっても、第1実施形態による磁気検出装置100と同様の効果を有する。ここで、第6実施形態による磁気検出装置600との第1比較例として、基板に形成された貫通孔を覆うように磁気センサを配置し、当該貫通孔に磁石を挿入した磁気検出装置を想定する。当該磁気検出装置において、磁気センサは、数か所を基板上の電極にはんだ付けされている。磁気センサの基板側の主面における、基板の貫通孔を塞ぐ領域には、磁石が接着剤で固定されている。基板は、他の装置やフレームなどに固定されている。
【0103】
このような第1比較例によれば、固定された基板に対して相対移動する被検出ユニットに磁気センサを対向させた状態で磁気検出装置を使用する場合、被検出ユニットを引き付けようとする磁石の磁力によって、磁気センサには被検出ユニット側に押す力が加わる。その結果、磁気センサを基板に固定している部分が断裂し、磁気センサが磁石と被検出ユニットとの間に挟まれるように被検出ユニット上に打ち付けられる事態が生じ得る。
【0104】
第6実施形態による磁気検出装置600との第2比較例として、貫通孔が形成されていない基板の一方の主面上に磁気センサを配置し、基板の他方の主面上の対応する位置に磁石を配置した磁気検出装置を想定する。当該磁気検出装置において、磁気センサは、数か所を基板上の電極にはんだ付けされている。磁石は、基板上に接着剤で固定されている。基板は、他の装置やフレームなどに固定されている。
【0105】
このような第2比較例によれば、基板の厚みは、強度を担保するために、1.4mm程度に設定される。すなわち、磁気センサと磁石との間の距離は1.4mm程度となる。このような距離を介して磁石から400mT以上の磁束密度を磁気センサに印加するためには、磁石として、サイズの大きなサマリウムコバルト磁石を用いたりすることが必要とされる。
【0106】
サイズの大きなサマリウムコバルト磁石を使う場合には、1.4mm程度の距離を介して400mT以上の磁束密度を磁気センサに印加するために、サマリウムコバルト磁石をかなり大型化する必要がある。このような大型のサマリウムコバルト磁石を備えた磁気検出装置は、大きさに制約があるエンコーダに搭載することが困難である。
【0107】
これに対して、第6実施形態による磁気検出装置600によれば、磁石Mと磁気抵抗素子120との間の距離を、基板610の主たる厚み、例えば1.4mm程度よりも短くすること、例えば0.2mm程度にすることができる。磁石Mと磁気抵抗素子120との間の距離を予め定められた長さよりも短くすることで、磁石Mとしてエンコーダに適用可能なサイズのサマリウムコバルト磁石を用いた場合であっても、磁石Mによって磁気抵抗素子120に印加される磁束密度を400mT以上とすることができる。これにより、磁気抵抗素子120の出力信号振幅(Vpp)を予め定められた大きさ以上とすることができ、その結果、上述の角度誤差を抑止して、磁気抵抗素子120による磁束密度変化の検出精度を予め定められた閾値以上とすることができる。
【0108】
その一方で、磁気検出装置600によれば、磁石Mが基板610の被検出ユニットに対向する側へと突出するのを抑止することにより、磁気抵抗素子120が被検出ユニット側へと押されるのを防止することができ、磁気抵抗素子120が被検出ユニットに打ち付けられる事態を回避できる。
【0109】
以上の第6実施形態による磁気検出装置600において、互いに貼り合わせる第1基板611および第2基板614は、それぞれの主面の外形を成す輪郭が互いに異なっていてもよい。上述の貫通孔612は、磁石MをZ軸負側から基板内部に挿入できる限りにおいて、連続的にまたは段階的に大きさが変化している貫通孔であってもよく、第1基板611を貫通しない窪みまたは凹みであってもよい。
【0110】
以上の複数の実施形態による磁気検出装置において、XY平面における磁気抵抗体列の形状を、回転体の相対移動方向に対して垂直方向に延伸する長方形として図示したが、これに限定されることはない。XY平面における磁気抵抗体列の形状は、三角形、正方形、台形、多角形、円形、および楕円形等であってもよい。また、それぞれの磁気抵抗素子が磁気抵抗体列を8個ずつ有する例を図示したが、これに限定されることはない。それぞれの磁気抵抗素子は、1または複数の磁気抵抗体列を有してよい。
【0111】
また、以上の複数の実施形態に係る磁気検出システムは、被検出ユニットとして、歯車である回転体を備えることを説明したが、これに限定されることはない。回転体は、磁気検出システムに設けられた検出対象である被検出ユニットの一例である。被検出ユニットは、磁気検出装置に対向する側において、相対移動方向に沿って交互に配列された凹部および/または凸部を有し、磁石Mから磁気検出素子に入る磁束密度が変化するように構成できる部材であればよい。
【0112】
被検出ユニットは、平歯車、はすば歯車、やまば歯車、かさ歯車、内歯車、冠歯車、ねじ歯車、ウォームギヤ、スプロケット、および、ラックまたはピニオン等でよい。また、被検出ユニットは、単に、円盤状の板部に凸部および/または凹部が形成された部材でよい。また、被検出ユニットは、磁気検出装置との相対移動方向に沿って磁気検出装置に対向する複数の貫通孔が配列された板部を有してもよい。
【0113】
なお、以上の複数の実施形態において、被検出ユニットが回転動作することを説明したが、これに限定されることはない。被検出ユニットがラック等である場合、被検出ユニットの凸部および/または凹部が一方向に移動してもよい。また、被検出ユニットが固定され、磁気検出装置が移動してもよい。この場合、磁気検出装置は、被検出ユニットが相対移動するものとして、動作してよい。
【0114】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0115】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0116】
10 磁気検出システム
20 回転体
50 部分領域
100 磁気検出装置
110 基板
116 導体パターン
117 電源端子
118 出力端子
120、120-1、120-2、120-3、120-4 磁気抵抗素子
121 磁気抵抗ユニット
122 磁気抵抗体列
124 磁気抵抗体
125 基準点
126 端子電極
127 パッケージ
128 指標
M 磁石
200 磁気検出装置
300 磁気検出装置
400 磁気検出装置
500 磁気検出装置
600 磁気検出装置
610 基板
611 第1基板
612 貫通孔
614 第2基板