(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084098
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】電解装置
(51)【国際特許分類】
C25B 13/04 20210101AFI20240617BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20240617BHJP
C25B 13/08 20060101ALI20240617BHJP
C25B 9/23 20210101ALI20240617BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240617BHJP
【FI】
C25B13/04 302
F16J15/10 D
C25B13/08
C25B9/23
C25B9/00 A
C25B9/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060778
(22)【出願日】2023-04-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-04-22
(31)【優先権主張番号】P 2022197825
(32)【優先日】2022-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 仁司
【テーマコード(参考)】
3J040
4K021
【Fターム(参考)】
3J040AA02
3J040AA11
3J040AA17
3J040BA04
3J040CA04
3J040EA04
3J040EA16
3J040EA22
3J040EA26
3J040FA06
3J040FA07
3J040HA03
3J040HA15
4K021AA01
4K021AB01
4K021BA02
4K021BA03
4K021DB43
4K021DB49
4K021DB53
4K021EA03
4K021EA04
(57)【要約】
【課題】陽極室組立体の周縁フランジ及び陰極室組立体の周縁フランジ並びにガスケットに特別な加工を加える必要が無く、それ故に製造コストを低減することができ、そしてまた煩雑な操作を必要とすることなくガスケット及び膜の配置を充分容易且つ迅速に遂行することができるゼロギャップ型電解装置を提供する。
【解決手段】ゼロキャップ型電解装置においては、陽極室組立体と陰極室組立体とから構成されている複数個の電解槽ユニットが横方向に積み重ね配列されている。陽極室組立体(陰極室組立体)は、隔壁、隔壁の周縁に沿って延在する周縁フランジ、周縁フランジの内面に沿って延在するガスケット、陽極(陰極)及び膜を含む。ガスケットは片面がフランジの内面に接着されている。ガスケットの他面には膜の片面周縁部が当接され、ガスケットの他面と膜の他面周縁部に跨って貼着テープが貼着されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極室組立体と陰極室組立体とから構成されている複数個の電解槽ユニットが横方向に積み重ね配列されているゼロギャップ型電解装置において、
該陽極室組立体は、隔壁、該隔壁の周縁に沿って延在する周縁フランジ、該周縁フランジの内面に沿って延在するガスケット、陽極及び膜を含み、
該ガスケットは片面が該フランジの該内面に接着されており、
該ガスケットの他面には該膜の片面周縁部が当接されており、該ガスケットの該他面と該膜の他面周縁部に跨って貼着テープが貼着されている、
ことを特徴とする電解装置。
【請求項2】
該貼着テープは該ガスケットの該他面及び該膜の該他面周縁の周方向全体に渡って貼着されている、請求項1記載の電解装置。
【請求項3】
該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面における内周部から該ガスケットの内周縁を超えて存在している、請求項1記載の電解装置。
【請求項4】
該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面の全幅の50%以内に貼着されている、請求項3記載の電解装置。
【請求項5】
該貼着テープは該ガスケットの該他面の全幅の15乃至35%以内に貼着されている、請求項4記載の電解装置。
【請求項6】
該ガスケットの該他面と該陽極の周縁部に跨って付加貼着テープが貼着されており、該膜の該片面周縁部は該付加貼着テープを介して該ガスケットの該他面に積み重ねられている、請求項1記載の電解装置。
【請求項7】
該陰極室組立体は、隔壁、該隔壁の周縁に沿って延在する周縁フランジ、該周縁フランジの内面に沿って延在するガスケット、及び陰極を含み、
該ガスケットは片面が該フランジの該内面に接着されており、
該陽極室組立体における該ガスケットの該他面と該陰極室組立体の該ガスケットの他面とが相互に圧接される、
請求項1記載の電解装置。
【請求項8】
該陰極室組立体における該ガスケットの該他面と該陰極の片面周縁部に跨って貼着テープが貼着されている、請求項7記載の電解装置。
【請求項9】
該陰極室組立体における該貼着テープは該ガスケットの該他面及び該陰極の該片面周縁の周方向全体に渡って貼着されている、請求項8記載の電解装置。
【請求項10】
該陰極室組立体における該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面における内周部から該ガスケットの内周縁を超えて存在している、請求項8記載の電解装置。
【請求項11】
該陰極室組立体における該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面の全幅の50%以内に貼着されている、請求項10記載の電解装置。
【請求項12】
該陰極室組立体における該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面の全幅の15乃至35%以内に貼着されている、請求項11記載の電解装置。
【請求項13】
該陰極室組立体における該陰極の他面には順次にクッション部材及び集電体が積み重ねられている、請求項7記載の電解装置。
【請求項14】
陽極室組立体と陰極室組立体とから構成されている複数個の電解槽ユニットが横方向に積み重ね配列されているゼロギャップ型電解装置において、
該陰極室組立体は、隔壁、該隔壁の周縁に沿って延在する周縁フランジ、該周縁フランジの内面に沿って延在するガスケット、陰極及び膜を含み、
該ガスケットは片面が該フランジの該内面に接着されており、
該ガスケットの他面には該膜の片面周縁部が当接されており、該ガスケットの該他面と該膜の他面周縁部に跨って貼着テープが貼着されている、
ことを特徴とする電解装置。
【請求項15】
該貼着テープは該ガスケットの該他面及び該膜の該他面周縁の周方向全体に渡って貼着されている、請求項14記載の電解装置。
【請求項16】
該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面における内周部から該ガスケットの内周縁を超えて存在している、請求項14記載の電解装置。
【請求項17】
該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面の全幅の50%以内に貼着されている、請求項16記載の電解装置。
【請求項18】
該貼着テープは該ガスケットの該他面の全幅の15乃至35%以内に貼着されている、請求項17記載の電解装置。
【請求項19】
該ガスケットの該他面と該陰極の周縁部に跨って付加貼着テープが貼着されており、該膜の該片面周縁部は該付加貼着テープを介して該ガスケットの該他面に積み重ねられている、請求項14記載の電解装置。
【請求項20】
該陽極室組立体は、隔壁、該隔壁の周縁に沿って延在する周縁フランジ、該周縁フランジの内面に沿って延在するガスケット、及び陽極を含み、
該ガスケットは片面が該フランジの該内面に接着されており、
該陰極室組立体における該ガスケットの該他面と該陽極室組立体の該ガスケットの他面とが相互に圧接される、
請求項14記載の電解装置。
【請求項21】
該陽極室組立体における該ガスケットの該他面と該陽極の片面周縁部に跨って貼着テープが貼着されている、請求項20記載の電解装置。
【請求項22】
該陽極室組立体における該貼着テープは該ガスケットの該他面及び該陽極の該片面周縁の周方向全体に渡って貼着されている、請求項21記載の電解装置。
【請求項23】
該陽極室組立体における該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面における内周部から該ガスケットの内周縁を超えて存在している、請求項21記載の電解装置。
【請求項24】
該陽極室組立体における該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面の全幅の50%以内に貼着されている、請求項23記載の電解装置。
【請求項25】
該陽極室組立体における該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面の全幅の15乃至35%以内に貼着されている、請求項24記載の電解装置。
【請求項26】
該陰極室組立体における該陰極の他面には順次にクッション部材及び集電体が積み重ねられている、請求項14記載の電解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ水電解装置及び食塩電解装置の如き電解装置、更に詳しくは陽極室組立体と陰極室組立体とから構成されている複数個の電解槽ユニットが所要圧力を加えて横方向に積み重ね配列されているゼロギャップ型電解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1乃至3には、陽極室組立体と陰極室組立体とから構成されている複数個の電解槽ユニットが所要圧力を加えて横方向に積み重ね配列されている形態の、一般にゼロギャップ型と称される電解装置が開示されている。かような電解装置においては、陽極室組立体は隔壁、隔壁の周縁に沿って延在する周縁フランジ及び陽極を備え、陰極室組立体は隔壁、隔壁の周縁に沿って延在する周縁フランジ及び陰極を備えている。陽極室組立体と陰極室組立体とは両者の相互に対向する面間に膜(アルカリ水電解装置の場合には隔膜、食塩電解装置の場合にはイオン交換膜)を介在させて、更に詳しくは膜の周縁部を陽極室組立体の周縁フランジの内面と陰極室組立体の周縁フランジの内面との間に介在させて、所要圧力を加えて押し付け、電解槽ユニットが構成されている。電解槽ユニット内から周囲に気体及び液体が漏出するのを確実に防止するために、陽極室組立体の周縁フランジと陰極室組立体の周縁フランジとの間にはガスケットが装備されている。
【0003】
下記特許文献1に開示されている電解装置においては、陽極室組立体の周縁フランジ及び陰極室組立体の周縁フランジに対応した矩形枠形状であるガスケットを陽極室組立体の周縁フランジ及び陰極室組立体の周縁フランジ間に把持している。ガスケットにはその内周面に横断面形状が矩形である溝が形成されており、この溝内に膜及び陰極の周縁部が挿入されている。下記特許文献2に開示されている電解装置においては、陽極室組立体の周縁フランジの内面及び陰極室組立体の周縁フランジの内面を平坦ではなく段差を有する形態にして、陽極室組立体の周縁フランジの内面と陰極室組立体の周縁フランジの内面との間に、両者間に膜の周縁部を把持した一対のガスケットを把持している。下記特許文献3に開示されている電解装置においては、陽極室組立体の周縁フランジの内面に溝を形成し、かかる溝にガスケットを収容すると共に、陰極室組立体の周縁フランジの内面にも溝を形成し、かかる溝にガスケットを収容し、そして陽極室組立体のガスケットと陰極室組立体のガスケットとの間に膜の周縁部を把持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6559383号公報
【特許文献2】特開2019-99845公報
【特許文献3】特開2021-195596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、上記特許文献1乃至3に開示されている電解装置には、ガスケット自体に加工を加えて溝を形成することが必要或いは陽極室組立体の周縁フランジ及び陰極室組立体の周縁フランジの内面を溝又は段差を有する形態にすることが必要であることに起因して製造コストが比較的高価であり、そしてまたガスケットに形成された溝に膜の周縁部を所要とおりに挿入することが必要或いは陽極室組立体の周縁フランジ及び陰極室組立体の周縁フランジの内面に形成されている溝又は段差の所定部位にガスケットを位置付けることが必要であることに起因して製作工程が煩雑である、という解決すべき問題が存在する。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、陽極室組立体の周縁フランジ及び陰極室組立体の周縁フランジ並びにガスケットに特別な加工を加える必要が無く、それ故に製造コストを低減することができ、そしてまた煩雑な操作を必要とすることなくガスケット及び膜の配置を充分容易且つ迅速に遂行することができる、新規且つ改良されたゼロギャップ型電解装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討の結果、陽極室組立体の周縁フランジに対するガスケットの装着及び/又は陰極室組立体の周縁フランジに対するガスケットの装着を接着によって遂行し、ガスケットに対する膜の装着を貼着テープによって遂行することによって、上記主たる技術的課題を達成することができることを見出した。
【0008】
即ち、本発明の一局面によれば、上記主たる技術的課題を達成する電解装置として、
陽極室組立体と陰極室組立体とから構成されている複数個の電解槽ユニットが横方向に積み重ね配列されているゼロギャップ型電解装置において、
該陽極室組立体は、隔壁、該隔壁の周縁に沿って延在する周縁フランジ、該周縁フランジの内面に沿って延在するガスケット、陽極及び膜を含み、
該ガスケットは片面が該フランジの該内面に接着されており、
該ガスケットの他面には該膜の片面周縁部が当接されており、該ガスケットの該他面と該膜の他面周縁部に跨って貼着テープが貼着されている、
ことを特徴とする電解装置が提供される。
【0009】
好ましくは、該貼着テープは該ガスケットの該他面及び該膜の該他面周縁の周方向全体に渡って貼着されている。該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面における内周部から該ガスケットの内周縁を超えて存在しているのが好適である。該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面の全幅の50%以内、特に15乃至35%以内、に貼着されているのが好ましい。好適形態においては、該ガスケットの該他面と該陽極の周縁部に跨って付加貼着テープが貼着されており、該膜の該片面周縁部は該付加貼着テープを介して該ガスケットの該他面に積み重ねられている。好ましくは、該陰極室組立体は、隔壁、該隔壁の周縁に沿って延在する周縁フランジ、該周縁フランジの内面に沿って延在するガスケット、及び陰極を含み、該ガスケットは片面が該フランジの該内面に接着されており、該陽極室組立体における該ガスケットの該他面と該陰極室組立体の該ガスケットの他面とが相互に圧接される。該陰極室組立体における該ガスケットの該他面と該陰極の片面周縁部に跨って貼着テープが貼着されているのが望ましい。該陰極室組立体における該貼着テープは該ガスケットの該他面及び該陰極の該片面周縁の周方向全体に渡って貼着されているのが好適である。該陰極室組立体における該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面における内周部から該ガスケットの内周縁を超えて存在しているのが好適である。該陰極室組立体における該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面の全幅の50%以内、特に15乃至35%以内、に貼着されているのが好ましい。該陰極室組立体における該陰極の他面には順次にクッション部材及び集電体が積み重ねられているのが好都合である。
【0010】
本発明の他の局面によれば、上記主たる技術的課題を達成する電解装置として、
陽極室組立体と陰極室組立体とから構成されている複数個の電解槽ユニットが横方向に積み重ね配列されているゼロギャップ型電解装置において、
該陰極室組立体は、隔壁、該隔壁の周縁に沿って延在する周縁フランジ、該周縁フランジの内面に沿って延在するガスケット、陰極及び膜を含み、
該ガスケットは片面が該フランジの該内面に接着されており、
該ガスケットの他面には該膜の片面周縁部が当接されており、該ガスケットの該他面と該膜の他面周縁部に跨って貼着テープが貼着されている、
ことを特徴とする電解装置が提供される。
【0011】
好ましくは、該貼着テープは該ガスケットの該他面及び該膜の該他面周縁の周方向全体に渡って貼着されている。該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面における内周部から該ガスケットの内周縁を超えて存在しているのが好適である。該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面の全幅の50%以内、特に15乃至35%以内、に貼着されているのが好ましい。好適形態においては、該ガスケットの該他面と該陰極の周縁部に跨って付加貼着テープが貼着されており、該膜の該片面周縁部は該付加貼着テープを介して該ガスケットの該他面に積み重ねられている。好ましくは、該陽極室組立体は、隔壁、該隔壁の周縁に沿って延在する周縁フランジ、該周縁フランジの内面に沿って延在するガスケット、及び陽極を含み、該ガスケットは片面が該フランジの該内面に接着されており、該陰極室組立体における該ガスケットの該他面と該陽極室組立体の該ガスケットの他面とが相互に圧接される。該陽極室組立体における該ガスケットの該他面と該陽極の片面周縁部に跨って貼着テープが貼着されているのが好適である。該陽極室組立体における該貼着テープは該ガスケットの該他面及び該陽極の該片面周縁の周方向全体に渡って貼着されているのが好ましい。該陽極室組立体における該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面における内周部から該ガスケットの内周縁を超えて存在しているのが好適である。該陽極室組立体における該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面の全幅の50%以内、特に15乃至35%以内、に貼着されているのが好ましい。該陰極室組立体における該陰極の他面には順次にクッション部材及び集電体が積み重ねられているのが好都合である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電解装置によれば、陽極室組立体の周縁フランジ及び陰極室組立体の周縁フランジ並びにガスケットに特別な加工を加える必要が無く、それ故に製造コストを低減することができ、そしてまた煩雑な操作を必要とすることなくガスケット及び膜の配置を充分容易且つ迅速に遂行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に従って構成された電解装置を示す簡略図。
【
図2】
図1に示す電解装置における電解槽ユニットの上縁部の模式的部分断面図。
【
図3】
図2に示す周縁フランジおよび陽極の平面図(ガスケット、膜および貼着テープは省略)。
【
図4】
図2に示す電解槽ユニットの幅方向片側縁部の模式的部分断面図。
【
図5】
図2に示す電解槽ユニットの下縁部の模式的部分断面図。
【
図6】
図2に示す電解槽ユニットにおける陽極室組立体の組立様式を説明するための簡略部分断面図。
【
図7】
図2に示す電解槽ユニットにおける陽極室組立体の組立様式を説明するための簡略側面図。
【
図8】
図2に示す電解槽ユニットにおける陰極室組立体の組立様式を説明するための簡略部分断面図。
【
図9】陽極室組立体の変形例を示す模式的部分断面図。
【
図10】陰極室組立体の変形例を示す模式的部分断面図。
【
図11】電解槽ユニットの変形例を示す模式的部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に従って構成された電解装置の好適実施形態を図示している添付図面を参照して、更に詳述する。
【0015】
図1には、本発明に従って構成された電解装置の好適実施形態が簡略に示されている。全体を番号2で示す電解装置は、ゼロギャップ型と称される形態であり、複数個の電解槽ユニット4を横方向に積み重ね配列して構成されている。複数個の電解槽ユニット4は、それ自体は当業者には周知の構成でよい流体圧式締付機構であるのが好都合である締付機構(図示していない)によって所要圧力を加えて積み重ねられている。
【0016】
電解槽ユニット4の上縁部の断面を図示している
図2を参照して説明すると、電解槽ユニット4の各々は、陽極室組立体6と陰極室組立体8とから構成されている。陽極室組立体6を構成する後述するとおりの構成要素及び陰極室組立体8を構成する後述するとおりの構成要素は、実際は相互に密接されているが、
図2においては、構成要素を明確に図示するために便宜上構成要素を互いに離隔して図示している(
図4乃至
図11においても同様)。
【0017】
陽極室組立体6は矩形板形状である隔壁10、及びこの隔壁10の周縁に沿って延在する全体として矩形枠形状(換言すれば矩形額縁形状)である周縁フランジ12を含んでいる。図示の実施形態における周縁フランジ12は外周壁12a、内面壁12b及び内周壁12cを有する。内面壁12bは
図2において上下方向に真直に延びる下部、
図2において上方に向かって幾分外側(
図2において右側)に傾斜して延びる傾斜部、及び
図2において上下方向に真直に延びる上部を有する。かような周縁フランジ12は溶接、接着剤又は締結ねじの如き適宜の接合手段(図示していない)によって隔壁10に固定されている。隔壁10及び周縁フランジ12はニッケル板又はチタン板の如き適宜の導電性金属板から形成することができる。周縁フランジ12の内周側には陽極14が配設されており、隔壁10と陽極14との間に陽極室16が規定されている。隔壁10にはその内面から横方向(
図2において左方向)に突出する複数個のリブ(図示していない)が固定されており、陽極14はかかるリブの先端に固定されている(当業者には周知である複数個のリブについては、例えば上記特許文献1及び2の記載を参照されたい)。それ自体は周知の形態でよい陽極14はニッケル又はチタンの如き適宜の導電性金属から形成された所謂エキスパンドメタル或いは平織金属網から構成することができる。リブはニッケル又はチタンの如き適宜の導電性金属から形成することができる。
【0018】
周縁フランジ12の幅方向片側縁部12d(
図3において、周縁フランジ12の右側縁部において上下方向に沿って延びる部分)と、周縁フランジ12の幅方向他側縁部12e(
図3において、周縁フランジ12の左側縁部において上下方向に沿って延びる部分)は、隔壁10が適宜屈曲されて形成されていてもよい。
【0019】
すなわち、
図4に示すように、隔壁10が、矩形状の主部10aと、主部10aの端部から陽極14に向かって突出する内周部10bと、内周部10bの突出端から電解槽ユニット4の外周側に延びる延出部10cと、延出部10cの延出端から主部10a側に向かって延びる外周部10dとを含み、周縁フランジ12の幅方向片側縁部12dが、隔壁10の内周部10b、延出部10cおよび外周部10dを有する構成であってもよい。周縁フランジ12の幅方向他側縁部12eについても、幅方向片側縁部12dと同様に、隔壁10の内周部10b、延出部10cおよび外周部10dを有する構成でよい。
【0020】
また、周縁フランジ12の下縁部12f(
図3において、周縁フランジ12の下部において周縁フランジ12の幅方向に沿って延びる部分)も、周縁フランジ12の幅方向片側縁部12d・他側縁部12eと同様に、隔壁10が適宜屈曲されて形成されていてもよい。具体的には、
図5に示すとおり、周縁フランジ12の下縁部が、隔壁10の内周部10b、延出部10cおよび外周部10dを備え得る。
【0021】
図4および
図5に示すように、隔壁10が屈曲されて周縁フランジ12が形成される場合には、周縁フランジ12の幅方向片側縁部12d・他側縁部12eおよび下縁部12fを補強する補強材(図示していない。)が設置され得る。
【0022】
なお、図示の実施形態とは異なり、周縁フランジ12の幅方向片側縁部12d・他側縁部12eおよび下縁部12fは、隔壁10が屈曲されて形成されていなくてもよい。
【0023】
本発明の電解装置2においては、上記周縁フランジ12の内面(即ち内面壁12bの外面)にガスケット18が接着されていることが重要である。天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、シリコーンゴム(SR)、エチレン-プロピレンゴム(EPT)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、フッ素ゴム(FR)、イソブチレン-イソプレンゴム(IIR)、ウレタンゴム(UR)、又はクロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)の如き耐アルカリ性を有するエラストマーから形成されているのが好都合であるガスケット18は、周縁フランジ12の内面に沿って延在する矩形枠形状であり、図示の実施形態においては、縦方向に細長い長方形状の横断面形状を有し、その片面(
図2において右側面)が周縁フランジ12の内面壁12bの外面(
図2において左側面)に適宜の接着剤或いは両面接着テープによって接着されている。図示の実施形態においては、ガスケット18の上記片面には、ガスケット18の幅方向に間隔をおいてガスケット18の周方向(
図2において紙面に垂直な方向)に延在する複数個の突条20が形成されている(かかる複数個の突条20については後に更に言及する)。ガスケット18の上記片面を周縁フランジ12の内面壁12bに接着することによって突条20は押し潰されている。
【0024】
更に、本発明の電解装置2においては、上記ガスケット18の他面(
図2において左側面)には、陽極14よりも幾分大きい矩形状である膜22の片面(
図2において右側面)周縁部が当接されており、そしてガスケット18の他面(
図2において左側面)と膜22の他面(
図2において左側面)周縁部に跨って貼着テープ24が貼着されており、かくして膜22が所要位置に配設されていることが重要である。膜22は、アルカリ水電解装置の場合にはイオン透過性材料から形成された隔膜から構成され、食塩電解装置の場合にはイオン交換膜から構成される。貼着テープ24は、片面に接着剤が塗布されている耐アルカリ性に優れた絶縁性合成樹脂フィルム製テープ、特にポリテトラフルオロエチレンフィルム製テープ、から形成されているのが好適である。この貼着テープ24は、ガスケット18の上記他面及び膜22の上記他面周縁部の周方向全体に渡って貼着されているのが好適である(
図7も参照されたい)。所望ならば、周方向に間隔をおいて周方向に延在する複数個の部位においてのみ貼着テープ24を貼着することもできる。貼着テープ24は、貼着テープ24の幅方向(
図2において上下方向)において、ガスケット18の内周部(
図2において下方部)からガスケット18の内周縁(
図2において下端縁)を超えて存在し、ガスケット18の全幅Wの50%以内、殊に15乃至35%以内、に貼着されているのが好ましい。ガスケット18の全幅Wの50%を超えて貼着テープ24を貼着すると、ガスケット18が後述する陰極室組立体のガスケットと密接されて陽極室16及び後述する陰極室を密封する作用が毀損される虞がある。
【0025】
図2を参照して説明を続けると、陰極室組立体8も、上述した陽極室組立体6と同様に、矩形板形状である隔壁26、及びこの隔壁26の周縁に沿って延在する全体として矩形枠形状(換言すれば矩形額縁形状)である周縁フランジ28を含んでいる。図示の実施形態における周縁フランジ28は外周壁28a、内面壁28b及び内周壁28cを有する。内面壁28bは
図2において上下方向に真直に延びる下部、
図2において上方に向かって幾分外側(
図2において左側)に傾斜して延びる傾斜部、及び
図2において上下方向に真直に延びる上部を有する。かような周縁フランジ28は溶接、接着剤又は締結ねじの如き適宜の接合手段(図示していない)によって隔壁26に固定されている。隔壁26及び周縁フランジ28はニッケル板の如き適宜の導電性金属板から形成することができる。周縁フランジ28の内周側には、陰極30、クッション部材32及び集電体34が順次に積み重ね配列されており、積み重ね配列された陰極30、クッション部材32及び集電体34と隔壁26との間に陰極室36が規定されている。積み重ね配列された陰極30、クッション部材32及び集電体34について更に詳述すると、隔壁26にはその内面から横方向(
図2において右方向)に突出する複数個のリブ(図示していない)が固定されており、集電体34はリブの先端に固定されている。クッション部材32は複数個の部位において集電体34を通してリブに(或いは必要に応じてリブの先端部に固定された合成樹脂製又は金属製でよい適宜の受部材)に締結ねじを螺着することによって固定され、陰極30は複数個の部位においてクッション部材32及び集電体34を通してリブ(又は上記受部材)に締結ねじを螺着することによって固定されている(かような構成については後に更に言及する)。陰極室組立体8における隔壁26、周縁フランジ28、及びリブはニッケルの如く適宜の導電性金属から形成することができる。それ自体は周知の形態でよい陰極30はニッケルの如き適宜の導電性金属から形成された平織金属網或いはエキスパンドメタルから構成することができる。それ自体は周知の形態でよいクッション部材32は、例えばニッケルの如き適宜の導電性金属から形成された金属線の集合体から構成された弾性マットから構成することができ、同様にそれ自体は周知の形態でよい集電体34は、例えばニッケルの如き適宜の金属から形成されたエキスパンドメタルから構成することができる。
【0026】
陰極室組立体8の周縁フランジ28の幅方向片側縁部28d(
図4参照)と、周縁フランジ28の幅方向他側縁部(図示していない。)は、陰極室組立体8の隔壁26が適宜屈曲されて形成されていてもよい。
【0027】
すなわち、
図4に示すように、隔壁26が、矩形状の主部26aと、主部26aの端部から陰極30に向かって突出する内周部26bと、内周部26bの突出端から電解槽ユニット4の外周側に延びる延出部26cと、延出部26cの延出端から主部26a側に向かって延びる外周部26dとを含み、周縁フランジ28の幅方向片側縁部28dが、隔壁26の内周部26b、延出部26cおよび外周部26dを有する構成であってもよい。周縁フランジ28の幅方向他側縁部についても、幅方向片側縁部28dと同様に、隔壁26の内周部26b、延出部26cおよび外周部26dを有する構成でよい。
【0028】
また、周縁フランジ28の下縁部28f(
図5参照)も、周縁フランジ28の幅方向片側縁部28d・他側縁部と同様に、隔壁26が適宜屈曲されて形成されていてもよい。具体的には、
図5に示すとおり、周縁フランジ28の下縁部28fが、隔壁26の内周部26b、延出部26cおよび外周部26dを備え得る。
【0029】
図4および
図5に示すように、隔壁26が屈曲されて周縁フランジ28が形成される場合には、周縁フランジ28の幅方向片側縁部28d・他側縁部および下縁部28fを補強する補強材(図示していない。)が設置され得る。
【0030】
なお、図示の実施形態とは異なり、周縁フランジ28の幅方向片側縁部28d・他側縁部および下縁部28fは、隔壁26が屈曲されて形成されていなくてもよい。
【0031】
本発明に従って構成された電解装置2においては、上記周縁フランジ28の内面にガスケット38が接着されていることが重要である。上記陽極室組立体6におけるガスケット18と同様に、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、シリコーンゴム(SR)、エチレン-プロピレンゴム(EPT)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、フッ素ゴム(FR)、イソブチレン-イソプレンゴム(IIR)、ウレタンゴム(UR)、又はクロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)の如き耐アルカリ性を有するエラストマーから形成されているのが好都合であるガスケット38は、周縁フランジ28の内面に沿って延在する矩形枠形状であり、縦方向に細長い長方形状の横断面形状を有する。かようなガスケット38の片面(
図2において左側面)が周縁フランジ28の内面壁28bに適宜の接着剤或いは両面接着テープによって接着されている。図示の実施形態においては、ガスケット38の他面(
図2において右側面)には、ガスケット38の幅方向に間隔をおいてガスケット38の周方向(
図2において紙面に垂直な方向)に延在する複数個の突条40が形成されている。上記陽極室組立体6におけるガスケット18と陰極室組立体8におけるガスケット38とは、構成部品の共通化によって製造コストを低減するために、同一形態であるのが好都合である。
【0032】
図2においては便宜上ガスケット18とガスケット38とは離隔して図示されているが、実際上はガスケット18の上記他面(
図2において左側面)とガスケット38の上記他面(
図2において右側面)とは所要圧力で密接され、これによって陽極室16及び陰極室36が密閉される。本発明者等の経験によれば、ガスケット18の上記他面とガスケット38の上記他面との密接によってガスケット38の上記他面に形成されている複数個の突条40が局部的に圧し潰され、これによってガスケット18とガスケット38との間の密接が助長される。
【0033】
次に、
図6を参照して、上述した電解槽ユニット4における陽極室組立体6の組立様式の典型例について説明する。最初に、
図6(a)に図示するとおり、上述したとおりにして部分的に組み立てられた隔壁10、周縁フランジ12及び陽極14を、適宜の支持面(図示していない)上に、隔壁10の外面が支持面上に位置するように横臥させる。そして、周縁フランジ12の内面壁12bにおける真直に延在する下部外面の全体に渡って及び/又はガスケット18の片面の全体に渡って、接着剤42を塗布する。次いで、
図6(b)に図示する如く、ガスケット18の片面を周縁フランジ12の内面壁12bにおける真直に延在する下部外面に押し付け、かくして周縁フランジ12の内面壁12bにおける真直に延在する下部外面にガスケット18を接着する。所望ならば、周縁フランジ12の内面壁12bにおける真直に延在する下部外面の全体に渡って及び/又はガスケット18の片面の全体に渡ってではなくて、周縁フランジ12の内面壁12bにおける真直に延在する下部外面における周方向に間隔をおいた複数個の部位において及び/又はガスケット18の片面における周方向に間隔をおいた複数個の部位において、接着剤42を塗布することもできる。また、接着剤42に代えて両面接着テープを介して、周縁フランジ12の内面壁12bにおける真直に延在する下部外面にガスケット18を接着することもできる。
【0034】
次に、
図6(c)に図示する如く、膜22の周縁部をガスケット18の他面内周部上に積み重ねる。しかる後に、
図6(d)に図示するとおり、ガスケット18の他面と膜22とに跨って貼着テープ24を貼着する。
図7に図示する如く、貼着テープ24は周方向全体に渡って貼着する、即ち
図7において上縁部、両側縁部及び下縁部の夫々においてそれらの全長に渡って貼着する、のが好都合である。所望ならば、周方向に間隔をおいた複数個の部位において貼着テープ24を貼着することもできる。かくして、
図2に図示するとおりの形態の陽極室組立体6を組み立てる。
【0035】
図8を参照して、上述したとおりの電解槽ユニット4における陰極室組立体8の組立様式の典型例を説明すると、最初に、
図8(a)に図示するとおり、上述したとおりにして部分的に組み立てられた隔壁26、周縁フランジ28及び集電体34を、適宜の支持面(図示していない)上に、隔壁26の外面が支持面上に位置するように横臥させる。そして、周縁フランジ28の内面壁28bにおける真直に延在する下部外面の全体に渡って及び/又はガスケット38の片面の全体に渡って、接着剤44を塗布する。次いで、
図8(b)に図示するとおり、ガスケット38の片面を周縁フランジ28の内面壁28bにおける真直に延在する下部外面に押し付け、かくして周縁フランジ28の内面壁28bにおける真直に延在する下部外面にガスケット38を接着する。上述した陽極室組立体6の組立の場合と同様に、所望ならば、周縁フランジ28の内面壁28bにおける真直に延在する下部外面の全体に渡って及び/又はガスケット38の片面の全体に渡ってではなくて、周縁フランジ28の内面壁28bにおける真直に延在する下部外面における周方向に間隔をおいた複数個の部位において及び/又はガスケット38の片面の周方向における間隔をおいた複数個の部位において、接着剤44を塗布することもできる。また、接着剤44に代えて両面接着テープを介して、周縁フランジ28の内面壁28bにおける真直に延在する下部外面にガスケット38を接着することもできる。
【0036】
次に、
図8(c)に図示するとおり、集電体34上にクッション部材32を載置し、複数個の部位においてクッション部材32及び集電体34を通して、リブ(又は受部材)に締結ねじ46を螺着してクッション部材32を固定する。締結ねじ46を螺着する部位は、陰極室36の4個の角部においてはガスが滞留する傾向があり、そしてまた陰極室36の上端縁部にはガスポケットが形成される傾向があるので、これらの部位を避けた部位であるのが好都合である。次いで、
図8(d)に図示する如く、クッション部材32上に陰極30を載置し、複数個の部位において陰極30、クッション部材32及び集電体34を通して締結ねじ48をリブ(又は受部材)に螺着して陰極30を固定する。かくして、
図2に図示するとおりの陰極室組立体8を組み立てる。締結ねじ48を螺着する部位も、締結ねじ46を螺着する部位と同様に、陰極室36の4個の角部及び上端縁部を避けた部位であるのが好都合である。
【0037】
上述したとおりにして組み立てられた陽極室組立体6と陰極室組立体8とは、
図2に図示する如く、陽極室組立体6のガスケット18と陰極室組立体のガスケット38を相互に対向させて配置され、相互に所要圧力で押し付けられ、かくして電解槽ユニット4が構成される。
【0038】
図9は陽極室組立体の変形例を図示している。この変形例においては、ガスケット18の上記他面の内周部と陽極14の外周縁部とに跨って付加貼着テープ50が貼着されている。膜22の片面周縁部は付加貼着テープ50を介してガスケット18の上記他面に積み重ねられている。そして、ガスケット18の他面の内周部と膜22の他面外周部に跨って貼着テープ24が貼着されている。かかる変形例においては、ガスケット18の上記他面の内周部と陽極14の外周縁部とに跨って付加貼着テープ50が貼着されており、陽極14の外周縁部と膜22との間に付加貼着テープ50が存在する故に、陽極14の外周縁が膜22の外周縁部に作用して膜22の外周縁が損傷されることが防止される。
【0039】
図10には陰極室組立体8の変形例が図示されている。この変形例においては、ガスケット38の上記他面の内周部と陰極30の片面外周縁部とに跨って付加貼着テープ52が貼着されている。
図10に図示する変形例においては、ガスケット38の内周縁部と陰極30の外周縁部とに跨って付加貼着テープ52が存在する故に、陰極30の外周縁が膜22の外周縁部に作用して膜22の外周縁が損傷されることが一層確実に防止される。
【0040】
図11は、電解槽ユニット4の変形例を図示している。
図11に図示する変形例においては、陽極室組立体6におけるガスケット18ではなく、陰極室組立体8のガスケット38の上記他面(
図11において右側面)に膜22の片面(
図11において左側面)周縁部が当接されており、そしてガスケット38の上記他面と膜22の他面(
図11において右側面)周縁部に跨って貼着テープ24が貼着されている。
図11に図示する変形例におけるガスケット38、膜22及び貼着テープ24の相互関係は、
図2に図示する実施形態におけるガスケット18、膜22及び貼着テープ24の相互関係と実質上同一であるので、説明の重複をさけるため
図11に図示する変形例におけるガスケット38、膜22及び貼着テープ24の相互関係についての詳細な説明は省略する。所望ならば、陽極室組立体6の
図9に図示するとおりの変形例を、
図11に図示する変形例における陰極室組立体8に適用することもできる。
【0041】
図11に図示する電解槽ユニット4における陽極室組立体6においては、周縁フランジ12の内面、即ち内面壁12bの外面にガスケット18が接着されている。陽極室組立体6におけるかような構成は、
図2に図示する電解槽ユニット4における陰極室組立体8における対応する構成と実質上同一である。所望ならば、陰極室組立体8の
図10に図示するとおりの変形例を、
図11に図示する陽極室組立体6に適用することもできる。
【符号の説明】
【0042】
2:電解装置
4:電解槽ユニット
6:陽極室組立体
8:陰極室組立体
10:隔壁
12:周縁フランジ
12a:周縁フランジの外周壁
12b:周縁フランジの内面壁
12c:周縁フランジの内周壁
14:陽極
16:陽極室
18:ガスケット
20:突条
22:膜
24:貼着テープ
26:隔壁
28:周縁フランジ
28a:周縁フランジの外周壁
28b:周縁フランジの内面壁
28c:周縁フランジの内周壁
30:陰極
32:クッション部材
34:集電体
36:陰極室
38:ガスケット
40:突条
42:接着剤
44:接着剤
46:締結ねじ
48:締結ねじ
50:付加貼着テープ
52:付加貼着テープ
【手続補正書】
【提出日】2024-03-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極室組立体と陰極室組立体とから構成されている複数個の電解槽ユニットが横方向に積み重ね配列されているゼロギャップ型電解装置において、
該陽極室組立体は、隔壁、該隔壁の周縁に沿って延在する周縁フランジ、該周縁フランジの内面に沿って延在するガスケット、陽極及び膜を含み、
該ガスケットは片面が該周縁フランジの該内面に接着されており、
該ガスケットの他面には該膜の片面周縁部が当接されており、該ガスケットの該他面と該膜の他面周縁部に跨って貼着テープが貼着されている、
ことを特徴とする電解装置。
【請求項2】
該貼着テープは該ガスケットの該他面及び該膜の該他面周縁の周方向全体に渡って貼着されている、請求項1記載の電解装置。
【請求項3】
該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面における内周部から該ガスケットの内周縁を超えて存在している、請求項1記載の電解装置。
【請求項4】
該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面の全幅の50%以内に貼着されている、請求項3記載の電解装置。
【請求項5】
該貼着テープは該ガスケットの該他面の全幅の15乃至35%以内に貼着されている、請求項4記載の電解装置。
【請求項6】
該ガスケットの該他面と該陽極の周縁部に跨って付加貼着テープが貼着されており、該膜の該片面周縁部は該付加貼着テープを介して該ガスケットの該他面に積み重ねられている、請求項1記載の電解装置。
【請求項7】
該陰極室組立体は、隔壁、該隔壁の周縁に沿って延在する周縁フランジ、該周縁フランジの内面に沿って延在するガスケット、及び陰極を含み、
該ガスケットは片面が該周縁フランジの該内面に接着されており、
該陽極室組立体における該ガスケットの該他面と該陰極室組立体の該ガスケットの他面とが相互に圧接される、
請求項1記載の電解装置。
【請求項8】
該陰極室組立体における該ガスケットの該他面と該陰極の片面周縁部に跨って貼着テープが貼着されている、請求項7記載の電解装置。
【請求項9】
該陰極室組立体における該貼着テープは該ガスケットの該他面及び該陰極の該片面周縁の周方向全体に渡って貼着されている、請求項8記載の電解装置。
【請求項10】
該陰極室組立体における該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面における内周部から該ガスケットの内周縁を超えて存在している、請求項8記載の電解装置。
【請求項11】
該陰極室組立体における該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面の全幅の50%以内に貼着されている、請求項10記載の電解装置。
【請求項12】
該陰極室組立体における該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面の全幅の15乃至35%以内に貼着されている、請求項11記載の電解装置。
【請求項13】
該陰極室組立体における該陰極の他面には順次にクッション部材及び集電体が積み重ねられている、請求項7記載の電解装置。
【請求項14】
陽極室組立体と陰極室組立体とから構成されている複数個の電解槽ユニットが横方向に積み重ね配列されているゼロギャップ型電解装置において、
該陰極室組立体は、隔壁、該隔壁の周縁に沿って延在する周縁フランジ、該周縁フランジの内面に沿って延在するガスケット、陰極及び膜を含み、
該ガスケットは片面が該周縁フランジの該内面に接着されており、
該ガスケットの他面には該膜の片面周縁部が当接されており、該ガスケットの該他面と該膜の他面周縁部に跨って貼着テープが貼着されている、
ことを特徴とする電解装置。
【請求項15】
該貼着テープは該ガスケットの該他面及び該膜の該他面周縁の周方向全体に渡って貼着されている、請求項14記載の電解装置。
【請求項16】
該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面における内周部から該ガスケットの内周縁を超えて存在している、請求項14記載の電解装置。
【請求項17】
該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面の全幅の50%以内に貼着されている、請求項16記載の電解装置。
【請求項18】
該貼着テープは該ガスケットの該他面の全幅の15乃至35%以内に貼着されている、請求項17記載の電解装置。
【請求項19】
該ガスケットの該他面と該陰極の周縁部に跨って付加貼着テープが貼着されており、該膜の該片面周縁部は該付加貼着テープを介して該ガスケットの該他面に積み重ねられている、請求項14記載の電解装置。
【請求項20】
該陽極室組立体は、隔壁、該隔壁の周縁に沿って延在する周縁フランジ、該周縁フランジの内面に沿って延在するガスケット、及び陽極を含み、
該ガスケットは片面が該周縁フランジの該内面に接着されており、
該陰極室組立体における該ガスケットの該他面と該陽極室組立体の該ガスケットの他面とが相互に圧接される、
請求項14記載の電解装置。
【請求項21】
該陽極室組立体における該ガスケットの該他面と該陽極の片面周縁部に跨って貼着テープが貼着されている、請求項20記載の電解装置。
【請求項22】
該陽極室組立体における該貼着テープは該ガスケットの該他面及び該陽極の該片面周縁の周方向全体に渡って貼着されている、請求項21記載の電解装置。
【請求項23】
該陽極室組立体における該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面における内周部から該ガスケットの内周縁を超えて存在している、請求項21記載の電解装置。
【請求項24】
該陽極室組立体における該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面の全幅の50%以内に貼着されている、請求項23記載の電解装置。
【請求項25】
該陽極室組立体における該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面の全幅の15乃至35%以内に貼着されている、請求項24記載の電解装置。
【請求項26】
該陰極室組立体における該陰極の他面には順次にクッション部材及び集電体が積み重ねられている、請求項14記載の電解装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
即ち、本発明の一局面によれば、上記主たる技術的課題を達成する電解装置として、
陽極室組立体と陰極室組立体とから構成されている複数個の電解槽ユニットが横方向に積み重ね配列されているゼロギャップ型電解装置において、
該陽極室組立体は、隔壁、該隔壁の周縁に沿って延在する周縁フランジ、該周縁フランジの内面に沿って延在するガスケット、陽極及び膜を含み、
該ガスケットは片面が該周縁フランジの該内面に接着されており、
該ガスケットの他面には該膜の片面周縁部が当接されており、該ガスケットの該他面と該膜の他面周縁部に跨って貼着テープが貼着されている、
ことを特徴とする電解装置が提供される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
好ましくは、該貼着テープは該ガスケットの該他面及び該膜の該他面周縁の周方向全体に渡って貼着されている。該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面における内周部から該ガスケットの内周縁を超えて存在しているのが好適である。該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面の全幅の50%以内、特に15乃至35%以内、に貼着されているのが好ましい。好適形態においては、該ガスケットの該他面と該陽極の周縁部に跨って付加貼着テープが貼着されており、該膜の該片面周縁部は該付加貼着テープを介して該ガスケットの該他面に積み重ねられている。好ましくは、該陰極室組立体は、隔壁、該隔壁の周縁に沿って延在する周縁フランジ、該周縁フランジの内面に沿って延在するガスケット、及び陰極を含み、該ガスケットは片面が該周縁フランジの該内面に接着されており、該陽極室組立体における該ガスケットの該他面と該陰極室組立体の該ガスケットの他面とが相互に圧接される。該陰極室組立体における該ガスケットの該他面と該陰極の片面周縁部に跨って貼着テープが貼着されているのが望ましい。該陰極室組立体における該貼着テープは該ガスケットの該他面及び該陰極の該片面周縁の周方向全体に渡って貼着されているのが好適である。該陰極室組立体における該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面における内周部から該ガスケットの内周縁を超えて存在しているのが好適である。該陰極室組立体における該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面の全幅の50%以内、特に15乃至35%以内、に貼着されているのが好ましい。該陰極室組立体における該陰極の他面には順次にクッション部材及び集電体が積み重ねられているのが好都合である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明の他の局面によれば、上記主たる技術的課題を達成する電解装置として、
陽極室組立体と陰極室組立体とから構成されている複数個の電解槽ユニットが横方向に積み重ね配列されているゼロギャップ型電解装置において、
該陰極室組立体は、隔壁、該隔壁の周縁に沿って延在する周縁フランジ、該周縁フランジの内面に沿って延在するガスケット、陰極及び膜を含み、
該ガスケットは片面が該周縁フランジの該内面に接着されており、
該ガスケットの他面には該膜の片面周縁部が当接されており、該ガスケットの該他面と該膜の他面周縁部に跨って貼着テープが貼着されている、
ことを特徴とする電解装置が提供される。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
好ましくは、該貼着テープは該ガスケットの該他面及び該膜の該他面周縁の周方向全体に渡って貼着されている。該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面における内周部から該ガスケットの内周縁を超えて存在しているのが好適である。該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面の全幅の50%以内、特に15乃至35%以内、に貼着されているのが好ましい。好適形態においては、該ガスケットの該他面と該陰極の周縁部に跨って付加貼着テープが貼着されており、該膜の該片面周縁部は該付加貼着テープを介して該ガスケットの該他面に積み重ねられている。好ましくは、該陽極室組立体は、隔壁、該隔壁の周縁に沿って延在する周縁フランジ、該周縁フランジの内面に沿って延在するガスケット、及び陽極を含み、該ガスケットは片面が該周縁フランジの該内面に接着されており、該陰極室組立体における該ガスケットの該他面と該陽極室組立体の該ガスケットの他面とが相互に圧接される。該陽極室組立体における該ガスケットの該他面と該陽極の片面周縁部に跨って貼着テープが貼着されているのが好適である。該陽極室組立体における該貼着テープは該ガスケットの該他面及び該陽極の該片面周縁の周方向全体に渡って貼着されているのが好ましい。該陽極室組立体における該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面における内周部から該ガスケットの内周縁を超えて存在しているのが好適である。該陽極室組立体における該貼着テープは幅方向において該ガスケットの該他面の全幅の50%以内、特に15乃至35%以内、に貼着されているのが好ましい。該陰極室組立体における該陰極の他面には順次にクッション部材及び集電体が積み重ねられているのが好都合である。