(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084114
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】耐熱性アルデヒド捕捉剤組成物
(51)【国際特許分類】
B01J 20/22 20060101AFI20240617BHJP
B01J 20/04 20060101ALI20240617BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20240617BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
B01J20/22 A
B01J20/04 C
B01D53/14 100
B01D53/14 210
A61L9/01 K
A61L9/01 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119782
(22)【出願日】2023-07-24
(31)【優先権主張番号】P 2022197716
(32)【優先日】2022-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山口 健太
(72)【発明者】
【氏名】須藤 幸徳
【テーマコード(参考)】
4C180
4D020
4G066
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180BB08
4C180BB11
4C180CB01
4C180CC04
4C180CC15
4C180CC16
4C180EA13Y
4C180EA23X
4C180EB05X
4C180EB15X
4C180EB22Y
4C180EB32Y
4C180EB34Y
4D020AA08
4D020BA01
4D020BA08
4D020BA09
4D020BA16
4D020BA19
4D020BB01
4D020BB07
4D020CA01
4D020CA02
4D020CB25
4D020DA03
4D020DB07
4G066AA13B
4G066AA43B
4G066AB07B
4G066AB13B
4G066AB23B
4G066BA03
4G066BA09
4G066BA16
4G066BA36
4G066CA52
4G066DA03
4G066FA37
(57)【要約】
【課題】 アルデヒド類に対し優れた捕捉効果を発揮し、高温暴露後においても捕捉効果の低減が抑制できるアルデヒド捕捉剤組成物、及び/又はアルデヒド捕捉性構造物を提供する。
【解決手段】 下記一般式(1)で表されるO-置換モノヒドロキシルアミンと、アルカリ金属塩とを含み、アルカリ金属塩の含有量が、O-置換モノヒドロキシルアミン 1モルに対して、0.2~0.9モルであるアルデヒド捕捉剤組成物を用いる。
【化1】
(式中、Rは、各々独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。nは1~6の整数を表す。)
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるO-置換モノヒドロキシルアミンと、アルカリ金属塩とを含み、アルカリ金属塩の含有量が、O-置換モノヒドロキシルアミン 1モルに対して、0.2~0.9モルであるアルデヒド捕捉剤組成物。
【化1】
(式中、Rは、各々独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。nは1~6の整数を表す。)
【請求項2】
アルカリ金属塩が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、又はアルカリ金属カルボン酸塩である、請求項1に記載のアルデヒド捕捉剤組成物。
【請求項3】
アルカリ金属塩が、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、炭酸水素セシウム、クエン酸三リチウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三ルビジウム、及びクエン酸三セシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のアルデヒド捕捉剤組成物。
【請求項4】
前記一般式(1)で表されるO-置換モノヒドロキシルアミンにおいて、Rが水素原子であり、nが1~4の整数である、請求項1に記載のアルデヒド捕捉剤組成物。
【請求項5】
前記一般式(1)で表されるO-置換モノヒドロキシルアミンが、アミノオキシ酢酸(Rが水素原子、nが1)である、請求項1に記載のアルデヒド捕捉剤組成物。
【請求項6】
請求項1に記載のアルデヒド捕捉剤組成物が、基材に担持されている、アルデヒド捕捉性構造物。
【請求項7】
前記の基材が、繊維状物、シート状物、ビーズ状物、スポンジ状物、又はボード状物である、請求項6に記載のアルデヒド捕捉剤性構造物。
【請求項8】
請求項1に記載のアルデヒド捕捉剤組成物を、アルデヒド類を含む気体と接触させることを特徴とする、アルデヒド類の除去方法。
【請求項9】
請求項7に記載のアルデヒド捕捉性構造物を、アルデヒド類を含む気体と接触させることを特徴とする、アルデヒド類の除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性アルデヒド捕捉剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アセトアルデヒドやホルムアルデヒド等のアルデヒド類は、屋内や自動車内の合成樹脂、合板等から発生し、シックハウス症候群やシックカー症候群の原因物質となっている。加えて、発がん性を有する懸念があり、日常的にこれらのアルデヒド類に曝露された場合、健康に悪影響を与える可能性がある。そのため、これらのアルデヒド類の室内濃度指針値としてアセトアルデヒドは0.03ppm、ホルムアルデヒドは0.08ppmと定められており、アルデヒド類を速やかに且つ持続的に除去する手段が求められている。
【0003】
アセトアルデヒドやホルムアルデヒド等の低級アルデヒドは沸点が低いため、消臭剤として汎用されるシリカゲルや活性炭等の無機系多孔質材では捕捉効率が低い。そこで、アミン、アミノ酸、又はO-置換モノヒドロキシルアミン誘導体等からなるアルデヒド捕捉剤とアルデヒド類を化学反応させることによりアルデヒド類を捕捉する方法が特許文献1~2において開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-108360号公報
【特許文献2】特開2022-2678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら特許文献に記載の方法では、アルデヒド捕捉剤を高温曝露すると捕捉効果が低下するという課題があり、高温曝露後においてもアルデヒド類に対して優れた捕捉効果を発揮するアルデヒド捕捉剤が求められていた。
【0006】
本発明は、このような技術背景を踏まえて、アルデヒド類に対し優れた捕捉効果を発揮し、高温曝露後も捕捉効果の低下が抑制されるアルデヒド捕捉剤組成物、及び/又はアルデヒド捕捉性構造物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記に示す本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の要旨を有するものである。
【0009】
[1]
下記一般式(1)で表されるO-置換モノヒドロキシルアミンと、アルカリ金属塩とを含み、アルカリ金属塩の含有量が、O-置換モノヒドロキシルアミン 1モルに対して、0.2~0.9モルであるアルデヒド捕捉剤組成物。
【0010】
【0011】
(式中、Rは、各々独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。nは、1~6の整数を表す。)
[2]
アルカリ金属塩が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、又はアルカリ金属カルボン酸塩である、[1]に記載のアルデヒド捕捉剤組成物。
【0012】
[3]
アルカリ金属塩が、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、炭酸水素セシウム、クエン酸三リチウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三ルビジウム、及びクエン酸三セシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]又は[2]に記載のアルデヒド捕捉剤組成物。
【0013】
[4]
前記一般式(1)で表されるO-置換モノヒドロキシルアミンにおいて、Rが水素原子であり、nが1~4の整数である、[1]乃至[3]のいずれかに記載のアルデヒド捕捉剤組成物。
【0014】
[5]
前記一般式(1)で表されるO-置換モノヒドロキシルアミンが、アミノオキシ酢酸(Rが水素原子、nが1)である、[1]乃至[4]のいずれかに記載のアルデヒド捕捉剤組成物。
【0015】
[6]
[1]乃至[5]のいずれかに記載のアルデヒド捕捉剤組成物が、基材に担持されている、アルデヒド捕捉性構造物。
【0016】
[7]
前記の基材が、繊維状物、シート状物、ビーズ状物、スポンジ状物、又はボード状物である、[6]に記載のアルデヒド捕捉性構造物。
【0017】
[8]
[1]乃至[5]のいずれかに記載のアルデヒド捕捉剤組成物を、アルデヒド類を含む気体と接触させることを特徴とする、アルデヒド類の除去方法。
【0018】
[9]
[7]に記載のアルデヒド捕捉性構造物を、アルデヒド類を含む気体と接触させることを特徴とする、アルデヒド類の除去方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明のアルデヒド捕捉剤組成物、又はこれが基材に担持されたアルデヒド捕捉性構造物は、アルデヒド類に対し優れた捕捉効果を発揮し、高温曝露後においても優れたアルデヒド捕捉効果を示す。その結果、自動車内等の高温に曝される環境下においても、不快臭の低減及び生活環境改善の効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」はその両端の数値を含む以上以下の数値範囲を意味する。
【0021】
本発明のアルデヒド捕捉剤組成物は、上記一般式(1)で表されるO-置換モノヒドロキシルアミンと、アルカリ金属塩とを含み、アルカリ金属塩の含有量が、O-置換モノヒドロキシルアミン 1モルに対して、0.2~0.9モルであることを特徴とする。
【0022】
上記一般式(1)で表されるO-置換モノヒドロキシルアミンにおいて、Rは、各々独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
【0023】
当該炭素数1~4のアルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、又はtert-ブチル基等を例示することができる。
【0024】
上記一般式(1)において、nは、1~6の整数を表す。
【0025】
アルデヒド捕捉効果に優れる点で、前記のRは、水素原子であることが好ましく、前記のnは、1~4の整数であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0026】
また、上記一般式(1)で表されるO-置換モノヒドロキシルアミンについては、アルデヒド捕捉効果に優れる点で、アミノオキシ酢酸(Rが水素原子、nが1)であることが好ましい。
【0027】
本発明のアルデヒド捕捉剤組成物に含まれるアルカリ金属塩の具体例としては、特に限定するものではないが、例えば、アルカリ性のアルカリ金属塩が挙げられ、より具体的には、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、又はアルカリ金属カルボン酸塩が挙げられ、より具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、炭酸水素セシウム、クエン酸一リチウム、クエン酸一ナトリウム、クエン酸一カリウム、クエン酸一ルビジウム、クエン酸一セシウム、クエン酸二リチウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸二カリウム、クエン酸二ルビジウム、クエン酸二セシウム、クエン酸三リチウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三ルビジウム、又はクエン酸三セシウム等が挙げられる。
【0028】
本発明のアルデヒド捕捉剤組成物に含まれるアルカリ金属塩については、アルデヒド捕捉効果に優れる点で、アルカリ性のアルカリ金属塩であることが好ましく、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、又はアルカリ金属カルボン酸塩であることがより好ましく、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、炭酸水素セシウム、クエン酸三リチウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三ルビジウム、及びクエン酸三セシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0029】
本発明のアルデヒド捕捉剤組成物に含まれるアルカリ金属塩の含有量としては、上記一般式(1)で表されるO-置換モノヒドロキシルアミン 1モルに対して、アルカリ金属塩が0.2~0.9モルであることを特徴とするが、アルデヒド捕捉効果に優れる点で、アルカリ金属塩が0.3~0.9モルであることが好ましく、アルカリ金属塩が0.4~0.8モルであることがより好ましい。
【0030】
なお、2種以上のアルカリ金属塩を併用する場合、アルカリ金属塩の合計の物質量(モル量)が上記の範囲内であれば、それらの比は目的に応じて任意に調節可能である。
【0031】
本発明のアルデヒド捕捉剤組成物については、水を含んでいてもよい。
【0032】
本発明のアルデヒド捕捉剤組成物が水を含む場合、その水の含有量は、アルデヒド捕捉剤組成物全量を100質量%として、50~99.9質量%であることが好ましく、75~99.8質量%であることがより好ましく、90~99.7質量%であることがより好ましい。
【0033】
本発明のアルデヒド捕捉剤組成物が水を含む場合、上記一般式(1)で表されるO-置換モノヒドロキシルアミン及びアルカリ金属塩の合計含有量は、アルデヒド捕捉剤組成物全量を100質量%として、0.1~50質量%であることが好ましく、0.2~25質量%であることがより好ましく、0.3~10質量%であることがより好ましい。
【0034】
本発明のアルデヒド捕捉剤組成物については、固体状であっても、水溶液状であってもよいが、さらに、上記以外の成分(以下、「添加剤」と称する)を含んでいてもよい。前記添加剤としては、特に限定するものではないが、有機溶媒、バインダー、増粘剤、消泡剤、界面活性剤、抗菌剤、又は防腐剤等が挙げられる。
【0035】
本発明のアルデヒド捕捉剤組成物が、さらに、前記添加剤を含む場合、前記添加剤の含有量は、特に限定するものではないが、例えば、本発明のアルデヒド捕捉剤組成物 100質量%に対して、0.1~30質量%であることが好ましく、0.2~15質量%であることがより好ましい。
【0036】
本発明のアルデヒド捕捉剤組成物は、アルデヒド類を含む気体と接触させることによって、前記アルデヒド類を除去・低減することができる。前記のアルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、又はベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0037】
前記の接触させる方法としては、特に限定するものではないが、前記アルデヒド捕捉剤組成物を静置して接触させる方法、スプレーして接触させる方法、ミスト形成させて接触させる方法、又は基材に塗布したうえで接触させる方法等が挙げられる。
【0038】
本発明のアルデヒド捕捉性構造物は、本発明のアルデヒド捕捉剤組成物が、基材に担持されて製造されるものを表す。
【0039】
本発明のアルデヒド捕捉性構造物の基材としては、特に限定されないが、例えば、繊維状物、シート状物、ビーズ状物、スポンジ状物、又はボード状物を挙げることができる。
【0040】
より詳細には、例えば、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリエチレン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、フッ素系繊維、アラミド系繊維、サルフォン系繊維、レーヨン、アセテート、木綿、羊毛、絹、麻、ガラス繊維、炭素繊維、セラミックス繊維、これらの混合繊維、これらの繊維からなる織物、これらの繊維からなる編物、これらの繊維からなる不織布、これらの繊維からなる糸、これらの繊維からなるロープ、これらの繊維からなる紐、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、天然ゴム、及び合成ゴムからなる群から選ばれる素材からなるシート状物、同ビーズ状物、同スポンジ状物、木材、合板、又は石膏ボード等が挙げられる。
【0041】
本発明のアルデヒド捕捉性構造物は、目的に応じて任意の用途で使用することができる。用途は特に限定されないが、例えば、衣類用、カーテン用、カーペット用、壁装材用、自動車内装材用、又は家具用等の用途で使用することができる。
【0042】
本発明のアルデヒド捕捉性構造物の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、上記した基材へ前記のアルデヒド捕捉剤組成物を塗布する方法、上記した基材を前記のアルデヒド捕捉剤組成物へ浸す方法等が挙げられる。
【0043】
基材へのアルデヒド捕捉剤組成物の担持量は、目的に応じて任意に調節可能であり、特に限定するものではないが、0.1~100g/m2の範囲が好ましく、0.5~50g/m2の範囲がさらに好ましい。
【0044】
アルデヒド捕捉剤組成物を基材に担持した後、必要に応じて得られたアルデヒド捕捉性構造物を乾燥させてもよい。乾燥条件は、目的に応じて任意に調節可能であり、特に限定するものではないが、例えば、温度として0~200℃の範囲、時間として数分~48時間の範囲である。
【0045】
本発明のアルデヒド捕捉性構造物については、アルデヒド類を含む気体と接触することによって、アルデヒド類の除去・低減が可能になる。
【0046】
接触させる方法としては、特に限定するものではないが、前記のアルデヒド捕捉性構造物を、アルデヒド類を含む気体中に設置する方法や、前記のアルデヒド捕捉性構造物に対して、アルデヒド類を含む気体を吹き付ける方法が挙げられる。
【実施例0047】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されるものではない。
【0048】
なお、用いた試薬等は断りのない限り市販品を用いた。ポリエチレンイミンは、エポミンP-1000(日本触媒社製、分子量7万)を用いた。
【0049】
実施例1
<アルデヒド捕捉剤組成物、及びアルデヒド捕捉性構造物の調製>
アミノオキシ酢酸 0.36g、水酸化リチウム 0.06g、及び水 16gを、混合し、アミノオキシ酢酸 2.2質量%、水酸化リチウム 0.4質量%、及び水 97.4質量%からなるアルデヒド捕捉剤組成物を調製した。このアルデヒド捕捉剤組成物を、綿100%の繊維(縦5cm×横10cm)に担持量20g/m2となるように塗布し、熱風式乾燥機(アドバンテック社製、DRJ433DA)を用いて60℃で30分間乾燥することにより、アミノオキシ酢酸 2.2mg及び水酸化リチウム 0.4mgからなるアルデヒド捕捉剤組成物が担持されたアルデヒド捕捉性構造物を得た。このアルデヒド捕捉性構造物を「加熱前試験布」と称する。一方、加熱前試験布を、上記の熱風式乾燥機を用いて100℃で24時間加熱することで、加熱処理を施したアルデヒド捕捉性構造物を得た。このアルデヒド捕捉性構造物を「加熱後試験布」と称する。
【0050】
<アセトアルデヒド捕捉試験及びアセトアルデヒド捕捉速度定数の算出>
前記の各アルデヒド捕捉性構造物を、それぞれ別々の10Lのテドラーバッグに封入し、次いで前記テドラーバッグにアセトアルデヒド濃度が10ppm(=アセトアルデヒド初濃度)の窒素ガス5Lを加えた。室温で2時間静置後、テドラーバック内のガスを2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)を担持したカートリッジ(富士フィルム和光純薬社製、プレセップ-C DNPH)に吸着させた。このカートリッジをアセトニトリルで処理し、DNPH-アルデヒド縮合体を溶出させた。続いて、溶出液中のDNPH-アルデヒド縮合体を液体クロマトグラフ(島津製作所社製、LC-2030C Plus)を用いて定量することによって、テドラーバッグ内の残存アセトアルデヒド濃度を算出した。また、残存アセトアルデヒド濃度の自然対数値を経過時間に対してプロットし、近似直線の傾きからアセトアルデヒド捕捉速度定数を算出した。
【0051】
さらに、次に示す式を用いて、アセトアルデヒド捕捉率を算出した。
【0052】
アセトアルデヒド捕捉率[%]=[(アセトアルデヒド初濃度-残存アセトアルデヒド濃度)÷アセトアルデヒド初濃度]×100
実施例2
実施例1において、水酸化リチウム 0.06gを用いる代わりに、水酸化ナトリウム 0.15gを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、アルデヒド捕捉剤組成物及びアルデヒド捕捉性構造物を製造し、アセトアルデヒド捕捉試験を行った。
【0053】
実施例3
実施例1において、水酸化リチウム 0.06gを用いる代わりに、水酸化カリウム 0.17gを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、アルデヒド捕捉剤組成物及びアルデヒド捕捉性構造物を製造し、アセトアルデヒド捕捉試験を行った。
【0054】
実施例4
実施例1において、水酸化リチウム 0.06gを用いる代わりに、水酸化セシウム 0.51gを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、アルデヒド捕捉剤組成物及びアルデヒド捕捉性構造物を製造し、アセトアルデヒド捕捉試験を行った。
【0055】
実施例5
実施例1において、水酸化リチウム 0.06gを用いる代わりに、炭酸セシウム 0.55gを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、アルデヒド捕捉剤組成物及びアルデヒド捕捉性構造物を製造し、アセトアルデヒド捕捉試験を行った。
【0056】
比較例1
実施例1において、アミノオキシ酢酸 0.36g、水酸化リチウム 0.06g、及び水 16gを混合する代わりに、アミノオキシ酢酸 0.36g、及び水 12gを混合した以外は、実施例1と同様の操作を行い、アルデヒド捕捉剤組成物及びアルデヒド捕捉性構造物を製造し、アセトアルデヒド捕捉試験を行った。
【0057】
比較例2
実施例1において、アミノオキシ酢酸 0.36g、水酸化リチウム 0.06g、及び水 16gを混合する代わりに、アミノオキシ酢酸 0.36g、ポリエチレンイミン 0.36g、及び水 11gを混合した以外は、実施例1と同様の操作を行い、アルデヒド捕捉剤組成物及びアルデヒド捕捉性構造物を製造し、アセトアルデヒド捕捉試験を行った。
【0058】
比較例3
実施例1において、アミノオキシ酢酸 0.36g、水酸化リチウム 0.06g、及び水 16gを混合する代わりに、アミノオキシ酢酸 0.36g、水酸化ナトリウム 0.16g、及び水 16gを混合した以外は、実施例1と同様の操作を行い、アルデヒド捕捉剤組成物及びアルデヒド捕捉性構造物を製造し、アセトアルデヒド捕捉試験を行った。
【0059】
表1から明らかなように、本発明のアルデヒド捕捉性構造物は、既存のアルデヒド捕捉剤組成物が担持されたアルデヒド捕捉性構造物と比較して高温暴露後においても優れたアルデヒド捕捉性能を示した。
【0060】
実施例6
<アルデヒド捕捉剤組成物、及びアルデヒド捕捉性構造物の調製>
アミノオキシ酢酸 3g、水酸化亜鉛 2g、クエン酸三ナトリウム二水和物 9g、及び水 86gを、混合し、アミノオキシ酢酸 3質量%、水酸化亜鉛 2質量%、クエン酸三ナトリウム二水和物 9質量%、及び水 86質量%からなるアルデヒド捕捉剤組成物(以下、「実施例6組成物」と称する)を調製した。実施例6組成物 0.1gを、綿100%の繊維(縦5cm×横10cm)に塗布し、熱風式乾燥機(アドバンテック社製、DRJ433DA)を用いて60℃で30分間乾燥することにより、アミノオキシ酢酸 100質量部、水酸化亜鉛 67質量部、及びクエン酸三ナトリウム二水和物 300質量部からなるアルデヒド捕捉剤組成物が担持されたアルデヒド捕捉性構造物を得た。このアルデヒド捕捉性構造物を「加熱前試験布」と称する。一方、上記の熱風式乾燥機と同じ熱風式乾燥機の中で130℃に予熱した2枚の金属板(360×270mm)に加熱前試験布を挟み、383Paの加圧下にて2時間加熱することで、加熱処理を施したアルデヒド捕捉性構造物を得た。このアルデヒド捕捉性構造物を「加熱後試験布」と称する。
【0061】
<アセトアルデヒド捕捉試験及びアセトアルデヒド捕捉速度定数の算出>
前記の各アルデヒド捕捉性構造物(加熱前試験布、及び加熱後試験布)を、それぞれ別々の10Lのテドラーバッグに封入し、次いで前記テドラーバッグにアセトアルデヒド濃度が10ppmの窒素ガス5Lを加えた(アルデヒド初濃度=10ppm)。室温で2時間静置後、テドラーバック内のガスを2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)を担持したカートリッジ(富士フィルム和光純薬社製、プレセップ-C DNPH)に吸着させた。このカートリッジをアセトニトリルで処理し、DNPH-アルデヒド縮合体を溶出させた。続いて、溶出液中のDNPH-アルデヒド縮合体を液体クロマトグラフ(島津製作所社製、LC-2030C Plus)を用いて定量することによって、テドラーバッグ内に残存した全アセトアルデヒド量を定量し、前記定量値を5Lの容量で除することによって、残存アセトアルデヒド濃度を算出した。さらに、次に示す式を用いて、アセトアルデヒド捕捉率を算出した。
【0062】
アセトアルデヒド捕捉率[%]=[(アセトアルデヒド初濃度-残存アセトアルデヒド濃度)÷アセトアルデヒド初濃度]×100
また、上記のアセトアルデヒド捕捉試験の方法に従って、別途、残存アセトアルデヒド濃度の経時変化を測定し、残存アセトアルデヒド濃度の自然対数値を経過時間に対してプロットし、近似直線の傾きから速度定数(アセトアルデヒド捕捉速度定数)を算出した。
【0063】
上記の結果を表2に示した。
【0064】
比較例4
実施例6において用いた実施例6組成物 0.1gを、上記の比較例1において、アミノオキシ酢酸 0.36g、及び水 12gを混合して調製された、アミノオキシ酢酸 3質量%、及び水 97質量%からなるアルデヒド捕捉剤組成物 0.1gに変更した以外は、実施例6と同様の操作を行った。結果を表2に示した。
【0065】
表2から明らかなように、本発明のアルデヒド捕捉剤組成物が担持されたアルデヒド捕捉性構造物は、既存のアルデヒド捕捉剤組成物が担持されたアルデヒド捕捉性構造物と比較して、高温暴露後においても優れたアルデヒド捕捉性能を示した。
【0066】
【0067】
実施例7
<アルデヒド捕捉剤組成物の加熱処理>
上記の実施例3で調製した、実施例3組成物 20gを、密封状態にして熱風式乾燥機(アドバンテック社製、DRJ433DA)内に静置し、50℃で180日間加熱した。加熱前後の実施例3組成物を、それぞれ別々に、綿100%の繊維(縦5cm×横10cm)に担持量20g/m2となるように塗布し、熱風式乾燥機(アドバンテック社製、DRJ433DA)を用いて60℃で30分間乾燥することにより、アミノオキシ酢酸 2.2mg及び水酸化カリウム 1.0mgからなるアルデヒド捕捉剤組成物が担持されたアルデヒド捕捉性構造物を得た。
【0068】
<アセトアルデヒド捕捉試験>
前記のアルデヒド捕捉性構造物を、10Lテドラーバッグに封入し、次いで前記テドラーバッグにアセトアルデヒド濃度が10ppmの窒素ガス5Lを加えた(アルデヒド初濃度=10ppm)。室温で2時間静置後、テドラーバック内のガスを2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)を担持したカートリッジ(富士フィルム和光純薬社製、プレセップ(登録商標)-C DNPH)に吸着させた。このカートリッジをアセトニトリルで処理し、DNPH-アルデヒド縮合体を溶出させた。続いて、溶出液中のDNPH-アルデヒド縮合体を液体クロマトグラフ(島津製作所社製、LC-2030C Plus)を用いて定量することによって、テドラーバッグ内に残存した全アセトアルデヒド量を定量し、前記定量値を5Lの容量で除することによって、残存アセトアルデヒド濃度を算出した。さらに、次に示す式を用いて、アセトアルデヒド捕捉率を算出した。
【0069】
アセトアルデヒド捕捉率[%]=[(アセトアルデヒド初濃度-残存アセトアルデヒド濃度)÷アセトアルデヒド初濃度]×100
また、上記のアセトアルデヒド捕捉試験の方法に従って、別途、残存アセトアルデヒド濃度の経時変化を測定し、残存アセトアルデヒド濃度の自然対数値を経過時間に対してプロットし、近似直線の傾きから速度定数(アセトアルデヒド捕捉速度定数)を算出した。
【0070】
比較例5
実施例7において用いた実施例3組成物 20gを、上記の比較例1で調製したアルデヒド捕捉剤組成物と同じ組成である、アミノオキシ酢酸 3質量%、及び水 97質量%からなるアルデヒド捕捉剤組成物 20gに変更した以外は、実施例7と同様の操作を行った。上記の結果を表3に示した。
【0071】
表3から明らかなように、本発明のアルデヒド捕捉剤組成物は、既存のアルデヒド捕捉剤組成物と比較して、高温暴露後においてもアルデヒドに対して優れたアルデヒド捕捉性能を示した。
【0072】
【0073】
実施例8
<アルデヒド捕捉剤組成物の加熱処理>
上記の実施例6で調製した、実施例6組成物 20gを、密封状態にして熱風式乾燥機(アドバンテック社製、DRJ433DA)内に静置し、50℃で60日間加熱した。
【0074】
<アセトアルデヒド捕捉試験>
5Lのテドラーバッグにアセトアルデヒド濃度が10ppmの窒素ガス3Lを加え(アルデヒド初濃度=10ppm)、次いで前記の実施例6組成物について、加熱前後のものを、それぞれ別々に、50μL加えた。室温で2時間静置後、テドラーバック内のガスを2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)を担持したカートリッジ(富士フィルム和光純薬社製、プレセップ(登録商標)-C DNPH)に吸着させた。このカートリッジをアセトニトリルで処理し、DNPH-アルデヒド縮合体を溶出させた。続いて、溶出液中のDNPH-アルデヒド縮合体を液体クロマトグラフ(島津製作所社製、LC-2030C Plus)を用いて定量することによって、テドラーバッグ内に残存した全アセトアルデヒド量を定量し、前記定量値を5Lの容量で除することによって、残存アセトアルデヒド濃度を算出した。さらに、次に示す式を用いて、アセトアルデヒド捕捉率を算出した。
【0075】
アセトアルデヒド捕捉率[%]=[(アセトアルデヒド初濃度-残存アセトアルデヒド濃度)÷アセトアルデヒド初濃度]×100
また、上記のアセトアルデヒド捕捉試験の方法に従って、別途、残存アセトアルデヒド濃度の経時変化を測定し、残存アセトアルデヒド濃度の自然対数値を経過時間に対してプロットし、近似直線の傾きから速度定数(アセトアルデヒド捕捉速度定数)を算出した。
【0076】
上記の結果を表4に示した。
【0077】
表4から明らかなように、本発明のアルデヒド捕捉剤組成物は、高温暴露後においてもアルデヒドに対して優れた捕捉性能を示した。
【0078】
本発明のアルデヒド捕捉剤組成物、又はこれが基材に担持されたアルデヒド捕捉性構造物は、アルデヒド類に対し優れた捕捉効果を発揮し、高温曝露後においても捕捉効果の低減が抑制される。その結果、不快臭の低減及び生活環境改善の効果を奏する。