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特開2024-84177リンク作動装置、および、リンク作動装置の駆動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084177
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】リンク作動装置、および、リンク作動装置の駆動方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 21/02 20060101AFI20240618BHJP
   F16H 21/46 20060101ALI20240618BHJP
   H02P 5/46 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
F16H21/02
F16H21/46
H02P5/46 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198299
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 朗弘
(72)【発明者】
【氏名】福丸 浩史
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 俊樹
【テーマコード(参考)】
3J062
5H572
【Fターム(参考)】
3J062AA39
3J062AB28
3J062AC10
3J062BA14
3J062CB04
3J062CB30
3J062CB33
3J062CG83
5H572DD01
5H572EE03
5H572GG01
5H572JJ03
5H572JJ17
5H572JJ25
5H572LL33
5H572LL43
5H572PP01
(57)【要約】
【課題】パラレルリンク機構を有するリンク作動装置において、先端の負荷の変化を考慮しつつ、位置決め精度を向上する。
【解決手段】リンク作動装置50は、基端側のリンクハブ2と、先端側のリンクハブ3と、リンクハブ2とリンクハブ3とを連結するリンク機構4と、アクチュエータ51と、制御装置100とを備える。アクチュエータ51は、リンク機構4の各々に対して設けられるモータを含む。制御装置100は、リンクハブ3の稼働範囲における目標移動位置に対応して、リンクハブ3に加わる負荷ごとに各モータの駆動指令値が記憶された複数の補正マップを記憶しており、リンクハブ3に加わっている現在の負荷に応じて、複数の補正マップのうち少なくとも1つのマップを用いて各モータの駆動指令値を決定する。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端側の第1リンクハブと、
先端側の第2リンクハブと、
前記第1リンクハブと前記第2リンクハブとを連結する少なくとも3つのリンク機構と、
少なくとも2つのリンク機構を駆動するための駆動装置と、
前記駆動装置を制御する制御装置とを備え、
前記駆動装置は、前記少なくとも2つのリンク機構の各々に対して設けられるモータを含み、
前記少なくとも3つのリンク機構の各々は、
前記第1リンクハブに対して回転可能に連結された第1端部リンク部材と、
前記第2リンクハブに対して回転可能に連結された第2端部リンク部材と、
前記第1端部リンク部材および前記第2端部リンク部材の各々に対して回転可能に連結された中央リンク部材とを含み、
前記少なくとも3つのリンク機構において、
前記第1リンクハブと前記第1端部リンク部材との回転対偶部の少なくとも3つの中心軸および、前記中央リンク部材の一方端の回転対偶部の中心軸は、第1リンクハブ中心点で交わり、
前記第2リンクハブと前記第2端部リンク部材との回転対偶部の少なくとも3つの中心軸および前記中央リンク部材の他方端の回転対偶部の中心軸は、第2リンクハブ中心点で交わり、
前記制御装置は、
前記第2リンクハブの稼働範囲における目標移動位置に対応して、前記第2リンクハブに加わる負荷ごとに各モータの駆動指令値が記憶された補正マップを記憶しており、
前記第2リンクハブに加わっている現在の負荷に応じて、記憶された複数の補正マップのうち少なくとも1つのマップを用いて各モータの駆動指令値を決定する、リンク作動装置。
【請求項2】
前記制御装置は、目標移動位置と前記第2リンクハブに加わっている現在の負荷との情報に基づいて、前記複数の補正マップを補間したマップを用いて各モータの駆動指令値を決定する、請求項1に記載のリンク作動装置。
【請求項3】
前記制御装置は、目標移動位置と前記第2リンクハブに加わっている現在の負荷との情報に基づいて、前記複数の補正マップうち現在の負荷に近い負荷に対応するマップを選択して各モータの駆動指令値を決定する、請求項1に記載のリンク作動装置。
【請求項4】
前記複数の補正マップの各々は、各負荷について同じ目標移動位置に対して異なった方向から位置決めした際の各モータの駆動指令値が記憶された複数のマップを含む、請求項2または請求項3に記載のリンク作動装置。
【請求項5】
前記複数の補正マップの各々は、各負荷について同じ目標移動位置に対して異なった方向から位置決めした際の各モータの駆動指令値の平均値が記憶されたマップである、請求項2または請求項3に記載のリンク作動装置。
【請求項6】
リンク作動装置を駆動するための方法であって、
前記リンク作動装置は、
基端側の第1リンクハブと、
先端側の第2リンクハブと、
前記第1リンクハブと前記第2リンクハブとを連結する少なくとも3つのリンク機構と、
少なくとも2つのリンク機構を駆動するための駆動装置とを備え、
前記駆動装置は、前記少なくとも2つのリンク機構の各々に対して設けられるモータを含み、
前記少なくとも3つのリンク機構の各々は、
前記第1リンクハブに対して回転可能に連結された第1端部リンク部材と、
前記第2リンクハブに対して回転可能に連結された第2端部リンク部材と、
前記第1端部リンク部材および前記第2端部リンク部材の各々に対して回転可能に連結された中央リンク部材とを含み、
前記少なくとも3つのリンク機構において、
前記第1リンクハブと前記第1端部リンク部材との回転対偶部の少なくとも3つの中心軸および、前記中央リンク部材の一方端の回転対偶部の中心軸は、第1リンクハブ中心点で交わり、
前記第2リンクハブと前記第2端部リンク部材との回転対偶部の少なくとも3つの中心軸および前記中央リンク部材の他方端の回転対偶部の中心軸は、第2リンクハブ中心点で交わり、
前記方法は、
前記第2リンクハブの稼働範囲における目標移動位置に対応して、前記第2リンクハブに加わる負荷ごとに各モータの駆動指令値が記憶された補正マップを生成して記憶するステップと、
前記第2リンクハブに加わっている現在の負荷に応じて、記憶された複数の補正マップのうち少なくとも1つのマップを用いて各モータの駆動指令値を決定するステップとを含む、方法。
【請求項7】
前記方法は、目標移動位置と前記第2リンクハブに加わっている現在の負荷との情報に基づいて、前記複数の補正マップを補間したマップを用いて各モータの駆動指令値を決定するステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、目標移動位置と前記第2リンクハブに加わっている現在の負荷との情報に基づいて、前記複数の補正マップうち現在の負荷に近い負荷に対応するマップを選択して各モータの駆動指令値を決定するステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の補正マップの各々は、各負荷について同じ目標移動位置に対して異なった方向から位置決めした際の各モータの駆動指令値が記憶された複数のマップを含む、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の補正マップの各々は、各負荷について同じ目標移動位置に対して異なった方向から位置決めした際の各モータの駆動指令値の平均値が記憶されたマップである、請求項7または請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リンク作動装置、およびその駆動方法に関し、より特定的には、リンク作動装置の位置決め精度を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
リンク作動装置は、精密で広範な作動範囲を必要とする医療機器および産業機器等に用いられる。リンク作動装置は、駆動源とリンク機構からなる。リンク機構の一種としてパラレルリンク機構が知られている。コンパクトな構成でありながら、精密で広範な作動範囲の動作が可能なリンク作動装置として、例えば、特開2015-194207号公報(特許文献1)に示されるようなものが提案されている。このようなリンク作動装置は、たとえば、産業用ロボットのアーム先端に取り付けられて、エンドエフェクタの姿勢を制御する手首関節機構として用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-194207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リンク作動装置を駆動する場合、入力された目標位置(目標とする移動位置)から各リンクを駆動するための駆動指令値を逆変換により算出することが必要となる。しかしながら、リンク作動装置は複数のリンク機構の組み合わせによる複雑な構成を有しているため、実機ベースでは、実機固有の製造誤差、組み立て誤差、およびリンク機構のたわみの影響などによって、機体の動かし方に依存した位置決め誤差が機体ごとに生じ得る。
【0005】
さらに、リンク作動装置は、エンドエフェクタが取付けられること、あるいはワークを把持することによって先端の負荷が変化する影響により、絶対位置決め精度が低下し得る。特開2015-194207号公報(特許文献1)のようなリンク作動装置では、先端の負荷が変化することが考慮されていないため、理論的な逆運動学関数により導出された駆動指令値では、所望の位置決め精度が達成できない場合が生じ得る。
【0006】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、パラレルリンク機構を有するリンク作動装置において、先端の負荷の変化を考慮しつつ、位置決め精度を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の局面に係るリンク作動装置は、基端側の第1リンクハブと、先端側の第2リンクハブと、第1リンクハブと第2リンクハブとを連結する少なくとも3つのリンク機構と、少なくとも2つのリンク機構を駆動するための駆動装置と、駆動装置を制御する制御装置とを備える。駆動装置は、少なくとも2つのリンク機構の各々に対して設けられるモータを含む。少なくとも3つのリンク機構の各々は、第1リンクハブに対して回転可能に連結された第1端部リンク部材と、第2リンクハブに対して回転可能に連結された第2端部リンク部材と、第1端部リンク部材および第2端部リンク部材の各々に対して回転可能に連結された中央リンク部材とを含む。少なくとも3つのリンク機構において、第1リンクハブと第1端部リンク部材との回転対偶部の少なくとも3つの中心軸および、中央リンク部材の一方端の回転対偶部の中心軸は、第1リンクハブ中心点で交わり、第2リンクハブと第2端部リンク部材との回転対偶部の少なくとも3つの中心軸および中央リンク部材の他方端の回転対偶部の中心軸は、第2リンクハブ中心点で交わる。制御装置は、第2リンクハブの稼働範囲における目標移動位置に対応して、第2リンクハブに加わる負荷ごとに各モータの駆動指令値が記憶された補正マップを記憶しており、第2リンクハブに加わっている現在の負荷に応じて、記憶された複数の補正マップのうち少なくとも1つのマップを用いて各モータの駆動指令値を決定する。
【0008】
本開示の第2の局面に係る方法は、リンク作動装置を駆動するための方法に関する。リンク作動装置は、基端側の第1リンクハブと、先端側の第2リンクハブと、第1リンクハブと第2リンクハブとを連結する少なくとも3つのリンク機構と、少なくとも2つのリンク機構を駆動するための駆動装置とを備える。駆動装置は、少なくとも2つのリンク機構の各々に対して設けられるモータを含む。少なくとも3つのリンク機構の各々は、第1リンクハブに対して回転可能に連結された第1端部リンク部材と、第2リンクハブに対して回転可能に連結された第2端部リンク部材と、第1端部リンク部材および第2端部リンク部材の各々に対して回転可能に連結された中央リンク部材とを含む。少なくとも3つのリンク機構において、第1リンクハブと第1端部リンク部材との回転対偶部の少なくとも3つの中心軸および、中央リンク部材の一方端の回転対偶部の中心軸は、第1リンクハブ中心点で交わり、第2リンクハブと第2端部リンク部材との回転対偶部の少なくとも3つの中心軸および中央リンク部材の他方端の回転対偶部の中心軸は、第2リンクハブ中心点で交わる。方法は、第2リンクハブの稼働範囲における目標移動位置に対応して、第2リンクハブに加わる負荷ごとに各モータの駆動指令値が記憶された補正マップを生成して記憶するステップと、第2リンクハブに加わっている現在の負荷に応じて、記憶された複数の補正マップのうち少なくとも1つのマップを用いて各モータの駆動指令値を決定するステップとを含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係るリンク作動装置によれば、第2リンクハブに加わっている現在の負荷に応じて、記憶された複数の補正マップのうち少なくとも1つのマップを用いて各モータの駆動指令値が決定される。このように、本開示に係るリンク作動装置によれば、先端の第2リンクハブの負荷を考慮して各モータの駆動指令値を決定することができる。したがって、リンク作動装置において、先端の負荷が変化したとしても位置決め精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】リンク作動装置の、ある姿勢における正面図である。
図2】リンク作動装置の構成のうち、1つのリンク機構に対応する構成を代表的に示した図である。
図3】パラレルリンク機構の基端側のリンクハブ、基端側の端部リンク部材を抽出して示した断面図である。
図4】パラレルリンク機構の3つのリンク機構のうちの1つを抽出して直線で表現した模式図である。
図5】基端側のリンクハブ中心軸と先端側のリンクハブ中心軸が同一線上にある状態(原点姿勢)のリンク作動装置の斜視図である。
図6】原点姿勢におけるリンク作動装置の模式図である。
図7】任意の姿勢(折れ角θ、旋回角φ)のリンク作動装置の斜視図である。
図8図7のモデル図である。
図9】リンク作動装置の動作空間を示す図である。
図10】準備工程におけるリンク作動装置の構成を説明するための図である。
図11】実施の形態1の補正マップを生成する処理を説明するためのフローチャートである。
図12】誤差補正量の導出処理を説明するためのフローチャートである。
図13】旋回角を固定したときの折れ角とモータ回転角度との関係を示す図である。
図14】リンク作動装置を動作させる場合の処理を説明するためのフローチャートである。
図15】変形例におけるリンク作動装置を動作させる場合の処理を説明するためのフローチャートである。
図16】実施の形態2の目標値と方向との関係を説明するための図である。
図17】実施の形態2の補正マップを生成する処理を説明するためのフローチャートである。
図18】実施の形態3の補正マップを生成する処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0012】
[実施の形態1]
(リンク作動装置の構成)
本開示の一実施形態に係るパラレルリンク機構1を備えたリンク作動装置50の構成を図1図3を参照して説明する。
【0013】
図1は、リンク作動装置50のある姿勢における正面図である。図1を参照して、リンク作動装置50は、パラレルリンク機構1と、パラレルリンク機構1の姿勢変更用のアクチュエータ51と、アクチュエータ51の駆動力を減速してパラレルリンク機構1に伝達する減速機構52と、アクチュエータ51を制御する制御装置100とを備える。
【0014】
パラレルリンク機構1は、基端側のリンクハブ2に対し先端側のリンクハブ3を3つのリンク機構4を介して姿勢変更可能に連結したものである。なお、リンク機構4の数は、4組以上であっても良い。先端側のリンクハブ3には、エンドエフェクタ61が設置される。
【0015】
制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)101と、メモリ102とを含む。CPU101は、メモリ102に記憶されたプログラムを実行することによって、パラレルリンク機構1の姿勢を制御する。より具体的には、制御装置100は、外部から送信されるパラレルリンク機構1の姿勢を定める目標位置指令(折れ角θ,旋回角φ)を実現するための各リンク機構4の回転角度βを演算し、当該回転角度βとなるようにアクチュエータ51を制御する。
【0016】
図2は、リンク作動装置50の構成のうち、1つのリンク機構4に対応する構成を代表的に示した図である。図2を参照して、各リンク機構4は、基端側の端部リンク部材5と、先端側の端部リンク部材6と、中央リンク部材7とを含み、4つの回転対偶からなる4節連鎖のリンク機構を構成する。基端側の端部リンク部材5は、一端が基端側のリンクハブ2に回転自在に連結されている。同様に、先端側の端部リンク部材6は、一端が先端側のリンクハブ3に回転自在に連結されている。中央リンク部材7の一端には、基端側の端部リンク部材5の他端が回転自在に連結されている。中央リンク部材7の他端には、先端側の端部リンク部材6の他端が回転自在に連結されている。
【0017】
図1図2に示すように、基端側のリンクハブ2は、平板状の土台10と、この土台10に円周方向に等間隔で配置された3個の回転軸連結部材11とで構成される。各回転軸連結部材11には、軸心がリンクハブ2の中心軸QAと交差する回転軸体12が回転自在に連結されている。この回転軸体12には、基端側の端部リンク部材5の一端が連結される。基端側の端部リンク部材5の他端には、中央リンク部材7の一端に回転自在に連結された回転軸体15が連結される。本実施例において、回転軸連結部材11は土台10に円周方向に等間隔で配置されているが、必ずしもその限りではない。
【0018】
リンクハブ3の回転軸体22および中央リンク部材7の回転軸体25も、上記回転軸体12,15とそれぞれ同じ形状である。
【0019】
図1図2に示すように、先端側のリンクハブ3は、平板状の先端部材20と、先端部材20に円周方向に等間隔に配置された3個の回転軸連結部材21とで構成される。各回転軸連結部材21には、軸心がリンクハブ3の中心軸QBと交差する回転軸体22が回転自在に連結されている。このリンクハブ3の回転軸体22には、先端側の端部リンク部材6の一端が連結される。先端側の端部リンク部材6の他端には、中央リンク部材7の他端に回転自在に連結された回転軸体25が連結される。
【0020】
端部リンク部材5と中央リンク部材7との回転対偶の中心軸O2(A)と、端部リンク部材6と中央リンク部材7との回転対偶の中心軸O2(B)とは、点Aにおいて軸角γで交差する。
【0021】
図3は、パラレルリンク機構の基端側のリンクハブ2、基端側の端部リンク部材5を抽出して示した断面図である。図3には、図1の姿勢のパラレルリンク機構の先端側のリンクハブ3、先端側の端部リンク部材6および中央リンク部材7を取り除いた状態が示されている。なお、3つの端部リンク部材5の各々については、両端の回転対偶部の回転軸O1,O2を含む面における断面が示されている。
【0022】
図1および図3を参照して、3つのリンク機構4のそれぞれに、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の姿勢を任意に変更する姿勢変更用のアクチュエータ51が設けられる。各アクチュエータ51には減速機構52が設けられている。各アクチュエータ51は、ロータリアクチュエータであり、基端側のリンクハブ2の土台10の上面に、回転軸体12と同軸上に設置されている。アクチュエータ51と減速機構52は一体に設けられ、モータ固定部材53により減速機構52が土台10に固定されている。なお、3つのリンク機構4のうち少なくとも2つにアクチュエータ51を設ければ、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の姿勢を確定することができる。
【0023】
図3において、減速機構52はフランジ継手を形成する大径の出力軸体52aを有する。出力軸体52aの先端面は、出力軸体52aの中心線と直交する平面状のフランジ面54となっている。出力軸体52aは、スペーサ55を介して、基端側の端部リンク部材5の外径側の回転軸支持部材31にボルト56で接続されている。リンクハブ2と端部リンク部材5の回転対偶部の回転軸体12は、大径部12aと小径部12bとからなる。小径部12bは軸受の内輪に挿通され、大径部12aは減速機構52の出力軸体52aに設けられた内径溝57に嵌っている。
【0024】
端部リンク部材5は、L字形状を有する。端部リンク部材5は、1つの湾曲部材30と、この湾曲部材30の両端の外径側の側面および内径側の側面にそれぞれ固定された計4つの回転軸支持部材31とで構成される。4つの回転軸支持部材31は同一形状ではなく、基端側のリンクハブ2との回転対偶部に設けられる外径側の回転軸支持部材31Aは、減速機構52のフランジ面54とスペーサ55を介して結合されるフランジ取付面58を有する。本実施例において、端部リンク部材5は、L字形状を有しているが必ずしもL字形状である必要はない。
【0025】
このリンク作動装置50には、例えば図1に示すように、先端側のリンクハブ3にエンドエフェクタ61が設置される。アクチュエータ51が基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の姿勢を変更することによって、エンドエフェクタ61の2自由度の角度を制御することができる。
【0026】
図3には、3つのリンク機構4について、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の回転対偶の中心軸O1と、端部リンク部材5と中央リンク部材7との回転対偶の中心軸O2と、リンクハブ中心点PAとの関係が示されている。図3に示されるように、3つのアクチュエータ51の回転軸である3本の中心軸O1とリンクハブ中心点PAとは同一平面にある。図2に示すようにこの平面上のリンクハブ中心点PAに対して斜め上方向から中心軸O2が通過する。先端側のリンクハブ3および先端側の端部リンク部材6の形状と、これらの位置関係(図示せず)も図3に示した基端側と同様である。図3の例では、中心軸O1と中心軸O2とが成す角度α(アーム角)が90°とされているが、角度αは90°以外であっても良い。
【0027】
パラレルリンク機構1は、2つの球面リンク機構を組み合わせた構造である。リンクハブ2と端部リンク部材5の回転対偶の中心軸O1と、端部リンク部材5と中央リンク部材7の回転対偶の中心軸O2とは、基端側においてリンクハブ中心点PA(図2図3)で交差している。また、基端側において、リンクハブ2と端部リンク部材5の回転対偶とリンクハブ中心点PAとの間の軸O1に沿う距離は、端部リンク部材5と中央リンク部材7の回転対偶とリンクハブ中心点PAとの間の軸O2に沿う距離と同じである。
【0028】
図3のような図示は省略するが、同様に、リンクハブ3と端部リンク部材6の回転対偶の中心軸と、端部リンク部材6と中央リンク部材7の回転対偶の中心軸O2(B)とは、先端側においてリンクハブ中心点PB(図2)で交差している。また、先端側において、リンクハブ3と端部リンク部材6の各回転対偶とリンクハブ中心点PBとの距離は、端部リンク部材6と中央リンク部材7の回転対偶とリンクハブ中心点PBとの距離と同じである。
【0029】
図4は、パラレルリンク機構1の3つのリンク機構4のうちの1つを抽出して直線で表現した模式図である。図4を用いて折れ角θと旋回角φについて説明する。
【0030】
3つのリンク機構4は、幾何学的に同一の対称形状を成す。幾何学的に同一の対称形状とは、図4に示すように、端部リンク部材5,6および中央リンク部材7を直線で表現し回転対偶を丸で示した幾何学モデルが、二等分面に対して、基端側部分と先端側部分が対称を成す形状であることを言う。本実施の形態のパラレルリンク機構1は回転対称タイプで、基端側のリンクハブ2および基端側の端部リンク部材5と、先端側のリンクハブ3および先端側の端部リンク部材6との位置関係が、中央リンク部材7の中心線C(図2のPL1に相当する)に対して回転対称となる位置構成になっている。
【0031】
基端側のリンクハブ2と先端側のリンクハブ3と3つのリンク機構4とによって、基端側のリンクハブ2に対し先端側のリンクハブ3が直交2軸周りに回転自在な2自由度機構が構成される。2自由度機構は、言い換えると、基端側のリンクハブ2に対して先端側のリンクハブ3の姿勢を、2自由度で自在に変更可能な機構である。この2自由度機構は、コンパクトでありながら、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の可動範囲を広くすることができる。
【0032】
例えば、リンクハブ中心点PAを通り、リンクハブ2と端部リンク部材5の回転対偶の中心軸O1(図3)と直角に交わる直線をリンクハブ2の中心軸QAとする。また、リンクハブ中心点PBを通り、リンクハブ3と端部リンク部材6の回転対偶の中心軸(図示せず)と直角に交わる直線をリンクハブ3の中心軸QBとする。
【0033】
この場合、基端側のリンクハブ2の中心軸QAと先端側のリンクハブ3の中心軸QBの折れ角θ(図4)の最大値を約±90°とすることができる。また、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の旋回角φ(図4)を0°~360°の範囲に設定できる。上記折れ角θは、中心軸QAおよび中心軸QBを含む垂直面において中心軸QAに対して中心軸QBが傾斜した角度のことである。また、上記旋回角φは、旋回角φの基準位置を示す直線L0に対して中心軸QBの水平面への投影直線が成す角度のことである。
【0034】
基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の姿勢は、リンクハブ2の中心軸QAとリンクハブ3の中心軸QBの交点PCを回転中心として変更される。姿勢が変化しても、基端側と先端側のリンクハブ中心点PA,PB間の距離D(図4)は変化しない。
【0035】
パラレルリンク機構1においては以下の条件が成立している。すなわち、各リンク機構4における基端側の端部リンク部材の中心軸O1と中心軸O2のなす角と先端側の端部リンク部材の中心軸O1と中心軸O2のなす角が互いに等しい。リンクハブ中心点PA,PBから回転対偶部までの長さが互いに等しい。各リンク機構4のリンクハブ2と端部リンク部材5の回転対偶の中心軸O1(A)が、基端側においてリンクハブ中心点PAと交差する。各リンク機構4の端部リンク部材5と中央リンク部材7の回転対偶の中心軸O2(A)が、基端側においてリンクハブ中心点PAと交差する。各リンク機構4のリンクハブ3と端部リンク部材6の回転対偶の中心軸O1(B)が、先端側においてリンクハブ中心点PBと交差する。各リンク機構4の端部リンク部材6と中央リンク部材7の回転対偶の中心軸O2(B)が、先端側においてリンクハブ中心点PBと交差する。基端側の端部リンク部材5と先端側の端部リンク部材6の幾何学的形状が等しく、かつ中央リンク部材7についても基端側の先端側とで形状が等しい。これらの条件が成立しているとき、中央リンク部材7の対称面に対して、中央リンク部材7と端部リンク部材5,6との角度位置関係を基端側と先端側とで同じにすれば、幾何学的対称性から基端側のリンクハブ2および基端側の端部リンク部材5と、先端側のリンクハブ3および先端側の端部リンク部材6とは二等分面に対して対称に同じ動きをする。
【0036】
図5は、基端側のリンクハブ中心軸QAと先端側のリンクハブ中心軸QBが同一線上にある状態のリンク作動装置の斜視図である。
【0037】
リンク作動装置50の原点姿勢が図5に示される。本明細書において、原点姿勢とは、基端側のリンクハブ2の中心軸QAと先端側のリンクハブ3の中心軸QBが一致している状態の姿勢を言う。すなわち、原点姿勢は、リンク作動装置50の折れ角θが0度の姿勢である。
【0038】
図6は、原点姿勢におけるリンク作動装置の模式図である。図2には、図1の原点姿勢における3組のリンク機構のうち1組のみについて示した正面図が示されており、図6には図2を簡略化したモデル図が示されている。リンク機構は、簡略化すると基端側および先端側の各リンクハブ、基端側および先端側の各端部リンク部材、ならびに中央リンク部材で表すことができる。
【0039】
リンク作動装置50のパラレルリンク機構1は、基端側のリンクハブ中心点PAを中心とする基端側の球面リンクGAと、先端側のリンクハブ中心点PBを中心とする先端側の球面リンクGBとが交わって成す平面である二等分面PL1を境に鏡面対称となる構成となっている。基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7との回転対偶部の中心軸O2(A)と、先端側の端部リンク部材6と中央リンク部材7との回転対偶部の中心軸O2(B)が交わる点Aは二等分面PL1上に存在する。また、基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7との回転対偶部の中心軸O2(A)と、先端側の端部リンク部材6と中央リンク部材7との回転対偶部の中心軸O2(B)とが成す角を軸角γと称する。中央リンク部材7が成す角度を中央角dと称する。中央角dは、正確には、基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7との回転対偶部の中心軸O2(A)に垂直な直線と、先端側の端部リンク部材6と中央リンク部材7との回転対偶部の中心軸O2(B)に垂直な直線が、二等分面上で交わって成す角である。軸角γおよび中央角dは、パラレルリンク機構1を設計するときに決まる定数である。また、図6から、中央角dは、軸角γを用いるとd=π-γ(rad)で表すことができる。
【0040】
図7は、任意の姿勢(折れ角θ,旋回角φ)のリンク作動装置の斜視図である。図8は、図7のモデル図である。任意の姿勢(折れ角θ,旋回角φ)では、基端側のリンクハブ中心軸QAに対して先端側のリンクハブ中心軸QBが、ある角度(折れ角θ)を成す。
【0041】
点Aは常に二等分面PL1上に存在し、この点Aを一つの二自由度関節とみなすことができる。折れ角θの時、基端側のリンクハブ中心点PAと先端側のリンクハブ中心点PBを結ぶ直線と基端側のリンクハブ2の中心軸QAとが成す角はθ/2となる。また、基端側のリンクハブ中心点PAと先端側のリンクハブ中心点PBとを結ぶ直線と基端側のリンクハブ中心点PAと点Aを通る直線が成す角はd/2となる。パラレルリンク機構1はこれらの関係を維持したまま運動する機構である。
【0042】
パラレルリンク機構1は2自由度のため、2つのアーム回転角β1,β2が決まれば先端側のリンクハブ3の位置が決まる。パラレルリンク機構1の先端側のリンクハブ3の中心PBは、図8において、基端側のリンクハブ2の中心PAを中心Oとして半径D(図4)の球面GP上を運動する。
【0043】
図9は、上記のようなパラレルリンク機構1を備えたリンク作動装置50における、先端側のリンクハブ3の中心PBの動作空間を示す図である。図1のように基端側のリンクハブ2を固定した状態で、先端側のリンクハブ3の中心PBの先端座標(θ,φ)を変更すると、中心PBは原点位置(0,0)を頂点とする半球面GP上を動作する。
【0044】
ここで、リンク作動装置を動作させる場合、一般的には、目標位置(θ,φ)から各関節の回転角度を幾何学的に求める逆運動学関数(たとえば、球面三角法など)を用いて、アクチュエータの指令値が演算される。しかしながら、上記のようなリンク作動装置50においては、複雑な形状を有する部材の組み合わせで形成される複数のリンク機構が組み合わされた構成となっているため、実機ベースでは、各部材の製造誤差、リンク機構の組み立て誤差、および/または、各部材のたわみや変形などの影響によって、幾何学的に求められた回転角度にモータを設定しても、目標位置に対して位置決め誤差が生じる場合がある。
【0045】
特に、先端側のリンクハブ3にエンドエフェクタ61等を取付けたり、ワークを把持したりすることによって先端の負荷が変化する影響により、絶対位置決め精度がさらに低下し得る。リンク作動装置の絶対位置決め精度を向上させるためには、このような位置決め誤差を補正することが必要となるが、上述した特許文献1(特開2015-194207号公報)のようなリンク作動装置では、先端の負荷が変化することが考慮されていないため、理論的な逆運動学関数により導出された駆動指令値では、所望の位置決め精度が達成できない場合が生じ得る。
【0046】
そこで、本実施形態においては、先端の負荷の変化を考慮しつつ、位置決め精度を向上させる手法を採用する。以下に、本実施形態で採用する手法について詳細に説明する。本実形態では、図9に示すように、先端側のリンクハブ3に取付られた負荷に応じて、動作空間内の予め定められた格子上の各点に対応した目標位置(θ,φ)が設定されたマップが生成される。たとえば、先端側のリンクハブ3に加わる異なる負荷に対応したアクチュエータ51のモータ指令値に対応する複数のマップが生成される。
【0047】
なお、目標位置が格子上の点に無い場合も想定される。たとえば、図9の点TPが目標位置に設定される場合には、先端側のリンクハブ3に取付られた負荷に対応したマップにおける、当該点TPを含む曲面を規定する格子点a,b,c,dについて設定された目標位置(θ,φ)を用いて、点TPの目標位置を多項式曲面式を用いた補間式などにより算出するようにしてもよい。補間式としては、ベジェ曲面式を用いてもよいし、Fargason式、Coons式、B-Spline曲面、NURBS曲面などが用いられてもよい。なお、たとえば、マップで規定される格子点のメッシュがある程度細かい場合には、補間式を用いず、点a,b,c,dのうち点TPに最も近い点に対応するマップを採用してもよい。
【0048】
(準備工程)
次に、準備工程について説明する。準備工程は、マップを事前に生成するための工程である。準備工程で生成されたマップは、実機の動作を制御する動作工程において用いられる。図10は、準備工程におけるリンク作動装置50の構成を説明するための図である。準備工程では、実際にリンク作動装置50を使用する前に先端側のリンクハブ3に対して、エンドエフェクタ61等の代りにエンドエフェクタ61等の負荷(重さ)と同じ重さの錘を付けてマップが生成される。準備工程では、同じ目標位置に対して実際に使用するエンドエフェクタ61等の負荷に応じて錘の重さを変えて複数のマップを生成する。
【0049】
図10に示すように、エンドエフェクタ61が設置される先端側のリンクハブ3の先端部材20に外部センサ41が取付けられる。外部センサ41は、先端側のリンクハブ3の中心点PBの絶対位置を検出し、当該中心点PBの測定値を制御装置100へ送信する。外部センサ41は、としては、傾斜角センサなどが用いられる。外部センサ41は、目標位置を特定できるセンサであれば他の種類のセンサを用いてもよい。
【0050】
制御装置100は、リンク作動装置50に取付けられた外部センサ41からのデータを受信することによって、先端側のリンクハブ3の現在の位置が目標位置(θ,φ)からの誤差量を算出する。制御装置100は、誤差量が大きい場合には、誤差補正量を導出し、誤差補正量を加味したモータ指令値の補正マップを記憶する。制御装置100は、誤差補正量を加味した補正マップを用いたモータ指令値によりリンク作動装置50のアクチュエータ51を制御する。なお、誤差量が小さい場合は、補正がされない。誤差量のしきい値は予めユーザーが設定してもよいし、制御装置100において数パーセント以内の誤差を誤差が小さいと判断するようにしてもよい。
【0051】
(準備工程の制御方法の説明)
図11図12を用いて、準備工程の制御方法について説明する。図11図12の処理は、制御装置100におけるCPU101によって実行される。
【0052】
図11は、実施の形態1の補正マップを生成する処理を説明するためのフローチャートである。図11のフローチャートは、図10の準備工程で用いられるリンク作動装置50の構成を用いて、補正マップを生成する準備工程の手順を説明するためのフローチャートである。
【0053】
図11に示すように、制御装置100は、ステップ1(以下、ステップを「S」と略す。)において、目標値(θ,φ)および負荷に関するデータを受信することにより、目標値(θ,φ)および負荷を設定する。次いで、制御装置100は、設定した任意の目標値(θ,φ)に対するモータ指令値(M1,M2,M3)=(m1,m2,m3)を設定する(S2)。
【0054】
次いで、制御装置100は、リンク作動装置50を動作させ、アクチュエータ51を制御することにより、機体の位置決めを完了する(S3)。次いで、制御装置100は、外部センサ41の測定値(θs,φs)のデータを取得する(S4)。次いで、制御装置100は、外部センサ41の測定値と目標値とを比較し、誤差量(θe,φe)=(θ-θs,φ-φs)を算出する(S5)。
【0055】
次いで、制御装置100は、S5で算出した誤差量が許容範囲であるか否かを判定する(S6)。誤差量が許容範囲であるか否かは、誤差量が数パーセント以内に収まっている等の設定により判定すればよい。制御装置100は、誤差量が許容範囲内でないと判定した場合(S6でNO)は、誤差補正量を導出する(S7)。
【0056】
S7の誤差補正量の導出処理について図12により説明する。図12は、誤差補正量の導出処理を説明するためのフローチャートである。図12に示すように、制御装置100は、まず、折れ角を1度、旋回角をφ度に移動するためのモータ指令値(h1,h2,h3)の指令値データ(理論値)を読込む(S21)。次いで、制御装置100は、折れ角補正量(j1,j2,j3)=θe×(h1,h2,h3)を導出する(S22)。
【0057】
次いで、制御装置100は、旋回角φの誤差量φe≧0であるか否かを判定する(S23)。制御装置100は、φe≧0であると判定した場合(S23でYES)、折れ角をθ度、旋回角をφ+1度に移動するためのモータ指令値(i1,i2,i3)の指令値データ(理論値)を読込む(S24)。次いで、制御装置100は、旋回角補正量(k1,k2,k3)=φe×(m1-i1,m2-i2,m3-i3)を導出し(S26)、処理を終了する。
【0058】
制御装置100は、S23において、φe<0であると判定した場合(S23でNO)、折れ角をθ度、旋回角をφ-1度に移動するためのモータ指令値(i1,i2,i3)の指令値データ(理論値)を読込む(S25)。次いで、制御装置100は、旋回角補正量(k1,k2,k3)=φe×(m1-i1,m2-i2,m3-i3)を導出し(S26)、処理を終了する。
【0059】
ここで、リンク作動装置50の旋回角φを固定したときの折れ角θとモータ回転角度の間の関係について説明する。図13は、旋回角を固定したときの折れ角とモータ回転角度との関係を示す図である。リンク作動装置50は、旋回角φを固定したときに折れ角θとモータ回転角度の間に線形関係がある。
【0060】
たとえば、リンク作動装置50は、図13に示すように、旋回角φを45度に固定したときに、折れ角θとモータ回転角度の間に線形関係がある。つまり、リンク作動装置50は、旋回角φを固定し、折れ角θのみを変化させる場合には、モータ回転角度1度あたりのモータの駆動量がリンク作動装置50の現在の折れ角θに関わらず一定となる。これは、リンク作動装置50では、折れ角θ方向のみの変化では、モータの回転方向が変化しないためである。なお、折れ角θを固定し、旋回角φのみを変化させる場合には、モータの回転方向が変化するためモータ回転角度1度あたりのモータ駆動量がリンク作動装置50の姿勢によって大きく変化し、図13のような線形関係は得られない。
【0061】
このように、折れ角θについては、1度あたりのモータ駆動量が一定となるため誤差量にモータ指令値(h1,h2,h3)を掛け合わせることで折れ角の補正量を求めることができる。それに対し、旋回角φについては、誤差が0以上か0未満かによって、モータ駆動量に違いが生じる。そこで、本実施形態では、S23においてφe≧0の場合に、折れ角をθ度、旋回角をφ+1度に移動するためのモータ指令値(i1,i2,i3)を用い、φe<0の場合に、折れ角をθ度、旋回角をφ-1度に移動するためのモータ指令値(i1,i2,i3)を用いる。そして、制御装置100は、誤差量にφe≧0かφe<0かを考慮した(m1-i1,m2-i2,m3-i3)を掛け合わせることで旋回角の補正量を求めることができる。
【0062】
図11を再び参照し、上記の誤差補正量の導出処理で求めた値を用いて、制御装置100は、モータ指令値を(m1’,m2’,m3’)=(m1,m2,m3)+(j1,j2,j3)+(k1,k2,k3)に補正する(S8)。次いで、制御装置100は、モータ指令値を(m1,m2,m3)から(m1’,m2’,m3’)へ更新し(S9)、S2の処理へ移行する。これにより、設定した負荷に対応する目標値(θ,φ)からの位置ずれを考慮してモータ指令値を更新することができる。
【0063】
制御装置100は、S6において、誤差量が許容範囲内であると判定した場合(S6でYES)、作成したモータ指令値の補正マップを記憶する(S10)。次いで、制御装置100は、全ての目標値および負荷に対応するデータの算出が終了したか否かを判定する(S11)。制御装置100は、全ての目標値および負荷に対応するデータの算出が終了したと判定した場合(S11でYES)、処理を終了する。制御装置100は、全ての目標値および負荷に対応するデータの算出が終了していないと判定した場合(S11でNO)、S1の処理へ移行する。S11の処理により、予め設定される目標値および負荷を考慮した補正マップが複数生成されることとなる。
【0064】
(動作工程)
図14は、上記のようにして設定された補正マップを用いて、リンク作動装置50を動作させる場合の処理を説明するためのフローチャートである。図14の処理は、制御装置100におけるCPU101によって実行される。
【0065】
制御装置100は、まず、先端側のリンクハブ3に取付けられている現在の負荷の情報を受信する(S31)。現在の負荷の情報は、ユーザーによって入力されるようにしてもよいし、先端側のリンクハブ3に重量センサを取付け、重量センサにより計測された値が制御装置100へ送信されるようにしてもよい。次いで、制御装置100は、目標値(θ,φ)の情報を受信する(S32)。目標値(θ,φ)の情報は、ユーザーによって入力されるようにしてもよいし、予め定められたプログラムから取得するようにしてもよい。
【0066】
次いで、制御装置100は、現在の負荷に対応する補正マップがあるか否かを判定する(S33)。補正マップは、目標値に対して負荷ごとにメモリ102に記憶されている。制御装置100は、現在の負荷に対応する補正マップがあると判定した場合(S33でYES)、現在の負荷に対応する補正マップを取得し(S34)、S36の処理へ移行する。
【0067】
制御装置100は、現在の負荷に対応する補正マップがないと判定した場合(S33でNO)、記憶されている補正マップのうち、現在の負荷との差が小さい負荷に対して設定された2つの補正マップを線形補間することで現在の負荷に応じた補正マップを演算して取得し(S35)、S36の処理へ移行する。制御装置100は、S36において、演算により得られた補正マップを用いて、目標値(θ,φ)に対応するモータ指令値(M1,M2,M3)=(m1,m2,m3)を決定する。次いで、制御装置100は、決定したモータ指令値を用いてアクチュエータを制御することによって、リンク作動装置50を目標位置に位置決めし(S37)、処理を終了する。
【0068】
以上のように、パラレルリンク機構1を備えたリンク作動装置50において、準備工程で事前に生成した負荷を考慮したモータ指令値の補正マップが動作工程において用いられる。これにより、リンク作動装置50では、先端の負荷が変化したとしても負荷に対応する補正マップが用いられるため、位置決め精度を向上することができる。
【0069】
[変形例]
変形例においては、動作工程において現在の負荷に対応する補正マップが無い場合の実施の形態1と異なる処理について説明する。図15は、変形例におけるリンク作動装置50を動作させる場合の処理を説明するためのフローチャートである。図15の処理は、図14のS35の処理がS35Aとなっている以外の部分において処理が共通している。図15では、図14と異なる処理を中心に説明する。
【0070】
図15において、制御装置100は、現在の負荷に対応する補正マップがないと判定した場合(S33でNO)、現在の負荷と記憶されている補正マップの負荷が最も近い補正マップを取得し(S35A)、S36の処理へ移行する。たとえば、現在の負荷が7kgであり、10kgに対応する補正マップと5kgに対応する補正マップとをある場合には、5kgに対応する補正マップを使用して目標値に対応するモータ指令値を決定する。
【0071】
[実施の形態2]
実施の形態2においては、実施の形態1と異なり、先端側のリンクハブ3が目標値へ移動する方向を考慮した制御について説明する。図16および図17を用いて実施の形態2について説明する。図16は、実施の形態2の目標値と方向との関係を説明するための図である。図16に示すように、実施の形態2では、先端側のリンクハブ3がどの方向から目標値(θ,φ)に対して動作するかを考慮して補正マップが生成される。たとえば、図16に示すように、目標値(θ,φ)に対して8方向から動作するかを考慮して方向ごとの補正マップが生成される。つまり、1つの目標値に対して、負荷ごとに8方向からのパターンを考慮した補正マップが生成される。
【0072】
ここで、リンク作動装置50では、先端側のリンクハブ3が動作する方向により位置決め精度が異なる場合がある。実施の形態2では、目標位置に向かう方向の影響も考慮した補正マップを生成することにより、位置決め精度を向上することができる。なお、方向は8方向以外であってもよく、たとえば、データ数を減らすために4方向としてもよく、位置決め精度を向上させるために16方向としてもよい。
【0073】
(準備工程)
図17は、実施の形態2の補正マップを生成する処理を説明するためのフローチャートである。図17の処理は、図12の処理と比較し、S1Aの処理が追加されるとともにS11の処理がS11Aの処理に変更されている点以外の部分において処理が共通している。図17では、図12と異なる処理を中心に説明する。
【0074】
図17を参照して、制御装置100は、目標値(θ,φ)および負荷を設定した後に(S1)、目標値(θ,φ)へ向かう方向に関するデータを受信することにより、目標値(θ,φ)への方向を設定する(S1A)。目標値への方向は、現在位置と目標位置との位置情報から算出すればよい。
【0075】
図17のS10においては、方向の影響を考慮して作成したモータ指令値の補正マップが記憶される(S10)。次いで、制御装置100は、全ての目標値、負荷、および方向に対応するデータの算出が終了したか否かを判定する(S11A)。制御装置100は、全ての目標値、負荷、および方向に対応するデータの算出が終了したと判定した場合(S11AでYES)、処理を終了する。制御装置100は、全ての目標値、負荷、および方向に対応するデータの算出が終了していないと判定した場合(S11AでNO)、S1の処理へ移行する。S11Aの処理により、予め設定される目標値、負荷、および方向を考慮した補正マップが複数生成されることとなる。
【0076】
(動作工程)
実施の形態2では、図14において、制御装置100が方向に関する情報についても受信する。制御装置100は、目標値に対応する現在の負荷、および方向に関する情報に対応する補正マップを取得し、対応する補正マップが無い場合には、補正マップを補間し、あるいは近い補正マップを取得する。制御装置100は、取得した補正マップを用いて図14のS36以降の制御を実行する。
【0077】
[実施の形態3]
実施の形態3においては、実施の形態2と異なり、補正マップのデータを削減するための制御について説明する。
【0078】
(準備工程)
図18は、実施の形態3の補正マップを生成する処理を説明するためのフローチャートである。図18の処理は、図17の処理と比較し、S12の処理が追加される点以外の部分において処理が共通している。図18では、図17と異なる処理を中心に説明する。
【0079】
図18において、制御装置100は、全ての目標値、負荷、および方向に対応するデータの算出が終了したと判定した場合(S11AでYES)、S12の処理へ移行する。制御装置100は、S12において、目標値における複数の方向からのモータ指令値の平均値を補正マップとして更新して記憶し、処理を終了する。たとえば、制御装置100は、S12において図16に示した8方向のパターンからなる複数の補正マップを平均した1つの補正マップを作成して、当該補正マップを目標値の補正マップとして記憶する。これにより、実施の形態3は、方向の影響を考慮するとももにデータ量を削減することができる。なお、実施の形態3における動作行程は、実施の形態1と同様のため記載を省略する。
【0080】
上述の各実施の形態では、3つのリンク機構4の各々にリンク機構4を駆動するための駆動装置として、モータを含むアクチュエータ51が設けられていた。アクチュエータ51は、3つのリンク機構4に対して2つ設けられる構成であってもよい。モータが2つの場合であっても上述の準備工程を実行することによって、高精度の位置決めが可能となる。例えば、制御装置100は、補正マップを利用して補正を行なう際、理論値を用いて2つのモータの指令値を補正し、モータを有さない3つ目のリンク機構4の回転軸を導出し、回転軸に対応した曲面式により目標位置を導出すればよい。
【0081】
(態様)
(1) 本開示のリンク作動装置50は、基端側のリンクハブ2と、先端側のリンクハブ3と、リンクハブ2とリンクハブ3とを連結する少なくとも3つのリンク機構4と、少なくとも2つのリンク機構4を駆動するための駆動装置としてのアクチュエータ51と、アクチュエータ51を制御する制御装置100とを備える。アクチュエータ51は、少なくとも2つのリンク機構4の各々に対して設けられるモータを含む。少なくとも3つのリンク機構4の各々は、リンクハブ2に対して回転可能に連結された端部リンク部材5と、リンクハブ3に対して回転可能に連結された端部リンク部材6と、端部リンク部材5および端部リンク部材6の各々に対して回転可能に連結された中央リンク部材7とを含む。少なくとも3つのリンク機構4において、リンクハブ2と端部リンク部材5との回転対偶部の少なくとも3つの中心軸および、中央リンク部材7の一方端の回転対偶部の中心軸は、リンクハブ中心点で交わり、リンクハブ3と端部リンク部材6との回転対偶部の少なくとも3つの中心軸および中央リンク部材7の他方端の回転対偶部の中心軸は、第2リンクハブ中心点で交わる。制御装置100は、リンクハブ3の稼働範囲における目標移動位置に対応して、リンクハブ3に加わる負荷ごとに各モータの駆動指令値が記憶された補正マップを記憶しており、リンクハブ3に加わっている現在の負荷に応じて、記憶された複数の補正マップのうち少なくとも1つのマップを用いて各モータの駆動指令値を決定する。
【0082】
(2)(1)に記載の制御装置100は、目標移動位置とリンクハブ3に加わっている現在の負荷との情報に基づいて、複数の補正マップを補間したマップを用いて各モータの駆動指令値を決定する。
【0083】
(3)(1)に記載の制御装置100は、目標移動位置とリンクハブ3に加わっている現在の負荷との情報に基づいて、複数の補正マップうち現在の負荷に近い負荷に対応するマップを選択して各モータの駆動指令値を決定する。
【0084】
(4)(1)~(3)に記載の複数の補正マップの各々は、各負荷について同じ目標移動位置に対して異なった方向から位置決めした際の各モータの駆動指令値が記憶された複数のマップを含む。
【0085】
(5)(1)~(3)に記載の複数の補正マップの各々は、各負荷について同じ目標移動位置に対して異なった方向から位置決めした際の各モータの駆動指令値の平均値が記憶されたマップである。
【0086】
(6) 本開示は、リンク作動装置50の駆動するための方法に関する。リンク作動装置50は、基端側のリンクハブ2と、先端側のリンクハブ3と、リンクハブ2とリンクハブ3とを連結する少なくとも3つのリンク機構4と、少なくとも2つのリンク機構4を駆動するための駆動装置としてのアクチュエータ51とを備える。アクチュエータ51は、少なくとも2つのリンク機構4の各々に対して設けられるモータを含む。少なくとも3つのリンク機構4の各々は、リンクハブ2に対して回転可能に連結された端部リンク部材5と、リンクハブ3に対して回転可能に連結された端部リンク部材6と、端部リンク部材5および端部リンク部材6の各々に対して回転可能に連結された中央リンク部材7とを含む。少なくとも3つのリンク機構4において、リンクハブ2と端部リンク部材5との回転対偶部の少なくとも3つの中心軸および、中央リンク部材7の一方端の回転対偶部の中心軸は、リンクハブ中心点で交わり、リンクハブ3と端部リンク部材6との回転対偶部の少なくとも3つの中心軸および中央リンク部材7の他方端の回転対偶部の中心軸は、第2リンクハブ中心点で交わる。方法は、リンクハブ3の稼働範囲における目標移動位置に対応して、リンクハブ3に加わる負荷ごとに各モータの駆動指令値が記憶された補正マップを生成して記憶するステップと、リンクハブ3に加わっている現在の負荷に応じて、記憶された複数の補正マップのうち少なくとも1つのマップを用いて各モータの駆動指令値を決定するステップとを含む。
【0087】
(7)(6)に記載の方法は、目標移動位置とリンクハブ3に加わっている現在の負荷との情報に基づいて、複数の補正マップを補間したマップを用いて各モータの駆動指令値を決定するステップを含む。
【0088】
(8)(6)に記載の方法は、目標移動位置とリンクハブ3に加わっている現在の負荷との情報に基づいて、複数の補正マップうち現在の負荷に近い負荷に対応するマップを選択して各モータの駆動指令値を決定するステップを含む。
【0089】
(9)(6)~(8)に記載の複数の補正マップの各々は、各負荷について同じ目標移動位置に対して異なった方向から位置決めした際の各モータの駆動指令値が記憶された複数のマップを含む。
【0090】
(10)(6)~(8)に記載の複数の補正マップの各々は、各負荷について同じ目標移動位置に対して異なった方向から位置決めした際の各モータの駆動指令値の平均値が記憶されたマップである。
【0091】
上記のような本開示のリンク作動装置、および、リンク作動装置の駆動方法によれば、先端の負荷を考慮した複数の補正マップを用いて実機を制御するため、先端の負荷が変化したとしても位置決め精度を向上することができる。
【0092】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0093】
1 パラレルリンク機構、2,3 リンクハブ、4 リンク機構、5,6 端部リンク部材、7 中央リンク部材、10 土台、11,21 回転軸連結部材、12,15,22,25 回転軸体、12a 大径部、12b 小径部、20 先端部材、30 湾曲部材、31,31A 回転軸支持部材、50 リンク作動装置、51 アクチュエータ、52 減速機構、52a 出力軸体、53 モータ固定部材、54 フランジ面、55 スペーサ、56 ボルト、57 内径溝、58 フランジ取付面、61 エンドエフェクタ、100 制御装置、101 CPU、102 メモリ、GA,GB 球面リンク。
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