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特開2024-84321ポリスチレン系樹脂組成物、ポリスチレン系樹脂成形体及び食品包装用容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084321
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】ポリスチレン系樹脂組成物、ポリスチレン系樹脂成形体及び食品包装用容器
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/04 20060101AFI20240618BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20240618BHJP
   A01N 37/02 20060101ALI20240618BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240618BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
C08L25/04
C08K5/098
A01N37/02
A01P3/00
A01N25/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198525
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】大屋 哲
(72)【発明者】
【氏名】中野 宏明
【テーマコード(参考)】
4H011
4J002
【Fターム(参考)】
4H011AA01
4H011BA01
4H011BB06
4H011BC19
4H011DA03
4H011DA07
4H011DC05
4H011DC06
4H011DH02
4J002BC021
4J002BC031
4J002BC041
4J002BC071
4J002EG026
4J002EG036
4J002EG046
4J002EN036
4J002EN106
4J002EU046
4J002EU056
4J002EU116
4J002FD070
4J002FD090
4J002FD100
4J002FD130
4J002FD186
4J002GG00
4J002GG01
4J002GG02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ポリスチレン系樹脂に対する高い相溶性と抗菌抗ウイルス活性を有し、且つ透明性を維持できる、抗菌抗ウイルス性を有するポリスチレン系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリスチレン系樹脂(A)と、抗菌抗ウイルス剤(B)とを含有するポリスチレン系樹脂組成物であって、前記抗菌抗ウイルス剤(B)が、脂肪酸金属塩、ヘテロ原子含有配位子と金属イオンとの金属錯体、およびヘテロ原子含有配位子と脂肪酸金属塩との金属錯体からなる群から選択される1種以上である抗菌抗ウイルス剤であり、前記脂肪酸金属塩の金属、前記ヘテロ原子含有化合物配位子と金属イオンとの金属錯体の金属、および前記ヘテロ原子含有化合物配位子と脂肪酸金属塩との金属錯体の金属が、それぞれ独立に、リチウム、ナトリウム等を含有する抗菌抗ウイルス剤である、ポリスチレン系樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂(A)と、抗菌抗ウイルス剤(B)とを含有するポリスチレン系樹脂組成物であって、
前記抗菌抗ウイルス剤(B)が、
脂肪酸金属塩、ヘテロ原子含有配位子と金属イオンとの金属錯体、およびヘテロ原子含有配位子と脂肪酸金属塩との金属錯体からなる群から選択される1種以上である抗菌抗ウイルス剤であり、前記脂肪酸金属塩の金属、前記ヘテロ原子含有化合物配位子と金属イオンとの金属錯体の金属、および前記ヘテロ原子含有化合物配位子と脂肪酸金属塩との金属錯体の金属が、それぞれ独立に、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、スズ、アンチモン、銅、銀、亜鉛、モリブデン、バナジウム、ストロンチウム、ジルコニウム、バリウム、ビスマス、鉛、金、白金又はレアアースである抗菌抗ウイルス剤(B1)であることを特徴とする、ポリスチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
前記抗菌抗ウイルス剤(B1)の前記脂肪酸金属塩の金属、前記ヘテロ原子含有化合物配位子と金属イオンとの金属錯体の金属、および前記ヘテロ原子含有化合物配位子と脂肪酸金属塩との金属錯体の金属が、それぞれ独立に、ビスマス、ネオジム、マグネシウム、コバルト、銅、銀又は亜鉛である請求項1に記載のポリスチレン系樹脂組成物。
【請求項3】
前記抗菌抗ウイルス剤(B1)の前記脂肪酸金属塩が、炭素原子数1~22の脂肪酸の金属塩である請求項1に記載のポリスチレン系樹脂組成物。
【請求項4】
前記抗菌抗ウイルス剤(B1)の前記脂肪酸金属塩が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、2-エチルヘキサン酸、イソノナン酸、ネオデカン酸又はナフテン酸の金属塩である請求項1に記載のポリスチレン系樹脂組成物。
【請求項5】
前記抗菌抗ウイルス剤(B1)の前記ヘテロ原子含有配位子が、ピコリン酸、2-{[(2-ジメチルアミノ)エチル]メチルアミノ}エタノール、1,2-プロパンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、1,4-ジエチルイミダゾール、8-キノリノール、5-クロロ-8-キノリノール、2,2’-ビピリジルおよびその誘導体、並びに2,2’-[プロパン-1,2-ジイルビス(アザニリリデンメタニリリデン)]ジフェノールおよびその誘導体から選択される1種以上のアミン配位子である請求項1に記載のポリスチレン系樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項記載のポリスチレン系樹脂組成物を使用するポリスチレン系樹脂成形体。
【請求項7】
請求項1~5の何れか1項記載のポリスチレン系樹脂組成物を使用する食品包装用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌抗ウイルス性を有するポリスチレン系樹脂組成物、ポリスチレン系樹脂成形体及び食品包装用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリスチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂は成形加工性や寸法安定性に優れることから、シート加工後成形し、食品包装容器として広く用いられている。また、射出成型等の加工方法で、食品容器、日用雑貨、家庭電化製品や自動車部品等に供されることも広く知られている。このようなポリスチレン系樹脂には、食品包装容器等として使用可能なレベルの耐衝撃性、剛性、強度、耐熱性、耐油性、加工性等等が要求される。
更に最近では、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、衛生に対する人々の意識が急速に高まっており、生活用品や容器等の人が日常的に触れる物質に対して、病原菌やウイルスへの感染の可能性を低減する「抗菌抗ウイルス」特性も要求されるようになってきた。
【0003】
容器等への抗ウイルス機能の付与方法として、一般的には、抗ウイルス剤そのものを容器に直接塗布したり、抗ウイルス剤をバインダー樹脂に混合してコーティング組成物とし、当該組成物を適用対象に塗布して用いられることが多く、そのような抗菌抗ウイルス剤として、光触媒系(TiO等)と金属系(Ag等)が知られている。(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-182846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の抗菌抗ウイルス剤である無機金属化合物を容器等に直接塗布した場合、容器等の色合いが変わってしまうほか、容器等の触感がザラザラとした触感になってしまう問題がある。また、無機金属化合物と樹脂の組成物とした場合であっても、当該組成物は、無機金属化合物によって色が濁ってしまうほか、樹脂が透明樹脂のときにはその透明性が損なわれてしまう問題があった。特にポリスチレン系樹脂の主用途である食品包装容器の場合、内容物の視認性が要求されることから、透明性が損なわれる方法は適用が難しい。
加えて、無機金属化合物を含有する組成物では、無機化合物は一般に粉体であるために分散化処理が必要で生産性の観点の問題もある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ポリスチレン系樹脂に対する高い相溶性と抗菌抗ウイルス活性を有し、且つ透明性を維持できる、抗菌抗ウイルス性を有するポリスチレン系樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、スチレン樹脂に特定の抗菌抗ウイルス剤を含有することで、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、 ポリスチレン系樹脂(A)と、抗菌抗ウイルス剤(B)とを含有するポリスチレン系樹脂組成物であって、
前記抗菌抗ウイルス剤(B)が、脂肪酸金属塩、ヘテロ原子含有配位子と金属イオンとの金属錯体、およびヘテロ原子含有配位子と脂肪酸金属塩との金属錯体からなる群から選択される1種以上である抗菌抗ウイルス剤であり、前記脂肪酸金属塩の金属、前記ヘテロ原子含有化合物配位子と金属イオンとの金属錯体の金属、および前記ヘテロ原子含有化合物配位子と脂肪酸金属塩との金属錯体の金属が、それぞれ独立に、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、スズ、アンチモン、銅、銀、亜鉛、モリブデン、バナジウム、ストロンチウム、ジルコニウム、バリウム、ビスマス、鉛、金、白金又はレアアースである抗菌抗ウイルス剤(B1)であるポリスチレン系樹脂組成物を提供する。
【0009】
また本発明は、前記記載のポリスチレン系樹脂組成物を使用するポリスチレン系樹脂成形体を提供する。
【0010】
また本発明は、前記記載のポリスチレン系樹脂組成物を使用する食品包装用容器を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、ポリスチレン系樹脂に対する高い相溶性と抗菌抗ウイルス活性を有し、且つ透明性を維持できる、抗菌抗ウイルス性を有するポリスチレン系樹脂組成物を得ることができる。本発明のポリスチレン系樹脂組成物を使用したポリスチレン系樹脂成形体あるいは食品包装用容器は、高い抗菌抗ウイルス性を発現しながら、透明性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
【0013】
(ポリスチレン系樹脂(A))
本発明で使用するポリスチレン系樹脂(A)は、特に限定なく公知のポリスチレン系樹脂を使用することができる。
ポリスチレン系樹脂に使用されるスチレンモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、パラメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。また、前記スチレンと共重合可能なコモノマーを、スチレンと共重合することにより得られる共重合体であってもよい。スチレンと共重合可能なコモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類や、α-メチルスチレン、o-,m-,p-メチルスチレン等のスチレン以外の芳香族ビニル単量体類や、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和脂肪酸類や、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和ジ脂肪酸無水物類、あるいは、N-フェニルマレイミド等の不飽和ジ脂肪酸イミド類等があげられる。これらのコモノマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用されていることが多い。
【0014】
また、ポリスチレン系樹脂としては、これらの共重合体の他、
(1)前記ポリスチレン系樹脂からなる連続相にゴム状重合体がグラフト重合して粒子分散してなる樹脂(耐衝撃性スチレン系樹脂)や、
(2)前記スチレンと多分岐状マクロモノマーとの共重合体からなる連続相にゴム状重合体がグラフト重合して粒子分散してなる樹脂や、
(3)前記スチレンと多分岐状マクロモノマーとの共重合体
等、様々なバリエーションのポリスチレン系樹脂が存在する。本発明においては、これらのポリスチレン系樹脂は区別なく使用することができる。
【0015】
前記(1)や前記(2)の、前記ポリスチレン系樹脂からなる連続相にゴム状重合体がグラフト重合して粒子分散してなる樹脂としては、一般的に入手できるものをそのまま用いることができる。このような樹脂に含まれるゴム成分としては、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン-イソプレン共重合体等が挙げられる。特に、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン共重合体として含まれていることが好ましい。また前記ゴム状重合体の含有率としては、優れた耐衝撃性、剛性、強度、耐熱性、耐油性及び加工性を有するスチレン系樹脂組成物が得られることから、1.5~15.0質量%の範囲が好ましい。なお、前記耐衝撃性スチレン系樹脂としては、市販品をそのまま用いてもよいが、ゴム成分の含有率が高い樹脂に、通常のポリスチレンを混合して、ゴム成分の含有率や流動性を好適な範囲に調整して用いることもできる。
【0016】
前記(3)の、前記スチレンと多分岐状マクロモノマーとの共重合体としては、例えば、マクロモノマーである、分子末端に二重結合を複数有する多官能ポリエステル(メタ)アクリレート、多官能ポリエーテル(メタ)アクリレート、多官能ポリウレタン(メタ)アクリレート等の存在下でスチレンを重合することで得られるものなどが挙げられる。
【0017】
(抗菌抗ウイルス剤(B))
本発明で使用する抗菌抗ウイルス剤(B)は、脂肪酸金属塩、ヘテロ原子含有配位子と金属イオンとの金属錯体、およびヘテロ原子含有配位子と脂肪酸金属塩との金属錯体からなる群から選択される1種以上であって、前記脂肪酸金属塩、前記ヘテロ原子含有化合物配位子と金属イオンとの金属錯体、および前記ヘテロ原子含有化合物配位子と脂肪酸金属塩との金属錯体中の金属が、それぞれ独立に、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、スズ、アンチモン、銅、銀、亜鉛、モリブデン、バナジウム、ストロンチウム、ジルコニウム、バリウム、ビスマス、鉛、金、白金又はレアアースである。
【0018】
本発明で使用する抗菌抗ウイルス剤(B)は、脂肪酸金属塩または金属錯体の形態を取り、金属が有する抗菌抗ウイルス性と、脂肪酸または錯体配位子が有する有機物への高い相溶性によって、スチレン系樹脂に添加した場合に、抗菌抗ウイルス剤によって樹脂組成物の透明性が損なわれるといった外観への影響を低減することができると考えられる。
【0019】
本発明において「抗菌」とは、菌の数を減少させる効果、菌を不活化させる効果、菌の感染性を低減させる効果等を包含する意味である。同様に、本発明において「抗ウイルス」とは、ウイルスの数を減少させる効果、ウイルスを不活化させる効果、ウイルスの感染性を低減させる効果等を包含する意味である。
【0020】
本発明において抗菌の対象となる菌は特に限定されず、細菌および真菌のいずれでもよい。細菌としては、大腸菌、緑膿菌、サルモネラ菌、モラクセラ菌、レジオネラ菌等のグラム陰性菌;黄色ブドウ球菌、クロストリジウム属細菌等のグラム陽性菌等が挙げられる。真菌としては、カンジダ菌、ロドトルラ、パン酵母等の酵母類;赤カビ、黒カビ等のカビ類が挙げられる。
【0021】
本発明において抗ウイルスの対象となるウイルスは特に限定されず、公知のエンベロープウイルス(エンベロープを有するウイルス)およびノンエンベロープウイルス(エンベロープを有さないウイルス)のいずれでもよい。
【0022】
上記エンベロープウイルスとしては、例えば、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、風疹ウイルス、エボラウイルス、麻疹ウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、ヘルペスウイルス、ムンプスウイルス、アルボウイルス、RSウイルス、SARSウイルス、肝炎ウイルス(例えば、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス等)、黄熱ウイルス、エイズウイルス、狂犬病ウイルス、ハンタウイルス、デングウイルス、ニパウイルス、リッサウイルス等が挙げられる。
【0023】
上記ノンエンベロープウイルスとしては、例えば、アデノウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、ヒトパピローマウイルス、ポリオウイルス、エンテロウイルス、コクサッキーウイルス、ヒトパルボウイルス、脳心筋炎ウイルス、ポリオーマウイルス、BKウイルス、ライノウイルス、ネコカリシウイルス等が挙げられる。
【0024】
以下、本発明で使用する抗菌抗ウイルス剤(B)について説明する。
【0025】
(脂肪酸金属塩)
本発明で使用する抗菌抗ウイルス剤(B)である脂肪酸金属塩は例えば下記一般式(1)で表される化合物である。
【0026】
【化1】

(前記一般式(1)中、
は、水素原子または炭素原子数1~21のアルキル基であり、
n1は、1~4の範囲の整数であり、
は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、スズ、アンチモン、銅、銀、亜鉛、モリブデン、バナジウム、ストロンチウム、ジルコニウム、バリウム、ビスマス、鉛、金、白金又はレアアースである。)
【0027】
前記一般式(1)において、n1が2以上の整数である場合、複数のRは互いに同じでもよく、異なってもよい。
【0028】
の炭素原子数1~21のアルキル基は、直鎖のアルキル基でもよく、分岐のアルキル基でもよく、脂環構造を含んでもよい。
【0029】
の炭素原子数1~21のアルキル基は、脂肪酸金属塩の製造に用いるRCOOHで表される炭素原子数1~22のカルボン酸からカルボキシル基(COOH)を除いたカルボン酸残基に対応する。当該カルボン酸残基としては、酢酸残基、プロピオン酸残基、ブタン酸残基、ペンタン酸残基、アクリル酸残基、メタクリル酸残基、オクチル酸残基(2-エチルヘキサン酸残基)、ネオデカン酸残基、ナフテン酸残基、イソノナン酸残基、桐油酸残基、トール油脂肪酸残基、ヤシ油脂肪酸残基、大豆油脂肪酸残基、アマニ油脂肪酸残基、サフラワー油脂肪酸残基、脱水ヒマシ油脂肪酸残基、キリ油脂肪酸残基、ラウリン酸残基、ミリスチン酸残基、パルミチン酸残基、ステアリン酸残基、イソステアリン酸残基、オレイン酸残基等が挙げられる。
【0030】
の炭素原子数1~21のアルキル基は、後述する基材密着性の観点から、好ましくは炭素原子数1~15のアルキル基であり、より好ましくは炭素原子数1~11のアルキル基であり、さらに好ましくは酢酸残基、プロピオン酸残基、ブタン酸残基、ペンタン酸残基、2-エチルヘキサン酸残基、イソノナン酸残基、ネオデカン酸残基およびナフテン酸残基である。
【0031】
は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、スズ、アンチモン、銅、銀、亜鉛、モリブデン、バナジウム、ストロンチウム、ジルコニウム、バリウム、ビスマス、鉛、金、白金又はレアアースであり、好ましくはビスマス、ネオジム、マグネシウム、コバルト、銅、銀又は亜鉛であり、より好ましくはビスマス、ネオジム又はマグネシウムである。
脂肪酸金属塩の金属がビスマス、ネオジム又はマグネシウムであれば、抗菌抗ウイルス剤の添加による着色を起きにくくすることができる。
【0032】
尚、本発明においてレアアースとは、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)から選択される1種以上を意味する。
【0033】
n1はMの金属原子のイオン価数によって決定される数値であり、例えばMがホウ素であればn1は3となり、Mがコバルトであれば、n1は2となる。
【0034】
本発明で使用する抗菌抗ウイルス剤(B)である脂肪酸金属塩は、脂肪酸ホウ酸金属塩の形態も包含する。当該脂肪酸ホウ酸金属塩は例えば下記一般式(2)で表される化合物である。
【0035】
【化2】

(前記一般式(2)中、
は、水素原子または炭素原子数1~21のアルキル基であり、
は、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、スズ、アンチモン、銅、亜鉛、モリブデン、バナジウム、ストロンチウム、ジルコニウム、バリウム、ビスマス、鉛、金、白金又はレアアースである。)
【0036】
前記一般式(2)において、Rの炭素原子数1~21のアルキル基は、前記一般式(1)のRの炭素原子数1~21のアルキル基と同じである。同様に、前記一般式(2)において、Mの金属は、前記一般式(1)のMの金属と同じである。
【0037】
本発明で使用する抗菌抗ウイルス剤(B)として脂肪酸金属塩を使用する場合、使用する脂肪酸金属塩は1種単独でもよく、互いに構造が異なる2種以上の脂肪酸金属塩を使用してもよい。
【0038】
脂肪酸金属塩は公知の方法で製造することができ、市販品を用いてもよい。
【0039】
(金属錯体)
本発明で使用する抗菌抗ウイルス剤(B)であるヘテロ原子含有配位子と金属イオンとの金属錯体およびヘテロ原子含有配位子と脂肪酸金属塩との金属錯体は、金属イオンまたは脂肪酸金属塩とヘテロ原子含有配位子とが配位結合で錯体を形成している化合物である。
【0040】
ヘテロ原子含有配位子が金属錯体を形成する金属イオンとしては、本発明で使用する抗菌抗ウイルス剤(B)として説明した脂肪酸金属塩の金属と同じ金属のイオンを使用できる。
ヘテロ原子含有配位子が金属錯体を形成する脂肪酸金属塩としては、本発明で使用する抗菌抗ウイルス剤(B)として説明した脂肪酸金属塩と同じものを使用できる。
【0041】
金属錯体を形成するヘテロ原子含有配位子は、窒素、酸素、硫黄およびリンからなる群より選ばれる1種以上のヘテロ原子を分子内に有する配位子であればよい。当該ヘテロ原子含有配位子としては、例えば、N-メチルモルフォリン、ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、4-ジメチルアミノアミン(DMAP)、ジシアンジアミド(DICY)、トリ-n-ブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ブチルアミン、1,2-プロパンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、オクチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2-[[(2-ジメチルアミノ)エチル]メチルアミノ]エタノール、ピコリン酸、2,2’-[プロパン-1,2-ジイルビス(アザニリリデンメタニリリデン)]ジフェノール、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、1,4-ジエチルイミダゾール、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、8-キノリノール、5-クロロ-8-キノリノール、2,2’-ビピリジル及びその誘導体、2,2’-[プロパン-1,2-ジイルビス(アザニリリデンメタニリリデン)]ジフェノール及びその誘導体、2,2’-メチレンビス〔6-(2h-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール〕等のアミン化合物;トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムアセテート等の四級アンモニウム塩;トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物;テトラメチルホスホニウムクロライド、テトラエチルホスホニウムクロライド、テトラプロピルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、トリメチル(2-ヒドロキシルプロピル)ホスホニウムクロライド、トリフェニルホスホニウムクロライド、ベンジルホスホニウムクロライド等のホスホニウム塩;チオ乳酸、2-アミノチオフェノール、2,2’-ジチオジアニリン等の硫黄系化合物などが挙げられる。
【0042】
ヘテロ原子含有配位子は、好ましくはピコリン酸、2-{[(2-ジメチルアミノ)エチル]メチルアミノ}エタノール、1,2-プロパンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、1,4-ジエチルイミダゾール、8-キノリノール、5-クロロ-8-キノリノール、2,2’-ビピリジルおよびその誘導体、並びに2,2’-[プロパン-1,2-ジイルビス(アザニリリデンメタニリリデン)]ジフェノールおよびその誘導体から選択される1種以上のアミン配位子である。
【0043】
金属錯体を形成するヘテロ原子含有配位子は、1種単独でもよく、互いに構造が異なる2種以上でもよい。
【0044】
金属錯体において、金属イオンまたは脂肪酸金属塩とヘテロ原子含有配位子の比(モル比)としては、金属イオンまたは脂肪酸金属塩の金属原子1モルに対して、例えばヘテロ原子含有配位子が0.1~12モルとなる範囲であり、好ましくは0.3~10モルの範囲であり、さらに好ましくは0.5~10モルの範囲である。
【0045】
金属錯体において金属イオンがアルミニウムイオンである場合、当該アルミニウム錯体は、好ましくは下記一般式(3-1)で表されるアルミニウムキレート化合物および下記一般式(3-2)で表されるアルミニウムキレート化合物化合物から選択される1種以上である。
【0046】
【化3】


(前記一般式(3-1)および(3-2)中、
311~R316およびはR321~R326は、それぞれ独立に、炭素原子数1~22のアルキル基又は炭素原子数1~22のアルコキシ基である。)
【0047】
311~R316およびはR321~R326の炭素原子数1~22のアルキル基および炭素原子数1~22のアルコキシ基のアルキレン基部分は、直鎖でもよく、分岐でもよく、脂環構造を含んでもよい。R311~R316およびはR321~R326のアルキル基およびアルコキシ基のアルキレン基部分の炭素原子数は、好ましくは1~9である。
【0048】
311~R316およびはR321~R326の炭素原子数1~22のアルキル基は、好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0049】
311~R316およびはR321~R326の炭素原子数1~22のアルコキシ基は、好ましくはメトキシ基、エトキシ基又はオレイルオキシ基である。
【0050】
アルミニウムキレート化合物の具体例としては、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビスオレイルアセトアセテート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
【0051】
本発明で使用する抗菌抗ウイルス剤(B)は、好ましくは非水溶性の抗菌抗ウイルス剤である。抗菌抗ウイルス剤が非水溶性であることで、日常の雨等の水がかかった場合であっても抗菌抗ウイルス性の持続性に優れる。
尚、本願において「非水溶性」とは、20℃で抗菌抗ウイルス剤1gを溶解させるのに必要な水の量が10ml以上であることを意味する。
【0052】
抗菌抗ウイルス剤であるヘテロ原子含有配位子と金属イオンとの金属錯体およびヘテロ原子含有配位子と脂肪酸金属塩との金属錯体は、公知の方法で製造することができ、金属単体または脂肪酸金属塩とヘテロ原子含有配位子を反応させることにより製造できる。また、当該金属錯体は市販品を用いてもよい。
【0053】
本発明のスチレン系樹脂組成物において、本発明で使用する抗菌抗ウイルス剤(B)の含有量は特に限定されず、例えば抗菌抗ウイルス剤由来の金属をスチレン系樹脂組成物固形分100質量部に対して0.01~30質量部の範囲で含有するとよく、好ましくはスチレン系樹脂組成物固形分100質量部に対して0.01~15質量部の範囲で含有し、より好ましくはスチレン系樹脂組成物固形分100質量部に対して0.01~10質量部の範囲で含有し、さらに好ましくはスチレン系樹脂組成物固形分100質量部に対して0.1~10質量部の範囲で含有する。
ここで「スチレン系樹脂組成物固形分」とは、スチレン系樹脂組成物に含まれる固形分の総量を意味する。
【0054】
本発明のスチレン系樹脂組成物に含まれる本発明で使用する抗菌抗ウイルス剤(B)は1種単独でもよく、2種以上でもよい。
【0055】
(その他の添加物)
本発明のスチレン系樹脂組成物は、前記スチレン系樹脂(A)及び前記抗菌抗ウイルス剤(B)を含有する以外は特に限定なく、本発明の効果を損なわない範囲において、スチレン系樹脂(A)以外の樹脂や添加剤等を含有することができる。
【0056】
(オレフィン系樹脂)
本発明のスチレン系樹脂組成物は、オレフィン系樹脂を含有してもよく好ましい。オレフィン系樹脂としては、例えば高密度ポリエチレン(以下、「HDPE」と称することがある。)が好ましい。またHDPEの他、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、ヘキセン、ビニルシクロヘキサン等の炭素原子数2~8のオレフィンの単独重合体や共重合体、前記炭素原子数2~8のオレフィンと他のモノマーとの共重合体等も好ましく用いられる。具体的には、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂等のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ(1-ブテン)、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、ポリビニルシクロヘキサン、エチレン・プロピレンブロック共重合体、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン・へキセン共重合体等のα―オレフィン共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、シクロペンテン等の単環環状オレフィンモノマーやノルボルネン等の多環環状オレフィンモノマーの単独重合体あるいは他のオレフィンモノマーとの共重合体である環状ポリオレフィンなどが挙げられる。これらのオレフィン系樹脂は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0057】
前記高密度ポリエチレンとしては、バイオマス由来のものを用いることもできる。なお、「バイオマス由来」とはASTM D6866に準拠した測定においてバイオベース度が80%以上のものを示す。
【0058】
前記オレフィン系樹脂の使用量は、優れた耐衝撃性、剛性、強度、耐熱性、耐油性及び加工性を有するスチレン系樹脂組成物が得られることから、前記スチレン系樹脂組成物の合計中に5~40質量%の範囲であり、15~35質量%の範囲が好ましい。
【0059】
(その他の樹脂)
前記ポリスチレン系樹脂あるいは前記ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂としては、例えば、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシ酪酸、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルファイド、酢酸セルロース、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、エチルセルロース、ヘミセルロース、リグニン、デンプン系ポリマー等が挙げられる。また、これらの樹脂は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。これらの樹脂は、本発明のスチレン系樹脂組成物中に、10質量%以下が好ましい。
【0060】
(樹脂以外の成分)
前記スチレン系樹脂、あるいはオレフィン系樹脂以外のその他の成分としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等の可塑剤、タルク、シリカ、クレイ、酸化チタン、炭酸カルシウム等の無機フィラー、ステアリン酸、ラウリン酸、高級脂肪酸金属塩、エチレンビス脂肪酸アマイド等の潤滑剤、カルボン酸金属塩、リン酸エステル金属塩、ジベンジリデンソルビトール、ジ―アルキル―ベンジリデンソルビトール等の結晶核剤、染料、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤、分散剤、木粉等の添加剤、などが挙げられる。
これらの成分の含有量は、本発明のスチレン系樹脂組成物中に、10質量%以下が好ましい。
【0061】
前記染料としては、例えば、アントラキノン系染料、ジスアゾ系、イソインドリノン系、ヘテロ環系、キナクリドン系、ジオキサジン系、フタロシアニン系、モノアゾ系染料等が挙げられる。また、これらの染料は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0062】
前記帯電防止剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、N,Nビス(2-ヒドロキシエチル)アルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルベタイン、アルキルイミダゾリウムベタイン等が挙げられる。また、これらの帯電防止剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0063】
前記酸化防止剤としては、例えば、p-メトキシフェノール、p-メトキシクレゾール、4-メトキシ-1-ナフトール、4,4’-ジアルコキシ-2,2’-ビ-1-ナフトール、3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾール、N’1,N’12-ビス(2-ヒドロキシベンゾイル)ドデカンジヒドラジド、スチレン化フェノール、N-イソプロピル-N’-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン等のフェノール化合物、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、p-ベンゾキノン、メチル-p-ベンゾキノン、2,5-ジフェニルベンゾキノン、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、アントラキノン、ジフェノキノン等のキノン化合物、メラミン、p-フェニレンジアミン、4-アミノジフェニルアミン、
N.N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-i-プロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1.3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、ジフェニルアミン、4,4’-ジクミル-ジフェニルアミン、4,4’-ジオクチル-ジフェニルアミン、ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン)、スチレン化ジフェニルアミン、スチレン化ジフェニルアミンと2,4,4-トリメチルペンテンの反応生成物、ジフェニルアミンと2,4,4-トリメチルペンテンの反応生成物等のアミン化合物、フェノチアジン、ジステアリルチオジプロピオネート、2,2-ビス({[3-(ドデシルチオ)プロピオニル]オキシ}メチル)-1,3-プロパンジイル=ビス[3-(ドデシルチオ)プロピオナート]、ジトリデカン-1-イル=3,3’-スルファンジイルジプロパノアート等のチオエーテル化合物、N-ニトロソジフェニルアミン、N-ニトロソフェニルナフチルアミン、p-ニトロソフェノール、ニトロソベンゼン、p-ニトロソジフェニルアミン、α-ニトロソ-β-ナフトール等、N、N-ジメチルp-ニトロソアニリン、p-ニトロソジフェニルアミン、p-ニトロンジメチルアミン、p-ニトロン-N、N-ジエチルアミン、N-ニトロソエタノールアミン、N-ニトロソジ-n-ブチルアミン、N-ニトロソ-N-n-ブチル-4-ブタノールア
ミン、N-ニトロソ-ジイソプロパノールアミン、N-ニトロソ-N-エチル-4-ブタノールアミン、5-ニトロソ-8-ヒドロキシキノリン、N-ニトロソモルホリン、N-二トロソーN-フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩、二トロソベンゼン、N-ニトロソ-N-メチル-p-トルエンスルホンアミド、N-ニトロソ-N-エチルウレタン、N-ニトロソ-N-n-プロピルウレタン、1-ニトロソ-2-ナフトール、2-ニトロソ-1-ナフトール、1-ニトロソ-2-ナフトール-3,6-スルホン酸ナトリウム、2-ニトロソ-1-ナフトール-4-スルホン酸ナトリウム、2-ニトロソ-5-メチルアミノフェノール塩酸塩、2-ニトロソ-5-メチルアミノフェノール塩酸塩等のニトロソ化合物、リン酸とオクタデカン-1-オールのエステル、トリフェニルホスファイト、3,9-ジオクタデカン-1-イル-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、トリスノニルフェニルホスフィト、亜リン酸-(1-メチルエチリデン)-ジ-4,1-フェニレンテトラ-C12-15-アルキルエステル、2-エチルヘキシル=ジフェニル=ホスフィット、ジフェニルイソデシルフォスファイト、トリイソデシル=ホスフィット、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト等のホスファイト化合物、ビス(ジメチルジチオカルバマト-κ(2)S,S’)亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチル・ジチオカルバミン酸亜鉛等の亜鉛化合物、ビス(N,N-ジブチルカルバモジチオアト-S,S’)ニッケル等のニッケル化合物、1,3-ジヒドロ-2H-ベンゾイミダゾール-2-チオン、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、2-メチル-4,6-ビス[(オクタン-1-イルスルファニル)メチル]フェノール、ジラウリルチオジプロピオン酸エステル、3,3’-チオジプロピオン酸ジステアリル等の硫黄化合物などが挙げられる。これらの重合禁止剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0064】
前記難燃剤としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム、リン酸アミド等の無機リン化合物;リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,5―ジヒドロオキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,7-ジヒドロオキシナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等の有機リン化合物;トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等の窒素系難燃剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等のシリコーン系難燃剤;金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等の無機燃剤などが挙げられる。これらの難燃剤は、単独でも用いることも2種以上を併用することもできる。
【0065】
前記分散剤としては、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルモノグリセライド、ソルビタン脂肪酸エステル、高級アルコール脂肪酸エステル、特殊脂肪酸エステル、高級脂肪酸金属塩等が挙げられる。また、これらの分散剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0066】
前記木粉としては、例えば、ヒノキ、トドマツ、カラマツ、スギ等の間伐材からなるものが挙げられる。また、これらの木粉は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0067】
本発明のスチレン系樹脂組成物の製造方法としては、特に制限されず、どのような方法にて製造してもよい。例えば、前記スチレン系樹脂と抗ウイルス剤とを、ミルやドラムタンブラーなどでドライブレンドした後に二軸押出機等で溶融混錬を行いペレット化する方法などが挙げられる。
【0068】
(成形品)
本発明の成形体は、前記ペレット化した本発明のスチレン系樹脂組成物を、従来公知の方法、例えば、押出成形、射出成形、二色射出成形、サンドイッチ成形、中空成形、圧縮成形、真空成形、回転成形、パウダースラッシュ成形、発泡成形、積層成形、カレンダー成形、ブロー成形等によって、実用上有用な成形品に加工することができる。また、必要に応じて、発泡、粉末、延伸、接着、印刷、塗装、メッキ等の加工をしてもよい。かかる成形方法により、シート、フィルム、各種形状の射出成形品、中空成形品、圧空成型品、真空成形品、押出成形品、発泡成形品等多種多様の成形品として活用でき、これらの成形品は、工業用、食品用、家電用、自動車用、建材用、スポーツ用、レジャー用等の各種包装材料や、各種容器に利用できる。特に本発明の成形体は、食品包装用容器として好ましく利用できる。
【実施例0069】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の例において、「部」及び「%」は、特に断りがない限り、「質量部」及び「質量%」をそれぞれ表す。
【0070】
(抗菌抗ウイルス剤(B1)の合成例1:脂肪酸金属塩(Nd)の調製)
ネオデカン酸224.8質量部と酸化ネオジム60.0質量部を130℃で反応し、130℃で減圧脱水後、ネオデカン酸ネオジム(脂肪酸金属塩(Nd))274.7質量部を得た。得られた脂肪酸金属塩(Nd)中のネオジム含有量は18.9質量%であった。
【0071】
(抗菌抗ウイルス剤(B2)の合成例2:脂肪酸金属塩(Bi)の調製)
2-エチルヘキサン酸330.6質量部と酸化ビスマス125.0質量部を130℃で反応し、130℃で減圧脱水後、2-エチルヘキサン酸ビスマス溶液(脂肪酸金属塩(Bi))439.5質量部を得た。得られた脂肪酸金属塩(Bi)中のビスマス含有量は25質量%であった。
【0072】
( 実施例1~10、及び比較例1~4 ポリスチレン系樹脂組成物及びシートの製造方法)
抗菌抗ウイルス剤(B1)または抗菌抗ウイルス剤(B2)と、ポリスチレン系樹脂とを、表1~表4に従い配合し、東洋精機社製ラボプラストミルを用い、温度200℃、回転数50rpm、混練時間5分の条件下で各50gのポリスチレン系樹脂組成物のペレットを作成した。
その後、各ペレットを、200℃に加熱した熱プレス装置にてプレスし、厚み0.2mmのシートを作製した。
使用したポリスチレン系樹脂を下記に示す。
GPPS:DIC株式会社製、ディックスチレンXC-515
HIPS:DIC株式会社製、ディックスチレンTNH-1000
【0073】
(評価方法 抗ウイルス性試験および抗菌性試験)
実施例及び比較例で得たシートを用い、抗ウイルス性試験および抗菌性試験を行った。
抗ウィルス試験:抗ウイルス評価は、ISO 21702並びにJIS R 1756:2020を参考に沿って行い、バクテリオファージQβとバクテリオファ ージφ6を対象に行った。
抗菌試験:JIS Z 2801に準拠し大腸菌と黄色ブドウ球菌で行った。
判定は抗ウイルス活性値(R)が2以上のとき、抗ウイルス効果があると判断でき、○:2以上 (抗ウイルス効果がある)、△:2未満、1以上(弱い抗ウイルス効果)、×:1未満( 抗ウイルス効果がない)の3段階で評価した。
結果を表1~4に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】


【0076】
【表3】

【0077】
【表4】


【0078】
(透明性試験)
実施例1~5及び比較例1~2で得たシートのうち、GPPSを使用したシートを用い、JIS K 7360-1による全光線透過率の試験を行った。以下の基準で評価した。結果を表5に示す。
○:比較例からの変化率が5%未満
△:比較例からの変化率が5%以上10%未満
×:比較例からの変化率が%10%以上
【0079】
【表5】