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特開2024-8434静止誘導機器の放熱構造及び静止誘導機器
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  • 特開-静止誘導機器の放熱構造及び静止誘導機器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008434
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】静止誘導機器の放熱構造及び静止誘導機器
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/08 20060101AFI20240112BHJP
   H01F 27/20 20060101ALI20240112BHJP
   H05H 1/24 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
H01F27/08 153
H01F27/20
H05H1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110313
(22)【出願日】2022-07-08
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム「変圧器のコンパクト化を実現する次世代型放熱システムの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(71)【出願人】
【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 泰久
(72)【発明者】
【氏名】西田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】畑本 明彩未
(72)【発明者】
【氏名】大森 直毅
【テーマコード(参考)】
2G084
5E050
【Fターム(参考)】
2G084AA23
2G084CC20
2G084CC34
2G084DD01
2G084DD14
2G084DD22
5E050BA05
5E050CB05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】冷却風の漏れやムラの発生を抑制して放熱器の冷却効率(熱伝達率)を向上させて小型化及び輸送費の削減を図る静止誘導機器の放熱構造及び静止誘導機器を提供する。
【解決手段】放熱構造1は、静止誘導機器の一態様である変圧器に備えられる放熱器3a~3dと、放熱器3a~3dに冷却風を供給するファン4と、放熱器3a~3dにおいて当該冷却風の噴流を発生させるプラズマアクチュエータ5と、を有する。放熱器3a~3dは、複数の板状の冷却パネル31からなる。プラズマアクチュエータ5は、前記冷却風の流れに沿う冷却パネル31の面における当該冷却風の上流側の縁部に複数配置される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止誘導機器に備えられる放熱器と、
この放熱器に冷却風を供給するファンと、
前記放熱器において当該冷却風の噴流を発生させるプラズマアクチュエータと、
を有し、
前記放熱器は、複数の板状の冷却パネルからなり、
前記プラズマアクチュエータは、前記冷却風の流れに沿う前記冷却パネルの面における当該冷却風の上流側の縁部に複数配置されたこと
を特徴とする静止誘導機器の放熱構造。
【請求項2】
前記ファン及び前記プラズマアクチュエータは、前記放熱器の温度に基づき駆動制御されることを特徴とする請求項1に記載の静止誘導機器の放熱構造。
【請求項3】
静止誘導機器に備えられる放熱器と、
この放熱器において冷却風を発生させるプラズマアクチュエータと、
を有し、
前記放熱器は、複数の板状の冷却パネルからなり、
前記プラズマアクチュエータは、前記冷却風の流れに沿う前記冷却パネルの面において複数配置されたこと
を特徴とする静止誘導機器の放熱構造。
【請求項4】
前記プラズマアクチュエータは、前記冷却パネルの長手方向及び短手方向に複数配列されたことを特徴とする請求項3に記載の静止誘導機器の放熱構造。
【請求項5】
前記プラズマアクチュエータは、前記放熱器の温度に基づき駆動制御されることを特徴とする請求項3または4に記載の静止誘導機器の放熱構造。
【請求項6】
前記放熱器は、前記冷却風の流れ方向に複数並列に備えられたことを特徴とする請求項1または2に記載の静止誘導機器の放熱構造。
【請求項7】
前記放熱器は、前記冷却風の流れ方向に複数並列に備えられたことを特徴とする請求項3または4に記載の静止誘導機器の放熱構造。
【請求項8】
前記放熱器は、前記冷却風の流れ方向に複数並列に備えられたことを特徴とする請求項5に記載の静止誘導機器の放熱構造。
【請求項9】
請求項1または2に記載の放熱構造を有する静止誘導機器。
【請求項10】
請求項3または4に記載の放熱構造を有する静止誘導機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器やリアクトル等の静止誘導機器の冷却技術に係り、特に静止誘導機器の放熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な静止誘導機器である変圧器で採用される放熱器とファンで構成されたものとしては、例えば、特許文献1に開示の風冷式の放熱器や特許文献2に開示の変圧器の冷却装置が挙げられる。また、これらの特許文献には風ガイドやダクトを有しないものの記載もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-186031号公報
【特許文献2】実開昭57-186008号公報
【特許文献3】特開2020-205215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1,2等の従来の放熱構造は、例えば図3(a)に示したように、冷却風の漏れやムラが発生する。
【0005】
本発明は、以上の事情を鑑み、変圧器等の静止誘導機器の放熱器において冷却風の漏れやムラの発生を抑制して放熱器の冷却効率(熱伝達率)を向上させて静止誘導機器の小型化及び輸送費の削減を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明の一態様は、静止誘導機器に備えられる放熱器と、この放熱器に冷却風を供給するファンと、前記放熱器において当該冷却風の噴流を発生させるプラズマアクチュエータと、を有し、前記放熱器は、複数の板状の冷却パネルからなり、前記プラズマアクチュエータは、前記冷却風の流れに沿う前記冷却パネルの面における当該冷却風の上流側の縁部に複数配置された放熱構造である。
【0007】
本発明の一態様は、前記放熱構造において、前記ファン及び前記プラズマアクチュエータは、前記放熱器の温度に基づき駆動制御される。
【0008】
本発明の一態様は、静止誘導機器に備えられる放熱器と、この放熱器において冷却風を発生させるプラズマアクチュエータと、を有し、前記放熱器は、複数の板状の冷却パネルからなり、前記プラズマアクチュエータは、前記冷却風の流れに沿う前記冷却パネルの面において複数配置された放熱構造である。
【0009】
本発明の一態様は、前記放熱構造において、前記プラズマアクチュエータは、前記冷却パネルの長手方向及び短手方向に複数配列される。
【0010】
本発明の一態様は、前記放熱構造において、前記プラズマアクチュエータは、前記放熱器の温度に基づき駆動制御される。
【0011】
本発明の一態様は、前記放熱構造において、前記放熱器は、前記冷却風の流れ方向に複数並列に備えられる。
【0012】
本発明の一態様は、上記の放熱構造を有する静止誘導機器である。
【発明の効果】
【0013】
以上の本発明によれば、静止誘導機器の放熱器において冷却風の漏れやムラの発生が抑制されるので、放熱器の冷却効率が向上し、静止誘導機器の小型化及び輸送費の削減を図ることできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係るプラズマアクチュエータの模式的な側面図。
図2】(a)本発明の実施形態1における放熱構造のxz軸平面図、(b)当該放熱構造のxy軸平面図、(c)当該放熱構造の冷却パネルのヘッダ領域の拡大図。
図3】(a)従来の放熱構造のxz軸平面における冷却風の流速分布図、(b)実施形態1の放熱構造のxz軸平面における冷却風の流速分布図。
図4】(a)実施形態1の放熱構造のxz軸平面図、(b)ファンのみを有する放熱構造のヘッダ付近のxy軸断面における冷却風の流速分布図、(c)実施形態1の放熱構造のヘッダ付近のxy軸断面における冷却風の流速分布図。
図5】本発明の実施形態2における放熱構造の冷却パネルのxz軸平面図。
図6】実施形態2の放熱構造のxz軸平面における冷却風の流速分布図。
図7】(a)従来の放熱構造を有する変圧器の斜視図、(b)本発明の放熱構造を有する変圧器の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0016】
本発明の実施形態に係るプラズマアクチュエータ5は、図1に示すように、互い違いの2枚の電極(表面側電極51と裏面側電極53)で誘電体52を挟みこんだものであり、裏面側電極53の誘電体52との接触面以外の部分は、絶縁部54により被覆されている。表面側電極51と裏面側電極53の2枚の電極間に数kV・数kHzの変動する交流電圧を交流電源55により加えることで、誘電体52の表面に放電を起こし、プラズマを発生させる。プラズマアクチュエータ5は、このプラズマの力で風を起こすものである。
【0017】
本発明を変圧器に適用した場合について説明するが、静止誘導機器としては、変圧器に限らず、例えばリアクトル等にも適用することも可能である。
【0018】
[実施形態1]
図2に示された実施形態1の放熱構造1は、図7に例示の変圧器2に備えられる放熱器3と、この放熱器3に冷却風を供給するファン4と、放熱器3において当該冷却風の噴流を発生させるプラズマアクチュエータ5と、を有する。
【0019】
放熱器3は、複数の冷却パネル31を前記冷却風の流れ方向に複数並列に備えて成る。
【0020】
図2に例示の放熱器3は、z軸方向に立設される長板状の冷却パネル31がy軸方向にN枚配列されて成る。このN枚の冷却パネル31は放熱器パイプ32により連結されている。放熱器パイプ32の近傍にはファン4とプラズマアクチュエータ5の駆動制御に供される放熱器3の温度を検出する図示省略の温度センサが備えられる。
【0021】
また、放熱器3は、ファン4の位置からx軸方向に複数列、例えば、4列に配置される。以下、x軸方向の1列目、2列目、3列目、4列目の放熱器3を放熱器3a、放熱器3b、放熱器3c、放熱器3dと各々称する。
【0022】
ファン4は、放熱器3に近傍にて複数配置される。図示の態様においては、放熱器3の一端の近傍にファン4がz軸方向に複数配置される。
【0023】
プラズマアクチュエータ5は、前記冷却風の流れに沿う冷却パネル31の面30において、当該冷却風の風上側の縁部に沿って複数配置される。尚、プラズマアクチュエータ5は、冷却パネル31の面30に個別に配置されているが、冷却パネル31毎に1枚のシートで構成して裏面側電極53を1つの共通の要素とし、個々の表面側電極51に交流電圧が印加されるように配線することも可能である。
【0024】
プラズマアクチュエータ5の電源は、ファン4または前記温度センサと共通に確保される。ファン4及びプラズマアクチュエータ5は、前記温度センサにより検出された放熱器3の温度若しくは温度を推定できるパラメータ(電流値等)に基づき駆動制御される。例えば、前記検出された温度が所定の温度となるまでプラズマアクチュエータ5のみが駆動し、当該所定の温度以上になるとファン4及びプラズマアクチュエータ5が同時に駆動する。
【0025】
図3,4を参照して本実施形態の作用効果について説明する。
【0026】
図3(a)は従来の放熱構造の中心部分xz軸平面における冷却風の流速分布を、同図(b)は放熱器3とファン4を有する実施形態1の放熱構造1における中心部分xz軸平面における冷却風の流速分布を示す。本実施例の放熱器3a,3b,3c,3dは、19枚の冷却パネル31を有し、9枚目と10枚目の冷却パネル31の間についての流体解析が行われた。
【0027】
図4(a)は実施形態1における放熱構造のxz軸平面図である。同図(b)はファン4のみを有する放熱構造1のヘッダ付近(上部側のファン4の中心部位)xy軸断面における冷却風の流速分布図である。同図(c)は実施形態1の放熱構造1の同xy軸断面における冷却風の流速分布図である。
【0028】
図3,4の結果から明らかなように、プラズマアクチュエータ5を有していない従来の放熱構造1の放熱器3a,3b,3c,3dにおいては、ファン4からの冷却風が当たっていない部分が存在する。また、放熱器3の上部から前記冷却風が漏れる。さらに、ファン4から遠方(最下流側)の冷却風が弱くなる。また、放熱器3a,3b,3c,3dの冷却パネル31同士の隙間から前記冷却風が漏れる。
【0029】
これに対してプラズマアクチュエータ5を有する実施形態1の放熱構造1によれば、冷却パネル31の冷却面積が増加する。また、放熱器3a,3b,3c,3dの上部からの冷却風の漏れが低減する。さらに、ファン4から遠方(最下流側)の冷却風の流速が強くなる。そして、放熱器3a,3b,3c,3dの冷却パネル31同士の隙間でのファン4の冷却風の漏れが低減する。また、放熱器3の温度に基づきファン4及びプラズマアクチュエータ5を駆動制御することで、ファン4及びプラズマアクチュエータ5の運転コストの低減を図ることができる。
【0030】
したがって、図7(b)の実施形態1の放熱構造1によれば、同図(a)の従来の放熱構造と比較して、熱伝達率が向上(上記の実施例では熱伝導率が20%向上)し、放熱構造1及び変圧器2を備えた製品の小型化を図ることができる。特に、同図(b)に示すように、冷却パネル31の枚数の削減等による水平方向の矢印で示す縮小化、冷却のため油量の削減などによる冷却パネル31等のサイズの縮小等による垂直方向の矢印で示す縮小化が図れる。そして、これにより、変圧器2の輸送制限以内のサイズで出荷でき輸送費を削減できる。よって、変圧器2の解体コスト、輸送コスト並びに現地組み立てコストの低減及び工期の短縮化する。
【0031】
尚、実施形態1は、放熱器3に横付けされたファン4により冷却風が水平に供される態様となっているが、放熱器3の下方にファン4を備えて冷却風が鉛直に供される態様も可能である。
【0032】
[実施形態2]
図5に示された実施形態2の放熱構造1において、実施形態1において、ファン4を有していない態様となっている。すなわち、変圧器2に備えられる放熱器3と、この放熱器3において冷却風を発生させるプラズマアクチュエータ5と、を有する。
【0033】
プラズマアクチュエータ5は、このプラズマアクチュエータ5により生じる冷却風が長手方向(冷却パネル31の下方から上方)の流れとなるように冷却パネル31に複数配置される。特に本態様のプラズマアクチュエータ5は、冷却パネル31の長手方向及び短手方向に複数配列されている。
【0034】
尚、プラズマアクチュエータ5は、冷却パネル31の面30に個別に配置されているが、短手方向で(図5では3つ)1枚のシートで構成して裏面側電極53を1つの共通の要素とし、個々の表面側電極51に交流電圧が印加されるように配線することも可能である。また、短手方向で(同図では3つ)を1つのセットとして、制御回路によりセット単位でオン/オフを制御することも可能である。
【0035】
図6を参照して本実施形態の作用効果について説明する。
【0036】
同図は実施形態2の放熱構造1(放熱器3の中心部位)のxz軸平面における冷却風の流速分布を示す。本実施例の放熱器3も、実施形態1と同様に、19枚の冷却パネル31を有し、9枚目と10枚目の冷却パネル31の間についての流体解析が行われた。
【0037】
同図の結果から明らかなように、実施形態2の放熱構造1によれば、プラズマアクチュエータ5から鉛直に噴流した冷却風の自然対流を利用することで、冷却パネル31の短手方向に流れる冷却風の漏洩を回避でき、前記冷却効率が向上する。また、実施形態1と同様に放熱器3の温度に基づきプラズマアクチュエータ5を駆動制御することで、プラズマアクチュエータ5の運転コストの低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0038】
1…放熱構造
2…変圧器
3,3a,3b,3c,3d…放熱器、30…面、31…冷却パネル、32…放熱器パイプ
4…ファン
5…プラズマアクチュエータ、51…表面側電極、52…誘電体、53…裏面側電極、54…絶縁部、55…交流電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7