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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084367
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
H01L21/66 J
H01L21/66 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198602
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】川田 善之
(72)【発明者】
【氏名】森山 克文
(72)【発明者】
【氏名】森井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】真田 知幸
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃
(72)【発明者】
【氏名】吉田 徹夫
(72)【発明者】
【氏名】西村 宏
【テーマコード(参考)】
4M106
【Fターム(参考)】
4M106AA01
4M106CA38
4M106DB04
4M106DD03
4M106DD10
4M106DD23
4M106DH46
4M106DH47
(57)【要約】
【課題】 3次元形状測定機を用いてウェーハの外観検査を行う場合に、外乱に起因する検査精度の低下を抑制することが可能な検査装置を提供する。
【解決手段】 検査装置は、内外の空気環境を分離するための隔壁で囲まれた測定室を有する測定ユニットと、測定ユニットの隔壁に設けられた第1の開口に着脱可能な3次元形状測定機であって、測定室内のウェーハの検査対象物の3次元形状を非接触で測定する3次元形状測定機とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内外の空気環境を分離するための隔壁で囲まれた測定室を有する測定ユニットと、
前記測定ユニットの隔壁に設けられた第1の開口に着脱可能な3次元形状測定機であって、前記測定室内のウェーハの検査対象物の3次元形状を非接触で測定する3次元形状測定機と、
を備える検査装置。
【請求項2】
前記測定室の隔壁は、遮光性及び防振性のうちの少なくとも一方を有する、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記測定ユニットの隔壁に設けられた第2の開口に設けられた第1のシャッタを備え、
前記ウェーハは、前記第2の開口を介して前記測定室に対して搬入及び搬出される、請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記3次元形状測定機を前記測定ユニットに取り付けた際に、前記3次元形状測定機を覆うカバーであって、内外の空気環境を分離するためのカバーを備える、請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項5】
前記カバーは、遮光性及び防振性のうちの少なくとも一方を有する、請求項4に記載の検査装置。
【請求項6】
前記第1の開口に取付可能な透明部材を備え、
前記3次元形状測定機は、前記透明部材を介して、前記測定室内の前記検査対象物の測定を行う、請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項7】
前記測定ユニットの隔壁に設けられた第3の開口に取り付けられ、前記測定室内の空気を循環させるためのファンと、
前記第3の開口の開閉のためのファン用シャッタと、
を備える請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項8】
内外の空気環境を分離するための隔壁で囲まれた準備室を有するローダ部と、
前記ローダ部の隔壁に設けられた開口に設けられた第2のシャッタとを備え、
前記ウェーハは、前記ローダ部の前記開口を介して前記準備室に対して搬入及び搬出される、請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項9】
前記準備室の隔壁は、遮光性及び防振性のうちの少なくとも一方を有する、請求項8に記載の検査装置。
【請求項10】
前記測定ユニットの前記第1の開口に着脱可能なテストヘッドを備え、
前記検査対象物は、前記テストヘッドを用いて前記ウェーハを電気的に検査したときに電極パッドに形成された針跡である、請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項11】
前記測定ユニットの前記隔壁に形成された第1の取付部と、
前記テストヘッドに形成され、前記第1の取付部に取付可能な形状に形成された第2の取付部と、
前記3次元形状測定機に形成され、前記第1の取付部に取付可能な形状に形成された第3の取付部と、
を備える、請求項10に記載の検査装置。
【請求項12】
前記第2の取付部と前記第3の取付部は、前記第1の取付部に嵌合可能な形状に形成される、請求項11に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検査装置に係り、特に半導体ウェーハ上に形成された半導体装置の検査を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程では、品質保証及び歩留まりの向上のために、各種の製造工程で各種の検査が行われる。例えば、ウェーハレベル検査では、半導体ウェーハ(以下、ウェーハという。)上に個々の半導体デバイスに対応する複数のチップが形成された段階で、半導体デバイスの電極パッドをプローブカードのプローブ針に接触させ、テスト信号を供給する。そして、このテスト信号に応じて半導体デバイスが出力する信号をテスタで測定して、半導体デバイスが正常に動作するかを電気的に検査する。
【0003】
上記のようなウェーハレベル検査では、電極パッドの表面の酸化膜のみをプローブ針で削り取って、プローブ針を電極パッドに接触させて導通させるのが理想的である。ウェーハレベル検査では、電極パッドの表面の酸化膜をプローブ針で削り取るためにオーバドライブをかける。ウェーハレベル検査の後に行われるウェーハの外観検査では、ウェーハレベル検査の後に電極パッドに形成された針跡の検出を行う。
【0004】
ウェーハレベル検査の後の針跡の検出において、電極パッドから針跡が検出されなかった場合には、測定不良と判定される。一方、プローブ針が電極パッドに突き刺さって電極パッドの下地層が露出した場合には、その電極パッドを不良として取り扱う。
【0005】
特許文献1には、プローブ針を用いて検査した後に電極パッドの下地層の露出状況を自動的に検出するための針跡検査装置が開示されている。特許文献1では、カメラを用いて、電極パッド上に形成された針跡を撮像し、電極パッドの下地層の露出の有無を検査するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-289818号公報
【特許文献2】特開2022-133631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ウェーハの外観検査では、カメラで撮像したウェーハの画像(2次元画像)から、例えば、針跡、傷又は異物等の有無の検査を行う。
【0008】
特許文献1のように、ウェーハの電極パッドから針跡を検出する場合、ウェーハレベル検査後にウェーハを照明手段で照明し、ウェーハ上面の画像(2次元画像)をカメラで撮像する。そして、画像の明暗に基づいて電極パッドと下地層とを区別する。
【0009】
上記のように画像の明暗に基づいて電極パッドと下地層とを区別する場合、画像の明暗がウェーハ表面の形状による光の当たり具合に起因するものであるのか、材料の違いに起因するものであるのか、判定が困難な場合がある。例えば、ウェーハ表面の形状に起因する暗部の割合が大きい場合には、下地層の露出がなくても電極パッドが不良と判定されてしまう場合があり得る。
【0010】
このため、検査対象物の3次元形状を非接触で測定可能な3次元形状測定機を用いて、針跡の3次元形状を測定することが考えられる。例えば、特許文献2には、3次元形状測定機を用いて、電極パッドの基準面から陥没している凹部の体積と突出している凸部の体積の体積差から、プローブ針が電極パッドにコンタクトしたときに発生するパーティクル発生量を算出するパーティクル計測装置が開示されている。
【0011】
しかしながら、ウェーハレベル検査後のウェーハを、上記のような外観検査のためにステージ上に載せた場合、温度ムラにより空気の擾乱が発生する場合がある。このような空気の擾乱は、3次元形状測定機による測定の精度の低下の原因となり得る。例えば、3次元形状測定機として白色干渉顕微鏡を用いる場合には、干渉レンズが温度の影響を受けやすい。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、3次元形状測定機を用いてウェーハの外観検査を行う場合に、外乱に起因する検査精度の低下を抑制することが可能な検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る検査装置は、内外の空気環境を分離するための隔壁で囲まれた測定室を有する測定ユニットと、測定ユニットの隔壁に設けられた第1の開口に着脱可能な3次元形状測定機であって、測定室内のウェーハの検査対象物の3次元形状を非接触で測定する3次元形状測定機とを備える。
【0014】
本発明の第2の態様に係る検査装置は、第1の態様に係る測定室の隔壁が遮光性及び防振性のうちの少なくとも一方を有するようにしたものである。
【0015】
本発明の第3の態様に係る検査装置は、第1又は第2の態様において、測定ユニットの隔壁に設けられた第2の開口に設けられた第1のシャッタを備え、ウェーハは、第2の開口を介して測定室に対して搬入及び搬出される。
【0016】
本発明の第4の態様に係る検査装置は、第1から第3の態様のいずれかにおいて、3次元形状測定機を測定ユニットに取り付けた際に、3次元形状測定機を覆うカバーであって、内外の空気環境を分離するためのカバーを備える。
【0017】
本発明の第5の態様に係る検査装置は、第4の態様に係るカバーの隔壁が遮光性及び防振性のうちの少なくとも一方を有するようにしたものである。
【0018】
本発明の第6の態様に係る検査装置は、第1から第3の態様のいずれかにおいて、第1の開口に取付可能な透明部材を備え、3次元形状測定機は、透明部材を介して、測定室内の検査対象物の測定を行う。
【0019】
本発明の第7の態様に係る検査装置は、第1から第6の態様のいずれかにおいて、測定ユニットの隔壁に設けられた第3の開口に取り付けられ、測定室内の空気を循環させるためのファンと、第3の開口の開閉のためのファン用シャッタとを備える。
【0020】
本発明の第8の態様に係る検査装置は、第1から第6の態様のいずれかにおいて、内外の空気環境を分離するための隔壁で囲まれた準備室を有するローダ部と、ローダ部の隔壁に設けられた開口に設けられた第2のシャッタとを備え、ウェーハは、ローダ部の開口を介して準備室に対して搬入及び搬出される。
【0021】
本発明の第9の態様に係る検査装置は、第8の態様に係る準備室の隔壁が遮光性及び防振性のうちの少なくとも一方を有するようにしたものである。
【0022】
本発明の第10の態様に係る検査装置は、第1から第9の態様のいずれかにおいて、測定ユニットの第1の開口に着脱可能なテストヘッドを備え、検査対象物は、テストヘッドを用いてウェーハを電気的に検査したときに電極パッドに形成された針跡である。
【0023】
本発明の第11の態様に係る検査装置は、第10の態様において、測定ユニットの隔壁に形成された第1の取付部と、テストヘッドに形成され、第1の取付部に取付可能な形状に形成された第2の取付部と、3次元形状測定機に形成され、第1の取付部に取付可能な形状に形成された第3の取付部とを備える。
【0024】
本発明の第12の態様に係る検査装置は、第11の態様に係る第2の取付部と第3の取付部を第1の取付部に嵌合可能な形状に形成したものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、内外の空気環境を分離するための隔壁で測定室を囲むことにより、測定室の内部への外乱の影響を最小化することができ、空気の擾乱に起因する検査対象物の3次元形状の検査精度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る検査装置を示す図(ウェーハレベル検査時)である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る検査装置を示す図(電極パッドの検査時)である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る検査装置の制御系を示すブロック図である。
図4図4は、本発明の変形例1に係る検査装置を示す図(ウェーハレベル検査時)である。
図5図5は、本発明の変形例2に係る検査装置を示す図(ウェーハレベル検査時)である。
図6図6は、本発明の変形例3に係る検査装置におけるテストヘッドと3D形状測定機を示す図である。
図7図7は、本発明の一実施形態に係る検査方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面に従って検査装置の実施の形態について説明する。
【0028】
[検査装置]
本実施形態では、ウェーハの外観検査の例として、ウェーハレベル検査の後にウェーハWの電極パッドPに形成された針跡の検出を行う場合について説明するが、本開示はこれに限定されない。例えば、ウェーハW上にある任意の検査対象物(例えば、傷又は異物等)の測定(検出)にも本実施形態を適用可能である。
【0029】
図1及び図2は、本発明の一実施形態に係る検査装置を示す図である。図2は、ウェーハレベル検査の実施時の状態を示しており、図1は、ウェーハレベル検査後のウェーハWの電極パッドPの検査(針跡の検出)時の状態を示している。
【0030】
ウェーハレベル検査の実施時には、図2に示すように、検査装置1の測定ユニット100のハウジングにテストヘッド70を取り付ける。次に、検査対象のウェーハWの表面に形成された電極パッドPにプローブカード72のプローブ針74を接触させてテスト信号を供給する。そして、このテスト信号に応じて半導体デバイス(チップC)が出力する信号をテスタで測定して、半導体デバイスが正常に動作するかを電気的に検査する。ウェーハレベル検査では、プローブ針74によって電極パッドPの表面の酸化膜の一部が削り取られて、プローブ針74と電極パッドPとが導通する。
【0031】
ウェーハWの電極パッドPの検査時には、図1に示すように、検査装置1の測定ユニット100に3次元形状測定機(以下、3D形状測定機という。)52を取り付ける。3D形状測定機52は、検査対象物の3次元形状を非接触で測定する装置であり、測定ユニット100の隔壁110に形成された第1の開口に着脱可能に取り付けられる。
【0032】
ウェーハWの電極パッドPの検査では、まず、2Dカメラ(例えば、ウェーハWのアライメント用の撮像部)50を用いてチップCの画像を撮像し、電極パッドPのXY平面視での配置に関する情報を含む電極パッド配置情報を取得する。
【0033】
次に、上記の電極パッドPの配置情報に基づいて、検査対象の電極パッドPと3D形状測定機52の位置合わせを行い、3D形状測定機52により電極パッドPの検査を実施する。3D形状測定機52は、電極パッドPの表面に接触することなく、電極パッドPの3次元形状を測定するための装置である。3D形状測定機52における測定手法は特に限定されず、例えば、白色干渉法、SD-OCT法(Spectral Domain Optical Coherence Tomography)、FD-OCT法(Fourier Domain Optical Coherence Tomography)、レーザー共焦点法、三角測量法、光切断法、パターン投影法、光コム法(Optical Comb)及びフォーカスバリエーション法等を適用することができる。また、白色干渉法を用いた3D形状測定機52としては、例えば、特開2016-080564号公報又は特開2016-161312号公報に記載のものを適用することができる。
【0034】
電極パッドPの検査では、3D形状測定機52を用いてその3次元形状を測定し、電極パッドPの特徴量(例えば、電極パッドPに形成された針跡の最大谷深さSv)を求める。ここで、最大谷深さSvは、JIS(Japanese Industrial Standards)B 0681-2:2018又はISO(International Organization for Standardization)25178-2:2012により定義されるパラメータである。最大谷深さSvは、電極パッドPの表面において高さ(Z座標)が平均値(相加平均値)となる平均面Pmを基準とした高さの最小値の絶対値である。最大谷深さSvが閾値を越えた場合には、針跡により下地層が露出しており、回路へのダメージが生じている可能性が高いとして異常(NG)と判定する。具体的には、最大谷深さSvと電極パッドPの厚さの設計値との関係に基づいて、最大谷深さSvが電極パッドPの厚さの設計値以上、又はこの設計値の90%以上の場合に、その電極パッドPをNGと判定する。
【0035】
なお、判定は、上記の例に限定されない。例えば、電極パッドPの厚さ、電極パッドPに対して針跡Mの面積が占める割合、位置又は電極パッドPの材質の強度(脆さ)に基づいて判定の最大谷深さSvに関する閾値を変更してもよい。例えば、電極パッドPが厚いほど、下地層が露出しにくいと考えられるので、最大谷深さSvに関する閾値を電極パッドPの厚さの設計値により近い値にしてもよい。また、電極パッドPの材質の強度が低い(脆い)ほど、電極パッドPの裂け等が生じる可能性が高いと考えられるので、最大谷深さSvに関する閾値を電極パッドPの厚さの設計値により小さい値にしてもよい。
【0036】
また、電極パッドPに対して針跡Mの面積が占める割合が基準値以上の場合、電極パッドPにおいて針跡M以外の部分が基準値以下の場合、電極パッドP端部と針跡Mとの距離が基準値以下の場合等には、電極パッドPの裂け等が生じる可能性が高いと考えられるので、NGと判定するようにしてもよい。この場合、電極パッドPの材質の強度に応じて各基準値を調整してもよく、例えば、電極パッドPの強度が低い(脆い)ほど、NGと判定する基準を厳しくしてもよい。
【0037】
なお、本実施形態では、2Dカメラ50を用いて電極パッドPの配置に関する情報を取得するようにしたが、本開示はこれに限定されない。例えば、電極パッドPの配置についてチップCの設計情報を用いて、2Dカメラ50を用いた取得工程を省略してもよい。また、2Dカメラ50により撮像した画像とチップCの設計情報とを比較して、両者の差分が閾値以上の場合に、2Dカメラ50により撮像した画像から電極パッドPの配置に関する情報を取得してもよい。
【0038】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る測定ユニット100は、隔壁(しきり)110により囲まれた測定室112を有しており、測定室112において、ウェーハレベル検査と電極パッドPの検査が行われる。
【0039】
測定室112の隔壁110は、遮光性が高い材料により形成される。隔壁110の遮光率(例えば、JIS L 1055:2009に基づく遮光率)は、一例で90%以上であることが好ましい。なお、隔壁110は、断熱性が高い(熱伝導率が低い)材料を含んでいてもよい。
【0040】
測定室112は、隔壁110により測定室112の外部と隔たれている。隔壁110は、測定室112の内外の空気環境を分離する機能を有する。すなわち、隔壁110を設けることにより、測定室112の外部で発生した外乱(例えば、騒音、温度及び振動等)の測定室112の内部への影響が抑制されている。
【0041】
隔壁110は、防音性能(防振性能)を有する。隔壁110の防音性能を実現するための構造としては、例えば、隔壁110の内部構造に吸音材を入れたもの、又は隔壁110自体の共振周波数が騒音により振動を引き起こす周波数よりも高くなるように作製したものが挙げられる。その周波数は、周囲の環境にもよるが、一例で100~200Hz以上であることが好ましい。
【0042】
通常、半導体製造工場では、空調及び他の生産設備等から騒音が発生し、この騒音のレベルは70dBを越えることがある。この騒音がステージSTに伝わると振動となる。測定中にステージSTが振動すると、3D形状測定機52とウェーハWとの相対距離が変化してしまい、ウェーハW上の検査対象物の高さ方向(Z方向)に測定誤差が発生する場合がある。このように、空調及び他の生産設備等から発生する振動も測定誤差の原因となり得る。
【0043】
本実施形態では、防音性能を有する隔壁110により、振動に起因する測定精度の低下を防止することができる。
【0044】
さらに、本実施形態では、この隔壁110により、測定室112の外部からの輻射熱がステージST及びウェーハWに与える影響を抑制することができ、温度変化に起因するウェーハWの変形(熱ドリフト)により測定精度が低下することを抑制することができる。また、測定室112の内部でステージSTの温度上昇等により温度ムラが発生したとしても、温度ムラに起因する空気の擾乱が測定室112内に限定されるので、測定室112内の空気が早期に安定化する。
【0045】
また、2Dカメラ50及び3D形状測定機52等の測定光学系は測定室112の外部からの外乱光の影響を受ける場合がある。特に3D形状測定機52が共焦点型の場合にはこのような外乱光の影響を受けやすい。上記のように、本実施形態に係る隔壁110は高い遮光性を有するので、外乱光に起因する測定精度の低下を防止することができる。
【0046】
さらに、図1及び図2に示すように、本実施形態に係るローダ部200は、隔壁(しきり)210により囲まれた準備室212を有しており、検査前後のウェーハWは準備室212内に格納される。隔壁210は、隔壁110と同様に、準備室212の内外の空気環境を分離する機能を有する。
【0047】
ローダ部200の準備室212の温度は、測定ユニット100の測定室112と同様に遮光され、かつ、外気から遮蔽されており、測定室112と同様の環境が再現されている。外界から測定室112内のステージSTにウェーハWを直接設置(ロード)するよりも、測定室112と同様の環境が再現されている準備室212にウェーハWを一時待機させた方が、ウェーハWが測定室112のステージSTにロードされた時点で、ウェーハWとステージST又は測定室112内の空気との間の温度差が小さくなる(好ましくはゼロになる)。したがって、温度ムラに起因する測定誤差を低減することができる。
【0048】
ここで、測定誤差について説明すると、例えば、ステージSTとウェーハWとの間に温度差がある場合には、ウェーハWに歪みが発生して測定精度が低下し得る。また、ウェーハWと測定室112内の空気との間に温度差がある場合には、ウェーハWの上側の空気に温度分布が発生したり、空気の擾乱(例えば、空気の屈折率分布)が発生し得る。空気の屈折率分布が発生すると、3D形状測定機52による測定時に、XY平面内に光路長のゆらぎが発生し得る。この結果、3D形状測定機52による測定結果において平面度が悪化し、測定精度の劣化が生じ得る。
【0049】
本実施形態では、ローダ部200及び準備室212を設けたことにより、温度ムラに起因する測定誤差を低減することができ、測定精度が向上する。また、準備室212にウェーハWを一時待機させている待機時間帯に、測定室112で別のウェーハWの測定を行うことができるので、測定に要するトータルの時間を短縮することができる。
【0050】
さらに、本実施形態では、ローダ部200の準備室212内に温度調整部232及び温度検出部234を設けて、準備室212における待機時間を短縮可能としている。すなわち、ローダ部200の準備室212の温度は、ウェーハWの検査を実施する際には温度調整部232(例えば、ヒータ又はチラー等)により所定の検査温度に保たれる。温度検出部234は、準備室212内の温度及びウェーハWの温度を測定する温度センサを含んでおり、温度検出部234による測定結果に基づいて温度調整部232の出力が制御される。これにより、ウェーハWの温度を測定室112における検査時の温度に調整することができる。
【0051】
なお、準備室212内の湿度を調整するための調湿機及び湿度センサを準備室212内に設けてもよい。また、温度調整部232、温度検出部234、調湿機及び湿度センサを省略することも可能である。
【0052】
本実施形態のように、準備室212内に温度調整部232及び温度検出部234を設ける場合、測定室112内にも、温度検出部(温度センサ)を設けてもよい。
【0053】
測定室112内のステージSTにはモータが含まれており、モータの動作中には発熱をする。準備室212と測定室112との間の接合部を小さくしたとしても、シャッタ120及び220を開放したときに、準備室212と測定室112との間で空気の混合又は熱交換が行われてしまう。このため、準備室212と測定室112との間における熱交換をゼロにすることは困難である。
【0054】
温度調整部232は、準備室212及び測定室112に設けた温度検出部による温度の検出値の差により、準備室212内の温度を測定室112内の温度に近づける。
【0055】
なお、準備室212内の温度調整部232に代えて、測定室112に温度調整部(例えば、ヒータ又はチラー等)を設けてもよい。すなわち、準備室212及び測定室112に設けた温度検出部による温度の検出値の差により、測定室112内の温度を準備室212内の温度に近づけるようにしてもよい。また、測定室112と準備室212の両方に温度調整部を設けることも可能である。
【0056】
準備室212の隔壁210も、測定室112の隔壁110と同様に、遮光性が高い材料により形成される。また、隔壁210は、隔壁110と同様に、断熱性が高い(熱伝導率が低い)材料を含んでいてもよい。これにより、準備室212内のウェーハWの温度が測定室112内に伝わりにくくなっており、測定室112への影響が抑制されている。
【0057】
隔壁210も、隔壁110と同様に、防音性能(防振性能)を有する。隔壁210の防音性能を実現するための構造としては、例えば、隔壁210の内部構造に吸音材を入れたもの、又は隔壁210自体の共振周波数が騒音により振動を引き起こす周波数よりも高くなるように作製したものが挙げられる。その周波数は、周囲の環境にもよるが、一例で100~200Hz以上であることが好ましい。
【0058】
本実施形態では、防音性能を有する隔壁210により、ローダ部200が拾った音による振動が測定室112(ステージST)及び3D形状測定機52に伝わることを防止することができる。これにより、振動に起因する測定精度の低下を防止することができる。
【0059】
測定ユニット100の隔壁110には、ウェーハWの搬入及び搬出用の第2の開口が設けられている。第2の開口には、シャッタ120(第1のシャッタの一例)が設けられており、開閉可能となっている。一方、ローダ部200の隔壁にも、ウェーハWの搬入及び搬出用の開口が設けられており、この開口には、シャッタ220(第2のシャッタの一例)が設けられており、開閉可能となっている。
【0060】
上記のように、測定ユニット100とローダ部200との間のウェーハWの搬送経路は、シャッタ120及び220により仕切られている。シャッタ120及び220も、隔壁110及び210と同様に、遮光性が高い材料により形成される。また、シャッタ120及び220は、隔壁110及び210と同様に、断熱性が高い(熱伝導率が低い)材料を含んでいてもよい。また、シャッタ120及び220は閉じたときに、測定室112及び準備室212の内部の気密性が保たれるものであってもよい。これにより、準備室212内のウェーハWの温度等が測定室112に伝導しにくくなっている。
【0061】
なお、図1及び図2では、シャッタ120及び220として、上下開閉式で巻取式の例を示しているが、シャッタの種類はこれに限定されない。シャッタの種類は、例えば、折畳式、スイングアップ(はね上げ)式又はスライド式等であってもよい。また、シャッタ120及び220に代わる可動式のしきり等を用いてもよいし、このしきりを中空の部材で構成してもよい。
【0062】
ここで、測定ユニット100とローダ部200は、互いの物理的な接触を小さくするか、又は互いに離しておいてもよい。これにより、ローダ部200から測定ユニット100への熱の伝導を抑制することができ、熱抵抗を大きくすることができる。
【0063】
また、準備室212の質量は、測定室112の質量よりも小さくしてもよい。また、測定ユニット100とローダ部200との接合部分を小さくするようにしてもよい。これにより、準備室212で発生した振動が測定ユニット100の3D形状測定機52及び測定室112に伝わることを抑制することができる。
【0064】
測定室112の隔壁110には、ファン130を設置するための開口(第3の開口の一例)が設けられている。ファン130は、測定室112内で空気を循環させ、測定室112内の空気環境を一様にする。これにより、測定室112内の温度ムラが解消可能となる。
【0065】
ファン用シャッタ132は、ファン130が設置された開口の開閉のためのシャッタである。ファン用シャッタ132の制御の種類も特に限定されず、電動又は手動で開閉する電動式又は手動式であってもよいし、風圧により動開閉する風圧式であってもよい。なお、図1及び図2では、ファン用シャッタ132として、可動式のルーバーを含む例を示しているが、ファン用シャッタ132の種類はこれに限定されず、巻取式、折畳式、スイングアップ式又はスライド式等あってもよい。
【0066】
なお、測定室112内の空気の循環を容易に行うことができる場合、又は測定室112の容積が小さい場合等には、ファン130及びファン用シャッタ132は省略可能である。
【0067】
本実施形態によれば、測定室112を囲む隔壁110を設けたことにより、測定室112の内部の空気を早期に安定化させることができ、空気の擾乱に起因する3次元形状の検査精度の低下を抑制することができる。
【0068】
なお、本実施形態では、ローダ部200及び準備室212を省略することも可能である。この場合、ステージSTにウェーハWを設置した後、温度ムラが解消するまで一定時間待機すればよい。このように、ローダ部200及び準備室212を省略した場合には、待機時間を設けることにより、測定精度の劣化を防止することができる。
【0069】
(検査装置の構成)
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る検査装置1は、測定ユニット100と、検査対象のウェーハWを測定ユニット100に供給及び回収するローダ部200とを含んでいる。測定ユニット100とローダ部200とは分離可能となっている。なお、測定ユニット100及びローダ部200は複数設けることが可能であるが、説明の簡略化のため、それぞれ1個のみ示している。
【0070】
ローダ部200は、ウェーハカセット230が載置されるロードポートと、各測定ユニット100とウェーハカセット230との間でウェーハWを搬送する搬送ユニット202(図3参照)とを有する。
【0071】
ローダ部200から各測定ユニット100にウェーハWが供給されると、ウェーハWは、各測定ユニット100のステージSTの保持面に吸着保持される。
【0072】
ステージ移動機構102は、ステージSTの下面(ウェーハWが吸着保持される保持面とは反対側の面)を支持する。ステージ移動機構102は、XYZ方向に移動可能であり、かつ、θ方向(Z方向周りの回転方向)に回転可能に構成される。これにより、ステージSTの保持面に吸着保持されたウェーハWは、ステージ移動機構102により、ステージSTと一体となってXYZ方向に移動及びθ方向に回転可能である。
【0073】
なお、本実施形態では、ステージSTの熱容量が大きくなるように調整されていてもよい。例えば、ステージSTの厚みTstを測定対象のウェーハWの厚みTwよりも厚くする(一例でTst≧3×Tw)ことにより、ステージSTの熱容量を大きくしてもよい。これにより、ウェーハWの熱が測定室112内の環境(例えば、温度)に及ぼす影響を抑制することができる。
【0074】
図2に示すように、ウェーハレベル検査時には、検査装置1の測定ユニット100にテストヘッド70を取り付ける。
【0075】
プローブカード72は、ステージSTに対向する位置に設けられており、ステージSTの保持面に対して略平行に配置される。プローブカード72には、ステージSTに対向する面に複数のプローブ針74が形成されている。プローブカード72はテストヘッド70を介してテスタ本体と接続されている。
【0076】
ウェーハWには複数のチップCが形成されており、各チップCは1以上の電極パッドPを備える。ステージ移動機構102によりステージSTをXYZ方向に移動又はθ方向に回転させることにより、各プローブ針74を対応する電極パッドPにコンタクトさせるようにウェーハWとプローブカード72との位置合わせを行う。
【0077】
検査装置1によりプローブ針74と電極パッドPとの位置合わせ及びコンタクトが行われた後、テストヘッド70、プローブカード72及びプローブ針74を介して、テスタ本体から電気信号をチップCに送り、ウェーハW上のチップCの電気的特性の検査(ウェーハレベル検査)を行う。電気的特性の検査結果は、入出力部12(図3参照)により操作者が確認可能な形態で出力される。
【0078】
ウェーハW上のチップCの電気的特性の検査が終了した後、ウェーハWは搬送ユニットにより検査装置1からローダ部200に搬送されて回収される。
【0079】
図1に示すように、ウェーハWの電極パッドPの検査時には、検査装置1の測定ユニット100に3D形状測定機52を取り付ける。そして、3D形状測定機52により、ウェーハレベル検査で電極パッドPに形成された針跡を順次検出し、電極パッドPに形成された針跡の良否判定を行う。
【0080】
なお、本実施形態では、2Dカメラ50と3D形状測定機52とを別々に取り付けたが、これに限定されない。例えば、レボルバー機構により、2Dカメラ50と3D形状測定機52とを切替可能としてもよい。
【0081】
また、テストヘッド70、2Dカメラ50及び3D形状測定機52等とステージSTとは、相対的に移動可能であればよく、ステージSTに対してテストヘッド70、2Dカメラ50及び3D形状測定機52等を移動可能としてもよい。
【0082】
(検査装置の制御系)
図3は、本発明の一実施形態に係る検査装置の制御系を示すブロック図である。
【0083】
図3に示すように、本実施形態に係る検査装置1は、制御部10、入出力部12、搬送ユニット駆動部14、搬送アーム駆動部16及び測定制御部18を備える。
【0084】
制御部10は、プロセッサ(例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processor Unit)等)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ストレージデバイス(例えば、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等)を含んでいる。制御部10では、ストレージデバイスに記憶されている制御プログラム等の各種プログラムをプロセッサにより実行することにより、検査装置1の各部の機能が実現される。
【0085】
入出力部12は、検査装置1の操作のためのGUI(Graphical User Interface)等を表示する表示部(例えば、液晶ディスプレイ)、及び操作者からの操作入力を受け付けるための操作部(例えば、タッチパネル、又はキーボード、ポインティングデバイス等)等を含んでいる。
【0086】
搬送ユニット駆動部14は、ローダ部200内において、搬送ユニット202を、XYZ方向に移動させ、かつθ方向(Z方向周り)に回転させるためのモータ等を含んでいる。
【0087】
搬送アーム駆動部16は、搬送ユニット202に取り付けられた搬送アーム204をその長さ方向に伸縮させるためのモータと、搬送アーム204の吸着孔にウェーハWを吸着するための制御弁等を含んでいる。この制御弁は、検査装置1の設置場所に設けられたバキューム(ポンプ)に接続される。
【0088】
シャッタ駆動部30は、測定ユニット100側のシャッタ120と、ローダ部200側のシャッタ220の開閉を行うためのモータ等を含んでいる。測定ユニット100とローダ部200との間でウェーハWを搬送するときには、シャッタ120及び220が開放され、搬送時以外には、シャッタ120及び220は閉じられる。
【0089】
ファン駆動部32は、測定室112のファン130を駆動するためのモータ等を含んでいる。また、ファン駆動部32は、ファン用シャッタ132が電動式の場合には、ファン用シャッタ132の開閉を行うためのモータ等を含んでいる。ファン130は、3D形状測定機52による電極パッドPの検査時には停止され、それ以外の場合には、例えば、測定室112内の温度センサにより温度ムラが検出された場合等には、必要に応じて、ファン130により測定室112内の空気を循環させることができる。
【0090】
制御部10は、シャッタ駆動部30によりシャッタ120及び220の開閉制御を行う。また、制御部10は、搬送ユニット駆動部14及び搬送アーム駆動部16により搬送ユニット202及び搬送アーム204をそれぞれ制御して、複数のウェーハカセットからウェーハWを取り出したり、複数の測定ユニット100に対してウェーハWの搬入及び搬出を行ったりする。
【0091】
また、制御部10は、温度検出部234による準備室212内の温度の測定結果を取得して、この測定結果に基づいて温度調整部232を制御するようにしてもよい。
【0092】
針合わせカメラ54は、プローブ針74の先端位置の検出を行うための装置であり、例えば、ステージSTに設けられる。制御部10は、プローブ針74の先端位置の検出結果と、2Dカメラ50による電極パッドPの検出結果に基づいて、プローブ針74と電極パッドPとの位置合わせを行う。
【0093】
測定制御部18は、制御部10からの制御信号にしたがって、測定ユニット100に設けられたウェーハWの検査用のテストヘッド70の駆動制御、2Dカメラ50の撮像制御、3D形状測定機52の計測制御、及び針合わせカメラ54の撮像制御を行う。なお、テストヘッド70及び2Dカメラ50としては、例えば、特開2019-102591号公報に記載のものを用いることができる。
【0094】
本実施形態によれば、遮光性を有する隔壁110で測定室112を囲んだことにより、測定室112の内部への外乱の影響を最小化することができ、空気の擾乱に起因する3次元形状の検査精度の低下を抑制することができる。
【0095】
[変形例1]
図4は、本発明の変形例1に係る検査装置を示す図(ウェーハレベル検査時)である。以下の説明では、上記の実施形態と共通又は類似する構成については、同一又は添字を付した符号を付して説明を省略する。
【0096】
図4に示すように、変形例1に係る検査装置1Aでは、測定ユニット100に3D形状測定機52を取り付けた際に、3D形状測定機52に直方体又は筒形状等のカバー150をかぶせて覆う。カバー150も、隔壁110及び210と同様に、遮光性が高い材料により形成される。また、カバー150は、隔壁110及び210と同様に、断熱性が高い(熱伝導率が低い)材料を含んでいてもよい。
【0097】
図4に示すように、3D形状測定機52は、カバー150の外部と隔たれた空間に取り付けられている。カバー150は、その内外の空気環境を分離する機能を有する。すなわち、カバー150を設けることにより、外部で発生した外乱(例えば、騒音、温度及び振動等)の影響が抑制されている。
【0098】
カバー150は、隔壁110及び210と同様に、防音性能(防振性能)を有する。カバー150の防音性能を実現するための構造としては、例えば、カバー150の内部構造に吸音材を入れたもの、又はカバー150自体の共振周波数が騒音により振動を引き起こす周波数よりも高くなるように作製したものが挙げられる。その周波数は、周囲の環境にもよるが、一例で100~200Hz以上であることが好ましい。
【0099】
通常、半導体製造工場では、空調及び他の生産設備等から騒音が発生し、この騒音のレベルは70dBを越えることがある。この騒音が3D形状測定機52に伝わると振動となる。測定中に3D形状測定機52が振動すると、3D形状測定機52とウェーハWとの相対距離が変化してしまい、ウェーハW上の検査対象物の高さ方向(Z方向)に測定誤差が発生する場合がある。このように、空調及び他の生産設備等から発生する振動も測定誤差の原因となり得る。
【0100】
また、3D形状測定機52のうち、白色干渉顕微鏡、又はフォーカスバリエーション等を使用するタイプの装置では、走査軸のスケールとスケールヘッドとの間にも振動が伝わり得る。このタイプの装置では、スケールの読み取り位置に応じて出力されるトリガ信号に応じて撮像を行うことが一般的であるから、振動が伝わると、装置に含まれる撮像部の最大フレームレートを超えてしまい、フレームドロップが発生し得る。このようなフレームドロップも測定誤差の原因となり得る。
【0101】
本実施形態では、防音性能を有するカバー150により、上記のような振動に起因する測定精度の低下を防止することができる。
【0102】
さらに、本実施形態では、このカバー150により、外部からの輻射熱が3D形状測定機52及びその支持部材等に与える影響を抑制することができる。そして、温度変化に起因する支持部材等の変形(熱ドリフト)、又は3D形状測定機52の測定光学系に対する熱の影響により、測定精度が低下することを抑制することができる。
【0103】
[変形例2]
図5は、本発明の変形例2に係る検査装置を示す図(ウェーハレベル検査時)である。
【0104】
図5に示すように、変形例2に係る検査装置1Bでは、ウェーハレベル検査時に測定ユニット100の上部の開口に透明部材160が取り付けられており(例えば、嵌め込まれており)、3D形状測定機52は、測定室112の外部からウェーハWの電極パッドPの検査を行うようになっている。ここで、透明部材160は、断熱性が高い(熱伝導率が低い)材料を含んでいてもよい。なお、テストヘッド70の取付時には、透明部材160は取り外されて、測定ユニット100の上部の開口は開放される。
【0105】
この透明部材160により、外部からの輻射熱が3D形状測定機52及びその支持部材等に与える影響を抑制することができる。そして、温度変化に起因する支持部材等の変形(熱ドリフト)、又は3D形状測定機52の測定光学系に対する熱の影響により、測定精度が低下することを抑制することができる。
【0106】
[変形例3]
図6は、本発明の変形例3に係る検査装置におけるテストヘッド70と3D形状測定機52を示す図である。図6の上側の図が+Z側から見た平面図であり、図6の下側の図が-Y側から見た側面図である。
【0107】
図6に示すように、変形例3は、テストヘッド70と3D形状測定機52を測定ユニット100に取り付けるときの取付部の形状を共通化したものである。
【0108】
図6に示すように、測定ユニット100の上面の隔壁110には、テストヘッド70及び3D形状測定機52を取り付けるための取付部110Aが形成されている。
【0109】
テストヘッド70の取付部72Aと3D形状測定機52の取付部52Aは、平面視で(Z方向から見て)略合同な形状となっており、取付部110Aに取付(嵌合)可能な形状となっている。取付部110A、72A及び52Aは、それぞれ第1から第3の取付部の一例である。
【0110】
なお、図6に示す例では、取付部110Aは蟻形のメスの形状であり、テストヘッド70の取付部72Aと3D形状測定機52の取付部52Aは蟻形のオスの形状であるが、取付部の形状はこれに限定されない。例えば、上記の嵌合構造に加えて、ネジ又はジョイント等の補助固定具を用いて、隔壁110とテストヘッド70、又は隔壁110と3D形状測定機52との間を補助的に固定してもよい。取付部72Aと52Aが取付部110Aに取り付け可能な形状であればよく、例えば、凹凸形状でもよいし、取付部72A及び52Aと取付部110Aが互いに一部を欠きとった相欠き(相杓り)の形状、又は蟻形の相欠き等の形状であってもよい。
【0111】
変形例3によれば、測定ユニット100に対するテストヘッド70と3D形状測定機52の取り付け及び交換が容易になる。
【0112】
また、テストヘッド70と3D形状測定機52との取り付け位置の関係が取付部により定まる。したがって、例えば、ウェーハレベル検査の後に、3D形状測定機52の測定視野の位置に関する情報を得ることができる。すなわち、先行するウェーハレベル検査においてプロービングした場所に関する情報(プロービング情報)を得ることが容易であり、電気特性(例えば、どの電極パッドPの電気特性が異常であったか等)に関する情報を利用することもできる。
【0113】
変形例3によれば、測定ユニット100の上面の隔壁110と、テストヘッド70及び3D形状測定機52とを嵌合構造としたので、取付の再現性を保つことができる。したがって、3D形状測定機52の取付時には、取り付け後の3D形状測定機52と2Dカメラ50の相互の位置関係の校正が容易になる。また、3D形状測定機52と2Dカメラ50との間で要求される位置精度は測定対象ごとに異なるが、要求される位置精度によっては両者の位置関係の校正が不要となる場合もある。一方、テストヘッド70の取付時にも、取り付け後のテストヘッド70と2Dカメラ50の相互の位置関係の校正が容易になる(例えば、2Dカメラ50の視野内に収まる)し、要求される位置精度によっては両者の位置関係の校正が不要となる場合もある。
【0114】
[検査方法]
図7は、本発明の一実施形態に係る検査方法を示すフローチャートである。
【0115】
まず、検査の開始前には、測定ユニット100側のシャッタ120と、ローダ部200側のシャッタ220は、ともに閉じられている。
【0116】
ウェーハカセット230(例えば、N枚のウェーハWのバッチ)がローダ部200の準備室212にセットされ(ステップS10)、ウェーハWのバッチの検査が開始される。検査の開始指示は入出力部12の測定開始ボタン等を介して手動の指示を受け付けるようにしてもよいし、ウェーハカセット230がセットされてローダ部200の隔壁210が閉じられた時点で自動的に検査が開始されるようにしてもよい。
【0117】
次に、温度調整部232及び温度検出部234により準備室212内の温度制御が行われる。そして、準備室212内のウェーハWの温度が所定の検査温度(測定室112と同等の温度。例えば、測定室112の温度±2℃)になるまで待機する(ステップS12)。
【0118】
なお、ステップS12では、準備室212内の温度を実際に検出して待機するようにしたが、本開示はこれに限定されない。例えば、検査が開始された後、所定時間の経過後に、ステップS14に自動的に移行するように、制御部10を動作させるプログラミングを行ってもよい。この場合の所定時間は、例えば、ローダ部200の隔壁210を閉じた後、又は温度調整部232の動作開始後における温度変化のデータ等に応じて、実験的又は経験的に決定することができる。
【0119】
次に、検査対象のウェーハWの枚数のパラメータiがi=1に設定され(ステップS14)、ウェーハW1に対するウェーハレベル検査と電極パッドPの検査(良否判定)が順に実施される。ウェーハレベル検査を行う際には、測定ユニット100にテストヘッド70が取り付けられる。そして、測定ユニット100側のシャッタ120と、ローダ部200側のシャッタ220が開放され、1枚目のウェーハW1がステージSTにロードされる(ステップS16)。ウェーハW1のロード後にシャッタ120及び220が閉じられて、測定室112が外部及びローダ部200から隔離されて、測定室112の外部及びローダ部200からの外乱の影響が抑えられる。
【0120】
次に、テストヘッド70により、ウェーハW1のウェーハレベル検査が実施される(ステップS18)。ウェーハレベル検査の結果は、制御部10に出力される。
【0121】
ウェーハレベル検査の後、3D形状測定機52を用いて電極パッドPの良否判定が行われる(ステップS20)。ステップS20において3D形状測定機52を用いた電極パッドPの形状測定が行われている間、ファン130の動作は停止され、ファン用シャッタ132は閉じられる。また、シャッタ120及び220は閉じられたままである。
【0122】
ウェーハW1のウェーハレベル検査(ステップS18)と電極パッドPの検査(ステップS20)が終了すると、測定ユニット100側のシャッタ120と、ローダ部200側のシャッタ220が開放され、ウェーハW1がステージSTからアンロードされる(ステップS22)。ウェーハW1のアンロード後にはシャッタ120及び220が閉じられる。
【0123】
次に、ウェーハWの枚数のパラメータiをi=i+1として(ステップS24のNo、ステップS26)、次のウェーハW2に対してウェーハレベル検査(ステップS18)と電極パッドPの検査(ステップS20)が行われる。なお、ウェーハW1のアンロードとウェーハW2のロードは並行して行ってもよい。この場合、ウェーハW1のアンロードとウェーハW2のロードがすべて完了した後に、シャッタ120及び220を閉じるようにすればよい。
【0124】
ステップS16~S26を繰り返して、検査対象のバッチのウェーハWiのウェーハレベル検査(ステップS18)と電極パッドPの検査(ステップS20)が終了すると(ステップS24のYes)、ローダ部200のウェーハカセット230が交換され(ステップS28)、次のバッチの検査(ステップS12~S26)が行われる。そして、検査対象のすべてのバッチの検査が終了すると(ステップS30のYes)、検査フローを終了する。
【0125】
本実施形態によれば、遮光性を有する隔壁110で測定室112が囲まれており、シャッタ120及び220の開放がウェーハWiのロード及びアンロード時に限定される。これにより、測定室112の内部への外乱の影響を最小化することができ、空気の擾乱に起因する3次元形状の検査精度の低下を抑制することができる。
【0126】
なお、本実施形態では、検査対象物を電極パッドPに形成された針跡Mとしたが、既述のように本開示はこれに限定されない。例えば、ウェーハW上の傷又は異物等の検査対象物を検出するための外観検査にも本実施形態を適用可能である。
【0127】
例えば、検査対象物がウェーハW上の傷の場合には、傷の大きさ(例えば、最大寸法又は最小寸法)、傷の深さ(例えば、最大谷深さSv又は最大高さSz)、傷の面積(例えば、ウェーハWの単位面積当たりに占める傷の面積の割合)、傷の配置(例えば、単位面積当たりの個数等)のうちの少なくとも1つの特徴量が基準値を超える場合に、ウェーハWを異常と判定してもよい。また、上記の特徴量に代えて、又は上記の特徴量に加えて、傷とデバイスとの間の距離が基準値以下である場合には、ウェーハWを異常と判定してもよい。
【0128】
また、検査対象物が異物の場合には、例えば、異物の大きさ(例えば、最大寸法又は最小寸法)、異物の配置(例えば、単位面積当たりの個数等)のうちの少なくとも1つの特徴量が基準値を超える場合に、ウェーハWを異常と判定してもよい。また、上記の特徴量に代えて、又は上記の特徴量に加えて、異物の種類に基づいてウェーハWの良否の判定を行ってもよい。例えば、異物の3次元形状に基づいて異物がエア等により容易に除去可能なものであると推定される場合には、上記の特徴量に関わらず、ウェーハWを異常なしと判断してもよい。
【符号の説明】
【0129】
1、1A、1B…検査装置、10…制御部、12…入出力部、14…搬送ユニット駆動部、16…搬送アーム駆動部、18…測定制御部、20…測定部、50…2Dカメラ、52…3D形状測定機、54…針合わせカメラ、70…テストヘッド、100…測定ユニット、110…隔壁110…測定室、120…シャッタ、150…カバー、160…透明部材、200…ローダ部、210…隔壁、212…準備室、220…シャッタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7