(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084370
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】粒子検出装置
(51)【国際特許分類】
G01N 15/13 20240101AFI20240618BHJP
G01N 37/00 20060101ALN20240618BHJP
【FI】
G01N15/12 B
G01N15/12 A
G01N37/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198606
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】清水 啓佑
(72)【発明者】
【氏名】片山 晃治
(72)【発明者】
【氏名】小松崎 章仁
(72)【発明者】
【氏名】古川 琴浩
(57)【要約】
【課題】比較的多くの液体を処理することができる粒子検出装置を提供する。
【解決手段】液体中に存在する粒子をコールター原理によって検出するための粒子検出装置であって、粒子検出装置が、液体のための流路を有する流路構造体、並びに、電気測定器、を有しており、流路構造体が、凹部状の流路パターンを有するパターン基板、及び流路パターンを封止して流路を形成する封止基板を有し、パターン基板が、流路と流通する排出ウェルを有し、流路が、アパーチャを有し、電気測定器が、アパ-チャを通って流れる液体の電気特性を計測でき、粒子検出装置が、さらに、吸引機構を有しており、この吸引機構は、排出ウェルに前記液体が保持されているときに、保持されている前記液体を吸引して除去できる、粒子検出装置。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中に存在する粒子をコールター原理によって検出するための粒子検出装置であって、
前記粒子検出装置が、
前記液体のための流路を有する流路構造体、及び、
電気測定器、
を有しており、
前記流路構造体が、凹部状の流路パターンを有するパターン基板、及び前記流路パターンを封止して前記流路を形成する封止基板を有し、
前記パターン基板が、前記流路と流通する排出ウェルを有し、
前記流路が、アパーチャを有し、
前記電気測定器が、前記アパーチャを通って流れる前記液体の電気特性を計測でき、
前記粒子検出装置が、さらに、吸引機構を有しており、この吸引機構は、前記排出ウェルに前記液体が保持されているときに、保持されている前記液体を吸引して除去できる、
粒子検出装置。
【請求項2】
前記吸引機構が、吸引ノズルを備えており、
前記吸引ノズルの末端部が、前記排出ウェルの外に存在し、かつ、
前記排出ウェルの開口部の直径R、及び前記吸引ノズルの前記末端部と前記排出ウェルの開口部との間の距離D1が、
D1/R≦0.6
の関係式を満たす、
請求項1に記載の粒子検出装置。
【請求項3】
前記吸引機構が、吸引ノズルを備えており、
前記吸引ノズルの末端部が、前記排出ウェルの外に存在し、かつ、
前記吸引ノズルの前記末端部と、前記排出ウェルの開口部との間の距離D1が、1mm以下である、
請求項1又は2に記載の粒子検出装置。
【請求項4】
前記吸引ノズルの末端部が、前記流路構造体上に配置された上蓋に設けられている排出孔の中に存在し、
前記排出孔は、前記排出ウェルに流通しており、
前記吸引ノズルの前記末端部と、前記排出孔の内壁との間の距離D2が、0.5mm以上である、
請求項2に記載の粒子検出装置。
【請求項5】
前記吸引機構が、吸引ノズルを備えており、
前記吸引ノズルの末端部が、前記排出ウェルの中に存在する、
請求項1に記載の粒子検出装置。
【請求項6】
前記吸引ノズルの前記末端部と、前記排出ウェルの内壁との間の距離D3が、0.5mm以上である、
請求項5に記載の粒子検出装置。
【請求項7】
測定された前記電気特性の変化に基づいて前記粒子の粒子径を算出するための解析装置を有する、請求項1又は2に記載の粒子検出装置。
【請求項8】
前記電気測定器を構成する電極が、前記排出ウェル中に延在している、請求項1又は2に記載の粒子検出装置。
【請求項9】
前記電気測定器を構成する電極が、少なくとも部分的に、前記吸引機構の吸引ノズルの内部を通って前記排出ウェル中に延在している、請求項8に記載の粒子検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子検出装置の分野に関する。特には、本発明は、コールター法に基づく粒子検出装置の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
液体中の粒子を検出する技術として電気的検出を用いるコールター法が知られている。この手法は、粒子を個々に1つずつ測定することでマイノリティーな粒子群であっても正確に検出可能な技術である。すなわち、各検出手段から得られる情報(シグナル)が、各粒子に対して1対1で対応しているため、個々の粒子の評価を行うことが可能であり、数的に含まれる割合の少ない粒子でも正確に測定することができる。
【0003】
特許文献1は、流体中に存在する粒子を検出する粒子検出装置を開示しており、粒子検出部より下流部に電極を配置した流体排出口を備えることを記載している。
【0004】
特許文献2は、粒子をその粒子径に応じて流体の流れに対して垂直方向への分離を可能にする粒子分離流路と、当該粒子分離流路に分岐して接続された2以上の粒子回収流路とを含む粒子検出装置を開示している。この粒子回収流路は、アパーチャと電気検出器とを含む粒子検出部を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-117050号公報
【特許文献2】国際公開第2018/147462号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
小さい流路構造体を用いる粒子検出装置、特に凹部状の流路パターンを有するパターン基板及び流路パターンを封止して流路を形成する封止基板から構成されている流路構造体を用いる粒子検出装置では、検出処理後の液体を保持するための排出ウェルの容積には限界があるため、従来の粒子検出装置では、比較的多い量の液体に対して一度に検出処理を行うことは困難であった。また、コールター法によって検出を行う際に、検出処理を経た液体を保持するための排出ウェルから液体が漏れることがあった。このような漏れは、排出ウェルに配置される電極間のショートを引き起こすおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、凹部状の流路パターンを有するパターン基板及び流路パターンを封止して流路を形成する封止基板から構成されている流路構造体を用いつつ、比較的多くの液体を処理することができる粒子検出装置を提供することである。特には、本発明の目的は、このような流路構造体を用いつつ、検出対象として比較的多い量の液体を用いた場合であっても、液体の漏れを低減又は回避することができる粒子検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る上記の課題は、本発明の下記の態様によって解決することができる。
【0009】
<態様1>
液体中に存在する粒子をコールター原理によって検出するための粒子検出装置であって、
前記粒子検出装置が、
前記液体のための流路を有する流路構造体、及び、
電気測定器、
を有しており、
前記流路構造体が、凹部状の流路パターンを有するパターン基板、及び前記流路パターンを封止して前記流路を形成する封止基板を有し、
前記パターン基板が、前記流路と流通する排出ウェルを有し、
前記流路が、アパーチャを有し、
前記電気測定器が、前記アパーチャを通って流れる前記液体の電気特性を計測でき、
前記粒子検出装置が、さらに、吸引機構を有しており、この吸引機構は、前記排出ウェルに前記液体が保持されているときに、保持されている前記液体を吸引して除去できる、
粒子検出装置。
<態様2>
前記吸引機構が、吸引ノズルを備えており、
前記吸引ノズルの末端部が、前記排出ウェルの外に存在し、かつ、
前記排出ウェルの開口部の直径R、及び前記吸引ノズルの前記末端部と前記排出ウェルの開口部との間の距離D1が、
D1/R≦0.6
の関係式を満たす、
態様1に記載の粒子検出装置。
<態様3>
前記吸引機構が、吸引ノズルを備えており、
前記吸引ノズルの末端部が、前記排出ウェルの外に存在し、かつ、
前記吸引ノズルの前記末端部と、前記排出ウェルの開口部との間の距離D1が、1mm以下である、
態様1又は2に記載の粒子検出装置。
<態様4>
前記吸引ノズルの末端部が、前記流路構造体上に配置された上蓋に設けられている排出孔の中に存在し、
前記排出孔は、前記排出ウェルに流通しており、
前記吸引ノズルの前記末端部と、前記排出孔の内壁との間の距離D2が、0.5mm以上である、
態様2又は3に記載の粒子検出装置。
<態様5>
前記吸引機構が、吸引ノズルを備えており、
前記吸引ノズルの末端部が、前記排出ウェルの中に存在する、
態様1に記載の粒子検出装置。
<態様6>
前記吸引ノズルの前記末端部と、前記排出ウェルの内壁との間の距離D3が、0.5mm以上である、
態様5に記載の粒子検出装置。
<態様7>
測定された前記電気特性の変化に基づいて前記粒子の粒子径を算出するための解析装置を有する、態様1~6のいずれか一項に記載の粒子検出装置。
<態様8>
前記電気測定器を構成する電極が、前記排出ウェル中に延在している、態様1~7のいずれか一項に記載の粒子検出装置。
<態様9>
前記電気測定器を構成する電極が、少なくとも部分的に、前記吸引機構の吸引ノズルの内部を通って前記排出ウェル中に延在している、態様8に記載の粒子検出装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、凹部状の流路パターンを有するパターン基板及び流路パターンを封止して流路を形成する封止基板から構成されている流路構造体を用いつつ、比較的多くの液体を処理することができる粒子検出装置を提供することができる。また、特には、本発明によれば、検出対象として比較的多い量の液体を用いた場合であっても、このような流路構造体を用いつつ、液体の漏れを低減又は回避することができる粒子検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】
図1Aは、本開示の1つの実施態様に係る粒子検出装置の流路の基本構造を示す平面概略図である。
【
図1B】
図1Bは、本開示の1つの実施態様に係る粒子検出装置の基本構造を説明するための平面概念図である。
【
図2A】
図2Aは、本開示の1つの実施態様に係る粒子検出装置の断面概略図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明の別の実施態様に係る粒子検出装置の断面概略図である。
【
図3】
図3は、本発明のさらに別の実施態様に係る粒子検出装置の断面概略図である。
【
図4】
図4は、本発明のさらに別の実施態様に係る粒子検出装置の断面概略図である。
【
図5】
図5は、実施例1で用いた粒子検出装置の断面概略図である。
【
図6A】
図6Aは、実施例1の粒子検出処理の結果を示すグラフである。
【
図7】
図7は、実施例2で用いた粒子検出装置の断面概略図である。
【
図8】
図8は、実施例2の粒子検出処理の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
≪粒子検出装置≫
本開示に係る粒子検出装置は、液体中に存在する粒子をコールター原理によって検出するための粒子検出装置であって、
粒子検出装置が、
液体のための流路を有する流路構造体、及び、
電気測定器、
を有しており、
流路構造体が、凹部状の流路パターンを有するパターン基板、及び流路パターンを封止して流路を形成する封止基板を有し、
パターン基板が、流路と流通する排出ウェルを有し、
流路が、アパーチャを有し、
電気測定器が、アパーチャを通って流れる液体の電気特性を計測でき、
粒子検出装置が、さらに、吸引機構を有しており、この吸引機構は、排出ウェルに液体が保持されているときに、保持されている液体を吸引して除去できる。
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、図面等を用いて詳細に説明する。但し本発明は異なる形態による実施が可能であり、以下に示す図面、実施形態、実施例の例示にのみ限定されるものでは無い。なお、別段の記載がない限り、図面において、Lは長さ方向を示し、Wは幅方向を示し、Hは高さ方向を示す。図面は縮尺どおりではない。
【0014】
(装置の基本構造)
図1Aは、本開示の1つの実施態様に係る粒子検出装置の流路構造を示す平面概略図である。
図1Aでは、説明のために、流路の基本構造のみを示している。粒子検出装置の流路構造体10が、流路に液体を導入するための導入ウェル12、流路14、及び排出ウェル15a、15bを有する。流路は、上流側流路(導入流路ともいう)140、並びに2つの下流側流路(排出流路ともいう)142a及び142bから構成されている。導入ウェル12が、上流側流路140に流通している。上流側流路140が、その下流側で、2つの下流側流路142a及び142bそれぞれに流通している。2つの下流側流路142a及び142bは、それぞれ、それらの下流側に、別個の排出ウェル15a及び15bを有している。
【0015】
図1Bは、本開示の1つの実施態様に係る粒子検出装置の基本構造を説明するための平面概念図である。粒子検出装置100は、液体中に存在する粒子をコールター原理によって検出するための粒子検出装置である。粒子検出装置100は、液体のための流路14´を有する流路構造体、並びに電気測定器としての電流測定器120を有する。流路14´は、
図1Aに関して上述した流路14と同様の構成を有しており、上流側流路から分岐した2つの下流側流路が、それぞれ、別個の排出ウェル15a´及び15b´を有している。
【0016】
流路14´の2つの下流側流路が、それぞれ、アパーチャ130a及び130bを有している。なお、アパーチャは、上流側流路と、2つの下流側流路それぞれとの間にあってもよい。
【0017】
粒子検出装置100は、電極122a及び122b、並びに電源124をさらに有する。電極122a、122bは、それぞれ、排出ウェル15a´及び15b´に配置されている。また、電極122a、122bは、導線を介して電流測定器120、電源124に接続されている。電源124は、所望の値の電流を流すことができる。
【0018】
電流測定器120は、アパ-チャを通って流れる液体を通る電流量を計測することができる。液体中に存在する粒子が(図中において直線矢印で示される)液体の流れに従って移動してアパーチャ130a又は130bを通過する際に、電気測定器としての電流測定器120によって測定される電流量が変化する。したがって、適切な解析装置を用いることによって、例えば、測定された電流量の変化に基づいて、粒子の粒子径を算出することができる。
【0019】
この装置を用いた実際の粒子検出処理について例示的に説明すると、粒子を含む液体が、流体導入口(導入ウェル)から導入される。なお、流体導入口は、
図1Bでは示されておらず、図の下方側に位置する。流体導入口から導入された液体は、送液装置によって流路の下流へと送液され、1つの上流側流路(
図1Bの下方の流路)、及びこれに流通している2つの下流側流路(
図1Bの上方向及び左方向にそれぞれ延びる流路)、そして、それぞれの下流側流路に設けられているアパーチャ130(130a、130b)を通って、流体排出口(排出ウェル、15a´及び15b´)へ流出する。液体は、例えば、電解質を含む溶液である。
【0020】
流路中を送液された液体が排出ウェルの電極に達すると、アパーチャ130a及び130bを介した閉回路が形成される。すなわち、2つの電極122a及び122bの先端が排出ウェル内の電解質を含む液体中に浸漬されており、電源124から供給された電流が、一方の電極から、アパーチャを通過し、分岐部を通り、もう一方のアパーチャを通過し、そして、他方の電極へと流れる。電流測定器120は、解析部に接続されてよい。測定器120から得られた検出シグナルをこの解析部で計算し、例えば、粒子径分布を作成することができる。
【0021】
(吸引機構)
図1Bの本開示に係る粒子検出装置100は、吸引機構を有している。
図1Bでは、吸引機構の吸引ノズル152、154のみが示されている。吸引機構は、排出ウェル15a´及び/又は15b´に液体が保持されているときに、保持されている液体を吸引して除去することができる。
【0022】
本発明によれば、排出ウェルが液体で満杯になる前に液体を吸引することができるので、検出対象となる液体の量が比較的多い場合や、排出ウェルの容積が限られている場合であっても、特には液漏れや電極のショートを引き起こすことなく、比較的長時間にわたって検出処理を行うことができる。
【0023】
(吸引ノズルの配置に関する1つの態様:態様A)
本開示に係る1つの実施態様では、
吸引機構が、吸引ノズルを備えており、
吸引ノズルの末端部が、排出ウェルの中に存在する。
【0024】
なお、この態様では、吸引ノズルのうち排出ウェル内に位置する部分の長さは、排出ウェルが設けられるパターン基板の厚み等に応じて適宜設定でき、例えば0.5~5mmであってよい。
【0025】
図2Aは、この態様の具体的な例示であり、本開示の1つの実施態様に係る粒子検出装置200Aの断面概略図を示す。粒子検出装置200Aが、流路構造体210Aを有する。電気測定器(特には電流及び/又は電気抵抗測定器)の電極を、例えば、
図2Aの排出ウェル270A中に配置することができる。この場合、電極は、吸引ノズルの中を通って排出ウェルにまで延在することもできる。なお、簡潔さのため、
図2A等では、電気測定器や電極等の図示を省略している。
【0026】
流路構造体210Aは、凹部状の流路パターンを有するパターン基板212A、及び、流路パターンを封止して流路240Aを形成する封止基板214Aを有する。パターン基板212Aが、流路240Aと流通する排出ウェル270A及び導入ウェル280Aを有する。
【0027】
図2Aの粒子検出装置200Aは、さらに、吸引機構を有している。
図2Aでは、吸引機構の吸引ノズル250Aのみが示されている。吸引機構は、排出ウェル270Aに液体が保持されているときに、保持されている液体を吸引して除去することができる。
【0028】
図2Aに記載されている態様では、吸引ノズル250Aの末端部が排出ウェル270Aの中に存在しており、これによって排出ウェル270A内の液体を吸引できるようになっている。この場合、吸引ノズル250Aからの吸引力は、主に、排出ウェル中の液体、及び/又は、この液体と吸引ノズルとの間に存在する気体に対して作用すると考えられる。なお、簡潔さのために液体は図示していない。
【0029】
吸引ノズルの末端が排出ウェルの中に位置する上記の態様では、液体の種類などによっては、液体を吸引した際に排出ウェル中の大部分の液体が吸引され、測定器の電極と液体とが一時的に接触しなくなることもある。この場合、電極を介した電気シグナルが一時的に得られなくなる。しかしながら、この場合であっても、送液の継続に伴って、液体が電極と再び接触して電気シグナルが回復するので、送液を中断することなく連続して検出操作を行うことができる。
【0030】
(吸引ノズルの配置に関する他の態様)
本発明に係る他の実施態様では、粒子検出装置の構成要素(特にはパターン基板に設けられた排出ウェル及び/又は上蓋に設けられた排出孔)に対する吸引ノズルの末端部の位置が特定されており、それによって、吸引操作及び/又は粒子検出処理が更に最適化されるようになっている。
【0031】
特に、本開示に係る好ましい実施態様では、粒子検出装置の構成要素(特にはパターン基板に設けられた排出ウェル及び/又は上蓋に設けられた排出孔)に対する吸引ノズルの末端部の位置が特定されており、それにより、吸引機構によって液体を吸引したときに、電極と液体との接触が保持されるようになっている。このようにして、排出ウェルから液体を除去しつつも、連続的な電気シグナルを得ることができる。
【0032】
また、本開示に係る別の好ましい実施態様では、粒子検出装置の構成要素(特にはパターン基板に設けられた排出ウェル及び/又は上蓋に設けられた排出孔)に対する吸引ノズルの末端部の位置が特定されており、それにより、吸引機構によって液体を吸引したときに、排出ウェル中に、排出ウェルの容積に対して50体積%以上100体積%以下の液体が残存するようになっている。
【0033】
このような、吸引ノズル末端部の位置を特定することによる吸引操作の最適化は、例えば下記の態様(態様B~態様D)によって実現することができる。
【0034】
(吸引ノズルの態様B)
本開示に係る別の1つの実施態様(態様B)では、
吸引機構が、吸引ノズルを備えており、
吸引ノズルの末端部が、排出ウェルの外に存在し、かつ、
排出ウェルの開口部の直径R(単位:mm)と、吸引ノズルの末端部と排出ウェルの開口部との間の距離D1(単位:mm)とが、
D1/R≦0.6
の関係式を満たす。
【0035】
図2Bは、この態様の具体的な例示であり、本発明の別の実施態様に係る粒子検出装置200Bの断面概略図を示す。
図2Bの粒子検出装置200Bは、吸引ノズル250Bの位置が異なること以外は、
図2Aの粒子検出装置200Aに対応している。
【0036】
図2Bの粒子検出装置200Bでは、吸引ノズル250Bの末端部が排出ウェル270Bの外に存在しており、排出ウェル270Bの開口部の直径R、及び、吸引ノズル250Bの末端部と排出ウェル270Bの開口部との間の距離D1が、D1/R≦0.6の関係式を満たしている。
【0037】
図2Bに係る態様によれば、排出ウェルと吸引ノズル末端部との間の距離が一定範囲で互いに離れることによって最適化されるので、吸引力が適度に抑制され、過剰な液体の吸引が回避又は抑制される。理論によって限定する意図はないが、吸引ノズルの末端部が、排出ウェルの外において、排出ウェルから一定距離以内で存在していることによって、吸引ノズルからもたらされる吸引力が、排出ウェル中の液体(及び/又は排出ウェル中で液体と吸引ノズルとの間に存在する気体)に対して働くとともに、排出ウェルの外に存在する気体に対しても働くと考えられる。すなわち、この場合には、排出ウェル中に存在する液体及び/又は気体を吸引することができる一方で、吸引ノズルからもたらされる吸引力を分散させることができるので、排出ウェル中の液体が過剰に吸引されることを抑制又は回避することができると考えられる。
【0038】
また、理論によって限定する意図はないが、排出ウェルの直径Rが大きいほど、そこに液体が満たされたときの液体の盛り上がりが大きくなると考えられる。したがって、排出ウェルに対する吸引ノズルの位置を上記関係式に基づいて設定することによって、液体に対する吸引力をより最適化できると考えられる。
【0039】
図2Bの態様では、吸引ノズル250Bの末端部と、排出ウェル270Bの開口部との間の距離D1が、所定の値以下(例えば1mm以下)に特定されている。吸引ノズルの末端部と、排出ウェルの上部開口部との間の距離D1は、特には、1mm以下である。
【0040】
(D1/R)
D1/R値は、0.6以下であり、好ましくは0.5以下、0.4以下、又はさらには0.3以下である。D1/R値は、0.01以上、0.05以上、又は0.1以上であってよく、さらには0.2以上であってよい。
【0041】
(直径R)
排出ウェルの開口部の直径Rは、排出ウェルのうち吸引ノズルに最も近い部分で計測できる。
【0042】
排出ウェルの開口部の直径Rは、1mm以上、1.5mm以上、若しくは1.8mm以上であってよく、かつ/又は、10.0mm以下、5.0mm以下、4.0mm以下、3.0mm以下、若しくは2.5mm以下であってよい。
【0043】
(距離D1)
距離D1は、より詳細には、吸引ノズルの末端部と、排出ウェルの開口部との間の最短距離、すなわち、吸引ノズルの末端部から出発して排出ウェル内に到達するまでに要する最短距離である。具体的には、例えば、開口部を塞ぐ仮想的な平面(
図2Bの点線で示される平面)と、吸引ノズルの末端部との最短距離を計測することによって、距離D1を決定することができる。
【0044】
特には、距離D1は、1mm以下である。距離D1は、0.9mm以下、0.8mm以下、0.7mm以下、0.6mm以下、若しくは、0.5mm以下であってよく、かつ/又は、0.01mm以上、0.05mm以上、0.1mm以上、若しくは0.2mm以上、0.3mm以上、若しくは0.4mm以上であってよい。
【0045】
(吸引ノズルの態様C)
本開示に係るさらに別の実施態様では、
吸引機構が、吸引ノズルを備えており、
吸引ノズルの末端部が、排出ウェルの外に存在し、かつ、吸引ノズルの末端部と、排出ウェルの開口部との間の距離D1が、1mm以下である、
とともに、
吸引ノズルの末端部が、流路構造体上に配置された上蓋に設けられており排出ウェルに流通している排出孔の中に存在し、
吸引ノズルの末端部と、排出孔の内壁との間の距離D2が、0.5mm以上である。
【0046】
態様Cの距離D1については、上記の記載を参照することができる。
【0047】
図3は、この態様の具体的な例示である。
図3の粒子検出装置300の流路構造体及び吸引ノズルは、
図2Bの態様と同様である。すなわち、
図2Bの態様と同様に、吸引ノズル350の末端が排出ウェル370の外に存在しており、吸引ノズル350の末端部と、排出ウェル370の開口部との間の距離D1が、所定の値以下(例えば1mm以下)である。
【0048】
一方で、
図3の粒子検出装置300では、流路構造体の上に、上蓋390が設けられている。このような上蓋は、粒子検出装置に対して送液のための圧力を印加する際に、加圧機構などの接続場所として用いることができる。
【0049】
図3の上蓋390は、導入孔392及び排出孔394を有している。導入孔392は、導入ウェル380に流通しており、排出孔394は、排出ウェル370に流通している。
【0050】
図3では、吸引ノズル350の末端部と、排出孔394の内壁との間の距離D2が、一定以上(例えば0.5mm以上)に特定されている。
【0051】
図3に係る態様によれば、吸引される液体の量を一定以下に調節することができる。理論によって限定する意図はないが、
図2Bに関して既述のとおり、吸引ノズルの末端が排出ウェル外において排出ウェルから一定距離以下で存在していることによって、排出ウェル中に存在する液体及び/又は気体を吸引することができる一方で、吸引ノズルからもたらされる吸引力が分散され、排出ウェル中の液体が過剰に吸引されることを抑制又は回避することができると考えられる。
【0052】
また、理論によって限定する意図はないが、
図3の態様では、吸引ノズルの末端部と、排出孔の内壁との間の距離D2が、一定以上(例えば0.5mm以上)で離れているので、この距離D2が比較的狭い場合と比較して、排出ウェル内の液体(及び/又は気体)に対して作用する吸引力を、排出ウェル外に分散させることができ、結果として、排出ウェル中の液体が過剰に吸引されることを抑制又は回避することができると考えられる。
【0053】
(距離D2)
距離D2は、より詳細には、吸引ノズルの末端部と、排出孔の内壁のうち吸引ノズルに面している内壁との間の最短距離である。吸引ノズル及び排出孔がいずれも円筒状の形状であり、かつ両者が同心円状に配置されている場合には、距離D2は、排出孔の内半径から吸引ノズルの外半径を差分することによって決定することができる。
【0054】
距離D2は、0.5mm以上である。距離D2は、0.6mm以上、0.7mm以上、0.8mm以上、0.9mm以上、1.0mm以上、若しくは1.5mm以上であってよく、かつ/又は、5.0mm以下、4.0mm以下、3.0mm以下、若しくは2.0mm以下であってよい。
【0055】
(吸引ノズルの態様D)
本開示に係るさらに別の実施態様では、
吸引機構が、吸引ノズルを備えており、
吸引ノズルの末端部が、排出ウェルの中に存在し、
吸引ノズルの末端部と、排出ウェルの内壁との間の距離D3が、0.5mm以上である。
【0056】
図4は、この態様の具体的な例示である。
図4の態様は、吸引ノズル450の末端部が排出ウェル470中に存在する点と、排出ウェル470の形状が異なること以外は、
図3の態様と同様である。なお、
図4では上蓋490が図示されているが、必ずしも必須な構成ではない。
図4では、排出ウェル470のうちの上部分、すなわち排出ウェル470の開口部に隣接する部分が、それ以外の部分(下部分)よりも比較的大きい幅を有している。
図4において、排出ウェル470のうちの上部分の直径は、2~14mm、2.5~12mm、若しくはさらには3~10mmであってよく、排出ウェル470のうちの下部分の直径は、1~8mm、1.5~7mm、若しくはさらには2~6mmであってよい。
【0057】
図4の態様では、このようにして、吸引ノズル450の末端部と、排出ウェル470の内壁との間の距離D3が、一定以上(例えば0.5mm以上)に設定されている。
【0058】
図4に係るこのような態様によれば、距離D3が比較的狭い場合と比較して、排出ウェル470内の液体及び/又は気体に対して作用する吸引力を、排出ウェル外に分散させることができ、結果として、排出ウェル中の液体が過剰に吸引されることを抑制又は回避することができると考えられる。
【0059】
(距離D3)
距離D3は、より詳細には、吸引ノズルの末端部と、排出ウェルの内壁のうち吸引ノズルに面している内壁との間の最短距離である。吸引ノズル及び排出ウェルがいずれも円筒状の形状であり、かつ両者が同心円状に配置されている場合には、距離D3は、排出ウェルのうち吸引ノズルが挿入されている部分の内半径から、吸引ノズルの外半径を差分することによって、決定することができる。
【0060】
距離D3は、0.5mm以上である。距離D3は、0.6mm以上、0.7mm以上、0.8mm以上、0.9mm以上、1.0mm以上、若しくは1.5mm以上であってよく、かつ/又は、5.0mm以下、4.0mm以下、3.0mm以下、若しくは、2.0mm以下であってよい。
【0061】
図2B、
図3及び
図4に例示される態様は、排出ウェル中に電極が存在する場合に、特に有利であると考えらえる。すなわち、これらの態様によれば、排出ウェル中に一定量以上の液体を保持しつつ過剰な液体のみを吸引することができるので、液体と電極との間の接触が保持される。したがって、液体に浸漬した電極を介した電流の流れを阻害することなく、連続的に電気シグナルの取得を行うことができる。
【0062】
(処理量)
本開示に係る粒子検出装置によれば、比較的多くの液体に対して検出処理を行うことができる。
【0063】
好ましくは、本開示に係る粒子検出装置は、100s以上、又はさらには150s以上若しくは200s以上若しくは300s以上にわたって、連続して粒子検出処理を行うことができる。なお、この上限は特に限定されないが、例えば2000s以下又は1000s以下であってよい。
【0064】
また、好ましくは、本開示に係る粒子検出装置は、20μL以上、又はさらには30μL以上、40μL以上、50μL以上、75μL以上若しくは100μL以上の液体に対して、連続して検出処理を行うことができる。なお、この上限は特に限定されないが、例えば500μL以下又は300μL以下であってよい。
【0065】
また、好ましくは、本開示に係る粒子検出装置は、排出ウェルの容積の1.2倍以上、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、又は10倍以上の液体に対して、連続して検出処理を行うことができる。なお、この上限は特に限定されないが、例えば50倍以下又は30倍以下であってよい。
【0066】
ここで、「連続して粒子検出処理を行う」とは、特には、送液を中断することなく連続して粒子検出処理を行うことを意味する。
【0067】
以下、本発明の構成要素について、さらに詳細に説明する。
【0068】
<吸引機構>
本開示に係る粒子検出装置は、吸引機構を有している。この吸引機構は、排出ウェルに液体が保持されているときに、保持されている液体を吸引して除去することができる。
【0069】
吸引機構の具体的な態様は、吸引機構に係る上記の機能を果たすように構成されていれば特に限定されない。例えば、吸引機構は、吸引ノズル、及び、吸引ノズルに接続された吸引ポンプを有することができる。吸引機構は、さらに、吸引ノズルの位置を保持するためのヘッド部を有することができる。例えば、流路構造体の上に配置された吸引機構のヘッド部に吸引ノズルを固定してよく、それによって、排出ウェル等に対する吸引ノズルの相対的な位置を保持することができる。
【0070】
(吸引ノズル)
吸引機構は、排出ウェル中の液体を吸引するためのノズルを有することができる。
【0071】
吸引ノズルの形状は特に限定されないが、好ましくは管状構造を有する。吸引ノズルは、好ましくは、0.5~1.9mmの外径を有する。また、吸引ノズルは、好ましくは、0.1~1.5mmの内径を有する。
【0072】
吸引ノズルは、例えば、排出ウェル中の液体を吸引するための末端部とは反対側の末端部で、吸引ポンプに接続されてよい。これによって、排出ウェル中の液体を、吸引ノズルを介して外部に送り出すことができる。
【0073】
(ヘッド部)
吸引機構は、吸引ノズルの位置を保持するためのヘッド部を有することができる。ヘッド部は、例えば、板状の形状を有しており、流路構造体の上に安定的に配置することができるようになっている。ヘッド部は、好ましくは、上蓋を介して、流路構造体の上に配置される。ヘッド部と上蓋との間にスペーサを配置してもよい。例えば、
図5に示されている態様では、流路構造体510の上面に、上蓋590、スペーサ(パッキン)562、及び、吸引機構のヘッド部564が、この順番で配置されている。なお、
図7の態様も、吸引ノズルの末端部の位置以外は、
図5の態様と同様である。
【0074】
吸引ノズルは、ヘッド部と一体的に形成されていてもよい。すなわち、例えば、ヘッド部が、内部流路を有する突起部を有し、この突起部が、吸引ノズルとして機能する。
【0075】
なお、吸引機構のヘッド部は、液体を送液するための加圧機構のヘッド部と共通の部材であってよい。すなわち、例えば、加圧機構のヘッド部が、吸引ノズルを備えてよく、この吸引ノズルを吸引ポンプに接続することができる。
【0076】
図5では、ヘッド部564が、内部流路を有する突起部を有しており、この突起部が、吸引ノズル550として機能する。上蓋590、及びスペーサ562が、それぞれ排出孔を有しており、それによって、吸引ノズル550を、排出ウェル570へと通すことができるようになっている。また、上蓋590、スペーサ562、及び、ヘッド部564は、それぞれ導入孔を有しており、ヘッド部の上面側から、液体を、流路構造体510の流路540に導入できるようになっている。すなわち
図5では、ヘッド部564は、加圧機構のヘッド部と吸引機構のヘッド部を兼ねている。なお、
図5では、ヘッド部564に設けられている導入孔564aを特に示す。また、吸引ノズル550の内部流路の中を、電極50Eが延在している。
【0077】
(空気孔)
図5で見られるとおり、ヘッド部564は、空気孔564bを有している。空気孔564bは、上蓋590及びスペーサ562の排出孔に連通している。空気孔564bを用いることによって、排出ウェルからの液体の吸引を安定的に行うことが可能となる。
【0078】
(上蓋)
本開示に係る粒子検出装置は、上蓋を有することができる。上蓋は、流路構造体の上(特には上面)に、特には直接に、配置することができる。
【0079】
上蓋は、開口部(特には貫通穴部)を有することができ、特には導入孔及び排出孔を有することができる。導入孔を介して、流路構造体の流路に、液体を導入することができる。例えば、上蓋に設けられている導入孔が、パターン基板に設けられている導入ウェルを介して、流路に流通する。
【0080】
また、上蓋の排出孔は、排出ウェルに流通する。この排出孔を介して、排出ウェルに吸引ノズルや電極などを配置することができる。
【0081】
上蓋の材料は特に限定されないが、好ましくは、剛性樹脂又はガラスでできている。剛性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、PEEKが挙げられる。
【0082】
(吸引ポンプ)
吸引機構は、吸引ポンプを有することができる。吸引ポンプを吸引ノズルの一方の末端部に接続することによって、吸引ノズルの他方の末端部から、液体を吸引することができる。吸引ポンプによる吸引は、連続的であってもよく、断続的であってもよい。
【0083】
吸引ポンプは特に限定されないが、例えば、ダイアフラム型ポンプを用いることができる。
【0084】
(吸引制御装置)
吸引機構は、随意に、吸引制御装置を有することができる。吸引制御装置によって、吸引機構を介した液体の吸引を制御し、それによって、排出ウェルからの液体の吸引を最適化することができる。
【0085】
吸引制御機構は、例えば、吸引ポンプの動作を制御することができる。吸引制御機構によって、例えば、予め決められた時間間隔に従って吸引ポンプを作動させることができる。
【0086】
この時間間隔は、特に限定されないが、例えば、実際の検出処理を行ったときに空の状態の排出ウェルが液体で満たされるまでの時間に応じて決定することができる。時間間隔は、例えば、10s~100sであってよい。
【0087】
また、吸引制御機構が、排出ウェル中の液体の充填量を感知できるセンサを有してもよく、かつ、このセンサからの情報に従って吸引ポンプの動作を制御してよい。すなわち、例えば、センサから送られてきた充填量の値が、排出ウェル中の液体の充填量に関して予め設定されるしきい値を超えたときに、吸引ポンプを一時的に(パルス的に)作動して液体を除去することができる。
【0088】
<流路構造体>
流路構造体は、凹部状の流路パターンを有するパターン基板、及び、流路パターンを封止して流路を形成する封止基板を有する。
【0089】
好ましくは、パターン基板及び封止基板の少なくとも一方が、樹脂製である。この場合には、特に良好な流路の加工性がもたらされる。
【0090】
<パターン基板>
パターン基板は、樹脂でできていてよい。樹脂としては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、シリコーン、アクリル、シクロオレフィンポリマー、PTFEななどが挙げられる。樹脂としては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)が好ましい。
【0091】
(導入ウェル)
パターン基板は、流路に液体を導入するための導入ウェルを有することができる。導入ウェルは、流路に流通する。導入ウェルは、液体を保持できる構造であればよく、凹型構造であることが好ましい。導入ウェルは、例えば、パターン基板に形成された穴部であってよく、特には鉛直方向に延在する穴部であってよい。例えば、この導入ウェルに対して外部装置の流路を接続し、外部装置の流路を介して液体を導入することができ、かつ/又は、外部装置から印加される圧力によって、流路中で液体を送液することができる。
【0092】
導入ウェルの容積は特に限定されないが、1μL~50μLであってよい。また、導入ウェルの開口幅(導入ウェルが円筒状の穴部である場合にはその直径)は、特に限定されないが、0.5mm~10mm、又はさらには1mm~5mmであってよい。
【0093】
(排出ウェル)
パターン基板は、流路中を通過した液体を保持するための排出ウェルを有することができる。排出ウェルは、流路に流通する。排出ウェルは、液体を保持できる構造であればよく、凹型構造であることが好ましい。排出ウェルは、例えば、パターン基板に形成された穴部であってよく、特には鉛直方向に延在する穴部であってよい。この排出ウェルは、検出処理を経た液体を溜めておく役割を有するとともに、検出処理のための電極などを収容する役割も有することができる。
【0094】
流路は、複数の排出ウェルを有することができる。流路が複数の排出ウェルを有する場合には、好ましくは、複数の排出ウェルそれぞれに、別個に、吸引機構の吸引ノズルを配置する。
【0095】
排出ウェルの容積については、特に限定はないが、流路構造体の寸法を抑制する観点からは、排出ウェルの容積が比較的低減されていることが好ましい。本発明によれば、排出ウェル内の液体を吸引することができるので、排出ウェルの容積を大きくすることなく、処理される液体の量を増加させることができる。
【0096】
1又は複数の排出ウェルの容積は、それぞれ、1μL~50μLであってよい。好ましくは、排出ウェルのこの容積は、2μL以上、3μL以上、4μL以上、若しくは5μL以上であり、かつ/又は、40μL以下、30μL以下、20μL以下、15μL以下、若しくは10μL以下である。
【0097】
排出ウェルの開口幅(排出ウェルが円筒状の穴部である場合にはその直径)は、特に限定されないが、0.5mm~10mm、又はさらには1mm~5mmであってよい。
【0098】
<パターン基板の製造>
パターン基板を作成する際に用いる技術としては、例えば、モールディングやエンボッシングといった鋳型を用いる方法が挙げられる。これらの方法は、流路構造を正確かつ容易に作成可能であるという点で好ましい。しかしながら、その他にも、ウェットエッチング、ドライエッチング、ナノインプリンティング、レーザー加工、電子線直接描画、機械加工などの作成技術を用いることも可能である。
【0099】
パターン基板は、例えば下記の工程を含む方法によって製造することができる:
流路パターンに対応する凸部を有する金型を用意すること、
未硬化の硬化性樹脂を金型に流し込むこと、
上記硬化性樹脂を硬化させて、パターン基板前駆体を形成すること、並びに、
パターン基板前駆体に、導入ウェル及び排出ウェルに対応する穴部を形成して、凹部状の流路パターンを有するパターン基板を形成すること。
【0100】
<封止基板>
マイクロ流路ユニットは、封止基板を有する。封止基板は、パターン基板の流路パターンを封止して、流路を形成する。
【0101】
封止基板は、例えば、ガラスでできていてよい。封止基板は、フィルム状であってよく、ポリカーボネート製のフィルムであってもよい。
【0102】
<液体>
本開示に係る液体は、導電性の流体であり、好ましくは電解質を含む水溶液である。液体として、電解質を含む有機溶媒、導電性のオイルや油を用いることもできる。また、水溶液中に界面活性剤などの添加物を加えてもよい。
【0103】
液体に含まれる粒子の粒径は、1nm~100μm、好ましくは10nm~10μmの範囲にある。粒子としては、例えば、核酸、タンパク質、小胞、細胞外小胞、無機粉末、金属コロイド、高分子粒子、ウイルス、細胞、細胞塊、タンパク質凝集体などが挙げられる。
【0104】
<流路>
流路は、液体を通過させるための流路である。用いる液体に応じて、流路のサイズ及び材料を適宜選択することができる。マイクロ流路ユニットにおける流路の断面は、流路構造の作製上の容易さから、矩形であることが望ましいが、円形や楕円形、多角形などの断面であってもよく、また部分的に矩形以外の形状であってもよい。また、流路高さは作製の容易さから均一であることが好ましいが、部分的に深さが異なっていてもよい。
【0105】
流路は、例えば、粒子を含有する液体を流路に導入するための導入ウェル、及び、流路を通過した液体を保持するための排出ウェルに流通することができる。導入ウェル及び排出ウェルは、それぞれ、流路における液体の全体的な流れ方向に対して鉛直方向に延在する穴部であってよい。
【0106】
(上流側流路及び下流側流路)
流路は、上流側流路及び下流側流路を有することができる。
【0107】
(上流側流路)
上流側流路は、その上流側で、流路に液体を導入するための導入ウェルに流通し、その下流側で、下流側流路に接続することができる。導入ウェルに導入された液体が、上流側流路に送られ、そして、下流側流路に送られる。
【0108】
(下流側流路)
下流側流路は、その上流側で上流側流路に流通し、その下流側で排出ウェルに流通することができる。流路は、複数の下流側流路を有することができる。この場合、複数の下流側流路は、それぞれに対応する排出ウェルに流通することができる。
図1A及び
図1Bの態様では、上流側流路が、交差部を介して2つの下流側流路に流通し、それぞれの流路が、それぞれに対応する排出ウェルに流通している。下流側流路は、粒子を検出するためのアパーチャを有することができる。
【0109】
本開示に係る好ましい実施態様では、流路が、1つの上流側流路と、この上流側流路に流通する2つの下流側流路(第1下流側流路及び第2下流側流路)を有し、これら2つの下流側流路が、それぞれアパーチャ(第1アパーチャ及び第2アパーチャ)を有するとともに、それぞれ別個の排出ウェル(第1排出ウェル及び第2排出ウェル)に接続しており、かつ、これらの排出ウェルに、電気測定器の電極が配置されている。
【0110】
(アパーチャ)
流路は、アパーチャを有する。アパーチャは、下流側流路に配置されていてもよく、上流側流路と下流側流路との間に配置されていてもよい。
【0111】
液体中に存在する粒子が、液体の流れに従って移動してアパーチャを通過する際に、電気測定器によって測定される液体の電気特性(特には電流量及び/又は電気抵抗)が変化する。適切な解析装置を用いることによって、測定された液体の電気特性(特には電流量及び/又は電気抵抗)の変化に基づいて、粒子の粒子径などを算出することができる。
【0112】
アパーチャは、粒子が通過することができるように形成された流路内の穴部である。アパーチャは、例えば、アパーチャ近傍における液体の流れ方向に直交する断面において、流路断面積よりも小さい断面積を有する。
【0113】
好ましくは、アパーチャの開口幅が、1~30μm、1.5~25μm、2.0μm~6.0μm、2.5μm~5.5μm、又はさらには3.0μm~5.0μmである。
【0114】
複数のアパーチャの各々の開口面積又は体積が同じ場合、両アパーチャから得られるシグナルは、およそ同一となる。すなわち、両アパーチャへ流れてきた粒子を同様に検出することが可能であり、濃度の定量的な測定という観点で好ましい。
【0115】
アパーチャの形状は、特に限定されない。アパーチャの形状は、その製造工程によって種々の形状をとってもよく、例えば、エッチングやレーザー照射による加工では円、楕円の形状をとり、フォトリソグラフィーとソフトリソグラフィーによるポリジメチルシロキサン(以下PDMS)等の高分子材料による成形の場合は矩形となってよい。アパーチャの開口面積は、測定する粒子よりも大きければよいが、一般にESZで測定可能な粒子径範囲は、アパーチャ断面積の2~60%といわれているため、流入してくると想定される粒子の大きさに応じて設計する必要がある。
【0116】
<電気測定器>
電気測定器(特には電流及び/又は電気抵抗測定器)は、アパ-チャを通って流れる液体の電気特性(特にはアパ-チャを通って流れる液体を通る電流量、及び/又はアパ-チャを通って流れる液体の電気抵抗)を計測することができる。
【0117】
電気測定器は、電気的特性を検知するものであればよく、電流測定器、電圧測定器、抵抗測定器、電荷量測定器が挙げられ、ESZの測定においては電流測定器を用いるのが最も好ましい。また、IVアンプを用いて、電流電圧変換後に利得を上げて、微小な電流値変化を検出することが、より微小な粒子を検出する上で好ましい。
【0118】
アパーチャ内を通過した粒子を取りこぼしなく検出するために、電気測定器のサンプリング時間間隔は、粒子がアパーチャを通過するのに要する時間よりも十分短いことが好ましく、1秒間に1万回以上サンプリングすることが好ましく、1秒間に2万回以上サンプリングすることがさらに好ましい。
【0119】
電気測定器は、電極、及び電源、並びにこれらを互いに接続する導線とともに、電気測定装置を構成することができる。
【0120】
(電源)
電気測定装置は、電源を有することができる。電源としては、直流または交流電源が用いられるが、測定の際に比較的ノイズが影響しにくいものを選択する方が好ましく、コスト面からは、例えば乾電池等の安価で低ノイズである直流電源を用いる方が好ましい。
【0121】
(電極)
電気測定装置は、電極を有することができる。例えば、一対の電極を、アパーチャを挟持するようにして流路内に配置することによって、当該アパーチャを通過する粒子に起因する電気特性の変化を検出することができる。
【0122】
本開示に係る1つの実施態様では、電気測定器を構成する2つの電極が、それぞれ、第1の排出ウェル及び第2の排出ウェル中に配置されている(
図1Bの態様参照)。この場合には、第1の排出ウェルに配置された電極と、第2の排出ウェルに配置された電極が、一対の電極として機能し、それらの間に配置されるアパーチャを通過する粒子に起因する電気特性の変化を検出することができる。
【0123】
電極の材料は、電気抵抗が小さい材質であれば制限はなく、金属、無機化合物、有機化合物を用いることができるが、耐久性とコストの面から金属であることが好ましい。電極は、例えば白金電極であってよい。
【0124】
本開示に係る1つの実施態様では、流路が、第1の排出ウェル及び第2の排出ウェルにそれぞれ流通しており、2つの電極が、それぞれ、第1の排出ウェル及び第2の排出ウェルに配置されている。この場合には、第1の排出ウェルに配置された電極と、第2の排出ウェルに配置された電極が、一対の電極として機能し、それらの間に配置されるアパーチャを通過する粒子に起因する電気特性の変化を検出することができる。
【0125】
1つの実施態様では、電極は、少なくとも部分的に、吸引機構の吸引ノズルの内部を通って排出ウェル中に延在することができる。
【0126】
(送液)
流路に液体を送液する方法は、特に制限されない。シリンジポンプやペリスタポンプ、圧送ポンプ等の圧力勾配により送液させる方法を用いてもよいし、流路断面における不均一な速度分布を抑制するために電気浸透流ポンプを用いてもよい。この場合、ポンプから接続された配管を、導入ウェルへ直接接続し、導入ウェルに保持されている液体へ圧力(陽圧)を印加することによって送液することができる。
【0127】
また、排出ウェルに対して配管を介してポンプを接続し、陰圧をかけることにより流路内の流体を吸引させ、それによって送液を行ってもよい。
【0128】
さらに、導入ウェルの液面を、排出ウェルの液面よりも高くすることで、液面差によって送液してもよい。この場合、送液のための装置が不要となる。定量性が高い測定のためには、圧力勾配により送液を行うことが好ましく、脈動がより少ない圧送ポンプで送液する態様が最も好ましい。
【0129】
液体の流量は、流路の断面積やアパーチャの断面積により任意の値に設定することができる。例えば、液体の流量は、0.1μL/hourから1mL/hourの間に設定することが好ましい。
【0130】
<解析装置>
本開示に係る1つの実施態様では、粒子検出装置が、測定された電気特性の変化に基づいて粒子の粒子径を算出するための解析装置を有する。
【0131】
解析装置は、測定結果を演算するための演算装置と、測定結果又はそれに由来する演算結果を記録するための記録媒体とを具備することができる。これらの演算装置及び記録媒体は、電気測定器と一体化していてもよいし、電気測定器に対して接続可能な外付け装置であってもよい。記録媒体に記録されるデータには、サンプリングした電流値と、粒子が通過した際に発生する電流値変化、またその電流値変化から算出される粒子径、粒子数、粒子濃度、検出時間又は測定開始時からの経過時間が含まれる。
【0132】
ESZによる粒子検出の感度は、アパーチャと電極までの間の流路抵抗に比例して低下するため、得られたシグナルから粒子径を算出する場合は、このシグナル低下を加味することができる(式(1)参照)。
【0133】
【0134】
式(1)中、Lは、アパーチャを形成する流路の長さ、deはアパーチャの等価直径、L´は、中継流路の長さ、de´は、中継流路の直径である。なお、式(1)によるシグナル低下の紙は、その流路構造に応じて適宜行うことが好ましく、必ずしも式(1)と完全に合致した式でなくてもよい。
【0135】
<粒子分離流路>
本開示に係る流路は、粒子分離流路をさらに有していてもよい。粒子分離流路は、例えば、上流側流路に配置されてよい。粒子分離流路については、例えば、国際公開第2018/147462号の記載を参照することができる。この文献は、粒子分離流路で用いる分離手法又は原理として、水力学的ろ過(Hydro dynamic Filtration:HDF)、ピンチドフローフラクショネーション(PFF)、非対称ピンチドフローフラクショネーション(AsPFF)を記載している。
【実施例0136】
≪実施例1及び2≫
実施例1及び2では、粒子検出装置を用いて、コールター原理に基づいて、液体中に存在する粒子の検出を行った。
【0137】
<実施例1>
(粒子検出装置)
【0138】
実施例1で用いた粒子検出装置及びその流路の構造は、
図1A及び
図1Bで説明したものと同様の基本的な構成を有していた。
【0139】
凹部状の流路パターンを有するPDMS製(DOW社製、製品番号2646340)のパターン基板を用意し、この流路パターンをガラス製の封止基板(ガラス板)で封止することによって、流路構造体の流路を形成した。流路構造体は、直径2mmの円筒形状の鉛直方向穴部である導入ウェルを有しており、この導入ウェルに液体を供給することによって、流路に液体を導入することができるように構成されていた。
【0140】
流路は、1つの上流側流路、及び2つの下流側流路を有しており、それぞれの下流側流路に、幅20μmのアパーチャが設けられていた。
【0141】
2つの下流側流路は、それぞれ、流路を通過した後の液体を保持するための第1及び第2排出ウェルに流体的に接続されていた。排出ウェルは、直径2mmの円筒形状の鉛直方向穴部であった。
【0142】
これらの第1及び第2排出ウェルの中に、2つの電極が配置されており、それにより、電気測定器を介して、アパ-チャを通って流れる液体の電気特性(電流、電気抵抗)を計測できるように構成されている。流路中のアパーチャを通って液体中に電流が流れ、このアパーチャを粒子が通過すると電流阻害が生じるので、粒子を検出することができる。
【0143】
実施例1に係る粒子検出装置は、さらに、吸引機構を有していた。この吸引機構は、排出ウェルに液体が保持されているときに、保持されている液体を吸引して除去できるように構成されている。具体的には、吸引機構が2つの吸引ノズルを有しており、これらの吸引ノズルの末端部が、それぞれ、上記の第1及び第2排出ウェルの中に配置されていた。
【0144】
図5は、実施例1で用いた粒子検出装置の一部を示す断面概略図である。
図5の断面図では、2つの排出ウェルのうちの1つの排出ウェル570のみを見ることができる。
【0145】
吸引ノズル550は、ヘッド部564に一体的に形成された突起部であり、直径1.2mmの外径を有していた。また、吸引ノズルは、直径0.8mmの円筒状の内部流路を有していた。吸引ノズルの(図示されていない)他方の末端部に、接続具(062Minstac継手)を介して、ダイアフラムポンプを接続した。また、吸引ノズルの内部を通して、直径0.5mmの白金電極50Eを、排出ウェル570内にまで延在させた。
【0146】
上蓋590は、ポリカーボネート樹脂製(斎藤樹脂工業社製)であり、スペーサ(パッキン)562は、シリコーン製であり、それぞれ排出孔を有していた。これらの排出孔は、いずれも矩形形状の穴部であり、それぞれ8.5mm×11.5mmを有していた。吸引ノズル550が、これらの排出孔の中を通過して、排出ウェル570にまで延在していた。また、ヘッド部564は空気孔564bを有しており、この空気孔564bが、上蓋590及びスペーサ562の排出孔に流通していた。空気孔564bは、直径1mmの円筒形状の穴部であった。
【0147】
吸引ノズルの末端部(
図5の550a)が、排出ウェルの開口部から1mm内部に進入していた。
【0148】
排出ウェルの容積は10μLであった。
【0149】
(検出操作)
上記の粒子検出装置を用いて、液体中の粒子の検出操作を行った。具体的には、ThermoFisher社製の粒子(粒子径:10.0μm)を含む50μLの液体(PBSバッファー、界面活性剤(TritоnX:0.05%))を導入ウェルに供給し、導入ウェルに対して上蓋を介して加圧機構によって陽圧を印加して、送液を行った。測定器を用いて計測した電気シグナルの測定結果を、
図6A及び
図6Bに示す。
図6Bは、
図6Aの一部の拡大図である。
【0150】
図6Aで見られるとおり、200秒以上にわたって連続的に、粒子の検出反応を行うことができた。粒子の検出シグナルは、グラフの下方向への微小なピークに対応している(特に
図6Bを参照)。実施例1で連続的に処理することができた液体の量は、50μLであった。なお、ここで「連続的に」とは、送液を停止することなく連続的に操作を行うことができたことを意味する。
【0151】
一方で、
図6Aで見られるとおり、実施例1では、電気シグナルが断続的に検出されない期間があった。これらの断続的な電気シグナルの消失は、液体が吸引されたことによって排出ウェル内で電極と液体との接触が一時的になくなったことによるものと考えられる。また、
図6Aで見られるとおり、電気シグナルの消失後一定時間の後に電気シグナルが回復していた。実施例1では、送液を継続していることによって排出ウェルに液体が供給され、その結果として、電極と液体とが再び接触したと考えられる。
【0152】
<実施例2>
実施例2では、吸引ノズルの末端部が、上蓋の排出孔の中に存在していたこと以外は、実施例1と同様にして、粒子の検出操作を行った。
【0153】
図7は、実施例2で用いた粒子検出装置の一部を示す断面概略図である。
図7の構成は、吸引ノズルの位置が異なること以外は、
図5の構成に対応している。
図7の断面図では、2つの排出ウェルのうち1つの排出ウェル770のみを見ることができる。
【0154】
上蓋790が、流路構造体710上に配置されており、この上蓋790の排出孔の中に、吸引ノズルの末端部750aが位置している。上蓋の排出孔(矩形孔)は、8.5mm×11.5mmであった。吸引ノズルの末端部750aと排出ウェル770の開口部との間の距離D1は、0.5mmであった(排出ウェルの開口部の直径Rが2mmであったので、D1/R≦0.6を満たす)。また、吸引ノズルの外径は1.5mmであった。吸引ノズルの末端部750aと上蓋の排出孔の内壁との間の距離は、0.5mmよりも大きかった。なお、電極70Eが、吸引ノズルの内部を通って排出ウェル770内にまで延在していた。
【0155】
排出ウェルの容積は10μLであった。
【0156】
結果を、
図8に示す。
図8で見られるとおり、実施例2では、250秒以上にわたって、送液を停止することなく連続して粒子検出操作を行うことができた。また、実施例2では、排出ウェルからの液漏れ(液の溢れ)を起こすことなく、継続して検出操作を行うことができた。さらに、実施例2では、電気測定器からの電気シグナルの消失は見られず、連続した電気シグナルを得ることができた。なお、
図8において、粒子の検出シグナルは、グラフの下方向への微小なピークに対応している。実施例2で連続的に処理することができた液体の量は、50μLであった。
【0157】
上記実施例1及び2の結果で見られるとおり、本発明に従って吸引機構を用いることによって、連続的に粒子検出処理を行うことができ、比較的多くの液体に対して一度に検出処理を行うことができた。
【0158】
さらに、上記の実施例2の結果で見られるとおり、吸引ノズルの位置を最適化することによって、排出ウェルからの液漏れを防止しつつ、電気シグナルの中断なく継続的に粒子検出処理を行うことができた。