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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084737
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】船舶用燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
   B63H 21/38 20060101AFI20240618BHJP
   F17C 9/00 20060101ALI20240618BHJP
   B63B 27/24 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
B63H21/38 B
F17C9/00 A
B63B27/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023210080
(22)【出願日】2023-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2022198914
(32)【優先日】2022-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】株式会社三井E&S
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100205730
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 重輝
(74)【代理人】
【識別番号】100213551
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 智貴
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】村上 健太
(72)【発明者】
【氏名】具志堅 将
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB05
3E172AB20
3E172BA04
3E172BB06
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD01
3E172EA03
3E172EB03
3E172HA08
(57)【要約】
【課題】複数の燃料タンクに貯蔵した液体燃料を船舶の機関に供給する船舶用燃料供給装置であって、各燃料タンクに個々にポンプを設置する必要がない船舶用燃料供給装置を提供すること。
【解決手段】複数の燃料タンク1a、1b、1c、1dに貯蔵された液体燃料Lの液面より上方に液体燃料Lを抜き出す複数の抜出し配管4a、4b、4c、4dにより、液体燃料Lが送液されるバッファタンク5と、バッファタンク5内の液体燃料Lを船舶の機関12に供給するポンプ10と、バッファタンク5内の液体燃料Lの液面よりも上方の空間を負圧にして各燃料タンク1a、1b、1c、1dからの液体燃料Lの吸い出しを行う負圧化装置8とを備えたことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料タンクに貯蔵した液体燃料を船舶の機関に供給する船舶用燃料供給装置であって、
前記各燃料タンクに貯蔵された前記液体燃料の液面よりも上方に、前記各燃料タンクから前記液体燃料を抜き出す複数の抜出し配管と、
前記複数の抜出し配管により前記液体燃料が送液されるバッファタンクと、
前記バッファタンク内の液体燃料を船舶の機関に供給するポンプと、
前記バッファタンク内の前記液体燃料の液面よりも上方の空間を負圧にし、前記各燃料タンクからの前記液体燃料の吸い出しを行う負圧化装置と
を備えたことを特徴とする船舶用燃料供給装置。
【請求項2】
前記バッファタンクは、タンクの液面上部からの抜き出し要件が課されないタンクである
ことを特徴とする請求項1記載の船舶用燃料供給装置。
【請求項3】
前記バッファタンク内の前記液体燃料の液面は、前記各燃料タンクに貯蔵された前記液体燃料の液面よりも低く、
前記各燃料タンクに貯蔵された前記液体燃料から、前記各抜出し配管を経て、前記バッファタンク内の前記抜出し配管の端部までは、サイフォンを形成する
ことを特徴とする請求項1記載の船舶用燃料供給装置。
【請求項4】
前記負圧化装置は、再液化装置である
ことを特徴とする請求項1記載の船舶用燃料供給装置。
【請求項5】
前記負圧化装置は、ガスコンプレッサである
ことを特徴とする請求項1記載の船舶用燃料供給装置。
【請求項6】
前記負圧化装置は、脱硝設備である
ことを特徴とする請求項1記載の船舶用燃料供給装置。
【請求項7】
前記各燃料タンクのうちの少なくとも2つは、上下に積み重ねられている
ことを特徴とする請求項1記載の船舶用燃料供給装置。
【請求項8】
前記複数の燃料タンクは、前記液体燃料を貯蔵した状態で、前記船舶に積み込まれて前記抜出し配管が接続され、前記液体燃料が消費されて貯蔵量が減少した状態で、前記抜出し配管から離脱されて前記船舶から降ろされる
ことを特徴とする請求項1~7の何れかに記載の船舶用燃料供給装置。
【請求項9】
前記各燃料タンクと、船外の設備とを繋ぐガス供給排出管を有する
ことを特徴とする請求項1~7の何れかに記載の船舶用燃料供給装置。
【請求項10】
前記バッファタンクに至る前記抜出し配管に設けられた流量調節弁よりも下流の箇所と、前記流量調節弁よりも上流の箇所とを繋ぎ、途中に減圧弁が設けられたバッファタンク減圧管を有する
ことを特徴とする請求項1~7の何れかに記載の船舶用燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の燃料タンクに貯蔵した液体燃料を船舶の機関に供給する船舶用燃料供給装置に関し、より詳しくは、各燃料タンクに個々にポンプを設置する必要がない船舶用燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非特許文献1に記載されているように、液化アンモニアや液化石油ガス(LPG)などの液化ガス燃料が、船舶燃料として使用されている。航海期間が長い場合には、大量の液化ガス燃料を船舶に搭載する必要がある。特に、液化アンモニアを燃料として用いる場合には、石油ガスよりも発熱量が低いので、大量に搭載しておく必要がある。
【0003】
大容量の燃料タンクを製造する場合においては、応力や腐食による破損を防止する対策として、熱処理などを行う必要がある。しかし、大容量の燃料タンクを熱処理する設備は、燃料タンクと同等サイズの焼鈍炉が必要となり、大規模な施設になり、設置場所は限定されている。そのため、小規模な施設でも製造可能な小容量の燃料タンクを複数用いて、必要な容量を確保することも行われている。
【0004】
特許文献1は、燃料タンクへ温風を供給して燃料タンク内圧を高めることにより、燃料をポンプへ供給する方式を提案している。しかし、この方式では、燃料タンクの設計圧力を十分に高くしなければならず、また、火災が起る可能性があり、好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-123119号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】日本海事協会 代替燃料船ガイドライン(第2.0版)(メタノール/エタノール/LPG/アンモニア) C-1部
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
船舶用の燃料タンクは、常温高圧下で貯蔵する圧力容器(加圧式)と、低温で大気圧下で貯蔵するフルレフ式、半低温で1MPa以下の内圧で貯蔵するセミレフ式に分類される。
【0008】
セミレフ式及びフルレフ式の燃料タンクでは、温度管理のため揮発したガスを処理するため、一般的に再液化する装置が設置されており、船内での液体燃料の漏洩対策として、燃料の取り出し口をガス漏えい量が少ない液面より高い位置に設け、液面より高い位置から燃料を抜出すことが舶用の規則として定められている。
【0009】
なお、液面より高い位置から取り出すことを要しない圧力容器(加圧式)には、NK鋼船規則D編10.1.3により、第1種圧力容器、第2種圧力容器及び第3種圧力容器がある。第1種及び第2種のそれぞれについて、銅板の厚さ、設計圧力、最高使用温度、蒸気圧発生器の設計圧力などが規定されている。第3種圧力容器は、第1種及び第2種圧力容器のいずれにも該当しない圧力容器である。
【0010】
燃料の取り出し口が液面より高い場合には、タンク付のディープウェル式ポンプ、また
は、タンク内に設置するサブマージド式ポンプが利用されている。船内に複数の燃料タンクが設置されている場合には、各燃料タンクのそれぞれに、ディープウェル式、または、サブマージド式のポンプを設置しなければならない。そのため、燃料タンクの数の増加に応じて、必要となるポンプの数も増加するので、設置コストが著しく増大してしまう。
【0011】
また、ポンプをメンテナンスする際には、燃料タンク内にポンプを囲むインナーパイプを設置しておけば、インナーパイプ内の燃料のみを処理すればよいが、その場合でも、燃料タンクからポンプを上方に抜き出す作業に長時間を要する。
【0012】
さらに、ディープウェル式ポンプを用いた場合には、ポンプの丈が燃料タンクの高さにほぼ等しいため、複数の燃料タンクを上下に積み重ねて積載すると、下段の燃料タンクから上方にポンプを抜き出すことができなくなるので、燃料タンクを上下に積み重ねて積載することはできない。そのため、一定の空間内に設置できる燃料タンクの数を上下方向に増やすことができない。
【0013】
そこで、本発明の課題は、複数の燃料タンクに貯蔵した液体燃料を船舶の機関に供給する船舶用燃料供給装置であって、各燃料タンクに個々にポンプを設置する必要がない船舶用燃料供給装置を提供することにある。
【0014】
さらに本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題は以下の各発明によって解決される。
1.
複数の燃料タンクに貯蔵した液体燃料を船舶の機関に供給する船舶用燃料供給装置であって、
前記各燃料タンクに貯蔵された前記液体燃料の液面よりも上方に、前記各燃料タンクから前記液体燃料を抜き出す複数の抜出し配管と、
前記複数の抜出し配管により前記液体燃料が送液されるバッファタンクと、
前記バッファタンク内の液体燃料を船舶の機関に供給するポンプと、
前記バッファタンク内の前記液体燃料の液面よりも上方の空間を負圧にし、前記各燃料タンクからの前記液体燃料の吸い出しを行う負圧化装置と
を備えたことを特徴とする船舶用燃料供給装置。
2.
前記バッファタンクは、タンクの液面上部からの抜き出し要件が課されないタンクである
ことを特徴とする前記1記載の船舶用燃料供給装置。
3.
前記バッファタンク内の前記液体燃料の液面は、前記各燃料タンクに貯蔵された前記液体燃料の液面よりも低く、
前記各燃料タンクに貯蔵された前記液体燃料から、前記各抜出し配管を経て、前記バッファタンク内の前記抜出し配管の端部までは、サイフォンを形成する
ことを特徴とする前記1記載の船舶用燃料供給装置。
4.
前記負圧化装置は、再液化装置である
ことを特徴とする前記1記載の船舶用燃料供給装置。
5.
前記負圧化装置は、ガスコンプレッサである
ことを特徴とする前記1記載の船舶用燃料供給装置。
6.
前記負圧化装置は、脱硝設備である
ことを特徴とする前記1記載の船舶用燃料供給装置。
7.
前記各燃料タンクのうちの少なくとも2つは、上下に積み重ねられている
ことを特徴とする前記1記載の船舶用燃料供給装置。
8.
前記複数の燃料タンクは、前記液体燃料を貯蔵した状態で、前記船舶に積み込まれて前記抜出し配管が接続され、前記液体燃料が消費されて貯蔵量が減少した状態で、前記抜出し配管から離脱されて前記船舶から降ろされる
ことを特徴とする前記1~7の何れかに記載の船舶用燃料供給装置。
9.
前記各燃料タンクと、船外の設備とを繋ぐガス供給排出管を有する
ことを特徴とする前記1~7の何れかに記載の船舶用燃料供給装置。
10.
前記バッファタンクに至る前記抜出し配管に設けられた流量調節弁よりも下流の箇所と、前記流量調節弁よりも上流の箇所とを繋ぎ、途中に減圧弁が設けられたバッファタンク減圧管を有する
ことを特徴とする前記1~7の何れかに記載の船舶用燃料供給装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の燃料タンクに貯蔵した液体燃料を船舶の機関に供給する船舶用燃料供給装置であって、各燃料タンクに個々にポンプを設置する必要がない船舶用燃料供給装置を提供することができる。
この船舶用燃料供給装置においては、各燃料タンクに個々の複数のポンプを用意する必要がなく、バッファタンクからの液体燃料の船舶の機関への供給は、1台のポンプで行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態の船舶用燃料供給装置の構成を示すブロック図
図2】本発明の第2の実施形態の船舶用燃料供給装置の構成を示すブロック図
図3】本発明の第3の実施形態の船舶用燃料供給装置の構成を示すブロック図
図4】本発明の第4の実施形態の船舶用燃料供給装置の構成を示すブロック図
図5】本発明の第5の実施形態の船舶用燃料供給装置の構成を示すブロック図
図6】本発明の第6の実施形態の船舶用燃料供給装置の構成を示すブロック図
図7】本発明の第1の改良形態の船舶用燃料供給装置の構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について好ましい実施の形態について説明する。
【0019】
〔第1の実施形態〕
本発明に係る船舶用燃料供給装置は、複数の燃料タンクに貯蔵した液体燃料を、船舶の機関に供給する船舶用燃料供給装置である。
図1は、本発明の第1の実施形態の船舶用燃料供給装置の構成を示すブロック図である。
【0020】
この実施形態の船舶用燃料供給装置は、図1に示すように、船舶の機関に供給する液体燃料Lを貯蔵する複数の燃料タンク1a、1b、1c、1dを備えている。燃料タンク1a、1b、1c、1dの数は、この説明では4個としているが、何ら限定されず、2個、3個、または、5個以上であってもよい。
【0021】
船舶の機関には、推進用エンジンの他、発電機やボイラーなど、液体燃料Lを燃焼させてエネルギーを生み出す全ての機関が含まれる。
【0022】
液体燃料Lは、この実施形態では、液化アンモニア(NH3)、液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)、液化石油ガス(LPG:Liquefied Petroleum Gas)などの液化ガス燃料である。
【0023】
各燃料タンク1a、1b、1c、1dには、貯蔵された液体燃料Lの液面よりも上方に、液体燃料Lを抜き出す複数の抜出し配管4a、4b、4c、4dが設けられている。各抜出し配管4a、4b、4c、4dは、各燃料タンク1a、1b、1c、1dに対応する部分から、途中で集合して1本になり、バッファタンク5に至っている。
【0024】
各抜出し配管4a、4b、4c、4dには、各燃料タンク1a、1b、1c、1dに対応して、開閉弁6a、6b、6c、6dが設けられている。また、各抜出し配管4a、4b、4c、4dの集合した部分には、流量調節弁7が設けられている。
【0025】
抜出し配管4a、4b、4c、4dの集合部には、ガス処理装置14が接続されている。ガス処理装置14は、抜出し配管4a、4b、4c、4d内のガスを処理するものである。ガスの処理としては、パージが挙げられる。
【0026】
なお、各抜出し配管4a、4b、4c、4dは、集合させずに、各個別に、バッファタンク5に至るようにしてもよい。この場合には、流量調節弁7及びガス処理装置14は、各抜出し配管4a、4b、4c、4dごとに複数設ける。
【0027】
各抜出し配管4a、4b、4c、4dからガス処理装置14への配管は、図1図7において、気体の流路を示す点線で記しているが、この配管には、液体(液滴)が混入する可能性もある。この場合には、気液分離器を設け、気液分離器を通して気体のみをガス処理装置14に送ることが好ましい。
【0028】
バッファタンク5には、複数の抜出し配管4a、4b、4c、4dにより、液体燃料Lが送液される。バッファタンク5には、バッファタンク5内の液体燃料Lの液面よりも上方の空間を負圧にし、各燃料タンク1a、1b、1c、1dからの液体燃料Lの吸い出しを行う負圧化装置である再液化装置8が接続されている。バッファタンク5と再液化装置8との間には、減圧弁9が設けられている。減圧弁9は、開閉弁である。
【0029】
負圧化装置は、この実施形態では、再液化装置8である。再液化装置8は、バッファタンク5内の液体燃料Lの液面よりも上方の空間の気化ガスを圧縮し、または、圧縮及び冷却し、再液化する。図1においては、液体の流路を実線で示し、気体の流路を点線で示している。後述する他の図面においても同様である。なお、負圧化装置は、後述する他の実施形態のいくつかでは、ガスコンプレッサ及び/又は脱硝設備である。
【0030】
バッファタンク5内の液体燃料Lは、ポンプ10により、混合槽11を経て、燃料の供給ラインにより、船舶の機関12、例えば、推進用エンジンに供給される。混合槽11では、バッファタンク5からの液体燃料Lと、再液化装置8によって再液化された液体燃料とが混合される。再液化装置8で再液化された液体燃料は、逆止弁8aを経て混合槽11に送られ、バッファタンク5からの液体燃料Lに混合されて、船舶の機関12に供給される。なお、混合槽11は、ミキサーに代えてもよい。
【0031】
燃料の供給ラインには、船舶の機関12に燃料を供給するための図示しない各種装置や、気液分離器を設けてもよい。燃料を供給するための各種装置としては、圧縮機や高圧ポンプ、熱交換器等が挙げられる。
また、燃料の供給ラインには、船舶の機関12の起動時、停止時及び緊急停止時に残留した気化ガスをパージするための不活性ガスが供給されるようにしてもよく、この不活性ガスは、残留した気化ガスとともに、気液分離器を経て、無害化装置に導入される。
なお、無害化装置に導入されるガスが経る気液分離器は、ガス処理装置14に送るガスに用いてもよい。この場合には、バッファタンク5内が空であれば、抜出し配管4a、4b、4c、4d内のガスは、バッファタンク5、燃料の供給ライン及び気液分離器を経て、ガス処理装置14に送られて処理される。
【0032】
この実施形態では、再液化装置(負圧化装置)8で再液化された液体燃料は、船舶の機関12で利用されるので、液体燃料が無駄なく利用される。なお、再液化装置8によって再液化された液体燃料は、船舶の主機ではなく、補機で用いるようにしてもよい。
【0033】
この船舶用燃料供給装置においては、バッファタンク5内の液体燃料Lの船舶の機関12への供給は、1台のポンプ10で行うことができ、各燃料タンク1a、1b、1c、1dごとに複数のポンプを用意する必要がない。そのため、ポンプのメンテナンスが容易であり、また、設置コストが低減される。
【0034】
バッファタンク5には、バッファタンク5内の液面位置を制御するための上下液面センサ(レベルスイッチ)13u、13dを設けてもよい。上液面センサ13uは、バッファタンク5内の液体燃料Lの液面の上限位置に設けられている。下液面センサ13dは、バッファタンク5内の液体燃料Lの液面の下限位置に設けられている。
【0035】
上液面センサ13uが液体燃料Lの液面を検知すると、流量調節弁7が閉制御され、各燃料タンク1a、1b、1c、1dからバッファタンク5への液体燃料Lの送液が遮断さ
れる。下液面センサ13dが液体燃料Lの液面を検知すると、流量調節弁7及び減圧弁9が開制御され、バッファタンク5内の減圧及びバッファタンク5への液体燃料Lの送液が可能となる。バッファタンク5への液体燃料Lの送液量は、流量調節弁7の開度によって調節される。
【0036】
なお、各燃料タンク1a、1b、1c、1dには、バンカー船などの船外のバンカリング設備100から、液体燃料Lを供給するための供給管2が接続されている。供給管2は、バンカリング設備100に接続される側の1本の配管が、各燃料タンク1a、1b、1c、1d側で分岐され、各燃料タンク1a、1b、1c、1dに接続されている。供給管2の分岐された部分には、各燃料タンク1a、1b、1c、1dに対応して、開閉弁3a、3b、3c、3dが設けられている。
【0037】
供給管2によって液体燃料Lを各燃料タンク1a、1b、1c、1dに供給するには、バンカリング設備100側の1本の配管をバンカリング設備100に接続し、各開閉弁3a、3b、3c、3dを開放し、バンカリング設備100のポンプによって、液体燃料Lを各燃料タンク1a、1b、1c、1dに送る。
【0038】
〔バッファタンクについて〕
バッファタンク5は、タンクの液面上部からの抜き出し要件が課されないタンクであり、例えば、NK鋼船規則における圧力容器とすることが好ましい。バッファタンク5をタンクの液面上部からの抜き出し要件が課されないタンクとした場合には、バッファタンク5内の液体燃料Lを液面よりも下方から抜出してもよい。そのため、ダイヤフラムポンプやキャンドモータポンプなど、種々の方式のポンプを、バッファタンク5内から船舶の機関12に液体燃料Lを供給するポンプ10として、採用することができる。ダイヤフラムポンプやキャンドモータポンプは、容易に高圧での送液が可能であるため好ましい。サブマージド式ポンプやディープウェル式ポンプでは、流体によっては一段で目的の圧力に昇圧できないので、二段昇圧する形になっている。ダイヤフラムポンプやキャンドモータポンプでは、一段昇圧で目的の圧力に昇圧できる。
【0039】
なお、NK鋼船規則D編13.9.1-7によれば、各燃料タンク1a、1b、1c、1dは、船舶の機関(主機)12を連続最大出力、並びに、発電装置を常用負荷にて、少なくとも8時間維持できる容量を有する必要がある。一方、バッファタンク5は、燃料タンク1a、1b、1c、1dがある場合には、NK鋼船規則でいうプロセス用圧力容器という位置づけになる。NK鋼船規則でいうプロセス用圧力容器は、タンクの液面上部からの抜き出し要件が課されない。
【0040】
ここで、NK鋼船規則とは、日本海事協会(ClassNK)が発行する鋼船規則をいう。
【0041】
〔各燃料タンクからのサイフォンの形成について〕
バッファタンク5内の液体燃料Lの液面は、各燃料タンク1a、1b、1c、1dに貯蔵された液体燃料Lの液面よりも低くし、各燃料タンク1a、1b、1c、1dに貯蔵された液体燃料Lから、各抜出し配管4a、4b、4c、4dを経て、バッファタンク5内の抜出し配管の端部まで、サイフォンが形成されるようにすることが好ましい。サイフォンが形成されると、再液化装置8によるバッファタンク5内の減圧を行わなくとも、各燃料タンク1a、1b、1c、1dから液体燃料Lが吸い出されバッファタンク5に送液される。そのため、再液化装置8の消費エネルギーを省くことができる。
【0042】
〔各燃料タンクの積み重ねについて〕
各燃料タンク1a、1b、1c、1dのうちの少なくとも2つは、上下に積み重ねられ
ていることが好ましい。各燃料タンク1a、1b、1c、1dを上下に積み重ねることにより、燃料タンクの貯蔵燃料量あたりの占有床面積が小さくなり、ポンプが別置きになっていることと相俟って、省ボリューム化が可能である。
【0043】
〔バンカリング時間の短縮について〕
この船舶用燃料供給装置においては、複数の燃料タンク1a、1b、1c、1dは、液体燃料Lを貯蔵した状態で、船舶に積み込まれて、抜出し配管4a、4b、4c、4dが接続され、液体燃料Lが消費されて貯蔵量が減少した状態で、抜出し配管4a、4b、4c、4dから離脱されて、船舶から降ろされるようにすることも好ましい。この場合には、供給管2は不要となる。また、この場合には、燃料タンク1a、1b、1c、1dとして、IBCタンク(Intermediate Bulk Containers Tank)を採用することも好ましい。IBCタンクはコンテナ状であるため、積み替え作業の軽減につながる。
【0044】
燃料タンク1a、1b、1c、1dを抜出し配管4a、4b、4c、4dから離脱させるときには、開閉弁6a、6b、6c、6d及び流量調節弁7を閉じて、これら開閉弁6a、6b、6c、6d及び流量調節弁7の間の抜出し配管4a、4b、4c、4d内をガス処理装置14によりパージして、パージした区間で切り離し、抜出し配管4a、4b、4c、4d内の液体燃料が漏れないようにする。なお、安全性のため、開閉弁6a、6b、6c、6dをもう一段追加してもよい。
【0045】
複数の燃料タンク1a、1b、1c、1dを、液体燃料Lを貯蔵した状態で船舶に積み込まれ、液体燃料Lの貯蔵量が減少した状態で船舶から降ろされるようにすれば、予め各燃料タンク1a、1b、1c、1dに液体燃料Lを充填しておくことができるので、液体燃料をバンカリングするポンプなどの設備の供給流量に依存せずに、バンカリング時間を大幅に短縮することができる。
【0046】
〔第2の実施形態〕
図2は、本発明の第2の実施形態の船舶用燃料供給装置の構成を示すブロック図である。図1と同一の符号は同一の構成であり、特に説明がない限り、図1における説明を援用しここではその説明を省略する。
【0047】
この実施形態では、液体燃料は、液化ガス燃料である。
【0048】
この実施形態では、図2に示すように、負圧化装置である再液化装置8は、再液化させた液体燃料を、混合槽11ではなく、各燃料タンク1a、1b、1c、1dに戻す。再液化装置(負圧化装置)8で再液化された液体燃料は、戻し配管16を経て、各燃料タンク1a、1b、1c、1dに戻される。
【0049】
戻し配管16は、再液化装置8に接続される側の1本の配管が、各燃料タンク1a、1b、1c、1d側で分岐され、各燃料タンク1a、1b、1c、1dに接続されている。戻し配管16の分岐された部分には、各燃料タンク1a、1b、1c、1dに対応して、開閉弁15a、15b、15c、15dが設けられている。
【0050】
再液化装置8で再液化された液体燃料は、各燃料タンク1a、1b、1c、1dに戻されることにより、船舶の機関12で利用されるので、液体燃料が無駄なく利用される。
【0051】
なお、各燃料タンク1a、1b、1c、1dからの液体燃料の抜出量と、機関12での消費量によるが、再液化装置8で再液化された液体燃料を利用するには、バッファタンク5ではなく、上述のように、各燃料タンク1a、1b、1c、1dへ戻すことが好ましい。バッファタンク5に戻してしまうと、燃料タンク1a、1b、1c、1d内とバッファタンク5内の圧力差が生じなくなるためである。
【0052】
この実施形態においても、負圧化装置で再液化された液体燃料は、船舶の機関12で利用されるので、液体燃料が無駄なく利用される。
【0053】
また、この実施形態においても、各燃料タンク1a、1b、1c、1dごとに複数のポンプを用意する必要がなく、ポンプのメンテナンスが容易であり、設置コストが低減される。また、各燃料タンク1a、1b、1c、1dを上下に積み重ねることにより、ポンプが別置きになっていることと相俟って、省ボリューム化が可能である。さらに、各燃料タンク1a、1b、1c、1dに貯蔵された液体燃料Lから、バッファタンク5内の抜出し配管の端部まで、サイフォンが形成されると、バッファタンク5内の減圧を行わなくともよいので、再液化装置8の消費エネルギーを省ける。
各燃料タンク1a、1b、1c、1dを、液体燃料Lを予め貯蔵した状態で船舶に積み込むようにすれば、バンカリングポンプなどの供給流量に依存せずに、バンカリング時間を大幅に短縮することができる。
バッファタンク5をタンクの液面上部からの抜き出し要件が課されないタンクとした場合には、バッファタンク5には、ダイヤフラムポンプやキャンドモータポンプなど、種々の方式のポンプを採用することができる。
【0054】
〔第3の実施形態〕
図3は、本発明の第3の実施形態の船舶用燃料供給装置の構成を示すブロック図である。図1、2と同一の符号は同一の構成であり、特に説明がない限り、図1、2における説明を援用しここではその説明を省略する。
【0055】
この実施形態では、液体燃料Lには、液化ガス燃料の他、メタノール、重油、軽油など、種々の液体燃料も含まれる。
【0056】
この実施形態では、図3に示すように、第2の実施形態における再液化装置8に代えて、負圧化装置としてガスコンプレッサ17を設けたものである。
【0057】
ガスコンプレッサ17は、バッファタンク5内の液体燃料Lの液面よりも上方の空間の気体を圧縮し、この空間を負圧にする。ガスコンプレッサ17により圧縮された気化ガスは、戻し配管16を経て、各燃料タンク1a、1b、1c、1dに戻される。
【0058】
戻し配管16は、第2の実施形態と同様に、ガスコンプレッサ17に接続される側の1本の配管が、各燃料タンク1a、1b、1c、1d側で分岐され、各燃料タンク1a、1b、1c、1dに接続されている。戻し配管16の分岐された部分には、各燃料タンク1a、1b、1c、1dに対応して、開閉弁15a、15b、15c、15dが設けられている。
【0059】
ガスコンプレッサ17は、下液面センサ13dが液体燃料Lの液面を検知すると動作され、バッファタンク5内を減圧し、各燃料タンク1a、1b、1c、1d内を加圧し、バッファタンク5への液体燃料Lの送液を行う。
【0060】
この実施形態においては、バッファタンク5内の気体が、各燃料タンク1a、1b、1c、1dに戻されることにより、バッファタンク5内の気圧と各燃料タンク1a、1b、1c、1d内の気圧との差圧を大きくすることができるので、高気圧の各燃料タンク1a、1b、1c、1d内の液体燃料Lが、低気圧のバッファタンク5内に効率良く送液される。
【0061】
なお、液体燃料Lが液化ガス燃料である場合には、さらに、各燃料タンク1a、1b、1c、1dに戻って再液化した液体燃料が、船舶の機関12で利用されるので、液体燃料が無駄なく利用されるという効果がある。
【0062】
また、この実施形態においても、各燃料タンク1a、1b、1c、1dごとに複数のポンプを用意する必要がなく、ポンプのメンテナンスが容易であり、設置コストが低減される。また、各燃料タンク1a、1b、1c、1dを上下に積み重ねることにより、ポンプが別置きになっていることと相俟って、省ボリューム化が可能である。さらに、各燃料タンク1a、1b、1c、1dに貯蔵された液体燃料Lから、バッファタンク5内の抜出し配管の端部まで、サイフォンが形成されると、バッファタンク5内の減圧を行わなくともよいので、負圧化装置の消費エネルギーを省ける。
各燃料タンク1a、1b、1c、1dを、液体燃料Lを予め貯蔵した状態で船舶に積み込むようにすれば、バンカリングポンプなどの供給流量に依存せずに、バンカリング時間を大幅に短縮することができる。
バッファタンク5をタンクの液面上部からの抜き出し要件が課されないタンクとした場合には、バッファタンク5には、ダイヤフラムポンプやキャンドモータポンプなど、種々の方式のポンプを採用することができる。
【0063】
〔第4の実施形態〕
図4は、本発明の第4の実施形態の船舶用燃料供給装置の構成を示すブロック図である。図1と同一の符号は同一の構成であり、特に説明がない限り、図1における説明を援用しここではその説明を省略する。
【0064】
この実施形態では、液体燃料は、液化アンモニアである。
【0065】
この実施形態では、図4に示すように、第1の実施形態における再液化装置8に代えて、負圧化装置としてガスコンプレッサ17を設けたものである。
【0066】
ガスコンプレッサ17は、バッファタンク5内の液体燃料Lの液面よりも上方の空間の気化ガスを圧縮し、この空間を負圧にする。ガスコンプレッサ17により圧縮された気化ガスは、凝縮水タンク18に送られる。
【0067】
ガスコンプレッサ17は、下液面センサ13dが液体燃料Lの液面を検知すると動作され、バッファタンク5内を減圧し、バッファタンク5への液体燃料Lの送液を行う。
【0068】
凝縮水タンク18からは、凝縮水(液化アンモニア)が、逆止弁8aを経て混合槽11に送られ、バッファタンク5からの液体燃料Lに混合されて、船舶の機関12に供給される。
【0069】
この実施形態においては、負圧化装置により凝縮された凝縮水は、船舶の機関12で利用されるので、液体燃料が無駄なく利用される。
【0070】
また、この実施形態においても、各燃料タンク1a、1b、1c、1dごとに複数のポンプを用意する必要がなく、ポンプのメンテナンスが容易であり、設置コストが低減される。また、各燃料タンク1a、1b、1c、1dを上下に積み重ねることにより、ポンプが別置きになっていることと相俟って、省ボリューム化が可能である。さらに、各燃料タンク1a、1b、1c、1dに貯蔵された液体燃料Lから、バッファタンク5内の抜出し配管の端部まで、サイフォンが形成されると、バッファタンク5内の減圧を行わなくともよいので、負圧化装置の消費エネルギーを省ける。
各燃料タンク1a、1b、1c、1dを、液体燃料Lを予め貯蔵した状態で船舶に積み
込むようにすれば、バンカリングポンプなどの供給流量に依存せずに、バンカリング時間を大幅に短縮することができる。
バッファタンク5をタンクの液面上部からの抜き出し要件が課されないタンクとした場合には、バッファタンク5には、ダイヤフラムポンプやキャンドモータポンプなど、種々の方式のポンプを採用することができる。
【0071】
〔第5の実施形態〕
図5は、本発明の第5の実施形態の船舶用燃料供給装置の構成を示すブロック図である。図1と同一の符号は同一の構成であり、特に説明がない限り、図1における説明を援用しここではその説明を省略する。
【0072】
この実施形態では、液体燃料は、液化アンモニアである。
【0073】
この実施形態では、図5に示すように、第1の実施形態における再液化装置8に代えて、負圧化装置として脱硝設備19を設けたものである。脱硝設備19は、触媒還元装置などの排ガスの脱硝設備である。
【0074】
脱硝設備19には、バッファタンク5内の液体燃料Lの液面よりも上方の空間の気化ガスが減圧弁9を経て送られ、この気化ガスから脱硝する。脱硝設備19は、バッファタンク5内の液体燃料Lの液面よりも上方の空間を負圧にして、バッファタンク5への液体燃料Lの送液をさせる。減圧弁9は、下液面センサ13dが液体燃料Lの液面を検知すると、開制御され、バッファタンク5内の気化ガスの脱硝を可能とする。
【0075】
なお、バッファタンク5内の液体燃料Lの液面よりも上方の空間の気化ガスは、還元剤製造装置へ供給し、還元剤として保管するようにしてもよい。
【0076】
この実施形態においては、バッファタンク5内の気化ガスが脱硝設備19により脱硝に利用されるので、液体燃料が無駄なく利用される。
【0077】
また、この実施形態においても、各燃料タンク1a、1b、1c、1dごとに複数のポンプを用意する必要がなく、ポンプのメンテナンスが容易であり、設置コストが低減される。また、各燃料タンク1a、1b、1c、1dを上下に積み重ねることにより、ポンプが別置きになっていることと相俟って、省ボリューム化が可能である。さらに、各燃料タンク1a、1b、1c、1dに貯蔵された液体燃料Lから、バッファタンク5内の抜出し配管の端部まで、サイフォンが形成されると、バッファタンク5内の減圧を行わなくともよいので、負圧化装置の消費エネルギーを省ける。
各燃料タンク1a、1b、1c、1dを、液体燃料Lを予め貯蔵した状態で船舶に積み込むようにすれば、バンカリングポンプなどの供給流量に依存せずに、バンカリング時間を大幅に短縮することができる。
バッファタンク5をタンクの液面上部からの抜き出し要件が課されないタンクとした場合には、バッファタンク5には、ダイヤフラムポンプやキャンドモータポンプなど、種々の方式のポンプを採用することができる。
【0078】
〔第6の実施形態〕
図6は、本発明の第6の実施形態の船舶用燃料供給装置の構成を示すブロック図である。図1、5と同一の符号は同一の構成であり、特に説明がない限り、図1、5における説明を援用しここではその説明を省略する。
【0079】
この実施形態では、液体燃料は、液化アンモニアである。
【0080】
この実施形態では、図6に示すように、第1の実施形態における再液化装置8に代えて、負圧化装置としてガスコンプレッサ17及び脱硝設備19を設けたものである。
【0081】
ガスコンプレッサ17は、バッファタンク5内の液体燃料Lの液面よりも上方の空間の気化ガスを圧縮し、この空間を負圧にする。ガスコンプレッサ17により圧縮された気化ガスは、脱硝設備19に送られる。
【0082】
この実施形態では、負圧化装置として、ガスコンプレッサ17及び脱硝設備19の両方を設けたことにより、バッファタンク5内の液体燃料Lの液面よりも上方の空間を効率よく負圧にすることができる。
【0083】
ガスコンプレッサ17は、下液面センサ13dが液体燃料Lの液面を検知すると動作され、気化ガスを脱硝設備19に送るとともに、バッファタンク5内を減圧し、バッファタンク5への液体燃料Lの送液を行う。
【0084】
この実施形態でも、バッファタンク5内の液体燃料Lの液面よりも上方の空間の気化ガスは、還元剤製造装置へ供給し、還元剤として保管するようにしてもよい。
【0085】
この実施形態においても、バッファタンク5内の気化ガスが脱硝設備19により脱硝に利用されるので、液体燃料が無駄なく利用される。
【0086】
また、この実施形態においても、各燃料タンク1a、1b、1c、1dごとに複数のポンプを用意する必要がなく、ポンプのメンテナンスが容易であり、設置コストが低減される。また、各燃料タンク1a、1b、1c、1dを上下に積み重ねることにより、ポンプが別置きになっていることと相俟って、省ボリューム化が可能である。さらに、各燃料タンク1a、1b、1c、1dに貯蔵された液体燃料Lから、バッファタンク5内の抜出し配管の端部まで、サイフォンが形成されると、バッファタンク5内の減圧を行わなくともよいので、負圧化装置の消費エネルギーを省ける。
各燃料タンク1a、1b、1c、1dを、液体燃料Lを予め貯蔵した状態で船舶に積み込むようにすれば、バンカリングポンプなどの供給流量に依存せずに、バンカリング時間を大幅に短縮することができる。
バッファタンク5をタンクの液面上部からの抜き出し要件が課されないタンクとした場合には、バッファタンク5には、ダイヤフラムポンプやキャンドモータポンプなど、種々の方式のポンプを採用することができる。
【0087】
〔第1の改良形態〕
図7は、本発明の第1の改良形態の船舶用燃料供給装置の構成を示すブロック図である。図1と同一の符号は同一の構成であり、特に説明がない限り、図1における説明を援用しここではその説明を省略する。
【0088】
本改良形態は、図7に示すように、第1の実施形態(図1)の船舶用燃料供給装置に、ガス供給排出管20及びバッファタンク減圧管22を追加したものである。なお、ガス供給排出管20及びバッファタンク減圧管22は、いずれか一方のみを追加してもよい。
【0089】
ガス供給排出管20及び/又はバッファタンク減圧管22は、第2乃至第6の実施形態(図2図6)の船舶用燃料供給装置にも追加することができる。
ガス供給排出管20及びバッファタンク減圧管22の構成及び機能は、第2乃至第6の実施形態(図2図6)の船舶用燃料供給装置のいずれに追加した場合にも、本改良形態におけるガス供給排出管20及びバッファタンク減圧管22と同様であるので、説明を省略する。
【0090】
〔ガス供給排出管20〕
ガス供給排出管20は、船外の設備に接続される配管が、各燃料タンク1a、1b、1c、1d側で分岐され、各燃料タンク1a、1b、1c、1dに接続されている。
ガス供給排出管20の分岐された部分には、各燃料タンク1a、1b、1c、1dに対応して、開閉弁21a、21b、21c、21dが設けられている。
【0091】
ここで、船外の設備には、バンカリング設備100のみならず、図示しないバンカー船上のガス処理装置や、陸上のガス処理装置なども含まれる。
ガス供給排出管20は、船外の設備と各燃料タンク1a、1b、1c、1dとの間で、ガスの供給または排出を行うための配管であるので、各燃料タンク1a、1b、1c、1d内に液体が存在する場合にはその気相部となる箇所に接続されていることが好ましい。
【0092】
ガス供給排出管20を設けることで、各燃料タンク1a、1b、1c、1dに新たな液体燃料Lを入れる前の準備を行うことができる。また、各燃料タンク1a、1b、1c、1d内の点検等をする前の準備を行うことができる。
【0093】
これら2つの準備に共通する操作としては、各燃料タンク1a、1b、1c、1d内に残留した液体燃料Lのガス化(Gas Vaporizing)、及び、ガスの無害化処理などが挙げられる。
新たな液体燃料Lを入れる前の準備としては、各燃料タンク1a、1b、1c、1d内に残留した液体燃料Lのガス化(Gas Vaporizing)、水分の除去(Drying)、不活性ガスの供給(Innerting)、不純物の除去(Gassing up)及び、予冷却(Cool down)などが挙げられる。
また、点検等をする前の準備としては、各燃料タンク1a、1b、1c、1d内に残留した液体燃料Lのガス化(Gas Vaporizing)、酸素濃度を高くすること(Aeration)などが挙げられる。
【0094】
(2つの準備操作に共通する操作)
ガス供給排出管20を用いた各燃料タンク1a、1b、1c、1dに対する準備の操作は、各燃料タンク1a、1b、1c、1d内の液体燃料Lが全て使用された状態において行う。
【0095】
液体燃料Lが全て使用されても、各燃料タンク1a、1b、1c、1d内には、液体燃料Lまたは液体燃料Lから揮発したガスが残存している場合があるので、液体燃料Lが残存するならばガス化させる。
残存した液体燃料Lのガス化は、開閉弁21a、21b、21c、21dを開けて、各燃料タンク1a、1b、1c、1d内に残存した液体燃料Lを加熱し、または、加熱したガスを供給し、あるいは、圧力をかけて、ガス化させる(Gas Vaporizing)。このとき、各燃料タンク1a、1b、1c、1d内が暖められる。
残存した液体燃料Lがガス化した残存ガス、及び/又は、残存ガスは、大気放出できない場合には、船内、バンカー船などの船外、または、陸上のガス処理装置に供給して無害化処理を行う必要がある。陸上のガス処理設備は、船内のガス処理装置14よりも処理能力を大きくできるので、ガス供給排出管20を用いて、残存ガスを陸上のガス処理設備に送って処理することが好ましい。
【0096】
(新たな液体燃料Lを入れる前の準備)
各燃料タンク1a、1b、1c、1dに新たな液体燃料Lを入れる前の準備は、まず、各燃料タンク1a、1b、1c、1d内の結露を防止するために、開閉弁21a、21b、21c、21dを開けて、ガス供給排出管20を用いて、各燃料タンク1a、1b、1c、1dに乾燥空気(Dry Air)を供給し、各燃料タンク1a、1b、1c、1d内の水分を除去する(Drying)。
【0097】
次に、ガス供給排出管20を用いて、各燃料タンク1a、1b、1c、1dに不活性ガスを供給する(Innerting)。
新たに供給する液体燃料Lから揮発するガスが可燃性ガスである場合には、酸素濃度が高いと爆発する可能性があるので、各燃料タンク1a、1b、1c、1d内の酸素濃度を下げ、爆発下限界以下にしておくことができる。
また、新たに供給する液体燃料Lから揮発するガスが毒性ガス(例えば、NH)である場合には、酸素濃度が高いと、各燃料タンク1a、1b、1c、1dの材質によっては応力腐食割れを起こす可能性があるので、酸素濃度を下げておくことができる。
なお、不活性ガスの供給により、各燃料タンク1a、1b、1c、1d内に液体燃料Lから揮発したガスが残存していた場合にも、この残存ガスが排除される。
【0098】
次いで、各燃料タンク1a、1b、1c、1d内の不活性ガスを、ガス供給排出管20を用いて、液体燃料Lから揮発したガスに置換し、各燃料タンク1a、1b、1c、1d内の不純物を除去する(Gassing up)。
【0099】
また、液体燃料Lが冷却を必要とする燃料である場合には、各燃料タンク1a、1b、1c、1d内を予冷却する必要があるので、液体燃料Lから揮発させ冷却したガスを供給して、各燃料タンク1a、1b、1c、1d内を予冷却する(Cool down)。
【0100】
そして、開閉弁21a、21b、21c、21dを閉じて、バンカリング設備100から、供給管2によって液体燃料Lを各燃料タンク1a、1b、1c、1dに供給する(Loading)。
【0101】
なお、各燃料タンク1a、1b、1c、1dの温度を調整する操作には、液体燃料Lなどの液化ガスを噴霧する方法もある。しかし、供給管2によって供給される液体燃料Lの流量が大きい場合(例えば、700m/h)には、液体燃料Lの吸熱量が過大となるので、小流量(10m/h)にせざるを得ず、各燃料タンク1a、1b、1c、1dの温度を一様に調整することが困難となる。したがって、各燃料タンク1a、1b、1c、1dの温度は、陸上設備から冷却したガスを供給するほうが、調整が容易である。
【0102】
なお、バンカリング設備100からのガスの供給は、供給管2を通じて行い、ガス供給排出管20によって、圧力を抜くようにしてもよい。
【0103】
(点検等をする前の準備)
各燃料タンク1a、1b、1c、1dの点検等をする前の準備は、まず、開閉弁21a、21b、21c、21dを開けて、各燃料タンク1a、1b、1c、1d内に、ガス供給排出管20を用いて、乾燥空気(Dry Air)を供給する。作業者が各燃料タンク1a、1b、1c、1d内に入れるように、酸素濃度を高くするためである(Aeration)。各燃料タンク1a、1b、1c、1d内の酸素濃度が低いと、作業者が内部に入れないからである。
なお、乾燥空気の供給により、各燃料タンク1a、1b、1c、1d内に液体燃料Lから揮発したガスが残存していた場合にも、この残存ガスが排除される。
【0104】
そして、開閉弁21a、21b、21c、21dを閉じて、各燃料タンク1a、1b、1c、1d内の点検等を行う。
【0105】
〔バッファタンク減圧管22〕
バッファタンク減圧管22は、各抜出し配管4a、4b、4c、4dの集合部の流量調節弁7よりも下流の箇所と、流量調節弁7よりも上流の箇所とを繋ぐ配管である。このバッファタンク減圧管22の途中には、減圧弁23が設けられている。
【0106】
バッファタンク減圧管22を設けることで、バッファタンク5及びポンプ10の点検等の準備のために、バッファタンク5内を空にすることができる。
バッファタンク5内に残存ガスがある場合には、この残存ガスは、バッファタンク減圧管22を通って、減圧弁23を経て、各抜出し配管4a、4b、4c、4dの集合部(流量調節弁7の上流箇所)を経て、ガス処理装置14に送られ、無害化処理がなされる。
ガス処理装置14には流量制限があるため、減圧弁23により、バッファタンク減圧管22を通るガス流量を、ガス処理装置14の流量制限に適合するように調整する。
【0107】
なお、流量調節弁7を2方向型の弁とし、バッファタンク5内を空にするための減圧弁として兼用することが考えられるが、流量調節弁7は液体用の弁であり、ガス流量の調整はできないから、気体用の減圧弁23を別途設ける意義は大きい。
【0108】
減圧弁23は、ガス処理装置14内に設けるようにしてもよい。この場合には、気化速度が処理速度より大きくなることで圧力が高くなるので、各機器や配管の設計圧力を高くすることが好ましい。
【0109】
バッファタンク5からガス処理装置14への残存ガスの送気は、ガス処理装置14が選択的に備えるコンプレッサーのような吸引装置の吸引力によって行うことができる。
また、図示しないガス供給装置から、別個の専用ラインを設けて、バッファタンク5内にガスを圧送しても、バッファタンク5からガス処理装置14への残存ガスの送気を行うことができる。
バッファタンク5内に圧送するガスは、安全を確保する観点から、不活性ガスとすることが好ましい。
【0110】
さらに、バッファタンク減圧管22は、バッファタンク5の開放時の安全を確保するため、不活性ガスでパージし、換気するときの、排出管としても用いることができる。この不活性ガスは、例えば、Nガスや、低酸素化した空気等である。
この場合のパージ兼換気用の不活性ガスのバッファタンク5への送気は、図示しない不活性ガス供給装置から、別個の専用ラインを設けて圧送することができる。
また、この不活性ガスは、圧送ではなく、ガス処理装置14が選択的に備えるコンプレッサーのような吸引装置の吸引力によって、不活性ガス供給装置からバッファタンク5内に送気されるとともに、バッファタンク5から排出されるようにしてもよい。
【0111】
以上、各実施形態について説明したが、本発明は、それらの実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってよいし、また、各実施形態を相互に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0112】
1a 燃料タンク
1b 燃料タンク
1c 燃料タンク
1d 燃料タンク
2 供給管
3a 開閉弁
3b 開閉弁
3c 開閉弁
3d 開閉弁
4a 抜出し配管
4b 抜出し配管
4c 抜出し配管
4d 抜出し配管
5 バッファタンク
6a 開閉弁
6b 開閉弁
6c 開閉弁
6d 開閉弁
7 流量調節弁
8 再液化装置
8a 逆止弁
9 減圧弁
10 ポンプ
11 混合槽
12 船舶の機関
13u 上液面センサ
13d 下液面センサ
14 ガス処理装置
15a 開閉弁
15b 開閉弁
15c 開閉弁
15d 開閉弁
16 戻し配管
17 ガスコンプレッサ
18 凝縮水タンク
19 脱硝設備
20 ガス供給排出管
21a 開閉弁
21b 開閉弁
21c 開閉弁
21d 開閉弁
22 バッファタンク減圧管
23 減圧弁
100 バンカリング設備
L 液体燃料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7