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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084831
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】基地局及び端末
(51)【国際特許分類】
   H04W 52/02 20090101AFI20240618BHJP
   H04W 76/15 20180101ALI20240618BHJP
【FI】
H04W52/02 110
H04W76/15
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024061707
(22)【出願日】2024-04-05
(62)【分割の表示】P 2022539793の分割
【原出願日】2020-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸田 朗
(72)【発明者】
【氏名】永田 健悟
(72)【発明者】
【氏名】井上 保彦
(72)【発明者】
【氏名】淺井 裕介
(72)【発明者】
【氏名】鷹取 泰司
(57)【要約】      (修正有)
【課題】無線端末のマルチリンク時の消費電力を抑制する基地局を提供する。
【解決手段】基地局10は、第1、第2の無線信号処理部とリンクマネジメント部とを含む。第1、第2の無線信号処理部は、それぞれ第1、第2のチャネルを用いて無線信号を送受信する。リンクマネジメント部は、第1、第2の無線信号処理部を用いて端末20とのマルチリンクを確立し、第1の無線信号処理部をマルチリンクでメインとして使用するプライマリリンクに設定し、第2の無線信号処理部をマルチリンクで補助としてセカンダリリンクに設定する。セカンダリリンクがアクティブモードである場合に、第1の条件が満たされると、リンクマネジメント部が、セカンダリリンクを動作休止モードに設定する。セカンダリリンクが動作休止モードである場合に、第2の条件が満たされると、リンクマネジメント部が、セカンダリリンクをアクティブモードに設定する。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のチャネルを用いて無線信号を送受信可能に構成された第1の無線信号処理部と、
前記第1のチャネルと異なる第2のチャネルを用いて無線信号を送受信可能に構成された第2の無線信号処理部と、
前記第1の無線信号処理部と前記第2の無線信号処理部とを用いて端末とのマルチリンクを確立し、前記第1の無線信号処理部を前記マルチリンクでメインとして使用するプライマリリンクに設定し、前記第2の無線信号処理部を前記マルチリンクで補助として使用するセカンダリリンクに設定するリンクマネジメント部と、を備え、
前記セカンダリリンクがアクティブモードである場合に、前記マルチリンクで第1の条件が満たされると、前記リンクマネジメント部が、前記セカンダリリンクを前記アクティブモードよりも消費電力が低い動作休止モードに設定し、
前記セカンダリリンクが前記動作休止モードである場合に、前記マルチリンクで第2の条件が満たされると、前記リンクマネジメント部が、前記セカンダリリンクを前記アクティブモードに設定する、基地局。
【請求項2】
前記第1の条件は、送信するデータのバッファ量が第1の閾値を下回っていることに対応し、
前記第2の条件は、送信するデータのバッファ量が第2の閾値を上回っていることに対応し、
前記第1の閾値は前記第2の閾値以下である、
請求項1に記載の基地局。
【請求項3】
前記第1の条件は、前記端末のバッテリ残量が第3の閾値を下回っていることに対応し、
前記第2の条件は、前記端末のバッテリ残量が第4の閾値を上回っていることに対応し、
前記第3の閾値は前記第4の閾値以下である、
請求項1に記載の基地局。
【請求項4】
前記第1の条件は、前記マルチリンクで送信するデータに重要トラヒックが含まれていないことに対応し、
前記第2の条件は、前記マルチリンクで送信するデータに前記重要トラヒックが含まれていることに対応する、
請求項1に記載の基地局。
【請求項5】
前記マルチリンクで送信するデータに前記重要トラヒックが含まれている場合に、前記リンクマネジメント部は、前記端末の前記セカンダリリンクを用いて前記重要トラヒックを送信し、前記端末の前記セカンダリリンクと同じチャネルを使用する他の端末のセカンダリリンクを前記動作休止モードに設定する、
請求項4に記載の基地局。
【請求項6】
第1のチャネルを用いて無線信号を送受信可能に構成された第1の無線信号処理部と、
前記第1のチャネルと異なる第2のチャネルを用いて無線信号を送受信可能に構成された第2の無線信号処理部と、
前記第1の無線信号処理部と前記第2の無線信号処理部とを用いて基地局とのマルチリンクを確立し、前記第1の無線信号処理部を前記マルチリンクでメインとして使用するプライマリリンクに設定し、前記第2の無線信号処理部を前記マルチリンクで補助として使用するセカンダリリンクに設定するリンクマネジメント部と、を備え、
前記セカンダリリンクがアクティブモードである場合に、前記マルチリンクで第1の条件が満たされると、前記リンクマネジメント部が、前記セカンダリリンクを前記アクティブモードよりも消費電力が低い動作休止モードに設定し、
前記セカンダリリンクが前記動作休止モードである場合に、前記マルチリンクで第2の条件が満たされると、前記リンクマネジメント部が、前記セカンダリリンクを前記アクティブモードに設定する、端末。
【請求項7】
前記第1の条件は、送信するデータのバッファ量が第1の閾値を下回っていることに対応し、
前記第2の条件は、送信するデータのバッファ量が第2の閾値を上回っていることに対応し、
前記第1の閾値は前記第2の閾値以下である、
請求項6に記載の端末。
【請求項8】
前記第1の条件は、前記端末のバッテリ残量が第3の閾値を下回っていることに対応し、
前記第2の条件は、前記端末のバッテリ残量が第4の閾値を上回っていることに対応する、
前記第3の閾値は前記第4の閾値以下である、
請求項6に記載の端末。
【請求項9】
前記第1の条件は、前記マルチリンクで送信するデータに重要トラヒックが含まれていないことに対応し、
前記第2の条件は、前記マルチリンクで送信するデータに前記重要トラヒックが含まれていることに対応する、
請求項6に記載の端末。
【請求項10】
前記端末の前記セカンダリリンクと同じチャネルを使用する他の端末のセカンダリリンクが前記重要トラヒックを送信することを示す無線フレームを受信すると、前記リンクマネジメント部が、前記端末の前記セカンダリリンクを前記動作休止モードに設定する、
請求項9に記載の端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、基地局及び端末に関する。
【背景技術】
【0002】
基地局と端末との間を無線で接続する無線システムとして、無線LAN(Local Area Network)が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】IEEE Std 802.11-2016,“Figure 4-25 Establishing the IEEE 802.11 association”and“11.3 STA authentication and association”, 7 December 2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
課題は、無線端末の消費電力を抑制すること。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の基地局は、第1の無線信号処理部と、第2無線信号処理部と、リンクマネジメント部と、を含む。第1の無線信号処理部は、第1のチャネルを用いて無線信号を送受信可能に構成される。第2の無線信号処理部は、第1のチャネルと異なる第2のチャネルを用いて無線信号を送受信可能に構成される。リンクマネジメント部は、第1の無線信号処理部と第2の無線信号処理部とを用いて端末とのマルチリンクを確立し、第1の無線信号処理部をマルチリンクでメインとして使用するプライマリリンクに設定し、第2の無線信号処理部をマルチリンクで補助として使用するセカンダリリンクに設定する。セカンダリリンクがアクティブモードである場合に、マルチリンクで第1の条件が満たされると、リンクマネジメント部が、セカンダリリンクをアクティブモードよりも消費電力が低い動作休止モードに設定する。セカンダリリンクが動作休止モードである場合に、マルチリンクで第2の条件が満たされると、リンクマネジメント部が、セカンダリリンクをアクティブモードに設定する。
【発明の効果】
【0006】
実施形態の基地局は、マルチリンク時の消費電力を抑制させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る無線システムの全体構成の一例を示す概念図である。
図2図2は、実施形態に係る無線システムにおける無線フレームのフォーマットの具体例を示す概念図である。
図3図3は、実施形態に係る無線システムの備える基地局の構成の一例を示すブロック図である。
図4図4は、実施形態に係る無線システムの備える基地局の機能の一例を示すブロック図である。
図5図5は、実施形態に係る無線システムの備える端末の構成の一例を示すブロック図である。
図6図6は、実施形態に係る無線システムの備える端末の機能の一例を示すブロック図である。
図7図7は、実施形態に係る無線システムの備える基地局のリンクマネジメント部の詳細な機能の一例を示すブロック図である。
図8図8は、実施形態に係る無線システムにおけるマルチリンク処理の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、実施形態に係る無線システムにおけるリンク管理情報の一例を示すテーブルである。
図10図10は、実施形態に係る無線システムにおけるマルチリンク時のデータ送信方法の一例を示すフローチャートである。
図11図11は、実施形態に係る無線システムにおけるマルチリンクパワーセーブの使用方法の具体例を示すフローチャートである。
図12図12は、図11で説明されたマルチリンクパワーセーブの使用例によるリンク管理情報の変化の一例を示すテーブルである。
図13図13は、実施形態に係る無線システムにおけるリンク起動処理の実行条件の一例を示すフローチャートである。
図14図14は、実施形態に係る無線システムにおけるリンク停止処理の実行条件の一例を示すフローチャートである。
図15図15は、実施形態に係る無線システムにおけるリンク起動/停止処理の具体例を示すフローチャートである。
図16図16は、実施形態に係る無線システムのリンク起動/停止処理で使用される無線フレームの具体例を示す概念図である。
図17図17は、実施形態に係る無線システムのリンク起動/停止処理で使用される無線フレームの具体例を示す概念図である。
図18図18は、実施形態の第1変形例に係る無線システムにおけるリンク起動処理の実行条件の一例を示すフローチャートである。
図19図19は、実施形態の第1変形例に係る無線システムにおけるリンク停止処理の実行条件の一例を示すフローチャートである。
図20図20は、実施形態の第2変形例に係る無線システムにおけるリンク起動処理の実行条件の一例を示すフローチャートである。
図21図21は、実施形態の第2変形例に係る無線システムにおけるリンク停止処理の実行条件の一例を示すフローチャートである。
図22図22は、実施形態の第3変形例に係る無線システムにおけるリンク起動処理の実行条件の一例を示すフローチャートである。
図23図23は、実施形態の第3変形例に係る無線システムにおけるリンク停止処理の実行条件の一例を示すフローチャートである。
図24図24は、実施形態の第4変形例に係る無線システムにおけるリンク起動/停止処理の具体例を示すフローチャートである。
図25図25は、実施形態の第4変形例に係る無線システムのリンク起動/停止処理で使用される無線フレームの具体例を示す概念図である。
図26図26は、実施形態の第5変形例に係る無線システムにおける無線通信に使用される周波数帯の一例を示す概念図である。
図27図27は、実施形態の第5変形例に係る無線システムにおけるリンク管理情報の一例を示すテーブルである。
図28図28は、実施形態の第3変形例に係る無線システムのマルチリンクにおけるデータの割り当ての一例を示すテーブルである。
図29図29は、実施形態と実施形態の第1変形例との組み合わせに係る無線システムにおけるリンク停止処理の実行条件の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、実施形態について図面を参照して説明する。実施形態は、発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示している。図面は模式的又は、概念的なものである。各図面の寸法及び比率等は、必ずしも現実のものと同一とは限らない。本発明の技術的思想は、構成要素の形状、構造、配置等によって特定されるものではない。また、以下の説明では、略同一の機能及び構成を有する構成要素に、同一の符号が付されている。
【0009】
<1>無線システム1の構成
実施形態に係る無線システム1は、マルチリンク時のリンクの起動/停止方法に関する。以下に、実施形態に係る無線システム1について説明する。
【0010】
<1-1>無線システム1の全体構成について
図1は、実施形態に係る無線システム1の構成の一例を示している。図1に示すように、無線システム1は、例えば基地局10、端末20、及びサーバ30を備えている。
【0011】
基地局10は、ネットワークNWに接続され、無線LANのアクセスポイントとして使用される。例えば、基地局10は、ネットワークNWから受信したデータを、無線で端末20に配信することができる。また、基地局10は、一種類の帯域又は複数種類の帯域を用いて、端末20に接続され得る。本明細書では、基地局10と端末20との間における複数種類の帯域を用いた無線接続のことを、“マルチリンク”と呼ぶ。基地局10と端末20との間の通信は、例えばIEEE802.11規格に基づいている。
【0012】
端末20は、例えばスマートフォンやタブレットPC等の無線端末である。端末20は、無線で接続された基地局10を介して、ネットワークNW上のサーバ30との間でデータを送受信することができる。尚、端末20は、デスクトップコンピュータやラップトップコンピュータ等、その他の電子機器であってもよい。端末20は、少なくとも基地局10と通信可能であり、且つ後述する動作を実行可能な機器であればよい。
【0013】
サーバ30は、様々な情報を保持することが可能であり、例えば端末20を対象としたコンテンツのデータを保持している。サーバ30は、例えばネットワークNWに有線で接続され、ネットワークNWを介して基地局10と通信可能に構成される。尚、サーバ30は、少なくとも基地局10と通信可能であればよい。つまり、基地局10とサーバ30との間の通信は、有線であっても無線であってもよい。
【0014】
実施形態に係る無線システム1において、基地局10及び端末20間のデータ通信は、OSI(Open Systems Interconnection)参照モデルに基づいている。OSI参照モデルでは、通信機能が7階層(第1層:物理層、第2層:データリンク層、第3層:ネットワーク層、第4層:トランスポート層、第5層:セッション層、第6層:プレゼンテーション層、第7層:アプリケーション層)に分割される。
【0015】
データリンク層は、例えばLLC(Logical Link Control)層と、MAC(Media Access Control)層とを含んでいる。LLC層は、例えば上位のアプリケーションから入力されたデータに、DSAP(Destination Service Access Point)ヘッダやSSAP(Source Service Access Point)ヘッダ等を付加し、LLCパケットを形成する。MAC層は、例えばLLCパケットにMACヘッダを付加し、MACフレームを形成する。
【0016】
図2は、実施形態に係る無線システム1において、基地局10及び端末20間の通信で使用される無線フレームのフォーマットの具体例を示している。図2に示すように、無線フレームは、例えばFrame Controlフィールド、Durationフィールド、Address1フィールド、Address2フィールド、Address3フィールド、Sequence Controlフィールド、その他の制御情報フィールド、Frame Bodyフィールド、及びFCS(Frame Check Sequence)フィールドを含んでいる。
【0017】
Frame Controlフィールド~その他の制御情報フィールドは、例えばMACフレームに含まれたMACヘッダに対応している。Frame Bodyフィールドは、例えばMACフレームに含まれたMACペイロードに対応している。FCSフィールドは、MACヘッダとFrame Bodyフィールドとの誤り検出符号を格納し、当該無線フレームにおけるエラーの有無の判定に使用される。
【0018】
Frame Controlフィールドは、様々な制御情報を示し、例えばType値、Subtype値、To DS(To Distribution System)値、及びFrom DS値を含んでいる。Type値は、当該無線フレームのフレームタイプを示している。例えば、Type値“00”は、当該無線フレームがマネージメントフレームであることを示している。Type値“01”は、当該無線フレームが制御フレームであることを示している。Type値“10”は、当該無線フレームがデータフレームであることを示している。
【0019】
無線フレームの内容は、Type値及びSubtype値の組み合わせによって変化する。例えば、“00/1000(Type値/Subtype値)”は、当該無線フレームがビーコン信号であることを示している。To DS値及びFrom DS値の意味は、その組み合わせにより異なっている。例えば、“00(To DS/From DS)”は、同じIBSS(Independent Basic Service Set)内の端末間におけるデータであることを示している。“10”は、データフレームが外部から当該DS(Distribution System)に向けられたものであることを示している。“01”は、データフレームが当該DSの外へ向かうことを示している。“11”は、メッシュネットワークを構成する場合に使用される。
【0020】
Durationフィールドは、無線回線を使用する予定期間を示している。複数のAddressフィールドは、BSSID、送信元アドレス、あて先アドレス、送信者端末のアドレス、受信者端末のアドレス等を示している。Sequence Controlフィールドは、MACフレームのシーケンス番号と、フラグメントのためのフラグメント番号とを示している。その他の制御情報フィールドは、例えばトラヒック種別(TID)情報を含んでいる。TID情報は、無線フレーム内のその他の位置に挿入されてもよい。Frame Bodyフィールドは、フレームの種類に応じた情報を含んでいる。例えば、Frame Bodyフィールドは、データフレームに対応する場合に、データを格納する。
【0021】
<1-2>基地局10の構成について
図3は、実施形態に係る無線システム1の備える基地局10の構成の一例を示している。図3に示すように、基地局10は、例えばCPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、無線通信モジュール14、及び有線通信モジュール15を備えている。
【0022】
CPU11は、様々なプログラムを実行することが可能な回路であり、基地局10の全体の動作を制御する。ROM12は、不揮発性の半導体メモリであり、基地局10を制御するためのプログラムや制御データ等を保持している。RAM13は、例えば揮発性の半導体メモリであり、CPU11の作業領域として使用される。無線通信モジュール14は、無線信号によるデータの送受信に使用される回路であり、アンテナに接続される。また、無線通信モジュール14は、例えば複数の周波数帯にそれぞれ対応する複数の通信モジュールを含んでいる。有線通信モジュール15は、有線信号によるデータの送受信に使用される回路であり、ネットワークNWに接続される。
【0023】
図4は、実施形態に係る無線システム1の備える基地局10の機能構成の一例を示している。図4に示すように、基地局10は、例えばデータ処理部110、リンクマネジメント部120、並びに無線信号処理部130、140及び150を備える。データ処理部110、リンクマネジメント部120、並びに無線信号処理部130、140及び150の処理は、例えばCPU11及び無線通信モジュール14によって実現される。
【0024】
データ処理部110は、入力されたデータに対して、LLC層の処理と上位層(第3層~第7層)の処理とを実行し得る。例えば、データ処理部110は、ネットワークNWを介してサーバ30から入力されたデータを、リンクマネジメント部120に出力する。また、データ処理部110は、リンクマネジメント部120から入力されたデータを、ネットワークNWを介してサーバ30に送信する。
【0025】
リンクマネジメント部120は、入力されたデータに対して、例えばMAC層の処理の一部を実行する。また、リンクマネジメント部120は、無線信号処理部130、140及び150からの通知に基づいて、端末20とのリンクを管理する。リンクマネジメント部120は、リンク管理情報121を含んでいる。リンク管理情報121は、例えばRAM13に格納され、当該基地局10に無線接続されている端末20の情報を含んでいる。また、リンクマネジメント部120は、アソシエーション処理部122、及び認証処理部123を含んでいる。アソシエーション処理部122は、無線信号処理部130、140及び150のいずれかを介して端末20の接続要求を受信した場合に、アソシエーションに関するプロトコルを実行する。認証処理部123は、接続要求に続いて、認証に関するプロトコルを実行する。
【0026】
無線信号処理部130、140及び150のそれぞれは、無線通信を用いて基地局10と端末20との間のデータの送受信を行う。例えば、無線信号処理部130、140及び150のそれぞれは、リンクマネジメント部120から入力されたデータにプリアンブルやPHYヘッダ等を付加して、無線フレームを作成する。そして、無線信号処理部130、140及び150のそれぞれは、当該無線フレームを無線信号に変換して、基地局10のアンテナを介して当該無線信号を配信する。また、無線信号処理部130、140及び150のそれぞれは、基地局10のアンテナを介して受信した無線信号を無線フレームに変換する。そして、無線信号処理部130、140及び150のそれぞれは、当該無線フレームに含まれたデータを、リンクマネジメント部120に出力する。
【0027】
このように、無線信号処理部130、140及び150のそれぞれは、入力されたデータ又は無線信号に対して、例えばMAC層の処理の一部と第1層の処理とを実行し得る。例えば、無線信号処理部130は、2.4GHz帯の無線信号を取り扱う。無線信号処理部140は、5GHz帯の無線信号を取り扱う。無線信号処理部150は、6GHz帯の無線信号を取り扱う。無線信号処理部130、140及び150は、基地局10のアンテナを共有していてもよいし、共有していなくてもよい。
【0028】
<1-3>端末20の構成について
図5は、実施形態に係る無線システム1の備える端末20の構成の一例を示している。図5に示すように、端末20は、例えばCPU21、ROM22、RAM23、無線通信モジュール24、ディスプレイ25、及びストレージ26を備えている。
【0029】
CPU21は、様々なプログラムを実行することが可能な回路であり、端末20の全体の動作を制御する。ROM22は、不揮発性の半導体メモリであり、端末20を制御するためのプログラムや制御データ等を保持している。RAM23は、例えば揮発性の半導体メモリであり、CPU21の作業領域として使用される。無線通信モジュール24は、無線信号によるデータの送受信に使用される回路であり、アンテナに接続される。また、無線通信モジュール24は、例えば複数の周波数帯にそれぞれ対応する複数の通信モジュールを含んでいる。ディスプレイ25は、例えばアプリケーションソフトに対応するGUI(Graphical User Interface)等を表示する。ディスプレイ25は、端末20の入力インタフェースとしての機能を有していてもよい。ストレージ26は、不揮発性の記憶装置であり、例えば端末20のシステムソフトウェア等を保持する。尚、端末20は、ディスプレイを備えていなくてもよい。例えば、IoT端末では、ディスプレイ25が省略され得る。
【0030】
図6は、実施形態に係る無線システム1の備える端末20の機能構成の一例を示している。図6に示すように、端末20は、例えばデータ処理部210、リンクマネジメント部220、無線信号処理部230、240及び250、並びにアプリケーション実行部260を備える。データ処理部210、リンクマネジメント部220、並びに無線信号処理部230、240及び250の処理は、例えばCPU21及び無線通信モジュール24によって実現される。
【0031】
データ処理部210は、入力されたデータに対して、LLC層の処理と上位層(第3層~第7層)の処理とを実行し得る。例えば、データ処理部210は、アプリケーション実行部260から入力されたデータを、リンクマネジメント部220に出力する。また、データ処理部210は、リンクマネジメント部220から入力されたデータを、アプリケーション実行部260に出力する。
【0032】
リンクマネジメント部220は、入力されたデータに対して、例えばMAC層の処理の一部を実行する。また、リンクマネジメント部220は、無線信号処理部230、240及び250からの通知に基づいて、基地局10とのリンクを管理する。リンクマネジメント部220は、リンク管理情報221を含んでいる。リンク管理情報221は、例えばRAM23に格納され、当該端末20に無線接続されている基地局10の情報を含んでいる。また、リンクマネジメント部220は、アソシエーション処理部222、及び認証処理部223を含んでいる。アソシエーション処理部222は、無線信号処理部230、240及び250のいずれかを介して基地局10の接続要求を受信した場合に、アソシエーションに関するプロトコルを実行する。認証処理部223は、接続要求に続いて、認証に関するプロトコルを実行する。
【0033】
無線信号処理部230、240及び250のそれぞれは、無線通信を用いて基地局10と端末20との間のデータの送受信を行う。例えば、無線信号処理部230、240及び250のそれぞれは、リンクマネジメント部220から入力されたデータにプリアンブルやPHYヘッダ等を付加して、無線フレームを作成する。そして、無線信号処理部230、240及び250のそれぞれは、当該無線フレームを無線信号に変換して、端末20のアンテナを介して当該無線信号を配信する。また、無線信号処理部230、240及び250のそれぞれは、端末20のアンテナを介して受信した無線信号を無線フレームに変換する。そして、無線信号処理部230、240及び250のそれぞれは、当該無線フレームに含まれたデータを、リンクマネジメント部220に出力する。
【0034】
このように、無線信号処理部230、240及び250のそれぞれは、入力されたデータ又は無線信号に対して、例えばMAC層の処理の一部と第1層の処理とを実行し得る。例えば、無線信号処理部230は、2.4GHz帯の無線信号を取り扱う。無線信号処理部240は、5GHz帯の無線信号を取り扱う。無線信号処理部250は、6GHz帯の無線信号を取り扱う。無線信号処理部230、240及び250は、端末20のアンテナを共有していてもよいし、共有していなくてもよい。
【0035】
アプリケーション実行部260は、データ処理部210から入力されたデータを利用することが可能なアプリケーションを実行する。例えば、アプリケーション実行部260は、アプリケーションの情報をディスプレイ25に表示することができる。また、アプリケーション実行部260は、入力インタフェースの操作に基づいて動作し得る。
【0036】
以上で説明された実施形態に係る無線システム1では、基地局10の無線信号処理部130、140及び150が、それぞれ端末20の無線信号処理部230、240及び250と接続可能に構成される。つまり、無線信号処理部130及び230間は、2.4GHz帯を用いて無線接続され得る。無線信号処理部140及び240間は、5GHz帯を用いて無線接続され得る。無線信号処理部150及び250間は、6GHz帯を用いて無線接続され得る。本明細書において、各無線信号処理部は、“STA機能”と呼ばれてもよい。すなわち、実施形態に係る無線システム1は、複数のSTA機能を備えている。
【0037】
<1-4>リンクマネジメント部について
図7は、実施形態に係る無線システム1の備える基地局10のリンクマネジメント部120におけるチャネルアクセス機能の詳細を示している。尚、端末20のリンクマネジメント部220の機能は、例えば基地局10のリンクマネジメント部120と同様のため、説明を省略する。図7に示すように、リンクマネジメント部120は、例えばデータカテゴライズ部124、送信キュー125A、125B、125C、125D及び125E、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)実行部126A、126B、126C、126D及び126E、及びデータ衝突管理部127を含んでいる。
【0038】
データカテゴライズ部124は、データ処理部110から入力されたデータをカテゴライズする。データのカテゴリとしては、例えば“LL(Low Latency)”、“VO(Voice)”、“VI(Video)”、“BE(Best Effort)”、及び“BK(Background)”が設定される。LLは、低遅延が求められるデータに適用される。このため、LLのデータは、VO、VI、BE及びBKのいずれのデータよりも優先して処理されることが好ましい。
【0039】
そして、データカテゴライズ部124は、カテゴライズしたデータを、送信キュー125A、125B、125C、125D及び125Eのいずれかに入力する。具体的には、LLのデータが、送信キュー125Aに入力される。VOのデータが、送信キュー125Bに入力される。VIのデータが、送信キュー125Cに入力される。BEのデータが、送信キュー125Dに入力される。BKのデータが、送信キュー125Eに入力される。そして、入力された各カテゴリのデータは、対応する送信キュー125A~Eのいずれかに蓄積される。
【0040】
CSMA/CA実行部126A、126B、126C、126D及び126Eのそれぞれは、CSMA/CAにおいて、キャリアセンスにより他の端末等による無線信号の送信がないことを確認しつつ、予め設定されたアクセスパラメータにより規定された時間だけ送信を待つ。そして、CSMA/CA実行部126A、126B、126C、126D及び126Eは、それぞれ送信キュー125A、125B、125C、125D及び125Eからデータを取り出し、取り出したデータをデータ衝突管理部127を介して無線信号処理部130、140及び150の少なくともいずれかに出力する。すると、当該データを含む無線信号が、CSMA/CAによって送信権が獲得された無線信号処理部(STA機能)によって送信される。
【0041】
CSMA/CA実行部126Aは、送信キュー125Aに保持されたLLのデータに対するCSMA/CAを実行する。CSMA/CA実行部126Bは、送信キュー125Bに保持されたVOのデータに対するCSMA/CAを実行する。CSMA/CA実行部126Cは、送信キュー125Cに保持されたVIのデータに対するCSMA/CAを実行する。CSMA/CA実行部126Dは、送信キュー125Dに保持されたBEのデータに対するCSMA/CAを実行する。CSMA/CA実行部126Eは、送信キュー125Eに保持されたBKのデータに対するCSMA/CAを実行する。
【0042】
尚、アクセスパラメータは、例えばLL、VO、VI、BE、BKの順に無線信号の送信が優先されるように割り当てられる。アクセスパラメータは、例えばCWmin、CWmax、AIFS、TXOPLimitを含んでいる。CWmin及びCWmaxは、衝突回避のための送信待ちの時間であるコンテンションウインドウCW(Contention Window)の最小値及び最大値をそれぞれ示している。AIFS(Arbitration Inter Frame Space)は、優先制御機能を備える衝突回避制御のためにアクセスカテゴリごとに設定された固定の送信待ちの時間を示している。TXOPLimitは、チャネルの占有時間に対応するTXOP(Transmission Opportunity)の上限値を示している。例えば、送信キュー125は、CWmin及びCWmaxが短いほど、送信権を得やすくなる。送信キュー125の優先度は、AIFSが小さいほど高くなる。一度の送信権で送信されるデータの量は、TXOPLimitの値が大きいほど多くなる。
【0043】
データ衝突管理部127は、複数のCSMA/CA実行部126が同一のSTA機能で送信権を獲得した場合に、データの衝突を防止する。具体的には、データ衝突管理部127は、カテゴリが異なり且つ同一のSTA機能で送信権が獲得されたデータの送信タイミングを調整し、優先度の高いカテゴリのデータからSTA機能に送信する。例えば、LLの送信キュー125AのCSMA/CAによって送信権を獲得したSTA機能が、その他の送信キュー125B~125EのいずれかのCSMA/CAによって送信権を獲得したSTA機能と同一になる場合がある。この場合、データ衝突管理部127は、送信キュー125Aに格納されたデータを優先してSTA機能に送信する。その他の送信キュー125の組み合わせにおいても同様に、カテゴリに設定された優先度に基づいた順番でデータが送信される。これにより、同一のSTA機能に送信が割り当てられたデータ同士の衝突が防止される。
【0044】
本実施形態では、リンクマネジメント部がチャネルアクセス機能を実装する形態について記載しているが、各STA機能がチャネルアクセス機能を実装してもよい。リンクマネジメント部がチャネルアクセス機能を実装する場合、各STA機能が、対応するリンクにおける無線チャネルの状態(アイドル/ビジー)を検出して、リンクマネジメント部が、データの送信可否を判断する(どのリンクを使って送信する等)。一方で、各STA機能がチャネルアクセス機能を実装する場合、各STA機能が独立してキャリアセンスを実行して、データを送信すればよい。このとき、複数のリンクが同時に使用された場合のチャネルアクセスは、複数のSTA機能間のやりとりによってアクセスパラメータが共通化されることによって実行されてもよく、リンクマネジメント部によってアクセスパラメータが共通化されることによって実行されてもよい。基地局10及び端末20は、データを複数のSTA機能間で共通のアクセスパラメータに基づいて送信することによって、複数のリンクを同時に使うことができる。
【0045】
<2>無線システム1の動作
以下に、実施形態に係る無線システム1のマルチリンクに関連する様々な動作の一例について説明する。以下の説明では、説明を簡潔にするために、基地局10のSTA1及びSTA2のことを“アクセスポイントAP”とも呼ぶ。端末20のSTA1及びSTA2がアクセスポイントAPに無線信号を送信することは、それぞれ基地局10のSTA1及びSTA2に無線信号を送信することに対応している。STA1及びSTA2がそれぞれ単独で記載された場合に、これらは端末20のSTA機能のことを示している。
【0046】
<2-1>マルチリンク処理について
図8は、実施形態に係る無線システム1におけるマルチリンク処理の一例を示すフローチャートである。図8に示すように、マルチリンク処理では、例えばステップS10~S16の処理が順に実行される。
【0047】
具体的には、まずステップS10の処理において、端末20は、基地局10にプローブリクエストを送信する。プローブリクエストは、端末20の周辺に基地局10が存在するか否かを確認する信号である。プローブリクエストのFrame Controlフィールドは、例えば“00/0100(Type値/Subtype値)”を含んでいる。基地局10は、プローブリクエストを受信すると、ステップS11の処理を実行する。
【0048】
ステップS11の処理において、基地局10は、端末20にプローブレスポンスを送信する。プローブレスポンスは、基地局10が端末20からのプローブリクエストに対する応答に使用する信号である。プローブレスポンスのFrame Controlフィールドは、例えば“00/0101(Type値/Subtype値)”を含んでいる。端末20は、プローブリクエストを受信すると、ステップS12の処理を実行する。
【0049】
ステップS12の処理において、端末20は、少なくとも1つのSTA機能を介して、基地局10にマルチリンクアソシエーションリクエストを送信する。マルチリンクアソシエーションリクエストは、基地局10にマルチリンクの確立を要求するための信号である。例えば、マルチリンクアソシエーションリクエストは、端末20のリンクマネジメント部220によって生成される。マルチリンクアソシエーションリクエストのFrame Controlフィールドは、例えば“00/xxxx(Type値/Subtype値(xxxxは所定の数値))”を含んでいる。基地局10のリンクマネジメント部120は、マルチリンクアソシエーションリクエストを受信すると、ステップS13の処理を実行する。
【0050】
ステップS13の処理において、基地局10のリンクマネジメント部120は、1つのSTA機能を使用したマルチリンクアソシエーション処理を実行する。具体的には、まず基地局10は、端末20との間で、1つ目のSTA機能のアソシエーション処理を実行する。そして、1つ目のSTA機能において無線接続(リンク)が確立されると、基地局10のリンクマネジメント部120は、リンクが確立されている1つ目のSTA機能を用いて、2つ目のSTA機能のアソシエーション処理を実行する。つまり、リンクが確立されていないSTA機能のアソシエーション処理に、リンクが確立されているSTA機能が使用される。少なくとも2つのSTA機能のアソシエーション処理が完了すると、基地局10は、マルチリンクを確立し、ステップS14の処理を実行する。
【0051】
尚、1つ目のSTA機能においてリンクが確立されるときに、マルチリンクが確立されてもよい。例えば、基地局10と端末20とのそれぞれが、アソシエーション処理に先立って、マルチリンクのケーパビリティや、マルチリンクの対象となるリンク及び各リンクにおけるオペレーションパラメータを通知することにより、マルチリンクのためのアソシエーションを一括で実行することができる。具体的には、リンクマネジメント部120及び220は、1つ目のSTA機能がアソシエーションを開始するときに、マルチリンクの確立を指示し、マルチリンクの対象とするリンク等を指定する。すると、リンクマネジメント部120及び220が、各リンクのアソシエーションを実行し、これらのリンクをマルチリンクとして管理する。
【0052】
ステップS14の処理において、基地局10のリンクマネジメント部120は、リンク管理情報121を更新する。尚、本例では2つのリンクが確立された後にステップS14の処理が実行されているが、リンク管理情報121は、リンク状態が更新する度に更新されてもよいし、マルチリンクが確立された際に更新されてもよい。マルチリンクが確立され、リンク管理情報が更新されると、基地局10は、ステップS15の処理を実行する。
【0053】
ステップS15の処理において、基地局10は、端末20にマルチリンク確立レスポンスを送信する。マルチリンク確立レスポンスは、基地局10が端末20からのマルチリンクリクエストに対する応答に使用する信号である。マルチリンクアソシエーションリクエストのFrame Controlフィールドは、例えば“00/0001(Type値/Subtype値)”を含んでいる。端末20のリンクマネジメント部220は、マルチリンク確立レスポンスを受信したことに基づいて、基地局10との間のマルチリンクが確立されたことを認識する。端末20は、マルチリンク確立レスポンスを受信すると、ステップS16の処理を実行する。
【0054】
ステップS16の処理において、端末20のリンクマネジメント部220は、リンク管理情報221を更新する。つまり、端末20は、基地局10とのマルチリンクが確立されたことを、リンク管理情報221に記録する。これにより、実施形態に係る無線システム1におけるマルチリンク処理が完了し、マルチリンクを用いたデータ通信が、基地局10と端末20との間において可能となる。
【0055】
図9は、実施形態に係る無線システム1におけるリンク管理情報121の一例を示している。尚、端末20のリンク管理情報221は、基地局10のリンク管理情報121と類似した情報を有するため、説明を省略する。図9に示すように、リンク管理情報121は、例えばSTA機能、周波数帯、リンク先ID、マルチリンク有無、TIDのそれぞれの情報を含んでいる。
【0056】
本例において“STA1”は、6GHzの周波数帯を使用するSTA機能、すなわち無線信号処理部150又は250に対応している。“STA2”は、5GHzの周波数帯を使用するSTA機能、すなわち無線信号処理部140又は240に対応している。“STA3”は、2.4GHzの周波数帯を使用するSTA機能、すなわち無線信号処理部130又は230に対応している。
【0057】
リンク先IDは、リンク管理情報121では端末20の識別子に対応し、リンク管理情報221では、基地局10の識別子に対応している。本例では、STA1及びSTA2を用いたマルチリンクが確立されている。マルチリンクが確立されている場合、リンクマネジメント部120及び220のそれぞれは、上位層から入力されたデータを、マルチリンクに関連付けられた少なくとも1つのSTA機能のリンクを用いて送信する。また、STA1がプライマリリンクに設定され、STA2がセカンダリリンクに設定されている。
【0058】
プライマリリンクは、マルチリンクの中でメインリンクとして使用されるリンクである。セカンダリリンクは、マルチリンクの中で補助的に使用されるリンクである。マルチリンクを構成するリンクは、プライマリリンク又はセカンダリリンクのいずれかに割り当てられる。プライマリリンク及びセカンダリリンクは、いずれも二つ以上あってもよい。基地局10との間でマルチリンクを確立している各端末20について、各マルチリンクを構成するリンクセットは、互いに異なっていてもよく、プライマリリンクも互いに異なっていてもよい。異なるプライマリリンクが許容されることにより、基地局10と各端末20との間で最適なリンクがプライマリリンクとして設定され得る。これにより、無線通信の品質向上等の効果が期待される。
【0059】
また、プライマリリンクは、割り当てられたデータの送受信の他に、当該マルチリンクの動作に関連する制御情報の送受信に使用される。プライマリリンクは、例えば基地局10及び端末20間のマルチリンクの確立時に予め設定される。プライマリリンクとして使用されるSTA機能は、周波数帯に応じて優先度が設定されてもよいし、リンクの電波強度に応じて設定されてもよい。
【0060】
リンク管理情報121内の“TID”は、STA機能とTID情報との関連付けを示している。各STA機能は、割り当てられたTID情報に対応するデータを送受信する。例えば、TID#1~3のそれぞれは、LL、VO、VI、BE、BKのいずれかに対応している。1つのトラヒック、すなわち1つのTID情報に対して、1つのSTA機能が関連付けられてもよいし、複数のSTA機能が関連付けられてもよい。本例では、TID#1が、STA1及びSTA2の両方に割り当てられている。TID#2が、STA1に割り当てられている。TID#3が、STA2に割り当てられている。
【0061】
このようなトラヒックとSTA機能との関連付けに対応するトラヒックフローは、基地局10と端末20との間のマルチリンクのセットアップ時に予め設定される。例えば、端末20のリンクマネジメント部220が、トラヒックとSTA機能との対応付けを決定し、基地局10のリンクマネジメント部120にリクエストする。そして、基地局10が、当該リクエストに対してレスポンスすることによって、トラヒックとSTA機能との対応付けが確定する。
【0062】
尚、トラヒックは、例えばマルチリンクを構成する複数のリンク間で均等になるように設定される。これに限定されず、互いに類似する種類(優先/非優先等)のトラヒックが、マルチリンクを構成する一方のリンクに集められてもよい。また、STA機能とトラヒックとの関連付けとしては、例えば音声が2.4GHzの周波数帯に関連付けられ、映像が5Gに関連付けられる。このように、取り扱う情報の種類やデータ容量に応じて、送受信に使用される周波数が割り当てられることが好ましい。
【0063】
<2-2>マルチリンク時のデータ転送について
図10は、実施形態に係る無線システム1の備える基地局10におけるマルチリンク時のデータの送信方法の一例を示している。図10に示すように、基地局10は、上位層からデータを取得すると、ステップS20~S22の処理を順に実行する。
【0064】
具体的には、まずステップS20の処理において、リンクマネジメント部120が、当該データに対応するTID情報を取得する。言い換えると、リンクマネジメント部120が、例えば、上位層から取得したデータのヘッダ内に含まれた情報に基づいて、当該手データとTIDとを関連付ける。これにより、リンクマネジメント部120は、当該データのトラヒックフローがどのTIDに対応するかを確認する。
【0065】
次に、ステップS21の処理において、リンクマネジメント部120が、対応付けたTID情報に対応するSTA機能を取得する。この際に、リンクマネジメント部120は、リンク管理情報121を参照することによって、TID情報とSTA機能との関連付けを確認する。尚、ステップS21の処理において、リンクマネジメント部120により取得されるSTA機能の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0066】
次に、ステップS22の処理において、リンクマネジメント部120が、取得したSTA機能にデータを出力する。出力されるデータ(トラヒック)に1つのSTA機能が関連付けられている場合、当該データは1つのSTA機能を用いてシリアルに送信される。一方で、トラヒックに複数のSTA機能が関連付けられている場合、当該データは複数のSTA機能を用いてパラレルに送信される。
【0067】
尚、1つのトラヒックがパラレルに送信される場合、基地局10のリンクマネジメント部120と端末20のリンクマネジメント部220との間で、データの振り分けと並び替えが実行される。データの振り分けは、送信側のリンクマネジメント部によって実行され、データの並び替えは、受信側のリンクマネジメント部によって実行される。例えば、送信側のリンクマネジメント部は、無線フレームにマルチリンクであることを示すフラグと識別番号とを付加する。受信側のリンクマネジメント部は、付加されたフラグと識別番号とに基づいて、データの並び替えを実行する。
【0068】
また、実施形態に係る無線システム1において、リンクマネジメント部は、上位層から複数のデータを受信した場合に、受信した複数のデータを結合することによりアグリゲーションを実行してもよい。マルチリンクにおけるアグリゲーションは、ユーザによって実行の有無が選択可能なオプション機能として使用されてもよい。
【0069】
<2-3>マルチリンクパワーセーブについて
実施形態に係る無線システム1では、複数種類の動作モードが各STA機能に用意される。STA機能の動作モードとしては、例えばアクティブモード、間欠動作モード、及び動作休止モードが挙げられる。アクティブモードは、端末20のSTA機能がAwake状態を維持することにより、無線信号を随時送受信可能である状態に対応している。間欠動作モードは、端末20のSTA機能がAwake状態とDoze状態を繰り返すことにより、間欠的に動作している状態に対応している。動作休止モードは、端末20のSTA機能がDoze状態を維持することにより、無線信号の送受信が不可能である状態に対応している。マルチリンクを構成する複数のSTA機能は、少なくとも1つのアクティブモード又は間欠動作モードのリンクを含んでいる。マルチリンクを構成するその他のリンクは、アクティブモード、間欠動作モード、及び動作休止モードのいずれかに設定され得る。
【0070】
尚、Awake状態は、無線信号を送受信可能な状態に対応している。Dose状態は、無線信号を送受信不可能な状態に対応している。Doze状態では、当該STA機能に関する回路への電源の供給が適宜遮断される。このため、STA機能の消費電力は、アクティブモード、間欠動作モード、動作休止モードの順に小さくなる。尚、基地局10又は端末20が通信に使うことができるが、これらの間のマルチリンクのリンクセットに含まれないリンクも存在し得る(Disabledリンク)。以下では、説明を簡潔にするために、アクティブモード又は間欠動作モードのリンク、すなわち通信可能なリンクのことを“Awake状態のSTA機能(リンク)”と呼ぶ。動作休止モードのリンク、すなわち通信不可能な省電力状態のリンクのことを“Dose状態のSTA機能(リンク)”と呼ぶ。
【0071】
実施形態に係る無線システム1におけるマルチリンクでは、プライマリリンクに設定されたSTA機能は、例えばアクティブモードと間欠動作モードとのいずれかに設定される。一方で、セカンダリリンクに設定されたSTA機能は、アクティブモード、間欠動作モード、及び動作休止モードのいずれかに設定され得る。例えば、端末20は、マルチリンク時にセカンダリリンクを動作休止モードに設定することによって、省電力に動作し得る。以下では、セカンダリリンクが動作休止モードに設定されているマルチリンクの状態のことを、“マルチリンクパワーセーブ”と呼ぶ。尚、マルチリンク処理によってマルチリンクが確立された際に、セカンダリリンクの初期状態は、アクティブモード、間欠動作モード、動作休止モードのいずれに設定されてもよい。
【0072】
図11は、実施形態に係る無線システム1におけるマルチリンクパワーセーブの使用方法の一例を示している。尚、本例の初期状態では、図9に示されたリンク状態が設定されている。そして、STA1及びSTA2のそれぞれが、アクティブモードに設定されている。図11に示すように、STA1及びSTA2のそれぞれがアクティブモードである場合、TID#2のデータとTID#3のデータとは共に送受信可能である。
【0073】
端末20のリンクマネジメント部220は、第1の条件を満たしたことを検知すると、Doze移行通知信号をプライマリリンク(STA1)を用いてアクセスポイントAPに送信する(ステップS30)。第1の条件は、例えばセカンダリリンク(STA2)のトラヒックが蓄積されていないことに対応している。Doze移行通知信号は、Doze状態に移行することを通知する信号であり、図示された“disable”に対応している。端末20は、基地局10のビーコン信号をSTA1及びSTA2の少なくともいずれかを用いて受信することによって、当該トラヒックの情報を知ることができる。
【0074】
基地局10のSTA1がDoze移行通知信号を受信すると、基地局10のリンクマネジメント部120が、セカンダリリンクの動作休止モードへの移行を許可できるか否かを確認する。そして、セカンダリリンクの動作休止モードへの移行を許可できる場合に、端末20のリンクマネジメント部220は、肯定応答(“OK”)をSTA1又はSTA2を介して端末20に送信する(ステップS31)。尚、基地局10のリンクマネジメント部120は、セカンダリリンクの動作休止モードへの移行を許可できない場合に、否定応答(“NO”)を、STA1又はSTA2を介して基地局10に送信してもよい。
【0075】
ステップS31の肯定応答を端末20が受信すると、端末20のリンクマネジメント部220は、セカンダリリンクとして設定されているSTA2を動作休止モード(Doze状態)に変更する(ステップS32)。これにより、端末20のSTA1及びSTA2が、それぞれAwake状態及びDoze状態になる。このとき、当該マルチリンクは、TID#2のデータのみを送受信可能な状態になっている。
【0076】
その後、端末20のリンクマネジメント部220が、第2の条件を満たしたことを検知すると、Awake移行要求信号を、プライマリリンク(STA1)を用いてアクセスポイントAPに送信する(ステップS33)。Awake移行要求信号は、Awake状態に移行することを要求する信号であり、図示された“enable”に対応している。第2の条件は、例えばセカンダリリンク(STA2)のトラヒックが蓄積されていることに対応している。端末20は、アクティブ状態のSTA1を用いて基地局10のビーコン信号を受信することによって、当該トラヒックの情報を知ることができる。
【0077】
基地局10のSTA1がAwake移行要求信号を受信すると、基地局10のリンクマネジメント部120が、肯定応答(“OK”)をプライマリリンクに対応するSTA1を介して端末20に送信する(ステップS34)。ステップS34の肯定応答を端末20が受信すると、端末20のリンクマネジメント部220は、セカンダリリンクとして設定されているSTA2をアクティブモードに変更する(ステップS35)。これにより、端末20のSTA1及びSTA2のそれぞれが、Awake状態になる。その結果、当該マルチリンクが、例えばTID#1~3のいずれのデータも送受信可能な状態になる。
【0078】
図12は、図11で説明されたマルチリンクパワーセーブの使用例によるリンク管理情報121の変化の一例を示している。図12に示すように、マルチリンクパワーセーブのオン/オフは、それぞれDoze移行通知信号とAwake移行要求信号とによって適用される。具体的には、マルチリンクが設定された後に、端末20が基地局10にDoze移行通知信号を送信することによって、アクティブモードのセカンダリリンクが動作休止モードに移行し、Awake移行要求信号を送信することによって、動作休止モードのセカンダリリンクがアクティブモードに移行する。
【0079】
このように、実施形態に係る無線システム1において、基地局10及び端末20は、Awake移行要求信号/Doze移行通知信号を送信することによって、セカンダリリンクの動作モードを変更することができる。Awake移行要求信号の送信は、プライマリリンク、又はその他の起動しているリンクを用いて実行される。Doze移行通知信号の送信は、プライマリリンク、又は停止するリンク(動作休止モードに移行するリンク)を用いて実行される。
【0080】
尚、Awake移行要求信号及びDoze移行通知信号は、アクセスポイントAP及び端末20のどちらから送信されてもよい。第1及び第2の条件がトラヒックの滞留(バッファ状態)に基づく場合に、動作モードの変更は、例えばバッファに蓄積されたトラヒックが所定の閾値を超えたことをトリガとして実行される。また、プライマリリンクに対して間欠動作モードが適用されてもよい。この場合、プライマリリンクは、少なくともマルチリンクの制御情報を含むビーコン信号を受信可能に動作する。
【0081】
<2-4>リンク起動/停止処理について
実施形態に係る無線システム1は、マルチリンク時に、所定の条件に基づいてセカンダリリンクの起動/停止を制御することができる。以下では、セカンダリリンクを起動させる処理のことを、リンク起動処理と呼ぶ。セカンダリリンクを停止させる処理のことを、リンク停止処理と呼ぶ。尚、本実施形態では、一つのTIDがプライマリリンク及びセカンダリリンクの二つのリンクに対応付けられており、プライマリリンクをメインのリンクとして使用することを想定する。
【0082】
(リンク起動処理について)
まず、リンク起動処理が実行される条件の一例について説明する。図13は、実施形態に係る無線システム1におけるリンク起動処理の実行条件の一例を示すフローチャートである。リンクマネジメント部120及び220は、マルチリンク時にプライマリリンクのみがアクティブモードである場合に、図13に示された一連の処理を実行する。
【0083】
具体的には、まずリンクマネジメント部120及び220のそれぞれが、当該TIDに送信が割り当てられたデータのバッファ量をモニタリングし、データのバッファ量が所定の閾値を超えているか否かを確認する(ステップS40)。
【0084】
データのバッファ量が所定の閾値を超えている場合、基地局10のリンクマネジメント部120と端末20のリンクマネジメント部220との間でAwake移行要求信号が送信されDoze状態のセカンダリリンクがウェイクアップする(ステップS41)。言い換えると、リンク起動処理が実行されることによって、セカンダリリンクとして設定されている端末20のSTA機能が、動作休止モードからアクティブモードに遷移する。その後、リンクマネジメント部120及び220のいずれかが、マルチリンクを構成する複数のリンク(プライマリリンク及びセカンダリリンク)を用いて、データを送信する(ステップS42)。
【0085】
一方で、データのバッファ量が所定の閾値を超えていない場合、リンクマネジメント部120及び220のいずれかが、プライマリリンクを用いてデータを送信する(ステップS43)。言い換えると、リンクマネジメント部120及び220のいずれかが、マルチリンクを実質的にシングルリンクで利用することによって、データを送信する。リンクマネジメント部120及び220のそれぞれは、以上で説明された処理を、当該マルチリンクに送信が割り当てられたデータがバッファされている場合に実行する。
【0086】
(リンク停止処理について)
次に、リンク停止処理が実行される条件の一例について説明する。図14は、実施形態に係る無線システム1におけるリンク停止処理の実行条件の一例を示すフローチャートである。リンクマネジメント部120及び220は、マルチリンク時に複数のリンクがアクティブモードである場合に、図14に示された一連の処理を実行する。
【0087】
具体的には、まずリンクマネジメント部120又は220のそれぞれが、当該TIDに送信が割り当てられたデータのバッファ量をモニタリングし、データのバッファ量が所定の閾値を下回ったか否かを確認する(ステップS50)。
【0088】
データのバッファ量が所定の閾値を下回っている場合、基地局10のリンクマネジメント部120と端末20のリンクマネジメント部220との間でDoze移行通知信号が送信され、アクティブモードのセカンダリリンクが動作休止モード(Doze状態)に設定される(ステップS51)。言い換えると、リンク停止処理が実行されることによって、セカンダリリンクとして設定されている端末20のSTA機能が、アクティブモードから動作休止モードに遷移する。その後、リンクマネジメント部120及び220のいずれかが、プライマリリンクを用いて、データを送信する(ステップS52)。
【0089】
一方で、データのバッファ量が所定の閾値を超えている場合、リンクマネジメント部120及び220のいずれかが、マルチリンクを構成する複数のリンク(プライマリリンク及びセカンダリリンク)を用いてデータを送信する(ステップS53)。リンクマネジメント部120及び220のそれぞれは、以上で説明された処理を、当該マルチリンクに送信が割り当てられたデータがバッファされている場合に実行する。
【0090】
(リンク起動/停止処理の具体例について)
次に、リンク起動/停止処理の具体例について、図15を参照して説明する。図15は、実施形態に係る無線システム1におけるリンク起動/停止処理の具体例を示すフローチャートである。尚、本例の初期状態では、図12に示されたDoze状態のリンク状態が設定されている。
【0091】
図15に示すように、STA1及びSTA2がそれぞれAwake状態及びDoze状態である場合、STA1を用いてデータが送受信され得る。その後、基地局10のリンクマネジメント部120は、“バッファ量>所定の閾値”を満たしたことを検知すると、例えばビーコン信号を用いて、“バッファ量>所定の閾値”を満たしたことを端末20に通知する(図示せず)。
【0092】
すると、端末20のリンクマネジメント部220が、Awake移行要求信号をプライマリリンク(STA1)を用いてアクセスポイントAPに送信する。基地局10のSTA1がAwake移行要求信号を受信すると、基地局10のリンクマネジメント部120が、セカンダリリンクのアクティブモードへの移行を許可できる場合に、肯定応答(“OK”)をプライマリリンク(STA1)を介して端末20に送信する。Awake移行要求信号に対する肯定応答を端末20が受信すると、端末20のリンクマネジメント部220が、セカンダリリンクとして設定されているSTA2の動作モードを動作休止モードからアクティブモードに変更する。これにより、端末20のSTA1及びSTA2のそれぞれが、Awake状態になる。つまり、当該マルチリンクが、プライマリリンク(STA1)とセカンダリリンク(STA2)との両方を用いてデータを送受信可能な状態になる。
【0093】
一方で、STA1及びSTA2のそれぞれがアクティブモードである場合に、基地局10のリンクマネジメント部120が“バッファ量<所定の閾値”を満たしたことを検知すると、例えばビーコン信号を用いて、“バッファ量<所定の閾値”を満たしたことを端末20に通知する(図示せず)。
【0094】
すると、端末20のリンクマネジメント部220が、Doze移行通知信号をプライマリリンク(STA1)を用いてアクセスポイントAPに送信する。基地局10のSTA1がDoze移行通知信号を受信すると、基地局10のリンクマネジメント部120が、セカンダリリンクの動作休止モードへの移行を許可できる場合に、肯定応答(“OK”)をプライマリリンク(STA1)又はセカンダリリンク(STA2)を介して端末20に送信する。Doze移行通知信号に対する肯定応答を端末20が受信すると、端末20のリンクマネジメント部220が、セカンダリリンクとして設定されているSTA2の動作モードをアクティブモードから動作休止モードに変更する。これにより、端末20のSTA1及びSTA2が、それぞれAwake状態及びDoze状態になる。つまり、当該マルチリンクが、プライマリリンク(STA1)のみを用いてデータを送受信可能な状態になる。
【0095】
尚、以上で説明されたリンク起動処理及びリンク停止処理において、リンク起動処理で使用される所定の閾値は、リンク停止処理で使用される所定の閾値以上に設定される。このように、リンク起動処理で使用される所定の閾値と、リンク停止処理で使用される所定の閾値とは、異なっていてもよい。無線システム1は、これらの閾値にマージンを持たせることによって、データのバッファ量が各閾値の近傍である場合におけるリンク起動処理とリンク停止処理との頻発を抑制することができる。
【0096】
(リンク起動/停止処理で使用される無線フレームについて)
図16及び図17は、実施形態に係る無線システム1のリンク起動/停止処理において使用される無線フレームの具体例を示している。図16は、アクセスポイントAPがリンクの起動/停止を端末20に要求する場合に送信する無線フレームに対応している。図17は、端末20がリンクの起動/停止の要求に応答してアクセスポイントAPに返送する無線フレームに対応している。
【0097】
図16に示すように、プライマリリンクの変更を要求する無線フレームのFrame Bodyは、例えば端末識別子AID(Association Identifier)と、リンク起動/停止リクエストと、次の対象のリンクの識別子とを含んでいる。当該AIDに対応する端末20のリンクマネジメント部220は、“リンク起動/停止リクエスト”に基づいて、“対象のリンクの識別子”を参照し、リンクの起動/停止が可能であるか否かを判定する。
【0098】
リンクの起動/停止が可能である場合に、リンク起動/停止リクエストへのレスポンスに対応する無線フレームのFrame Body、すなわち肯定応答は、図17(a)に示すように“OK”を含んでいる。“OK”は、リンクの起動/停止が可能であることを通知するビットに対応している。
【0099】
一方で、リンクの起動/停止が不可能である場合に、リンク起動/停止リクエストへのレスポンスに対応する無線フレームのFrame Body、すなわち否定応答は、図17(b)に示すように“NO”及び“Reason”を含んでいる。“NO”は、リンクの起動/停止が不可能であることを通知するビットに対応している。“Reason”は、リンクの起動/停止が不可能である理由を通知するビットに対応している。尚、リンク起動/停止リクエストへのレスポンスに対応する無線フレームにおける“Reason”は、省略されてもよい。
【0100】
<3>実施形態の効果
以上で説明した実施形態に係る無線システム1に依れば、マルチリンク時における端末20の消費電力を抑制することができる。以下に、実施形態に係る無線システム1の効果の詳細について説明する。
【0101】
無線LANを使用する基地局及び端末は、例えば2.4GHz、5GHz、6GHzのように、使用する帯域毎に設けられた複数のSTA機能を備える場合がある。このような無線システムでは、例えば複数のSTA機能のうち一つのSTA機能を選択することにより無線接続が確立され、基地局及び端末間のデータ通信が行われる。このとき、無線システムでは、選択されていないSTA機能が、当該STA機能の帯域に対応する基地局が存在したとしても、使用されない状態になる。
【0102】
これに対して、実施形態に係る無線システム1は、基地局10及び端末20の各々が備える複数のSTA機能を活用して、基地局10及び端末20間のマルチリンクを確立する。マルチリンクによるデータ通信は、複数の帯域を併用することができ、無線LAN装置の備える機能を十分に活用することができる。その結果、実施形態に係る無線システム1は、効率的な通信を実現することができ、通信速度を向上させることができる。
【0103】
一方で、マルチリンクの消費電力は、基地局10と端末20とのそれぞれで複数のSTA機能が利用されるため、シングルリンクよりも高くなる。パワーセーブの観点からは、トラヒックが滞留していない場合にシングルリンクが使用され、トラヒックが滞留している場合にマルチリンクが使用されることが好ましい。
【0104】
そこで、実施形態に係る無線システム1は、マルチリンクが確立した後にシングルリンクとマルチリンクとを切り替えてデータ通信を行う。具体的には、マルチリンクが確立された後に、基地局10のリンクマネジメント部120と端末20のリンクマネジメント部220が、Awake移行要求信号/Doze移行通知信号をやりとりすることによって、セカンダリリンクの起動/停止を制御する。ここで、“リンクの起動”は、アクティブモードに設定することに対応し、“リンクの停止”は、動作休止モードに設定することに対応している。
【0105】
そして、実施形態に係る無線システム1では、セカンダリリンクの起動/停止が、送信されるデータのバッファ量に基づいて判断される。例えば、データのバッファ量が多い場合には、マルチリンクを構成する複数のリンクを用いた高速なデータ通信が実行される。一方で、データのバッファ量が少ない場合には、マルチリンクを構成する複数のリンクのうち1つのリンク(プライマリリンク)のみがアクティブモードに設定され、その他のリンク(セカンダリリンク)が動作休止モードに設定される。この場合、当該マルチリンクは、実質的にシングルリンクと同様の状態でデータ通信を実行する。
【0106】
以上のように、実施形態に係る無線システム1は、データのバッファ量が多い場合にパフォーマンスを優先したマルチリンクの設定を使用し、データのバッファ量が少ない場合に、省電力を優先したマルチリンクの設定を使用する。その結果、実施形態に係る無線システム1は、トラヒックの滞留を抑制し、且つ端末20の消費電力を抑制することができる。
【0107】
<4>実施形態の変形例
実施形態で説明されたリンク起動/停止処理の実行条件や利用方法は、あくまで一例である。以下に、実施形態の第1~第5変形例に係る無線システム1について説明する。
【0108】
<4-1>第1変形例
図18は、実施形態の第1変形例におけるリンク起動処理の実行条件の一例を示すフローチャートである。図18に示されたフローチャートは、図13に示されたフローチャートのステップS40がステップS60に置き換えられた構成を有している。
【0109】
ステップS60の処理では、リンクマネジメント部120及び220のいずれかが、端末20のバッテリの残量をモニタリングし、バッテリの残量が所定の閾値を超えているか否かを確認する(ステップS60)。“バッテリの残量>所定の閾値”である場合(ステップS60、YES)、ステップS41の処理に移行して、リンク起動処理が実行される。一方で、“バッテリの残量>所定の閾値”でない場合(ステップS60、NO)、ステップS43の処理が実行される。
【0110】
図19は、実施形態の第1変形例におけるリンク停止処理の実行条件の一例を示すフローチャートである。図19に示されたフローチャートは、図14に示されたフローチャートのステップS50がステップS61に置き換えられた構成を有している。
【0111】
ステップS61の処理では、リンクマネジメント部120及び220のいずれかが、端末20のバッテリの残量をモニタリングし、バッテリの残量が所定の閾値を下回ったか否かを確認する(ステップS61)。“バッテリの残量<所定の閾値”である場合(ステップS61、YES)、ステップS51の処理に移行して、リンク停止処理が実行される。一方で、“バッテリの残量<所定の閾値”でない場合(ステップS61、NO)、ステップS53の処理が実行される。実施形態の第1変形例に係る無線システム1のその他の構成及び動作は、実施形態と同様である。
【0112】
以上のように、リンク起動/停止処理の実行条件としては、端末20のバッテリ残量が使用されてもよい。実施形態の第1変形例では、端末20のバッテリ残量が多い場合に、パフォーマンスを優先したマルチリンクの設定が使用され、端末20のバッテリ残量が少ない場合に、省電力を優先したマルチリンクの設定が使用される。実施形態の第1変形例に係る無線システム1は、このように端末20のバッテリ残量に応じて使用するリンク数を変更することによって、端末20の消費電力を抑制することができる。
【0113】
また、以上で説明されたリンク起動処理及びリンク停止処理において、リンク起動処理で使用される所定の閾値は、リンク停止処理で使用される所定の閾値以上に設定される。このように、リンク起動処理で使用される所定の閾値と、リンク停止処理で使用される所定の閾値とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。無線システム1は、これらの閾値にマージンを持たせることによって、バッテリの残量が各閾値の近傍である場合におけるリンク起動処理とリンク停止処理との頻発を抑制することができる。
【0114】
<4-2>第2変形例
図20は、実施形態の第2変形例におけるリンク起動処理の実行条件の一例を示すフローチャートである。図20に示されたフローチャートは、図13に示されたフローチャートのステップS40がステップS70に置き換えられた構成を有している。
【0115】
ステップS70の処理では、リンクマネジメント部120及び220のそれぞれが、当該マルチリンクに割り当てられた全体のトラヒック量(TIDに依らない)をモニタリングし、トラヒック量が所定の閾値を超えているか否かを確認する(ステップS70)。尚、モニタリングの対象とされるトラヒックは、全体のみに限定されず、特定の少なくとも1つのTIDが選択されても良い。“トラヒック量>所定の閾値”である場合(ステップS70、YES)、ステップS41の処理に移行して、リンク起動処理が実行される。一方で、“トラヒック量>所定の閾値”でない場合(ステップS70、NO)、ステップS43の処理が実行される。
【0116】
図21は、実施形態の第2変形例におけるリンク停止処理の実行条件の一例を示すフローチャートである。図21に示されたフローチャートは、図14に示されたフローチャートのステップS50がステップS71に置き換えられた構成を有している。
【0117】
ステップS71の処理では、リンクマネジメント部120及び220のそれぞれが、当該マルチリンクに割り当てられたトラヒック量をモニタリングし、トラヒック量が所定の閾値を下回ったか否かを確認する(ステップS71)。“トラヒック量<所定の閾値”である場合(ステップS71、YES)、ステップS41の処理に移行して、リンク停止処理が実行される。一方で、“バッテリの残量<所定の閾値”でない場合(ステップS71、NO)、ステップS53の処理が実行される。
【0118】
尚、本変形例で使用される“所定の閾値”は、例えばトラヒック種別毎に設定される。この場合、上述したステップS70及びS71の処理それぞれが、トラヒック種別毎に実行される。例えば、リンクマネジメント部120及び220のそれぞれは、複数のトラヒック種別のうち少なくとも1つのトラヒック種別に対応するステップS70の判定が“YES”になったことに基づいて、リンク起動処理を実行する。同様に、リンクマネジメント部120及び220のそれぞれは、複数のトラヒック種別のうち少なくとも1つのトラヒック種別に対応するステップS71の判定が“YES”になったことに基づいて、リンク停止処理を実行する。実施形態の第2変形例に係る無線システム1のその他の構成及び動作は、実施形態と同様である。
【0119】
以上のように、リンク起動/停止処理の実行条件としては、トラヒック量が使用されてもよい。実施形態の第2変形例では、トラヒック量が多い場合に、パフォーマンスを優先したマルチリンクの設定が使用され、トラヒック量が少ない場合に、省電力を優先したマルチリンクの設定が使用される。実施形態の第2変形例に係る無線システム1は、このようにトラヒック量に応じて使用するリンク数を変更することによって、実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0120】
また、以上で説明されたリンク起動処理及びリンク停止処理において、リンク起動処理で使用される所定の閾値は、リンク停止処理で使用される所定の閾値以上に設定される。このように、リンク起動処理で使用される所定の閾値と、リンク停止処理で使用される所定の閾値とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。無線システム1は、これらの閾値にマージンを持たせることによって、トラヒック量が各閾値の近傍である場合におけるリンク起動処理とリンク停止処理との頻発を抑制することができる。
【0121】
<4-3>第3変形例
図22は、実施形態の第3変形例におけるリンク起動処理の実行条件の一例を示すフローチャートである。図22に示されたフローチャートは、図13に示されたフローチャートのステップS40及びS42がそれぞれステップS80及び82に置き換えられた構成を有している。
【0122】
ステップS80の処理では、リンクマネジメント部120及び220のそれぞれが、当該マルチリンクで蓄積されたトラヒックに重要トラヒックが有るかどうかを確認する。重要トラヒックが有る場合(ステップS80、YES)、ステップS41の処理に移行してリンク起動処理が実行され、続くステップS81の処理によって重要トラヒックがウェイクアップしたセカンダリリンクを用いて送信される。一方で、重要トラヒックが無い場合(ステップS80、NO)、ステップS43の処理が実行される。
【0123】
図23は、実施形態の第2変形例におけるリンク停止処理の実行条件の一例を示すフローチャートである。図23に示されたフローチャートは、図14に示されたフローチャートのステップS50及びS53がそれぞれステップS82及びS83に置き換えられた構成を有している。
【0124】
ステップS82の処理では、リンクマネジメント部120及び220のそれぞれが、当該マルチリンクで蓄積されたトラヒックに重要トラヒックが無いかどうかを確認する。重要トラヒックが無い場合(ステップS82、YES)、ステップS51の処理に移行して、リンク停止処理が実行される。一方で、重要トラヒックが有る場合(ステップS82、NO)、ステップS83の処理によって重要トラヒックがセカンダリリンクを用いて送信される。
【0125】
尚、本変形例で使用される“重要トラヒック”は、例えばLow Latency(LL)トラヒックに設定される。重要トラヒックは、上位から高信頼性が要求されるトラヒックであればよく、LLトラヒックに限定されない。その他の重要トラヒックとしては、例えば決済情報や認証情報を含むトラヒックが挙げられる。実施形態の第3変形例に係る無線システム1のその他の構成及び動作は、実施形態と同様である。
【0126】
以上のように、リンク起動/停止処理の実行条件としては、重要トラヒックの有無が使用されてもよい。実施形態の第3変形例では、重要トラヒックが有る場合に、セカンダリリンクが重要トラヒックの送信のみに使用され、重要トラヒック量が無い場合に、省電力を優先したマルチリンクの設定が使用される。実施形態の第3変形例に係る無線システム1は、このようにセカンダリリンクを重要トラヒックに占有させて使用することによって、重要トラヒックの通信品質を向上させることができる。
【0127】
<4-4>第4変形例
実施形態の第4変形例に係る無線システム1は、基地局10が複数の端末20のそれぞれとマルチリンクを確立した場合の制御方法に関する。以下では、基地局10が、端末20A及び20Bのそれぞれとマルチリンクを確立している場合を例に説明する。本例では、端末20AのSTA1と端末20BのSTA1とに同じチャネルが割り当てられ、端末20AのSTA2と端末20BのSTA2とに同じチャネルが割り当てられている。
【0128】
図24は、実施形態の第4変形例に係る無線システム1におけるリンク起動/停止処理の具体例を示すフローチャートである。尚、本例の初期状態では、端末20A及び20Bのそれぞれにおいて、STA1がプライマリリンクに設定され、STA2がセカンダリリンクに設定されている。また、端末20AのSTA1及びSTA2がそれぞれAwake状態及びDoze状態に設定され、端末20BのSTA1及びSTA2のそれぞれがAwake状態に設定されている。
【0129】
図24に示すように、アクセスポイントAPは、LLトラヒックを検出すると、端末20AのLLトラヒックが有ることを示す情報を含むビーコン信号を送信し、当該ビーコン信号が端末20A及び20Bのそれぞれのプライマリリンク(STA1)によって受信される。すると、端末20AのSTA1が、Awake移行要求信号をアクセスポイントAPに送信し、アクセスポイントAPが肯定応答を端末20AのSTA1に返送する。これにより、端末20AのSTA2が動作休止モードからアクティブモードに遷移し、端末20AのSTA2がLLトラヒックを送信可能な状態になる。
【0130】
その後、アクセスポイントAPは、端末20AのSTA2にLLトラヒックを検出すると、端末20AのLLトラヒックが有ることを示す情報を含むビーコン信号を送信し、当該ビーコン信号が端末20A及び20Bのそれぞれのプライマリリンク(STA1)によって受信される。すると、端末20BのSTA1が、Doze移行通知信号をアクセスポイントAPに送信し、アクセスポイントAPが肯定応答を端末20BのSTA1に返送する。これにより、端末20BのSTA2がアクティブモードから動作休止モードに遷移する。
【0131】
その結果、端末20AのSTA2と使用するチャネルが競合している端末20BのSTA2の利用が停止され、Doze状態になる。これにより、端末20AのSTA2が、割り当てられたチャネルを排他的に利用可能な状態になる。実施形態の第4変形例に係る無線システム1は、このようにLLトラヒックを割り当てたセカンダリリンクのチャネルを排他的に使用することによって、LLトラヒックの通信品質を向上させることができる。
【0132】
図25は、実施形態の第4変形例に係る無線システム1のリンク起動/停止処理において使用される無線フレームの具体例を示し、図24に示されたビーコン信号に対応している。図25に示すように、LLトラヒックの有無を示す情報を含む無線フレームのFrame Bodyは、例えば端末識別子AID(Association Identifier)と、Low Latency使用有無を示す情報と、対象のリンクの識別子とを含んでいる。
【0133】
例えば、各端末20のリンクマネジメント部220は、ビーコン信号に含まれたAIDが自身のAIDと異なる場合に、“Low Latency使用有無(LLトラヒックの有無)”を確認する。そして、リンクマネジメント部220は、“Low Latency使用有り”を検出した場合に、“対象のリンクの識別子”に対応するチャネルと、自身のマルチリンクで使用しているチャネルが一致しているか否かを確認する。リンクマネジメント部220は、チャネルの一致を検出すると、当該チャネルに対応するセカンダリリンクを対象としたリンク停止処理を実行する。これにより、無線システム1は、図24を用いて説明した動作を実行することができる。
【0134】
尚、以上の説明では、LLトラヒックの有無に基づいて、当該LLトラヒックの送信に使用されるセカンダリリンクのチャネルが排他利用になるように設定される場合について例示したが、これに限定されない。例えば、LLトラヒックの代わりに、その他の重要トラヒックが使用されてもよい。図25に示された一組の情報は、1つのビーコン信号に複数種類含まれていてもよい。
【0135】
<4-5>第5変形例
実施形態の第5変形例に係る無線システム1は、同一の周波数帯に含まれた複数のチャネルCHを用いて、実施形態と同様のマルチリンクを確立する。実施形態の第5変形例におけるマルチリンク処理は、実施形態のマルチリンク処理に対して、マルチリンクに用いるチャネルを同じ周波数帯に含まれた複数のチャネルCHに変更したものと同様である。
【0136】
図26は、実施形態の第5変形例に係る無線システム1における無線通信に使用される周波数帯の一例を示している。図26に示すように、無線通信では、例えば2.4GHz帯、5GHz帯、6GHz帯が使用される。そして、各周波数帯は、それぞれ複数のチャネルを含んでいる。本例では、2.4GHz帯、5GHz帯、6GHz帯のそれぞれが、少なくとも3つのチャネルCH1、CH2及びCH3を含むものと仮定する。各チャネルCHを用いた通信は、関連付けられたSTA機能によって実現される。
【0137】
図27は、実施形態の第5変形例に係る無線システム1におけるリンク管理情報121の一例を示している。図27に示すように、実施形態の第5変形例におけるリンク管理情報121は、実施形態におけるリンク管理情報121に対して、周波数帯毎のチャネルIDに関する情報が追加された構成を有している。また、本例では、6GHzの周波数帯に対応する“STA1”のチャネルCH2と、6GHzの周波数帯に対応する“STA2”のチャネルCH3を用いて、実施形態と同様のマルチリンクが確立されている。
【0138】
以上のように、基地局10及び端末20の各STA機能は、同じ周波数帯を使用してもよい。そして、基地局10と端末20との間のマルチリンクは、同じ周波数帯を使用する複数のSTA機能によって確立されてもよい。具体的には、複数のSTA機能が、例えば5GHz帯の異なるチャネルCHを使用してマルチリンクを構成してもよい。このような場合においても、実施形態の第5変形例に係る無線システム1は、実施形態と同様に、効率的な通信を実現することができ、消費電力を抑制することができる。
【0139】
<5>その他
実施形態の第3変形例では、セカンダリリンクに重要トラヒックを割り当てる場合について例示したが、これに限定されない。図28は、実施形態の第3変形例に係る無線システムのマルチリンクにおけるデータの割り当ての一例を示している。重要トラヒックが検出された場合には、図28に示されるように、様々なデータがプライマリリンクとセカンダリリンクとに割り当てられ得る。第1の例は、プライマリリンクに、これまでのトラヒックが割り当てられ、セカンダリリンクに増えたトラヒックが割り当てられる場合を示している。第2の例は、プライマリリンクに、データサイズが大きいトラヒック(例えばTCPトラヒック)が割り当てられ、セカンダリリンクにデータサイズが小さいトラヒック(例えばACK)が割り当てられる場合を示している。このように、マルチリンクでは、セカンダリリンクの起動に基づいて、プライマリリンクとセカンダリリンクとのデータの割り当てが適宜設定され得る。
【0140】
実施形態と各変形例とは、互いに組み合わせることが可能である。図29は、実施形態と実施形態の第1変形例との組み合わせに係る無線システム1におけるリンク停止処理の実行条件の一例を示している。図29に示すように、まず実施形態で説明されたステップS50の判定が実行され、ステップS50の判定が“NO”である場合に、実施形態の第1変形例で説明されたステップS61の判定が実行されてもよい。この場合、ステップS61の判定が“YES”になると、例えばステップS51の処理に移行する。このように、リンク起動/停止処理は、上述した実施形態と各変形例のうち2つ以上が組み合わされてもよく、組み合わされた実施形態及び変形例のそれぞれの効果を得ることが出来る。
【0141】
実施形態において、各STA機能は、端末20の移動等によってリンクの維持ができない場合に、対応するリンクマネジメント部に通知してもよい。また、端末20のリンクマネジメント部220は、STA機能からの通知に基づいて、基地局10のリンクマネジメント部120との間でマルチリンクの状態を変更してもよい。具体的には、例えば端末20のリンクマネジメント部220と基地局10のリンクマネジメント部120は、マルチリンクで使用するSTA機能を適宜変更してもよい。マルチリンクの状態が変更された場合、リンクマネジメント部120及び220は、リンク管理情報121及び221をそれぞれ更新する。また、リンクマネジメント部120及び220は、リンク数の増減に応じて、トラヒックとSTA機能との関連付けを更新してもよい。
【0142】
実施形態では、マルチリンク処理において、端末20が基地局10に対してマルチリンクの確立を要求する場合について例示したが、これに限定されない。例えば、基地局10及び端末20間で複数のリンクが確立されたことに基づいて、基地局10が端末20に対してマルチリンクの確立を要求してもよい。実施形態及び各変形例において、リンク起動処理で使用される“所定の閾値”とリンク停止処理で使用される“所定の閾値”とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0143】
実施形態では、マルチリンク処理後にプライマリリンクとセカンダリリンクとのそれぞれがアクティブモードに設定される場合について例示したが、これに限定されない。マルチリンクの確立時には、少なくともプライマリリンクがアクティブモードに設定されていればよく、セカンダリリンクはアクティブモードと動作休止モードのいずれに設定されていてもよい。セカンダリリンクは、所定の条件に基づいて動作休止モードとアクティブモードとが切り替えられてもよい。
【0144】
実施形態に係る無線システム1の構成はあくまで一例であり、その他の構成であってもよい。例えば、基地局10及び端末20のそれぞれが3つのSTA機能(無線信号処理部)を備える場合について例示したが、これに限定されない。基地局10は、少なくとも2つの無線信号処理部を備えていればよい。同様に、端末20は、少なくとも2つの無線信号処理部を備えていればよい。また、各STA機能が処理することが可能なチャネルの数は、使用される周波数帯に応じて適宜設定され得る。無線通信モジュール14及び24のそれぞれは、複数の通信モジュールによって複数の周波数帯の無線通信に対応してもよいし、1つの通信モジュールによって複数の周波数帯の無線通信に対応してもよい。
【0145】
また、実施形態に係る無線システム1における基地局10及び端末20の機能構成は、あくまで一例である。基地局10及び端末20の機能構成は、各実施形態で説明された動作を実行することが可能であれば、その他の名称及びグループ分けであってもよい。例えば、基地局10において、データ処理部110とリンクマネジメント部120とは、まとめてデータ処理部と呼ばれてもよい。同様に、端末20において、データ処理部210とリンクマネジメント部220とは、まとめてデータ処理部と呼ばれてもよい。
【0146】
また、実施形態に係る無線システム1において、基地局10及び端末20のそれぞれに含まれたCPUは、その他の回路であってもよい。例えば、CPUの替わりに、MPU(Micro Processing Unit)等が使用されてもよい。また、各実施形態において説明された処理のそれぞれは、専用のハードウェアによって実現されてもよい。各実施形態に係る無線システム1は、ソフトウェアにより実行される処理と、ハードウェアによって実行される処理とが混在していてもよいし、どちらか一方のみであってもよい。
【0147】
各実施形態において、動作の説明に用いたフローチャートは、あくまで一例である。実施形態で説明された各動作は、処理の順番が可能な範囲で入れ替えられてもよいし、その他の処理が追加されてもよい。また、上記実施形態で説明された無線フレームのフォーマットは、あくまで一例である。無線システム1は、各実施形態で説明された動作を実行することが可能であれば、その他の無線フレームのフォーマットを使用してもよい。
【0148】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は、適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。さらに、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0149】
1…無線システム
10…基地局
20…端末
30…サーバ
11,21…CPU
12,22…ROM
13,23…RAM
14,24…無線通信モジュール
15…有線通信モジュール
25…ディスプレイ
26…ストレージ
110,210…データ処理部
120,220…リンクマネジメント部
121,221…リンク管理情報
122,222…アソシエーション処理部
123,223…認証処理部
124…データカテゴライズ部
125…送信キュー
126…CSMA/CA実行部
127…データ衝突管理部
130,140,150,230,240,250…無線信号処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
【手続補正書】
【提出日】2024-04-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のチャネルを用いて無線信号を送受信可能に構成された第1の無線信号処理部と、
前記第1のチャネルと異なる第2のチャネルを用いて無線信号を送受信可能に構成された第2の無線信号処理部と、
前記第1の無線信号処理部と前記第2の無線信号処理部とを用いて端末とのマルチリンクを確立し、前記第1の無線信号処理部を前記マルチリンクでメインとして使用するプライマリリンクに設定し、前記第2の無線信号処理部を前記マルチリンクで補助として使用するセカンダリリンクに設定するリンクマネジメント部と、を備え、
前記セカンダリリンクがアクティブモードである場合に、前記マルチリンクで第1の条件が満たされると、前記リンクマネジメント部が、前記セカンダリリンクを前記アクティブモードよりも消費電力が低い動作休止モードに設定し、
前記セカンダリリンクが前記動作休止モードである場合に、前記マルチリンクで第2の条件が満たされると、前記リンクマネジメント部が、前記セカンダリリンクを前記アクティブモードに設定する、基地局。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のチャネルを用いて無線信号を送受信可能に構成された第1の無線信号処理部と、
前記第1のチャネルと異なる第2のチャネルを用いて無線信号を送受信可能に構成された第2の無線信号処理部と、を備え、
前記第1の無線信号処理部と前記第2の無線信号処理部とを用いて基地局とのマルチリンクが確立され、
前記第2の無線信号処理部が前記基地局からの信号を受信しない動作休止モードである場合に、前記第1の無線信号処理部が前記第2の無線信号処理部による受信処理が行われるべきことを示す情報を受信し、
前記第2の無線信号処理部は、前記情報が前記第1の無線信号処理部において受信されたことに基づいて前記基地局の信号を受信するアクティブモードに移行する、端末
【請求項2】
第1のチャネルを用いて無線信号を送受信可能に構成された第1の無線信号処理部と、
前記第1のチャネルと異なる第2のチャネルを用いて無線信号を送受信可能に構成された第2の無線信号処理部と、を備え、
前記第1の無線信号処理部と前記第2の無線信号処理部とを用いて基地局とのマルチリンクが確立され、前記第1の無線信号処理部が前記マルチリンクでメインとして使用するプライマリリンクに設定され、前記第2の無線信号処理部が前記マルチリンクで補助として使用するセカンダリリンクに設定され、
前記セカンダリリンクが前記基地局からの信号を受信しない動作休止モードである場合に、前記プライマリリンクにおいて前記セカンダリリンクにおいて受信処理が行われるべきことを示す情報が受信され、
前記第2の無線信号処理部は、前記情報が前記プライマリリンクにおいて受信されたことに基づいて前記基地局の信号を受信するアクティブモードに移行する、端末