(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084948
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】検体分析装置、検体分析方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20240619BHJP
【FI】
G01N35/10 A
G01N35/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199167
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹本 和正
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058AA09
2G058EA02
2G058EA04
2G058EA12
2G058EA14
2G058EC03
2G058FA04
2G058FB06
2G058FB07
2G058FB12
2G058GB06
(57)【要約】
【課題】サンプリングノズルと定注器との間の流路内で気泡が蓄積されてエアギャップが形成されるおそれを低減し、検体の分析精度が低下するおそれを低減する。
【解決手段】検体分析装置は、サンプリングノズルと、定注器と、サンプリングノズルと定注器との間の流路の連通状態を切り替える切替弁と、切替弁開閉指示部と、定注器駆動指示部と、を備える。切替弁開閉指示部が切替弁を制御して、上記流路におけるサンプリングノズルと定注器との連通を遮断した状態で、定注器駆動指示部が定注器に対して引き込み指示を行って、定注器が内部に吐出用液体を引き込んだ後、切替弁開閉指示部が切替弁を制御して、上記流路においてサンプリングノズルと定注器とを連通させた状態で、定注器駆動指示部が定注器に対して押し込み指示を行って、定注器が吐出用液体を押し出して上記流路に流し、吐出用液体を上記流路の外部に排出させる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプリングノズルと、
前記サンプリングノズルを介して液体の吸引および吐出を行う定注器と、
前記サンプリングノズルと前記定注器との間の流路の連通状態を切り替える切替弁と、
前記切替弁に対して開閉を切り替える指示を行う切替弁開閉指示部と、
前記定注器に対して駆動指示を行う定注器駆動指示部と、を備え、
前記切替弁開閉指示部が前記切替弁を制御して、前記流路における前記サンプリングノズルと前記定注器との連通を遮断した状態で、前記定注器駆動指示部が前記定注器に対して引き込み指示を行って、前記定注器が内部に吐出用液体を引き込んだ後、
前記切替弁開閉指示部が前記切替弁を制御して、前記流路において前記サンプリングノズルと前記定注器とを連通させた状態で、前記定注器駆動指示部が前記定注器に対して押し込み指示を行って、前記定注器が前記吐出用液体を押し出して前記流路に流し、前記吐出用液体を前記流路の外部に排出させる、検体分析装置。
【請求項2】
前記定注器は、前記吐出用液体を、前記サンプリングノズルから排出させる、請求項1に記載の検体分析装置。
【請求項3】
前記流路中に配置されるセンサをさらに備え、
前記定注器駆動指示部は、前記センサにより、所定量の試薬を吸引したことが検知されるまで、前記定注器により前記試薬を吸引させ、その後、前記定注器により、前記所定量の前記試薬をチャンバーに吐出させる、請求項1または2に記載の検体分析装置。
【請求項4】
前記吐出用液体は、希釈液である、請求項1から3のいずれかに記載の検体分析装置。
【請求項5】
前記定注器は、免疫測定用定注器である、請求項1から4のいずれかに記載の検体分析装置。
【請求項6】
サンプリングノズルを介して液体の吸引および吐出を行う定注器と、前記サンプリングノズルと前記定注器との間の流路の連通状態を切り替える切替弁と、を備えた検体分析装置における検体分析方法であって、
前記切替弁を制御して、前記流路における前記サンプリングノズルと前記定注器との連通を遮断した状態で、前記定注器に対して引き込み指示を行うことにより、前記定注器が内部に吐出用液体を引き込む液体引込工程と、
前記液体引込工程の後、前記切替弁を制御して、前記流路において前記サンプリングノズルと前記定注器とを連通させた状態で、前記定注器に対して押し込み指示を行うことにより、前記定注器が前記吐出用液体を押し出して前記流路に流し、前記吐出用液体を前記流路の外部に排出させる液体排出工程と、を含む、検体分析方法。
【請求項7】
前記液体排出工程では、前記定注器は、前記吐出用液体を、前記サンプリングノズルから排出させる、請求項6に記載の検体分析方法。
【請求項8】
前記定注器は、免疫測定用定注器である、請求項6または7に記載の検体分析方法。
【請求項9】
前記流路の途中に位置するサンプル定注器により、前記サンプリングノズルで検体容器から吸引されて免疫測定用チャンバーに吐出される血液と、前記免疫測定用定注器により、前記サンプリングノズルで免疫測定用試薬容器から吸引されて前記免疫測定用チャンバーに吐出される免疫測定用試薬とを、前記免疫測定用チャンバーの内部で混合させて免疫測定を行う免疫測定工程をさらに含み、
前記液体引込工程および前記液体排出工程は、前記免疫測定工程の開始から終了までの間に行われる、請求項8に記載の検体分析方法。
【請求項10】
前記サンプル定注器により、前記サンプリングノズルで前記検体容器から吸引されて血球測定用チャンバーに吐出される血液と、試薬定注器により前記血球測定用チャンバーに吐出される血球測定用試薬とを、前記血球測定用チャンバーの内部で混合させて測定を行う血球測定工程をさらに含む、請求項9に記載の検体分析方法。
【請求項11】
前記免疫測定工程の前に、
前記流路中に配置されるセンサにより、所定量の前記免疫測定用試薬を吸引したことが検知されるまで、前記免疫測定用定注器により、前記サンプリングノズルで前記免疫測定用試薬を前記免疫測定用試薬容器から吸引させる試薬吸引工程と、
前記免疫測定用定注器により、前記所定量の前記免疫測定用試薬を前記免疫測定用チャンバーに吐出させる試薬吐出工程と、をさらに含む、請求項9または10に記載の検体分析方法。
【請求項12】
前記吐出用液体として、希釈液を用いる、請求項6から11のいずれかに記載の検体分析方法。
【請求項13】
請求項6から12のいずれかに記載の検体分析方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体分析装置、検体分析方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液および試薬を反応容器内で反応させて、血液中の成分を分析する装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、血液と、CRP(C-reactive protein)試薬などの免疫測定用試薬とを反応させて免疫測定を行う装置では、CRP試薬は、免疫測定用定注器(以下、「CRP定注器」とも言う)の吸引動作により、サンプリングノズル(以下、単に「ノズル」とも言う)を介して試薬容器から吸引される。その後、CRP試薬は、CRP定注器の吐出動作により、ノズルを介してCRPチャンバーに吐出される。ノズルとCRP定注器との間の流路は、血液を吸引および吐出するためのサンプル定注器と、複数のバルブ(可動弁)と、を介してつながっている。
【0005】
上記流路は、通常、希釈液で満たされており、流路内に気泡が元々存在している。このため、CRP定注器により、CRP試薬の吸引および吐出動作を繰り返すと、流路内に蓄積した気泡が結びつき、それが流路を塞ぐエアギャップとなる場合がある。例えば、ノズルとサンプル定注器との間の流路内にエアギャップが形成されると、サンプル定注器によってノズルで血液を吸引し、その後吐出する際に、吸引した血液を押し出す力がエアギャップで吸収される。このため、ノズルから吐出される血液の吐出タイミングが遅れ、規定量の血液を吐出することができなくなる。その結果、例えば測定値が低値になるなど、血液の分析精度が低下するという問題が生ずる。
【0006】
このような問題は、装置の通常使用の範囲では起こらないが、例えば気泡が溜まりやすい上記バルブに異常(例えば遮断時の漏れ)が生じた場合には、起こり得る問題である。
【0007】
なお、特許文献1では、試薬容器から吸引した試薬を試薬容器に戻す循環動作を行うことにより、気泡を除去する点を開示している。しかし、特許文献1の構成では、バルブからノズルまでの流路中にエアギャップが形成される可能性があり、改善の余地がある。
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、サンプリングノズルと定注器との間の流路内で気泡が蓄積されてエアギャップが形成されるおそれを低減することができ、これによって、検体(例えば血液)の分析精度が低下するおそれを低減することができる検体分析装置、検体分析方法、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面に係る検体分析装置は、サンプリングノズルと、前記サンプリングノズルを介して液体の吸引および吐出を行う定注器と、前記サンプリングノズルと前記定注器との間の流路の連通状態を切り替える切替弁と、前記切替弁に対して開閉を切り替える指示を行う切替弁開閉指示部と、前記定注器に対して駆動指示を行う定注器駆動指示部と、を備え、前記切替弁開閉指示部が前記切替弁を制御して、前記流路における前記サンプリングノズルと前記定注器との連通を遮断した状態で、前記定注器駆動指示部が前記定注器に対して引き込み指示を行って、前記定注器が内部に吐出用液体を引き込んだ後、前記切替弁開閉指示部が前記切替弁を制御して、前記流路において前記サンプリングノズルと前記定注器とを連通させた状態で、前記定注器駆動指示部が前記定注器に対して押し込み指示を行って、前記定注器が前記吐出用液体を押し出して前記流路に流し、前記吐出用液体を前記流路の外部に排出させる。
【0010】
本発明の他の側面に係る検体分析方法は、サンプリングノズルを介して液体の吸引および吐出を行う定注器と、前記サンプリングノズルと前記定注器との間の流路の連通状態を切り替える切替弁と、を備えた検体分析装置における検体分析方法であって、(切替弁開閉指示部が)前記切替弁を制御して、前記流路における前記サンプリングノズルと前記定注器との連通を遮断した状態で、(定注器駆動指示部が)前記定注器に対して引き込み指示を行うことにより、前記定注器が内部に吐出用液体を引き込む液体引込工程と、前記液体引込工程の後、(切替弁開閉指示部が)前記切替弁を制御して、前記流路において前記サンプリングノズルと前記定注器とを連通させた状態で、(前記定注器駆動指示部が)前記定注器に対して押し込み指示を行うことにより、前記定注器が前記吐出用液体を押し出して前記流路に流し、前記吐出用液体を前記流路の外部に排出させる液体排出工程と、を含む。
【0011】
本発明のさらに他の側面に係るプログラムは、上記の検体分析方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、サンプリングノズルと定注器との間の流路内で気泡が蓄積されてエアギャップが形成されるおそれを低減することができ、これによって、検体の分析精度が低下するおそれを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の一形態に係る血液分析装置の外観構成を示す斜視図である。
【
図2】血液分析装置の内部構成を模式的に示す説明図である。
【
図3】BASOチャンバーの側面からBASO測定用試薬を吐出しながら、ノズルを介してBASOチャンバー内に血液を吐出する様子を模式的に示す説明図である。
【
図4】上記血液分析装置における、ノズルとCRP定注器との間の流路を示す説明図である。
【
図5】上記血液分析装置における動作の流れを示すフローチャートである。
【
図6】上記血液分析装置における動作の流れを示すフローチャートである。
【
図7】上記血液分析装置の要部を模式的に示す説明図である。
【
図8】上記血液分析装置の要部を模式的に示す説明図である。
【
図9】上記血液分析装置の要部を模式的に示す説明図である。
【
図10】上記血液分析装置の要部を模式的に示す説明図である。
【
図11】上記血液分析装置の要部を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態では、検体分析装置として、全血血球免疫測定装置とも呼ばれる血液分析装置について説明する。
【0015】
〔1.血液分析装置の概要〕
図1は、血液分析装置1の外観構成を示す斜視図である。血液分析装置1は、装置本体2の正面上部に表示部3を備える。表示部3は、例えばタッチパネル付きの液晶表示装置で構成されており、血液の分析結果等を表示するとともに、操作者(例えば医療従事者)による各種の情報の入力を受け付ける。
【0016】
装置本体2の下部には、検体容器装填部4が設けられる。検体容器装填部4のカバー4aを開けて、血液検体(以下、単に「血液」とも言う)を収容した検体容器10をセットし、カバー4aを閉めることにより、検体容器10を装置本体2に装填することができる。
【0017】
装置本体2の側部には、試薬容器装填部5が設けられる。試薬容器装填部5の開閉扉5aを開けることにより、血液の分析で用いる試薬類(例えば免疫測定用試薬、血球測定用試薬等)を収容した容器を装填することができる。
【0018】
〔2.血液分析装置の内部構成〕
図2は、血液分析装置1の内部構成を模式的に示す説明図である。血液分析装置1は、免疫測定部20を備える。免疫測定部20は、CRPチャンバー21(免疫測定用チャンバー)を有する。CRPチャンバー21は、ラテックス凝集法に従ってCRP値を光学的に測定し得るように構成される。
【0019】
CRPチャンバー21には、免疫測定用のCRP試薬がサンプリングノズルN(以下、単に「ノズルN」とも言う)を介して吐出される。CRP試薬は、R1試薬、R2試薬、R3試薬を含む。R1試薬は溶血試薬であり、R1試薬容器22に収容されている。R2試薬は緩衝液であり、R2試薬容器23に収容されている。R3試薬はラテックス試薬であり、R3試薬容器24に収容されている。CRP試薬は、各試薬容器からノズルNによって吸引され、CRPチャンバー21に吐出される。
【0020】
また、CRPチャンバー21には、検体容器10からノズルNを介して吸引される血液が吐出される。CRPチャンバー21において、CRP試薬と血液とを混合、撹拌して反応させることにより、免疫測定(CRP測定)が行われる。
【0021】
上記したCRP試薬の吸引吐出、およびCRP試薬と血液との撹拌は、CRPチャンバー21と電磁弁装置26を介して流路がつながるCRP定注器25(免疫測定用定注器)のピストン運動によって行われる。なお、定注器のピストン運動とは、シリンジに対するピストンの引き込み動作および押し出し動作を言う。
【0022】
ノズルNは、プローブユニット30の垂直移動機構31に保持される。垂直移動機構31は、水平移動機構32に保持される。垂直移動機構31および水平移動機構32を駆動することにより、ノズルNを垂直方向および水平方向に移動させることができる。これにより、検体容器10、CRPチャンバー21、CRP試薬容器(R1試薬容器22、R2試薬容器23、R3試薬容器24)、および後述する血球計数測定部40の各チャンバーの上方位置に、ノズルNを移動させることができるとともに、検体容器10等に対して、ノズルNを垂直方向に抜き差しすることができる。
【0023】
上記のプローブユニット30は、ノズル洗浄器33を有する。ノズルNは、ノズル洗浄器33を上下方向に貫通して設けられる。ノズル洗浄器33を介して、ノズルNの外周面および先端部(下端部)に洗浄液または希釈液を流すことにより、上記外周面等に付着した余分な血液または試薬を洗い流して除去することができる。
【0024】
血液分析装置1は、血球計数測定部40を備える。血球計数測定部40は、血球測定用チャンバーとして、BASOチャンバー41、LMNEチャンバー42、RBCチャンバー43、およびWBCチャンバー44を有する。
【0025】
BASOチャンバー41は、白血球に含まれる好塩基球(Basophil)の計数用に設けられる。LMNEチャンバー42は、白血球に含まれるリンパ球(Lymphocyte)、単球(Monocyte)、好中球(Neutrophil)、好酸球(Eosinophil)の計数用に設けられる。RBCチャンバー43は、赤血球(RBC;Red blood cell)および血小板(PLT;platelet)の計数用に設けられる。WBCチャンバー44は、白血球(WBC;White blood cell)の計数用およびHGB(ヘモグロビン)の分析用(濃度測定用)に設けられる。
【0026】
検体容器10からの血液の吸引、および血球計数測定部40の各チャンバーへの血液の吐出は、サンプル定注器60のピストン運動により、ノズルNを介して行われる。また、血球計数用試薬は、試薬定注器70(
図4参照)により、血球計数測定部40の各チャンバーの側面から吐出される。なお、試薬定注器70は、各試薬(BASO測定用試薬(例えば好塩基球溶血剤)、LMNE測定用試薬(例えば好酸球測定試薬)、洗浄液、溶血剤、希釈液)のそれぞれに対応して設けられる。
【0027】
図3は、例えば管路41aによりBASOチャンバー41の側面からBASO測定用試薬Rbを吐出しながら、ノズルNを介してBASOチャンバー41内に血液BLを吐出する様子を模式的に示している。同図に示すように、BASO測定用試薬RbをBASOチャンバー41の内周面に沿って流しながら、BASO測定用試薬Rbに血液BLを混合させることにより、均一な混合を実現して、血液の粘性による誤測定を防止することができる。
【0028】
図2に示すように、血球計数測定部40は、洗浄チャンバー45をさらに有する。洗浄チャンバー45は、ノズルNの洗浄の際に流れる洗浄液、免疫測定部20および血球計数測定部40の各チャンバー内に残存する液体、後述するノズルNとCRP定注器25との間の流路の洗浄に用いた希釈液等を受けるために設けられる。洗浄チャンバー45で受けた洗浄液等は、電磁弁装置50および排出ポンプ51を介して廃液容器52に送られる。
【0029】
血液分析装置1の各部の動作は、制御部100によって制御される。制御部100は、電磁弁開閉指示部101と、定注器駆動指示部102と、を含む。電磁弁開閉指示部101は、各電磁弁(各電磁弁装置26および50を構成する電磁弁を含む)に対して開閉を切り替える指示を行う。定注器駆動指示部102は、各定注器(CRP定注器25、サンプル定注器60、試薬定注器70)に対して駆動指示を行う。その他、プローブユニット30の動作も制御部100によって制御される。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)と呼ばれる中央演算処理装置(コンピュータ)で構成され、動作プログラムに従って動作する。
【0030】
〔3.ノズルとCRP定注器との間の流路について〕
図4は、血液分析装置1における、ノズルNとCRP定注器25との間の流路FPを示す説明図である。同図に示すように、CRP定注器25は、ノズルNと流路FPを介して流通可能につながる。流路FPは、第1流路FP1と、第2流路FP2と、を含む。
【0031】
第1流路FP1は、ノズルNと、電磁弁装置50に含まれる第1バルブV1との間の流路である。第1流路FP1の途中には、サンプル定注器60が配置される。また、第1流路FP1において、ノズルNとサンプル定注器60との間には、試薬検知用のセンサ61が配置される。ノズルN、サンプル定注器60、センサ61、およびノズル洗浄器33は、プローブユニット30(
図2参照)のキャリッジ(図示せず)に取り付けられており、垂直移動機構31および水平移動機構32の駆動によって一体的に移動可能である。
【0032】
第1流路FP1と第2流路FP2とは、第1バルブV1を介して接続される。第1バルブV1により、第1流路FP1と第2流路FP2とが、連通する状態と、連通が遮断される状態とで切り換えられる。なお、連通とは、2者の間がつながり、一方から他方に向かって液体が流れることが可能(流通可能)となる状態を指す。一方、連通の遮断とは、2者の間のつながりが断たれて、一方から他方に向かって液体が流れることが不可能(流通不能)となる状態を指す。
【0033】
第2流路FP2は、第1バルブV1とCRP定注器25との間の流路である。第2流路FP2において、第1バルブV1とCRP定注器25との間には、第2バルブV2が配置される。第2バルブV2により、第1バルブV1とCRP定注器25とが、連通する状態と、連通が遮断される状態とで切り換えられる。
【0034】
CRPチャンバー21は、分岐部27および第3バルブV3を介して第2バルブV2とつながる。第3バルブV3により、分岐部27と第2バルブV2とが、連通する状態と、連通が遮断される状態とで切り換えられる。その他、血液分析装置1における流路の所定の位置に、連通状態を切り替えるバルブが配置される。
【0035】
血液分析装置1における各バルブ(第1バルブV1、第2バルブV2、第3バルブV3を含む)は、制御部100(特に電磁弁開閉指示部101(
図2参照))からの制御信号(開閉指示信号)によってオンオフ制御される電磁弁で構成されている。電磁弁は、液体の出入口が三つある(配管との接続口が三方向にある)三方弁、または、液体の出入口が二つある(配管との接続口が二方向にある)二方弁で構成される。
【0036】
血液分析装置1の内部の流路(例えば
図4の流路FP)は、通常、希釈液等の液体で満たされている。これにより、例えばCRP定注器25のピストン運動により、流路FPを介してCRP試薬の吸引および吐出を行うことができる。
【0037】
流路FPに配置される各バルブの構造上、各バルブには気泡が滞溜しやすく、このため、流路FP内には気泡が存在する。CRP定注器25により、CRP試薬の吸引および吐出動作を繰り返すと、流路FP内に蓄積した気泡が結びつき、それがサンプル定注器60によって血液を吐出する際の妨げとなるエアギャップとなり得る。そこで、本実施形態では、CRP定注器25を利用して、所定のタイミングで流路FP内に吐出用液体(例えば希釈液)を充填してノズルNから排出させることにより、流路FP内でのエアギャップの形成を未然に防止するようにしている。以下、希釈液の排出動作も含めて、本実施形態の血液分析装置1の動作について説明する。
【0038】
〔4.動作について〕
図5および
図6は、血液分析装置1における動作の流れを示すフローチャートである。また、
図7~
図11は、血液分析装置1の要部を模式的に示す説明図である。血液分析装置1は、動作モードとして、DIFF+CRPモード(白血球5分類を含む血球計数および免疫測定の両方を行うモード)と、DIFFモード(白血球5分類を含む血球計数のみ行うモード)と、CBC+CRPモード(白血球5分類以外の血球計数および免疫測定の両方を行うモード)と、CBCモード(白血球5分類以外の血球計数のみ行うモード)と、を有する。ここでは、例として、制御部100の制御のもとで、DIFF+CRPモードで血液分析装置1が動作する場合について説明する。
【0039】
なお、血液分析装置1がDIFFモードで動作する場合は、
図5および
図6の破線のボックスで示す工程のみが行われる。つまり、
図6および
図7において、実線のボックスで示す各工程が、CRP測定に関係する工程である。また、CBC+CRPモード、およびCBCモードでは、BASOおよびLMNEの各測定に関連する動作(工程)が行われない点以外は、DIFF+CRPモード、およびDIFFモードと同じである。
【0040】
なお、血液およびCRP試薬の吸引、吐出を行う際のノズルNの移動は、上述したプローブユニット30によって適切なタイミングで行われるが、本発明の本質ではないため、以下では、ノズルNの移動に関する逐一の記載を省略する。また、各バルブの制御の主体は電磁弁開閉指示部101であり、各定注器の制御主体は定注器駆動指示部102であるが、冗長となる記載を避けるため、これらの主体の逐一の記載も省略する。
【0041】
まず、CRP測定用の検体の分注および撹拌を行う(S1)。具体的には、
図7に示す第1バルブV1および第2バルブV2を適切に制御して、ノズルNとCRP定注器25との間の流路FPを流通可能な状態にする。この状態で、CRP定注器25の吸引動作により、R1試薬容器22からノズルNを介してR1試薬を吸引する。R1試薬の吸引量は、例えば100μLである。
【0042】
次に、第1バルブV1を適切に制御して、流路FPを流通不能な状態にする。そして、
図8に示すように、サンプル定注器60の吸引動作により、検体容器10からノズルNを介して免疫測定用の血液を吸引する。上記血液の吸引量は、例えば8μLである。その後、第1バルブV1および第2バルブV2を適切に制御して、流路FPを流通可能な状態にする。この状態で、CRP定注器25の吐出動作により、ノズルNからCRPチャンバー21に、吸引した血液およびR1試薬を吐出する。
【0043】
続いて、第2バルブV2および第3バルブV3(
図9参照)を適切に制御し、CRPチャンバー21とCRP定注器25との間の流路を、分岐部27、第3バルブV3および第2バルブV2を介して流通可能な状態にする。この状態で、CRP定注器25のピストン運動により、血液とR1試薬とをCRPチャンバー21内で撹拌させる。なお、第2バルブV2および第3バルブV3は、
図2で示した電磁弁装置26を構成する。
【0044】
その後、
図2で示した洗浄チャンバー45において、ノズルNを希釈液で洗浄する(S2)。例えば、第1流路FP1と試薬定注器70(
図7参照)との間の流路に位置する所定のバルブ(第1バルブV1を含む)を適切に制御しながら、試薬定注器70により、バッファタンク80から引き込んだ希釈液を、第1流路FP1を介してノズルNの内部に流す。また、試薬定注器70により、上記希釈液を、ノズル洗浄器33を介してノズルNの外周面に流す。これにより、ノズルNの内部および外周面が洗浄される。なお、ノズルNの外周面を洗浄した後の希釈液は、排水ユニットである排出ポンプ51を介して廃液容器52(
図2参照)に排出される。
【0045】
次に、第1バルブV1を適切に制御して、流路FPを流通不能な状態にする。そして、
図8に示すように、サンプル定注器60の吸引動作により、検体容器10からノズルNを介して血球計数測定用の血液を吸引する(S3)。上記血液の吸引量は、例えば33μLである。続いて、サンプル定注器60の吐出動作により、吸引した血液の一部を洗浄チャンバー45に吐出する捨て分注を行い、残りの血液の次の分注に備える(S4)。捨て分注により、例えばノズルNの先端に位置する汚れた血液が吐出され、捨てられる。上記血液の吐出量は、例えば3μLである。
【0046】
次に、1次希釈用の分注を行う(S5)。具体的には、試薬定注器70により、WBCチャンバー44の側面から希釈液を吐出しながら、サンプル定注器60の吐出動作により、ノズルNからWBCチャンバー44に血液を吐出する。このときの血液の吐出量は、例えば10μLである。
【0047】
ここで、
図10に示すように、希釈液を吐出する試薬定注器70と、血球計数測定部40とをつなぐ流路の所定の位置には、第1バルブユニットU1、第2バルブユニットU2、および第3バルブユニットU3が配置される。第1バルブユニットU1および第2バルブユニットU2に含まれるバルブを適切に制御することにより、図中の太線の経路で、試薬定注器70からWBCチャンバー44に希釈液が吐出される。
【0048】
続いて、白血球分類測定用の分注および測定を行う(S6)。具体的には、試薬定注器70により、BASOチャンバー41の側面からBASO測定用試薬を吐出しながら、サンプル定注器60の吐出動作により、ノズルNからBASOチャンバー41に血液を吐出する。このときの血液の吐出量は、例えば5μLである。さらに、試薬定注器70により、LMNEチャンバー42の側面からLMNE測定用試薬を吐出しながら、サンプル定注器60の吐出動作により、ノズルNからLMNEチャンバー42に血液を吐出する。このときの血液の吐出量は、例えば12.5μLである。そして、BASOチャンバー41において、BASO測定を行う。
【0049】
次に、
図10の第3バルブユニットU3に含まれるバルブを適切に制御して、2次希釈を行う(S7)。具体的には、WBCチャンバー44内の血液の一部をRBC測定用の流路に移送した後、WBCチャンバー44内に残った血液に、WBCおよびHGB測定用の溶血剤を注入する。その後、RBC測定用の流路に予め充填させた希釈液とともに、上記流路に移送された血液を、RBCチャンバー43内に吐出する。続いて、試薬定注器70により、LMNEチャンバー42の側面から希釈液を吐出した後、専用の定注器(図示せず)により、LMNEチャンバー42内の液体をフローセル(図示せず)に移送し、フローセルでのLMNE測定に備える。この間に、WBCチャンバー44にて、HGB測定を行う。
【0050】
その後、WBCチャンバー44にてWBC測定を行い、RBCチャンバー43にてRBCおよびPLTの各測定を行い、上記フローセルにてLMNE測定を行う(S8)。
【0051】
また、S6の後、CRP測定試薬の分注を行う(S9)。具体的には、第1バルブV1および第2バルブV2(
図7参照)を適切に制御して、流路FPを流通状態にし、CRP定注器25の吸引動作により、R2試薬容器23からノズルNを介してR2試薬を吸引する。R2試薬の吸引量は、例えば100μLである。そして、ノズルNをR2試薬容器23の液面から上昇させた後、CRP定注器25の吸引動作により、ノズルN内の所定量(100μL)のR2試薬をセンサ61で検知しながらさらに吸引する。すなわち、R2試薬と空気とがノズルNで吸引される。
【0052】
CRP試薬のうち、代表してR2試薬(緩衝液)をセンサ61で検知することにより、各試薬容器内のCRP試薬の残量が切れていないか否かを検知(判断)することができる。これにより、必要に応じてCRP試薬の補充を行うことができる。なお、R2試薬は、R1試薬およびR3試薬に比べて泡立ちにくいため、CRP試薬の残量切れを精度よく検知する上で有用である。
【0053】
S9での上記の工程は、流路FP中に配置されるセンサ61により、所定量(例えば100μL)のCRP試薬(特にR2試薬)を吸引したことが検知されるまで、CRP定注器25により、ノズルNでCRP試薬をCRP試薬容器から吸引する試薬吸引工程に相当する。
【0054】
その後、CRP定注器25の吐出動作により、ノズルNからCRPチャンバー21に、吸引したR2試薬を吐出する。この工程は、CRP定注器25により、所定量のCRP試薬をCRPチャンバー21に吐出させる試薬吐出工程に対応する。
【0055】
上記したS8と並行して、以下のCRP測定試薬の分注および撹拌を行う(S10)。具体的には、第2バルブV2および第3バルブV3(
図9参照)を適切に制御し、CRP定注器25のピストン運動により、CRPチャンバー21内で、先に吐出されている血液およびR1試薬と、R2試薬とを撹拌させる。続いて、第1バルブV1および第2バルブV2(
図7参照)を適切に制御して、流路FPを流通状態にし、CRP定注器25の吸引動作により、R3試薬容器24からノズルNを介してR3試薬を吸引した後、CRP定注器25の吐出動作により、ノズルNからCRPチャンバー21に、吸引したR3試薬を吐出する。このときのR3試薬の吸引量は、例えば200μLである。その後、第2バルブV2および第3バルブV3(
図9参照)を適切に制御し、CRP定注器25のピストン運動により、CRPチャンバー21内で、先に吐出されている血液、R1試薬およびR2試薬と、R3試薬とを撹拌させる。
【0056】
次に、血球計数用の各チャンバー内に残存する液体を廃液として排出した後、各チャンバー(BASOチャンバー41を除く)内に希釈液を導入して各チャンバーを洗浄する(S11)。なお、BASO測定は、WBC等の測定よりも先に終了しているため、BASOチャンバー41の洗浄については、他のチャンバーの洗浄よりも先に(例えばS7の後に)行われる。
【0057】
一方、CRPチャンバー21では、CRP測定を行う(S12;免疫測定工程)。すなわち、サンプル定注器60により、検体容器10からノズルNで吸引され、CRPチャンバー21に吐出された血液と、CRP定注器25により、CRP試薬容器からノズルNで吸引され、CRPチャンバー21に吐出されたCRP試薬とを、CRPチャンバー21の内部で混合させて、CRP測定を行う。
【0058】
S12のCRP測定を行っている間に、
図7で示す流路FPを介して希釈液を排出する(S13)。より詳しくは、
図11に示すように、第2バルブV2を制御して、流路FP(
図7参照)におけるノズルNとCRP定注器25との連通を遮断する(S13-1)。そして、第3バルブV3を制御して、液体吸引路FP3と第2流路FP2とを、第2バルブV2を介して接続した状態にする(S13-2)。これにより、CRP定注器25とバッファタンク80とが、液体吸引路FP3および第2流路FP2の一部を介して連通した状態となる。なお、上記の「第2流路FP2の一部」とは、第2流路FP2に含まれる、第2バルブV2とCRP定注器25との間の部分流路FP2-1を指す。液体吸引路FP3は、第2バルブV2と第3バルブV3とをつなぐ第1吸引路FP3-1と、第3バルブV3とバッファタンク80とをつなぐ第2吸引路FP3-2と、を有する。
【0059】
この状態で、CRP定注器25のピストンを引き込むと、バッファタンク80内の希釈液が、第2吸引路FP3-2および第1吸引路FP3-1を介して第2流路FP2に合流し、部分流路FP2-1を流れてCRP定注器25の内部に引き込まれる(S13-3)。このとき、第2バルブV2および第3バルブV3(電磁弁装置26)は、第2吸引路FP3-2および第1吸引路FP3-1を介して、希釈液を第2流路FP2に合流させる合流部を構成するとも言える。
【0060】
その後、第1バルブV1および第2バルブV2(
図7参照)を適切に制御して、流路FPを連通状態にし(S13-4)、この状態で、CRP定注器25のピストンを押し込む。これにより、CRP定注器25の内部の希釈液が、第2流路FP2および第1流路FP1を介して外部(洗浄チャンバー45内)に排出される(S13-5)。
【0061】
つまり、S13では、電磁弁開閉指示部101が第2バルブV2および第3バルブV3を制御して、流路FPにおけるノズルNとCRP定注器25との連通を遮断した状態で、定注器駆動指示部102がCRP定注器25に対して引き込み指示を行って、CRP定注器25が内部に吐出用液体としての希釈液を引き込む(S13-1~S13-3;液体引込工程)。その後、電磁弁開閉指示部101が第1バルブV1および第2バルブV2を制御して、流路FPにおいてノズルNとCRP定注器25とを連通させた状態で、定注器駆動指示部102がCRP定注器25に対して押し込み指示を行って、CRP定注器25が希釈液を押し出して流路FPに流し、希釈液を流路FPの外部に排出させる(S13-4~S13-5;液体排出工程)。
【0062】
次に、洗浄チャンバー45において、ノズルNを洗浄液で洗浄する(S14)。より詳しくは、第1流路FP1と試薬定注器70との間の流路に位置する所定のバルブを適切に制御しながら、試薬定注器70により、洗浄液収容容器(図示せず)から引き込んだ洗浄液を、第1流路FP1を介してノズルNの内部に流す。また、ノズル洗浄器33と試薬定注器70との間の流路に位置する所定のバルブを適切に制御しながら、試薬定注器70により、上記洗浄液収容容器から引き込んだ洗浄液を、ノズル洗浄器33を介してノズルNの外周面に流す。これにより、ノズルNの内部および外周面が洗浄される。ノズルNの洗浄に洗浄液を用いるため、希釈液を用いて洗浄を行うS2よりも高い洗浄効果が得られる。
【0063】
最後に、CRP測定後の後処理を行う(S15)。例えば、試薬定注器70により、CRPチャンバー21内に洗浄液を導入して、CRPチャンバー21を洗浄する。洗浄後の廃液を廃液容器52に排出して、一連の処理を終了する。
【0064】
以上のように、本実施形態では、S13の工程により、ノズルNとCRP定注器25との間の流路FP内に存在する気泡が、流路FPを通る希釈液の排出によって排出される。これにより、流路FP内で気泡が蓄積されるおそれを低減することができる。したがって、流路FP内のどこか(例えばノズルNとサンプル定注器60との間)で気泡が集合してエアギャップが形成されるおそれを低減することができる。その結果、S5~S6において、上記のエアギャップに起因してサンプル定注器60による血液の吐出動作のタイミングが遅れるおそれを低減して、血液の分析精度が低下するおそれを低減することができる。
【0065】
特に、血液分析装置1の内部に設けられた上記の流路FPが、高さ方向の上側に向かって凸となるように湾曲する場合には、湾曲した流路FPの上部(凸部分)に第1バルブV1を位置させることが望ましい。この場合、第1バルブV1付近に気泡が蓄積されて(万が一)エアギャップが形成されたとしても、そのエアギャップは(流路FP内の液体に対して軽いため)、CRP定注器25に引き込まれにくくなる。
【0066】
また、S13の液体排出工程は、S12のCRP測定工程(免疫測定工程)の開始から終了までの間に行われる(
図6参照)。S12でのCRP測定と並行して、S13で希釈液の排出を行うため、CRP測定の間の時間を有効利用して、エアギャップの形成を排除することができる。
【0067】
本実施形態では、S12の工程の前に、S9で示した試薬吸引工程と試薬吐出工程とが行われる。試薬吸引工程では、センサ61によって所定量のCRP試薬(特にR2試薬)の吸引が検知されるまで、CRP定注器25により吸引が行われるため、吸引したCRP試薬が第1流路FP1から第1バルブV1を介して第2流路FP2に流れ込む可能性がある。このようなCRP試薬の(大きな移動量での)移動が起こると、流路FP内に気泡が蓄積され、エアギャップが形成されやすくなる。したがって、流路FP内で気泡が蓄積されるおそれを低減し、エアギャップが形成されるおそれを低減することができる本実施形態の効果は、所定量の吸引が検知されるまでCRP試薬を吸引し、その後、CRPチャンバー21に吐出させる場合において、非常に有効となる。
【0068】
また、本実施形態のS3~S8の工程は、血球測定工程に対応する。血球測定工程では、サンプル定注器60により、ノズルNで検体容器10から吸引されて血球測定用チャンバー(BASOチャンバー41、LMNEチャンバー42、RBCチャンバー43、WBCチャンバー44)に吐出される血液と、試薬定注器70により血球測定用チャンバーに吐出される血球測定用試薬とを、血球測定用チャンバーの内部で混合させて測定を行う。
【0069】
流路FP内に気泡の蓄積によるエアギャップが形成されると、サンプル定注器60により規定量の血液を吐出することが困難となるため、特に血球測定工程に影響を与える。このため、流路FP内で気泡が蓄積されるおそれを低減し、エアギャップが形成されるおそれを低減することができる本実施形態の効果は、血球測定工程を行う場合において、非常に有効となる。
【0070】
また、本実施形態では、CRP定注器25により流路FPに吐出する吐出用液体として、希釈液を用いる。血球計数装置などの血液分析装置において、希釈液は一般的に用いられる。このような希釈液を吐出用液体として用いることにより、流路FP内のエアギャップの形成を排除することができるため、エアギャップの形成を排除するための専用の液体を用いる必要がなく、希釈液を有効利用することができる。また、上述のS2、S5、S7、S11で使用する希釈液と、S13で使用する希釈液とは、どちらも同じバッファタンク80(希釈液容器から希釈液が補充される)から供給される希釈液である。このように、ノズルN等の洗浄、血液の希釈、気泡の排出、に全て同じ希釈液を用いる点でも、希釈液を有効利用することができる。
【0071】
本実施形態では、S13において、CRP定注器25から流路FPに押し出された希釈液を、ノズルNから排出させているが、例えば、流路FPの途中に分岐路を設けて(分岐点にはバルブを配置する)、分岐路から流路FPの外部に排出させてもよい。ただし、この場合、分岐路およびバルブの設置が新たに必要となるため、構成の簡素化の点では、CRP定注器25は、吐出用液体としての希釈液を、ノズルNから排出させることが望ましい。
【0072】
〔5.プログラムについて〕
本実施形態の血液分析装置1は、動作プログラム(アプリケーションソフトウェア)をインストールしたコンピュータで構成することができる。上記プログラムをコンピュータ(例えばCPUとしての制御部100)が読み取って実行することにより、血液分析装置1の各部を動作させて上述した各処理(各工程)を実行させることができる。このようなプログラムは、例えばネットワークを介して外部からダウンロードすることによって取得されて制御部100内のメモリに記憶される。上記プログラムは、例えばCD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory)などのコンピュータ読取可能な記録媒体に記録され、この記録媒体から上記プログラムを読み取って上記メモリに記憶される形態であってもよい。すなわち、本実施形態のプログラムは、上述した本実施形態の血液分析方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。また、本実施形態の記録媒体は、上記のプログラムを記録した、コンピュータ読取可能な記録媒体である。
【0073】
〔6.補足〕
S13では、流路FPに流す吐出用液体として、希釈液を流す代わりに、洗浄液等の他の液体を用いてもよい。
【0074】
本実施形態では、血液分析装置1における各バルブ(第1バルブV1、第2バルブV2、第3バルブV3を含む)を電磁弁で構成する例について説明したが、各バルブは、電磁弁以外の切替弁で構成されてもよい。したがって、上述した電磁弁開閉指示部101は、切替弁開閉指示部と呼ぶこともできる。
【0075】
CRP定注器25によるCRP試薬の流路FP内への吸引時に、吸引されたCRP試薬と、流路FP内に元々存在する希釈液との混合を防止するため、CRP試薬は、希釈液との間にエアギャップを挟んだ状態でCRP定注器25によって吸引される。なお、CRP定注器25はサンプル定注器60に比べて大型であるため、上記のエアギャップが流路FP内に存在しても、CRP定注器25の押し出し動作によってCRP試薬を規定量だけノズルNから吐出させることは可能である。
【0076】
本実施形態では、検体として血液を用い、血液の分析を行う血液分析装置1を検体分析装置の一例として説明したが、検体分析装置は血液分析装置1には限定されない。例えば、検体として、血漿、血清、唾液、尿、リンパ液、脳脊髄液等の体液を用いる分析装置においても、本実施形態で説明した構成および方法を適用することは可能である。
【0077】
本実施形態では、CRP定注器25の引き込み動作および押し出し動作による希釈液の排出により、流路FP内にエアギャップが形成されるおそれを低減している。しかし、希釈液の引き込みおよび流路FPへの押し出しは、他の定注器(サンプル定注器60、試薬定注器70)によって行ってもよい。つまり、上記他の定注器により、液体(検体、試薬を含む)の吸引および吐出動作を繰り返したときに、流路FP内にエアギャップが形成されるおそれがある場合には、上記他の定注器によって希釈液の引き込みおよび流路FPへの押し出しを行うことにより、エアギャップの形成を低減することができる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で拡張または変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、例えば血液計数および免疫測定を行う血液分析装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 血液分析装置(検体分析装置)
10 検体容器
20 免疫測定部
21 CRPチャンバー
22 R1試薬容器
23 R2試薬容器
24 R3試薬容器
25 CRP定注器(免疫測定用定注器)
60 サンプル定注器
61 センサ
70 試薬定注器
101 電磁弁開閉指示部(切替弁開閉指示部)
102 定注器駆動指示部
FP 流路
FP1 第1流路
FP2 第2流路
FP3 液体吸引路
FP3-1 第1吸引路(液体吸引路)
FP3-2 第2吸引路(液体吸引路)
N ノズル(サンプリングノズル)
V1 第1バルブ(切替弁)
V2 第2バルブ(切替弁)
V3 第3バルブ(切替弁)