(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085005
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物
(51)【国際特許分類】
A23D 7/00 20060101AFI20240619BHJP
A21D 13/60 20170101ALI20240619BHJP
A23G 3/36 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
A23D7/00 506
A21D13/60
A23G3/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199278
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】舟川 奈都記
【テーマコード(参考)】
4B014
4B026
4B032
【Fターム(参考)】
4B014GG11
4B014GG14
4B014GL07
4B014GP16
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4B032DL11
4B032DP08
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4B032DP47
(57)【要約】
【課題】口溶け、歯切れ及び風味が良好で、かつ、油性感が低減された油菓子を得ることが可能である油菓子練込用油脂組成物を提供すること。
【解決手段】油相のSFCが10℃で55~100%、20℃で30~100%、40℃で15%以下であることを特徴とする、油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物。乳固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を含有することが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油相のSFCが10℃で55~100%、20℃で30~100%、40℃で15%以下である、油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物。
【請求項2】
乳固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を含有する、請求項1に記載の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物を使用した油菓子生地。
【請求項4】
請求項3に記載の油菓子生地を油ちょうした油菓子製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の注目がドーナツに集まっており、ケーキドーナツやイーストドーナツ、フレンチクルーラー等の一般的な、定番のドーナツを初め、焼ドーナツや生ドーナツといった一風変わったドーナツも市場で人気を博している。
一方で、その油性感の高さから高カロリーが連想されるため、ドーナツ市場の縮小が見られ始めている。そのため、ドーナツ市場では、油性感が低減されたドーナツが求められている。
【0003】
ここで、油性感が低減されたドーナツを得るための手法として、(1)ドーナツ生地を食品素材で被覆し、油ちょう中の吸油を抑制し、油性感を低減する手法(2)ドーナツ生地中に、油性感を感じさせにくくする食品素材、若しくは油ちょう中の吸油を抑制する食品素材を練り込む手法(3)油ちょうする揚げ油の組成を調整する、の3種に大別されるアプローチから検討が為されている。
【0004】
(1)の手法として、例えば餅様素材でドーナツ生地をコーティングする手法(特許文献1)などが挙げられる。また、(2)の手法として、例えばキサンタンガム・グアガム・ビタミンCを特定比率で混合したものをドーナツ生地に練り込む手法(特許文献2)や、加熱時にゲル化可能な水溶性セルロースエーテルの水溶液を含有する吸油抑制剤を練り込む手法(特許文献3)、乳由来のリン脂質、乳タンパク質及び特定分子量のデキストランからなる吸油抑制材を練り込む手法(特許文献4)などが挙げられる。
さらに(3)の手法として、例えばショ糖脂肪酸エステルを特定量含有するフライ用油脂組成物を用いる手法(特許文献5)や、ジグリセリドを多く含有する揚げ油を用いる手法(特許文献6)などが挙げられる。
【0005】
しかし、(1)の手法では、生地成形時や油ちょう中に被覆部分が損傷しやすく、油ちょう中の吸油を十分に抑制することが難しかった。また、(3)の手法では、油ちょうする際に用いる揚げ油の組成のみで、ドーナツの油性感を抑制することが困難であった。一方で、(2)の手法のように、ドーナツ生地自体の配合に工夫を施す手法では、他の手法と比較して、相対的には油性感の低減効果は得られ易いものの、油性感を低減させるために添加量を増やすと、ゲル化剤や増粘安定剤由来のねちゃついた食感になりやすく、軽く歯切れの良い食感が得られにくいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-086743号公報
【特許文献2】特開2016-214230号公報
【特許文献3】特開2010-268693号公報
【特許文献4】特開2019-071805号公報
【特許文献5】特開2014-014317号公報
【特許文献6】特開平11-243857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、口溶け、歯切れ及び風味が良好で、かつ、油性感が低減された油菓子を得ることが可能である油菓子練込用油脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記目的を達成すべく種々検討した結果、油菓子生地製造に使用する練込油脂として、通常使用される油中水型乳化物であるマーガリンや水分を含有しないショートニングのような可塑性油脂組成物ではなく、水中油型乳化物の形態として使用し、該水中油型乳化物の油相を特定のSFCとすることで上記課題を達成可能であることを見出した。
【0009】
本発明は、上記知見により得られたものであり、油相のSFCが10℃で55~100%、20℃で30~100%、40℃で15%以下である、油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物を提供するものである。
【0010】
また本発明は、当該油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物を含有する油菓子生地及び当該油菓子生地を油ちょうした油菓子製品を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物及び油菓子生地を使用することにより、口溶け、歯切れ及び風味が良好で、油性感が低減された油菓子を得ることができる。また本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物及び油菓子生地を使用して得られた油菓子は、口溶け、歯切れ及び風味が良好で、油性感が低減されている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物について詳述する。
本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物は、油相のSFC(固体脂含量)が10℃で55~100%、20℃で30~100%、40℃で15%以下であることが必要であるが、好ましくは10℃で55~90%、20℃で30~75%、40℃で5%以下であり、より好ましくは10℃で55~80%、20℃で30~45%、40℃で4%以下である。
【0013】
油相のSFCが10℃で55%未満、または20℃で30%未満の場合、得られる油菓子の歯切れが悪化する。40℃で15%を超える場合は油菓子の口溶けが悪化する。
なお、水相中に2種以上の油相を含む場合は、そのすべての油相を合一させてSFCを測定するものとする。
尚、上記SFCは、次のようにして測定する。即ち、先ず、油相を60℃に30分保持して完全に融解した後、0℃に30分保持して固化させる。次いで、25℃に30分保持し、テンパリングを行い、その後、0℃に30分保持する。これをSFCの各測定温度(10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃及び60℃)に順次30分保持後、SFCを測定する。
【0014】
ここで、上記SFCとするために使用する油脂としては特に限定されないが、例えば、パーム核油、ヤシ油、ババス油、パーム油、米油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油(キャノーラ油)、ハイエルシンナタネ油、ヒマワリ油、サフラワー油、ハイオレイックヒマワリ油、ハイオレイックサフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油、等の各種植物油脂、動物油脂並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される一又は二以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0015】
なかでも本発明では、特に風味が良好で、体積が大きく、口溶け及び歯切れが良好な油菓子が得られる点で、パーム核油、ヤシ油、ババス油などのラウリン系油脂、並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される一又は二以上の処理を施した加工油脂を使用することが好ましい。
【0016】
また、上記ラウリン系油脂を使用する場合、ラウリン系油脂に必要に応じその他の油脂を添加した油脂配合物のエステル交換油脂の形で使用することも可能である。エステル交換油脂の形で使用することにより、油菓子の保型性を良好なものとすることができる。
風味が良好で、体積が大きく、口溶け及び歯切れが良好な油菓子が一層得やすい点でラウリン系油脂を使用する場合、油脂組成物の油相中の構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸含量が10~85質量%とすることが好ましく、より好ましくは25~80質量%であることが好ましい。
【0017】
なお本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物では、融点が50℃を超える油脂、とくに極度硬化油脂は、得られる油菓子の口溶けが悪化しやすい点で含有しないことが好ましい。なお、エステル交換油脂の製造に使用する分には問題ない。なお、本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物に極度硬化油が含まれる場合、その量は、使用する全油脂中2質量%以下であることが好ましく、0.9質量%以下であることがより好ましい。
【0018】
なお、本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物の油相の融点は22~50℃であることが好ましく、より好ましくは24~45℃である。
油相の融点を22℃以上とすることにより油菓子の体積及び保型性を良好なものとすることができ、油相の融点を50℃以下とすることにより、口溶けの悪化を防止することが可能となる。
なお、本明細書において油相の融点とは上昇融点であり、日本油化学会制定の基準油脂分析試験法に記載の方法により測定することができる。
【0019】
本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物は、エステル交換油脂を含有する場合、油菓子の保型性向上等の利点があるが、エステル交換油脂を含有していなくてもよい。エステル交換油脂を含有する場合、その量としては、油相中例えば20質量%以上が挙げられる。エステル交換油脂を用いる場合、その融点としては、本発明の特定のSFCを有する油脂を得やすい点等から、22~50℃であることが好ましく、より好ましくは24~45℃であることが更に好ましい。
【0020】
また、本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物における油脂分含量は20~65質量%であることが好ましく、より好ましくは30~50質量%である。油脂分含量が20質量%以上であると、油菓子生地の製造時に油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物の添加量が多くせずに済み、本発明の効果が得易い。また、65質量%以下であることで、油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物の製造時における増粘を抑制し、乳化安定性の悪化に起因して安定的な生産や保管・配送が困難となってしまうおそれを防止できる。
なお、上記油脂分含量には、下記の乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料及び下記のその他の成分に含まれる油脂分も含むものとする。
【0021】
また、本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物における水分含量は30~78質量%であることが好ましく、より好ましくは45~68質量%である。
なお、上記水分含量には、下記のその他の成分に含まれる水分も含むものとする。
【0022】
また、本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物では、吸油抑制効果をより高めることができることから油性感を低減可能であり、且つ、得られる油菓子の風味及び歯切れが向上する点から、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を使用することが好ましい。
上記乳原料としては、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が、該固形分を基準として、3質量%以上である乳原料を使用することが好ましく、更に好ましくは4質量%以上、最も好ましくは5~40質量%である乳原料を使用する。
上記乳由来の固形分中のリン脂質とは、乳由来の固形分中に含まれる乳由来のリン脂質のことを指す。
【0023】
また、上記乳原料は、液体状でも、粉末状でも、濃縮物でも構わない。但し、溶剤を用いて乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上となるように濃縮した乳原料は、風味上の問題から、本発明においては、上記乳原料として用いないのが好ましい。
尚、上記乳原料の起源となる乳としては、牛乳、ヤギ乳、ヒツジ乳、人乳等の乳を例示することができるが、特に牛乳が好ましい。
【0024】
乳由来のリン脂質を含有する乳原料の固形分中のリン脂質の定量方法としては、例えば下記の定量方法が挙げられる。但し、抽出方法等については乳原料の形態等によって適正な方法が異なるため、下記の定量方法に限定されるものではない。
【0025】
先ず、乳由来のリン脂質を含有する乳原料の脂質をFolch法により抽出する。次いで、抽出した脂質溶液を湿式分解法(日本薬学会編、衛生試験法・注解2000 2.1食品成分試験法に記載の湿式分解法に準じる)にて分解した後、モリブデンブルー吸光度法(日本薬学会編、衛生試験法・注解2000 2.1食品成分試験法に記載のリンのモリブデン酸による定量に準じる)によりリン量を求める。求められたリン量から、以下の計算式を用いて、乳由来のリン脂質を含有する乳原料の固形分100g中のリン脂質の含有量(g)を求める。
【0026】
リン脂質(g/100g)=〔リン量(μg)/(乳由来のリン脂質を含有する乳原料-乳由来のリン脂質を含有する乳原料の水分(g))〕×25.4×(0.1/1000)
上記乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として2質量%以上である乳原料としては、例えば、クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分が挙げられる。該クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分は、通常のクリームからバターを製造する際に生じるいわゆるバターミルクとは組成が大きく異なり、リン脂質を多量に含有しているという特徴がある。バターミルクは、その製法の違いによって大きく異なるが、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が、通常0.5~1.5質量%程度であるのに対して、上記クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分は、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が、おおよそ2~15質量%であり、多量のリン脂質を含有している。
【0027】
本発明において、上記乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料として、通常のクリームからバターを製造する際に生じるいわゆるバターミルクそのものを用いることはできないが、バターミルクを乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上となるように濃縮した濃縮物、或いはその乾燥物を用いることは可能である。
【0028】
上記クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の製造方法の一例を以下に説明する。
上記クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の製造方法は、例えば以下の通りである。
先ず、牛乳を遠心分離して得られる脂肪濃度30~40質量%のクリームをプレートで加温し、遠心分離機によってクリームの脂肪濃度を70~95質量%まで高める。次いで、乳化破壊機で乳化を破壊し、再び遠心分離機で処理することによってバターオイルが得られる。本発明で用いることができる上記水相成分は、最後の遠心分離の工程でバターオイルの副産物として発生するものである。
【0029】
一方、上記バターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の製造方法は、例えば以下の通りである。
先ず、バターを溶解機で溶解し、熱交換機で加温する。これを遠心分離機で分離することによってバターオイルが得られる。本発明で用いることができる上記水相成分は、遠心分離の工程でバターオイルの副産物として発生するものである。該バターオイルの製造に用いられるバターとしては、通常のものが用いられる。
本発明で用いることができる上記水相成分としては、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として2質量%以上であれば、上記クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分をそのまま用いてもよく、また、噴霧乾燥、濃縮、冷凍等の処理を施したものを用いてもよい。
但し、乳由来のリン脂質は、高温加熱するとその機能が低下するため、上記加温処理や上記濃縮処理中或いは殺菌等により加熱する際の温度は、100℃未満であることが好ましい。
【0030】
また、本発明では、上記の乳原料中のリン脂質の一部又は全部がリゾ化されたリゾ化物を使用することもできる。該リゾ化物は、乳原料をそのままリゾ化したものであっても良く、また乳原料を濃縮した後にリゾ化したものであってもよい。また、得られたリゾ化物に、更に濃縮或いは噴霧乾燥処理等を施してもよい。これらのリゾ化物は本発明におけるリン脂質の含有量に含めるものとする。
【0031】
上記の乳原料中のリン脂質をリゾ化するには、ホスホリパーゼAで処理すればよい。ホスホリパーゼAは、リン脂質分子のグリセロール部分と脂肪酸残基とを結びつけている結合を切断し、この脂肪酸残基を水酸基で置換する作用を有する酵素である。ホスホリパーゼAは、作用する部位の違いによってホスホリパーゼA1とホスホリパーゼA2とに分かれるが、ホスホリパーゼA2が好ましい。ホスホリパーゼA2の場合、リン脂質分子のグリセロール部分の2位の脂肪酸残基が選択的に切り離される。
【0032】
また、本発明では、上記の乳原料の添加効果を更に向上させることができる点で、好ましくはpHが3~6、より好ましくはpH4~6、更に好ましくは4.7~5.8となるように酸処理を行ったものであることが好ましい。
【0033】
上記酸処理を行うには、酸を添加する方法であっても、また、乳酸醗酵等の醗酵処理を行う方法であってもよいが、好ましくは酸を添加する。該酸としては、無機酸であっても有機酸であってもよいが、有機酸であることが好ましい。該有機酸としては、酢酸、乳酸、クエン酸、グルコン酸、フィチン酸、ソルビン酸、アジピン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、アスコルビン酸等が挙げられ、果汁、濃縮果汁、発酵乳、ヨーグルト等の有機酸を含有する飲食品も用いることができるが、本発明においてはより酸味が少なく、風味に影響しない点でフィチン酸及び/又はグルコン酸を使用することが好ましい。
【0034】
上記酸の添加によるpHの調整は、上記酸を上記乳原料自体に添加することにより行ってもよいし、油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物の製造時に上記酸を添加することにより行ってもよい。
また、本発明では、上記の乳原料に、リン脂質含有量1質量部あたり、好ましくは0.01~1質量部、より好ましくは0.02~0.5質量部、更に好ましくは0.05~0.3質量部のカルシウム塩を添加してもよい。
【0035】
上記カルシウム塩としては塩化カルシウム、乳酸カルシウム、リン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、炭酸カルシウム、グルタミン酸カルシウム、アスコルビン酸カルシウム等が例示され、このうち1種又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、本発明においては得られる油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物の風味を損ねず、また油菓子生地の物性に影響のない点で塩化カルシウム及び/又は乳酸カルシウムを使用することが好ましい。
【0036】
また、本発明で用いる上記の乳原料は、油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物を製造する際に、水相や油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物への分散性を高めることが可能である点、及び得られる油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物の乳化安定性をより高めることができる点で、均質化処理を行なったものであることが好ましい。特に上記リゾ化処理、酸処理、カルシウム塩添加を行なう場合は、その効果を高めるために均質化処理を行なうことが特に好ましい。均質化処理は1回でもよく、2回以上行ってもよい。また、粘性が高い等の場合は、加水により粘度を調整してから均質化処理を行なってもよい。
【0037】
上記均質化処理に用いられる均質化機としては、例えば、ケトル型チーズ乳化釜、ステファンミキサーの様な高速せん断乳化釜、スタティックミキサー、インラインミキサー、バブル式ホモジナイザー、ホモミキサー、コロイドミル、ディスパーミル等が挙げられる。均質化圧力は特に制限はないが、好ましくは0~100MPaである。2段式ホモジナイザーを用いて均質化処理をする場合は、例えば、1段目3~100MPa、2段目0~5MPaの均質化圧力にて行ってもよい。
【0038】
更に本発明で用いる上記の乳原料は、UHT加熱処理を行ってもよい。UHT加熱処理の条件としては特に制限はないが、処理温度は好ましくは120~150℃であり、処理時間は好ましくは1~6秒である。
【0039】
このようにして得られる本発明で用いる上記の乳原料や乳原料加工品は、液状、ペースト状、粉末状、固形状等の状態のものとすることができ、本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物では、何れの状態のものでも使用できるが、上記乳原料や乳原料加工品は、液状又はペースト状のものを使用することが、本発明の効果が安定して得られる点で好ましい。
【0040】
本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物では、上記乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分を基準として2質量%以上である乳原料を、固形分として、好ましくは0.1~8質量%、更に好ましくは0.5~7質量%、最も好ましくは0.5~4質量%含有する。
【0041】
本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物は、良好な風味の油菓子を得ることが可能であることから、トータルミルクプロテイン及び/又はミルクプロテインコンセントレートを含有することが好ましい。トータルミルクプロテイン及び/又はミルクプロテインコンセントレートとは、カゼイン蛋白質、ホエイ蛋白質の両方を含有する乳由来の蛋白質であり、牛乳中に含まれる蛋白質を限外濾過技術により濃縮・噴霧乾燥することなどにより得られる。
本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物における、トータルミルクプロテイン及び/又はミルクプロテインコンセントレートの含有量は合計して1~5質量%、より好ましくは1~3質量%である。
【0042】
本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲において、必要に応じ、油脂、水、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料、トータルミルクプロテイン及びミルクプロテインコンセントレート以外のその他の成分(以下、単に「その他の成分」ともいう。)を含有していてもよい。その他の成分としては、乳化剤、安定剤、増粘安定剤、上記以外の乳及び乳製品、糖類及び甘味料、果汁、ジャム、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品等の呈味成分、調味料、食塩、酸味料、着香料、着色料、保存料、酸化防止剤、pH調整剤等が挙げられる。その他の成分の配合量は、本発明の効果を阻害しない範囲において、通常の使用量の範囲で使用することができる。
【0043】
上記その他の成分としての乳化剤(以下、単に「上記乳化剤」とも記載する。)としては、特に限定されないが、例えば、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等が挙げられる。これらの乳化剤は単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0044】
本発明における上記乳化剤の含有量は、好ましくは0.001~5質量%、より好ましくは0.01~1質量%である。尚、上記乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を使用する場合は、上記乳化剤の含量を減じることができ、その場合の上記乳化剤の好ましい含有量は0~1質量%、より好ましくは0~0.5質量%、最も好ましくは上記乳化剤を使用しないことが好ましい。
【0045】
上記安定剤としては、リン酸塩(ヘキサメタリン酸、第2リン酸、第1リン酸)、クエン酸のアルカリ金属塩(カリウム、ナトリウム等)等が挙げられる。これらの安定剤は、単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0046】
上記増粘安定剤としては、キサンタンガム、グアーガム、アラビアガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、カラギーナン、アルギン酸塩、ファーセルラン、ローカストビーンガム、ペクチン、カードラン、澱粉、化工澱粉、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ゼラチン、デキストリン、寒天、デキストラン、白キクラゲ多糖等が挙げられる。これらの増粘安定剤は、単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0047】
本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物は、通常の水相を含まないショートニングや液状油、流動ショートニング、あるいは水相を含むマーガリンやファットスプレッドなどの油中水型や油中水中油型の乳化形態油菓子練込用油脂と異なり、水中油型の乳化型であることが特徴である。水中油型の乳化型であることにより油菓子の油ちょう時の吸油が高く抑制され、油性感の少ない食感とすることができるものである。
なお、本発明において、水中油型乳化物には、水中油中水型などの多重乳化型を含むものとする。
【0048】
以下に、本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物の製造方法を説明する。
本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物は、その製造方法が特に制限されるものではないが、例えば以下の方法により製造することができる。
先ず、油脂及び必要によりその他の原料を含有させた油相と、水及び必要によりその他の原料を含有させた水相とをそれぞれ個別に調製し、次いで、該油相と該水相とを混合乳化し、水中油型に乳化することにより、本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物が得られる。
【0049】
この際、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料、トータルミルクプロテイン及び/又はミルクプロテインコンセントレートをはじめとする水溶性成分は水相に、油溶性成分は油相に含有させるのが基本であるが、水相への溶解性が乏しくだまになりやすい場合など、水溶性成分を油相に添加してもよい。
【0050】
得られた水中油型乳化油脂組成物は、必要により、バルブ式ホモジナイザー、ホモミキサー、コロイドミル等の均質化装置により、圧力0~100MPaの範囲で均質化してもよい。また、必要によりインジェクション式、インフージョン式等の直接加熱方式、プレート式、チューブラー式、掻き取り式等の間接加熱方式を用いたUHT・HTST・低温殺菌、バッチ式、レトルト、マイクロ波加熱等の加熱滅菌又は加熱殺菌処理を施してもよく、直火等の加熱調理により加熱してもよい。さらに、加熱後に必要に応じて再度均質化してもよく、必要により急速冷却、徐冷却等の冷却操作を施してもよい。
【0051】
本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物は、かりんとう、揚げパン、揚げまんじゅう、デニッシュドーナツ、イーストドーナツ、ケーキドーナツ、チュロス、フレンチクルーラー、サーターアンダギー、あられ、えびせんべい、せんべい、かりんとうまんじゅう、鈴カステラ等の各種油菓子生地に用いることができるが、本発明の改良効果がとくに高く得られる点でイーストドーナツ生地に使用することが好ましい。
【0052】
次に、本発明の油菓子生地について述べる。
本発明の油菓子生地は、本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物を使用した油菓子生地である。本発明の油菓子生地における油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物の使用量は、油菓子生地の種類によっても異なるが、油菓子生地に含まれる穀粉類100質量部に対し、好ましくは2~100質量部、より好ましくは4~50質量部である。
【0053】
上記穀粉類としては、小麦粉(薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉)をはじめ、小麦胚芽、全粒粉、小麦ふすま、デュラム粉、大麦粉、米粉、ライ麦粉、ライ麦全粒粉、大豆粉、ハトムギ粉等を挙げることができ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。本発明では、これらの中でも、小麦粉を、穀粉類中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは100質量%使用する。
【0054】
なお、本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物に加え、油中水型乳化型のマーガリン、水相を含まないショートニング、ラード、ヘット、流動ショートニング等の、油脂が連続相である油脂組成物を併用することも可能であるが、その際は、本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物の含有量以下で使用することが好ましい。また、両者を合計した油脂含量に占める本発明の水中油型乳化油脂組成物由来の油脂含量が25質量%以上、好ましくは50質量%以上であることが好ましい。
【0055】
本発明の油菓子生地においては、必要に応じ、一般の油菓子生地材料として使用することのできるその他の原料を使用することができる。該その他の原料としては、例えば、水、油脂、イースト、糖類や甘味料、増粘安定剤、着色料、酸化防止剤、デキストリン、乳や乳製品、チーズ類、蒸留酒、醸造酒、各種リキュール、乳化剤、膨張剤、無機塩類、食塩、ベーキングパウダー、イーストフード、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、ハーブ、豆類、蛋白質、保存料、苦味料、酸味料、pH調整剤、日持ち向上剤、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、調味料、香辛料、香料、各種食品素材や食品添加物等を挙げることができる。
上記その他の原料は、本発明の効果を損なわない限り、任意に使用することができる。
【0056】
次に、本発明の油菓子生地の製造方法について説明する。
本発明の油菓子生地は、本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物を生地に練り込むことにより、製造することができる。
本発明の油菓子生地の製造方法としては、特に制限なく従来の各種油菓子生地の製造方法を採ることができる。
また、得られた本発明の油菓子生地は、冷蔵、冷凍保存することが可能である。
【0057】
次に、本発明の油菓子について述べる。
本発明の油菓子は、上記の本発明の油菓子生地を、適宜、分割、成形し、必要に応じホイロ、リタード、レスト、ラックをとった後、油ちょうすることにより得ることができる。
上記成形は、どのような形状に成形してもよく、型詰めを行っても構わない。成形は、手作業で行っても、連続ラインを用いて全自動で行っても構わない。
油ちょうの前後に焼成及び/又は蒸しを施してもよい。
また、得られた本発明の油菓子を、冷蔵、冷凍保存をしたり、該保存後に電子レンジ加熱することも可能である。
【実施例0058】
次に、実施例、比較例等を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例等は本発明を制限するものではない。
<エステル交換油脂の製造>
[エステル交換油脂Aの製造]
パーム核油及びパーム極度硬化油を50:50の質量比率で混合した油脂配合物を、化学触媒を用いてランダムエステル交換し、融点43℃のエステル交換油脂Aを得た。
【0059】
[エステル交換油脂Bの製造]
パーム核油及びパームステアリンを45:55の質量比率で混合した油脂配合物を、化学触媒を用いてランダムエステル交換し、融点37℃のエステル交換油脂Bを得た。
【0060】
[エステル交換油脂Cの製造]
ヨウ素価55のパーム分別軟部油60質量部、ハイエルシン菜種極度硬化油20質量部及びパーム核油20質量部を溶解、混合した油脂配合物を、化学触媒を用いてランダムエステル交換し、融点39℃のエステル交換油脂Cを得た。
【0061】
[エステル交換油脂Dの製造]
パーム核油及びパーム極度硬化油を75:25の質量比率で混合した油脂配合物を、化学触媒を用いてランダムエステル交換し、融点32℃のエステル交換油脂Dを得た。
【0062】
[エステル交換油脂Eの製造]
ヨウ素価55のパーム分別軟部油を、化学触媒を用いてランダムエステル交換し、融点40℃のエステル交換油脂Eを得た。
【0063】
〔実施例1〕
<油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物の製造>
60℃に加温したエステル交換油脂A45質量%からなる油相を用意した。一方、60℃に加温した水48質量%にクリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(乳固形分38質量%、乳固形分中のリン脂質の含有量9.8質量%、水分62%)5質量%、トータルミルクプロテイン2質量%を添加・分散した水相を用意した。該油相と水相を65℃で混合し、攪拌して水中油型の予備乳化物を調製した。該予備乳化物をVTIS殺菌機(アルファラバル社製UHT殺菌機ステリラボ)で143℃にて5秒間殺菌し、10MPaの圧力で均質化後、5℃まで冷却し、油脂分含量が45質量%、水分含量が51.1質量%であり、油相のSFCが10℃で87%、20℃で77%、40℃で13%であり、油相の融点は43℃であり、構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸の含有量が36質量%である本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物Aを得た。
【0064】
<イーストドーナツの配合及び製造法>
強力粉80質量部、薄力粉20質量部、生イースト3質量部、イーストフード0.1質量部上白糖12質量部、食塩1.5質量部、全卵(正味)5質量部、油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物A30質量部及び水38質量部をミキサーボウルに投入し、フックを使用し、低速で3分、中速で3分混合した。ここで、可塑性油中水型油脂組成物(EZマーガリン:株式会社ADEKA製)(油分含量82質量%)8質量部を投入し、さらに、低速で3分、中速で3分、高速で1分ミキシングを行ない、イーストドーナツ生地を得た。得られたイーストドーナツ生地の捏ね上げ温度は26℃であった。ここで、フロアタイムを40分とった後、60gに分割し、ベンチタイム20分とったあとにロール成形し、展板に並べた後、33℃、相対湿度65%で40分ホイロをとった後、ラックタイムを10分とり、、180℃に設定したフライヤーに入れ片面120秒ずつ油ちょうし、イーストドーナツを得た。
【0065】
〔実施例2〕
実施例1で使用したエステル交換油脂Aに代えて、エステル交換油脂Bを使用した以外は、実施例1の配合・製法と同様にして、油脂分含量が45質量%、水分含量が51.1質量%であり、油相のSFCが10℃で61%、20℃で41%、40℃で0%であり、油相の融点は36℃であり、構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸の含有量が32質量%である本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物Bを得た。
得られた油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物Bを使用した以外は実施例1同様にして、本発明のイーストドーナツ生地B及び本発明のイーストドーナツBを得た。
【0066】
〔実施例3〕
実施例1で使用したエステル交換油脂Aに代えて、エステル交換油脂Cを使用した以外は、実施例1の配合・製法と同様にして、油脂分含量が45質量%、水分含量が51.1質量%であり、油相のSFCが10℃で55%、20℃で36%、40℃で3%であり、油相の融点は39℃であり、構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸の含有量が12質量%である本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物Cを得た。
得られた油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物Cを使用した以外は実施例1同様にして、本発明のイーストドーナツ生地C及び本発明のイーストドーナツCを得た。
【0067】
〔実施例4〕
実施例1で使用したエステル交換油脂Aに代えて、エステル交換油脂Dを使用した以外は、実施例1の配合・製法と同様にして、油脂分含量が45質量%、水分含量が51.1質量%であり、油相のSFCが10℃で72%、20℃で51%、40℃で1%であり、油相の融点は32℃であり、構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸の含有量が51質量%である本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物Dを得た。
得られた油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物Dを使用した以外は実施例1同様にして、本発明のイーストドーナツ生地D及び本発明のイーストドーナツDを得た。
【0068】
〔実施例5〕
実施例1で使用したエステル交換油脂Aに代えて、パーム核油(融点27℃)を使用した以外は、実施例1の配合・製法と同様にして、油脂分含量が45質量%、水分含量が51.1質量%であり、油相のSFCが10℃で59%、20℃で38%、40℃で0%であり、油相の融点は26℃であり、構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸の含有量が72質量%である本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物Eを得た。
得られた油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物Eを使用した以外は実施例1同様にして、本発明のイーストドーナツ生地E及び本発明のイーストドーナツEを得た。
【0069】
〔実施例6〕
実施例1で使用したエステル交換油脂Aに代えて、パーム核分別高融点部(融点32℃)を使用した以外は、実施例1の配合・製法と同様にして、油脂分含量が45質量%、水分含量が51.1質量%であり、油相のSFCが10℃で85%、20℃で74%、40℃で0%であり、油相の融点は32℃であり、構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸の含有量が82質量%である本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物Fを得た。
得られた油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物Fを使用した以外は実施例1同様にして、本発明のイーストドーナツ生地F及び本発明のイーストドーナツFを得た。
【0070】
〔実施例7〕
実施例1で使用したエステル交換油脂A45質量部に代えて、エステル交換油脂A9質量部及びパーム核油36質量部からなる混合油脂を使用した以外は、実施例1の配合・製法と同様にして、油脂分含量が45質量%、水分含量が51.1質量%であり、油相のSFCが10℃で65%、20℃で45%、40℃で3%であり、油相の融点は28℃であり、構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸の含有量が65質量%である本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物Gを得た。
得られた油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物Gを使用した以外は実施例1同様にして、本発明のイーストドーナツ生地G及び本発明のイーストドーナツGを得た。
【0071】
〔実施例8〕
実施例1で使用したエステル交換油脂A45質量部を、乳脂9質量部及びパーム核油36質量部からなる混合油脂を使用した以外は、実施例1の配合・製法と同様にして、油脂分含量が45質量%、水分含量が51.1質量%であり、油相のSFCが10℃で55%、20℃で33%、40℃で0%であり、油相の融点は27℃であり、構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸の含有量が62質量%である本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物Hを得た。
得られた油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物Hを使用した以外は実施例1同様にして、本発明のイーストドーナツ生地H及び本発明のイーストドーナツHを得た。
【0072】
〔実施例9〕
実施例1で使用したエステル交換油脂A45質量部を、エステル交換油脂A18質量部及び乳脂27質量部からなる混合油脂を使用した以外は、実施例1の配合・製法と同様にして、油脂分含量が45質量%、水分含量が51.1質量%であり、油相のSFCが10℃で58%、20℃で40%、40℃で5%であり、油相の融点は36℃であり、構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸の含有量が27質量%である本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物Iを得た。
得られた油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物Iを使用した以外は実施例1同様にして、本発明のイーストドーナツ生地I及び本発明のイーストドーナツIを得た。
【0073】
〔実施例10〕
実施例1で使用したエステル交換油脂Aに代えて、ヨウ素価(IV)が35であるパーム分別中融点部(融点34℃)を使用した以外は、実施例1の配合・製法と同様にして、油脂分含量が45質量%、水分含量が51.1質量%であり、油相のSFCが10℃で91%、20℃で80%、40℃で0%であり、油相の融点は33℃であり、構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸の含有量が1質量%である本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物Jを得た。
得られた油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物Jを使用した以外は実施例1と同様にして、本発明のイーストドーナツ生地J及び本発明のイーストドーナツJを得た。
【0074】
〔実施例11〕
実施例1で使用したエステル交換油脂Aの配合量を32質量%に変更し、水の配合量を61質量%に変更した以外は、実施例1の配合・製法と同様にして、油脂分含量が32質量%、水分含量が64.1質量%であり、油相のSFCが10℃で87%、20℃で77%、40℃で13%であり、油相の融点は43℃であり、構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸の含有量が36質量%である本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物Kを得た。
得られた油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物Kを使用した以外は実施例1同様にして、本発明のイーストドーナツ生地K及び本発明のイーストドーナツKを得た。
【0075】
〔実施例12〕
実施例1で使用したエステル交換油脂Aの配合量を58質量%に変更し、水の配合量を35質量%に変更した以外は、実施例1の配合・製法と同様にして、油脂分含量が58質量%、水分含量が38.1質量%であり、油相のSFCが10℃で87%、20℃で77%、40℃で13%であり、油相の融点は43℃であり、構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸の含有量が36質量%である本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物Lを得た。
得られた油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物Kを使用した以外は実施例1同様にして、本発明のイーストドーナツ生地L及び本発明のイーストドーナツLを得た。
【0076】
〔実施例13〕
実施例1で使用したクリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物5質量%を無添加に変更し、レシチン0.15質量%及びソルビタン脂肪酸エステル0.15質量%を油相に添加し、水の配合量を48質量%から52.7質量%に変更した以外は、実施例1の配合・製法と同様にして、油脂分含量が45質量%、水分含量が52.7質量%であり、油相のSFCが10℃で87%、20℃で77%、40℃で13%であり、油相の融点は43℃であり、構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸の含有量が36質量%である本発明の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物Mを得た。
得られた油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物Mを使用した以外は実施例1同様にして、本発明のイーストドーナツ生地M及び本発明のイーストドーナツMを得た。
【0077】
〔比較例1〕
実施例1で使用したエステル交換油脂Aに代えて、パーム油を使用した以外は、実施例1の配合・製法と同様にして、油脂分含量が45質量%、水分含量が51.1質量%であり、油相のSFCが10℃で50%、20℃で20%、40℃で3%であり、油相の融点は36℃であり、構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸の含有量が1質量%である比較例の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物Nを得た。
得られた油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物Nを使用した以外は実施例1同様にして、比較例のイーストドーナツ生地N及び比較例のイーストドーナツNを得た。
【0078】
〔比較例2〕
実施例1で使用したエステル交換油脂Aに代えて、ヨウ素価(IV)が57であるパームオレインを使用した以外は、実施例1の配合・製法と同様にして、油脂分含量が45質量%、水分含量が51.1質量%であり、油相のSFCが10℃で35%、20℃で5%、40℃で0%であり、油相の融点は25℃であり、構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸の含有量が1質量%である比較例の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物Oを得た。
得られた油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物Oを使用した以外は実施例1同様にして、比較例のイーストドーナツ生地O及び比較例のイーストドーナツOを得た。
【0079】
〔比較例3〕
実施例1で使用したエステル交換油脂Aに代えて、エステル交換油脂Eを使用した以外は、実施例1の配合・製法と同様にして、油脂分含量が45質量%、水分含量が51.1質量%であり、油相のSFCが10℃で43%、20℃で23%、40℃で5%であり、油相の融点は39℃であり、構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸の含有量が2質量%である比較例の油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物Pを得た。
得られた油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物Pを使用した以外は実施例1同様にして、比較例のイーストドーナツ生地P及び比較例のイーストドーナツPを得た。
【0080】
〔比較例4〕
実施例1で使用した油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物A30質量部を無添加とし、水38質量部を53質量部に変更した以外は実施例1同様にして、比較例のイーストドーナツ生地Q及び比較例のイーストドーナツQを得た。
【0081】
<評価方法及び評価基準>
得られたイーストドーナツA~Qの食感(口溶け、歯切れ)、風味、油性感、及び、体積について以下の基準に従って評価し、結果を表1に記載した。
【0082】
(食感、風味及び油性感)
油ちょう1日後のイーストドーナツについて、歯切れ、口溶け、風味、及び、油性感を、パネラー21名にて下記の基準にて評価し、その一番多かった評価を表1に記載した。なお同数の場合は一段上の評価とした。
【0083】
(歯切れ評価基準)
◎:歯切れがよい
○:やや歯切れがよい
△:歯切れが悪い
×:非常に歯切れが悪い
【0084】
(口溶け評価基準)
◎:非常に良好
○+:良好
○:やや良好
△:やや不良
×:不良
【0085】
(風味評価基準)
◎:非常に良好
○+:良好
○:やや良好
△:やや不良
×:不良
【0086】
(油性感評価基準)
◎:油性感が感じられず、非常に良好
○+:油性感がほとんど感じられず、良好
○:油性感がやや感じられるが、やや良好
△:油性感が強く、やや不良
×:油性感が極めて強く、不良
【0087】
(体積及び保型性評価基準)
焼成1日後のイーストドーナツについて、熟練したパネラーが目視にて下記の基準で体積及び保型性を評価した。
◎:十分な体積があり、腰もちがよく、非常に良好
○:十分な体積があり、良好
△:やや潰れており、不良である
×:潰れており、不良である
【0088】
【0089】
〔実施例14〕
<ケーキドーナツの配合及び製造法>
市販のホットケーキ用ミックス粉((株)ニップン ホットケーキミックスS600)200質量部、全卵(正味)70質量部、油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物A30を十分に混合しケーキドーナツ生地Aを得た。得られたケーキドーナツ生地Aは30分生地を寝かせたあと、デポジッターで吐出し、180℃に設定したフライヤーに入れ時々反転させながら2分間油ちょうし、ケーキドーナツAを得た。
ケーキドーナツAは、歯切れ、口溶け、風味、及び、油性感に優れたものであった。
【0090】
〔比較例5〕
実施例14で使用した油菓子練込用水中油型乳化油脂組成物A30質量部に代えて、生クリーム(油脂分含量が45質量%、水分含量が51.1質量%であり、油相のSFCが10℃で39%、20℃で16%、40℃で0%であり、油相の融点は32℃であり、構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸の含有量が22.6質量%である)30質量部を使用した以外は実施例14同様にして、比較例のケーキドーナツ生地B及び比較例のケーキドーナツBを得た。
【0091】
ケーキドーナツBは、風味は優れていたが、歯切れ、口溶け、及び、油性感はケーキドーナツAに比べて劣るものであった。