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特開2024-85065クロマイトを含む鉱石の含水率試験装置及び含水率測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085065
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】クロマイトを含む鉱石の含水率試験装置及び含水率測定方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 34/32 20060101AFI20240619BHJP
   C22B 23/00 20060101ALI20240619BHJP
   C22B 1/00 20060101ALI20240619BHJP
   G01N 33/24 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
C22B34/32
C22B23/00 102
C22B1/00 101
G01N33/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199391
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100200001
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 明彦
(72)【発明者】
【氏名】内田 勇太
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA08
4K001AA19
4K001BA02
4K001BA24
4K001CA09
4K001DB03
4K001DB14
(57)【要約】
【課題】湿式精錬で回収したクロマイトの含水率の変化挙動を、パイル状態で保管した状態と同等に、湿式精錬の現場において適時適切に試験、測定が実施できる含水率試験装置及び含水率測定方法を提供する。
【解決手段】ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法から副産物として産出するクロマイトを含む鉱石をパイル状に堆積させて水分を乾燥させる工程において、堆積物の各高さにおける含水率を推測するための含水率試験装置10であって、通水性を有する脱水用床11と、脱水用床11上に垂直方向に起立した配管12と、配管12の上端に設けられた密閉式の開閉蓋13とを備え、配管12の側面には、所定の間隔でサンプリング用穴14が設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法から副産物として産出するクロマイトを含む鉱石をパイル状に堆積させて水分を乾燥させる工程において、堆積物の各高さにおける含水率を推測するための含水率試験装置であって、
通水性を有する脱水用床と、
前記脱水用床上に垂直方向に起立した配管と、
前記配管の上端に設けられた密閉式の開閉蓋と
を備え、
前記配管の側面には、所定の間隔でサンプリング用穴が設けられていることを特徴とする、
クロマイトを含む鉱石の含水率試験装置。
【請求項2】
前記脱水用床は、流体のみが前記配管の自重方向に排出できる目開きサイズの空隙を有した床であることを特徴とする、
請求項1に記載のクロマイトを含む鉱石の含水率試験装置。
【請求項3】
前記配管の垂直方向の高さは、前記クロマイトを含む鉱石をパイル状に堆積したときの高さと同等であることを特徴とする、
請求項2に記載のクロマイトを含む鉱石の含水率試験装置。
【請求項4】
前記配管の径は、10~16インチサイズであることを特徴とする、
請求項3に記載のクロマイトを含む鉱石の含水率試験装置。
【請求項5】
前記サンプリング用穴の径は、15~45mmであることを特徴とする、
請求項4に記載のクロマイトを含む鉱石の含水率試験装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のクロマイトを含む鉱石の含水率試験装置を用いたクロマイトを含む鉱石の含水率測定方法であって、
ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法から副産物として産出する水分を含むクロマイトを含む鉱石を前記含水率試験装置に封入する工程と、
所定の時間間隔で、前記含水率試験装置に設けられた各サンプリング用穴からクロマイトを含む鉱石を抜き出し、その含水率を測定する工程と
を有することを特徴とする、
クロマイトを含む鉱石の含水率測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスで得られるクロマイトを含む鉱石(水分を含む)をパイル状に堆積させて脱水させるにあたり、鉱石の含水率を測定することで、パイル内の含水率を推測する含水率試験装置及び含水率測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄、銅、ニッケル、コバルト、クロム、マンガン等の鉱物資源において、採掘権の寡占化がますます進んでいることにより、金属製錬での原料コストが大幅に上昇している。このコストの大幅な上昇に対処するため、従来、製錬の対象にならなかった低品位鉱石を使用するための技術開発が行われている。
【0003】
例えばニッケル製錬では、高温高圧下において耐食性に優れた材料が開発されたこともあり、ニッケル酸化鉱石を硫酸で加圧下に酸浸出する高圧酸浸出(HPAL:High Pressure Acid Leach)法に基づく湿式製錬方法が注目されている。
【0004】
この高圧酸浸出法は、従来の一般的なニッケル酸化鉱石の製錬方法である乾式製錬法と異なり、還元工程、乾燥工程等の乾式工程を有さないため、エネルギーコスト的に有利であり、今後も低品位ニッケル酸化鉱石(以下、単に「鉱石」ともいう)の製錬方法として有力な技術となる。
【0005】
ところで、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法では、原料鉱石にクロマイトが含まれていることが多い。このようなクロマイト鉱石は、ニッケルをほとんど含有していない成分であり、クロマイトを含有する鉱石スラリーを、酸浸出処理に供するために配管やポンプ等の設備を用いて移送すると、それら設備を著しく磨耗させることが知られており、設備のメンテナンスや操業効率に大きな影響を及ぼす。
【0006】
このことから、酸浸出処理に供する鉱石スラリーとしては、その酸浸出処理に先立ってクロマイト分を分離除去したものを用いることが望ましく、分離回収されたクロマイトは製品として別途出荷される。
【0007】
クロマイトはバルク中の含水率がある値以上になると、外部衝撃によって流動化を発生することが知られており、この流動化は船舶によるバルク運搬を行う際、航海中の積載バルクの崩壊、荷の偏りを船舶上で発生させ、船舶を不安定にさせるため、安全上の視点から防ぐ必要がある。そのため、製品として回収されたクロマイトを出荷する際には、流動化を発生する含水率未満の状態で製品出荷することが求められる。
【0008】
例えば、日本海事検定協会の調査結果では、クロマイトの運送許容水分値(Transportable Moisture Limit:TML)としては7%以下となっている。したがって、商業的にクロマイト回収し、船舶で出荷する事を計画する場合、クロマイトを湿式精錬法で回収の後、脱水及び乾燥のため、製品倉庫内にて流動化含水率未満となる期間まで保管される。
【0009】
例えば、特許文献1には、クロマイトに対する脱水処理の方法として、過熱蒸気方式を用いた脱水処理が記載されている。過熱蒸気方式による脱水処理は、被脱水物と過熱蒸気とを接触させて、過熱蒸気により被脱水物を加熱し、同時に被脱水物中の水分を過熱蒸気中に取り込んで脱水乾燥させるというものである。このような過熱蒸気方式による脱水処理により、クロマイトを含む残渣の水分含有率を、1回の脱水処理操作によって7%以下にすることができる。
【0010】
しかしながら、過熱蒸気方式を用いた場合、電力や蒸気を用意するためのユーティリティー付帯設備を設ける必要があり、また、それら設備を運転するためのコストが問題となる。
【0011】
このような問題に対応するために、特許文献2には、水分を含むクロマイトを含む鉱石を脱水用床上にパイル状に堆積させることで、電力等による熱エネルギーを使用することなく、クロマイトを含む鉱石に含まれる水分を、重力による圧密及びその透水床による重力方向への透水によって効果的に除去することができ、所望とする含水率となるまで効率的に脱水することができることが開示されている。
【0012】
一方で、特許文献2に記載の方法では、バルクの含水率変化はバルクの保管状態の環境、すなわち気温、湿度、風速、天候に大きく依存し、それら外部要因を除いた状態で比較的再現性ある標準化した試験方法で、含水率変化を測定し、生産から出荷までの保管期間を予測し、計画することが必須となる。
【0013】
更に、クロマイトをパイル状態で保管する際、積載するバルクはおよそ5m以上と、含水率の変化は、その積載したパイルの高さ方向、深さ方向の違いによって異なった挙動を示す。パイルの表層及び上層部は、比較的早く含水率が低下し、これ以上下がりにくいある一定値に達する。一方でパイル下層や中心部などは、含水率は高い状態を維持し、長い時間を掛けて緩やかに減少することが分かっている。以上の背景を踏まえ、標準化した試験雰囲気下で、高さ方向(深さ方向)による含水率を推測できる測定方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2017-52992号公報
【特許文献2】特開2018-12087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、湿式精錬で回収したクロマイトの含水率の変化挙動を、パイル状態で保管した状態と同等に、湿式精錬の現場において適時適切に試験、測定が実施できる含水率試験装置及び含水率測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、配管を垂直方向に起立させ、その配管内部にクロマイトを含む鉱石を均一に封入し、配管内をクロマイトに付着した水が自重で床の空隙を抜け流れ落ちるように設置することで、湿式精錬で回収したクロマイトの含水率の変化挙動を測定できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明の一態様は、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法から副産物として産出するクロマイトを含む鉱石をパイル状に堆積させて水分を乾燥させる工程において、堆積物の各高さにおける含水率を推測するための含水率試験装置であって、通水性を有する脱水用床と、脱水用床上に垂直方向に起立した配管と、配管の上端に設けられた密閉式の開閉蓋とを備え、配管の側面には、所定の間隔でサンプリング用穴が設けられていることを特徴とする。
【0018】
本発明の一態様によれば、垂直方向に起立した配管内にクロマイトを含む鉱石を均一に封入でき、所定の間隔で設けられたサンプリング用穴から鉱石を抜き出して含水率を測定できるため、適時適切に含水率の試験、測定を実施することができる。
【0019】
このとき、本発明の一態様では、脱水用床は、流体のみが配管の自重方向に排出できる目開きサイズの空隙を有した床であるとしてもよい。
【0020】
このようにすることで、配管内に封入したクロマイトを含む鉱石が排出されてしまうのを防止しながら水分のみを排出することができる。
【0021】
また、本発明の一態様では、配管の垂直方向の高さは、クロマイトを含む鉱石をパイル状に堆積したときの高さと同等であるとしてもよい。
【0022】
このようにすることで、パイル状に堆積されたクロマイトを含む鉱石と同様の状況を配管内で再現することができる。
【0023】
また、本発明の一態様では、配管の径は、10~16インチサイズ(本明細書中において「~」は、下限以上、上限以下を意味するものとする。以下同じ)であるとしてもよい。
【0024】
数メートルの長さの配管を垂直方向に起立させて、内部にクロマイトを含む鉱石を封入するため、強度や扱いやすさの点から配管の径は上記数値範囲とすることが好ましい。
【0025】
また、本発明の一態様では、サンプリング用穴の径は、15~45mmとすることができる。
【0026】
含水率の測定に必要な量を採取する観点から、サンプリング用穴の径を上記数値範囲とすることが好ましい。
【0027】
本発明の他の態様は、上述したクロマイトを含む鉱石の含水率試験装置を用いたクロマイトを含む鉱石の含水率測定方法であって、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法から副産物として産出する水分を含むクロマイトを含む鉱石を含水率試験装置に封入する工程と、所定の時間間隔で、含水率試験装置に設けられた各サンプリング用穴からクロマイトを含む鉱石を抜き出し、その含水率を測定する工程とを有することを特徴とする。
【0028】
本発明の他の態様によれば、上述した含水率試験装置を用いて、所定の間隔で設けられたサンプリング用穴から鉱石を抜き出して含水率を測定することにより、適時適切に含水率の試験、測定を実施することができる。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように本発明に係るクロマイトを含む鉱石の含水率試験装置を使用することで、ニッケル酸化鉱石の湿式精錬において生産したクロマイトの含水率を、外部環境の気温、湿度、風速、天候等の影響を限りなく最小限にし、標準的な状態でその含水率の時間経過観察を行う事ができる。
【0030】
また、本発明に係るクロマイトを含む鉱石の含水率試験装置を使用することで、湿式精錬で回収したクロマイトの含水率の変化挙動を、湿式精錬の現場において適時適切(タイムリー)に自由に試験、測定が実施できる。
【0031】
また、製品として保管中のクロマイトの含水率変化は積載したパイルの高さ方向のレベルによって異なるが、本発明を適用することにより、高さ方向での含水率の変化の違いを測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】ニッケル酸化鉱石の分級処理の一例を示した工程図である。
図2】クロマイト鉱石を脱水用床上にパイル状に堆積する一例を示した断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る含水率試験装置を示す概略図である。
図4】本発明の一実施形態に係る含水率測定方法におけるプロセスの概略を示す工程図である。
図5】本発明の一実施形態に係る含水率試験装置を適用した際の高さ4.5m地点での含水率と時間の関係を示したグラフである。
図6】本発明の一実施形態に係る含水率試験装置を適用した際の高さ4.0m地点での含水率と時間の関係を示したグラフである。
図7】本発明の一実施形態に係る含水率試験装置を適用した際の高さ3.5m地点での含水率と時間の関係を示したグラフである。
図8】本発明の一実施形態に係る含水率試験装置を適用した際の高さ3.0m地点での含水率と時間の関係を示したグラフである。
図9】本発明の一実施形態に係る含水率試験装置を適用した際の高さ2.5m地点での含水率と時間の関係を示したグラフである。
図10】本発明の一実施形態に係る含水率試験装置を適用した際の高さ2.0m地点での含水率と時間の関係を示したグラフである。
図11】本発明の一実施形態に係る含水率試験装置を適用した際の高さ1.5m地点での含水率と時間の関係を示したグラフである。
図12】本発明の一実施形態に係る含水率試験装置を適用した際の高さ1.0m地点での含水率と時間の関係を示したグラフである。
図13】本発明の一実施形態に係る含水率試験装置を適用した際の高さ0.5m地点での含水率と時間の関係を示したグラフである。
図14】比較例におけるパイル高さ5cm地点での含水率と時間の関係を示したグラフである。
図15】比較例におけるパイル高さ35cm地点での含水率と時間の関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の好適な実施の形態について、以下の順序で図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
1.鉱石の分級工程
2.クロマイトの脱水処理
3.含水率試験装置
4.含水率測定方法
【0034】
<1.鉱石の分級工程>
先ず、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにおいて、本発明の対象であるクロマイトを含む鉱石が得られる工程について説明する。
【0035】
ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにおいて処理される原料となるニッケル酸化鉱石は、主としてリモナイト鉱及びサプロライト鉱等のいわゆるラテライト鉱である。ラテライト鉱のニッケル含有量は、通常、0.8~2.5重量%であり、ニッケルは水酸化物、又は含水ケイ苦土(ケイ酸マグネシウム)鉱物として含有されている。また、鉄の含有量は、10~50重量%であり、主として3価の水酸化物(ゲーサイト)の形態であるが、一部2価の鉄が含水ケイ苦土鉱物等に含有される。
【0036】
さらに、ラテライト鉱においてはクロムが含まれており、そのクロム分の多くは、鉄又はマグネシウムを含むクロマイト鉱物として、例えば1~5重量%程度含有されている。また、マグネシア分は、含水ケイ苦土鉱物のほか、未風化で硬度が高いニッケルをほとんど含有しないケイ苦土鉱物に含有される。珪酸分は、石英、クリストバライト(無定形シリカ)等のシリカ鉱物及び含水ケイ苦土鉱物に含有されている。このように、ラテライト鉱において含有される、クロマイト鉱物、ケイ苦土鉱物、及びシリカ鉱物は、ニッケルをほとんど含有していない、いわゆる脈石成分である。
【0037】
ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにおいて、主としてラテライト鉱である原料のニッケル酸化鉱石は、鉱石粒度の調整が行われた後に水と混合されて鉱石スラリーとして調製されるが、ニッケル酸化鉱石には上述のようにクロマイトが含まれている。このようなクロマイトを含有する鉱石スラリーを、酸浸出処理に供するために配管やポンプ等の設備を用いて移送すると、それら設備を著しく磨耗させることが知られており、設備のメンテナンスや操業効率に大きな影響を及ぼす。このことから、酸浸出処理に供する鉱石スラリーとしては、その酸浸出処理に先立ってクロマイト分を分離除去したものを用いることが望ましい。
【0038】
図1は、ニッケル酸化鉱石の分級処理の一例を示した工程図である。低品位ニッケル酸化鉱石からニッケルを回収する高圧硫酸浸出(HPAL)に基づく湿式製錬プロセスでは、原料であるニッケル原料鉱石が鉱山から運搬、供給されるが、その中の大粒径鉱石は酸による浸出率も低いため除去する必要がある。その為、HPALプラントにニッケル原料鉱石を調整するニッケル原料調整工程では大粒径鉱石を除去するため、洗浄、および篩別装置が設置されている。
【0039】
洗浄および篩別装置としては、先ず大粒径鉱石を除去するドラムとトロンメルから構成されるドラムウォッシャーS1が使用される。ドラムは、ニッケル酸化鉱石を解砕し、レパルプして(解きほぐして)鉱石スラリーとする機能を有する。ドラムのトロンメルとの連結側には、回収羽根が設けられ、鉱石スラリーに含まれる鉱石をドラム内から掻き揚げ、トロンメルの側へと送る。そして、トロンメルは、鉱石スラリーに含まれる鉱石を篩別する機能を有する。
【0040】
このように、ドラムウォッシャーS1では、ドラムの入口側(上流側)に設けられた投入口から水およびニッケル酸化鉱石を供給し、ドラム内において大粒径鉱石から必要なニッケル原料鉱石を水でスラリー状にして、大型分級装置であるトロンメルに送り、このトロンメルのスクリーンで鉱石スラリーに含まれる粒径25mm以上の鉱石を除去する。
【0041】
ドラムウォッシャーS1で粒径25mm以上の鉱石は除去され、分級された粒径25mm以下の鉱石は、鉱石装入用シュートを通って、振動篩装置S2(振動スクリーン)へと送られる。振動篩装置S2のスクリーンは、網等の表裏を貫通する孔が設けられたシート状や板状の部材で構成され、その上面に鉱石が供給されると、所定の大きさよりも小さい鉱石はスクリーンの孔を通過して下方に落下し、下部シュートを介して次工程へと送られる。一方で、所定の大きさよりも大きい鉱石はスクリーン上に残留し、他端側に設けられたオーバーサイズ排出コンベアへと送られる。ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法では、振動篩装置S2を介することで粒径約2mm以下の鉱石が次工程へと送られる。
【0042】
原料のニッケル酸化鉱石の粒度調整を行って得られた、例えば2mm以下の鉱石スラリーに対して、次にハイドロサイクロンS3を用いて所定の分級粒度(分級点)で分級処理を施し、粗粒部と細粒部とに分級する。すると、ハイドロサイクロンのアンダーフローとして分離される粗粒部にクロマイトを含む混合物が得られ、オーバーフローとして分離される細粒部に鉄を含有するゲーサイト等を含む混合物を得ることができる。これにより、第1段階として、鉱石スラリーからクロマイトを分離することができる。
【0043】
一般的に、クロマイトの比重はゲーサイト等の水酸化鉄の比重よりも大きい。そのため、分級装置としてハイドロサイクロンS3を使用することによって、その鉱石スラリーを粒度に基づき、アンダーフローとしてクロマイトを含む混合物を、オーバーフローとしてゲーサイトを含む混合物を、精度良く分離することができる。また、ハイドロサイクロンS3は、大量の鉱石スラリーの処理に適しており、オーバーフローへの分配が多い場合の処理に適している。なお、ハイドロサイクロンS3は、1段のみでもよく、2段以上の複数段を備えるようにしてもよい。
【0044】
次に、上記ハイドロサイクロンS3によりアンダーフローとして分離したクロマイトを含む混合物に対して、所定の比重分離装置S4を使用して比重分離処理を行い、そのクロマイトを含む混合物に含まれるゲーサイトを分離してクロマイトを濃縮させた混合物を得る。
【0045】
ハイドロサイクロンS3にてアンダーフローとして分級分離したクロマイトを含む混合物には、主として、クロマイトが含まれているが、一部ゲーサイトも含まれている。このようなクロマイトを含む混合物に対して比重分離装置S4により比重分離処理を施すことによって、さらにゲーサイトとクロマイトとを効果的に分離することができ、クロマイトをさらに濃縮することができる。
【0046】
比重分離装置S4としては、一例として、スパイラルコンセントレーターを少なくとも1段使用する。また、この比重分離処理では、少なくともスパイラルコンセントレーターを1段と、さらに、シェーキングテーブル、デンシティーセパレーター、及びスパイラルコンセントレーターから選択される1段以上を使用して処理することが好ましい。その中でも特に、スパイラルコンセントレーターを1段と、大量処理に適したデンシティーセパレーターでの処理を組み合わせることが好ましい。
【0047】
上述した分級処理は一例であり、これらの分級方法に限定されるものではない。なお、各装置の構成や具体的な条件に関しては、例えば、上述した特許文献1を参照することができる。
【0048】
このようにして分級されたゲーサイトを含む鉱石については、鉱石のスラリーに高温高圧下で硫酸を添加し浸出スラリーを形成する浸出工程、浸出スラリーを多段洗浄してニッケル及びコバルトを含む浸出液と浸出残渣を得る固液分離工程、浸出液の酸化を抑制しながら炭酸カルシウムを添加し3価の鉄を含む中和澱物スラリーとニッケル回収用母液を形成する中和工程、母液に硫化水素ガスを添加することにより亜鉛及び銅を含む混合硫化物を形成し混合硫化物を分離する脱亜鉛工程、及び、脱亜鉛終液にさらに硫化水素ガスを吹きこみ硫化物と貧液を形成する硫化工程などを経て、ニッケル・コバルト混合硫化物を得る湿式製錬プロセスへと送られる。
【0049】
一方で、分離濃縮されたクロマイトは船舶等で搬送され出荷されるが、水を含んだスラリー状となっているため、脱水処理を施す必要がある。次に、クロマイトの脱水処理について説明する。
【0050】
<2.クロマイトの脱水処理>
鉱石の脱水処理としては、天日干し、加熱・焙焼法、フィルタープレス法、遠心分離法等の方法が挙げられるが、電力等のエネルギーを使用する必要がないという点から、クロマイト鉱石を脱水用床上にパイル状(山状)に堆積させて自重により脱水・乾燥させる処理が好ましい。
【0051】
図2は、クロマイト鉱石を脱水用床上にパイル状に堆積する一例を示した断面図である。図2に示すように、脱水用床100は、例えば舗装されたコンクリート150上に、下層から順に、所定の粒子径を有する砂111により構成される第1層110と、第1層110を構成する砂111よりも粒子径の大きい礫121により構成される第2層120と、が積層されている。また、脱水用床100においては、第1層110の中に、複数の孔が設けられたパイプ112が埋設されている。さらに、好ましくは、第2層120の上に、クロマイト鉱石Cと同じ物質から構成される第3層130をさらに積層した構造とすることができる。
【0052】
このような構成からなる脱水用床100は、空隙をもった透水性を有する床(透水床)となる。脱水用床100は、例えば、舗装されたコンクリート150の上に置かれて用いられ、クロマイト鉱石Cを堆積させていくことで、その堆積したクロマイト鉱石Cから圧密作用により水分が搾り取られて、脱水用床100における重力方向に透水するようになり、徐々にクロマイト鉱石Cから水分が除去されていく。そして、脱水用床100内を透水して重力方向に移動した水分は、第1層110の内部に埋設したパイプ112内に取り込まれ、そのパイプ112内を通って所定の箇所で回収される。このように、脱水用床100によれば、電力等のエネルギーを使用することなく、脱水目的物質を堆積させるという簡易な操作で、水分を効率的に取り除くことができる。
【0053】
また、好ましくは、第2層120の上に、クロマイト鉱石Cと同じ物質により構成される第3層130をさらに積層した構造とすることで、第2層120を構成する礫121や第1層110を構成する砂111が掘り起こされて、クロマイト鉱石Cに混ざり合ってしまうことを防ぐことができる。すなわち、所望とする含水率となるまで脱水されたクロマイト鉱石Cを回収する際には、例えばホイールローダーやショベルカー等の重機を使用し掘削することで行われるが、最上層に、クロマイト鉱石Cと同じ物質からなる第3層130を設けることで、その第3層130が緩衝層として作用して、回収する脱水対象物質に第2層120を構成する礫が混ざり合ってしまうことを防ぐことができる。なお、第3層130は、第2層120の上面全体を覆うようにすることが望ましい。このとき、第2層120と第3層130の構成物が交じり合わないように、第2層120の上面にワイヤーメッシュ140を設けてもよい。
【0054】
脱水用床100は、例えば屋根付き倉庫などに設けることが望ましい。屋根付きの設備内にもうけることで、降雨などによりパイル状に堆積したクロマイト鉱石Cが再度含水してしまう状況を防止することができる。
【0055】
クロマイトを主成分とする鉱石は、その粒子径が100μm~1mm程度の範囲であり、湿式製錬プロセスから物理分離によって得ることができ、分離直後の重量含水率はおよそ12%~15%程度である。なお、そのクロマイトを主成分とする鉱石では、一般的に、その含水率を7%~8%程度にまで減少させることが必要となっている。本発明に係る含水率試験装置及び含水率測定方法は、このような状況下で、パイル状のクロマイト鉱石内の含水率を推測することを可能にしたものである。
【0056】
<3.含水率試験装置>
次に、本発明に係る含水率試験装置について説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る含水率試験装置を示す概略図である。本発明の一態様は、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法から副産物として産出するクロマイトを含む鉱石をパイル状に堆積させて水分を乾燥させる工程において、堆積物の各高さにおける含水率を推測するための含水率試験装置10であって、通水性を有する脱水用床11と、脱水用床11上に垂直方向に起立した配管12と、配管12の上端に設けられた密閉式の開閉蓋13とを備え、配管12の側面には、所定の間隔でサンプリング用穴14が設けられていることを特徴とする。
【0057】
脱水用床11は、通水性を有する部材で構成され、流体のみが配管の自重方向に排出できる目開きサイズの空隙を有した床であることが好ましい。すなわち、配管12内に封入したクロマイトを含む鉱石が排出されてしまうのを防止しながら水分のみを排出することができるものが好ましい。一例として、目開きが10mm~100mm程度のメッシュ状の部材や樹脂製のパレットなどを用いることができる。
【0058】
配管12は、垂直方向に起立させて内部にクロマイトを含む鉱石を充填するための部材である。配管12の素材は金属製やコンクリート製等、特に限定はされないが、数メートルの長さの配管を起立させて内部にクロマイトを含む鉱石を充填した際に鉱石の自重で破損しない程度の強度を有している必要がある。配管12を起立させる際には、配管12の周囲に必要に応じて適宜、骨組みや足場が形成される。
【0059】
配管12の長さh(垂直方向に起立させた時の高さ)は、クロマイトを含む鉱石をパイル状に堆積したときの高さH(図2参照)と同等であることが好ましい。パイル状に堆積されたクロマイトを含む鉱石の高さHはおよそ0~6mであるため、配管12の長さ(高さ)hも0~6mとなる。両者の高さを同等(H≒h)とすることで、パイル状に堆積されたクロマイトを含む鉱石と同様の状況を本発明の一実施形態に係る含水率試験装置10の配管12内で再現することができ、パイル状に堆積されたクロマイトを含む鉱石の各高さでの含水率を推測することができる。
【0060】
また、配管12の径は、10~16インチサイズ(約254mm~406mm)とすることが好ましい。数メートルの長さの配管12を垂直方向に起立させて、内部にクロマイトを含む鉱石を封入するため、強度や扱いやすさの点から配管の径は上記数値範囲とすることが好ましい。配管12の径が10インチ未満の場合には、配管12を垂直方向に起立させた際に不安定となってしまう。また、配管の径が16インチを超える場合には、含水率試験装置10の配管12内に充填するクロマイトを含む鉱石の量が不必要に多くなってしまうため、経済的に望ましくない。
【0061】
開閉蓋13は、配管12内部を密閉するために配管12の上端に設けられる。開閉蓋13は、含水率試験装置10を屋外に設置するような場合に、内部のクロマイトを含む鉱石が外気や雨水の影響を受けないようにするためのものである。開閉蓋13は、配管12と略同径の蓋部材を上端に設置してもよいし、蓋部材の代わりにシート状の物を被せて粘着テープで密閉固定するといった簡易なものでも良い。
【0062】
サンプリング用穴14は、配管12の側面に設けられた穴であり、この場所から配管12内部に充填されたクロマイトを含む鉱石を採取するためのものである。サンプリング用穴14は、パイル状に堆積されたクロマイトを含む鉱石における、含水率を推測したい地点と同じ高さに所定の間隔iで設けることが好ましい。一例として、配管12の下端から1m間隔で、1m、2m、3m、4m、5mの箇所にサンプリング用穴14を設けて計測すれば、パイル状に堆積されたクロマイトを含む鉱石における、地面から1m、2m、3m、4m、5mの各地点の含水率を推測することができる。サンプリング用穴14の所定の間隔iとしては、50cm~1mの間隔とすることができる。所定の間隔iは等間隔でもよいし異なっていてもよい。
【0063】
サンプリング用穴14の径は、15~45mmとすることが好ましい。径が15mm未満の場合には、鉱石採取用(サンプリング用)の器具を挿入することが困難になる。また、径が45mmを超える場合には、穴からこぼれ出る鉱石の量が多くなる恐れがある。したがって、含水率の測定に必要な量を採取する観点から、サンプリング用穴14の径は上記数値範囲とすることが好ましい。なお、サンプリング用穴14は、サンプリングを行う際以外には鉱石が漏れ出ないように粘着テープ等で塞いでおくことが好ましい。
【0064】
<4.含水率測定方法>
次に、本発明に係る含水率測定方法について説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る含水率測定方法におけるプロセスの概略を示す工程図である。本発明の一態様は、上述したクロマイトを含む鉱石の含水率試験装置を用いたクロマイトを含む鉱石の含水率測定方法であって、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法から副産物として産出する水分を含むクロマイトを含む鉱石を含水率試験装置に封入する工程S11と、所定の時間間隔で、含水率試験装置に設けられた各サンプリング用穴からクロマイトを含む鉱石を抜き出し、その含水率を測定する工程S12とを有することを特徴とする。
【0065】
工程S11では、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法から副産物として産出する水分を含むクロマイトを含む鉱石を含水率試験装置に封入する。なお、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法からクロマイトを含む鉱石が分級されるプロセスについては<1.鉱石の分級工程>で説明した通りである。含水率試験装置の配管内にクロマイトを含む鉱石を装入してから配管を垂直方向に起立させてもよいし、配管を垂直方向に起立させてからクロマイトを含む鉱石を投入してもよい。一例として、骨組み及び足場を形成した場所に配管を垂直方向に起立させ、作業者が直接又は重機等を用いて配管の上端からクロマイトを含む鉱石を投入することができる。
【0066】
工程S12では、所定の時間間隔で、含水率試験装置に設けられた各サンプリング用穴からクロマイトを含む鉱石を抜き出し、その含水率を測定する。所定の時間間隔は特に限定されないが、例えば、4~48時間の間隔とすることが出来る。これらの間隔は等間隔でもよいし異なっていてもよい。
【0067】
含水率の測定方法も特に限定はされないが、例えば、オーブン法を用いることができる。一例として、50~100g程度の鉱石サンプルを含水率試験装置に設けられた各サンプリング用穴から抜き出し、重量を測定した後、乾燥させ、再度重量を測定する。そして、乾燥前後の重量の差から含水率を算出することができる。
【0068】
このように、本発明に係る含水率試験装置を用いて各高さでの含水率を測定することにより、パイル状に堆積されたクロマイトを含む鉱石が出荷可能であるか否かを判断することができる。例えば、含水率試験装置において、下端から5mの高さでサンプリングした鉱石の含水率がクロマイトの運送許容水分値(TML)である7%以下となっていることが確認できれば、少なくともパイル状に堆積されたクロマイトを含む鉱石の高さ5mの部分は出荷可能であると推測することができる。
【0069】
以上説明したように、本発明によれば、クロマイトを含む鉱石の含水率試験装置を使用することで、ニッケル酸化鉱石の湿式精錬において生産したクロマイトの含水率を、外部環境の気温、湿度、風速、天候等の影響を限りなく最小限にし、標準的な状態でその含水率の適時適切(タイムリー)に測定することができる。
【実施例0070】
以下、本発明について、実施例および比較例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0071】
(実施例)
実施例として、ニッケル酸化鉱石の湿式精錬法で分級され、精製したクロマイトの含水率を、製品最終工程の含水率と同じ値である14%に調整した後、12インチ配管にΦ30mmサンプリングの穴を数か所設けた配管を垂直に建てた本発明の一態様に係る含水率試験装置を作成し、その装置にクロマイトを詰めた。
【0072】
垂直に立てた含水率試験装置の配管の底部には、水が配管の外に排出できるような目の大きさ50mm×50mmの四角形の空隙を有した床を配置した。なお、配管の上下は解放しており、上側はシートを被せ、外気や雨水が入らない様に、粘着テープで密閉固定した。また配管側面部に開いたサンプリングの穴も、同様にして粘着テープで塞ぎ、サンプリングを行う際以外は、クロマイトが漏れ出さない様にしっかりと塞いた。その状態で24時間間隔で、各サンプリングの穴から、クロマイトを50g程抜きその含水率をオーブン法を用いて測定した。
【0073】
なお、試験条件は以下のとおりである。
[試験条件]
外気温:(温度15℃~35℃)
試験期間:1000時間
試験場所:屋外(試験期間中は降雨や強い日照期間有り)
【0074】
本発明の一態様に係る含水率試験装置での各高さ位置での測定時間と含水率の測定結果を図5から図13に示す。本発明に係る含水率試験装置を使用した含水率測定方法は、天候などの自然環境に影響を受ける事無く、含水率の変化を時間おきに測定できることが確認された。
【0075】
(比較例)
比較例として、平坦な屋外に於いて高さ70cmのクロマイトのパイルを作成し、パイル中のクロマイトを24時間間隔でサンプリングし、含水率をオーブン法を用いて測定した。
【0076】
なお、試験条件は以下のとおりである。
[試験条件]
外気温:(温度15℃~35℃)
試験期間:450時間
試験場所:屋外(試験期間中は降雨や強い日照期間有り)
サンプリング:パイル中心部の高さ5cm、35cmの位置
パイルに横から、パイプを差し込んでサンプリングを実施した。
【0077】
比較例におけるパイル高さ5cm地点と35cm地点での含水率と時間の関係を示したグラフを図14図15に示す。6日目に降雨があり、屋外にパイルしたクロマイトは、天候によってその含水率の挙動は大きく変化し、含水率が上昇する事を確認した。
【0078】
実施例の結果から、出荷前のクロマイトのパイルは、屋根付き倉庫で保管を行い、本発明に係るクロマイトを含む鉱石の含水率試験装置を用いることで、船舶でバルク出荷できる含水率(TML)まで下がるのを確認後、船舶に詰め替えを行うことで、安全に船舶によるバルク運搬が可能となることが確認できた。
【0079】
なお、上記のように本発明の一実施形態および各実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0080】
例えば、明細書または図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書または図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、クロマイトを含む鉱石の含水率試験装置及び含水率測定方法の構成も本発明の一実施形態および各実施例で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0081】
10 含水率試験装置、11 脱水用床、12 配管、13 開閉蓋、14 サンプリング用穴、100 脱水用床、110 第1層、111 砂、112 パイプ、120第2層、121 礫、130 第3層、140 ワイヤーメッシュ、150 コンクリート、C クロマイト鉱石、i サンプリング用穴の間隔、S1 ドラムウォッシャー、S2 振動篩装置、S3 ハイドロサイクロン、S4 比重分離装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15