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特開2024-85114スイッチング電源装置及びスイッチング制御回路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085114
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置及びスイッチング制御回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20240619BHJP
【FI】
H02M3/155 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199467
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】横田 猛昭
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS04
5H730AS05
5H730BB13
5H730BB14
5H730DD04
5H730EE59
5H730FD01
5H730FF02
5H730FG05
5H730FG11
(57)【要約】
【課題】電力効率を改善したスイッチング電源装置及びスイッチング制御回路を提供する。
【解決手段】エラーアンプが、帰還信号Vfbと基準電圧Vrefとの誤差信号Verr1を出力する。PWM制御回路25が、誤差信号Verr1に応じたデューティ比のPWM信号VpwmをトランジスタM1に対して出力する。帰還信号Vfbを出力する電圧検出用抵抗R1,R2にトランジスタM2を直列接続させる。サンプルホールド回路22が、トランジスタM2がオンのときに誤差信号Verr1をサンプリングし、トランジスタM2がオフのときに誤差信号Verr1をホールドしてPWM制御回路25に出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧を昇圧または降圧した出力電圧を出力するためのコイルと、
前記コイルに供給される前記入力電圧をオンオフするトランジスタと、
前記出力電圧を分圧して帰還信号を出力する電圧検出用抵抗と、
前記帰還信号と基準電圧との誤差信号を出力するエラーアンプと、
前記誤差信号に応じたデューティ比のPWM信号を前記トランジスタに対して出力するPWM制御回路とを備えた
スイッチング電源装置であって、
前記電圧検出用抵抗に直列接続されたスイッチと、
前記スイッチがオンのときに前記誤差信号をサンプリングし、前記スイッチがオフのときに前記誤差信号をホールドして、前記PWM制御回路に出力する、または、前記スイッチがオンのときに前記帰還信号をサンプリングし、前記スイッチがオフのときに前記帰還信号をホールドして、前記エラーアンプに出力するサンプルホールド回路とをさらに備えた
スイッチング電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチング電源装置において、
前記PWM制御回路の入力に接続された位相補償容量と、
前記帰還信号が前記基準電圧を含む一定範囲から外れたことを検出すると前記位相補償容量を充電または放電する充放電回路とを有する、
スイッチング電源装置。
【請求項3】
請求項2に記載のスイッチング電源装置において、
前記充放電回路は、
前記位相補償容量を充電する第1の電流源と、
前記位相補償容量を放電する第2の電流源と、
前記帰還信号と前記一定範囲の上限値とを比較し、比較結果を出力する第1のコンパレータと、
前記第1のコンパレータから前記帰還信号が前記上限値を越えたことを示す比較結果が出力されると、リセット信号が入力されるまで前記第1の電流源及び前記第2の電流源の一方を前記位相補償容量に接続する信号の出力を保持する第1のラッチ回路と、
前記帰還信号と前記一定範囲の下限値とを比較し、比較結果を出力する第2のコンパレータと、
前記第2のコンパレータから前記帰還信号が前記下限値を下回ったことを示す比較結果が出力されると、前記リセット信号が入力されるまで前記第1の電流源及び前記第2の電流源の他方を前記位相補償容量に接続する信号の出力を保持する第2のラッチ回路とを有し、
前記リセット信号は、前記スイッチのオンオフ周期に同期している、
スイッチング電源装置。
【請求項4】
入力電圧を昇圧または降圧した出力電圧を出力するためのコイルに供給される入力電圧をオンオフするトランジスタを制御するスイッチング制御回路であって、
前記出力電圧を分圧する電圧検出用抵抗から出力された帰還信号と基準電圧との誤差信号を出力するエラーアンプと、
前記誤差信号に応じたデューティ比のPWM信号を前記トランジスタに対して出力するPWM制御回路と、
前記電圧検出用抵抗に直列接続されたスイッチがオンのときに前記誤差信号をサンプリングし、前記スイッチがオフのときに前記誤差信号をホールドして、前記PWM制御回路に出力する、または、前記スイッチがオンのときに前記帰還信号をサンプリングし、前記
スイッチがオフのときに前記帰還信号をホールドして、前記エラーアンプに出力するサンプルホールド回路とを備えた
スイッチング制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源装置及びスイッチング制御回路、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スイッチング電源装置100は、図5に示すように、トランジスタM1をオンオフすることにより、コイルLに間欠的に入力電圧VINを供給し、入力電圧VINを降圧した出力電圧VOUTとして出力する(特許文献1)。スイッチング電源装置100においては、エラーアンプ21が出力電圧VOUTに応じた帰還信号と基準電圧の誤差信号を出力し、PWM制御回路25が誤差信号に応じたデューティのPWM信号をトランジスタM1のゲートに出力している。これにより、出力電圧VOUTが所望の電圧となるようにフィードバック制御することができる。
【0003】
上述したスイッチング電源装置100によれば、帰還信号は、出力電圧VOUTを電圧検出用抵抗R1,R2で分圧した電圧であり、電圧検出用抵抗R1,R2には出力電圧VOUTから電圧検出用抵抗R1,R2の抵抗値に応じた電流が常に消費される。電圧検出用抵抗R1,R2で消費される電流は、スイッチング電源装置100の電力効率を下げることになり、特に負荷電流が少ない軽負荷時には効率の悪化が顕著となる、という課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-158720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電力効率を改善したスイッチング電源装置及びスイッチング制御回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係るスイッチング電源装置及びスイッチング制御回路は、下記の[1]~[4]を特徴としている。
[1]
入力電圧を昇圧または降圧した出力電圧を出力するためのコイルと、
前記コイルに供給される前記入力電圧をオンオフするトランジスタと、
前記出力電圧を分圧して帰還信号を出力する電圧検出用抵抗と、
前記帰還信号と基準電圧との誤差信号を出力するエラーアンプと、
前記誤差信号に応じたデューティ比のPWM信号を前記トランジスタに対して出力するPWM制御回路とを備えた
スイッチング電源装置であって、
前記電圧検出用抵抗に直列接続されたスイッチと、
前記スイッチがオンのときに前記誤差信号をサンプリングし、前記スイッチがオフのときに前記誤差信号をホールドして、前記PWM制御回路に出力する、または、前記スイッチがオンのときに前記帰還信号をサンプリングし、前記スイッチがオフのときに前記帰還信号をホールドして、前記エラーアンプに出力するサンプルホールド回路とをさらに備えた
スイッチング電源装置であること。
[2]
[1]に記載のスイッチング電源装置において、
前記PWM制御回路の入力に接続された位相補償容量と、
前記帰還信号が前記基準電圧を含む一定範囲から外れたことを検出すると前記位相補償容量を充電または放電する充放電回路とを有する、
スイッチング電源装置であること。
[3]
[2]に記載のスイッチング電源装置において、
前記充放電回路は、
前記位相補償容量を充電する第1の電流源と、
前記位相補償容量を放電する第2の電流源と、
前記帰還信号と前記一定範囲の上限値とを比較し、比較結果を出力する第1のコンパレータと、
前記第1のコンパレータから前記帰還信号が前記上限値を越えたことを示す比較結果が出力されると、リセット信号が入力されるまで前記第1の電流源及び前記第2の電流源の一方を前記位相補償容量に接続する信号の出力を保持する第1のラッチ回路と、
前記帰還信号と前記一定範囲の下限値とを比較し、比較結果を出力する第2のコンパレータと、
前記第2のコンパレータから前記帰還信号が前記下限値を下回ったことを示す比較結果が出力されると、前記リセット信号が入力されるまで前記第1の電流源及び前記第2の電流源の他方を前記位相補償容量に接続する信号の出力を保持する第2のラッチ回路とを有し、
前記リセット信号は、前記スイッチのオンオフ周期に同期している、
スイッチング電源装置であること。
[4]
入力電圧を昇圧または降圧した出力電圧を出力するためのコイルに供給される入力電圧をオンオフするトランジスタを制御するスイッチング制御回路であって、
前記出力電圧を分圧する電圧検出用抵抗から出力された帰還信号と基準電圧との誤差信号を出力するエラーアンプと、
前記誤差信号に応じたデューティ比のPWM信号を前記トランジスタに対して出力するPWM制御回路と、
前記電圧検出用抵抗に直列接続されたスイッチがオンのときに前記誤差信号をサンプリングし、前記スイッチがオフのときに前記誤差信号をホールドして、前記PWM制御回路に出力する、または、前記スイッチがオンのときに前記帰還信号をサンプリングし、前記スイッチがオフのときに前記帰還信号をホールドして、前記エラーアンプに出力するサンプルホールド回路とを備えた
スイッチング制御回路であること。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るスイッチング電源装置及びスイッチング制御回路によれば、電力効率を改善したスイッチング電源装置及びスイッチング制御回路を提供することができる。
【0008】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態における本発明のスイッチング電源装置としてのDC/DCコンバータを示す回路図である。
図2図2は、第2実施形態における本発明のスイッチング電源装置としてのDC/DCコンバータを示す回路図である。
図3図3は、第3実施形態における本発明のスイッチング電源装置としてのフライバックDC/DCコンバータを示す回路図である。
図4図4は、第4実施形態における本発明のスイッチング電源装置としてのDC/DCコンバータを示す回路図である。
図5図5は、従来のスイッチング電源装置としてのDC/DCコンバータの一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
本発明に関する具体的な第1実施形態について、図1を参照しながら以下に説明する。
【0011】
図1に示すスイッチング電源装置としてのDC/DCコンバータ1は、入力端子INに供給される直流の入力電圧VINを降圧して出力端子OUTから直流の出力電圧VOUTとして出力する。
【0012】
DC/DCコンバータ1は、コイルLと、コイルLに供給する入力電圧VINをオンオフするトランジスタM1と、コイルLに流れる電流を整流するダイオードD1と、出力コンデンサCOUTと、トランジスタM1のオンオフを制御するスイッチング制御回路2とを備えている。
【0013】
コイルLは、一端がトランジスタM1のドレイン-ソースを介して入力端子INに接続され、他端が出力端子OUTに接続されている。トランジスタM1は、Pchの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM1は、ゲートがスイッチング制御IC10の端子TSWに接続され、ソースが入力端子INに接続され、ドレインがコイルLの一端に接続されている。
【0014】
ダイオードD1は、カソードがトランジスタM1のドレイン及びコイルLの一端に接続され、アノードがグランドに接続されている。出力コンデンサCOUTは、コイルLの他端及び出力端子OUTとグランドとの間に接続されている。
【0015】
以上の構成によれば、トランジスタM1がオンしたとき入力端子INからコイルLに電流を流してコイルLにエネルギーを蓄積する。トランジスタM1がオフすると、コイルLがダイオードD1を通じて電流を供給し、出力コンデンサCOUTにより平滑化された直流の出力電圧VOUTが出力端子OUTから出力される。
【0016】
スイッチング制御回路2は、出力電圧VOUTが所望の電圧となるようにトランジスタM1のオンオフを制御する。
【0017】
スイッチング制御回路2は、電圧検出用抵抗R1,R2と、スイッチとしてのトランジスタM2と、エラーアンプ21と、サンプルホールド回路22と、電流変換回路23と、位相補償回路24と、PWM制御回路25とを備えている。本実施形態では、エラーアンプ21、サンプルホールド回路22、電流変換回路23、PWM制御回路25が、スイッチング制御IC(Integrated Circuit;集積回路)10内に内蔵される。
【0018】
電圧検出用抵抗R1,R2は、出力端子OUTとグランドとの間に直列接続されている。電圧検出用抵抗R1,R2の接続点には、出力電圧VOUTを分圧した帰還信号Vfbが出力される。電圧検出用抵抗R1,R2の接続点が、スイッチング制御IC10の端子EIに接続されている。
【0019】
トランジスタM2は、Nchの電界効果トランジスタから構成されている。トランジス
タM2は、電圧検出用抵抗R1,R2と直列接続され、電圧検出用抵抗R1,R2に流れる電流をオンオフする。本実施形態では、トランジスタM2は、ドレインが電圧検出用抵抗R1に接続され、ソースが電圧検出用抵抗R2に接続されている。すなわち、トランジスタM2は、電圧検出用抵抗R1と電圧検出用抵抗R2との間に接続されている。
【0020】
エラーアンプ21は、非反転入力に端子TEIが接続され、帰還信号Vfbが入力される。エラーアンプ21は、反転入力に基準電圧Vrefが入力される。エラーアンプ21は、帰還信号Vfbと基準電圧Vrefとの誤差に応じた誤差信号Verr1を出力する。基準電圧Vrefは、出力電圧VOUTが所望の電圧となったときの帰還信号Vfbに設定されている。エラーアンプ21は、帰還信号Vfbが高くなるに従って、高くなる誤差信号Verr1を出力する。
【0021】
サンプルホールド回路22は、パルス状のサンプリング信号SMPLが入力されるスイッチSWと、ホールドコンデンサCSとを有している。スイッチSWは、エラーアンプ21の出力とホールドコンデンサCSの一端との間に接続されている。ホールドコンデンサCSの他端はグランドに接続されている。スイッチSWは、サンプリング信号SMPLがHレベルのときにオンするスイッチである。
【0022】
サンプリング信号SMPLは、一定の周期、一定のデューティで出力されるパルス信号であり、端子TSMPLから出力される。上述したトランジスタM2は、ゲートが端子TSMPLに接続され、ゲートにサンプリング信号SMPLが供給される。トランジスタM2は、サンプリング信号SMPLがHレベルのときにオンする。すなわち、スイッチSW及びトランジスタM2は、そのオンオフが同期している。
【0023】
サンプルホールド回路22は、トランジスタM2がオンのときに誤差信号Verr1をサンプリングし、トランジスタM2がオフのときにサンプリングした誤差信号Verr1をホールド(保持)する。サンプルホールド回路22を設けることにより、トランジスタM2がオフされて帰還信号Vfbが発生していない間も誤差信号Verr1を出力し続けることができる。
【0024】
電流変換回路23は、サンプルホールド回路22から出力される誤差信号Verr1を電流に変換し、位相補償回路24の位相補償容量CCを充放電する。位相補償回路24は、位相補償を行うと共に、電流変換回路23による充放電に応じた誤差信号Verr2を出力する。
【0025】
電流変換回路23は、電流源231と、トランジスタM3とを有している。トランジスタM3は、Nchの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM3は、ドレインが電流源231に接続され、ソースがグランドに接続されている。トランジスタM3は、ゲートがホールドコンデンサCSの一端に接続されている。トランジスタM3は、ドレインが端子TEOに接続されている。位相補償回路24は、端子TEOとグランドとの間に直列接続された抵抗RC、位相補償容量CCを有している。
【0026】
トランジスタM3は、誤差信号Verr1が高くなるに従って大きな電流が流れる。帰還信号Vfbが基準電圧Vrefより高く、誤差信号Verr1が高いと、トランジスタM3に流れる電流が電流源231から供給される定電流より大きくなり、位相補償容量CCは放電される。位相補償容量CCが放電されると、端子TEOから出力される誤差信号Verr2は低くなる。帰還信号Vfbが基準電圧Vrefより低く、誤差信号Verr1が低いと、トランジスタM3に流れる電流が電流源231から供給される定電流より小さくなり、位相補償容量CCは充電される。位相補償容量CCが充電されると、端子TEOから出力される誤差信号Verr2は高くなる。
【0027】
PWM制御回路25は、誤差信号Verr2に応じたデューティ比のPWM信号VpwmをトランジスタM1に対して出力する。誤差信号Verr2は、上述したように誤差信号Verr1に応じた電圧である。
【0028】
PWM制御回路25は、PWMコンパレータ251と、所定周期の鋸波を出力する発振回路252(以下、「OSC252」と略記する。)と、インバータ回路253とを有している。PWMコンパレータ251は、非反転入力に端子TEOが接続され、誤差信号Verr2が入力される。PWMコンパレータ251は、反転入力にOSC252の出力が接続され、OSC252から出力される鋸波が入力される。PWMコンパレータ251の出力は、インバータ回路253の入力に接続されている。インバータ回路253は、PWMコンパレータ251の出力を反転させて、PWM信号Vpwmとして出力させる。インバータ回路253は、端子TSWを介してトランジスタM1のゲートに接続される。トランジスタM1は、端子TSWから出力されるPWM信号VpwmがHレベルのときにオフし、Lレベルのときにオンする。
【0029】
PWMコンパレータ251は、誤差信号Verr2と鋸波とを比較して、誤差信号Verr2が鋸波より高い間にHiレベルとなる信号を出力する。すなわち、PWMコンパレータ251は、誤差信号Verr2が低くなるに従ってデューティが小さくなる信号を出力する。これにより、出力電圧VOUTが所望の電圧を越えて高くなると、トランジスタM1のオンデューティが小さくなり、出力電圧VOUTが低くなり、所望の電圧となる。
【0030】
また、PWMコンパレータ251は、誤差信号Verr2が高くなるに従ってデューティが大きくなるPWM信号Vpwmを出力する。これにより、出力電圧VOUTが所望の電圧を下回ると、トランジスタM1のオンデューティが大きくなり、出力電圧VOUTが上昇して、所望の電圧となる。
【0031】
上述した実施形態によれば、トランジスタM2がオンして電圧検出用抵抗R1,R2による帰還信号Vfbが生じている間、同時にスイッチSWもオンしてエラーアンプ21から出力される誤差信号Verr1によりホールドコンデンサCSが充放電される。また、トランジスタM2がオフして帰還信号Vfbがエラーアンプ21へ入力されなくなるタイミングで、スイッチSWもオフしてホールドコンデンサCSの電荷が保持されることで、トランジスタM3のゲート電圧が保持される。これにより、電圧検出用抵抗R1,R2には常時電流が流れることがないので、電力効率を改善することができる。
【0032】
なお、サンプリング中は電圧検出用抵抗R1,R2へ電流が流れる為、サンプリング時間を短く又サンプリング間隔を長く設定することでDC/DCコンバータ1としての電力効率を上げることができる。トランジスタM2がオフしている間、トランジスタM3のゲート電圧が保持され、誤差信号Verr2の出力が保持されるため、従来回路と同様にDC/DCコンバータ1としてのフィードバック制御が行われる。
【0033】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、図2を参照して説明する。図2においては、図1について上述した第1実施形態で既に説明した部分と同等の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0034】
第1実施形態のDC/DCコンバータ1は降圧型のDC/DCコンバータであったが、第2実施形態のDC/DCコンバータ1Bは、昇圧型のDC/DCコンバータである。
【0035】
DC/DCコンバータ1Bは、コイルLBと、トランジスタM1Bと、ダイオードD1
Bと、出力コンデンサCOUTと、スイッチング制御回路2Bとを備えている。
【0036】
コイルLBは、一端が入力端子INに接続され、他端がトランジスタM1Bのドレイン及びダイオードD1Bのアノードに接続されている。トランジスタM1Bは、Nchの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM1Bは、ゲートがスイッチング制御IC10Bの端子TSWに接続され、ソースがグランドに接続され、ドレインがコイルLBの他端及びダイオードD1Bのアノードに接続されている。
【0037】
ダイオードD1Bは、アノードがコイルLBの他端及びトランジスタM1Bのドレインに接続され、カソードが出力コンデンサCOUTの一端及び出力端子OUTに接続されている。出力コンデンサCOUTは、ダイオードD1Bのカソード及び出力端子OUTとグランドの間に接続される。
【0038】
以上の構成によれば、トランジスタM1BがオンのときにコイルLBにエネルギーが貯められることは、第1実施形態と同様であるが、トランジスタM1Bがオフになったとき入力電圧VINにコイルLBに蓄積されたエネルギーが加算されるため、入力電圧VINよりも高い出力電圧VOUTを出力することができる。
【0039】
スイッチング制御回路2Bは、電圧検出用抵抗R1,R2と、トランジスタM2と、エラーアンプ21と、サンプルホールド回路22と、電流変換回路23と、位相補償回路24と、PWM制御回路25Bとを備えている。本実施形態では、エラーアンプ21、サンプルホールド回路22、電流変換回路23、PWM制御回路25Bが、スイッチング制御IC10B内に内蔵される。
【0040】
第2実施形態のスイッチング制御回路2Bと、第1実施形態のスイッチング制御回路2で異なる点は、PWM制御回路25Bの構成である。第2実施形態ではトランジスタM1BがNchであるため、PWM制御回路25Bは、インバータ回路253を有していない。第2実施形態では、PWMコンパレータ251からの信号がPWM信号VpwmとしてトランジスタM1Bのゲートに供給されている。
【0041】
上述したように、昇圧型のDC/DCコンバータ1Bに適用しても、第1実施形態と同様に、電圧検出用抵抗R1,R2に常時電流が流れることがないので、電力効率を改善することができる。
【0042】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について図3を参照して説明する。図3においては、図2について上述した第2実施形態で既に説明した部分と同等の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0043】
第3実施形態のDC/DCコンバータ1Cは、コイルとして一次巻線L1C,二次巻線L2Cを用いた絶縁型のDC/DCコンバータである。DC/DCコンバータ1Cは、一次巻線L1C及び二次巻線L2Cが電磁結合されたトランスTRと、トランジスタM1Cと、ダイオードD1Cと、出力コンデンサCOUTと、スイッチング制御回路2Bとを備えている。
【0044】
一次、二次巻線L1C,L2Cは、トランスTRの同一のコアに巻き付けられている。一次巻線L1Cの一端には、入力端子INが接続されている。一次巻線L1Cの他端には、トランジスタM1Cのドレインが接続されている。トランジスタM1Cは、Nchの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM1Cは、ゲートがスイッチング制御IC10B、ソースがグランドに接続されている。
【0045】
二次巻線L2Cは、一端がダイオードD1Cのアノードに接続され、他端がグランドに接続されている。ダイオードD1Cは、二次巻線L2Cの一端と出力端子OUTとの間に接続されている。出力コンデンサCOUTは、出力端子OUTとグランドとの間に接続されている。
【0046】
上述したトランジスタM1Cをオンすると、入力電圧VINが一次巻線L1Cに供給され、一次巻線L1Cに電流が流れる。この電流によりトランスTRのコアに磁気エネルギーが蓄えられる。このとき、二次巻線L2Cには誘導起電力が発生するが、ダイオードD1Cにより遮断され、二次巻線L2Cには電流が流れず、トランスTRのエネルギーは流出しない。また、このとき、出力コンデンサCOUTが図示しない負荷により放電される。
【0047】
次に、トランジスタM1Cをオフすると、トランスTRのコアに蓄えられた磁気エネルギーが二次巻線L2C、ダイオードD1Cを介して電流として出力コンデンサCOUTに出力され、出力コンデンサCOUTが充電される。次に、再びトランジスタM1Cをオンして、これを繰り返す。すなわち、二次巻線L2Cから出力される電流は出力コンデンサCOUTにより平滑化されて直流の出力電圧VOUTとして出力される。
【0048】
スイッチング制御回路2Bは、第2実施形態と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0049】
上述したように、巻線L1C,L2Cを用いた絶縁型のDC/DCコンバータ1Cに適用しても、第2実施形態と同様に、電圧検出用抵抗R1,R2に常時電流が流れることがないので、電力効率を改善することができる。
【0050】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について図4を参照して説明する。図4においては、図1について上述した第1実施形態で既に説明した部分と同等の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0051】
DC/DCコンバータ1Dは、コイルLと、トランジスタM1と、ダイオードD1と、出力コンデンサCOUTと、スイッチング制御回路2Dとを備えている。コイルL、トランジスタM1、ダイオードD1、出力コンデンサCOUTは、第1実施形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0052】
スイッチング制御回路2Dは、電圧検出用抵抗R1,R2と、トランジスタM2と、エラーアンプ21と、サンプルホールド回路22と、電流変換回路23と、位相補償回路24と、PWM制御回路25と、充放電回路26と、を備えている。本実施形態では、エラーアンプ21、サンプルホールド回路22、電流変換回路23、PWM制御回路25、充放電回路26が、スイッチング制御IC10D内に内蔵される。
【0053】
第1実施形態と第4実施形態とで大きく異なる点は、第4実施形態では、充放電回路26を備えている点である。充放電回路26以外の部分については、第1実施形態と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0054】
スイッチング制御回路2Dは、第1実施形態のスイッチング制御回路2と同様に、帰還信号Vfbと基準電圧Vrefとが等しくなるようにトランジスタM1をオンオフ制御している。よって、定常状態では帰還信号Vfbと基準電圧Vrefとはほぼ等しく、帰還信号Vfbは、基準電圧Vrefを中心とした一定範囲内で変動している。入力電圧V
や負荷電流が変動すると、出力電圧VOUTが大きく変動し、出力電圧VOUTに応じた帰還信号Vfbも一定範囲を越えて大きく変動する。
【0055】
充放電回路26は、帰還信号Vfbが基準電圧Vrefを中心とした一定範囲から外れたことを検出すると、位相補償容量CCを放電または充電して、過渡応答特性を改善させる回路である。充放電回路26は、第1の電流源としての電流源261と、第2の電流源としての電流源262と、第1のコンパレータとしてのコンパレータ263と、第1のラッチ回路としてのラッチ回路264と、第2のコンパレータとしてのコンパレータ265と、インバータ266と、第2のラッチ回路としてのラッチ回路267とを有している。
【0056】
電流源261は、端子TEOと電源との間に設けられている。電流源261を端子TEOに接続すると、位相補償容量CCを電流ICHで充電する。電流源262は、端子TEOとグランドとの間に設けられている。電流源262を端子TEOに接続すると、位相補償容量CCを電流IDCHで放電する。
【0057】
コンパレータ263は、帰還信号Vfbと一定範囲の上限値VROVとを比較する。コンパレータ263は、非反転入力に帰還信号Vfbが入力され、反転入力に上限値VROVが入力されている。コンパレータ263は、帰還信号Vfbが上限値VROVよりも高い場合、Hiレベルの比較信号を出力し、帰還信号Vfbが上限値VROVよりも低い場合、Loレベルの比較信号を出力する。
【0058】
ラッチ回路264は、コンパレータ263から帰還信号Vfbが上限値VROVを越えたことを示す比較結果(Hiレベルの比較信号)が出力されると、リセット信号RSTが入力されるまでHiレベルの信号の出力を保持する。ラッチ回路264からHiレベルの信号が出力されると、電流源262が端子TEOに接続され、位相補償容量CCが放電される。リセット信号RSTは、トランジスタM2のオンオフ周期に同期しており、ラッチ回路264はトランジスタM2がオンするとリセットされる。
【0059】
よって、帰還信号Vfbが上限値VROVを越えると、位相補償容量CCは、電流変換回路23による放電に加えて、電流源262からの電流IDCHによっても放電される。このため、電流IDCHによる放電分、誤差信号Verr2が迅速に低下し、トランジスタM1のオンデューティを迅速に小さくすることができるため、過渡応答特性を改善できる。
【0060】
コンパレータ265は、帰還信号Vfbと一定範囲の下限値VRLVとを比較する。コンパレータ265は、非反転入力に帰還信号Vfbが入力され、反転入力に下限値VRLVが入力されている。コンパレータ265は、帰還信号Vfbが下限値VRLVよりも高い場合、Hiレベルの比較信号を出力し、帰還信号Vfbが下限値VRLVよりも低い場合、Loレベルの比較信号を出力する。
【0061】
インバータ266は、コンパレータ265の出力を反転させて、ラッチ回路267に入力する。ラッチ回路267は、インバータ266から帰還信号Vfbが下限値VRLVを越えたことを示す比較結果(Hiレベルの比較信号)が出力されると、リセット信号RSTが入力されるまでHiレベルの信号の出力を保持する。ラッチ回路267からHiレベルの信号が出力されると、電流源261が端子TEOに接続され、位相補償容量CCが充電される。リセット信号RSTは、トランジスタM2のオンオフ周期に同期しており、ラッチ回路267はトランジスタM2がオンするとリセットされる。
【0062】
よって、帰還信号Vfbが下限値VRLVを越えると、位相補償容量CCは、電流変換回路23による充電に加えて、電流源261からの電流ICHによっても充電される。こ
のため、電流ICHによる充電分、誤差信号Verr2が迅速に上昇し、トランジスタM1のオンデューティを迅速に大きくすることができるため、過渡応答特性を改善できる。
【0063】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0064】
上述した実施形態では、サンプルホールド回路22は、エラーアンプ21から出力される誤差信号Verr1をサンプルホールドしていたが、これに限ったものではない。サンプルホールド回路22は、帰還信号Vfbをサンプルホールドし、サンプルホールドした帰還信号Vfbをエラーアンプ21に入力するようにしてもよい。第1実施形態と同様に、トランジスタM2がオフして帰還信号Vfbが出力されなくなっても、エラーアンプ21への帰還信号Vfbの入力が保持され、トランジスタM3のゲート電圧を保持できる。
【0065】
上述した実施形態では、電流変換回路23は、電源側に電流源231を接続し、グランド側にトランジスタM3を接続していたが、これに限ったものではない。電源側にトランジスタM3を接続し、グランド側に電流源231を接続してもよい。
【0066】
上述した実施形態では、エラーアンプ21の非反転入力に帰還信号Vfbを入力し、反転入力に基準電圧Vrefを入力し、PWMコンパレータ251の非反転入力に誤差信号Verr2を入力し、反転入力に鋸波を入力していたが、これに限ったものではない。エラーアンプ21の反転入力に帰還信号Vfbを入力し、非反転入力に基準電圧Vrefを入力し、PWMコンパレータ251の反転入力に誤差信号Verr2を入力し、非反転入力に鋸波を入力してもよい。
【0067】
上述したようにエラーアンプ21、PWMコンパレータ251の入力を逆にした場合、ラッチ回路264から出力される信号により、電流源261が端子TEOに接続され、位相補償容量CCが充電されるようにし、ラッチ回路267から出力される信号により電流源262が端子TEOに接続され、位相補償容量CCが放電されるようにする。すなわち、充放電回路26は、帰還信号Vfbが上昇するとトランジスタM1のオンデューティが迅速に小さくなるように位相補償容量CCを放電し、帰還信号Vfbが低下するとトランジスタM1のオンデューティが迅速に大きくなるように位相補償容量CCを充電する構成となっていればよい。
【0068】
また、第3実施形態において、トランスTRの二次巻線L2Cは複数あっても良い。トランスTRの二次巻線L2Cが複数存在する場合でも、帰還信号Vfbに基づいてフィードバック制御を行うことで、上述の実施形態と同等の動作が可能である。
【0069】
上述した実施形態によれば、電圧検出用抵抗R1,R2、トランジスタM2はスイッチング制御IC10,10B,10D外に設けていたが、これに限ったものではない。電圧検出用抵抗R1,R2、トランジスタM2をスイッチング制御IC10,10B,10Dに内蔵してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1,1B~1D DC/DCコンバータ(スイッチング電源装置)
2,2B,2D スイッチング制御回路
21 エラーアンプ
22 サンプルホールド回路
25,25B PWM制御回路
26 充放電回路
261 電流源(第1の電流源)
262 電流源(第2の電流源)
263 コンパレータ(第1のコンパレータ)
264 ラッチ回路(第1のラッチ回路)
265 コンパレータ(第2のコンパレータ)
267 ラッチ回路(第2のラッチ回路)
CC 位相補償容量
L,LB コイル
L1C 一次巻線(コイル)
L2C 二次巻線(コイル)
M1,M1B,M1C トランジスタ
M2 トランジスタ(スイッチ)
R1,R2 電圧検出用抵抗
RST リセット信号
Vfb 帰還信号
Vref 基準電圧
VROV 上限値
VRLV 下限値
Verr1 誤差信号
Vpwm PWM信号
IN 入力電圧
OUT 出力電圧
図1
図2
図3
図4
図5