(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008512
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】電解槽
(51)【国際特許分類】
C25B 9/00 20210101AFI20240112BHJP
C25B 3/09 20210101ALI20240112BHJP
C25B 9/19 20210101ALI20240112BHJP
【FI】
C25B9/00 G
C25B3/09
C25B9/19
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110449
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】石丸 秀成
(72)【発明者】
【氏名】井上 裕史
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AC11
4K021BA06
4K021CA01
4K021CA02
4K021CA08
4K021CA09
4K021DB31
4K021DC15
(57)【要約】
【課題】電解電圧の上昇が回避され電解槽の安定した作動が確保される電解槽を提供する。
【解決手段】電解槽は、内面に陰極板が固定された陰極枠体と、内面に陽極板が固定された陽極枠体と、陰極枠体と陽極枠体との間に配設されたイオン交換膜と、陰極枠体とイオン交換膜との間に規定された陰極室に陰極側流体を供給するための陰極側流体供給路と、陰極室から陰極側流体を排出するための陰極側流体排出路と、陽極枠体とイオン交換膜との間に規定された陽極室に陽極側流体を供給するための陽極側流体供給路と、陽極室から陽極側流体を排出するための陽極側流体排出路とを含む。陰極側流体排出路の有効流路断面積CDは陰極側流体供給路の有効流路断面積CSよりも大きく、陽極側流体排出路の有効流路断面積ADは陽極側流体供給路の有効流路断面積ASよりも大きい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面に陰極板が固定された陰極枠体と、内面に陽極板が固定された陽極枠体と、該陰極枠体と該陽極枠体との間に配設されたイオン交換膜と、該陰極枠体と該イオン交換膜との間に規定された陰極室に陰極側流体を供給するための陰極側流体供給路と、該陰極室から陰極側流体を排出するための陰極側流体排出路と、該陽極枠体と該イオン交換膜との間に規定された陽極室に陽極側流体を供給するための陽極側流体供給路と、該陽極室から陽極側流体を排出するための陽極側流体排出路とを含む電解槽において、
該陰極側流体排出路の有効流路断面積CDは該陰極側流体供給路の有効流路断面積CSよりも大きく、該陽極側流体排出路の有効流路断面積ADは該陽極側流体供給路の有効流路断面積ASよりも大きい、
ことを特徴とする電解槽。
【請求項2】
該有効流路断面積CDは該有効流路断面CSの1.1乃至3.0倍(CD=1.1乃至3.0CS)であり、該有効流路断面積ADは該有効流路断面ASの1.1乃至3.0倍(AD=1.1乃至3.0AS)である、請求項1記載の電解槽。
【請求項3】
該有効流路断面積CDは該有効流路断面CSの1.5乃至2.5倍(CD=1.5乃至2.5CS)であり、該有効流路断面積ADは該有効流路断面ASの1.5乃至2.5倍(AD=1.5乃至2.5AS)である、請求項2記載の電解槽。
【請求項4】
該陰極枠体には、該内面の上端部に位置する上側開口から延びる少なくとも1個の上側流路及び該内面の下端部に位置する下側開口から延びる少なくとも1個の下側流路が配設されており、
該陽極枠体には、該内面の上端部に位置する上側開口から延びる少なくとも1個の上側流路及び該内面の下端部に位置する下側開口から延びる少なくとも1個の下側流路が配設されており、
該陰極板は該陰極枠体の該上側開口よりも上方から該陰極枠体の該下側開口よりも下方まで連続して延在し、
該陰極板の上端部には該陰極枠体の該上側開口に整合する少なくとも1個の上側貫通開口が形成されており、該陰極板の下端部には該陰極枠体の該下側開口に整合する少なくとも1個の下側貫通開口が形成されており、
該陽極板は該陽極枠体の該上側開口よりも上方から該陽極枠体の該下側開口よりも下方まで連続して延在し、
該陽極板の上端部には該陽極枠体の該上側開口に整合する少なくとも1個の上側貫通開口が形成されており、該陽極板の下端部には該陽極枠体の該下側開口に整合する少なくとも1個の下側貫通開口が形成されており、
該陰極板の該上側貫通開口及び該陰極枠体の該上側流路が該陰極側流体排出路と該陰極側供給路との一方を構成し、該陰極板の該下側貫通開口及び該陰極枠体の該下側流路が該陰極側流体排出路と該陰極側供給路との他方を構成し、
該陽極板の該上側貫通開口及び該陽極枠体の該上側流路が該陽極側流体排出路と該陽極側供給路との一方を構成し、該陽極板の該下側貫通開口及び該陽極枠体の該下側流路が該陽極側流体排出路と該陽極側供給路との他方を構成する、
請求項1から3までのいずれかに記載の電解槽。
【請求項5】
該陰極枠体には、該内面の上端部に幅方向に間隔をおいて配置された複数個の上側開口から延びる複数個の上側流路及び該内面の下端部に幅方向に間隔をおいて配置された複数個の下側開口から延びる複数個の下側流路が配設されており、
該陽極枠体には、該内面の上端部に幅方向に間隔をおいて配置された複数個の上側開口から延びる複数個の上側流路及び該内面の下端部に幅方向に間隔をおいて配置された複数個の下側開口から延びる複数個の下側流路が配設されており、
該陰極板の上端部には該陰極枠体の該複数個の上側開口の各々に夫々整合する複数個の上側貫通開口が形成されており、該陰極板の下端部には該陰極枠体の該複数個の下側開口の各々に夫々整合する複数個の下側貫通開口が形成されており、
該陽極板の上端部には該陽極枠体の該複数個の上側開口の各々に夫々整合する複数個の上側貫通開口が形成されており、該陽極板の下端部には該陽極枠体の該複数個の下側開口の各々に夫々整合する複数個の下側貫通開口が形成されており、
該陰極側排出路を構成する該陰極板の該上側貫通開口及び該陰極枠体の該上側流路又は該陰極板の該下側貫通開口及び該陰極枠体の該下側流路の数は、該陰極側供給路を構成する該陰極板の該下側貫通開口及び該陰極枠体の該下側流路又は該陰極板の該上側貫通開口及び該陰極枠体の該上側流路の数よりも多く、
該陽極側排出路を構成する該陽極板の該上側貫通開口及び該陽極枠体の該上側流路又は該陽極板の該下側貫通開口及び該陽極枠体の該下側流路の数は、該陽極側供給路を構成する該陽極板の該下側貫通開口及び該陽極枠体の該下側流路又は該陽極板の該上側貫通開口及び該陽極枠体の該上側流路の数よりも多い、
請求項4記載の電解槽。
【請求項6】
該陰極枠体の該上側開口及び該下側開口並びに該陰極板の該上側貫通開口及び該下側貫通開口は円形断面形状を有し、
該陽極枠体の該上側開口及び該下側開口並びに該陽極板の該上側貫通開口及び該下側貫通開口は円形断面形状を有する、
請求項5記載の電解槽。
【請求項7】
該陰極板及び該陽極板は矩形板から構成されている、請求項4記載の電解槽。
【請求項8】
該陰極板と該陽極板との間には少なくとも1個の陽イオン交換膜が配置されている、請求項1から3までのいずれかに記載の電解槽を使用して、第4級アンモニウム塩水溶液を原料して水酸化第4級アンモニウム水溶液を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解槽、更に詳しくは、それに限定されるものではないが、第4級アンモニウム塩水溶液を原料として水酸化第4級アンモニウム水溶液を製造するのに好適に使用することができる電解槽に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1乃至4には、第4級アンモニウム塩水溶液を原料として水酸化第4級アンモニウム水溶液を製造する製造方法が開示されている。かような製造方法の実施には、陰極枠体とこの陰極枠体の内面に固定された陰極板と陽極枠体とこの陽極枠体の内面に固定された陽極板とを含む電解槽が使用される。陰極板と陽極板との間には少なくとも1個の陽イオン交換膜が配設されており、陰極枠体と陽イオン交換膜との間には陰極室が規定され、陽極枠体と陽イオン交換膜との間には陽極室が規定されている。そして、陰極室に陰極側流体を供給するための陰極側流体供給路及び陰極室から陰極側流体を排出するための陰極側流体排出路並びに陽極室に陽極側流体を供給するための陽極側流体供給路及び陽極室から陽極側流体を排出するための陰極側流体排出路が配設されている。更に詳しくは、陰極枠体には幅方向に間隔をおいて配置された複数個の上側開口から延びる複数個の上側流路及び幅方向に間隔をおいて配置された複数個の下側開口から延びる複数個の下側流路が配設されており、上側流路と下側流路との一方が上記陰極側流体排出路を構成し、上側流路と下側流路との他方が上記陰極側流体供給路を構成する。同様に陽極枠体には幅方向に間隔をおいて配置された複数個の上側開口から延びる複数個の上側流路及び幅方向に間隔をおいて配置された複数個の下側開口から延びる複数個の下側流路が配設されており、上側流路と下側流路との一方が上記陽極側流体排出路を構成し、上側流路と下側流路との他方が上記陽極側流体供給路を構成する。陰極側流体供給路、陰極室及び陰極側流体排出路を通して陰極側流体即ち水酸化第4級アンモニウム水溶液が循環され、陽極側流体供給路、陽極室及び陽極側流体排出路を通して陽極側流体即ち第4級アンモニウム塩水溶液が循環される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62-142792号公報
【特許文献2】特公平8-16274号公報
【特許文献3】特公平8-19539号公報
【特許文献4】特開2009-13477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
而して、上記のとおりの電解槽においては、陰極側流体供給路の有効流路断面積と陰極側流体排出路の有効流路断面積とを実質上同一に設定し、そしてまた陽極側流体供給路の有効流路断面積と陽極側流体排出路の有効流路断面積とを実質上同一に設定している。そして、特に特願2022-33651において本発明者等が提案した形態の電解槽(即ち、陰極板の上端部には陰極枠体の上側開口に整合する少なくとも1個の上側貫通開口が形成されており、陰極板の下端部には陰極枠体の下側開口に整合する少なくとも1個の下側貫通開口が形成されており、陽極板の上端部には該陽極枠体の上側開口に整合する少なくとも1個の上側貫通開口が形成されており、陽極板の下端部には陽極枠体の該下側開口に整合する少なくとも1個の下側貫通開口が形成されており、陰極板に形成されている上側貫通開口及び下側貫通開口並びに陽極板に形成されている上側貫通開口及び下側貫通開口が流体流路の有効流路断面積を規定している形態の電解槽)においては、最大限の電界効率を達成するために有効流路面積を必要最小限に設定している。然るに、本発明者等は、電解槽の作動について鋭意検討及び実験を重ねた結果、陰極室及び陽極室においては電解作用に起因してガスが生成され、陰極側流体排出路及び陽極側流体排出路においては陰極側流体及び陽極側流体に加えて生成されたガスも流動されることに起因して、陰極側流体排出路及び陽極側流体排出路では陰極側流体供給路及び陽極側流体供給路に比べて流速が増大されて背圧が生成され、これに起因して電解電圧が上昇され電解槽の安定した作動が阻害される傾向があることを認識した。
【0005】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、電解電圧の上昇が回避され電解槽の安定した作動が確保される新規且つ改良された電解槽を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、本発明者等が認識した上記のとおりの事実を踏まえ、陰極側流体排出路の有効流路断面積CDを陰極側流体供給路の有効流路断面積CSよりも大きくし、そしてまた陽極側流体排排出路の有効流路断面積ADを陽極側流体供給路の有効流路断面積ASよりも大きくすることによって、上記主たる技術的課題を達成することができることを見出した。
【0007】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を達成する電解槽として、
内面に陰極板が固定された陰極枠体と、内面に陽極板が固定された陽極枠体と、該陰極枠体と該陽極枠体との間に配設されたイオン交換膜と、該陰極枠体と該イオン交換膜との間に規定された陰極室に陰極側流体を供給するための陰極側流体供給路と、該陰極室から陰極側流体を排出するための陰極側流体排出路と、該陽極枠体と該イオン交換膜との間に規定された陽極室に陽極側流体を供給するための陽極側流体供給路と、該陽極室から陽極側流体を排出するための陽極側流体排出路とを含む電解槽において、
該陰極側流体排出路の有効流路断面積CDは該陰極側流体供給路の有効流路断面積CSよりも大きく、該陽極側流体排出路の有効流路断面積ADは該陽極側流体供給路の有効流路断面積ASよりも大きい、
ことを特徴とする電解槽が提供される。
【0008】
該有効流路断面積CDは該有効流路断面CSの1.1乃至3.0倍(CD=1.1乃至3.0CS)であり、該有効流路断面積ADは該有効流路断面ASの1.1乃至3.0倍(AD=1.1乃至3.0AS)である、特に該有効流路断面積CDは該有効流路断面CSの1.5乃至2.5倍(CD=1.5乃至2.5CS)であり、該有効流路断面積ADは該有効流路断面ASの1.5乃至2.5倍(AD=1.5乃至2.5AS)である、のが好ましい。
【0009】
好適実施形態においては、
該陰極枠体には、該内面の上端部に位置する上側開口から延びる少なくとも1個の上側流路及び該内面の下端部に位置する下側開口から延びる少なくとも1個の下側流路が配設されており、
該陽極枠体には、該内面の上端部に位置する上側開口から延びる少なくとも1個の上側流路及び該内面の下端部に位置する下側開口から延びる少なくとも1個の下側流路が配設されており、
該陰極板は該陰極枠体の該上側開口よりも上方から該陰極枠体の該下側開口よりも下方まで連続して延在し、
該陰極板の上端部には該陰極枠体の該上側開口に整合する少なくとも1個の上側貫通開口が形成されており、該陰極板の下端部には該陰極枠体の該下側開口に整合する少なくとも1個の下側貫通開口が形成されており、
該陽極板は該陽極枠体の該上側開口よりも上方から該陽極枠体の該下側開口よりも下方まで連続して延在し、
該陽極板の上端部には該陽極枠体の該上側開口に整合する少なくとも1個の上側貫通開口が形成されており、該陽極板の下端部には該陽極枠体の該下側開口に整合する少なくとも1個の下側貫通開口が形成されており、
該陰極板の該上側貫通開口及び該陰極枠体の該上側流路が該陰極側流体排出路と該陰極側供給路との一方を構成し、該陰極板の該下側貫通開口及び該陰極枠体の該下側流路が該陰極側流体排出路と該陰極側供給路との他方を構成し、
該陽極板の該上側貫通開口及び該陽極枠体の該上側流路が該陽極側流体排出路と該陽極側供給路との一方を構成し、該陽極板の該下側貫通開口及び該陽極枠体の該下側流路が該陽極側流体排出路と該陽極側供給路との他方を構成する。
【0010】
好ましくは、該陰極枠体には、該内面の上端部に幅方向に間隔をおいて配置された複数個の上側開口から延びる複数個の上側流路及び該内面の下端部に幅方向に間隔をおいて配置された複数個の下側開口から延びる複数個の下側流路が配設されており、
該陽極枠体には、該内面の上端部に幅方向に間隔をおいて配置された複数個の上側開口から延びる複数個の上側流路及び該内面の下端部に幅方向に間隔をおいて配置された複数個の下側開口から延びる複数個の下側流路が配設されており、
該陰極板の上端部には該陰極枠体の該複数個の上側開口の各々に夫々整合する複数個の上側貫通開口が形成されており、該陰極板の下端部には該陰極枠体の該複数個の下側開口の各々に夫々整合する複数個の下側貫通開口が形成されており、
該陽極板の上端部には該陽極枠体の該複数個の上側開口の各々に夫々整合する複数個の上側貫通開口が形成されており、該陽極板の下端部には該陽極枠体の該複数個の下側開口の各々に夫々整合する複数個の下側貫通開口が形成されており、
該陰極側排出路を構成する該陰極板の該上側貫通開口及び該陰極枠体の該上側流路又は該陰極板の該下側貫通開口及び該陰極枠体の該下側流路の数は、該陰極側供給路を構成する該陰極板の該下側貫通開口及び該陰極枠体の該下側流路又は該陰極板の該上側貫通開口及び該陰極枠体の該上側流路の数よりも多く、
該陽極側排出路を構成する該陽極板の該上側貫通開口及び該陽極枠体の該上側流路又は該陽極板の該下側貫通開口及び該陽極枠体の該下側流路の数は、該陽極側供給路を構成する該陽極板の該下側貫通開口及び該陽極枠体の該下側流路又は該陽極板の該上側貫通開口及び該陽極枠体の該上側流路の数よりも多い。
【0011】
該陰極枠体の該上側開口及び該下側開口並びに該陰極板の該上側貫通開口及び該下側貫通開口は円形断面形状を有し、該陽極枠体の該上側開口及び該下側開口並びに該陽極板の該上側貫通開口及び該下側貫通開口は円形断面形状を有するのが好都合である。該陰極板及び該陽極板は矩形板から構成されているのが望ましい。
【0012】
本発明の好適形態においては、上述したとおりの電解槽において該陰極板と該陽極板との間に少なくとも1個の陽イオン交換膜を配置し、かかる電解槽を使用して第4級アンモニウム塩水溶液を原料して水酸化第4級アンモニウム水溶液を製造する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電解槽においては、陰極側流体排出路の有効流路断面積CDは陰極側流体供給路の有効流路断面積CSよりも大きく、陽極側流体排排出路の有効流路断面積ADは陽極側流体供給路の有効流路断面積ASよりも大きい故に、後述する実施例からも明確に理解されるとおり、電解電圧の上昇が回避され電解槽の安定した作動が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に従って構成された電解槽の好適実施形態を示す簡略断面図。
【
図2】
図1に示す電解槽における陰極枠体及び陰極板を示す、
図1の線II-IIに沿った簡略断面図。
【
図3】
図1に示す電解槽における陰極枠体上側開口、陰極板に形成されている上側貫通開口及びガスケットに形成されている上側連通開口を示す部分拡大断面図。
【
図4】本発明に従って構成された電解槽の変形例における陰極枠体及び陰極板を示す、
図2と同様の間の簡略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に従って構成された電解槽の好適実施形態を図示している添付図面を参照して、更に詳細する。
【0016】
図1及び
図2を参照して説明すると、本発明に従って構成された図示の電解槽は、陰極枠体4(
図1)、陽極枠体6(
図1)、陰極側上壁部材8、陽極側上壁部材10、陰極側下壁部材12、陽極側下壁部材14、陰極側前壁部材16(
図2)、陽極側前壁部材(図示していない)、陰極側後壁部材18(
図2)及び陽極側後壁部材(図示していない)によって構成された、中空直方体形状のハウジング2を含んでいる。陰極枠体4、陽極枠体6、陰極側前壁部材16、陽極側前壁部材、陰極側後壁部材18及び陽極側後壁部材は実質上垂直に延在し、陰極側上壁部材8、陽極側上壁部材10、陰極側下壁部材12及び陽極側下壁部材14は実質上水平に延在している。陰極側上壁部材8の基端面(
図1において右端面)は、締結ねじ或いは接着剤の如き適宜の連結手段によって陰極枠体4の内面上端縁部に連結され、陰極側下壁部材12の基端面(
図1において右端面)は適宜の連結手段によって陰極枠体4の内面下端縁部に連結されている。同様に、陽極側上壁部材10の基端面(
図1において左端面)は、適宜の連結手段によって陽極枠体6の内面上端縁部に連結され、陽極側下壁部材14の基端面(
図1において左端面)は適宜の連結手段によって陽極枠体4の内面下端縁部に連結されている。陰極側前壁部材16は陰極枠体4の前面に、陽極側前壁部材は陽極枠体6の前面に、適宜の連結手段によって連結され、陰極側後壁部材18は陰極枠体4の後面に、陽極側後壁部材は陽極枠体6の後面に、適宜の連結手段によって連結されている。陰極側及び陽極側の各々の上壁部材8及び10、下壁部材12及び14、並びに前壁部材16及び後壁部材18は、上記のとおり陰極枠体4又は陽極枠体6に連結することに代えて、これら壁部材をあらかじめ一体に形成して、陰極枠体4又は陽極枠体6に連結することもできる。また、陰極枠体4又は陽極枠体6に壁部を一体に形成することもできる。更に、上壁部材8及び10、下壁部材12及び14、並びに前壁部材16及び後壁部材18を一体に形成した場合は、陰極枠体4又は陽極枠体6にシール部材を介在させて固定することもできる。シール部材としては、後述するガスケット38を陰極板32又は陽極板56に対応するサイズから陰極枠体4又は陽極枠体6に対応するサイズまで延在させて、延長部を利用することもできる。陰極枠体4、陽極枠体6、陰極側上壁部材8、陽極側上壁部材10、陰極側下壁部材12、陽極側下壁部材14、陰極側前壁部材16、陽極側前壁部材、陰極側後壁部材18及び陽極側後壁部材は、後述する開口及び流路を除いて中実ブロック乃至板形態でよく、ポリプロピレン及びポリエチレンの如きオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂並びにフッソ系樹脂の如き適宜の合成樹脂から形成することができる。陰極枠体4、陽極枠体6、陰極側上壁部材8、陽極側上壁部材10、陰極側下壁部材12、陽極側下壁部材14、陰極側前壁部材16、陽極側前壁部材、陰極側後壁部材18及び陽極側後壁部材の相互連結部位間にはガスケットの如き適宜の密封部材(図示していない)を介在在させることができる。
【0017】
図1及び
図2と共に
図3を参照して説明を続けると、上記陰極枠体4の内面(
図1において左側面)の上端部には幅方向(
図1において紙面に垂直な方向、
図2において左右方向)に等間隔をおいて複数個(図示の場合は6個)の上側開口20(
図1及び
図3にそのうちの1個を夫々破線及び実線で図示している)が形成され、そして陰極枠体4には上側開口20の各々から実質上水平に陰極枠体4を貫通して延びる複数個(図示の場合は6個)の上側流路22(
図1及び
図3にそのうちの1個を夫々破線及び実線で図示している)が形成されている。同様に、上記陰極枠体4の内面(
図1において左側面)の下端部には幅方向(
図1において紙面に垂直な方向、
図2において左右方向)に等間隔をおいて複数個(図示の場合は3個)の下側開口24(
図1にそのうちの1個を破線で図示している)が形成され、そして陰極枠体4には下側開口24の各々から実質上水平に陰極枠体4を貫通して延びる複数個(図示の場合は3個)の下側流路26(
図1にそのうちの1個を破線で図示している)が形成されている。上側開口20及び下側開口24は円形でよく、上側流路22の横断面形状及び下側流路26の横断面形状は上側開口20及び下側開口24の円形に合致した円形でよい。上流流路22と下流流路26とは、ハウジング2の外側に配設されている外側流路(図示していない)によって接続されており、外側流路31(
図2にその一部を図示している)には循環用ポンプ、製品貯蔵用タンク及び流動制御のための複数個の弁部材等も配設されている(外側流路及びこれに配設された上記のとおりの構成要素は当業者には周知であるので、これらについての詳細な説明は本明細書においては省略する)。
【0018】
陰極枠体4の内面には陰極板32が固定されている。図示の実施形態においては、陰極板32は陰極枠体4に形成されている上記上側開口20よりも上方から陰極枠体4に形成されている上記下側開口24よりも下方まで連続して延在している。陰極板32はニッケルの如き適宜の導電性金属から形成された矩形板から構成されており、その上端面は上記陰極側上壁部材8の内面(即ち下面)に当接乃至近接し、その下端面は上記陰極側下壁部材12の内面(即ち上面)に当接乃至近接し、その前側面は前壁部材16の内面(即ち後面)に当接乃至近接し、その後側面は上記後壁部材18の内面(即ち前面)に当接乃至近接している。陰極枠体4に対する陰極板32の固定は、例えば陰極板32の4角部において陰極板32を通して締結ねじ(図示していない)を陰極枠体4に螺着することによって好都合に実施することができる。陰極板32の上端部には幅方向(
図1において紙面に垂直な方向、
図2において左右方向)に等間隔をおいて複数個(図示の場合は6個)の上側貫通開口34が形成され、陰極板32の下端部には幅方向(
図1において紙面に垂直な方向、
図2において左右方向)に等間隔をおいて複数個(図示の場合は3個)の下側貫通開口36が形成されている(上側貫通開口34及び下側貫通開口36については後に更に言及する)。陰極板32に形成されている上側貫通開口34の各々は陰極枠体4の上端部に形成されている上記上側開口20の各々に夫々整合して位置している。図示に実施形態においては、上側貫通開口34の各々は上記上側開口20の各々と同一形状(従って円形)で且つ同一寸法である。同様に、陰極板32に形成されている下側貫通開口36の各々は陰極枠体4の下端部に形成されている上記下側開口24の各々に夫々整合して位置していることが重要である。図示の実施形態においては、下側貫通開口36の各々は上記下側開口24の各々と同一形状(従って円形)で且つ同一寸法である。上側貫通開口34(及び上側開口20)は陰極板32の上端に近接して位置し、下側貫通開口36(及び下側開口24)は陰極板32の下端に近接して位置するのが好ましい。
【0019】
図1と共に
図3を参照して説明を続けると、陰極枠体4と陰極板32との間にはガスケット38が介在されているのが好適である。ガスケット38によって陰極板32を陰極枠体4に安定して固定することができ、そしてまた陰極枠体4と陰極板32との界面への液体の浸透による腐食等を防止することができる。このガスケット38は陰極板32と実質上同一寸法の矩形板でよく(前述した如くガスケット38を陰極枠体4に対応した大きさにすることもできる)、適宜のエラストマ、例えばシリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロブレンゴム、軟質塩化ビニル、ブチルゴム、ブタジエンゴム又はフッ素ゴムから形成することができる。陰極枠体4と陰極板32との間にガスケット38を介在させる場合には、陰極板32の4角部において陰極板32と共にガスケット38を通して締結ねじ(図示していない)を陰極枠体4に螺着することができる。ガスケット38の上端部には、陰極板32に形成されている上側貫通開口34の各々と陰極枠体4に形成されている上側開口20の各々とを連通する複数個(図示の場合は6個の上側連通開口40が形成され、ガスケット38の下端部には、陰極板32に形成されている下側貫通開口36の各々と陰極枠体4に形成されている下側開口24の各々とを連通する複数個(図示の場合は3個)の下側連通開口42が形成されている。
図3を参照することによって明確に理解される如く、ガスケット38に形成される上側連通開口40及び下側連通開口42は、上側貫通開口34及び上側開口20並びに下側貫通開口36及び下側開口24よりも大きいことが望ましい。ガスケット38に形成される上側連通開口40及び下側連通開口42が上側貫通開口34及び上側開口20並びに下側貫通開口36及び下側開口24と実質上同一寸法である場合には、電解槽を連続して作動させると、ガスケット38が幾分膨張されて上側連通開口40及び下側連通開口42が縮小及び変位され、これに起因して上側貫通開口34と上側開口20との連通並びに下側貫通開口36と下側開口24との連通が不充分になる或いは毀損されてしまう傾向がある。上側連通開口40及び下側連通開口42は、上側貫通開口34及び上側開口20並びに下側貫通開口36及び下側開口24の直径よりも所定長さ大きい直径を有する円形でよい。上側連通開口40及び下側連通開口42の各々は、必ずしも上側貫通開口34及び上側開口20並びに下側貫通開口36及び下側開口24の各々と同心である必要はなく偏心させることもできる。上側連通開口40及び下側連通開口42の直径並びに上側貫通開口34及び上側開口20並びに下側貫通開口36及び下側開口24に対する偏心度合いは、電解槽の連続的作動によるガスケット38の膨張及び変位に基いて実験的に設定することができる。ガスケット38に形成される上側連通開口40及び下側連通開口42を大きくする程、連通が不充分になる或いは毀損される可能性は低くなるが、後述する如く陰極板32の裏面に液が触れる面積が増大することで、電食乃至腐食が発生し、液中に混入する電極金属が増加してしまう。このため、ガスケット38に形成される上側連通開口40及び下側連通開口42としての好ましいサイズは、上側貫通開口34及び上側開口20並びに下側貫通開口36及び下側開口24のサイズの+30mm以下、好ましくは+20mm以下、より好ましくは+10mm以下である。また、ガスケット38に膨張しにくい材質を用いれば、上側連通開口40及び下側連通開口42のサイズが上側貫通開口34及び上側開口20並びに下側貫通開口36及び下側開口24のサイズに近い場合でも連通が不充分になる或いは毀損される可能性は低くなる。そのため、ガスケット38に使用する材質としては、線膨張係数が3×10
-4(1/℃)以下、好ましくは3×10
-4(1/℃)以下、より好ましくは1.5×10
-4(1/℃)以下、最も好ましくは1×10
-4(1/℃)以下である。
【0020】
図示の実施形態においては、陽極枠体6は上述した陰極枠体4と実質上同一である。更に詳しくは、陰極枠体4と陽極枠体6とは両者間を
図1において紙面に垂直に延びる仮想面を対称面とする面対称をなす。従って、陽極枠体6には、上側開口44、上側流路46、下側開口48及び下側流路50が配設されている。説明の重複を避けるため、上側開口44、上側流路46、下側開口48及び下側流路50の詳細な説明は省略する。上側流路46と下側流路50とはハウジング2の外側に配設されている外側流路(図示していない)によって接続されており、外側流路には循環用ポンプ、原料貯蔵用タンク及び流動制御のための複数個の弁部材等も配設されている(外側流路及びこれに配設された上記のとおりの構成要素は当業者には周知であるので、これらについての詳細な説明は本明細書においては省略する)。
【0021】
陽極枠体6の内面には陽極板56が固定されている。図示の実施形態において、陽極板56は、陽極に適した適宜の導電性金属、例えば表面に酸化インジウムをメッキしたチタン、から形成されている点を除き、上述した陰極板32と実質上同一である。更に詳しくは、陰極陰板32と陽極板56とは両者間を
図1において紙面に垂直に延びる仮想面を対称面とする面対称をなす。従って、陽極板56は陽極枠体6に形成されている上記上側開口44よりも上方から陽極枠体6に形成されている上記下側開口48よりも下方まで連続して延在してする矩形状である。そして、陽極板56には、陽極枠体6に形成されている上側開口44及び下側開口48に夫々に整合して位置する上側貫通開口58及び下側貫通開口60が形成されている。説明の重複を避けるために、陽極板56の詳細な説明は省略する。
【0022】
図示の実施形態においては、陽極枠体6と陽極板56との間にもガスケット62が介在されている。このガスケット62も、陰極枠体4と陰極板32との間に介在されているガスケット38と実質上同一である。更に詳しくは、ガスケット38とガスケット62とは両者間を
図1において紙面に垂直に延びる仮想面を対称面とする面対称をなす。従って、ガスケット62には、陽極枠体6に形成されている上側開口44と陽極板56に形成されている上側貫通開口58を連通する上側連通開口64と共に陽極枠体6に形成されている下側開口48と陽極板56に形成されている下側貫通開口60を連通する及び下側連通開口66が形成されている。説明の重複を避けるために、ガスケット62並びに上側連通開口64及び下側連通開口66の詳細については説明を省略する。
【0023】
図1を参照することによって明確に理解されるとおり、図示の実施形態においては、陰極板32と陽極板56との間にはカチオン交換膜68が配設されている。それ自体は周知の形態でよいカチオン交換膜68は矩形板形状であり、その上端縁部は陰極側上壁部材8と陽極側上壁部材10の間に把持され、その下端縁部は陰極側下壁部材12と陽極側下壁部材14との間には把持され、陰極枠体4及び陽極枠体6の前面側縁部は陰極側前壁部材16と陽極側前壁部材の間に把持され、陰極枠体4及び陽極枠体6の後面側縁部は陰極側後壁部材18と陽極側後壁部材との間には把持されている。カチオン交換膜68と陰極側上壁部材8及び陽極側上壁部材10、陰極側下壁部材12及び陽極側下壁部材14、陰極側前壁部材16と陽極側前壁部材、並びに陰極側後壁部材18と陽極側後壁部材の各々との間には適宜のシール部材(図示していない)を介在させることがはできる。
【0024】
上述したとおりの電解槽においては、陰極板32とカチオン交換膜68との間に陰極室乃至製品室70が規定され、陽極板56とカチオン交換膜68との間に陽極室即ち原料室72が規定されている。そして、当初は希釈化された水酸化第4級アンモニウム水溶液(又は純水)が製品室70を通して循環され、更に詳しくは陰極枠体4に形成されている下側流路26と上側流路22との一方を通して製品室70に流入され他方を通して製品室70から流出される。同時に、4級アンモニウム塩水溶液が原料室72を通して循環され、更に詳しくは陽極枠体6に形成されている下側流路50と上側流路46との一方を通して原料室72に流入され他方を通して流出される。陰極板32と陽極板56との間には電解電圧が印加される。かくして、製品室70を循環する水酸化第4級アンモニウム水溶液の濃度が漸次増大される。かような電解作用は当業者には周知であるので、その詳細な説明は本明細書においては省略する。而して、本発明に従って構成された電解槽の図示の実施形態においては、陰極板32及び陽極板56の各々は陰極枠体4及び陽極枠体6に形成されている上側開口20及び44よりも上方から下側開口24及び48よりも下方まで連続して延びる形態であり、陰極板32及び陽極板56の各々に上側開口20及び44並びに下側開口24及び48に整合する上側貫通開口34及び58並びに下側貫通開口36及び60が形成されている故に、陰極板32及び陽極板56は夫々陰極枠体4及び陽極枠体6の内面の略全体に渡って延在し、従って電解槽の大きさに対する陰極板32及び陽極板56の相対的通電面積が大きく、かくして向上された電解効率によって電解が遂行される。
【0025】
本発明に従って構成された電解槽においては、陰極側流体排出路の有効流路断面積CDは陰極側流体供給路の有効流路断面積CSよりも大きく、同様に陽極側流体排出路の有効流路断面積ADは陽極側流体供給路の有効流路断面積ASよりも大きいことが重要である。語句「有効流路断面積」は流路中の最小横断面積を意味する。図示の実施形態においては、陰極側流体排出路CDは、陰極板32の形成されている6個の上側貫通開口34と共に上側貫通開口34に続く上側連通開口40、上側開口20、上側流路22及び外側流路31の一部によって規定されており、上側連通開口34、上側開口20、上側流路22及び外側流路31の一部の横断面積は上側貫通開口34の横断面積と同一或いはこれよりも大きく、従って陰極側流体排出路の有効流路断面積CDは6個の上側貫通開口34の合計横断面積によって規定される。また、陰極側流体供給路CSは、陰極板32に形成されている3個の下側貫通開口36と共に下側貫通開口36に続く下側連通開口42、上側開口24、下側流路26及び外側流路31の一部によって規定されており、下側連通開口42、下側開口24、下側流路26及び外側流路31の一部の横断面積は下側貫通開口36の横断面積と同一或いはこれよりも大きく、従って陰極側流体排出路の有効流路断面積CDは3個の下側貫通開口36の合計横断面積によって規定される。特に排出される流体による背圧上昇の抑制の観点から、外側流路31の一部の横断面積は、上側連通開口34乃至下側貫通開口36の横断面積よりも大きいことが好ましい。具体的には、外側流路31の一部の横断面積は、上側連通開口34乃至下側貫通開口36の横断面積の1.0倍以上が好ましく、1.5倍以上がより好ましい。上側連通開口34乃至下側貫通開口36に対する外側流路31の一部の横断面積は、有効流路断面積と流体の供給量を勘案して適宜決定される。
【0026】
図示の実施形態においては、上述したとおり上側貫通開口34は幅方向(
図1において紙面に垂直な方向、
図2において左右方向)に等間隔をおいて6個形成されているのに対して、下側貫通開口36は幅方向(
図1において紙面に垂直な方向、
図2において左右方向)に等間隔をおいて3個形成されており、6個の上側貫通開口34の各々の横断面積と3個の下側貫通通開口36の各々の横断面積は全て同一である。従って、陰極側流体排出路の有効流路断面積CDは陰極側流体供給路の有効流路断面積CSの2倍である。後述する実施例からも理解される如く、陰極側流体排出路の有効流路断面積CDは陰極側流体供給路の有効流路断面積CSの1.1乃至3.0倍(CD=1.1乃至3.0CS)、特に1.5乃至2.5倍(CD=1.5乃至2.5CS)であるのが好ましい。
【0027】
陰極板32に形成されている上側貫通開口34及び下側貫通開口36の横断面積は、最大限の電界効率を達成するために必要最小限に設定することが望まれる。然るに、本発明者等は、電解槽の作動について鋭意検討及び実験を重ねた結果、陰極室32においては電解作用に起因してガスが生成され、陰極側流体排出路においては陰極側流体に加えて生成されたガスも流動される。それ故に、陰極側流体排出路の有効流路断面積CDを陰極側流体供給路の有効流路断面積CSと同一に設定すると、陰極側流体排出路では陰極側流体供給路に比べて流速が増大されて背圧が生成され、これに起因して電解電圧が上昇され電解槽の安定した作動が阻害される傾向がある。然るに、本発明に従って構成された電解槽においては、陰極側流体排出路の有効流路断面積CDは陰極側流体供給路の有効流路断面積CSよりも大きく設定されている故に、後述する実施例からも明確に理解されるとおり、電解電圧の上昇が回避され電解槽の安定した作動が確保される。
【0028】
図1乃至
図3に図示する上述したとおりの形態においては、上側貫通開口34の個数(6個)を下側貫通開口36の個数(3個)よりも多くして、陰極側流体排出路の有効流路断面積CDを陰極側流体供給路の有効流路断面積CSよりも大きくしているが、所望ならば、上側貫通開口34の個数と下側貫通開口36の個数とを同一にして、上側貫通開口34の各々の横断面積を下側貫通開口36の各々の横断面積よりも大きく設定して、陰極側流体排出路の有効流路断面積CDを陰極側流体供給路の有効流路断面積CSよりも大きくすることもできる。
図4に図示する変形例においては、陰極板32の上端部には幅方向(
図4において左右方向)に等間隔をおいて3個の上側貫通開口34が形成され(従って、上側連通開口40、上側開口20及び上側流路22も夫々3個形成されている)、陰極板32の下端部には幅方向(
図4において左右方向)に等間隔をおいて3個の下側貫通開口36が形成されており、上側貫通開口34の各々の横断面積は下側貫通開口36の各々の横断面の2倍に設定されている。然るに、本発明者等の経験によれば、上側貫通開口34の各々の横断面積を下側貫通開口36の各々の横断面積よりも大きく設定するよりも、上側貫通開口34の個数を下側貫通開口36の個数よりも多くする方が、排出流がより一層円滑になる傾向がある。
【0029】
上述した実施形態及び変形例においては、陰極板32に幅方向に等間隔をおいて複数個の上側貫通開口34及び下側貫通開口36を形成しているが、所望ならば陰極板32に幅方向に細長く延在する1個の上側貫通開口及び下側貫通開口を形成し、上側貫通開口34の横断面積を下側貫通開口36の横断面積よりも大きくすることもできる。
【0030】
更に、上述した実施例及び変形例においては、陰極板32は陰極枠体4に形成されている上側開口20よりも上方から陰極枠体4に形成されている下側開口24よりも下方まで連続して延在する形態であり、陰極板32の上端部には幅方向(
図1において紙面に垂直な方向、
図2及び
図4において左右方向)に等間隔をおいて複数個の上側貫通開口34が形成され、陰極板32の下端部に幅方向(
図1において紙面に垂直な方向、
図2及び
図4において左右方向)に等間隔をおいて複数個の下側貫通開口36が形成されているが、所望ならば、例えば陰極板32を陰極枠体4に形成されている上側開口20よりも下方から陰極枠体4に形成されている下側開口24よりも上方までの間を延在する形態にして、陰極板32には上側貫通開口34及び下側貫通開口36を形成することなく、陰極側流体排出路の上流端は陰極枠体4に形成された上側開口20によって規定し、陰極側流体供給路の下流側は陰極枠体4に形成された下側開口24によって規定することもできる。かかる場合には、陰極側流体排出路の有効流路断面積は上側開口20の合計横断面積によって規定され、陰極側流体供給路の裕子流路断面積は下側開口24の合計横断面積によって規定される。
【0031】
陰極側流体排出路の有効流路断面積CDと陰極側流体供給路の有効流路断面積CSとの関係について具体的に説明したが、陽極側流体排出路の有効流路断面積ADと陽極側流体供給路の有効流路断面積ASとの関係も全く同様であり、説明の重複をさせるために、陽極側流体排出路の有効流路断面積ADと陽極側流体供給路の有効流路断面積ASとの関係についての具体的な説明は省略する。
【0032】
実施例1乃至3及び比較例1
図1乃至
図3或いは
図4に図示するとおりの形態の電解槽を作成し、定電流制御様式で作動させ、作動時間中のセル電圧(陽極板と陰極板との間の電圧)の平均値を検出した。実施例1乃至3においては、陰極側流体排出路の有効流路断面積CDは陰極側流体供給路の有効流路断面積CSよりも大きく、同様に陽極側流体排出路の有効流路断面積ADは陽極側流体供給路の有効流路断面積ASよりも大きかった。一方、比較例1においては、陰極側流体排出路の有効流路断面積CDと陰極側流体供給路の有効流路断面積CSとは同一であり、同様に陽極側流体排出路の有効流路断面積ADと陽極側流体供給路の有効流路断面積ASとは同一であった。セル電圧の平均値は表1に示すとおりであった。
【0033】
電解槽の構成要素の詳細及び作動状態は、次のとおりである。
作動時間: 30日間
陰極:ニッケル板(厚さ2mm、表面寸法1m×1m)
陽極:表面に酸化インジウムをメッキしたチタン板(厚さ2mm、
表面寸法1m×1m)
カチオン交換膜:ケマーズ社(Chemours Company)から製品名
「N324」として販売されている交換膜(厚さ1mm)
ガスケット:EPDM(上側連通開口及び下側連通開口の直径は対応する上側貫通開口及び下側貫通開口の直径よりの夫々2mm大きい)
原料(陽極側流体):塩化メチルアンモニウム水溶液
製品(陰極側流体):水酸化メチルアンモニウム水溶液
電流:1000A(10A/dm2)
作動温度:70℃
電解槽組み立て時温度:20℃
原料(陽極側流体)流量:20L/min
製品(陰極側流体)流量:20L/min
【0034】
【0035】
本発明の好適実施形態を図示している添付図面を参照して詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲から逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能であることは多言を要しない。例えば、図示の実施形態においては、陰極板32と陽極板56との間に1個のカチオン交換膜68が配設されているが、陰極板32と陽極板56との間に複数個の交換膜(カチオン交換膜及びアニオン交換膜)が配設されている電解槽にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
2:電解槽のハウジング
4:陰極枠体
6:陽極枠体
8:陰極側上壁部材
10:陽極側上壁部材
12:陰極側下壁部材
14:陽極側下壁部材
16:陰極側前壁部材
18:陰極側後壁部材
20:上側開口
22:上側流路
24:下側開口
26:下側流路
31:外側流路
32:陰極板
34:上側貫通開口
36:下側貫通開口
38:ガスケット
40:上側連通開口
42:下側連通開口
44:上側開口
46:上側流路
48:下側開口
50:下側流路
56:陽極板
58:上側貫通開口
60:下側貫通開口
62:ガスケット
64:上側連通開口
66:下側連通開口
68:カチオン交換膜
70:製品室(陰極室)
72:原料室(陽極室)
【手続補正書】
【提出日】2023-05-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面に陰極板が固定された陰極枠体と、内面に陽極板が固定された陽極枠体と、該陰極枠体と該陽極枠体との間に配設されたイオン交換膜と、該陰極枠体と該イオン交換膜との間に規定された陰極室に陰極側流体を供給するための陰極側流体供給路と、該陰極室から陰極側流体を排出するための陰極側流体排出路と、該陽極枠体と該イオン交換膜との間に規定された陽極室に陽極側流体を供給するための陽極側流体供給路と、該陽極室から陽極側流体を排出するための陽極側流体排出路とを含む電解槽において、
該陰極側流体排出路の有効流路断面積CDは該陰極側流体供給路の有効流路断面積CSよりも大きく、該陽極側流体排出路の有効流路断面積ADは該陽極側流体供給路の有効流路断面積ASよりも大きい、
ことを特徴とする電解槽。
【請求項2】
該有効流路断面積CDは該有効流路断面積CSの1.1乃至3.0倍(CD=1.1乃至3.0CS)であり、該有効流路断面積ADは該有効流路断面積ASの1.1乃至3.0倍(AD=1.1乃至3.0AS)である、請求項1記載の電解槽。
【請求項3】
該有効流路断面積CDは該有効流路断面積CSの1.5乃至2.5倍(CD=1.5乃至2.5CS)であり、該有効流路断面積ADは該有効流路断面積ASの1.5乃至2.5倍(AD=1.5乃至2.5AS)である、請求項2記載の電解槽。
【請求項4】
該陰極枠体には、該内面の上端部に位置する上側開口から延びる少なくとも1個の上側流路及び該内面の下端部に位置する下側開口から延びる少なくとも1個の下側流路が配設されており、
該陽極枠体には、該内面の上端部に位置する上側開口から延びる少なくとも1個の上側流路及び該内面の下端部に位置する下側開口から延びる少なくとも1個の下側流路が配設されており、
該陰極板は該陰極枠体の該上側開口よりも上方から該陰極枠体の該下側開口よりも下方まで連続して延在し、
該陰極板の上端部には該陰極枠体の該上側開口に整合する少なくとも1個の上側貫通開口が形成されており、該陰極板の下端部には該陰極枠体の該下側開口に整合する少なくとも1個の下側貫通開口が形成されており、
該陽極板は該陽極枠体の該上側開口よりも上方から該陽極枠体の該下側開口よりも下方まで連続して延在し、
該陽極板の上端部には該陽極枠体の該上側開口に整合する少なくとも1個の上側貫通開口が形成されており、該陽極板の下端部には該陽極枠体の該下側開口に整合する少なくとも1個の下側貫通開口が形成されており、
該陰極板の該上側貫通開口及び該陰極枠体の該上側流路が該陰極側流体排出路と該陰極側流体供給路との一方を構成し、該陰極板の該下側貫通開口及び該陰極枠体の該下側流路が該陰極側流体排出路と該陰極側流体供給路との他方を構成し、
該陽極板の該上側貫通開口及び該陽極枠体の該上側流路が該陽極側流体排出路と該陽極側流体供給路との一方を構成し、該陽極板の該下側貫通開口及び該陽極枠体の該下側流路が該陽極側流体排出路と該陽極側流体供給路との他方を構成する、
請求項1から3までのいずれかに記載の電解槽。
【請求項5】
該陰極枠体には、該内面の上端部に幅方向に間隔をおいて配置された複数個の上側開口から延びる複数個の上側流路及び該内面の下端部に幅方向に間隔をおいて配置された複数個の下側開口から延びる複数個の下側流路が配設されており、
該陽極枠体には、該内面の上端部に幅方向に間隔をおいて配置された複数個の上側開口から延びる複数個の上側流路及び該内面の下端部に幅方向に間隔をおいて配置された複数個の下側開口から延びる複数個の下側流路が配設されており、
該陰極板の上端部には該陰極枠体の該複数個の上側開口の各々に夫々整合する複数個の上側貫通開口が形成されており、該陰極板の下端部には該陰極枠体の該複数個の下側開口の各々に夫々整合する複数個の下側貫通開口が形成されており、
該陽極板の上端部には該陽極枠体の該複数個の上側開口の各々に夫々整合する複数個の上側貫通開口が形成されており、該陽極板の下端部には該陽極枠体の該複数個の下側開口の各々に夫々整合する複数個の下側貫通開口が形成されており、
該陰極側流体排出路を構成する該陰極板の該上側貫通開口及び該陰極枠体の該上側流路又は該陰極板の該下側貫通開口及び該陰極枠体の該下側流路の数は、該陰極側流体供給路を構成する該陰極板の該下側貫通開口及び該陰極枠体の該下側流路又は該陰極板の該上側貫通開口及び該陰極枠体の該上側流路の数よりも多く、
該陽極側流体排出路を構成する該陽極板の該上側貫通開口及び該陽極枠体の該上側流路又は該陽極板の該下側貫通開口及び該陽極枠体の該下側流路の数は、該陽極側流体供給路を構成する該陽極板の該下側貫通開口及び該陽極枠体の該下側流路又は該陽極板の該上側貫通開口及び該陽極枠体の該上側流路の数よりも多い、
請求項4記載の電解槽。
【請求項6】
該陰極枠体の該上側開口及び該下側開口並びに該陰極板の該上側貫通開口及び該下側貫通開口は円形断面形状を有し、
該陽極枠体の該上側開口及び該下側開口並びに該陽極板の該上側貫通開口及び該下側貫通開口は円形断面形状を有する、
請求項5記載の電解槽。
【請求項7】
該陰極板及び該陽極板は矩形板から構成されている、請求項4記載の電解槽。
【請求項8】
該陰極板と該陽極板との間には少なくとも1個の陽イオン交換膜が配置されている、請求項1から3までのいずれかに記載の電解槽を使用して、第4級アンモニウム塩水溶液を原料として水酸化第4級アンモニウム水溶液を製造する方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0002
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0002】
下記特許文献1乃至4には、第4級アンモニウム塩水溶液を原料として水酸化第4級アンモニウム水溶液を製造する製造方法が開示されている。かような製造方法の実施には、陰極枠体とこの陰極枠体の内面に固定された陰極板と陽極枠体とこの陽極枠体の内面に固定された陽極板とを含む電解槽が使用される。陰極板と陽極板との間には少なくとも1個の陽イオン交換膜が配設されており、陰極枠体と陽イオン交換膜との間には陰極室が規定され、陽極枠体と陽イオン交換膜との間には陽極室が規定されている。そして、陰極室に陰極側流体を供給するための陰極側流体供給路及び陰極室から陰極側流体を排出するための陰極側流体排出路並びに陽極室に陽極側流体を供給するための陽極側流体供給路及び陽極室から陽極側流体を排出するための陽極側流体排出路が配設されている。更に詳しくは、陰極枠体には幅方向に間隔をおいて配置された複数個の上側開口から延びる複数個の上側流路及び幅方向に間隔をおいて配置された複数個の下側開口から延びる複数個の下側流路が配設されており、上側流路と下側流路との一方が上記陰極側流体排出路を構成し、上側流路と下側流路との他方が上記陰極側流体供給路を構成する。同様に陽極枠体には幅方向に間隔をおいて配置された複数個の上側開口から延びる複数個の上側流路及び幅方向に間隔をおいて配置された複数個の下側開口から延びる複数個の下側流路が配設されており、上側流路と下側流路との一方が上記陽極側流体排出路を構成し、上側流路と下側流路との他方が上記陽極側流体供給路を構成する。陰極側流体供給路、陰極室及び陰極側流体排出路を通して陰極側流体即ち水酸化第4級アンモニウム水溶液が循環され、陽極側流体供給路、陽極室及び陽極側流体排出路を通して陽極側流体即ち第4級アンモニウム塩水溶液が循環される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明者等は、本発明者等が認識した上記のとおりの事実を踏まえ、陰極側流体排出路の有効流路断面積CDを陰極側流体供給路の有効流路断面積CSよりも大きくし、そしてまた陽極側流体排出路の有効流路断面積ADを陽極側流体供給路の有効流路断面積ASよりも大きくすることによって、上記主たる技術的課題を達成することができることを見出した。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
該有効流路断面積CDは該有効流路断面積CSの1.1乃至3.0倍(CD=1.1乃至3.0CS)であり、該有効流路断面積ADは該有効流路断面積ASの1.1乃至3.0倍(AD=1.1乃至3.0AS)である、特に該有効流路断面積CDは該有効流路断面積CSの1.5乃至2.5倍(CD=1.5乃至2.5CS)であり、該有効流路断面積ADは該有効流路断面積ASの1.5乃至2.5倍(AD=1.5乃至2.5AS)である、のが好ましい。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
好適実施形態においては、
該陰極枠体には、該内面の上端部に位置する上側開口から延びる少なくとも1個の上側流路及び該内面の下端部に位置する下側開口から延びる少なくとも1個の下側流路が配設されており、
該陽極枠体には、該内面の上端部に位置する上側開口から延びる少なくとも1個の上側流路及び該内面の下端部に位置する下側開口から延びる少なくとも1個の下側流路が配設されており、
該陰極板は該陰極枠体の該上側開口よりも上方から該陰極枠体の該下側開口よりも下方まで連続して延在し、
該陰極板の上端部には該陰極枠体の該上側開口に整合する少なくとも1個の上側貫通開口が形成されており、該陰極板の下端部には該陰極枠体の該下側開口に整合する少なくとも1個の下側貫通開口が形成されており、
該陽極板は該陽極枠体の該上側開口よりも上方から該陽極枠体の該下側開口よりも下方まで連続して延在し、
該陽極板の上端部には該陽極枠体の該上側開口に整合する少なくとも1個の上側貫通開口が形成されており、該陽極板の下端部には該陽極枠体の該下側開口に整合する少なくとも1個の下側貫通開口が形成されており、
該陰極板の該上側貫通開口及び該陰極枠体の該上側流路が該陰極側流体排出路と該陰極側流体供給路との一方を構成し、該陰極板の該下側貫通開口及び該陰極枠体の該下側流路が該陰極側流体排出路と該陰極側流体供給路との他方を構成し、
該陽極板の該上側貫通開口及び該陽極枠体の該上側流路が該陽極側流体排出路と該陽極側流体供給路との一方を構成し、該陽極板の該下側貫通開口及び該陽極枠体の該下側流路が該陽極側流体排出路と該陽極側流体供給路との他方を構成する。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
好ましくは、該陰極枠体には、該内面の上端部に幅方向に間隔をおいて配置された複数個の上側開口から延びる複数個の上側流路及び該内面の下端部に幅方向に間隔をおいて配置された複数個の下側開口から延びる複数個の下側流路が配設されており、
該陽極枠体には、該内面の上端部に幅方向に間隔をおいて配置された複数個の上側開口から延びる複数個の上側流路及び該内面の下端部に幅方向に間隔をおいて配置された複数個の下側開口から延びる複数個の下側流路が配設されており、
該陰極板の上端部には該陰極枠体の該複数個の上側開口の各々に夫々整合する複数個の上側貫通開口が形成されており、該陰極板の下端部には該陰極枠体の該複数個の下側開口の各々に夫々整合する複数個の下側貫通開口が形成されており、
該陽極板の上端部には該陽極枠体の該複数個の上側開口の各々に夫々整合する複数個の上側貫通開口が形成されており、該陽極板の下端部には該陽極枠体の該複数個の下側開口の各々に夫々整合する複数個の下側貫通開口が形成されており、
該陰極側流体排出路を構成する該陰極板の該上側貫通開口及び該陰極枠体の該上側流路又は該陰極板の該下側貫通開口及び該陰極枠体の該下側流路の数は、該陰極側流体供給路を構成する該陰極板の該下側貫通開口及び該陰極枠体の該下側流路又は該陰極板の該上側貫通開口及び該陰極枠体の該上側流路の数よりも多く、
該陽極側流体排出路を構成する該陽極板の該上側貫通開口及び該陽極枠体の該上側流路又は該陽極板の該下側貫通開口及び該陽極枠体の該下側流路の数は、該陽極側流体供給路を構成する該陽極板の該下側貫通開口及び該陽極枠体の該下側流路又は該陽極板の該上側貫通開口及び該陽極枠体の該上側流路の数よりも多い。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本発明の好適形態においては、上述したとおりの電解槽において該陰極板と該陽極板との間に少なくとも1個の陽イオン交換膜を配置し、かかる電解槽を使用して第4級アンモニウム塩水溶液を原料として水酸化第4級アンモニウム水溶液を製造する。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
本発明の電解槽においては、陰極側流体排出路の有効流路断面積CDは陰極側流体供給路の有効流路断面積CSよりも大きく、陽極側流体排出路の有効流路断面積ADは陽極側流体供給路の有効流路断面積ASよりも大きい故に、後述する実施例からも明確に理解されるとおり、電解電圧の上昇が回避され電解槽の安定した作動が確保される。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
図1及び
図2を参照して説明すると、本発明に従って構成された図示の電解槽は、陰極枠体4(
図1)、陽極枠体6(
図1)、陰極側上壁部材8、陽極側上壁部材10、陰極側下壁部材12、陽極側下壁部材14、陰極側前壁部材16(
図2)、陽極側前壁部材(図示していない)、陰極側後壁部材18(
図2)及び陽極側後壁部材(図示していない)によって構成された、中空直方体形状のハウジング2を含んでいる。陰極枠体4、陽極枠体6、陰極側前壁部材16、陽極側前壁部材、陰極側後壁部材18及び陽極側後壁部材は実質上垂直に延在し、陰極側上壁部材8、陽極側上壁部材10、陰極側下壁部材12及び陽極側下壁部材14は実質上水平に延在している。陰極側上壁部材8の基端面(
図1において右端面)は、締結ねじ或いは接着剤の如き適宜の連結手段によって陰極枠体4の内面上端縁部に連結され、陰極側下壁部材12の基端面(
図1において右端面)は適宜の連結手段によって陰極枠体4の内面下端縁部に連結されている。同様に、陽極側上壁部材10の基端面(
図1において左端面)は、適宜の連結手段によって陽極枠体6の内面上端縁部に連結され、陽極側下壁部材14の基端面(
図1において左端面)は適宜の連結手段によって陽極枠体
6の内面下端縁部に連結されている。陰極側前壁部材16は陰極枠体4の前面に、陽極側前壁部材は陽極枠体6の前面に、適宜の連結手段によって連結され、陰極側後壁部材18は陰極枠体4の後面に、陽極側後壁部材は陽極枠体6の後面に、適宜の連結手段によって連結されている。陰極側及び陽極側の各々の上壁部材8及び10、下壁部材12及び14、並びに前壁部材16及び後壁部材18は、上記のとおり陰極枠体4又は陽極枠体6に連結することに代えて、これら壁部材をあらかじめ一体に形成して、陰極枠体4又は陽極枠体6に連結することもできる。また、陰極枠体4又は陽極枠体6に壁部を一体に形成することもできる。更に、上壁部材8及び10、下壁部材12及び14、並びに前壁部材16及び後壁部材18を一体に形成した場合は、陰極枠体4又は陽極枠体6にシール部材を介在させて固定することもできる。シール部材としては、後述するガスケット38を陰極板32又は陽極板56に対応するサイズから陰極枠体4又は陽極枠体6に対応するサイズまで延在させて、延長部を利用することもできる。陰極枠体4、陽極枠体6、陰極側上壁部材8、陽極側上壁部材10、陰極側下壁部材12、陽極側下壁部材14、陰極側前壁部材16、陽極側前壁部材、陰極側後壁部材18及び陽極側後壁部材は、後述する開口及び流路を除いて中実ブロック乃至板形態でよく、ポリプロピレン及びポリエチレンの如きオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂並びにフッソ系樹脂の如き適宜の合成樹脂から形成することができる。陰極枠体4、陽極枠体6、陰極側上壁部材8、陽極側上壁部材10、陰極側下壁部材12、陽極側下壁部材14、陰極側前壁部材16、陽極側前壁部材、陰極側後壁部材18及び陽極側後壁部材の相互連結部位間にはガスケットの如き適宜の密封部材(図示していない)を介在在させることができる。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
陰極枠体4の内面には陰極板32が固定されている。図示の実施形態においては、陰極板32は陰極枠体4に形成されている上記上側開口20よりも上方から陰極枠体4に形成されている上記下側開口24よりも下方まで連続して延在している。陰極板32はニッケルの如き適宜の導電性金属から形成された矩形板から構成されており、その上端面は上記陰極側上壁部材8の内面(即ち下面)に当接乃至近接し、その下端面は上記陰極側下壁部材12の内面(即ち上面)に当接乃至近接し、その前側面は前壁部材16の内面(即ち後面)に当接乃至近接し、その後側面は上記後壁部材18の内面(即ち前面)に当接乃至近接している。陰極枠体4に対する陰極板32の固定は、例えば陰極板32の4角部において陰極板32を通して締結ねじ(図示していない)を陰極枠体4に螺着することによって好都合に実施することができる。陰極板32の上端部には幅方向(
図1において紙面に垂直な方向、
図2において左右方向)に等間隔をおいて複数個(図示の場合は6個)の上側貫通開口34が形成され、陰極板32の下端部には幅方向(
図1において紙面に垂直な方向、
図2において左右方向)に等間隔をおいて複数個(図示の場合は3個)の下側貫通開口36が形成されている(上側貫通開口34及び下側貫通開口36については後に更に言及する)。陰極板32に形成されている上側貫通開口34の各々は陰極枠体4の上端部に形成されている上記上側開口20の各々に夫々整合して位置している。図示
の実施形態においては、上側貫通開口34の各々は上記上側開口20の各々と同一形状(従って円形)で且つ同一寸法である。同様に、陰極板32に形成されている下側貫通開口36の各々は陰極枠体4の下端部に形成されている上記下側開口24の各々に夫々整合して位置していることが重要である。図示の実施形態においては、下側貫通開口36の各々は上記下側開口24の各々と同一形状(従って円形)で且つ同一寸法である。上側貫通開口34(及び上側開口20)は陰極板32の上端に近接して位置し、下側貫通開口36(及び下側開口24)は陰極板32の下端に近接して位置するのが好ましい。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
図1と共に
図3を参照して説明を続けると、陰極枠体4と陰極板32との間にはガスケット38が介在されているのが好適である。ガスケット38によって陰極板32を陰極枠体4に安定して固定することができ、そしてまた陰極枠体4と陰極板32との界面への液体の浸透による腐食等を防止することができる。このガスケット38は陰極板32と実質上同一寸法の矩形板でよく(前述した如くガスケット38を陰極枠体4に対応した大きさにすることもできる)、適宜のエラストマ、例えばシリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロ
プレンゴム、軟質塩化ビニル、ブチルゴム、ブタジエンゴム又はフッ素ゴムから形成することができる。陰極枠体4と陰極板32との間にガスケット38を介在させる場合には、陰極板32の4角部において陰極板32と共にガスケット38を通して締結ねじ(図示していない)を陰極枠体4に螺着することができる。ガスケット38の上端部には、陰極板32に形成されている上側貫通開口34の各々と陰極枠体4に形成されている上側開口20の各々とを連通する複数個(図示の場合は6個の上側連通開口40が形成され、ガスケット38の下端部には、陰極板32に形成されている下側貫通開口36の各々と陰極枠体4に形成されている下側開口24の各々とを連通する複数個(図示の場合は3個)の下側連通開口42が形成されている。
図3を参照することによって明確に理解される如く、ガスケット38に形成される上側連通開口40及び下側連通開口42は、上側貫通開口34及び上側開口20並びに下側貫通開口36及び下側開口24よりも大きいことが望ましい。ガスケット38に形成される上側連通開口40及び下側連通開口42が上側貫通開口34及び上側開口20並びに下側貫通開口36及び下側開口24と実質上同一寸法である場合には、電解槽を連続して作動させると、ガスケット38が幾分膨張されて上側連通開口40及び下側連通開口42が縮小及び変位され、これに起因して上側貫通開口34と上側開口20との連通並びに下側貫通開口36と下側開口24との連通が不充分になる或いは毀損されてしまう傾向がある。上側連通開口40及び下側連通開口42は、上側貫通開口34及び上側開口20並びに下側貫通開口36及び下側開口24の直径よりも所定長さ大きい直径を有する円形でよい。上側連通開口40及び下側連通開口42の各々は、必ずしも上側貫通開口34及び上側開口20並びに下側貫通開口36及び下側開口24の各々と同心である必要はなく偏心させることもできる。上側連通開口40及び下側連通開口42の直径並びに上側貫通開口34及び上側開口20並びに下側貫通開口36及び下側開口24に対する偏心度合いは、電解槽の連続的作動によるガスケット38の膨張及び変位に基いて実験的に設定することができる。ガスケット38に形成される上側連通開口40及び下側連通開口42を大きくする程、連通が不充分になる或いは毀損される可能性は低くなるが、後述する如く陰極板32の裏面に液が触れる面積が増大することで、電食乃至腐食が発生し、液中に混入する電極金属が増加してしまう。このため、ガスケット38に形成される上側連通開口40及び下側連通開口42としての好ましいサイズは、上側貫通開口34及び上側開口20並びに下側貫通開口36及び下側開口24のサイズの+30mm以下、好ましくは+20mm以下、より好ましくは+10mm以下である。また、ガスケット38に膨張しにくい材質を用いれば、上側連通開口40及び下側連通開口42のサイズが上側貫通開口34及び上側開口20並びに下側貫通開口36及び下側開口24のサイズに近い場合でも連通が不充分になる或いは毀損される可能性は低くなる。そのため、ガスケット38に使用する材質としては、線膨張係数
が好ましくは3×10
-4(1/℃)以下、より好ましくは1.5×10
-4(1/℃)以下、最も好ましくは1×10
-4(1/℃)以下である。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
陽極枠体6の内面には陽極板56が固定されている。図示の実施形態において、陽極板56は、陽極に適した適宜の導電性金属、例えば表面に酸化インジウムをメッキしたチタン、から形成されている点を除き、上述した陰極板32と実質上同一である。更に詳しくは、陰
極板32と陽極板56とは両者間を
図1において紙面に垂直に延びる仮想面を対称面とする面対称をなす。従って、陽極板56は陽極枠体6に形成されている上記上側開口44よりも上方から陽極枠体6に形成されている上記下側開口48よりも下方まで連続して延
在する矩形状である。そして、陽極板56には、陽極枠体6に形成されている上側開口44及び下側開口48に夫々に整合して位置する上側貫通開口58及び下側貫通開口60が形成されている。説明の重複を避けるために、陽極板56の詳細な説明は省略する。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
図示の実施形態においては、陽極枠体6と陽極板56との間にもガスケット62が介在されている。このガスケット62も、陰極枠体4と陰極板32との間に介在されているガスケット38と実質上同一である。更に詳しくは、ガスケット38とガスケット62とは両者間を
図1において紙面に垂直に延びる仮想面を対称面とする面対称をなす。従って、ガスケット62には、陽極枠体6に形成されている上側開口44と陽極板56に形成されている上側貫通開口58を連通する上側連通開口64と共に陽極枠体6に形成されている下側開口48と陽極板56に形成されている下側貫通開口60を連通す
る下側連通開口66が形成されている。説明の重複を避けるために、ガスケット62並びに上側連通開口64及び下側連通開口66の詳細については説明を省略する。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
図1を参照することによって明確に理解されるとおり、図示の実施形態においては、陰極板32と陽極板56との間にはカチオン交換膜68が配設されている。それ自体は周知の形態でよいカチオン交換膜68は矩形板形状であり、その上端縁部は陰極側上壁部材8と陽極側上壁部材10の間に把持され、その下端縁部は陰極側下壁部材12と陽極側下壁部材14との間
に把持され、陰極枠体4及び陽極枠体6の前面側縁部は陰極側前壁部材16と陽極側前壁部材の間に把持され、陰極枠体4及び陽極枠体6の後面側縁部は陰極側後壁部材18と陽極側後壁部材との間
に把持されている。カチオン交換膜68と陰極側上壁部材8及び陽極側上壁部材10、陰極側下壁部材12及び陽極側下壁部材14、陰極側前壁部材16と陽極側前壁部材、並びに陰極側後壁部材18と陽極側後壁部材の各々との間には適宜のシール部材(図示していない)を介在させること
ができる。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
本発明に従って構成された電解槽においては、陰極側流体排出路の有効流路断面積CDは陰極側流体供給路の有効流路断面積CSよりも大きく、同様に陽極側流体排出路の有効流路断面積ADは陽極側流体供給路の有効流路断面積ASよりも大きいことが重要である。語句「有効流路断面積」は流路中の最小横断面積を意味する。図示の実施形態においては、陰極側流体排出路CDは、陰極板32の形成されている6個の上側貫通開口34と共に上側貫通開口34に続く上側連通開口40、上側開口20、上側流路22及び外側流路31の一部によって規定されており、上側連通開口34、上側開口20、上側流路22及び外側流路31の一部の横断面積は上側貫通開口34の横断面積と同一或いはこれよりも大きく、従って陰極側流体排出路の有効流路断面積CDは6個の上側貫通開口34の合計横断面積によって規定される。また、陰極側流体供給路の有効流路断面積CSは、陰極板32に形成されている3個の下側貫通開口36と共に下側貫通開口36に続く下側連通開口42、下側開口24、下側流路26及び外側流路31の一部によって規定されており、下側連通開口42、下側開口24、下側流路26及び外側流路31の一部の横断面積は下側貫通開口36の横断面積と同一或いはこれよりも大きく、従って陰極側流体排出路の有効流路断面積CDは3個の下側貫通開口36の合計横断面積によって規定される。特に排出される流体による背圧上昇の抑制の観点から、外側流路31の一部の横断面積は、上側貫通開口34乃至下側貫通開口36の横断面積よりも大きいことが好ましい。具体的には、外側流路31の一部の横断面積は、上側貫通開口34乃至下側貫通開口36の横断面積の1.0倍以上が好ましく、1.5倍以上がより好ましい。上側貫通開口34乃至下側貫通開口36に対する外側流路31の一部の横断面積は、有効流路断面積と流体の供給量を勘案して適宜決定される。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
図示の実施形態においては、上述したとおり上側貫通開口34は幅方向(
図1において紙面に垂直な方向、
図2において左右方向)に等間隔をおいて6個形成されているのに対して、下側貫通開口36は幅方向(
図1において紙面に垂直な方向、
図2において左右方向)に等間隔をおいて3個形成されており、6個の上側貫通開口34の各々の横断面積と3個の下側
貫通開口36の各々の横断面積は全て同一である。従って、陰極側流体排出路の有効流路断面積CDは陰極側流体供給路の有効流路断面積CSの2倍である。後述する実施例からも理解される如く、陰極側流体排出路の有効流路断面積CDは陰極側流体供給路の有効流路断面積CSの1.1乃至3.0倍(CD=1.1乃至3.0CS)、特に1.5乃至2.5倍(CD=1.5乃至2.5CS)であるのが好ましい。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
陰極板32に形成されている上側貫通開口34及び下側貫通開口36の横断面積は、最大限の電界効率を達成するために必要最小限に設定することが望まれる。然るに、本発明者等は、電解槽の作動について鋭意検討及び実験を重ねた結果、陰極室乃至製品室70においては電解作用に起因してガスが生成され、陰極側流体排出路においては陰極側流体に加えて生成されたガスも流動される。それ故に、陰極側流体排出路の有効流路断面積CDを陰極側流体供給路の有効流路断面積CSと同一に設定すると、陰極側流体排出路では陰極側流体供給路に比べて流速が増大されて背圧が生成され、これに起因して電解電圧が上昇され電解槽の安定した作動が阻害される傾向がある。然るに、本発明に従って構成された電解槽においては、陰極側流体排出路の有効流路断面積CDは陰極側流体供給路の有効流路断面積CSよりも大きく設定されている故に、後述する実施例からも明確に理解されるとおり、電解電圧の上昇が回避され電解槽の安定した作動が確保される。
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
図1乃至
図3に図示する上述したとおりの形態においては、上側貫通開口34の個数(6個)を下側貫通開口36の個数(3個)よりも多くして、陰極側流体排出路の有効流路断面積CDを陰極側流体供給路の有効流路断面積CSよりも大きくしているが、所望ならば、上側貫通開口34の個数と下側貫通開口36の個数とを同一にして、上側貫通開口34の各々の横断面積を下側貫通開口36の各々の横断面積よりも大きく設定して、陰極側流体排出路の有効流路断面積CDを陰極側流体供給路の有効流路断面積CSよりも大きくすることもできる。
図4に図示する変形例においては、陰極板32の上端部には幅方向(
図4において左右方向)に等間隔をおいて3個の上側貫通開口34が形成され(従って、上側連通開口40、上側開口20及び上側流路22も夫々3個形成されている)、陰極板32の下端部には幅方向(
図4において左右方向)に等間隔をおいて3個の下側貫通開口36が形成されており、上側貫通開口34の各々の横断面積は下側貫通開口36の各々の横断面
積の2倍に設定されている。然るに、本発明者等の経験によれば、上側貫通開口34の各々の横断面積を下側貫通開口36の各々の横断面積よりも大きく設定するよりも、上側貫通開口34の個数を下側貫通開口36の個数よりも多くする方が、排出流がより一層円滑になる傾向がある。
【手続補正19】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
更に、上述した実施
形態及び変形例においては、陰極板32は陰極枠体4に形成されている上側開口20よりも上方から陰極枠体4に形成されている下側開口24よりも下方まで連続して延在する形態であり、陰極板32の上端部には幅方向(
図1において紙面に垂直な方向、
図2及び
図4において左右方向)に等間隔をおいて複数個の上側貫通開口34が形成され、陰極板32の下端部に幅方向(
図1において紙面に垂直な方向、
図2及び
図4において左右方向)に等間隔をおいて複数個の下側貫通開口36が形成されているが、所望ならば、例えば陰極板32を陰極枠体4に形成されている上側開口20よりも下方から陰極枠体4に形成されている下側開口24よりも上方までの間を延在する形態にして、陰極板32には上側貫通開口34及び下側貫通開口36を形成することなく、陰極側流体排出路の上流端は陰極枠体4に形成された上側開口20によって規定し、陰極側流体供給路の下流側は陰極枠体4に形成された下側開口24によって規定することもできる。かかる場合には、陰極側流体排出路の有効流路断面積は上側開口20の合計横断面積によって規定され、陰極側流体供給路の
有効流路断面積は下側開口24の合計横断面積によって規定される。
【手続補正20】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
電解槽の構成要素の詳細及び作動状態は、次のとおりである。
作動時間:30日間
陰極:ニッケル板(厚さ2mm、表面寸法1m×1m)
陽極:表面に酸化インジウムをメッキしたチタン板(厚さ2mm、
表面寸法1m×1m)
カチオン交換膜:ケマーズ社(Chemours Company)から製品名
「N324」として販売されている交換膜(厚さ1mm)
ガスケット:EPDM(上側連通開口及び下側連通開口の直径は対応する上
側貫通開口及び下側貫通開口の直径より夫々2mm大きい)
原料(陽極側流体):塩化メチルアンモニウム水溶液
製品(陰極側流体):水酸化メチルアンモニウム水溶液
電流:1000A(10A/dm2)
作動温度:70℃
電解槽組み立て時温度:20℃
原料(陽極側流体)流量:20L/min
製品(陰極側流体)流量:20L/min