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特開2024-85365液体吐出装置、液体交換方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085365
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】液体吐出装置、液体交換方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20240619BHJP
   B41J 2/17 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
B41J2/175 167
B41J2/175 113
B41J2/175 119
B41J2/175 151
B41J2/17 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104367
(22)【出願日】2023-06-26
(31)【優先権主張番号】P 2022199324
(32)【優先日】2022-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 正典
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA22
2C056EA26
2C056EB20
2C056EB44
2C056EB45
2C056EC19
2C056EC23
2C056EC26
2C056EE18
2C056FA10
2C056KB21
2C056KC02
2C056KC05
(57)【要約】
【課題】互いに異なるバージョンの同色の液体を収容する複数の液体容器が混在して使用されることを抑制する。
【解決手段】液体吐出装置は、液体を吐出する吐出部と、互いに同色の液体を収容する複数の液体容器と、複数の液体容器がそれぞれ差し込まれる複数の差込口と、複数の差込口に差し込まれている複数の液体容器に関する情報を取得する取得部と、複数の液体容器に関する情報に基づいて、複数の液体容器が互いに異なるバージョンの同色の液体を収容していることが検出された場合に、複数の液体容器を、互いに同じバージョンの同色の液体を収容する複数の液体容器に統一するように液体容器の交換を促す情報を出力する出力部と、を備える。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する吐出部と、
互いに同色の前記液体を収容する複数の液体容器と、
前記複数の液体容器がそれぞれ差し込まれる複数の差込口と、
前記複数の差込口に差し込まれている前記複数の液体容器に関する情報を取得する取得部と、
前記複数の液体容器に関する情報に基づいて、前記複数の液体容器が互いに異なるバージョンの前記同色の前記液体を収容していることが検出された場合に、前記複数の液体容器を、互いに同じバージョンの前記同色の前記液体を収容する前記複数の液体容器に統一するように前記液体容器の交換を促す情報を出力する出力部と、
を備える、液体吐出装置。
【請求項2】
前記出力部は、前記複数の液体容器が新旧異なるバージョンの前記同色の前記液体を収容していることが検出された場合に、前記複数の液体容器を、新バージョンの前記同色の前記液体を収容する前記複数の液体容器に統一するように前記液体容器の交換を促す情報を出力する、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記出力部は、前記複数の液体容器がいずれも旧バージョンの前記同色の前記液体を収容していることが検出された場合に、前記複数の液体容器を、新バージョンの前記同色の前記液体を収容する前記複数の液体容器に統一するように前記液体容器の交換を促す情報を出力する、請求項1または2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記出力部が前記液体容器の交換を促す情報を出力した後、前記複数の液体容器の少なくとも一つが前記差込口から抜かれた場合に、前記液体容器の交換動作を前記液体容器の交換前の状態に戻す主制御部をさらに備える、請求項1または2に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記出力部は、前記複数の液体容器がいずれも新バージョンの前記同色の前記液体を収容していることが検出された場合に、液体経路の液体置換作業を促す情報を出力する、請求項1または2に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記複数の液体容器がいずれも新バージョンの前記同色の前記液体を収容していることが検出された場合に、
初期充填フラグがFalseのときに、前記出力部により液体経路の液体置換作業を促す情報を出力し、
前記初期充填フラグがTrueのときに、インク充填動作を実行するか、または前記出力部によりインク充填動作作業を促す情報を出力する、請求項1または2に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記出力部は、交換前後の前記複数の液体容器に収容されている前記同色の前記液体の前記バージョンの状態変化を示す情報を出力する、請求項5に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記出力部は、前記液体置換作業のマニュアルを出力し、出力された前記液体置換作業の前記マニュアルには、交換前の前記複数の液体容器に収容されている前記同色の前記液体の前記バージョンに対応する洗浄液の充填の推奨レベルが含まれている、請求項5に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記複数の液体容器に収容される前記同色の前記液体は白インクであり、前記洗浄液の充填の推奨レベルは前記白インクの前記バージョンに対応する前記洗浄液の充填量であり、旧バージョンの前記白インクが新バージョンの前記白インクよりも前記洗浄液の前記充填量が多い、請求項8に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
液体吐出装置により実行される液体交換方法であって、
複数の差込口にそれぞれ差し込まれている、互いに同色の液体を収容する複数の液体容器に関する情報を取得するステップと、
前記複数の液体容器に関する情報に基づいて、前記複数の液体容器が互いに異なるバージョンの前記同色の前記液体を収容していることが検出された場合に、前記複数の液体容器を、互いに同じバージョンの前記同色の前記液体を収容する前記複数の液体容器に統一するように前記液体容器の交換を促す情報を出力するステップと、
を含む、液体交換方法。
【請求項11】
液体吐出装置のコンピュータに実行させるプログラムであって、
複数の差込口にそれぞれ差し込まれている、互いに同色の液体を収容する複数の液体容器に関する情報を取得するステップと、
前記複数の液体容器に関する情報に基づいて、前記複数の液体容器が互いに異なるバージョンの前記同色の前記液体を収容していることが検出された場合に、前記複数の液体容器を、互いに同じバージョンの前記同色の前記液体を収容する前記複数の液体容器に統一するように前記液体容器の交換を促す情報を出力するステップと、
を含む、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体吐出装置、液体交換方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体を吐出する液体吐出装置が知られている。また、液体吐出装置の液体を交換する液体交換方法、および、液体交換方法を液体吐出装置のコンピュータに実行させるプログラムが知られている。
【0003】
特許文献1には、インク供給手段および洗浄媒体供給手段のうちから任意の供給手段を選択できる切替手段を備えるインクジェットプリンタにおいて、インクの種類に応じて洗浄媒体供給手段が印字ヘッド部内のインクを洗浄液で置換することが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の装置は、同色の液体を収容する複数の液体容器がそれぞれ差し込まれる複数の差込口を備えていない。斯かる構成では、互いに異なる材料を用いて製造された異なるバージョンの同色の液体を収容する複数の液体容器が混在して使用されると、装置の故障または画像不良を引き起こす場合がある。
【0005】
そこで、本開示の技術は、上記課題に鑑み、互いに異なるバージョンの同色の液体を収容する複数の液体容器が混在して使用されることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本開示の一態様によれば、
液体を吐出する吐出部と、
同色の前記液体を収容する複数の液体容器と、
前記複数の液体容器がそれぞれ差し込まれる複数の差込口と、
前記複数の差込口に差し込まれている前記複数の液体容器に関する情報を取得する取得部と、
前記複数の液体容器に関する情報に基づいて、前記複数の液体容器が互いに異なるバージョンの前記同色の前記液体を収容していることが検出された場合に、前記複数の液体容器を、互いに同じバージョンの前記同色の前記液体を収容する複数の液体容器に統一するように前記液体容器の交換を促す情報を出力する出力部と、
を備える、液体吐出装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、互いに異なるバージョンの同色の液体を収容する複数の液体容器が混在して使用されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る液体吐出装置の斜視図である。
図2】一実施形態に係る液体吐出装置の機構部の側面図である。
図3】一実施形態に係る液体吐出装置の機構部の平面図である。
図4】一実施形態に係る液体吐出装置の制御部のブロック図である。
図5】一実施形態に係る液体吐出装置の液体吐出部の斜視図である。
図6】一実施形態に係る液体吐出装置の液体吸引機構の構成図である。
図7】一実施形態に係る液体吐出装置の液体供給機構の構成図である。
図8】一実施形態に係る液体吐出装置の送液ポンプの構成図である。
図9】一実施形態に係る液体吐出装置のヘッドタンクの動作を示す図(a)~(c)である。
図10】一実施形態に係る液体吐出装置の維持回復機構の構成図である。
図11】一実施形態に係る液体吐出装置の液体交換手順を示すフローチャートである。
図12】一実施形態に係る液体吐出装置の液体置換手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について詳細に説明する。各図面において、同一構成要素には同一符号を付与し、重複した説明を適宜省略する。
【0010】
(液体吐出装置の全体構成)
図1は一実施形態に係る液体吐出装置の斜視図である。液体吐出装置の一例であるインクジェットプリンタ100は、装置本体1と、装置本体1に装着されていて用紙等の記録媒体を装填する供給トレイ2と、装置本体1に着脱自在に装着されていて画像が形成された記録媒体を載置する排出トレイ3と、を備えている。
【0011】
装置本体1には、6個のインクカートリッジ10が差し込まれる6個のカートリッジ差込口4が設けられている。インクカートリッジ10は液体容器の一例であり、カートリッジ差込口4は液体容器が差し込まれる差込口の一例である。
【0012】
6個のカートリッジ差込口4のうちの2個のカートリッジ差込口4には、互いに同色のインクを収容する2個のインクカートリッジ10がそれぞれ差し込まれる。2個のカートリッジ差込口4には、第1ホワイト(W1)のインクを収容するインクカートリッジ10と、第2ホワイト(W2)のインクを収容するインクカートリッジ10と、を差し込むことが可能である。2個のインクカートリッジ10には、互いに同じ材料で製造された同じバージョンの白インクが収容されていることが好ましい。
【0013】
また6個のカートリッジ差込口4のうちの残りの4個のカートリッジ差込口4には、黒(K),シアン(C),マゼンタ(M),およびイエロー(Y)のうちのいずれか一つのインクを収容する4個のインクカートリッジ10がそれぞれ差し込まれる。
【0014】
6個のカートリッジ差込口4には、6個のインクカートリッジ10の代わりに、W1,W2,K,C,M,およびYのうちのいずれか一つのインクに対応する洗浄液を収容する6個のクリーナーカートリッジを差し込むことが可能である。インクカートリッジ10およびクリーナーカートリッジは、液体容器の一例である。
【0015】
6個のインクカートリッジ10は、縦置き状態で横方向に並べて6個のカートリッジ差込口4に差し込まれる。カートリッジ差込口4の正面には、インクカートリッジ10を着脱するときに開閉するカートリッジカバー6が開閉可能に設けられてもよい。
【0016】
装置本体1の正面には、出力部の一例である操作パネル5が設けられている。操作パネル5は、タッチパネルディスプレイおよびスピーカの少なくとも一方を備えている。操作パネル5は、各種情報を出力すると共にユーザの入力を受け付ける。
【0017】
操作パネル5のタッチパネルディスプレイは、インクカートリッジ10内のインクの残量、および、インクカートリッジ10の交換を促すガイダンス等の各種情報を表示する。同様に操作パネル5のスピーカは、インクカートリッジ10内のインクの残量、および、インクカートリッジ10の交換を促すガイダンス等の各種情報を音声出力する。
【0018】
また操作パネル5の下方には、インクジェットプリンタ100の電源ボタン12、記録媒体排出/印刷再開ボタン13、およびキャンセルボタン14等が配置されている。
【0019】
(液体吐出装置の機構部)
次に図2および図3を参照して、インクジェットプリンタ100の機構部について説明する。図2は一実施形態に係る液体吐出装置の機構部の側面図であり、図3は一実施形態に係る液体吐出装置の機構部の平面図である。
【0020】
図3に示すように、インクジェットプリンタ100の機構部には、フレーム21を構成する左側板21Aおよび右側板21Bと、左側板21Aと右側板21Bとの間に横架されたガイドロッド31およびステー32と、が設けられている。ガイドロッド31とステー32は、記録媒体42の搬送方向と直交する方向である主走査方向にキャリッジ33を摺動自在に保持している。キャリッジ33は、主走査モータによりタイミングベルトを介して主走査方向に移動する。
【0021】
キャリッジ33には、吐出部の一例である4個の液体吐出ヘッド34がノズル面を下方に向けて設けられている。インクジェットプリンタ100は、液体吐出ヘッド34が主走査方向に移動しながらインクを吐出して画像を形成するシリアル型インクジェットプリンタである。なお、インクジェットプリンタ100は、液体吐出ヘッド34が主走査方向に移動しないライン型インクジェットプリンタであってもよい。
【0022】
各々の液体吐出ヘッド34には、インクを吐出する複数のノズルが記録媒体42の搬送方向に並んだノズル列が主走査方向に複数設けられている。また各々の液体吐出ヘッド34には、圧電素子等の駆動素子がノズルごとに設けられている。
【0023】
またキャリッジ33には、各々の液体吐出ヘッド34にインクを供給する6個のヘッドタンク35が搭載されている。6個のヘッドタンク35には、6本の液体供給チューブ36を介して6個のインクカートリッジ10からインクが6個の送液ポンプによりそれぞれ供給される。なお、キャリッジ33には、6個のヘッドタンク35の代わりに、6個のインクカートリッジ10または6個のクリーナーカートリッジが差し込まれてもよい。
【0024】
図2に示すように、インクジェットプリンタ100の機構部には、記録媒体42の供給部として、供給トレイ2の圧板41上に積載された記録媒体42を1枚ずつ分離搬送する半月状の供給コロ43と、供給コロ43に対向する分離パッド44と、が設けられている。分離パッド44は、摩擦係数の大きな材料で形成されていて、供給コロ43側に付勢されている。
【0025】
またインクジェットプリンタ100の機構部には、記録媒体42の搬送部として、記録媒体42を案内する第1ガイド部材45と、カウンタローラ46と、第2ガイド部材47と、加圧コロ49を有する押さえ部材48と、が設けられている。さらに記録媒体42の搬送部として、記録媒体42を、液体吐出ヘッド34のノズル面に対向する位置へ搬送する搬送ベルト51が設けられている。
【0026】
搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53とに掛け回されている。搬送ベルト51の表側には、搬送ベルト51の表面を帯電させる帯電ローラ56が設けられている。帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触して、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。搬送ベルト51の裏側には、液体吐出ヘッド34の印写領域に対応する領域に第3ガイド部材57が配置されている。
【0027】
搬送ベルト51は、副走査モータにより搬送ローラ52が回転駆動されることにより、記録媒体42の搬送方向である副走査方向に移動して周回する。
【0028】
さらにインクジェットプリンタ100の機構部には、液体吐出ヘッド34により記録された記録媒体42の排出部として、搬送ベルト51から記録媒体42を分離する分離爪61と、排出ローラ62および排出コロ63と、が設けられている。排出ローラ62の下方には、排出トレイ3が設けられている。
【0029】
また装置本体1の背面側には、両面ユニット71が着脱自在に装着されてもよい。両面ユニット71は、搬送ベルト51の逆方向回転で戻される記録媒体42を取り込んで反転させ、再度、カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に記録媒体42を供給する。また両面ユニット71の上面には、手差しトレイ72が設けられてもよい。
【0030】
図3に示すように、キャリッジ33の主走査方向の一方側の非印字領域には、液体吐出ヘッド34のノズルの状態を維持すると共に、ノズルを吸引して回復させる維持回復機構81が配置されている。
【0031】
維持回復機構81は、液体吐出ヘッド34のノズル面をキャッピングする複数のキャップ部材82と、ノズル面をワイピングするワイパブレード83と、空吐出を行って排出された増粘インク等の液体を受ける第1空吐出受け84と、を備えている。
【0032】
第1キャップ部材82aは、吸引用および保湿用のキャップ部材である。他の第2キャップ部材82b、第3キャップ部材82c、および第4キャップ部材82dは、保湿用のキャップ部材である。
【0033】
維持回復機構81による吸引回復動作で吸引されたインク等の廃液は、廃液タンクに排出されて収容される。例えばキャップ部材82に排出された液体、ワイパブレード83に付着してワイパークリーナで除去された液体、および、第1空吐出受け84に空吐出された液体が、廃液タンク23に排出される。
【0034】
またキャリッジ33の主走査方向の他方側の非印字領域には、記録媒体42の記録中に空吐出を行って排出された増粘インク等の液体を受ける第2空吐出受け88が配置されている。第2空吐出受け88には、液体吐出ヘッド34のノズル列に沿って延びる4個の開口部89が設けられている。
【0035】
以上のように構成されたインクジェットプリンタ100において、図2に示すように供給トレイ2から記録媒体42が1枚ずつ分離供給され、上方へ供給された記録媒体42は第1ガイド部材45により案内される。そして搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、第2ガイド部材47により案内され、加圧コロ49によって搬送ベルト51に押し付けられ、搬送ベルト51により液体吐出ヘッド34の下方へ搬送される。
【0036】
このとき帯電ローラ56に対してプラスとマイナスとが交互に繰り返す交番電圧が印加される。帯電ローラ56により、搬送ベルト51は、記録媒体42の搬送方向である副走査方向に所定の幅でプラスとマイナスに交互に帯電する。プラスとマイナスに交互に帯電した搬送ベルト51上に記録媒体42が搬送されると、記録媒体42が搬送ベルト51に静電吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって記録媒体42が副走査方向に搬送される。
【0037】
次いで記録媒体42の搬送方向と直交する主走査方向にキャリッジ33が移動しながら、画像信号に応じて液体吐出ヘッド34が駆動される。液体吐出ヘッド34は、搬送ベルト51上で停止した記録媒体42にインクを吐出して1行分を記録し、記録媒体42が搬送ベルト51により所定量搬送された後、次の行の記録を行う。液体吐出ヘッド34は記録終了信号または記録媒体42の後端が所定位置に到達した信号に応じて記録動作を終了し、記録媒体42が排出トレイ3に排出される。
【0038】
また待機中には、キャリッジ33が維持回復機構81に移動され、キャップ部材82により液体吐出ヘッド34がキャッピングされ、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良が防止される。またキャップ部材82で液体吐出ヘッド34をキャッピングした状態で吸引ポンプによりノズルからインクが吸引され、増粘インクまたは気泡を排出する吸引回復動作が行われる。さらに記録開始前および記録中には、記録と関係しないインクを吐出する空吐出動作が行われる。以上により、液体吐出ヘッド34の安定した吐出性能が維持される。
【0039】
(液体吐出装置の制御部)
図4は一実施形態に係る液体吐出装置の制御部のブロック図である。制御部には、インクジェットプリンタ100の全体の制御を司る主制御部301と、印刷制御を司る印刷制御部302と、が設けられている。主制御部301および印刷制御部302は、1以上のマイクロコンピュータにより構成される。主制御部301および印刷制御部302は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)等を備えている。
【0040】
主制御部301は、通信回路300から入力される画像データに基づいて記録媒体42の搬送を制御する。例えば主制御部301は、主走査モータ駆動回路303を介して主走査モータを駆動制御し、キャリッジ33を主走査方向に移動させる。また主制御部301は、副走査モータ駆動回路304を介して副走査モータを駆動制御し、記録媒体42を副走査方向に搬送させる。さらに主制御部301は、画像データを画像処理した印刷画像データを印刷制御部302に送出する。
【0041】
主制御部301には、キャリッジ33の移動量を検出するキャリッジ位置検出回路305からキャリッジ検出信号が入力される。主制御部301は、キャリッジ検出信号に基づいてキャリッジ33の移動位置および移動速度等の移動量を制御する。キャリッジ位置検出回路305は、例えばキャリッジ33の主走査方向に配置されたエンコーダシートのスリット数を、キャリッジ33に搭載されたフォトセンサで読み取って計数することにより、キャリッジ33の位置を検出する。主走査モータ駆動回路303は、主制御部301から入力されるキャリッジ33の移動量に応じて主走査モータを回転駆動させて、キャリッジ33を所定の位置に所定の速度で移動させる。
【0042】
また主制御部301には、搬送ベルト51の搬送量を検出する搬送量検出回路306から搬送ベルト検出信号が入力される。主制御部301は、搬送ベルト検出信号に基づいて搬送ベルト51の搬送位置および搬送速度等の搬送量を制御する。搬送量検出回路306は、例えば搬送ローラ52の回転軸に取り付けられたエンコーダシートのスリット数を、フォトセンサで読み取って計数することにより、搬送ベルト51の搬送量を検出する。副走査モータ駆動回路304は、主制御部301から入力される搬送ベルト51の搬送量に応じて副走査モータを回転駆動させて、搬送ローラ52を回転駆動して搬送ベルト51を所定の位置に所定の速度で移動させる。
【0043】
主制御部301は、供給コロ駆動回路307に供給コロ駆動指令を与えることによって供給コロ43を一回転させる。また主制御部301は、維持回復機構駆動用モータ駆動回路308を介して維持回復機構81のモータを回転駆動することにより、キャップ部材82の昇降、ワイパブレード83の昇降、および吸引ポンプの駆動等を制御する。
【0044】
また主制御部301は、供給ポンプ用駆動回路311を介して送液ポンプのポンプ駆動用モータを制御して、6個のカートリッジ差込口4に差し込まれた6個のインクカートリッジ10から6個のヘッドタンク35にインクを充填させる。主制御部301は、ヘッドタンク35が満タンの状態にあることを検知するヘッドタンク満タンセンサ312から満タン検知信号を取得し、満タン検知信号に基づいて充填動作を制御する。充填動作には、ヘッドタンク35の大気開放弁を開状態にして充填を行う大気開放充填、および、大気開放弁を閉じたまま充填を行う通常充填等がある。
【0045】
さらに主制御部301は、カートリッジ通信回路314を介して、6個のカートリッジ差込口4に差し込まれている6個のインクカートリッジ10に設けられた6個の不揮発性メモリ316から6個のインクカートリッジ10に関する情報を取得する。カートリッジ通信回路314は、液体容器に関する情報を取得する取得部の一例である。
【0046】
主制御部301は、取得したインクカートリッジ10に関する情報に基づいて所定の処理を行い、不揮発性メモリ316に各種情報を格納する。なお、主制御部301は、カートリッジ通信回路314の代わりに、通信回路300を介して、インクジェットプリンタ100と通信可能な外部装置からインクカートリッジ10に関する情報を取得してもよい。つまり通信回路300も、液体容器に関する情報を取得する取得部の一例である。
【0047】
不揮発性メモリ316は、例えばカートリッジEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)により構成される。不揮発性メモリ316には、インクカートリッジ10の商品名、インクの色、インクの容量、インクの残量、およびインクの品種コード等の、インクカートリッジ10に関する情報が格納されている。なお、インクの品種コードには、インクのバージョンに関する情報が含まれている。不揮発性メモリ316は、記憶部の一例である。
【0048】
また主制御部301には、環境温度および環境湿度等を検知する環境センサ313からの環境検知信号が入力される。主制御部301は、環境検知信号に応じて維持回復機構81の動作を制御する。
【0049】
印刷制御部302は、主制御部301の指令に応じて、キャリッジ位置検出回路305からのキャリッジ検出信号と、搬送量検出回路306からの搬送ベルト検出信号と、に基づき、液体吐出ヘッド34の各ノズル列の吐出タイミング信号を生成する。また印刷制御部302は、吐出タイミング信号と、ROM等の波形データ格納部に格納された液滴サイズに応じた波形データと、に基づき、複数の液滴サイズに対応する駆動パルスを含む共通駆動波形を生成してヘッド駆動回路310に送出する。
【0050】
また印刷制御部302は、主制御部301からの印刷画像データに基づき、共通駆動波形から液滴サイズ等に対応する駆動パルスを選択する波形選択信号を生成してヘッド駆動回路310に送出する。さらに印刷制御部302は、印刷画像データ等をヘッド駆動回路310に送出する。
【0051】
ヘッド駆動回路310は、印刷制御部302からの印刷画像データ、波形選択信号、および共通駆動波形等を受け取る。ヘッド駆動回路310は、印刷画像データおよび波形選択信号に基づき、共通駆動波形から液滴サイズ等に対応する駆動パルスを選択して、液体吐出ヘッド34の各ノズルの圧電素子等の駆動素子に印加する。液体吐出ヘッド34の各ノズルの駆動素子は、選択された駆動波形に応じて駆動され、ノズルから液体を吐出させる。
【0052】
印刷制御部302が共通駆動波形から液滴サイズ等に対応する駆動パルスを選択する波形選択信号を生成することにより、液体吐出ヘッド34の各ノズルは、大滴、中滴、および小滴等の互いにサイズが異なる液滴を打ち分けることができる。
【0053】
(液体吐出装置の液体吐出部)
図5は一実施形態に係る液体吐出装置の液体吐出部の斜視図である。ヘッドタンク35には、負圧レバー91、フィルム92、供給口93、大気開放弁94、および液面検知機構95等が設けられている。負圧レバー91は、フィルム92に追随して動作するレバーである。フィルム92は、バネに付勢されて負圧を生じており、ヘッドタンク35内に収容されたインクの消費量に応じて変位する。
【0054】
供給口93は、インクカートリッジ10から液体供給チューブ36を経てインクが供給される供給口である。大気開放弁94は、ヘッドタンク35の内部を必要に応じて大気圧状態に開放するピンである。またヘッドタンク35の下方には、インク等の液体を吐出する液体吐出ヘッド34が取り付けられている。液面検知機構95は、ヘッドタンク35内のインクを検知する電極ピンであり、ヘッドタンク満タンセンサ312を構成する。
【0055】
(液体吐出装置の液体吸引機構)
図6は一実施形態に係る液体吐出装置の液体吸引機構の構成図である。液体吸引機構は、ヘッドタンク35、液体吐出ヘッド34、キャップ部材82、吸引ポンプ22、および廃液タンク23等により構成される。液体吸引機構は、キャップ部材82により液体吐出ヘッド34のノズル面を覆い、吸引ポンプ22により吸引を行うことにより、ヘッドタンク35内のインクを廃液タンク23へ排出する(「ヘッド吸引」と称する。)。斯かるヘッド吸引により、ノズルの増粘インク等を排除することができる。
【0056】
このとき液体吸引機構は、負圧レバー91を閉じた状態にしてヘッドタンク35を大気から遮断してヘッド吸引を行うことにより、ヘッドタンク35内の圧力を下げて負圧を作成できる。一方、液体吸引機構は、負圧レバー91は開いた状態にしてヘッドタンク35を大気に開放しながらヘッド吸引を行うことにより、ヘッドタンク35内の液面を下げることができる。
【0057】
(液体吐出装置の液体供給機構)
図7は一実施形態に係る液体吐出装置の液体供給機構の構成図である。液体供給機構は、インクカートリッジ10、送液ポンプ24、液体供給チューブ36、ヘッドタンク35、大気開放弁94、および液面検知機構95等により構成される。送液ポンプ24は、ヘッドタンク35とインクカートリッジ10との間でインクを正転送液または逆転送液する。送液ポンプ24は、正転時にはインクカートリッジ10からヘッドタンク35へ送液し、逆転時にはヘッドタンク35からインクカートリッジ10へ逆戻しする。
【0058】
液体供給機構は、大気開放弁94によりヘッドタンク35を大気に開放しながら、送液ポンプ24により正転送液し、ヘッドタンク35内の液面を液面検知機構95で検知する。液体供給機構は、液面検知機構95が液面を検知した時点で送液ポンプ24を停止することにより、ヘッドタンク35をインクで満タンに充填することができる。
【0059】
(液体吐出装置の送液ポンプ)
図8は一実施形態に係る液体吐出装置の送液ポンプの構成図である。送液ポンプ24には、ポンプ構造が複雑ではなく、インクの正転送液および逆転送液が駆動モータの回転方向を変えることにより可能なチューブポンプ30を採用している。チューブポンプ30のポンプ内部には、送液用のゴムチューブ25が這い回されている。ゴムチューブ25をポンプ内部に内蔵されているポンプロータ27で局所的に潰して、ポンプロータ27を回転させて潰したポイントを回転方向に移動させることにより、ポンプロータ27の回転方向にインクが送液される。
【0060】
具体的には、インクカートリッジ10からヘッドタンク35へインクを正転送液するときは、ポンプロータ27を矢印Aの回転方向に回転させる。一方、ヘッドタンク35からインクカートリッジ10へインクを逆転送液するときは、ポンプロータ27を矢印Bの回転方向に回転させる。ポンプロータ27の回転において、矢印Aの回転方向の回転を正回転と称し、矢印Bの回転方向の回転を逆回転と称する。ポンプロータ27の回転の正転および逆転を制御することにより、インクの送液方向を制御することができる。
【0061】
送液ポンプ24として構成が単純なチューブポンプ30を使用することにより、小スペースなポンプ構成にしている。さらにポンプ駆動用モータの正逆転制御により送液方向を制御できるため、配管がシンプルになる。なお、チューブポンプ30の構造は、図8に示すような回転コロタイプに限定されず、変心カムタイプ等であってもよい。
【0062】
(液体吐出装置のヘッドタンク動作)
図9は一実施形態に係る液体吐出装置のヘッドタンクの動作を示す図である。図9(a)はヘッドタンク35が満タンの状態を示す図であり、図9(b)はヘッドタンク35に負圧が生じている状態を示す図であり、図9(c)はヘッドタンク35が大気に開放され、液面が下がっている状態を示す図である。
【0063】
図9(a)に示すように、ヘッドタンク35が満タンの状態で、大気開放弁94(図5参照)が閉状態にあるとき、吸引ポンプ22で吸引(図6参照)を行うと、フィルム92は閉じてヘッドタンク内に負圧が生じ、図9(b)に示す状態に遷移する。このとき液面の高さは殆ど変化しない。送液ポンプ24で逆転送液する場合(図7参照)、または、液体吐出ヘッド34で液体を吐出する場合も同様である。
【0064】
図9(b)に示すヘッドタンク35において、大気開放弁94を開状態にすると、フィルム92は開いて液面が下がり、図9(c)に示す状態に遷移する。なお、負圧が大きいときほど、液面の下がり度合いと、フィルム92の開き度合いが大きくなる。
【0065】
図9(c)に示すヘッドタンク35において、大気開放弁94を閉状態とし、送液ポンプ24で正転送液を行うと、液面は上昇し、図9(a)に示す状態に遷移する。液面検知機構95(図5参照)が液面を検知した時点で、送液ポンプ24での正転送液が停止する。
【0066】
なお、図9(a)および図9(b)に示すヘッドタンク35において、大気開放弁94を閉状態として、送液ポンプ24での正転送液を行うと、液面高さは殆ど変化しないものの、フィルム92の開き度合いは大きくなる。
【0067】
またインクカートリッジ10のインクエンド検知は次のようになされる。インクカートリッジ10が空状態のときに、インク吐出またはヘッド吸引等によりインクを消費すると、フィルム92内の圧力が下がる。フィルム92内の圧力が下がると、圧力検知部である負圧レバー91が変位する。負圧レバー91が負圧レバーセンサを横切ると、インクカートリッジ10が空状態(インクエンド検知)であると判断される。
【0068】
またインクカートリッジ10に設けられた不揮発性メモリ316にインクの残量を格納しておき、過去のインクの残量から消費量を減算することにより、現在のインクの残量を求めることができる。インクカートリッジ10の累積インク消費量は、ヘッド吸引またはインク吐出による消費量を加算したものである。すなわち、現在のインクの残量は、インクの容量-インクの消費量により算出することができる。
【0069】
(液体吐出装置の維持回復機構)
図10は一実施形態に係る液体吐出装置の維持回復機構の構成図である。維持回復機構81は、6個のインクカートリッジ10、6個の送液ポンプ24、6個の液体供給チューブ36、および6個のヘッドタンク35等を備えている。また維持回復機構81は、4個の液体吐出ヘッド34、4個のキャップ部材82、吸引ポンプ22、廃液タンク23、ワイパブレード83、および第1空吐出受け84等を備えている。
【0070】
W1のインクは、W1のインクカートリッジ10からW1の液体供給チューブ36を介して第3ヘッドタンク35c(タンクNo.3)に供給され、第2液体吐出ヘッド34b(Head No.2)の第3ノズル列と第4ノズル列とから吐出される。
【0071】
W2のインクは、W2のインクカートリッジ10からW2の液体供給チューブ36を介して第4ヘッドタンク35d(タンクNo.4)に供給され、第3液体吐出ヘッド34c(Head No.3)の第5ノズル列と第6ノズル列とから吐出される。
【0072】
Kのインクは、Kのインクカートリッジ10からKの液体供給チューブ36を介して第6ヘッドタンク35f(タンクNo.6)に供給され、第4液体吐出ヘッド34d(Head No.4)の第7ノズル列から吐出される。
【0073】
Cのインクは、Cのインクカートリッジ10からCの液体供給チューブ36を介して第5ヘッドタンク35e(タンクNo.5)に供給され、第4液体吐出ヘッド34d(Head No.4)の第8ノズル列から吐出される。
【0074】
Mのインクは、Mのインクカートリッジ10からMの液体供給チューブ36を介して第1ヘッドタンク35a(タンクNo.1)に供給され、第1液体吐出ヘッド34a(Head No.1)の第2ノズル列から吐出される。
【0075】
Yのインクは、Yのインクカートリッジ10からYの液体供給チューブ36を介して第2ヘッドタンク35b(タンクNo.2)に供給され、第1液体吐出ヘッド34a(Head No.1)の第1ノズル列から吐出される。
【0076】
第1液体吐出ヘッド34a(Head No.1)のノズル面は、第1キャップ部材82aによりキャッピングされる。そして第1ヘッドタンク35a(タンクNo.2)が収容するYのインクと、第2ヘッドタンク35b(タンクNo.2)が収容するMのインクと、のうちのいずれか一方が、吸引ポンプ22により吸引されて廃液タンク23に排出される。
【0077】
第2液体吐出ヘッド34b(Head No.2)のノズル面は、第2キャップ部材82bによりキャッピングされる。そして第3ヘッドタンク35c(タンクNo.3)が収容するW1のインクは、吸引ポンプ22により吸引されて廃液タンク23に排出される。
【0078】
第3液体吐出ヘッド34c(Head No.3)のノズル面は、第3キャップ部材82cによりキャッピングされる。そして第4ヘッドタンク35d(タンクNo.4)が収容するW2のインクは、吸引ポンプ22により吸引されて廃液タンク23に排出される。
【0079】
第4液体吐出ヘッド34d(Head No.4)のノズル面は、第4キャップ部材82dによりキャッピングされる。そして第5ヘッドタンク35e(タンクNo.5)が収容するCのインクと、第6ヘッドタンク35f(タンクNo.6)が収容するKのインクと、のうちのいずれか一方が、吸引ポンプ22により吸引されて廃液タンク23に排出される。
【0080】
(液体吐出装置の液体交換方法)
以上のように構成されたインクジェットプリンタ100の製造業者は、インクの材料の枯渇または発色性の向上等により、インクのバージョンを更新することがある。しかし、インクの材料の種類に依っては、互いに異なる材料で製造された異なるバージョンのインク同士が混合した場合に、好ましくない化学反応またはインク中の分散物の分散状態の変化が生じ、インクの凝集を引き起こすことがある。インクの凝集は、装置の故障または画像不良を引き起こす恐れがある。
【0081】
例えば酸化チタンを材料とする白インクは、粘度または表面張力が、K,C,M,およびY等の他のインクと殆ど変わらないにも関わらず、液体供給機構内でインクが固着することがある。斯かる白インクに対して、K,C,M,およびY等の他のインクと同等の洗浄動作を実行しても、液体供給機構または液体吐出ヘッド等のインク経路に固着インクが残り、固着インクを洗浄剤で置換しきれない。したがって、特に白インクのような固着し易いインクの場合は、互いに異なるバージョンの白インク同士が混合したときに、装置の故障または画像不良を引き起こす可能性が高くなる。
【0082】
本実施形態に係るインクジェットプリンタ100は、W1およびW2という同色のインクを収容する2個のインクカートリッジ10がそれぞれ差し込まれる2個のカートリッジ差込口4を備えている。したがって、互いに異なるバージョンの白インクを収容する2個のインクカートリッジ10が混在して使用された場合に、白インク同士の好ましくない化学反応によって画像不良を引き起こす可能性がある。
【0083】
また本実施形態に係るインクジェットプリンタ100では、W1のインクとW2のインクが互いに異なる液体吐出ヘッド34(Head No.2とHead No.3)から吐出される。したがって、2個のカートリッジ差込口4に差し込まれた2個のインクカートリッジ10から供給される互いに異なるバージョンの白インク同士がインク経路内で凝集することはない。しかし、W1のインクとW2のインクが単一の液体吐出ヘッド34から吐出される構成を採用した場合は、互いに異なるバージョンの白インク同士がインク経路内で凝集することがある。斯かる場合には、装置の故障または画像不良を引き起こす可能性がある。
【0084】
そこで、インクジェットプリンタ100は、互いに異なるバージョンの白インクを収容する2個のインクカートリッジ10が混在して使用されている場合に、インクカートリッジ10の交換を促す情報を操作パネル5に出力する。なお、出力部は、操作パネル5に限定されるものではなく、記録媒体42に印字する液体吐出ヘッド34であってもよい。
【0085】
図11は一実施形態に係る液体吐出装置の液体交換手順を示すフローチャートである。図11に示すフローチャートは、インクジェットプリンタ100の主制御部301を構成するCPUに実行させるプログラムにより実現される。
【0086】
まず主制御部301は、インクカートリッジ10の交換動作(開始)として、カートリッジ通信回路314を介してW1およびW2のインクカートリッジ10に設けられた2個の不揮発性メモリ316から2個のインクカートリッジ10に関する情報を取得する。
【0087】
<ステップS10>
主制御部301は、インクカートリッジ10に関する情報(インクの品種コード)に基づき、W1およびW2のインクカートリッジ10の少なくとも一方が前回のインクと違う種類のインクを収容するインクカートリッジ10に交換されたか否かを判定する。なお、前回のインクと違う種類のインクには、前回のインクとバージョンの違うインクが含まれる。
【0088】
<ステップS11>
主制御部301は、W1およびW2のインクカートリッジ10が前回のインクと同じ種類のインクを収容するインクカートリッジ10に交換されたことを検出した場合(ステップS10のNO)、装置の状態を以下に遷移させて終了する(動作c)。
・印字可否:可能
・自動インク供給メンテナンス:待機
・前回のインクカートリッジ10に関する情報:更新
【0089】
<ステップS12>
主制御部301は、W1およびW2のインクカートリッジ10の少なくとも一方が前回のインクと違う種類のインクを収容するインクカートリッジ10に交換されたことを検出した場合(ステップS10のYES)、装置の状態を以下に遷移させる。
・印字可否:不可
・自動インク供給メンテナンス:停止
【0090】
<ステップS13>
次に主制御部301は、交換前後のW1およびW2のインクカートリッジ10に収容されている白インクのバージョンの状態変化を確認する。主制御部301は、新旧異なるタイプのインクカートリッジ10が混在していることを検出した場合には(動作d)、ステップS14へ進む。なお、新旧異なるタイプのインクカートリッジ10とは、新旧異なるバージョンの白インクを収容しているインクカートリッジ10を意味する。
【0091】
また主制御部301は、W1およびW2のインクカートリッジ10が旧タイプのインクカートリッジ10に統一されていることを検出した場合には(動作e)、ステップS17へ進む。なお、旧タイプのインクカートリッジ10とは、旧バージョンの白インクを収容しているインクカートリッジ10を意味する。
【0092】
また主制御部301は、W1およびW2のインクカートリッジ10が新タイプのインクカートリッジ10に統一されていることを検出した場合には(動作f)、ステップS18へ進む。なお、新タイプのインクカートリッジ10とは、新バージョンの白インクを収容しているインクカートリッジ10を意味する。
【0093】
<ステップS14>
主制御部301は、新旧異なるタイプのインクカートリッジ10が混在していることを検出した場合(ステップS13の動作d)、インクカートリッジ10の交換を促す情報を操作パネル5に出力させる。
【0094】
主制御部301は、W1およびW2のインクカートリッジ10を新タイプのインクカートリッジ10に統一するようにインクカートリッジ10の交換を促す情報を操作パネル5に出力させることが好ましい。
【0095】
例えば操作パネル5は、「新旧異なるタイプの白インクカートリッジを同時に使用しようとしています。新タイプの白インクカートリッジを使用することをお勧めします。」といったインクカートリッジ10の交換を促すガイダンスを出力する。斯かるガイダンスは、操作パネル5のタッチパネルディスプレイに表示されてもよいし、または、操作パネル5のスピーカから音声出力されてもよい。或いは、主制御部301は、斯かるガイダンスを記録媒体42に印字させてもよい。
【0096】
また操作パネル5には、ユーザがインクカートリッジ10の交換を拒否する拒否ボタン等の第1拒否部101が設けられることが好ましい。
【0097】
<ステップS15>
続いて主制御部301は、操作パネル5において拒否ボタン「No」が押されたことを検出する(動作g)。また主制御部301は、拒否ボタン「No」が押される前にW1およびW2のインクカートリッジ10の少なくとも一方がカートリッジ差込口4から抜かれたことを検出する(動作h)。主制御部301は、拒否ボタン「No」が押されたことを検出した場合(動作g)、ステップS11へ進む。また主制御部301は、拒否ボタン「No」が押される前にインクカートリッジ10が抜かれたことを検出した場合(動作h)、ステップS16へ進む。
【0098】
<ステップS16>
主制御部301は、所定時間内にW1およびW2のインクカートリッジ10の少なくとも一方がカートリッジ差込口4から抜かれたことを検出した場合、操作パネル5のガイダンスを消して、インクカートリッジ10の交換前の状態(開始)に戻る。
【0099】
<ステップS17>
主制御部301は、W1およびW2のインクカートリッジ10が旧タイプのインクカートリッジ10に統一されていることを検出した場合(ステップS13の動作e)、インクカートリッジ10の交換を促す情報を操作パネル5に出力させる。
【0100】
主制御部301は、W1およびW2のインクカートリッジ10を新タイプのインクカートリッジ10に統一するようにインクカートリッジ10の交換を促す情報を操作パネル5に出力させることが好ましい。
【0101】
例えば操作パネル5は、「旧タイプの白インクカートリッジを使用しようとしています。新タイプの白インクカートリッジを使用することをお勧めします。」といったインクカートリッジ10の交換を促すガイダンスを出力する。斯かるガイダンスは、操作パネル5のタッチパネルディスプレイに表示されてもよいし、または、操作パネル5のスピーカから音声出力されてもよい。或いは、主制御部301は、斯かるガイダンスを記録媒体42に印字させてもよい。
【0102】
また操作パネル5には、ユーザがインクカートリッジ10の交換を拒否する拒否ボタン等の第1拒否部101が設けられることが好ましい。
【0103】
<ステップS18>
主制御部301は、W1およびW2のインクカートリッジ10が新タイプのインクカートリッジ10に統一されていることを検出した場合(ステップS13の動作f)、インク経路内の液体置換作業を促す情報を操作パネル5に出力させる。
【0104】
主制御部301は、W1およびW2のインクカートリッジ10の使用前にクリーナーカートリッジを用いた洗浄作業を促す情報を操作パネル5に出力させることが好ましい。
【0105】
例えば操作パネル5は、「新タイプの白インクカートリッジがセットされました。使用前にクリーナーカートリッジを用いて洗浄することをお勧めします。」といったクリーナーカートリッジを用いた洗浄作業を促すガイダンスを出力する。斯かるガイダンスは、操作パネル5のタッチパネルディスプレイに表示されてもよいし、または、操作パネル5のスピーカから音声出力されてもよい。或いは、主制御部301は、斯かるガイダンスを記録媒体42に印字させてもよい。
【0106】
また操作パネル5には、ユーザが液体置換作業を承諾する承諾ボタン等の承諾部102と、ユーザが液体置換作業を拒否する拒否ボタン等の第2拒否部103と、が設けられることが好ましい。
【0107】
<ステップS19>
続いて主制御部301は、液体置換作業のユーザの希望を確認する。主制御部301は、操作パネル5において拒否ボタン「No」が押されたことを検出した場合には(動作i)、ステップS11へ進む。
【0108】
また主制御部301は、承諾ボタン「Yes」または拒否ボタン「No」が押される前にW1およびW2のインクカートリッジ10の少なくとも一方がカートリッジ差込口4から抜かれたことを検出した場合には(動作j)、ステップS20へ進む。さらに主制御部301は、操作パネル5において承諾ボタン「Yes」が押されたことを検出した場合には(動作k)、ステップS21へ進む。
【0109】
<ステップS20>
主制御部301は、承諾ボタン「Yes」または拒否ボタン「No」が押される前にインクカートリッジ10が抜かれたことを検出した場合、操作パネル5のガイダンスを消して、インクカートリッジ10の交換前の状態(開始)に戻る。
【0110】
<ステップS21>
主制御部301は、クリーナーカートリッジからヘッドタンク35へ洗浄液を充填する操作を促す情報を操作パネル5に出力させる。そして主制御部301は、ユーザの操作に応じて洗浄液を充填する処理を実行する。
【0111】
<ステップS22>
主制御部301は、新タイプのインクカートリッジ10からヘッドタンク35へインクを充填する操作を促す情報を操作パネル5に出力させる。そして主制御部301は、ユーザの操作に応じてインクを充填する処理を実行する。
<ステップS11>
そして主制御部301は、液体置換作業が終了した場合、装置の状態を以下のように遷移させて終了する。
・印字可否:可能
・自動インク供給メンテナンス:待機
・前回のインクカートリッジ10に関する情報:更新
【0112】
以下の表1は、交換前後のW1およびW2のインクカートリッジ10に収容されているインクのバージョン(Ver1(旧)およびVer2(新))と、白インクのバージョンの状態変化と、インクジェットプリンタ100の動作c~fの流れと、を示している。斯かる動作c~fは、図11に示すフローチャートにおける動作c~fに対応する。
【0113】
【表1】
【0114】
(液体吐出装置の液体置換方法)
次に液体置換作業の詳細について説明する。図12は一実施形態に係る液体吐出装置の液体置換手順を示すフローチャートである。図12に示すフローチャートは、インクジェットプリンタ100の主制御部301を構成するCPUに実行させるプログラムにより実現される。
【0115】
まず主制御部301は、インクカートリッジ10の交換動作(開始)として、カートリッジ通信回路314を介して6個のインクカートリッジ10に設けられた6個の不揮発性メモリ316から6個のインクカートリッジ10に関する情報を取得する。
【0116】
<ステップS10>
次いで主制御部301は、インクカートリッジ10に関する情報(例えばインクの品種コード)に基づき、6個のインクカートリッジ10の少なくとも一つが前回のインクと違う種類のインクを収容するインクカートリッジ10に交換されたか否かを判定する。
【0117】
<ステップS11>
そして主制御部301は、6個のインクカートリッジ10の少なくとも一つが前回のインクと同じ種類のインクを収容するインクカートリッジ10に交換されたことを検出した場合(ステップS10のNO)、装置の状態を以下に遷移させて終了する。
・印字可否:可能
・自動インク供給メンテナンス:待機
・前回のインクカートリッジ10に関する情報:更新
【0118】
<ステップS12>
主制御部301は、6個のインクカートリッジ10の少なくとも一つが前回のインクと違う種類のインクを収容するインクカートリッジ10に交換されたことを検出した場合(ステップS10のYES)、装置の状態を以下に遷移させる。
・印字可否:不可
・自動インク供給メンテナンス:停止
【0119】
<ステップS30>
また主制御部301は、6個のインクカートリッジ10の少なくとも一つが前回のインクと違う種類のインクを収容するインクカートリッジ10に交換されたことを検出した場合、インク経路内の液体置換作業を促す情報を操作パネル5に出力させる。
【0120】
例えば操作パネル5は、「前回のインクとは違う種類のインクカートリッジに交換されました。マニュアルに従い、インク経路内の液体置換作業を行うことを推奨します。」といった液体置換作業のガイダンスを出力する。斯かるガイダンスは、操作パネル5のタッチパネルディスプレイに表示されてもよいし、または、操作パネル5のスピーカから音声出力されてもよい。或いは、主制御部301は、斯かるガイダンスを記録媒体42に印字させてもよい。
【0121】
また操作パネル5は、交換前後の6個のインクカートリッジ10に収容されているインクのバージョンの状態変化を示す情報を出力することが好ましい。表示例3および表示例4として、操作パネル5には、交換前後のW1のインクのバージョンの状態変化(W1-1->W1-2)が表示されている。また表示例5として、操作パネル5には、交換前後のK,C,M,Y,W1およびW2のインクのバージョンの状態変化(K-1->K-2,C-1->C-2,M-1->M-2,Y-1->Y-2,W1-1->W1-2,およびW2-1->W2-2)が表示されている。
【0122】
さらに操作パネル5には、ユーザが液体置換作業を承諾する承諾ボタン等の承諾部102と、ユーザが液体置換作業を拒否する拒否ボタン等の第2拒否部103と、が設けられる。また操作パネル5には、液体置換作業のマニュアルを出力する出力ボタン等のマニュアル出力部104が設けられることが好ましい。
【0123】
<ステップS31>
主制御部301は、ユーザが液体置換作業を承諾したか否か、および、マニュアルの出力を指示したか否かを検出する。
【0124】
<ステップS11>
そして主制御部301は、ユーザが液体置換作業を拒否したことを検出した場合(ステップS31のNO)、装置の状態を以下に遷移させて終了する。
・印字可否:可能
・自動インク供給メンテナンス:待機
・前回のインクカートリッジ10に関する情報:更新
【0125】
<ステップS21>
主制御部301は、ユーザが液体置換作業を承諾したことを検出した場合(ステップS31のYES)、クリーナーカートリッジからヘッドタンク35へ洗浄液を充填する操作を促す情報を操作パネル5に出力させる。そして主制御部301は、ユーザの操作に応じて洗浄液の充填動作を実行する。
【0126】
<ステップS22>
主制御部301は、新タイプのインクカートリッジ10からヘッドタンク35へインクを充填する操作を促す情報を操作パネル5に出力させる。そして主制御部301は、ユーザの操作に応じてインクの充填動作を実行する。
<ステップS11>
そして主制御部301は、液体置換作業が終了した場合、装置の状態を以下のように遷移させて終了する。
・印字可否:可能
・自動インク供給メンテナンス:待機
・前回のインクカートリッジ10に関する情報:更新
【0127】
<ステップS32>
なお、主制御部301は、液体置換作業のマニュアルの出力が指示されたことを検出した場合(ステップS31のマニュアル表示)、液体置換作業のマニュアルを操作パネル5に表示させる。或いは、主制御部301は、液体置換作業のマニュアルを記録媒体42に印字させてもよい。
【0128】
液体置換作業のマニュアルには、液体置換作業の概要(洗浄液充填およびインク充填が必要なこと)が含まれている。また液体置換作業のマニュアルには、洗浄液の充填の推奨レベル(洗浄液によるインク置換量、または、洗浄液の充填量)が含まれていることが好ましい。
【0129】
以下の表2は、交換前のインクの色およびバージョンに応じた洗浄液の充填の推奨レベル(洗浄液の充填量)と、交換後のインクの色およびバージョンに応じたインク充填の推奨レベル(インクの充填量)と、を示している。
【0130】
【表2】
【0131】
例えばK,C,およびMのインクでは、交換前のインクのバージョンに関わらず、通常の洗浄レベルで十分であるため、洗浄液の充填の推奨レベルはLev.1である。推奨レベルLev.1は、洗浄液の通常の充填量である。
【0132】
Yのインクでは、交換前のインクのバージョンに関わらず、交換前後のインク同士が混合しても問題を生じないため、洗浄液の充填の推奨レベルはLev.0である。推奨レベルLev.0は、液体置換作業が不要であることを意味する。
【0133】
W1およびW2のインクでは、交換前のインクのバージョンが新タイプ(W1-2,W2-2)であっても、フィルタ等に沈殿物が固着し易いため、洗浄液の充填の推奨レベルは2である。推奨レベルLev.2は、推奨レベルLev.1の洗浄液の充填量の2倍である。
【0134】
またW1およびW2のインクでは、交換前のインクのバージョンが旧タイプ(W1-1,W2-1)である場合、フィルタ等に沈殿物が非常に固着し易いため、洗浄液の充填の推奨レベルはLev.3である。推奨レベルLev.3は、推奨レベルLev.1の洗浄液の充填量の3倍である。
【0135】
(作用効果)
以上の実施形態によれば、インクジェットプリンタ100は、W1およびW2のインクカートリッジ10が互いに異なるバージョンの白インクを収容していることが検出された場合に、インクカートリッジ10の交換を促す情報を出力する。インクジェットプリンタ100は、W1およびW2のインクカートリッジ10を、互いに同じバージョンの白インクを収容するインクカートリッジに統一するようにインクカートリッジ10の交換を促す。したがって、互いに異なるバージョンの白インクを収容するW1およびW2のインクカートリッジ10が混在して使用されることを抑制することができる。ひいては、装置の故障または画像不良を引き起こす可能性を低減することができる。
【0136】
特にインクジェットプリンタ100は、W1およびW2のインクカートリッジ10が新旧異なるバージョンの白インクを収容していることが検出された場合に、新バージョンの白インクを収容するインクカートリッジに統一するように交換を促す。したがって、新バージョンの白インクを収容するW1およびW2のインクカートリッジ10の使用が促進され、装置の故障または画像不良を引き起こす可能性をさらに低減することができる。
【0137】
またインクジェットプリンタ100は、W1およびW2のインクカートリッジ10がいずれも旧バージョンの白インクを収容していることが検出された場合には、新バージョンの白インクを収容するインクカートリッジに統一するように交換を促す。したがって、新バージョンの白インクを収容するW1およびW2のインクカートリッジ10の使用がさらに促進される。
【0138】
またインクジェットプリンタ100は、インクカートリッジ10の交換を促す情報を出力した後、W1およびW2のインクカートリッジ10の少なくとも一方がカートリッジ差込口4から抜かれた場合に、インクカートリッジ10の交換前の状態に戻す。したがって、交換後のW1およびW2のインクカートリッジ10が互いに異なるバージョンの白インクを収容しているか否かを再度チェックすることができる。
【0139】
またインクジェットプリンタ100は、W1およびW2のインクカートリッジ10がいずれも新バージョンの白インクを収容していることが検出された場合に、インク経路の液体置換作業を促す情報を出力する。したがって、W1およびW2のインクカートリッジ10がいずれも新バージョンの白インクを収容する場合に液体置換作業を実行することにより、新バージョンの白インクを用いた際の画質を向上させることができる。またW1およびW2のインクカートリッジ10がいずれも新バージョンの白インクを収容する場合に限って液体置換作業を行うことにより、クリーナーカートリッジの消費量を削減することができる。
【0140】
さらにインクジェットプリンタ100は、交換前後のW1およびW2のインクカートリッジ10に収容されている白インクのバージョンの状態変化を示す情報を出力する。したがって、ユーザは交換前後のW1およびW2のインクカートリッジ10に収容されている白インクのバージョンを容易に認識することができる。
【0141】
またインクジェットプリンタ100は、液体置換作業のマニュアルを出力する。また出力された液体置換作業のマニュアルには、交換前のW1およびW2のインクカートリッジ10に収容されている白インクのバージョンに対応する洗浄液の充填の推奨レベル(充填量)が含まれている。したがって、ユーザは交換前のW1およびW2のインクカートリッジ10に収容されている白インクのバージョンに対応する洗浄液の充填の推奨レベルを容易に認識することができる。
【0142】
なお、インクジェットプリンタ100は、衣類用印刷機であるガーメントプリンタであってもよい。インクジェットプリンタ100がガーメントプリンタである場合、インクジェットプリンタ100は、排出トレイ3の代わりに、衣類等の記録媒体を載置するプラテンを備えていてもよい。
【0143】
また同色のインクを収容するインクカートリッジ10は、W1およびW2のインクカートリッジ10に限定されるものではなく、K,C,MおよびYのいずれか一つの同色のインクを収容する複数のインクカートリッジ10であってもよい。また同色のインクを収容する複数のインクカートリッジ10の個数は、2個に限定されるものではなく、3個以上であってもよい。また新タイプのインクカートリッジ10同士、または、旧タイプのインクカートリッジ10同士であっても、互いに異なるバージョンのインクを収容することがあることに留意されたい。
【0144】
上記で説明した実施形態の各種機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」には、電子回路で実装するプロセッサのようにソフトウェアで各機能を実行するようにプログラミングしたプロセッサが含まれる。また「処理回路」には、各機能を実行するように設計されたASICおよびDSP(Digital Signal Processor)等のいずれかのデバイスが含まれる。また「処理回路」には、FPGA(Field Programmable Gate Array)および従来の回路モジュール等のデバイスが含まれる。
【0145】
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形および置換を加えることができる。
【0146】
例えば、本開示の実施態様として、図1に示した複数のインクカートリッジ10(液体容器)がいずれも新バージョンの同色のインク(液体)を収容していることが検出された場合に、初期充填フラグがFalseのときに、操作パネル5(出力部)によりインク経路のインク置換作業を促す情報を出力し、初期充填フラグがTrueのときに、インク充填動作を実行するか、または操作パネル5によりインク充填動作作業を促す情報を出力する態様としてもよい。この態様により、インクジェットプリンタ100(液体吐出装置)は、複数のインクカートリッジ10がいずれも新バージョンの同色のインクを収容していることが検出された場合に、インクジェットプリンタ100におけるインク充填状況に応じた作業をユーザに促すことができ、またはインク充填状況に応じた動作を実行することができる。
【0147】
例えば、インクジェットプリンタ100が新品として工場から出荷されるときに、インクジェットプリンタ100にインクが充填されていない状態では、初期充填フラグはTrueとなる。その後、インクジェットプリンタ100にインクが充填されると、初期充填フラグはFalseに切り替わる。なお、初期充填フラグの更なる詳細については、特開2000-289215号公報、特開平11-138858号公報、特開2016-97649号公報等を参照することができる。
【0148】
インクジェットプリンタ100が新品ではなく、ユーザが流路やインクジェットプリンタ100を洗浄すること等によりインクが未充填となっている状態(つまり、充填という観点ではインクジェットプリンタ100が新品であるとみなせる状態)も、上記の「初期充填フラグがTrue」の状態に含まれてよい。
【0149】
また上述した実施形態の説明で用いた序数、数量等の数字は、全て本開示の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本開示は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本開示の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本開示の機能を実現する接続関係はこれに限定されない。
【0150】
本開示の態様は、例えば以下の通りである。
<1> 液体を吐出する吐出部と、
互いに同色の前記液体を収容する複数の液体容器と、
前記複数の液体容器がそれぞれ差し込まれる複数の差込口と、
前記複数の差込口に差し込まれている前記複数の液体容器に関する情報を取得する取得部と、
前記複数の液体容器に関する情報に基づいて、前記複数の液体容器が互いに異なるバージョンの前記同色の前記液体を収容していることが検出された場合に、前記複数の液体容器を、互いに同じバージョンの前記同色の前記液体を収容する前記複数の液体容器に統一するように前記液体容器の交換を促す情報を出力する出力部と、
を備える、液体吐出装置。
<2> 前記出力部は、前記複数の液体容器が新旧異なるバージョンの前記同色の前記液体を収容していることが検出された場合に、前記複数の液体容器を、新バージョンの前記同色の前記液体を収容する前記複数の液体容器に統一するように前記液体容器の交換を促す情報を出力する、前記<1>に記載の液体吐出装置。
<3> 前記出力部は、前記複数の液体容器がいずれも旧バージョンの前記同色の前記液体を収容していることが検出された場合に、前記複数の液体容器を、新バージョンの前記同色の前記液体を収容する前記複数の液体容器に統一するように前記液体容器の交換を促す情報を出力する、前記<1>または<2>に記載の液体吐出装置。
<4> 前記複数の液体容器の少なくとも一つが前記差込口から抜かれた場合に、前記液体容器の交換動作を前記液体容器の交換前の状態に戻す主制御部をさらに備える、前記<1>または<2>に記載の液体吐出装置。
<5> 前記出力部は、前記複数の液体容器がいずれも新バージョンの前記同色の前記液体を収容していることが検出された場合に、液体経路の液体置換作業を促す情報を出力する、前記<1>から<4>のいずれか一つに記載の液体吐出装置。
<6> 前記複数の液体容器がいずれも新バージョンの前記同色の前記液体を収容していることが検出された場合に、初期充填フラグがFalseのときに、前記出力部により液体経路の液体置換作業を促す情報を出力し、前記初期充填フラグがTrueのときに、インク充填動作を実行するか、または前記出力部によりインク充填動作作業を促す情報を出力する、前記<1>から<5>のいずれか一つに記載の液体吐出装置である。
<7> 前記出力部は、交換前後の前記複数の液体容器に収容されている前記同色の前記液体の前記バージョンの状態変化を示す情報を出力する、前記<1>から<6>のいずれか一つに記載の液体吐出装置。
<8> 前記出力部は、前記液体置換作業のマニュアルを出力し、出力された前記液体置換作業の前記マニュアルには、交換前の前記複数の液体容器に収容されている前記同色の前記液体の前記バージョンに対応する洗浄液の充填の推奨レベルが含まれている、前記<5>から<7>のいずれか一つに記載の液体吐出装置。
<9> 前記複数の液体容器に収容される前記同色の前記液体は白インクであり、前記洗浄液の充填の推奨レベルは前記白インクの前記バージョンに対応する洗浄液の充填量であり、旧バージョンの前記白インクが新バージョンの前記白インクよりも前記洗浄液の前記充填量が多い、前記<8>に記載の液体吐出装置。
<10> 液体吐出装置により実行される液体交換方法であって、
複数の差込口にそれぞれ差し込まれている、互いに同色の液体を収容する複数の液体容器に関する情報を取得するステップと、
前記複数の液体容器に関する情報に基づいて、前記複数の液体容器が互いに異なるバージョンの前記同色の前記液体を収容していることが検出された場合に、前記複数の液体容器を、互いに同じバージョンの前記同色の前記液体を収容する前記複数の液体容器に統一するように前記液体容器の交換を促す情報を出力するステップと、
を含む、液体交換方法。
<11> 液体吐出装置のコンピュータに実行させるプログラムであって、
複数の差込口にそれぞれ差し込まれている、互いに同色の液体を収容する複数の液体容器に関する情報を取得するステップと、
前記複数の液体容器に関する情報に基づいて、前記複数の液体容器が互いに異なるバージョンの前記同色の前記液体を収容していることが検出された場合に、前記複数の液体容器を、互いに同じバージョンの前記同色の前記液体を収容する前記複数の液体容器に統一するように前記液体容器の交換を促す情報を出力するステップと、
を含む、プログラム。
【符号の説明】
【0151】
1 装置本体
2 供給トレイ
3 排出トレイ
4 カートリッジ差込口
5 操作パネル
10 インクカートリッジ
12 電源ボタン
13 記録媒体排出/印刷再開ボタン
14 キャンセルボタン
21 フレーム
21A 左側板
21B 右側板
22 吸引ポンプ
23 廃液タンク
24 送液ポンプ
25 ゴムチューブ
27 ポンプロータ
30 チューブポンプ
31 ガイドロッド
32 ステー
33 キャリッジ
34 液体吐出ヘッド
35 ヘッドタンク
36 液体供給チューブ
41 圧板
42 記録媒体
43 供給コロ
44 分離パッド
45 第1ガイド部材
46 カウンタローラ
47 第2ガイド部材
48 押さえ部材
49 加圧コロ
51 搬送ベルト
52 搬送ローラ
53 テンションローラ
56 帯電ローラ
57 第3ガイド部材
61 分離爪
62 排出ローラ
63 排出コロ
71 両面ユニット
72 手差しトレイ
81 維持回復機構
82 キャップ部材
83 ワイパブレード
84 第1空吐出受け
88 第2空吐出受け
89 開口部
91 負圧レバー
92 フィルム
93 供給口
94 大気開放弁
95 液面検知機構
100 インクジェットプリンタ
101 第1拒否部
102 承諾部
103 第2拒否部
104 マニュアル出力部
300 通信回路
301 主制御部
302 印刷制御部
303 主走査モータ駆動回路
304 副走査モータ駆動回路
305 キャリッジ位置検出回路
306 搬送量検出回路
307 供給コロ駆動回路
308 維持回復機構駆動用モータ駆動回路
310 ヘッド駆動回路
311 供給ポンプ用駆動回路
312 ヘッドタンク満タンセンサ
313 環境センサ
314 カートリッジ通信回路
316 不揮発性メモリ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0152】
【特許文献1】特開2001-219579号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12