(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085507
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】分析装置及び分析方法
(51)【国際特許分類】
G01N 31/10 20060101AFI20240620BHJP
G01N 31/12 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
G01N31/10
G01N31/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200038
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】近藤 愛理
(72)【発明者】
【氏名】山田 雄大
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴仁
(72)【発明者】
【氏名】内原 博
【テーマコード(参考)】
2G042
【Fターム(参考)】
2G042AA01
2G042BA04
2G042BA05
2G042BA07
2G042CA03
2G042CA04
2G042CB06
2G042DA05
2G042DA07
2G042FA07
2G042GA01
2G042GA03
(57)【要約】
【課題】測定対象成分を構成する元素が少ない場合であっても、測定対象成分を高精度に検出する。
【解決手段】サンプルガスが流れるサンプルガス流路2と、サンプルガス流路2に設けられ、サンプルガスを少なくとも酸化触媒61及び還元触媒62の順に通過させて、サンプルガスに含まれる測定対象成分を増加させる酸化還元部6と、サンプルガス流路2において酸化還元部6の下流側に設けられ、測定対象成分を検出する成分検出器7と備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルガスが流れるサンプルガス流路と、
前記サンプルガス流路に設けられ、前記サンプルガスを少なくとも酸化触媒及び還元触媒の順に通過させて、前記サンプルガスに含まれる測定対象成分を増加させる酸化還元部と、
前記サンプルガス流路において前記酸化還元部の下流側に設けられ、前記測定対象成分を検出する成分検出器と備える、分析装置。
【請求項2】
前記サンプルガスは、
加熱炉内で試料を融解させて発生したガス、又は、
前記測定対象成分又はその還元成分若しくは酸化成分を保持する保持体から放出された前記測定対象成分又はその還元成分若しくは酸化成分を含むガスである、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記成分検出器は、前記測定対象成分として一酸化炭素を検出するものである、請求項1又は2の何れか一項に記載の分析装置。
【請求項4】
前記成分検出器は、前記測定対象成分として二酸化炭素を検出するものであり、
前記酸化還元部は、前記酸化触媒及び前記還元触媒の下流側に第2酸化触媒を有する、請求項1乃至3の何れか一項に記載の分析装置。
【請求項5】
前記酸化触媒は酸化銅であり、前記還元触媒は白金炭素触媒である、請求項3又は4に記載の分析装置。
【請求項6】
前記酸化還元部は、前記サンプルガスを酸化触媒及び還元触媒の順に複数回通過させるように構成されている、請求項1乃至5の何れか一項に記載の分析装置。
【請求項7】
前記酸化触媒及び前記還元触媒の間に、前記サンプルガスに含まれる水蒸気を除去するH2O除去部が設けられる、請求項1乃至6の何れか一項に記載の分析装置。
【請求項8】
前記成分検出器は、前記測定対象成分を検出してその濃度を測定するものであり、
前記分析装置は、前記成分検出器により測定された成分濃度に基づいて、前記測定対象成分を構成する分析対象元素を分析する元素分析部をさらに備え、
前記元素分析部は、
前記酸化還元部による前記測定対象成分の増加率を格納する増加率格納部と、
前記成分濃度及び前記増加率を用いて、前記酸化還元部を通過する前の前記分析対象元素の濃度に換算する元素濃度換算部とを有する、請求項1乃至7の何れか一項に記載の分析装置。
【請求項9】
サンプルガスを少なくとも酸化触媒及び還元触媒の順に通過させて、前記サンプルガスに含まれる測定対象成分を増加させ、その増加した測定対象成分を検出する分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置及び分析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の分析装置として、るつぼ内に収容された試料を加熱炉内で燃焼又は融解させ、その際に発生するガスを分析することによって、試料に含まれる元素を測定する分析装置がある。
【0003】
この種の分析装置としては、例えば特許文献1に示すように、インパルス電流を流してジュール発熱させた黒鉛るつぼに試料を入れて当該試料を加熱融解し、試料中の酸素(O)、窒素(N)、水素(H)等を黒鉛るつぼにより還元分解して、一酸化炭素(CO)、窒素(N2)、水素(H2)等のガス成分を発生させるものがある。そして、この元素分析装置は、試料中の酸素(O)を分析する場合、試料中の酸素(O)から構成される測定対象成分として一酸化炭素(CO)を検出する。また、低濃度の酸素(O)を高精度に分析する場合には、後段の酸化触媒により一酸化炭素(CO)を二酸化炭素(CO2)に酸化して、測定対象成分として二酸化炭素(CO2)を検出する。
【0004】
しかしながら、このような分析装置は、試料中の酸素(O)の含有量が少ない場合、測定対象成分である一酸化炭素及び二酸化炭素を検出することが難しい。具体的には、試料中の酸素(O)の含有量が少ない場合、試料を融解させて発生する一酸化炭素(CO)の量は少なくなってしまう。そして、少量の一酸化炭素(CO)を二酸化炭素(CO2)に酸化させたとしても、生成される二酸化炭素(CO2)の量が少ないので、二酸化炭素(CO2)を検出することが難しい。その結果、試料中の酸素(O)を高精度に分析することが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、測定対象成分を構成する元素が少ない場合であっても、測定対象成分を高精度に検出することを主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る分析装置は、サンプルガスが流れるサンプルガス流路と、前記サンプルガス流路に設けられ、前記サンプルガスを少なくとも酸化触媒及び還元触媒の順に通過させて、前記サンプルガスに含まれる測定対象成分を増加させる酸化還元部と、前記サンプルガス流路において前記酸化還元部の下流側に設けられ、前記測定対象成分を検出する成分検出器と備えることを特徴とする。
また、本発明に係る分析方法は、サンプルガスを少なくとも酸化触媒及び還元触媒の順に通過させて、前記サンプルガスに含まれる測定対象成分を増加させ、その増加した測定対象成分を検出することを特徴とする。
【0008】
このような構成であれば、酸化還元部が、サンプルガスを酸化触媒及び還元触媒の順に通過させて、測定対象成分を増加させるので、成分検出器は、その増加した測定対象成分を検出することとなる。したがって、測定対象成分を構成する元素が少ない場合であっても、サンプルガスが酸化還元部を通過することにより測定対象成分が増加されるので、増加した測定対象成分を検出することができ、測定対象成分を精度よく検出することができる。
【0009】
前記サンプルガスは、加熱炉内で試料を融解させて発生したガス、又は、前記測定対象成分又はその還元成分若しくは酸化成分を保持する保持体から放出された前記測定対象成分又はその還元成分若しくは酸化成分を含むガスであることが望ましい。
【0010】
このような構成であれば、加熱炉内で試料を融解させて発生したガスをサンプルガスとするので、試料中の元素を含むガスをサンプルガス流路に直接導入することができる。また、保持体が保持して放出したガスもサンプルガスとすることで、サンプルガス流路と異なる流路を流れるガスをサンプルガスとして用いることができ、分析装置の分析対象を拡大させることができる。
【0011】
前記成分検出器は、前記測定対象成分として一酸化炭素を検出するものが好ましい。
【0012】
このような構成であれば、酸化還元部が、以下の反応式(1)に基づいて、サンプルガスに含まれる一酸化炭素を酸化触媒により二酸化炭素に酸化し、以下の反応式(2)に基づいて、酸化触媒を通過したサンプルガスに含まれる二酸化炭素を一酸化炭素に還元して増加させるので、成分検出器は、サンプルガスに含まれる増加した一酸化炭素を検出することができる。
CO +CuO → CO2 + Cu (1)
CO2 + C → 2CO (2)
【0013】
前記成分検出器は、前記測定対象成分として二酸化炭素を検出するものであり、前記酸化還元部は、前記酸化触媒及び前記還元触媒の下流側に第2酸化触媒を有することが挙げられる。
【0014】
このような構成であれば、以下の反応式(3)に基づいて、サンプルガスに含まれる一酸化炭素を二酸化炭素に酸化し、以下の反応式(4)に基づいて、酸化触媒を通過したサンプルガスに含まれる二酸化炭素を一酸化炭素に還元して増加させた後に、以下の反応式(5)に基づいて、第2酸化触媒が一酸化炭素を二酸化炭素に酸化することとなる。その結果、成分検出器は、サンプルガスに含まれる増加した二酸化炭素を検出することができる。
CO +CuO → CO2 + Cu (3)
CO2 + C → 2CO (4)
2CO +2CuO → 2CO2 + 2Cu (5)
【0015】
前記分析装置の前記酸化触媒は酸化銅であり、前記還元触媒は白金炭素触媒であることが挙げられる。
【0016】
このような構成であれば、以下の反応式(6)及び(7)に基づいて、酸化銅によって一酸化炭素を二酸化炭素に酸化され、白金炭素触媒によって二酸化炭素は物質量が2倍の一酸化炭素に還元されるので、酸化還元部による測定対象成分の物質量の増加は2倍になる。その結果、成分検出器は、測定対象成分の物質量の増加が既知の状態で検出することができるので、酸化還元部を通過する前の測定対象成分の物質量を算出することができる。
CO +CuO → CO2 + Cu (6)
CO2 + C → 2CO (7)
【0017】
前記酸化還元部は、前記サンプルガスを酸化触媒及び還元触媒の順に複数回通過させるように構成されていることが望ましい。
【0018】
このような構成であれば、サンプルガスを酸化触媒及び還元触媒の順に複数回通過させるように構成されているので、サンプルガスが酸化還元部を通過することによって、サンプルガスに含まれる測定対象成分をより増加させることができる。
【0019】
前記分析装置において、前記酸化触媒及び前記還元触媒の間に、前記サンプルガスに含まれる水蒸気を除去するH2O除去部が設けられることが望ましい。
【0020】
このような構成であれば、サンプルガスが酸化触媒を通過して、サンプルガス中の水素が水蒸気に酸化され、還元触媒を通過する前にサンプルガス中の水蒸気が除去される。その結果、水素と一酸化炭素との反応を防ぐことができる。
【0021】
前記成分検出器は、前記測定対象成分を検出してその濃度を測定するものであり、前記分析装置は、前記成分検出器により測定された成分濃度に基づいて、前記測定対象成分を構成する分析対象元素を分析する元素分析部をさらに備え、前記元素分析部は、前記酸化還元部による前記測定対象成分の増加率を格納する増加率格納部と、前記成分濃度及び前記増加率を用いて、前記酸化還元部を通過する前の前記分析対象元素の濃度に換算する元素濃度換算部とを有することが挙げられる。
【0022】
このような構成であれば、成分濃度及び増加率を用いるので、酸化還元部を通過する前の測定対象成分の成分濃度を算出することができ、その算出された成分濃度を用いて、測定対象成分を構成する分析対象元素の濃度に精度よく換算することができる。その結果、試料中の分析対象元素の含有量が少ない場合であっても、分析対象元素の分析を精度よく行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
以上に述べた本発明によれば、測定対象成分を構成する元素が少ない場合であっても、測定対象成分を高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態における分析装置の全体模式図である。
【
図2】同実施形態における元素分析部の模式図である。
【
図3】本発明の他の実施形態における分析装置の模式図である。
【
図4】本発明の他の実施形態における分析装置の模式図である。
【
図5】本発明の他の実施形態における分析装置の模式図である。
【
図6】本発明の他の実施形態における分析装置の模式図である。
【
図7】本発明の他の実施形態における分析装置の模式図である。
【
図8】本発明の他の実施形態における分析装置の模式図である。
【
図9】本発明の他の実施形態における分析装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態に係る分析装置について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている場合がある。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0026】
<装置構成>
本実施形態に係る分析装置100は、るつぼR内に収容された金属試料又はセラミック試料(以下、単に試料とも言う)を加熱溶解し、その際に発生する測定対象成分を分析することによって、当該試料に含まれている元素を測定するものである。
【0027】
具体的にこの分析装置100は、
図1に示すように、加熱炉1内で試料を融解させて発生したサンプルガスをキャリアガス(例えばHeガス等)とともに流通させるサンプルガス流路を形成する配管を有し、当該配管上に、ガス処理部4、CO検出器5、酸化還元部6、成分検出器7、CO
2除去部9、及び、N
2検出器10が、この順に直列に設けられている。また、酸化還元部6には、サンプルガスに含まれる水蒸気を処理するH
2O処理部8が設けられる。さらに、分析装置100は、各検出器で検出されたガス成分に対して演算を行う演算装置11及びその演算した結果を出力する表示部14を備える。なお、加熱炉1及びガス処理部4の間には、サンプルガスを除塵するためにダストフィルタ3が設けられている。以下、各部について詳細に説明する。
【0028】
ガス処理部4は、ダストフィルタ3により除塵されたサンプルガスに含まれる少なくとも二酸化炭素、炭化水素、及びアンモニアを還元又は分解可能とするものである。具体的にガス処理部4は、白金をコーティングした炭素粒子(白金炭素触媒)を用いて構成されており、具体的には、石英管内に白金炭素触媒を充填することにより構成され、その白金炭素触媒は、約600~約1100℃程度(好ましくは1000℃以上)に加熱されている。この触媒の加熱方法は、発熱抵抗体により加熱する方法等が考えられる。この白金炭素触媒により、以下の反応式(8)に基づいて、二酸化炭素は一酸化炭素に還元され、炭化水素は炭素及び水素に分解され、アンモニアは、窒素及び水素に分解される。
CO2 + C → 2CO (8)
【0029】
CO検出器5は、ガス処理部4を通過したサンプルガスに含まれる一酸化炭素を検出して、その濃度を測定するものであり、非分散型赤外線ガス分析計(NDIR)により構成されている。このCO検出器5は、試料内部に含まれる酸素が例えば150ppm以上の高濃度の場合に有効である。また、CO検出器5は、加熱炉1内で発生した一酸化炭素だけでなく、ガス処理部4によって還元された一酸化炭素も併せて測定する。
【0030】
そして、酸化還元部6は、サンプルガス流路2に設けられ、サンプルガスを少なくとも酸化触媒61及び還元触媒62の順に通過させて、サンプルガスに含まれる測定対象成分を増加させるものである。具体的に酸化還元部6は、
図1に示すように、酸化触媒61及び還元触媒62がサンプルガス流路2を介して接続される。酸化触媒61及び還元触媒62の間には、サンプルガスに含まれる水蒸気を処理するH
2O処理部8が設けられる。また、酸化触媒61は、還元触媒62よりもサンプルガス流路の上流側に設けられる。さらに、本実施形態では、
図1に示すように、酸化触媒61及び還元触媒62の下流側のサンプルガス流路2に第2酸化触媒63が設けられる。
【0031】
酸化触媒61は、以下の反応式(9)に基づいて、サンプルガスに含まれる一酸化炭素、及び、ガス処理部4によって還元された一酸化炭素を二酸化炭素へと酸化するものである。また、酸化触媒61は、サンプルガスに含まれる水素を水に酸化して、水蒸気を生成する。このときサンプルガスに含まれる成分は、二酸化炭素、水蒸気、及び、窒素である。なお、酸化触媒61は、例えば酸化銅を用いて構成されており、具体的には、石英管内に酸化銅(CuO)を充填することにより構成され、その酸化銅(CuO)は、約600℃程度に加熱されている。この酸化銅(CuO)の加熱方法は、発熱抵抗体により加熱する方法等が考えられる。
2CO +2CuO → 2CO2 + 2Cu (9)
【0032】
H2O処理部8は、酸化触媒61を通過したサンプルガスに含まれる水蒸気を検出してその濃度を測定するH2O検出部81と、サンプルガスに含まれる水蒸気を除去するH2O除去部82とをこの順で備える。H2O検出部81は、非分散型赤外線ガス分析計(NDIR)により構成されている。H2O除去部82は水(水蒸気)を吸着して除去する。この結果、サンプルガスに含まれる成分は、二酸化炭素、及び、窒素となる。なお、本実施形態において、H2O検出部81を備えない構成としてもよい。
【0033】
還元触媒62は、サンプルガスに含まれる二酸化炭素を一酸化炭素に還元するものである。また、還元触媒62は、以下の反応式(10)に基づいて、還元触媒62を通過する前の二酸化炭素の物質量と比べて、2倍の物質量の一酸化炭素を生成する。還元触媒62を通過した後においてサンプルガスに含まれる成分は、一酸化炭素、及び、窒素である。なお、還元触媒62は、例えば白金をコーティングした炭素粒子(白金炭素触媒)を用いて構成されており、白金炭素触媒の具体的な構成はガス処理部4と同様である。
2CO2 + 2C → 4CO (10)
【0034】
第2酸化触媒63は、以下の反応式(11)に示すように、還元触媒62で還元された一酸化炭素を二酸化炭素へと酸化するものである。この際、サンプルガスが第2酸化触媒63を通過する前の一酸化炭素の物質量と比べて、二酸化炭素の物質量は変化しない。第2酸化触媒63を通過した後においてサンプルガスに含まれる成分は、二酸化炭素、及び、窒素である。なお、第2酸化触媒63は、例えば酸化銅を用いて構成されており、酸化銅の具体的な構成は、酸化触媒61と同様である。
4CO +4CuO → 4CO2 + 4Cu (11)
【0035】
成分検出器7は、酸化還元部6を通過したサンプルガスに含まれる増加した測定対象成分を検出するものであり、例えば非分散型赤外線ガス分析計(NDIR)により構成されている。
【0036】
本実施形態において、成分検出器7は、増加した測定対象成分として二酸化炭素を検出する。具体的に成分検出器7は、
図1に示すように、酸化還元部6の下流側に設けられ、第2酸化触媒63を通過したサンプルガスを直接導入して、サンプルガスに含まれる二酸化炭素を検出する。成分検出器7が検出する二酸化炭素の物質量は、酸化還元部6を通過する前の一酸化炭素の物質量の2倍である。この成分検出器7は、試料内部に含まれる酸素が例えば150ppm未満の低濃度の場合に有効である。
【0037】
CO2除去部9は、酸化還元部6を通過したサンプルガスから二酸化炭素を吸着して除去するものである。サンプルガスがCO2除去部9を通過した後、サンプルガスに含まれる成分は、窒素のみとなる。
【0038】
N2検出器10は、除去機構9により二酸化炭素及び水が吸着除去された試料ガスに含まれる窒素を検出してその濃度を測定するものであり、熱伝導度型分析計(TCD)により構成されている。なお、本実施形態において、N2検出器10を備えない構成としてもよい。
【0039】
演算装置11は、各検出器により得られた各ガス成分の濃度を示す測定値を取得するものである。演算装置11は、例えばCPU、内部メモリ、入出力インタフェース、AD変換器等からなる汎用又は専用のコンピュータである演算装置である。
【0040】
この演算装置11は、内部メモリの所定領域に格納してあるプログラムに基づいてCPUやその周辺機器等が作動することにより、
図2に示すように、成分検出器7により得られた成分濃度を受け付ける測定値受付部12と、その成分濃度に基づいて、測定対象成分を構成する分析対象元素を分析する元素分析部13とを備える。
【0041】
ここで、元素分析部13は、
図2に示すように、酸化還元部6による測定対象成分の増加率を格納する増加率格納部131と、酸化還元部6を通過する前の分析対象元素の濃度に換算する元素濃度換算部132とを備える。
【0042】
増加率格納部131は、測定対象成分の増加率を構成する種々のデータを格納している。具体的に増加率格納部131は、酸化触媒61が一酸化炭素を二酸化炭素に酸化する酸化率、還元触媒62が二酸化炭素を一酸化炭素に還元する還元率、第2酸化触媒が一酸化炭素を二酸化炭素に酸化する第2酸化率を格納している。増加率格納部131は、これらのデータに基づいて、酸化還元部6の通過前後の二酸化炭素の増加率を算出して格納している。
【0043】
元素濃度換算部132は、成分濃度及び増加率を用いて、酸化還元部6を通過する前の分析対象元素の濃度に換算するものである。本実施形態において元素濃度換算部132は、成分濃度である二酸化炭素の濃度を二酸化炭素の増加率で割ることによって、酸化還元部6を通過する前の二酸化炭素の濃度を算出する。そして、元素濃度換算部132は、その算出した二酸化炭素の濃度に基づいて、分析対象元素である酸素(O)の濃度に換算する。元素濃度換算部132が換算した酸素(O)の濃度は、例えばディスプレイといった表示部14に出力される。
【0044】
<本実施形態の効果>
本実施形態によれば、酸化還元部6が、サンプルガスを酸化触媒61及び還元触媒62の順に通過させて、測定対象成分である二酸化炭素を増加させる。さらに、サンプルガスが還元触媒62を通過した後に、第2酸化触媒63が一酸化炭素を二酸化炭素に酸化するので、成分検出器7は、増加した測定対象成分を検出することとなる。したがって、試料中の酸素(O)の含有量が少ない場合であっても、サンプルガスが酸化還元部6を通過することにより、二酸化炭素が増加されるので、成分検出器7により、増加した二酸化炭素を精度よく検出することができる。
【0045】
また本実施形態によれば、酸化触媒61は酸化銅であり、還元触媒62は白金炭素触媒であるので、サンプルガスが酸化還元部6を通過した場合に、二酸化炭素の物質量は、サンプルガスが酸化還元部6を通過する前の2倍になる。その結果、成分検出器7が二酸化炭素の濃度を検出した場合、その検出した濃度を用いて、酸化還元部6を通過する前の二酸化炭素の濃度を算出することができる。
【0046】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0047】
本実施形態において、サンプルガスは、酸化還元部6を通過する前にガス処理部4を通過する構成であったが、ガス処理部4を通過しない構成としてもよい。この場合、
図3に示すように、酸化還元部6は、還元触媒62を酸化触媒61の上流側に設けて、サンプルガスを還元触媒62及び酸化触媒61の順に通過させる構成となる。その結果、還元触媒62によって、サンプルガス中の二酸化炭素が一酸化炭素に還元されるとともに増加して、酸化触媒61によって、増加した一酸化炭素が二酸化炭素に酸化されるので、成分検出器7は、増加した二酸化炭素を検出することができる。
【0048】
本実施形態において、成分検出器7は、測定対象成分として二酸化炭素を検出するものであったが、成分検出器7は、測定対象成分としてその他のガス成分を検出するものであってもよい。例えばサンプルガス中の二酸化炭素を反応させて、測定対象成分として一酸化炭素を検出する場合、
図4に示すように、酸化触媒61及び還元触媒62がこの順でH
2O処理部8の下流側に設けられる。この場合、サンプルガスが酸化還元部6を通過することによって、サンプルガス中の一酸化炭素が増加するので、成分検出器7は、増加した一酸化炭素を検出することができる。なお、ガス処理部4を設けず、かつ、成分検出器7が一酸化炭素を検出する場合、酸化触媒61と還元触媒62との間にH
2O処理部8が設けられる。
【0049】
本実施形態において、サンプルガスは加熱炉1内で試料を融解させて発生したガスであったが、サンプルガスはこれに限られない。例えば
図5に示すように、サンプルガスは、測定対象成分又はその還元成分若しくは酸化成分を保持する保持体15から放出された前記測定対象成分又はその還元成分若しくは酸化成分を含むガスであってもよい。保持体15は、例えばモレキュラーシーブが挙げられ、その上流側に設けられたガスボンベBによって、保持体15が保持するガスを圧送する。この場合、サンプルガス流路2と異なる流路において保持体15を取り付けてガスを保持させ、その保持体15をサンプルガス流路2に取り付けることができるので、利便性を向上させることができる。
【0050】
本実施形態において、サンプルガスは酸化触媒61及び還元触媒62をこの順で1回通過するものであったが、酸化触媒及び還元触媒をこの順で通過する回数は複数回であってもよい。例えば、
図6に示すように、酸化触媒61及び還元触媒62の上流側又は下流側のサンプルガス流路2に、さらに酸化触媒61及び還元触媒62からなるユニットを設けてもよいし、酸化触媒61及び還元触媒62からなるユニットを3つ以上設けてもよい。この場合、サンプルガスは、酸化触媒及び還元触媒をこの順で複数回通過するので、サンプルガスに含まれる測定対象成分をより増加させることができる。
【0051】
サンプルガスが酸化触媒及び還元触媒をこの順で複数回通過する他の形態としては、
図7に示すように、酸化触媒61及び還元触媒62の上流側及び下流側に制御バルブ65を取り付け、制御バルブ65に接続されるとともに、サンプルガス流路2から分岐した循環ライン66を設け、制御バルブ65の開度を制御するバルブ制御部67によって、サンプルガスが循環する回数を制御してもよい。さらに、
図8に示すように、ガスボンベBのガスの圧力を増加させずに下流側の制御バルブ65から上流側の制御バルブ65へとサンプルガスを送ることができるように、循環ライン66にポンプPを設ける構成としてもよい。
【0052】
循環ライン66を用いる他の形態としては、
図9に示すように、循環ライン66にさらに酸化触媒641及び還元触媒642を備える第2酸化還元部64が設けられるとともに、サンプルガスを貯留するバッファタンクBTが設けられる構成が考えられる。この場合、るつぼRから酸化還元部6へと流れたサンプルガスはバッファタンクBT1に貯留される。バッファタンクBT1に接続された排出ラインL1からサンプルガスが排出されると、制御バルブ65を制御して、サンプルガスがバッファタンクBT1から第2酸化還元部64を通ってバッファタンクBT2に貯留される流路が形成される。そして、バッファタンクBT2に接続された排出ラインL2からサンプルガスが排出されると、制御バルブ65を制御して、バッファタンクBT2から酸化還元部6を通過し成分検出器7へと流れる流路が形成される。この構成により、ポンプPを設けず、かつ、ガスボンベBのガスの圧力を増加させることなく、サンプルガスが酸化還元部6を複数回通過することができる。
【0053】
また、サンプルガスが酸化触媒及び還元触媒をこの順で複数回通過する場合、増加率格納部131は、サンプルガスが酸化触媒及び還元触媒を通過する回数を格納してもよい。この場合、増加率格納部131は、サンプルガスが酸化触媒及び還元触媒を通過する回数を格納しているので、測定対象成分が増加する回数をさらに用いて、測定対象成分の増加率を算出することができる。
【0054】
本実施形態において、元素分析部13は、増加した測定対象成分に含まれる分析対象元素を分析するものであったが、分析対象元素はこれに限られない。例えば、元素分析部13は、各検出器により得られた水(H2O)、窒素(N2)に基づいて、水素(H)、窒素(N)を分析するものであってもよい。
【0055】
さらに、黒鉛るつぼの他に、セラミックるつぼを用いるものであっても良い。この場合、分析装置100が高周波加熱炉を備えるものであり、試料中に存在する炭素や硫黄などを分析する。またこの場合、試料の燃焼に伴って二酸化硫黄がサンプルガスに含まれるので、酸化触媒61と還元触媒62との間に二酸化硫黄を除去するSO2除去剤(セルロース)を設けることが好ましい。これにより、二酸化硫黄の還元による一酸化炭素との反応することを防ぐことができる。
【0056】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0057】
100・・・分析装置
1 ・・・加熱炉
2 ・・・サンプルガス流路
6 ・・・酸化還元部
61 ・・・酸化触媒
62 ・・・還元触媒
63 ・・・第2酸化触媒
7 ・・・成分検出器
81 ・・・H2O検出部
82 ・・・H2O除去部
13 ・・・元素分析部
131・・・増加率格納部
132・・・元素濃度換算部