(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085519
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/40 20060101AFI20240620BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20240620BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
H01L23/40 F
H01L23/36 Z
H01L21/52 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200061
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100173598
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 桜子
(72)【発明者】
【氏名】松島 誠二
【テーマコード(参考)】
5F047
5F136
【Fターム(参考)】
5F047AA14
5F047BA06
5F047BA14
5F047BA15
5F047BA21
5F047BA22
5F047BA52
5F047BA53
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5F136FA03
5F136FA14
5F136FA16
5F136FA18
(57)【要約】
【課題】半導体モジュールの反り量を少なくすることができる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置1の製造方法は、平板状のベース部21を有するヒートシンク20におけるベース部21と絶縁性基板11とを金属接合する第1工程と、第1工程によりヒートシンク20が接合された絶縁性基板11と半導体素子13とを、ベース部21と絶縁性基板11との積層方向に加圧しながら金属接合する第2工程と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状のベース部を有するヒートシンクにおける当該ベース部と絶縁性基板とを金属接合する第1工程と、
前記第1工程により前記ヒートシンクが接合された前記絶縁性基板と半導体素子とを、前記ベース部と前記絶縁性基板との積層方向に加圧しながら金属接合する第2工程と、
を備える半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1工程の前記金属接合は、はんだ付、銅焼結、又は、銀焼結による接合である、
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第2工程の前記金属接合は、はんだ付、銅焼結、又は、銀焼結による接合である、
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記ヒートシンクの前記ベース部における前記積層方向に見た場合の形状は長方形であり、当該ヒートシンクは、当該ベース部から突出するとともに当該ベース部の長手方向に伸びるフィンを有する、
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第2工程においては、8MPa以上の圧力で加圧する、
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、フィンを有するヒートシンクと、ヒートシンクを収容するとともに冷却液が流通する空間を形成するケースとを備え、半導体モジュールを、ヒートシンクを用いて冷却する冷却装置が記載されている。半導体モジュールは、絶縁基板と、絶縁基板上に設けられた配線層と、配線層に、はんだ層を介して装着された半導体素子とを有している。また、半導体モジュールは、絶縁基板からの熱を冷却装置に伝達する伝熱層を有している。そして、半導体モジュールは、伝熱層がカバーの外面に接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷却装置と半導体モジュールとを有する半導体装置においては、絶縁層、配線層および伝熱層が一体化された絶縁性基板が冷却装置にはんだ付けやろう付にて接合された後、半導体素子が接合されることが一般的である。一方、半導体モジュールの絶縁層の材質がセラミック、半導体モジュールを接合する対象の冷却装置の材質がアルミニウム等の金属である場合、線膨張係数の差により、半導体モジュールに反りが発生する場合がある。そして、半導体モジュールの反り量が多いと、半導体素子にワイヤー電極を配線する工程等において不具合が発生するおそれがある。
本発明は、半導体モジュールの反り量を少なくすることができる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと完成させた本発明は、平板状のベース部を有するヒートシンクにおける当該ベース部と絶縁性基板とを金属接合する第1工程と、前記第1工程により前記ヒートシンクが接合された前記絶縁性基板と半導体素子とを、前記ベース部と前記絶縁性基板との積層方向に加圧しながら金属接合する第2工程と、を備える半導体装置の製造方法である。
ここで、前記第1工程の前記金属接合は、はんだ付け、銅焼結、又は、銀焼結による接合であっても良い。
また、前記第2工程の前記金属接合は、はんだ付け、銅焼結、又は、銀焼結による接合であっても良い。
また、前記ヒートシンクの前記ベース部における前記積層方向に見た場合の形状は長方形であり、当該ヒートシンクは、当該ベース部から突出するとともに当該ベース部の長手方向に伸びるフィンを有しても良い。
また、前記第2工程において、8MPa以上の圧力で加圧しても良い。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、半導体モジュールの反り量を少なくすることができる半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る半導体装置の概略構成の一例を示す図である。
【
図2】半導体装置を
図1のII部で切断した断面の一例を示す図である。
【
図3】(a)~(c)は、第1工程の一例を説明する図である。
【
図4】(a)~(c)は、第2工程の一例を説明する図である。
【
図5】(a)~(c)は、加圧しながら焼結を行う場合の形状の変化を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、実施形態に係る半導体装置1の概略構成の一例を示す図である。
図2は、半導体装置1を
図1のII部で切断した断面の一例を示す図である。
実施形態に係る半導体装置1は、半導体モジュール10と、半導体モジュール10から伝達された熱を放熱するヒートシンク20と、半導体モジュール10とヒートシンク20とを接合するモジュール接合層30とを備えている。半導体装置1においては、ヒートシンク20と半導体モジュール10とが積層されている。以下、ヒートシンク20と半導体モジュール10との積層方向を、単に「積層方向」と称する場合がある。また、積層方向の半導体モジュール10側(
図1では上側)を「第1側」、積層方向のヒートシンク20側(
図1では下側)を「第2側」と称する場合がある。
【0009】
図示はしないが、半導体装置1は、例えば、冷却液が流通する内部空間を有するケースに対し、ヒートシンク20の後述するフィン22が冷却液に接触するように取り付けられて使用される。これにより、半導体モジュール10で発生し、モジュール接合層30を介してヒートシンク20へ伝導した熱が、冷却液によって放熱される。あるいは、半導体装置1は、空気が流通する空間にヒートシンク20が配置された空冷式であっても良い。
【0010】
半導体モジュール10は、絶縁性基板11と、絶縁性基板11の第1側の面(
図2では上側の面)に積載された半導体素子13と、絶縁性基板11の第1側の面と半導体素子13とを接合する素子接合層15と、を備えている。
【0011】
絶縁性基板11は、半導体素子13とヒートシンク20とを絶縁する絶縁層111と、絶縁層111の第1側の面に形成され、半導体素子13に電力を供給するための配線を含む配線層112と、絶縁層111の第2側の面に形成され、半導体素子13から発生した熱をヒートシンク20へ伝達する伝熱層113とを備えている。
【0012】
絶縁層111としては、例えば、アルミナ(Al2O3)、窒化ケイ素(Si3N4)、窒化アルミニウム(AlN)等からなるセラミック基板であることを例示することができる。絶縁層111の厚さは、例えば、0.1mm以上2.0mm以下の範囲を例示することができる。
【0013】
配線層112は、絶縁層111の第1側の面における予め定められた領域に形成され、半導体素子13に電力を供給するための配線を構成する。
伝熱層113は、絶縁層111の第2側の面における略全面を覆うように形成される。
配線層112および伝熱層113は、金属層からなる。配線層112および伝熱層113に用いられる金属としては、銅、ニッケル、銀、パラジウム、金、白金、鉛、コバルト、錫、アルミニウム、あるいはこれらから選ばれた2種以上の金属の合金が挙げられ、好ましくは、銅、ニッケル、銀、パラジウム、金、あるいはこれらから選ばれた2種以上の金属の合金であり、より好ましくは、銅、ニッケル、銀である。また、配線層112と伝熱層113とは、同種の金属から構成されていてもよく、異なる種類の金属から構成されていても良い。
配線層112および伝熱層113の厚さは、例えば、0.05mm以上2.0mm以下の範囲を例示することができる。
【0014】
このような絶縁性基板11としては、セラミックからなる絶縁層111の両面それぞれに、銅からなる配線層112および伝熱層113を接合したDCB(Direct Copper Bond)基板や、セラミック基板からなる絶縁層111の両面それぞれにアルミニウムからなる配線層112および伝熱層113を接合したDAB(Direct Aluminium Bond)基板を例示することができる。
【0015】
半導体素子13は、例えば、電力制御に用いられるトランジスタ、サイリスタ、ダイオード等のパワー半導体である。半導体素子13の材質は、シリコン(Si)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga2O3)を例示することができる。なお、本実施形態では、半導体素子13は、直方体状である。
【0016】
素子接合層15は、絶縁性基板11の配線層112と半導体素子13とを接合する。素子接合層15としては、配線層112と半導体素子13とを電気的に接続可能なものであれば特に限定されない。素子接合層15を介して絶縁性基板11と半導体素子13とを接合する手法としては、はんだ付け、焼結等の金属接合であることを例示することができる。また、焼結による接合としては、銅焼結、又は、銀焼結であることを例示することができる。
【0017】
ヒートシンク20は、平板状のベース部21と、ベース部21から突出する複数のフィン22とを備えている。
ベース部21は、積層方向に見た場合の形状が長方形である。ベース部21は、複数のフィン22が突出する側の面であるフィン側面211と、モジュール接合層30を介して半導体モジュール10と対向する面である外面212とを有している。この例では、ベース部21の面積は、半導体モジュール10の絶縁性基板11の面積と比べて大きい。
【0018】
ヒートシンク20のそれぞれのフィン22は、ベース部21のフィン側面211からベース部21の板面に直交する方向に突出する。それぞれのフィン22は、ベース部21の板面に直交する方向およびベース部21の長手方向に延びる平板状である。複数のフィン22は、ベース部21の短手方向に並んで配置されている。
また、ヒートシンク20は、ベース部21の外面212に対して、モジュール接合層30により半導体モジュール10の絶縁性基板11が接合されている。
【0019】
ヒートシンク20の材質は、特に限定されないが、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金であることを例示することができる。また、ヒートシンク20には、銀めっきや金めっき等のめっき層が形成されていても良い。ベース部21の外面212にこれらのめっき層が形成されることで、モジュール接合層30を介した半導体モジュール10の絶縁性基板11との接合強度を高めることができる。
【0020】
なお、ヒートシンク20において、絶縁性基板11が接合される面に用いられる金属としては、銅、ニッケル、銀、パラジウム、金、白金、鉛、コバルト、錫、アルミニウム、あるいはこれらから選ばれた2種以上の金属の合金が挙げられ、好ましくは、銅、ニッケル、銀、パラジウム、金、あるいはこれらから選ばれた2種以上の金属の合金であり、より好ましくは、銅、ニッケル、銀である。
【0021】
モジュール接合層30は、絶縁性基板11の伝熱層113とヒートシンク20とを接合する。モジュール接合層30としては、伝熱層113とヒートシンク20との間で熱を伝達可能なものであれば特に限定されない。モジュール接合層30を介して絶縁性基板11とヒートシンク20とを接合する手法としては、はんだ付け、焼結等の金属接合であることを例示することができる。また、焼結による接合としては、銅焼結、又は、銀焼結であることを例示することができる。
【0022】
素子接合層15、モジュール接合層30を構成する焼結体は、例えば、絶縁性基板11と、半導体素子13、ヒートシンク20との間に、金属粒子を分散させた金属ペーストを塗布し、焼結することで得られる。金属ペーストを焼結して焼結体を得る方法としては、無加圧焼結、加圧焼結、通電焼結等を例示することができる。素子接合層15、モジュール接合層30を形成する手順、および、素子接合層15、モジュール接合層30の形成に用いる金属ペーストについては、後で詳述する。
【0023】
素子接合層15、モジュール接合層30を構成する焼結体に用いる金属粒子としては、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、銅と銀との合金(Cu-Ag)から選択された金属の粒子を用いることができる。また、金属粒子としては、例えば、表面を銀で被覆した銅からなる粒子を用いても良い。これらの金属粒子の中でも、銅粒子を用いることが好ましい。焼結体を形成する金属粒子として銅粒子を用いることで、モジュール接合層30を介した半導体モジュール10とヒートシンク20との間の伝熱性を向上させることができる。
また、素子接合層15、モジュール接合層30を構成する焼結体は、金属間化合物、無機化合物、樹脂等の金属以外の成分を含んでいても良い。
【0024】
素子接合層15、モジュール接合層30の厚さは、10μm以上500μm以下の範囲を例示することができる。素子接合層15、モジュール接合層30の厚さが10μm未満である場合、素子接合層15、モジュール接合層30による、絶縁性基板11と、半導体素子13、ヒートシンク20との接合強度が不十分となる場合がある。また、素子接合層15、モジュール接合層30の厚さが500μmを超える場合、素子接合層15、モジュール接合層30を介した半導体素子13からヒートシンク20への伝熱性が低下しやすい。この場合、半導体素子13で発生した熱の放熱効率が低下するおそれがある。
なお、素子接合層15、モジュール接合層30の厚さは、50μm以上200μm以下の範囲が好ましく、60μm以上180μm以下の範囲がより好ましい。
【0025】
素子接合層15、モジュール接合層30を構成する焼結体は、焼結により溶融した金属粒子同士が連結した構造を有している。また、素子接合層15、モジュール接合層30を構成する焼結体は、金属粒子間に微細な間隙が形成されていることが好ましい。焼結体の金属粒子間に間隙が形成されることで、素子接合層15、モジュール接合層30に生じた内部応力が緩和されやすくなる。
【0026】
素子接合層15、モジュール接合層30を構成する焼結体における金属の緻密度は、40体積%以上95体積%以下の範囲を例示することができ、50体積%以上95体積%以下の範囲であることが好ましく、60体積%以上95体積%以下の範囲であることがより好ましい。素子接合層15、モジュール接合層30を構成する焼結体における金属の緻密度が上記範囲を満たすことで、素子接合層15、モジュール接合層30を介した、半導体素子13とヒートシンク20との伝熱性と、素子接合層15、モジュール接合層30による内部応力の緩和とを両立しやすくなる。
【0027】
焼結体における金属の緻密度は、焼結体の体積と、精密天秤で測定した焼結体の質量とを測定し、この体積と質量から、焼結体の見かけの密度M1(g/cm3)を求める。続いて、求めた見かけの密度M1と、焼結体に用いた金属の理論密度Mx(例えば銅粒子の場合は、銅の理論密度8.96g/cm3)とを用いて、下記式(1)から焼結体における金属の緻密度(体積%)が求められる。
焼結体における金属の緻密度(体積%)=[(M1)/(Mx)]×100・・・(1)
【0028】
{半導体装置1の製造方法}
次に、半導体装置1の製造方法について説明する。
半導体装置1の製造方法は、ヒートシンク20におけるベース部21と絶縁性基板11とを金属接合する第1工程と、第1工程によりヒートシンク20が接合された絶縁性基板11と半導体素子13とを金属接合する第2工程とを備える。
【0029】
<第1工程>
図3(a)~
図3(c)は、第1工程の一例を説明する図である。
第1工程は、金属ペーストを半導体モジュール10の絶縁性基板11とヒートシンク20のベース部21との間に塗布して金属ペーストの塗膜層40を形成する塗布工程と、金属ペーストの塗膜層40を介して絶縁性基板11とヒートシンク20とを積層する積層工程と、金属ペーストの塗膜層40を焼結してモジュール接合層30を形成する焼結工程とを含む。
【0030】
(塗布工程)
塗布工程では、絶縁性基板11の第2側の面と、ヒートシンク20のベース部21の外面212との少なくともいずれかの面に、金属ペーストを塗布して塗膜層40を形成する。
図3(a)に示す例では、ヒートシンク20のベース部21の外面212に、金属ペーストを塗布して塗膜層40を形成する。
金属ペーストを塗布する手法としては、特に限定されず、スクリーン印刷、転写印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、各種のディスペンサやコータを用いた印刷法等を例示することができる。
塗布工程では、ベース部21の外面212に対して、積層方向から見て、長手方向および短手方向それぞれに対応する辺を有する矩形状の範囲に金属ペーストを塗布して、塗膜層40を形成する。
【0031】
(積層工程)
積層工程では、
図3(b)に示すように、塗布工程により形成された塗膜層40の金属ペーストを介して、ヒートシンク20と絶縁性基板11とを積層する。この例では、ヒートシンク20のベース部21の外面212上に形成された塗膜層40上に、絶縁性基板11の伝熱層113を重ねる。
【0032】
塗膜層40を介してヒートシンク20と絶縁性基板11とを積層する際には、ヒートシンク20および絶縁性基板11を加圧してもよく、無加圧であっても良い。ヒートシンク20および絶縁性基板11に付与する力は、塗膜層40の形成に用いる金属ペーストの粘度等によっても異なるが、0.01MPa以下、好ましくは0.005MPa以下の範囲を例示することができる。また、力を付与する方法としては、特に限定されないが、絶縁性基板11上に重りを載せる方法等を例示することができる。
【0033】
(焼結工程)
焼結工程は、
図3(c)に示すように、塗膜層40(
図3(b)参照))を加熱して塗膜層40を構成する金属ペーストを焼結し、ヒートシンク20と絶縁性基板11とを接合する焼結体からなるモジュール接合層30を形成する。
【0034】
焼結工程において塗膜層40を加熱する際の温度は、金属ペーストに含まれる金属粒子の種類等によっても異なるが、150℃以上500℃以下の範囲を例示することができる。
また、第1工程の焼結工程では、絶縁性基板11とヒートシンク20とを塗膜層40を介して積層方向に加圧しながら焼結を行ってもよく、絶縁性基板11とヒートシンク20とを加圧せずに無加圧で焼結を行っても良い。
【0035】
ここで、焼結工程において塗膜層40を構成する金属ペーストを焼結する際には、金属ペーストに含まれる溶媒が揮発したアウトガス等の気体が発生する。そして、発生した気体が塗膜層40に留まった状態で塗膜層40を構成する金属ペーストが焼結されると、塗膜層40から形成されるモジュール接合層30に、金属ペーストから発生した気体に由来する空隙が発生するおそれがある。空隙が発生すると、モジュール接合層30を介した絶縁性基板11とヒートシンク20との接合強度が低下するおそれがある。また、空隙が発生すると、半導体モジュール10の半導体素子13で発生した熱の放熱効率が低下するおそれがある。
【0036】
これに対して、本発明者等が鋭意検討した結果、焼結工程において絶縁性基板11とヒートシンク20とを加圧する力が8MPa以上であると、空隙率を10%以下にすることができ、押圧力が8MPa未満である場合よりも、接合強度を高めることができるとともに放熱効率を高めることができることを見出した。そこで、本実施の形態では、焼結工程において絶縁性基板11とヒートシンク20とを加圧する場合、加圧する力を8MPa以上とする。
他方、絶縁性基板11とヒートシンク20とを加圧する力は、25MPa以下とする。加圧する力が25MPaを超える場合、絶縁性基板11等の構造物が破損するおそれがあるからである。
【0037】
<第2工程>
図4(a)~
図4(c)は、第2工程の一例を説明する図である。
第2工程は、金属ペーストを絶縁性基板11と半導体素子13との間に塗布して金属ペーストの塗膜層50を形成する塗布工程と、金属ペーストの塗膜層50を介して絶縁性基板11と半導体素子13とを積層する積層工程と、金属ペーストの塗膜層50を焼結して素子接合層15を形成する焼結工程とを含む。
【0038】
(塗布工程)
塗布工程では、第2側の面にヒートシンク20が接合された絶縁性基板11における第1側の面と、半導体素子13の第2側の面との少なくともいずれかの面に、金属ペーストを塗布して塗膜層50を形成する。
図4(a)に示す例では、絶縁性基板11の第1側の面に、金属ペーストを塗布して塗膜層50を形成する。金属ペーストを塗布する手法としては、特に限定されず、スクリーン印刷、転写印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、各種のディスペンサやコータを用いた印刷法等を例示することができる。
【0039】
塗布工程では、絶縁性基板11の第1側の面に対して、積層方向から見て、長手方向および短手方向それぞれに対応する辺を有する矩形状の範囲に金属ペーストを塗布して、塗膜層50を形成する。矩形状の範囲は、半導体素子13の第2側の面の形状と略同じであることを例示することができる。
【0040】
(積層工程)
積層工程では、
図4(b)に示すように、塗布工程により形成された塗膜層50の金属ペーストを介して、絶縁性基板11と半導体素子13とを積層する。この例では、絶縁性基板11における第1側の面上に形成された塗膜層50上に、半導体素子13を重ねる。
【0041】
塗膜層50を介して絶縁性基板11と半導体素子13とを積層する際には、絶縁性基板11および半導体素子13を加圧してもよく、無加圧であっても良い。絶縁性基板11および半導体素子13を加圧する力は、塗膜層50の形成に用いる金属ペーストの粘度等によっても異なるが、0.01MPa以下、好ましくは0.005MPa以下の範囲を例示することができる。また、力を付与する方法としては、特に限定されないが、半導体素子13上に重りを載せる方法等を例示することができる。
【0042】
(焼結工程)
焼結工程は、
図4(c)に示すように、塗膜層50(
図4(b)参照)を加熱して塗膜層50を構成する金属ペーストを焼結し、絶縁性基板11と半導体素子13とを接合する焼結体からなる素子接合層15を形成する。
【0043】
焼結工程において塗膜層50を加熱する際の温度は、金属ペーストに含まれる金属粒子の種類等によっても異なるが、150℃以上500℃以下の範囲を例示することができる。
また、第2工程の焼結工程では、絶縁性基板11と半導体素子13とを塗膜層50を介して積層方向に加圧しながら焼結を行う。これは、以下の理由による。
【0044】
図5(a)~
図5(c)は、加圧しながら焼結を行う場合の形状の変化を模式的に示す図である。
第1工程の焼結工程によりモジュール接合層30が形成された絶縁性基板11とヒートシンク20とは、温度が低下することで収縮する際に、絶縁性基板11およびヒートシンク20の線膨張係数の差により、
図5(a)に示すように、絶縁性基板11側が凸状となるように反りが発生する。そこで、本実施の形態においては、第1工程において発生した反りを矯正するために、第2工程の焼結工程において、
図5(b)に示すように、半導体素子13側から絶縁性基板11側へ積層方向に加圧しながら焼結工程を行う。これにより、
図5(c)に示すように、絶縁性基板11およびヒートシンク20の反りが矯正され、絶縁性基板11およびヒートシンク20のベース部21が積層方向に直交する形状になり易くなる。
【0045】
なお、上述したように、焼結工程において絶縁性基板11と半導体素子13とを加圧する力を8MPa以上とすることで、素子接合層15の空隙率を10%以下にすることができ、加圧する力が8MPa未満である場合よりも、接合強度を高めることができるとともに放熱効率を高めることができる。また、絶縁性基板11と半導体素子13とを加圧する力を25MPa以下とすることで、絶縁性基板11等の構造物が破損することを抑制することができる。
また、焼結工程において絶縁性基板11と半導体素子13とを加圧する力を8MPa以上25MPa以下とすることで、
図5(c)に示すように、絶縁性基板11およびヒートシンク20の反りを矯正することができる。
【0046】
<金属ペースト>
次に、本実施形態の半導体装置1において、モジュール接合層30、素子接合層15の形成に用いる金属ペーストの一例について、詳細に説明する。
金属ペーストは、金属粒子と、金属粒子を分散する溶媒とを含む。また、金属ペーストは、金属粒子および溶媒以外の添加剤を含んでいても良い。このような添加剤としては、界面活性剤、消泡剤、イオントラップ剤等が挙げられる。
【0047】
(金属粒子)
金属粒子としては、上述したように、銅、銀、銅と銀との合金から選択された金属の粒子を例示することができる。また、金属粒子としては、表面を銀で被覆した銅からなる粒子を用いても良い。
これらの中でも、モジュール接合層30を介した半導体モジュール10とヒートシンク20との熱の伝導性の観点から、金属粒子として銅粒子を用いることが好ましい。
【0048】
金属粒子の平均粒径(50%堆積平均粒径)は、0.1μm以上500μm以下の範囲を例示することができ、1μm以上200μm以下の範囲が好ましく、10μm以上100μm以下の範囲がより好ましい。
なお、金属粒子の平均粒子径は、金属ペーストから溶媒を除去し乾燥させた金属粒子を、公知の分散剤を用いて分散させたものを光散乱法粒度分布測定装置で測定する方法により求めることができる。
【0049】
金属粒子の形状は、特に限定されず、球状、回転楕円体等の略球状、塊状、針状、フレーク状、これらの凝集体等を例示することができる。金属粒子のこれらの形状は、単独で用いてもよく、組み合わせて用いても良い。金属ペーストにおける金属粒子の分散性やモジュール接合層30、素子接合層15における金属粒子の充填性等の観点からは、金属粒子の形状は、球状、略球状またはフレーク状であることが好ましい。
また、金属粒子は、公知の表面処理剤により表面処理が施されていても良い。
【0050】
(溶媒)
溶媒としては、金属ペーストの溶媒として公知の揮発性の溶媒を用いることができる。このような溶媒としては、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、テルピネオール、ジヒドロタピネオール、イソボルニルシクロヘキサノール(MTPH)等の一価及び多価アルコール類;エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールイソブチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(DPMA)、乳酸エチル、乳酸ブチル、トリブチリン、ステアリン酸ブチル、スクアラン、セバシン酸ジプチル、アジピン酸ビス(2―エチルヘキシル)、γ-ブチロラクトン、炭酸プロピレン等のエステル類;N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等の酸アミド;シクロヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;炭素数1~18のアルキル基を有するメルカプタン類;炭素数5~7のシクロアルキル基を有するメルカプタン類が挙げられる。
【0051】
また、金属ペーストにおける溶媒の含有量は、金属粒子の全質量を100質量部とした場合に、5質量部以上50質量部以下の範囲を例示することができる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係る半導体装置1の製造方法は、平板状のベース部21を有するヒートシンク20におけるベース部21と絶縁性基板11とを金属接合する第1工程を備える。また、半導体装置1の製造方法は、第1工程によりヒートシンク20が接合された絶縁性基板11と半導体素子13とを、ベース部21と絶縁性基板11との積層方向に加圧しながら金属接合する第2工程を備える。
【0053】
上記製造方法によれば、第1工程において金属接合した後にヒートシンク20と絶縁性基板11との温度が低下する際に収縮することに起因して第1側に凸となるように反りが発生したとしても、第2工程において積層方向に加圧しながら金属接合する際に反りが矯正されるので、半導体素子13を接合した後の半導体モジュール10全体の反り量を少なくすることができる。
【0054】
言い換えれば、本実施形態に係る半導体装置1の製造方法においては、第1工程において発生するおそれがある絶縁性基板11の反りを矯正するために、第2工程において絶縁性基板11と半導体素子13とを金属接合する際にあえて積層方向に加圧しながら行う。そして、この製造方法によれば、半導体モジュール10とヒートシンク20とを接合した後の半導体モジュール10およびヒートシンク20の反り量が少なくなる。その結果、半導体素子13にワイヤー電極を配線する工程等において不具合が発生し難くなる。また、半導体装置1を装着するケースに対して半導体装置1を接着するための接着量の増加や、封止用のゲルが漏れることを抑制できる。
【0055】
また、ヒートシンク20と絶縁性基板11、絶縁性基板11と半導体素子13を金属接合することにより、半導体素子13で発生した熱の放熱効率を高めることができるので、冷却性能を高めることができる。なお、第1工程において金属接合する方法、および、第2工程において金属接合する方法として、
図3および
図4においては焼結を例示しているが、はんだ付けであっても良い。
【0056】
また、半導体モジュール10は接合されるヒートシンク20のベース部21における積層方向に見た場合の形状は長方形であり、ヒートシンク20は、ベース部21から突出するとともにベース部21の長手方向に伸びるフィン22を有する。このように、フィン22が長手方向に伸びる形状であることにより、例えばフィン22が円柱状である場合よりも剛性が高くなるので、ヒートシンク20が反り難くなる。その結果、半導体素子13を接合した後の半導体装置1全体の反り量を少なくすることができる。
【0057】
また、モジュール接合層30、素子接合層15を構成する焼結体は、金属ペーストを塗布して焼結することで得られるものに限定されない。これらの焼結体は、金属粒子を含むシート状の接合用シートを積層し、焼結することで得られるものであっても良い。なお、絶縁性基板11とヒートシンク20、絶縁性基板11と半導体素子13を接合する接合基材は、金属粒子を含み、加熱によって金属粒子が焼結した焼結体が得られるものであれば、ペースト状やシート状に限定されるものではない。
【0058】
<接合用シートを用いた焼結体の形成>
以下に、焼結体を、接合用シートを用いて形成する手法について説明する。具体的には、上述した金属ペーストを用いた場合の半導体装置1の製造方法における塗布工程に代えて、以下の成形工程および貼り付け工程を行えばよい。そして、貼り付け工程後、上述した例と同様に、積層工程および焼結工程を行えばよい。
【0059】
(成形工程)
成形工程では、金属粒子を含む接合用シートを、モジュール接合層30、素子接合層15が形成される領域の形状に合わせて成形する。
【0060】
(貼り付け工程)
貼り付け工程では、成形工程にて成形した接合用シートを、絶縁性基板11の第2側の面とヒートシンク20のベース部21の外面212のいずれかの面、絶縁性基板11の第1側の面と半導体素子13の第2側の面のいずれかの面に、貼り付ける。
【0061】
(積層工程)
積層工程では、上述した例と同様に、貼り付け工程で貼り付けた接合用シートを介して、ヒートシンク20と半導体モジュール10の絶縁性基板11、絶縁性基板11と半導体素子13を積層する。
【0062】
(焼結工程)
焼結工程では、上述した例と同様に、接合用シートを加熱して接合用シートに含まれる金属粒子を焼結し、ヒートシンク20と絶縁性基板11とを接合する焼結体からなるモジュール接合層30、絶縁性基板11と半導体素子13とを接合する焼結体からなる素子接合層15を形成する。
【0063】
<接合用シート>
接合用シートは、金属粒子を含む。金属粒子としては、上述した金属ペーストに用いられる金属粒子と同様のものを用いることができる。接合用シートとしては、以下の3つの態様を例示することができる。
【0064】
(第1の態様)
第1の態様の接合用シートは、金属粒子と、熱分解性樹脂からなるバインダとを含む。第1の態様の接合用シートは、熱分解性樹脂からなるバインダにより金属粒子が保持されることで、シート状の形状をなしている。
熱分解樹脂とは、上述した焼結工程において加熱することにより熱分解が可能な樹脂である。熱分解性樹脂は、熱分解することで、焼結工程により形成されるモジュール接合層30にはほとんど残存しないことが好ましい。熱分解性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、アクリル樹脂、エチルセルロース、ポリビニルアルコール等を用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いても良い。これらの中でも、熱分解性が高いポリカーボネートを用いることが好ましい。
【0065】
第1の態様の接合用シートにおける熱分解性樹脂の含有量は、接合用シート全体に対して30体積%以上70体積%以下であることが好ましく、35体積%以上65体積%以下であることがより好ましく、40体積%以上60体積%以下であることがさらに好ましい。
また、第1の態様の接合用シートは、金属粒子および熱分解性樹脂に加えて、他の添加剤を含んでいても良い。
【0066】
(第2の態様)
第2の態様の接合用シートは、金属粒子と、室温でロウ状または液体状の溶媒からなるバインダとを含む。第2の態様の接合用シートは、溶媒からなるバインダにより金属粒子が保持されることで、シート状の形状をなしている。
溶媒としては、例えば、エチレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ブタントリオール、ポリオキシプロピレントリオール等を用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いても良い。
【0067】
第2の態様の接合用シートにおける溶媒の含有量は、接合用シート全体に対して1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
また、第2の形態の接合用シートは、金属粒子および溶媒に加えて、他の添加剤を含んでいても良い。
【0068】
(第3の態様)
第3の態様の接合用シートは、隣接する金属粒子同士が連続し、且つ金属粒子間に空孔が形成された多孔質体からなる。第3の態様の接合用シートは、例えば、金属粒子を焼結することにより形成される。なお、第3の態様の接合用シートは、金属粒子が完全には焼結されておらず、上述した焼結工程により金属粒子をさらに焼結して、ヒートシンク20と半導体モジュール10の絶縁性基板11とを接合することが可能な状態となっている。
第3の態様の接合用シートは、空孔率が15体積%以上50体積%以下であることが好ましく、15体積%以上30体積%以下であることがより好ましい。
また、第3の形態の接合用シートは、金属粒子に加えて、接着助剤、還元剤等の他の添加剤を含んでいても良い。
【0069】
なお、上述した実施の形態において、ヒートシンク20の形状は、モジュール接合層30を介して絶縁性基板11に接合される面を有し、この接合される面が金属からなり、半導体モジュール10から伝導された熱を放熱する機能を備えていれば、平板状のベース部21と、ベース部21から突出する平板状のフィン22とを有する上述した形態に限定されない。ヒートシンク20は、例えば、内部に冷却液を流通させることが可能な空間を有する、全体として箱状の形状であっても良い。
【0070】
また、上述した実施の形態において、半導体モジュール10の絶縁性基板11上に1つの半導体素子13が接合されている場合を例示したが、絶縁性基板11上に複数の半導体素子13が接合されていても良い。
また、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨に反しない限りにおいては様々な変形や組み合わせを行っても良い。
【符号の説明】
【0071】
1…半導体装置、10…半導体モジュール、11…絶縁性基板、13…半導体素子、15…素子接合層、20…ヒートシンク、21…ベース部、22…フィン、30…モジュール接合層、40,50…塗膜層