(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085529
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】ウレタン樹脂組成物、及び繊維積層体
(51)【国際特許分類】
C08G 18/40 20060101AFI20240620BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20240620BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20240620BHJP
C08G 18/65 20060101ALI20240620BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20240620BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
C08G18/40 081
C08G18/32
C08G18/48 033
C08G18/65 011
C08G18/76 057
B32B27/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200084
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】杉山 典幸
(72)【発明者】
【氏名】前田 亮
(72)【発明者】
【氏名】野中 諒
【テーマコード(参考)】
4F100
4J034
【Fターム(参考)】
4F100AH03B
4F100AK41B
4F100AK51B
4F100AL05B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100DG01A
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4F100JC00B
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4J034JA02
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4J034JA32
4J034QB19
4J034QC05
4J034RA09
(57)【要約】
【課題】優れた透湿性、耐水膨潤性、耐光性及び溶液安定性を有するウレタン樹脂組成物、前記ウレタン樹脂組成物により形成された層を有する繊維積層体を提供する。
【解決手段】ポリオール化合物(a1)及びポリイソシアネート化合物(a2)を必須原料とするウレタン樹脂(A)と、有機溶剤(B)とを含有するウレタン樹脂組成物であって、前記ポリオール化合物(a1)が、ポリエステルポリオール(a1-1)及びポリエチレングリコール(a1-2)を含むものであり、前記ポリエステルポリオール(a1-1)が、ジエチレングリコールを含むグリコール化合物及びセバシン酸を必須原料とするものであることを特徴とするウレタン樹脂組成物を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール化合物(a1)及びポリイソシアネート化合物(a2)を必須原料とするウレタン樹脂(A)と、有機溶剤(B)とを含有するウレタン樹脂組成物であって、
前記ポリオール化合物(a1)が、ポリエステルポリオール(a1-1)及びポリエチレングリコール(a1-2)を含むものであり、
前記ポリエステルポリオール(a1-1)が、ジエチレングリコールを含むグリコール化合物及びセバシン酸を必須原料とするものであることを特徴とするウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリエステルポリオール(a1-1)と、前記ポリエチレングリコール(a1-2)との質量割合[(a1-1)/(a1-2)]が、10/90~90/10の範囲である請求項1記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリエステルポリオール(a1-1)が、バイオベースポリエステルポリオールである請求項1記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記ジエチレングリコールが、バイオベースジエチレングリコールであり、前記セバシン酸が、バイオベースセバシン酸である請求項1記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
前記バイオベースジエチレングリコールの含有量が、前記グリコール化合物中に10~100質量%の範囲である請求項4記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリイソシアネート化合物(a2)が、ジフェニルメタンジイソシアネートを含むものである請求項1記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項7】
前記ウレタン樹脂(A)が、さらに、鎖伸長剤(a3)を含むものである請求項1記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項8】
前記鎖伸長剤(a3)が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール及び1,3-プロパンジオールからなる群より選ばれる1種以上である請求項7記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項記載のウレタン樹脂組成物からなることを特徴とする透湿フィルム。
【請求項10】
請求項1~8の何れか1項記載のウレタン樹脂組成物により形成された層、及び繊維基材を有することを特徴とする繊維積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン樹脂組成物、及び繊維積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ウレタン樹脂組成物は、良好な柔軟性や強度を備えた皮膜を形成できることから、従来から接着剤やコーティング剤、成形材料等の様々な用途で使用されている。なかでも、ウレタン樹脂組成物は、その良好な柔軟な風合いを活かし、例えば、合成皮革や人工皮革の表皮層をはじめ、透湿防水布の表皮層等に好適に使用されている。
【0003】
前記透湿防水布は、透湿フィルムを基材上に塗布した構成体であり、当該用途に用いるウレタン樹脂組成物としては、例えば、ポリオキシアルキレンジオール及びポリエステルジオールを含有する高分子ポリオール並びに有機ポリイソシアネートを構成単量体とするポリウレタン樹脂であって、ポリエステルジオールから両末端の水酸基を除いたポリエステルジオールの溶解度パラメータが9.00~9.70であり、かつポリウレタン樹脂の重量に基づくオキシエチレン基の含有量が10~60重量%である透湿防水素材用ポリウレタン樹脂が知られているが(特許文献1参照。)、耐水膨潤性が十分ではなく、また、エーテル結合由来の耐光性悪化、及び高い結晶性に起因した溶液安定性の低下などの問題があった。
【0004】
そこで、より一層優れた透湿性を有し、かつ、優れた耐水膨潤性、耐光性及び溶液安定性を有する材料が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、優れた透湿性、耐水膨潤性、耐光性及び溶液安定性を有するウレタン樹脂組成物、前記ウレタン樹脂組成物により形成された層を有する繊維積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、特定のポリオール化合物及びポリイソシアネート化合物を必須原料とするウレタン樹脂と、有機溶剤とを含有するウレタン樹脂組成物を用いることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、ポリオール化合物(a1)及びポリイソシアネート化合物(a2)を必須原料とするウレタン樹脂(A)と、有機溶剤(B)とを含有するウレタン樹脂組成物であって、前記ポリオール化合物(a1)が、ポリエステルポリオール(a1-1)及びポリエチレングリコール(a1-2)を含むものであり、前記ポリエステルポリオール(a1-1)が、ジエチレングリコールを含むグリコール化合物及びセバシン酸を必須原料とするものであることを特徴とするウレタン樹脂組成物に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のウレタン樹脂組成物は、ポリエチレングリコールにジエチレングリコールとセバシン酸からなるポリエステルポリオールを併用することで、ジエチレングリコール由来の透湿性に加えて、セバシン酸由来の耐水性、エステル基由来の耐光性を付与でき、さらに、該ポリエステルポリオール構造に、ポリエチレングリコールと親和性の高いジエチレングリコールが組み込まれているため、ポリオール同士の親和性が高まり、優れた溶液安定性を発現できるものである。
【0010】
本発明のウレタン樹脂組成物は、優れた透湿性、耐水膨潤性、耐光性及び溶液安定性を有することから、合成皮革や人工皮革の表皮層として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のウレタン樹脂組成物は、ウレタン樹脂(A)と、有機溶剤(B)とを含有するものであることを特徴とする。
【0012】
前記ウレタン樹脂(A)としては、ポリオール化合物(a1)及びポリイソシアネート化合物(a2)を必須原料とするものである。
【0013】
前記ポリオール化合物(a1)としては、ポリエステルポリオール(a1-1)及びポリエチレングリコール(a1-2)を含むものを用いる。
【0014】
前記ポリエステルポリオール(a1-1)としては、グリコール化合物及びセバシン酸を必須原料とするものを用いる。
【0015】
前記グリコール化合物としては、ジエチレングリコールを必須として用いる。前記ジエチレングリコールの使用量は、前記グリコール化合物中に10~100質量%の範囲が好ましく、30~100質量%の範囲がより好ましい。
【0016】
前記グリコール化合物としては、必要に応じて、その他のグリコール化合物を用いることもできる。前記その他のグリコール化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,8-ノナンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ε-カプロラクトン、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。これらその他のグリコール化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0017】
また、前記グリコール化合物としては、環境負荷を低減できることから、バイオマス由来のグリコール化合物(以下、「バイオベースグリコール化合物」と称することがある。)を用いることもできる。なお、本発明において、「バイオベース」とは、サトウキビ、トウモロコシ、ひまし油等の植物原料から生成されることを示す。
【0018】
前記バイオベースグリコール化合物としては、例えば、バイオベースエチレングリコール、バイオベースジエチレングリコール、バイオベース1,3-プロパンジオール等が挙げられる。これらのバイオベースグリコール化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。これらの中でも、環境負荷を低減でき、優れた透湿性、耐水膨潤性、耐光性及び溶液安定性を有するウレタン樹脂組成物が得られることからバイオベースジエチレングリコールが好ましい。
【0019】
前記バイオベースジエチレングリコールとしては、例えば、サトウキビなどの廃糖蜜を原料として公知の方法で得られたもの等が挙げられ、市販品としては、例えば、India Glycols社製「Bio DEG」等が挙げられる。
【0020】
前記セバシン酸としては、環境負荷を低減できることから、バイオマス由来のセバシン酸(以下、「バイオベースセバシン酸」と称することがある。)を用いることもできる。
【0021】
前記バイオベースセバシン酸としては、例えば、ひまし油等の植物油脂の苛性アルカリによる公知の開裂反応で得られたもの等が挙げられ、市販品としては、例えば、豊国製油株式会社製「Bio Seb」等が挙げられる。
【0022】
前記ポリエステルポリオール(a1-1)としては、さらに、必要に応じて、前記セバシン酸以外の多塩基酸を原料として用いることもできる。
【0023】
前記多塩基酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、又はこれらの酸の無水物等が挙げられる。これらの多塩基酸は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、環境負荷を低減できることから、バイオマス由来の多塩基酸(以下、「バイオベース多塩基酸」と称することがある。)を用いることもできる。
【0024】
前記バイオベース多塩基酸としては、例えば、バイオベースコハク酸、バイオベースダイマー酸、バイオベース2,5-フランジカルボン酸等が挙げられる。これらのバイオベース多塩基酸は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0025】
前記バイオベースコハク酸としては、例えば、トウモロコシ、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシ等を公知の方法で発酵させたもの等が挙げられる。
【0026】
前記バイオベースダイマー酸としては、例えば、植物由来の天然油脂脂肪酸の不飽和脂肪酸を公知の方法で二量化したもの等が挙げられる。
【0027】
前記バイオベース2,5-フランジカルボン酸としては、例えば、フルクトースを原料とするもの、フルフラール誘導体であるフランカルボン酸と二酸化炭素とを用いた公知の方法で得られたもの等が挙げられる。
【0028】
なお、本発明において、前記グリコール化合物及び前記セバシン酸の何れか一方又は両方においてバイオマス由来の化合物を用いて得たポリエステルポリオールを「バイオベースポリエステルポリオール」と称することがある。
【0029】
前記ポリエステルポリオール(a1-1)の製造方法としては、特に制限されないが、例えば、前記グリコール化合物と前記セバシン酸とをエステル化反応させて得る方法等が挙げられる。
【0030】
前記ポリエステルポリオール(a1-1)の数平均分子量は、優れた透湿性、耐水膨潤性、耐光性及び溶液安定性を有するウレタン樹脂組成物が得られることから500~20,000の範囲が好ましく、1,000~8,000の範囲がより好ましい。なお、本発明において、数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0031】
前記ポリエチレングリコール(a1-2)としては、例えば、日油株式会社製「PEG#600」、「PEG#1000」、「PEG#1500」、「PEG#2000」、「PEG#4000」、「PEG#6000」、「PEG#11000」、「PEG#20000」、CRODA社製「ECO RENEX PEG 600-SS(AP)」等が挙げられる。これらのポリエチレングリコールは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0032】
また、前記ポリエチレングリコール(a1-2)としては、環境負荷を低減できることから、バイオマス由来のポリエチレングリコール(以下、「バイオベースポリエチレングリコール」と称することがある。)を用いることもできる。前記バイオベースポリエチレングリコールとしては、例えば、CRODA社製の市販品等が挙げられる。
【0033】
前記ポリエステルポリオール(a1-1)と前記ポリエチレングリコール(a1-2)との質量割合[(a1-1)/(a1-2)]は、優れた透湿性、耐水膨潤性、耐光性及び溶液安定性を有するウレタン樹脂組成物が得られることから、10/90~90/10の範囲が好ましく、50/50~90/10がより好ましく、60/40~80/20の範囲がさらに好ましい。
【0034】
前記ポリオール化合物(a1)としては、必要に応じて、前記ポリエステルポリオール(a1-1)及び前記ポリエチレングリコール(a1-2)以外のポリオール化合物(以下、「その他のポリオール化合物」と略記する。)を用いることもできる。
【0035】
前記その他のポリオール化合物としては、例えば、ポリカーボネートジオール、ポリエーテルポリオール、ポリブタジエンポリオール等が挙げられる。これらのポリオール化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0036】
前記その他のポリオール化合物の数平均分子量は、優れた透湿性、耐水膨潤性、耐光性及び溶液安定性を有するウレタン樹脂組成物が得られることから、200~1,000,000の範囲が好ましく、300~500,000の範囲がより好ましい。
【0037】
前記その他のポリオール化合物の含有量は、前記ポリオール化合物(a1)中に0~90質量%範囲が好ましい。
【0038】
前記ポリイソシアネート化合物(a2)としては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートなどが挙げられる。これらのポリイソシアネートは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、これらの中でも、優れた透湿性、耐水膨潤性、耐光性及び溶液安定性を有するウレタン樹脂組成物が得られることから、ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
【0039】
前記ポリイソシアネート化合物(a2)の使用量は、優れた透湿性、耐水膨潤性、耐光性及び溶液安定性を有するウレタン樹脂組成物が得られることから、前記ウレタン樹脂(A)の原料合計質量中10~60質量%の範囲が好ましく、10~55質量%の範囲がより好ましく、15~45質量%の範囲が更に好ましい。
【0040】
前記ウレタン樹脂(A)は、必要に応じて、原料として、前記ポリオール化合物(a1)及び前記ポリイソシアネート化合物(a2)以外に、鎖伸長剤(a3)を用いることもできる。
【0041】
前記鎖伸長剤(a3)としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の水酸基を有する鎖伸長剤;エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2-メチルピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、ヒドラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアミノ基を有する鎖伸長剤などが挙げられる。これらの鎖伸長剤は単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、これらの中でも、優れた透湿性、耐水膨潤性、耐光性及び溶液安定性を有するウレタン樹脂組成物が得られることから、水酸基を有する鎖伸長剤が好ましく、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールがより好ましい。また、環境負荷を低減できることから、バイオベースエチレングリコール、バイオベース1,3-プロパンジオール等を用いることもできる。
【0042】
前記鎖伸長剤(a3)の使用量は、優れた透湿性、耐水膨潤性、耐光性及び溶液安定性を有するウレタン樹脂組成物が得られることから、前記ウレタン樹脂(A)の原料合計質量中0.1~50質量%の範囲が好ましく、1~30質量%の範囲がより好ましい。
【0043】
前記ウレタン樹脂(A)の製造方法としては、特に制限されないが、例えば、前記ポリオール化合物(a1)及び前記ポリイソシアネート化合物(a2)を含む原料を一括で仕込み、有機溶剤中で反応させて得る方法(1)等が挙げられる。
【0044】
前記有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキソラン等の環状エーテル溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶剤;トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族溶剤;カルビトール、セロソルブ、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール溶剤;アルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート等のグリコールエーテル溶剤;メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0045】
前記方法(1)における反応温度は、30~100℃の範囲が好ましく、70~90℃の範囲がより好ましい。
【0046】
前記方法(1)における反応時間は、3~10時間の範囲が好ましく、4~10時間の範囲がより好ましい。
【0047】
前記方法(1)における前記ポリオール化合物(a1)と前記ポリイソシアネート化合物(a2)との反応は、優れた透湿性、耐水膨潤性、耐光性及び溶液安定性を有するウレタン樹脂組成物が得られることから、質量割合[(a1)/(a2)]が85/15~65/35の範囲が好ましい。
【0048】
前記ウレタン樹脂(A)の数平均分子量は、優れた透湿性、耐水膨潤性、耐光性及び溶液安定性を有するウレタン樹脂組成物が得られることから、5,000~1,000,000の範囲が好ましく、10,000~500,000の範囲がより好ましい。
【0049】
前記ウレタン樹脂(A)の含有量は、優れた透湿性、耐水膨潤性、耐光性及び溶液安定性を有するウレタン樹脂組成物が得られることから、前記ウレタン樹脂組成物中10~90質量%の範囲が好ましく、15~80質量%の範囲がより好ましい。
【0050】
前記有機溶剤(B)としては、上述の有機溶剤として例示したものと同様のものを用いることができ、前記有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0051】
前記有機溶剤(B)の含有量は、作業性及び粘度の観点から、前記ウレタン樹脂組成物中20~90質量%の範囲が好ましく、40~80質量%の範囲がより好ましい。
【0052】
本発明のウレタン樹脂組成物の製造方法としては、特に制限されないが、例えば、上述のウレタン樹脂(A)の製造方法における方法(1)で得たウレタン樹脂(A)溶液に、前記有機溶剤(B)を添加し調製して得る方法等が挙げられる。なお、前記有機溶剤(B)は、ウレタン樹脂(A)を製造する際に用いる有機溶剤と同じものであってもよく、また、異なるものであってもよいが、同じものであることが好ましい。
【0053】
また、本発明のウレタン樹脂組成物は、必要に応じて、例えば、顔料、難燃剤、可塑剤、軟化剤、安定剤、ワックス、消泡剤、分散剤、浸透剤、界面活性剤、フィラー、防黴剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐候安定剤、蛍光増白剤、老化防止剤、増粘剤等を用いることができる。これらは単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0054】
本発明の透湿フィルムとしては、前記ウレタン樹脂組成物からなるものである。
【0055】
前記透湿フィルムの製造方法としては、特に制限されないが、例えば、前記ウレタン樹脂組成物を基材上に塗布し、40~150℃の温度範囲で、1~30分間乾燥させて得る方法等が挙げられる。
【0056】
前記基材としては、例えば、不織布、織布、編み物からなる基材;樹脂フィルム;紙等が挙げられる。
【0057】
前記不織布、織布、編み物からなる基材を構成するものとしては、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、アセテート繊維、レーヨン繊維、ポリ乳酸繊維等の化学繊維;綿、麻、絹、羊毛、これらの混紡繊維などが挙げられる。なお、前記基材として、不織布、織布、編み物からなる基材を使用した場合には、前記基材の内部に前記ウレタン樹脂組成物の乾燥物が浸み込んだ状態が形成されるが、本発明においてはこのような態様もフィルムと呼ぶものとする。
【0058】
前記基材の表面には、必要に応じて、制電加工、離型処理加工、撥水加工、吸水加工、抗菌防臭加工、制菌加工、紫外線遮断加工等の処理が施されていてもよい。
【0059】
前記基材表面に前記ウレタン樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、グラビアコーター法、ナイフコーター法、パイプコーター法、コンマコーター法等が挙げられる。
【0060】
前記透湿フィルムの厚さとしては、使用される用途に応じて決定することができ、特に制限されないが、例えば、0.01~10mmの範囲である。
【0061】
本発明の繊維積層体としては、前記ウレタン樹脂組成物により形成された層、及び繊維基材を有するものである。
【0062】
前記繊維基材としては、例えば、不織布、織布、編み物等が挙げられる。
【0063】
また、前記繊維基材を構成するものとしては、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、アセテート繊維、レーヨン繊維、ポリ乳酸繊維、綿、麻、絹、羊毛、それらの混紡繊維等が挙げられる。
【0064】
また、本発明の繊維積層体は、必要に応じて、接着層を有していてもよい。
【0065】
前記接着層としては、例えば、公知の接着剤等が挙げられる。
【0066】
前記公知の接着剤としては、例えば、湿気硬化型ホットメルト樹脂等の無溶剤ウレタン樹脂組成物、ウレタン樹脂が水中に分散した水系ウレタン樹脂組成物、アクリル樹脂が水中に分散した水系アクリル樹脂組成物、溶剤系ウレタン樹脂組成物、溶剤系アクリル樹脂組成物などが挙げられる。これらの接着剤は単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0067】
本発明の繊維積層体としては、例えば、衣料、医療、衛生用等の透湿防水布帛;合成皮革として好適に使用することができる。
【0068】
本発明の繊維積層体の製造方法としては、特に制限されないが、例えば、前記ウレタン樹脂組成物からなる透湿フィルムを公知の接着剤を用いて、繊維基材に接着させて得る方法;繊維基材上に前記ウレタン樹脂組成物を直接塗布して乾燥させる方法等が挙げられる。
【実施例0069】
以下、実施例と比較例とにより、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、以下に
挙げた実施例に限定されるものではない。
【0070】
実施例及び比較例で用いたポリオール化合物等の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
【0071】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0072】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0073】
(合成例1:ポリエステルポリオール(1)の合成)
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口及び還流冷却器を備えた四つ口フラスコに、バイオベースセバシン酸(Bio Seb)187質量部、バイオベースジエチレングリコール(Bio DEG)113質量部を仕込み、その全仕込み量に対して、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.01%添加し、220℃で15時間反応させ、ポリエステルポリオール(1)を得た。このポリエステルポリオール(1)の酸価は0.54mgKOH/gであり、水酸基価は55.6mgKOH/gであった。なお、本発明において、ポリエステルポリオールの酸価は、JIS K1557-5(2007)に準拠して測定を行った値である。また、ポリエステルポリオールの水酸基価は、JIS K0070(1992)に準拠して測定を行った値である。
【0074】
(合成例2~5:ポリエステルポリオール(2)~(5)の合成)
表1に示す原料と配合比(単位:質量部)に基づいて、合成例1と同様な方法でポリエステルポリオール(2)~(5)を得た。
【0075】
合成例で得られたポリエステルポリオール(1)~(5)の組成を表1に示す。
【0076】
【0077】
表1中、「Bio DEG」はバイオベースジエチレングリコール(India Glycols社製)を示す。
【0078】
表1中、「Bio 1,3-PDO」は、バイオベース1,3-プロパンジオール(Dupont社製)を示す。
【0079】
表1中、「Bio EG」は、バイオベースエチレングリコール(India Glycols社製)を示す。
【0080】
表1中、「EG」は、エチレングリコール(三菱ケミカル株式会社製)を示す。
【0081】
表1中、「BG」は、ブタンジオール(三菱ケミカル株式会社製)を示す。
【0082】
表1中、「Bio Seb」は、バイオベースセバシン酸(豊国製油株式会社製)を示す。
【0083】
表1中、「DEG」は、ジエチレングリコール(三菱ケミカル株式会社製)を示す。
【0084】
表1中、「AA」は、アジピン酸(旭化成株式会社製)を示す。
【0085】
(実施例1:ウレタン樹脂組成物(1)の調製)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、合成例1で得たポリエステルポリオール(1)350質量部、ポリエチレグリコールエチレングリコール(日油株式会社製「PEG#6000」、数平均分子量8800、以下、「PEG(1)」と略記する。)100質量部、エチレングリコール18質量部、N,N-ジメチルホルムアミド1365質量部を加え十分に攪拌混合した。攪拌混合後、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と略記する。)117質量部を加え、80℃で3時間反応させて、ウレタン樹脂組成物(1)を得た。このウレタン樹脂組成物(1)の固形分は、30質量%であり、粘度は、300dPa・sであった。また、バイオ比率は60%であった。
【0086】
(実施例2:ウレタン樹脂組成物(2)の調製)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、合成例2で得たポリエステルポリオール(2)350質量部、PEG(1)100質量部、エチレングリコール18質量部、N,N-ジメチルホルムアミド1365質量部を加え十分に攪拌混合した。攪拌混合後、MDI117質量部を加え、80℃で3時間反応させて、ウレタン樹脂組成物(2)を得た。このウレタン樹脂組成物(1)の固形分は、30質量%であり、粘度は、300dPa・sであった。また、バイオ比率は60%であった。
【0087】
(実施例3:ウレタン樹脂組成物(3)の調製)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、合成例3で得たポリエステルポリオール(3)350質量部、PEG(1)100質量部、エチレングリコール18質量部、N,N-ジメチルホルムアミド1365質量部を加え十分に攪拌混合した。攪拌混合後、MDI117質量部を加え、80℃で3時間反応させて、ウレタン樹脂組成物(3)を得た。このウレタン樹脂組成物(3)の固形分は、30質量%であり、粘度は、300dPa・sであった。また、バイオ比率は60%であった。
【0088】
(実施例4:ウレタン樹脂組成物(4)の調製)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、合成例1で得たポリエステルポリオール(1)250質量部、合成例4で得たポリエステルポリオール(4)100質量部、PEG(1)100質量部、エチレングリコール18質量部、N,N-ジメチルホルムアミド1365質量部を加え十分に攪拌混合した。攪拌混合後、MDI117質量部を加え、80℃で3時間反応させて、ウレタン樹脂組成物(4)を得た。このウレタン樹脂組成物(4)の固形分は、30質量%であり、粘度は、300dPa・sであった。また、バイオ比率は60%であった。
【0089】
(実施例5:ウレタン樹脂組成物(5)の調製)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、合成例1で得たポリエステルポリオール(1)350質量部、PEG(1)100質量部、バイオベースエチレングリコール18質量部、N,N-ジメチルホルムアミド1365質量部を加え十分に攪拌混合した。攪拌混合後、MDI117質量部を加え、80℃で3時間反応させて、ウレタン樹脂組成物(5)を得た。このウレタン樹脂組成物(5)の固形分は、30質量%であり、粘度は、300dPa・sであった。また、バイオ比率は63%であった。
【0090】
(実施例6:ウレタン樹脂組成物(6)の調製)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、合成例1で得たポリエステルポリオール(1)350質量部、PEG(1)100質量部、バイオベースジエチレングリコール31質量部、N,N-ジメチルホルムアミド1402質量部を加え十分に攪拌混合した。攪拌混合後、MDI120質量部を加え、80℃で3時間反応させて、ウレタン樹脂組成物(6)を得た。このウレタン樹脂組成物(6)の固形分は、30質量%であり、粘度は、300dPa・sであった。また、バイオ比率は63%であった。
【0091】
(実施例7:ウレタン樹脂組成物(7)の調製)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、合成例1で得たポリエステルポリオール(1)350質量部、PEG(1)100質量部、バイオベース1,3-プロパンジオール22質量部、N,N-ジメチルホルムアミド1377質量部を加え十分に攪拌混合した。攪拌混合後、MDI118質量部を加え、80℃で3時間反応させて、ウレタン樹脂組成物(7)を得た。このウレタン樹脂組成物(7)の固形分は、30質量%であり、粘度は、300dPa・sであった。また、バイオ比率は63%であった。
【0092】
(実施例8:ウレタン樹脂組成物(8)の調製)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、合成例1で得たポリエステルポリオール(1)350質量部、ポリエチレグリコールエチレングリコール(日油株式会社製「PEG#11000」、数平均分子量11000、以下、「PEG(2)」と略記する。)50質量部、ポリエチレグリコールエチレングリコール(日油株式会社製「PEG#2000」、数平均分子量2000)50質量部、エチレングリコール18質量部、N,N-ジメチルホルムアミド1365質量部を加え十分に攪拌混合した。攪拌混合後、MDI117質量部を加え、80℃で3時間反応させて、ウレタン樹脂組成物(8)を得た。このウレタン樹脂組成物(8)の固形分は、30質量%であり、粘度は、300dPa・sであった。また、バイオ比率は60%であった。
【0093】
(実施例9:ウレタン樹脂組成物(9)の調製)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、合成例1で得たポリエステルポリオール(1)405質量部、PEG(2)45質量部、エチレングリコール16質量部、N,N-ジメチルホルムアミド1363質量部を加え十分に攪拌混合した。攪拌混合後、MDI118質量部を加え、80℃で3時間反応させて、ウレタン樹脂組成物(9)を得た。このウレタン樹脂組成物(9)の固形分は、30質量%であり、粘度は、300dPa・sであった。また、バイオ比率は69%であった。
【0094】
(比較例1:ウレタン樹脂組成物(R1)の調製)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、PEG(1)300質量部、エチレングリコール18質量部、N,N-ジメチルホルムアミド926質量部を加え十分に攪拌混合した。攪拌混合後、MDI79質量部を加え、80℃で3時間反応させて、ウレタン樹脂組成物(R1)を得た。このウレタン樹脂組成物(R1)の固形分は、30質量%であり、粘度は、350dPa・sであった。また、バイオ比率は0%であった。
【0095】
(比較例2:ウレタン樹脂組成物(R2)の調製)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、合成例5で得たポリエステルポリオール(5)350質量部、PEG(1)100質量部、エチレングリコール18質量部、N,N-ジメチルホルムアミド1365質量部を加え十分に攪拌混合した。攪拌混合後、MDI117質量部を加え、80℃で3時間反応させて、ウレタン樹脂組成物(R2)を得た。このウレタン樹脂組成物(R2)の固形分は、30質量%であり、粘度は、300dPa・sであった。また、バイオ比率は25%であった。
【0096】
(比較例3:ウレタン樹脂組成物(R3)の調製)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、合成例4で得たポリエステルポリオール(4)350質量部、PEG(1)100質量部、エチレングリコール18質量部、N,N-ジメチルホルムアミド1365質量部を加え十分に攪拌混合した。攪拌混合後、MDI117質量部を加え、80℃で3時間反応させて、ウレタン樹脂組成物(R3)を得た。このウレタン樹脂組成物(R3)の固形分は、30質量%であり、粘度は、300dPa・sであった。また、バイオ比率は60%であった。
【0097】
上記の実施例及び比較例で得られたウレタン樹脂組成物(1)~(9)、及び(R1)~(R3)を用いて、下記の評価を行った。
【0098】
[透湿性の評価方法]
各実施例及び比較例で得られたウレタン樹脂組成物100質量部をN,N-ジメチルホルムアミド30質量部で希釈し、乾燥後の厚さが15μmとなるように離型紙に塗布し、乾燥機を使用して70℃で2分間、次いで120℃で2分間乾燥させることで透湿フィルムを得た。次いで、得られた透湿フィルムを試験片として、JIS L1099(2012)に記載のA-1法(塩化カルシウム法)に準拠した方法にて、透湿度を測定し、以下の評価基準に従い透湿性を評価した。
【0099】
A:4000g/m2以上
B:3000g/m2以上4000g/m2未満
C:3000g/m2未満
【0100】
[耐水膨潤性の評価方法]
各実施例及び比較例で得られたウレタン樹脂組成物100質量部をN,N-ジメチルホルムアミド30質量部で希釈し、乾燥後の厚さが15μmとなるように離型紙に塗布し、乾燥機を使用して70℃で2分間乾燥させた後、さらに、120℃で2分間乾燥させることで透湿フィルムを得、2cm(縦)×5cm(横)に裁断したものを試験片とした。次いで、得られた試験片を25℃のイオン交換水中に1時間浸漬し、取出した試験片の横方向の長さを測定し、下記式(1)により膨潤率(%)を算出し、以下の評価基準に従い耐水膨潤性を評価した。
膨潤率(%)=浸漬後の試験片の長さ(cm)-5(cm)/5(cm)×100 (1)
【0101】
A:膨潤率5%未満
B:膨潤率5%以上
【0102】
[耐光性の評価方法]
各実施例及び比較例で得られたウレタン樹脂組成物100質量部をN,N-ジメチルホルムアミド30質量部で希釈し、乾燥後の厚さが15μmとなるようにPETフィルムに塗布し、乾燥機を使用して70℃で2分間、次いで120℃で2分間乾燥させることで透湿フィルムを得た。透湿フィルム、及びPETフィルムを、5cm(縦)×5cm(横)に裁断したものを試験片とした。得られた試験片を紫外線フェードメーター(スガ試験機株式会社製「U48HB」)を用いて、ブラックパネル温度63℃で100hr照射(光源:紫外線カーボンアーク灯、放射照度:500W/m2)し、目視により、以下の評価基準に従い評価した。
【0103】
A:外観に変化なし。
B:強い黄変が生じた。
【0104】
[溶液安定性の評価方法]
各実施例及び比較例で得られたウレタン樹脂組成物を5℃条件下で1週間静置して、溶液状態を観察し、以下の評価基準に従い評価した。
【0105】
A:流動性が高い。
B:流動性が低い。
C:流動性がない。析出物あり。
【0106】
上記の実施例及び比較例で得られた硬化性樹脂組成物(1)~(9)、及び(R1)~(R3)の組成及び評価結果を表2及び3に示す。
【0107】
【0108】
【0109】
表2に示した実施例1~9は、本発明のウレタン樹脂組成物を用いた例である。これらのウレタン樹脂組成物は、優れた透湿性、耐水膨潤性、耐光性及び溶液安定性を有することが確認できた。
【0110】
一方、表3に示した比較例1は、ウレタン樹脂の原料として、ポリエステルポリオールを用いないウレタン樹脂組成物の例である。このウレタン樹脂組成物は、溶液安定性が著しく不十分であることが確認できた。
【0111】
表3に示した比較例2は、ウレタン樹脂の原料であるポリエステルポリオールにおいて、セバシン酸を原料に用いないウレタン樹脂組成物の例である。このウレタン樹脂組成物は、耐水膨潤性が著しく不十分であることが確認できた。
【0112】
表3に示した比較例3は、ウレタン樹脂の原料であるポリエステルポリオールにおいて、ジエチレングリコールを原料に用いないウレタン樹脂組成物の例である。このウレタン樹脂組成物は、透湿性及び溶液安定性が著しく不十分であることが確認できた。