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特開2024-855312液硬化型接着剤、積層体、包装材、電池用包装材、電池用容器、電池
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  • 特開-2液硬化型接着剤、積層体、包装材、電池用包装材、電池用容器、電池 図1
  • 特開-2液硬化型接着剤、積層体、包装材、電池用包装材、電池用容器、電池 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085531
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】2液硬化型接着剤、積層体、包装材、電池用包装材、電池用容器、電池
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/06 20060101AFI20240620BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20240620BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20240620BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240620BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20240620BHJP
   H01M 50/129 20210101ALI20240620BHJP
【FI】
C09J175/06
B32B7/12
B32B27/40
B65D65/40 D
H01M50/105
H01M50/129
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200090
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】小池 澪夏
(72)【発明者】
【氏名】加曽利 亮祐
(72)【発明者】
【氏名】伊東 孝之
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4J040
5H011
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD08
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB51
3E086CA01
3E086CA31
3E086CA35
3E086CA40
4F100AB00C
4F100AB10C
4F100AB33C
4F100AK07D
4F100AK41A
4F100AK46B
4F100AK51A
4F100AR00D
4F100AT00B
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100CB00A
4F100CC00A
4F100EJ08A
4F100EJ37B
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4F100GB41
4F100JA07A
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4F100JK06
4F100JL11
4F100JL12D
4F100YY00A
4J040BA192
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4J040EF111
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4J040EF302
4J040HD35
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4J040HD37
4J040JA09
4J040JA13
4J040JB02
4J040KA14
4J040KA26
4J040KA30
4J040LA01
4J040LA06
4J040LA08
4J040MA02
4J040MA10
4J040MB03
4J040MB09
4J040NA08
4J040NA19
5H011AA09
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011KK00
5H011KK02
(57)【要約】
【課題】 優れた成型性を有し、収納物を封止するために行うシーラント層同士の熱融着後も層間の接着強度の低下がなく、層間の浮きなどの外観不良の無い包装材を提供する。
【解決手段】 ポリイソシアネート化合物(A)を含むイソシアネート組成物(X)と、数平均分子量が3500以上6500以下であり、重量平均分子量が35000以上300000以下であり、分子量分布が10以上50以下であるポリエステルポリオール(B)を含むポリオール組成物(Y)と、を含む、2液硬化型接着剤、当該接着剤を用いて製造される積層体、包装材。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート化合物(A)を含むポリイソシアネート組成物(X)と、
数平均分子量が3500以上6500以下であり、重量平均分子量が35000以上300000以下であり、分子量分布が10以上50以下であるポリエステルポリオール(B)を含むポリオール組成物(Y)と、を含む、2液硬化型接着剤。
【請求項2】
前記ポリオール組成物(Y)が、多価カルボン酸(c1)と多価アルコール(c2)との反応生成物であるポリエステルポリオール(C)を含み、前記多価アルコール(c2)が2つの水酸基間のメチレン鎖の炭素原子数が5以上19以下かつ奇数である多価アルコール(c2-1)を含む、請求項1に記載の2液硬化型接着剤。
【請求項3】
前記ポリオール組成物(Y)が、多価カルボン酸(d1)と多価アルコール(d2)との反応生成物であるポリエステルポリオール(D)を含み、前記多価カルボン酸(d1)に占める芳香族多価カルボン酸(d1-1)の配合量が30モル%以上である、請求項1に記載の2液硬化型接着剤。
【請求項4】
前記ポリオール組成物(X)の固形分に占める前記ポリエステルポリオール(B)の含有量が25質量%以下である請求項1に記載の2液硬化型接着剤。
【請求項5】
前記ポリソシアネート組成物(X)のイソシアネート基と、前記ポリオール組成物(Y)が有する水酸基との比[NCO]/[OH]が1.5以上15.0以下である請求項1に記載の2液硬化型接着剤。
【請求項6】
電池用包装材に用いられる請求項1乃至5のいずれか一項に記載の2液硬化型接着剤。
【請求項7】
第一の基材と、第二の基材と、前記第一の基材と前記第二の基材とを貼り合わせる接着層とを有し、前記接着層が請求項1~6のいずれか一項に記載の2液硬化型接着剤の硬化塗膜である積層体。
【請求項8】
請求項7に記載の積層体からなる包装材。
【請求項9】
少なくとも、外層側基材層1、接着層2、金属層3、及びシーラント層4が順次積層された電池用包装材であって、前記接着層2が請求項1~6のいずれかに記載の2液硬化型接着剤の硬化物であることを特徴とする電池用包装材。
【請求項10】
請求項9に記載の電池用包装材を成型してなる電池用容器。
【請求項11】
請求項10に記載の電池用容器を使用してなる電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2液硬化型接着剤、当該2液硬化型接着剤を用いて得られる積層体、包装材、電池用包装材、電池用容器、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や日用品、電子素子を始めとする種々の収納物の包装に用いられる包装材料には、流通時等に受ける衝撃や、酸素や水分による劣化から内容物を保護するため、強度や割れにくさ、ガスバリア性等の機能が要求される。内容物を加熱殺菌処理する場合には耐レトルト性、耐熱性等が必要であるし、内容物を確認できるように透明性が要求されることもある。しかしながら必要な機能を一種類の材料で満足するのは難しい。例えばヒートシールにより密閉する場合に用いられる無延伸のポリオレフィンフィルムは熱加工性に優れる一方、酸素バリア性は不十分である。反対にナイロンフィルムはガスバリア性に優れるが、ヒートシール性には劣る。このようなことから、異種のポリマー材料や、ポリマー材料と金属基材とを貼り合せた積層体が包装材料として広く用いられている。
【0003】
このようなことから、異種のポリマー材料や、ポリマー材料と金属基材とを貼り合せた積層体が包装材料として広く用いられている。また、積層体を成型して一つまたは複数の収納部を形成した積層体を包装材として用いることがある(特許文献1-3)。一つまたは複数の収納部が形成された積層体は、同じ形状の収納部が形成された積層体や、収納部が形成されていない(成型加工されていない)積層体と接合されることで収納部を密封する。接合方法として熱融着(ヒートシール)が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-199283号公報
【特許文献2】特表2008-535746号公報
【特許文献3】特開2015-082354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような用途に適した包装材、即ち優れた成型性を有し、収納物を封止するために行うシーラント層同士の熱融着後も層間の接着強度の低下がなく、層間の浮きなどの外観不良の無い包装材を提供することを目的とする。また、このような包装材の製造に好適な、成型性、耐熱性に優れた2液硬化型接着剤、これを用いた積層体、包装材、電池用包装材、電池用容器、電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポリイソシアネート化合物(A)を含むポリイソシアネート組成物(X)と、数平均分子量が3500以上6500以下であり、重量平均分子量が35000以上300000以下であり、分子量分布が10以上50以下であるポリエステルポリオール(B)を含むポリオール組成物(Y)と、を含む、2液硬化型接着剤、当該接着剤を用いて製造される積層体、包装材、電池用包装材、電池用容器、電池に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の2液硬化型接着剤を使用することで、優れた成型性を有し、収納物を封止するために行うシーラント層同士の熱融着後も層間の接着強度の低下がなく、層間の浮きなどの外観不良の無い積層体、包装材、電池用包装材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の、外層側基材層1、接着層2、金属層3、及びシーラント層4が順次積層された電池用包装材の具体的態様の一例である。
図2】本発明の、外層側基材層1、接着層2、金属層3、接着層5、及びシーラント層4が順次積層された電池用包装材の具体的態様の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<接着剤>
ポリイソシアネート化合物(A)を含むポリイソシアネート組成物(X)と、ポリエステルポリオール(B)を含むポリオール組成物(Y)とを含む。
【0010】
(ポリイソシアネート組成物(X))
ポリイソシアネート組成物(X)は、複数のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(A)を含む。ポリイソシアネート化合物(A)としては特に限定されず、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、及びこれらジイソシアネートのビュレット体、ヌレート体、アダクト体、アロファネート体、カルボジイミド変性体、ウレトジオン変性体、これらポリイソシアネートとポリオールを反応させたウレタンプレポリマー等が挙げられ、これらを単独でまたは複数組み合わせて使用することができる。
【0011】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI、あるいはクルードMDIとも称される)、1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0012】
芳香脂肪族ジイソシアネートとは、分子中に1つ以上の芳香環を有する脂肪族イソシアネートを意味し、m-又はp-キシリレンジイソシアネート(別名:XDI)、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(別名:TMXDI)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0013】
脂肪族ジイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(別名:HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0014】
脂環族ジイソシアネートとしては、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(別名:IPDI)、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0015】
ウレタンプレポリマーの合成に用いるポリオールは、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等のアルキレングリコール;
【0016】
ビスフェノールA、ビスフェノールF、水素添加ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールF等のビスフェノール;
ダイマージオール;
ビスヒドロキシエトキシベンゼン;
ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、その他のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリアルキレングリコール;
ポリアルキレングリコールを更に芳香族又は脂肪族ポリイソシアネートで高分子量化したウレタン結合含有ポリエーテルポリオール;
【0017】
上述したアルキレングリコール又はポリアルキレングリコールと、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸等の炭素原子数が2~13の範囲である脂肪族ジカルボン酸、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸の少なくとも一種とを反応させて得られるポリエステルポリオール;
プロピオラクトン、ブチロラクトン、ε-カプロラクトン、σ-バレロラクトン、β-メチル-σ-バレロラクトン等の環状エステル化合物の開環重合反応によって得られるポリエステルと、グリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールとの反応物であるポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0018】
(ポリオール組成物(Y))
ポリオール組成物(Y)は、数平均分子量(Mn)が3500以上6500以下であり、重量平均分子量(Mw)が35000以上300000以下であり、分子量分布(Mw/Mn)が10以上50以下であるポリエステルポリオール(B)を含む。これにより、耐熱性に加え、成型性等の各種物性に優れた接着剤とすることができる。
【0019】
尚、本願発明において、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
【0020】
測定装置 ;東ソー株式会社製 HLC-8420GPC
カラム ;東ソー株式会社製 TSKgel superMuitipore HZ-H × 4本
検出器 ;RI(示差屈折計)
データ処理;東ソー株式会社製 EcoSEC Elite-WS
測定条件 ;カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 0.35ml/分
標準 ;単分散ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.2質量%のテトラヒドロフラン溶液を細孔が0.45μマイクロフィルターでろ過したもの(1000μl)
【0021】
このようなポリエステルポリオール(B)は従来公知の方法で得られるが、例えば、多価エポキシ化合物(b1)と、多価カルボン酸(b2)と、多価アルコール(b3)を含む組成物を反応させる方法が挙げられる。
【0022】
多価エポキシ化合物(b1)としては、例えば、ビスフェノ-ルA型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、エポキシ基を有するビニル化合物の重合体あるいは共重合体、エポキシ化レゾルシノール-アセトン縮合物、部分エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられ、1種または2種以上を組合わせて用いることができる。
【0023】
多価エポキシ化合物(b1)としては、接着剤として好適なポリエステルポリオール(B)が得られることからノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。具体例としては、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物型ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物型ノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型ノボラック型エポキシ樹脂およびジシクロペンタジエン型ノボラック型エポキシ等が挙げられる。特に本願所定の分子量分布のポリエステルポリオール(B)を得やすいことからクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0024】
多価エポキシ化合物(b1)の官能基数は、一例として2以上8以下である。接着剤として好適なポリエステルポリオール(B)が得られることから、官能基数が4以上8以下の多価エポキシ化合物(b1)を用いることが好ましい。
【0025】
耐熱性、成型性に優れた接着剤用のポリエステルポリオール(B)を得られることから、多価エポキシ化合物(b1)、多価カルボン酸(b2)、多価アルコール(b3)の合計100質量部中、多価エポキシ化合物(b1)の配合量が0.5質量部以上30質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上10質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上2質量以下であることがより好ましい。
【0026】
多価カルボン酸(b2)としては、マロン酸、エチルマロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、2,2-ジメチルコハク酸、無水コハク酸、アルケニル無水コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の脂肪族多塩基酸;
【0027】
マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、ピメリン酸ジエチル、セバシン酸ジエチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等の脂肪族多塩基酸のアルキルエステル化物;
【0028】
1,1-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-シクロペンタンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、4-メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物、無水ハイミック酸、無水ヘット酸等の脂環族多塩基酸;
【0029】
オルトフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸無水物、ナフタル酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸等の芳香族多塩基酸;
【0030】
ジメチルテレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル等の芳香族多塩基酸のメチルエステル化物;等が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
耐熱性に優れる接着剤が得られることから、2価の多塩基酸、その無水物、その低級アルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を用いることが好ましく、イソフタル酸およびテレフタル酸の少なくとも一方を用いることがより好ましい。
【0032】
本発明の接着剤が溶剤型である場合、多価カルボン酸(b)の50モル%以上がイソフタル酸であることが好ましい。これにより、有機溶剤への溶解性に優れたポリエステルポリオール(B)を得ることができる。
【0033】
多価アルコール(b3)としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2,2-トリメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-3-イソプロピル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘサン、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール等の脂肪族ジオール;
【0034】
ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール等のエーテルグリコール;
【0035】
前記脂肪族ジオールと、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等の種々の環状エーテル結合含有化合物との開環重合によって得られる変性ポリエーテルジオール;
【0036】
前記脂肪族ジオールと、ラクタノイド、ε-カプロラクトン等の種々のラクトン類との重縮合反応によって得られるラクトン系ポリエステルポリオール;
【0037】
ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール;
【0038】
ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノールにエチレンオキサイド、プロプレンオキサイド等を付加して得られるビスフェノールのアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0039】
前記3官能以上のポリオールは、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール等の脂肪族ポリオール;
【0040】
前記脂肪族ポリオールと、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等の種々の環状エーテル結合含有化合物との開環重合によって得られる変性ポリエーテルポリオール;
【0041】
前記脂肪族ポリオールと、ε-カプロラクトン等の種々のラクトン類との重縮合反応によって得られるラクトン系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0042】
耐熱性や、有機溶剤への溶解性が良好なポリエステルポリオール(B)を得られることから、脂肪族ジオールを使用することが好ましい。中でもエチレングリコール、プロピレングリコール及びネオペンチルグリコールからなる群から選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0043】
あるいは、接着剤の硬化塗膜の柔軟性が向上し、成型性に優れた接着剤となることからすることから、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,6-ヘキサンジオールから選ばれる少なくとも一種を用いることも好ましい。。
【0044】
また、多価エポキシ化合物(b1)と、多価カルボン酸(b2)と、多価アルコール(b3)に加え、必要に応じて安息香酸、p-tert-ブチル安息香酸等の一塩基酸(b4)をポリエステルポリオール(B)の原料として使用してもよい。
【0045】
接着剤の耐熱性をより高めることができることから、ポリエステルオリオール(B)の重量均分子量は40000以上であることがより好ましく、250000以下であることがより好ましい。
【0046】
架橋点間距離が適度な範囲となることでより耐熱性に優れる接着剤が得られることから、ポリエステルオリオール(B)の分子量分布は45以下であることがより好ましい。
【0047】
耐熱性に優れた接着剤となることから、ポリエステルポリオール(B)のガラス転移温度は0℃以上であることが好ましく、5℃以上であることがより好ましい。また、ポリエステルポリオール(B)のガラス転移温度は40℃以下であることがより好ましい。
【0048】
なお、本願発明におけるガラス転移温度は次のようにして測定した値をいう。
示差走査熱量測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製XDSC-7000、以下DSCとする)を用い、試料5mgを30mL/minの窒素気流下で室温から10℃/minで200℃まで昇温した後、10℃/minで-80℃まで冷却する。再び10℃/minで150℃まで昇温させてDSC曲線を測定し、二度目の昇温工程で観測される測定結果における低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点をガラス転移点とし、このときの温度をガラス転移温度とする。また、一度目の昇温で200℃まで昇温させているが、これはポリエステルポリオール(B)が十分に溶融する温度であればよく、200℃では不十分である場合は適宜調整する。同様に、冷却温度も-80℃では不十分な場合(ガラス転移温度がより低い場合など)には適宜調整する。
【0049】
ポリエステルポリオール(B)の水酸基価は、ポリイソシアネート化合物(A)と十分に反応することから、1~50mgKOH/gの範囲であることが好ましく、より好ましくは3mgKOH/g以上であり、40mgKOH/g以下である。
【0050】
ポリエステルポリオール(B)の固形分酸価は、特に限定はないが、10.0mgKOH/g以下であることが好ましい。5.0mgKOH/g以下であると耐湿熱性により優れ好ましい。また、固形分酸価の下限について特に制限はないが、一例として0.5mgKOH/g以上である。0mgKOH/gであってもよい。
【0051】
ポリオール組成物(Y)は、ポリエステルポリオール(B)に加えて、多価カルボン酸(c1)と多価アルコール(c2)とを含む組成物の反応生成物であるポリエステルポリオール(C)であって、多価アルコール(c2)が2つの水酸基間のメチレン鎖の炭素原子数が5以上19以下かつ奇数である多価アルコール(c2-1)を含むポリエステルポリオール(C)を含むことも好ましい。これにより、常態接着強度、成型性、耐熱性に優れた接着剤とすることができる。
【0052】
多価カルボン酸(c1)としては、多価カルボン酸(b2)で例示したのと同様のものを用いることができる。アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸及びその無水物やそのメチルエステル化合物が好ましく用いられる。常態接着強度、成型性、耐熱性が向上することから、多価カルボン酸(c1)は芳香族環を有する多塩基酸又はその誘導体(c1-1)を含むことが好ましい。オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸及びその無水物やそのメチルエステル化合物が好ましく、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸及びその酸無水物やそのメチルエステル化合物がより好ましい。
【0053】
多価カルボン酸(c1)における芳香族環を有する多価カルボン酸(c1-1)の割合が30モル%以上であることが好ましい。これにより、保存安定性に優れた接着剤とすることができる。さらに成型性、耐熱性が向上することから多価カルボン酸(c1)における、芳香族環を有する多価カルボン酸(c1-1)の割合が50モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、96モル%以上であることがより好ましい。多価カルボン酸(c1)の全てが芳香族環を有する多価カルボン酸(c1-1)であってもよい。
【0054】
多価アルコール(c2-1)のメチレン鎖は直鎖状であってもよいし、側鎖をそなえる分岐状であってもよい。メチレン鎖が側鎖を含む場合、側鎖の炭素原子数はメチレン鎖の炭素原子数には含めない。
【0055】
メチレン鎖が直鎖状の多価アルコール(c2-1)としては、1,5-ペンタンジオール、1,7-へプタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,15-ペンタデカンジオール、1,17-ヘプタデカンジオール、1,19-ノナデカンジオールが挙げられる。
【0056】
メチレン鎖が分岐状である多価アルコール(c2-1)としては、1-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,7-ヘプタンジオール、3-メチル1,7-ヘプタンジオール、4-メチル1,7-ヘプタンジオール、2-メチル-1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,9-ノナンジオール、4-メチル-1,9-ノナンジオール、5-メチル-1,9-ノナンジオール等が挙げられる。
【0057】
成型性、耐熱性の両立により優れることから多価アルコール(c2-1)のメチレン鎖は直鎖状であることが好ましい。またメチレン鎖の炭素原子数は7以上15以下であることがより好ましく、9以上13以下であることがより好ましい。
【0058】
このようなポリエステルポリオール(C)は、その主骨格にエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、イソソルビド、コハク酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸といった、ポリエステルポリオールの凝集力を高め、耐熱性を向上させる成分を組み込んだ場合であってもガラス転移温度が比較的低い範囲に収まるため、接着剤の成型性や濡れ性の低下が抑制される。即ちポリエステルポリオール(C)を併用することで、より耐熱性に優れた接着剤とすることができる。
【0059】
多価アルコール(c2-1)の配合量は、必要な成型性(成型温度、成型深さ等)の程度を鑑み適宜調整すればよい。接着性、成型性、耐熱性とのバランスの観点から、一例として多価アルコール(c2)の10モル%以上であることが好ましく、30モル%以上であることがより好ましく、40モル%以上であることがより好ましい。上限については特に制限されないが、90モル%以下であることが好ましく、85モル%以下であることがより好ましく、80モル%以下であることがより好ましい。さらに多価アルコール(c2-1)のメチレン鎖の炭素原子数が5以上11以下の場合には多価アルコール(c2)の20モル%以上であることが好ましく、90モル%以下であることが好ましく、40モル%以上80モル%以下であることがより好ましい。多価アルコール(c2-1)のメチレン鎖の炭素原子数が13以上19以下の場合には10モル%以上60モル%以下であることが好ましく、15モル%以上40モル%以下であることがより好ましい。
【0060】
ポリエステルポリオールの凝集力を高める成分の配合量は他の成分との兼ね合いで適宜設定される。一例として多塩基酸又はその誘導体(c1)及び多価アルコール(c2)の全量の30モル%以上90モル%以下である。
【0061】
多価アルコール(c2-1)の配合量が増えるに従い、ポリエステルポリオール(C)は有機溶剤への溶解性が低下したり、ポリソシアネート組成物(X)との硬化塗膜(接着剤層)の弾性率が低下したりする場合がある。有機溶剤への溶解性が低下すると本発明の2液硬化型接着剤を溶剤型とする際に保存安定性が低下し、硬化塗膜の弾性率が低下すると成型加工時に接着剤層の破壊が起きるおそれがある。このような場合は、多価アルコール(c2)として分岐アルキレン構造を有する多価アルコール(c2-2)、環状構造を有する多価アルコール(c2-3)からなる群から選ばれる少なくとも一種をさらに含むことが好ましい。これにより保存安定性、弾性率の低下を防ぐことができる。さらに硬化塗膜の耐加水分解性を向上させる効果も期待できる。以下では分岐アルキレン構造を有する多価アルコール(c2-2)を多価アルコール(c2-2)ともいい、環状構造を有する多価アルコール(c2-3)を多価アルコール(c2-3)ともいう。
【0062】
多価アルコール(c2-2)は分子構造内に3級または4級炭素原子を有する多価アルコールであり、例えば、1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-イソブチル-1,3-プロパンジオール、2,2-イソアミル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンンジオール、1,2-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等の分岐アルカンジオール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能以上の分岐アルカン構造含有多官能アルコールが挙げられ、単独若しくは二種類以上を併用することができる。これらのなかでも特に耐湿熱性に優れるポリエステルポリオール(A1)が得られる観点からネオペンチルグリコールが好ましい。
【0063】
多価アルコール(c2-3)は分子構造内に環状構造を有する多価アルコールである。環状構造は単環であっても多環であってもよく、芳香環式であってもよいし脂環式であってもよい。複素環であってもよい。このような多価アルコール(a2-3)としては、1,3-シクロペンタンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール、4-(2-ヒドロキシエチル)シクロヘキサノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、4,4’-ビシクロヘキサノール、1,3-アダマンタンジオール、1,3,5-アダマンタントリオール、3-(ヒドロキシメチル)-1-アダマンタノール、トリシクロ[5.2.1.02.6]-デカンジメタノール、1,2-ベンゼンジメタノール、1,4-ベンゼンジメタノール、4,4-ジヒドロキシビフェノール、4,4’-ビスフェニルジメタノール、2,2’-メチレンジフェノール、2,4’-メチレンジフェノール、4,4’-メチレンジフェノール、4,4’-エチリデンビスフェノールA、ビスフェノールA、1,4-ナフタレンジオール、1,5-ナフタレンジオール、1,6-ナフタレンジオール、1,7-ナフタレンジオール、2,3-ナフタレンジオール、2,6-ナフタレンジオール、2,7-ナフタレンジオール等が挙げられる。
【0064】
多価アルコール(c2-2)および多価アルコール(c2-3)の配合量の合計は他の成分との兼ね合いにより適宜調整されるが、一例として10モル%以上90モル%以下であることが好ましい。より好ましくは15モル%以上70モル%以下であり、20モル%以上60モル%以下である。
【0065】
多価アルコール(c2)は、多価アルコール(c2-1)~(c2-3)以外の多価アルコール(c2-4)を含んでいてもよい。多価アルコール(c2-4)としては、多価アルコール(b3)で例示したのと同様のものを用いることができる。
【0066】
ポリエステルポリオール(C)は、多価カルボン酸(c1)と、多価アルコール(c2)と、ポリイソシアネートとを必須原料とするポリエステルポリウレタンポリオールであってもよい。あるいは多価カルボン酸(c1)と多価アルコール(c2)との反応生成物であるポリエステルポリオールを、ポリイソシアネートと反応させて得られるポリエステルポリウレタンポリオールであってもよい。その場合に使用するポリイソシアネートは、ポリイソシアネート化合物(A)として例示したのと同様のものを用いることができる。これらポリイソシアネートはそれぞれ単独で使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0067】
ポリエステルポリオール(C)の水酸基価は、接着強度により優れることから、1~40mgKOH/gの範囲であることが好ましく、より好ましくは3mgKOH/g以上であり、30mgKOH/g以下である。
【0068】
ポリエステルポリオール(C)の数平均分子量(Mn)は、接着剤用途に用いた際の接着強度により優れることから、2,000~100,000の範囲であることが好ましく、2,000~50,000がなお好ましい。数平均分子量が2,000未満である場合には硬化塗膜中の架橋密度が高くなりすぎ、積層体の外観、成型性が劣る場合がある。
一方、重量平均分子量(Mw)は、5,000~300,000の範囲であることが好ましく、10,000~200,000の範囲であることがなお好ましい。
【0069】
ポリエステルポリオール(C)の固形分酸価は、特に限定はないが、10.0mgKOH/g以下であることが好ましい。5.0mgKOH/g以下であると耐湿熱性により優れ好ましい。また、固形分酸価の下限について特に制限はないが、一例として0.5mgKOH/g以上である。0mgKOH/gであってもよい。
【0070】
ポリエステルポリオール(C)のガラス転移温度は、-30℃以上20℃以下であることが好ましい。ポリエステルポリオール(C)のガラス転移温度は、-20℃以上であることがより好ましく、15℃以下であることがより好ましい。
【0071】
ポリオール組成物(Y)がポリエステルポリオール(C)を含む場合、その配合量は適宜調整され得るが、一例としてポリエステルポリオール(B)とポリエステルポリオール(C)の総量に占めるポリエステルポリオール(C)の割合が95質量%以下とすることが好ましく、50質量%以下とすることが好ましく、30質量%以下とすることが好ましい。
【0072】
ポリオール組成物(Y)は、多価カルボン酸(d1)と多価アルコール(d2)との反応生成物であって、多価カルボン酸(d1)に占める芳香族多価カルボン酸(d1-1)の配合量が30モル%以上であるポリエステルポリオール(D)を含むことも好ましい。これにより、常態接着強度、成型性、耐熱性に優れた接着剤とすることができる。
【0073】
多価カルボン酸(d1)、芳香族多価カルボン酸(d1-1)、多価アルコール(d2)としては、多価カルボン酸(b2)、多価アルコール(b3)で例示したのと同様のものを用いることができる。多価カルボン酸(d1)に占める芳香族多価カルボン酸(d1-1)の配合量は50モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、96モル%以上であることがより好ましい。多価カルボン酸(d1)の全量が芳香族多価カルボン酸(d1-1)であってもよい。
【0074】
ポリエステルポリオール(D)は、多価カルボン酸(d1)、多価アルコール(d2)に加えてポリイソシアネートを含む組成物の反応生成物であるポリエステルポリウレタンポリオールであってもよい。あるいは、多価カルボン酸(d1)と多価アルコール(d2)との反応生成物であるポリエステルポリオールを、ポリイソシアネートと反応させて得られるポリエステルポリウレタンポリオールであってもよい。ここで用いられるポリイソシアネートとしては、ポリイソシアネート化合物(A)として例示したのと同様のものを用いることができる。これらポリイソシアネートはそれぞれ単独で使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0075】
ポリエステルポリオール(D)の数平均分子量(Mn)は、接着剤用途に用いた際の接着強度により優れることから、2,000~100,000の範囲であることが好ましく、2,000~50,000がなお好ましい。数平均分子量が2,000未満である場合には硬化塗膜中の架橋密度が高くなりすぎ、積層体の外観、成型性が劣る場合がある。
一方、重量平均分子量(Mw)は、5,000~300,000の範囲であることが好ましく、10,000~200,000の範囲であることがなお好ましい。
【0076】
ポリエステルポリオール(D)の固形分酸価は、特に限定はないが、10.0mgKOH/g以下であることが好ましい。5.0mgKOH/g以下であると耐湿熱性により優れ好ましい。また、固形分酸価の下限について特に制限はないが、一例として0.5mgKOH/g以上である。0mgKOH/gであってもよい。
【0077】
ポリエステルポリオール(D)のガラス転移温度は、-30℃以上20℃以下であることが好ましい。ポリエステルポリオール(D)のガラス転移温度は、-20℃以上であることがより好ましく、15℃以下であることがより好ましい。
【0078】
ポリオール組成物(Y)がポリエステルポリオール(D)を含む場合、その配合量は適宜調整され得るが、一例としてポリエステルポリオール(B)とポリエステルポリオール(D)の総量に占めるポリエステルポリオール(D)の割合が95質量%以下とすることが好ましく、50質量%以下とすることが好ましく、30質量%以下とすることが好ましい。
【0079】
ポリオール組成物(Y)の固形分に占めるポリエステルポリオール(B)、(C)、(D)の総量(ただし、ポリエステルポリオール(C)および/または(D)の配合量が0の場合もあり得る)は一例として25質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上である。
【0080】
ポリエステルポリオール(B)~(D)の合成は、公知の方法で行えばよい。
エステル化反応は例えば、多価エポキシ化合物、多価カルボン酸、多価アルコールと、重合触媒とを撹拌機、精留設備を備える反応容器に仕込み、攪拌しながら、常圧で130℃程度まで昇温させる。その後、130~260℃の範囲の反応温度で、1時間に5~10℃の割合で昇温させながら生成する水を留去させる。4~12時間エステル化反応させた後、常圧から徐々に減圧度(20~300tоrr)上げながら、余剰の多価アルコールを留去、反応を促進させることでポリエステルポリオールを製造することができる。減圧に換えて、窒素通気によりエステル化反応を促進してもよい。
【0081】
エステル化反応に用いる重合触媒としては、周期律表の2族、4族、12族、13族、14族、15族からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属、またはその金属の化合物からなる重合触媒が好ましい。かかる金属またはその金属化合物からなる重合触媒としては、Ti、Sn、Zn、Al、Zr、Mg、Hf、Ge等の金属、これらの金属の化合物、より具体的にはチタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンオキシアセチルアセトナート、オクタン酸スズ、2-エチルヘキサンスズ、アセチルアセトナート亜鉛、4塩化ジルコニウム、4塩化ジルコニウムテトラヒドロフラン錯体、4塩化ハフニウム、4塩化ハフニウムテトラヒドロフラン錯体、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム等が挙げられる。
【0082】
エステル化反応に用いることができる重合触媒の市販品としては、マツモトファインケミカル社製のオルガチックスTAシリーズ、TCシリーズ、ZAシリーズ、ZCシリーズ、ALシリーズ、日東化成社製の有機錫系触媒、無機金属触媒、無機錫化合物が好ましく挙げられる。
【0083】
これらの重合触媒の使用量は、エステル化反応を制御でき、かつ良好な品質のポリエステルポリオールが得られるのであれば特に制限はされないが、一例として多塩基酸又はその誘導体と多価アルコールとの合計量に対して10~1000ppmであり、好ましくは20~800ppmである。ポリエステルポリオールの着色を抑制するため、30~500ppmであることがさらに好ましい。
【0084】
また、上述した方法で得られるポリエステルポリオールをポリイソシアネートで鎖伸長してポリエステルポリウレタンポリオールとする場合は、ポリエステルポリオールと、ポリイソシアネートと、鎖伸長触媒と、必要に応じて用いられるポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの良溶媒とを反応容器に仕込み、60~90℃の反応温度で攪拌する。用いるポリイソシアネートに由来するイソシアネート基が実質的に残存しなくなるまで反応を行い本発明で使用するポリエステルポリウレタンポリオールを得る。
【0085】
鎖伸長触媒としては、通常のウレタン化触媒として使用される公知公用の触媒を用いることができる。具体的には、有機錫化合物、有機カルボン酸錫塩、鉛カルボン酸塩、ビスマスカルボン酸塩、チタン化合物、ジルコニウム化合物等が挙げられ、単独または併用して用いることができる。前記鎖伸長触媒の使用量としては、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの反応を十分促進させる量であればよく、具体的には、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの合計量に対して、5.0質量%以下が好ましい。触媒による樹脂への加水分解や着色を抑制するために、1.0質量%以下がより好ましい。更にこれら鎖伸長触媒はポリソシアネート組成物(X)とポリオール組成物(Y)との硬化触媒としての作用を考慮して使用しても良い。
【0086】
イソシアネート基の残量の確認方法としては、赤外吸収スペクトル測定により、イソシアネート基に由来する吸収スペクトルである2260cm-1付近に観察される吸収ピークの有無の確認や、滴定法によるイソシアネート基の定量が挙げられる。
【0087】
ポリエステルポリウレタンポリオールの製造に用いられる良溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、キシレン等が挙げられる。単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0088】
(接着剤 その他の成分)
本発明の接着剤は、本発明の効果を損なわない範囲において、他の成分を併用することができる。例えばポリオール組成物(Y)は、ポリカーボネートポリオールを含有していてもよい。ポリカーボネートポリオールの数平均分子量(Mn)は、各種の基材に対する接着性が高く、耐湿熱性にも優れる接着剤となることから、300~2,000の範囲であることが好ましい。その水酸基価は30~250mgKOH/gの範囲であることが好ましく、40~200mgKOH/gの範囲であることがより好ましい。また、ポリカーボネートポリオールはポリカーボネートジオールであることが好ましい。
【0089】
ポリカーボネートポリオールを用いる場合、ポリオール組成物(Y)の固形分総質量に対し50質量%以下で用いることが好ましく、30質量%以下で用いることが好ましい。
【0090】
また、ポリオール組成物(Y)は、ポリオキシアルキレン変性ポリオールを含有していてもよい。ポリオキシアルキレン変性ポリオールの数平均分子量(Mn)は、各種の基材に対する接着性が高く、耐湿熱性にも優れる接着剤となることから、300~2,000の範囲であることが好ましい。その水酸基価は40~250mgKOH/gの範囲であることが好ましく、50~200mgKOH/gの範囲であることがより好ましい。また、ポリオキシアルキレン変性ポリオールはポリオキシアルキレン変性ジオールであることが好ましい。
【0091】
ポリオキシアルキレン変性ポリオールを用いる場合、ポリオール組成物(Y)の固形分総質量に対し50質量%以下で用いることが好ましく、30質量%以下で用いることが好ましい。
【0092】
ポリオール組成物(Y)は、上述した以外の樹脂成分(以下その他の樹脂成分とも称す)を含有しても良い。その他の樹脂成分を用いる場合には、ポリオール組成物(Y)の固形分総質量に対し50質量%以下で用いることが好ましく、30質量%以下で用いることが好ましい。その他の樹脂成分の具体例としては、エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。これらの中でも、各種の基材に対する接着性が高く、耐湿熱性にも優れる接着剤となることから、ビスフェノール型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0093】
エポキシ樹脂の数平均分子量(Mn)は、各種の基材に対する接着性が高く、耐湿熱性にも優れる接着剤となることから、300~2,000の範囲であることが好ましい。また、そのエポキシ当量は、150~1000g/当量の範囲であることが好ましい。
【0094】
エポキシ樹脂を用いる場合、ポリオール組成物(Y)の固形分総質量に対し50質量%以下で用いることが好ましく、30質量%以下で用いることが好ましい。
【0095】
本発明で用いるポリオール組成物(Y)は粘着付与剤を含有していても良い。粘着付与剤としては、例えば、ロジン系又はロジンエステル系粘着付与剤、テルペン系又はテルペンフェノール系粘着付与剤、飽和炭化水素樹脂、クマロン系粘着付与剤、クマロンインデン系粘着付与剤、スチレン樹脂系粘着付与剤、キシレン樹脂系粘着付与剤、フェノール樹脂系粘着付与剤、石油樹脂系粘着付与剤、ケトン樹脂系粘着付与剤などが挙げられる。ケトン樹脂系粘着付与剤、ロジン系またはロジンエステル系粘着付与剤が好ましく、ケトン樹脂系粘着付与剤がより好ましい。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。粘着付与剤を用いる場合、ポリオール組成物(Y)の固形分総質量に対し50質量%以下で用いることが好ましく、30質量%以下で用いることが好ましい。
【0096】
ロジン系又はロジンエステル系としては、重合ロジン、不均化ロジン、水素添加ロジン、マレイン化ロジン、フマル化ロジン、及びこれらのグリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル、メチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル、エチレングリコールエステル、ジエチレングリコールエステル、トリエチレングリコールエステルなどがあげられる。
【0097】
テルペン系又はテルペンフェノール系としては、低重合テルペン系、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、テルペンフェノール系、芳香族変性テルペン系、水素添加テルペン系などあげられる。
【0098】
石油樹脂系としては、ペンテン、ペンタジエン、イソプレンなどから得られる炭素数5個の石油留分を重合した石油樹脂、インデン、メチルインデン、ビニルトルエン、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレンなどから得られる炭素数9個の石油留分を重合した石油樹脂、前記各種モノマーから得られるC5-C9共重合石油樹脂及びこれらを水素添加した石油樹脂、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンから得られる石油樹脂;並びにそれらの石油樹脂の水素化物;それらの石油樹脂を無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸、フェノールなどで変性した変性石油樹脂などを例示できる。
【0099】
フェノール樹脂系としては、フェノール類とホルムアルデヒドの縮合物を使用できる。該フェノール類としては、フェノール、m-クレゾール、3,5-キシレノール、p-アルキルフェノール、レゾルシンなどが挙げられ、これらフェノール類とホルムアルデヒドをアルカリ触媒で付加反応させたレゾールや、酸触媒で縮合反応させて得られるノボラックなどが例示できる。また、ロジンにフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂なども例示できる。
【0100】
ケトン樹脂としては公知慣用のものを挙げることができるが、ホルムアルデヒド樹脂、シクロヘキサノン・ホルムアルデヒド樹脂また、ケトンアルデヒド縮合樹脂等を好適に用いることができる。
【0101】
粘着付与剤は種々の軟化点を有するものが得られるが、ポリオール組成物(Y)を構成する他の樹脂と混合した場合の相溶性、色調や熱安定性などの点から軟化点が70~160℃、好ましくは80~100℃のケトン樹脂系粘着付与剤、もしくは軟化点が80~160℃、好ましくは90~110℃のロジン系樹脂及びその水素添加誘導体が好ましく、軟化点が70~160℃、好ましくは80~100℃のケトン樹脂系粘着付与剤がより好ましい。また、酸価が2~20mgKOH/g、水酸基価が10mgKOH/g以下のケトン樹脂系粘着付与剤、水添ロジン系粘着付与剤であることが好ましく、酸価が2~20mgKOH/g、水酸基価が10mgKOH/g以下のケトン樹脂系粘着付与剤がより好ましい。
【0102】
本発明の接着剤において、更に別の良好な態様として、公知のリン酸類又はその誘導体が併用できる。これによって、接着剤の初期接着性が更に向上し、トンネリング等のトラブルを解消することができる。
【0103】
ここで使用されるリン酸類又はその誘導体としては、例えば次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、次リン酸等のリン酸類、例えばメタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、ウルトラリン酸等の縮合リン酸類、例えばオルトリン酸モノメチル、オルトリン酸モノエチル、オルトリン酸モノプロピル、オルトリン酸モノブチル、オルトリン酸モノ-2-エチルヘキシル、オルトリン酸モノフェニル、亜リン酸モノメチル、亜リン酸モノエチル、亜リン酸モノプロピル、亜リン酸モノブチル、亜リン酸モノ-2-エチルヘキシル、亜リン酸モノフェニル、オルトリン酸ジ-2-エチルヘキシル、オルトリン酸ジフェニル亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジプロピル、亜リン酸ジブチル、亜リン酸ジ-2-エチルヘキシル、亜リン酸ジフェニル等のモノ、ジエステル化物、縮合リン酸とアルコール類とからのモノ、ジエステル化物、例えば前記のリン酸類に、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のエポキシ化合物を付加させたもの、例えば脂肪族又は芳香族のジグリシジルエーテルに前記のリン酸類を付加させて得られるエポキシリン酸エステル類等が挙げられる。
【0104】
上記のリン酸類又はその誘導体は一種又は二種以上用いてもよい。含有させる方法としては単に混ぜ込むだけでよい。
【0105】
また、本発明の接着剤において、接着促進剤を用いることもできる。接着促進剤にはシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系等のカップリング剤、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0106】
シランカップリング剤としては、例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン;β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン;ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン;ヘキサメチルジシラザン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることが出来る。
【0107】
チタネート系カップリング剤としては、例えば、テトライソプロポキシチタン、テトラ-n-ブトキシチタン、ブチルチタネートダイマー、テトラステアリルチタネート、チタンアセチルアセトネート、チタンラクテート、テトラオクチレングリコールチタネート、チタンラクテート、テトラステアロキシチタン等を挙げることが出来る。
【0108】
また、アルミニウム系カップリング剤としては、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等が挙げることが出来る。
【0109】
接着促進剤としてはシランカップリング剤を用いることが好ましい。また接着促進剤の含有量(固形分)は、ポリオール組成物(Y)の固形分100質量部に対して0.1質量部以上であることが好ましく、0.3質量部以上であることがより好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、0.7質量部以上であることがさらに好ましい。また接着促進剤の含有量(固形分)はポリオール組成物(Y)の固形分100質量部に対して10質量部以下であることが好ましく、8質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましい。
【0110】
本発明の接着剤において、ポリソシアネート組成物(X)とポリオール組成物(Y)との配合比は、ポリソシアネート組成物(X)に含まれるイソシアネート基のモル数[NCO]と、ポリオール組成物(Y)に含まれる水酸基の合計モル数[OH]との比[NCO]/[OH]を1.5~15.0の範囲とすることが好ましい。これにより、成型性、耐熱性、耐湿熱性に優れる2液硬化型接着剤となる。
【0111】
本発明の接着剤は、溶剤型又は無溶剤型のいずれの形態であってもよい。なお本発明でいう「溶剤型」の接着剤とは、接着剤を基材に塗工した後に、オーブン等で加熱して塗膜中の有機溶剤を揮発させた後に他の基材と貼り合せる方法、いわゆるドライラミネート法に用いられる形態をいう。ポリソシアネート組成物(X)及びポリオール組成物(Y)のいずれか一方、もしくは両方が本発明で使用するポリソシアネート組成物(X)またはポリオール組成物(Y)を溶解することの可能な、溶解性の高い有機溶剤を含む。溶剤型の場合、ポリソシアネート組成物(X)またはポリオール組成物(Y)の構成成分の製造時に反応媒体として使用された有機溶剤が、更に塗装時に希釈剤として使用される場合もある。溶解性の高い有機溶剤としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチレンクロリド、エチレンクロリド等のハロゲン化炭化水素類、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホアミド等が挙げられる。
【0112】
本明細書において「無溶剤型」の接着剤とは、ポリソシアネート組成物(X)及びポリオール組成物(Y)が上述したような溶解性の高い有機溶剤、特に酢酸エチル又はメチルエチルケトンを実質的に含まず、接着剤を基材に塗工した後に、オーブン等で加熱して溶剤を揮発させる工程を経ずに他の基材と貼り合せる方法、いわゆるノンソルベントラミネート法に用いられる接着剤の形態を指す。ポリソシアネート組成物(X)またはポリオール組成物(Y)の構成成分や、その原料の製造時に反応媒体として使用された有機溶剤が除去しきれずに、ポリソシアネート組成物(X)やポリオール組成物(Y)中に微量の有機溶剤が残留してしまっている場合は、有機溶剤を実質的に含まないと解される。また、ポリオール組成物(Y)が低分子量アルコールを含む場合、低分子量アルコールはポリソシアネート組成物(X)と反応して塗膜の一部となるため、塗工後に揮発させる必要はない。従ってこのような形態も無溶剤型接着剤として扱う。
【0113】
本発明の接着剤は、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シリコン系添加剤、フッ素系添加剤、レオロジーコントロール剤、脱泡剤、帯電防止剤、防曇剤等の各種添加剤を含有しても良い。
【0114】
本発明の接着剤の用途は特に限定されないが、接着強度、成型性、耐湿熱性、耐熱性に優れるため、一例として電池用包装材に好適に用いることができる。
【0115】
<積層体>
本発明の積層体は、複数の基材を本発明の接着剤を用いてドライラミネート法やノンソルベントラミネート法にて貼り合せて得られる。基材としては、紙、オレフィン系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、カーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂やポリエステル系樹脂から得られた合成樹脂フィルム、銅箔、アルミニウム箔の様な金属箔等が挙げられる。
【0116】
基材の膜厚は特に制限されるものではなく、例えば、10~400μmから選択される。基材と接着剤との密着性を向上させるために、基材の接着剤を塗布する面に表面処理を行ってもよい。この表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、火炎処理、放射線処理等が挙げられる。
【0117】
<電池用包装材>
本発明の積層体を成型して得られる成型体は、一例として電池用包装材として好適に用いることができる。電池用包装材は、図1に示すように、少なくとも、外層側基材層1、接着層2、金属層3、及びシーラント層4が順次積層された積層体からなる。本発明の電池用包装材において、外層側基材層1が最外層になり、シーラント層4は最内層になる。即ち、電池の組み立て時に、電池素子の周縁に位置するシーラント層4同士が熱融着して電池素子を密封することにより、電池素子が封止される。本発明の接着剤は、接着層2に使用する。また、本発明の電池用包装材は、図2に示すように、金属層3とシーラント層4との間に、これらの接着性を高める目的で、必要に応じて接着層5が設けられていてもよい。
【0118】
(外層側基材層1)
本発明の電池用包装材において、外層側基材層1は最外層を形成する層である。外層側基材層1を形成する素材については、絶縁性を備えるものでれば特に制限されず、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、珪素樹脂、フェノール樹脂、及びこれらの混合物や共重合物等の樹脂フィルムが挙げられる。これらの中でも、好ましくはポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂であり、より好ましくは2軸延伸ポリエステル樹脂、2軸延伸ポリアミド樹脂である。ポリエステル樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、共重合ポリエステル、ポリカーボネート等が挙げられる。また、ポリアミド樹脂としては、具体的には、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体、ナイロン6,10、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等が挙げられる。
【0119】
外層側基材層1は、1層の樹脂フィルムから形成されていてもよいが、耐ピンホール性や絶縁性を向上させるために、2層以上の樹脂フィルムで形成されていてもよい。外層側基材層1を多層の樹脂フィルムで形成する場合、樹脂フィルム同士は、接着剤または接着性樹脂などの接着成分を介して積層させればよく、使用される接着成分の種類や量等については、後述する接着層2又は接着層5の場合と同様である。なお、2層以上の樹脂フィルムを積層させる方法としては、特に制限されず公知の方法が採用でき、例えばドライラミネーション法、サンドラミネーション法などが挙げられ、好ましくはドライラミネーション法が挙げられる。ドライラミネーション法により積層させる場合には、接着層として接着剤を用いることが好ましい。このとき、接着層の厚みとしては、例えば0.5~10μm程度である。
【0120】
外層側基材層1の厚さについては、電池用包装材が上記の物性を満たせば特に制限されないが、例えば、10~50μm程度、好ましくは15~35μm程度である。ポリエステルフィルムを用いる場合には厚さは9μm~50μmであるのが好ましく、ポリアミドフィルムを用いる場合には厚さは10μm~50μmであるのが好ましい。包装材として十分な強度を確保できるとともに張り出し成形時や絞り成形時の応力を小さくでき、成形性を向上させることができる。
【0121】
(金属層3)
電池用包装材において、金属層3は、電池用包装材の強度向上の他、電池内部に水蒸気、酸素、光などが侵入することを防止するためのバリア層として機能する層である。金属層3を構成する金属としては、具体的には、アルミニウム、ステンレス、チタンなどが挙げられ、好ましくはアルミニウムである。金属層3は、金属箔や金属蒸着などにより形成することができ、金属箔により形成することが好ましく、アルミニウム箔により形成することがさらに好ましい。また、金属層3は、接着の安定化、溶解や腐食の防止などのために、少なくとも一方の面、好ましくは両面が化成処理されていることが好ましい。ここで、化成処理とは、金属層の表面に耐酸性皮膜を形成する処理をいう。
【0122】
金属層3の厚みは、電池用包装材が上記の物性を満たせば特に制限されないが、例えば、10~50μm程度、好ましくは25~45μm程度とすることができる。
【0123】
(シーラント層4)
本発明の電池用包装材においてシーラント層4は、最内層に該当し、電池の組み立て時にシーラント層同士が熱融着して電池素子を密封する層である。
【0124】
シーラント層4に使用される樹脂成分については、熱融着可能であれば特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、カルボン酸変性環状ポリオレフィンが挙げられる。
【0125】
前記ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等のポリプロピレン;エチレン-ブテン-プロピレンのターポリマー;等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。
【0126】
前記環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4-メチル-1-ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン、等が挙げられる。また、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくは環状アルケン、更に好ましくはノルボルネンが挙げられる。
【0127】
前記カルボン酸変性ポリオレフィンとは、前記ポリオレフィンをカルボン酸でブロック重合又はグラフト重合することにより変性したポリマーである。変性に使用されるカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
【0128】
前記カルボン酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、α,β―不飽和カルボン酸又はその無水物に代えて共重合することにより、或いは環状ポリオレフィンに対してα,β―不飽和カルボン酸又はその無水物をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。カルボン酸変性される環状ポリオレフィンについては、前記と同様である。また、変性に使用されるカルボン酸としては、前記酸変性シクロオレフィンコポリマーの変性に使用されるものと同様である。
【0129】
シーラント層4は、1種の樹脂成分単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂成分を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。更に、シーラント層4は、1層のみで形成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂成分によって2層以上で形成されていてもよい。
【0130】
また、シーラント層4の厚さとしては、電池用包装材が上記の物性を満たせば特に制限されないが、例えば、10~100μm程度、好ましくは20~90μm程度である。
【0131】
(接着層5)
本発明の電池用包装材において、接着層5は、金属層3とシーラント層4を強固に接着させために、これらの間に必要に応じて設けられる層である。
【0132】
接着層5は、金属層3とシーラント層4とを接着可能な接着剤によって形成される。接着層5に使用される接着層としては、例えば、ポリオレフィン樹脂と多官能イソシアネートの組み合わせた接着剤、ポリオールと多官能イソシアネートとを組み合わせた接着剤、変性ポリオレフィン樹脂、複素環状化合物と硬化剤とを含有する接着剤を使用することができる。あるいは、酸変性ポリプロピレンなどの接着剤をTダイ押出し機で金属層上に溶融押出しして接着層5を形成し、前記接着層5上にシーラント層4を重ね、金属層3とシーラント層4とを貼り合せることもできる。
接着層2および接着層5の両方がエージングを必要とする場合には、まとめてエージングすることができる。尚、エージング温度は室温~90℃とすることで、2日~2週間で硬化が完了し、成型性が発現する。
【0133】
接着層5の厚さについては、電池用包装材が上記の物性を満たせば特に制限されないが、例えば、0.5~50μm程度、好ましくは2~30μm程度である。
【0134】
(コーティング層6)
本発明の電池用包装材においては、意匠性、耐電解液性、耐擦過性、成型性の向上などを目的として、必要に応じて、外層側基材層1の上(外層側基材層1の金属層3とは反対側)にコーティング層6を設けてもよい。コーティング層6は、電池を組み立てた時に最外層に位置する層である。
【0135】
コーティング層6は、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などにより形成することができ、2液硬化型樹脂により形成することが好ましい。コーティング層6を形成する2液硬化型樹脂としては、例えば、2液硬化型ウレタン樹脂、2液硬化型ポリエステル樹脂、2液硬化型エポキシ樹脂などが挙げられる。また、コーティング層6には、マット化剤を配合してもよい。
【0136】
マット化剤としては、例えば、粒径が0.5nm~5μm程度の微粒子が挙げられる。マット化剤の材質については、特に制限されないが、例えば、金属、金属酸化物、無機物、有機物等が挙げられる。また、マット化剤の形状についても、特に制限されないが、例えば、球状、繊維状、板状、不定形、バルーン状等が挙げられる。マット化剤として、具体的には、タルク、シリカ,グラファイト、カオリン、モンモリロイド、モンモリロナイト、合成マイカ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛,酸化マグネシウム,酸化アルミニウム,酸化ネオジウム,酸化アンチモン、酸化チタン、酸化セリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム,ケイ酸カルシウム、炭酸リチウム、安息香酸カルシウム,シュウ酸カルシウム,ステアリン酸マグネシウム、カーボンブラック、カーボンナノチューブ類、高融点ナイロン、架橋アクリル、架橋スチレン、架橋ポリエチレン、ベンゾグアナミン、金、アルミニウム、銅、ニッケル等が挙げられる。これらのマット化剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのマット化剤の中でも、分散安定性やコスト等の観点から、シリカ、硫酸バリウム、酸化チタンが好ましい。また、マット化剤には、表面に絶縁処理、高分散性処理等の各種表面処理を施してもよい。
【0137】
コーティング層6を形成する方法としては、特に制限されないが、例えば、コーティング層6を形成する2液硬化型樹脂を外層側基材層1の一方の表面上に塗布する方法が挙げられる。マット化剤を配合する場合には、2液硬化型樹脂にマット化剤を添加して混合した後、塗布すればよい。
【0138】
(電池用包装材の製造方法)
本発明の電池用包装材の製造方法については、所定の組成の各層を積層させた積層体が得られる限り特に制限されないが、以下の方法が例示される。
【0139】
まず、外層側基材層1、接着層2、金属層3が順に積層された積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)を形成する。積層体Aの形成は、具体的には、外層側基材層1上又は必要に応じて表面が化成処理された金属層3に、本発明の接着剤を、押出し法、グラビアコート法、ロールコート法等の塗布方法で塗布・乾燥した後に、当該金属層3又は外層側基材層1を積層させて接着層2を硬化させるドライラミネーション法によって行うことができる。
【0140】
次いで、積層体Aの金属層3上にシーラント層4を積層させる。金属層3上にシーラント層4を直接積層させる場合には、積層体Aの金属層3上に、シーラント層4を構成する樹脂成分をグラビアコート法、ロールコート法等の方法により塗布すればよい。また、金属層3とシーラント層4の間に接着層5を設ける場合には、例えば、積層体Aの金属層3上に、接着層5及びシーラント層4を共押出しすることにより積層する方法(共押出しラミネーション法)や、別途、接着層5とシーラント層4が積層した積層体を形成し、これを積層体Aの金属層3上に熱ラミネーション法により積層する方法や、積層体Aの金属層3上に、接着層5を形成させるための接着剤を押出し法や溶液コーティングした高温で乾燥さらには焼き付ける方法等により積層させ、この接着層5上に予めシート状に製膜したシーラント層4をサーマルラミネーション法により積層する方法や、積層体Aの金属層3と、予めシート状に製膜したシーラント層4との間に、溶融させた接着層5を流し込みながら、接着層5を介して積層体Aとシーラント層4を貼り合せる方法(サンドラミネーション法)等が挙げられる。
【0141】
コーティング層6を設ける場合には、外層側基材層1の金属層3とは反対側の表面にコーティング層6を積層する。コーティング層6は、例えばコーティング層6を形成する上記の樹脂を外層側基材層1の表面に塗布して形成する。なお、外層側基材層1の表面に金属層3を積層する工程と、外層側基材層1の表面にコーティング層6を積層する工程の順番は、特に制限されない。例えば、外層側基材層1の表面にコーティング層6を形成した後、外層側基材層1のコーティング層6とは反対側の表面に金属層3を形成してもよい。
【0142】
上記のようにして、必要に応じて設けられるコーティング層6/外層側基材層1/接着層2/必要に応じて表面が化成処理された金属層3/必要に応じて設けられる接着層5/シーラント層4からなる積層体が形成されるが、接着層2及び必要に応じて設けられる接着層5の接着性を強固にするために、更に、熱ロール接触式、熱風式、近又は遠赤外線式等の加熱処理に供してもよい。このような加熱処理の条件としては、例えば80~250℃で1~5分間が挙げられる。
【0143】
本発明の電池用包装材において、積層体を構成する各層は、必要に応じて、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成型)適性等を向上又は安定化するために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理等の表面活性化処理を施していてもよい。
【0144】
<電池用容器>
本発明の電池用容器は、前述の電池用包装材を用い、外層側基材層1が凸面を構成し、シーラント層4が凹面を構成するように成型して得ることができる。
なお凹部の成型方法としては、以下のような方法がある。
・加熱圧空成型法:電池用包装材を高温、高圧のエアーが供給される孔を有する下型と、ポケット形状の凹部を有する上型に挟み、加熱軟化させながらエアーを供給して凹部を形成する方法。
・プレヒーター平板式圧空成型法:電池用包装材を加熱軟化させた後、高圧のエアーが供給される孔を有する下型と、ポケット形状の凹部を有する上型に挟み、エアーを供給して凹部を形成する方法。
・ドラム式真空成型法:電池用包装材を加熱ドラムで部分的に加熱軟化後、ポケット形状の凹部を有するドラムの該凹部を真空引きして凹部を成型する方法。
・ピン成型法:底材シートを加熱軟化後ポケット形状の凹凸金型で圧着する方法。
・プレヒータープラグアシスト圧空成型法:電池用包装材を加熱軟化させた後、高圧のエアーが供給される孔を有する下型と、ポケット形状の凹部を有する上型に挟み、エアーを供給して凹部を形成する方法であって、成型の際に、凸形状のプラグを上昇及び降下をさせて成型を補助する方法。
【0145】
なかでも、加熱真空成型法であるプレヒータープラグアシスト圧空成型法が、成型後の底材の肉厚が均一に得られるという点で好ましいものである。
【0146】
(電池用包装材の用途)
本発明の電池用包装材は、正極、負極、電解質等の電池素子を密封して収容する電池用容器として使用される。
【0147】
具体的には、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子を、本発明の電池用包装材で、前記正極及び負極の各々に接続された金属端子が外側に突出させた状態で、電池素子の周縁にフランジ部(シーラント層同士が接触する領域)が形成できるようにして被覆し、前記フランジ部のシーラント層同士をヒートシールして密封させることによって、電池用包装材を使用した電池が提供される。なお、本発明の電池用包装材を用いて電池素子を収容する場合、本発明の電池用包装材のシーラント部分が内側(電池素子と接する面)になるようにして用いられる。
【0148】
本発明の電池用包装材は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池に使用することができる。本発明の電池用包装材が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、本発明の電池用包装材の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。
【0149】
<積層体、成型体のその他の用途>
本発明の積層体、積層体の成型体の用途は電池用包装材に限定されない。本発明の積層体は、食品や医薬品、日用品の保護を目的とする多層包装材料として使用してもよい。多層包装材料として使用する場合には、内容物や使用環境、使用形態に応じてその層構成は変化し得る。
【0150】
包装材料の一形態としては、積層体のシーラントフィルムの面を対向して重ね合わせた後、その周辺端部をヒートシールして得られるものが挙げられる。製袋方法としては、本発明の積層体を折り曲げるか、あるいは重ねあわせてその内層の面(シーラントフィルムの面)を対向させ、その周辺端部を、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型、その他のヒートシール型等の形態によりヒートシールする方法が挙げられる。本発明の包装材は内容物や使用環境、使用形態に応じて種々の形態をとり得る。自立性包装材(スタンディングパウチ)等も可能である。ヒートシールの方法としては、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。
【0151】
包装材料の他の形態としては、ブリスターパック(プレススルーパッケージやPTPとも称される)が挙げられる。ブリスターパックは、一つまたは複数の収納部が形成された積層体と、カバーフィルムとが接合されることで収納部を密封する。本発明の積層体は成型性に優れることから収納部を形成する積層体として用いてもよいし、カバーフィルムとして用いてもよい。
【0152】
本発明は包装材以外の用途に用いることもでき、一例として加飾成型シートの基材が挙げられるがこれに限定されない。成型性、耐熱性、耐湿熱性のいずれかまたは複数の機能が必要とされる用途に好適に使用することができる。
【実施例0153】
以下、本発明を具体的な合成例、実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の例において、「部」及び「%」は、特に断りがない限り、「質量部」及び「質量%」をそれぞれ表す。
【0154】
<ポリオール組成物の調製>
(合成例1) ポリエステルポリオール(B-1)の合成
フラスコ上部に温度計、攪拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取り付けた5リットル4口フラスコに多価カルボン酸(b2)、多価アルコール(b3)を仕込んで加熱溶融させた後、多価エポキシ化合物(a1)を加え、縮重合触媒としてチタンジイソプロキシス(アセチルアセトネート)オルガチックスTC-100を全モノマー量に対し0.1重量%を投入し、常圧窒素気流下にて240℃で8時間反応させた後、窒素流量を100~500mLの範囲で調整し反応促進した。反応追跡は、樹脂酸価(mgKOH/mg)及び粘度(ガードナー気泡粘度計)の測定により行った。樹脂酸価・粘度が所定の値となったところで反応を停止しポリエステルポリオール(B-1)を得た。多価エポキシ化合物(b1)としてクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(一分子あたりのエポキシ基の平均の数:8)N-695、多価カルボン酸(b2)としてイソフタル酸(IPA)、テレフタル酸(TPA)、多価アルコール(b3)としてエチレングリコール(EG)、1,6-ヘキサンジオール(1,6-HD)、ネオペンチルグリコール(NPG)、3-メチル-1,5-ペンタンジオール(3MPD)、1,9-ノナンジオール(1,9-ND)を表1に示す質量比で用いた。
【0155】
(合成例2)~(合成例8) ポリエステルポリオール(B-2)~(B-5)、(B’-1)~(B’-3)の合成
用いる多価エポキシ化合物(b1)、多価カルボン酸(b2)、多価アルコール(b3)とその配合量、反応促進時間を表1、2に示すように変更した以外は合成例1と同様にしてポリエステルポリオール(B-2)~(B-5)、(B’-1)~(B’-3)を得た。
【0156】
【表1】
【0157】
【表2】
【0158】
(合成例9) ポリエステルポリオール(C-1)の合成
イソフタル酸300.3部、テレフタル酸300.3部、ネオペンチルグリコール37.7部、エチレングリコール101.0部、1,9-ノナンジオール260.7部を用い、定法に従いポリエステルポリオールを合成した。得られたポリエステルポリオールを酢酸エチルで樹脂固形分60%に希釈して、数平均分子量(Mn)が3000、重量平均分子量(Mw)が16,000、樹脂水酸基価(固形分換算)が19.2mgKOH/g、樹脂酸価(固形分換算)が0.55mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)が10.7℃のポリエステルポリオール(C-1)を得た。
【0159】
(合成例10) ポリエステルポリオール(D-1)の合成
イソフタル酸170.2部、テレフタル酸407.8部、無水トリメリット酸11.1部、ネオペンチルグリコール47.8部、1,6-ヘキサンジオール363.1部を用い、定法に従いポリエステルポリオールを合成した。得られたポリエステルポリオールを酢酸エチルで樹脂固形分58%に希釈して、数平均分子量(Mn)が6,200、重量平均分子量(Mw)が18,500、樹脂水酸基価(固形分換算)が21.9mgKOH/g、樹脂酸価(固形分換算)が0.74mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)が7.3℃のポリエステルポリオール(D-1)を得た。
【0160】
合成例1~10で得たポリエステルポリオール(B-1)~(B-5)、(B’-1)~(B’-3)、(C-1)、(D-1)の物性を表3、4にまとめた。
【0161】
【表3】
【0162】
【表4】
【0163】
<接着剤組成物の調整>
(実施例1)
ポリエステルポリオール(B-1)の樹脂固形分が6.6部である溶液に、ポリエステルポリオール(C-1)の樹脂固形分が13.3部である溶液、ポリエステルポリオール(D-1)の樹脂固形分が24.5部である溶液、KBM-403(信越化学社製のシランカップリング剤 不揮発分:100%)1.5部、消泡剤(不揮発分:1%)0.0004部を加えて完全溶解するまで良く攪拌した。ここに、KW-75(DIC社製のポリイソシアネート 不揮発分:75% NCO%:13.3)を不揮発分量が15.0部となるよう加え、さらに不揮発分が30%になるように酢酸エチルを加えて良く攪拌させて、実施例1の接着剤を作製した。
【0164】
(実施例2)~(実施例13)
接着剤の調整に用いる材料、配合を表5、6に記載の値に調整した以外は実施例1と同様にして、実施例2~実施例13の接着剤を製造した。
【0165】
(比較例1)~(比較例5)
接着剤の調整に用いる材料、配合を表7に記載の値に調整した以外は実施例1と同様にして、比較例1~5の接着剤を製造した。
なお、表5~表7に記載の値は固形分量(不揮発分量)である。
【0166】
<積層体の製造 図2の構成>
(実施例1)
金属層3として厚さ40μmのアルミニウム箔のマット面に、接着層2として実施例1の接着剤を塗布量:3g/平方メートルとなる量でドライラミネーターによって塗布し、溶剤を揮散させた後、外層側基材層1として厚さ25μmの延伸ポリアミドフィルムを積層した。
次に、得られた積層フィルムの金属層3のアルミニウム箔の光沢面に、接着層5用の接着剤を塗布量:3g/平方メートルとなる量でドライラミネーターによって塗布し、溶剤を揮散させた後、シーラント層4として厚さ40μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを積層し、その後、60℃、5日間の硬化(エージング)を行い、接着剤を硬化させて実施例1の積層体を得た。
【0167】
(実施例2)~(実施例13)
実施例1と同様にして、接着層2として実施例2~13の接着剤を用いて、実施例2~実施例13の積層体を得た。
【0168】
(比較例1)~(比較例5)
実施例1と同様にして、接着層2として比較例1~5の接着剤を用いて、比較例1~5の積層体を得た。
【0169】
積層体の評価は、以下の様に行った。結果を表5~7に示す。
<常態接着強度>
株式会社島津製作所の「オートグラフAGS-J」を使用し、剥離速度50mm/min、剥離幅15mm、剥離形態180°剥離の条件で、実施例または比較例の積層体の外層側基材層1と金属層3の界面の接着強度を評価した。接着強度の大きさに応じて、次の4段階の評価を行なった。
◎:接着強度が常に5.0Nを超える(実用上特に優れる)
○:接着強度が常に3.0Nを超える(実用上優れる)
△:接着強度が常に2.0Nを超える(実用域)
×:接着強度が2.0N以下
【0170】
<熱間接着強度>
(株)オリエンテック社製テンシロン試験において、剥離速度50mm/min、剥離幅15mm、120℃の条件で、実施例または比較例の積層体の外層側基材層1と金属層3の界面の接着強度を評価した。接着強度の大きさに応じて、次の4段階の評価を行なった。
◎:接着強度が常に2.0Nを超える(実用上優れる)
○:接着強度が常に1.5Nを超える(実用域)
×:接着強度が常に1.5N以下
【0171】
<成型性>
株式会社山岡製作所の「1ton卓上サーボプレス(SBN-1000)」を使用し、実施例または比較例の積層体を60×60mmの大きさに切断し、ブランク(被成型材、素材)とした。前記ブランクに対し、アルミニウム箔マット面が凸側になるようにして、23℃±5℃、成型高さフリーのストレート金型にて成型高さを3.0mmから4.0mmまで変えて張り出し成型を行い、アルミニウム箔の破断や、各層間の浮きが発生しない、最大の成型高さにより成型性を評価した。
【0172】
なお、使用した金型のポンチ形状は、一辺30mmの正方形、コーナーR2mm、ポンチ肩R1mm。使用した金型のダイス孔形状は一片34mmの正方形、ダイス孔コーナーR2mm、ダイス孔肩R:1mmであり、ポンチとダイス孔とのクリアランスは片側0.3mmである。前記クリアランスにより成型高さに応じた傾斜が発生する。成型の高さに応じて、次の3段階の評価を行なった。
◎:4.0mm以上(実用上優れる)
〇:3.0mm以上(実用域)
×:3.0mmでアルミニウム箔の破断や、各層間の浮きが発生
【0173】
<耐熱性>
株式会社山岡製作所の「1ton卓上サーボプレス(SBN-1000)」を使用し、実施例または比較例の積層体を60×60mmの大きさに切断し、アルミニウム箔マット面が外側になるようにして、成型高さフリーのストレート金型にて成型高さ4.0mmにて張り出し成型を行った。得られた30mm角型トレイのフランジ部に側壁部に接するように190℃3秒でヒートシールバーを当て、フランジ部と側壁部との境界部近傍15箇所における外観を確認し、延伸ポリアミドフィルムとアルミニウム箔との間に浮きが発生していないかを評価した。
◎:190℃3秒で浮きなし(実用上優れる)
○:190℃3秒で浮きは発生したが3箇所以下(実用域)
×:190℃3秒4箇所以上で浮き発生
【0174】
<耐水煮性>
株式会社山岡製作所の「1ton卓上サーボプレス(SBN-1000)」を使用し、実施例または比較例の積層体を60×60mmの大きさに切断し、アルミニウム箔マット面が外側になるようにして、成型高さフリーのストレート金型にて成型高さ4.0mmにて張り出し成型を行った。得られた30mm角型のトレイを、水中に沈めた状態で60℃の恒温恒湿槽に入れ、1週間静置した。恒温恒湿槽から前記トレイを取り出し、フランジ部と側壁部との境界部近傍15箇所における外観を確認し、延伸ポリアミドフィルムとアルミニウム箔との間に浮きが発生していないかを評価した。
◎:1週間静置後に浮きなし(実用上特に優れる)
○:1週間静置後に浮き発生は発生したが3箇所以下(実用域)
×:1週間静置後に4箇所以上で浮き発生
【0175】
【表5】
【0176】
【表6】
【0177】
【表7】
【0178】
本結果より、本発明の接着剤を使用することで、優れた成型性を有し、収納物を封止するために行うシーラント層同士の熱融着後、さらには高温高湿下での長期耐久性試験後においても層間の接着強度の低下がなく、層間の浮きなどの外観不良が抑制された包装材を得ることができることが明らかである。
【符号の説明】
【0179】
1:外層側基材層
2:接着層
3:金属層
4:シーラント層
5:接着層
図1
図2