(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085532
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】ガス分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3504 20140101AFI20240620BHJP
G01N 21/03 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
G01N21/3504
G01N21/03 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200092
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】中山 将人
(72)【発明者】
【氏名】赤松 武
【テーマコード(参考)】
2G057
2G059
【Fターム(参考)】
2G057AA01
2G057AB06
2G057AC03
2G057BA05
2G057BD03
2G057DA03
2G057DA11
2G057DB05
2G059AA01
2G059BB01
2G059DD12
2G059EE01
2G059GG01
2G059GG06
2G059GG08
2G059HH01
2G059JJ11
2G059JJ14
2G059KK01
2G059LL01
2G059LL03
(57)【要約】
【課題】多重反射セルを用いたガス分析装置を小型化する。
【解決手段】ガスが導入される多重反射セル2と、多重反射セル2の光学窓2Wからセル内部にレーザ光L1を照射する光源モジュール3と、光学窓2Wからセル外部に出たレーザ光L1を検出する検出器モジュール4と、多重反射セル2に光源モジュール3及び検出器モジュール4を取り付けるための取り付けブロック5とを備え、光源モジュール3は、レーザ発振子31と、レーザ発振子31からのレーザ光L1を光学窓2Wに向かって集光する集光レンズ32と、レーザ発振子31に対する集光レンズ32の位置を調整するレンズ位置調整機構33とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスが導入される多重反射セルと、
前記多重反射セルの光学窓からセル内部にレーザ光を照射する光源モジュールと、
前記光学窓からセル外部に出たレーザ光を検出する検出器モジュールと、
前記多重反射セルに前記光源モジュール及び前記検出器モジュールを位置決めして取り付けるための取付ブロックとを備え、
前記光源モジュールは、
レーザ発振子と、
前記レーザ発振子からのレーザ光を前記光学窓に向かって集光する集光レンズと、
前記レーザ発振子に対する前記集光レンズの位置を調整するレンズ位置調整機構とを備える、ガス分析装置。
【請求項2】
前記光源モジュールは、前記集光レンズにより集光されたレーザ光を、他の光学素子を介することなく前記光学窓に入射させる、請求項1に記載のガス分析装置。
【請求項3】
前記光源モジュールと前記取付ブロックとの間に介在して設けられ、前記取付ブロックに対する前記光源モジュールの位置を調整することにより、前記光学窓に対する前記レーザ光の光路を調整する光路調整機構をさらに備える、請求項1又は2に記載のガス分析装置。
【請求項4】
前記レーザ発振子及び前記集光レンズの間には、他の光学素子が設けられていない、請求項1乃至3の何れか一項に記載のガス分析装置。
【請求項5】
前記取付ブロックは、前記光源モジュールが取り付けられる光源取付面と、前記検出器モジュールが取り付けられる検出器取付面と、前記多重反射セルが取り付けられるセル取付面とを有し、
前記光源取付面及び前記検出器取付面は、前記セル取付面に対してそれぞれ傾斜して形成されている、請求項1乃至4の何れか一項に記載のガス分析装置。
【請求項6】
前記取付ブロックは、単一のブロックから形成されている、請求項5に記載のガス分析装置。
【請求項7】
前記光源取付面と前記検出器取付面との間には段差が形成されている、請求項5又は6に記載のガス分析装置。
【請求項8】
前記多重反射セルは、断熱ブロックを介して前記取付ブロックに取り付けられる、請求項1乃至7の何れか一項に記載のガス分析装置。
【請求項9】
前記光源モジュール及び前記検出器モジュールにケーブル接続された信号処理部をさらに備える、請求項1乃至8の何れか一項に記載のガス分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、多重反射セルを用いたガス分析装置としては、特許文献1に示すように、レーザ発振子及びコリメートレンズを有するレーザ光源からのレーザ光を平面ミラーで反射させるとともに凹面ミラーで集光させることでレーザ光の光路と光の広がりを調整したのちに、例えばヘリオットセルのような多重反射セルに入射させる構成のものが考えられている。
【0003】
一方で、半導体製造プロセスに用いられるガス分析装置では、装置の設置スペースが限られていることが多く、ガス分析装置の小型化が要求されている。
【0004】
しかしながら、上述したガス分析装置では、レーザ発振子及びコリメートレンズを有するレーザ光源と多重反射セルとの間に反射ミラーや凹面ミラーが配置される構成のため、小型化の要求を満たすことが難しいという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上述したような問題に鑑みてなされたものであり、多重反射セルを用いたガス分析装置を小型化することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係るガス分析装置は、ガスが導入される多重反射セルと、前記多重反射セルの光学窓からセル内部にレーザ光を照射する光源モジュールと、前記光学窓からセル外部に出たレーザ光を検出する検出器モジュールと、前記多重反射セルに前記光源モジュール及び前記検出器モジュールを位置決めして取り付けるための取付ブロックとを備え、前記光源モジュールは、レーザ発振子と、前記レーザ発振子からのレーザ光を前記光学窓に向かって集光する集光レンズと、前記レーザ発振子に対する前記集光レンズの位置を調整するレンズ位置調整機構とを備えることを特徴とする。
【0008】
このようなガス分析装置であれば、取付ブロックにより多重反射セルに対して光源モジュール及び検出器モジュールが位置決めして取り付けられるので、それらを一体的な構造にすることができるとともに、反射ミラーや凹面ミラーなどのミラー光学系を光源モジュール及び多重反射セルの間に設けない設計とすることが容易となる。その結果、多重反射セルを用いたガス分析装置を小型化することができる。
また、光源モジュールが、レーザ発振子からのレーザ光を光学窓に向かって集光する集光レンズを有しているので、光学窓又は多重反射セル内部の反射ミラーに形成する光通過孔を小さくすることができる。これにより、多重反射セル内の反射回数を増やすことができ、ガス分析装置を大きくすることなく、高精度な測定が可能となる。
ここで、光源モジュールがレーザ発振子に対する集光レンズの位置を調整するレンズ位置調整機構を有しているので、取付ブロックに光源モジュールを取り付ける構成において、多重反射セル内部の反射ミラーに対してレーザ発振子を精度良く集光することができ、これによって、高精度な測定が可能となる。
その他、本発明では、集光レンズによりレーザ発振子からのレーザ光を平行光にすることなく集光することで、レンズの数を削減している。
【0009】
前記光源モジュールは、前記集光レンズにより集光されたレーザ光を、他の光学素子を介することなく前記光学窓に入射させることが望ましい。ここで、他の光学素子には、多重反射セルに形成されるレーザ光が透過する光学窓は含まない。
この構成であれば、多重反射セルにレーザ光が入射されるまでの光路において光学素子の数を削減することができる。
【0010】
前記レーザ発振子及び前記集光レンズの間には、他の光学素子が設けられていないことが望ましい。
この構成であれば、よりシンプルな構造にすることができ、ガス分析装置の小型化に寄与することができる。
【0011】
取付ブロックに光源モジュール、検出器モジュール及び多重反射セルを取り付けた後に、多重反射セルの光学窓に対するレーザ光の光路を微調整して高精度な測定を可能にするためには、本発明に係るガス分析装置は、前記光源モジュールと前記取付ブロックとの間に介在して設けられ、前記取付ブロックに対する前記光源モジュールの位置を調整することにより、前記光学窓に対する前記レーザ光の光路を調整する光路調整機構をさらに備えることが望ましい。
【0012】
部品点数を削減するための取付ブロックの具体的な実施の態様としては、前記取付ブロックは、前記光源モジュールが取り付けられる光源取付面と、前記検出器モジュールが取り付けられる検出器取付面と、前記多重反射セルが取り付けられるセル取付面とを有し、前記光源取付面及び前記検出器取付面は、前記セル取付面に対してそれぞれ傾斜して形成されていることが望ましい。
この構成であれば、光源モジュールからのレーザ光を多重反射セルの光学窓に直接入射させ、また、多重反射セルの光学窓から出たレーザ光を検出器モジュールにより直接検出することができる。
【0013】
取付ブロックの具体的な実施の態様としては、前記取付ブロックは、単一のブロックから形成されていることが望ましい。
この構成であれば、光源取付面、検出器取付面及びセル取付面それぞれに光源モジュール、検出器モジュール及び多重反射セルを取り付けるだけで、それらの位置決めを行うことができるようになる。
【0014】
光源モジュール及び検出器モジュールをできるだけ密集させて小型化させるとともに、各モジュール同士や固定用のねじ穴同士の干渉を防ぐためには、前記光源取付面と前記検出器取付面との間には段差が形成されていることが望ましい。
【0015】
多重反射セルに導入されるガスが高温の場合には、多重反射セルからの熱が光源モジュール又は検出器モジュールに伝わり測定誤差の原因となる。この問題を好適に解決するためには、前記多重反射セルは、断熱ブロックを介して前記取付ブロックに取り付けられることが望ましい。
【0016】
ガス分析装置の更なる小型化を可能にし、例えば半導体製造装置への組み込みを容易にするためには、本発明に係るガス分析装置は、前記光源モジュール及び前記検出器モジュールにケーブル接続された信号処理部をさらに備えることが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
以上に述べた本発明によれば、多重反射セルを用いたガス分析装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係るガス分析装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】同実施形態に係る光源モジュール、検出器モジュール及び取付ブロックの構成を模式的に示す拡大断面図である。
【
図3】同実施形態に係る光源モジュール、検出器モジュール及び取付ブロックの構成を模式的に示す分離した状態の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の一実施形態に係るガス分析装置について、図面を参照して説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0020】
<装置構成>
本実施形態のガス分析装置100は、例えば半導体製造装置に組み込まれることにより半導体製造プロセスに用いられるものであって、例えば半導体処理チャンバに供給されるプロセスガス又は当該チャンバから排出される排出ガス等の成分濃度を分析するものである。
【0021】
具体的にガス分析装置100は、
図1に示すように、ガスが導入される多重反射セル2と、多重反射セル2の光学窓2Wからセル2内部にレーザ光L1を照射する光源モジュール3と、光学窓2Wからセル2外部に出たレーザ光L1を検出する検出器モジュール4と、多重反射セル2に各モジュール3、4を位置決めして取り付けるための取付ブロック5とを備えている。
【0022】
<多重反射セル2>
多重反射セル2は、ガスを導入する導入ポートP1及びガスを導出する導出ポートP2を有する所謂フローセルであり、内部に一対の反射ミラーM1、M2がそれらの反射面が互いに対向して配置されている。本実施形態の多重反射セル2は、所謂ヘリオットセルと呼ばれるものであるが、ホワイトセル等のその他の多重反射方式のセルであっても良い。また、多重反射セル2は扁平形状をなすものであり、その扁平形状の内部空間に横長形状の反射ミラーM1、M2が配置されている。
【0023】
さらに、
図2及び
図3に示すように、多重反射セル2の一端面には1つの光学窓2Wが形成されており、当該光学窓2Wを介してレーザ光L1が導入され、又は、導出される。なお、本実施形態の多重反射セル2は、概略直方体形状であり、その長手方向一端面に光学窓2Wが形成されている。そして、レーザ光が入射される側の反射ミラーM1には、一対の反射ミラーM1、M2の間にレーザ光L1を導入する、又は、一対の反射ミラーM1、M2の間からレーザ光L1を導出するための1つの光通過孔Mxが形成されている。この光通過孔Mxは、光学窓2Wに対向して形成されている。ここで、光学窓2Wが形成されている面に対してレーザ光L1が斜めに入射するとともに、レーザ光L2が出射するように構成されており、光通過孔Mxは、光学窓2Wを介して一対の反射ミラーM1、M2の間に斜めにレーザ光L1が入射し、一対の反射ミラーM1、M2の間から光学窓2Wを介して斜めに出射するように構成されている。
【0024】
<光源モジュール3>
光源モジュール3は、
図2及び
図3に示すように、レーザ発振子31と、レーザ発振子31からのレーザ光を光学窓2Wに向かって集光する集光レンズ32と、レーザ発振子31に対する集光レンズ32の位置を調整するレンズ位置調整機構33とを備えている。なお、光源モジュール3は、レーザ発振子31及び集光レンズ32等を筐体又はブロック等によりユニット化して一体的な構造体として取り扱うことができる構成のものである。また、光源モジュール3において、レーザ発振子31及び集光レンズ32の間には、他の光学素子が設けられていない。また、光源モジュール3には、取付ブロック5の取り付け面5bに取り付けるための面があり、その面に開口部が形成されている。レーザ光L1はその面に対して垂直に出射される。
【0025】
レーザ発振子31は、半導体レーザの一種である量子カスケードレーザ素子(QCL:Quantum Cascade Laser)であり、中赤外(4~12μm)のレーザ光を発振するものである。なお、レーザ発振子31としては、インターバンドカスケードレーザ素子(ICL:Interband Cascade Laser)などのその他の半導体レーザ素子を用いても良い。このレーザ発振子31は、光源モジュール3の一部を構成する光源固定ブロック34に固定されている。
【0026】
集光レンズ32は、レーザ発振子31の光射出側前方に設けられて、レーザ発振子31からのレーザ光L1を集光するものである。この集光レンズ32は、光源モジュール3の一部を構成するレンズ固定ブロック35に固定されている。このレンズ固定ブロック35は、光源固定ブロック34に対して前後方向に移動可能に設けられている。なお、本実施形態の集光レンズ32は、コリメートレンズを用いて構成されている。このコリメートレンズの前後位置及び/又は姿勢(あおり)を調整することにより、レーザ発振子31に対してコリメートレンズの焦点位置を調整することで、レーザ発振子31からのレーザ光L1を集光することができる。
【0027】
レンズ位置調整機構33は、レーザ発振子31に対する集光レンズ32の前後位置及び/又は姿勢(あおり)を調整するものであり、光源固定ブロック34とレンズ固定ブロック35との間に介在して設けられている。
【0028】
具体的にレンズ位置調整機構33は、光源固定ブロック34又はレンズ固定ブロック35の一方に設けられた位置調整用の当接部331と、光源固定ブロック34又はレンズ固定ブロック35の他方に設けられ、当接部331に接触して、レーザ発振子31に対する集光レンズ32の前後位置及び/又は姿勢(あおり)を調整する調整ネジ332とを有している。本実施形態では、光源固定ブロック34に位置調整用の当接部331が設けられ、レンズ固定ブロック35に調整ネジ332が設けられている。なお、調整ネジ322は、複数(例えば2本)の押しネジと、複数(例えば2本)の引きネジとの押し引きによって、レーザ発振子31に対する集光レンズ32の前後位置及び/又は姿勢(あおり)を調整する。この調整ネジ332を締め付けたり緩めたりすることで、レンズ固定ブロック35に対する前後位置及び/又は姿勢(あおり)を調整することにより、光源固定ブロック34とレンズ固定ブロック35との相対位置が調整され、その結果、レーザ発振子31に対する集光レンズ32の前後位置及び/又は姿勢(あおり)が調整される。なお、本実施形態では、調整後のレンズ固定ブロック35を光源固定ブロック34に固定するための固定ネジ333が設けられている。この固定ネジ333は、レンズ固定ブロック35を光源固定ブロック34に固定するだけでなく、その締め付け具合によって、レーザ発振子31からのレーザ光L1に直交する平面方向の調整をすることができる。
【0029】
<検出器モジュール4>
検出器モジュール4は、光検出器41と、多重反射セル2から出たレーザ光L1を光検出器41に向かって集光する集光ミラー42と、光検出器41に対する集光ミラー42の位置を調整するミラー位置調整機構43とを備えている。なお、検出器モジュール4は、光検出器41及び集光ミラー42等を筐体又はブロック等によりユニット化して一体的な構造体として取り扱うことができる構成のものである。また、検出器モジュール4には、取付ブロック5の取り付け面5cに取り付けるための面があり、その面に開口部が形成されている。レーザ光L1はその面に対して垂直に入射される。
【0030】
光検出器41は、ここでは、比較的安価なサーモパイル等の熱型のものを用いているが、その他のタイプのもの、例えば、応答性がよいHgCdTe、InGaAs、InAsSb、又はPbSe等の量子型光電素子を用いても構わない。この光検出器41は、検出器モジュール4の一部を構成する検出器固定ブロック44に固定されている。
【0031】
集光ミラー42は、検出器固定ブロック44の内部に設けられており、多重反射セル2の光学窓2Wから出たレーザ光L1を光検出器41に集光するものである。本実施形態の集光ミラー42は、放物面ミラー又は凹面ミラーを用いて構成されている。この集光ミラー42は、検出器固定ブロック44に固定されている。
【0032】
ミラー位置調整機構43は、光検出器41に対して集光ミラー42の集光位置を調整するものであり、検出器固定ブロック44と集光ミラー42との間に介在して設けられている。具体的にミラー位置調整機構43は、集光ミラー42に接続された接続ブロック45を、検出器固定ブロック44に対して、移動させる調整ネジ431を用いて構成されている。なお、調整ネジ431は、複数(例えば2本)の押しネジと、複数(例えば2本)の引きネジとの押し引きによって、光検出器41に対する集光ミラー42の前後位置及び/又は姿勢(あおり)を調整する。この調整ネジ431を締め付けたり緩めたりすることで、検出器固定ブロック44に対して接続ブロック45の相対位置が調整され、その結果、光検出器41に対して集光ミラー42の集光位置が調整される。
【0033】
<取付ブロック5>
取付ブロック5は、多重反射セル2、光源モジュール3及び検出器モジュール4が接続されることにより、それらを一体的な構造としてユニット化するものである。
【0034】
具体的に取付ブロック5は、多重反射セル2が取り付けられるセル取付面5aと、光源モジュール3が取り付けられる光源取付面5bと、検出器モジュール4が取り付けられる検出器取付面5cとを有する単一のブロックから形成されている。単一のブロックとは1つのブロックであり、本実施形態では金属ブロックを切削して形成されたものである。ここで、セル取付面5aと、光源取付面5b及び検出器取付面5cとは、取付ブロック5において互いに対向して形成されている。具体的には、取付ブロック5の互いに対向する外面において、一方の外面にセル取付面5aが形成され、他方の外面に光源取付面5b及び検出器取付面5cが形成されている。また、セル取付面5aには多重反射セル2(ここでは後述する断熱ブロック6)がネジ固定され、光源取付面5bには光源モジュール3がネジ固定され、検出器取付面5cには検出器モジュール4がネジ固定される。
【0035】
また、光源取付面5b及び検出器取付面5cは、セル取付面5aに対してそれぞれ傾斜して形成されている。具体的には、光源取付面5bは、光源モジュール3が取り付けられることにより、光源モジュール3からのレーザ光L1が多重反射セル2の光学窓2Wに他の光学素子を介することなく直接入射するように傾斜している。また、検出器取付面5cは、検出器モジュール4が取り付けられることにより、多重反射セル2の光学窓2Wから出たレーザ光L1が検出器モジュール4に他の光学素子を介することなく直接入射するように傾斜している。
【0036】
ここで、取付ブロック5には、光源モジュール3からのレーザ光L1を多重反射セル2に導入するための第1導入路51が形成されている。また、取付ブロック5には、検出器モジュール4に多重反射セル2から出たレーザ光L1を導入するための第2導入路52が形成されている。これら導入路51、52は、それらの取付面5b、5cからセル取付面5aに亘って貫通して形成されている。
具体的には、第1導入路51の一端開口部には、光源モジュール3の開口部が合わさって連通するように取り付けられ、第2導入路52の一端開口部には、検出器モジュール4の開口部とが合わさって連通するように取り付けられる。また、第1導入路51の他端開口部は、多重反射セル2の光学窓2Wに対向しており、第2導入路52の他端開口部は、多重反射セル2の光学窓2Wに対向している。セル取付面5aと光学窓2Wが形成されている面は対向しているともいえる。これらの構成により、本実施形態のガス分析装置100は、多重反射セル2、光源モジュール3及び検出器モジュール4の間にミラーが設けられていないミラーレス構造にすることができる。
【0037】
さらに、光源取付面5bと検出器取付面5cとの間には段差5dが形成されている。ここでは、検出器取付面5cが、段差5dによって光源取付面5bよりもセル取付面5aから遠い位置に形成されている。なお、光源取付面5bが、段差5dによって検出器取付面5cよりもセル取付面5aから遠い位置に形成されていても良い。このように段差5dを形成することで、光源モジュール3及び検出器モジュール4をできるだけ密集させて小型化させるとともに、各モジュール3、4同士や固定用のねじ穴同士の干渉を防ぐ事ができる。
【0038】
その他、多重反射セル2は、断熱ブロック6を介して取付ブロック5のセル取付面5aに取り付けられる。ここで、取付ブロック5は例えばアルミニウム製のものであり、断熱ブロック6は、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PES(ポリエーテルサルフォン)などの断熱性に優れた樹脂製のものである。この断熱ブロック6により、多重反射セル2からの熱が光源モジュール3又は検出器モジュール4に伝わり難くし、熱影響による測定誤差を低減している。なお、断熱ブロック6には、レーザ光L1が通過する貫通孔61が形成されている。
【0039】
さらに本実施形態のガス分析装置100は、多重反射セル2の光学窓2Wに対する光源モジュール3からのレーザ光L1の光路を調整する光路調整機構7を備えている。
【0040】
この光路調整機構7は、光源モジュール3と取付ブロック5との間に介在して設けられ、取付ブロック5に対する光源モジュール3の位置を調整することにより、光学窓2Wに対するレーザ光L1の光路を調整するものである。この光路調整機構7により、多重反射セル2の光学窓2W(反射ミラーM1、M2)に対するレーザ光L1の光路を微調整して高精度な測定を可能にしている。
【0041】
具体的に光路調整機構7は、取付ブロック5の光源取付面5bの面内方向において光源モジュール3を移動させて固定する1又は複数の固定ネジ71を有している。この固定ネジ71は、光源取付面5bにおいて光源モジュール3を取り囲むように設けられた囲繞壁72に設けられている。この固定ネジ71を囲繞壁72に対して進退移動させることで、取付ブロック5に対して光源固定ブロック34の相対位置が調整され、その結果、光学窓2Wに対するレーザ光L1の光路が調整される。なお、光路調整機構7は、光源モジュール3を取付ブロック5に固定する別の固定ネジ(不図示)を有している。この別の固定ネジは、光源モジュール3を取付ブロック5に固定するだけでなく、その締め付け具合によって、光源モジュール3の姿勢(あおり)を調整することもできる。
【0042】
<信号処理部>
また、本実施形態のガス分析装置100は、赤外レーザ吸収変調法(IRLAM:Infrared Laser Absorption Modulation)によりガスの成分濃度を算出するものであり、レーザ発振子31を制御するとともに、光検出器41からの出力信号を受信し、その値を演算処理してガス成分の濃度を算出する信号処理部8を備えている。
【0043】
この信号処理部8は、光源モジュール3を制御する制御回路81及び検出器モジュール4からの検出信号を処理する処理回路82を有しており、光源モジュール3及び検出器モジュール4にケーブルKを介して接続されている。これにより、各モジュール3、4及び取付ブロック5のユニットを小型化することができる。
【0044】
光源モジュール3を制御する制御回路81は、例えばレーザ発振子31の発振及び変調幅を制御するものであり、具体的にはレーザ発振子31から出力されるレーザ光L1の発振波長を中心波長に対して所定周波数で変調させる。これによって、レーザ発振子31は、所定の変調周波数で変調された変調光を射出することになる。
【0045】
検出器モジュール4からの検出信号を処理する処理回路82は、光検出器41の出力信号である光強度信号から特徴量を抽出し、その特徴量から成分濃度を演算するものである。なお、処理回路82で演算された成分濃度は表示部9に表示される。
【0046】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態のガス分析装置100であれば、取付ブロック5により多重反射セル2に対して光源モジュール3及び検出器モジュール4を位置決めして取り付けられるので、それらを一体的な構造にすることができるとともに、反射ミラーや凹面ミラーなどのミラー光学系を光源モジュール3及び多重反射セル2の間に設けない設計とすることが容易となる。その結果、多重反射セル2を用いたガス分析装置100を小型化することができる。
【0047】
また、光源モジュール3が、レーザ発振子31からのレーザ光L1を光学窓2Wに向かって集光する集光レンズ32を有しているので、光学窓2W又は多重反射セル2内部の反射ミラーM1に形成する光通過孔Mxを小さくすることができる。多重反射セル2内の反射回数を増やすことができ、高精度な測定が可能となる。
【0048】
ここで、光源モジュール3がレーザ発振子31に対する集光レンズ32の位置を調整するレンズ位置調整機構33を有しているので、取付ブロック5に光源モジュール3を取り付ける構成において、多重反射セル2内部の反射ミラーM1、M2に対してレーザ発振子31を精度良く集光することができ、これによって、高精度な測定が可能となる。その他、本実施形態では、レーザ発振子31からのレーザ光L1を平行光にすることなく集光することで、光学素子の数を削減している。
【0049】
<その他の実施形態>
例えば、前記実施形態の取付ブロック5は単一のブロックではなく、複数のブロックを組み合わせたものであっても良い。
【0050】
前記実施形態では、光学窓に対してレーザ光L1が斜めに入射し斜めに出射する構成であったが、光学窓に対してレーザ光L1が斜めに入射しない構成としてもよいし、光学窓に対してレーザ光が斜めに出射しない構成としてもよい。
【0051】
また、前記実施形態の多重反射セルは1つの光学窓2Wを有する構成であったが、2つの光学窓を有する構成とし、一方の光学窓をセル内部にレーザ光を導入する光導入窓、他方の光学窓をセル外部にレーザ光を導出する光導出窓としても良い。
【0052】
さらに、前記実施形態では、取付ブロック5及び多重反射セル2の間の断熱ブロック6を設けた構成であったが、断熱ブロック6を設けない構成としても良い。この場合、取付ブロック5自体を断熱性を有する材料から形成し、多重反射セル2からの熱が光源モジュール3及び検出器モジュール4に伝わりにくい構成としても良い。
【0053】
加えて、ガス分析装置は、赤外レーザ吸収変調法(IRLAM)に限られず、その他のレーザ吸収分光法を用いたものであっても良い。
【0054】
その上、ガス分析装置は、半導体製造プロセスに用いられるものに限られず、半導体以外の製造プロセスに用いられるものであっても良いし、化学プラントのプロセスに用いられるものであっても良い。また、燃焼炉の煙道や内燃機関の排気管などを流れる排ガスを分析するものであっても良い。
【0055】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0056】
100・・・ガス分析装置
2・・・多重反射セル
2W・・・光学窓
3・・・光源モジュール
31・・・レーザ発振子
L1・・・レーザ光
32・・・集光レンズ
33・・・レンズ位置調整機構
4・・・検出器モジュール
5・・・取付ブロック
5a・・・光源取付面
5b・・・検出器取付面
5c・・・セル取付面
5d・・・段差
6・・・断熱ブロック
7・・・光路調整機構