(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085544
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】ウェハの評価方法、ウェハの製造方法及びデバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20240620BHJP
C30B 29/36 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
H01L21/66 N
C30B29/36 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200111
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100137017
【弁理士】
【氏名又は名称】眞島 竜一郎
(72)【発明者】
【氏名】郭 玲
【テーマコード(参考)】
4G077
4M106
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077AB01
4G077BE08
4G077GA02
4G077GA06
4G077HA12
4M106AA01
4M106CB19
4M106DH22
4M106DJ02
4M106DJ27
(57)【要約】
【課題】貫通欠陥を低コストかつ効率的に検出できるウェハの評価方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本実施形態にかかるウェハの評価方法は、複数の貫通孔を有する多孔質プレート上に、SiCウェハ又はSiCエピタキシャルウェハを設置し、前記SiCウェハ又は前記SiCエピタキシャルウェハの第1面と対向する第2面に、オーリングを挟んで蓋を設置し、前記第2面と前記オーリングと前記蓋とに囲まれた空間にガスを供給し、前記空間内を加圧し、一定期間経過後の前記空間内の圧力を測定し、前記SiCウェハ又は前記SiCエピタキシャルウェハの貫通欠陥の有無を検査する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貫通孔を有する多孔質プレート上に、SiCウェハ又はSiCエピタキシャルウェハを設置し、
前記SiCウェハ又は前記SiCエピタキシャルウェハの第1面と対向する第2面に、オーリングを挟んで蓋を設置し、
前記第2面と前記オーリングと前記蓋とに囲まれた空間にガスを供給し、前記空間内を加圧し、
一定期間経過後の前記空間内の圧力を測定し、前記SiCウェハ又は前記SiCエピタキシャルウェハの貫通欠陥の有無を検査する、ウェハの評価方法。
【請求項2】
前記ガスを供給直後の前記空間内の初期圧力を0.2MPa以上とする、請求項1に記載のウェハの評価方法。
【請求項3】
前記ガスを供給直後の前記空間内の初期圧力を0.3MPa以下とする、請求項1に記載のウェハの評価方法。
【請求項4】
前記ガスを供給直後の前記空間内の初期圧力と一定期間経過後の前記空間内の保持圧力との差が、前記初期圧力の1/100超の場合に、前記貫通欠陥があると判断する、請求項1に記載のウェハの評価方法。
【請求項5】
前記オーリングの内径が80mm以下である、請求項1に記載のウェハの評価方法。
【請求項6】
前記ウェハがSiCウェハである、請求項1に記載のウェハの評価方法。
【請求項7】
前記ウェハがSiCエピタキシャルウェハである、請求項1に記載のウェハの評価方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のウェハの評価方法を用いた評価工程を含む、ウェハの製造方法。
【請求項9】
貫通欠陥の有無を確認する画像選別工程をさらに有し、
前記画像選別工程は、前記評価工程の前に行われる、請求項8に記載のウェハの製造方法。
【請求項10】
前記評価工程は、前記画像選別工程で貫通欠陥を有すると判断された場合に、貫通欠陥の面積が0μm2より大きく182μm2以下であるウェハを選別する選別工程を有する、請求項9に記載のウェハの製造方法。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか一項に記載のウェハの評価方法を用いた評価工程を含む、デバイスの製造方法。
【請求項12】
貫通欠陥の有無を確認する画像選別工程をさらに有し、
前記画像選別工程は、前記評価工程の前に行われる、請求項11に記載のデバイスの製造方法。
【請求項13】
デバイス作製工程をさらに有し、
前記評価工程は、前記画像選別工程で貫通欠陥を有すると判断された場合に、前記評価工程で貫通欠陥の面積が0μm2より大きく182μm2以下であるウェハを選別する選別工程を有し、
前記デバイス作製工程では、貫通欠陥の面積が0μm2より大きく182μm2以下であるウェハを用いてデバイスを作製する、請求項12に記載のデバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハの評価方法、ウェハの製造方法及びデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(SiC)は、シリコン(Si)に比べて絶縁破壊電界が1桁大きく、バンドギャップが3倍大きい。また、炭化珪素(SiC)は、シリコン(Si)に比べて熱伝導率が3倍程度高い等の特性を有する。そのため炭化珪素(SiC)は、パワーデバイス、高周波デバイス、高温動作デバイス等への応用が期待されている。このため、近年、上記のような半導体デバイスにSiCエピタキシャルウェハが用いられるようになっている。
【0003】
SiCエピタキシャルウェハは、SiCウェハの表面にSiCエピタキシャル層を積層することで得られる。以下、SiCエピタキシャル層を積層前の基板をSiCウェハと称し、SiCエピタキシャル層を積層後の基板をSiCエピタキシャルウェハと称する。SiCウェハは、SiCインゴットから切り出される。
【0004】
SiCウェハは、SiCインゴットを切り出して作製する。SiCウェハに欠陥があると、SiCエピタキシャルウェハ及びSiCデバイスに悪影響を及ぼす。貫通欠陥は、SiCエピタキシャルウェハ及びSiCデバイスへの影響が大きい欠陥の一つである。また、貫通欠陥を有するSiCデバイスは、耐圧不良を引き起こす場合がある。
【0005】
デバイスに悪影響を及ぼす貫通欠陥を確実に検出することは難しく、様々な方法が提案されている。例えば、特許文献1及び特許文献2は、同一のインゴットから切り出された2つ以上のSiCウェハで、欠陥の位置関係、形状等を比較することで貫通欠陥を特定している。また例えば、特許文献3は、SiCウェハに液を塗布し、塗布面と反対側の面を真空吸引することで、貫通欠陥の有無を確認している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開第2022-66972号公報
【特許文献2】特開第2001-40004号公報
【特許文献3】特開第2006-286693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び特許文献2に記載の貫通欠陥の評価方法は、同じインゴットから切り出された別のSiCウェハを準備する必要がある。また特許文献3に記載の貫通欠陥の評価方法は、液塗布が必要であり、作業が煩雑である。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、貫通欠陥を低コストかつ効率的に検出できるウェハの評価方法、ウェハの製造方法及びデバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、加圧検査を行うことでSiCウェハ又はSiCエピタキシャルウェハの貫通欠陥の有無を適切に特定できることを見出した。本開示は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0010】
(1)第1の態様に係るウェハの評価方法は、複数の貫通孔を有する多孔質プレート上に、SiCウェハ又はSiCエピタキシャルウェハを設置し、前記SiCウェハ又は前記SiCエピタキシャルウェハの第1面と対向する第2面に、オーリングを挟んで蓋を設置し、前記第2面と前記オーリングと前記蓋とに囲まれた空間にガスを供給し、前記空間内を加圧し、一定期間経過後の前記空間内の圧力を測定し、前記SiCウェハ又は前記SiCエピタキシャルウェハの貫通欠陥の有無を検査する。
【0011】
(2)上記態様に係るウェハの評価方法は、前記ガスを供給直後の前記空間内の初期圧力を0.2MPa以上としてもよい。
【0012】
(3)上記態様に係るウェハの評価方法は、前記ガスを供給直後の前記空間内の初期圧力を0.3MPa以下としてもよい。
【0013】
(4)上記態様に係るウェハの評価方法は、前記ガスを供給直後の前記空間内の初期圧力と一定期間経過後の前記空間内の保持圧力との差が、前記初期圧力の1/100超の場合に、前記貫通欠陥があると判断してもよい。
【0014】
(5)上記態様に係るウェハの評価方法は、前記オーリングの内径が80mm以下でもよい。
【0015】
(6)上記態様に係るウェハの評価方法において、前記ウェハがSiCウェハである。
【0016】
(7)上記態様に係るウェハの評価方法において、前記ウェハがSiCエピタキシャルウェハである。
【0017】
(8)第2の態様に係るウェハの製造方法は、上記態様に係るウェハの評価方法を用いた評価工程を含む。
【0018】
(9)上記態様に係るウェハの製造方法は、貫通欠陥の有無を確認する画像選別工程をさらに有してもよい。前記画像選別工程は、前記評価工程の前に行われる。
【0019】
(10)上記態様に係るウェハの製造方法において、前記評価工程は、前記画像選別工程で貫通欠陥を有すると判断された場合に、貫通欠陥の面積が0μm2より大きく182μm2以下であるウェハを選別する選別工程を有してもよい。
【0020】
(11)第3の態様に係るデバイスの製造方法は、上記態様に係るウェハの評価方法を用いた評価工程を含む。
【0021】
(12)上記態様に係るデバイスの製造方法は、貫通欠陥の有無を確認する画像選別工程をさらに有してもよい。前記画像選別工程は、前記評価工程の前に行われる。
【0022】
(13)上記態様に係るデバイスの製造方法は、デバイス作製工程をさらに有してもよい。前記評価工程は、前記画像選別工程で貫通欠陥を有すると判断された場合に、貫通欠陥の面積が0μm2より大きく182μm2以下であるウェハを選別する選別工程を有する。デバイス作製工程では、貫通欠陥の面積が0μm2より大きく182μm2以下であるウェハを用いてデバイスを作製する。
【発明の効果】
【0023】
上記態様にかかるウェハの評価方法、ウェハの製造方法及びデバイスの製造方法は、貫通欠陥を低コストかつ効率的に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1実施形態に係るSiCウェハの評価方法を説明するためのSiCウェハの評価装置の断面図である。
【
図2】第1実施形態に係るSiCウェハの評価方法を説明するためのSiCウェハの評価装置の平面図である。
【
図7】サンプル8のSiCウェハを共焦点微分干渉顕微鏡で測定した図である。
【
図8】サンプル9のSiCウェハを共焦点微分干渉顕微鏡で測定した図である。
【
図9】サンプル8のSiCウェハの断面のX線CT像である。
【
図10】サンプル8のSiCウェハの断面を共焦点微分干渉顕微鏡で測定した図である。
【
図11】サンプル9のSiCウェハの断面のX線CT像である。
【
図12】サンプル9のSiCウェハの断面を共焦点微分干渉顕微鏡で測定した図である。
【
図13】サンプル10のSiCエピタキシャルウェハの断面のX線CT(Computed Tomography)像とSiCウェハの共焦点微分干渉顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本実施形態の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材質、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0026】
図1は、第1実施形態に係るSiCウェハの評価方法を説明するためのSiCウェハの評価装置の断面図である。
図2は、第1実施形態に係るSiCウェハの評価方法を説明するためのSiCウェハの評価装置の平面図である。評価装置10は、SiCウェハ1内の貫通欠陥の有無の評価に用いられる。以下、評価対象をSiCウェハ1とする例を説明するが、評価対象はSiCエピタキシャルウェハとしてもよい。すなわち、
図1及び
図2におけるSiCウェハ1をSiCエピタキシャルウェハに置き換えることができ、以下の説明におけるSiCウェハ1をSiCエピタキシャルウェハに置き換えることができる。
【0027】
評価装置10は、多孔質プレート2とオーリング3と蓋4と圧力計5とレギュレータ6とを有する。
【0028】
多孔質プレート2は、複数の貫通孔21を有する。複数の貫通孔21のそれぞれは、多孔質プレート2の第1面と第2面との間を貫通する。多孔質プレート2は、公知のものを用いることができる。多孔質プレート2は、例えばアルミナ製であり、気孔径2μm、気孔率40%、硬度(HRHスケール)90である。多孔質プレート2は、例えば、平面視でオーリング3より大きい。
【0029】
SiCウェハ1を評価する際に、多孔質プレート2上にSiCウェハ1をSiCウェハ1の第1面1Aを下にして設置する。SiCウェハ1は、多孔質プレート2の複数の貫通孔21の延在方向とSiCウェハ1の第1面1Aとが交差するように設置される。
【0030】
オーリング3と蓋4は、SiCウェハ1の第2面1B側に配置される。第2面1Bは、第1面1Aの反対側の面である。オーリング3は、蓋4とSiCウェハ1とに挟まれる。オーリング3は、蓋4及びSiCウェハ1に密着する。
【0031】
オーリング3の内径R3は、例えば、80mm以下である。オーリング3の内径R3が狭いほど、空間7の容積が小さくなり、SiCウェハ1内の貫通欠陥の検出感度が高まる。空間7は、SiCウェハ1の第2面1Bとオーリング3と蓋4とに囲まれる空間である。
【0032】
蓋4は、空気を透過しないものであれば、特に問わない。蓋4は、例えば、樹脂板、金属板等である。蓋4は、例えば、平面視でオーリング3より大きい。蓋4は、オーリング3の上面を覆い、空間7を形成する。蓋4は、オーリング3を挟んで、第2面1Bと対向する。蓋4の上面には、例えば、抑え部材4Aを設置する。抑え部材4Aは、空間7を加圧時に蓋4が外れることを防止する。抑え部材4Aは、例えば、ねじ部を有するハンドルねじであり、ねじ部が多孔質プレートにねじ込まれる。
【0033】
圧力計5及びレギュレータ6は、空間7に接続される。圧力計5は、空間7内の圧力を測定する。レギュレータ6は、空間7内の圧力を調整する。圧力計5及びレギュレータ6は、公知のものを用いることができる。
【0034】
空間7内には、ガスGが供給される。ガスGは、例えば、空気、窒素、アルゴン等である。ガスGが空間7に供給されると、空間7内は加圧される。空間7内の圧力が一定圧力になった時点で、空間7内へのガスGの供給を止める。空間7内へのガスGの供給がストップされた時点での空間7内の圧力を、初期圧力という。
【0035】
空間7内の初期圧力は、例えば、0.1MPa以上であり、好ましくは0.15MPa以上であり、より好ましくは0.2MPa以上である。空間7内の初期圧力が高いと、SiCウェハ1内の貫通欠陥の検出感度が高まる。
【0036】
また空間7内の初期圧力は、例えば、0.3MPa以下であり、好ましくは0.2MPa以下である。空間7の初期圧力が高いと、オーリング3がSiCウェハ1に貼りつく場合がある。オーリング3とSiCウェハ1とが貼りつくと剥離が困難であり、これらを剥離する際にSiCウェハ1が破損する場合がある。空間7の初期圧力を高くしすぎないことで、オーリング3とSiCウェハ1との貼りつきを抑制できる。例えば、初期圧力が0.2MPa以下で、オーリング3の内径が80mmの場合は、オーリング3がSiCウェハ1に貼りつくことはない。オーリング3とSiCウェハ1とは、初期圧力が低く、オーリング3の内径が小さい程、貼りつきにくい。また初期圧力が0.1MPaでは、オーリング3の径によらず、オーリング3とSiCウェハ1とが貼りつくことはない。
【0037】
空間7内の圧力は、圧力計5で測定される。空間7内の圧力は、ガスGの供給をストップしてから一定期間モニターする。一定期間は、空間7内の圧力、空間7の容積によって適宜設定できる。例えば、空間7内の圧力を240秒間にわたってモニターしてもよいし、60秒間にわたってモニターしてもよい。空間7内へのガスGの供給がストップされてから一定期間経過後の空間7内の圧力を、保持圧力という。
【0038】
第1実施形態に係るSiCウェハの評価方法では、空間7の保持圧力を測定することで、SiCウェハ1が貫通欠陥を有するか否かを判断する。
【0039】
SiCウェハ1が貫通欠陥を有さない場合、空間7は、SiCウェハ1の第2面1Bとオーリング3と蓋4とに囲まれる閉空間となる。オーリング3の周辺からの僅かなリークがあったとしても、空間7内の保持圧力が、一定期間経過に、初期圧力から大きく下がることはない。
【0040】
これに対し、SiCウェハ1が貫通欠陥を有する場合、空間7内のガスGは、貫通欠陥及び貫通孔21を通って、外部にリークする。そのため、空間7の保持圧力は、一定期間経過に、初期圧力から下がる。なお、SiCウェハ1の貫通欠陥の位置は、多孔質プレート2の貫通孔の位置からずれていてもよい。SiCウェハ1の貫通欠陥の位置が、多孔質プレート2の貫通孔の位置からずれていても、空間7内のガスGは外部にリークする。例えば、空間7内のガスGは、貫通欠陥からSiCウェハ1と多孔質の多孔質プレート2との間のわずかな隙間を通り、さらに貫通孔21を通って、外部にリークする。
【0041】
判断の閾値となる保持圧力は、SiCウェハ1に求められる品質、空間7の初期圧力、一定期間の設定条件等に応じて適宜設定できる。例えば、初期圧力と保持圧力との差が初期圧力の1/100以下となる場合に、SiCウェハ1は問題となる貫通欠陥を有さないと判断し、初期圧力と保持圧力との差が初期圧力の1/100超となる場合に、SiCウェハ1は問題となる貫通欠陥を有すると判断する。例えば、初期圧力が0.2MPaの場合は、保持圧力が0.198MPa以上で、初期圧力と保持圧力との差が0.002MPa以下の際に、SiCウェハ1は貫通欠陥を有さないと判断し、保持圧力が0.198MPa未満で、初期圧力と保持圧力との差が0.002MPa超の際に、SiCウェハ1は貫通欠陥を有すると判断する。なお、仮にデバイスの品質及びデバイス作製の工程に悪影響を及ぼさない貫通欠陥をSiCウェハ1が有していたとしても、これらの欠陥は悪影響を及ぼすものではないため、貫通欠陥を有さないと判断しても支障はない。
【0042】
上述のように、第1実施形態に係るSiCウェハの評価方法は、空間7内を加圧し、空間7内の圧力変化を測定することで、SiCウェハ1内の後工程で問題となる貫通欠陥の有無を判断することができる。
【0043】
また第1実施形態にかかるSiCウェハの評価方法は、SiCウェハの製造方法、SiCエピタキシャルウェハの製造方法及びSiCデバイスの製造方法の一工程として組み込むことができる。
【0044】
例えば、SiCウェハの製造方法に組み込む場合は、インゴットからSiCウェハを切り出した後であって、SiCウェハ上にSiCエピタキシャル膜を成膜する前に、当該評価方法を用いた評価工程を行う。当該評価工程では、まず貫通欠陥の有無を判断する。当該評価工程を行うことで、不良品となりうるSiCウェハ1を早めに選別でき、デバイスの歩留まりを高めることができる。
【0045】
また例えば、SiCエピタキシャルウェハ及びSiCデバイスの製造方法に組み込む場合は、SiCウェハ上にSiCエピタキシャル膜を成膜した後に、当該評価方法を用いた評価工程を行う。当該評価工程では、まず貫通欠陥の有無を判断する。当該評価工程を行うことで、不良品となりうるSiCエピタキシャルウェハを早めに選別でき、デバイスの歩留まりを高めることができる。
【0046】
上記のSiCウェハの評価方法は、インゴットから切り出したSiCウェハに対して全数行ってもよいし、特定のSiCウェハを選別して行ってもよい。特定のSiCウェハの選別は、例えば、画像選別で行うことができる。すなわち、第1実施形態に係るSiCウェハの評価方法は、画像選別工程を行った後に、行ってもよい。
【0047】
画像選別工程は、例えば、SiCウェハの表面観察を行うことができる光学顕微鏡で行うことができる。画像選別工程では、第1選別工程と第2選別工程を行ってもよい。
【0048】
第1選別工程では、欠陥のサイズを測定する。第1選別工程は、欠陥のサイズが所定の面積以上という第1条件を満たすか否かを選別する。所定の面積は、例えば300μm2である。欠陥のサイズは光学顕微鏡の画像から算出できる。第1選別工程においてSiCウェハ内に第1条件を満たす欠陥がある場合は、第2選別工程に至る。第1選別工程においてSiCウェハ内に第1条件を満たす欠陥がない場合は、SiCウェハはデバイスに悪影響を及ぼすほどの貫通欠陥を有さないと判断でき、第1実施形態に係るSiCウェハの評価方法を行わなくてもよい。
【0049】
第2選別工程では、同一の種結晶から成長したインゴットから切り出されたSiCウェハにおける欠陥の位置とSN比を比較する。第2選別工程は、例えば、特許文献1に記載の方法を用いることができる。第2選別工程においてSiCウェハ内に貫通欠陥があると判断される場合は、第1実施形態に係るSiCウェハの評価方法を行う。第2選別工程においてSiCウェハ内に貫通欠陥がないと判断される場合は、SiCウェハはデバイスに悪影響を及ぼすほどの貫通欠陥を有さないと判断でき、第1実施形態に係るSiCウェハの評価方法を行わなくてもよい。
【0050】
画像選別工程を行うと、第1実施形態に係るSiCウェハの評価方法をSiCウェハ全数に対して行う必要がなくなり、SiCエピタキシャルウェハの製造方法及びSiCデバイスの製造方法を効率化できる。同様に、SiCエピタキシャルウェハに対しても画像選別工程を行ってもよい。
【0051】
また第1実施形態にかかるSiCウェハの評価方法は、詳細は後述するが、Heを用いてリークチェックを行った場合より高い精度で貫通欠陥を評価できる。また貫通欠陥の中には成長途中に閉塞し、デバイスへの影響の低いものもある。第1実施形態にかかるSiCウェハの評価方法では、NG欠陥とならない閉塞された貫通欠陥を有するSiCウェハをNGと判断しないため、デバイスに悪影響を及ぼさないにもかかわらず不良品と判断されるSiCウェハ1を少なくできる。
【0052】
また例えば、まず画像選別工程で、貫通欠陥の有無を確認し、貫通欠陥を有すると確認されたウェハについて、第1実施形態におけるウェハの評価工程を行ってもよい。本工程では、例えば、内径が80mmのオーリング3を用いることで、面積が182μm2以下の貫通欠陥を有するウェハを選別できる。すなわち、貫通欠陥の面積が0μm2より大きく182μm2以下のウェハを選別できる。貫通欠陥の面積が182μm2以下のウェハは、貫通欠陥が閉塞されたウェハを含む。貫通欠陥の面積が182μm2以下の場合は、後工程に悪影響を及ぼす可能性が低い。画像選別工程の後に第1実施形態におけるウェハの評価工程を行うことで、デバイスに悪影響を及ぼさないにもかかわらず不良品と判断されるSiCウェハ1を少なくできる。
【0053】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【実施例0054】
「実施例1」
直径が150mm(6インチ)のSiCウェハを複数枚準備した。それぞれのSiCウェハを共焦点微分干渉顕微鏡とフォトルミネッセンス(PL)観察機能を併設した検査装置(レーザーテック株式会社製、SICA88と同様の原理の装置)を用いて観測し、貫通欠陥を確認した。貫通欠陥が確認されなかったSiCウェハをサンプル1とした。また貫通欠陥が確認されたSiCウェハをサンプル2~サンプル5とした。
【0055】
そして、サンプル1~サンプル5のそれぞれを、
図1及び
図2に示す評価装置10を用いて貫通欠陥の有無を評価した。評価装置10を用いた評価において空間7内の初期圧力は0.2MPaとした。またオーリング3の直径は、80mmとした。そして、空間7内へのガスの供給をストップしてから240秒経過後の空間7の保持圧力を測定した。実施例1の評価結果を
図3にまとめた。
図3のグラフの横軸は、ガス供給をストップしてからの経過時間であり、縦軸は、空間7内の圧力である。またそれぞれのサンプルを評価した際の空間7内の保持圧力は、以下であった。
サンプル1:0.198MPa
サンプル2:0.197MPa
サンプル3:0.183MPa
サンプル4:0.135MPa
サンプル5:0.007MPa
【0056】
貫通欠陥を有さないサンプル1は、空間7内の圧力がほとんど変化しなかった。サンプル1は、保持圧力が0.198MPaであり、初期圧力と保持圧力との差は0.002MPaであった。サンプル1の評価における初期圧力と保持圧力との差は、オーリングからのリークに起因すると考えられる。これに対し、サンプル2~サンプル5は、保持圧力が0.198MPa未満であり、初期圧力と保持圧力との差は0.002MPa超であった。つまり、240秒経過後の保持圧力が0.198MPaというラインを閾値とすることで、SiCウェハの貫通欠陥の有無を評価できる。
【0057】
「実施例2」
実施例2では、貫通欠陥の大きさと保持圧力との相関を確認した。実施例2では、評価装置10を用いた評価において、空間7内の初期圧力は0.2MPaとした。またオーリング3の直径は、80mmとした。そして測定領域内における貫通欠陥が1つだけであることを確認し、その貫通欠陥の面積を測定した。そして、空間7内へのガスの供給をストップしてから60秒経過後の空間7の保持圧力を測定した。
【0058】
図4は、実施例2の評価結果を示す図である。
図4の横軸は、貫通欠陥の面積である。貫通欠陥の面積は、SiCウェハの第2面における面積である。
図4の縦軸は、ガスの供給をストップしてから60秒経過後の空間7の保持圧力である。
図4に示すように、貫通欠陥の面積と保持圧力との間には相関があることが確認された。
【0059】
また実施例1でも示したように、60秒経過後の空間の保持圧力が0.198MPa以上の場合、オーリングからのリークと貫通欠陥からのリークとを区別することが困難であり、この評価方法で判断をすることが難しい。つまり、貫通欠陥の面積が182μm
2以下の場合は、貫通欠陥を判断することが難しい。他方、デバイス作製時の現像液等の漏れの原因となる貫通欠陥の面積の最小値は、おおよそ300μm
2である。そのため、182μm
2以下の貫通欠陥は、デバイスの品質及びデバイス作製の工程に悪影響を及ぼす可能性が低く、測定できなくても問題とならない。なお、ここでは判定の閾値が182μm
2となる例を示したが、空間内の圧力を高くし、保持圧力を測定するまでの一定期間を長くすることで、182μm
2以下の貫通欠陥であっても評価することは可能である。なお、
図4の算出において、貫通欠陥の面積は、貫通欠陥の断面積と考えても差し支えない。
【0060】
「実施例3」
実施例3では、オーリングの径を変えて、測定範囲(空間の容積)と空間内の圧力変化との関係を求めた。実施例3のサンプル5は、実施例1のサンプル5と同じであり、同条件で評価を行った。実施例3のサンプル6は、オーリングの径を150mmとし、SiCウェハの全面を覆うようにした点が、サンプル5と異なる。サンプル6の評価条件のその他の項目は、サンプル5と同じとした。また評価対象となるSiCウェハは、サンプル5とサンプル6とで、同じものを用いた。
【0061】
図5は、実施例3の評価結果を示す図である。
図5の横軸は、ガスの供給をストップしてからの経過時間である。
図5の縦軸は、空間7内の圧力である。
図5に示すように、測定範囲が狭い方が、空間7内の圧力低下の速度が速い。つまり、測定範囲を狭めたほうが、貫通欠陥の検出感度が高い。
【0062】
「実施例4」
実施例4では、空間内の圧力を変えて、空間内の加圧条件と空間内の圧力変化との関係を求めた。実施例4のサンプル5は、実施例1のサンプル5と同じであり、同条件で評価を行った。実施例4のサンプル7は、空間内の初期圧力を0.1MPaとした点が、サンプル5と異なる。サンプル7の評価条件のその他の項目は、サンプル5と同じとした。また評価対象となるSiCウェハは、サンプル5とサンプル7とで、同じものを用いた。
【0063】
図6は、実施例4の評価結果を示す図である。
図6の横軸は、ガスの供給をストップしてからの経過時間である。
図6の縦軸は、空間7内の圧力である。
図6に示すように、空間内の初期圧力が高い方が、空間内の圧力低下の速度が速い。つまり、初期圧力を高めたほうが、貫通欠陥の検出感度が高い。他方、空間内の初期圧力を高めすぎると、オーリングとSiCウェハとが密着し剥離が困難になるという問題がある。
【0064】
「実施例5」
実施例5では、サンプル8とサンプル9の2つのSiCウェハを準備し、これらを評価した。サンプル8は、空間内へのガス供給をストップしてから240秒経過後の保持圧力が0.198MPaであった。これに対し、サンプル9は、空間内へのガス供給をストップしてから240秒経過後の保持圧力が0.196MPaであった。
【0065】
図7は、サンプル8のSiCウェハを共焦点微分干渉顕微鏡で測定した図である。
図7の左図は、SiCウェハの第1面の写真であり、
図7の右図は、SiCウェハの第2面の写真である。これに対し、
図8は、サンプル9のSiCウェハを共焦点微分干渉顕微鏡で測定した図である。
図8の左図は、SiCウェハの第1面の写真であり、
図8の右図は、SiCウェハの第2面の写真である。サンプル8もサンプル9も、表面と裏面とで対応する位置に欠陥があり、これらは貫通欠陥であると考えられる。
【0066】
図9は、サンプル8のSiCウェハの断面のX線CT(Computed Tomography)像である。また
図10は、サンプル8のSiCウェハの断面を共焦点微分干渉顕微鏡で測定した図である。
図9及び
図10の断面は、
図7に示す欠陥の断面である。
【0067】
また
図11は、サンプル9のSiCウェハの断面のX線CT(Computed Tomography)像である。また
図12は、サンプル9のSiCウェハの断面を共焦点微分干渉顕微鏡で測定した図である。
図11及び
図12の断面は、
図8に示す欠陥の断面である。
【0068】
図9に示すように、サンプル8のSiCウェハは、点線で囲む領域において貫通欠陥が閉塞している。
図10は、当該部分を拡大しており、孔が連通せず、分断されていることが確認される。これに対し、
図11に示すように、サンプル9のSiCウェハは、貫通欠陥の閉塞は確認されなかった。
図12においても、孔が連通していることが確認された。
【0069】
サンプル8、サンプル9は、表面画像では同様の欠陥に見える。しかしながら、
図9及び
図10に示すようにサンプル8の欠陥は閉塞しているのに対し、
図11及び
図12に示すようにサンプル9の欠陥は連通している。本実施形態に係る評価方法を用いて評価した結果に差があったのは、この欠陥の形状に起因していると考えられる。
【0070】
すなわち、本実施形態に係るSiCウェハの評価方法は、表面観察だけでは見出すことができない貫通欠陥の内部形状の違いも評価できる。
【0071】
「実施例6」
実施例6では、SiCウェハを準備し、このSiCウェハの一面にSiCエピタキシャル膜を10μmの厚みで成膜したものをサンプル10とし、これを評価した。サンプル10は、空間内へのガス供給をストップしてから240秒経過後の保持圧力が0.197MPaであった。
【0072】
図13は、サンプル10のSiCエピタキシャルウェハの断面のX線CT(Computed Tomography)像とSiCウェハの共焦点微分干渉顕微鏡像である。
図13に示すように、SiCウェハ1とSiCエピタキシャル膜11とに連通する貫通欠陥が確認される。貫通欠陥の径は、SiCウェハ1内では約9μmであり、SiCウェハ1とSiCエピタキシャル膜11との界面では約5μmであり、SiCエピタキシャル膜11内では約3μmであった。例えば貫通欠陥が円筒状の場合、径が約3μmの場合、その断面積は約7μm
2となる。
図13からSiCエピタキシャル膜11を成膜することで、貫通欠陥の径が縮小していることが分かる。
【0073】
実施例6に示すように、本実施形態に係るSiCウェハの評価方法は、SiCエピタキシャルウェハの評価方法としても適用できる。また貫通欠陥の最小径が3μmであっても、本実施形態に係る評価方法を用いることで、貫通欠陥を評価できる。
【0074】
「実施例7」
実施例7では、Heリークチェックで合格となったにもかかわらず、デバイス作製時の現像液の塗布工程で液漏れが生じたサンプルを複数準備した。Heリークチェックは、SiCウェハをチャンバにオーリングを介して真空チャックし、SiCウェハの表面に噴出したヘリウムガスが裏面から検出できるか否かで、ピンホールの有無を判定する方法である。HeをSiCウェハの表面に対して散布した際のリーク量が、散布前のリーク量に比べて10倍以下の場合は、Heリークチェックで合格と判断した。
【0075】
本実施形態に係るSiCウェハの評価方法を用いて、これらのサンプルを評価した。サンプルを評価する際の条件は、実施例1の条件と同じとした。その結果、何れのサンプルも保持圧力が0.198MPa未満であった。すなわち、本実施形態に係るSiCウェハの評価方法では、これらのサンプルはいずれもNGと判断された。つまり、本実施形態に係るSiCウェハの評価方法は、Heリークチェックより高い感度で、貫通欠陥を測定することができた。
1…SiCウェハ、1A…第1面、1B…第2面、2…多孔質プレート、3…オーリング、4…蓋、5…圧力計、6…レギュレータ、7…空間、10…評価装置、11…SiCエピタキシャル膜、21…貫通孔