(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085596
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】重合体及びその製造方法、重合体含有組成物、研磨液セット、研磨液、並びに、研磨方法
(51)【国際特許分類】
C09G 1/02 20060101AFI20240620BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240620BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20240620BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20240620BHJP
【FI】
C09G1/02
H01L21/304 622C
H01L21/304 622D
C09K3/14 550Z
B24B37/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200190
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100160897
【弁理士】
【氏名又は名称】古下 智也
(72)【発明者】
【氏名】荒木 元章
(72)【発明者】
【氏名】市川 雄基
(72)【発明者】
【氏名】大崎 博司
(72)【発明者】
【氏名】藤松 愛
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CB01
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5F057EA21
5F057EA29
5F057EA32
5F057EB07
(57)【要約】
【課題】優れた保存安定性を有する重合体含有組成物を得ることが可能な重合体を提供する。
【解決手段】スチレン及びスチレン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種に由来する第1の構造単位と、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも一種に由来する第2の構造単位と、主鎖における少なくとも一方の末端に位置するヒドロキシ基と、を有する、研磨液用の重合体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン及びスチレン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種に由来する第1の構造単位と、
アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも一種に由来する第2の構造単位と、
主鎖における少なくとも一方の末端に位置するヒドロキシ基と、
を有する、研磨液用の重合体。
【請求項2】
前記第1の構造単位の含有量が、前記第1の構造単位及び前記第2の構造単位の合計量を基準として5~50mol%である、請求項1に記載の重合体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の重合体を含有する、重合体含有組成物。
【請求項4】
pHが4.0以上7.0未満である、請求項3に記載の重合体含有組成物。
【請求項5】
砥粒を含有する砥粒分散液と、請求項3に記載の重合体含有組成物と、を備える、研磨液セット。
【請求項6】
砥粒と、請求項1又は2に記載の重合体と、を含有する、研磨液。
【請求項7】
請求項6に記載の研磨液を用いて被研磨面を研磨する、研磨方法。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の重合体の製造方法であって、
ヒドロキシ基を有する化合物を重合開始剤として用いて、スチレン及びスチレン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を重合させる、重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、重合体及びその製造方法、重合体含有組成物、研磨液セット、研磨液、研磨方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体素子の製造工程では、高密度化・微細化のための加工技術の重要性がますます高まっている。加工技術の一つであるCMP(化学機械研磨:Chemical Mechanical Pоlishing)技術は、半導体素子の製造工程において、STIの形成、プリメタル絶縁膜又は層間絶縁膜の平坦化、プラグ又は埋め込み金属配線の形成等に必須の技術となっている。
【0003】
STIを形成するためのCMP工程等においては、凹凸パターンを有する基板の凸部上に配置されたストッパ(ストッパ材料を含有する研磨停止層)と、凹凸パターンの凹部を埋めるように基板及びストッパの上に配置された絶縁部材(例えば、酸化珪素膜等の絶縁膜)と、を有する積層体の研磨が行われる。このような研磨では、絶縁部材の研磨はストッパにより停止される。すなわち、ストッパが露出した段階で絶縁部材の研磨を停止させる。これは、絶縁部材に含まれる絶縁材料の研磨量(絶縁材料の除去量)を人為的に制御することが難しいためであり、ストッパが露出するまで絶縁部材を研磨することにより研磨の程度を制御している。この場合、ストッパ材料に対する絶縁材料の研磨選択性(研磨速度比:絶縁材料の研磨速度/ストッパ材料の研磨速度)を高める必要がある。
【0004】
これに対し、下記特許文献1では、スチレンとアクリロニトリルとの共重合体を用いることで、ポリシリコンに対する酸化珪素の研磨選択性を向上させることが開示されている。下記特許文献2には、セリア粒子、分散剤、特定の水溶性高分子及び水を含有する研磨液を用いることで、窒化珪素に対する絶縁材料の研磨選択性を向上させることが開示されている。下記特許文献3には、ポリシリコン上の酸化珪素膜を研磨するための研磨液として、砥粒、ポリシリコン研磨抑制剤及び水を含む研磨液を用いることで、ポリシリコンに対する絶縁材料の研磨選択性を向上させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2015/170436号
【特許文献2】特開2011-103498号公報
【特許文献3】国際公開第2007/055278号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
CMP研磨液等の研磨液に用いられる重合体が、砥粒等の他成分と分けた状態で重合体含有組成物として保存され、重合体含有組成物を当該他成分と混合することにより研磨液を得る場合がある。研磨液のpHは、研磨対象の種類等に応じて調整され、例えば酸性領域に調整される場合があることから、重合体含有組成物を他成分と混合した際に研磨液のpHが酸性領域に調整されるように重合体含有組成物のpHも酸性領域に調整される場合がある。しかしながら、研磨液に用いられる重合体を含有する重合体含有組成物を酸性領域で保持すると、沈降物の発生、透過率の低下等が起こる場合があることから、重合体含有組成物の保存安定性を向上させることが求められる。
【0007】
本開示の一側面は、優れた保存安定性を有する重合体含有組成物を得ることが可能な重合体を提供することを目的とする。本開示の他の一側面は、前記重合体を含有する重合体含有組成物を提供することを目的とする。本開示の他の一側面は、前記重合体含有組成物を備える研磨液セットを提供することを目的とする。本開示の他の一側面は、前記重合体を含有する研磨液を提供することを目的とする。本開示の他の一側面は、前記研磨液を用いた研磨方法を提供することを目的とする。本開示の他の一側面は、前記重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、いくつかの側面において、下記の[1]~[8]等に関する。
[1]スチレン及びスチレン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種に由来する第1の構造単位と、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも一種に由来する第2の構造単位と、主鎖における少なくとも一方の末端に位置するヒドロキシ基と、を有する、研磨液用の重合体。
[2]前記第1の構造単位の含有量が、前記第1の構造単位及び前記第2の構造単位の合計量を基準として5~50mol%である、[1]に記載の重合体。
[3][1]又は[2]に記載の重合体を含有する、重合体含有組成物。
[4]pHが4.0以上7.0未満である、[3]に記載の重合体含有組成物。
[5]砥粒を含有する砥粒分散液と、[3]又は[4]に記載の重合体含有組成物と、を備える、研磨液セット。
[6]砥粒と、[1]又は[2]に記載の重合体と、を含有する、研磨液。
[7][6]に記載の研磨液を用いて被研磨面を研磨する、研磨方法。
[8][1]又は[2]に記載の重合体の製造方法であって、ヒドロキシ基を有する化合物を重合開始剤として用いて、スチレン及びスチレン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を重合させる、重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一側面によれば、優れた保存安定性を有する重合体含有組成物を得ることが可能な重合体を提供することができる。本開示の他の一側面によれば、前記重合体を含有する重合体含有組成物を提供することができる。本開示の他の一側面によれば、前記重合体含有組成物を備える研磨液セットを提供することができる。本開示の他の一側面によれば、前記重合体を含有する研磨液を提供することができる。本開示の他の一側面によれば、前記研磨液を用いた研磨方法を提供することができる。本開示の他の一側面によれば、前記重合体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。
【0011】
<定義>
本明細書において、「研磨液」とは、研磨時に被研磨面に触れる組成物として定義される。「研磨液」という語句自体は、研磨液に含有される成分を何ら限定しない。後述するように、本実施形態に係る研磨液は砥粒(abrasive grain)を含有することができる。砥粒は、「研磨粒子」(abrasive particle)ともいわれるが、本明細書では「砥粒」という。砥粒は一般的には固体粒子であって、研磨時に、砥粒が有する機械的作用、及び、砥粒(主に砥粒の表面)の化学的作用によって除去対象物が除去(remove)されると考えられるが、研磨のメカニズムは限定されない。
【0012】
本明細書において、「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を併用してもよい。組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。「研磨速度(Polishing Rate)」とは、単位時間当たりに材料が除去される速度(除去速度=Removal Rate)を意味する。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。数値範囲の「A以上」とは、A、及び、Aを超える範囲を意味する。数値範囲の「A以下」とは、A、及び、A未満の範囲を意味する。「ヒドロキシ基」は、カルボキシ基又はスルホ基(スルホン酸基)に含まれるOH構造を包含しない。重合体における「主鎖」とは、重合体において最も長い分子鎖(例えば炭化水素鎖)を構成する分子鎖をいい、「側鎖」とは、主鎖以外の分子鎖をいう。
【0013】
<重合体>
本実施形態に係る重合体は、研磨液用の重合体であり、例えばCMP研磨液用の重合体であってよい。本実施形態に係る重合体は、スチレン及びスチレン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種のスチレン化合物に由来する第1の構造単位と、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の(メタ)アクリル酸化合物に由来する第2の構造単位と、主鎖における少なくとも一方の末端に位置するヒドロキシ基と、を有する。
【0014】
本実施形態に係る重合体によれば、当該重合体を含有する重合体含有組成物を酸性領域(例えばpH4.0以上7.0未満)で保持した場合において沈降物の発生、透過率の低下等を抑制可能であり、優れた保存安定性を有する重合体含有組成物を得ることができる。例えば、本実施形態に係る重合体によれば、後述の実施例に記載の評価方法に示されるように、調製後に60℃で2週間(336時間)保持した重合体含有組成物において、沈降物が観察されず、且つ、波長700nmの光の透過率が95%以上である結果を得ることができる。
【0015】
優れた保存安定性が得られる理由は必ずしも明らかではないが、本発明者は、理由の一例を以下のように推測している。すなわち、主鎖における少なくとも一方の末端に、親水性であり、かつ、その水溶性がpHによる影響を受けにくいヒドロキシ基が位置することにより、酸性領域であっても重合体の主鎖の末端が水溶性を失いにくく、pHが低いことに伴う重合体の凝集が抑制されやすいことから、優れた保存安定性が得られると推測される。但し、理由は当該内容に限定されない。
【0016】
近年の半導体デバイスでは、微細化がますます加速し、配線幅の縮小と共に薄膜化が進んでいる。これに伴い、STIを形成するための研磨工程(例えばCMP工程)等において、凹凸パターンを有する基板の凸部上に配置されたストッパの過研磨を抑制しつつ絶縁部材を研磨する必要がある。このような観点から、研磨液に対しては、ストッパ材料に対する絶縁材料の研磨選択性を向上させることが求められており、例えば、窒化珪素に対する酸化珪素の研磨選択性を向上させることが求められている。本実施形態に係る重合体の一態様によれば、研磨液において用いた場合において、窒化珪素に対する酸化珪素の研磨選択性を向上させることができる。
【0017】
以下、場合により、本実施形態に係る重合体を「重合体P」と称する。重合体Pは、スチレン及びスチレン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種のスチレン化合物に由来する第1の構造単位と、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の(メタ)アクリル酸化合物に由来する第2の構造単位と、主鎖における少なくとも一方の末端に位置するヒドロキシ基と、を有する。すなわち、重合体Pは、スチレン化合物及び(メタ)アクリル酸化合物を単量体単位として有する。アクリル酸又はメタクリル酸の塩としては、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アンモニウム塩などが挙げられる。
【0018】
第1の構造単位及び第2の構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種は、重合体Pの主鎖に含まれてよく、重合体Pの側鎖に含まれてよい。重合体Pにおける主鎖は、優れた保存安定性を得やすい観点、又は、窒化珪素に対する酸化珪素の研磨選択性が向上しやすい観点から、第1の構造単位及び第2の構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよく、第1の構造単位及び第2の構造単位を含んでよい。第1の構造単位は、窒化珪素に対する酸化珪素の研磨選択性が向上しやすい観点から、スチレンに由来する構造単位を含んでよい。第2の構造単位は、優れた保存安定性を得やすい観点、又は、窒化珪素に対する酸化珪素の研磨選択性が向上しやすい観点から、アクリル酸に由来する構造単位を含んでよい。
【0019】
25℃の水に対するスチレン化合物の溶解度は、下記の範囲がであってよい。スチレン化合物の溶解度は、窒化珪素に対する酸化珪素の研磨選択性が向上しやすい観点から、0.1g/100mL以下、0.05g/100mL以下、又は、0.03g/100mL以下であってよい。スチレン化合物の溶解度は、優れた保存安定性を得やすい観点から、0.01g/100mL以上、0.02g/100mL以上、又は、0.025g/100mL以上であってよい。これらの観点から、スチレン化合物の溶解度は、0.01~0.1g/100mLであってよい。25℃の水に対するスチレンの溶解度は、0.03g/100mLである。
【0020】
スチレン誘導体としては、アルキルスチレン(α-メチルスチレン等)、アルコキシスチレン(α-メトキシスチレン、p-メトキシスチレン等)、m-クロロスチレン、トリメチルシリルスチレン、4-カルボキシスチレン、スチレンスルホン酸などが挙げられる。スチレン誘導体としては、親水性基を有さないスチレン誘導体を用いることができる。親水性基としては、ポリエーテル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基等が挙げられる。
【0021】
重合体Pにおいて第1の構造単位の含有量は、重合体Pの全体、又は、第1の構造単位及び第2の構造単位の合計量を基準として、下記の範囲であってよい。第1の構造単位の含有量は、優れた保存安定性を得やすい観点から、50mol%以下、50mol%未満、45mol%以下、40mol%以下、35mol%以下、30mol%以下、25mol%以下、20mol%以下、15mol%以下、又は、10mol%以下であってよい。第1の構造単位の含有量は、窒化珪素に対する酸化珪素の研磨選択性が向上しやすい観点から、5mol%以上、10mol%以上、15mol%以上、20mol%以上、20mol%超、25mol%以上、又は、30mol%以上であってよい。これらの観点から、第1の構造単位の含有量は、5~50mol%、又は、10~30mol%であってよい。
【0022】
重合体Pにおいて第2の構造単位の含有量は、重合体Pの全体、又は、第1の構造単位及び第2の構造単位の合計量を基準として下記の範囲であってよい。第2の構造単位の含有量は、窒化珪素に対する酸化珪素の研磨選択性が向上しやすい観点から、95mol%以下、90mol%以下、85mol%以下、80mol%以下、80mol%未満、75mol%以下、又は、70mol%以下であってよい。第2の構造単位の含有量は、優れた保存安定性を得やすい観点から、50mol%以上、50mol%超、55mol%以上、60mol%以上、65mol%以上、70mol%以上、75mol%以上、80mol%以上、85mol%以上、又は、90mol%以上であってよい。これらの観点から、第2の構造単位の含有量は、50~95mol%、又は、70~90mol%であってよい。
【0023】
重合体Pが、スチレンに由来する構造単位、及び、スチレン誘導体に由来する構造単位を有する場合、第1の構造単位の含有量は、スチレンに由来する構造単位、及び、スチレン誘導体に由来する構造単位の合計量である。同様に、第2の構造単位の含有量は、(メタ)アクリル酸化合物に由来する構造単位の合計量である。
【0024】
重合体Pにおける構造単位の含有量は、13C-NMRにより測定できる。例えば、重合体P及びクロム(III)アセチルアセトナートをジメチルスルホキシド-d6に溶解した後、Bruker製CryoProbeTM 5mm(BBO型)を備えたBruker製Avance NEO400 Onebayを用いて、13C-NMRの測定(共鳴周波数:100MHz、測定温度:25℃、緩和待時間:4秒)により測定できる。重合体P中の構造単位の含有量は、各単量体の反応性比を考慮したMayo-Lewisの式により推測できる。また、重合体Pの合成時の各単量体の使用量、投入タイミング等の調整により構造単位の含有量を制御できる。
【0025】
重合体Pは、スチレン化合物又は(メタ)アクリル酸化合物と重合可能なその他の単量体に由来する構造単位を有していてもよい。このような単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)クリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート等)、複素環式ビニル化合物(ビニルピロリドン等)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等)、ポリアルキレンレングリコール(メタ)アクリレート(エチレングリコール(メタ)アクリレート、ブチレングリコール(メタ)アクリレート等)、アルキルアミノ(メタ)アクリレート(N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等)、ビニルエステル化合物(蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチツク酸ビニル(商品名:VeoVa 10、Hexion Specialty Chemicals社製)等)、モノオレフィン化合物(エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等)、共役ジオレフィン化合物(ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等)、アクリル酸及びメタクリル酸以外のα,β-不飽和モノ又はジカルボン酸(クロトン酸、シトラコン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等)、カルボキシル基含有ビニル化合物(フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、シュウ酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等)、アミンイミド基含有ビニル化合物(1,1,1-トリメチルアミンメタクリルイミド等)、シアン化ビニル化合物(アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、アミド基又は置換アミド基含有α,β-エチレン性不飽和化合物((メタ)アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等)、カルボニル基含有α,β-エチレン性不飽和化合物(アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ビニルメチルケトン、ダイアセトンアクリレート、アセトニトリルアクリレート等)、スルホン酸基含有α,β-エチレン性不飽和化合物(スルホン酸アリル、p-スチレンスルホン酸ナトリウム等)などの公知の重合性ビニル化合物を使用することができる。
【0026】
重合体Pにおいて、分子鎖(例えば主鎖)の構造単位の配列は任意である。重合体Pとしては、ブロック共重合体、ランダム共重合体等が挙げられる。重合体Pは、スチレンに由来する構造単位、及び、アクリル酸に由来する構造単位を有するランダム共重合体であってよく、スチレンに由来する構造単位、及び、アクリル酸に由来する構造単位を有するブロック共重合体であってよい。
【0027】
重合体Pは、優れた保存安定性を得る観点から、主鎖における少なくとも一方の末端に位置するヒドロキシ基を有する。重合体Pは、主鎖の一方の末端のみにヒドロキシ基を有してよく、主鎖の双方の末端にヒドロキシ基を有してもよい。重合体Pは、主鎖における少なくとも一方の末端に位置するヒドロキシ基として、後述の重合開始剤A(例えば過酸化水素)に由来するヒドロキシ基を有してよい。重合体Pは、主鎖における少なくとも一方の末端の炭素原子に結合するヒドロキシ基を有してよい。主鎖における少なくとも一方の末端にヒドロキシ基が位置することは、NMR等により確認できる。重合体Pは、主鎖における少なくとも一方の末端に加えて、側鎖の末端にヒドロキシ基を有してよい。
【0028】
重合体Pの重量平均分子量は、優れた保存安定性を得やすい観点、又は、窒化珪素に対する酸化珪素の研磨選択性が向上しやすい観点から、下記の範囲であってよい。重量平均分子量は、500000以下、300000以下、200000以下、又は、100000以下であってよい。重量平均分子量は、1000以上、3000以上、5000以上、8000以上、又は、10000以上であってよい。これらの観点から、重合体Pの重量平均分子量は、1000~500000、又は、10000~100000であってよい。重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、プルラン換算することで得ることが可能であり、具体的には、実施例に記載の方法により測定できる。
【0029】
<重合体の製造方法>
本実施形態に係る重合体の製造方法は、上述の重合体(重合体P)の製造方法である。本実施形態に係る重合体の製造方法は、ヒドロキシ基を有する化合物を重合開始剤(以下、「重合開始剤A」と称する)として用いて、スチレン及びスチレン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種のスチレン化合物と、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の(メタ)アクリル酸化合物と、を重合させる重合工程を備える。重合工程では、重合開始剤Aの存在下においてスチレン化合物と(メタ)アクリル酸化合物とを重合させることができる。重合工程では、スチレン化合物と(メタ)アクリル酸化合物とを重合させることにより上述の重合体Pを得ることができる。
【0030】
重合開始剤Aとしては、過酸化水素等の無機過酸化物;シクロヘキサノンパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’-アゾビス[N-(2-ヒドロキシエチル)-2-メチルプロパンアミド]、2,2’-アゾビス(2-シアノプロパノール)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタノール)、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオン酸アミド]、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオン酸アミド]、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオン酸アミド}、2,2’-アゾビス[N-(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルプロピオン酸アミジン]等のアゾ化合物などが挙げられる。重合開始剤Aは、優れた保存安定性を得やすい観点から、無機過酸化物、有機過酸化物、及び、アゾ化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよく、過酸化水素、及び、2,2’-アゾビス[N-(2-ヒドロキシエチル)-2-メチルプロパンアミド]からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。
【0031】
重合工程では、分子量調整の観点から、重合開始剤A、及び、ヒドロキシ基を有する連鎖移動剤を用いてスチレン化合物と(メタ)アクリル酸化合物とを重合させてよい。ヒドロキシ基を有する連鎖移動剤としては、1-チオグリセロール(別名:3-メルカプト-1,2-プロパンジオール)、メルカプトエタノール等が挙げられる。連鎖移動剤は、重合体Pを得やすい観点から、1-チオグリセロールを含んでよい。
【0032】
還元剤は、重合開始剤Aを還元し、熱開裂によらずラジカル発生させることができる。遷移金属化合物は、重合開始剤Aと還元剤との酸化還元反応を促進することが可能であり、還元剤及び遷移金属化合物を併用することで重合速度を向上させることができる。重合工程では、重合開始剤A、及び、還元剤を用いてスチレン化合物と(メタ)アクリル酸化合物とを重合させてよく、重合開始剤A、還元剤、及び、遷移金属化合物を用いてスチレン化合物と(メタ)アクリル酸化合物とを重合させてよく、重合開始剤A、ヒドロキシ基を有する連鎖移動剤、還元剤、及び、遷移金属化合物を用いてスチレン化合物と(メタ)アクリル酸化合物とを重合させてよい。重合工程では、還元剤を用いてレドックス重合を行うことができる。還元剤としては、アスコルビン酸、酒石酸、酒石酸ナトリウム、シュウ酸、チオ尿素、二酸化チオ尿素、ヒドラジン、重亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、等が挙げられる。還元剤は、還元力が高い観点から、アスコルビン酸を含んでよい。遷移金属化合物としては、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、硫酸銅(I)、硫酸銅(II)、これらの水和物等が挙げられる。
【0033】
<重合体含有組成物>
本実施形態に係る重合体含有組成物は、重合体Pを含有する。重合体Pとしては、一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を併用してもよい。例えば、二種類以上の重合体Pとしては、上述の第1の構造単位と第2の構造単位との含有割合が異なる重合体Pを組み合わせて使用することができる。本実施形態に係る重合体含有組成物は、重合体P、及び、水を含有してよく、重合体含有液と称してよい。本実施形態に係る重合体含有組成物は、砥粒を含有しなくてよい。
【0034】
重合体含有組成物において、不揮発分の含有量(不揮発分含量)又は重合体Pの含有量として、含有量Aは、下記の範囲であってよい。含有量Aは、0.01質量%以上、0.1質量%以上、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、8質量%以上、10質量%以上、12質量%以上、又は、15質量%以上であってよい。含有量Aは、50質量%以下、50質量%未満、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、又は、20質量%以下であってよい。これらの観点から、含有量Aは、0.01~50質量%であってよい。
【0035】
本実施形態に係る重合体含有組成物は、砥粒、重合体P及び水以外の成分を含有してもよい。このような成分としては、水溶性高分子、pH調整剤、緩衝剤(pHを安定化させるための緩衝剤)、消泡剤(例えばシリコーン混和物)等が挙げられる。
【0036】
水溶性高分子は、水100g(25℃)に対して0.1g以上溶解する高分子として定義する。水溶性高分子としては、ポリグリセリン;アルギン酸、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロース、寒天、カードラン、プルラン等の多糖類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸の単独重合体(ポリアクリル酸等);前記重合体のアンモニウム塩又はアミン塩;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸と、アクリル酸アルキル(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等)、アクリル酸ヒドロキシアルキル(アクリル酸ヒドロキシエチル等)、メタクリル酸アルキル(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等)、メタクリル酸ヒドロキシアルキル(メタクリル酸ヒドロキシエチル等)、酢酸ビニル、ビニルアルコール等の単量体との共重合体(アクリル酸とアクリル酸アルキルとの共重合体等);前記共重合体のアンモニウム塩又はアミン塩などが挙げられる。
【0037】
pH調整剤としては、有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基等が挙げられる。有機酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、乳酸、マレイン酸、フタル酸、クエン酸、コハク酸等が挙げられる。無機酸としては、硝酸、硫酸、塩酸、リン酸、ホウ酸等が挙げられる。有機塩基としては、トリエチルアミン、ピリジン、ピペリジン、ピロリジン、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、キトサン等が挙げられる。無機塩基としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
【0038】
緩衝剤は、緩衝液(緩衝剤を含む液)として添加してよい。緩衝液としては、酢酸塩緩衝液、フタル酸塩緩衝液等が挙げられる。
【0039】
本実施形態に係る重合体含有組成物のpHは、4.0以上、4.5以上、又は、5.0以上であってよい。本実施形態に係る重合体含有組成物のpHは、7.0未満、6.5以下、又は、6.0以下であってよい。これらの観点から、本実施形態に係る重合体含有組成物のpHは、4.0以上7.0未満、4.0~6.0、又は、5.0~6.0であってよい。本実施形態に係る重合体含有組成物のpHは、後述の実施例に記載の方法により測定できる。
【0040】
本実施形態に係る重合体含有組成物の23℃における粘度は、下記の範囲であってよい。重合体含有組成物の粘度は、0.1mPa・s以上、0.5mPa・s以上、1mPa・s以上、3mPa・s以上、5mPa・s以上、8mPa・s以上、10mPa・s以上、又は、15mPa・s以上であってよい。重合体含有組成物の粘度は、50mPa・s以下、45mPa・s以下、40mPa・s以下、35mPa・s以下、30mPa・s以下、25mPa・s以下、20mPa・s以下、15mPa・s以下、又は、10mPa・s以下であってよい。これらの観点から、重合体含有組成物の粘度は、0.1~50mPa・sであってよい。重合体含有組成物の粘度は、後述の実施例に記載の方法により測定できる。
【0041】
<研磨液セット>
本実施形態に係る研磨液セットは、砥粒を含有する砥粒分散液と、本実施形態に係る重合体含有組成物と、を備える。本実施形態に係る研磨液セットにおける砥粒分散液と重合体含有組成物とを混合することにより研磨液を得ることができる。本実施形態に係る研磨液セットは、砥粒分散液と、重合体含有組成物と、砥粒、重合体P及び水以外の成分を含有する液と、を備えてもよい。
【0042】
砥粒分散液としては、砥粒が水に分散した分散液を用いることができる。砥粒分散液は、リン酸塩化合物、リン酸水素塩化合物等の分散剤(砥粒の分散剤)を含有してよい。砥粒分散液は、砥粒、重合体P及び水以外の上述の成分(水溶性高分子、pH調整剤、緩衝剤、消泡剤等)を含有してもよい。
【0043】
砥粒は、絶縁材料(酸化珪素等)の所望の研磨速度を得やすい観点から、セリウム酸化物、シリカ、アルミナ、ジルコニア及びイットリアからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよく、セリウム酸化物を含んでよい。セリウム酸化物は、CeO2(酸化セリウム(IV)、セリア)であってよく、Ce2O3(酸化セリウム(III))であってよい。
【0044】
砥粒の平均粒径は、絶縁材料(酸化珪素等)の研磨速度を向上させやすい観点から、10nm以上、50nm以上、100nm以上、150nm以上、200nm以上、又は、250nm以上であってよい。砥粒の平均粒径は、被研磨面に傷がつくことを抑制する観点から、1000nm以下、800nm以下、600nm以下、500nm以下、450nm以下、400nm以下、350nm以下、300nm以下、又は、250nm以下であってよい。これらの観点から、砥粒の平均粒径は、10~1000nmであってよい。砥粒の「平均粒径」とは、研磨液中の砥粒の平均粒径(D50)であり、砥粒の平均二次粒径を意味する。砥粒の平均粒径は、後述の実施例に記載の方法により測定できる。
【0045】
<研磨液>
本実施形態に係る研磨液は、砥粒と、重合体Pと、を含有する。本実施形態に係る研磨液は、CMP研磨液として用いることができる。本実施形態に係る研磨液は、酸化珪素を含む被研磨面を研磨するために使用することができる。本実施形態に係る研磨液は、酸化珪素及び窒化珪素を含む被研磨面を研磨するために使用することが可能であり、酸化珪素を窒化珪素に対して選択的に研磨するために使用することができる。
【0046】
本実施形態に係る研磨液は、砥粒と、重合体Pと、を混合することにより得られてよく、砥粒と、本実施形態に係る重合体含有組成物と、を混合することにより得られてよく、本実施形態に係る研磨液セットにおける砥粒分散液と重合体含有組成物とを混合することにより得られてよい。
【0047】
砥粒の含有量は、研磨液の全質量を基準として下記の範囲であってよい。砥粒の含有量は、絶縁材料(酸化珪素等)の研磨速度を向上させやすい観点から、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.15質量%以上、0.2質量%以上、0.25質量%以上、0.3質量%以上、0.35質量%以上、0.4質量%以上、又は、0.45質量%以上であってよい。砥粒の含有量は、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、0.8質量%以下、又は、0.5質量%以下であってよい。これらの観点から、砥粒の含有量は、0.01~20質量%であってよい。
【0048】
本実施形態に係る研磨液において、重合体Pとしては、一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を併用してもよい。例えば、二種類以上の重合体Pとしては、上述の第1の構造単位と第2の構造単位との含有割合が異なる重合体Pを組み合わせて使用することができる。
【0049】
重合体Pの含有量は、研磨液の全質量を基準として下記の範囲であってよい。重合体Pの含有量は、窒化珪素に対する酸化珪素の研磨選択性が向上しやすい観点から、0.01質量%以上、0.03質量%以上、0.05質量%以上、0.08質量%以上、0.1質量%以上、0.12質量%以上、又は、0.14質量%以上であってよい。重合体Pの含有量は、窒化珪素に対する酸化珪素の研磨選択性が向上しやすい観点から、10質量%以下、8質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、0.8質量%以下、0.5質量%以下、0.3質量%以下、又は、0.2質量%以下であってよい。これらの観点から、重合体Pの含有量は、0.01~10質量%であってよい。
【0050】
重合体Pの含有量は、砥粒100質量部に対して下記の範囲であってよい。重合体Pの含有量は、窒化珪素に対する酸化珪素の研磨選択性が向上しやすい観点から、1質量部以上、5質量部以上、10質量部以上、15質量部以上、20質量部以上、25質量部以上、又は、30質量部以上であってよい。重合体Pの含有量は、窒化珪素に対する酸化珪素の研磨選択性が向上しやすい観点から、60質量部以下、55質量部以下、50質量部以下、45質量部以下、40質量部以下、35質量部以下、又は、30質量部以下であってよい。これらの観点から、重合体Pの含有量は、1~60質量部であってよい。
【0051】
本実施形態に係る研磨液は、砥粒、重合体P及び水以外の上述の成分(水溶性高分子、pH調整剤、緩衝剤、消泡剤等)を含有してもよい。
【0052】
本実施形態に係る研磨液のpHは、窒化珪素に対する酸化珪素の研磨選択性が向上しやすい観点から、3.0以上、3.5以上、4.0以上、4.5以上、5.0以上、又は、5.4以上であってよい。本実施形態に係る研磨液のpHは、窒化珪素に対する酸化珪素の研磨選択性が向上しやすい観点から、7.0以下、7.0未満、6.5以下、6.0以下、又は、5.5以下であってよい。これらの観点から、本実施形態に係る研磨液のpHは、3.0~7.0であってよい。本実施形態に係る研磨液のpHは、後述の実施例に記載の方法により測定できる。
【0053】
<研磨方法>
本実施形態に係る研磨方法は、本実施形態に係る研磨液を用いて被研磨面を研磨する研磨工程を備える。研磨工程で用いられる研磨液は、砥粒と、重合体Pと、を混合することにより得られてよく、砥粒と、本実施形態に係る重合体含有組成物と、を混合することにより得られてよく、本実施形態に係る研磨液セットにおける砥粒分散液と重合体含有組成物とを混合することにより得られてよい。本実施形態に係る研磨方法は、例えば、被研磨面を有する基体の研磨方法である。
【0054】
被研磨面は、絶縁材料(酸化珪素等)を含んでよく、例えば、酸化珪素を含んでよい。被研磨面は、絶縁材料及びストッパ材料(窒化珪素、ポリシリコン等)を含んでよく、例えば、酸化珪素及び窒化珪素を含んでよい。本実施形態に係る研磨方法は、絶縁材料(酸化珪素等)及びストッパ材料(窒化珪素、ポリシリコン等)を含む被研磨面を有する基体の研磨方法であってもよい。基体は、例えば、絶縁材料を含む絶縁部材と、ストッパ材料を含むストッパとを有してよい。
【0055】
本実施形態に係る研磨方法は、絶縁材料(酸化珪素等)及びストッパ材料(窒化珪素、ポリシリコン等)を含む被研磨面の研磨方法であって、本実施形態に係る研磨液を用いて、絶縁材料をストッパ材料に対して選択的に研磨する研磨工程を備えてよく、本実施形態に係る研磨液を用いて、酸化珪素を窒化珪素に対して選択的に研磨する研磨工程を備えてよい。「材料Aを材料Bに対して選択的に研磨する」とは、同一研磨条件において、材料Aの研磨速度が材料Bの研磨速度よりも高いことをいう。酸化珪素を窒化珪素に対して選択的に研磨する場合、窒化珪素に対する酸化珪素の研磨選択比は、10以上、20以上、30以上、又は、35以上であってよい。
【0056】
研磨対象である基体としては、例えば、半導体素子製造に係る基板(例えば、STIパターン、ゲートパターン、配線パターン等が形成された半導体基板)上に被研磨材料が形成された基体が挙げられる。被研磨材料としては、酸化珪素等の絶縁材料(ストッパ材料を除く);窒化珪素、ポリシリコン等のストッパ材料などが挙げられる。被研磨材料は、単一の材料であってもよく、複数の材料であってもよい。複数の材料が被研磨面に露出している場合、それらを被研磨材料と見なすことができる。被研磨材料は、膜状(被研磨膜)であってもよい。絶縁部材の形状は、特に限定されず、例えば膜状(絶縁膜:酸化珪素膜等)である。ストッパの形状は、特に限定されず、例えば膜状(ストッパ膜:窒化珪素膜、ポリシリコン膜等)である。
【0057】
本実施形態に係る研磨液を用いて、基板上に形成された被研磨材料(例えば、酸化珪素膜等の絶縁膜)を研磨して余分な部分を除去することによって、被研磨材料の表面の凹凸を解消し、被研磨面の全体にわたって平滑な面を得ることができる。
【0058】
本実施形態に係る研磨液及び研磨方法では、凹凸パターンを有する基板と、当該基板の凸部上に配置されたストッパと、凹凸パターンの凹部を埋めるように基板及びストッパの上に配置された絶縁部材と、を有する基体(絶縁部材(例えば、少なくとも表面に酸化珪素を含む酸化珪素膜)と、絶縁部材の下層に配置されたストッパと、ストッパの下に配置された半導体基板とを有する基体)における絶縁部材を研磨することができる。このような基体では、ストッパが露出したときに研磨を停止させることにより、絶縁部材が過剰に研磨されることを防止できるため、絶縁部材の研磨後の平坦性を向上させることができる。ストッパを構成するストッパ材料は、絶縁材料よりも研磨速度が低い材料であり、窒化珪素、ポリシリコン等であってよい。
【0059】
本実施形態に係る研磨液及び研磨方法は、プリメタル絶縁膜の研磨にも使用できる。プリメタル絶縁膜としては、酸化珪素の他、例えば、リン-シリケートガラス、ボロン-リン-シリケートガラス、シリコンオキシフロリド、フッ化アモルファスカーボン等が使用できる。
【0060】
本実施形態に係る研磨液及び研磨方法は、酸化珪素等の絶縁材料以外の材料にも適用できる。このような材料としては、Hf系、Ti系、Ta系酸化物等の高誘電率材料;シリコン、アモルファスシリコン、SiC、SiGe、Ge、GaN、GaP、GaAs、有機半導体等の半導体材料;GeSbTe等の相変化材料;ITO等の無機導電材料;ポリイミド系、ポリベンゾオキサゾール系、アクリル系、エポキシ系、フェノール系等のポリマ樹脂材料などが挙げられる。
【0061】
本実施形態に係る研磨液及び研磨方法は、膜状の研磨対象だけでなく、ガラス、シリコン、SiC、SiGe、Ge、GaN、GaP、GaAs、サファイヤ又はプラスチック等から構成される各種基板にも適用できる。
【0062】
本実施形態に係る研磨液及び研磨方法は、半導体素子の製造だけでなく、TFT、有機EL等の画像表示装置;フォトマスク、レンズ、プリズム、光ファイバー、単結晶シンチレータ等の光学部品;光スイッチング素子、光導波路等の光学素子;固体レーザ、青色レーザLED等の発光素子;磁気ディスク、磁気ヘッド等の磁気記憶装置の製造に用いることができる。
【0063】
<部品の製造方法等>
本実施形態に係る部品の製造方法は、本実施形態に係る研磨方法により研磨された被研磨部材を用いて部品を得る部品作製工程を備える。本実施形態に係る部品は、本実施形態に係る部品の製造方法により得られる部品である。本実施形態に係る部品は、特に限定されず、電子部品(例えば、半導体パッケージ等の半導体部品)であってよく、ウエハ(例えば半導体ウエハ)であってよく、チップ(例えば半導体チップ)であってよい。本実施形態に係る部品の製造方法の一態様として、本実施形態に係る電子部品の製造方法では、本実施形態に係る研磨方法により研磨された被研磨部材を用いて電子部品を得る。本実施形態に係る部品の製造方法の一態様として、本実施形態に係る半導体部品の製造方法では、本実施形態に係る研磨方法により研磨された被研磨部材を用いて半導体部品(例えば半導体パッケージ)を得る。本実施形態に係る部品の製造方法は、部品作製工程の前に、本実施形態に係る研磨方法により被研磨部材を研磨する研磨工程を備えてよい。
【0064】
本実施形態に係る部品の製造方法は、部品作製工程の一態様として、本実施形態に係る研磨方法により研磨された被研磨部材を個片化する個片化工程を備えてよい。個片化工程は、例えば、本実施形態に係る研磨方法により研磨されたウエハ(例えば半導体ウエハ)をダイシングしてチップ(例えば半導体チップ)を得る工程であってよい。本実施形態に係る部品の製造方法の一態様として、本実施形態に係る電子部品の製造方法は、本実施形態に係る研磨方法により研磨された被研磨部材を個片化することにより電子部品(例えば半導体部品)を得る工程を備えてよい。本実施形態に係る部品の製造方法の一態様として、本実施形態に係る半導体部品の製造方法は、本実施形態に係る研磨方法により研磨された被研磨部材を個片化することにより半導体部品(例えば半導体パッケージ)を得る工程を備えてよい。
【0065】
本実施形態に係る部品の製造方法は、部品作製工程の一態様として、本実施形態に係る研磨方法により研磨された被研磨部材と他の被接続体とを接続(例えば電気的に接続)する接続工程を備えてよい。本実施形態に係る研磨方法により研磨された被研磨部材に接続される被接続体は、特に限定されず、本実施形態に係る研磨方法により研磨された被研磨部材であってよく、本実施形態に係る研磨方法により研磨された被研磨部材とは異なる被接続体であってよい。接続工程では、被研磨部材と被接続体とを直接接続(被研磨部材と被接続体とが接触した状態で接続)してよく、他の部材(導電部材等)を介して被研磨部材と被接続体とを接続してよい。接続工程は、個片化工程の前、個片化工程の後、又は、個片化工程の前後に行うことができる。
【0066】
接続工程は、本実施形態に係る研磨方法により研磨された被研磨部材の被研磨面と、被接続体と、を接続する工程であってよく、本実施形態に係る研磨方法により研磨された被研磨部材の接続面と、被接続体の接続面と、を接続する工程であってよい。被研磨部材の接続面は、本実施形態に係る研磨方法により研磨された被研磨面であってよい。接続工程により、被研磨部材及び被接続体を備える接続体を得ることができる。接続工程では、被研磨部材の接続面が金属部を有する場合、金属部に被接続体を接触させてよい。接続工程では、被研磨部材の接続面が金属部を有すると共に被接続体の接続面が金属部を有する場合、金属部同士を接触させてよい。金属部は、例えば銅を含んでよい。
【0067】
本実施形態に係るデバイス(例えば、半導体デバイス等の電子デバイス)は、本実施形態に係る研磨方法により研磨された被研磨部材、及び、本実施形態に係る部品からなる群より選ばれる少なくとも一種を備える。
【実施例0068】
以下、本開示を実施例に基づいて具体的に説明するが、本開示は当該実施例に限定されるものではない。
【0069】
<重合体の合成>
(実施例1:重合体1)
撹拌装置、温度計、冷却管及び滴下ロートを備えた反応容器に、イオン交換水12.5質量部、イソプロピルアルコール33.33質量部、アクリル酸(AA)2.20質量部、及び、硫酸鉄(III)n水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製、無水物として60~80質量%)0.0002質量部を仕込むことにより混合物を得た。次に、この混合物を攪拌すると共に78℃に昇温した。
【0070】
温度78℃で、過酸化水素水(重合開始剤、株式会社ADEKA製、濃度:35質量%、以下同様)0.54質量部、アスコルビン酸(還元剤、以下同様)0.34質量部、及び、イオン交換水2.5質量部を反応容器に投入した。同時に、過酸化水素水4.29質量部を10質量部のイオン交換水で希釈した溶液と、アスコルビン酸4.29質量部を15質量部のイオン交換水で溶解した溶液と、スチレン(St)39.81質量部、アクリル酸107.99質量部及びイソプロピルアルコール16.67質量部の混合液とを80~90℃でそれぞれ独立に6時間かけて滴下した。滴下終了から30分後に、過酸化水素水0.53質量部、アスコルビン酸0.34質量部、及び、イオン交換水2.5質量部を反応容器に投入した後、80~90℃で30分間攪拌した。
【0071】
温度を40℃に冷却し、アンモニア水(濃度:26質量%)89.5質量部を30分かけて滴下した後、30分攪拌した。次に、イオン交換水800質量部を反応容器に投入した後、30分攪拌した。そして、温度を25℃まで冷却することにより、重合体1を含有する重合体含有組成物(不揮発分含量(主に重合体1の含有量):15.1質量%、23℃における重合体含有組成物の粘度:10mPa・s、25℃における重合体含有組成物のpH:6.3、重合体1の重量平均分子量:46000、配合量のSt/AA(モル比):2/8)を得た。
【0072】
(実施例2:重合体2)
実施例1におけるスチレンを57.38質量部、滴下のアクリル酸を90.42質量部、アンモニア水を75.23質量部、アンモニア水添加後に投入するイオン交換水を790質量部に変更したこと以外は重合体1と同様に行うことにより、重合体2を含有する重合体含有組成物(不揮発分含量(主に重合体2の含有量):15.1質量%、23℃における重合体含有組成物の粘度:19mPa・s、25℃における重合体含有組成物のpH:6.4、重合体2の重量平均分子量:24000、配合量のSt/AA(モル比):3/7)を得た。
【0073】
(実施例3:重合体3)
実施例1におけるスチレンを20.75質量部、滴下のアクリル酸を127.05質量部、アンモニア水を104.98質量部、アンモニア水添加後に投入するイオン交換水を810質量部に変更したこと以外は重合体1と同様に行うことにより、重合体3を含有する重合体含有組成物(不揮発分含量(主に重合体3の含有量):15.0質量%、23℃における重合体含有組成物の粘度:15mPa・s、25℃における重合体含有組成物のpH:6.3、重合体3の重量平均分子量:56000、配合量のSt/AA(モル比):1/9)を得た。
【0074】
(実施例4:重合体4)
実施例1におけるスチレン、アクリル酸及びイソプロピルアルコールの混合液に1-チオグリセロール(連鎖移動剤)1.5質量部を混合したこと、並びに、アンモニア水添加後に投入するイオン交換水を810質量部に変更したこと以外は重合体1と同様に行うことにより、重合体4を含有する重合体含有組成物(不揮発分含量(主に重合体4の含有量):15.2質量%、23℃における重合体含有組成物の粘度:12mPa・s、25℃における重合体含有組成物のpH:6.2、重合体4の重量平均分子量:38000、配合量のSt/AA(モル比):2/8)を得た。
【0075】
(比較例1:重合体X1)
撹拌装置、温度計、冷却管及び滴下ロートを備えた反応容器に、イオン交換水12.5質量部、イソプロピルアルコール33.33質量部、及び、アクリル酸(AA)2.20質量部を仕込むことにより混合物を得た。次に、この混合物を攪拌すると共に78℃に昇温した。
【0076】
温度78℃で、過硫酸アンモニウム0.15質量部、及び、イオン交換水2.5質量部を反応容器に投入した。同時に、過硫酸アンモニウム1.2質量部を25質量部のイオン交換水で希釈した溶液と、スチレン(St)39.81質量部、アクリル酸107.99質量部及びイソプロピルアルコール16.67質量部の混合液とを80~90℃でそれぞれ独立に6時間かけて滴下した。滴下終了から30分後に、過硫酸アンモニウム0.15質量部、及び、イオン交換水2.5質量部を反応容器に投入した後、80~90℃で30分間攪拌した。
【0077】
温度を40℃に冷却し、アンモニア水(濃度:26質量%)89.5質量部を30分かけて滴下した後、30分攪拌した。次に、イオン交換水785質量部を反応容器に投入した後、30分攪拌した。そして、温度を25℃まで冷却することにより、重合体X1を含有する重合体含有組成物(不揮発分含量(主に重合体X1の含有量):14.9質量%、23℃における重合体含有組成物の粘度:15mPa・s、25℃における重合体含有組成物のpH:6.2、重合体X1の重量平均分子量:46000、配合量のSt/AA(モル比):2/8)を得た。
【0078】
<重合体含有組成物の分析>
(重合体含有組成物の不揮発分含量)
上述の不揮発分含量は次の手順で測定した。重合体含有組成物1gを直径5cmのアルミニウム皿上に載置した後、乾燥器内に入れた。乾燥機内の空気を循環させながら1気圧(1013hPa)、温度110℃で5時間乾燥させた後、残留成分の質量を測定した。乾燥前の重合体含有組成物の質量(1g)に対する乾燥後の残留成分の質量の割合を不揮発分含量(単位:質量%)として算出した。
【0079】
(重合体含有組成物の粘度)
上述の重合体含有組成物の粘度は、測定機器としてBL型粘度計を用いて温度23℃、回転数60rpmの条件で測定した。
【0080】
(重合体含有組成物のpH)
上述の重合体含有組成物のpHは、pHメータ(東亜ディーケーケー株式会社製、ガラス電極式水素イオン濃度指示計、HM-30G)を用いて25℃において測定した。
【0081】
(重合体の重量平均分子量)
上述の重合体の重量平均分子量は次の手順で測定した。次に、下記条件に基づき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、プルラン換算することで重合体の重量平均分子量(Mw)を測定した。
使用機器(検出器):昭和電工株式会社製、Shodex GP-101
カラム:昭和電工株式会社製、Shodex SB-807、806M、803
溶離液:0.1N硝酸ナトリウム水溶液
測定温度:40℃
流量:0.8mL/分
測定時間:60分
試料:重合体の含有量が0.1質量%になるように、溶離液と同じ組成の溶液で重合体含有組成物における重合体の含有量を調整し、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過して調製した試料
注入量:100μL
標準物質:昭和電工株式会社製、Shodex P-82
【0082】
<保存安定性の評価>
上述の重合体含有組成物の保存安定性を次の手順で評価した。重合体の含有量が0.53質量%となるように重合体含有組成物をイオン交換水で希釈した後、攪拌下で、pH調整剤として4.5質量%の酢酸水溶液を滴下することによりpHを5.1に調整し、評価用サンプルを調製した。この評価用サンプルを60℃の恒温槽に2週間(336時間)放置した。その後、評価用サンプルを目視することにより沈降物の有無を観察すると共に、評価用サンプルの白濁度を測定した。白濁度として、分光光度計(株式会社島津製作所製、商品名:UV-1900)及び光路長10mmの石英セルを用いて、波長700nmの光の透過率を測定した。沈降物が観察されず、且つ、透過率が95%以上である場合を「A」と判定し、沈降物が観察される場合、及び、透過率が95%未満である場合を「B」と判定した。結果を表1に示す。
【0083】
<研磨特性の評価>
(実施例1及び2)
上述の重合体1及び重合体2を用いたCMP研磨液の研磨特性を下記のとおり評価した。
【0084】
[研磨液の調製]
0.15質量部の重合体(重合体1又は重合体2)、0.5質量部の砥粒(セリア粒子)、0.06質量部の酢酸、0.003質量部の消泡剤(シリコーン混和物、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名:TSA780)、及び、イオン交換水を混合することによりpH5.4のCMP研磨液100質量部を調製した。0.15質量部の重合体は、重合体を含有する上述の重合体含有組成物を用いて供給した。
【0085】
[pHの測定]
上述のCMP研磨液のpHを下記の条件で測定した。実施例1及び2においてpHは5.4であった。
測定温度:25℃±0.5℃
測定装置:株式会社堀場製作所製、型番D-71
測定方法:標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液、pH:4.01(25℃);中性リン酸塩pH緩衝液、pH:6.86(25℃))を用いて2点校正した後、電極をCMP研磨液に入れて、3分以上経過して安定した後のpHを上述の測定装置により測定した。
【0086】
[砥粒の平均粒径の測定]
上述のCMP研磨液中の砥粒の平均粒径を次の手順で評価した。マイクロトラック・ベル株式会社製のMicrotrac MT3300EXII(商品名)内にCMP研磨液を適量投入し、砥粒の平均粒径を測定した。表示された平均粒径の値を平均粒径(平均二次粒径、D50)として得た。実施例1及び2において砥粒の平均粒径は250nmであった。
【0087】
[被研磨基板の研磨]
上述のCMP研磨液を用いて下記研磨条件で被研磨基板を研磨した。
【0088】
{CMP研磨条件}
研磨装置:Reflexion LK(APPLIED MATERIALS社製)
CMP研磨液の流量:250mL/min
被研磨基板:下記ブランケットウエハ
研磨パッド:独立気泡を有する発泡ポリウレタン樹脂(ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社製、型番IC1010)
研磨圧力:3.0psi(20.6kPa)
基板と研磨定盤の回転数:基板/研磨定盤=93/87rpm
研磨時間:酸化珪素膜は60秒間、窒化珪素膜は30秒間で研磨を行った。
ウエハの乾燥:研磨後、スピンドライヤで乾燥させた。
【0089】
{ブランケットウエハ}
パターンが形成されていないブランケットウエハとして、プラズマCVD法で形成された厚さ1μmの酸化珪素膜をシリコン基板上に有する基体と、CVD法で形成された厚さ0.2μmの窒化珪素膜をシリコン基板上に有する基体と、を用いた。
【0090】
[研磨速度の算出]
上述の条件で研磨したブランケットウエハの各被研磨膜(酸化珪素膜及び窒化珪素膜)の研磨速度を下記式より求めた。研磨前後での各被研磨膜の膜厚差は、光干渉式膜厚測定装置(NOVA社製、商品名:NOVA i500)を用いて求めた。また、窒化珪素に対する酸化珪素の研磨選択比(酸化珪素/窒化珪素)を算出した。結果を表1に示す。
研磨速度=(研磨前後での各被研磨膜の膜厚差[nm])/(研磨時間[min])
【0091】
(実施例3及び4)
上述の重合体3及び重合体4を用いたCMP研磨液の研磨特性を実施例1と同様に評価した結果、実施例1と同等の結果が確認された。
【0092】