(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085623
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】電源装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
H02M 3/00 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
H02M3/00 U
H02M3/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200229
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立川 展也
(72)【発明者】
【氏名】岡田 敦
(72)【発明者】
【氏名】池本 龍馬
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA20
5H730AS01
5H730AS05
5H730BB57
5H730BB86
5H730BB88
5H730CC01
5H730EE59
5H730FD01
5H730FG05
5H730FG07
5H730FG12
(57)【要約】
【課題】DCDCコンバータの内蔵FETのON/OFF速度の高速化に伴う電圧発生によるDCDCコンバータの入力電源端子の破壊を防ぐ。
【解決手段】商用電源から供給される交流電源を直流電源に変換する電源装置において、直流電圧を降圧する前段の電圧変換部と、前記前段の電圧変換部の後段に設けられ、前記前段の電圧変換部からの出力電圧を更に降圧する後段の電圧変換部と、前記前段の電圧変換部と前記後段の電圧変換部とを制御する電源制御部と、を備え、前記電源制御部は、前記後段の電圧変換部の監視結果に基づいて、前記前段の電圧変換部の出力電圧を低下させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源から供給される交流電源を直流電源に変換する電源装置において、
直流電圧を降圧する前段の電圧変換部と、
前記前段の電圧変換部の後段に設けられ、前記前段の電圧変換部からの出力電圧を更に降圧する後段の電圧変換部と、
前記前段の電圧変換部と前記後段の電圧変換部とを制御する電源制御部と、
を備え、
前記電源制御部は、前記後段の電圧変換部の監視結果に基づいて、前記前段の電圧変換部の出力電圧を低下させる、
ことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記電源制御部は、前記後段の電圧変換部の出力電圧のリップルの大きさに基づき、PFM(Pulse Frequency Modulation)モードで動作していると判定した場合に、前記前段の電圧変換部の出力電圧を低下させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記電源制御部は、前記後段の電圧変換部の出力電圧がPWM(Pulse Width Modulation)モード時の変化電圧幅の最小値と最大値とを下回らないような閾値電圧値を下回ったと判定した場合に、前記PFMモードで動作していると判定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記電源制御部は、前記後段の電圧変換部の出力電圧がPWM(Pulse Width Modulation)モード時の変化電圧幅の最小値と最大値とを下回らないような閾値電圧値を下回った回数が一定時間内に規定回数を超えたと判定した場合に、前記PFMモードで動作していると判定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の電源装置。
【請求項5】
前記電源制御部は、前記後段の電圧変換部の出力電圧がPWM(Pulse Width Modulation)モード時の変化電圧幅の最小値と最大値とを下回らないような閾値電圧値を上回っていると判定した場合に、前記前段の電圧変換部の出力電圧を上昇させる、
ことを特徴とする請求項3に記載の電源装置。
【請求項6】
前記電源制御部は、前記後段の電圧変換部のスイッチング動作に用いるスイッチング素子の電圧変化に基づき、PFM(Pulse Frequency Modulation)モードで動作していると判定した場合に、前記前段の電圧変換部の出力電圧を低下させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか一項に記載の電源装置と、
前記電源装置から電圧の供給を受けるデバイスと、
を備えることを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
複合機、プリンタといった画像形成装置を一例とする電子機器は、CPU(Central Processing Unit)、SoC(System on a Chip)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、MCU(Micro Controller Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)といった多様なデバイスを搭載しているため、多数種の電源を必要としている。このような電子機器は、消費電力の低減を目的として、DC(直流)電圧を別のDC(直流)電圧に変換するDCDCコンバータを複数使用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、DCDCコンバータは、精度向上のために、スイッチング周波数が上昇している。そのため、DCDCコンバータは、内蔵FET(Field Effect Transistor)のON/OFF速度が遅いままでは効率が悪くなることから、併せて内蔵FETのON/OFF速度を高速化する傾向にある。ところが、DCDCコンバータは、内蔵FETの高速なスイッチングにより、電流の高速変動(dI/dt)が発生すると、V=L×dI/dtの式に従い、寄生インダクタンスの影響を受けやすく、意図せぬ電圧が発生しやすくなる。このように寄生インダクタンスの影響を受けて発生する意図せぬ電圧は、DCDCコンバータの入力電源端子を破壊させてしまう、という問題がある。
【0004】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、DCDCコンバータの内蔵FETのON/OFF速度の高速化に伴う電圧発生によるDCDCコンバータの入力電源端子の破壊を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、商用電源から供給される交流電源を直流電源に変換する電源装置において、直流電圧を降圧する前段の電圧変換部と、前記前段の電圧変換部の後段に設けられ、前記前段の電圧変換部からの出力電圧を更に降圧する後段の電圧変換部と、前記前段の電圧変換部と前記後段の電圧変換部とを制御する電源制御部と、を備え、前記電源制御部は、前記後段の電圧変換部の監視結果に基づいて、前記前段の電圧変換部の出力電圧を低下させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、DCDCコンバータの内蔵FETのON/OFF速度の高速化に伴う電圧発生によるDCDCコンバータの入力電源端子の破壊を防ぐことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態にかかる画像形成装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、画像形成装置が有する電源供給ラインの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、DC電源部のハードウェア構成を示す図である。
【
図4】
図4は、第二のDCDCコンバータの動作例を示す説明図である。
【
図5】
図5は、閾値電圧値を例示的に示す図である。
【
図6】
図6は、電源制御部による出力電圧調整処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第2の実施の形態にかかる電源制御部による出力電圧調整処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、第3の実施の形態にかかるDCDCコンバータの動作例を示す説明図である。
【
図9】
図9は、電源制御部による出力電圧調整処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、電源装置および電子機器の実施の形態を詳細に説明する。本実施の形態にかかる電子機器は、複写機能、プリンタ機能、ファクシミリ機能といった複数の機能を1つの装置で実現させた複合機(MFP:Multi-Function Peripheral)と称される画像形成装置100である。
【0009】
画像形成装置100は、操作部が有するアプリケーション切替キーをユーザが操作することで、複写機能、プリンタ機能、ファクシミリ機能等の中から実行する機能を選択する。画像形成装置100は、複写機能が選択された場合には、複写モードに遷移し、プリンタ機能が選択された場合には、プリンタモードに遷移し、ファクシミリ機能が選択された場合には、ファクシミリモードに遷移する。例えば、画像形成装置100は、パーソナルコンピュータ等の外部装置から送信される印刷ジョブを受信する。そして、プリンタ機能が選択されてプリンタモードに遷移している場合、外部装置から受信した印刷ジョブに従って印刷処理を実行する。
【0010】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態にかかる画像形成装置100の構成の一例を示す図である。
図1に示すように、画像形成装置100は、自動原稿送り装置(ADF:Auto Document Feeder)101と、画像読取装置102と、プリンタユニット103と、を備える。
【0011】
ADF101は、原稿を供給するための原稿給紙トレイ、当該原稿給紙トレイから原稿を取り出すピックアップローラ、原稿給紙トレイから取り出された原稿を1枚ずつ分離して画像読取装置102に供給する分離ローラ、画像読取装置102により読み取られた原稿が排出される排出トレイ等を有する。
【0012】
画像読取装置102は、ADF101から供給される原稿が移動するコンタクトガラス、当該コンタクトガラスを通して原稿に光を照射する光源、原稿から反射した光を受光して電気信号に変換する光電変換素子等を有する。画像読取装置102は、その他に、複数の反射ミラー、集光レンズ、光電変換素子から出力される電気信号をデジタルデータに変換するA/Dコンバータ等を有する。本実施の形態では、画像読取装置102は、原稿から反射した光を電気信号に変換する反射型の装置としたが、原稿を透過した光を電気信号に変換する透過型の装置としても良い。
【0013】
プリンタユニット103は、電子写真方式により用紙に画像を形成する。具体的には、プリンタユニット103は、書込みユニット104、感光体ドラム105、現像ユニット106、搬送ベルト107、および定着ユニット108を有する。書込みユニット104は、エンジン制御部204(
図2参照)から入力される画像データに基づいて、感光体ドラム105の表面に対して光を照射して、その表面に静電潜像を形成する。感光体ドラム105は、その表面が、帯電器により一様に帯電されているものとする。現像ユニット106は、感光体ドラム105の表面に形成された静電潜像にトナーを付着させて現像化して、トナー像を形成する。
【0014】
感光体ドラム105の表面に形成されたトナー像は、搬送ベルト107により搬送される用紙等の記録媒体に転写される。定着ユニット108は、トナー像が転写された用紙に熱および圧力を加えて、トナー像を用紙に定着させる。トナー像が定着された用紙は、排紙トレイに排出される。
【0015】
ここで、画像形成装置100において複写機能を実行する場合の動作例について説明する。原稿の束がADF101の原稿給紙トレイにセットされ、操作部を用いて複写開始の指示が入力されると、原稿給紙トレイにセットされた原稿の束が、ピックアップローラによって取り出され、分離ローラにより分離されて1枚ずつ順に画像読取装置102のコンタクトガラス上に搬送される。画像読取装置102は、コンタクトガラス上に送られた原稿に光を照射し、原稿で反射した光を、光電変換素子によって電気信号に変換し、当該電気信号をA/Dコンバータによりデジタルデータに変換して、画像データとして出力する。
【0016】
画像読取装置102から出力される画像データは、エンジン制御部204(
図2参照)に送られ、シェーディング補正やガンマ補正等の各種画像処理が施され、書込みユニット104に画像情報として出力される。書込みユニット104は、エンジン制御部204(
図2参照)から入力される画像データに基づいて、感光体ドラム105の表面に光を照射して静電潜像を形成する。その後、感光体ドラム105は、現像ユニット106によりトナーが付着されて、その表面にトナー像が形成される。
【0017】
感光体ドラム105の表面に形成されたトナー像は、搬送ベルト107により搬送される用紙に押し付けられて転写される。感光体ドラム105の表面に残ったトナーは、クリーニングユニットにより除去される。トナー像が転写された用紙は、搬送ベルト107により定着ユニット108に搬送される。定着ユニット108は、用紙に熱を加えてトナーを溶かし、圧力を加えてトナーを用紙に定着させる。トナー像が定着された用紙は、排紙トレイに排出される。
【0018】
図2は、画像形成装置100が有する電源供給ラインの一例を示す図である。
【0019】
図2に示すように、画像形成装置100が有する電源供給ラインは、AC制御部201と、DC電源部202と、コントローラ部203と、エンジン制御部204と、を有する。AC制御部201は、商用電源S(外部電源の一例)から供給される交流電源(以下、AC電源と言う。電力の一例)を、定着ユニット108およびDC電源部202に供給する。定着ユニット108は、AC制御部201から供給されるAC電源を、当該定着ユニット108が有するヒータ(以下、定着ヒータと言う)に供給して、用紙に対する加熱を制御するオンオフ制御を実行する。
【0020】
DC電源部202(電源装置の一例)は、AC制御部201を介して商用電源Sから供給されるAC電源を、直流電源(以下、DC電源と言う)に変換して、画像形成装置100の各部(例えば、コントローラ部203、画像読取装置102、プリンタユニット103、給紙搬送部205)に供給する。給紙搬送部205は、搬送ベルト107を含み、用紙を搬送する機構である。
【0021】
コントローラ部203は、操作部を含み、DC電源部202から供給されるDC電源により駆動する。エンジン制御部204は、DC電源部202から供給されるDC電源を、画像読取装置102、プリンタユニット103、給紙搬送部205等の負荷部に供給して、当該負荷部を駆動させる。
【0022】
図3は、DC電源部202のハードウェア構成を示す図である。
【0023】
図3に示すように、DC電源部202は、AC制御部201を介して商用電源Sから供給されるAC(交流)電源をDC(直流)電源に変換して出力するコンバータ110と、当該コンバータ110から出力されるDC電源を所定電圧のDC電源に変換する第一のDCDCコンバータ111および第二のDCDCコンバータ112と、電源制御部113と、を備える。第一のDCDCコンバータ111および第二のDCDCコンバータ112は、電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor;FET)などの高速スイッチング素子を内蔵する。第一のDCDCコンバータ111および第二のDCDCコンバータ112は、スイッチング素子のON/OFF周期をコントロールすることで任意の電圧を得る。
【0024】
DC電源部202は、上述した画像形成装置100の各部(例えば、コントローラ部203、画像読取装置102、プリンタユニット103、給紙搬送部205)に含まれるものであって、DRAMやROMといったメモリ、Ethernet(登録商標) PHY、無線LAN、その他オプションといった様々なデバイス120~122を接続する。デバイス120~122は、例えば3.3Vや1.8Vといった低電圧の電源にて駆動する。
【0025】
第一のDCDCコンバータ111(前段の電圧変換部の一例)は、コンバータ110から24V等の比較的高い電圧供給を受け、5V等の低電圧に降圧する。また、第一のDCDCコンバータ111は、出力電圧を微調整するフィードバック回路を搭載している。
【0026】
第二のDCDCコンバータ112(後段の電圧変換部の一例)は、低電圧の降圧DCDCコンバータを使用する。第二のDCDCコンバータ112は、第一のDCDCコンバータ111の後段に設けられる。第二のDCDCコンバータ112は、第一のDCDCコンバータ111から受けた5V等の低電圧を、各デバイス120~122の仕様に合った電源電圧に降圧し、各デバイス120~122に供給する。
【0027】
ところで、第二のDCDCコンバータ112で使用する低電圧の降圧DCDCコンバータは、軽負荷時にはスイッチング損失を減少させるために、負荷電流の大きさによってPWM(Pulse Width Modulation(パルス幅変調))モードやPFM(Pulse Frequency Modulation(パルス周波数変調))モードといったように、内蔵FETのスイッチング周波数を調整する機能を有する。第二のDCDCコンバータ112は、モードの遷移状態によってその特性も変化する。
【0028】
ここで、
図4は第二のDCDCコンバータ112の動作例を示す説明図である。
【0029】
図4に示すように、第二のDCDCコンバータ112は、負荷電流が大きい時には、必要な電圧を安定的に供給するためにPWMモード(一定周期)でスイッチング動作を行う。このようにPWMモード(一定周期)でスイッチング動作を行う場合、出力電圧(Vout)のリップル(電圧変化)は比較的安定する。
【0030】
一方で、
図4に示すように、第二のDCDCコンバータ112は、負荷電流が小さい時、すなわち軽負荷時には、スイッチング損失を減少させるため、出力電圧(Vout)を監視しながら、PFMモード(周期変動)のように周波数を変化させる。このように出力電圧(Vout)を監視しながら、PFMモード(周期変動)のように周波数を変化させるスイッチング動作を行う場合、出力電圧(Vout)のリップル(電圧変化)が大きくなる。また、PFMモード(周期変動)のように周波数を変化させるスイッチング動作を行う場合、過渡的な電流変化も大きく、寄生インダクタンスによる意図せぬ電圧が発生しやすくなる。このように寄生インダクタンスの影響を受けて発生する意図せぬ電圧は、第二のDCDCコンバータ112の入力電源端子を破壊させてしまう。
【0031】
なお、ずっと低負荷状態であり、PFMモードのままであればスイッチング回数も多くなくデバイス故障につながる可能性もそこまで高くならないが、PWMモードとPFMモードをまたぐような負荷電流の変化が多く発生しているようなケースでは高速なスイッチング周波数でPFMモードの動きをするため、過電圧となる回数が増加するため故障が発生しやすい。
【0032】
ユーザの使用環境は様々であるため、省エネモードやスタンバイモードといったそれぞれの状態においても、各デバイスの負荷電流は異なる。また、PWMモードとPFMモードとの切り替えをまたぐ画像形成装置100と、そうでない画像形成装置100と、のようなデバイスのばらつきを考慮する必要がある。
【0033】
そこで、本実施形態では、電源制御部113が、画像形成装置100がPFMモードで動作しているか否かを、実動作を監視することで判断するようにしたものである。
【0034】
電源制御部113は、第二のDCDCコンバータ112を監視し、第二のDCDCコンバータ112の出力電圧(Vout)の検知を行う。また、電源制御部113は、第二のDCDCコンバータ112の監視結果に基づいて、第一のDCDCコンバータ111の出力電圧(Vout)を低下させる。なお、電源制御部113は、第一のDCDCコンバータ111および第二のDCDCコンバータ112のスイッチング周波数に合わせて制御を実施する必要があるため、応答性の高い(処理能力の高い)CPU(Central Processing Unit)やマイクロコンピュータを使用する。
【0035】
本実施形態においては、電源制御部113は、第二のDCDCコンバータ112の出力電圧(Vout)の変化を検出した場合に、第一のDCDCコンバータ111の出力電圧(Vout)を低下させることで、第二のDCDCコンバータ112の入力端子の破壊を防ぐ。
【0036】
具体的には、電源制御部113は、
図4に示すように、PWMモードで動作している場合には、第二のDCDCコンバータ112の出力電圧(Vout)が下回らないような電圧値である閾値電圧値Xを設定しておく。
【0037】
ここで、
図5は閾値電圧値Xを例示的に示す図である。
図5に示すように、電源制御部113は、PWMモード時の変化電圧幅の最小値(Min)と最大値(Max)とを下回らないような電圧値である閾値電圧値Xを設定する。また、閾値電圧値Xは、デバイス電源規格値の最小値(Min)、および、PFMモード時の変化電圧幅の最小値(Min)を上回る値となっている。
【0038】
次に、電源制御部113による出力電圧調整処理の流れについて説明する。
【0039】
ここで、
図6は電源制御部113による出力電圧調整処理の流れを示すフローチャートである。
図6に示すように、まず、電源制御部113は、第二のDCDCコンバータ112の出力電圧(Vout)を監視する(ステップS1)。
【0040】
電源制御部113は、第二のDCDCコンバータ112の出力電圧(Vout)が閾値電圧値Xを下回ったかを判定する(ステップS2)。
【0041】
電源制御部113は、第二のDCDCコンバータ112の出力電圧(Vout)が閾値電圧値Xを下回っていないと判定した場合(ステップS2のNo)、引き続き第二のDCDCコンバータ112の出力電圧を監視する(ステップS1)。
【0042】
一方、電源制御部113は、第二のDCDCコンバータ112の出力電圧(Vout)が閾値電圧値Xを下回ったと判定した場合(ステップS2のYes)、PFMモードであるとして、第一のDCDCコンバータ111のフィードバック回路のFB(FeedBack)端子の値を調節して出力電圧(Vout)を下げる(ステップS3)。電源制御部113は、第一のDCDCコンバータ111のFB端子の値を調節して出力電圧(Vout)を下げることで、第二のDCDCコンバータ112の入力電圧を下げることができる。
【0043】
なお、電源制御部113は、FB端子の値の調節方法として、直接電圧を印加する方法でもよく、複数の抵抗を用意して分圧方法を選択する方法でもよい。また、電源制御部113は、複数用意された第一のDCDCコンバータ111から一つの第一のDCDCコンバータ111を選択的に切り替えることで出力電圧(Vout)を調整するようにしてもよい。
【0044】
このように本実施形態によれば、出力電圧(Vout)のリップル(電圧変化)が大きくなるPFMモードであることを実動作の監視によって判断した場合に、第二のDCDCコンバータ112の入力電圧を下げるようにした。これにより、DCDCコンバータの内蔵FETのON/OFF速度の高速化に伴う電圧発生によるDCDCコンバータの入力電源端子の破壊を防ぐことができる。
【0045】
なお、電源制御部113は、第二のDCDCコンバータ112の出力電圧(Vout)が閾値電圧値Xを下回っていないと判定した場合(ステップS2のNo)、すなわち第二のDCDCコンバータ112の出力電圧が閾値電圧値Xを上回っている場合に、第一のDCDCコンバータ111の出力電圧(Vout)を上昇させる制御を実行するようにしてもよい。例えば、第一のDCDCコンバータ111から生成された電源をそのまま供給されているデバイス(例えばUSBオプション等)が存在するケースがある。このような場合においては、第一のDCDCコンバータ111の出力電圧(Vout)を下げたままでいるよりも、必要性に追従させて、第一のDCDCコンバータ111の出力電圧(Vout)を上昇させる制御を実行する方が安定動作に寄与することができる。
【0046】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0047】
第2の実施の形態は、第1の実施の形態とは、電源制御部113が一定回数以上のPWMモードとPFMモードとの切り替えが発生したかを判別するようにして、故障リスクの高い負荷条件に合わせた適切な構成を提供するようにした点が異なる。以下、第2の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0048】
DCDCコンバータは、瞬間的な電圧印加ではなく、過電圧が長時間印加されることにより、故障が発生しやすい。さらには、DCDCコンバータは、PFMモードであっても低い負荷電流が安定して継続している場合には故障発生しにくいが、PWMモードとPFMモードとの切り替えをまたぐような負荷電流変化をする場合には故障が発生しやすい。言い換えれば、DCDCコンバータは、PWMモードとPFMモードとの切り替え時は過渡応答性が悪くなるとともに、意図せぬ故障発生の要因となる可能性がある。
【0049】
そこで、第2の実施の形態においては、PWMモードとPFMモードとの切り替えをまたぐような負荷電流変化をする場合を考慮し、故障リスクの高い負荷条件に合わせた適切な構成を提供する。
【0050】
ここで、
図7は第2の実施の形態にかかる電源制御部113による出力電圧調整処理の流れを示すフローチャートである。
図7に示すように、まず、電源制御部113は、第二のDCDCコンバータ112の出力電圧(Vout)を監視する(ステップS1)。
【0051】
電源制御部113は、第二のDCDCコンバータ112の出力電圧(Vout)が閾値電圧値Xを下回ったかを判定する(ステップS2)。
【0052】
電源制御部113は、第二のDCDCコンバータ112の出力電圧(Vout)が閾値電圧値Xを下回っていないと判定した場合(ステップS2のNo)、引き続き第二のDCDCコンバータ112の出力電圧(Vout)を監視する(ステップS1)。
【0053】
一方、電源制御部113は、第二のDCDCコンバータ112の出力電圧(Vout)が閾値電圧値Xを下回ったと判定した場合(ステップS2のYes)、経過時間をカウントするタイマーをスタートさせるとともに(ステップS11)、カウントを“1”インクリメントする(ステップS12)。
【0054】
電源制御部113は、ステップS12でカウントした回数が一定時間内(例えば1s(秒)以内)に規定回数を超えたかを否かを判定する(ステップS13)。
【0055】
電源制御部113は、ステップS12でカウントした回数が一定時間内(例えば1s(秒)以内)に規定回数を超えていない場合(ステップS13のNo)、引き続き第二のDCDCコンバータ112の出力電圧(Vout)を監視する(ステップS1)。
【0056】
一方、電源制御部113は、ステップS12でカウントした回数が一定時間内(例えば1s(秒)以内)に規定回数を超えた場合(ステップS13のYes)、一定回数以上のPWMモードとPFMモードとの切り替えが発生したものとして、第一のDCDCコンバータ111のフィードバック回路のFB端子の値を調節して出力電圧(Vout)を下げる(ステップS3)。電源制御部113は、このように第一のDCDCコンバータ111のFB端子の値を調節して出力電圧(Vout)を下げることで、第二のDCDCコンバータ112の入力電圧を下げることができる。
【0057】
このように本実施形態によれば、第二のDCDCコンバータ112の出力電圧が閾値電圧値Xを下回った回数が一定時間内に規定回数を超えた場合に、一定回数以上のPWMモードとPFMモードとの切り替えが発生したものとして、第一のDCDCコンバータ111のFB端子の値を調節して出力電圧値を下げることで、第二のDCDCコンバータ112の入力電圧を下げるようにした。これにより、PWMモードとPFMモードとの切り替えをまたぐような負荷電流変化をする場合を考慮することができ、故障リスクの高い負荷条件に合わせた適切な構成を提供することができる。
【0058】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態について説明する。
【0059】
第3の実施の形態は、第1の実施の形態とは、第二のDCDCコンバータ112のスイッチング素子の電圧(Vsw)を監視するようにした点が異なる。以下、第2の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0060】
第1の実施の形態では、第二のDCDCコンバータ112の出力電圧(Vout)がPWMモードで動作している場合には下回らないような電圧値である閾値電圧値Xを設定するようにした。一方、負荷電流の変化が早く、DCDCコンバータの動作が追従できない場合に、PFMモードのまま高速でスイッチング動作をするケースがある。この場合、第二のDCDCコンバータ112の出力電圧(Vout)の低下による判定が難しくなる。そこで、第3の実施の形態においては、電源制御部113は、第二のDCDCコンバータ112のスイッチング素子の電圧(Vsw)を監視することで、第二のDCDCコンバータ112の動作状態の判定を行うようにしたものである。
【0061】
ここで、
図8は第3の実施の形態にかかるDCDCコンバータの動作例を示す説明図である。
【0062】
図8に示すように、第二のDCDCコンバータ112は、負荷電流が大きい時には、必要な電圧を安定的に供給するためにPWMモード(一定周期)でスイッチング動作を行う。このようにPWMモード(一定周期)でスイッチング動作を行う場合、出力電圧(Vout)のリップル(電圧変化)は比較的安定する。
【0063】
一方で、
図8に示すように、第二のDCDCコンバータ112は、負荷電流が小さい時、すなわち軽負荷時には、スイッチング損失を減少させるため、出力電圧(Vout)を監視しながら、PFMモード(周期変動)のように周波数を変化させる。このように出力電圧(Vout)を監視しながら、PFMモード(周期変動)のように周波数を変化させるスイッチング動作を行う場合、出力電圧(Vout)のリップル(電圧変化)が大きくなる。また、PFMモード(周期変動)のように周波数を変化させるスイッチング動作を行う場合、過渡的な電流変化も大きく、寄生インダクタンスによる意図せぬ電圧が発生しやすくなる。このように寄生インダクタンスの影響を受けて発生する意図せぬ電圧は、第二のDCDCコンバータ112の入力電源端子を破壊させてしまう。
【0064】
そこで、本実施形態では、電源制御部113は、第二のDCDCコンバータ112のスイッチング動作に用いるスイッチング素子の電圧を監視し、スイッチング素子の電圧変化によって、第二のDCDCコンバータ112の入力電圧を小さくする制御を実行する。
【0065】
具体的には、電源制御部113は、負荷電流の変化が早く、第二のDCDCコンバータ112の動作が追従できない場合において、PFMモードのまま高速でスイッチング動作をする場合、
図8に示すように、第二のDCDCコンバータ112のスイッチング素子の電圧(Vsw)について一定周期以上の電圧変化を検知可能な電圧値である閾値電圧値Yを設定しておく。
【0066】
ここで、
図9は電源制御部113による出力電圧調整処理の流れを示すフローチャートである。
図9に示すように、まず、電源制御部113は、第二のDCDCコンバータ112のスイッチング素子の電圧(Vsw)を監視する(ステップS21)。
【0067】
電源制御部113は、閾値電圧値Yを用い、第二のDCDCコンバータ112のスイッチング素子の電圧(Vsw)において一定周期以上の電圧変化があったかを判定する(ステップS22)。
【0068】
電源制御部113は、第二のDCDCコンバータ112のスイッチング素子の電圧(Vsw)において一定周期以上の電圧変化はないと判定した場合(ステップS22のNo)、引き続き第二のDCDCコンバータ112のスイッチング素子の電圧(Vsw)を監視する(ステップS21)。
【0069】
一方、電源制御部113は、第二のDCDCコンバータ112のスイッチング素子の電圧(Vsw)において一定周期以上の電圧変化があったと判定した場合(ステップS22のYes)、PFMモードであるとして、第一のDCDCコンバータ111のフィードバック回路のFB端子の値を調節して出力電圧(Vout)を下げる(ステップS23)。電源制御部113は、このように第一のDCDCコンバータ111のFB端子の値を調節して出力電圧(Vout)を下げることで、第二のDCDCコンバータ112の入力電圧を下げることができる。
【0070】
このように本実施形態によれば、第二のDCDCコンバータ112のスイッチング素子の電圧を監視することによって、第二のDCDCコンバータ112の入力電圧を小さくする制御を実行することにより、PFMモードのまま高速でスイッチング動作をする場合において、第二のDCDCコンバータ112の動作状態の判定を確実に行うことができる。
【0071】
上述したように、電源制御部113は、第一のDCDCコンバータ111および第二のDCDCコンバータ112のスイッチング周波数に合わせて制御を実施する必要があるため、応答性の高い(処理能力の高い)CPUやマイクロコンピュータを使用する。本実施形態の電源制御部113で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disc)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0072】
また、本実施形態の電源制御部113で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態の電源制御部113で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0073】
また、本実施形態の電源制御部113で実行されるプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0074】
なお、上記実施の形態では、本発明の電子機器を、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する複合機と称される画像形成装置100に適用した例を挙げて説明するが、複写機、プリンタ、スキャナ装置、ファクシミリ装置等の画像形成装置であればいずれにも適用することができる。
【0075】
なお、電子機器は、通信機能を備えた装置であれば、画像形成装置に限られない。電子機器は、例えば、PJ(Projector:プロジェクタ)、IWB(Interactive White Board:相互通信が可能な電子式の黒板機能を有する白板)、デジタルサイネージ等の出力装置、HUD(Head Up Display)装置、産業機械、撮像装置、集音装置、医療機器、ネットワーク家電、自動車(Connected Car)、ノートPC(Personal Computer)、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、ゲーム機、PDA(Personal Digital Assistant)、デジタルカメラ、ウェアラブルPCまたはデスクトップPC等であってもよい。
【符号の説明】
【0076】
100 電子機器
111 前段の電圧変換部
112 後段の電圧変換部
113 電源制御部
120~122 デバイス
202 電源装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0077】
【特許文献1】特開2017-028912号公報
【特許文献2】特開2015-097447号公報