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特開2024-85754感光性組成物、硬化物、及び硬化物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085754
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】感光性組成物、硬化物、及び硬化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/027 20060101AFI20240620BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240620BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20240620BHJP
   C08F 20/38 20060101ALI20240620BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
G03F7/027 502
G03F7/004 501
G03F7/004 502
C08F2/50
C08F20/38
G03F7/20 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200457
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】河津 信介
(72)【発明者】
【氏名】菅原 隆太郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 道仁
(72)【発明者】
【氏名】千坂 博樹
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
2H197CA03
2H197CA08
2H197CE01
2H197HA04
2H197HA05
2H225AC21
2H225AC31
2H225AC63
2H225AD07
2H225AN43P
2H225AP08P
2H225BA10P
2H225CA15
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
4J011PA07
4J011PB06
4J011PC02
4J011PC08
4J011QA03
4J011QA18
4J011QA40
4J011QA46
4J011SA61
4J011SA84
4J011TA06
4J011TA08
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA01
4J011WA05
4J100AK47Q
4J100AL08P
4J100AL08R
4J100BA02P
4J100BA08P
4J100BA12Q
4J100BA51P
4J100BC43P
4J100BC43Q
4J100BC44P
4J100BC65R
4J100CA04
4J100CA05
4J100CA23
4J100DA63
4J100FA03
4J100FA04
4J100FA18
4J100JA37
(57)【要約】      (修正有)
【課題】光が長時間当たった場合でも、透過率の低下が抑制される硬化物を形成し得る感光性組成物と、当該感光性組成物の硬化物と、当該感光性組成物を用いる硬化物の製造方法とを提供する。
【解決手段】光重合性化合物(A)と、金属化合物粒子(B)と、光重合開始剤(C)とを含む感光性組成物において、光重合性化合物(A)として、下記式(a-1):

(式(a-1)中、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基であり、R、及びRは、それぞれ独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基であり、p、及びqはそれぞれ独立に0又は1である。)で表されるベンゾフェノン化合物(A1)を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光重合性化合物(A)と、金属化合物粒子(B)と、光重合開始剤(C)とを含む感光性組成物であって、
前記感光性組成物は、溶媒(S)を含むか、又は含まず、
前記光重合性化合物(A)が、下記式(a-1):
【化1】
(式(a-1)中、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基であり、R、及びRは、それぞれ独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基であり、p、及びqはそれぞれ独立に0又は1である。)
で表されるベンゾフェノン化合物(A1)を含む、感光性組成物。
【請求項2】
前記感光性組成物の前記溶媒(S)の質量を除いた質量に対する、前記金属化合物粒子(B)の質量の比率が、5質量%以上70質量%以下である、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
前記金属化合物粒子(B)が、酸化チタン粒子、及び酸化ジルコニウム粒子から選択される1種以上を含む、請求項1又は2に記載の感光性組成物。
【請求項4】
前記光重合性化合物(A)が、単官能(メタ)アクリレート化合物(A2)、多官能(メタ)アクリレート化合物(A3)から選択される1種以上を含む、請求項1又は2に記載の感光性組成物。
【請求項5】
前記光重合性化合物(A)の質量に対する、前記ベンゾフェノン化合物(A1)の質量の比率が、2質量%以上50質量%以下である、請求項1又は2に記載の感光性組成物。
【請求項6】
光安定剤(D)をさらに含む、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項7】
前記光安定剤(D)が、ヒンダードアミン化合物を含む、請求項6に記載の感光性組成物。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の感光性組成物の硬化物。
【請求項9】
波長550nmにおける屈折率が1.61以上である、請求項8に記載の硬化物。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の感光性組成物を、形成される硬化物の形状に応じて成形することと、
成形された前記感光性組成物に対して露光することと、
を含む硬化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性組成物、当該感光性組成物の硬化物、及び当該感光性組成物を用いる硬化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光学部材の形成に、高屈折率材料が用いられている。高屈折材料として、例えば、酸化チタンや酸化ジルコニウム等の金属酸化物粒子を有機成分中に分散させた組成物が用いられている。
このような高屈折材料として、光重合性化合物と、金属化合物粒子と、有機溶媒を含まないか少量しか含まない感光性組成物において、光重合性化合物として、特定構造のスルフィド化合物を用いた感光性組成物が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/106683号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によれば、高屈折率の硬化物が形成可能であって、有機溶媒を含まないか少量しか含まないにもかかわらずインクジェット法が適用可能な液状の感光性組成物が得られることが開示されている。
【0005】
ところで、高屈折材料には、光が長時間当たることにより透過率が低下し、その結果視認性が低下するという問題があった。特許文献1に記載の感光性組成物についても、透過率の低下を抑制することについては、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、光が長時間当たった場合でも、透過率の低下が抑制される硬化物を形成し得る感光性組成物と、当該感光性組成物の硬化物と、当該感光性組成物を用いる硬化物の製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、光重合性化合物と、金属化合物粒子と、有機溶媒を含まないか少量しか含まない感光性組成物において、光重合性化合物として、特定構造のベンゾフェノン化合物を用いることにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
本発明の第1の態様は、光重合性化合物(A)と、金属化合物粒子(B)と、光重合開始剤(C)とを含む感光性組成物であって、
感光性組成物は、溶媒(S)を含むか、又は含まず、
光重合性化合物(A)が、下記式(a-1):
【化1】
(式(a-1)中、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基であり、R、及びRは、それぞれ独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基であり、p、及びqはそれぞれ独立に0又は1である。)
で表されるベンゾフェノン化合物(A1)を含む、感光性組成物である。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様にかかる感光性組成物の硬化物である。
【0010】
本発明の第3の態様は、第1の態様にかかる感光性組成物を、形成される硬化物の形状に応じて成形することと、
成形された感光性組成物に対して露光することと、
を含む硬化物の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光が長時間当たった場合でも、透過率の低下が抑制される硬化物を形成し得る感光性組成物と、当該感光性組成物の硬化物と、当該感光性組成物を用いる硬化物の製造方法とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
≪感光性組成物≫
感光性組成物は、光重合性化合物(A)と、金属化合物粒子(B)と、光重合開始剤(C)とを含む。感光性組成物は、溶媒(S)を含むか、又は含まない。
光重合性化合物(A)は、後述する式(a-1)で表されるベンゾフェノン化合物(A1)を含む。
【0013】
感光性組成物が、特定構造のベンゾフェノン化合物(A1)を含むため、光が長時間当たった場合でも、透過率の低下が抑制される硬化物を形成することができる。また、感光性組成物が、特定構造のベンゾフェノン化合物(A1)を含むため、黄変耐性及びクラック耐性にも優れる硬化物を形成することができる。
【0014】
以下、感光性組成物が含む、必須、又は任意の成分について説明する。
【0015】
<光重合性化合物(A)>
感光性組成物は、光重合性化合物(A)を含む。光重合性化合物(A)は、後述する式(a-1)で表されるベンゾフェノン化合物(A1)を含む。
【0016】
〔ベンゾフェノン化合物(A1)〕
ベンゾフェノン化合物(A1)は、下記式(a-1)で表される化合物である。
【化2】
式(a-1)中、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基であり、R、及びRは、それぞれ独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基であり、p、及びqはそれぞれ独立に0又は1である。
【0017】
、及びRは、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基である。R、及びRは、互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。ベンゾフェノン化合物(A1)の、合成や入手が容易であることから、R、及びRが同一であるのが好ましい。
【0018】
、及びRは、それぞれ独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基である。R、及びRは、互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。ベンゾフェノン化合物(A1)の、合成や入手が容易であることから、R、及びRが同一であるのが好ましい。
【0019】
、及びRとしての炭素原子数1以上5以下のアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。R、及びRとしての炭素原子数1以上5以下のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基が挙げられる。
【0020】
ベンゾフェノン化合物(A1)の好適な具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
【化3】
【0021】
〔その他の光重合性化合物〕
光重合性化合物(A)は、本発明の目的を阻害しない範囲で、ベンゾフェノン化合物(A1)以外のその他の光重合性化合物を含んでいてもよい。
その他の光重合性化合物としては、特に限定されず、従来公知の単官能(メタ)アクリレート化合物(A2)、多官能(メタ)アクリレート化合物(A3)、単官能光重合性化合物(A4)等を用いることができる。単官能光重合性化合物(A4)は、(メタ)アクリレート化合物に該当しない、単官能性の光重合性化合物である。
これらのその他の光重合性化合物は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0022】
なお、本出願の明細書及び特許請求の範囲において、「(メタ)アクリレート化合物」は、アクリレート化合物及びメタクリレート化合物の双方を意味する。
【0023】
〔単官能(メタ)アクリレート化合物(A2)〕
単官能(メタ)アクリレート化合物(A2)としては、(メタ)アクリロイル基を1つ有する従来公知の(メタ)アクリル酸エステルを特に限定なく用いることができる。単官能(メタ)アクリレート化合物(A2)の好適な具体例としては、下記式(a-2)で表される化合物が挙げられる。
【化4】
式(a-2)中、R10は、水素原子又はメチル基である。R11は、炭素原子数1以上3以下のアルキレン基である。R12は、単結合、酸素原子、又は硫黄原子である。R13は炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、フェノキシ基、又はフェニル基である。sは0以上5以下の整数である。tは、0、1又は2である。
【0024】
式(a-2)において、tが2である場合、複数のR11は、同一であっても異なっていてもよく、同一であるのが好ましい。tが2である場合、複数のR12は、同一であっても異なっていてもよく、同一であるのが好ましい。
【0025】
11は炭素原子数1以上3以下のアルキレン基である。アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基(エチレン基)、エタン-1,1-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、及びプロパン-2,2-ジイル基が挙げられる。これらの中では、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基(エチレン基)、プロパン-1,3-ジイル基、及びプロパン-1,2-ジイル基が好ましく、エタン-1,2-ジイル基(エチレン基)がより好ましい。
【0026】
12は、単結合、酸素原子、又は硫黄原子であり、単結合が好ましい。R12が単結合である場合、tは1が好ましい。
【0027】
13は、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、フェノキシ基、又はフェニル基であり、低粘度化の点で好ましくはアルキル基又は炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基である。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、及びtert-ブチル基が挙げられる。これらの中では、メチル基、及びエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、及びtert-ブチルオキシ基が挙げられる。これらの中では、メトキシ基、及びエトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
sは、0以上5以下の整数であり、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
【0028】
式(a-2)で表される化合物の好適な具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
【化5】
【0029】
【化6】
【0030】
式(a-2)で表される化合物以外の単官能(メタ)アクリレート化合物(A2)の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
〔多官能(メタ)アクリレート化合物(A3)〕
多官能(メタ)アクリレート化合物(A3)としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、グリセリントリアクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート(すなわち、トリレンジイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートと2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応物、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドメチレンエーテル、多価アルコールとN-メチロール(メタ)アクリルアミドとの縮合物等の多官能モノマーや、トリアクリルホルマール等が挙げられる。これらの多官能(メタ)アクリレート化合物(A3)は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0032】
〔単官能光重合性化合物(A4)〕
単官能光重合性化合物(A4)としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、クロトン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、tert-ブチルアクリルアミドスルホン酸等が挙げられる。これらの単官能光重合性化合物(A4)は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0033】
感光性組成物の溶媒(S)の質量を除いた質量に対する、ベンゾフェノン化合物(A1)の質量の比率は、1質量%以上30質量%以下が好ましく、1質量%以上25質量%以下がより好ましく、1質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。
光重合性化合物(A)がその他の光重合性化合物を含む場合、感光性組成物の溶媒(S)の質量を除いた質量に対する、その他の光重合性化合物の質量の比率は、25質量%以上80質量%以下が好ましく、30質量%以上70質量%以下がより好ましく、40質量%以上65質量%以下がさらに好ましい。なお、「その他の光重合性化合物の質量」は、その他の光重合性化合物が単独で含まれる場合、当該光重合性化合物の単独の質量を意味し、その他の光重合性化合物が2種以上組み合わせて含まれる場合、当該光重合性化合物の合計質量を意味する。
光重合性化合物(A)がベンゾフェノン化合物(A1)とその他の光重合性化合物とを組み合わせて含む場合、光重合性化合物(A)の質量に対する、ベンゾフェノン化合物(A1)の質量の比率は、1質量%以上50質量%以下が好ましく、2質量%以上50質量%以下がより好ましく、2.5質量%以上30質量%以下がさらに好ましい。
光重合性化合物(A)がベンゾフェノン化合物(A1)とその他の光重合性化合物とを組み合わせて含む場合、光重合性化合物(A)の質量に対する、その他の光重合性化合物の質量の比率は、50質量%以上99質量%以下が好ましく、50質量%以上98質量%以下がより好ましく、70質量%以上97.5質量%以下がさらに好ましい。
光重合性化合物(A)が、上記の範囲内の量のベンゾフェノン化合物(A1)、及び必要に応じてその他の光重合性化合物を含むことにより、感光性組成物が光硬化性に優れ、且つ低粘度であり、感光性組成物を用いて高い屈折率の硬化物を形成できる。
【0034】
<金属化合物粒子(B)>
感光性組成物は、金属化合物粒子(B)を含む。金属化合物粒子(B)は、酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、チタン酸バリウム粒子、酸化セリウム粒子、及び硫化亜鉛粒子からなる群より選択される少なくとも1種である。感光性組成物は、これらの金属化合物粒子(B)のうちの1種を単独で含んでもよく、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。これらの中でも、酸化チタン粒子、及び酸化ジルコニウム粒子からなる群より選択される1種以上を含むことが好ましい。
感光性組成物が、上記の金属化合物粒子(B)を含むことにより高屈折率を示す硬化物を形成できる。
【0035】
金属化合物粒子(B)の平均粒子径は、硬化物の透明性の点から、500nm以下が好ましく、2nm以上100nm以下が好ましい。
【0036】
感光性組成物中の金属化合物粒子(B)の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。感光性組成物中の金属化合物粒子(B)の含有量は、感光性組成物の溶媒(S)の質量を除いた質量に対して、5質量%以上70質量%以下が好ましく、30質量%以上70質量%以下がより好ましく、35質量%以上60質量%以下がさらに好ましい。
感光性組成物中の金属化合物粒子(B)の含有量が上記の範囲内であることにより、感光性組成物の粘度を所望する範囲内としつつ、高屈折率の硬化物を形成しやすい。
【0037】
<光重合開始剤(C)>
感光性組成物は、光重合開始剤(C)を含む。光重合開始剤(C)としては、特に限定されず、従来公知の光重合開始剤を用いることができる。
【0038】
光重合開始剤(C)として具体的には、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、O-アセチル-1-[6-(2-メチルベンゾイル)-9-エチル-9H-カルバゾール-3-イル]エタノンオキシム、O-アセチル-1-[6-(ピロール-2-イルカルボニル)-9-エチル-9Hカルバゾール-3-イル]エタノンオキシム、(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)[4-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ)-2-メチルフェニル]メタノンO-アセチルオキシム、2-(ベンゾイルオキシイミノ)-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1-オクタノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、4-ベンゾイル-4’-メチルジメチルスルフィド、4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4-ジメチルアミノ-2-エチルヘキシル安息香酸、4-ジメチルアミノ-2-イソアミル安息香酸、ベンジル-β-メトキシエチルアセタール、ベンジルジメチルケタール、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム、o-ベンゾイル安息香酸メチル、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、チオキサンテン、2-クロロチオキサンテン、2,4-ジエチルチオキサンテン、2-メチルチオキサンテン、2-イソプロピルチオキサンテン、2-エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、クメンヒドロペルオキシド、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)-イミダゾリル二量体、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、p,p’-ビスジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、p-tert-ブチルトリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルジクロロアセトフェノン、α,α-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、ジベンゾスベロン、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、9-フェニルアクリジン、1,7-ビス-(9-アクリジニル)ヘプタン、1,5-ビス-(9-アクリジニル)ペンタン、1,3-ビス-(9-アクリジニル)プロパン、p-メトキシトリアジン、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(フラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-n-ブトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン等が挙げられる。
【0039】
これらの光重合開始剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0040】
これらの中でも、光重合開始剤(C)としてオキシムエステル化合物、フォスフィンオキサイド化合物を用いることが、感度の点で特に好ましい。これらの化合物は、単独で用いてもよいし、併用してもよい。
【0041】
オキシムエステル化合物として、好ましい化合物の例としては、O-アセチル-1-[6-(2-メチルベンゾイル)-9-エチル-9H-カルバゾール-3-イル]エタノンオキシム、O-アセチル-1-[6-(ピロール-2-イルカルボニル)-9-エチル-9Hカルバゾール-3-イル]エタノンオキシム、及び、2-(ベンゾイルオキシイミノ)-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1-オクタノンが挙げられる。
【0042】
オキシムエステル化合物として、下記式(c1)で表されるオキシムエステル化合物を用いることも好ましい。
【化7】
(Rc1は、1価の有機基、アミノ基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基からなる群より選択される基であり、
n1は0以上4以下の整数であり、
n2は0、又は1であり、
c2は、置換基を有してもよいフェニル基、又は置換基を有してもよいカルバゾリル基であり、
c3は、水素原子、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基である。)
【0043】
式(c1)中、Rc1は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、種々の有機基から適宜選択される。Rc1が有機基である場合の好適な例としては、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、アミノ基、1、又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン-1-イル基、及びピペラジン-1-イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。n1が2以上4以下の整数である場合、Rc1は同一であっても異なっていてもよい。また、置換基の炭素原子数には、置換基がさらに有する置換基の炭素原子数を含まない。
【0044】
c1がアルキル基である場合、炭素原子数1以上20以下が好ましく、炭素原子数1以上6以下がより好ましい。また、Rc1がアルキル基である場合、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。Rc1がアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、及びイソデシル基等が挙げられる。また、Rc1がアルキル基である場合、アルキル基は炭素鎖中にエーテル結合(-O-)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルキル基の例としては、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、プロピルオキシエトキシエチル基、及びメトキシプロピル基等が挙げられる。
【0045】
c1がアルコキシ基である場合、炭素原子数1以上20以下が好ましく、炭素原子数1以上6以下がより好ましい。また、Rc1がアルコキシ基である場合、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。Rc1がアルコキシ基である場合の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec-ペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec-オクチルオキシ基、tert-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、イソノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、及びイソデシルオキシ基等が挙げられる。また、Rc1がアルコキシ基である場合、アルコキシ基は炭素鎖中にエーテル結合(-O-)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルコキシ基の例としては、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基、プロピルオキシエトキシエトキシ基、及びメトキシプロピルオキシ基等が挙げられる。
【0046】
c1がシクロアルキル基、又はシクロアルコキシ基である場合、炭素原子数3以上10以下が好ましく、炭素原子数3以上6以下がより好ましい。Rc1がシクロアルキル基である場合の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。Rc1がシクロアルコキシ基である場合の具体例としては、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、及びシクロオクチルオキシ基等が挙げられる。
【0047】
c1が飽和脂肪族アシル基、又は飽和脂肪族アシルオキシ基である場合、炭素原子数2以上20以下が好ましく、炭素原子数2以上7以下がより好ましい。Rc1が飽和脂肪族アシル基である場合の具体例としては、アセチル基、プロパノイル基、n-ブタノイル基、2-メチルプロパノイル基、n-ペンタノイル基、2,2-ジメチルプロパノイル基、n-ヘキサノイル基、n-ヘプタノイル基、n-オクタノイル基、n-ノナノイル基、n-デカノイル基、n-ウンデカノイル基、n-ドデカノイル基、n-トリデカノイル基、n-テトラデカノイル基、n-ペンタデカノイル基、及びn-ヘキサデカノイル基等が挙げられる。Rc1が飽和脂肪族アシルオキシ基である場合の具体例としては、アセチルオキシ基、プロパノイルオキシ基、n-ブタノイルオキシ基、2-メチルプロパノイルオキシ基、n-ペンタノイルオキシ基、2,2-ジメチルプロパノイルオキシ基、n-ヘキサノイルオキシ基、n-ヘプタノイルオキシ基、n-オクタノイルオキシ基、n-ノナノイルオキシ基、n-デカノイルオキシ基、n-ウンデカノイルオキシ基、n-ドデカノイルオキシ基、n-トリデカノイルオキシ基、n-テトラデカノイルオキシ基、n-ペンタデカノイルオキシ基、及びn-ヘキサデカノイルオキシ基等が挙げられる。
【0048】
c1がアルコキシカルボニル基である場合、炭素原子数2以上20以下が好ましく、炭素原子数2以上7以下がより好ましい。Rc1がアルコキシカルボニル基である場合の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、n-ブチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、sec-ブチルオキシカルボニル基、tert-ブチルオキシカルボニル基、n-ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、sec-ペンチルオキシカルボニル基、tert-ペンチルオキシカルボニル基、n-ヘキシルオキシカルボニル基、n-ヘプチルオキシカルボニル基、n-オクチルオキシカルボニル基、イソオクチルオキシカルボニル基、sec-オクチルオキシルカルボニル基、tert-オクチルオキシカルボニル基、n-ノニルオキシカルボニル基、イソノニルオキシカルボニル基、n-デシルオキシカルボニル基、及びイソデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0049】
c1がフェニルアルキル基である場合、炭素原子数7以上20以下が好ましく、炭素原子数7以上10以下がより好ましい。またRc1がナフチルアルキル基である場合、炭素原子数11以上20以下が好ましく、炭素原子数11以上14以下がより好ましい。Rc1がフェニルアルキル基である場合の具体例としては、ベンジル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基、及び4-フェニルブチル基が挙げられる。Rc1がナフチルアルキル基である場合の具体例としては、α-ナフチルメチル基、β-ナフチルメチル基、2-(α-ナフチル)エチル基、及び2-(β-ナフチル)エチル基が挙げられる。Rc1が、フェニルアルキル基、又はナフチルアルキル基である場合、Rc1は、フェニル基、又はナフチル基上にさらに置換基を有していてもよい。
【0050】
c1がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は、1以上のN、S、Oを含む5員又は6員の単環であるか、かかる単環同士、又はかかる単環とベンゼン環とが縮合したヘテロシクリル基である。ヘテロシクリル基が縮合環である場合は、縮合環を構成する単環の環数は3以下とする。かかるヘテロシクリル基を構成する複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、及びキノキサリン等が挙げられる。Rc1がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基はさらに置換基を有していてもよい。
【0051】
c1が1、又は2の有機基で置換されたアミノ基である場合、有機基の好適な例は、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素原子数2以上20以下の飽和脂肪族アシル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよい炭素原子数7以上20以下のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよい炭素原子数11以上20以下のナフチルアルキル基、及びヘテロシクリル基等が挙げられる。これらの好適な有機基の具体例は、Rc1と同様である。1、又は2の有機基で置換されたアミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、ジ-n-プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、n-ペンチルアミノ基、n-ヘキシルアミノ基、n-ヘプチルアミノ基、n-オクチルアミノ基、n-ノニルアミノ基、n-デシルアミノ基、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、アセチルアミノ基、プロパノイルアミノ基、n-ブタノイルアミノ基、n-ペンタノイルアミノ基、n-ヘキサノイルアミノ基、n-ヘプタノイルアミノ基、n-オクタノイルアミノ基、n-デカノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、α-ナフトイルアミノ基、及びβ-ナフトイルアミノ基等が挙げられる。
【0052】
c1に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合の置換基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数2以上7以下の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2以上7以下のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2以上7以下の飽和脂肪族アシルオキシ基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、モルホリン-1-イル基、ピペラジン-1-イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。Rc1に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1以上4以下が好ましい。Rc1に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0053】
c1の中では、化学的に安定であることや、立体的な障害が少なく、オキシムエステル化合物の合成が容易であること等から、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、及び炭素原子数2以上7以下の飽和脂肪族アシル基からなる群より選択される基が好ましく、炭素原子数1以上6以下のアルキルがより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0054】
c1がフェニル基に結合する位置は、Rc1が結合するフェニル基について、フェニル基とオキシムエステル化合物の主骨格との結合手の位置を1位とし、メチル基の位置を2位とする場合に、4位、又は5位が好ましく、5位がよりに好ましい。また、n1は、0以上3以下の整数が好ましく、0以上2以下の整数がより好ましく、0、又は1が特に好ましい。
【0055】
c2は、置換基を有してもよいフェニル基、又は置換基を有してもよいカルバゾリル基である。また、Rc2が置換基を有してもよいカルバゾリル基である場合、カルバゾリル基上の窒素原子は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基で置換されていてもよい。
【0056】
c2において、フェニル基、又はカルバゾリル基が有する置換基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。フェニル基、又はカルバゾリル基が、炭素原子上に有してもよい好適な置換基の例としては、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基、炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素原子数3以上10以下のシクロアルコキシ基、炭素原子数2以上20以下の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2以上20以下のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2以上20以下の飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいフェニルチオ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよい炭素原子数7以上20以下のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよい炭素原子数11以上20以下のナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基、アミノ基、1、又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン-1-イル基、及びピペラジン-1-イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。
【0057】
c2がカルバゾリル基である場合、カルバゾリル基が窒素原子上に有してもよい好適な置換基の例としては、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素原子数2以上20以下の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2以上20以下のアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素原子数7以上20以下のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素原子数11以上20以下のナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基等が挙げられる。これらの置換基の中では、炭素原子数1以上20以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数1以上6以下のアルキル基がより好ましく、エチル基が特に好ましい。
【0058】
フェニル基、又はカルバゾリル基が有してもよい置換基の具体例について、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、及び1、又は2の有機基で置換されたアミノ基に関しては、Rc1と同様である。
【0059】
c2において、フェニル基、又はカルバゾリル基が有する置換基に含まれるフェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合の置換基の例としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基;炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基;炭素原子数2以上7以下の飽和脂肪族アシル基;炭素原子数2以上7以下のアルコキシカルボニル基;炭素原子数2以上7以下の飽和脂肪族アシルオキシ基;フェニル基;ナフチル基;ベンゾイル基;ナフトイル基;炭素原子数1以上6以下のアルキル基、モルホリン-1-イル基、ピペラジン-1-イル基、及びフェニル基からなる群より選択される基により置換されたベンゾイル基;炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基;炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有するジアルキルアミノ基;モルホリン-1-イル基;ピペラジン-1-イル基;ハロゲン;ニトロ基;シアノ基が挙げられる。フェニル基、又はカルバゾリル基が有する置換基に含まれるフェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1以上4以下が好ましい。フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0060】
c2の中では、感度に優れる光重合開始剤を得やすい点から、下記式(c2)、又は(c3)で表される基が好ましく、下記式(c2)で表される基がより好ましく、下記式(c2)で表される基であって、AがSである基が特に好ましい。
【0061】
【化8】
(Rc4は、1価の有機基、アミノ基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基からなる群より選択される基であり、AはS又はOであり、n3は、0以上4以下の整数である。)
【0062】
【化9】
(Rc5及びRc6は、それぞれ、1価の有機基である。)
【0063】
式(c2)におけるRc4が有機基である場合、本発明の目的を阻害しない範囲で、種々の有機基から選択できる。式(c2)においてRc4が有機基である場合の好適な例としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基;炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基;炭素原子数2以上7以下の飽和脂肪族アシル基;炭素原子数2以上7以下のアルコキシカルボニル基;炭素原子数2以上7以下の飽和脂肪族アシルオキシ基;フェニル基;ナフチル基;ベンゾイル基;ナフトイル基;炭素原子数1以上6以下のアルキル基、モルホリン-1-イル基、ピペラジン-1-イル基、及びフェニル基からなる群より選択される基により置換されたベンゾイル基;炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基;炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有するジアルキルアミノ基;モルホリン-1-イル基;ピペラジン-1-イル基;ハロゲン;ニトロ基;シアノ基が挙げられる。
【0064】
c4の中では、ベンゾイル基;ナフトイル基;炭素原子数1以上6以下のアルキル基、モルホリン-1-イル基、ピペラジン-1-イル基、及びフェニル基からなる群より選択される基により置換されたベンゾイル基;ニトロ基が好ましく、ベンゾイル基;ナフトイル基;2-メチルフェニルカルボニル基;4-(ピペラジン-1-イル)フェニルカルボニル基;4-(フェニル)フェニルカルボニル基がより好ましい。
【0065】
また、式(c2)において、n3は、0以上3以下の整数が好ましく、0以上2以下の整数がより好ましく、0、又は1であるのが特に好ましい。n3が1である場合、Rc4の結合する位置は、Rc4が結合するフェニル基が酸素原子又は硫黄原子と結合する結合手に対して、パラ位であるのが好ましい。
【0066】
式(c3)におけるRc5は、本発明の目的を阻害しない範囲で、種々の有機基から選択できる。Rc5の好適な例としては、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素原子数2以上20以下の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2以上20以下のアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素原子数7以上20以下のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素原子数11以上20以下のナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基等が挙げられる。
【0067】
c5の中では、炭素原子数1以上20以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数1以上6以下のアルキル基がより好ましく、エチル基が特に好ましい。
【0068】
式(c3)におけるRc6は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、種々の有機基から選択できる。Rc6として好適な基の具体例としては、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリル基が挙げられる。Rc6として、これらの基の中では置換基を有してもよいフェニル基がより好ましく、2-メチルフェニル基が特に好ましい。
【0069】
c4、Rc5、又はRc6に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合の置換基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数2以上7以下の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2以上7以下のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2以上7以下の飽和脂肪族アシルオキシ基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、モルホリン-1-イル基、ピペラジン-1-イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。Rc4、Rc5、又はRc6に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1以上4以下が好ましい。Rc4、Rc5、又はRc6に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0070】
式(c1)におけるRc3は、水素原子、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基である。Rc3としては、メチル基、又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0071】
式(c1)で表されるオキシムエステル化合物の中でも特に好適な化合物としては、下記のPI-1~PI-42が挙げられる。
【化10】
【0072】
【化11】
【0073】
【化12】
【0074】
【化13】
【0075】
【化14】
【0076】
【化15】
【0077】
また、下記式(c4)で表されるオキシムエステル化合物も、光重合開始剤(C)として好ましい。
【0078】
【化16】
(Rc7は水素原子、ニトロ基又は1価の有機基であり、Rc8及びRc9は、それぞれ、置換基を有してもよい鎖状アルキル基、置換基を有してもよい環状有機基、又は水素原子であり、Rc8とRc9とは相互に結合して環を形成してもよく、Rc10は1価の有機基であり、Rc11は、水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1以上11以下のアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、n4は0以上4以下の整数であり、n5は0又は1である。)
【0079】
式(c4)中、Rc7は、水素原子、ニトロ基又は1価の有機基である。Rc7は、式(c4)中のフルオレン環上で、-(CO)n5-で表される基に結合する6員芳香環とは、異なる6員芳香環に結合する。式(c4)中、Rc7のフルオレン環に対する結合位置は特に限定されない。式(c4)で表される化合物が1以上のRc7を有する場合、式(c4)で表される化合物の合成が容易であること等から、1以上のRc7のうちの1つがフルオレン環中の2位に結合するのが好ましい。Rc7が複数である場合、複数のRc7は同一であっても異なっていてもよい。
【0080】
c7が有機基である場合、Rc7は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、種々の有機基から適宜選択される。Rc7が有機基である場合の好適な例としては、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基、1、又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン-1-イル基、及びピペラジン-1-イル基等が挙げられる。
【0081】
c7がアルキル基である場合、アルキル基の炭素原子数は、1以上20以下が好ましく、1以上6以下がより好ましい。また、Rc7がアルキル基である場合、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。Rc7がアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、及びイソデシル基等が挙げられる。また、Rc7がアルキル基である場合、アルキル基は炭素鎖中にエーテル結合(-O-)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルキル基の例としては、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、プロピルオキシエトキシエチル基、及びメトキシプロピル基等が挙げられる。
【0082】
c7がアルコキシ基である場合、アルコキシ基の炭素原子数は、1以上20以下が好ましく、1以上6以下がより好ましい。また、Rc7がアルコキシ基である場合、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。Rc7がアルコキシ基である場合の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec-ペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec-オクチルオキシ基、tert-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、イソノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、及びイソデシルオキシ基等が挙げられる。また、Rc7がアルコキシ基である場合、アルコキシ基は炭素鎖中にエーテル結合(-O-)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルコキシ基の例としては、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基、プロピルオキシエトキシエトキシ基、及びメトキシプロピルオキシ基等が挙げられる。
【0083】
c7がシクロアルキル基又はシクロアルコキシ基である場合、シクロアルキル基又はシクロアルコキシ基の炭素原子数は、3以上10以下が好ましく、3以上6以下がより好ましい。Rc7がシクロアルキル基である場合の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。Rc7がシクロアルコキシ基である場合の具体例としては、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、及びシクロオクチルオキシ基等が挙げられる。
【0084】
c7が飽和脂肪族アシル基又は飽和脂肪族アシルオキシ基である場合、飽和脂肪族アシル基又は飽和脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、2以上21以下が好ましく、2以上7以下がより好ましい。Rc7が飽和脂肪族アシル基である場合の具体例としては、アセチル基、プロパノイル基、n-ブタノイル基、2-メチルプロパノイル基、n-ペンタノイル基、2,2-ジメチルプロパノイル基、n-ヘキサノイル基、n-ヘプタノイル基、n-オクタノイル基、n-ノナノイル基、n-デカノイル基、n-ウンデカノイル基、n-ドデカノイル基、n-トリデカノイル基、n-テトラデカノイル基、n-ペンタデカノイル基、及びn-ヘキサデカノイル基等が挙げられる。Rc7が飽和脂肪族アシルオキシ基である場合の具体例としては、アセチルオキシ基、プロパノイルオキシ基、n-ブタノイルオキシ基、2-メチルプロパノイルオキシ基、n-ペンタノイルオキシ基、2,2-ジメチルプロパノイルオキシ基、n-ヘキサノイルオキシ基、n-ヘプタノイルオキシ基、n-オクタノイルオキシ基、n-ノナノイルオキシ基、n-デカノイルオキシ基、n-ウンデカノイルオキシ基、n-ドデカノイルオキシ基、n-トリデカノイルオキシ基、n-テトラデカノイルオキシ基、n-ペンタデカノイルオキシ基、及びn-ヘキサデカノイルオキシ基等が挙げられる。
【0085】
c7がアルコキシカルボニル基である場合、アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2以上20以下が好ましく、2以上7以下がより好ましい。Rc7がアルコキシカルボニル基である場合の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、n-ブチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、sec-ブチルオキシカルボニル基、tert-ブチルオキシカルボニル基、n-ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、sec-ペンチルオキシカルボニル基、tert-ペンチルオキシカルボニル基、n-ヘキシルオキシカルボニル基、n-ヘプチルオキシカルボニル基、n-オクチルオキシカルボニル基、イソオクチルオキシカルボニル基、sec-オクチルオキシカルボニル基、tert-オクチルオキシカルボニル基、n-ノニルオキシカルボニル基、イソノニルオキシカルボニル基、n-デシルオキシカルボニル基、及びイソデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0086】
c7がフェニルアルキル基である場合、フェニルアルキル基の炭素原子数は、7以上20以下が好ましく、7以上10以下がより好ましい。また、Rc7がナフチルアルキル基である場合、ナフチルアルキル基の炭素原子数は、11以上20以下が好ましく、11以上14以下がより好ましい。Rc7がフェニルアルキル基である場合の具体例としては、ベンジル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基、及び4-フェニルブチル基が挙げられる。Rc7がナフチルアルキル基である場合の具体例としては、α-ナフチルメチル基、β-ナフチルメチル基、2-(α-ナフチル)エチル基、及び2-(β-ナフチル)エチル基が挙げられる。Rc7が、フェニルアルキル基、又はナフチルアルキル基である場合、Rc7は、フェニル基、又はナフチル基上にさらに置換基を有していてもよい。
【0087】
c7がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は、1以上のN、S、Oを含む5員又は6員の単環であるか、かかる単環同士、又はかかる単環とベンゼン環とが縮合したヘテロシクリル基である。ヘテロシクリル基が縮合環である場合は、縮合環を構成する単環の環数は3以下とする。ヘテロシクリル基は、芳香族基(ヘテロアリール基)であっても、非芳香族基であってもよい。かかるヘテロシクリル基を構成する複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、キノキサリン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピペリジン、テトラヒドロピラン、及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。Rc7がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基はさらに置換基を有していてもよい。
【0088】
c7がヘテロシクリルカルボニル基である場合、ヘテロシクリルカルボニル基に含まれるヘテロシクリル基は、Rc7がヘテロシクリル基である場合と同様である。
【0089】
c7が1又は2の有機基で置換されたアミノ基である場合、有機基の好適な例は、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素原子数2以上21以下の飽和脂肪族アシル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよい炭素原子数7以上20以下のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよい炭素原子数11以上20以下のナフチルアルキル基、及びヘテロシクリル基等が挙げられる。これらの好適な有機基の具体例は、Rc7と同様である。1、又は2の有機基で置換されたアミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、ジ-n-プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、n-ペンチルアミノ基、n-ヘキシルアミノ基、n-ヘプチルアミノ基、n-オクチルアミノ基、n-ノニルアミノ基、n-デシルアミノ基、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、アセチルアミノ基、プロパノイルアミノ基、n-ブタノイルアミノ基、n-ペンタノイルアミノ基、n-ヘキサノイルアミノ基、n-ヘプタノイルアミノ基、n-オクタノイルアミノ基、n-デカノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、α-ナフトイルアミノ基、及びβ-ナフトイルアミノ基等が挙げられる。
【0090】
c7に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合の置換基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数2以上7以下の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2以上7以下のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2以上7以下の飽和脂肪族アシルオキシ基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、モルホリン-1-イル基、ピペラジン-1-イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。Rc7に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1以上4以下が好ましい。Rc7に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0091】
以上説明した基の中でも、Rc7としては、ニトロ基、又はRc12-CO-で表される基であると、感度が向上する傾向があり好ましい。Rc12は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、種々の有機基から選択できる。Rc12として好適な基の例としては、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリル基が挙げられる。Rc12として、これらの基の中では、2-メチルフェニル基、チオフェン-2-イル基、及びα-ナフチル基が特に好ましい。
また、Rc7が水素原子であると、透明性が良好となる傾向があり好ましい。なお、Rc7が水素原子であり且つRc10が後述の式(c4a)又は(c4b)で表される基であると透明性はより良好となる傾向がある。
【0092】
式(c4)中、Rc8及びRc9は、それぞれ、置換基を有してもよい鎖状アルキル基、置換基を有してもよい環状有機基、又は水素原子である。Rc8とRc9とは相互に結合して環を形成してもよい。これらの基の中では、Rc8及びRc9として、置換基を有してもよい鎖状アルキル基が好ましい。Rc8及びRc9が置換基を有してもよい鎖状アルキル基である場合、鎖状アルキル基は直鎖アルキル基でも分岐鎖アルキル基でもよい。
【0093】
c8及びRc9が置換基を持たない鎖状アルキル基である場合、鎖状アルキル基の炭素原子数は、1以上20以下が好ましく、1以上10以下がより好ましく、1以上6以下が特に好ましい。Rc8及びRc9が鎖状アルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、及びイソデシル基等が挙げられる。また、Rc8及びRc9がアルキル基である場合、アルキル基は炭素鎖中にエーテル結合(-O-)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルキル基の例としては、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、プロピルオキシエトキシエチル基、及びメトキシプロピル基等が挙げられる。
【0094】
c8及びRc9が置換基を有する鎖状アルキル基である場合、鎖状アルキル基の炭素原子数は、1以上20以下が好ましく、1以上10以下がより好ましく、1以上6以下が特に好ましい。この場合、置換基の炭素原子数は、鎖状アルキル基の炭素原子数に含まれない。置換基を有する鎖状アルキル基は、直鎖状であるのが好ましい。
アルキル基が有してもよい置換基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。置換基の好適な例としては、シアノ基、ハロゲン原子、環状有機基、及びアルコキシカルボニル基が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。これらの中では、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましい。環状有機基としては、シクロアルキル基、芳香族炭化水素基、ヘテロシクリル基が挙げられる。シクロアルキル基の具体例としては、Rc7がシクロアルキル基である場合の好適な例と同様である。芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アントリル基、及びフェナントリル基等が挙げられる。ヘテロシクリル基の具体例としては、Rc7がヘテロシクリル基である場合の好適な例と同様である。Rc7がアルコキシカルボニル基である場合、アルコキシカルボニル基に含まれるアルコキシ基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状が好ましい。アルコキシカルボニル基に含まれるアルコキシ基の炭素原子数は、1以上10以下が好ましく、1以上6以下がより好ましい。
【0095】
鎖状アルキル基が置換基を有する場合、置換基の数は特に限定されない。好ましい置換基の数は鎖状アルキル基の炭素原子数に応じて変わる。置換基の数は、典型的には、1以上20以下であり、1以上10以下が好ましく、1以上6以下がより好ましい。
【0096】
c8及びRc9が環状有機基である場合、環状有機基は、脂環式基であっても、芳香族基であってもよい。環状有機基としては、脂肪族環状炭化水素基、芳香族炭化水素基、ヘテロシクリル基が挙げられる。Rc8及びRc9が環状有機基である場合に、環状有機基が有してもよい置換基は、Rc8及びRc9が鎖状アルキル基である場合と同様である。
【0097】
c8及びRc9が芳香族炭化水素基である場合、芳香族炭化水素基は、フェニル基であるか、複数のベンゼン環が炭素-炭素結合を介して結合して形成される基であるか、複数のベンゼン環が縮合して形成される基であるのが好ましい。芳香族炭化水素基が、フェニル基であるか、複数のベンゼン環が結合又は縮合して形成される基である場合、芳香族炭化水素基に含まれるベンゼン環の環数は特に限定されず、3以下が好ましく、2以下がより好ましく、1が特に好ましい。芳香族炭化水素基の好ましい具体例としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アントリル基、及びフェナントリル基等が挙げられる。
【0098】
c8及びRc9が脂肪族環状炭化水素基である場合、脂肪族環状炭化水素基は、単環式であっても多環式であってもよい。脂肪族環状炭化水素基の炭素原子数は特に限定されないが、3以上20以下が好ましく、3以上10以下がより好ましい。単環式の環状炭化水素基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基、及びアダマンチル基等が挙げられる。
【0099】
c8及びRc9がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は、1以上のN、S、Oを含む5員又は6員の単環であるか、かかる単環同士、又はかかる単環とベンゼン環とが縮合したヘテロシクリル基である。ヘテロシクリル基が縮合環である場合は、縮合環を構成する単環の環数は3以下とする。ヘテロシクリル基は、芳香族基(ヘテロアリール基)であっても、非芳香族基であってもよい。かかるヘテロシクリル基を構成する複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、キノキサリン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピペリジン、テトラヒドロピラン、及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0100】
c8とRc9とは相互に結合して環を形成してもよい。Rc8とRc9とが形成する環からなる基は、シクロアルキリデン基であるのが好ましい。Rc8とRc9とが結合してシクロアルキリデン基を形成する場合、シクロアルキリデン基を構成する環は、5員環又は6員環であるのが好ましく、5員環であるのがより好ましい。
【0101】
c8とRc9とが結合して形成する基がシクロアルキリデン基である場合、シクロアルキリデン基は、1以上の他の環と縮合していてもよい。シクロアルキリデン基と縮合していてもよい環の例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピリジン環、ピラジン環、及びピリミジン環等が挙げられる。
【0102】
以上説明したRc8及びRc9の中でも好適な基の例としては、式-A-Aで表される基が挙げられる。式中、Aは直鎖アルキレン基であり、Aは、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、環状有機基、又はアルコキシカルボニル基である挙げられる。
【0103】
の直鎖アルキレン基の炭素原子数は、1以上10以下が好ましく、1以上6以下がより好ましい。Aがアルコキシ基である場合、アルコキシ基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状が好ましい。アルコキシ基の炭素原子数は、1以上10以下が好ましく、1以上6以下がより好ましい。Aがハロゲン原子である場合、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子がより好ましい。Aがハロゲン化アルキル基である場合、ハロゲン化アルキル基に含まれるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子がより好ましい。ハロゲン化アルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状が好ましい。Aが環状有機基である場合、環状有機基の例は、Rc8及びRc9が置換基として有する環状有機基と同様である。Aがアルコキシカルボニル基である場合、アルコキシカルボニル基の例は、Rc8及びRc9が置換基として有するアルコキシカルボニル基と同様である。
【0104】
c8及びRc9の好適な具体例としては、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、及びn-オクチル基等のアルキル基;2-メトキシエチル基、3-メトキシ-n-プロピル基、4-メトキシ-n-ブチル基、5-メトキシ-n-ペンチル基、6-メトキシ-n-ヘキシル基、7-メトキシ-n-ヘプチル基、8-メトキシ-n-オクチル基、2-エトキシエチル基、3-エトキシ-n-プロピル基、4-エトキシ-n-ブチル基、5-エトキシ-n-ペンチル基、6-エトキシ-n-ヘキシル基、7-エトキシ-n-ヘプチル基、及び8-エトキシ-n-オクチル基等のアルコキシアルキル基;2-シアノエチル基、3-シアノ-n-プロピル基、4-シアノ-n-ブチル基、5-シアノ-n-ペンチル基、6-シアノ-n-ヘキシル基、7-シアノ-n-ヘプチル基、及び8-シアノ-n-オクチル基等のシアノアルキル基;2-フェニルエチル基、3-フェニル-n-プロピル基、4-フェニル-n-ブチル基、5-フェニル-n-ペンチル基、6-フェニル-n-ヘキシル基、7-フェニル-n-ヘプチル基、及び8-フェニル-n-オクチル基等のフェニルアルキル基;2-シクロヘキシルエチル基、3-シクロヘキシル-n-プロピル基、4-シクロヘキシル-n-ブチル基、5-シクロヘキシル-n-ペンチル基、6-シクロヘキシル-n-ヘキシル基、7-シクロヘキシル-n-ヘプチル基、8-シクロヘキシル-n-オクチル基、2-シクロペンチルエチル基、3-シクロペンチル-n-プロピル基、4-シクロペンチル-n-ブチル基、5-シクロペンチル-n-ペンチル基、6-シクロペンチル-n-ヘキシル基、7-シクロペンチル-n-ヘプチル基、及び8-シクロペンチル-n-オクチル基等のシクロアルキルアルキル基;2-メトキシカルボニルエチル基、3-メトキシカルボニル-n-プロピル基、4-メトキシカルボニル-n-ブチル基、5-メトキシカルボニル-n-ペンチル基、6-メトキシカルボニル-n-ヘキシル基、7-メトキシカルボニル-n-ヘプチル基、8-メトキシカルボニル-n-オクチル基、2-エトキシカルボニルエチル基、3-エトキシカルボニル-n-プロピル基、4-エトキシカルボニル-n-ブチル基、5-エトキシカルボニル-n-ペンチル基、6-エトキシカルボニル-n-ヘキシル基、7-エトキシカルボニル-n-ヘプチル基、及び8-エトキシカルボニル-n-オクチル基等のアルコキシカルボニルアルキル基;2-クロロエチル基、3-クロロ-n-プロピル基、4-クロロ-n-ブチル基、5-クロロ-n-ペンチル基、6-クロロ-n-ヘキシル基、7-クロロ-n-ヘプチル基、8-クロロ-n-オクチル基、2-ブロモエチル基、3-ブロモ-n-プロピル基、4-ブロモ-n-ブチル基、5-ブロモ-n-ペンチル基、6-ブロモ-n-ヘキシル基、7-ブロモ-n-ヘプチル基、8-ブロモ-n-オクチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、及び3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロ-n-ペンチル基等のハロゲン化アルキル基が挙げられる。
【0105】
c8及びRc9として、上記の中でも好適な基は、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、2-メトキシエチル基、2-シアノエチル基、2-フェニルエチル基、2-シクロヘキシルエチル基、2-メトキシカルボニルエチル基、2-クロロエチル基、2-ブロモエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、及び3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロ-n-ペンチル基である。
【0106】
c10の好適な有機基の例としては、Rc7と同様に、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基、1、又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン-1-イル基、及びピペラジン-1-イル基等が挙げられる。これらの基の具体例は、Rc7について説明したものと同様である。また、Rc10としてはシクロアルキルアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェノキシアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基、も好ましい。フェノキシアルキル基、及びフェニルチオアルキル基が有していてもよい置換基は、Rc7に含まれるフェニル基が有していてもよい置換基と同様である。
【0107】
有機基の中でも、Rc10としては、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又はシクロアルキルアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基が好ましい。アルキル基としては、炭素原子数1以上20以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数1以上8以下のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1以上4以下のアルキル基が特に好ましく、メチル基が最も好ましい。置換基を有していてもよいフェニル基の中では、メチルフェニル基が好ましく、2-メチルフェニル基がより好ましい。シクロアルキルアルキル基に含まれるシクロアルキル基の炭素原子数は、5以上10以下が好ましく、5以上8以下がより好ましく、5又は6が特に好ましい。シクロアルキルアルキル基に含まれるアルキレン基の炭素原子数は、1以上8以下が好ましく、1以上4以下がより好ましく、2が特に好ましい。シクロアルキルアルキル基の中では、シクロペンチルエチル基が好ましい。芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基に含まれるアルキレン基の炭素原子数は、1以上8以下が好ましく、1以上4以下がより好ましく、2が特に好ましい。芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基の中では、2-(4-クロロフェニルチオ)エチル基が好ましい。
【0108】
また、Rc10としては、-A-CO-O-Aで表される基も好ましい。Aは、2価の有機基であり、2価の炭化水素基であるのが好ましく、アルキレン基であるのが好ましい。Aは、1価の有機基であり、1価の炭化水素基であるのが好ましい。
【0109】
がアルキレン基である場合、アルキレン基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状が好ましい。Aがアルキレン基である場合、アルキレン基の炭素原子数は1以上10以下が好ましく、1以上6以下がより好ましく、1以上4以下が特に好ましい。
【0110】
の好適な例としては、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、及び炭素原子数6以上20以下の芳香族炭化水素基が挙げられる。Aの好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、α-ナフチルメチル基、及びβ-ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0111】
-A-CO-O-Aで表される基の好適な具体例としては、2-メトキシカルボニルエチル基、2-エトキシカルボニルエチル基、2-n-プロピルオキシカルボニルエチル基、2-n-ブチルオキシカルボニルエチル基、2-n-ペンチルオキシカルボニルエチル基、2-n-ヘキシルオキシカルボニルエチル基、2-ベンジルオキシカルボニルエチル基、2-フェノキシカルボニルエチル基、3-メトキシカルボニル-n-プロピル基、3-エトキシカルボニル-n-プロピル基、3-n-プロピルオキシカルボニル-n-プロピル基、3-n-ブチルオキシカルボニル-n-プロピル基、3-n-ペンチルオキシカルボニル-n-プロピル基、3-n-ヘキシルオキシカルボニル-n-プロピル基、3-ベンジルオキシカルボニル-n-プロピル基、及び3-フェノキシカルボニル-n-プロピル基等が挙げられる。
【0112】
以上、Rc10について説明したが、Rc10としては、下記式(c4a)又は(c4b)で表される基が好ましい。
【化17】
(式(c4a)及び(c4b)中、Rc13及びRc14はそれぞれ有機基であり、n6は0以上4以下の整数であり、Rc13及びRがベンゼン環上の隣接する位置に存在する場合、Rc13とRc14とが互いに結合して環を形成してもよく、n7は1以上8以下の整数であり、n8は1以上5以下の整数であり、n9は0以上(n8+3)以下の整数であり、Rc15は有機基である。)
【0113】
式(c4a)中のRc13及びRc14についての有機基の例は、Rc7と同様である。Rc13としては、アルキル基又はフェニル基が好ましい。Rc13がアルキル基である場合、その炭素原子数は、1以上10以下が好ましく、1以上5以下がより好ましく、1以上3以下が特に好ましく、1が最も好ましい。つまり、Rc13はメチル基であるのが最も好ましい。Rc13とRc14とが結合して環を形成する場合、当該環は、芳香族環でもよく、脂肪族環でもよい。式(c4a)で表される基であって、Rc13とRc14とが環を形成している基の好適な例としては、ナフタレン-1-イル基や、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-5-イル基等が挙げられる。上記式(c4a)中、n6は0以上4以下の整数であり、0又は1であるのが好ましく、0であるのがより好ましい。
【0114】
上記式(c4b)中、Rc15は有機基である。有機基としては、Rc7について説明した有機基と同様の基が挙げられる。有機基の中では、アルキル基が好ましい。アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。アルキル基の炭素原子数は1以上10以下が好ましく、1以上5以下がより好ましく、1以上3以下が特に好ましい。Rc15としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等が好ましく例示され、これらの中でも、メチル基であることがより好ましい。
【0115】
上記式(c4b)中、n8は1以上5以下の整数であり、1以上3以下の整数が好ましく、1又は2がより好ましい。上記式(c4b)中、n9は0以上(n8+3)以下であり、0以上3以下の整数が好ましく、0以上2以下の整数がより好ましく、0が特に好ましい。上記式(c4b)中、n7は1以上8以下の整数であり、1以上5以下の整数が好ましく、1以上3以下の整数がより好ましく、1又は2が特に好ましい。
【0116】
式(c4)中、Rc11は、水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1以上11以下のアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基である。Rc11がアルキル基である場合に有してもよい置換基としては、フェニル基、ナフチル基等が好ましく例示される。また、Rc7がアリール基である場合に有してもよい置換基としては、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が好ましく例示される。
【0117】
式(c4)中、Rc11としては、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、フェニル基、ベンジル基、メチルフェニル基、ナフチル基等が好ましく例示され、これらの中でも、メチル基又はフェニル基がより好ましい。
【0118】
式(c4)で表される化合物の好適な具体例としては、以下のPI-43~PI-83が挙げられる。
【化18】
【0119】
【化19】
【0120】
光重合開始剤(C)としてのフォスフィンオキサイド化合物としては、下記式(c5)で表される部分構造を含むフォスフィンオキサイド化合物が好ましい。
【化20】
式(c5)中、Rc21及びRc22は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、炭素原子数2以上20以下の脂肪族アシル基、又は炭素原子数7以上20以下の芳香族アシル基である。ただし、Rc21及びRc22の双方が脂肪族アシル基又は芳香族アシル基ではない。
【0121】
c21及びRc22としてのアルキル基の炭素原子数は、1以上12以下が好ましく、1以上8以下がより好ましく、1以上4以下がさらに好ましい。Rc21及びRc22としてのアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2,4,4,-トリメチルペンチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、及びn-ドデシル基が挙げられる。
【0122】
c21及びRc22としてのシクロアルキル基の炭素原子数は、5以上12以下が好ましい。シクロアルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、及びシクロドデシル基が挙げられる。
【0123】
c21及びRc22としてのアリール基の炭素原子数は、6以上12以下が好ましい。アリール基は置換基を有してもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基等が挙げられる。アリール基の具体例としては、フェニル基、及びナフチル基が挙げられる。
【0124】
c21及びRc22としての脂肪族アシル基の炭素原子数は、2以上20以下であり、2以上12以下が好ましく、2以上8以下がより好ましく、2以上6以下がさらに好ましい。脂肪族アシル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
脂肪族アシル基の具体例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ペンタデカノイル基、ヘキサデカノイル基、ヘプタデカノイル基、オクタデカノイル基、ノナデカノイル基、及びイコサノイル基が挙げられる。
【0125】
c21及びRc22としての芳香族アシル基の炭素原子数は、7以上20以下である。芳香族アシル基は置換基を有してもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基等が挙げられる。芳香族アシル基の具体例としては、ベンゾイル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、2,6-ジメチルベンゾイル基、2,6-ジメトキシベンゾイル基、2,4,6-トリメチルベンゾイル基、α-ナフトイル基、及びβ-ナフトイル基が挙げられる。
【0126】
式(c5)で表される構造部分を含むフォスフィンオキサイド化合物の好ましい具体例としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、及びビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0127】
光重合開始剤(C)の含有量は、溶剤(S)の質量を除いた感光性組成物の質量(固形分全体)に対して0.5質量%以上30質量%以下が好ましく、1質量%以上20質量%以下がより好ましい。光重合開始剤(C)の含有量を上記の範囲とすることにより、硬化性が良好である感光性組成物を得ることができる。
【0128】
<溶媒(S)>
感光性組成物は、感光性組成物の質量に対して5質量%以下の溶媒(S)を含んでいてもよい。
感光性組成物の溶媒(S)の含有量は、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましく、0.5質量%以下がさらにより好ましく、0.3質量%以下が特に好ましい。
感光性組成物は、溶媒(S)を実質的に含まないのが最も好ましい。感光性組成物が溶媒(S)を実質的に含まないとは、原料等に付随してごく少量の溶媒(S)が不可避的に感光性組成物に持ち込まれる他、感光性組成物に意図的に溶媒(S)が加えられていないことを言う。
感光性組成物が溶媒(S)を実質的に含まない場合の、感光性組成物の溶媒(S)の含有量は、例えば0.2質量%以下であり、0.15質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、0.05質量%以下がさらに好ましい。
溶媒(S)の種類は特に限定されないが、典型的には有機溶媒である。
【0129】
感光性組成物に配合され得る有機溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等のケトン類;2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、蟻酸n-ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n-ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n-プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。
【0130】
<その他の成分>
感光性組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、以上説明した成分の他に、従来から感光性組成物やインク組成物に配合されている種々の添加剤を含んでいてもよい。感光性組成物に配合される好ましい添加剤としては、光安定剤、分散剤、シランカップリング剤等の密着促進剤、酸化防止剤、凝集防止剤、消泡剤、界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤としては、特に限定されず、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤等の公知の成分を用いることができる。
【0131】
〔光安定剤(D)〕
光安定剤(D)は、一般的に感光性組成物に使用可能な光安定剤を使用することができる。光安定剤(D)としては、例えば、ベンゾトリアゾール化合物、トリアジン化合物、ベンゾフェノン化合物、ヒンダードアミノエーテル化合物、ヒンダードアミン化合物が挙げられる。これらは、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中では、クラック耐性に優れる硬化物を形成できる点から、ヒンダードアミン化合物が好ましい。
なお、光安定剤(D)は、重合性化合物であってもよく、非重合性化合物であってもよい。
【0132】
好ましいヒンダードアミン化合物としては、例えば、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールおよび、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8-10-テトラオキソスピロ[5.5]ウンデカンとの混合エステル化物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノールおよび、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8-10-テトラオキソスピロ[5.5]ウンデカンとの混合エステル化物、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチルー4-ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチルー4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-ウンデカノキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カーボネート、1,2,2,6,6,-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6,-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート、C12-21飽和脂肪酸とC18不飽和脂肪酸の2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニルエステルが挙げられる。
【0133】
ヒンダードアミン系光安定剤は、市販品を用いてもよく、その例を挙げると、ADEKA社製の製品名「アデカスタブLA-52」、「アデカスタブLA-57」、「アデカスタブLA-63P」、「アデカスタブLA-68」、「アデカスタブLA-72」、「アデカスタブLA-77」、「アデカスタブLA-77Y」、「アデカスタブLA-77G」、「アデカスタブLA-81」、「アデカスタブLA-82」、「アデカスタブLA-87」、「アデカスタブLA-402AF」、「アデカスタブLA-40MP」、「アデカスタブLA-40Si」、「アデカスタブLA-94」、「アデカスタブLA-402XP」、「アデカスタブLA-502XP」;BASF社製の製品名「Chimassorb119」、「Chimassorb944」、「Chimassorb944FDL」、「Chimassorb944LD」、「Chimassorb2020」、「Chimassorb2020FDL」、「TinuvinPA144」、「Tinuvin765」、「Tinuvin770DF」、「TinuvinXT55FB」、「Tinuvin622SF」、「Tinuvin XT850}、「Tinuvin NOR 371」、「Tinuvin783」、「Tinuvin791」、「Irgastab FS-210」、「Irgastab FS-410」、「Tinuvin622」、「Tinuvin111」、「Tinuvin111FDL」、「Tinuvin783」、「Tinuvin783FDL」、「Tinuvin791FB」;Cytec社製の製品名「Cyasorb UV-3808PP5」、「Cyasorb Cynergy V-703」等が挙げられる。
【0134】
感光性組成物が光安定剤(D)を含有する場合、光安定剤(D)の含有量は、感光性組成物の溶媒(S)の質量を除いた質量に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、2質量%以上15質量%以下がより好ましく、2.5質量%以上10質量%以下がさらに好ましい。
【0135】
〔感光性組成物の製造方法〕
以上説明した成分を、それぞれ所定量混合したのち、混合物を均一に撹拌することにより感光性組成物が得られる。
【0136】
≪硬化物の製造方法≫
以上説明した感光性組成物は、典型的には、
感光性組成物を、形成される硬化物の形状に応じて成形することと、
成形された感光性組成物に対して露光することと、
を含む方法によって、硬化物とされる。
【0137】
上記の方法により製造される硬化物は、例えば、波長550nmにおける屈折率として、1.60以上、好ましくは1.61以上、より好ましくは1.62以上の高屈折率を示す。このため、上記の方法により製造される硬化物は、高屈折率が要求される光学用途において好適に使用される。
例えば、前述の感光性組成物の硬化物からなる膜は、有機ELディスプレイパネルや、液晶ディスプレイパネル等の種々のディスプレイパネルにおいて反射防止膜等を構成する高屈折率膜として好適に使用される。
【0138】
前述の感光性組成物の硬化物からなる高屈折率膜の膜厚は、特に限定されず、用途に応じて適宜選択される。高屈折率膜の膜厚は、典型的には、1nm以上20μm以下が好ましく50nm以上10μm以下がより好ましい。
【0139】
感光性組成物を成形する方法は特に限定されず、硬化物の形状に応じて適宜選択される。硬化物の形状としては、特に限定されないが、膜形状、レンズ形状、ライン形状、プリズム形状等が挙げられる。これらの形状の中では、膜形状が好ましい。
硬化物の形状がレンズ形状やプリズム形状等である場合には、硬化物の形状に応じた鋳型中に感光性組成物をスキージ等を用いて充填してもよい。
硬化物の形状がライン形状等である場合、硬化物の形状に応じて、基材上に感光性組成物を塗布すればよい。塗布方法としては、例えば、インクジェット法等の印刷法が挙げられる。
硬化物を膜形状に塗布する方法としては、ロールコータ、リバースコータ、バーコータ等の接触転写型塗布装置や、スピンナー(回転式塗布装置)、カーテンフローコータ等の非接触型塗布装置を用いる方法が挙げられる。また、インクジェット法等の印刷法によって感光性組成物を膜形状に塗布することもできる。
【0140】
感光性組成物が溶媒(S)を含む場合、感光性組成物を所望する形状に成形した後、加熱等の方法によって成形された感光性組成物から溶媒(S)を除去してもよい。
【0141】
なお、例えば、膜形状等の所望する形状に成形された感光性組成物に対して、感光性組成物が完全に硬化しない程度の露光を行った後に、インプリント法等の方法によって半硬化状態の感光性組成物に対して賦形してもよい。この場合、賦形された半硬化状態の感光性組成物に対して、さらに露光が行われ、感光性組成物を所望する程度まで十分に硬化させる。
また、前述の感光性組成物に、3Dプリンティング法を適用して、インクジェット印刷と、露光による硬化とを繰り返して薄膜状の硬化物を積層することにより、所望する形状の硬化物を形成してもよい。
【0142】
上記の方法により成形された感光性組成物を硬化させるための露光方法としては、感光性組成物の硬化方法として知られている種々の方法を適宜適用できる。
成形された感光性組成物に対する露光は、例えば、紫外線、エキシマレーザー光等の活性エネルギー線を照射して行われる。
【0143】
成形された感光性組成物に対する露光は、例えば、マスクを介する露光のような方法により、位置選択的に行われてもよい。露光を位置選択的に行う場合、露光された感光性組成物を、有機溶媒を用いて現像して未露光部を除去することで、パターン化された硬化物を形成することができる。
現像処理を行う場合、現像後に加熱による乾燥等の方法により、現像液を十分に除去するのが好ましい。
【0144】
以上説明した方法により、溶媒(S)を含まないか少量しか含まない前述の感光性組成物を用いて、所望する形状の硬化物が形成される。
また、前述の硬化性組成物を用いて得られる硬化物は、耐屈曲性に優れ、折り曲げても割れにくいため、フレキシブルデバイスにおいて好適に用いられる。例えば、上記の硬化物からなる厚さ10μmのフィルムを、半径6mm、好ましくは半径2mmの円柱状のステンレス棒に巻き付けた場合に、割れが生じない。
【実施例0145】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されない。
【0146】
〔実施例1~18、比較例1~3〕
実施例において、ベンゾフェノン化合物(A1)として、下記構造の化合物を用いた。
【化21】
【0147】
実施例及び比較例において、単官能(メタ)アクリレート化合物(A2)として、下記構造の化合物1~6を用いた。
【化22】
【0148】
比較例において、比較化合物として、下記構造の化合物を用いた。
【化23】
【0149】
実施例及び比較例において、金属化合物粒子(B)として、酸化ジルコニウム粒子(平均粒径100nm)を用いた。
【0150】
実施例及び比較例において、光重合開始剤(C)として、下記構造の化合物を用いた。
【化24】
【0151】
実施例及び比較例において、光安定剤(D)として、下記構造の化合物を用いた。
【化25】
【0152】
以上説明した各成分を、表1に記載される比率で均一に混合して、実施例1~18、及び比較例1~3の感光性組成物を得た。得られた感光性組成物の、25℃にて、E型粘度計を用いて測定した粘度を表1に記す。また、得られた感光性組成物を用いて形成された硬化膜の屈折率、黄色度(Y.I.)、クラック耐性、及び透過率変化率を下記方法に従って測定し、評価した。得られた結果を表1に記す。
【0153】
<屈折率>
ガラス基板上にインクジェット装置を用いて、各実施例、比較例の感光性組成物を塗布した。その後、395nmのUV-LED露光機を用いて、露光量2J/cmで塗布膜を露光して硬化させ、厚さ3μmの硬化膜を得た。その膜についてMetricon社製プリズムカプラを用いて光線波長550nmでの屈折率を求めた。
【0154】
<Y.I.>
ガラス基板上にスピンコートにて各実施例、比較例の感光性組成物を塗布した。その後、395nmのUV-LED露光機を用いて、露光量2J/cmで塗布膜を露光して硬化させ、厚さ3μmの硬化膜を得た。その膜について、Hunter Associates Laboratory,Inc.社製デスクトップ分光測色計を用いてY.I.の測定を行った。
【0155】
<クラック耐性>
ガラス基板上にスピンコートにて各実施例、比較例の感光性組成物を塗布した。その後、395nmのUV-LED露光機を用いて、露光量2J/cmで塗布膜を露光して硬化させ、厚さ3μmの硬化膜を得た。次いで、硬化膜を、85℃85%のエスペック社製恒温恒湿機の中に晒した。24時間経過時、144時間経過時、200時間経過時に、硬化膜の表面を光学顕微鏡により観察し、以下の基準に従い、硬化膜の表面外観を評価した。
◎:200時間経過時点で、表面にクラックが観察されない。
〇:144時間経過時点で、表面にクラックが観察されないが、200時間経過未満で、表面にクラックが観察される。
△:24時間経過時点で、表面にクラックが観察されないが、144時間経過未満で、表面にクラックが観察される。
×:24時間経過時点で、表面にクラックが観察される。
【0156】
<透過率変化率>
ガラス基板上にスピンコートにて各実施例、比較例の感光性組成物を塗布した。その後、395nmのUV-LED露光機を用いて、露光量2J/cmで塗布膜を露光して硬化させ、厚さ3μmの硬化膜を得た。得られた硬化膜について、Hunter Associates Laboratory,Inc.社製デスクトップ分光測色計を用いて、波長450~780nmの光線の平均透過率T0を測定した。次いで、硬化膜を、耐光性試験機(スガ試験機社製XT1500L)の中に晒した。100時間後、平均透過率T0を測定した位置と同じ位置において、硬化膜の波長450~780nmの光線の平均透過率を測定し、T1とした。T0及びT1の測定値に基づいて、下記式に従って透過率変化率を求めた。
透過率変化率(%)=(T1-T0)/T0×100
【0157】
【表1】
【0158】
比較例1に対する実施例1の比較結果から、光重合性化合物(A)と、金属化合物粒子(B)と、光重合開始剤(C)とを含む感光性組成物において、光重合性化合物(A)として比較化合物である特定構造のスルフィド化合物の代わりに、特定構造のベンゾフェノン化合物(A1)を用いると、光が長時間当たった場合でも、透過率の低下が抑制される硬化物を形成できるとともに、黄変耐性及びクラック耐性にも優れる硬化物を形成できることが分かる。
【0159】
実施例1に対する実施例3の比較結果から、感光性組成物が光安定剤(D)を含む場合、硬化物のクラック耐性がさらに向上することが分かる。
また、実施例1に対する実施例10、13、16の比較結果から、感光性組成物が光安定剤(D)を含まない場合であっても、単官能(メタ)アクリレート化合物(A2)として化合物4~6のいずれかを含む場合、クラック耐性が向上することが分かる。