(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085771
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】パネル制御システム、パネル制御方法、及びパネル制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H02S 50/00 20140101AFI20240620BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20240620BHJP
H02S 20/30 20140101ALN20240620BHJP
【FI】
H02S50/00
A01G7/00 601Z
H02S20/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200491
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514158800
【氏名又は名称】株式会社クリーンエナジージャパン
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩田 恭彰
(72)【発明者】
【氏名】野村 裕宗
(72)【発明者】
【氏名】丹保 省吾
(72)【発明者】
【氏名】中村 暢之
(72)【発明者】
【氏名】井原 邦宣
【テーマコード(参考)】
2B022
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
2B022AA05
2B022DA01
2B022DA05
5F151JA14
5F151KA07
5F251JA14
5F251KA07
(57)【要約】
【課題】電力コストを最小化し、作物の販売価格を最大化する。
【解決手段】 農地5の上方に設けられ、傾斜角αを変動可能な太陽光パネル4を備えたパネル制御システムSにおいて、過去に太陽光パネル4により太陽光発電された電力を示す情報に基づいて、将来太陽光パネル4により太陽光発電される電力の予測情報を取得する太陽光発電情報取得手段110と、過去に施設7において消費された電力を示す情報に基づいて、将来の施設7において消費される電力の予測情報を取得する施設需要電力情報取得手段120と、農地5で育成する作物51に関する情報を取得する作物情報取得手段130と、太陽光発電される電力の予測情報、施設7において消費される電力の予測情報、及び、作物51に関する情報に基づいて、傾斜角αの角度を決定する傾斜角度決定手段160と、決定された角度に傾斜角αを調整する制御手段140と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
農地の上方に設けられ、傾斜角を変動可能な太陽光パネルを備えたパネル制御システムにおいて、
過去に前記太陽光パネルにより太陽光発電された電力を示す情報に基づいて、将来前記太陽光パネルにより太陽光発電される電力の予測情報を取得する太陽光発電情報取得手段と、
過去に施設において消費された電力を示す情報に基づいて、将来の前記施設において消費される電力の予測情報を取得する施設需要電力情報取得手段と、
前記農地で育成する作物に関する情報を取得する作物情報取得手段と、
前記太陽光発電される電力の予測情報、前記施設において消費される電力の予測情報、及び、前記作物に関する情報に基づいて、前記傾斜角の角度を決定する傾斜角度決定手段と、
前記決定された角度に前記傾斜角を調整する制御手段と、を備えた
ことを特徴とするパネル制御システム。
【請求項2】
前記作物に関する情報には、作物の種類及び季節を特定可能な情報が含まれ、
前記傾斜角度決定手段は、
対象の季節において前記太陽光発電される電力の予測情報、前記季節において前記施設にて消費される電力の予測情報、及び、前記季節における前記作物に関する情報に基づいて、前記季節及び前記作物の種類毎に、前記傾斜角の角度を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載のパネル制御システム。
【請求項3】
作物情報取得手段は、
前記作物の成長率を特定する成長率特定手段と、
前記成長率に基づいて前記作物の出荷可能期間を特定する出荷可能期間特定手段と、
過去の前記作物の価格に基づいて、前記出荷可能期間における前記作物の価格の予測情報を取得する作物価格情報取得手段と、
出荷可能期間における作物の価格の予測情報に基づいて出荷目標日を決定する出荷目標日決定手段と、
前記出荷目標日に対する前記作物の成長速度を判定する成長速度判定手段と、を備え、
前記傾斜角度決定手段は、
前記太陽光発電される電力の予測情報、前記施設において消費される電力の予測情報、及び、前記作物の成長速度に基づいて、前記傾斜角の角度を決定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のパネル制御システム。
【請求項4】
前記太陽光発電される電力の予測情報、前記施設において消費される電力の予測情報、及び、前記作物に関する情報に基づいて、前記施設に対する前記太陽光発電電力の供給と、前記作物の成長速度とのうちの一方を優先する判定を行う判定手段を備え、
前記傾斜角度決定手段は、
前記判定手段により、前記太陽光発電電力の供給の方を優先すると判定された場合、前記太陽光パネルに太陽光を照射させ易い角度に前記傾斜角の角度を決定し、前記作物の成長速度の方を優先すると判定された場合、前記太陽光パネルに太陽光を照射させ難い角度に前記傾斜角の角度を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載のパネル制御システム。
【請求項5】
前記施設には、電力会社が運営する電力系統に基づく電力を供給可能であり、
前記太陽光発電される電力の予測情報、前記施設において消費される電力の予測情報、及び、前記作物に関する情報に基づいて、前記施設における電力のコストと、前記作物の売上額とを算出する算出手段を備え、
前記傾斜角度決定手段は、
前記算出手段の算出結果に基づいて前記傾斜角の角度を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載のパネル制御システム。
【請求項6】
前記太陽光発電情報取得手段は、
過去に前記太陽光パネルにより太陽光発電された電力、及び、当該電力が発電されたときの前記太陽光パネルの傾斜角を示す情報に基づいて、将来前記太陽光パネルにより太陽光発電される電力、及び、当該電力が発電されるときの前記太陽光パネルの傾斜角を示す情報とを取得する
ことを特徴とする請求項5に記載のパネル制御システム。
【請求項7】
農地の上方に設けられた太陽光パネルの傾斜角を変動可能な制御方法において、
過去に前記太陽光パネルにより太陽光発電された電力を示す情報に基づいて、将来前記太陽光パネルにより太陽光発電される電力の予測情報を取得するステップと、
過去に施設において消費された電力を示す情報に基づいて、将来の前記施設において消費される電力の予測情報を取得するステップと、
前記農地で育成する作物に関する情報を取得するステップと、
前記太陽光発電される電力の予測情報、前記施設において消費される電力の予測情報、及び、前記作物に関する情報に基づいて、前記傾斜角の角度を決定するステップと、
前記決定された角度に前記傾斜角を調整するステップと、を有する
ことを特徴とするパネル制御方法。
【請求項8】
農地の上方に設けられた太陽光パネルの傾斜角を変動可能に制御するコンピュータを、
過去に前記太陽光パネルにより太陽光発電された電力を示す情報に基づいて、将来前記太陽光パネルにより太陽光発電される電力の予測情報を取得する太陽光発電情報取得手段、
過去に施設において消費された電力を示す情報に基づいて、将来の前記施設において消費される電力の予測情報を取得する施設需要電力情報取得手段、
前記農地で育成する作物に関する情報を取得する作物情報取得手段、
前記太陽光発電される電力の予測情報、前記施設において消費される電力の予測情報、及び、前記作物に関する情報に基づいて、前記傾斜角の角度を決定する傾斜角度決定手段、
前記決定された角度に前記傾斜角を調整する制御手段、として機能させる
ことを特徴とするパネル制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光パネルにより太陽光発電を行いつつ、当該太陽光パネルの下方において作物を育成する営農型太陽光発電において、太陽光が太陽光パネルや作物に対し適切に照射されるように太陽光パネルの傾斜角を調整可能に制御するパネル制御システム、パネル制御方法、及びパネル制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
農地の上にヤグラなどの支柱を建て、その上に太陽光パネルを設けて太陽光発電しながら営農を継続する営農型太陽光発電が知られている。
例えば、特許文献1には、ソーラーパネルと、反射板とを設け、ソーラーパネルの傾斜角を反射板の傾斜角より所定角度小さくなるように制御するシステムが開示されている。
この文献には、反射板を、太陽光パネルと太陽光パネルとの間に設けることで、太陽光が反射板で反射して作物を効果的に照射することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に係る発明は、太陽光パネルと太陽光パネルとの間に反射板を設けるため、農地全体に隙間なく太陽光パネルを配することができず、面積の割に太陽光発電の発電量が小さくなる。
このため、農地に隣接する施設において様々な電気機器が使用されるが、そのための供給電力としては不十分であった。
このため、施設用の電力としては、電力会社が運営する電力系統の電力に依存せざるを得ず、ピーク値を超過して電気代が高額になり易いという問題があった。
この問題に対し、太陽光パネルを農地全体に隙間なく配すれば太陽光発電を多く得ることができ系統電力の負担を減らすことができるが、その場合、作物に対する太陽光の照射(受光)が太陽光パネルにより阻まれる。
その結果、成長が不十分になって作物の販売価格が低下する、といった別の問題が生じることになる。
これらの問題は、特に光飽和点が存在しないか高い作物に対する問題ではあるが、従来の営農型太陽光発電において、作物や太陽光パネルに対する太陽光の照射量を自動的に調整する技術は存在せず、改良すべき余地があった。
【0005】
本発明は、以上のような事情に鑑みなされたものであり、営農型太陽光発電において、傾斜角を変動可能な太陽光パネルを採用し、条件に基づいて傾斜角を適切な角度に自動調整できるようにしたパネル制御システム、パネル制御方法、及びパネル制御プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係るパネル制御システムは、過去に前記太陽光パネルにより太陽光発電された電力を示す情報に基づいて、将来前記太陽光パネルにより太陽光発電される電力の予測情報を取得する太陽光発電情報取得手段と、過去に施設において消費された電力を示す情報に基づいて、将来の前記施設において消費される電力の予測情報を取得する施設需要電力情報取得手段と、前記農地で育成する作物に関する情報を取得する作物情報取得手段と、前記太陽光発電される電力の予測情報、前記施設において消費される電力の予測情報、及び、前記作物に関する情報に基づいて、前記傾斜角の角度を決定する傾斜角度決定手段と、前記決定された角度に前記傾斜角を調整する制御手段と、を備えるようにしている。
【0007】
また、本発明の他の一態様に係るパネル制御方法は、農地の上方に設けられた太陽光パネルの傾斜角を変動可能な制御方法において、過去に前記太陽光パネルにより太陽光発電された電力を示す情報に基づいて、将来前記太陽光パネルにより太陽光発電される電力の予測情報を取得するステップと、過去に施設において消費された電力を示す情報に基づいて、将来の前記施設において消費される電力の予測情報を取得するステップと、前記農地で育成する作物に関する情報を取得するステップと、前記太陽光発電される電力の予測情報、前記施設において消費される電力の予測情報、及び、前記作物に関する情報に基づいて、前記傾斜角の角度を決定するステップと、前記決定された角度に前記傾斜角を調整するステップと、を有するようにしてある。
【0008】
また、本発明の他の一態様に係るパネル制御プログラムは、農地の上方に設けられた太陽光パネルの傾斜角を変動可能に制御するコンピュータを、過去に前記太陽光パネルにより太陽光発電された電力を示す情報に基づいて、将来前記太陽光パネルにより太陽光発電される電力の予測情報を取得する太陽光発電情報取得手段、過去に施設において消費された電力を示す情報に基づいて、将来の前記施設において消費される電力の予測情報を取得する施設需要電力情報取得手段、前記農地で育成する作物に関する情報を取得する作物情報取得手段、前記太陽光発電される電力の予測情報、前記施設において消費される電力の予測情報、及び、前記作物に関する情報に基づいて、前記傾斜角の角度を決定する傾斜角度決定手段、前記決定された角度に前記傾斜角を調整する制御手段、として機能させるようにしてある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電力コストを最小化し、作物の販売価格を最大化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るパネル制御システムの概略図である。
【
図4】太陽光パネルの側面図である。(a)は傾斜角α=30°の図であり、(b)は傾斜角30°<α<120°のうちの一例を示す図であり、(c)は傾斜角α=120°の図である。
【
図5】パネル制御システムの機能ブロック図である。
【
図6】(a)は太陽光発電電力予測モデルの生成に関する説明図であり、(b)は太陽光発電電力予測モデルに所定の情報を入力することにより太陽光発電の予測情報が出力されることを示す図である。
【
図7】(a)は太陽光発電電力(実績)が記憶されている太陽光発電電力DBの一例である。(b)は天気及び気温・湿度(実績)が記憶されている天気情報DBの一例である。(c)は太陽光発電電力予測モデルにより出力された太陽光発電の発電量(予測)を含む情報の一例である。
【
図8】(a)は施設需要電力予測モデルの生成に関する説明図であり、(b)は施設需要電力予測モデルに所定の情報を入力することにより施設需要電力の予測情報が出力されることを示す図である。
【
図9】(a)は施設需要電力(実績)が記憶されている施設需要電力DBの一例である。(b)は施設需要電力予測モデルにより出力された施設需要電力の消費量(予測)を含む情報の一例である。
【
図10】(a)は作物の成長率に基づき出荷可能期間を特定することを示す図である。(b)は過去の作物価格(実績)等に基づき出荷可能期間における作物価格を予測し、そのうちの高価格日を出荷目標日に決定することを示す図である。
【
図11】(a)は作物の成長率及び農地(土)の水分量を示す図表であり、(b)は出荷可能期間に関する説明図である。
【
図12】(a)は過去の作物価格(実績)が記憶されている作物価格DBの一例であり、(b)は作物価格(予測)を示す図表である。
【
図13】作物価格推移(予測)を示すグラフである。
【
図14】成長速度と太陽光発電電力(予測)と施設需要電力(予測)とに基づいて傾斜角の角度を判定する判定パターンa~hを示す図表である。
【
図15】本発明のパネル制御方法に係るメインフローチャート図である。
【
図16】太陽光発電電力の予測情報を取得する手順を示すサブフローチャートである。
【
図17】施設需要電力の予測情報を取得する手順を示すサブフローチャートである。
【
図18】作物情報を取得する手順を示すサブフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のパネル制御システム、パネル制御方法、及びパネル制御プログラムの好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係るパネル制御システムSの概略図である。
図1に示すように、本実施形態のパネル制御システムSは、サーバ1と、天気情報提供装置2と、太陽光パネル4を備えた太陽光発電システム4Sと、作物51が植えられている農地5と、ドローン6と、施設7と、施設7を管理する施設管理システム7Sと、を備えている。
各構成部は、インターネット9などの通信回線を介して通信可能に接続される。
【0013】
(サーバ1のハードウェア構成)
図2は、サーバ1のハードウェア構成図である。
サーバ1は、所定条件に応じ太陽光パネル4の傾斜角αを自動的に変動させる制御を行う。
サーバ1は、プロセッサ101と、メモリ102と、ストレージ103と、通信装置104と、を備えた情報処理装置である。
プロセッサ101は、プログラムを実行することにより、サーバ1の各部を制御し、サーバ1の機能を実現する処理を行う。プロセッサ101には、例えばCPU(Central Processing Unit)が用いられる。
メモリ102は、コンピュータが読み取り可能な記録媒体であり、プロセッサ101により実行されるプログラムを記憶する。メモリ102には、例えばRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)が用いられる。
ストレージ103は、コンピュータが読み取り可能な記録媒体であり、プロセッサ101により用いられる各種のデータ及びプログラムを記憶する。ストレージ103には、例えばHDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)が用いられる。
プログラムには、本発明のパネル制御プログラムが含まれている。
通信装置104は、インターネット9に接続され、例えばインターネット9を介して天気情報提供装置2、太陽光発電システム4S、ドローン6、施設管理システム7S等の各通信手段と情報の送受信を行う。
【0014】
(太陽光発電システム4S)
太陽光発電システム4Sについて説明する。
図3は、太陽光パネル4の平面図である。
図4は、太陽光パネル4の様々な傾斜角を説明するための側面図である。
図5は、パネル制御システムSの機能ブロック図である。
これらの図に示すように、太陽光発電システム4Sは、太陽光パネル4と、傾斜角可動部410と、制御処理部420と、発電量管理部430と、を備えている。
【0015】
太陽光パネル4は、パネル面に太陽光が照射されて太陽光発電が行われる。
太陽光発電された電力は、施設7において管理されているドローン6や各種電気機器710に対し供給が可能になっている。
パネル制御システムSは営農型太陽光発電に係るシステムであることから、太陽光パネル4は、農地5(作物51)の上方に設けられている。
【0016】
傾斜角可動部410は、太陽光パネル4を任意の傾斜角に変動させるための可動部品である。
傾斜角可動部410は、
図4に示すように、例えば、ねじ歯車(ウォーム)412と、それに合う斜歯歯車(ウォームホイール)413とを組み合わせたウォームギアによって構成されている。
ウォームホイール413を太陽光パネル4の中心部にある回転軸411の一端又は両端に接合し、モータ(不図示)でウォーム412を回動させる。
これにより、ウォームホイール413が従動回転し、当該回転に応じた回転軸411の回転によって、太陽光パネル4を回転軸411を中心に回転させることができる。
【0017】
制御処理部420は、プロセッサを備え、プログラムを実行することにより、傾斜角可動部410に傾斜角αを所定角度に調整させる。
具体的には、制御処理部420は、サーバ1から受信した命令に基づき、傾斜角αを任意の角度に変動させて固定することができる。
なお、本実施形態の太陽光パネル4は複数設けられるところ、制御手段140は、すべての制御処理部420に対し同時に命令を行うため、各太陽光パネル4の傾斜角は常に同一角度に調整される(
図3)。
【0018】
図4は、サーバ1から傾斜角αの角度情報を含む命令信号の受信に応じ、制御処理部420が、傾斜角可動部410に傾斜角αを所定角度に調整したときの図である。
図4(a)は、傾斜角α=30°の太陽光パネル4の側面図であり、
図4(b)は、傾斜角30<α<120°のうちの一例(α=45°)を示す側面図であり、
図4(c)は、α=120°の太陽光パネル4の側面図である。
太陽光パネル4の傾斜角は、季節、時間帯、方位等によって異なるが、ここでは、便宜上、傾斜角α=30°のときに太陽光がパネル面に対し垂直に進行する。
このため、傾斜角α=30°のときに太陽光パネル4に対する太陽光の照射量が最も多く、ゆえに、太陽光発電による発電量が最も多く、他方、作物51に対する太陽光の照射量は最も少ない(
図4(a))。
また、傾斜角α=120°のときに、太陽光は、パネル面に対し並行に進行するため、太陽光パネル4に対する太陽光の照射量は最も少なく、ゆえに、太陽光発電による発電量は最も少なく、他方、作物51に対する太陽光の照射量は最も多い(
図4(c))。
【0019】
以上のことから、太陽光発電の発電量は、傾斜角α=30°のときに最も多く、傾斜角α=120°のときに最も低く、作物51に対する太陽光の照射量は、傾斜角α=30°のときに最も低く、傾斜角α=120°のときに最も多い。
つまり、太陽光発電の発電量と、作物51に対する太陽光の照射量とは、傾斜角αは30°~120°の範囲で変動し(
図4(b))、一方が高いと他方が低くなるトレードオフの関係を有している。
発電量管理部430は、太陽光発電の発電量を日毎に管理(記憶)しており、管理されている情報はサーバ1に送信される。
【0020】
(農地5、作物51)
農地5には、作物51が植えられており、その上方には、太陽光パネル4が設けられている。
作物51は、光合成を行うため太陽光の照射を必要とする。
特に、光飽和点が存在しない作物51は、太陽光の照射量が多いほど光合成を行う速度が上昇する。
このため、作物51は、太陽光の照射量が多い(光の強度が強い)ほど、早く成長し、太陽光の照射量が少ないほど遅く成長する。
なお、光飽和点が存在する作物51についても、光飽和点未満においては、太陽光の照射量の多少に応じて作物51の成長速度は変化する。
作物51は、適量の水分も成長に必要な要素であり、例えば土壌含有水分量が適量の場合には健全に成長するが、土壌含有水分量が少ない場合には成長が滞る。
以上のことから、作物51は、一定の条件下、太陽光の照射量や土壌含有水分量が多いほど成長速度は速く、太陽光の照射量や土壌含有水分量が少ないほど成長速度は遅い。
なお、作物51は1種類でも2種類以上でもよく、特定の種類に限定されるものではない。
【0021】
(天気情報提供装置2)
天気情報提供装置2は、公知の天気予報サービスを担うWebサーバであり、将来の晴、曇、雨などの予測情報をインターネット9を介して提供する。
また、天気情報提供装置2は、将来の気温・湿度の予測情報をインターネット9を介して提供する。
サーバ1は、翌日から1ヶ月間、6ヶ月間など特定期間における日毎の天気や気温・湿度の予測情報をインターネット9を介して天気情報提供装置2から受信することができる。
【0022】
(施設7及び施設管理システム7S)
施設7は、作物51を育成している農家が居住又は運営する建物などの構造物である。
施設7には、後述するドローン6や他の電気機器710(例えば、ドローン6や電気自動車の充電器、空調機器、照明器具などの家電器具等)が備えられ、各電気機器710に対し適宜電力が供給され消費される。
施設7には、電力会社から供給される系統電力81と、太陽光発電システム4Sから供給される太陽光発電電力82とがある。
本実施形態では、太陽光発電電力82が優先的に供給・消費されるが、太陽光発電電力82でカバーできない分の負荷に対しては系統電力81が供給・消費される。
このため、太陽光発電電力82の発電量が多いほど、系統電力81の消費を抑えることができる。
消費電力管理部711は、施設7における消費電力量を管理(記憶)しており、日毎に消費電力量がサーバ1に送信される。
【0023】
(ドローン6)
ドローン6は、無人飛翔体の一例であり、複数の作業を実施可能な複合用途型ドローンである。
「複数の作業」は、例えば、作物51に対する上空からの水やり、肥料や農薬の散布、作物51に対する上空からの撮影(点検)等などある。
ドローン6は、通常の飛翔体に備えられる一般的な飛行機能のほか、通信機能、測位部、電源部、撮影部、液体散布部、及び、制御機能を備える。
通信機能は、例えば、LTEなどの携帯電話網や、インターネット9などの固定通信網等のネットワークを介してサーバ1との間で各種データの送受信を行う機能である。
測位部は、例えば、GPSを含むGNSS(global navigation satellite system)などの測位手段であり、ドローン6の位置情報(緯度・経度)を計測する。このため、作物51や農地5の位置情報を指定すれば当該作物51や農地5の上空を飛行(ホバリング)させることができる。
電源部は、バッテリーを備え、このバッテリーによりドローン6に対して駆動電力を供給する。
ドローン6は、待機時は施設7に配置されており、バッテリーは、ドローン6が施設7に配置された状態で充電器により充電される。
撮影部は、動画又は静止画を撮影するカメラである。
撮影部は、点検対象である作物51や農地5を上空から撮影する場合に使用される。
撮影された撮影データは、サーバ1に送信される。
液体散布部は、水、肥料、農薬などの液体を上空から散布するための部品である。
【0024】
制御機能において、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することにより以下の制御を行うことができる。
例えば、制御機能において、毎日定時になると、ドローン6を施設7の待機場所から離陸させ、指定された位置情報に基づいて対象の農地5や作物51の上空を飛行させつつ、カメラに農地5や作物51を撮影させることができる。撮影した農地5や作物51の映像をサーバ1に送信させる。
また、制御機能において、サーバ1からの命令に基づき、指定された位置情報に基づいて対象の農地5や作物51の上空を飛行させつつ、液体散布部に水、肥料、農薬を散布させることができる。
【0025】
(サーバ1及びパネル制御システムSにおける動作)
サーバ1は、
図5に示すように、データベース150を、ストレージ103の内部に備えると共に、太陽光発電情報取得手段110、施設需要電力情報取得手段120、作物情報取得手段130、及び、制御手段140を備える。
データベース150は、例えば、過去の太陽光発電電力82の実績情報を記憶する太陽光発電電力DB151、過去の天気や気温・湿度の実績情報を記憶する天気情報DB152、過去の施設消費電力の実績情報を記憶する施設需要電力DB153、過去の作物51の価格情報を記憶する作物価格DB154などのデータベース150がある。
【0026】
太陽光発電電力DB151は、太陽光発電システム4Sの発電量管理部430において管理している過去(例えば、直近10年分)の太陽光発電電力82の情報を、サーバ1が、インターネット9を介して受信・記憶することで構成される。
天気情報DB152は、過去(例えば、直近10年分)の天気、気温、室温の実績情報を記憶することで構成される。
施設需要電力DB153は、施設管理システム7Sの消費電力管理部711において管理している過去(例えば、直近10年分)の施設需要電力(施設7で消費された電力)の情報を、サーバ1が、インターネット9を介して受信・記憶することで構成される。
作物価格DB154は、過去(例えば、直近10年分)の作物51の販売価格、卸売価格、小売価格などの価格情報を記憶することで構成される。
【0027】
太陽光発電情報取得手段110は、過去に太陽光パネル4により太陽光発電された電力を示す情報に基づいて、将来太陽光パネル4により太陽光発電される電力の予測情報を取得する。
具体的には、
図6(a)に示すように、過去の日付(時刻を含む)、その日付の太陽光発電電力82(実績)、及び、その日付の天気(実績)の組み合わせをデータセットとし、当該データセットを長期間に亘る多数セット用意して機械学習を行うことで、将来の特定日や特定期間における太陽光発電電力82の予測量を出力可能なプログラム(太陽光発電電力予測モデル)を生成する。
太陽光発電電力82(実績)は太陽光発電電力DB151から取得し、天気(実績)は天気情報DB152から取得すればよい。
例えば、2010年5月1日から10年間の実績を学習する場合、2010年5月1日~2020年4月30日の各日の日付、日付毎の太陽光発電電力82の発電量の実績情報(
図7(a))、及び、日付毎の天気の実績情報(
図7(b))を、日付別に組み合わせたデータセットを用意する。
そして、これらデータセットを、入力層と複数の中間層と出力層とからなるニューラルネットワークに入力することで、日付と天気と太陽光発電電力82との相関関係を自律的に学習させる。
この学習により、日付と天気とを入力すると、対応する太陽光発電電力82を出力するプログラム(太陽光発電電力予測モデル)を生成する(
図6(a)、(b))。
【0028】
例えば、将来の日付を指定すると、その日付の天気(予測)の情報を天気情報提供装置2から取得し、その日付と抽出した天気(予測)の情報とを太陽光発電電力予測モデルに入力する(
図6(b))。
なお、天気(予測)を、サーバ1において予測して当該予測結果を「天気(予測)の情報」として太陽光発電電力予測モデルに入力してもよい。
これにより、太陽光発電電力予測モデルから、その日付の太陽光発電電力82(予測)を出力させることができる(
図6(b))。
このため、2020年5月1日~5月31日までの各日付を指定することで、2020年5月における太陽光発電電力82の発電量の予測情報を取得することができる(
図7(c)参照)。
本実施形態では、30分間隔のデータセットを用意して学習しているため、30分間隔で太陽光発電電力82の発電量(予測値)を出力させることができる(
図7(a)~(c)参照)。
なお、時間間隔は30分以下の間隔(例えば10分)でもよく、30分以上の間隔(例えば、1時間、1日)でもよい。
学習対象に、気温や湿度を加えることもできる。
【0029】
施設需要電力情報取得手段120は、過去に施設7において消費された電力(施設需要電力)を示す情報に基づいて、将来の施設7において消費される電力(施設需要電力)の予測情報を取得する。
具体的には、
図8(a)に示すように、過去の日付(時刻を含む)、その日付の施設需要電力(実績)、その日付の気温・湿度(実績)、及び、その日付の曜日の組み合わせをデータセットとし、当該データセットを多数用意して機械学習を行うことで、将来の特定日や特定期間における施設需要電力の予測量を出力可能なプログラム(施設需要電力予測モデル)を生成する。
施設需要電力(実績)は施設需要電力DB153から取得し、気温・湿度(実績)は天気情報DB152から取得すればよい。
例えば、2010年5月1日から10年間の実績を学習する場合、2010年5月1日~2020年4月30日の各日の日付、日毎の施設需要電力の消費量の実績情報(
図9(a))、日毎の気温・湿度の実績情報(
図7(b))、及び、曜日の情報(
図9(a))を、日別に組み合わせたデータセットを用意する。
そして、これらデータセットを、入力層と複数の中間層と出力層とからなるニューラルネットワークに入力することで、日付と気温・湿度と曜日と施設需要電力との関係を自律的に学習させる。
この学習により、日付と気温・湿度と曜日とを入力すると、対応する施設需要電力を出力するプログラム(施設需要電力予測モデル)を生成する(
図8(a)、(b))。
【0030】
例えば、将来の日付を指定すると、その日付の気温・湿度(予測)の情報を天気情報提供装置2から取得し、その日付と曜日と抽出した気温・湿度(予測)の情報とを施設需要電力予測モデルに入力する処理を行う。
これにより、施設需要電力予測モデルから、その日付の施設需要電力(予測)を出力させることができる(
図8(b))。
このため、2020年5月1日~5月31日までの各日付を指定することで、施設需要電力予測モデルから2020年5月の毎日における施設7の電力の消費量の予測情報を出力させることができる(
図9(b)参照)。
これにより、施設需要電力情報取得手段120は、特定期間における施設7での需要電力の予測情報を取得することができる(
図8(b))。
本実施形態では、30分間隔のデータセットを用意して学習しているため、30分間隔で施設需要電力の消費量(予測値)を出力させることができる(
図9(a)~(b)参照)。
なお、時間間隔は30分以下の間隔(例えば10分)でもよく、30分以上の間隔(例えば、1時間、1日)でもよい。
学習対象に、天気を加えることもできる。
【0031】
作物情報取得手段130は、農地5で育成する作物51に関する情報を取得する。
作物情報取得手段130は、成長率特定手段131、出荷可能期間特定手段132、作物価格情報取得手段133、出荷目標日決定手段134、及び、成長速度判定手段135を備えている。
【0032】
成長率特定手段131は、作物51の成長率を特定する。
具体的には、育成中、定期又は不定期に、ドローン6を農地5や作物51の上空を飛行させ、撮影部により撮影させた作物51の映像をサーバ1に送信し、サーバ1は、受信した作物51の映像について公知の画像認識技術を用いて特徴点を抽出し、当該特徴点から特定される作物51の大きさ、形状、色などに基づいて成長率を特定し、日付と共に記憶する。
例えば、とうもろこしは、播種(育成開始)から8~9日で高さが5cmほどに成長し(成長率約10%)、育成開始から20~30日で高さが10cmほどに成長し(成長率約25%)、育成開始から40~45日で高さが50cmほどに成長し(成長率約50%)、育成開始から50日で雄穂が出て高さが100cmほどに成長し(成長率約58%)、育成開始86日で絹糸が褐色の実が成って収穫可能になる(成長率100%)。
このため、画像認識により特定した作物51の高さ、穂や絹糸の状態に基づいて成長率を特定することができる。
例えば、
図11(a)は、2020年5月4日時点の作物51の成長率は57%であり、2020年5月5日時点の作物51の成長率は58%であり、2020年5月31日時点の作物51の成長率は79%であることを示している。
【0033】
出荷可能期間特定手段132は、成長率に基づいて作物51の出荷可能期間を特定する。
図11(b)は、成長率に基づいて出荷可能期間を特定する方法を示す図である。
同図に示すように、作物51が線形に成長する場合には、回帰式y=ax+b(yは成長率、xは日付)を作成し、yが100%のときの日付xを標準出荷時期とする。
そして、光合成の多少によって変動させることが可能な出荷時期の幅をβ日とすると、その作物51の出荷可能期間は(x-β)日~(x+β)日と特定できる。
本例では、2020年5月31日時点において、作物51の出荷可能期間を特定するものとする。
つまり、前述した成長率(2020年5月4日時点の作物51の成長率:57%、2020年5月5日時点の作物51の成長率:58%、2020年5月31日時点の作物51の成長率:79%など)に基づいて、出荷可能期間を特定する。
この結果、
図11(b)に示すように、出荷可能期間:2020年6月5日~2020年6月15日が特定されたものとする。
なお、出荷可能期間は、光合成の多少だけでなく、農地5の水分量、肥料の多少によっても変動するので、これらの要素を加味した期間を設定することもできる。
【0034】
作物価格情報取得手段133は、過去の作物51の価格に基づいて、出荷可能期間における作物51の価格の予測情報を取得する。
具体的には、過去の日付、作物51の価格(実績)、及び、気温・湿度(実績)の組み合わせをデータセットとし、当該データセットを多数用意して機械学習を行うことで、少なくとも出荷可能期間における作物価格の予測情報を出力可能なプログラム(作物価格予測モデル)を生成する。
なお、天気を学習対象に含めてもよい。
過去の作物価格(実績)は作物価格DB154(
図12(a))から取得し、気温・湿度(実績)は天気情報DB152(
図7(b))から取得すればよい。
学習方法は、太陽発電電力予測モデルにおける学習方法と同様であるため詳細な説明を省略する。
これにより、作物価格予測モデルから、将来の日付の作物価格(予測)を出力させることができる。
このため、出荷可能期間を含む2020年6月1日~6月20日を指定することで、
図12(b)に示すように、その期間の毎日の作物価格の予測情報を得ることができる。
【0035】
出荷目標日決定手段134は、出荷可能期間における作物51の価格の予測情報に基づいて出荷目標日を決定する。
具体的には、出荷可能期間のうち作物51の価格が高価格の日を出荷目標日に決定する。
本例の場合、
図12(b)や
図13に示すように、2020年6月12日が出荷可能期間の中で最高価格(223円/kg)なのでこの日を出荷目標日に決定する。
【0036】
成長速度判定手段135は、出荷目標日に対する作物51の成長速度を判定する。
例えば、ある日の作物51の成長率がx%であることにもとづき、その作物51の成長率が100%になると予測される日が出荷目標日より早い場合には、成長速度は「早い」と判定し、他方、作物51の成長率が100%になると予測される日が出荷目標日より遅い場合には、成長速度は「遅い」と判定する。
具体例として、2020年5月31日時点において、作物51の成長率は79%であるため標準出荷日は2020年6月10日であるところ、出荷目標日は2020年6月12日であるため、その時点において成長速度は「早い」と判定される。
その後、例えば、2020年6月5日時点における作物51の成長率に基づき導出した標準出荷日が2020年6月14日である場合、その時点において成長速度は「遅い」と判定される。
【0037】
傾斜角度決定手段160は、太陽光パネル4により太陽光発電される電力の予測情報、施設7において消費される電力の予測情報、及び、作物51に関する情報(作物51の成長速度)に基づいて、傾斜角の角度を決定する。
そして、制御手段140は、決定された角度に傾斜角を調整する。
【0038】
「太陽光発電される電力」及び「施設において消費される電力」を用いたのは、それぞれの多寡によって、施設7における系統電力81がピーク値を超過して高額負担になる場合や、その場合でも太陽光発電量が多い場合には高額負担を回避又は軽減できるところ、傾斜角を調整することでこれらをコントロールするためである。
「作物の成長速度」を用いたのは、作物51が高価格で出荷できる日に成長率100%を目指すところ、成長速度が早い場合と遅い場合とで育成方法が異なるところ、これを、傾斜角を調整することでコントロールするためである。
具体的には、成育中において、定期(例えば毎日)又は不定期に、
図14に示すa~hの判定パターンに基づいて傾斜角を決定する。
【0039】
図14の「成長速度」について、「早」は、その日の作物51の成長率に基づき特定される標準出荷日が出荷目標日より早いことが予測されることを示し、「遅」は、その日の作物51の成長率に基づき特定される標準出荷日が出荷目標日より遅いことが予測されることを示す。
図14の「太陽光発電電力」について、「高」は、その日の太陽光発電電力82の発電量が高いことを示し、「低」は、その日の太陽光発電電力82の発電量が低いことを示す。
なお、太陽光発電電力82の発電量についての「高/低」は、基準発電量に基づいて判定してもよく、施設需要電力の電力量と比較した相対的な判定でもよい。
図14の「施設需要電力」について、「高」は、その日の施設需要電力量が高いことを示し、「低」は、その日の施設需要電力量が低いことを示す。
施設需要電力量についての「高/低」は、基準電力量(電気料金が高額になるか否かの境界であるピーク値)に基づいて判定してもよく、太陽光発電電力82の電力量と比較した相対的な判定でもよい。
【0040】
パターンaは、当日において、成長速度「早」、太陽光発電電力「高」、施設需要電力「高」の場合であり、この場合、当日の太陽光パネル4の傾斜角を30°に決定・調整する。
傾斜角を30°にすることで作物51に対する太陽光の照射量を最小にでき、成長速度を遅くできるからである。つまり、成長を遅くすることで、成長完了日を、作物51が高価になる目標出荷日に一致又は近づけることができる。
また、傾斜角を30°にすることで太陽光パネル4に対する太陽光の照射量を最大にでき、太陽光発電電力82の発電量を増やすことができる。つまり、系統電力81の消費を抑え、電力コストの低減を図ることができる。
また、当日の施設需要電力は「高」であり、系統電力81の消費量がピーク値を超える可能性が高いことから、傾斜角を30°にすることで、系統電力81がピーク値を超えないように抑えることができる。つまり、電力コストの低減を二重に図ることができる。
このように、パターンaにおいて傾斜角を30°に決定・調整することで、作物51の高価格化や電力コストの低減を図ることができる。
【0041】
パターンbは、当日において、成長速度「早」、太陽光発電電力「高」、施設需要電力「低」の場合であり、この場合、当日の太陽光パネル4の傾斜角を30°に決定・調整する。
傾斜角を30°にすることで作物51に対する太陽光の照射量を最小にでき、成長速度を遅くできるからである。つまり、成長を遅くすることで、成長完了日を、作物51が高価になる目標出荷日に一致又は近づけることができる。
また、傾斜角を30°にすることで太陽光パネル4に対する太陽光の照射量を最大にでき、太陽光発電電力82の発電量を増やすことができる。つまり、系統電力81の消費を抑えることで電力コストの低減を図ることができる。
なお、当日の施設需要電力は「低」であり、系統電力81の消費量がピーク値を超える可能性は低い。
このように、パターンbにおいて傾斜角を30°に決定・調整することで、作物51の高価格化や電力コストの低減を図ることができる。
【0042】
パターンcは、当日において、成長速度「早」、太陽光発電電力「低」、施設需要電力「高」の場合であり、この場合、当日の太陽光パネル4の傾斜角を30°に決定・調整する。
傾斜角を30°にすることで作物51に対する太陽光の照射量を最小にでき、成長速度を遅くできるからである。つまり、成長を遅くすることで、成長完了日を、作物51が高価になる目標出荷日に一致又は近づけることができる。
当日の施設需要電力は「高」であり、太陽光発電電力82は「低」である。
このため、当日は、系統電力81の消費量がピーク値を超える可能性があるが、太陽光発電によりピーク値を抑えるほどの大きな電力供給は期待できない。
しかしながら、この場合でも、傾斜角を30°にすることで、太陽光パネル4に対する太陽光の照射量を最大にでき、系統電力81の消費量(電力コスト)を極力抑えることができる。
このように、パターンcにおいて傾斜角を30°に決定・調整することで、作物51の高価格化や電力コストの低減を図ることができる。
【0043】
パターンdは、当日において、成長速度「遅」、太陽光発電電力「高」、施設需要電力「高」の場合であり、この場合、当日の太陽光パネル4の傾斜角を30°~120°の範囲内の角度に決定・調整する。
太陽光発電電力82の発電量と、作物51に対する太陽光の照射量とは、トレードオフの関係があり、成長速度を早くすることを優先し過ぎると電力コストの面において不利益が著しく大きくなるおそれがあり、他方、電力コストの低減を優先し過ぎると作物価格が著しく低下するおそれがあるからである。
このため、例えば、30°と120°の中間値である75°を傾斜角に決定・調整することができる。
また、運営方針により、作物51の成長速度や価格をバランスよく調整するのであれば75°~120°の間(例えば97.5°)に決定・調整してもよく、電力コストの低減を比較的優先するのであれば30°~75°の間(例えば、52.5°)に決定・調整してもよい。
作物51の売上額と電力コストとに基づき算出される総合コストに着目し、総合コストが最小となる角度に傾斜角を決定・調整することもできる。
なお、総合コストが最小となる傾斜角に決定・調整する構成については、後記「変形例4」にて詳細に説明する。
【0044】
パターンeは、当日において、成長速度「早」、太陽光発電電力「低」、施設需要電力「低」の場合であり、この場合、当日の太陽光パネル4の傾斜角を30°に決定・調整する。
傾斜角を30°にすることで作物51に対する太陽光の照射量を最小にでき、成長速度を遅くできるからである。つまり、成長を遅くすることで、成長完了日を、作物51が高価になる目標出荷日に一致又は近づけることができる。
当日の太陽光発電電力82は「低」であり大きな電力供給は期待できないが、施設需要電力は「低」であることから、系統電力81の消費量がピーク値を超える可能性はないため、電力コストが高額になる可能性は低い。
このように、パターンeにおいて傾斜角を30°に決定・調整することで、電力コストの問題なく、作物51の高価格化を図ることができる。
【0045】
パターンfは、当日において、成長速度「遅」、太陽光発電電力「高」、施設需要電力「低」の場合であり、この場合、当日の太陽光パネル4の傾斜角を120°に決定・調整する。
傾斜角を120°にすることで作物51に対する太陽光の照射量を最大にでき、成長速度を早くできるからである。つまり、成長を早くすることで、成長完了日を、作物51が高価になる目標出荷日に一致又は近づけることができる。
当日の施設需要電力は「低」であるため、系統電力81の消費量がピーク値を超える可能性は少ない。つまり、電力コストが高額になる可能性は低い。
このように、パターンfにおいて傾斜角を120°に決定・調整することで、電力コストの問題なく、作物51の高価格化を図ることができる。
なお、パターンdと同様、作物51の売上額と電力コストとに基づき算出される総合コストに着目し、総合コストが最小となる傾斜角を決定・調整することもできる。
【0046】
パターンgは、当日において、成長速度「遅」、太陽光発電電力「低」、施設需要電力「高」の場合であり、この場合、当日の太陽光パネル4の傾斜角を30°~120°の範囲内の角度に決定・調整する。
太陽光発電電力82の発電量と、作物51に対する太陽光の照射量とは、トレードオフの関係があり、成長速度を早くすることを優先し過ぎると電力コストの面において不利益が著しく大きくなるおそれがあり、他方、電力コストの低減を優先し過ぎると作物価格が著しく低下するおそれがあるからである。
このため、例えば、30°と120°の中間値である75°を傾斜角に決定・調整することができる。
また、運営方針により、作物51の成長速度や価格をバランスよく調整するのであれば75°~120°の間(例えば97.5°)に決定・調整してもよく、電力コストの低減を比較的優先するのであれば30°~75°の間(例えば、52.5°)に決定・調整してもよい。
パターンdと同様、作物51の売上額と電力コストとに基づき算出される総合コストに着目し、総合コストが最小となる傾斜角を決定・調整することもできる。
【0047】
パターンhは、当日において、成長速度「遅」、太陽光発電電力「低」、施設需要電力「低」の場合であり、この場合、当日の太陽光パネル4の傾斜角を120°に決定・調整する。
傾斜角を120°にすることで作物51に対する太陽光の照射量を最大にでき、成長速度を早くできるからである。つまり、成長を早くすることで、成長完了日を、作物51が高価になる目標出荷日に一致又は近づけることができる。
当日の太陽光発電電力82は「低」であり大きな電力供給は期待できないが、施設需要電力は「低」であることから、系統電力81の消費量がピーク値を超える可能性はないため、電力コストが高額になる可能性は低い。
このように、パターンhにおいて傾斜角を120°に決定・調整することで、電力コストの問題なく、作物51の高価格化を図ることができる。
【0048】
このように、判定手段180は、太陽光発電される電力の予測情報、施設7において消費される電力の予測情報、及び、作物51に関する情報に基づいて、施設7に対する太陽光発電電力82の供給と、作物51の成長速度とのうちの一方を優先すると判定する。
そして、傾斜角度決定手段160は、判定手段180により、太陽光発電電力82の供給の方を優先すると判定された場合、太陽光パネル4に太陽光を照射させ易い角度(30°又は30°寄りの角度)に傾斜角の角度を決定し、作物51の成長速度の方を優先すると判定された場合、太陽光パネル4に太陽光を照射させ難い角度(120°又は120°寄りの角度)に傾斜角の角度を決定する。
【0049】
(パネル制御方法)
パネル制御方法の処理手順について
図15~
図18を参照しながら説明する。
図15は、本発明のパネル制御方法における処理手順を示すメインフローチャートである。
【0050】
図15に示すように、パネル制御方法では、太陽光発電電力82の予測情報を取得し(S101)、施設需要電力(施設7で消費される電力)の予測情報を取得し(S102)、作物情報を取得する(S103)処理を行う。
なお、S101~S103は、上記順序に限らず、如何なる順序でもよい。
【0051】
図16は、太陽光発電電力82の予測情報を取得する手順を示すサブフローチャートである。
同図に示すように、太陽光発電電力82の予測情報の取得では、まず、過去の日付と天気と太陽光発電電力82との相関関係を学習する(S201)。
具体的には、過去の日付、太陽光発電電力82(実績)、及び、天気(実績)の組み合わせ(
図7(a),(b))をデータセットとし、当該データセットを多数セット用意して機械学習を行う(
図6)。
学習の結果、将来における太陽光発電電力82の予測量を出力可能な太陽光発電電力予測モデルが生成される(S202))。
次に、太陽光発電電力予測モデルに所定情報(将来の特定期間の各日付)を入力することで、特定期間における太陽光発電電力82の予測情報を日付毎に出力させる(S203)。
これにより、太陽光発電情報取得手段110は、将来の特定期間に亘る太陽光発電電力82の予測情報を取得する(
図7(c))。
【0052】
図17は、施設需要電力の予測情報を取得する手順を示すサブフローチャートである。
同図に示すように、施設需要電力の予測情報の取得では、まず、過去の日付と気温・湿度と曜日と施設需要電力との相関関係を学習する(S301)。
具体的には、過去の日付、施設需要電力(実績)、気温・室温(実績)、及び、曜日の組み合わせ(
図9(a),
図7(b))をデータセットとし、当該データセットを多数セット用意して機械学習を行う(
図8)。
学習の結果、将来における施設需要電力の予測量を出力可能な施設需要電力予測モデルが生成される(S302))。
次に、施設需要電力予測モデルに所定情報(将来の特定期間の各日付)を入力することで、特定期間における施設需要電力の予測情報を出力させる(S303)。
これにより、施設需要電力情報取得手段120は、将来の特定期間における施設需要電力の予測情報を取得する(
図9(b))。
【0053】
図18は、作物情報を取得する手順を示すサブフローチャートである。
同図に示すように、作物情報の取得では、まず、作物の成長率を特定する(S401)。
具体的には、成長率特定手段131が、作物51の成長率を特定する。
より具体的には、ドローン6を農地5や作物51の上空を飛行させ、撮影部により撮影させた作物51の映像をサーバ1に送信し、サーバ1は、受信した作物51の映像について公知の画像認識技術を用いて特徴点を抽出し、当該特徴点から特定される作物51の大きさ、形状、色などに基づいて成長率を特定し、日付と共に記憶する(
図11(a))。
【0054】
次に、出荷可能期間を特定する(S402)。
具体的には、出荷可能期間特定手段132が、作物51の成長率に基づいて当該作物51の出荷可能期間を特定する。
より具体的には、作物51の成長率に基づきその作物51の標準出荷日を特定し、当該標準出荷日に±β日を加えた期間を出荷可能期間として特定する(
図11(b))。
なお、標準出荷日を機械学習を用いて予測することもできる。
この場合、成長率と日付との相関関係を学習することで将来の成長率を入力すると日付が出力されるモデルを生成し、当該モデルに成長率100%を入力することで標準出荷日の予測日を出力させればよい。
【0055】
続いて、作物価格情報を取得する(S403)。
具体的には、作物価格情報取得手段133が、過去の作物51の価格(
図12(a))に基づいて、出荷可能期間における作物51の価格の予測情報を取得する(
図12(b))。
より具体的には、過去の日付、作物51の価格(実績)、及び、気温・湿度(実績)の組み合わせをデータセットとし、当該データセットを多数用意して機械学習を行うことで、出荷可能期間における作物価格の予測情報を出力可能なプログラム(作物価格予測モデル)を生成する。
そして、この作物価格予測モデルに将来の日付を入力することで、その日付の作物価格(予測)を出力させることができる。
【0056】
次に、出荷目標日を決定する(S404)。
具体的には、出荷目標日決定手段134が、出荷可能期間における作物51の価格の予測情報に基づいて出荷目標日を決定する。
より具体的には、出荷可能期間のうち作物51の価格が高価格の日を出荷目標日に決定する(
図12(b)、
図13)。
【0057】
続いて、成長速度を判定する(S405)。
具体的には、成長速度判定手段135が、出荷目標日に対する作物51の成長速度を判定する。
例えば、ある日の作物51の成長率がx%であることにもとづき、その作物51の成長率が100%になると予測される日が出荷目標日より早い場合には、成長速度は「早い」と判定し、他方、作物51の成長率が100%になると予測される日が出荷目標日より遅い場合には、成長速度は「遅い」と判定する。
【0058】
メインフローチャートに戻り、太陽光パネル4の傾斜角を決定する(S104)。
具体的には、傾斜角度決定手段160が、太陽光発電される電力の予測情報、施設7において消費される電力の予測情報、及び、作物51に関する情報(作物51の成長速度)に基づいて、傾斜角の角度を決定する(
図14)。
より具体的には、判定手段180により、太陽光発電電力82の供給の方が優先度が高いと判定された場合、太陽光パネル4に太陽光を照射させ易い角度に傾斜角の角度を決定し、作物51の成長速度の方が優先度が高いと判定された場合、太陽光パネル4に太陽光を照射させ難い角度に傾斜角の角度を決定する(
図14)。
また、後述の変形例4に示すように、太陽光発電される電力の予測情報、施設7において消費される電力の予測情報、及び、作物51に関する情報に基づいて、施設7における電力のコストと、作物51の売上額とを算出し、その算出結果に基づいて傾斜角の角度を決定することもできる。
【0059】
そして、決定した傾斜角に太陽光パネルを可動させる(S105)。
具体的には、制御手段140が、太陽光発電システム4Sの制御処理部420に命令を行い、制御処理部420が各太陽光パネル4の傾斜角可動部410を動作させることで、決定した角度に傾斜角を変動させる。
【0060】
(変形例1)
農地5をドローン6(撮影部)で撮影し、その映像に基づき農地5(土壌)に含まれる水分量を特定したり、予め農地5に土壌水分センサーを設けることで農地5に含まれる水分量を特定することもできる。
図11(a)の図表には、農地5に含まれる水分量の検出結果が示されている。
例えば、サーバ1において、過去の日付、作物51の成長率(実績)、農地5の水分量(実績)の相関関係を学習することで、将来の日付に対し、農地5の水分量を加味した作物51の成長率(予測)を導出することができる。
また、傾斜角の調整に加え、ドローン6による作物51に対する水やりを制御することで作物51の成長速度を早めたり遅めたりすることができる。
さらに、ドローン6による肥料の散布を制御することで作物51の成長速度を早めたり遅めたりすることもできる。
【0061】
(変形例2)
傾斜角の実績を記憶・加味して、太陽光発電による発電量の予測情報を導出することもできる。
この場合、太陽光発電情報取得手段110は、過去に太陽光パネル4により太陽光発電された電力、及び、当該電力を発電されたときの太陽光パネル4の傾斜角を示す情報に基づいて、将来太陽光パネル4により太陽光発電される電力、及び、当該電力が発電されるときの太陽光パネルの傾斜角を示す情報とを取得する。
これにより、例えば、太陽光発電電力予測モデルの生成において、過去の日付、天気(実績)、太陽光発電電力82(実績)に加え、その電力を発電したときの太陽光パネル4の傾斜角との相関関係を学習させることで、将来、どのような傾斜角で、どれくらいの太陽光発電を行うのか(発電量)を予測情報として出力させることができる。
これにより、例えば、特定期間における太陽光発電による電力量と、対応する傾斜角とを日毎に予測することができる。
【0062】
(変形例3)
変形例2に加え、傾斜角の実績を記憶・加味して、作物価格の予測情報を導出することもできる。
この場合、作物価格情報取得手段133は、過去の作物51の価格、及び、太陽光パネル4の傾斜角を示す情報に基づいて、出荷可能期間における作物51の価格の予測情報を取得することができる。
例えば、出荷可能期間における作物価格は、過去の日付、作物価格(実績)、気温・湿度(実績)に加え、太陽光パネル4の傾斜角との相関関係を学習させることで、将来、どのような傾斜角でどれくらいの作物価格で販売可能かを予測情報として出力可能なモデル(作物価格予測モデル)を生成することができる。
これにより、例えば、特定期間における作物51の価格と、対応する傾斜角とを日毎に予測することができる。
【0063】
(変形例4)
変形例3の構成を備えることで、作物価格と電力コストとに基づき算出される総合コストが最小となる傾斜角を決定・調整する構成を備えることもできる。
すなわち、サーバ1の算出手段170は、太陽光発電される電力の予測情報、施設7において消費される電力の予測情報、作物51に関する情報(価格情報)、及び、傾斜角の予測情報に基づいて、施設7における電力のコストと、作物51の売上額とを算出し、傾斜角度決定手段160が、算出手段170の算出結果に基づいて傾斜角の角度を決定する。
以下、一例を説明する。
【0064】
「施設7における電力のコストA」は、公知の電気料金の計算式に基づく下記式1により算出できる。
A=基本料金(基本料金単価×契約電力)+力率割引・割増し+電力量料金(使用電力量(施設需要電力の電力量(予測)-太陽光発電電力の発電量(予測))×電力量料金単価)+燃料費調整額(使用電力量(施設需要電力の電力量(予測)-太陽光発電電力の発電量(予測))×燃料費調整額単価)+再生可能エネルギー発電促進賦課金(使用電力量(施設需要電力の電力量(予測)-太陽光発電電力の発電量(予測))×再生可能エネルギー発電促進賦課金単価)・・・・・式1
ここで、太陽光発電電力の発電量は、太陽光パネル4に対する太陽光の照射量に比例することから、傾斜角α=30°のときに最大であり、傾斜角α=120°のときに最小なので、発電量Mは下記式2により算出できる。
M=-αX1+Y1(※X1及びY1は係数)・・・・・式2
このため、式1は、下記式3により表すことができる。
A=基本料金(基本料金単価×契約電力)+力率割引・割増し+電力量料金(使用電力量(施設需要電力の電力量(予測)-(-αX1+Y1))×電力量料金単価)+燃料費調整額(使用電力量(施設需要電力の電力量(予測)-(-αX1+Y1))×燃料費調整額単価)+再生可能エネルギー発電促進賦課金(使用電力量(施設需要電力の電力量(予測)-(-αX1+Y1))×再生可能エネルギー発電促進賦課金単価)・・・・・式3
【0065】
「作物の売上額B」は、下記式4により算出することができる。
B=作物51の価格×単位面積あたりの作物51の重量×面積・・・・式4
ここで作物51の価格は、作物51に対する太陽光の照射量が多いほど高価格で太陽光の照射量が少ないほど低価格になると仮定する。
そうすると、作物51は、太陽光パネル4の傾斜角αが120°に近いほど高価格で、傾斜角αが30°に近いほど低価格になるため、作物51の価格Nは下記式5により算出することができる。
N=αX2+Y2(※X2及びY2は係数)・・・・・式5
このため、式4は、下記式6により表すことができる。
B=(αX2+Y2)×単位面積あたりの作物の重量×面積・・・・・式6
このため、式3により算出される「A」から、式6により算出される「B」を減じた結果が最小になる傾斜角αを30°~120°の範囲内から特定し、当該特定した傾斜角を「総合コストが最小となる傾斜角」として決定・調整すればよい。
ところで、「契約電力」(式1等参照)は、「その月の最大需要電力と、前11ヶ月の最大需要電力のうち、いずれか大きい値」により決定する。
このため、施設需要電力の電力量(消費量)のピークを抑えることで「契約電力」の上昇を抑えることができる。
したがって、施設需要電力の電力量がピーク値に到達することが見込める場合には、最優先で太陽光発電電力の発電量を増やすよう、太陽光パネル4の傾斜角αを制御することもできる。
つまり、この場合、傾斜角αを太陽光に対し垂直になる角度に調整する。
これにより、作物の成長が一時的に阻害されるおそれがあるが、長期的には総合コストを低下することが期待できる。
【0066】
(変形例5)
ドローン6の役割を、水やり、肥料の散布に限定せず、点検や農薬散布を加えることもできる。
例えば、ドローン6に農地5の点検として監視映像を撮影させ、監視映像をサーバ1に送信する。
サーバ1は、受信した監視映像を画像認識・解析して作物51の病気を発見したり、病気の種別や程度を分析することができる。
サーバ1は、病気を発見した場合には、その病気の種別や程度に応じた農薬を選択し、選択された農薬をドローン6に散布させる。
【0067】
(変形例6)
太陽光パネル4の傾斜角αは、「季節に応じて」且つ「作物の種類に応じて」最適な角度に調整することができる。
例えば、春(3月~5月)に収穫が見込まれる作物Aや、夏(6月~9月)に収穫が見込まれる作物Bなど、その季節にしか収穫できなかったり、その季節に高価に取引きされる作物がある。
例えば、作物Aについては、対象季節である春(3月~5月)における施設電力量及び太陽光発電量並びに作物価格の予測値を予め取得し、その季節において作物Aが高価な出荷日に成長率が100%になるように太陽光パネル4の傾斜角αを設定・制御すると、作物Aを好適な状態で収穫・出荷できる。
サーバ1の構成としては、傾斜角度決定手段160が、太陽光発電される電力の予測情報、施設において消費される電力の予測情報、及び、作物に関する情報(作物の種類及び季節を特定可能な情報を含む)に基づいて、作物の種類毎に、太陽光パネル4の傾斜角αの角度を決定する。
詳細には、作物Aの成長率を特定し(成長率特定手段131)、過去の作物Aの価格に基づいて対象季節(春)における作物Aの価格の予測情報を取得し(作物価格情報取得手段133)、作物Aの価格の予測情報に基づいて出荷目標日を決定し(出荷目標日決定手段134)、作物Aの成長速度を判定する(成長速度判定手段135)。
そして、傾斜角度決定手段160は、対象季節(春)において太陽光発電される電力の予測情報、対象季節(春)において施設にて消費される電力の予測情報、及び、作物Aの成長速度に基づいて、傾斜角の角度を決定する。
作物Bについても同様の制御を行えばよい。
このように、本発明によれば、季節及び作物の種類に応じて、太陽光パネル4の傾斜角αを最適に調整することができる。
【0068】
以上説明したように、本発明のパネル制御システムSにおいては、太陽光パネル4により太陽光発電される電力の予測情報を取得する太陽光発電情報取得手段110と、施設7において消費される電力の予測情報を取得する施設需要電力情報取得手段120と、農地5で育成する作物51に関する情報を取得する作物情報取得手段130と、太陽光発電される電力の予測情報、施設7において消費される電力の予測情報、及び、作物51に関する情報に基づいて、傾斜角αの角度を決定する傾斜角度決定手段160と、決定された角度に傾斜角αを調整する制御手段140と、を備える。
これにより、電力コストの最小化、及び、作物51の販売価格の最大化を図ることができる。
【0069】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、パネル制御システムSの構成は、上述の実施形態に限らず、一装置の構成の一部又は全部を他の装置が備えることもできる。
また、パネル制御方法及びパネル制御プログラムにおける処理手順は、上記手順に限らず、一部の手順が変更されていてもよい。
【符号の説明】
【0070】
S:パネル制御システム、1:サーバ、110:太陽光発電情報取得手段、120:施設需要電力情報取得手段、130:作物情報取得手段、131:成長率特定手段、132:出荷可能期間特定手段、133:作物価格情報取得手段、134:出荷目標日決定手段、135:成長速度判定手段、140:制御手段、150データベース、151:太陽光発電電力DB、152:天気情報DB、153:施設需要電力DB、154:作物価格DB、160:傾斜角度決定手段、170:算出手段、180:判定手段、2:天気情報提供装置、4:太陽光パネル、4S:太陽光発電システム、410:傾斜角可動部、411:回転軸、412:ウォーム、413:ウォームホイール、420:制御処理部、430:発電量管理部、5:農地、51:作物、6:ドローン、7:施設、7S:施設管理システム、710:電気機器、711:消費電力管理部、81:系統電力、82:太陽光発電電力、9:インターネット、α:傾斜角