(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008588
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】高分子被覆した低誘電正接シリカゾル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09C 3/10 20060101AFI20240112BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240112BHJP
C08K 9/06 20060101ALI20240112BHJP
C09D 17/00 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
C09C3/10
C08L101/00
C08K9/06
C09D17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110580
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】江原 和也
(72)【発明者】
【氏名】中田 豪
(72)【発明者】
【氏名】田所 真介
【テーマコード(参考)】
4J002
4J037
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002BC021
4J002BD151
4J002BG021
4J002BK001
4J002CC031
4J002CD001
4J002CF211
4J002CH071
4J002CK021
4J002CM021
4J002CM041
4J002DJ016
4J002FB266
4J002GQ00
4J002GQ01
4J002GQ05
4J037AA18
4J037CB04
4J037CB07
4J037CB08
4J037CB10
4J037CB17
4J037CC13
4J037CC28
4J037DD05
4J037DD07
4J037DD23
4J037FF11
(57)【要約】
【課題】1GHzにおける誘電正接が0.02以下であるシリカ粒子及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】シリル化高分子が粒子表面の少なくとも一部を被覆してなるか又は粒子表面の少なくとも一部に結合している粒子であって、平均一次粒子径が5~1000nmであり、1GHzにおける誘電正接が0.02以下である表面修飾シリカ粒子及びその製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリル化高分子が粒子表面の少なくとも一部を被覆してなるか又は粒子表面の少なくとも一部に結合している粒子であって、平均一次粒子径が5~1000nmであり、1GHzにおける誘電正接が0.02以下である表面修飾シリカ粒子。
【請求項2】
前記シリル化高分子が、式(1)で表される構造単位及び式(2)で表される構造単位を有するシリル化高分子である、請求項1に記載の表面修飾シリカ粒子。
【化1】
(式中、
Xは結合手を示し、
R
1は水素原子又はメチル基を示し、
R
2は水素原子の置換基であり、アルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基、アルケニル基、アシルオキシアルキル基、又はアクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、スルホニル基、もしくはシアノ基を有する有機基、又はこれらの組み合わせであり、
aは0~5の整数を示し、
R
3はアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、
R
4はアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基、アルケニル基、アシルオキシアルキル基、又はアクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、スルホニル基、もしくはシアノ基を有する有機基、又はこれらの組み合わせであり、
A
1は炭素原子数1~10の炭化水素基を示し、
bは1~3の整数を示し、cは3-bを示し、
dは1~4の整数を示す。)
【請求項3】
前記シリル化高分子が、式(3)で表される構造単位を含むシリル化高分子である、請求項1に記載の表面修飾シリカ粒子。
【化2】
(式中、
R
1は水素原子又はメチル基を示し、
R
2は水素原子の置換基であり、それぞれ独立にアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基、アルケニル基、アシルオキシアルキル基、又はアクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、スルホニル基、もしくはシアノ基を有する有機基、又はそれらの組み合わせであり、
R
4はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基、アルケニル基、アシルオキシアルキル基、又はアクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、スルホニル基、もしくはシアノ基を有する有機基、又はそれらの組み合わせであり、
R
3はアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、
A
2は炭素原子数1~10の炭化水素基を示し、
aは0~5の整数を示し、bは1~3の整数を示し、cは3-bを示す。)
【請求項4】
前記シリル化高分子が、式(4)で表される構造単位を含むシリル化高分子である、請求項1に記載の表面修飾シリカ粒子。
【化3】
(式中、
R
1は水素原子又はメチル基を示し、
R
2は水素原子の置換基であり、それぞれ独立にアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基、アルケニル基、アシルオキシアルキル基、又はアクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、スルホニル基、もしくはシアノ基を有する有機基、又はそれらの組み合わせであり、
R
4はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基、アルケニル基、アシルオキシアルキル基、又はアクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシ基、アルコ
キシ基、エステル基、スルホニル基、もしくはシアノ基を有する有機基、又はそれらの組み合わせであり、
R
3はアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、
aは0~5の整数を示し、
bは1~3の整数を示し、cは3-bを示す)
【請求項5】
前記シリル化高分子が、500~100,000の数平均分子量を有する、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の表面修飾シリカ粒子。
【請求項6】
前記シリル化高分子が、分子量分布(Mw/Mn)=1~2を有する、
請求項5に記載の表面修飾シリカ粒子。
【請求項7】
前記シリル化高分子が、共有結合により前記シリカ粒子の少なくとも一部の表面に結合している、
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の表面修飾シリカ粒子。
【請求項8】
前記シリル化高分子が、前記シリカ粒子の表面積1平方nm当たり、0.1~1.5個/nm2の割合で結合している、
請求項7に記載の表面修飾シリカ粒子。
【請求項9】
下記(i)又は(ii)を満たし且つ加水分解性官能基を有するシリル化高分子からなる表面修飾剤で被覆された、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の表面修飾シリカ粒子。
(i)前記表面修飾剤の双極子間力が0.01~2.0(MPa)1/2である。
(ii)前記表面修飾剤の加水分解性官能基の当量、又は前記加水分解性官能基に由来するヒドロキシ基の当量が150~4000(g/eq)である
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の表面修飾シリカ粒子が、水、アルコール類、ケトン類、炭化水素類、アミド類、エステル類、エーテル類又はアミン類から選ばれる少なくとも1種の溶媒に分散した、シリカゾル。
【請求項11】
下記(A)工程~(C)工程:
(A)工程:平均一次粒子径5~1000nmを有するシリカ粒子を分散質とし炭素原子数1~4のアルコールを分散媒とするシリカゾルを準備する工程、
(B)工程:アルコール類、ケトン類、炭化水素類、アミド類、エステル類、エーテル類又はアミン類から選ばれる少なくとも1種の溶媒に溶解した前記式(3)又は式(4)で表されるシリル化高分子と、(A)工程のシリカゾルを40~80℃で0.1~10時間の加熱撹拌を行う工程、
(C)工程:(B)工程後のシリカゾルから前記溶媒を除去する工程、
を含む、
請求項3又は請求項4に記載のシリカ粒子の製造方法。
【請求項12】
(B)工程及び(C)工程のいずれか一方又は両方が減圧下で行われる、
請求項11に記載のシリカ粒子の製造方法。
【請求項13】
(A)工程で準備するシリカゾルが、水分を0.01~10質量%含有するものである、請求項11に記載のシリカ粒子の製造方法。
【請求項14】
(A)工程で準備するシリカゾルが、200~380℃、2MPa~22MPaで水熱合成された水性シリカゾルを炭素原子数1~4のアルコールに溶媒置換したシリカゾルであ
る、
請求項11に記載のシリカ粒子の製造方法。
【請求項15】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の表面修飾シリカ粒子と、有機樹脂が組み合わされた複合材料。
【請求項16】
前記有機樹脂が、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ベンゾオキサジン、フェノール樹脂、アクリル樹脂、マレイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、シクロオレフィンポリマー、不飽和ポリエステル、ビニルトリアジン、架橋性ポリフェニレンオキサイド及び硬化性ポリフェニレンエーテルからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項15に記載の複合材料。
【請求項17】
半導体デバイス材料、銅張積層板、集積回路、フレキシブル配線材料、フレキシブルディスプレイ材料、アンテナ材料、光配線材料及びセンシング材料からなる群から選択される用途を有する、請求項15又は請求項16に記載の複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電正接(tanδ)の低いシリカ粒子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、5Gなどの通信分野における情報通信量の増加に伴い、電子機器や通信機器等において高周波数帯の活用が広がっている。
高周波数帯の適用に伴い、回路信号の伝送損失が大きくなる問題が生じるため、一般的にアンテナ・回路・基板等の電気電子部品を構成する絶縁体には、誘電正接の低い材料が用いられる。絶縁体材料に用いられるポリマー材料は、一般に誘電率が低いが、誘電正接は高いものが多い。一方、セラミック材料はその逆の特性を持つものが多い。そのため、これら材料を組み合わせ、低誘電率と低誘電正接の両特性を両立させたセラミックフィラー充填ポリマー材料が普及している。例えば特許文献1には、比誘電率と誘電損失が低い誘電体用樹脂組成物を狙い、熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂中に無機物質(無機マグネシウム微粒子)を配合した組成物が提案されている。
【0003】
セラミックフィラー(無機充填材)の一例として、マイクロオーダーの大きさを有する溶融シリカが一般に広く普及している(特許文献2)。ただし溶融シリカは製造上生じる粗大粒子が成形品の性能に大きな影響を与えることが課題とされている。これに対し、平均粒子径がナノオーダーのシリカ粒子は、製造上の粗大粒子が生じにくく、且つ、ろ過や遠心分離が可能であり、万が一、粗大粒子が生じた場合においても分離・除去することが容易であるという点で優位とされている。またナノオーダーの粒子は、透明ポリマー材料への適用が可能であることやマイクロオーダーのフィラーに比べて複合効果が大きいなどの様々なメリットがあるとされている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-24916号公報
【特許文献2】特許第6793282号公報
【特許文献3】特許第6813815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したセラミックフィラーにおいて、ナノオーダーの粒子は様々な長所を有するものの、既存のナノオーダーの粒子は誘電正接が高く、高周波数帯で作動する電子機器等の材料への適用は困難であった。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、低誘電正接を有するナノオーダーの粒子を提供すること、具体的には、1GHzにおける誘電正接が0.02以下であるシリカ粒子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく誠意検討を重ねた結果、平均一次粒子径が5nm~1000nmであり、前記シリカ粒子表面の少なくとも一部をシリル化粒子で修飾したシリカ粒子(表面修飾シリカ粒子)が、1GHzにおける誘電正接(tanδ)が0.02以下という低い誘電特性を示すことを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち本発明は、
第1観点として、シリル化高分子が粒子表面の少なくとも一部を被覆してなるか又は粒子表面の少なくとも一部に結合している粒子であって、平均一次粒子径が5~1000nmであり、1GHzにおける誘電正接が0.02以下であるシリカ粒子に関する。
第2観点として、前記シリル化高分子が、式(1)で表される構造単位及び式(2)で表される構造単位を有するシリル化高分子である、第1観点に記載の表面修飾シリカ粒子に関する。
【化1】
(式中、
Xは結合手を示し、
R
1は水素原子又はメチル基を示し、
R
2は水素原子の置換基であり、アルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基、アルケニル基、アシルオキシアルキル基、又はアクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、スルホニル基、もしくはシアノ基を有する有機基、又はこれらの組み合わせであり、
aは0~5の整数を示し、
R
3はアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、
R
4はアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基、アルケニル基、アシルオキシアルキル基、又はアクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、スルホニル基、もしくはシアノ基を有する有機基、又はこれらの組み合わせであり、
A
1は炭素原子数1~10の炭化水素基を示し、
bは1~3の整数を示し、cは3-bを示し、
dは1~4の整数を示す。)
第3観点として、前記シリル化高分子が、式(3)で表される構造単位を含むシリル化高分子である、第1観点に記載の表面修飾シリカ粒子に関する。
【化2】
(式中、
R
1は水素原子又はメチル基を示し、
R
2は水素原子の置換基であり、それぞれ独立にアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基、アルケニル基、アシルオキシアルキル基、又はアクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、スルホニル基、もしくはシアノ基を有する有機基、又はそれらの組み合わせであり、
R
4はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基、アルケニル基、アシルオキシアルキル基、又はアクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、スルホニル基、もしくはシアノ基を有する有機基、又はそれらの組み合わせであり、
R
3はアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、
A
2は炭素原子数1~10の炭化水素基を示し、
aは0~5の整数を示し、bは1~3の整数を示し、cは3-bを示す。)
第4観点として、前記シリル化高分子が、式(4)で表される構造単位を含むシリル化高分子である、第1観点に記載の表面修飾シリカ粒子に関する。
【化3】
(式中、
R
1は水素原子又はメチル基を示し、
R
2は水素原子の置換基であり、それぞれ独立にアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基、アルケニル基、アシルオキシアルキル基、又はアクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、スルホニル基、もしくはシアノ基を有する有機基、又はそれらの組み合わせであり、
R
4はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基、アルケニル基、アシルオキシアルキル基、又はアクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、スルホニル基、もしくはシアノ基を有する有機基、又はそれらの組み合わせであり、
R
3はアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、
aは0~5の整数を示し、
bは1~3の整数を示し、cは3-bを示す。)
第5観点として、前記シリル化高分子が、500~100000の数平均分子量を有する、第1観点乃至第4観点のいずれか1項に記載の表面修飾シリカ粒子に関する。
第6観点として、前記シリル化高分子が、分子量分布(Mw/Mn)=1~2を有する、第5観点に記載の表面修飾シリカ粒子に関する。
第7観点として、前記シリル化高分子が、共有結合により前記シリカ粒子の少なくとも一部の表面に結合している、第1観点乃至第6観点のいずれか1項に記載の表面修飾シリカ粒子に関する。
第8観点として、前記シリル化高分子が、前記シリカ粒子の表面積1平方nm当たり、0.1~1.5個/nm
2の割合で結合している、第7観点に記載の表面修飾シリカ粒子に関する。
第9観点として、下記(i)又は(ii)を満たし且つ加水分解性官能基を有するシリル化高分子からなる表面修飾剤で被覆された、第1観点乃至第8観点のいずれか一項に記載の表面修飾シリカ粒子に関する。
(i)前記表面修飾剤の双極子間力が0.01~2.0(MPa)
1/2である。
(ii)前記表面修飾剤の加水分解性官能基の当量、又は前記加水分解性官能基に由来するヒドロキシ基の当量が150~4000(g/eq)である
第10観点として、第1観点乃至第9観点のいずれか1項に記載の表面修飾シリカ粒子が、水、アルコール類、ケトン類、炭化水素類、アミド類、エステル類、エーテル類又はアミン類から選ばれる少なくとも1種の溶媒に分散した、シリカゾルに関する。
第11観点として、下記(A)工程~(C)工程:
(A)工程:平均一次粒子径5~1000nmを有するシリカ粒子を分散質とし炭素原子数1~4のアルコールを分散媒とするシリカゾルを準備する工程。
(B)工程:アルコール類、ケトン類、炭化水素類、アミド類、エステル類、エーテル類又はアミン類から選ばれる少なくとも1種の溶媒に溶解した前記式(3)又は式(4)で表されるシリル化高分子と、(A)工程のシリカゾルを40~80℃で0.1~10時間の加熱撹拌を行う工程、
(C)工程:(B)工程後のシリカゾルから前記溶媒を除去する工程、
を含む、
第3観点又は第4観点に記載のシリカ粒子の製造方法に関する。
第12観点として、(B)工程及び(C)工程のいずれか一方又は両方が減圧下で行われる、第11観点に記載のシリカ粒子の製造方法に関する。
第13観点として、(A)工程で準備するシリカゾルが、水分を0.01~10質量%含有するものである、第11観点に記載のシリカ粒子の製造方法に関する。
第14観点として、(A)工程で準備するシリカゾルが、200~380℃、2MPa~22MPaで水熱合成された水性シリカゾルを炭素原子数1~4のアルコールに溶媒置換したシリカゾルである、第11観点に記載のシリカ粒子の製造方法に関する。
第15観点として、第1観点乃至第9観点のいずれか1項に記載の表面修飾シリカ粒子と、有機樹脂が組み合わされた複合材料に関する。
第16観点として、前記有機樹脂が、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ベンゾオキサジン、フェノール樹脂、アクリル樹脂、マレイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、シクロオレフィンポリマー、不飽和ポリエステル、ビニルトリアジン、架橋性ポリフェニレンオキサイド及び硬化性ポリフェニレンエーテルからなる群から選択される少なくとも1種である、第15観点に記載の複合材料に関する。
第17観点として、半導体デバイス材料、銅張積層板、集積回路、フレキシブル配線材料、フレキシブルディスプレイ材料、アンテナ材料、光配線材料及びセンシング材料からなる群から選択される用途を有する、第15観点又は第16観点に記載の複合材料に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシリカ粒子(表面修飾シリカ)は、低い誘電特性を示すという効果を奏する。また、有機溶媒にも良好に分散可能である。さらに本発明によるシリカ粒子は種々の有機樹脂と複合材料を形成することが可能なため、半導体デバイス材料などの製造が期待できる。
また、本発明のシリカ粒子(表面修飾シリカ粒子)は、一態様において、高分子が粒子表面に結合していることから、高分子特有の高靭性の付与が期待でき、より優れた機械特性の複合材料の製造が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、合成例2-1~2-4にて使用したフローリアクター(反応装置)の模式図を示す図である・
【
図2】
図2は、合成例2-1で調製したポリマー(表面修飾剤A)のMALDI-TOF-MSの測定結果を示す図である。
【
図3】
図3は、合成例2-1で調製したポリマー(表面修飾剤A)の
1H-NMRの測定結果を示す図である。
【
図4】
図5は、合成例2-4で調製したポリマー(表面修飾剤D)のMALDI-TOF-MSの測定結果を示す図である。
【
図5】
図5は、合成例2-4で調製したポリマー(表面修飾剤D)の
1H-NMRの測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<表面修飾シリカ粒子>
本発明のシリカ粒子は、シリル化高分子が粒子表面の少なくとも一部を被覆してなるか又は粒子表面の少なくとも一部に結合している粒子であって、平均一次粒子径が5~1000nmであり、1GHzにおける誘電正接が0.02以下であるシリカ粒子である。
【0012】
<平均一次粒子径>
本発明にかかるシリカ粒子の平均一次粒子径は、粒子表面への吸着分子として窒素ガスを用いたBET法により測定される比表面積(SN2)から算出された比表面積径を採用することができる。
比表面積径(平均一次粒子径:D(nm))は、窒素吸着法(BET法)によって測定された比表面積SN2(m2/g)から、D(nm)=2720/SN2の式によって計算される一次粒子径であり、球状シリカ粒子に換算した粒子直径を意味する。
本発明にかかるシリカ粒子は、平均一次粒子径が5nm~1000nmの範囲、例えば5nm~500nmの範囲、あるいはたとえば10nm~150nmの範囲のものを用いることができる。
平均一次粒子径を5nm~1000nmのシリカ粒子とすることで、低い誘電正接を示すとともに、有機溶媒へ良好に分散させることができる。また、該シリカ粒子を用いた複合材料を成型した場合に、欠陥の抑制や、高い透明性を発現させることができる。
【0013】
本発明のシリカ粒子は、シリカ粒子の表面の少なくとも一部が後述するシリル化粒子で被覆されている態様、あるいは、前記シリカ粒子の少なくとも一部の表面に、シリル化粒子の少なくとも一部が結合してなる態様、すなわち粒子表面がシリル化粒子により修飾された表面修飾シリカ粒子の態様を有してなる。以下、これらの態様をまとめて、本発明のシリカ粒子を「表面修飾シリカ粒子」とも称する。
本明細書において、「表面修飾」とは、前記シリル化粒子によってシリカ粒子表面が被覆されている態様、並びに、前記シリル化粒子がシリカ粒子表面に結合している態様のいずれをも含む。
なお本発明において、「シリカ粒子の表面の少なくとも一部がシリル化粒子で被覆されている」とは、後述するシリル化粒子がシリカ粒子表面の少なくとも一部を被覆した態様であればよく、すなわち、該シリル化粒子がシリカ粒子の表面の一部を覆う態様、該シリル化粒子がシリカ粒子の表面全体を覆う態様を包含するものである。この態様は、有機ケイ素化合物とシリカ粒子表面との結合の有無は問わない。
また本発明において、「シリカ粒子の少なくとも一部の表面にシリル化粒子の少なくとも一部が結合してなる」とは、後述するシリル化粒子がシリカ粒子表面の少なくとも一部に結合した態様であればよく、すなわち、該シリル化粒子がシリカ粒子の表面の一部に結合してなる態様、該シリル化粒子がシリカ粒子の表面の一部に結合し表面の少なくとも一
部を覆う態様、さらには、該シリル化粒子がシリカ粒子の表面全体に結合し表面全体を覆う態様などを包含するものである。
【0014】
本発明のシリカ粒子の好適な態様の一つとして、共有結合によりシリカ粒子の少なくとも一部の表面にシリル化高分子が結合している態様を挙げることができる。
また別の態様の一つとして、シリル化高分子で被覆された態様を挙げることができる。
【0015】
なお、本発明のシリカ粒子を構成する未修飾のシリカ粒子(シリル化高分子が被覆・結合等していない粒子)は、その製造方法に特に制限はないが、好ましくは水中で200~380℃で加熱処理(水熱処理)されたものである。前記加熱処理は耐圧容器(オートクレーブ)を用いて行うことができ、その際、例えば2MPa~22MPa下で実施できる。
【0016】
<シリル化高分子>
前記シリル化高分子は、いわば(無修飾)シリカ粒子の表面修飾剤に相当し、加水分解性官能基等を有するシリル化高分子であることが好ましい。
本発明においてシリル化高分子とは、高分子鎖のいずれかの箇所に、加水分解性官能基を有する有機ケイ素化合物に由来する基が結合してなる高分子をいう。
前記高分子鎖における、該加水分解性官能基を有するシラン化合物に由来する基の結合箇所は特に問わず、例えば高分子鎖の末端や、高分子鎖の側鎖などいずれであってもよい。
また前記加水分解性官能基としてはアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン原子が好ましく、複数存在する場合には同一であっても互いに異なっていてもよい。
また前記高分子(高分子鎖)としては、重合性モノマー、例えば、エチレン、スチレン、塩化ビニル、ブタジエン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、酢酸ビニル等のビニルモノマーを単独で重合或いは共重合してなる(共)重合体を挙げることができる。
【0017】
前記シリル化高分子は、その数平均分子量を、例えば500~100,000、また例えば1,000~50,000とすることができる。
また前記シリル化高分子は、例えば分子量分布(重量平均分子量:Mw/数平均分子量:Mn)が1~2であるものを使用することができる。
なお、数平均分子量並びに重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析によるポリスチレン換算にて得られる分子量である。
【0018】
前記シリル化高分子の限定されない具体例として、例えば下記式(1)で表される構造単位及び式(2)で表される構造単位を有するものを挙げることができる。
【化4】
上記式中、
Xは結合手を示し、
R
1は水素原子又はメチル基を示し、
R
2は水素原子の置換基であり、アルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基、アルケニル基、アシルオキシアルキル基、又はアクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、スルホニル基、もしくはシアノ基を有する有機基、又はこれらの組み合わせであり、
aは0~5の整数を示し、
R
3はアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、
R
4はアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基、アルケニル基、アシルオキシアルキル基、又はアクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、スルホニル基、もしくはシアノ基を有する有機基、又はこれらの組み合わせであり、
A
1は炭素原子数1~10の炭化水素基を示し、
bは1~3の整数を示し、cは3-bを示し、
dは1~4の整数を示す。
【0019】
また前記シリル化高分子の限定されない具体例として、例えば下記式(3)で表される構造単位を含むシリル化高分子を挙げることができる。
【化5】
上記式(3)中、
R
1は水素原子又はメチル基を示し、
R
2は水素原子の置換基であり、それぞれ独立にアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基、アルケニル基、アシルオキシアルキル基、又はアクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、スルホニル基、もしくはシアノ基を有する有機基、又はそれらの組み合わせであり、
R
4はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基、アルケニル基、アシルオキシアルキル基、又はアクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、スルホニル基、もしくはシアノ基を有する有機基、又はそれらの組み合わせであり、
R
3はアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、
A
2は炭素原子数1~10の炭化水素基を示し、
aは0~5の整数を示し、bは1~3の整数を示し、cは3-bを示す。)
【0020】
さらに、前記シリル化高分子の限定されない具体例として、例えば下記式(4)で表される構造単位を含むシリル化高分子を挙げることができる。
【化6】
上記式(4)中、
R
1は水素原子又はメチル基を示し、
R
2は水素原子の置換基であり、それぞれ独立にアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基、アルケニル基、アシルオキシアルキル基、又はアクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、スルホニル基、もしくはシアノ基を有する有機基、又はそれらの組み合わせであり、
R
4はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基、アルケニル基、アシルオキシアルキル基、又はアクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、スルホニル基、もしくはシアノ基を有する有機基、又はそれらの組み合わせであり、
R
3はアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、
aは0~5の整数を示し、
bは1~3の整数を示し、cは3-bを示す。
【0021】
前記式中のR2及びR4における、前記アルキル基としては、例えば直鎖又は分枝を有する炭素原子数1~10のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、n-ヘキシル、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基及び1-エチル-2-メチル-n-プロピル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
前記アリール基としては、例えば炭素原子数6乃至40のアリール基が挙げられ、例えばフェニル基、o-メチルフェニル基、m-メチルフェニル基、p-メチルフェニル基、o-クロルフェニル基、m-クロルフェニル基、p-クロルフェニル基、o-フルオロフェニル基、p-メルカプトフェニル基、o-メトキシフェニル基、p-メトキシフェニル基、p-アミノフェニル基、p-シアノフェニル基、α-ナフチル基、β-ナフチル基、o-ビフェニリル基、m-ビフェニリル基、p-ビフェニリル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基及び9-フェナントリル基が挙げられるが、これらに限定されない。
前記ハロゲン化アルキル基、前記ハロゲン化アリール基は、上記アルキル基又は上記ア
リール基の水素原子1個がハロゲンに置き換わった一価の基を意味する。ハロゲンとしてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
前記アルコキシアリール基は、上記アニール基の水素原子1個が後述するアルコキシ基に置き換わった一価の基を意味する。
前記アルケニル基は、例えば炭素原子数2~10のアルケニル基であり、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチル-1-エテニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-エチルエテニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-n-プロピルエテニル基、1-メチル-1-ブテニル基、1-メチル-2-ブテニル基、1-メチル-3-ブテニル基、2-エチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-3-ブテニル基、3-メチル-1-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-3-ブテニル基、1,1-ジメチル-2-プロペニル基、1-i-プロピルエテニル基、1,2-ジメチル-1-プロペニル基、1,2-ジメチル-2-プロペニル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
前記アシルオキシアルキル基は、上記アルキル基の水素原子1個がアシルオキシ基、例えばメチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n-プロピルカルボニルオキシ基、i-プロピルカルボニルオキシ基、n-ブチルカルボニルオキシ基、i-ブチルカルボニルオキシ基、s-ブチルカルボニルオキシ基、t-ブチルカルボニルオキシ基、n-ペンチルカルボニルオキシ基、1-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、2-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、3-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基等のアシルオキシ基に置き換わった一価の基を意味する。
【0022】
上記アクリロイル基を有する有機基としては、アクリロイルメチル基、アクリロイルエチル基、アクリロイルプロピル基等が挙げられる。
上記メタクリロイル基を有する有機基としては、メタクリロイルメチル基、メタクリロイルエチル基、メタクリロイルプロピル基等が挙げられる。
上記メルカプト基を有する有機基としては、エチルメルカプト基、ブチルメルカプト基、ヘキシルメルカプト基、オクチルメルカプト基、メルカプトフェニル基等が挙げられる。
上記アミノ基を含む有機基としては、アミノ基、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノフェニル基、ジメチルアミノエチル基、ジメチルアミノプロピル基等が挙げられるがこれらに限定されない。
上記アミド基を含む有機基としては、アミド基、アミドメチル基等が挙げられるがこれらに限定されない。
上記ヒドロキシ基を含む有機基としては、ヒドロキシ基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシフェニル基等が挙げられるがこれらに限定されない。
上記アルコキシ基を含む有機基としては、例えばメトキシメチル基、メトキシエチル基が挙げられるがこれらに限定されない。ただし、アルコキシ基が直接ケイ素原子に結合する基(R3に該当)は除かれる。
上記エステル基(エステル結合)を含む有機基としては、アセトキシメチル基、アセトキシエチル基等が挙げられる。
上記スルホニル基を含む有機基としては、例えばスルホニルアルキル基や、スルホニルアリール基が挙げられるがこれらに限定されない。
上記シアノ基を有する有機基としては、シアノエチル基、シアノプロピル基、シアノフェニル基、チオシアネート基等が挙げられる。
【0023】
前記式中のR3における前記アルコキシ基、前記アシルオキシ基は、R2及びR4においてアルコキシ基、アシルオキシ基として挙げた基を挙げることができる。
前記ハロゲン基は、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等が挙げられる。
なお、R3は、前述の加水分解性官能基に相当する基である。
【0024】
前記式中のA1における炭素原子数1~10の炭化水素基としては、前述のアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基、アルケニル基、アシルオキシアルキル基として挙げた基において、炭素原子数の上限が10であって、前記アルキル基等の任意の炭素原子から水素原子を0~3個除去した一価~四価の基を挙げることができる。
また前記A2における炭素原子数1~10の炭化水素基としては、前述のアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、アルコキシアリール基、アルケニル基、アシルオキシアルキル基として挙げた基において、炭素原子数の上限が10であって、前記アルキル基等の任意の炭素原子から水素原子を13個除去した二価~四価の基を挙げることができる。
【0025】
本発明に係るシリル化高分子は、前述したスチレン等の重合性モノマーの(共)重合時に、加水分解性官能基を有する有機ケイ素化合物とを加え反応させることで、ポリマー内に加水分解性官能基を有する有機ケイ素化合物に由来する基を導入し、当該シリル化高分子を得ることができる。当該有機ケイ素化合物は、高分子鎖の末端や高分子鎖に導入されることで、いわば重合停止剤としての機能や、ブロックコポリマーの1ブロックを構成するものとなり得る。
なお、例えば、後述する実施例で使用した
図1に示すフローリアクター(反応装置)を用い、ポリマー鎖の合成と有機ケイ素化合物の導入を連続的に進行させ、目的とするシリル化高分子を得ることができる。
重合性モノマーの(共)重合(ポリマー鎖の合成)反応は、有機リチウム化合物等の重合開始剤の存在下で実施され、続く有機ケイ素化合物の導入を考慮すると、重合開始剤:前記加水分解性官能基を有する有機ケイ素化合物=1:1~100(モル比)の割合にて、例えば開始剤に対して5倍量の前記有機ケイ素化合物を使用することができる。
【0026】
前記加水分解性官能基を有する有機ケイ素化合物は、加水分解性官能基に加え、重合で生成する生長種と反応(結合)できる基を有するものであり、該基としてはハロゲン基(クロロ基等)やビニル基((メタ)アクリル基等も含む)等を挙げることができる。
このような有機ケイ素化合物としては、ただしこれらの例に限定されないが、トリエトキシフルオロシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-ブロモプロピルトリエトキシシラン、2-クロロエチルメチルジメトキシシラン等のハロゲン基と加水分解性官能基としてアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、ジビニルジプロポキシシラン等のビニル基と加水分解性官能基としてアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物;3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメチルシラン等の(メタ)アクリル基と加水分解性官能基としてアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物等が挙げられる。
また例えば、上記加水分解性官能基を有する有機ケイ素化合物は、前記加水分解性官能基に加え、イソシアネート基、エポキシ基、酸無水物基、酸ハロゲン化物基等を有する化合物を挙げることができる。これらの限定されない具体例としては、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、2-イソシアネートエチルトリn-プロポキシシラン、3-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、2-イソシアネートエチルエチルジブトキシシラン、3-イソシアネートプロピルジメチルイソプロポキシシラン、2-イソシアネートエチルジエチルブトキシシラン、ジ(3-イソシアネートプロピル)ジエトキシシラン、ジ(3-イソシアネートプロピル)メチルエトキシシラン、エトキシシラント
リイソシアネート等のイソシアネート基と加水分解性官能基としてアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物;3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3,4-エポキシブチルトリメトキシシラン等のエポキシ基と加水分解性官能基としてアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物;3-(トリエトキシシリル)-2-メチルプロピルコハク酸無水物等の酸無水物基と加水分解性官能基としてアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物;2-(4-クロロスルフォニルフェニル)エチルトリエトキシシラン等の酸ハロゲン化物基と加水分解性官能基としてアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物;等を挙げることができる。
【0027】
前記シリル化高分子としては、下記(i)又は(ii)を満たす、加水分解性官能基を有するシリル化高分子を採用することができる。言い換えると、本発明に係るシリカ粒子は、下記(i)又は(ii)を満たし且つ加水分解性官能基を有するシリル化高分子からなる表面修飾剤で粒子表面が修飾(結合/被覆)されたものとすることができる。
(i)前記表面修飾剤(シリル化高分子)の双極子間力が0.01~2.0(MPa)1/2である。
(ii)前記表面修飾剤(シリル化高分子)の加水分解性官能基の当量、又は前記加水分解性官能基に由来するヒドロキシ基の当量が150~4000(g/eq)である。
【0028】
双極子間力とは、分子間の静電的相互作用より発生する力の一つであり、永久双極子となっている二つの分子間に働く力である。
双極子間力が小さいほど、誘電率が低く、ひいては誘電正接を低いものとすることができる。そのため本発明では、表面修飾剤(シリル化高分子)の双極子間力をこのましくは0.01~2.0(MPa)1/2の範囲とすることにより、低誘電特性(1GHzにおける誘電正接(tanδ)が0.02以下)の実現を図ったものである。
本発明では、表面修飾剤であるシリル化高分子の分子量と分子構造情報に基づき、溶解度パラメータ計算ソフト(Hansen SP&QSPRモデル、Winmostar V10、X-Ability Co. Ltd.、日本-東京、2020)を用いて算出した値を、表面修飾剤(シリル化高分子)の双極子間力として採用してなる。
本発明では、表面修飾剤(シリル化高分子)の双極子間力が0.01~2.0(MPa)1/2であることにより、低誘電特性(1GHzにおける誘電正接(tanδ)が0.02以下)を実現することができる。
【0029】
また低誘電性特性の実現には、系内の水の存在をできるたけ排除することが重要といえ、系内の水(H2O)自体の含有量のみならず、ヒドロキシ基やヒドロキシ基を生ずる加水分解性官能基の量を制御することが望ましい。
そのため本発明にあっては、表面修飾剤であるシリル化高分子における加水分解性官能基の当量、また加水分解性官能基に由来するヒドロキシ基の当量を、例えば50~4000(g/eq)の範囲とすることにより、低誘電特性(1GHzにおける誘電正接(tanδ)が0.02以下)の実現を図ったものである。
【0030】
<表面修飾>
前記シリル化高分子による表面処理(修飾)量、すなわち、シリカ粒子表面を被覆又は表面に結合してなるシリル化高分子の量(個数)は、シリカ粒子の表面積1nm2当たり、例えば0.1~1.5個程度の範囲とすることができる。
【0031】
表面修飾シリカ粒子の製造方法、すなわち、前記シリル化高分子によるシリカ粒子表面の被覆(表面処理)方法は、特に制限はないが、例えば、(無修飾)シリカ粒子の有機溶媒分散液に、前記シリル化高分子の少なくとも一種を添加し混合することで、前記シリル
化高分子の加水分解性官能基の加水分解と縮合が生じて(無修飾)シリカ粒子の表面を修飾することができる。
【0032】
前記シリル化高分子の添加量は、シリカ粒子の表面積1nm2当たり、例えば前記シリル化高分子が0.1個~1.5個程度の範囲で表面修飾されるように添加することができる。例えばシリカ粒子の表面積1nm2当たり0.1個~1.5個、又は0.1個~1.0個、又は0.5個~1.0個、あるいは0.1個~0.5個となる割合にて表面修飾されるよう、シリル化高分子を添加することができる。なお表面修飾に寄与しない余剰のシリル化高分子が系内に存在していてもよいが、シリル化高分子の好ましい添加量はシリカ粒子が表面積1nm2当たり0.1~1.5個である。
【0033】
シリル化高分子の加水分解は完全に加水分解を行うことでも、部分的に加水分解することでもよいが、水が必要であり、前記シリル化高分子の加水分解性官能基の1モルに対して1モル程度以上の水を添加することが好ましい。また、有機溶媒中に含まれる水分を利用することもできる。
加水分解性官能基を有するシリル化高分子を用いる場合、加水分解を完全に加水分解を行うことでも、部分的に加水分解することでもよいが、水が必要であり、前記シリル化高分子の加水分解性官能基1モルに対して1モル程度以上の水を添加することが好ましい。また、有機溶媒中に含まれる水分を利用することもできる。
加水分解し縮合させる際に、触媒を用いることもできる。加水分解触媒としてはキレート化合物、有機酸、無機酸、有機塩基、又は無機塩基を単独で用い又は併用することができる。より具体的には、例えば、塩酸水溶液、酢酸、アンモニア水溶液等を用いることができる。
【0034】
<シリカ粒子の製造方法>
本発明のシリカ粒子(表面修飾シリカ粒子)の製造方法の例を以下に示す。
本発明のシリカ粒子は、例えば、以下の(A)~(C)工程を含みて製造することができるが、これら製造方法(工程)には限定されない。
(A)工程:平均一次粒子径5~1000nmを有するシリカ粒子を分散質とし炭素原子数1~4のアルコールを分散媒とするシリカゾルを準備する工程、
(B)工程:アルコール類、ケトン類、炭化水素類、アミド類、エステル類、エーテル類又はアミン類から選ばれる少なくとも1種の溶媒に溶解した、例えば前記式(3)又は式(4)で表されるシリル化高分子と、(A)工程のシリカゾルを40~80℃で0.1~10時間の加熱撹拌を行う工程、
(C)工程:(B)工程後のシリカゾルから前記溶媒を除去する工程。
【0035】
〈(A)工程〉
(A)工程は、シリカゾルを準備する工程である。
すなわち(A)工程における「平均一次粒子径5~1000nmを有するシリカ粒子」とは、粒子表面がシリル化高分子で修飾されていない(未修飾の)シリカ粒子であり、すなわち本工程で準備するシリカゾルは未修飾のシリカゾルである。
前述したように、未修飾のシリカゾルとして、例えば水熱合成された水性シリカゾルを用いることができる。
好適な態様において、(A)工程で準備するシリカゾルは、例えば200~380℃、2MPa~22MPaで水熱合成された水性シリカゾルを炭素原子数1~4のアルコールに溶媒置換したシリカゾルとすることができる。前記炭素原子数1~4のアルコールとは、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノールなどが挙げられる。
また好適な態様において、(A)工程で準備するシリカゾルは、0.01~10質量%の水分量を有するシリカゾルとすることができる。
【0036】
〈(B)工程〉
(B)工程は、シリカ粒子とシリル化高分子とを混合し、シリル化高分子の加水分解と縮合により、シリカ粒子を表面修飾する工程である。
加水分解に係る水分や触媒等は前述したとおりである。
【0037】
(B)工程において、前記シリル化高分子の添加量は、例えば(A)工程のシリカゾル中に含まれるシリカ粒子の表面積1nm2当たり0.1個~1.5個の割合で表面修飾される量とすることができる。具体的には、シリカ粒子の表面積1nm2当たり0.1個~1.5個、又は0.1個~1.0個、又は0.5個~1.0個、あるいは0.1個~0.5個となる割合にて表面修飾されるよう、シリル化高分子を添加することができる。なお、表面修飾に寄与しない余剰の有機ケイ素化合物が反応系内に存在していてもよい。
【0038】
(B)工程においてシリル化高分子を溶解し、その後の反応に使用する有機溶媒は、アルコール類、ケトン類、炭化水素類、アミド類、エステル類、エーテル類又はアミン類から選ばれる少なくとも1種の溶媒である。
前記アルコール類は、例えば炭素原子数1~5のアルコールが挙げられ、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノールなどが挙げられる。
前記ケトン類は、例えば炭素原子数1~5のケトン類が挙げられ、具体的には、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、γ-ブチルラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドンなどが挙げられる。
前記炭化水素類は、トルエン、キシレン、n-ペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサンなどが挙げられる。
前記アミド類は、ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ジエチルアクリルアミド等が挙げられる。
前記エステル類は、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられる。
前記エーテル類は、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。
前記アミン類は、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、、ピリジン、ピコリン等が挙げられる。
【0039】
(B)工程は、前記シリル化高分子の加水分解性官能基の加水分解と縮合反応が進行する温度であれば、特に制限されず、例えば20℃以上120℃未満の温度、特に40~80℃の温度にて行うことができる。
反応効率の点では有機溶媒の沸点付近で行なうことが好ましく、例えば、メタノールを含む有機溶媒を用いて混合工程を実施するのであれば60~65℃付近で行なうことが好ましい。なお、本工程におけるシリカ濃度やシリル化高分子濃度の変化を抑えることを目的に、必要に応じて還流装置などを備えた装置で反応を実施してもよい。また本工程は、同一の温度で複数回行うこともでき、また異なる温度で複数回行うこともできる。
なお、本工程は工業的な観点から24時間以内で行なうことが望ましく、例えば0.1~10時間にて行うことができる。
【0040】
なお(B)工程は、有機アミンを用いてpH調整する工程を含むことができる。このpH調整工程は、(B)工程の前、(B)工程の途中、(B)工程後のいずれか1回、または複数回行なうことができる。
前記有機アミンとしては第2級、又は第3級アミンを用いることができる。第2級、又は第3級アミンとして、アルキルアミン、アリルアミン、アラルキルアミン、脂環式アミン、アルカノールアミン及び環状アミン等を用いることができる。
具体的には、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、トリ-イソプロピルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリ-n-プロピルアミン、ジイソブチルア
ミン、ジ-n-ブチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、ジペンチルアミン、トリペンチルアミン、ジ-2-エチルヘキシルアミン、ジ-n-オクチルアミン、トリ-n-オクチルアミン、N-エチルジイソプロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルブチルアミン、N,N-ジメチルヘキシルアミン、N,N-ジメチルオクチルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、ピペリジン、N-メチルピペリジン、キヌクリジン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジブチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、イミダゾール、イミダゾール誘導体、1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザ-ビシクロ(4,3,0)ノナ-5-エン1,4-ジアザ-ビシクロ(2,2,2)オクタン、ジアリルアミン等が挙げられる。これらの有機塩基化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
有機アミンの添加量は、シリカ粒子の質量に対して、0.001~5質量%、0.01~1質量%にて行うことができる。また、有機アミンの添加により、混合溶液のpHを4.0~11.0に調整することができ、好ましくはpH7.5~9.5である。
【0041】
〈(C)工程〉
本工程は、(B)工程後のシリカゾルから溶媒を除去する工程であり、例えば真空乾燥機などを用いて実施することができる。
【0042】
なお前記(B)工程及び(C)工程は常圧下でも減圧下でも実施可能であるが、前記(B)工程及び(C)工程のいずれか一方又は双方は、減圧下で実施することができ、例えば600~400Torrの減圧下にて実施することが可能である。
【0043】
また(B)工程後のゾル、すなわち、表面修飾シリカ粒子を含有するゾルは、表面修飾シリカ分散液として、後述する複合材料の製造に用いることができる。
このとき、複合材料の製造しやすさの観点などから、前記(B)工程のゾルに含まれる、有機溶媒の少なくとも一部を、他の有機溶媒に置換し、これを表面修飾シリカ分散液として用いることもできる。他の有機溶媒としては、(B)工程に用いたアルコール類、ケトン類、炭化水素類、アミド類、エステル類、エーテル類又はアミン類から選ばれる少なくとも一種又は二種以上を用いることができる。これら置換する溶媒は、(B)工程後のシリカゾルに含まれる有機溶媒と異なっていれば特に制限はなく、複合化しようする有機樹脂の溶解性の観点で選択することができる。
置換方法は公知の方法を用いることができ、例えば、ロータリーエバポレータ等による蒸発法、あるいは、限外ろ過膜を用いた限外ろ過法により他の有機溶媒に置換することができる。
【0044】
<誘電特性の測定>
本発明にかかる(表面修飾)シリカ粒子の誘電率及び誘電正接は、シリカ粒子の乾燥粉を用い、専用の装置を用いて測定することができる。専用の装置としては、例えば、ベクトルネットワークアナライザ(商品名:FieldFox N6626A、KEYSIGHT TECHNOLOGIES製)などが挙げられる。
有機樹脂と複合化し絶縁体用途に適応する場合、シリカ粒子の周波数1GHzにおける誘電正接が0.02以下、例えば0.02未満、0.01以下、特に0.009以下であることが好ましい。また、誘電正接の下限値としては、0.00001、又は0.00005、又は0.0001、又は0.0005である。
【0045】
<シリカゾル(シリカ分散液)>
本発明に係るシリカゾルは、前記シリカ粒子(表面修飾シリカ粒子)が、水、アルコール類、ケトン類、炭化水素類、アミド類、エステル類、エーテル類又はアミン類から選ば
れる少なくとも1種の溶媒に分散した、シリカゾル(シリカ分散液ともいう)の態様である。
前記アルコール類は、例えば炭素原子数1~5のアルコールが挙げられ、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノールなどが挙げられる。
前記ケトン類は、例えば炭素原子数1~5のケトン類が挙げられ、具体的には、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、γ-ブチルラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドンなどが挙げられる。
前記炭化水素類は、トルエン、キシレン、n-ペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサンなどが挙げられる。
前記アミド類は、ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ジエチルアクリルアミド等が挙げられる。
前記エステル類は、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられる。
前記エーテル類は、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。
前記アミン類は、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、、ピリジン、ピコリン等が挙げられる。
【0046】
前記シリカゾル(シリカ分散液)中における表面修飾シリカ粒子の含有量はシリカ濃度として表わすことができる。シリカ濃度は、前記シリカゾル(シリカ分散液)を1000℃で焼成した後に得られる焼成残分を計量することで算出することができる。シリカゾル(シリカ分散液)におけるシリカ濃度は、例えば1質量%~60質量%、又は10質量%~60質量%、10質量%~40質量%とすることができる。
また、前記シリカゾル(シリカ分散液)の水分含有量は5質量%以下であることが好ましい。このような水分含有量にすることで、ゾル(分散液)の安定性が良好となることや有機樹脂との複合材料を得やすくなることがある。
【0047】
<複合材料(コンポジット材料)>
本発明にかかる複合材料は、本発明に係る(表面修飾)シリカ粒子と有機樹脂とを含む複合材料である。
前記有機樹脂は、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ベンゾオキサジン、フェノール樹脂、アクリル樹脂、マレイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、シクロオレフィンポリマー、不飽和ポリエステル、ビニルトリアジン、架橋性ポリフェニレンオキサイド及び硬化性ポリフェニレンエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種から選択することができる。
【0048】
前記複合材料の作製方法は、特に制限はないが、例えば、前記(表面修飾)シリカ粒子の分散液と有機樹脂を構成するモノマー乃至ポリマー溶液とを混合し、重合性組成物を調製した後、余剰な溶媒を除去した後に、光又は熱硬化させることにより複合材料を得ることができる。また、(表面修飾)シリカ粒子の粉末を、直接、有機樹脂モノマー乃至ポリマー溶液に添加し重合性組成物を作製し、余剰な溶媒を除去した後に、光又は熱硬化させることでも複合材料を得ることができる。
重合性組成物における(表面修飾)シリカ粒子と有機樹脂のモノマー乃至ポリマー溶液との混合割合は、(表面修飾)シリカ粒子と有機樹脂のモノマー乃至ポリマーとの質量比で、(表面修飾)シリカ粒子:有機樹脂のモノマー乃至ポリマー=1:100~0.1、例えば1:20~0.1にて含有することができる。
【0049】
重合性組成物は重合開始剤を使用することにより、光又は熱にて硬化させることができる。光重合開始剤として、光ラジカル重合開始剤、又は光カチオン重合開始剤が挙げられ、熱重合開始剤として、熱ラジカル重合開始剤、又は熱カチオン重合開始剤が挙げられる。また、重合開始剤は、重合性化合物100質量部に対して、0.01質量部~50質量
部の範囲で用いることができる。
また任意成分として、従来の重合性組成物(複合材料)に使用される慣用の添加剤、例えば、硬化促進用の触媒や顔料、ラジカル捕捉剤(クエンチャー)、レベリング剤、粘度調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、可塑剤、界面活性剤等の当該技術分野で使用されている各種添加剤を混合して使用することもできる。
【0050】
本発明の複合材料は、使用用途に応じて適切な有機樹脂を選択することにより、半導体デバイス材料、銅張積層板、集積回路、フレキシブル配線材料、フレキシブルディスプレイ材料、アンテナ材料、光配線材料又はセンシング材料として用いることができる。
【実施例0051】
以下、実施例および比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0052】
[シリカゾル]
実施例、及び比較例で使用したシリカ粒子(シリカゾル)は以下のとおりである。
・水分散シリカゾルA(日産化学(株)製、シリカ濃度21質量%、pH3、平均一次粒子径46nm)
・水分散シリカゾルB(日産化学(株)製、シリカ濃度30質量%、pH11、平均一次粒子径46nm)
・水分散シリカゾルC(日産化学(株)製、シリカ濃度32質量%、pH3、平均一次粒子径9nm)
・水分散シリカゾルD(日産化学(株)製、シリカ濃度30質量%、pH10、平均一次粒子径17nm)
・メタノール分散シリカゾルa(合成例1-1参照)
・メタノール分散シリカゾルb(合成例1-2参照)
・メタノール分散シリカゾルc(合成例1-3参照)
【0053】
[表面修飾剤(シリル化高分子等)]
また、実施例、及び比較例で使用した表面修飾剤は以下のとおりである。
・表面修飾剤A(合成例2-1参照)
・表面修飾剤B(合成例2-2参照)
・表面修飾剤C(合成例2-3参照)
・表面修飾剤D(合成例2-4参照)
・表面修飾剤E(信越化学工業(株)製、商品名:KBM-7103、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、分子量218、加水分解性の官能基:メトキシ基)
【0054】
以下の方法に従い、水分散シリカゾルA~D、実施例及び比較例で調製した表面修飾シリカ粒子の分散液、並びに該分散液製造工程中のシリカゾル及び分散液の物性を測定及び評価した。
【0055】
[シリカ(SiO2)濃度の測定]
水分散シリカゾル、メタノール分散シリカゾル及び該メタノール分散シリカゾル製造工程中のシリカゾル、並びに表面修飾シリカ粒子の分散液のシリカ濃度は、これらシリカゾル又は分散液を坩堝に取り、加熱により溶媒を除去した後、1000℃で焼成し、焼成残分を計量して算出した。
【0056】
[水分散シリカゾル等のpH測定方法]
水分散シリカゾル及びメタノール分散シリカゾル製造工程中のシリカゾルのpHは、p
Hメーター(東亞ディーケーケー(株)製、MM-43X)を用いて測定した。
【0057】
[比表面積の測定及び平均一次粒子径]
〔窒素吸着法の比表面積(SN2)の測定〕
水分散シリカゾル、メタノール分散シリカゾル、及びメタノール分散シリカゾル製造工程中のシリカゾルにおけるシリカ粒子の窒素吸着法の比表面積(SN2)は、水分散シリカゾル中の水溶性の陽イオンを陽イオン交換樹脂(ダウ・ケミカル社製、商品名:アンバーライトIR-120B)で除去した後、該シリカゾルを290℃にて乾燥して測定試料とし、これを窒素吸着法の比表面積測定装置 Monosorb(カンタクローム・インスツルメンツ・ジャパン合同会社製)を用いて測定した。
〔平均一次粒子径〕
平均一次粒子径は、上記の窒素吸着法で得られた比表面積SN2(m2/g)から、下記計算式を用いて球状粒子に換算して算出した。その結果を表1に示した。
平均一次粒子径(nm)=2720/SN2(m2/g)
【0058】
〔カチオンの測定〕
メタノール分散シリカゾル製造工程中のシリカゾルの金属成分は、原子吸光分光光度計((株)島津製作所製、AA-7000)を用いて測定した。
〔アニオンの測定〕
メタノール分散シリカゾル製造工程中のシリカゾルの塩基成分は、イオンクロマト(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製、ICS-1600)を用いて測定した。
【0059】
[水分量の測定]
表面修飾シリカ粒子の分散液及びその製造工程中のシリカゾル(メタノール分散シリカゾル)の水分量は、カールフィッシャー水分計(京都電子工業(株)製、商品名:MKA-610)を用いてカールフィッシャー滴定法にて測定した。
【0060】
[数平均分子量の測定]
下記合成例2-1~2-4で調製したポリマー(表面修飾剤)の数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography、GPC)法による測定結果である。測定条件は下記のとおりである。また同法により、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)を求めた。
GPCカラム:PLgel 5μm MIXED-D(Agilent Technologies社製)
カラム温度:40°C
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:1.00ml/分
検出器:RI検出器
標準試料:ポリスチレン
【0061】
[MALTI-TOF-MS]
下記合成例2-1~2-4で調製したポリマー(表面修飾剤)の定性分析に用いたMALDI-TOF-MSは、Bruker社製のものを用い、マトリックスはtrans-2-[3-(4-tert-ブチルフェニル)-2-メチル-2-プロペニリデン]マロノニトリル(DCTB)、イオン化剤はトリフルオロ酢酸ナトリウムを用いた。
【0062】
[加水分解性官能基の当量の算出]
下記合成例2-1~2-4で調製したポリマー(表面修飾剤)における加水分解性官能
基(アルコキシ基)の当量は、上記平均分子量の測定で得られたポリマー(表面修飾剤)の分子量と、該ポリマー(表面修飾剤)の加水分解基種を基に下記式1により算出した。結果を表1に示す。
加水分解性官能基の当量(g/eq)=(表面修飾剤の分子量)/(加水分解性官能基の数) ・・式1
【0063】
[双極子間力の算出]
下記合成例2-1~2-4で調製したポリマー(表面修飾剤)の双極子間力は、ポリマー(表面修飾剤)の分子量および分子構造情報を基に、溶解度パラメータ計算ソフト(Hansen SP&QSPRモデル、Winmostar V10、X-Ability
Co. Ltd.、日本-東京、2020)を用いて算出した。結果を表1に示す。
【0064】
[有機溶媒含有量]
表面修飾シリカ粒子の分散液の有機溶媒含有量はガスクロマトグラフィー((株)島津製作所、GC-2014s)にて求めた。
ガスクロマトグラフィー条件:
カラム:3mm×1mガラスカラム
充填剤:ポーラパックQ
カラム温度:130~230℃(昇温8℃/min)
キャリアー:N2 40mL/min
検出器:FID
注入量:1μL
内部標準:アセトニトリルを採用した。
【0065】
[誘電率および誘電正接の測定]
測定周波数1GHz用空洞共振器治具(キーコム(株)製)を用いて、PTFE製のサンプルチューブ(長さ30mm、内径3mm)内に粉末サンプル(後述する実施例2-1~2-8、比較例2-1~2-3で得たシリカ粉末)を充填後、ベクトルネットワークアナライザ(商品名:FieldFox N6626A、KEYSIGHT TECHNOLOGIES製)にて、測定サンプルの誘電率及び誘電正接を測定した(23℃、周波数1GHz)。
誘電正接の測定値が0.01以下の場合を低誘電特性「OK」と、誘電正接の測定値が0.01より超えた場合を低誘電特性「NG」と評価した。
【0066】
[合成例1:メタノール分散シリカゾルの調製]
〔合成例1-1:メタノール分散シリカゾルa〕
水分散シリカゾルA 2,500gを撹拌機、コンデンサー、温度計及び注入口2個を備えた内容積3Lのガラス製反応器に仕込み、加温して該シリカゾルを沸騰させた。反応器内のシリカゾルを沸騰させたままの状態で、別のボイラーで発生させたメタノールの蒸気を反応器内のシリカゾル中に連続的に吹き込み、分散媒である水をメタノールに置換した。メタノール分散液の水分量が3.0質量%以下になったところで置換を終了し、メタノール分散シリカゾルaを1,280g得た。
得られたメタノール分散シリカゾルaは、シリカ濃度41質量%、水分量1.5質量%であった。
【0067】
〔合成例1-2:メタノール分散シリカゾルb〕
内容積300ccのSUS製オートクレーブ反応器に、水分散シリカゾルC 129gと水分散シリカゾルD 121gを仕込み、300±20℃にて1時間水熱処理を実施した。得られたゾルのうち、100gを水素型強酸性陽イオン交換樹脂(アンバーライト(登録商標)IR-120B、オルガノ(株))30gと混合し、30分間撹拌した後、濾
過して、酸性シリカゾル100gを得た(pH3、SiO2濃度20質量%、平均一次粒子径74nm)。
得られた酸性シリカゾル 62gをメタノールで130gに希釈し、これを1Lのナス型フラスコ付きエバポレーターに投入して、次いでメタノールを徐々に添加しながら550Torrで水を留去することにより、分散媒である水をメタノールに置換した。メタノール分散液の水分量が1.0質量%以下になったところで置換を終了し、メタノール分散シリカゾルbを155g得た。
得られたメタノール分散シリカゾルbは、シリカ濃度8質量%、水分量0.5質量%であった。
【0068】
〔合成例1-3:メタノール分散シリカゾルc〕
内容積300ccのSUS製オートクレーブ反応器に、水分散シリカゾルB 250gを仕込み、230±10℃にて2.5時間水熱処理を実施した。得られたゾル100gに対して、5%に希釈した硫酸ナトリウム水溶液を、SO3換算として20~50ppmになるように添加し、その後、水素型強酸性陽イオン交換樹脂(アンバーライト(登録商標)IR-120B、オルガノ(株))30gと混合し、30分間撹拌した後、濾過して、酸性シリカゾル130gを得た(pH3、SiO2濃度23質量%、平均一次粒子径28nm、Na2O:344ppm、SO3 30ppm)。
得られた酸性シリカゾル 130gを1Lのナス型フラスコ付きエバポレーターに投入して、次いでメタノールを徐々に添加しながら550Torrで水を留去することにより、分散媒である水をメタノールに置換した。メタノール分散液の水分量が2.0質量%以下になったところで置換を終了し、メタノール分散シリカゾルcを91g得た。
得られたメタノール分散シリカゾルcは、シリカ濃度33質量%、水分量1.6質量%であった。
【0069】
[合成例2:表面修飾剤(シリル化高分子)の合成]
図1に、後述する合成例2-1~2-4にて使用したフローリアクター(反応装置)の模式図を示す。なお、
図1中、矢印は液体の流れる方向を示す。
スチレン溶液送液用としてプランジャーポンプA((株)フロム製、UI-22-410S)を用い、PTFE製チューブ(内径1.0mm、外径1.6mm、長さ2m)を用いてプランジャーポンプAとミキサー1の一方の入口とを接続した。また開始剤溶液送液用としてダイヤフラムポンプB((株)タクミナ製、スムーズフローポンプQ-30-PEEK)を用い、PTFE製チューブ(内径1.0mm、外径1.6mm、長さ2m)を用いてダイヤフラムポンプBとミキサー1のもう一方の入口とを接続した。ミキサー1の出口とミキサー2の一方の入口をPFA製チューブ(内径2.0mm、外径3mm、長さ2m)で接続した。ミキサー2のもう一方の入口には、PTFE製チューブ(内径1.0mm、外径1.6mm、長さ2m)を用いて、重合停止剤送液用としてプランジャーポンプC((株)フロム製、UI-22-110S)を接続した。ミキサー2の出口にはPFA製チューブ(内径2.0mm、外径3mm、長さ2m)を接続した。
なお、ポンプA、B、Cから先と、ミキサー2の出口に接続されたチューブの9割長までの流路(
図1中、□で囲われている部分)を10℃(
図1中、T℃と表記)の恒温槽に浸し、温度を調整した。
【0070】
合成に使用したミキサー1、2は、国際公開第2017/135398号に記載の二重管構造をもつ2液混合用ミキサー[ジョイント部材、筒状体にステンレス製のものを用い、また、スタティックミキサーエレメント体としては(株)ノリタケカンパニーリミテド製DSP-MXA3-17(ポリアセタール製エレメント、ねじり羽根数17、3mm径)を加工したもの]を用いた。
なお、各ミキサーへの接続方法は、ミキサー1の導入孔入口にスチレン溶液チューブ、内管入口に開始剤溶液チューブを接続した。ミキサー2の導入孔入口にミキサー1の出口と
接続されたチューブ、内管入口に重合停止剤送液チューブを接続した。
【0071】
<合成例2-1/末端プロピルトリエトキシシランポリスチレンの合成/表面修飾剤A>
1.30mol/L スチレンTHF溶液と、開始剤として0.15mol/Ln-ブチルリチウムのトルエン/ヘキサン溶液を、ミキサー1でそれぞれ流速30.0mL/min、6.0mL/minで混合し、スチレンを重合させた。
続いて、重合停止剤として3-クロロプロピルトリエトキシシラン液を、ミキサー2で1.07mL/minで混合し、重合を停止させた。各ポンプを7分間送液し、流出液を採取した。
【0072】
更に、前記流出液を、メタノール2300mLの混合液に滴下し、得られた白色懸濁液1.0μmのメンブレンフィルターでろ過後、メタノール400mLで洗浄した。続いて、得られた白色固体を減圧乾燥(50℃、5時間)し、末端プロピルトリエトキシシランポリスチレン27.4gを得た。
得られたポリマー(表面修飾剤A)をGPCにて分析したところ、Mn=5,445、Mw/Mn=1.09であった。また、MALDI-TOF-MSの測定結果を
図2に、ポリマーの
1H-NMRの結果を
図3に示す。これらの結果からポリスチレン末端にプロピルトリエトキシシランが導入されたことを確認した。
【0073】
<合成例2-2/末端プロピルトリエトキシシランポリスチレンの合成/表面修飾剤B>
スチレンTHF溶液濃度を0.50mol/L、前記開始剤の溶液濃度を0.22mol/L重合停止剤として3-クロロプロピルトリエトキシシラン液を、ミキサー2で1.54mL/minで混合、流出液の採取時間を20分間とした以外は、合成例1と同様の方法で合成し、末端プロピルトリエトキシシランポリスチレン29.2gを得た。
得られたポリマー(表面修飾剤B)をGPCにて分析したところ、Mn=1,848、Mw/Mn=1.14であった。また、ポリマーのMALDI-TOF-MSの結果から、ポリスチレン末端にプロピルトリエトキシシランが導入されたことを確認した。
【0074】
<合成例2-3/末端プロピルトリエトキシシランポリスチレンの合成/表面修飾剤C>
スチレンTHF溶液濃度を0.40mol/L、前記開始剤の溶液濃度を0.33mol/L重合停止剤として3-クロロプロピルトリエトキシシラン液を、ミキサー2で1.84mL/minで混合、流出液の採取時間を32分間とした以外は、合成例1と同様の方法で合成し、末端プロピルトリエトキシシランポリスチレン15.0gを得た。
得られたポリマー(表面修飾剤C)をGPCにて分析したところ、Mn=1,353、Mw/Mn=1.15であった。また、ポリマーのMALDI-TOF-MSの結果から、ポリスチレン末端にプロピルトリエトキシシランが導入されたことを確認した。
【0075】
<合成例2-4/末端プロピルトリメトキシシランポリスチレンの合成/表面修飾剤D>
スチレンTHF溶液濃度を0.40mol/L、前記開始剤の溶液濃度を0.33mol/L重合停止剤として3-クロロプロピルトリメトキシシラン液を、ミキサー2で1.84mL/minで混合、流出液の採取時間を11分間とした以外は、合成例1と同様の方法で合成し、末端プロピルトリメトキシシランポリスチレン7.6gを得た。
得られたポリマー(表面修飾剤D)をGPCにて分析したところ、Mn=1,240、Mw/Mn=1.22であった。また、MALDI-TOF-MSの測定結果を
図4に、ポリマーの
1H-NMRの結果を
図5に示す。これらの結果からポリスチレン末端にプロピルトリメトキシシランが導入されたことを確認した。
【0076】
〔実施例1/表面修飾シリカ粒子の作製〕
[実施例1-1]
(i)工程:メチルエチルケトン27.0gを200ccのナス型フラスコに仕込み、マ
グネチックスターラーで撹拌しながら、合成例2-1で得られた表面修飾剤Aを0.65g添加した。添加した表面修飾剤Aが溶解したことを確認し、その後、合成例1-1で得られたメタノール分散シリカゾルaを30.0g滴下し、60℃に加熱して8時間保持し、表面修飾シリカ粒子のメタノール分散液を作製した。添加した表面修飾剤Aの総量は、該ゾル中のシリカ粒子の表面積1nm2当たり0.1個であった。
【0077】
(ii)工程:その後、表面修飾シリカ粒子のメタノール分散液が入ったナス型フラスコをロータリーエバポレータにセットし、浴温80℃、600~400Torrの減圧下で、メチルエチルケトン分散液の水分量が1.0質量%以下になるまで、メチルエチルケトンを供給しながら蒸留を行い、分散媒をメチルエチルケトンに置換することで、表面修飾シリカ粒子のメチルエチルケトン分散液を得た。
得られた表面修飾シリカ粒子のメチルエチルケトン分散液は、シリカ濃度23質量%、水分量0.1質量%、メタノール量0.8質量%以下であった。
【0078】
[実施例1-2]
実施例1-1の(i)工程における表面修飾剤Aの代わりに、シリカゾル中に含まれるシリカ粒子の表面積1nm2当たり合成例2-2で得られた表面修飾剤Bを0.1個添加(総量)したこと以外は、実施例1-1の(i)から(ii)工程と同様に操作を実施し、表面修飾シリカ粒子のメタノール分散液、及び表面修飾シリカ粒子のメチルエチルケトン分散液を調製した。
【0079】
[実施例1-3]
実施例1-1の(i)工程における表面修飾剤Aの代わりに、シリカゾル中に含まれるシリカ粒子の表面積1nm2当たり合成例2-2で得られた表面修飾剤Bを0.5個添加(総量)したこと以外は、実施例1-1の(i)から(ii)工程と同様に操作を実施し、表面修飾シリカ粒子のメタノール分散液、及び表面修飾シリカ粒子のメチルエチルケトン分散液を調製した。
【0080】
[実施例1-4]
実施例1-1の(i)工程における表面修飾剤Aの代わりに、シリカゾル中に含まれるシリカ粒子の表面積1nm2当たり合成例2-2で得られた表面修飾剤Bを1.0個添加(総量)したこと以外は、実施例1-1の(i)から(ii)工程と同様に操作を実施し、表面修飾シリカ粒子のメタノール分散液、及び表面修飾シリカ粒子のメチルエチルケトン分散液を調製した。
【0081】
[実施例1-5]
実施例1-1の(i)工程における表面修飾剤Aの代わりに、シリカゾル中に含まれるシリカ粒子の表面積1nm2当たり合成例2-3で得られた表面修飾剤Cを0.5個添加(総量)したこと以外は、実施例1-1の(i)から(ii)工程と同様に操作を実施し、表面修飾シリカ粒子のメタノール分散液、及び表面修飾シリカ粒子のメチルエチルケトン分散液を調製した。
【0082】
[実施例1-6]
実施例1-1の(i)工程における表面修飾剤Aの代わりに、シリカゾル中に含まれるシリカ粒子の表面積1nm2当たり合成例2-4で得られた表面修飾剤Dを0.5個添加(総量)したこと以外は、実施例1-1の(i)から(ii)工程と同様に操作を実施し、表面修飾シリカ粒子のメタノール分散液、及び表面修飾シリカ粒子のメチルエチルケトン分散液を調製した。
【0083】
[実施例1-7]
実施例1-1の(i)工程におけるメタノール分散シリカゾルaおよび表面修飾剤Aの代わりに、合成例1-2で得られたメタノール分散シリカゾルbおよび合成例2-2で得られた表面修飾剤Bを、シリカゾル中に含まれるシリカ粒子の表面積1nm2当たり表面修飾剤Bを0.5個添加(総量)したこと以外は、実施例1-1の(i)から(ii)工程と同様に操作を実施し、表面修飾シリカ粒子のメタノール分散液、及び表面修飾シリカ粒子のメチルエチルケトン分散液を調製した。
【0084】
[実施例1-8]
実施例1-1の(i)工程におけるメタノール分散シリカゾルaおよび表面修飾剤Aの代わりに、合成例1-3で得られたメタノール分散シリカゾルcおよび合成例2-2で得られた表面修飾剤Bを、シリカゾル中に含まれるシリカ粒子の表面積1nm2当たり表面修飾剤Bを0.5個添加(総量)したこと以外は、実施例1-1の(i)から(ii)工程と同様に操作を実施し、表面修飾シリカ粒子のメタノール分散液、及び表面修飾シリカ粒子のメチルエチルケトン分散液を調製した。
【0085】
[比較例1-1]
比較例1-1として合成例1-3で得られた酸性シリカゾルを採用した。
【0086】
[比較例1-2]
300ccのナス型フラスコにメタノール分散シリカゾルcを200g仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、シリカ粒子の表面積1nm2当たり1.0個になる量にて表面修飾剤Eを2.4g添加し、60℃に加熱して3時間保持し、表面修飾シリカ粒子のメタノール分散液を作製した。
【0087】
〔実施例2/表面修飾シリカ粒子の誘電特性評価〕
[実施例2-1]
実施例1-1で得られた表面修飾シリカ粒子の分散液を100℃真空乾燥機で乾燥させ、分散溶媒を除去した。得られたシリカゲルを乳鉢で粉砕した後、更に150℃で1時間乾燥させてシリカ粉末を作製した。
得られたシリカ粉末について、23℃、周波数1GHzにおけるシリカ粉末の誘電率、及び誘電正接を測定した。表面修飾シリカ粒子の誘電特性を表1に示す。
【0088】
[実施例2-2~実施例2-8、比較例2-1~比較例2-2]
実施例1-2~実施例1-8、比較例1-2で得られた表面修飾シリカ粒子または表面未修飾粒子(比較例1-1)の分散液について、実施例2-1と同様にシリカ粉末を作製し、誘電率及び誘電正接を測定した。各シリカ粒子の誘電特性を表1に示す。
【0089】
【0090】
表1に示すように、数平均分子量Mnが500~100,000である表面修飾剤で粒子表面を修飾したシリカ粒子、又、双極子間力が0.01~2.0(MPa)1/2である表面修飾剤で修飾したシリカ粒子であるか、又は加水分解性官能基の当量が150~4
,000(g/eq)である表面修飾剤で修飾したシリカ粒子である、実施例2-1乃至実施例2-8にあっては、周波数1GHzにおける誘電正接の値が0.02以下を示し、非常に優れた低誘電特性を示すシリカ粒子であることが確認された。
【0091】
一方、表面修飾剤で被覆されていないシリカ粒子(比較例1-1)、又は表面修飾剤で修飾したシリカ粒子であるものの、該表面修飾剤が1,000未満の平均分子量を有するもの(比較例1-2)、又は双極子間力が2を超えるもの(比較例1-2)、又は加水分解性官能基の当量が150未満であるもの(比較例1-2)は、誘電正接が0.02より大きい値となり、低誘電特性に劣るシリカ粒子であった。
【0092】
本発明は、既存の平均分子量が1000未満である、又は加水分解性官能基の当量が150未満である表面修飾剤で被覆したシリカ粒子の誘電正接の値を3割超も低減し得るものであり、高周波用途への適用が期待できる。