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特開2024-86047眼科治療に用いられる電気刺激ベクトルポテンシャルコイル装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086047
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】眼科治療に用いられる電気刺激ベクトルポテンシャルコイル装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20240620BHJP
   A61N 1/40 20060101ALI20240620BHJP
   H01F 5/00 20060101ALI20240620BHJP
   H01F 5/02 20060101ALI20240620BHJP
   A61F 9/007 20060101ALN20240620BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N1/40
H01F5/00 R
H01F5/00 F
H01F5/02 Z
A61F9/007
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200917
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000107804
【氏名又は名称】スミダコーポレーション株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114971
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 健治
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】新垣 陽輔
(72)【発明者】
【氏名】大坊 真洋
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053JJ11
4C053JJ21
4C053LL05
4C053LL07
4C053LL12
(57)【要約】
【課題】 眼科治療或いは施術時において、生体への侵襲が最小限に抑える非侵襲的なベクトルポテンシャル発生装置を得る。
【解決手段】 ベクトルポテンシャルコイル11は、湾曲したコイル軸に沿って延びるソレノイドコイルであるベクトルポテンシャルであり、強磁性体部材11Aは、そのソレノイドコイル内でそのコイル軸に沿って延びている。電源装置は、ベクトルポテンシャルコイル11に電流を導通させる。ベクトルポテンシャルコイル11および強磁性体部材11Aは、周方向において開口部を備える。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状または湾曲したコイル軸に沿って延びるソレノイドコイルであるベクトルポテンシャルコイルと、
前記ソレノイドコイル内で前記コイル軸に沿って延びる強磁性体部材と、
前記ベクトルポテンシャルコイルに電流を導通させる電源装置とを備え、
前記ベクトルポテンシャルコイルおよび前記強磁性体部材は、周方向において開口部を備えること、
を特徴とする眼科治療に用いられる電気刺激ベクトルポテンシャル発生装置。
【請求項2】
前記ベクトルポテンシャルコイルを含む、直線状または湾曲したコイル軸に沿って延びるソレノイドコイルである複数のベクトルポテンシャルコイルと、
前記複数のベクトルポテンシャルコイルのソレノイドコイル内で前記コイル軸に沿ってそれぞれ延びる複数の強磁性体部材とを備え、
前記電源装置は、前記複数のベクトルポテンシャルコイルに対して電流を導通させること、
を特徴とする請求項1記載の眼科治療に用いられる電気刺激ベクトルポテンシャル発生装置。
【請求項3】
前記コイル軸は円弧状であり、
前記コイル軸を含む円の中心から見た前記ベクトルポテンシャルコイルの一端から他端までの角度は、360度未満であること、
を特徴とする請求項1または請求項2記載の眼科治療に用いられる電気刺激ベクトルポテンシャル発生装置。
【請求項4】
前記強磁性体部材は、導電性を有し、
前記ベクトルポテンシャルコイルの一端と前記強磁性体部材の一端とが互いに電気的に接続されており、
前記電源装置は、前記ベクトルポテンシャルコイルの他端および前記強磁性体部材の他端に電圧を印加して前記ベクトルポテンシャルコイルに電流を導通させること、
を特徴とする請求項1または請求項2記載の眼科治療に用いられる電気刺激ベクトルポテンシャル発生装置。
【請求項5】
前記強磁性体部材は、前記ベクトルポテンシャルコイルの外側に延びて閉磁路を形成することを特徴とする請求項1または請求項2記載の眼科治療に用いられる電気刺激ベクトルポテンシャル発生装置。
【請求項6】
前記ベクトルポテンシャルコイルは、同一の湾曲した前記コイル軸に沿ってそれぞれ延びる内側ソレノイドコイルおよび外側ソレノイドコイルを備え、
前記内側ソレノイドコイルの一端と前記外側ソレノイドコイルの一端が互いに電気的に接続されており、
前記電源装置は、前記内側ソレノイドコイルの他端および前記外側ソレノイドコイルの他端に電圧を印加して前記ベクトルポテンシャルコイルに電流を導通させること、
を特徴とする請求項1または請求項2記載の眼科治療に用いられる電気刺激ベクトルポテンシャル発生装置。
【請求項7】
前記ベクトルポテンシャルコイルおよび前記強磁性体部材を支持する支持体をさらに備え、
前記支持体は、生体にベクトルポテンシャルを発生させる位置に前記ベクトルポテンシャルコイルおよび前記強磁性体部材を配置し、
静電シール及び磁気シールド、またはいずれか一方を前記生体と前記前記ベクトルポテンシャルコイルおよび前記強磁性体部材との間に配置すること、
を特徴とする請求項1記載の眼科治療に用いられる電気刺激ベクトルポテンシャル発生装置。
【請求項8】
前記電源装置がプラスとマイナスのパルス電圧を交替に印加することを特徴とする請求項1記載の眼科治療に用いられる電気刺激ベクトルポテンシャル発生装置。
【請求項9】
直線状または湾曲したコイル軸に沿って延びるソレノイドコイルであるベクトルポテンシャルコイルおよび前記ソレノイドコイル内で前記コイル軸に沿って延びる強磁性体部材を支持する支持体で、生体に前記支持体を貼着することなく、前記生体にベクトルポテンシャルを発生させる位置に前記ベクトルポテンシャルコイルおよび前記強磁性体部材を配置すること、
を特徴とするベクトルポテンシャルコイル配置方法。
【請求項10】
それぞれのコイル軸に沿って延びる複数のソレノイドコイルである複数のベクトルポテンシャルコイルと、
前記複数のベクトルポテンシャルコイルに電流を導通させる電源装置とを備え、
前記複数のベクトルポテンシャルコイルは、直線状または曲線状の配列方向に沿って配列されること、
を特徴とする眼科治療に用いられる電気刺激ベクトルポテンシャル発生装置。
【請求項11】
前記複数のソレノイドコイル内で前記コイル軸に沿ってそれぞれ延びる複数の強磁性体部材をさらに備えることを特徴とする請求項10記載の眼科治療に用いられる電気刺激ベクトルポテンシャル発生装置。
【請求項12】
前記複数のベクトルポテンシャルコイルは、それぞれ、直線状のコイル軸に沿って巻回されており、また、前記コイル軸の方向に沿って、巻回方向の傾斜角が徐々に変化するように巻回されていることを特徴とする請求項10または請求項11記載の眼科治療に用いられる電気刺激ベクトルポテンシャル発生装置。
【請求項13】
前記複数のベクトルポテンシャルコイルは、円弧状の配列方向に沿って、前記配列方向の円弧を含む円についての所定の中心角の範囲において配列されており、
前記所定の中心角は、180度未満のいずれかの角度であること、
を特徴とする請求項10または請求項11記載の眼科治療に用いられる電気刺激ベクトルポテンシャル発生装置。
【請求項14】
前記複数のベクトルポテンシャルコイルは、それぞれ、湾曲したコイル軸に沿って巻回されており、前記コイル軸の湾曲内側方向が互いに交差するように配列されていることを特徴とする請求項10または請求項11記載の眼科治療に用いられる電気刺激ベクトルポテンシャル発生装置。
【請求項15】
前記複数のベクトルポテンシャルコイルを支持する支持体をさらに備え、
前記支持体は、生体に貼着されることなく、前記生体にベクトルポテンシャルを発生させる位置に前記複数のベクトルポテンシャルコイルを配置し、
静電シール及び磁気シールド、またはいずれか一方を前記生体と前記前記ベクトルポテンシャルコイルおよび前記強磁性体部材との間に配置すること、
を特徴とする請求項10記載の眼科治療に用いられる電気刺激ベクトルポテンシャル発生装置。
【請求項16】
前記電源装置がプラスとマイナスのパルス電圧を交替に印加することを特徴とする請求項10記載の眼科治療に用いられる電気刺激ベクトルポテンシャル発生装置。
【請求項17】
それぞれのコイル軸に沿って延びる複数のソレノイドコイルである複数のベクトルポテンシャルコイルを支持する支持体で、生体に前記支持体を貼着することなく、前記生体にベクトルポテンシャルを発生させる位置に前記複数のベクトルポテンシャルコイルを配置すること、
を特徴とする眼科治療に用いられる電気刺激ベクトルポテンシャルコイル配置方法。
【請求項18】
スパイラル状コイル軸に沿って延びるソレノイドコイルであるベクトルポテンシャルコイルと、
前記ベクトルポテンシャルコイルに電流を導通させる電源装置とを備え、
前記ベクトルポテンシャルコイルは、スパイラル状の配列方向に沿って配列されること、
を特徴とする眼科治療に用いられる電気刺激ベクトルポテンシャル発生装置。
【請求項19】
前記スパイラル状配列しているベクトルポテンシャルコイルは複数個を備えること、
を特徴とする請求項18記載の眼科治療に用いられる電気刺激ベクトルポテンシャル発生装置。
【請求項20】
前記ソレノイドコイル内で前記コイル軸に沿って強磁性体部材をさらに備えることを特徴とする請求項18または請求項19記載の眼科治療に用いられる電気刺激ベクトルポテンシャル発生装置。
【請求項21】
前記複数のベクトルポテンシャルコイルは、それぞれ、時計回りと反時計回り方向を沿って巻回されていることを特徴とする請求項19記載の眼科治療に用いられる電気刺激ベクトルポテンシャル発生装置。
【請求項22】
前記ベクトルポテンシャルコイルを支持する支持体をさらに備え、
前記支持体は、その周囲にある枠体により生体に貼着されることなく、前記生体にベクトルポテンシャルを発生させる位置に前記複数のベクトルポテンシャルコイルを配置し、
前記枠体が前記支持体と前記生体との間で配置し、
静電シール及び磁気シールド、またはいずれか一方を前記生体と前記前記ベクトルポテンシャルコイルおよび前記強磁性体部材との間に配置すること、
を特徴とする請求項18または請求項19記載の眼科治療に用いられる電気刺激ベクトルポテンシャル発生装置。
【請求項23】
前記電源装置がプラスとマイナスのパルス電圧を交替に印加することを特徴とする請求項18記載の眼科治療に用いられる電気刺激ベクトルポテンシャル発生装置。
【請求項24】
それぞれの2層以上のスパイラル状コイル軸に沿って延びる複数のソレノイドコイルである複数のベクトルポテンシャルコイルを支持する支持体で、その周囲にある枠体により生体に前記支持体を貼着することなく、前記生体にベクトルポテンシャルを発生させる位置に前記複数のベクトルポテンシャルコイルを配置し、前記枠体が前記支持体と前記生体との間で配置すること、
を特徴とする眼科治療に用いられる電気刺激ベクトルポテンシャルコイル配置方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科治療に用いられる電気刺激ベクトルポテンシャルコイル装置及びその使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、近視、眼科疾病、例えば、眼瞼下垂、眼瞼内反、兎眼症、麦粒腫、霰粒腫、眼瞼痙攣、眼瞼悪性腫瘍、結膜炎、類皮腫、結膜下出血、瞼裂斑、悪性リンパ腫、強膜炎、強膜軟化症、角膜炎、円錐角膜、翼状片、顆粒状角膜変性症、蚕蝕性角膜潰瘍、ぶどう膜炎、白内障、水晶体偏位、水晶体脱臼、落屑症候群、硝子体出血、星状硝子体症、第1次硝子体過形成遺残、緑内障、高眼圧症、網膜剥離、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性、ポリープ状脈絡膜血管症、網膜動脈閉塞症、網膜静脈閉塞症、網膜色素変性症、網膜分離症、黄斑円孔、黄斑上膜、コーツ病、家族性滲出性硝子体網膜症、急性網膜壊死、サイトメガロウイルス網膜炎、未熟児網膜症、網膜芽細胞腫、視神経炎、視神経低形成、レーベル遺伝性視神経症、視束管骨折、多発性硬化症、Devic病、下垂体腫瘍、脳梗塞、ドライアイ、涙嚢炎、鼻涙管ちりょう閉塞、涙小管炎、近視、遠視、乱視、老視、斜視、下斜筋過動症、Duane症候群、動眼神経麻痺、外転神経麻痺、ホルネル症候群、アディー症候群、外傷性散瞳、色覚異常、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、甲状腺眼症などの治療方法への研究が大きく進歩している。その中に特に電気刺激による治療方法及び装置に関する研究が注目されている。
【0003】
例えば、加齢黄斑変性歴を有する患者を治療するため、ユーザによる入力を必要としないようにパッケージされており、ユーザは体の正しい部位に電極を当てて、予めプログラムされた電流シーケンスを開始させる電気神経刺激装置を用いて、高周波数の直流バーストを短時間印加してから、低周波数の電流バーストを長時間印加することが開示されている。(例えば特許文献1参照)また、網膜剥離等の疾病を治療するために、眼球の奥にある特殊なツボに鍼灸針を通し、微弱電流で刺激し、電気信号は網膜にある視細胞のところで、電気エネルギーに変えて、網膜、硝子体など眼球組織を健常化する治療方法が開示されている。(例えば非特許文献1参照)
【0004】
他方、ソレノイドコイルを周回させたベクトルポテンシャルコイルに電流を導通させてベクトルポテンシャルを発生するベクトルポテンシャル発生装置が開発されている(例えば特許文献2参照)。また、時間変化するベクトルポテンシャルによって電圧が誘起されることを利用してベクトルポテンシャルを検出するベクトルポテンシャル検出装置も開発されている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2005/529689
【特許文献2】国際公開WO2015/099147
【特許文献3】特許第6950925号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】インターネット<URL:http://www.nannbyou.com/medical/me37.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の電気刺激方法においては、電極を皮膚に貼り付ける、或いは特殊な鍼灸針を筋肉に差し込む必要がある。そのため、眼科治療或いは施術時において、生体への侵襲が懸念される。そのため、電気刺激の効果を備えつつも、生体等へのダメージをなるべく最小限に抑える非侵襲的な治療装置が期待される。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、生体に適度な電気・磁気刺激与えると共に、生体への侵襲を避ける眼科治療に用いられる電気刺激ベクトルポテンシャルコイル装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る眼科治療に用いられる電気刺激ベクトルポテンシャル発生装置は、直線状或いは湾曲したコイル軸に沿って延びるソレノイドコイルであるベクトルポテンシャルコイルと、そのソレノイドコイル内でそのコイル軸に沿って延びる強磁性体部材と、ベクトルポテンシャルコイルに電流を導通させる電源装置とを備える。ベクトルポテンシャルコイルおよび強磁性体部材は、周方向において開口部を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、例えば生体から数ミリから十数センチ離れたところにベクトルポテンシャルコイル装置を置き、そこから電界及び/または電流を付加することができるため、生体への侵襲度を下げることが可能である。そのため、生体への電気刺激のための電極または鍼灸針に起因する侵襲を無くし、電気刺激によって眼科治療または施術を行うベクトルポテンシャルコイル装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施の形態に係るベクトルポテンシャル発生装置10の構成を示すブロック図である。
図2図2は、図1に示すベクトルポテンシャルコイル装置1におけるベクトルポテンシャルコイルの一例を示す図である。
図3図3は、実施の形態1におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す図である。
図4図4は、実施の形態1に係るベクトルポテンシャル発生装置1によるベクトルポテンシャルの印加の一例を示す図である。
図5図5は、実施の形態1に係るベクトルポテンシャル発生装置1の支持体110の一例を示す図である。
図6図6は、実施の形態1に係るベクトルポテンシャル発生装置1の取り付けの一例を示す図である。
図7図7は、本発明の実施の形態2に係るベクトルポテンシャル発生装置10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の構成を示す図である。
図8図8は、本発明の実施の形態3に係るベクトルポテンシャル発生装置10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の構成を示す図である。
図9図9は、本発明の実施の形態4に係るベクトルポテンシャル発生装置10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の構成を示す図である。
図10図10は、本発明の実施の形態5に係るベクトルポテンシャル発生装置10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の構成を示す図である。
図11図11は、本発明の実施の形態6に係るベクトルポテンシャル発生装置10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の構成を示す図である。
図12図12は、本発明の実施の形態7に係るベクトルポテンシャル発生装置10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の構成を示す図である。
図13図13は、本発明の実施の形態8に係るベクトルポテンシャルコイル装置1におけるベクトルポテンシャルコイルの一例を示す正面図である。
図14図14は、本発明の実施の形態8に係るベクトルポテンシャルコイル装置1におけるベクトルポテンシャルコイルの一例を示す上面図である。
図15図15は、本発明の実施の形態8に係るベクトルポテンシャルコイル装置1におけるベクトルポテンシャルコイルの一例を示す側面図である。
図16図16は、本発明の実施の形態9に係るベクトルポテンシャルコイル装置1におけるベクトルポテンシャルコイルの一例を示す図である。
図17図17は、本発明の実施の形態9に係るベクトルポテンシャルコイル装置1の装着例を示す図である。
図18図18は、本発明の実施の形態9に係るベクトルポテンシャルコイル装置1の装着例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
実施の形態1.
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係るベクトルポテンシャル発生装置10の構成を示すブロック図である。図1に示すベクトルポテンシャル発生装置10は、ベクトルポテンシャルコイル装置1および電源装置2を備える。
【0015】
図2は、図1に示すベクトルポテンシャルコイル装置1におけるベクトルポテンシャルコイルの一例を示す図である。ベクトルポテンシャルコイル装置1は、例えば図2に示すようなベクトルポテンシャルコイル(以下、VPコイルともいう)11を備える。VPコイル11は、湾曲したコイル軸に沿って延びるソレノイドコイルである。
【0016】
図3は、実施の形態1におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す図である。例えば図3に示すように、ベクトルポテンシャルコイル装置1は、上述のVPコイル11とともに、強磁性体部材11Aを備える。強磁性体部材11Aは、上述のソレノイドコイル内で上述のコイル軸に沿って延びる形状を有し、強磁性体材料で形成されている。
【0017】
VPコイル11を導通する電流によるベクトルポテンシャルは、電流から離れるにつれて弱くなるが、上述のようにVPコイル11および強磁性体部材11A、湾曲しているため、湾曲の内側方向(円弧状の場合はその曲率中心)では、VPコイル11の各位置の電流で発生したベクトルポテンシャルが重なり合うので強度が大きくなる。また、強磁性体部材11の実効透磁率に応じてベクトルポテンシャルが増強されるため、湾曲の内側方向(円弧状の場合はその曲率中心)では、ベクトルポテンシャルの強度が大きくなる。
【0018】
図1に示す電源装置2は、商用電源や電池(1次電池または2次電池)などの電力に基づいて電流を生成し、その電流(ここでは、所定の周波数の交流電流)をVPコイル11に導通させる。なお、電源装置2が電池の電力で電流をVPコイル11に導通させる場合、当該ベクトルポテンシャル発生装置10を、その電池を内蔵したポータブルな装置としてもよい。
【0019】
そして、例えば図3に示すように、VPコイル11および強磁性体部材11Aは、周方向において開口部14を備える。つまり、VPコイル11のコイル軸は1周以上周回されていない。
【0020】
例えば、上述のコイル軸は円弧状であり、そのコイル軸(つまり、円弧)を含む円の中心から見たVPコイル11(のコイル軸)の一端から他端までの角度(中心角)は、360度未満とされ、同様に、そのコイル軸を含む円の中心から見た強磁性体部材11Aの一端から他端までの角度(中心角)は、360度未満とされる。これにより、開口部14が形成される。例えば、その中心角は、180度でもよく、また、180度未満でもよい。ただし、中心角が大きいほど、湾曲内側方向のベクトルポテンシャルの強度が大きくなるため、中心角が大きいほうが好ましい。この中心角は、0度より大きく360度未満のいずれかの角度とされ、さらに、(a)0度より大きく180度以下のいずれかの角度とされてもよく、(b)0度より大きく90度以下のいずれかの角度とされてもよく、(c)0度より大きく45度以下のいずれかの角度とされてもよく、あるいは、(d)0.5度以上であり360度未満のいずれかの角度とされてもよく、さらに、(e)0.5度以上であり180度以下のいずれかの角度とされてもよく、(f)0.5度以上であり90度以下のいずれかの角度とされてもよく、(e)0.5度以上であり45度以下のいずれかの角度とされてもよく、(f)0.5度以上であり25度以下のいずれかの角度とされてもよく、あるいは、(g)2度以上であり360度未満のいずれかの角度とされてもよく、さらに、(h)2度以上であり180度以下のいずれかの角度とされてもよく、(i)2度以上であり90度以下のいずれかの角度とされてもよく、(j)2度以上であり45度以下のいずれかの角度とされてもよく、(k)2度以上であり25度以下のいずれかの角度とされてもよく、あるいは、(l)5度以上であり360度未満のいずれかの角度とされてもよく、さらに、(m)5度以上であり180度以下のいずれかの角度とされてもよく、(n)5度以上であり90度以下のいずれかの角度とされてもよく、(o)5度以上であり45度以下のいずれかの角度とされてもよく、(p)5度以上であり25度以下のいずれかの角度とされてもよい。また、湾曲内側方向からの、VPコイル11へのベクトルポテンシャルの印加対象の着脱を考慮した場合、開口部14が大きいほうが好ましい(つまり、印加対象の形状やサイズに応じて、上述のコイル軸の曲率半径および/または上述の中心角が決定される)。
【0021】
図4は、実施の形態1に係るベクトルポテンシャル発生装置10によるベクトルポテンシャルの印加の一例を示す図である。例えば図4に示すように、この開口部14の外側に、ベクトルポテンシャルの印加対象(図4では、人体の眼精101)が配置される。
【0022】
図5は、実施の形態1に係るベクトルポテンシャル発生装置1の支持体110の一例を示す図である。
【0023】
図5に示すベクトルポテンシャルコイル装置1は、支持部110、ベクトルポテンシャルコイル11、電源装置2(未図示)、および制御部3(未図示)を備える。
【0024】
支持部10は、生体の一部を収容することができる、開放的な凹部空間を有する部材であって、生体に面する照射面120を有する。実施の形態1では、支持部110は、パイプ状の部材である。ただし、支持部110は、板状の平坦部材、円弧状の部材、または半球状の部材などでもよい。また、上述の生体とは、ヒトでもよいし、動物でもよい。
【0025】
支持部110には、一部に光透過性のある部材(例えば透明な樹脂製の部材)が使用されても良い。そうすれば、ベクトルポテンシャルコイル装置1には更なる光治療素子を搭載することができ、電気及び光刺激を同時に生体に与えることもできる。
【0026】
図6は、実施の形態1に係るベクトルポテンシャル発生装置1の取り付けの一例を示す図である。生体(図6では人体)の一部に支持体110を貼着することなく、生体にベクトルポテンシャルを発生させる位置にベクトルポテンシャルコイル11および強磁性体部材11Aが配置されている。
【0027】
図6に示すベクトルポテンシャルコイル装置1は、支持部110により支持され、また、支持部110が取り付け部により耳に取り付けられているメガネ形態を有する。こうすることにより、ベクトルポテンシャルコイル装置1が場所とらずに携帯することも可能となる。特に、小型化のために、電源装置2(未図示)、および制御部3(未図示)の全部もしくはその一部を支持部110或いは取り付け部と一体化することが好ましい。
【0028】
また、実施の形態1では、強磁性体部材11Aは、導電性を有するパーマロイなどの材料で形成されており、VPコイル11の一端と強磁性体部材11Aの一端(端部11A1)とが互いに電気的に接続されており、電流の経路となる。そして、電源装置2は、VPコイル11の他端および強磁性体部材11Aの他端に電圧を印加してVPコイル11に電流を導通させる。ここでは、電源装置2は、VPコイル11の他端に電気的に接続された端子12と強磁性体部材11Aの他端(端部11A2)に電気的に接続された端子13とに電圧を印加してVPコイル11に電流を導通させる。
【0029】
また、VPコイル11のコイル軸は1周以上周回していないので、VPコイル11の両端の距離が大きくなるが、強磁性体部材11Aが電流の経路とされ、VPコイル11のいずれか一方の端部側に2つの端子12,13が配置されているため、電源装置2からVPコイル11および強磁性体部材11Aまでの配線を流れる経路が囲む面積が比較的狭くなり、この配線を流れる電流に起因して発生する不要な磁場が抑制される。
【0030】
次に、実施の形態1に係るベクトルポテンシャル発生装置10の動作について説明する。
【0031】
電源装置2は、制御部3(未図示)の制御によりベクトルポテンシャル発生装置10における上述の端子12,13に所定のプラスとマイナスのパルス電圧を交替に印加し、VPコイル11および強磁性体部材11Aに電流を導通させる。
【0032】
VPコイル11を導通する電流によって磁場がコイル軸に沿って発生し、その電流に平行にベクトルポテンシャルが発生し、VPコイル11の湾曲内側方向における(つまり、開口部14周辺の)ベクトルポテンシャルの強度が、VPコイル11の湾曲外側方向におけるベクトルポテンシャルより大きくなる。
【0033】
そのため、この開口部14に配置されたベクトルポテンシャルの印加対象に効果的にベクトルポテンシャルが印加される。また、印加対象である生体において、例えば、眼部周辺の創傷された骨格筋(例えば眼輪筋)や、角膜や、網膜や、眼瞼や、硝子体や、涙嚢や、鼻涙管などの細胞が電気刺激を受け、そして損傷を受けた細胞からのSOS信号がこの電気刺激の電流に載せられ、脳により検出しやすくなるとともに、生体の自己治癒メカニズムにより、脳が身体に細胞の修復に必要なATP(エネルギー源)が多く作られるような指令を出すことになる。
【0034】
以上のように、上記実施の形態1によれば、VPコイル11は、湾曲したコイル軸に沿って延びるソレノイドコイルであり、強磁性体部材11Aは、そのソレノイドコイル内でそのコイル軸に沿って延びている。電源装置2は、VPコイル11に電流を導通させる。そして、VPコイル11および強磁性体部材11Aは、周方向(つまり、1周未満で周回しているVPコイル11および強磁性体部材11Aの周方向)において開口部14を備える。
【0035】
これにより、開口部14において、あるいは、開口部14を介してVPコイル11の内部または外部領域に、ベクトルポテンシャルの印加対象を配置させることができるため、ベクトルポテンシャルの印加対象の制約が少ない。また、中心角が小さいほど、ベクトルポテンシャルの印加対象の制約が少ないとも言える。
【0036】
例えば、実施の形態1に示すようなVPコイル11を使用することで、比較的小さいVPコイル11で特定な箇所にも効果的にベクトルポテンシャルを印加できる。
【0037】
実施の形態2.
【0038】
図7は、本発明の実施の形態2に係るベクトルポテンシャル発生装置10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の構成を示す図である。
【0039】
実施の形態2では、例えば図7に示すように、VPコイル11(つまり、ソレノイドコイル)の内部に、強磁性体部材11Bが配置されている。この強磁性体部材11Bは、強磁性体部材11Aと同様に、VPコイル11のコイル軸に沿った形状を有し、さらに、VPコイル11の外側(湾曲外側方向)に延びて閉磁路を形成している。
【0040】
強磁性体部材11Bは、導電性のある強磁性材料(例えばパーマロイなどといった金属磁性体)の部材であり、VPコイル11の一方のコイル端側の接続点11B1と、VPコイル11の他方のコイル端側の接続点11B2とを有し、接続点11B1において、VPコイル11の一方のコイル端が、強磁性体部材11Bに電気的に接続されている。
【0041】
また、VPコイル11の他方のコイル端が端子12に電気的に接続され、強磁性体部材11Bの接続点11B2が引き出し線を介して端子13に電気的に接続されており、電源装置2は、端子12,13に電圧を印加して、VPコイル11に電流を導通させる。
【0042】
なお、この強磁性体部材11Bには、VPコイル11の湾曲外側方向においてギャップ11B3が形成されており、ギャップ11B3によって、強磁性体部材11Bにおける、VPコイル11の湾曲の外側の部分を電流が導通しないようになっている。
【0043】
また、強磁性体部材11Bにおける内側部分と外側部分との移行部分は、磁束の漏洩や曲げ加工による透磁率減少の影響を小さくするために、急峻な屈曲箇所のないように、連続的に滑らかな曲線状とされることが好ましい。また、強磁性体部材11Bは複数部材を連結して形成されるようにしてもよい。
【0044】
なお、実施の形態2に係るベクトルポテンシャル発生装置10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1は、実施の形態1にも適用可能である。
【0045】
実施の形態3.
【0046】
図8は、本発明の実施の形態3に係るベクトルポテンシャル発生装置10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の構成を示す図である。
【0047】
実施の形態3では、例えば図8に示すように、VPコイル11は、同一の湾曲したコイル軸に沿ってそれぞれ延びコイル径の互いに異なる内側ソレノイドコイル11-1および外側ソレノイドコイル11-2を備え、内側ソレノイドコイル11-1の一方のコイル端と外側ソレノイドコイル11-2の一方のコイル端とが電気的に接続されている。内側ソレノイドコイル11-1および外側ソレノイドコイル11-2は、それぞれ1本のVPコイルとして機能するものであり、したがって、実施の形態3のVPコイル11は、電気的には、2本のVPコイルを同相で直列接続した構成となっている。
【0048】
さらに、実施の形態3では、例えば図8に示すように、VPコイル11(内側ソレノイドコイル11-1)の内部に、強磁性体部材11Cが配置されている。この強磁性体部材11Cは、上述の強磁性体部材11Aと同様のものである。ただし、VPコイル11と強磁性体部材11Cとは電気的に接続されておらず、強磁性体部材11Cは、導電性を有していなくてもよい。
【0049】
電源装置2は、内側ソレノイドコイル11-1の他端および外側ソレノイドコイルの他端11-2に電圧を印加してVPコイル11に電流を導通させる。具体的には、電源装置2は、内側ソレノイドコイル11-1の他端に電気的に接続された端子12および外側ソレノイドコイルの他端11-2に電気的に接続された端子13に電圧を印加してVPコイル11に電流を導通させる。
【0050】
なお、実施の形態3に係るベクトルポテンシャル発生装置10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1は、実施の形態1~2のいずれにも適用可能である。
【0051】
実施の形態4.
【0052】
図9は、本発明の実施の形態4に係るベクトルポテンシャル発生装置10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の構成を示す図である。
【0053】
実施の形態4では、例えば図9に示すように、VPコイル11は、実施の形態3と同様の内側ソレノイドコイル11-1および外側ソレノイドコイル11-2を備える。さらに、実施の形態6では、例えば図9に示すように、VPコイル11(内側ソレノイドコイル11-1)の内部に、強磁性体部材11Dが配置されている。この強磁性体部材11Dは、上述の強磁性体部材11Bと同様のものである。ただし、VPコイル11と強磁性体部材11Dとは電気的に接続されておらず、強磁性体部材11Dは、導電性を有していなくてもよく、ギャップは設けられていない。つまり、実施の形態4では、交流電流が内側ソレノイドコイル11-1および外側ソレノイドコイル11-2を導通し、強磁性体部材11Dを導通しないため、強磁性体部材11Dは導電性やギャップを必要としない。
【0054】
なお、実施の形態4に係るベクトルポテンシャル発生装置10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1のその他の構成および動作については実施の形態3と同様であるので、その説明を省略する。
【0055】
実施の形態5.
【0056】
図10は、本発明の実施の形態5に係るベクトルポテンシャル発生装置10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の構成を示す図である。
【0057】
実施の形態5では、ベクトルポテンシャルコイル装置1は、複数のVPコイル11を備える。実施の形態5における各VPコイル11は、直線状のコイル軸を有し、コイル軸に沿って延びる複数のソレノイドコイルである。この複数のVPコイル11は、直線状の配列方向に沿って配列されている。つまり、ベクトルポテンシャルコイル装置1の外形は、略平板状になっている。電源装置2は、複数のVPコイル11に電流を導通させる。なお、複数のVPコイル11は、電気的に、直列に接続されていてもよいし、並列に接続されていてもよい。また、複数の電源装置2が複数のVPコイル11に電流をそれぞれ導通させるようにしてもよい。その場合、複数のVPコイル11に導通する交流電流が同期するように、複数の電源装置2が複数のVPコイル11に交流電流をそれぞれ導通させる。さらに、ベクトルポテンシャルコイル装置1は、上述の強磁性体部材と同様に複数のVPコイル11のコイル軸に沿って延びる複数の強磁性体部材(図示せず)を備える。
【0058】
このように、VPコイル11を複数設けることで、印加対象に印加されるベクトルポテンシャルの強度が大きくなる。
【0059】
なお、実施の形態5に係るベクトルポテンシャル発生装置10のその他の構成および動作については他の実施の形態のいずれかと同様であるので、その説明を省略する。
【0060】
実施の形態6.
【0061】
図11は、本発明の実施の形態6に係るベクトルポテンシャル発生装置10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の構成を示す図である。
【0062】
実施の形態6では、ベクトルポテンシャルコイル装置1は、複数のVPコイル11を備える。実施の形態6における各VPコイル11は、直線状のコイル軸を有し、コイル軸に沿って延びる複数のソレノイドコイルである。この複数のVPコイル11は、曲線状の(湾曲した)配列方向に沿って配列されている。電源装置2は、複数のVPコイル11に電流を導通させる。なお、複数のVPコイル11は、電気的に、直列に接続されていてもよいし、並列に接続されていてもよい。また、ベクトルポテンシャルコイル装置1は、上述の強磁性体部材と同様に複数のVPコイル11のコイル軸に沿って延びる複数の強磁性体部材(図示せず)を備える。ここでは、この配列方向は閉曲線であって、円弧状の配列方向に沿って複数のVPコイル11が配列されている。特に、複数のVPコイル11は、配列方向の円弧を含む円についての所定の中心角θの範囲において(ここでは均等な角度間隔で)配列されている。2つのVPコイル11の間の中間位置では2つのVPコイル11のベクトルポテンシャルが相殺されるため、例えば、この中心角θは180度未満のいずれかの角度とされる。
【0063】
例えば、配列された複数のVPコイル11の内側方向の空間内またはその空間外に、人体の眼精の全部又は一部、眼精周囲の筋肉、或いは眼精関連のツボなどの部位が配置され、その部位にベクトルポテンシャルが印加される。
【0064】
なお、例えば図11に示すように、直線状のコイル軸を有する複数のVPコイル11が曲線状の配列方向に沿って、所定の対称面(X軸に垂直でZ軸およびY軸に平行な平面)に対して面対称に配列される場合、配列方向の円弧を含む円についての中心を通り、かつコイル軸に平行な軸上では、複数のVPコイル11により発生するベクトルポテンシャルのベクトル合成の結果、対称面に垂直な方向(図11におけるX軸方向)にベクトルポテンシャルが発生する。したがって、例えば図4に示すような湾曲したコイル軸を有するVPコイル11と、直線状のコイル軸を有し、曲線状の配列方向に沿って所定の対称面に対して面対称に配列される複数のVPコイル11とを組み合わせることで、X軸およびY軸の2次元平面内の所望の方向にベクトルポテンシャルを発生させることができる。
【0065】
なお、実施の形態6に係るベクトルポテンシャル発生装置10のその他の構成および動作については他の実施の形態のいずれかと同様であるので、その説明を省略する。
【0066】
実施の形態7.
【0067】
図12は、本発明の実施の形態7に係るベクトルポテンシャル発生装置10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の構成を示す図である。
【0068】
実施の形態7では、ベクトルポテンシャルコイル装置1は、複数のVPコイル11を備える。この複数のVPコイル11は、それぞれ、直線状のコイル軸に沿って巻回されており、また、コイル軸の方向に沿って、巻回方向の傾斜角が徐々に変化するように巻回されている。また、ベクトルポテンシャルコイル装置1は、上述の強磁性体部材と同様に複数のVPコイル11のコイル軸に沿って延びる複数の強磁性体部材(図示せず)を備える。
【0069】
実施の形態7では、例えば図12に示すように、VPコイル11は、直線状のコイル軸に沿って巻回されているが、コイル軸の方向に沿って、巻回方向の傾斜角(コイル軸方向と巻回方向とのなす角度)A0~A5が徐々に変化するように巻回されている。具体的には、VPコイル11の中心の傾斜角が90度となっており、中心から離れるほど、傾斜角が小さくなっている(A0>A1>A2>A3>A4>A5)。これにより、湾曲したVPコイル11と同様に良好な強度で上述のベクトルポテンシャルを印加できる。
【0070】
なお、実施の形態7に係るベクトルポテンシャル発生装置10のその他の構成および動作については他の実施の形態のいずれかと同様であるので、その説明を省略する。
【0071】
実施の形態8.
【0072】
図13は、本発明の実施の形態8に係るベクトルポテンシャルコイル装置1におけるベクトルポテンシャルコイルの一例を示す正面図である。図14は、本発明の実施の形態8に係るベクトルポテンシャルコイル装置1におけるベクトルポテンシャルコイルの一例を示す上面図である。図15は、本発明の実施の形態8に係るベクトルポテンシャルコイル装置1におけるベクトルポテンシャルコイルの一例を示す側面図である。
【0073】
実施の形態8に係るベクトルポテンシャルコイル装置1は、複数のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5を備える。例えば図13図15に示すように、この複数のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5は、それぞれ、湾曲したコイル軸に沿って巻回されており、コイル軸の湾曲内側方向(つまり、コイル軸を含む平面)が互いに交差するように配列されている。例えば、図15に示すように、複数のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5のコイル軸を含む平面がY軸方向に対して平行になり、かつX軸方向に対する、それらの平面の傾斜角の角度間隔が略同一となるように、複数のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5が配置される。また、ここでは、ベクトルポテンシャルコイル31-1についての傾斜角が90度となっている。
【0074】
なお、ここでは、ベクトルポテンシャルコイル装置1は、5本のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5を備えているが、2~4本および6本以上のいずれかの本数Mの、同様のベクトルポテンシャル31-1~31-Mを備えていてもよい。
【0075】
例えば、複数のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5のコイル軸が単一の部分球面(例えば半球面)に含まれるように、コイル軸の形状(曲率など)および配置が決定され、その部分球面を含む球面の中心(つまり、すべてのコイル軸の曲率中心)に、印加対象が配置される。なお、複数のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5のコイル軸が単一の部分球面以外の曲面(部分的な非球面)に含まれるように、コイル軸の形状(曲率など)および配置を決定するようにしてもよい。
【0076】
なお、複数のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5は、上述の実施の形態と同様にして交流電流に応じたベクトルポテンシャルをそれぞれ発生させ、複数のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5によるベクトルポテンシャルが合成され、ベクトルポテンシャルVP(t)が得られる。ここでは、合成されたベクトルポテンシャルVP(t)の振幅が最大となるように(例えば互いに同相で)、電源装置2が複数のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5に交流電流を導通させる。
【0077】
なお、実施の形態8に係るベクトルポテンシャル発生装置10のその他の構成および動作については他の実施の形態のいずれかと同様であるので、その説明を省略する。つまり、複数のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5のコイル軸に沿って、上述の強磁性体部材のいずれかがそれぞれ配置されていてもよい。
【0078】
以上のように、上記実施の形態8に係るベクトルポテンシャル発生装置10によれば、複数のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5の湾曲内側方向にベクトルポテンシャルを集中させて、高い強度のベクトルポテンシャルを印加対象に印加させることができる。
【0079】
実施の形態9.
【0080】
図16は、本発明の実施の形態9に係るベクトルポテンシャルコイル装置1におけるベクトルポテンシャルコイルの一例を示す図である。図17は、本発明の実施の形態9に係るベクトルポテンシャルコイル装置1の装着例を示す図である。図18は、本発明の実施の形態9に係るベクトルポテンシャルコイル装置1の他の装着例を示す図である。
【0081】
実施の形態9に係るベクトルポテンシャルコイル装置1は、2つのベクトルポテンシャルコイルを備える。例えば図16に示すように、2つのベクトルポテンシャルコイルは、それぞれ、2層以上のスパイラル状コイル軸に沿って巻回されており、そして2つのベクトルポテンシャルコイルが並列に配列されている。ここでは、2層以上とは、ベクトルポテンシャルコイルが同じ面内で1周して円形状にすることを2回以上行って得られた形状である。また、スパイラル状とは同心円状と異なり、渦が巻くような、旋回するにつれ中心から遠ざかる曲線形状である。その旋回方向が時計回りと反時計回り2種類ある。また、この実施の形態9に係わるベクトルポテンシャルコイルの層数が1層でも良く、2つのベクトルポテンシャルコイルの巻回方向が逆であれば、本発明の効果が得られる。
【0082】
なお、ここでは、ベクトルポテンシャルコイル装置1は、2本のベクトルポテンシャルコイルを備え、それぞれの旋回方向が真逆である。即ち、一方のベクトルポテンシャルコイルの旋回方向が時計回りで、他方の旋回方向が反時計回りである。こうすることによって、生体の所定位置にベクトルポテンシャルを発生させることができる。例えば交流電流が流れる時、一方の眼球には紙面から奥の方向に、他方の眼球には奥から紙面の方向に逆向きに電気刺激が印加されるようにする。また、交流電流の向きが変わった時、一方の眼球には奥から紙面の方向に、他方の眼球には紙面から奥の方向に逆向きに電気刺激が印加されるようにする。そうすれば、常に二つのベクトルポテンシャルが遠いところでキャンセルされ、2本のベクトルポテンシャルコイルの近場に交互に印加することができる。例えば、眼科治療において近い眼球にはベクトルポテンシャルの刺激が与えられ、遠くの脳には差動によりキャンセルされて副作用が抑えられる。
【0083】
こうすれば眼精の水晶体や硝子体の濁り、光散乱により、網膜への光学的なアプローチ(カメラによる観察、レーザー治療)が困難な状況であっても本実施の形態9のベクトルポテンシャルコイル装置1を利用すれば、媒体に影響を受けずに均一に電気刺激を印加できる。特に、網膜剥離の術後の硝子体領域における、六フッ化キセノン(XeF6)ガスが体液に置換されていく過程で、眼内に液面があり、網膜への光学的なアプローチが困難な状況である。また、静電誘導の方法では、導電性の高い硝子体を通して、網膜まで電界を到達させることは極めて困難である。一方、本実施の形態9のベクトルポテンシャルコイル装置1を利用すれば、網膜にベクトルポテンシャルを発生させることができ、期待通り電気刺激を印加することができる。
【0084】
また、図17は、本発明の実施の形態9に係るベクトルポテンシャルコイル装置1の装着例を示す図である。この例では、本発明の実施の形態9に係るベクトルポテンシャルコイル装置1がアイマスクのような枠体に装着される。そのため、上述通りベクトルポテンシャルコイル装置1が眼球の近場に配置されているため、網膜等の部位でベクトルポテンシャルを発生させることができる。
【0085】
図18は、本発明の実施の形態9に係るベクトルポテンシャルコイル装置1の他の装着例を示す図である。この例では、本発明の実施の形態9に係るベクトルポテンシャルコイル装置1がゴーグルのような枠体に装着される。同様に、上述通りベクトルポテンシャルコイル装置1が眼球の近場に配置されているため、網膜等の部位でベクトルポテンシャルを発生させることができる。
【0086】
なお、上述の実施の形態に対する様々な変更および修正については、当業者には明らかである。そのような変更および修正は、その主題の趣旨および範囲から離れることなく、かつ、意図された利点を弱めることなく行われてもよい。つまり、そのような変更および修正が請求の範囲に含まれることを意図している。
【0087】
例えば、上記実施の形態において、VPコイル11とベクトルポテンシャルの印加対象(眼精101など)との間には静電シールド及び磁気シールド、またはいずれの一方があってもよい。その場合でも、ベクトルポテンシャルは、静電シールド及び磁気シールド、またはいずれの一方を透過するため、静電シールド及び磁気シールド、またはいずれの一方があってもベクトルポテンシャルの印加対象に印加される。
【0088】
また、上記実施の形態において、VPコイル11のコイル軸に沿って配置される強磁性体部材は必要に応じて省略されてもよい。
【0089】
また、上記実施の形態3,4では、VPコイル11が、径方向において、内側ソレノイドコイル11-1および外側ソレノイドコイル11-2の2層構造となっているが、層数が偶数であれば、4層以上の層数でもよい。その場合、すべての層のソレノイドコイル11-iが電気的に直列接続されるように、ソレノイドコイル11-iのいずれかの端部で次層のソレノイドコイル11-(i+1)に接続される。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、例えば、眼科治療に用いられる電気刺激方法においてVPコイルを使用したベクトルポテンシャルの発生に適用可能である。
【符号の説明】
【0091】
2 電源装置
10 ベクトルポテンシャル発生装置
11,31-1~31-5 ベクトルポテンシャルコイル
11-1 内側ソレノイドコイル
11-2 外側ソレノイドコイル
11A,11B,11C,11D 強磁性体部材
14 開口部
110 支持部
120 照射面






図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18