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特開2024-8610作業用車両、制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008610
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】作業用車両、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A01D 75/28 20060101AFI20240112BHJP
   A01D 34/86 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
A01D75/28
A01D34/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110614
(22)【出願日】2022-07-08
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム 産学共同(育成型)「畦畔管理のためのデータ活用型農作業支援アプリの開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100183438
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 泰史
(72)【発明者】
【氏名】菊地 麗
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 達也
【テーマコード(参考)】
2B083
2B085
【Fターム(参考)】
2B083AA02
2B083BA18
2B083CA12
2B083CA22
2B083CA23
2B083DA03
2B083HA52
2B083HA59
2B085AA05
2B085AA06
2B085AC31
2B085AC70
2B085BC16
2B085BE34
2B085CA03
2B085CA22
(57)【要約】
【課題】より正確に位置制御を行うこと。
【解決手段】作業用車両10は、ワイヤR1,R2体に対応して設けられ、ワイヤR1,R2が巻き付けられた状態で回転することによってワイヤR1,R2の巻き伸ばしを行うリール22と、リール22を回転させる駆動源であるモータ21と、モータ21の駆動を制御するモータドライバ70と、リール22の回転に伴って巻き伸ばしされるワイヤR1,R2の巻き伸ばしに伴って回転しながらワイヤR1,R2を抑えるローラ23と、ローラ23の回転を検出するエンコーダ24と、エンコーダ24によって検出されるローラ23の回転状況に基づき、作業用車両10の位置を推定し、推定結果を考慮して、ワイヤR1,R2の巻き伸ばしにより作業用車両10が所望の位置に制御されるように、モータドライバ70に制御信号を出力する制御部50と、を備える。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が固定対象に支持されたロープ体の巻き伸ばしによって位置が制御される作業用車両であって、
前記ロープ体に対応して設けられ、前記ロープ体が巻き付けられた状態で回転することによって前記ロープ体の巻き伸ばしを行うリールと、
前記リールを回転させる駆動源であるモータと、
前記モータの駆動を制御するモータ駆動制御機構と、
前記リールの回転に伴って巻き伸ばしされる前記ロープ体の巻き伸ばしに伴って回転しながら前記ロープ体を抑えるローラと、
前記ローラの回転を検出するエンコーダと、
前記エンコーダによって検出される前記ローラの回転状況に基づき、前記作業用車両の位置を推定し、推定結果を考慮して、前記ロープ体の巻き伸ばしにより前記作業用車両が所望の位置に制御されるように、前記モータ駆動制御機構に制御信号を出力する制御部と、を備える、作業用車両。
【請求項2】
前記ローラに対して前記リール方向に押し付けるテンションを付加するローラ側弾性体を更に備える、請求項1記載の作業用車両。
【請求項3】
前記ロープ体にテンションを付加するロープ側弾性体と、
前記ロープ側弾性体の伸縮状態を検出することにより、前記ロープ体におけるテンションの緩みを検出する検出スイッチと、を更に備え、
前記制御部は、前記検出スイッチによって前記ロープ体におけるテンションの緩みが検出されたことに基づき、該緩みが検出された前記ロープ体の巻き取りが実施されるように、前記モータ駆動制御機構に制御信号を出力する、請求項1記載の作業用車両。
【請求項4】
前記制御部は、前記モータ駆動制御機構に出力している制御信号と、前記エンコーダによって検出される前記ローラの回転状況とに基づき、制御内容を決定する、請求項3記載の作業用車両。
【請求項5】
前記制御部は、前記モータを回転させる制御信号を前記モータ駆動制御機構に出力しているにもかかわらず前記エンコーダによって前記ローラの回転が検出されない第1状態において、前記緩みが検出された場合、故障修理を促す報知を行う、請求項4記載の作業用車両。
【請求項6】
前記制御部は、前記モータ駆動制御機構に出力する制御信号によって指示される前記モータの回転方向に対応する前記ロープ体の巻き伸ばし方向と、前記エンコーダによって検出される前記ローラの回転方向に対応する前記ロープ体の巻き伸ばし方向とが互いに一致する第2状態において、前記緩みが検出されない場合、通常処理が可能であると判定する、請求項4記載の作業用車両。
【請求項7】
前記制御部は、前記第2状態において前記緩みが検出された場合、前記緩みが検出された前記ロープ体が前記リールによって巻き取られるように、前記モータ駆動制御機構に制御信号を出力し、前記エンコーダによって検出される前記ローラの回転方向が前記ロープ体を巻き取る方向であり、且つ、前記緩みが検出されなくなった際に、前記緩みが解消し通常処理が可能になったと判定する、請求項6記載の作業用車両。
【請求項8】
前記制御部は、前記モータ駆動制御機構に出力する制御信号によって指示される前記モータの回転方向に対応する前記ロープ体の巻き伸ばし方向と、前記エンコーダによって検出される前記ローラの回転方向に対応する前記ロープ体の巻き伸ばし方向とが互いに一致しない第3状態において、前記ロープ体が前記リールによって巻き取られるように、前記モータ駆動制御機構に制御信号を出力し、前記エンコーダによって検出される前記ローラの回転方向が前記ロープ体を巻き取る方向でない場合、故障修理を促す報知を行う、請求項4記載の作業用車両。
【請求項9】
前記制御部は、所定時間内に所定回数以上、前記検出スイッチによって前記緩みが検出された場合に限り、前記緩みが検出された前記ロープ体の巻き取りが実施されるように、前記モータ駆動制御機構に制御信号を出力する、請求項3記載の作業用車両。
【請求項10】
一端が固定対象に支持されたロープ体のそれぞれに対応して設けられ、前記ロープ体が巻き付けられた状態で回転することによって前記ロープ体の巻き伸ばしを行うリールと、前記リールを回転させる駆動源であるモータと、前記モータを制御するモータ駆動制御機構と、前記リールの回転に伴って回転しながら前記リールに巻き付けられた前記ロープ体を抑えるローラと、前記ローラの回転を検出するエンコーダと、を備える作業用車両を制御するコンピュータが、
前記エンコーダによって検出される前記ローラの回転状況に基づき、前記作業用車両の位置を推定し、推定結果を考慮して、前記ロープ体の巻き伸ばしにより前記作業用車両が所望の位置に制御されるように、前記モータ駆動制御機構に制御信号を出力する、作業用車両の制御方法。
【請求項11】
一端が固定対象に支持されたロープ体のそれぞれに対応して設けられ、前記ロープ体が巻き付けられた状態で回転することによって前記ロープ体の巻き伸ばしを行うリールと、前記リールを回転させる駆動源であるモータと、前記モータを制御するモータ駆動制御機構と、前記リールの回転に伴って回転しながら前記リールに巻き付けられた前記ロープ体を抑えるローラと、前記ローラの回転を検出するエンコーダと、を備える作業用車両を制御するコンピュータに、
前記エンコーダによって検出される前記ローラの回転状況に基づき、前記作業用車両の位置を推定することと、推定結果を考慮して、前記ロープ体の巻き伸ばしにより前記作業用車両が所望の位置に制御されるように、前記モータ駆動制御機構に制御信号を出力することと、を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、作業用車両、制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
中山間地には多数の小規模圃場が存在し、それに付随する畦畔面積も大きく、畦畔管理作業の軽労化・省力化が課題となっている。畦畔の維持や農地への雑草進入・病虫害を防ぐためにも、畦畔管理は重要な作業であるが、担い手の不足・高齢化により、畦畔管理が困難になり営農継続が難しくなる場合も想定される。畦畔管理は生産に直接結びつかない労働であり、作業の省力化・効率化が求められている。
【0003】
畦畔管理に関して、草刈り等の作業を行う作業用車両として、例えば特許文献1及び2に記載された作業用車両が知られている。特許文献1には、一端が固定対象に支持されたロープ体の巻き取りおよび繰り出しを行うことにより、ロープ体における張力を駆動源として車体を走行させる作業用車両が開示されている。特許文献2には、斜面の草刈り作業に用いられる車両として、草刈り機の進行方向と2本のロープ体の繰り出し角度と繰り出し量とから、草刈り機の相対位置を把握する車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-201560号公報
【特許文献2】特開2015-167492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上述した作業用車両においては、ロープ体の巻き伸ばし量に応じて作業用車両の位置を制御している。このような作業用車両では、例えばロープ体に緩み、絡まり、破断等が生じた場合において、作業用車両の位置制御(ロープ体の長さの精密な制御による安定した自律制御)を適切に実施できない場合がある。ロープ体の絡まりや破断が発生した場合には、設定区域外に作業用車両が落下するリスクもある。
【0006】
本発明の一態様は上記実情に鑑みてなされたものであり、より正確に位置制御を行うことができる作業用車両、制御方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る作業用車両は、一端が固定対象に支持されたロープ体の巻き伸ばしによって位置が制御される作業用車両であって、ロープ体に対応して設けられ、ロープ体が巻き付けられた状態で回転することによってロープ体の巻き伸ばしを行うリールと、リールを回転させる駆動源であるモータと、モータの駆動を制御するモータ駆動制御機構と、リールの回転に伴って巻き伸ばしされるロープ体の巻き伸ばしに伴って回転しながらロープ体を抑えるローラと、ローラの回転を検出するエンコーダと、エンコーダによって検出されるローラの回転状況に基づき、作業用車両の位置を推定し、推定結果を考慮して、ロープ体の巻き伸ばしにより作業用車両が所望の位置に制御されるように、モータ駆動制御機構に制御信号を出力する制御部と、を備える。
【0008】
本発明の一態様に係る作業用車両では、ロープ体の巻き伸ばしに伴って回転しながらロープ体を抑えるローラの回転が検出されることにより、ロープ体の巻き伸ばし量を正確に取得することができる。そして、取得したローラの回転状況(すなわち、高精度に取得されたロープ体の巻き伸ばし量)に基づいて作業用車両の位置が推定されて作業用車両の位置制御が実施されることにより、正確に、作業用車両の位置制御を行うことができる。また、ローラによってロープ体がリール上で盛り上がることが抑制されることにより、ロープ体の巻き伸ばし量に応じた作業用車両の位置制御をより正確に行うことができる。
【0009】
上記作業用車両は、ローラに対してリール方向に押し付けるテンションを付加するローラ側弾性体を更に備えていてもよい。このように、ローラ側弾性体によってローラがリール方向に押し付けられることにより、ロープ体がリール上で盛り上がることをより確実に抑制することができる。
【0010】
上記作業用車両は、ロープ体にテンションを付加するロープ側弾性体と、ロープ側弾性体の伸縮状態を検出することにより、ロープ体におけるテンションの緩みを検出する検出スイッチと、を更に備え、制御部は、検出スイッチによってロープ体におけるテンションの緩みが検出されたことに基づき、該緩みが検出されたロープ体の巻き取りが実施されるように、モータ駆動制御機構に制御信号を出力してもよい。ロープ側弾性体によってロープ体にテンションが付加されることにより、ロープ体が緩むこと(すなわち、作業用車両の位置制御の精度が悪化すること)を効果的に抑制することができる。また、検出スイッチによって、ロープ側弾性体の伸縮状態が検出されることにより、ロープ体が緩んでいることを適切に検出することができる。そして、本発明の一態様に係る作業用車両では、制御部によって、緩みが検出されたロープ体の巻き取りが実施されるように巻き伸ばし部が制御されるため、ロープ体の緩みを適切に解消し、作業用車両の位置制御の精度を向上させることができる。
【0011】
制御部は、モータ駆動制御機構に出力している制御信号と、エンコーダによって検出されるローラの回転状況とに基づき、制御内容を決定してもよい。制御信号と実際のローラの回転状況(ロープ体の巻き伸ばし量)とが考慮されて制御内容が決定されることにより、指令に対するロープ体の巻き伸ばし量の実態に基づいて、適切に制御内容を決定することができる。
【0012】
制御部は、モータを回転させる制御信号をモータ駆動制御機構に出力しているにもかかわらずエンコーダによってローラの回転が検出されない第1状態において、緩みが検出された場合、故障修理を促す報知を行ってもよい。このように、ローラが回転していると想定される状況でローラが回転しておらず、且つ、ロープ体の緩みが検出される場合には、一度処理を止めて故障修理を行う必要があるところ、上述したように故障修理を促す報知が行われることにより、迅速に故障修理を行うことができる。
【0013】
制御部は、モータ駆動制御機構に出力する制御信号によって指示されるモータの回転方向に対応するロープ体の巻き伸ばし方向と、エンコーダによって検出されるローラの回転方向に対応するロープ体の巻き伸ばし方向とが互いに一致する第2状態において、緩みが検出されない場合、通常処理が可能であると判定してもよい。このように、ロープ体の巻き伸ばし方向が想定と実際とで一致しており、且つ、緩みが検出されていない場合には、何ら異常が生じていないと思われるため、通常処理が可能であると判定されることにより、作業用車両の制御を円滑に行うことができる。
【0014】
制御部は、第2状態において緩みが検出された場合、緩みが検出されたロープ体がリールによって巻き取られるように、モータ駆動制御機構に制御信号を出力し、エンコーダによって検出されるローラの回転方向がロープ体を巻き取る方向であり、且つ、緩みが検出されなくなった際に、緩みが解消し通常処理が可能になったと判定してもよい。このように、一度緩みが検出された場合においても、ロープ体の巻き取りによって緩みが解消した際に通常処理が可能になったと判定されることにより、緩み検出後に円滑に通常処理に復旧することができる。
【0015】
制御部は、モータ駆動制御機構に出力する制御信号によって指示されるモータの回転方向に対応するロープ体の巻き伸ばし方向と、エンコーダによって検出されるローラの回転方向に対応するロープ体の巻き伸ばし方向とが互いに一致しない第3状態において、ロープ体がリールによって巻き取られるように、モータ駆動制御機構に制御信号を出力し、エンコーダによって検出されるローラの回転方向がロープ体を巻き取る方向でない場合、故障修理を促す報知を行ってもよい。このように、ロープ体の巻き伸ばし方向が想定と実際とで一致していない場合に、ロープ体が巻き取られるように制御信号を出力したにもかかわらず、ローラの回転方向がロープ体を巻き取る方向となっていない場合には、一度処理を止めて故障修理を行う必要があるところ、上述したように故障修理を促す報知が行われることにより、迅速に故障修理を行うことができる。
【0016】
制御部は、所定時間内に所定回数以上、検出スイッチによって緩みが検出された場合に限り、緩みが検出されたロープ体の巻き取りが実施されるように、対応する巻き伸ばし部を制御してもよい。これにより、例えば一時的にスイッチによって緩みが検出されただけであり、ロープ体の巻き取りが不要な状態においてロープ体の巻き取りが実施されることを抑制することができる。すなわち、スイッチ挙動を安定化させることができる。
【0017】
本発明の一態様に係る作業用車両の制御方法は、一端が固定対象に支持されたロープ体のそれぞれに対応して設けられ、ロープ体が巻き付けられた状態で回転することによってロープ体の巻き伸ばしを行うリールと、リールを回転させる駆動源であるモータと、モータを制御するモータ駆動制御機構と、リールの回転に伴って回転しながらリールに巻き付けられたロープ体を抑えるローラと、ローラの回転を検出するエンコーダと、を備える作業用車両を制御するコンピュータが、エンコーダによって検出されるローラの回転状況に基づき、作業用車両の位置を推定し、推定結果を考慮して、ロープ体の巻き伸ばしにより作業用車両が所望の位置に制御されるように、モータ駆動制御機構に制御信号を出力する。このような制御方法によれば、より正確に、作業用車両の位置制御を行うことができる。
【0018】
本発明の一態様に係るプログラムは、一端が固定対象に支持されたロープ体のそれぞれに対応して設けられ、ロープ体が巻き付けられた状態で回転することによってロープ体の巻き伸ばしを行うリールと、リールを回転させる駆動源であるモータと、モータを制御するモータ駆動制御機構と、リールの回転に伴って回転しながらリールに巻き付けられたロープ体を抑えるローラと、ローラの回転を検出するエンコーダと、を備える作業用車両を制御するコンピュータに、エンコーダによって検出されるローラの回転状況に基づき、作業用車両の位置を推定することと、推定結果を考慮して、ロープ体の巻き伸ばしにより作業用車両が所望の位置に制御されるように、モータ駆動制御機構に制御信号を出力することと、を実行させる。このようなプログラムによれば、より正確に、作業用者車両の位置制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によれば、より正確に位置制御を行うことができる作業用車両、制御方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係る作業用車両の作業イメージを示す模式図である。
図2】本実施形態に係る作業用車両の作業イメージを示す模式図である。
図3】作業用車両の構成を示す斜視図である。
図4】ワイヤに対するテンションについて説明する図である。
図5】制御部の機能に係るブロック図である。
図6】制御部のハードウェア構成を例示するブロック図である。
図7】位置推定の手法を説明する図である。
図8】作業用車両における処理手順を示すフローチャートである。
図9】作業用車両における処理手順を示すフローチャートである。
図10】作業用車両における処理手順を示すフローチャートである。
図11】作業用車両における処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、作業用車両、作業用車両の制御方法、及びプログラムについての実施形態について図面を参照しつつ説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
図1及び図2は、本実施形態に係る作業用車両10の作業イメージを示す模式図である。図1は、斜面上の作業領域Wに位置する作業用車両10の斜視図である。図2は、斜面上の作業領域Wに位置する作業用車両10の側面図である。図1及び図2に示されるように、作業用車両10は、走行しながら斜面上の作業領域Wの草刈り作業を行うための車両である。斜面とは、例えば、水田に設けられた畦畔部であるが、これに限らず、造成地の法面や堤防の法面であってもよい。作業領域Wは、例えば、最大傾斜が30~50度以上の急勾配の斜面であるが(図2参照)この限りでなく、より緩やかな斜面であってもよい。
【0023】
作業用車両10の車体は、例えば、所定の間隔で存在する固定対象に支持された2本のワイヤR1,R2により斜面上の作業領域Wに懸架される。固定対象とは、例えば、作業領域W又は作業領域W近傍の斜面の頂部や途中において、地面に所定の間隔で打ち込まれた一対の杭P1,P2である。固定対象は杭P1,P2の他に、ガードレール、樹木、その他の構造物であってもよい。
【0024】
ワイヤR1,R2は、ロープ体であり、例えば、金属線が編まれたワイヤである。ワイヤR1,R2は、金属製のワイヤの他、天然素材、合成繊維、複合素材、樹脂製の素材等で編まれた紐や綱、あるいは樹脂で成形されたロープ体であってもよい。ワイヤR1の一端は、例えば、輪状に形成されており、地面に対して固定された杭P1に引っ掛けられて支持される。ワイヤR2の一端は、例えば、輪状に形成されており、地面に対して固定された杭P2に引っ掛けられて支持される。ワイヤR1,R2の一端には、杭P1,P2に引っ掛けるためのスナップフックやその他の支持部材が連結されていてもよい。ワイヤR1,R2の他端は、後述するリール22,22(図3参照)に繋がれている。
【0025】
杭P1,P2は、例えば、鉄筋等が加工された鋼棒である。杭P1,P2は、例えば、予め地面に埋め込まれた塩化ビニル管に挿入される。杭P1,P2は、地面に直接打ち込まれてもよい。杭P1,P2は、鋼棒の他、ワイヤR1,R2の一端を支持することができるのであればどのようなものを用いてもよい。
【0026】
作業用車両10の使用開始時には、ワイヤR1,R2がリール22,22(図3参照)から引き出され、一端が杭P1,P2に引っ掛けられる。杭P1,P2に引っ掛けられたワイヤR1,R2には張力が生じる。ワイヤR1,R2に張力が生じた状態で、モータ21,21(図3参照)が正転又は逆転することにより、ワイヤR1,R2の巻き取り及び繰り出し(伸ばし)量がそれぞれ独立に調整される。これにより、ワイヤR1,R2における張力を駆動源として、作業領域Wにおいて所定の走行軌道に沿って作業用車両10が走行する。すなわち、作業用車両10は、一端が固定対象に支持されたワイヤR1,R2の巻き伸ばしによって位置が制御される車両である。作業用車両10の初期位置は、走行開始地点における2本のワイヤR1,R2の長さに基づいて決定される。なお、作業用車両10の初期位置を計測するためにワイヤR1,R2の一端から所定の長さまで目盛りが記されていてもよい。
【0027】
作業用車両10に対する制御情報は、操作部300によって受け付けられる。操作部300は、ユーザによる操作を受け付けて、通信部60(図3参照)を介して制御部50(図3参照)に作業用車両10を走行させるための制御情報を送信する。操作部300は、例えば通信部60(図3参照)と無線通信を行う。操作部300は、例えば、タブレット型端末、スマートフォン、ノートブック型PC(Personal Computer)等の通信機能を備える汎用のモバイル端末装置である。或いは、操作部300は、デスクトップPCであってもよい。操作部300は、例えば、インターネットに接続する、有線LANに接続されたPCであってもよい。このように、操作部300は、通信機能を持つブラウザソフトが使用可能な端末であればどのような端末であってもよい。操作部300は、専用端末として構成されていてもよい。
【0028】
図3は、作業用車両10の構成を示す斜視図である。図3及び後述する図4では、説明の便宜上、作業用車両10に設けられている車体のフレーム部分等の図示を省略している。図3に示されるように、作業用車両10は、車体を移動自在に支持する3つの車輪T1,T2,T3を備えている。作業用車両10においては、例えば、ワイヤR1,R2の一端側(杭P1,P2に近い側)における幅方向の中央部に1つの車輪T1が設けられており、他端側における幅方向の両端部にそれぞれ車輪T2,T3が設けられている。以下の説明では、車輪T1側を「前」、車輪T2,T3側を「後」として説明する場合がある。車体の下面には、草刈りを行うための刈刃(不図示)が設けられている。刈刃として、例えば、ナイロンコードカッターや金属フリー刃が設けられている。
【0029】
図3に示されるように、作業用車両10は、ワイヤR1,R2をガイドする構成として、第1ガイド部11a,11bと、第2ガイド部12a,12bと、を備えている。第1ガイド部11a及び第2ガイド部12aは、ワイヤR1をガイドする構成である。第1ガイド部11b及び第2ガイド部12bは、ワイヤR2をガイドする構成である。第1ガイド部11a及び第2ガイド部12bは作業用車両10の幅方向における一方側に設けられており、第1ガイド部11b及び第2ガイド部12aは作業用車両10の幅方向における他方側に設けられている。以下の説明では、幅方向の一方側を「左」、幅方向の他方側を「右」として説明する場合がある。作業用車両10では、同一の構成が左右それぞれに設けられている。
【0030】
ワイヤR1は、一端が杭P1に引っ掛けられると共に、他端が右側のリール22に巻かれている。ワイヤR1は、一端側から他端側に向かって、第1ガイド部11aの左側部分、第2ガイド部12a、及び右側のリール22となるように、延びている。ワイヤR2は、一端が杭P2に引っ掛けられると共に、他端が左側のリール22に巻かれている。ワイヤR2は、一端側から他端側に向かって、第1ガイド部11bの右側部分、第2ガイド部12b、及び左側のリール22となるように、延びている。第2ガイド部12a,12bは、それぞれ、前方側の第1部分12xと、後方側の第2部分12yとを有している。ワイヤR1は、第2ガイド部12aの第1部分12xの右側部分及び第2部分12yの左側部分を経て、リール22に到達している。ワイヤR2は、第2ガイド部12bの第1部分12xの左側部分及び第2部分12yの右側部分を経て、リール22に到達している。なお、ワイヤR1,R2は、ガイドする構成に対してクロスしながら伸びているが、これに限定されず、クロスしていなくてもよい。
【0031】
作業用車両10は、ワイヤR1,R2に対応して設けられた、ワイヤR1,R2の巻き伸ばしを行う巻き伸ばし部として、2つのリール22,22と、2つのモータ21,21と、モータドライバ70(モータ駆動制御機構)と、を備えている。右側のリール22及びモータ21、並びに、モータドライバ70は、ワイヤR1の巻き伸ばしを行う構成である。また、左側のリール22及びモータ21、並びに、モータドライバ70は、ワイヤR2の巻き伸ばしを行う構成である。左右のリール22,22及びモータ21,21は、互いに同様の機能であるので、ここでは左側のリール22及びモータ21、並びに、モータドライバ70(ワイヤR2の巻き伸ばしを行う構成)のみを説明する。
【0032】
リール22は、ワイヤR2が巻き付けられた状態で回転することによってワイヤR2の巻き伸ばしを行う。リール22には、ワイヤR2の他端側が巻き付けられている。モータ21は、リール22を回転させる駆動源である。モータドライバ70は、後述する制御部50の制御に応じてモータ21の駆動を制御する。なお、モータドライバ70に代えて、モータコントローラ又はモータ制御IC等の構成(モータ21の駆動を制御可能な他の構成)が採用されていてもよい。
【0033】
作業用車両10は、リール22に巻き付けられたワイヤR1,R2を抑える抑え部として、ローラ23,23と、ガススプリング27,27(ローラ側弾性体)と、を更に備えている。右側のローラ23及びガススプリング27は、ワイヤR1を抑える構成である。左側のローラ23及びガススプリング27は、ワイヤR2を抑える構成である。左右のローラ23,23及びガススプリング27,27は、互いに同様の機能であるので、ここでは、左側のローラ23及びガススプリング27(ワイヤR2を抑える構成)のみを説明する。
【0034】
ローラ23は、リール22の回転に伴って巻き伸ばしされるワイヤR2の巻き伸ばしに伴って回転しながらワイヤR2を抑える構成である。ローラ23が設けられることにより、巻き伸ばしされるワイヤR2が盛り上がることが抑制される。ガススプリング27は、ローラ23に対してリール22方向に押し付けるテンションを付加するスプリングである。なお、ガススプリング27に代えて、各種弾性体(ローラ23に対してリール22方向に押し付けるテンションを付加可能な他の構成)が採用されてもよい。
【0035】
作業用車両10は、左右のローラ23,23の回転をそれぞれ検出するエンコーダ24,24を更に備えている。エンコーダ24,24は、例えばロータリーエンコーダであってもよい。エンコーダ24,24は、検出したローラ23,23の回転状況を制御部50に出力する。
【0036】
作業用車両10は、ガススプリング25,25(ロープ側弾性体)と、検出スイッチ26,26と、を更に備えている。右側のガススプリング25及び検出スイッチ26は、ワイヤR1に係る構成である。左側のガススプリング25及び検出スイッチ26は、ワイヤR2に係る構成である。左右のガススプリング25,25及び検出スイッチ26,26は、互いに同様の機能であるので、ここでは左側のガススプリング25及び検出スイッチ26(ワイヤR2に係る構成)のみを説明する。
【0037】
ガススプリング25は、ワイヤR2にテンションを付加するスプリングである。図4は、ワイヤR1,R2に対するテンションについて説明する図である。図4(a)は、ワイヤR1,R2にテンションがかかっている状態を示している。図4(b)は、ワイヤR1,R2にテンションがかかっておらずワイヤR1,R2が緩んでいる状態を示している。図4(a)に示されるように、ワイヤR2にテンションがかかっている状態においては、ガススプリング25が押されて縮んだ状態となる。一方で、図4(b)に示されるように、ワイヤR2にテンションがかかっておらずワイヤR2が緩んでいる状態においては、ガススプリング25が伸びた状態となる。なお、ガススプリング25に代えて、各種弾性体(ワイヤR2にテンションを付加可能な他の構成)が採用されてもよい。
【0038】
検出スイッチ26は、ガススプリング25の伸縮状態を検出することにより、ワイヤR2におけるテンションの緩みを検出するスイッチである。検出スイッチ26は、ガススプリング25が伸びた状態(図4(b))を検出することにより、ワイヤR2におけるテンションの緩みを検出することができる。なお、緩みがある状態においては、上述したエンコーダ24の読み値に誤差が入ってしまう。検出スイッチ26は、ガススプリング25の伸縮状態を検出することができればどのようなスイッチであってもよく、例えばレバースイッチ等であってもよい。検出スイッチ26は、検出したガススプリング25の伸縮状態を、制御部50に出力する。
【0039】
作業用車両10は、制御部50と、通信部60と、駆動部31と、電源部40と、を更に備えている。通信部60は、制御部50と外部装置との間で通信を行う。通信部60は、操作部300からの制御情報を制御部50に送信する。駆動部31は、制御部50の制御に応じて、草刈りを行うための刈刃(不図示)を駆動させる構成である。電源部40は、作業用車両10における各種機器に電力を供給する電源である。
【0040】
図5は、制御部50の機能に係るブロック図である。制御部50は、草刈りに係る制御として駆動部31を制御すると共に、ワイヤR1,R2の巻き伸ばし部に係る制御を実施する。制御部50は、通信部60を介して操作部300から受け付けられた制御情報に基づいて、各種制御を行う。以下では、ワイヤR1,R2の巻き伸ばしに係る制御について詳細に説明する。なお、制御部50においては、モータ21の回転方向と、リール22におけるワイヤR1,R2の巻き伸ばし方向と、エンコーダ24によって検出されるローラ23の回転方向とが、互いに対応付けて記憶されている。また、制御部50においては、エンコーダ24によって検出されるローラ23の回転量と、リール22により巻き伸ばしされるワイヤR1,R1の巻き伸ばし量とが対応付けて記憶されている。
【0041】
制御部50は、検出スイッチ26によってワイヤR1又はワイヤR2におけるテンションの緩みが検出されたことに基づき、該緩みが検出されたワイヤR1又はワイヤR2の巻き取りが実施されるように、巻き伸ばし部、詳細にはモータドライバ70に制御信号を出力してもよい。上述したように、モータ21の回転方向とワイヤR1,R2の巻き伸ばし方向とは、予め対応付けられている。このため、制御部50は、緩みが検出されたワイヤR1又はワイヤR2の巻き取りが実施されるように、モータドライバ70に制御信号を出力することができる。当該制御信号は、例えば、モータ21の回転方向を示す情報と、モータ21への出力電圧を指定する情報とを含んでいてもよい。
【0042】
制御部50は、所定時間内に所定回数以上、検出スイッチ26によってワイヤR1又はワイヤR2の緩みが検出された場合に限り、緩みが検出されたワイヤR1又はワイヤR2の巻き取りが実施されるように、モータドライバ70に制御信号を出力してもよい。
【0043】
制御部50は、エンコーダ24によって検出されるローラ23の回転状況に基づき、作業用車両10の位置を推定し、推定結果を考慮して、ワイヤR1,R2の巻き伸ばしにより作業用車両10が所望の位置に制御されるように、モータドライバ70に制御信号を出力する。このような位置推定は、エンコーダ24によって検出されるローラ23の回転量と、リール22により巻き伸ばしされるワイヤR1,R1の巻き伸ばし量とが対応付けられていることによって実現される。
【0044】
図7は、作業用車両10の位置推定の方法を説明する図である。図7(a)は適切に位置が推定される例を示しており、図7(b)は位置が推定されない例を示している。図7(a),(b)において、横軸は作業領域Wの幅方向の位置L(m)を示しており、縦軸は作業領域Wの幅方向に直交する長さ方向の位置H(m)を示している。いま、作業用車両の初期の位置が(L,H)=(0,0)であり、ワイヤR1の初期長さがcurrent_a=0であり、ワイヤR2の初期長さがcurrent_b=5であるとする。ワイヤR1の長さが図7(a)中のcurrent_aで示され、作業用車両10と杭P1がワイヤR1で接続されている場合、距離の予測範囲が破線の円で示される。また、ワイヤR2の長さが図7(a)中のcurrent_bで示され、作業用車両10と杭P2がワイヤR2で接続されている場合、距離の予測範囲が実線の円で示される。いま、破線の円及び実線の円の交点(図7(a)中の白丸)が、作業用車両10の位置であると推定される。
【0045】
一方で、図7(b)に示されるように、ワイヤR1の長さから推定される破線の円とワイヤR2の長さから推定される実線の円とが交差も隣接もしない場合(接点が0の場合)においては、例えばワイヤR1又はワイヤR2の破断等が生じていると推定され、作業用車両の位置を推定することができない。
【0046】
制御部50は、モータドライバ70に出力している制御信号と、エンコーダ24によって検出されるローラ23の回転状況とに基づき、制御内容を決定してもよい。
【0047】
制御部50は、例えば、モータ21を回転させる(正転又は逆転のいずれかで回転させる)制御信号をモータドライバ70に出力しているにもかかわらず、エンコーダ24によってローラ23の回転が検出されない第1状態において、検出スイッチ26によりワイヤR1又はワイヤR2の緩みが検出された場合、例えば緩みが検出されたワイヤR1又はワイヤR2が破断等している可能性があり、故障修理が必要であると判定し、故障修理を促す報知を行ってもよい。故障とは、例えば、ワイヤR1,R2の破断、からまり等である。制御部50は、例えば通信部60を介して操作部300に上記報知を行ってもよい。この場合、操作部300を操作する作業者に、故障修理が必要であることを適切に伝えることができる。
【0048】
制御部50は、モータドライバ70に出力する制御信号によって指示されるモータ21の回転方向に対応するワイヤR1,R2の巻き伸ばし方向と、エンコーダ24によって検出されるローラ23の回転方向に対応するワイヤR1,R2の巻き伸ばし方向とが互いに一致する第2状態において、検出スイッチ26により緩みが検出されない場合、通常処理が可能であると判定する。通常処理とは、エンコーダ24によって検出されるローラ23の回転状況に基づき、作業用車両10の位置を推定し、推定結果を考慮して、ワイヤR1,R2の巻き伸ばしにより作業用車両10が所望の位置に制御されるように、モータドライバ70に制御信号を出力する処理である。
【0049】
制御部50は、上記第2状態において、検出スイッチ26によりワイヤR1又はワイヤR2の緩みが検出された場合、緩みが検出されたワイヤR1又はワイヤR2がリール22によって巻き取られるように、モータドライバ70に制御信号を出力する。そして、制御部50は、エンコーダ24によって検出されるローラ23の回転方向が、緩みが検出されたワイヤR1又はワイヤR2を巻き取る方向であり、且つ、緩みが検出されたワイヤR1又はワイヤR2の緩みが検出されなくなった際に、緩みが解消し、上記通常処理が可能になったと判定する。
【0050】
制御部50は、モータドライバ70に出力する制御信号によって指示されるモータ21の回転方向に対応するワイヤR1,R2の巻き伸ばし方向と、エンコーダ24によって検出されるローラ23の回転方向に対応するワイヤR1,R2の巻き伸ばし方向とが互いに一致しない第3状態において、対応するワイヤR1又はワイヤR2が巻き取られるように、モータドライバ70に制御信号を出力する。そして、制御部50は、エンコーダ24によって検出されるローラ23の回転方向が、上記対応するワイヤR1又はワイヤR2を巻き取る方向でない場合、故障修理が必要であると判定し、故障修理を促す報知を行ってもよい。制御部50は、例えば通信部60を介して操作部300に上記報知を行ってもよい。この場合、操作部300を操作する作業者に、故障修理が必要であることを適切に伝えることができる。
【0051】
図6は、制御部50のハードウェア構成を例示するブロック図である。制御部50は、一つ又は複数の制御用コンピュータにより構成される。図6に示されるように、制御部50は回路190を有する。回路190は、少なくとも一つのプロセッサ191と、メモリ192と、ストレージ193と、入出力ポート194と、入力デバイス195と、表示デバイス196とを含む。
【0052】
ストレージ193は、例えばハードディスク等、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を有する。ストレージ193は、作業用車両10の制御方法を制御部50に実行させるためのプログラムを記憶している。
【0053】
作業用車両10の制御方法とは、例えば、作業用車両10を制御するコンピュータ(制御部50)が、検出スイッチ26によってワイヤR1又はワイヤR2におけるテンションの緩みが検出されたことに基づき、該緩みが検出されたワイヤR1又はワイヤR2の巻き取りが実施されるように、対応する巻き伸ばし部を制御する制御方法である。この場合のプログラムとは、作業用車両10を制御するコンピュータ(制御部50)に、検出スイッチ26によってワイヤR1又はワイヤR2におけるテンションの緩みが検出されたことに基づき、該緩みが検出されたワイヤR1又はワイヤR2の巻き取りが実施されるように、対応する巻き伸ばし部を制御させるプログラムである。
【0054】
作業用車両10の制御方法とは、例えば、作業用車両10を制御するコンピュータ(制御部50)が、エンコーダ24によって検出されるローラ23の回転状況に基づき、作業用車両10の位置を推定し、推定結果を考慮して、ワイヤR1,R2の巻き伸ばしにより作業用車両10が所望の位置に制御されるように、モータドライバ70に制御信号を出力する制御方法である。この場合のプログラムとは、作業用車両10を制御するコンピュータ(制御部50)に、エンコーダ24によって検出されるローラ23の回転状況に基づき、作業用車両10の位置を推定することと、推定結果を考慮して、ワイヤR1,R2の巻き伸ばしにより作業用車両10が所望の位置に制御されるように、モータドライバ70に制御信号を出力することと、を実行させるプログラムである。
【0055】
メモリ192は、ストレージ193の記憶媒体からロードしたプログラム及びプロセッサ191による演算結果を一時的に記憶する。プロセッサ191は、メモリ192と協働して上記プログラムを実行することで、上述した各機能モジュールを構成する。入出力ポート194は、プロセッサ191からの指令に応じて通信部60、電源部40、エンコーダ24、モータドライバ70、駆動部31、及び検出スイッチ26との間で電気信号の入出力を行う。
【0056】
入力デバイス195及び表示デバイス196は、制御部50のユーザインタフェースとして機能する。入力デバイス195は、例えばキーボード等であり、ユーザによる入力情報を取得する。表示デバイス196は、例えば液晶モニタ等を含み、ユーザに対する情報表示に用いられる。入力デバイス195及び表示デバイス196は、所謂タッチパネルとして一体化されていてもよい。
【0057】
次に、作業用車両10における処理手順について、図8図11を参照して説明する。図8は全体の処理手順を示しており、図9は状態I(第1状態)における故障検出処理手順を示しており、図10は状態II(第2状態)における故障検出処理手順を示しており、図11は状態III(第3状態)における故障検出処理手順を示している。
【0058】
図8に示されるように、作業用車両10の処理が開始されると、まず通常処理が開始される(ステップS1)。通常処理とは、上述したように、エンコーダ24によって検出されるローラ23の回転状況に基づき、作業用車両10の位置を推定し、推定結果を考慮して、ワイヤR1,R2の巻き伸ばしにより作業用車両10が所望の位置に制御されるように、モータドライバ70に制御信号を出力する処理である。
【0059】
そして、制御部50において各種情報が取得される(ステップS2)。具体的には、制御部50では、通信部60を介して操作部300から受け付けられた制御情報、エンコーダ24によって検出されたローラ23の回転状況、及び検出スイッチ26によって検出されたワイヤR1,R2におけるテンションの緩み等の情報が取得される。
【0060】
つづいて、制御部50において、状態I(第1状態)、状態II(第2状態)又は状態III(第3状態)のいずれかに該当するか否かが判定される(ステップS3)。状態I(第1状態)とは、モータ21を回転させる(正転又は逆転のいずれかで回転させる)制御信号をモータドライバ70に出力しているにもかかわらず、エンコーダ24によってローラ23の回転が検出されない状態である。状態II(第2状態)とは、モータドライバ70に出力する制御信号によって指示されるモータ21の回転方向に対応するワイヤR1,R2の巻き伸ばし方向と、エンコーダ24によって検出されるローラ23の回転方向に対応するワイヤR1,R2の巻き伸ばし方向とが互いに一致する状態である。状態III(第3状態)とは、モータドライバ70に出力する制御信号によって指示されるモータ21の回転方向に対応するワイヤR1,R2の巻き伸ばし方向と、エンコーダ24によって検出されるローラ23の回転方向に対応するワイヤR1,R2の巻き伸ばし方向とが互いに一致しない状態である。
【0061】
状態I(第1状態)、状態II(第2状態)及び状態III(第3状態)のいずれにも該当しない場合には、再度ステップS1の処理から実施される。一方で、状態I(第1状態)、状態II(第2状態)又は状態III(第3状態)のいずれかに該当する場合には、状態に応じた故障検出処理が実施される(ステップS4)。ステップS4における各状態での故障検出処理については、図9図11を参照して、後述する。故障検出処理が実施された後に、故障検出に係るカウンタ(詳細は後述)の値がリセットされ(ステップS5)、再度ステップS1の処理から実施される。
【0062】
[状態I(第1状態)の故障検出処理]
ステップS3において状態I(第1状態)に該当すると判定された場合、ステップS4においては図9に示される故障検出処理が実施される。
【0063】
図9に示されるように、制御部50では、検出スイッチ26によってワイヤR1,R2におけるテンションの緩みが検出されているか否かが判定される(ステップS121)。ステップS121において緩みが検出されている場合には、制御部50によって、例えば通信部60を介して操作部300に、故障修理を促す報知が行われ、作業者によって故障修理が行われる(ステップS122)。
【0064】
一方で、ステップS121において緩みが検出されていない場合(モータ21を回転させる制御信号をモータドライバ70に出力しているのにローラ23が回転していない状態で、ワイヤR1,R2の緩みが検出されていない場合)には、まず、制御部50によってモータ21の回転が停止させられる(ステップS123)。制御部50は、例えば、モータ21を回転させる制御信号をモータドライバ70に出力することを停止することによって、或いは、モータ21を停止させるための停止信号をモータドライバ70に出力することによって、モータ21の回転を停止させる。モータドライバ70とモータ21の種類によっては、出力を停止すると、モータ21がフリーになってしまう場合がある。張力が強いときに引っ張られて回転して落下してしまう場合には、張力と釣り合うような巻き取り方向の弱めの値を入れて落下しないようにしてもよい。
【0065】
つづいて、制御部50によって、モータ21を逆回転させる制御信号がモータドライバ70に出力される(ステップS124)。ここでの逆回転とは、モータ21の停止前にモータ21が回転していた方向とは反対方向の回転である。制御部50は、通常の回転時よりも遅い(例えば、通常の回転時の最高速度よりも遅い)故障時対応の速度でモータ21を逆回転させる制御信号を、モータドライバ70に出力する。
【0066】
つづいて、制御部50では、上記逆回転に対応した方向にローラ23が回転していることがエンコーダ24によって検出されているか否かが判定される(ステップS125)。逆回転に対応した方向にローラ23が回転していない場合には、制御部50によって、例えば通信部60を介して操作部300に、故障修理を促す報知が行われ、作業者によって故障修理が行われる(ステップS122)。
【0067】
一方で、逆回転に対応した方向にローラ23が回転している場合には、制御部50によって、モータ21を初期の回転方向に回転させる制御信号がモータドライバ70に出力される(ステップS126)。ここでの初期の回転方向とは、モータ21の停止前にモータ21が回転していた方向である。制御部50は、通常の回転時よりも遅い故障時対応の速度でモータ21を初期の回転方向に回転させる制御信号を、モータドライバ70に出力する。
【0068】
つづいて、制御部50では、上記初期の回転方向に対応した方向にローラ23が回転していることがエンコーダ24によって検出されているか否かが判定される(ステップS127)。初期の回転方向に対応した方向にローラ23が回転していない場合には、制御部50によって、例えば通信部60を介して操作部300に、故障修理を促す報知が行われ、作業者によって故障修理が行われる(ステップS122)。
【0069】
一方で、初期の回転方向に対応した方向にローラ23が回転している場合には、制御部50によって、通常処理が可能であると判定される(ステップS128)。
【0070】
[状態II(第2状態)の故障検出処理]
ステップS3において状態II(第2状態)に該当すると判定された場合、ステップS4においては図10に示される故障検出処理が実施される。
【0071】
図10に示されるように、制御部50では、検出スイッチ26によってワイヤR1,R2におけるテンションの緩みが検出されているか否かが判定される(ステップS221)。ステップS221において緩みが検出されていない場合には、制御部50によって、通常処理が可能であると判定される(ステップS230)。
【0072】
一方で、ステップS221において緩みが検出されている場合には、制御部50によってモータ21の回転が停止させられる(ステップS222)。制御部50は、例えば、モータ21を回転させる制御信号をモータドライバ70に出力することを停止することによって、或いは、モータ21を停止させるための停止信号をモータドライバ70に出力することによって、モータ21の回転を停止させる。
【0073】
つづいて、制御部50によって、緩みが検出されたワイヤR1又はワイヤR2をリール22が巻き取る方向にモータ21を回転させる制御信号がモータドライバ70に出力される(ステップS223)。制御部50は、通常の回転時よりも遅い故障時対応の速度でモータ21を回転させる制御信号を、モータドライバ70に出力する。
【0074】
つづいて、制御部50では、巻き取り方向に対応した方向にローラ23が回転していることがエンコーダ24によって検出されているか否かが判定される(ステップS224)。巻き取り方向に対応した方向にローラ23が回転している場合には、制御部50では、検出スイッチ26によってワイヤR1,R2におけるテンションの緩みが検出されていないか否かが判定される(ステップS225)。緩みが検出されている場合には再度ステップS223の処理から実施され、緩みが検出されていない場合には、通常処理が可能になっている(緩みが解消した)と判定される(ステップS226)。
【0075】
巻き取り方向に対応した方向にローラ23が回転していない場合には、制御部50では、反対に、伸ばす方向に対応した方向にローラ23が回転しているか否かが判定される(ステップS227)。伸ばす方向に対応した方向にローラ23が回転している場合には、モータ21の回転方向に対応する巻き伸ばし方向と、ローラ23の回転方向に対応する巻き伸ばし方向とが互いに一致していない状態III(第3状態)であるとして、ステップS321の処理が実施されると判定される(ステップS228)。また、巻き取り方向に対応した方向にも、伸ばす方向に対応した方向にも、ローラ23が回転していない場合(すなわち、ローラ23が回転していない場合)には、状態I(第1状態)であるとして、ステップS121の処理が実施されると判定される(ステップS229)。
【0076】
[状態III(第3状態)の故障検出処理]
ステップS3において状態III(第3状態)に該当すると判定された場合、ステップS4においては図11に示される故障検出処理が実施される。
【0077】
図11に示されるように、状態III(第3状態)の故障検出処理が開始されると、まず、制御部50では、カウンタの値が1加算される(ステップS321)。つづいて、制御部50において、カウンタの値(合計値)が所定のn(nは正の整数)以下であるか否かが判定される(ステップS322)。
【0078】
カウンタの値がn以下でない場合には、制御部50によって、例えば通信部60を介して操作部300に、故障修理を促す報知が行われ、作業者によって故障修理が行われる(ステップS327)。このように、カウンタの値が所定値以上である場合には故障修理を実施することにより、状態III(第3状態)の故障検出処理が無限ループしてしまうことが回避されている。
【0079】
一方で、カウンタの値がn以下である場合には、制御部50によってモータ21の回転が停止させられる(ステップS323)。制御部50は、例えば、モータ21を回転させる制御信号をモータドライバ70に出力することを停止することによって、或いは、モータ21を停止させるための停止信号をモータドライバ70に出力することによって、モータ21の回転を停止させる。
【0080】
つづいて、制御部50によって、ワイヤR1,R2をリール22が巻き取る方向にモータ21を回転させる制御信号がモータドライバ70に出力される(ステップS324)。制御部50は、通常の回転時よりも遅い故障時対応の速度でモータ21を回転させる制御信号を、モータドライバ70に出力する。
【0081】
つづいて、制御部50では、巻き取り方向に対応した方向にローラ23が回転していることがエンコーダ24によって検出されているか否かが判定される(ステップS325)。巻き取り方向に対応した方向にローラ23が回転している場合には、状態II(第2状態)であるとして、ステップS221の処理が実施されると判定される(ステップS326)。一方で、巻き取り方向に対応した方向にローラ23が回転していない場合には、制御部50によって、例えば通信部60を介して操作部300に、故障修理を促す報知が行われ、作業者によって故障修理が行われる(ステップS327)。
【0082】
次に、本実施形態に係る作業用車両10の作用効果について説明する。
【0083】
本実施形態に係る作業用車両10は、一端が固定対象に支持されたワイヤR1,R2の巻き伸ばしによって位置が制御される作業用車両であって、ワイヤR1,R2に対応して設けられ、ワイヤR1,R2の巻き伸ばしを行う巻き伸ばし部と、ワイヤR1,R2にテンションを付加するガススプリング25と、ガススプリング25の伸縮状態を検出することにより、ワイヤR1,R2におけるテンションの緩みを検出する検出スイッチ26と、巻き伸ばし部に係る制御を実施する制御部50と、を備え、制御部50は、検出スイッチ26によってワイヤR1又はワイヤR2におけるテンションの緩みが検出されたことに基づき、該緩みが検出されたワイヤR1又はワイヤR2の巻き取りが実施されるように巻き伸ばし部を制御する。
【0084】
本実施形態に係る作業用車両10では、ガススプリング25によってワイヤR1,R2にテンションが付加されるため、ワイヤR1又はワイヤR2が緩むこと(すなわち、作業用車両10の位置制御の精度が悪化すること)を効果的に抑制することができる。また、本実施形態に係る作業用車両10では、検出スイッチ26によって、ガススプリング25の伸縮状態が検出されることによりワイヤR1又はワイヤR2の緩みが検出される。これにより、ワイヤR1又はワイヤR2が緩んでいることを適切に検出することができる。そして、作業用車両10では、制御部50によって、緩みが検出されたワイヤR1又はワイヤR2の巻き取りが実施されるように巻き伸ばし部が制御されるため、ワイヤR1,R2の緩みを適切に解消し、作業用車両10の位置制御の精度を向上させることができる。以上のように、本実施形態に係る作業用車両10によれば、位置制御をより正確に行うことができる。
【0085】
巻き伸ばし部は、ワイヤR1,R2が巻き付けられた状態で回転することによってワイヤR1,R2の巻き伸ばしを行うリール22と、リール22を回転させる駆動源であるモータ21と、モータ21の駆動を制御するモータドライバ70と、を有し、制御部50は、緩みが検出されたワイヤR1又はワイヤR2がリール22によって巻き取られるように、モータドライバ70に制御信号を出力してもよい。このようにモータドライバ70が制御されることにより、ワイヤR1又はワイヤR2の緩みをより確実に解消することができる。
【0086】
上記作業用車両10は、リール22に巻き付けられたワイヤR1,R2を抑える抑え部を更に備えていてもよい。このような構成によれば、ワイヤR1,R2がリール22上で盛り上がることが抑制され、作業用車両10の位置制御をより正確に行うことができる。
【0087】
抑え部は、リール22の回転に伴って巻き伸ばしされるワイヤR1,R2の巻き伸ばしに伴って回転しながらワイヤR1,R2を抑えるローラ23と、ローラ23に対してリール22方向に押し付けるテンションを付加するガススプリング27と、を有していてもよい。このように、ガススプリング27によってローラ23がリール22方向に押し付けられることにより、ワイヤR1,R2がリール22上で盛り上がることをより確実に抑制することができる。
【0088】
上記作業用車両10は、ローラ23の回転を検出するエンコーダ24を更に備え、制御部50は、モータドライバ70に出力している制御信号と、エンコーダ24によって検出されるローラ23の回転状況とに基づき、制御内容を決定してもよい。ワイヤR1,R2の巻き伸ばしに伴って回転しながらワイヤR1,R2を抑えるローラ23の回転が検出されることにより、ワイヤR1,R2の巻き伸ばし量を正確に取得することができる。そして、制御信号と実際のローラ23の回転状況(ワイヤR1,R2の巻き伸ばし量)とが考慮されて制御内容が決定されることにより、指令に対するワイヤR1,R2の巻き伸ばし量の実態に基づいて、適切に制御内容を決定することができる。
【0089】
制御部50は、モータ21を回転させる制御信号をモータドライバ70に出力しているにもかかわらずエンコーダ24によってローラ23の回転が検出されない第1状態において、ワイヤR1又はワイヤR2緩みが検出された場合、故障修理を促す報知を行ってもよい。このように、ローラ23が回転していると想定される状況でローラ23が回転しておらず、且つ、ワイヤR1又はワイヤR2の緩みが検出される場合には、一度処理を止めて故障修理を行う必要があるところ、上述したように故障修理を促す報知が行われることにより、迅速に故障修理を行うことができる。
【0090】
制御部50は、モータドライバ70に出力する制御信号によって指示されるモータ21の回転方向に対応するワイヤR1,R2の巻き伸ばし方向と、エンコーダ24によって検出されるローラ23の回転方向に対応するワイヤR1,R2の巻き伸ばし方向とが互いに一致する第2状態において、緩みが検出されない場合、通常処理が可能であると判定してもよい。このように、ワイヤR1,R2の巻き伸ばし方向が想定と実際とで一致しており、且つ、緩みが検出されていない場合には、何ら異常が生じていないと思われるため、通常処理が可能であると判定されることにより、作業用車両10の制御を円滑に行うことができる。
【0091】
制御部50は、第2状態において緩みが検出された場合、緩みが検出されたワイヤR1又はワイヤR2がリール22によって巻き取られるように、モータドライバ70に制御信号を出力し、エンコーダ24によって検出されるローラ23の回転方向がワイヤR1又はワイヤR2を巻き取る方向であり、且つ、緩みが検出されなくなった際に、緩みが解消し通常処理が可能になったと判定してもよい。このように、一度緩みが検出された場合においても、ワイヤR1又はワイヤR2の巻き取りによって緩みが解消した際に通常処理が可能になったと判定されることにより、緩み検出後に円滑に通常処理に復旧することができる。
【0092】
制御部50は、モータドライバ70に出力する制御信号によって指示されるモータ21の回転方向に対応するワイヤR1,R2の巻き伸ばし方向と、エンコーダ24によって検出されるローラ23の回転方向に対応するワイヤR1,R2の巻き伸ばし方向とが互いに一致しない第3状態において、ワイヤR1,R2がリール22によって巻き取られるように、モータドライバ70に制御信号を出力し、エンコーダ24によって検出されるローラ23の回転方向がワイヤR1,R2を巻き取る方向でない場合、故障修理を促す報知を行ってもよい。このように、ワイヤR1,R2の巻き伸ばし方向が想定と実際とで一致していない場合に、ワイヤR1,R2が巻き取られるように制御信号を出力したにもかかわらず、ローラ23の回転方向がワイヤR1,R2を巻き取る方向となっていない場合には、一度処理を止めて故障修理を行う必要があるところ、上述したように故障修理を促す報知が行われることにより、迅速に故障修理を行うことができる。
【0093】
制御部50は、所定時間内に所定回数以上、検出スイッチ26によって緩みが検出された場合に限り、緩みが検出されたワイヤR1又はワイヤR2の巻き取りが実施されるように、対応する巻き伸ばし部を制御してもよい。これにより、例えば一時的に検出スイッチ26によって緩みが検出されただけであり、ワイヤR1又はワイヤR2の巻き取りが不要な状態においてワイヤR1又はワイヤR2の巻き取りが実施されることを抑制することができる。すなわち、スイッチ挙動を安定化させることができる。
【符号の説明】
【0094】
10…作業用車両、21…モータ(巻き伸ばし部)、22…リール(巻き伸ばし部)、23…ローラ(抑え部)、24…エンコーダ、25…ガススプリング(ロープ側弾性体)、26…検出スイッチ、27…ガススプリング(ローラ側弾性体,抑え部)50…制御部、70…モータドライバ(モータ駆動制御機構,巻き伸ばし部)、R1,R1…ワイヤ(ロープ体)。
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