(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086116
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】容器入り冷凍食品
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20240620BHJP
B65D 85/50 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
B65D81/34 U
B65D85/50 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201068
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】株式会社日清製粉ウェルナ
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 尚毅
(72)【発明者】
【氏名】米田 広希
(72)【発明者】
【氏名】菊池 和哉
【テーマコード(参考)】
3E013
3E035
【Fターム(参考)】
3E013BA26
3E013BB06
3E013BB12
3E013BC04
3E013BD01
3E013BD02
3E013BD13
3E013BE01
3E013BF32
3E035AB07
3E035BA02
3E035BA08
3E035BB02
3E035BD06
(57)【要約】
【課題】冷凍食品の加熱解凍及び喫食を簡便に行うことができる容器入り冷凍食品を提供すること。
【解決手段】本発明の容器入り冷凍食品1は、冷凍食品個装体2と、トレイ容器3とを有し、冷凍食品個装体2をトレイ容器3に収容した状態で冷凍食品個装体2をマイクロ波加熱可能である。冷凍食品個装体2は、冷凍食品21と、冷凍食品21を包装する包装袋22とを有する。トレイ容器3は、冷凍食品個装体2が載置される底部31と、底部31の周縁から起立する周壁32と、底部31の上方に位置する上部開口33と、上部開口33の開口縁部から外方に延出するフランジ部34とを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍食品個装体と、トレイ容器とを有し、該冷凍食品個装体を該トレイ容器に収容した状態で該冷凍食品個装体をマイクロ波加熱可能な容器入り冷凍食品であって、
前記冷凍食品個装体は、冷凍食品と、該冷凍食品を包装する包装袋とを有し、
前記トレイ容器は、前記冷凍食品個装体が載置される底部と、該底部の周縁から起立する周壁と、該底部の上方に位置する上部開口と、該上部開口の開口縁部から外方に延出するフランジ部とを有する、容器入り冷凍食品。
【請求項2】
前記冷凍食品の外寸体積(A)と、前記トレイ容器の容積(B)と、前記包装袋の容積(C)との比率が、A:B:C=100:105~150:140~200である、請求項1に記載の容器入り冷凍食品。
【請求項3】
前記冷凍食品が冷凍麺類である、請求項1又は2に記載の容器入り冷凍食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍食品とこれを収容する容器とを有する容器入り冷凍食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭内や商業施設等における冷蔵庫や電子レンジの普及、冷凍温度での食品流通の拡大等を背景に、電子レンジを用いて加熱解凍するだけで喫食できる冷凍食品の販売が増加傾向にある。また、冷凍技術の発達により、冷凍食品の種類が多様化しており、ご飯や麺等の主食材のみならず、ご飯とおかずとが見栄え良く配置された食品セット、あるいは、ソース載せスパゲティやカレーライスに代表される、主食材の上にソース・あん・たれ等の副食材が載せられた構成の食品といった、いわゆるレディトゥイートな食品の冷凍食品が販売されている。
【0003】
冷凍食品の販売は、従来は、専ら有人販売店舗で行われてきたが、近年は、無人販売店舗、自動販売機で行われることも多い。冷凍食品を自動販売機で販売することに関する技術が種々提案されている。例えば特許文献1には、冷凍食品の自動販売機において、商品である冷凍食品どうしの凍結等の不都合を防止するために、冷凍食品を吸水性の少ない表面の滑らかな合成樹脂フィルムに包装することが記載されている。特許文献2には、食品店で扱うような冷凍食品のおかず、例えば、生肉、切り身等を自動販売する自動販売機として、冷凍食品を収容可能な冷蔵庫を備えたものが記載されている。特許文献3には、自動販売機での排出不良が発生しない冷凍食品用カートンとして、積み重ねても接触面積を可能なかぎり少なくした形態にしたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭53-57899号公報
【特許文献2】特開平9-180044号公報
【特許文献3】実開平5-51719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の一般的な冷凍食品は、家庭内で喫食されることを想定した構成となっており、典型的には、冷凍食品とこれを包装する包装袋とからなり、冷凍食品の加熱解凍及びその後の喫食に使用可能な容器を含んでいない。このような構成の冷凍食品を喫食する場合は通常、包装袋から冷凍食品を取り出し、別途用意した耐熱皿等の容器に収容して、電子レンジで加熱解凍する。しかしながら近年は、冷凍食品の利用スタイルとして、店頭等で購入した冷凍食品を家庭に持ち帰らずに、その購入場所で加熱解凍して喫食するスタイルが増加傾向にあるところ、このような、家庭以外の場所で冷凍食品を加熱解凍し喫食する利用スタイルは、冷凍食品の加熱解凍及びその後の喫食に使用可能な容器が必要となるため、該容器を含まない従来の一般的な冷凍食品では対応できない。
【0006】
冷凍食品の加熱解凍及びその後の喫食に使用可能な容器を含む、容器入り冷凍食品が知られている。
図3には、容器入り冷凍食品の一例である容器入り冷凍食品10Aが示されている。容器入り冷凍食品10Aは、冷凍食品11と、耐熱性の樹脂からなるトレイ容器12及び包装袋13とを有する。冷凍食品11は冷凍麺類であり、冷凍麺塊と、該冷凍麺塊の上部に配された冷凍ソースとを含む。トレイ容器12は、冷凍食品11が載置される底部と、該底部の周縁から起立する周壁とを有し、該底部の上方が開口している。包装袋13は、冷凍食品11及びトレイ容器12を一体的に包装するもので、冷凍食品11の個装袋ではない。包装袋13には、包装袋13を厚み方向に貫通する脱蒸孔14が複数設けられている。容器入り冷凍食品10Aを利用する際には、電子レンジ等のマイクロ波調理器を用いて容器入り冷凍食品10A全体を加熱する。
図3(b)は、その加熱中の様子を示したものである。容器入り冷凍食品10Aをマイクロ波加熱すると、冷凍食品11中の水分が蒸気となって冷凍食品11から包装袋13内に排出される。包装袋13内の前記蒸気は、脱蒸孔14を介して包装袋13の外部に排出されるが、通常、脱蒸孔14から排出される蒸気よりも、冷凍食品11から包装袋13内に排出される蒸気の方が、単位時間当たりの排出量が多いため、容器入り冷凍食品10Aの加熱中は、包装袋13内に蒸気が充満し、
図3(b)に示すように包装袋13が膨張する。容器入り冷凍食品10Aの加熱終了後は、マイクロ波調理器の庫内から取り出して包装袋13を開封し、トレイ容器12を取り出す。こうして取り出されたトレイ容器12には冷凍食品11の加熱解凍物が収容されており、そのまま喫食することができる。
【0007】
図4には、容器入り冷凍食品の他の一例である容器入り冷凍食品10Bが示されている。容器入り冷凍食品10Bは、冷凍食品11と、冷凍食品11を収容するトレイ容器12と、トレイ容器12の上部開口を覆う蓋15とを有する。冷凍食品11及びトレイ容器12については前述したとおりである。蓋15は、耐熱性の樹脂製シートからなり、トレイ容器12の上部開口の全体を閉塞し、該上部開口を画成する開口縁部に剥離可能に固着している。容器入り冷凍食品10Bを利用する際には、
図4(b)に示すように、蓋15におけるトレイ容器12の開口縁部との固着部分の一部を該開孔縁部から剥がして開口部16を設けてから、マイクロ波調理器を用いて容器入り冷凍食品10B全体を加熱する。容器入り冷凍食品10Bのマイクロ波加熱によって冷凍食品11から発生した蒸気は、開口部16を介して容器入り冷凍食品10Bの外部に排出される。容器入り冷凍食品10Bの加熱終了後は、マイクロ波調理器の庫内から取り出し、トレイ容器12から蓋15を剥がして、トレイ容器12内の冷凍食品11の加熱解凍物を喫食する。
【0008】
容器入り冷凍食品10A,10Bの共通の課題として、マイクロ波調理器による加熱直後に、トレイ容器12が手指で触れることができないほどの高温状態になることが挙げられる。すなわち容器入り冷凍食品10A,10Bにおいては、冷凍食品11とトレイ容器12とが接触しているため、容器入り冷凍食品10A,10Bをマイクロ波調理器で加熱すると、冷凍食品11が加熱されて生じた熱がトレイ容器12に直接伝わるとともに、冷凍食品11から発生した蒸気がトレイ容器12に直接当たるため、トレイ容器12が高温状態になりやすい。
【0009】
特に容器入り冷凍食品10Aは、蒸気の発生源である冷凍食品11とトレイ容器12とが包装袋13で一体的に包装されているため、トレイ容器12が蒸気によって加熱されやすく、高温状態になりやすい傾向がある。トレイ容器12が包装袋13内の蒸気によって熱せられることを防止して、加熱直後のトレイ容器12の高温化を防止するために、冷凍食品11を包装袋13から取り出した状態でマイクロ波加熱する方法が考えられるが、この方法では、冷凍食品11が突沸してマイクロ波調理器の庫内が汚損する、冷凍食品11から発生する大量の蒸気によってマイクロ波調理器の庫内が濡れる等の不都合が生じるおそれがある。容器入り冷凍食品10Bについても、開口部16から排出される大量の蒸気によってマイクロ波調理器の庫内が濡れる等の不都合が生じるおそれがある。
【0010】
マイクロ波調理器による加熱直後にトレイ容器12が手指で触れることができないほどの高温状態であると、トレイ容器12の温度がある程度下がるまではマイクロ波調理器の庫内からトレイ容器12を取り出すことができず、加熱直後の熱々の食品(冷凍食品11の加熱解凍物)を喫食することはできない。家庭内のマイクロ波調理器で容器入り冷凍食品10A,10Bを加熱する場合であれば、例えば、トング等の把持具を用いて、加熱直後のトレイ容器12をマイクロ波調理器の庫内から取り出し、別途用意した盆等の受け具に載せて運ぶことが可能であるが、家庭以外の場所で容器入り冷凍食品10A,10Bを加熱する場合は、このような把持具や受け具を用意できないことが少なくなく、加熱解凍から喫食までの操作に手間取ることになる。
【0011】
前述したとおり、容器入り冷凍食品10Aは、加熱直後にトレイ容器12が高温になりやすく、把持具や受け具等の道具を使わずに手指で把持することが難しいため、このような道具を用意できない場所で加熱解凍し喫食する利用スタイルには不向きである。また容器入り冷凍食品10Bは、加熱時の蒸気排出量が過多とならないような適度な大きさの開口部16が形成されるように蓋15を剥がす手間がかかり、一方で蓋15を大きく剥がして比較的大きな開口部16を形成してしまった場合など、その使用方法によっては、マイクロ波調理器の庫内に大量の蒸気を排出する場合があり、その場合、加熱直後のトレイ容器を把持する際に手が濡れる不都合や、加熱解凍に用いたマイクロ波調理器の庫内を汚損したり濡らしたりする不都合が発生するおそれがあり、使用後に該庫内を掃除する手間が発生し得る。冷凍食品の加熱解凍及び喫食を簡便に行うことができる容器入り冷凍食品は未だ提供されていない。
【0012】
本発明の課題は、冷凍食品の加熱解凍及び喫食を簡便に行うことができる容器入り冷凍食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、冷凍食品個装体と、トレイ容器とを有し、該冷凍食品個装体を該トレイ容器に収容した状態で該冷凍食品個装体をマイクロ波加熱可能な容器入り冷凍食品であって、
前記冷凍食品個装体は、冷凍食品と、該冷凍食品を包装する包装袋とを有し、
前記トレイ容器は、前記冷凍食品個装体が載置される底部と、該底部の周縁から起立する周壁と、該底部の上方に位置する上部開口と、該上部開口の開口縁部から外方に延出するフランジ部とを有する、容器入り冷凍食品である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、冷凍食品の加熱解凍及び喫食を簡便に行うことができる容器入り冷凍食品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の容器入り冷凍食品の一実施形態の模式的な斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す容器入り冷凍食品の深さ方向に沿う断面を模式的に示す断面図であり、
図2(a)は、該容器入り冷凍食品の未使用状態を示し、
図2(b)は、該容器入り冷凍食品の加熱解凍時の様子を示す。
【
図3】
図3は、従来の容器入り冷凍食品の一例の深さ方向に沿う断面を模式的に示す断面図であり、
図3(a)は、該容器入り冷凍食品の未使用状態を示し、
図3(b)は、該容器入り冷凍食品の加熱解凍時の様子を示す。
【
図4】
図4は、従来の容器入り冷凍食品の他の一例の深さ方向に沿う断面を模式的に示す断面図であり、
図4(a)は、該容器入り冷凍食品の未使用状態を示し、
図4(b)は、該容器入り冷凍食品の加熱解凍時の様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の容器入り冷凍食品を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1及び
図2には、本発明の容器入り冷凍食品の一実施形態である容器入り冷凍食品1が示されている。容器入り冷凍食品1は、冷凍食品個装体2と、トレイ容器3とを有する。冷凍食品個装体2は、冷凍食品21と、冷凍食品21を包装する包装袋22とを有する。冷凍食品21は包装袋22内に封入されている。
【0017】
冷凍食品21は、食品の冷凍物である。冷凍食品21は、電子レンジ等のマイクロ波調理器によって加熱解凍可能なものであることを前提として、これを構成する食品の種類を問わない。冷凍食品21は、例えば、麺類、飯類、肉、魚介、野菜、果物、スープ、各種おかず類(ギョーザ、ハンバーグ等)であり得る。冷凍食品21を構成する食品の具体例として、カレーライス、牛丼、ドリア、天津飯、おかゆ、雑炊、リゾット等の飯物類(具材のせご飯);スパゲティ等のソースのせ麺、焼きそば等の具材とソースとの和え麺等の麺類;シチュー、具入りソース、具入りスープ、具入りポタージュ等の汁物類やソース類;グラタン、ラザニアが挙げられる。
【0018】
本実施形態では、冷凍食品21は冷凍麺類であり、冷凍麺塊211と、冷凍麺塊211の上部に配された冷凍ソース212とを含む。冷凍麺塊211と冷凍ソース212とは一体である。冷凍食品21が冷凍麺類であることのメリットとして、所望の形状に成形しやすい;見栄えが悪くなりにくい;特に麺塊部分が適度に空隙を有しているため、加熱の際に加熱むらが起こりにくい等が挙げられる。
【0019】
冷凍食品21の冷凍前の状態は特に制限されず、例えば、加熱済み状態、調理済み状態、半加熱済み状態、半調理済み状態、非加熱状態、未調理状態、味付け済み状態、下味付け済み状態であり得る。冷凍食品21が複数の食材から構成される場合は、その複数の食材どうしで状態が同じであってもよく、異なっていてもよい。要は、冷凍食品21をマイクロ波加熱して得られる食品が、そのまま喫食可能なものであればよい。
【0020】
冷凍食品21は、1つの塊からなる形態でもよく、複数の塊を含む形態でもよい。本実施形態では、冷凍食品21は前者であり、略直方体形状の塊からなる。後者の場合、包装袋22内に複数の冷凍食品21の塊が封入される。取り扱いを容易とする観点からは、冷凍食品21は1つの塊からなる形態が好ましい。
【0021】
冷凍食品21の量、すなわち包装袋22に封入される冷凍食品21の量は特に制限されないが、典型的には、1~2食分の量である。1~2食分の冷凍食品の重量は、食品の種類によって異なるが、例えば、本実施形態のように冷凍食品が冷凍麺類の場合は、200~600g程度である。また、1~2食分の冷凍麺類が、本実施形態のように1つの塊からなる場合、その1つの塊の体積は300~600cm3である。
【0022】
包装袋22は、冷凍食品21の個装袋である。包装袋22の形態は特に制限されず、例えば、公知の三方袋、ピロー袋、チャック袋であり得る。
【0023】
包装袋22には、マイクロ波透過性、耐熱性及び耐水性が要求される。前記耐熱性は、包装袋22に収容された冷凍食品21がマイクロ波加熱によって高温の食品となった場合に、その食品の熱に耐え得る性質である。包装袋22の形成材料としては、このような特性を満たすものが好ましく、例えば、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、結晶化ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン等の耐熱性プラスチック;一部又は全部に耐熱耐水コートが施された紙;これらの2種以上が組み合わされた複合材料が挙げられる。
【0024】
包装袋22には、包装袋22内の冷凍食品21をマイクロ波加熱したときに発生する蒸気を包装袋22の外部に排出するための蒸気排出手段を設けることが好ましい。前記蒸気排出手段として、例えば、包装袋22の圧力増加により開口する弁構造が挙げられる。
本実施形態では、前記蒸気排出手段として、
図2に示すように、包装袋22に、包装袋22を厚み方向に貫通する貫通孔からなる脱蒸孔23が複数設けられている。脱蒸孔23は、少なくとも包装袋22における、トレイ容器3に収容された状態で上面となる部位(トレイ容器3の上部開口33に対応する部位)に設けられることが好ましく、本実施形態はそのようになされている。
【0025】
トレイ容器3は、冷凍食品個装体2が載置される底部31と、底部31の周縁から起立する周壁32と、底部31の上方に位置する上部開口33と、上部開口33の開口縁部から外方(上部開口33とは反対側)に延出するフランジ部34とを有する。底部31と周壁32とで囲まれた空間部が、冷凍食品個装体2の収容部である。
【0026】
本実施形態では、底部31が平面視において四角形形状をなしているが、底部31の平面視形状は特に制限されず、例えば、円形形状、楕円形形状、三角形形状、五角形以上の多角形形状であり得る。
トレイ容器3の強度向上の観点から、底部31及び/又は周壁32は凹凸形状を有していることが好ましい。
図1に示すトレイ容器3の周壁32は凹凸形状を有している。
フランジ部34は、トレイ容器3の強度向上に役立つとともに、トレイ容器3を手指で把持する際の持ち手としても機能し得る。フランジ部34の持ち手としての機能を一層向上させる観点から、フランジ部34に折り目を付与して、該折り目に沿ってフランジ部34を折り曲げ可能に構成してもよい。例えば、
図1を参照して、平面視四角形形状の上部開口33を包囲するフランジ部34における、相対向する二辺に沿って延在する一対の部分それぞれに、その延在方向の全長にわたって同方向に折り目を付与しておき、使用時には、該折り目に沿って該一対の部分を上方(底部31とは反対側)に折り曲げて持ち手とする。この一対の持ち手を手指で把持することで、トレイ容器3の持ち運びが一層簡便になり得る。フランジ部34は、上部開口33の開口縁部の全周にわたって設ける必要はなく、持ち手としてとして機能させるために上部開口33の対向する箇所に設けるものであってもよい。
【0027】
トレイ容器3には、包装袋22と同様に、マイクロ波透過性、耐熱性及び耐水性が要求される。トレイ容器3の形成材料としては、包装袋22の形成材料と同様のものを用いることができる。
トレイ容器3は、常法に従って製造することができる。例えば、加熱溶融させた材料を型内に射出注入し、冷却・固化させることによって所定形状に成形する射出成形法を用いてトレイ容器3を製造することができる。マイクロ波加熱の際のマイクロ波の低減防止、トレイ容器3に収容された冷凍食品21の解凍効率の向上等の観点から、トレイ容器3は、厚みが均一なシート状の形成材料を加熱して軟化させ、型に密着させて所定形状に成形する方法によって製造されることが好ましく、斯かる方法の具体例として、プレス成形法、真空成形法、圧空成形法が挙げられる。
【0028】
容器入り冷凍食品1を利用する際には、電子レンジ等のマイクロ波調理器を用いて常法に従って容器入り冷凍食品1を加熱するだけでよい。
図2(a)に示すように、冷凍食品個装体2がトレイ容器3に収容された状態で、容器入り冷凍食品1をマイクロ波加熱すると、冷凍食品21中の水分が蒸気となって冷凍食品21から包装袋22内に排出され、
図2(b)に示すように包装袋22が膨張するとともに、脱蒸孔23を介して包装袋22の外部に該蒸気が排出される。容器入り冷凍食品1の加熱終了後は、マイクロ波調理器の庫内からトレイ容器3を取り出し、更に、トレイ容器3から冷凍食品個装体2を取り出して包装袋22を開封し、冷凍食品21の加熱解凍物である食品のみをトレイ容器3に戻す。前記食品はそのまま喫食可能であり、トレイ容器3は食器として機能する。
【0029】
容器入り冷凍食品1は、冷凍食品個装体2をトレイ容器3に収容した状態で冷凍食品個装体2をマイクロ波加熱可能になされている点で特徴付けられる。
前述したとおり、容器入り冷凍食品10A,10B(
図3、
図4参照)に代表される従来の容器入り冷凍食品は、冷凍食品とトレイ容器とが接触しているため、マイクロ波調理器による加熱直後に、トレイ容器が手指で触れることができないほどの高温状態になるという課題を有する。これに対し、容器入り冷凍食品1においては、冷凍食品21が包装袋22で包装されて冷凍食品個装体2とされているので、冷凍食品個装体2をトレイ容器3に収容した状態では、冷凍食品21とトレイ容器3(底部31、周壁32)との間に包装袋22が介在しており、冷凍食品21とトレイ容器3とは非接触である。そのため、斯かる状態でマイクロ波調理器を用いて常法に従って容器入り冷凍食品1を加熱し、冷凍食品21が熱を帯びるとともに冷凍食品21から大量の蒸気が発生しても、包装袋22がその熱及び蒸気のトレイ容器3に対する影響を低下させる緩衝材として機能するため、トレイ容器3は高温状態になりにくい。したがって容器入り冷凍食品1は、マイクロ波調理器による加熱直後であっても手指で把持可能であり、そのため、加熱解凍及び喫食を簡便に行うことができ、家庭内での利用は勿論のこと、家庭以外の場所で冷凍食品を加熱解凍し喫食する利用スタイルにも好適である。
また、容器入り冷凍食品を商品として扱う自動販売機は、典型的には、複数の商品を収容するストック部と、該ストック部の下方に設けられた商品の取り出し口とを有し、購入希望者が選択した商品が該ストック部から該取り出し口に落下してくるように構成されているところ、このような構成の自動販売機で扱う容器入り冷凍食品が、容器入り冷凍食品10A,10Bの如き、冷凍食品とトレイ容器とが接触しているタイプのものであると、落下時トレイ容器が受けた衝撃が、トレイ容器から冷凍食品に直接伝わりやすく、その衝撃で冷凍食品が破損するおそれがある。これに対し、容器入り冷凍食品1は、冷凍食品21とトレイ容器3との間に包装袋22が介在し、トレイ容器3と包装袋22とが、容器入り冷凍食品1の落下時に冷凍食品21が受ける衝撃を二重に和らげる緩衝材として機能するので、自動販売機による販売形態にも好適である。
したがって、容器入り冷凍食品1に代表される本発明の容器入り冷凍食品は、冷凍食品の加熱解凍及び喫食を簡便に行うことができる。また、本発明の容器入り冷凍食品は、落下時の衝撃のような物理的な衝撃に対して耐性を有するため、取り扱い性に優れ、自動販売機による販売をはじめとして、様々な流通・販売形態に対応可能である。
【0030】
容器入り冷凍食品1をマイクロ波加熱で加熱した後に、トレイ容器3から冷凍食品個装体2を取り出しやすくする観点から、トレイ容器3の底面(底部31の冷凍食品個装体2との対向面)と、上部開口33の開口面(上部開口33の開口縁部によって画成される面)とが平行であって、且つ該開口面の面積(上部開口33の平面視における面積)の平方根に対して、該底面と該開口面との鉛直方向(
図2の上下方向)における距離、すなわちトレイ容器3の深さが、5~40%であることが好ましく、7~30%であることがより好ましい。トレイ容器3の深さが上部開口33の開口面の面積の平方根の40%を超えるほど深いと、トレイ容器3から冷凍食品個装体2を取り出しにくくなる場合がある。
また、同様の観点から、トレイ容器3の底面と上部開口33の開口面とは相似の関係にあることが好ましく、本実施形態はそのようになされている。
【0031】
包装袋22は、冷凍食品21の全体を包装可能であればよく、またトレイ容器3は、冷凍食品個装体2の全体を収容可能であればよく、これらのサイズは特に制限されないが、冷凍食品21のサイズに比べて過度に小さいか又は過度に大きいと、容器入り冷凍食品1をマイクロ波加熱した後の状態(トレイ容器3の温度、冷凍食品21から発生した蒸気によるトレイ容器3の湿り状態)が好ましくないものとなり、本発明の所定の効果が十分に奏されないおそれがある。以上を考慮すると、冷凍食品21の外寸体積(A)と、トレイ容器3の容積(B)と、包装袋22の容積(C)との比率は、A:B:C=100:105~150:140~200が好ましく、100:110~140:150~180がより好ましい。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
本発明の容器入り冷凍食品は、そのままでも、すなわち冷凍食品個装体及びトレイ容器のみを有する構成でも長期間冷凍保存が可能であるが、外装されている、すなわち冷凍食品個装体及びトレイ容器が外袋で一体的に包装されていると、冷凍保存中の汚染等を防ぐことができるため好ましい。前記外装としては、例えば、シュリンクラップ包装、外装袋、包装箱等、公知の手段を適用できる。特に密封可能な外装手段は、長期間の保存の際も冷凍食品からの水分蒸発を抑制することができるため、品質保持の観点から好ましい。
【実施例0033】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0034】
〔実施例1〕
図1、2に示す容器入り冷凍食品1と同タイプの容器入り冷凍食品を製造した。
具体的には、厚み0.5mmの均一な厚みの耐熱性ポリプロピレン製シートを成形し、前述したトレイ容器3と基本構成が同様のトレイ容器を製造した。製造したトレイ容器は、上部開口の開口縁部が形成する図形面積が270cm
2(=18cm×15cm)、深さが2cm(前記面積の平方根16.4cmの12%)、容積が500cm
3であった。
また、市販の乾燥スパゲティ(日清製粉ウェルナ製)を歩留り230質量%まで茹でた後、冷水にさらして冷却し、水をよく切って茹で麺を得た。縦17cm、横14cm、深さ1.7cmの平面視四角形形状の充填部を有する成型用トレイの該充填部に、前記茹で麺を200g充填して麺塊を形成し、更に、該麺塊の上部に市販のカルボナーラソース(日清製粉ウェルナ製)を80g載置した。この状態では、成型用トレイの上部開口から茹で麺及びカルボナーラソースの一部が飛び出していた。そして、成型用トレイの上部開口を樹脂製フィルムで覆い、該樹脂製フィルムの上に板を載置して、成型用トレイの上部開口から飛び出していた茹で麺及びカルボナーラソースを平にならした状態で、成型用トレイ全体を-35℃で急速凍結して、前述した冷凍食品21の如き、略直方体形状の1つの塊からなるブロック状の冷凍食品(冷凍麺類)を製造した。製造した冷凍食品の外寸体積は405cm
3(=縦17cm×横14cm×厚み1.7cm)であった。
また、耐熱性ポリプロピレン製フィルムを用いて、前記冷凍食品の個装袋を製造した。製造した個装袋の容積は700cm
3であった。前記冷凍食品を前記成型用トレイから取り出して前記個装袋に封入し、冷凍食品個装体を製造した。
そして、前記冷凍食品個装体を前記トレイ容器の底面に載置して、実施例1の容器入り冷凍食品を製造した。
【0035】
〔比較例1〕
図3に示す容器入り冷凍食品10Aと同タイプの容器入り冷凍食品を製造した。この比較例1の容器入り冷凍食品は、冷凍食品(冷凍麺類)及びトレイ容器が包装袋で一体的に包装され、該包装袋が該冷凍食品の個装袋ではない点で、実施例1の冷凍食品と異なり、冷凍食品、トレイ容器及び包装袋自体は、それぞれ、実施例1の容器入り冷凍食品を構成するものと同じである。
【0036】
〔比較例2〕
図4に示す容器入り冷凍食品10Bと同タイプの容器入り冷凍食品を製造した。この比較例2の容器入り冷凍食品は、包装袋を有しておらず、トレイ容器の上部開口の全体が蓋で閉塞されている点で、実施例1の容器入り冷凍食品と異なり、冷凍食品及びトレイ容器自体は、それぞれ、実施例1の容器入り冷凍食品を構成するものと同じである。前記蓋は、耐熱性ポリプロピレン製フィルムからなり、前記上部開口を画成する開口縁部に剥離可能に固着されている。
【0037】
〔比較例3〕
実施例1の容器入り冷凍食品からトレイ容器を排除したもの、すなわち実施例1の容器入り冷凍食品を構成する冷凍食品個装体を、比較例3の容器入り冷凍食品とした。
【0038】
〔実施例2~17〕
トレイ容器の容積及び/又は包装袋の容積を変更した以外は実施例1と同様にして、容器入り冷凍食品を製造した
【0039】
〔試験例〕
各実施例及び比較例の容器入り冷凍食品を冷凍庫で1週間保存した後、電子レンジを用い、出力500W、加熱時間7分間の条件で、容器入り冷凍食品にマイクロ波加熱を行った。マイクロ波加熱に先立ち、各実施例並びに比較例1及び3については、包装袋に千枚通しで直径1mm程度の脱蒸孔を10個形成し、比較例2については、
図4(b)に示す如くに、蓋の一部を剥がして開口部を設けた。マイクロ波加熱直後に、10名の専門パネラーに、電子レンジの庫内の被加熱物(容器入り冷凍食品)を手指で把持して取り出してもらい、その際の被加熱物の状態(取り扱い性、蒸気による湿り具合)を下記評価基準で評価してもらった。電子レンジの庫内から被加熱物を取り出す方法は、トレイ容器を有する各実施例並びに比較例1及び2については、トレイ容器のフランジ部を把持部とし、該把持部を手指で把持して取り出す方法を採用し、トレイ容器を有しない比較例3については、冷凍食品を包装する個装袋の端部を把持部とし、該把持部を手指で把持し且つ該冷凍食品の厚み方向が垂直方向と一致するように該冷凍食品を持ち上げて取り出す方法を採用した。結果(10名の評価点の平均値)を下記表1に示す。なお、表1中の「〇」は、容器入り冷凍食品が当該部材(例えばトレイ容器)を有することを意味し、表1中の「×」は、容器入り冷凍食品が当該部材を有しないことを意味する。
【0040】
<マイクロ波加熱後の状態の評価基準>
5点:把持部(フランジ部、個装袋の端部)は熱くなく、且つ該把持部に蒸気による湿りもなく、極めて良好。
4点:把持部(フランジ部、個装袋の端部)は熱くなっているが手指で把持できないほどではなく、且つ該把持部に蒸気による湿りもなく、良好。
3点:把持部(フランジ部、個装袋の端部)はやや熱くなっていて手指で把持しにくく、又は、該把持部に蒸気による湿りはないか若しくは少量あり、やや不良ではあるが許容範囲。
2点:把持部(フランジ部、個装袋の端部)は熱くなっていて手指を放しそうになり、又は、該把持部に蒸気による湿りはないか若しくはややあり、不良。
1点:把持部(フランジ部、個装袋の端部)は非常に熱くなっていて手指で把持できず、又は、該把持部に蒸気による湿りがあり、極めて不良。
【0041】
【0042】
表1に示す通り、実施例1の容器入り冷凍食品は、冷凍食品の個装袋を有し、該個装袋が、該冷凍食品を発生源とする熱及び蒸気のトレイ容器への影響を和らげる緩衝材として機能するため、加熱直後でもトレイ容器の把持部が手指で触れることができないほどの高温状態になることはなく、取り扱い性が良好であった。
比較例1の容器入り冷凍食品は、加熱直後のトレイ容器の把持部が手指で触れることができないほどの高温状態であったため、電子レンジの庫内から取り出すのに手間がかかった。
比較例2の容器入り冷凍食品は、加熱直後のトレイ容器の把持部が、比較例1ほどではないものの、手指で長時間把持し難い高温状態であったため、電子レンジの庫内から取り出すのにやや手間がかかった。また、加熱直後の電子レンジの庫内に蒸気が充満し、トレイ容器全体が著しく濡れていた。
比較例3の容器入り冷凍食品は、トレイ容器が無いため持ちにくく、また、持ち運ぶ際には、食品を個装する個装袋を手指で直接する必要があるため、加熱直後に個装袋を手指で把持すると、高温状態の食品に触れやすく、火傷するおそれがあった。
【0043】
【0044】